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1953-03-11 第15回国会 参議院 水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十一日(水曜日)    午後一時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     秋山俊一郎君    理事            木下 辰雄君            千田  正君    委員            青山 正一君            玉柳  實君            片柳 眞吉君            木下 源吾君            松浦 清一君   国務大臣    農 林 大 臣 田子 一民君   政府委員    調達庁総務部長 山内 隆一君    調達庁不動産部    長       川田 三郎君    水産庁長官   清井  正君    水産庁次長   岡井 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国に駐留するアメリカ合衆国軍  隊の行為による特別損失補償に関  する法律案内閣送付) ○以西機船底びき網漁業及び運用かつ  お・まぐろ漁業許可等についての  漁業法臨時特例に関する法律案  (内閣送付) ○水産政策に関する調査の件(水産政  策一般問題に関する件)   —————————————
  2. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今から委員会を開会いたします。  今日は新任の農林大臣見えまして、法案提出理由説明されることになつておりますが、少し遅れるようでありますから、その前に従来審議を重ねて参りました、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案、これについての質疑を継続いたします。  御質疑のあるかたは御発言を願います。……それでは私から質問をいたしますが、前委員会におきましてお尋ねをしました、このアメリカ合衆国軍隊講和発効前において演習をやつてつたその演習は、講和発効後一応中止になりまして、現在は演習をやつておりませんが、当時演習をやつておりましたために非常なその演習地において損害をこうむつておる。これは事実、実例を申上げますと、この間申上げましたように、長崎県の大村湾の中にあります二島という島、その島に対してどんどん射撃をしましたために、二島に向つて射撃をしたのでありますが、この島には魚附林のごとき林があつて、そうしてその周辺では漁業が行われておつた、貝類或いは海藻、なまこといつたようなもののいい漁場であつたものが、演習になりますというとその木を全部伐つてしまつた、そしてそこにどんどん実弾を撃ち込んだためにその島は崩れて周辺にすつかり泥が流れ込んで、従来の岩、或いは真珠貝の発生地であるとか、なまこ発生地はすつかり泥に覆われて駄目になつてしまつた。そこで演習はやまつたけれどもさつぱり漁獲はできなくなつた。これを一つ復旧してもらいたいということについて陳情請願が出ておりますが、これについて前回川田部長から、この法律が実施せられるならばこの法律処置ができると、これらの復旧であるとか漁業のできるような処置をすることに対しての補償であるとかいうようなものが処置できるというお話でありましたが、なお私はそのときに述べておつたのは、現在やつておるのでなくて、もうそれが済んでしまつた、即ち「アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き云々」と、こうありますが、これは安全保障条約に基いて演習をやつてつたというのでなくして、占領軍がやつてつたのが今日になつてその害があるわけであります。その演習しておつた当時は補償をしておつた、ところが補償はやまつたけれども漁業はできない。これをやるためには海底の借をするなりいろいろなことをやらないと、従来のように漁獲がないというような状態でありますが、これらの復旧その他についてこの法律処置ができますかどうか、いま一度御答弁を願いたい。
  3. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 只今お尋ね被害につきましてはとの法律では直接に補償することはできないと存じます。それでお話のように、従来の占領軍、即ち連合国軍行為に基きましてその漁場損害を受けたというものは、現在行なつております漁業補償、それによつてやらなければならんと存じますが、漁業補償とは申しましてもいわゆる見舞金の形になつております。昨年の四月二十八日に占領軍というものがなくなつたという解釈と、昨年の七月の二十七日に占領軍がなくなつたという解釈と二つございます。併しこのいずれの説をとりましても、只今お話になりました損害見舞金で処理しなければならんものと存じますが、昭和二十七年度の漁業に関する見舞金が現在締切をしまして、水産庁からの見舞金の配付というものが、すでに一旦全国の被害を網羅した形で大蔵省のほうに要求になつておりますので、この分を二十七年度に加えるということはこれは事務的な面から不可能であると存じます。で、併し私は二島の件をお伺いいたしまして、とにかくこれは国がその従来の漁場を回復させるだけの費用補償しなければいけないものだとは存じますが、そこで現在の見舞金方法でやることも年度が切迫しましたためにできない。