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政府委員(河野通一君) 調整
勘定の
処理につきまして御
説明申上げたいと思います。
案は、この問題は長い間の経過を辿
つて参
つたのでございますが、本日私の名前で、各
金融機関に対して中間
処理をできるところについては認めて参りたいということで、申請をさせるように通達を出す予定にいたしております。この
調査勘定と申しますのは、
只今政務次官からもお話がございましたように、昭和二十二年の
金融機関再建整備法に基いてできたものであります。
金融機関再建整備法と言いますのは、あの当時、企業の再建整備、
金融機関の再建整備、戦時補償打切と、この三つの大きな
法律体系の下において、過去における戦争中からの何と言いますか、経済全般に対する大手術を行
なつた措置であります。その後その
金融機関再建整備法によ
つてやりました大体の概要は御
承知かと思いまするが、簡単に申上げて見ますると、或る一定
金額以上の預金なり、或いは
保険金支払の債務なりを
政府が補償をしても、これを新
勘定に入れて必ずそれだけは確保する、それを超える分につきましてはこれは旧
勘定に入れる、旧
勘定の中で利益金が出て来ればそれを払う。それまでは
支払を抑えるという措置であります。簡単に申上げますと……。その後いわゆる旧
勘定といういう
制度を廃止いたしまして、これが
調査勘定という
制度に
なつたわけであります。その後調整
勘定がだんだん
処理をいたして参りますに応じまして、或いはその当時とても価値がないと思われたような債権が上
つて参りますとか、或いは有価証券、株とか、社債等でとてもこれは無価値であろうと思
つたものがだんだん価値が出て来る、或いは不動産等で当時非常に価格が安か
つたもので処分いたしてみますると、
相当な値が出たとい
つたようなことで、調整
勘定にだんだん利益金が実は溜
つて参
つたのであります。数字は後ほど申上げますが、そういうわけで、これを或る
程度支払われるならば、打切られた旧預金者等に
支払をしたらいいじやないかということで、
金融機関側からも長い間に亘
つてこの
支払をしたいということの要望が非常に強く案は出て参
つてお
つたのであります。然るに私
どもはこの問題については、これを最終的に
処理するにつきましては、或いは御
承知のように、渉外
関係の債権債務、在外資産、負債或いは閉鎖機関に対すも債権債務、こうい
つたようなもの、或いは企業再建整備によ
つて行われました特経会社の債権債務、これらのものが非常に未確定な要素が多い。特に対外
関係の債権債務につきましては、非常にこれが未確定な要素が大きいのであります。
講和條約ができました際におきまして、これらの問題も或る
程度並行して将来の
見通しも付くかと実は考えられた点もありましたので、少くとも平和條約の
発効を見るまでは、こういう未確定の要素が非常に多いので、調整
勘定の
処理ということは見合せて参らなければならんということで参
つたわけであります。然るに
講和條約の
発効を見ました後におきましても、これらの渉外
関係の債権債務というものは、個々の
外交交渉によ
つて今後きめられることに相成
つておるわけありまして、この未確定要素が直ちに解決はできないような状態であります。併しながら、一方で先ほど申上げましたように、調整
勘定の利益金はだんだん溜
つて参
つております。一例を
銀行について申上げますと、全国の
銀行で打切られたいわゆる第二封鎖金が百八十億ございます。それに対して調整
勘定の利益金が現在七、八十億に上
つておるかと思うのです。そうい
つたふうで、
相当な調整動定の利益金も出て参
つております。従
つていろんな要素を十分頭においた上で、
支払えるものは
支払つたほうが戦後の跡仕末の整理を進める意味におきましても適当ではないか、特に打切られた預金者の利益のためにも、払えるものは払
つたほうが適当であるという観点に立ちまして、今般この処置をいたしたいと考えた次第であります。但しこれを行いますには、先般申上げました未確定要素が残
つておりますので、これら未確定要素について十分なる準備を積んで、なお且つ
