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政府委員(河野通一君) お尋ねの点は、従来から非常に問題にな
つております貸金
業者、或いはそれに準ずるような金融法規との
関係においているいる問題のある業態についての問題であります。大体大きく分けますと、金融法規との
関係で問題になりますのは、先ず第一に、典型的な貸金
業者、これはまあ貸金業の
取締に関する法規で
取締られているわけであります。その貸金
業者の中に株主相互金融という
一つの形態があります。それからこれは貸金
業者でないのでありますが、今御指摘のありました匿名
組合方式による不特定の多数の人々から出資の形で資金を集めておる形態がある。それから更に物品の割賦
販売という形式をとりながら、事実上物品を渡さないで、金を渡す、
従つて一種の、これを見ますると、積金をして行く、掛金をして行く、それを集めて一定の額に来たら寄附の形をとるか、或いは預金を返すという、そうい
つたような形、それから更に
事業協同
組合品、これは出資は受入れることができるし、而も加入、脱退が自由であるという原則から、出資の形式をと
つて、事実上預金にまぎらわしいような資金の集め方をしている。その他にも類似のやり方はたくさんあるのですが、大きく分けますと、いろいろ金融法規との問題になりますのは、今申しましたような形態が大体大きな類型であります。そのうちでも一番問題になりますのは、今御指摘のありました株主相互金融の方式の匿名
組合の方式であります。一昨日ですか、衆議院の大蔵
委員会のほうにおきまして、実は
政府といたしましてのこれらの問題について長い間、一年半に亙
つて二の問題を検討いたして参りました結果、大蔵省だけでなく、
政府関係各省の間に
意見の一致を見まして、
政府としてのこれらの問題に対する態度の概要につきまして御
説明申上げたのであります。その一環として、
只今お尋ねの株主相互金融及び匿名
組合方式による資金の受入れ方式というものについて、先ずどういうことをや
つているのかを先に申上げて、それに対する私
どもの見解を申上げたいと思います。お断りいたしておきますが、今ここで
所得税法の問題として問題にな
つておりまする源泉徴収の問題は、いわゆる株主相互金融の方式には
関係のない匿名
組合方式によるものに適用があるかないかでありまして、この二つの間には経済的には非常に似たところがありますが、形式は違うということを先ず申上げておきます。
株主相互金融は、一概に株主相互金融方式と申上げましても、これが又実に千差万別であります。
従つてこの株主相互金融方式なるものはこうであるということは言い得ません。言えませんが、先ずいろいろ共通した要素を取上げて見ますると、おおむねまあ一種の典型的な方式というのは、こういうものであろうということは申上げられます。これはどういうことをやるかというと、資金を公衆から集めますのは、先ず株を募集する形で集める。例えば百万円なら百万円の株式会社を先ず作る。その
程度の金は役員個人なりが集めて、その
程度の金は調達して来る。そうして帳簿上の要求いたしておる手続を踏んで、百万円の株式会社を作る。そうしてその株を役員が引受けるのです。役員はその株を基本的には大体持
つておりますが、
〔理事伊藤
保平君退席、
委員長着席〕
最近商法の
改正によりまして、授権資本の制度ができまして、増資をいたします場合に必ずしも株主総会を開く必要がない。
取締役会で決議をすればその授権資本の範囲では株券をどんどん売
つて行ける。この仕組を利用いたしまして、先ず百万円の資本金の株式会社を増資をいたしまして、これを例えば更に百万円を増資する。その株を先ず役員が引受ける。そうしてその引受けた株を加入者、本当の
意味の加入者たる人々にそれを売るわけです。そうするとその株を引受けた加入者はその際において現金を払込まない。払込まないで、その株式会社が、非常に複雑にな
つて恐縮でありますが、株式会社がその加入者の株を買取る代金を融資をする、帳簿上だけです。そうしてその融資をして、その金は加入者には入らない。その株を、売
つたその会社の役員に入ることになる。非常に複雑ですが、そういう形式をとる。そうして加入者はその会社からそのとき金を日賦なり月賦なり、或いは十日ごとの割賦で返済をして行く。五千円なら五千円の株式を一日百円ずつ日賦で納めて行けば五十日で五千円を納める。そうするとその人は実質上そこで初めて正規の株主になるのです。形式上は株を買取
つたときにすでにな
つておる。五千円を払込んで株主になりますと、その三倍まで金を貸してやる。或いは若し借りたくない人ならば株主の優待金として月に相当高い
程度の配当をする。月三分もありますし、月三分もありますが、そうい
つた場合配当をするという形式で、非常に複雑でありますが、それを極く簡単に申上げたわけであります。これらの形式が、いろんな形で商法
違反になるかならんかというところに問題がある。この手続の段階において、或いは利益配当に関する総会の決議がなければ利益配当をしてはいけないとか、或いは蛸配を禁止しておる商法の
規定とか、これらの
規定に反するか反しないかの問題はたくさんあります。併しそれらを仮に合法的にや
つておる。又御
承知のように証券取引法で証券の
関係のいろいろな
規定があるわけですが、これらの
規定に反しておるものもたくさんあるのであるけれ
ども、仮にこれらの手続を全部適法に行な
