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1952-11-11 第15回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月十一日(火曜日)    午前十時五十五分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     油井賢太郎君    理事            西郷吉之助君            中田 吉雄君    委員            石村 幸作君            宮田 重文君            岡本 愛祐君           小笠原二三男君            原  虎一君            吉川末次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    国家地方警察本    部次長     谷口  寛君    国家地方警察本    部刑事部長   中川 董治君    自治庁選挙課長 佐久間 彊君    法務省刑事部刑    事課長     長戸 寛美君   参考人                警 視 総 監 田中 榮一君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件     ○地方行政の改革に関する調査の件   (今次総選挙施行状況に関する  件)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 只今から委員会を開会いたします。今日の議題は先般行われました衆議院の総選挙施行状況に関しまして各方面から意見を聴取し、併せて皆様がたから質疑等を行いたいと思います。  先ず第一番に法務省刑事局長岡原昌男君から説明を求めたいと思います。まだ岡原君が見えませんから、国警谷口次長から説明をしてもらいたいと思います。
  3. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 簡単に今回の衆議院選挙取締状況につきまして御報告申上げます。今回の総選挙は御承知通り日本国独立を回復いたしまして最初の総選挙でございまして、選挙の結果につきましては国内は勿論国外においても非常に注視をしておられたところでありまするし、又総選挙の行われる予想相当期間亘つてその予想がなされておつたために、いわゆる事前運動の行われる機会も従来の一般の総選挙に比較いたしまして、比較的多かつたのではなかろうかと思われるような状況の下に選挙が行われたのであります。一般にも今のような、今回の選挙の特性に鑑みまして、国民の各方面から今回の選挙公明推進して行こうという輿論、意見が起つて参りまして、その結果といたしまして、衆議院におかれましても公明選挙推進に関する決議も上程せられる状況にあり、又それに関連いたしまして政府においても閣議において公明選挙推進に関する決定をなすというような状況に相成つてつたのであります。又選挙法関係におきましても、前国会において選挙法相当徹底した改正が行われまして、そのような状況の下に先般の選挙施行せられたのでございます。我々取締当局といたしましては、検察庁方面との連絡を緊密にしながら、自警、国警両面警察の建前でありまするから、この間の調整につきましては特段に工夫を凝らしましてしばしば連絡協議会、打合会等を行いまして取締方針、運用の上に両者の齟齬なきを期して進んだのでございます。今申上げましたような趣旨から警察といたしましては飽くまで公明に而も厳正に取締をする、良心に恥じない取締をするということを基本の方針にいたしまして、個々の取締やり方につきましては良識に照して被疑者の取扱い、その他関係人取扱い等につきまして非常識の行為のないように十二分に戒飭をいたしまして今回の選挙に臨んだ次第でございます。  十月一日に選挙が行われまして、大体十月一ぱいを当面の大きな目標といたしまして取締をやつたのでございまして、大体選挙違反状況につきましては、十月一ぱいを以ちまして大よその終了段階に入つたと考えることができると思うのであります。勿論事案の性格によりまして十一月以後にかかつて取調をしなければならないというような事案もあるわけでありまするけれども、全体といたしましては十月一ぱい目標にいたしまして取締を収束せしめて行くというような方向で指導をいたして参つた次第でございます。従いまして只今手許に配付いたしました総括の取締の表におきましても一応十月三十一日現在を以て御報告を申上げておるような次第でございます。この結果によりますというと、十月三十一日現在におきまして全国の総取締件数が二万三千百二十一件、総取締人員が四万八千六百八十八名という状況に相成つておるのでございます。これを主なる罪種によりまして区別をいたしますというと、買収利害誘導関係件数において一万八千二百三十六件、人員において四万二千百五十人、これを全体の今申上げました取締件数並びに人員との比率において申上げますれば、買収利害誘導関係件数において七八・九%、人員において八六・六%というような状況であります。更に新聞雑誌制限に関する津反が八十八件、百十八人、選挙自由妨害に関する違反が百十九件、百六十三人、戸別訪問が二千二百九十一件、二千九百八十六人、文書図画に関する制限違反が千八十一件、千四百三十人、政党その他の政治団体政治活動制限違反が五十九件、八十人、その他の選挙法令違反が千二百四十七件、千七百六十一人、かような状況に相成つておるのでございます。で、全体の選挙違反のうちでいわゆる悪質の最たるものと言われておりまする買収利害誘導関係が、先ほども申述べましたように件数において全体の約七九%、人員において約八七%を占めておるのでございまして、文書図画に関する制限違反等のごときものは全体の件数において四%強、人員において三%弱というような概況にあるのでございます。  その他詳細の問題につきましては資料が出ておりますし、なおいろいろと御質問を頂きますれば我々のほうにおいて承知いたしておりまする限りできる限り詳細に御答弁申上げたいと考えておる次第でございます。甚だ雑駁でございまするが、概況を御説明申上げた次第であります。
  4. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) では質疑は後廻しにいたしまして、田中警視総監説明を求めます。
  5. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 全国的な選挙違反状況につきましては只今谷口国警本部次長から御説明がございましたので、大体それと同断だろうと考えております。只今手許に私のほうの選挙違反傾向という刷物を差上げてあると思いますが、それを御覧頂きますれば一切わかると思つておりますが、今回の選挙で従来の選挙違つた点が非常にございます。これにつきまして若干御説明申上げたいと思うのであります。  最近今までの選挙選挙民の特に買収という問題でありますが、その金品選挙運動員の手から離れて、それが直接選挙民の手に渡りまして、一票百円とか、千円というような計算で渡されるのが従来の形であつたのでありまするが、今次の選挙におきまして警視庁管内における選挙違反の実情を調査いたしますると、選挙民にはその金が殆んど行つていない。従つて一票幾らという値段で買収されたというような事実は殆んどございません。大体において中間における悪質選挙ブローカーのようなものがこれを私いたしまして、そうして結局選挙民そのものは蠧毒されていないということで、この点は選挙民というものが或る程度公明選挙という一つの声に反省をした、或いは又公民教育が従来よりは少しは徹底して行われておるのじやないかというような関係で、直接選挙民金品が行つておるということはないのであります。  それからなおすでに今秋議会解散されるであろうという新聞論調から考えまして、やはり相当早くから事前運動というものが行われておりまして、非常に巧妙な手段によつて行われる、或いは後援会、支部の組織結成を擬装して行う事前運動であるとか、或いは旅行会とか各種宴会、慶弔、祭典開業開店その他各種行事に便乗し、又時候見舞挨拶に名を藉つて金品寄贈というようなことが非常に行われております。更に選挙運動が九月に行われました関係上、これはどこでもそうでありましようが、秋の神社の祭典というものが行われまして、それに相当金品寄贈が行われておつた。これは従来の慣例として行われておつたものとしてはよいのでありますが、突然候補者がその祭礼に寄贈するというような、こうした一つ機会狙つての金銭の寄贈行為ということが行われておりまして、この点は非常に違反事実についての容疑というものが非常に濃くなつてつておるのであります。それから殊に同業組合関係であるとか、社交団体であるとか、そうしたいわゆるその組織を利用しての投票の依頼、買収というものが相当活発に行われました。この点も注目すべき事実であります。  それから前回の総選挙当時は、経済事情が非常に逼迫しておりました関係上、料亭等の会合というものが比較的少なかつたのでありますが、最近におきましては主食の取締等のない関係か、料亭飲食店において公々然として選挙運動が行われる、従つて買収等が公々然と行われておつたということが明らかとなつておるのであります。  それから都内の選挙違反状況を見ますると、非常に各区の区会というものがいわゆる選挙母体となり、或いは区会議員の或るグループが選挙運動の基盤になりまして、従つて或る区会では区会議員の大多数が選挙違反に引つかかつて区会運営すら非常に支障を来たすというような場合もございまして、この区会というものが地方議会議員を集団的にこれを買収するというような傾向が起つております。それから特に、この金融機関幹部の立場にあるものが、金融機関を利用いたしまして、そしてその投票買収を行うという事例か管区にはあるのであります、これは主として庶民金融の役割を果しておりまするいわゆる信用組合、信用金庫を中心として行われた違反事実であります。これはやり方としましては、信用組合幹部が仮払いの形式で金を自由に費消し、選挙運動に費消したり、或いは又何ら担保も取らずに、或いはその業務規程も守らずに殆んど資力、信用のないものに金融をいたしまして、そしていわゆるその利益によつて反対給付として投票を依頼する。或る金融機関幹部は、或る会社に無担保で金を貸し与えて、そうしてその金を更に又自己個人名義相当高利で、これを貸した金をもう一回自分が借りて、それを選挙運動費としてこれを使うというような、いわゆる金融機関を背景とする候補者違反というものが著しい現象として、今回違反事実として挙つております。これは単に公職選挙法違反であるのみならず、信用組合幹部としてのいわゆる背任的行為として、現在引続いて捜査をいたしております。  それから機関紙にあらざる地方新聞を買占めをして、自己宣伝を行う新聞紙買収事犯というものが相当つたのであります。それからこれも特異の現象といたしまして、これは或る一部の少数過激分子の行なつた行動でございまするが、いわゆる個人演説会街頭演説に際して、これらの一部の過激分子がその演説会を故意に暴力によつて妨害し、ひどいのは演説しようとする候補者を実力を以て首る締めたり、或いは暴行したり、或いは聴衆を威嚇して会場から立去らしめるというような、これは極めてひどい暴力的な行動に出たことでございます。これはもう殆んど極く少数の極めて稀な例でございましたが、そういうような点が見受けられました。それから演説会或いは街頭演説会に非常な弥次を飛ばしまして、そうして候補者をして演説を不可能ならしめた、或いは殆んど聴衆候補者演説を聴取することのできないような状態に置くというような、いわゆる演説妨害行為等もあつたのであります。それから中には反対党の、これも一部過激分子のやつた行動もありますが、反対党候補者の非常な悪口等文書に印刷しまして、これを投票直前にばら撒いたり、こうしたような傾向が特に多かつたのであります。  それから今回の選挙で我々としまして非常に注目すべきことは、公職選挙法取締規定と申しますか、形式的な取締というものが非常に厳格になりました関係上、勢い形式犯というものが非常に多くなつて参りまして、警視庁管内だけで形式犯として一応処理した件数が三万六千八百二十六件、検挙いたしました数が二百五十五件、合計三万七千八十一件というものがいわゆる形式犯関係違反として処理されているのでございます。かような関係からいたしまして、今次の選挙におきましては、形式的な違反というものが非常に多くなつております。