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政府委員(阪田泰二君) まあ先ほども公聴会のお話がありましたので、
ちよつと申上げておきたいと思うのですが、まあこの問題につきましては、やはり世間の常識としては、山頂を神社の
所有に属せしめることは、些かおかしいのじやないかというふうな
意見も当然あることと思います。それで公聴会等を開くということも、
ちよつと考えられるところであるわけでありますが、ただ先ずこの
社寺等に無償で貸付けてある
国有財産の処分の
法律で、今まで八万件余りを処理をして参
つたのでありますが、やはり
社寺等は宗教に関する事柄でありますので、まあ先ほど御神体山とかいうような感じにつきまして御
説明申上げたようなこともありますが、ああいう式の宗教上の専門的なことがかなり非常に多い。そういうようなことを取入れて、かなり専門の関係者も入れた審査会で
審議をして、今まで処分を決定して来たということでありまして、そういうような、今まで殆んどこの一件だけを残して全部片付けておるわけでありますが、そういう従来の処分との
権衡上から言いましても、この分だけ余りそういう世間の常識だけで判定を下すということは、これも均衡を失しているのじやないかというような感じを受けるわけであります。この
法律の性質自体が、かなりそういうふうな特殊の性質があるというふうに私ども考えられるのであります。それでそういう意味におきまして、今回の冨士山だけは、これは冨士山というものの特殊の本質に基いて、ほかの
社寺に譲与する
土地等と同じに扱うべきでない、こういうことになりますれば、まあこれは私の
一つの思いつきに過ぎませんので、別に役所の公式の
意見ということではありませんが、そういうことが若し考えられまするならば、それはやはりこの
社寺の
法律の
改正ということでなくて、冨士山に関して特別の
法律措置をするということが、むしろ筋の通
つた見方ではないか。
一般の
社寺の
法律に基いて、この冨士や浅間神社にも同様な待遇をすべきであるということになりますと、これについてだけ、いわゆる世間の常識を持ち出しまして、ほかの
社寺に対するところとは異
なつた処分をするということは、少し穏当を欠くのじやないかというような気がいたします。
それからまあ観光ホテル等の問題でありますが、これはまあ今の国民感情で、日本の象徴である冨士山を一
社寺の
所有にするということは適当でないという感情がありますと同様に、今冨士山頂に観光ホテルを設けるとか、ケーブルを敷設する、こういう問題につきましては、これはやはり
一般の国民の考え方としまして、賛否両様の考えがあり得ると思います。これにつきましては、直ちにそういうことがあり得るとか、或いはあ
つて然るべきであるというふうに限定して考えるべきものではないだろうというふうに、私ども考えておるわけであります。それで先ほど申上げましたように、国立公園、或いは文化財、そういうような関係で、それぞれの立場から
法律的な規制がされておるわけでありますから、そうい
つた方面の
意見、或いは意向というものをも含んで、この問題は将来きめなければならん問題ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。それで所管の厚生省のほうの意向としましては、前々からこの冨士山頂を、現在はまあ国立公園に
なつておるわけでありますが、国立公園というものは、地域内に民有地も
国有地もあるわけでありまして、必ずしも国立公園が
国有地であるというものではありませんが、国の公園、即ち公共福祉用
財産という分類が
国有財産にありますが、公共福祉用
財産、丁度宮城前広場とか、新宿御苑とも同じような
国有の公園であるというような考えを持
つておられたようでありますが、まあそういうふうなものに、現実国の公園に
なつておりますれば、これは行政
財産でありまして、普通
財産ではありませんから、譲与すべき限りのものではないわけであります。ただ現実にそういう構想を持
つておられるだけで、そういう一状態に
なつておりませんので、これが国の公園であるから譲与ができないという
理由には現状ではならないのであります。そういうふうに公園に現実に
なつておれば、これは譲与をすべきものでないという意味になるのでありますが、そういうような意味でありまして、大体厚生省といたしましては、現在のところは、その
程度の気持でおるというふうに申上げておきたいと思います。