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政府委員(
平田敬一郎君) この問題につきましては、或いは
主税局のほうから
お話申上げるのが筋かと思いますが、
実行上の
問題等が一番大きな問題の
一つではないかと思われますので、私のほうからもそのような点を、主として
考えております点を申上げてみたいと思う次第であります。
なお私個人的には前からこの問題につきましてよく
事情を承わ
つておりますので……、個人的ではございません、
主税局長のときに承わ
つておりますので、併せてその辺の
事情等につきましても附加えさせて頂きたいと存じます。
今いろいろ
提案理由の御
説明にもございましたが、確かに
理由のあるところも私は全然ないとは
考えないのでございまして、
理由のある面もあるのではないかと思いまするが、他面よく
考えてみますと、なかなか
理論上も
実行上にも
難点が多くて、今日まで
解決を見ていなか
つたというのが実際の最近までの経過ではないかと
考える次第でございます。
一番
理論的の問題がやはりふると私
考えますのは、
公定価格の
制度が
きちつと行われておりました場合におきましてはその
難点は比較的ないと思いまするが、
自由価格になりました場合におきましては、
価格の動きというものが、
課税の
廃止によ
つて直接動いたのか、或いは
需給関係によ
つて価格が動いたのか、それが
一ついろいろ問題があるのではなかろうか。
従つて値下りによる損を全部、少くとも
消費税限度額までは
消費税の
廃止による
損失と見ることが果して……、当然そのように見るべきかどうか、そこに
一つの問題があろうかと思います。若しも
公定価格等を施行しておりまして、
廃止後におきまして、
公定価格を完全にすぐ切下げるというような場合におきましては、これは当然それに対応しまして、何らかの
措置が講ぜられなければならないと
考える次第でございますけれ
ども、
自由価格の場合におきましては若干その点が
違つた関係になるのではなかろうか。あの際の、一般のああいう
市況の際でございましたから、非常に
値下りをしたことは、これは事実でございまして、それによりまして
業界が
相当の
打撃を受けているということも事実だろうと思いますが、
廃止した場合においてその
値段が下がらん場合には一体どういうようなふうになるか。そういうような場合をいろいろ
考えてみますと、なおやはり当然返すべきであるというふうになるかならないかという点につきましては若干の問題があるのではないかと思う次第であります。
それからもう
一つは、
実行上の問題でございまするが、私
ども主としてその点をむしろ当時から問題にしたのでございまするが、何しろ
織物は
製造場から出まして、出た
あと問屋さんの倉庫にある、或いは
小売屋さんの
手持にな
つている、物によりますと、
既製服なんかもう
製品にな
つている、こういうような場合におきまして、確実な
調査ということはなかなか困難であります。これは
ストツク課税の場合は
調査いたしておりまするが、これも零細な額のものにつきましては
調査いたしていない。返すということになりますると、その辺のところはやはり完全に調べまして返さざるを得ないのではないか。殊に小さいからというので取り放すわけには行かないのではあるまいか。
ストツクで
課税します場合には、小さいものは猶予するということで見逃してもいいという
考えでございますけれ
ども、返すという場合にはなかなかそういうわけにも行かない筋合のものではないかと
考えます。そうしますと確実な
数量なり
価格を
査定しまして、果して
市場にあるものが
幾ら税金を、
消費税を
現実に納めたものであるか、その判定をつけるのが非常にむずかしいのではないかというふうに当時におきまして
考えた次第でございます。それともう
一つは、その当時における特異な
事情でございますが、遺憾ながら
織物消費税につきましても
相当な、税がかからないで
市場に出ております物が当時におきましてもあ
つたわけでございますが、そういうものの判別が果してつくかつかないか、そこになお更困難な問題がある。従いまして私
どもといたしましては、当時におきましてこの返すということを
理論上仮に当然だと
考えましても、
あとの
実行につきましてなかなか問題が多い。従いましてそのような意味におきましてもこの問題の
解決はなかなか困難なのではないか、このようなふうに今まで
考えて来たわけでございまして、私まだ
主税局と正式に最近の
考え方を打合しておりませんが、私の見ましたところによりますると、なおやはりそういう問題として残されて来ておるのでございまして、従いまして現在におきまして何か
解決策を講ずるということはなかなかむずかしいことではあるまいか、まあこのように
考えておる次第でございます。