つて参
つたものがあるとした場合、然らばそれはそういう形で資金の受入れ方式は一体預金であるか、銀行法に言
つておる預金、或いは株式
取締法に言
つておる預金に該当するか、これがこの問題の一番大きな点であります。この問題は非常にむずかしい問題でありまして、言葉は非常に悪いのですが、この前も実は衆議院で申上げたのですが、紙一重の点がある。結論がなかなかむずかしか
つたのでありますが、長い間の研究の結果、これは金融業法に言
つておる預金、或いは預金に準ずる資金の受入れ方式ではないとは言いがたい。
従つてこれは出資である株式を引受けた、従いまして普通の
事業会社の株を個人が持たれると同じである。ただそれが、その
事業会社が貸金業をや
つておるというだけのことであ
つて、そうして会社の株を持つ場合と何ら差異はない。ただこの場合において、地方におきましては或いはそれらの事情のよくわからない方がある。ミス・リードのような広告等をしたために、利子の高い預金だぐらいに思
つて、これに加入された方々がないとは言えない。併しそれは飽くまで預金をされたのじやない。その元本についての危険を負担した株式を取得されたのだということをはつきりしなきやならん。今後におきまして、これははつきりしなければならん。この
方法はなかなかむずかしいのでありますが、私
どもできる限りの力を尽しまして啓蒙をいたして参りたい。事実をはつきりしたい。預金者が与えられておるいろいろな金融法規上の保護は与えられておりませんということを、この際はつきりする必要があるという観点に立
つておるのであります。ただ、今申上げましたのは、冒頭にお断り申上げましたように、典型的な形のものであります。実際のやり方は千差万別でありまして、株主相互金融の今申上げましたような典型的な形に加えて、明らかに預金を取
つておると認められるやり方であり、それは例えば株式代金の代り金とい
つたような形に借受金といいますか、或いは不特定多数の人から借入金をする、借入金の名目で預
つておる。或いは短資証券とい
つたような名目の証券がございます。これは私のほうにおきましてはそのすべてが預金であるとまでは言い切るわけには行きませんが、これらにつきましては、今後、今申上げましたような一線をはつきり画しまして、金融業法に
違反する行為は厳重に
取締つて頂きたい、かように考えておる次第であります。
それからなお、株主金融についての御質問にお答え申上げたいと思いますが、匿名
組合方式というのがあります。これも株主相互金融と同じように非常に無理な形が実はある。これは御
承知かと思いますが、その
事業をや
つておりまする
事業目的というものは、主として証券に投資する、或いは不動産に投資するというのが大
部分であります。併し一部には貸金利をや
つているのもあるように聞いておりますが、実は遺憾ながら私
どものほうで届出を受けていないようなわけで、的確な事実を把握することはできない。仮にこれらの
業者が証券投資或いは不動産に対する投資だけをや
つておりますれば貸金
業者ではない。
従つてこれを私
どもは監督する、
取締をする実は権限を持
つておりません。検査もできません。ただ問題はそういう形で、匿名
組合に対する出資の形で資金を集める方式が、一体金融業法に言
つている預金であるかどうか。株主相互金融と同じ
意味におきまして問題があるわけです。この点も長い問実は検討いたしましたが、結論といたしましては、商法に言
つている匿名
組合方式というものでないとは言い切れない。この匿名
組合方式による資金の集め方、
従つてこれは預金或いは預金に準ずる資金の受入れ方式ではない、こういう結論に到達いたしたわけであります。併しながらこれも株主相互金融と同じように、無理な形で実はあるようでありまして、その中で更に預金の受入れと断ぜざるを得ないようなものも出て来るかと思います。そういたしました場合には、金融業法
違反として厳に
取締つて行く、こうい
つた形でこの二つの問題を考えております。その裏にある大きな考え方はどこにあるかという点は、私
どもはやはり
日本の今の経済の現状から見まして、貸金業という制度が正規の金融機関以外に存在をする必然的な理由はある。併し貸金業というのは自分の金、自己資金或いは特定少数の数人の知人から金を借りて来ることがある。そういう特定少数の人からの借入金、これも自己資金に準じておりますが、自己資金をもとにして貸金業をやる限りにおいて許される。一般公衆から預金を取
つて貸金業をやるということは、正規の金融機関でなければいけない。そういう
意味ではつきり割切
つてこの問題を
取扱いたい。そうして株主相互金融について申上げましたように、その株主と
なつたいわゆる加入者の利益が、その会社が仮にうまく行かなか
つたために非常に迷惑をかけるという場合におきましては、それは言葉は非常に悪いのですが、泡沫会社の株をつかまされた、知らないでいろいろな等とかいろいろなことで元も子もなくしたという場合と同じことである、
法律的には。それは個人的にはお気の毒であるけれ
ども、それに対して
政府は泡沫会社の株を引受けて、それによ
つて損した方を保護するような施策が制度としてあり得るかというと、現在のところはない。それと何ら異ならないものであるということだけはこの際はつきりしておかなければならんというふうに私
どもは考えている次第であります。
なお御
説明の足りません点は御質問によ
つてお答えいたしたいと思います。