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政府委員(森田孝君)
高橋委員長から只今
経過の御
報告がありましたが、ちよつと恐らく言葉の足らなか
つた点だろうと思
つておりますが、
最初のドーマンから来ました手紙は、講和
会議終了後においてやりたいという手紙でなくて、ウイーンの展覧会をアメリカでやりました直後に、
日本の展覧会をアメリカでや
つたらどうかと、こういう手紙がたしか樺山愛輔氏を通しまして吉田総理にもたらされたと聞いております。これに対して、第二次
吉田内閣のときでありますが、吉田総理
大臣から、講和
会議終了後において展覧会をやろうという回答がされてお
つたのでありますので、その点言葉の足らなか
つた点だろうと思
つておりますが、訂正申上げておきます。
それからお手許に配りました協定は、
委員長が申されましたように、当初の向うのほうの申出の案に対して、各所におきまして修正を希望しまして、殆んどこちらの希望が全部容れられたのでありますが、その結果本年の十月の七日の閣議で
決定を見まして、アメリカのほうに通達をいたしたのであります。
最初に書いてあります一九五二年十月七日の
日本内閣の
決定によ
つて、
文化財保護委員会の
委員長の
高橋誠一郎氏に権限が与えられたということにな
つておるのであります。
それでこの協定の
内容につきましては、逐条お読み申上げるとよろしいのでありますけれども、時間がかかりますので、概略御
説明を申して参りたいと思
つております。第一条は主催でありまして、
日本国政府とアメリカの参加美術館との共同主催ということにいたしてあります。そうしてアメリカ側の代表は、只今
高橋委員長から申されましたように、ワシントンの国立美術館の館長のデイヴット・フインレイ氏であります。
日本側の現地における代表は、アメリカに行
つた日本の百席官吏が代表となるということにな
つております。なお
日本の係員は六人を超えない範囲において係員を伴う、これは六人というのをここに限定いたしましたのは、後に出て参りますが、十六条でありますか、この第十三条による
日本人の旅費及び生活費全部が向うの経費で持たれることになるので、人数が一応限定されたのであります。
それから次に、第二条は品物の選択でありますが、このところは「展覧会は、
双方の同意の上で
日本の美術品中から精選された名作をも
つて構成される。」と書いてありますが、
双方の同意というのは話合いで、最後の
決定権は飽くまで
日本政府にあるということを文書で念を押して、この表現に同意したわけであります。で、事実上最後の
決定は
日本の政府においていたしまして、アメリカ側に通告した形にな
つておるのであります。
それから次に第三条でありますが、これは展覧会の開催につきましての美術館が、これ以外の美術館では特別の取極めのないときには展覧しない。つまり独占権を各この五つの美術館がそれぞれの展覧
期間中は持つということであります。それからその順序は、参加美術館のほうで協定によ
つてきめてもらう。それでこの順序につきましては、お手許に資料として、
決定いたしました一覧表がここにお配り申上げてあるのであります。
それから第四条は
期間でありまして、これは一カ所一カ月を越えることはできない。但し
状況によ
つて、
日本側の代表が参加美術館と協議する場合においては、一カ月を越えることができるようにな
つておりまして、別の資料、只今申上げました半ペラの日程表を見ますと、ニューヨークのメトロポリタン・ミュージアムだけが一カ月半にな
つておりまして、
あとは全部一カ月ということで
決定いたしております。それから次が展覧会の、各美術館の間の
期間でありますが、展覧
期間であります。展覧
期間と申しますか、展覧を終
つてから次の展覧を始める
期間でありますが、これは私のほうの希望によりまして、四週間以上ということにいたしてもらいまして、これは解梱、包装、運送及び飾り付けを慎重にするように配慮をいたしたわけであります。それからアメリカにある全
期間は一カ年ということにな
つておりまして、一カ年以上は絶対やらないということにいたしたのであります。これは向うのほうが、最近の折衝におきましても、夏休みは殆んど皆
地方へ旅行に出ますので、展覧がしにくいから、二月までという希望が出たのでありますが、この協定によりまして拒絶いたしまして、従いまして展覧の順序が若干狂いまして、ワシントン、ニューヨークが終
つたあと、西海岸のシアトルに持
つて行
つてしまうというような、若干輸送の順序が変
つたわけであります。
第五条は輸送でありまして、アメリカ軍の船で行う。これはすでに先月の二十八日に船積みをいたしまして、二十九日に出発しまして、アメリカの軍用船で送
つたのであります。これにつきましては、この
委員会においても問題になりました倉田技官と、鈴木技官と、彫刻、絵画両方の各技官が附添
つて同乗して参
つたのであります。それから第二項は、
日本からの出発でありますが、十二月一日とな
つておりましたが、一日二日、これよりも早くな
つた。これは軍用船の
関係でこれより早くな
つたのであります。それからアメリカの国内の輸送が第三項に書いてありまして、
日本の係官がこれに附添
つて送
つて行くことにな
つております。第四項についても同様であります。それから
日本の国内における荷造りについては、
日本政府の費用で行うことにな
つておりまして、これはすでにそのようにいたして、予備金を頂きまして、予備金で行な
つたわけであります。
それから第六条が非常に大切な点でありまして、「この協定にもとづく展覧より生ずるすべてのいかなる責任をも問われない」、これは次の第二項に書いてありますように、各参加美術館が
日本政府に三千ドルずつの、つまり合計一万五千ドルの金額を支払
つて、
日本政府が自由にこれに対して保険をかけるなり、その他の補償の方法を講じてもらいたい。