警察取締方針としましては、むしろこの形式犯もさることながら、買収饗応利益誘導といつたような悪質と認むべき極めて露骨化した選挙偉反を検挙するということで、形式違反につきましては、成るべくこれを指導的な取締によつて善処してもらう、警告をしてなお且つ違反を敢行する場合におきましては、これを検挙するというような方針でやつておるのでございます。  それから又今度の選挙で特に著しい傾向としましては、未成年者を利用いたしまして、文書図画戸別に、又は通行人に頒布さした事例がございます。これは少年の選挙運動に対する罰則適用について相当注意を要する点があると思うのであります。殊に多数朝鮮人未成年者年齡は七、八歳から十二、三歳までの小学校の児童を狩出して、特定候補者を支持する文書図画を頒布したという事実があります。それから今回の選挙文書図画による宣伝制限規定によりまして、ポスターの貼出しであるとか、或いは文書図画による宣伝というものが極めて制限をされました関係上勢いその闇行為としまして、戸別特定候補者投票を依頼して廻り、いわゆる戸別訪問、或いは買収饗応伴つた戸別訪問というものが盛んに行われまして、戸別訪問挙つた件数相当多いのでございます。なおこの戸別訪問の多くなつたということは、自動車拡声機等の使用によりまして、例えば法定による自動車一台という制限のあるために、勢い自動車による宣伝の手が足りない、僅か一台の自動車で、広い選挙区を自動車一台で駈け廻ることが非常に困難であるというような関係から、その補助としまして、戸別訪問を盛んにやつて宣伝をするというようなことになつて来ておるわけであります。  それから特に一部の過激分子の、演説会におきまして、例えば傍聴人を一々身分を知らさせる、警察官が若し仮に入つておりましたならば、警察官は入つてはいかん、出てくれと、かようなことを言つて傍聴を妨げた。警察官といえども選挙民でありまして、演説会は公開されておりますので、選挙民である警察官が入つてその選挙演説を聞きましても、これは自由でありまして、又聞く権利を選挙民として持つておるのでありまするが、警察官は入つてはいけないと言つてこれを追い出そうとしたようなことも数回ございました。こうしたことは、若しこれが非公開の集会であるならば、当然これは選挙法規取締外になつておりまして、取締上非常に支障を来たすのでありまするし、又若しこれが公開の場所でそうしたことが行われるならば公安條例で当然これは許可を受けたければならない集会である、かような事例等があつたのであります。これを要するに、今回の選挙におきまして公明選挙が世論として起りまして、そうして而もその間隙を縫いましていろいろな悪質な買収饗応利益誘導というような事案が多数起りましたことは誠に遺憾な次第でございまして、今後もこの取締法規の点に不備があるならばやはり十分御研究を願いまして、将来取締法規改正であるとか、そうした点につきまして一つ十分御研究を願いたいと思います。なおいろいろ具体的な問題につきましては、御質問がありまするならば詳細お答え申上げたいと思います。
  6. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 次に自治庁佐久間選挙課長から説明をしてもらいます。
  7. 佐久間彊

    説明員佐久間彊君) 今回の総選挙に当りまして、自治庁といたしましては選挙執行の面におきまして選挙法の大幅の改正が行われましてから解散があり、総選挙が行われます期間が非常に短くありました関係と、なお又教育委員会選挙、或いは国民審査がほぼ同時に行われたというような関係で、選挙事務の上におきましては非常に複雑且つ多忙であつたのでありますが、それらの間に処しまして全国の各選挙管理委員会法規に従いまして過誤のないように選挙事務を執行いたしますように指導をいたすごとに特に努めて参つたのであります。それと一面、只今警察のほうからお話もございましたが、独立最初選挙でありますので、特に選挙公明化を図らなければならないということで、民間からもそういう気運が澎湃として起つて参りましたときでありますので、閣議の御方針に従いまして、自治庁といたしましては、民間運動に協力するということに努めて参つたのであります。それらの結果、幸いにいたしまして平穏に総選挙も終ることができたのであります。併しながらこれを振返つて見ますると、選挙制度の面におきまして、或いは又その運営の面におきまして、なお今後検討すべき点も少なからずあると思われるのでありまして、本日はお話もございましたので、現在までのところ、どういうような点が今後制度改正について問題になるであろうかというようなことを申上げて見たいと思うのであります。実は私どもといたしましては、地方の各選挙管理委員会意見を、先般来承つて、それを元にいたしまして、検討を始めておるのでございまするが、まだ地方側意見も十分練れて来てはおりませんし、私ども検討もまだ十分尽しておりませんので、本日はこれまでのところ、各地方選挙管理委員会等から承わつております意見の中で、比較的多くの地方において開かれます意見を、若干拾い上げてお手許にお配りをいたしたのであります。なおもつと詳細な地方側意見等は、只今資料を整理をいたしておりまするので、後日又御覧に入れることができるかと存じております。この印刷物の中で都道府県とか、或いは関東信越というようなふうに書いてございますのは都道府県選挙管理委員会全国的な組織を持つておるわけでありますが、それが各ブロツクごとに又支会を設けておりまして、ブロツクごと改正意見検討し、それを又全国会議検討するというようなことになつておるわけでありますが、この関東信越というようなのは、そのブロツクごと支会意見ということであります。なお各都道府県といいますのは、各都道府県を通じての意見でございます。五大市につきましては、五大市のやはり選挙管理委員会連合会作つて、そこで共同いたして検討をいたしておりますので、それの意見でございます。一は選挙直前に控えての改正はやめてもらいたいという意見であります。これは全国選挙管理委員会会議を開きました際も、この意見が強く出たのでございますが、今度の選挙が、七月の三十日に選挙法の大幅な改正がございまして、それに基きまして私どもとしましては命令、政令でありますとか、府令でありますとか、或いは関連した告示なり通牒等準備をいたさなければならないわけでありまするが、そうしてこの上で更に改正趣旨全国の各市町村事務担当者まで周知徹底させる必要があり、更に一般選挙民にもその改正趣旨をよく啓蒙する必要があるわけでございまするが、何分にも七月の末に法律が通りまして、一月足らずの間に解散があり、選挙ということになりましたので、私どもといたしましては全力を挙げて準備をいたしたのでありまするが、それの各市町村までの周知徹底の点、或いは改正法解釈疑義につきましての統一を指導するというような点につきまして、なお遺憾な点があつたように思うのであります。従いまして改正をして頂くにつきましては、どうか十分改正法趣旨を末端まで周知徹底せしめるだけの期間を与えて頂きたいというのが、全国都道府県意見でもあるわけでありまして、私どもも今度実際事務を執行いたしまして、その点は痛感をいたしておるのであります。一例を申上げますと、選挙法改正選挙法令集をこれも印刷をいたしまして各市町村事務担当者まで配付をいたさなければならないのでありまするが、それがやつと解散間際にでき上つたというような状況であつたのであります。  その次は別表第一の選挙区及び議員数を再検討すること、これもかなり府県から出ておるわけでありますが、これは別表第一にきめました当時から人口その他の事情も変化をいたして参りましたので、それに応じて再検討をして頂きたいということであります。  その次は実施可能の選挙につき記号式投票制度を採用すること、これもかなり府県からこういう意見が出ておるわけでありますが、現行法によりましてこの開票の際に投票の効力につきまして有効か無効か紛わしい問題が今回もあちこちで起つておるようでありまするが、それらの点につきまして実際の衝に当りました選挙管理委員会からは従来から一部にいろいろ言われておりました記号式投票制度を実施可能のものから漸次採用することを考えて頂きたいという意見が出ておるのであります。  その次は立候補制限を受ける公務員立候補した場合は直ちに退職効果を生ずるものとしてもらいたい。これは全国府県皆通じてこういう意見が出ておるのでありまするが、これは現在公職選挙法の第八十九条におきまして公務の立候補制限規定があるわけでありまするが、その規定によりまして立候補制限されました公務員公職候補者となります場合には現在の公務員の職をやめなければならないわけでありまするが、その申出をいたしましてから五日間の期間があるわけであります。で、これを立候補いたしましたならば当然、或いは直ちに五日間というような余裕を置かないで退職効果が生ずるようにすることによつて、こういう問題についての手続を簡略にして行きたい。これは実際にこんなことで問題の起りましたのがちよいちよいあるようでございまして、こういう意見が多く出ておるのであります。  その次の個人演説会の問題と、十四章の二の問題は選挙運動関係の問題でありまするが、選挙運動につきましては実は今回の総選挙につきまして先ほど申上げましたように大幅な改正が行われた直後でございましたので、これにつきましてはあちこちでいろいろな疑問が起り、又その照会等も私どものほうへ参つたのでありまするが、選挙が終りましてからも、この選挙運動関係の分につきましては各県でいろいろな意見が出ております。それらを見てみますと、必ずしも県によつて意見が同じではないのでありまして、又非常に細かい点になりまするので、本日はそのうちの比較的大きな、そうして又大体各府県同じような意見言つております個人演説会の問題と、十四章の二の問題をここへは掲げたのでありまして、それ以外のいろいろな意見につきましてはなおよく検討をいたしまして、又必要がありますれば申上げるということにいたしたいと思つておるのであります。個人演説会は自由に開催できるようにすることというのが各都道府県五大市から意見が出ておるのでありますが、これは過般の改正におきまして個人演説会につきましては相当詳細な規制が新たに加えられたのでありまして、そのうち例えば個人演説会は六十回しか開催ができない、又その回数を確認するためにいろいろな手続が要るというようなことになり、更に又この個人演説会制限をいたしました関係上、一体或る演説個人演説会ということになるのか、或いは演説会ではない単なる演説ということであるのかというような解釈上の疑義相当出て参つたという点もあります。一方この六十回の制限も実際問題といたしましては殆んど六十回も短かい選挙運動期間中にはできなかつたというようなことを耳にいたしておるのであります。なお又今回の選挙を通じて見ますと、非常に個人演説会が盛況でありまして、これらの個人演説会につきましてはむしろ自由に開催ができるようにしたほうが今申上げましたようないろいりな点から考えましていいのではないかというので、この非常に強い要望意見が出ておるのであります。  それからその次は第十四章の二の規定でございますが、これは御承知のように前回改正におきまして特にこの衆議院議員選挙だけに適用のある特例ということで新らしい規定が設けられたのでございまするが、これにつきましては衆議院議員選挙についてこのような特例を規定することが公職選挙法の体系上如何であろうかというような点もあり、且つその規定をせられました内容から見てみましても或いはこの政党の政治活動制限するというような点、或いはその機関紙等の制限というような点につきましてもさような制限は要らないのじやないかという意見相当に強いのであります。  その次は連座制度を拡充強化すること、これは公明選挙連盟、或いはそこに書いてありますような府県から強く意見が出ているのでありますが、これにつきましてはいろいろな内容といたしましては相当きつい連座制度を考えているものもございまするし、又それほどでないものもあるわけでありまして、内容は一様ではないわけでありまするが、とにかく連座制度をもう少し強化をしてもらいたいというのが通じての意見であるわけであります。例えば二百五十一条におきまして選挙運動を総括主宰した者がそこに列挙いたしておりまする買収等の罪を犯して刑に処せられました場合には当選人の当選が無効になるというような規定がございますが、但書がついておりまして当選人が選挙運動を総括主宰した者の選任監督について相当の注意をしたとき等におきましてはこの限りでないということになつておるのでありまするが、この但書を削つてもらいたいというような意見でありまするとか、更にその同条の第二項におきましては出納責任者が報告書提出の義務違反の罪を犯して検挙せられましたときには、当選が無効になるという規定がございまするが、これを出納責任者につきましても買収等の罪を犯した場合にも拡張すベきではないかというような意見、或いは又この選挙運動を総括主宰した者というものが、実際上はこれははつきりしない場合があるのでありまして、総括主宰した者と出納責任者というものを一体にしてはどうかというような意見、或いは又更に強く選挙運動員というものを法定をいたしまして、その運動員が一定の罪を犯して刑に処せられました場合には、当選無効にしたらどうかという強い意見もあるのでありますが、要するに公明選挙推進する、或いは違反をなくすというような見地から、連座制度をもう少し強化してもらいたいという意見であるのであります。  以上私どものほうへ地方から出ました意見のうちから、比較的多数のもので主なものを幾つか拾い上げてございますが、自治庁といたしましてもこのような地方意見を十分に検討をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 次に順序は違いましたが、法務省刑事部の刑事課長説明を求めます。