支払える範囲において
支払いをする。従いまして、この
処理は対外
関係の債権債務の
処理が最終的にきまるまではどうしても中間的
処理になる。最終的
処理はどうしてもできませんので、中間的な分配をいたすということにいたしたいと考えておるのであります。これが
処理をいたします際には、今申上げましたように、対外
関係の債権債務が如何なる
外交交渉の結果どういうふうにきまりましようとも、これの
支払いに支障を来たさないというようにいたさなければならん。と申しますのは、仮にそれらの問題について、非常に甘い考え方の下に打切られた第二
封鎖預金等を
支払つてしまいまして、あとで強い対外
関係からの
要求が出た場合において、それが
支払えない、そうすると、
支払つた第二
封鎖預金に対しまして、もう一遍取戻す処置、或いは国がいわゆる補償をしなければならんとい
つた措置、或いは再建整備をもう一遍やり直さなければならんということがないように、この三つのことはどちらも好ましいことではありませんので、そうい
つたことのないように十分のリザーブを持
つて、払えるものは払う、
支払方法は再建整備法に詳しく書いてありますが、打切
つて参りました、切られて行
つた順序の逆に
支払つて行く、同じ預金でありましても、
相当多額の預金と少額の預金と打切
つて行く順序が違います。従いまして、今度
支払いをする場合、多額預金のほうが先に打切られたのでありますから、少額預金、あとで打切られた預金のほうへ、先に返す。丁度打切
つて行
つた逆のコースで
支払つて行くという措置に相成るわけでございます。詳細は非常に複雑に
なつておりますので、大体のことで御了承願いたいと思います。
そうい
つた考え方でこの
処理をいたしたい、一方で、
金融機関の中には例えば生命
保険会社等、総額で約三十八億に上る
政府の補償を受けております。従
つて今申上げましたように、打切られた逆のコースで
支払つて参るのでありますから、
政府から補償を受けましたものは、先ず第一に利益金のうちから払う。そういたしますと、生命
保険会社等におきましては、恐らく今のところは中間的に
支払える会社は先ずなかろうかと思います。
銀行の中におきましては、大体の見当でありますが、大体三分の二
程度の
銀行は或る
程度、
程度の差はありますけれ
ども、
支払いができるのではないかというふうに考えております。この中間
処理は
只今申上げましたところでおわかり願えると思いますが、一種の、何と申しますか、清算
勘定の、会社が清算した場合の残余財産の分配ということに相成るわけでございます。従いまして、その調整
勘定の中で、いろいろ財産を処分したりして出て来ましたところの利益金のうちで残余財産を分配する、こうい
つた仕組になるわけです。従いまして、これは今生きておると申しますか、
業務を続けておる
金融機関自体の
勘定或いは信用には全然影響のないことであります。旧
勘定の調整
勘定の
支払の打切られた預金の率も高いものと低いものとがありましようとも、これは昔のいわゆる新
勘定、現在の生きておる
金融機関の信用には全然影響がない。従いまして、場合によりましては、或る
銀行においては例えば五割打切られた預金者に
支払ができる。或る
銀行においては三割しか払うことができない。或る
銀行においては全然中間的な
支払いができないということが起
つて参りますが、これらは別にその
銀行の信用がないために
支払う率が少ないのではないのでありまして、何と申しますか、清算会社の残余財産の分配である、そういうふうに了解せられなければならん。生きておる新
勘定、いわゆる現在の生きておる
金融機関の信用とか、資産
内容のよし悪しには影響のないことです。こういうことに相成るわけです。そうい
つた考え方で
支払いができるものにつきましては、打切られた、迷惑をこうむ
つた旧預金者等に対して、できるだけ
支払いを進めればいい。こういう結論に到達いたしまして、中間
処理の処置をいたしたい、かように考えておる次第であります。
金融上
相当、過去の実は整理の問題でありますけれ
ども、大きい問題でございますので、丁度
国会も開かれております際でありますから、私から一応御
説明を申上げた次第であります。御了承願います。