従つてそれによ
つてアメリカ側の美術館は、この協定に基く展覧より生ずる一切の責任を問われない、経済上の責任は問われないというように規定はな
つております。併しながら次にありますように、当該従業員の怠慢、これは私のほうの希望によりまして、
内容が
はつきりいたしましたが、梱包その他、例えば陳列、展覧の場合における当該美術館内の監督に対する怠慢も含んだ意味におきまして、従業員の怠慢によ
つて生じたところの滅失、毀損については、これはこの協定以外の責任として、アメリカ側で負
つてもらうことにな
つております。それから第二項は只今
説明申上げました。第三項が、これは今申上げましたように、軍用船で運ぶのでありますので、それについてアメリカの軍は責任を持たないということであります。併しながら、これにりきましても、駐日アメリカ大使館を通じまして先方に依頼をいたしまして、国防省を通じ、又直接こちらに駐在しております海軍の代表者に対しまして、例えば船の中におけるところの荷物の位置、それから場所、積み方、それから室内の温度、湿度、そういうようなものにつきましての希望を出しまして、先方は全部これを容れてくれまして、詳細な湿度計、それから温度計まで出してくれておるような
状態であります。なお又大圏コースをシアトルに向
つて参
つておりますけれども、荒れるというので、特に美術品を守るという意味で、日数が若干かかるけれども、南のほうの静かな海を通る、通
つて行くということにまで、アメリカの軍が配慮をいたしてお
つてくれる
状態であります。それから四番目が、これ
はつまり今度持
つて行きます美術品については、アメリカの国内における限りにおいて、全部外交財産として、アメリカの駐在
日本大使がこれらの維持に必要な手段を講ずる権限を持
つて、つまり管理の責任を持つことにな
つておるのでありまして、すでにこの
手続は外務
大臣のほうからいたしてもら
つてありまして、アメリカにおいての、現在におきましては荒木大使がアメリカにおける管理責任者としてこれを管理することになるわけであります。それから第七条、これは博物館の中における、展覧中における保護の特別方法、
措置であります。
それから第八条は、この陳列
設備に関する問題でありまして、これにつきましては、只今
高橋委員長から申上げられましたように、我々のほうから目下なお折衝が終
つていない部面もありますけれども、保存管理について必要詳細な要求書が出ておりまして、この
設備について、大体我々のほうの希望に近付いて参
つておりますが、何分にもこの五つの博物館の中には、従来東洋のものの、殊に
日本のものの陳列に馴れていない博物館も若干ありまして、そういうところにおきましては、新らしく、例えばガラスのダースを作るとか、そういうような
措置を講じなければならん
関係上、なお折衝が全部終
つたという段階にはないのであります。近くこれは
意見が一致して参ると
考えておるのであります。
それから第九条は、カタログでありまして、これは
日本の政府官吏が編集して、アメリカで出版印刷する、アメリカで印刷して、そうして各五つの博物館が必要なカタログの数を申出て、つまり何と言いますか、予約出版というような形で出版をアメリカでするということにな
つておるのであります。その場合に、カタログ百部を
日本国政府用として、別に各出品所有者用として一部ずつを、これは向うの博物館が合同で出すということであります。
それから第十条が、複製品の問題でありまして、これについては現在積極的な何らの申出はないのでありますが、申出のある限りにおいて、我々のほうでも御協力して参りたいと思
つております。
それから第十一条は、博物館の入場料の問題であります。これは自由に向うの博物館同士で
決定するということでありまして、又
学生、
生徒その他については安くして行くというようなことが書いてあります。
第十二条は修理の問題でありまして、この修理責任者というものをきめまして、その指示を得なければ一切の修理はできないということのようにな
つているのでありまして、
日本から附添
つて参りますところの専門の技術者の誰かがこの方面の責任もとることになるのであります。それから第二項は、これについて臨時に閉鎖する場合に、陳列
期間を、閉鎖された
期間と同じ
期間を延長することができるが、この場合は
日本国政府及び他の参加美術館の同意を得なければならんようにな
つております。
それから第十三条は拠出金額でありまして、これは五つの博物館の均当割当で、五つの博物館がそれぞれ出すことにな
つております。
十四条は宣伝
計画、これはアメリカ側において行うもので、
日本はこれに協力するということであります。
第十五条は「展覧会後援
委員会が
設立された場合には
日本国政府はこれに勤務する
日本人の氏名を、また参加美術館はアメリカ人の氏名を通知するものとする。」、これは御承知の
通りにカタログに
はつきり出すことにな
つておりますところのいわゆる名誉
委員と言いますか、そういうような顔ぶれのことであると
考えております。
十六条は総経費でありまして、このA、B、C、D、E、Fは、それぞれアメリカ側において負担する金額の内訳が書いてあります。それから又第二項は、これは総額約七万ドルの均当割当で出したお金をアメリカの国立美術館の会計係にあらかじめ預けておくということで、向うのことであります。
それから第十七条は、展覧会の結果、この七万ドル、各五つの博物館がそれぞれ出し合
つて五つの博物館が損害をこうむ
つても
日本政府はそれに対して責任はないということであります。なお先ほど
委員長からも
お話がありましたように、
最初の案には、この
あとヘカナダ或いは又今のこの五つの博物館のほかにアメリカの中の三つの博物館の参加のことも書いてありましたが、これは
高橋委員長の発言のように、折衝によ
つて全部落してもら
つたような
状態であります。
以上であります。