  9. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) お手許に配付いたしました「衆議院選挙統計」というものがございます。実はこれは十月二十日附になつておりますが、あらかじめ御了承を煩わしたいのは国警の統計と数において若干のズレがあることでございます。十月二十日現在におきまして全国の検察庁で受理いたしました人員は、二万三千百五十二であります。これは人数でございまして、二万三千百五十二人でございます。国警の調査によりますと十月三十一日現在におきまして約四万八千人に上つておるのであります。この二十日当時の統計によりましても検察庁の報告と若干ズレがございますが、これは各現場の検察庁におきまして、選挙違反の処理その他に忙殺されて、結局警察から送られて参りましたものをすぐ登載できないということからのズレであろうと思われます。結局におきましては十月末現在やはり約四万八千人近い数が或いは受理されることと思われます。第一表は検察庁別の統計でございます。現在二万三千百五十二人のうち求公判いたしておりますものが五百六十三人でございまして、罰金を相当として略式を請求いたしておりますものが五百六十二人、起訴、移送もございますが、起訴中止移送を含めまして二千四百五十六人の不起訴処理がいたされております。それから次の第二表でございますが、これはいわば犯罪の類型別の統計でございます。総計はやはり二万三千百五十二人、その中で買収犯が、純粋の買収犯は五千三百十九人、それから選挙事務関係者の買収事犯が十七、言論買収が三人ということになつております。その他の買収はこれは饗応とかその他でございまして一万三千七百十三、これを合せますと買収事犯が一万九千五十二人でございまして、二万三千のうち一万九千ばかりが実質的な買収であるということが申せるわけであります。こういうふうにやつて参りますと、今度の選挙違反を通じて考えられますことは、検察庁といたしましては一番のどんじまりの処理をいたしますのですから、最後まで見ませんと何とも申上げられないわけでございますけれども、先ず違反の数が多かつたということ、これは国警の調査の四万八千を取つて考えて見ますというと、その後に出る者を考え合せれば先ず五万は出るというふうに考えられるわけでありまするが、この前の衆議院議員の総選挙におきましては、検察庁の受理総員は九千人でございました。それが四万八千、五万に上るということになりますれば今度の違反は数において圧倒的に多かつたということができるわけでございます。又戸別訪問等の事犯、これは買収犯等の実質的な犯罪に取締の重点を置くというところからも参るわけでありまするが、従つて戸別訪問の処理数が、戸別訪問等の形式犯の受理数が少いからといつて一概に形式犯の数が少いとは申せないのでありますけれども、この件数でも御覧のように、実質犯、買収犯を主とする実質犯がやはり多きを占めているというようなことが特徴と思われるわけでございます。なおこれに関連いたしまして、我々といたしましても選挙法改正点その他についての考え方を出して参りたいと思うわけでありますが、何分にもまだ検察庁としては調べの中途でございますので、今月下旬に全国の次席検事会同を催した際に、選挙についての実情報告を受けると同時に、改正点等についても現場の意見を徴したい、こういうふうに考えている次第でございます。
  10. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 以上で自治庁並びに選挙取締当局説明は終りましたが、質疑がございましたらこの際質疑をして頂きたいと思います。
  11. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 本日の委員会を進めるに当つて、都合を聞きますと警視総監は公務で長時間取れないような様子でございますから警視総監に先ずお尋ねしたいと思います。ここに提出されましたこの警視庁管内における選挙違反傾向として掲げられたものは私たちとして非常に参考になる重要な、特異な傾向であると考えますが、これの具体的にこの違反として現われた一、二のやり方についてお伺いしたいのですが、今送検前の者等については、或いはこういうところでも言えない部分があるかと思いますけれども、一応新聞紙上を賑わせている大久保氏、或いは前田氏、この両氏の違反傾向というものは、買収饗応が最も大きなもので、大規模に行われているという事実は否定できないようでございます。従つて、この両氏における警視庁においての取調の過程に現われた、どういう手順を以て買収饗応等の行為が行われたものであるか、発表し得る範囲で具体的に御説明願います。
  12. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 只今事案は、現在警視庁の手を離れまして、只今東京地方検察庁におきまして目下継続捜査中のものでございまするので、これが具体的の陳述は、ちよつと今まだ捜査の過程に入つておりますので、陳述は一応遠慮さして頂きたいと存じます。そのほか抽象的なことでありますならば、一般的な傾向として説明することは差支えないと思います。
  13. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その理由も十分わかりまするが、各新聞社等の記事を見ますと、やはり相当の根拠があつてあの記事が出ておるのではないか、新聞社自体が新聞社の足を使つて調査したものではないだろうと思うわけであります。で、情報の出ているところは警視庁以外にはないだろうとあの当時において考えられますので、その範囲で結構でありますが、それも言えないとあれば、一般的な傾向として無論具体的にお話頂いて結構でございます。
  14. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 現在新聞で報道されておりまする点につきましては、私どもとしましては責任々持てないのでありまするが、新聞社自体としても相当なる取材活動をされまして、材料を収集いたしました上で報道されたものと考えておりまするが、ただ警視庁としましては、現在事案を検事局の指揮によりまして捜査中であり、現在なお検察庁におきましても捜査いたしておりますので、こちらといたしましては、それを正式に発表したというようなことはございません。ただ一般的な傾向として、先ほどもちよつと申述べたと思いまするが、解散を見越しまして、相当早いものは昨年の秋頃から、又普通は大体におきまして本年の一、二月頃から、それぞれ相当運動資金を用意いたしまして、それを適当な将来選挙運動の総括主宰者、若しくはその責任者となるような者に金を本人又は第三者から与えまして、そうして選挙運動期間以外に、いわゆる事前運動としまして、相当その金が一般選挙運動員にばら撒かれておるのであります。そのばら撒かれておる理由としましては、或いは交通費の一部を助成するとか、或いは会合する際の費用を助成するとか、或いは又宣伝のために必要なる費用を助成するとか、かような名義で事前にばら撒かれておるのであります。殊に特赦の関係からしまして、或る一定の時期以前のこうした選挙運動資金というものは、法律適用上におきまして非常に疑義を生ずる。従つて警察としましては、取締当局としましては、主として選挙運動期間中にばら撒かれた金であるとか、或いはそれに関連してその直前において選挙運動買収費としてばら撒かれた金の使途、並びにどういう者からそれが渡されたか、候補者自身の手からそれが渡されたか、そういうことにつきまして現在捜査をいたしております。今お話の具体的な点につきましては、捜査の過程でございまするので、まだ結論は出ておりません。そのほか、先ほどもちよつと申述べましたが、町内会におきまして某々候補のいわゆる後援会組織しまして、後援会組織することは、これは私は差支えなかろうと思うのでありまするが、その後援会に出まして一席投票の依頼をすると、その際にその後援会におきまして酒食を提供する、酒を提供するとか、或いは御馳走を提供するとか、その場合におきまして、普通どう見積つても五、六百円はかかるのでありまするが、一応その集まつた会員から五十円若しくは百円の会費を徴収すると、然らばそのあとの経費はどこから出たかということが、これが重点になるのでありますが、或いは候補者の手から直接出たのか、或いは第三者の手から出たのか、こうしたことが今次選挙の非常に特異な、又一般的な事犯として、それが多く用いられております。併しながら、それが今年の一月二月頃に行われたというものにつきましては、非常に事前運動としての容疑が薄らぐ、関連性が非常に薄らいで来る。解散直前若しくは選挙運動期間中に仮にそれがなされたことがはつきりしておりまするならば、はつきりした選挙違反の事実としてこれが捜査線上に浮んで来るのでありますが、そうしたことが非常に多い。それから又、温泉或いは名所旧蹟地の旅行会を作りまして、その旅行会候補者若しくはその候補者をバツクとする運動員の手から金が助成されておるというようなことも相当あるのでございまして、まあこうしたことは一般的な傾向として今申上げた次第であります。
  15. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 あとでもう少し事態が明らかになつてから選挙法改正のための資料としてお尋ねするつもりでありまするが、今日はその程度でよろしうございますが、最後にもう一つお伺いしたいことは、相当警視庁としては検挙もしたようでありますし、徹底的な取締が行われたように思われますが、この期間中或いは事後に、関係者或いはその他から警視庁に対して抗議なり或いは操み消しなり、そういうようなことで各種の意見が警視総監にあつたろうと思いますが、そのほうの新傾向というものは何かございますか。
  16. 田中榮一

    参考人田中榮一君) まあ選挙違反がございますると、やはり候補者を中心にした親友であるとか、知人であるとか、そうしたかたがたから、選挙違反の実情について非常に憂慮の余り、いろいろ聞いて来る向もないではございません。併しながら、今次の選挙におきまして公明選挙というようなことが強く叫ばれました関係か、この選挙違反について操み消しの運動とか、そうしたものは私のところには殆んど参りませんでした。ただ候補者相当知名の人も中にはおりまするので、取扱上については十分一つ、本人の健康であるとか、或いはそのほかのことについて十分注意をして慾しいというこの点だけは特にお願いする、こうした依頼はございましたけれども選挙違反についての操み消し運動とか、そういつたものは殆んどございませんでした。
  17. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 もう一つお尋ねしますが、投書でございます。これは前回の各種の選挙から見て、今回はどういう状況にありますか。
  18. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警視庁管内だけで申上げますると、むしろ前回選挙よりは投書、密告は相当ございました。これはやはり選挙運動前回より相当熾烈であづたというような関係から、お互いに中傷的なことを投書したり、或いは又密告のようなものも相当ございました。併しながら警察としましては、これはよく前々の選挙でもよくあることでありまして、同じ派で以て利益相反する立場にあるものは同じ党派でもこれをお互いに中傷し合う、或いは他の党派を中傷し合うというようなことは、従来の選挙にも幾多の事例がございますので、警察といたしましては単にこの中傷的な投書、密告を根拠にして違反検挙いたしますると、非常に苛酷に亘つたり、或いは行き過ぎたり、或いは又無実の者を捕えて、従つてそれが選挙運動を妨害する、候補者選挙を妨害するというようなこともしばしばございまするので、警察としては単に参考としてこれを受取りまして、警察独自の立場において、やはり選挙違反というものは飽くまで警察独自の捜査によつて検挙するという方針をとつたのでございます。
  19. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) ほかに田中警視総監に御質疑ございませんか。
  20. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 このたびの選挙では、二当一落、一千万円落選、二千万円当選というようなことがよく言われて、私たち実際選挙運動をやつて見ると、金権候補の人は殆んど我々の知つているので当選している人は一千万円以上使つて、実質上失格しない人は殆んどない。法に触れる触れんはともかくと思うのですが、いろいろこの頃の検挙されたああいうものを通じて、これはどのくらい一体選挙費用が要つているというような大量観察というものはできませんか。私の知つている或る友だちの検事は、自分も一遍国会議員になりたいと思つていたが、このたびの犯罪捜査をやつて、もう国会なんかに出るものじやない。こんなにたくさん金が要るのならということを言つてつた。私はこのたびの腐敗選挙は、終戦以来地方選挙から国会選挙と殆んどやつて見て、曾つて例のない、これはフイリピン、或いは仏印のバオダイ、或いは南鮮の李承晩政権のような、まあああいう傾きかけたような国の様相を呈しているのではないかというふうに考えるのですが、そういう大体のめどはつきませんか。
  21. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この選挙費用は警察といたしましては、大体一人の候補者がどの程度の予算があつた場合に、どの程度にかかつたかということは調査ができないのでありまして、まあ一応買収饗応等に使われた金がどの程度に使われたかというその限度の金額だけは捜査線上に浮んでおります。今次選挙に際して全体としてどの程度の金が消費されたかということは、ちよつとわかりかねるのであります。又一面におきまして、二当一落というようなこともございまするが、これは一応そういうことが言われておるのでありまして、まあ現在の私どもの仕事、捜査線上に浮び上りました違反候補者の中には、中には相当金を使つておる者もおりますが、必ずしも皆そうではないと考えております。併しこれは警察としてはちよつと判定つきかねる問題である、できかねる問題である、かように考えております。  それからなお腐敗選挙という話がございますが、先ほどもちよつと、私申述べておいたのでありますが、今度の選挙で、地方はどうか存じませんが、都会におきましては、やはり青年層が非常に多いのと、新らしく選挙権を獲得したいわゆる青年層というものの中に、やはり公明選挙に対する一つの自覚というものがございまするが、従つてこの仮に候補者投票買収せんがために、或いは饗応せんがために運動資金を選挙ブローカーなり、選挙運動員に渡しましても、その金が直接選挙人の手許には行つていないのでありまして、大体においてその中間においてそれが消費されておるという事実は、選挙人そのものが投票買収には買収されない。要するにその中間において運動員の悪質なものがこれを懐ろにいたしまして、私腹を肥やしておるというような事実があるのであります。そういう点から言いますると、私は今次の選挙におきまして、選挙人全体としては決して腐敗していない。やはり或る程度公明選挙趣旨を十分に理解してもらつておるということが言えるのではないか、こう私考えております。
  22. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 このたびの選挙法改正したために、若しこれがもつと選挙制限が緩和されたら、もう少しこういうような事犯は起らなんだのではないかというような観測はありませんか。
  23. 田中榮一

    参考人田中榮一君) これは自治庁のほうでいろいろ府警の御意見を聞いて御改正になる御様子でございますが、ただ取締当局の実際の捜査、違反の事実を捜査している者の立場から申しますると、形式犯につきましては、文書宣伝のようなものは、合法的な、いわゆる文書宣伝のようなものは、いま少し緩和いたしまして、例えば演説会場の告示にいたしましても、非常に制限されているために、特に東京のような選挙民の非常に多いところは、こういつた繁華街におきましては、演説会場の告示をするためのビラすらなかなか発見できない。極く少数のビラのために演説会場の場所すらわからんというようなことで、むしろこうしたものは、もつと合法的な文書宣伝はいま少し緩和いたしまして、十分に選挙民演説会の場所であるとか、日時その他をはつきり理解さして、そうして候補者の持つ見解等を選挙民に十分に知らして、それによつて選挙をさせるというのが私はむしろ本当に公明選挙ではないかと考えております。それから又この自動車制限にいたしましても、殊に東京都内にあつては、非常に繁華街でございますので、若干、自動車等も非常に少いために、却つて逆に戸別訪問をやるとか、こそこそ隠密ないわゆる違反的な行動を起すというようなことになるのでありまして、要するに合法的な文書図画による候補者宣伝を、いま少し活発に行わせるようにしたほうが、一応公明選挙趣旨に副うのではないか、まあかように考えておる次第であります。  それから又先ほど自治庁側からも御意見がございましたが、いわゆる選挙運動の総括主宰者の行なつた犯罪について、但書があるために、候補者そのものに行かない。従つてそれをよく知つた候補者は、極めて巧妙に監督をしたとか、注意を怠らなかつたということを立証いたしまして、候補者自身の身には全然及ばない。総括主宰者が全責任を負つて候補者には及ばないというようなことになりまして、これ又公明選挙の非常に趣旨に反するのではないかと、かように考えております。
  24. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私遅れて参つたから、或いはお話があつたかと思うのでありますが、政府当局の警視総監の御報告は大体我々の手許に警視庁の名において渡されている文書の内容のものであつたかと推察いたしている。若し間違つておれば言つて頂きたいのですが、これをちよつと拝見いたしますと、共産党等の……まあ表面はもとよりそういうことは出しておりませんが、本質上はまあ一つの革命主義的政党として、合法的な行動を党是としては基本的には認めている政党だと思いますが、その共産党等の非合法主義に立つている政党の選挙違反行為が非常に多く挙げられている。この中の文字の大部分がむしろ共産党だけがやつたような、或いはそのほかにナチスを気取つているような政党もありますが、そういうことを党是として非合法主義の上に立つている政党の選挙違反行為の記述に文字が非常に多く費やされていると思うのでありますが、これは基本的には党是が非合法主義になつているのでありますから、戸別訪問にしろ、或いは朝鮮人をいろいろ利用する非合法行為をやるとか何とかいうこと、或いは又ポスターの文書宣伝等においても法律に違反しているということは、もう自分でよくわかりながらあえてそれをやつているというようなことは、勿論そういうことがあつたということも知る必要がありますが、これはそういう政党は多少我々が選挙違反のことを調べるときにおいて、まあ差別して考えて行く必要があると思うのですが、それでその選挙違反に関する記述並びにこれに附せられていろいろんな統計等において、共産党及びその他の基本的な非合法主義を党是としている政党と、そうでない政党と区別し、て我々に示して頂く必要があると思われるのですが、何かそのように分けて考えられ、又は差別をつけて等級をつけられたというようなものの資料があつたら私は出して頂きたいと思うのですが、共産党が或いは米国大使館に火炎びんを投げつけるとかいうことを、むしろあえてすることを当然のことであるとしているような政党の選挙違反行為というのは、多少我々は考慮するとき問題外として考えて行きたいと思うのですが、そういうように考えて出された資料というようなものが別に欲しいのですね。自由党とか改進党とか社会党というようなものがどんなことを主にやつたかという立場からのものを……。
  25. 田中榮一

    参考人田中榮一君) これは一応違反を調べて行きますと、大体所属党派がわかつておりますが、資料としては持つておりますが、まあ今回の今吉川委員からお話のございました形式違反の大部分というのは、それは共産党の違反が非常に多いのでありまして、これはもとより違反であることを覚悟の上で、違反であることを知つていながら、法の不備から来たのではないのでありまして、飽くまで選挙法規を無視し、そうして法的秩序に反してまで徹底的に党勢拡張を図ろうとする一つのいわゆる非合法的な党是から来ているものでございまして、現在でもこの形式違反の大部分というのは、やはり共産党から立つた候補者の中にこの違反が非常に多いのであります。その他の党別の数というものはこれは警視庁だけでは恐らく何ら役に立たんのじやないかと思います。これはやはり全国的な数字はあとからお含み願つたほうが非常に参考になるのじやないかと思います。警視庁だけでは殆んど問題にならないのじやないかと思います。
  26. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それで今のような観点からやはり選挙違反行為を政党別的に出した統計数字のようなものですね。警視庁にも又自治庁その他にも私は出してもらいたいのですが、そうでないとそれらがごつちやになつて行くと、我々の考察に正確なやつぱり結論を得るということは困難じやないかと思います。田中総監も言われたように、共産党その他の基本的に法律に触れるということはむしろ知つてつているものと、あえてむしろそれを進んでやつているものと私たちは考えているが、私は一緒になつて行くとちよつと結論を出すためには頭がぼけて来ると思いますのでへその資料一つ出して頂きたい。
  27. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 只今の要求書は手配してできるだけ早く取寄せます。では警視総監に対する質疑はこの程度にいたしまして他の三人の自治庁並びに法務省、国警当局に対する質疑がありましたらやつて頂きたいと思います。
  28. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 時間がないようですから、やつぱり国警は、たくさん聞かなければならんので、これをあとに廻して頂いて、法務省のほうの刑事局に伺いまするが、この資料では私は前回より今回は違反が多かつたというのですけれども、質的に違反が多くなつたのかどうかわからんのです。その人員だけ整理されておられて……私は人員はどうでもいいと思う、件数ですね、件数一つ表を頂いてこれと引き比べて見たいと思うのですが、ここにある基礎というのは人数でございますか、件数でございますか。
  29. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) これは全部人数でございます。
  30. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これもですね、件数一つ表を出して頂くようにお願いして頂きたいと思います。
  31. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 今お尋ねの件数と申しますのは、恐らく或る特定の候補者違反しました場合に、その系統のものを一件とお数えになる、こういうことでございましようか。
  32. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私の申上げているのは、一人の候補者でも買収容疑で五人挙つた、これが一件、その人間の文書違反が三人挙つたらそれも一件、こういうふうにして挙げて頂きたい。
  33. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 御趣旨よくわかるのでございまするが、法務省といたしましては、統計上は人数だけしかとつておりません関係上、件数の統計はちよつと。
  34. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 できないというなら止むを得ません、結構です。ただ私は人数が如何ほど挙げられたつて、内容が単純なものであれば私は問題にならんと思う。我々の側から考える場合には、そうでなくて、この買収なら買収というもので五千三百十九人挙げられたということでも、この行為を意思してやつたものがそのうち四千人もあつたらこれは重要なんで、これが二人、三人によつて何百人というものをただ動員してやつたということであれば、それはその限りにおいて考え方は別になる。そういう意味で私お尋ねしているわけなんで、できなければこれはどうも何ともしようがありませんから、そこでお尋ねいたしますが、前回よりは今回公明選挙を謳つていながら違反が多かつたということは、法務省のほうとしては違反の事実が多かつた、多くなつたという傾向に見るのか、ただ単に検挙人数が多くなつたというのにとどまるのか、この点見解を明らかにして頂きたい。
  35. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 実は先ほどもちよつと申上げましたように、捜査は中途でございまして、各現場の違反を総合しませんと何とも申上げかねるわけでございます。今お尋ねのように果して人数が多く出たからといつて一概には申せないわけでございます。ただ私ども見ておりまして、今度は非常に混戦と言いますか、乱戦と言いますか、そのよう関係からいろいろの方面で、又公明選挙ということで一般選挙人のかたがたの認識も高まつておるということの関係からか比較的検挙のしやすかつた面もございましようが、やはり実質的に見て前よりも違反が多くなつたのではないかと、こういうふうに見ております。
  36. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その違反の多くなつた原因はどういうところにあるのかお尋ねしたいわけですが、これはやつぱり十分な各地方の検察当局等の意向で総合判断しなくちやならんでしようが、まあ少くとも買収事犯なんというものは非常に多くなつたといわれるけれども、これはその原因は主としてどういうところにあるのか、候補者が多数出たということだけか、或いは追放解除の古強者が出て例によつて例のごとき行為を堂々とやることからこういう問題か大きくなつて来たのか、或いは選挙法において自由な選挙が極端に制限せられたところからこういう隠密な悪質な違反というものが多く出て来たのか、これらの点について検察当局がどういう御見解を持つておられるかお伺いしたい。
  37. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) たびたび申しますように、まだ中途でははつきりした結論は出ないわけでありますが、私の考えますのでは、今度は混戦、乱戦ということで、そういうことから若干無理をされるかたができたというふうなことが考えられるのじやないかと思います。或いは昔のタイプのかたがおられまして選挙というものは金でやるというふうなお考えを持たれるかたがあつたかも知れませんけれども、そういうふうなことは捜査上証拠を持つて申上げるということはできないわけでございます。  それから形式犯の問題につきましては、我々といたしましても形式犯に関する取締規定はいま少し緩和してもよくはないか、選挙運動なるものは本来言論なり何なりでおやりになるというのが建前でありまするからして、そういう方面の合法的なものの分野をいま少し拡げてもよくはないかというふうにも思われますが、併しながら我々の捜査の面から見まして形式犯はさほど多くは出ておらないのでございますからして、形式犯に対する取締規定が厳に過ぎたがために直ちに買収犯を行うように追込まれたというふうには一概に申せないと思います。
  38. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ついでにこういう席で聞いていいかどうかわからないのですが、私は知識を得るためにお伺いしますが、投票の秘密保持ですが、他人が、お前は何党に投票をしたかということを聞くことができるかできないか、又聞いたとして、それはできないものを聞いた場合には検審当局として取締法規は何によつてやるかということでございますが、事実はこういうことであります。この頃頻繁に行われる大会社等の入社試験において明らかに何党候補に投票したかしないかということを聞いている事実が二、三の大会社にあるのであります。こういうことが公然と行われるものか、法的にいけないという場合には、これは告発を待たなければできないのか、検察当局みずからこれを捜査し、或いは検挙することができるか、この点をお伺いしたい。
  39. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 公職選挙法の二百二十七条と二百二十八条でございます。
  40. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この二百二十七条、二百二十八条は、選挙事務に携わる者等においてのこれは違反事項でありますが、一般に憲法上から過去における自己投票の祕密を他人に強要せられて発表させられた、こういうふうな事実を取締法規があるのかないのかということです。
  41. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) この二百二十七条、二百二十八条の関係でちよつとだけ申上げておきます。只今質問の場合は、お前はどこの何の党派に投票したか、こういうふうに質問したといたしますれば、それが強要になる場合でありましても直ちにはこの二百二十七条、二百二十八条には触れて来ない。それは被選挙人が特定しておりませんから、被選挙人の氏名を表示したとか、或いは認知する方法を行なつたというのではないので、直ちにはこれは触れないということになると思います。  それからこれは御存じのことでございまするが、刑法の脅迫と申しますか、強要して義務なきことを行なわしめるということに、それまで行けば別でございますが、直ちに触れる条文は今私は考えつかないのでございます。
  42. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると入社試験で、お前は何党に投票したとか聞かれて、実は答えたくない、併し答えなければ合格、下合格に影響するから、それで心ならずもほんとのことを言う。それは合意の上自発的に言うたことであるから何ら取締られない、こういう結果になりますか。
  43. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 十分まだ研究いたしておりませんですが、選挙人の氏名が特定しない限り、それが脅迫罪に該当するという程度に至らなければ直ちに犯罪にならん、こういうふうに思います。
  44. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは検察当局に申上げることではありませんが、私常識的に問題だと思う。いつ如何なる場合でも、自分の投票をした候補者の氏名を、或いは政党を他の者に発表させられるというような結果になることは、これはいけないことだろうと考えられる。まあ併しこれも常識的な見解だけにとどまりますから、十分検討して又お尋ねしたい場合にはお尋ねしたいと思います。御調査願つておきたいと思います。
  45. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 お尋ねしますが、最近余り選挙違反が多かつたので、検察方針について、末端の検察庁に何か指令を出されたように聞いているんですが、そういうことありますか。
  46. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 法務省から直接に出したものはございません。ただ今度は相当多数の違反が出ましたしいたしますので、その処理を妥当に公平にやるために最高検のほうから或る程度通達を流し、それに基いて各庁の意見を聞いた上で統一ある処理をする、こういうふうな方針になつております。
  47. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それが、犬養大臣は何とか立太子礼に鑑みて、恩赦に該当するようにやりたいというので、あらゆる努力を試みられたが、それは不可能であつた。併しそういうことがわかつてから極めて最近に、極く悪質なものだけに限定するというような基礎方針ですか、というふうな形の変つた恩赦礼が実質的に行われるという、それははつきり大新聞にも、最高検の立場として極く悪質なものだけに限定すると、そういたしますと実際これが形を変えた実質上の恩赦礼が適用されるということになると思うのですが、一つ次の機会で結構ですから、最高検から出された検挙された処理の方針、それを一つ提出願いたいと思うわけです。
  48. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 恩赦に対する大臣の態度につきましては、我々末輩にはわかりません。ただ併し私どもはそういうふうな態度であられたとは考えておりません。それからもう一つの問題は、或る新聞に悪質な違反だけやるというように出されたのを見ましたですが、それは先ほど私が申上げました統一ある処理ということについての事柄が誤り伝えられたものと考えております。  それからなお最高検の通牒を直ちにここにお出しできるかどうか、捜査に関しますので帰りまして、申上げたいと思います。
  49. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで関連しますが、東京の地検とか或いは田舎のほうの地検とかで検挙人数或いは検挙件数が多い少いがある。そうすると少い所では例えば形式犯のようなものでもこれを取上げてやる。多い所ではとても手が廻らないから途中でもうやめてしまう。こういうふうな統一を欠くというようなことで、全国的に見ると統一を欠く。その地検管内で見れば、それは国民として比較対照するものはないからああそうかと思つて見る。こういうような傾向が現われないことが重要だろうと思う。それで今おつしやつた統一的な処理ということは、戸別訪問なら戸別訪問でも、この程度の類型のもの以上のものでやる、或いは文書違反でも、この程度以上のところでやるというふうに、はつきりした方針を以て全国的に横断的に、同程度のスケールのもので、落ちたり起訴されたりする、そういうことのないようには十分考慮しておるわけでございますか。
  50. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 今ちよつと申し落したことがございますが、統一ある処理という問題につきましては、法務省としても最高検としても、あらかじめ現場に対しまして、これはまあ選挙というのは長年に亘ることでありますからして、方針というものは徹底しておるわけであります。従つて悪質な、誰が見ても問題がないという違反はこれはもうどんどん処理いたすわけであります。ただこういうふうに多く出て参りますと、只今質問のようにいろいろの統一を図るべき、殊に境目の事件というものがあるわけであります。そういうものについて統一したいというのが建前でございます。
  51. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  52. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) 速記を始めて。
  53. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 国警側にお尋ねしますが、私たちも候補者が二度やつた経験があるのですが、よく選挙が始まると選挙取締という言葉を聞き、或いは今までの答弁のかたがたでも、文書宣伝取締を緩和する、こういうような表現で言われるのです。私は非常にこの言葉は、個人的であるかも知らんけれども、気にくわない。取締つて選挙をやられるというふうなことは、全く自由な、主権在民の立場にあるこの選挙権を行使する機会にふさわしくない言葉だというふうに思つておるのです。で、警察当局としては、いわゆる俗な言葉で言う取締の側でございましようが、歳末の犯罪取締なり何なりという取締と同様に取締るという形でなければ、選挙公明に行われないという行き方は、基本的に私らとしては反対なわけですが、それで国警側としても、一般犯罪の取締というようなことは、やはりこの基本的な態度と申しますか、角度と申しますか、選挙という意義に鑑みた一つ方針が、同じ犯罪、選挙における犯罪における予防でも、或いは摘発の方針においても、あるだろうと思うのです。先ずそういう基本的な国警側の今回の選挙に当つての心がまえはどういうところにあつたのか、お伺しておきたい。
  54. 谷口寛

    説明員谷口寛君) お答えいたします。最初に、これは別に御説明をする要がないことでありますが、取締という用語につきましては、これはお言葉の中にもありましたように、我々が慣用語的に使つておる言葉でございまして、あえて法律的にいうならば、公職選挙法施行に関連した違反事実を取締る、こういうことに相成ろうかと思うのでありますが、その問題は、そういう慣用語を使つておるに過ぎませんので、特段深い意味は持つていないのでございます。選挙運動の今申上げた意味の取締に関連して、一般犯罪の取締とやや異にした基本的な態度、方針があるべきじやないかという御意見であつたと思うのでありまするが、我々同感でございまして、選挙に関連いたしましては、おのずから一般犯罪の取締と基本方針相当異なつて参るべきものと考えておるのでございます。今回の選挙に関連いたしましても、一応全国に関連を持ちまする国警取締といたしまして、今回の選挙に臨む基本的な態度を示しておるのでございます。その点は、先ず選挙公明に且つ闊達に行われるということが大事でありまするから、徒らに取締面の重圧が加わつたような印象で公明な闊達な選挙が阻害せられるということになれば、これは公明選挙趣旨、又総選挙趣旨を没却いたしまするので、飽くまで正しい選挙が闊達に行われるということを肚において、而もその中で公明さを害する公職選挙法違反の事実がある場合には、これに対しては法の命ずるところによつて取締つて行くという気持を先ず第一に掲げておるのであります。  それから違反の事実がありまするならば、これは警察の職分といたしまして、当然に取締をなす義務があるわけでありまするが、その場合におきましても、選挙の性質、又選挙法の非常に広範囲な取締規定関係上、悪質重大なる犯罪に取締の重点を置いて行く。形式違反につきましては、勿論これを看過するわけではありませんけれども形式違反のものにつきましては、一応本来警告をなす権能を持つておられる選挙管理委員会の線に連絡をいたしまして、でき得る限り事前の警告措置を講ずる。警告をいたしましてもなお且つその違反事実が改まらないというような場合に、初めてこれを検挙する。重点は、飽くまで悪質重大なる犯罪を中心に施行する、こういう点を基本方針の第二のポイントにいたしておるのであります。  それから第三点といたしましては、不幸にして取締の対象に入つた関係者がありまする場合においても、選挙関係におきましては、関係者が普通の事案と異なりまして社会的に相当な地位を有せられ、或いは身分も持つておられる場合が多いのであります。人権尊重の観点から一般犯罪の取締についても、人権を尊重すべきことは論を待たないのでありまするが、それに加うるに、選挙犯罪の態様と、その進行の如何によりましては、相当社会的な地位、或いは名誉の高い人が関係を持つ場合もあり得るわけでありまするから、一般人権尊重の建前に加うるに、今申上げたような考慮を加えまして、特に取扱については慎重を期して行くということを基本方針の第三として考えておるのであります。  それから第四の点といたしましては、先ほども少し議論があつたと思いまするが、今申上げたような意味で取締をなして行きまするについて、でき得る限り地域的な調整を図つて行く。これは御承知のような現在の警察法或いは警察制度の建前いろいろと法律的の困難、事実的な困難等もございまするが、これをでき得るだけ事実上の運用において調整をいたしまして、地域的な不調整の起る以前に努力をして行く。それからそれと関連をいたしまするが、自治警、国警、これは一応制度的には別々のものでありまするが、この間の調整についても、できる限り各警察の主体性を尊重しながらも、その間の運用について不調整の起りませんように努力をするというような点、まあこまごま申せばいろいろございまするが、そういう基本的な気持を中心にして、必要な都度それに基く細目の指示連絡をして参つたというのが今日までの現況でございます。以上甚だ簡単でございますが…。
  55. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういう慎重な態度なら、国警本部の考慮というものが下級警察官まで徹底されて、一般的に言うなら、そういう傾向に実際上の処理ができた、成果が挙つたというふうにお考えになつておられますか。と同時に、日常そういう違反の容疑の出た場合には、国警本部とはどういう連絡になつて処理されたものか、簡単でようございますから、手続のことまで触れてお話頂きたい。
  56. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 今御答弁申上げました基本方針によつて全国都道府県の隊長以下末端の職員に至るまでおおむねこの線を堅持して、取締といたしましては比較的良好な結果を得たものと我々は信じておるのであります。ただ個々のいろいろな事例につきまして、内部の反省をいたしました場合に、この方針がどの場合にも、どの事件にも、どの末端にも一〇〇%徹底したかというような意味で御質問があつたといたしまするならば、これは率直に申上げて、必ずしもそうでない事案もあると考えておるのであります。そういう問題につきましては、内部の反省資料にいたしまして、今後の運営につき十二分に配意をいたしたいと、かように素直に反省すべきものは反省いたしたいと考えておるのであります。  で、手続上の問題でありまするが、細かい点は省略いたさして頂きまして、大きな手続を申上げますと、この基本方針で各隊長が管内の特定区域を統轄いたして指導をいたし、更にその各都道府県の隊長の運営管理をなすものとして、御承知のような都道府県の公安委員会が存するわけでございまするから、この基本方針、これも先ほどちよつと触れましたように純粋に法律的に申すならば、具体的方針国警が権限を以て示し得るかどうかということについても一応の議論はあるのでございまするが、これを示してそれを自己の責任の管理権の参考に取入れて、そうして各都道府県が動いて行くというものの考え方でまあ進んでおるわけでありまするが、そういう気持でありまするから、この基本方針を示しました以上は、個々の事案の現実の取締の進行に関連いたしましては、その都度の詳細たる連絡と指揮との関係は本部との間においてありません。一応一定の時期に件数或いは人員或いは罪種別の整理、そういうようなものを報告してもらうととと、それからいろいろなこれは場合があると思いますが、特異な事件、注目すべき事件、その他広い意誓いろいろ本部まで連絡をすることが当該隊長として常識的であると考えられるようなものについては個々の連絡があると、かような大筋の建前になつているのであります。
  57. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは同僚のその地方の議員から聞いたことで真偽のほどは明らかでありませんが、或る南のほうの管区管内では現行犯主義で検挙するということで、張込み、尾行、これ専門で選挙取締が行われたというようなことを聞いたのですが、そういう事実はございませんか。
  58. 谷口寛

    説明員谷口寛君) お答え申上げます。この御質問一般的な御質問でございまするので一般的にお答えさして頂きたいと思いまするが、現行犯主義で取締をやつたという、その意味合いもいろいろあろうかと考えまするが、結局現在の法制並びに制度の上において証を得て人を取締つて行くというこの基本的な線から申しまして、はつきりしたものをはつきりやる、こういう線が堅持せられなければならないことは、これはもう申すまでもないのであります。その考え方の一つの現れというようなものが、結果において現行犯主義というものの表現になつて言われる向きが出て来たのではないかと、私はそのお言葉から想像をいたすのであります。ただ警察取締でありまするが故に、犯罪の広い容疑がないと、或いはそういう所へ警察が姿を現わすことが防犯並びに犯罪の捜査をなすについて瀞識的に必要でないというような所まで出しやばつた意味の現行犯主義はなかつたろうと、かように想像をいたしておるのであります。甚だ御質問には遠いかもわかりませんが……。
  59. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは個々の事実を幾つか我々としては資料を持つてつておるけれども、それは特異な例であつて一般的なものではないということは私も十分わかるのでこれ以上この問題はお話ししませんが、ただ若しも一般的な問題にたるような場合には、公明な自由な選挙活動が行えない、萎縮するという問題にも関連して来ると思いますので、まあ地方を調査して見てはつきりしたものが出たら又お尋ねすることにいたします。時間がもうないのであと二、三点簡単にお答え願いたいのですが、事前運動取締ということですが、その事前運動というものは、国警としては、検察当局と解釈はどういうふうに統一されておやりになつたのか。又その定義はきまつた、併し今次選挙にはどういうふうに適用して行く、どこの線でとどめるというような或る目安があつたろうと思うのです。その点をお伺いしたいことと、それから運動員というもの、これは我々法を作つていながらどうも定義がはつきりしない。新聞社なり或いは警察の発表する運動員というものは、我々立法府におる者は運動員だとは思つていないようなのがあるわけです。即ち厳密に言えば運動員とは腕章をつけた者だけが運動員、併しその腕章をつけた者だけが、トラツクに乗つた者だけが運動員で選挙が行われているわけはない。で、候補者と意思を通じて全県下を駈けめぐつてそれぞれ選挙事務に携つている者があるわけです。と共に候補者と意思を通じない第三者の運動もあるわけなんです。ところが検挙された件数なり或いは人数別に統計をとるというと、或いは新聞記事の発表になるというと、何々候補或いは何々派の選挙違反、それで何々候補の運動員の選挙違反というようなことを言われるのですが、これは公明選挙をやろうとする候補者にとつては迷惑な場合もあろうし、或いは本当のところを突かれてしまつたという結果にもなるでありましようが、取締当局としては、運動員などというものはどういうふうにお考えになつて、どういう範囲の者を指しておられたのか、これ又伺つておきたい。
  60. 谷口寛

    説明員谷口寛君) いろいろと専門的な内容の御質問に相成りましたので、私の承知する限り御説明申上げますが、更に細かい点で落ちがございましたら刑事部長もおりますから……。
  61. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 いや、もう簡単でいい。
  62. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 先ず最初の、事前運動でありますが、これは常識的に、選挙運動が法律的に許されている期間の前になした一切の選挙に関連する運動事前運動、こういうふうに総称せられておるわけでありまして、選挙の告示後は選挙運動が合法的にできるが、それまでは法律的にはできない、こういう建前に一応なつておるのであります。ただその事前運動なりや否やということは、具体的な選挙目標がきまるといいまするか、或いは具体的に今度の選挙というようなことがはつきりいたして来ました場合に、初めてそのもろもろの活動と、当該の選挙との結びつきがはつきりいたして参りまして、そこでそれは事前運動という、法律の上において許されない事案に相成る、こういう関係になりまするので、事前運動らしきものは相当ありまするけれども、実際上それを相当選挙の告示の前に遡つて取締をいたすということに相成りまするならば、遡れば遡るほど運動らしき形はありまするけれども、それが具体的な選挙と結付いた現われの運動であるかどうかということの立証が非常に困難に相成つて来るのであります。従いまして、事前運動につきましても、自然具体的な選挙相当政治的にはつきりして参る、或いは法律的に告示その他の手続を経てはつきりするということから、遡つた相当期間の活動が取締の対象になつて来る、こういうことに相成ろうかと思うのであります。今回の具体的な問題といたしましては、特に先ほど来いろいろお話がございましたように、講和の発効に伴いまする大赦等の問題もございまして、現実の問題といたしましては、四月二十八日以前の事前運動につきましては、仮にそれが今申上げましたような点を全部立証し得る状態のものといたしましても問題に相成りませんので、四月二十八日以後今申上げましたような関係が明瞭に立証せられるものを事前運動として取締つておる、かような関係でございまして、この点は法務府とも十分緊密に連絡してやつておるのでございます。  それから第二点の運動員の問題でございますが、これは今回の改正せられました選挙法では、昔ありましたような、運動員の届出制度というものがとられておりませんので、今御質疑になりましたような食い違いが出て参ると、かように考えておるのであります。我々といたしましては、候補者のために運動した者、これを総称して運動員と考えておるという以外に御説明のしようがないような法律上の性格でございまして、ただそれを新聞紙上でいろいろと広い範囲や狭い範囲や、いろいろの取り上げ方で運動員と言うという場合が事実上ありますことは、御指摘の通りでございますが、選挙法上の建前といたしましては、単に候補者のために運動した者を総称するというように考えておるのであります。
  63. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 次に刑事局のほうから出された資料、或いは国警から出された資料で見て、刑事局のほうで起訴、不起訴のきまらん未済人員というのが相当あるのですから、確定的のことは言えないと思うのですが、これはもう立証できると、公訴を維持することができるというふうに考えられて出た人数と、その受理しておる人数とでは余りに開きが多過ぎるのです、常識的に言つて。だんだん尻のほうに行くというと、実際有罪判決まで持つて行ける人数は少くなつて来るにもかかわらず、国警側のほうで容疑ありとして捜査する場合には、選挙違反に関しては余りに逮捕状が濫発されているのじやないかという、これはもう専門的なことは抜きにしますよ、常識的にですね、非常に逮捕状というものが軽軽しく出て自由を拘束するというきらいがあるのではないか。はつきりしためどを持つて、こういう点が行われたかどうかということを選挙のたびに私たち疑問を持つ。例えば概して戸別訪問というような形式犯ですが、これらについても悪質であるかどうかは私はわかりませんけれども、逮捕状を以てばつさりとやる。そうしてもう次々と聴取を取れば、これを発展させて、又そこで取調べた結果、戸別訪問の容疑で逮捕状が出ておるのに、取調はそうでない。金銭のほうの問題になつたり、その他のことに発展させて行つて、次に検挙せられる逮捕状は別な名前で、別なへ間が逮捕せられておる。そうしてそれが取調べられるときの材料としては、戸別訪問で呼ばれた人間の材料で、この通りの事実があるのじやないかと、こう出て、そうして発展させて行く傾向があつたように私らには見える。これは我が党に関する関係ばかりでなく、全国的に歩いて見て、他の党派についてもあるように思われる。確かに逮捕状を請求しなければ本当に泥を吐かない。任意出頭ぐらいではちやらんぽらんになる。放しておくと口を揃えて、問題の焦点を消してしまわれる。いろいろ理由はあつて逮捕状を出しておられるのかも知れんが、一般に濫発の傾向があるのではないかという批判が我々にあるのですが、国警側としてはこういうものは、逮捕状の請求等については基本的にどういう考え方を持たれておつたのかという点をお伺いしたい。
  64. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 逮捕状の請求につきましては、十分に逮捕状を請求する疏明資料を持つ場合に初めてやる。あいまいな状態ですぐ逮捕状をもらうというようなことのないように、かねがねこの選挙取調だけではなしに、一般の犯罪の捜査に関連しても、かねがねそういう方針地方指導に当つておるのであります。それは今御意見の中にもございましたように逮捕をする、取調をする、その結果が何も出ない、或いは若干出ましたといたしまして、検察庁へ送つた結果が起訴せられない、進んで検察庁では起訴せられたけれども、最終の公判維持が非常に困難になつて来る、かようなことに相成りまするならば、元へ戻つて警察の逮捕状の請求の基礎になつた客観的な犯罪事実の容疑の検討が不十分である、かようなことに相成りまするわけでありまするから、ふだんからその点につきましては逮捕状の請求をなすについては、絶えず、警察は検挙をする職能ではありまするが、その検挙をするための逮捕状の請求をなすためには絶えず、先ず起訴されるかどうか、それから起訴されてから公訴の維持が可能であるかどうかという点を十分に念頭に入れた上で慎重な逮捕状の請求をしてもらいたいということを指導いたしておるのであります。今回の選挙取締の場合におきましても、選挙犯罪に関連して逮捕状を請求いたす場合におきましては、事実上の問題として、制度上検察庁を通じなければ逮捕状は請求できないというものではございませんが、事実上の問題といたしましては、警察関係の検察庁とつまり検事側と十分に相談の上で判事に逮捕令状をもらつておるというのが大体、大体と言いますよりも、行き方でございまして、その行き方を以て地方が逮捕状の請求を実施いたしておるもの、かように私は考えております。
  65. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連してお尋ねしますが、地方における形式犯で小部分のものと思われるものでも逮捕状が出ておる。然るに岡崎外務大臣のごとく、明らかに事務所開きということで、厖大な金銭を支出して飲食を共にしておる。これは飲食を共にしている事実だけでも天下公明の事実なんだ。これが逮捕状が出ない。そうして隠密裡にその者の意思によつて自由に選択せられたような場所に合意の上で呼んで、一応の調査をする、その程度にとどまる。こういうことは一般から言つて非常に奇異の感を抱かせられる。法の適用公職の地位の上下、或いは社会的な地位のあるなしによつてそういう適用の方法が変るというようなことであつては、これはあに選挙取締のみならず、問題が残ろうかと思うのであります。こういう点について明らかに国警側としては合理的な弁明が……弁明というのは合理的でないようですから取消しますが、合理的に答弁できるかどうか。答弁できるかどうかをお聞きするのもおかしいですが、もつと率直にお尋ねしたいのです。この点を、なぜ私こういうことをつつけんどんな聞き方をしておるかというと、一般選挙取締というようなことは、地方或いは一般主権在民者であるはずの国民でさえも明朗闊達に警察当局にものを伺うということができない状態にある。だからこういう国会を通して聞きたいと思う点を聞き、言いたいと思う点を国警側にも十分言うてもらつて、そうしてこれが一般に知らせらるるということでそれぞれが納得されて、選挙取締の実も挙がるということであればいいと思うので、あえてこういうことを聞いておる。私国会議員である立場でなくて、一国民としても誠に奇怪至極ですから、この点は十分念を入れて御答弁を願いたいと思う。
  66. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 逮捕状の執行に関連いたしまして、非常に不均衡な結果が現われている、疑つてかかればやり方が、或いは社会的地位、或いは高位高官の人というような場合と一般の人々の場合に、逕庭があるというようにも見られるのじやないかというような御趣旨の御質問であつたと思うのであります。全くそのような事実が歴然としてありまするならば、お説の通りでありまして、我々といたしましては、いやしくも警察津反の事実を注視したらいいのであつて違反の事実と、それによつて取締る相手方の広い意味の人権を尊重するということは、すべてに共通して考えられなければならない。その点が社会的地位、或いは高位高官というようなことで差別をすべきものじやないと考えておりまするが故に、現実にさようなことがありまするならば、全くお説の通りと考えるのであります。併しながら例に挙げられましたような問題につきましては、両者の開きを常識的に取上げることそれ自身も、いろいろと検討の余地はあるかと、これは率直に私考えておるのであります。と申しますのは、先ほど逮捕状の出し方の問題についての御質問がありましたので、慎重に逮捕状を出す以上は、起訴もせられ、公訴も維持せられるといテことを念頭において、慎重に検察庁とも連絡してやるという答弁だけを申しまして、それじやそういう条件さへ備えれば、無条件に逮捕状を濫発するのかという点の御答弁を十分に申上げなくて甚だ申訳なかつたわけでありますが、そういう逮捕状を出すということを決意をする場合には、そういうことを慎重に考えてやるわけでありまするが、然らばそういう条件が揃つたらいつでも出すかということになりますと、これは必ずしもいつでも出すというように考えてはいないのであります。即ち逮捕状によりましてやることが必要であると考えられる場合で、なお且つ今申上げたような条件が充たされるという場合には、逮捕状を請求するという考え方であります。然らば逮捕状を執行しなければならない必要があるかどうかという点の判断といたしましては、先ず第一に、その被疑者或いは犯罪の関係を持つた人が、逃亡するとかというような虞れが多分にある、或いは逮捕状を執行しなければ証拠を湮滅せられる虞れがあるというような場合に、且つそれが起訴も可能であり、公訴の維持も可能であるというような条件を備えて初めて逮捕状を請求して執行いたしておるのでありまして、逮捕状を執行しなくても、別に犯人がむやみに逃亡してしまう虞れはない、証拠湮滅の虞れがないというような関係のものにつきましては、でき得る限り任意出頭その他便宜な取調方法を以て措置をつけているという考え方でやつておりまするので、そのような点の動きを個々具体的に当てはめて見ました場合の開きが、いろいろと常識的に疑問になつて来るのじやないかと、私はさように考えておるわけであります。
  67. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 岡崎さんはどうです。
  68. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は今の答弁としてはそれでいいと思うのです。私も十分了解します。一般的にそうでなくちやならんと思います。ただ岡崎外務大臣の場合はそれならばどうかという問題になるわけであります。今の御答弁から発展させて、それならば国警として今言つた一般的な傾向に岡崎外務大臣の場合は当てはまらないから、従つて逮捕状は出ないのだという結論になるだろうと思う。そうしますとそこから我々として答弁を求めずしてわかることは、岡崎外務大臣には起訴すべき要件は今のところない、従つて逮捕までして取調べるような事実は認められない、こういうことになつて来るのじやないかと思うのです。そうであるならば、これは取調中であるとか何とかいうことではいかんのであつて、事高位高官、国政に関与するかたの問題でありますから、我々としては、反対党であるといえども、身辺を清くせしめるがためにも国警側として、明らかに岡崎外務大臣にはそういう容疑はないということを明瞭にすべきだと思う。その点ここで御答弁を願いたい。
  69. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 具体問題に関連いたしますので甚だ答弁が申上げにくいのでございまして、その点御了承頂きたいと思いますが、なお私の今申上げました点に若干不十分な点がありましたので、(「又つけたしかね」と呼ぶ者あり)もう一つ、あなたの御質問で率直に私が不十分だと、それは不十分といつて別に前のが矛盾しているという意味ではございませんが、私の申上げました逮捕状を出す場合には、警察として起訴されるかどうか、公訴が維持されるかどうかということを念頭において十分慎重に逮捕状を請求するということを先ほど申上げました。それと今御質問のを結付けますと、逮捕状を然らば請求すれば必ず起訴される、必ず公訴が維持されて有罪になる、こういうふうにひよつととられるような意味の私の答弁でありましたならば、これは不十分でございましたから、その点を附加えたいと思いますので、それは我々が逮捕状を請求する場合にはさように慎重にやるという気持でございまして、それを更に起訴するかどうかということは検察庁の独自の権限でございまして、更に公訴を維持して有罪にするかどうかということは独立の裁判所の仕事でございますので、この点まで拘束した意味を逮捕状がそれ自身持つているという意味ではございません。その点だけ附加えさせて頂きまして、具体的な岡崎さんの問題につきましては、その附加えての関連において、私からはつきり具体的にその点が全然将来に亘つて疑問がないものであるとか、或いは大いに疑問があるとかいうことを今申上げる段階ではないということを申上げまして……。
  70. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は先ほどのあなたの答弁をお伺いすると、只今の御答弁の前段の通りの御答弁である場合に逮捕状が出る、その場合でもなお且つ逮捕状を出さないで取調べる方法もある。即ち証拠の湮滅とか或いは逃亡とか行われないということであれば必要がないということで、それで容疑があるが、そういうような方法で取調べ得るというものに該当して岡崎外務大臣が任意な形で取調べられるということであるならば、これはああいう人こそ、放しておけば証拠は瞬く間に湮滅されはしないかどうか、常識的に我々は考える。で、ああいう人であればあるほど、臭いものならば、抜本的に法の命ずるところに従つて取調べる方法があるのではないか、我々自身の友人関係なり、私本人でも前回の参議院議員選挙等で、たつた百三十五人の昼飯を田舎の茶屋で味噌汁を頼んだものとして十七人瞬く間に検挙されておる。逮捕状によつて取調べられた。而も拘留期間も最大に亘つてやられた。そういう具体的な各種の例からみるとどうも不均衡という気持があるし、国民の一部にもやはりあの人はえらい人であるから引張られない。或いはこれはこういう席で言えないことかも知れないですが、前田代議士等は健康の理由を以て逮捕状を執行しないで、病院に入つた。治つたとなると危いので治らんで(笑声)入つておるのだと、こういうようなことがデマでも何でも国民の一部に公然と言われる、そうして違つたものだなあと、こういうような空気をかもし出すというようなことは私はいけないことではないだろうか、率直にそう感じましたのでお尋ねをしたのですが、まだ右とも左とも決着のでき得る段階ではないということでは、結局容疑もあるようであるが、それが飽くまでも立証できるものであるかどうか自信のほどがまだはつきりしないというあいまい模糊たる中にあるのだというふうに私は聞き取つて、明らかになつた場合には、如何なる点が明らかになつて、この者は送検されない、或いは送検されたというようなことを、国警の権限内にあることだけは、今後明確になつた時期に、これはお尋ねしたほうが、あなたのほうもその場合にはつきりと意思を御表明になるほうが、私を初め国民を納得させる途だと思う。この点はそれだけで留保しておきます。  それから最後に、先ほどの御説明では、十月の三十日頃を一応の、最終的とは申さないようでしたが、めどとして国警として処理を完了して行くような努力をしたようにお聞きしましたが、それはそのことは今後新たなる事実によつて新たなる捜査活動をやつてでも、飽くまでも選挙違反のものは持続的に追及して行くということとは無関係であるか、飽くまでも今後事実が現われたらやつて行くというのか、まずまず過去のものを一応早く整理して、ひとまず今まで挙つたものについて決着をつけて行きたいという話だつたのかお尋ねしておきたい。
  71. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 選挙違反取締のおおむねの目標として十月一ぱいを最終の目標にいたしておること、但し事案によりましてはそれよりもあとになる場合もあるというように申上げましたのは、今の御質問の前段のような気持で申上げておるのであります。御質問と関連いたしまして、詳細に申上げまするならば、一応今までの選挙違反の締くくりを十月一ぱいをめどにして固めて行きたいと、将来新しき新事実が現われました場合において、これをしも選挙に関連するという意味において打切るという意味では毛頭ございません。その点はさような意味でございまするから御了承願います。
  72. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういう意味で今日、最近に報告を受けているものでは、十月三十日以降まで発展して検挙されているような人員或いは件数等がありましたらちよつとお答え願つておきたい。どういう地域にあるのか……。
  73. 中川董治

    説明員(中川董治君) 各府県からの報告は、大体十日頃とか三十日末日というように区切つてつておりますので、三十一日現在では、報告を取りまして本日お手許にこれを提出いたしましたが、その後のケース等は大体或る一カ月ごと又はニカ月ごとにまとまりましたときにわかるのでございますが、その他の三十日以後のケースについては報告を取つておりませんので、報告を取る段階になりましたらまとまるのでございます。
  74. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この際非常に日米両国のためにも問題になると思うのですが、このたびの組閣についてもマーフイー工作ということが至る所で言われていますし、この総選挙に対しても相当金が出たということが出ている。私先般埼玉と茨城に演説に行きまして、そういう地方でもやはりマーフイーさんから随分金が出たんだそうですねと田舎の人でも言うぐらい、そうして我らの聞いたのでは、某党の二百三十名、某党の百六十七名、某党の四十六名というようなものは、再軍備促進の立場をとつて好ましき人物だ、だからあらゆる物心両方面から援助するというようなことが、これは共産党の二ユースなら又反米闘争からしても当然ですが、市販の一流の多数の読者を持づて信頼されている評論雑誌すらたくさん出ているわけです。国警のほうでそういうニユースについて情報を得られておりますか。又そういうことが若しあるとすれば、最大な選挙違反だと思うし、又行政協定の第十何条ですか、内政については干渉しないというような点で、国警の権威を高められる上にも、法の前には平等でなくちやならんし、そういうことについて情報を集められ、或いは情報を得られたことがありますか、そういうことについてちよつとお伺いします。
  75. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 今回の選挙取締期間を通じまして、現在までの取締捜査の段階におきましては、今中田議員のお示しになりましたような情報は国警として入手いたしておりません。
  76. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは一つ是非御調査願いたい。例えば最近「この自由党」という、板垣進助という、これはまあ私名前は知つておる某大新聞社の匿名の人の書いたもの、そういうものを見られてもはつきり出ておるし、その他多数の評論雑誌にもこれが出て、非常に好ましくない傾向があるので、そういうことについて国警ではいろいろ情報が入つておると思うので、一つ今度の機会にはもう少しこれについて、私の得ておるいろいろな文献も持つて来て一つ質問いたしたいと思いますから一つお願いしたい。  もう一つ、九月の二十日前後に各県にある国警隊長のほうに捜査方針について情報を流されたようなことはございませんか。と言いますのは、私この記事も切抜いておるのですが、九月二十日頃にもう犯罪の、選挙の偉反の捜査は大体この辺で打切つて、これまでの捜査線上に浮んだ者の処理にとどめるのだというようなことを、どこか本部かどこかで会合があつて、帰つて来て責任のある国警の人が記者団会見をやつて、それが非常に、御存じのように選挙でありましたら十日、実際金を打つのでしたら最も効果的なものは終盤戦において打つ、続々違反が挙りかけておるようなときに、国警の人がどこか広島、私中国ですが、或いは東京においでになつたかも知れんし、帰つての記者団会見で、大体もうこの辺で捜査は、捜査線上に浮んだ者だけにして、まあ今後はというような、甚だ捜査が政治的なような、非常に悪い印象を受けて、警察はこのたびはかなり公正にやられたようですが、どうもやはり時の内閣の圧力でも加わつたのじやないかというようなことを、どこの新聞社も言つて、これはおかしいというようなことを言つておりましたが、二十日前後に捜査方針についてサゼツシヨンを与えましたか、その点……。
  77. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 今の点は、そういうふうに地方の報道機関等に報道せられた向きがあつて、若し今中田議員のおつしやいましたような意味の誤解が出ておるといたしますれば、これは非常に由々しき誤解だと私は実は考えるのでございます。それに似たようなことがないかという意味で御質問がら反省をしてみますと、そういうふうな、本質的にはちつとも似ていないのでありますが、それに関連のあるようなことを相談をいたしたことはあるのであります。それが恐らく非常に誤解をされて伝わつておると思います。と申しまするのは、今回の選挙については、先ほど来縷々申上げまするように、厳正公平な取締をやり且つ歴然たる犯罪があれば直ちにこれを取締つて行くという態勢で進んで来ておるのでありまするが、それと選挙の自由公明或いは闊達さを確保するという点から考え併せまして、いわゆるはつきりしたものはいつでもやるということを、巷間、事前検挙取締というようなことを言つておられる向きもあるようでありまするが、そういう事前でも取締ると言つても、選挙の当日であるとか或いは前日であるとかというような、常識的に考えて選挙直前になつて急に引つ張るというようなことは、これは控えたらよかろうじやないか。十分に視察内偵を行なつて証拠保全をやるならば、そういう点までぎりぎりに当日引つ張る、前日引つ張るということまでやらんでも十分に効果は挙り得るじやないかという意味で、そこは常識的にやりなさいよという打合せ、相談をしたことがあるわけであります。それが御指摘の二十日前後であつたかと記憶いたしておりまするが、そういうことが今のように誤解をされて伝わつたのではないかと思います。選挙の最終と申しますか、一応の最終である十月三十一日現在の、お示ししました統計表によりましても、その後の検挙数が続々と現われております。このことがいいという意味じやございませんが、数字の上でもそういうことがなかつたということを現しておりまするので、その点は繰返し、非常な誤解と考えまするので、どうぞ一つよろしく。
  78. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう一点、私選挙の責任者で、私のは一つ違反もなし最高点で出ましたが、これは反対党の人なんですが、容疑者を逮捕したりして、そうして捜査中に毎日、国警にしても自治警でも検察庁でも記者団会見をやつて、そしてなかなかまだこれはどうなるかという…非常に名誉に関しますから、そういうことに関するようなことを非常にどんどん発表いたしますが、ああいうことはどうなんですか。あれは非常に私はまだ傍証も固まらないで逮捕してしまう、尋問やつたらその夕方はもうどんどん国警や自治体警察、検察庁でも発表して、私はそういう記事を全部切抜いて持つているのですが、ああいうことは非常にその人の社会的な地位と言いますか、非常に問題だと思うのですが、もつとこのような人に対して本基本的な人権を尊重すると言いますか、そういう捜査方針がとられていいじやないかと思うのですが、どうなんですか、その点。
  79. 谷口寛

    説明員谷口寛君) 今の新聞紙上に選挙期間中に相当具体的な捜査取調の段階が現われておるというその事実につきましては私も率直にこれを認めます。ただこの点は先ほど来の話にも出ましたように、取調を受けるかたがたの広い意味の人権尊重、名誉の保持の観点から申しまして、いやしくも捜査取調の段階にある関係の人々についての内容を具体的に警察当局が責任を以て発表するという方針乃至は事実はないと考えております。我々もそういうことのないように地方に示達をいたしておるのであります。各言論機関の取材活動に関連いたしまして、相当事実上の問題がわかつて来る、或いはいろいろな御質問があつた場合にそれに関連して地方警察関係の責任者乃至は中間責任者が今までの事案の取調の件数を言う、或いは大きな犯罪の傾向を言う、こういうことは当然あり得たと思いまするし、又あつてもいいと考えておるのでありまするが、具体的なものを警察が責任を以て発表する、つまり発表記事であるというようなものはないと確信いたしております。
  80. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それは私なんかが、又そうでない……明後日あの候補者の出納責任者が逮捕になるんですつてというようなことが殆んど的中するぐらいよく出ていますし、とても記者の人が優れた六感を持つても、もう脚でどんなに稼いでも得られない、やつぱり捜査過程のことがどんどんスポークされておるが、これは特に私は検察庁関係でも言いたいと思つたのですが、一つこれは容疑者であつても、名誉保持というそういう点からこれはよほど考えていいのじやないかと思うのです。今度の機会に一々たくさんの記事を切抜いておりますから持つて来て質問いたします。
  81. 油井賢太郎

    委員長油井賢太郎君) それではこの程度で散会いたします。    午後一時四十四分散会