それから現在提案になつております本法においても「駐留軍」という一つの要件が入つておりますためにできないということになりますので、二十八年度の見舞金の際にこれを考慮するという方法しかないと存じます。私は衆議院の農林水産連合委員会の席上では、現在提案になつております法律施行期日の点から、本法施行になる以前に駐留軍行為によつて或る被害が起つたと、その場合遡るのかという御質問がございましたときに、私は、駐留軍行為によるのであるから、本法施行あとになつても遡るという解釈をとつたのでありますが、それはどうも少数説になつてしまいまして、多数説はも本法施行後の駐留軍行為が原因になつた場合にやれるということになつたのであります。そういたしますと、現在提案のこの特別損失補償に関する法律施行されましても、施行講和発効との間に法律としての空白期間ができるという公算が多くなつて参るわけであります。その場合私は、それは本来この法律提案いたしました趣旨は、従来の占領期間中のこういう種類の見舞金が行われておつた顕著なものといたしましては、防潜網においてそういう見舞金が払われておつた。それが突然講和発効と同時に補償法律がないからできない、見舞金も出さないということは、本来の政策趣旨に合わないものと存じますので、調達庁といたしましては、本法施行期日遡及効を持たない場合は、その間の繋ぎはやはり見舞金をこの種の損害に対して出す、こういう方針をとりまして国庫当局と折衝いたしたいと思つております。従つてその際に今の二島のように、昭和二十七年度の見舞金で出すことができなかつたものにつきましては二十八年度の、この法律施行に至るまでの期間の分の見舞金の中に合せて支出するように工夫をしてみたいと存じております。従つて質問の本体であります、本法がこの二島適用になるかということにつきましては、適用になりません。ならない結果、只今申しましたような対策を考えるということで御了承を願いたいと思います。
  4. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 前回私がお尋ねしたときに、これはできるというお答えでありましたが、今日はこれはできない、こういうお話でありますが、その点の喰い違いはどうなんですか。
  5. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 前回はその二島損害が、駐留軍行為によるものというふうに私は誤つて承わつたわけです。それが駐留軍行為でないという点ではできないと、それからもう一つ駐留軍行為であればできると解釈いたしましたのは、私が補償についての積極的な意欲を持つておりましたために、駐留軍行為でありさえすれば本法施行後に補償する場合であつて補償対象になるという見解をとつておりました。その後の部内の会議によりまして、やはり本法施行後の駐留軍行為でなければいかんということになりましたために、この原案であります限り見舞金によるほかは仕方がない、こういうことになつたわけであります。
  6. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) もう一点伺いますが、本法施行後といいますと、もうすでに今やめておるようなものは駄目なんでありますけれども、例の二島の場合は二十七年の六月までやつておる。従つて駐留軍行為としてはあるわけなんですが、これが本法律が制定されて効力を発生してからでなければこれができないということになると誠に遺憾なことでありますが……、大体安全保障条約に基いてというが、安全保障条約に基いて取極ができなかつた場合、行政協定等ができなかつた場合は、従来占領軍がやつていたと同じことをそのまま継続して行くというふうに私はなつていると思うのですが、その場合に「安全保障条約に基き」ということは厳密に解釈されるか。即ち安全保障条約に基いておらなければ補償対象にならないのであるかどうか、安全保障条約に基くところの行政協定にはまだ決定はしてない、してないけれども、仮に防潜網なら防潜網がある、そういうもの、がある、こういつたような場合にこの解釈はどうなるか。
  7. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 「安全保障条約」という字句は「配備されたアメリカ合衆国軍隊」ということに対する一つ修飾語でありますから、アメリカ合衆国軍隊安全保障条約に慕いておりさえすればいいので、行為まではかからんと存じます。従つて現在の日本の実情から申しますなれば、アメリカ合衆国軍隊のやつた行為でありさえすればよろしいと存じます。
  8. 木下源吾

    木下源吾君 それではこの法律に関する規定ですが、駐留軍といわゆる連合国軍との関係が明確にわかりますか。
  9. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その関係が今明確になつておらないのです。先ほど、委員長質問に対する答弁の中に申しましたように、四月二十九日から駐留軍なつたという説と、九十日たつた九十一日目から駐留軍なつたという説とありまして、私どもは四月二十九日からの説をとつております。これは不動産借入契約につきましても問題がありまして、駐留軍になつてからは不動産の借賃が増加されるのであります。その増加される時期が四月二十九日か七月二十八日からかということが今問題になつておりまして未だに未解決になつております関係で、これは法務省及び外務省の間で現在この九十日間に存在するアメリカ合衆国軍隊は如何なる性格を持つものであるかということを今結論付けをしておりますので、この結論が付きませんとそういう不動産賃貸料にも影響いたしますし、又こういう場合に仮に少数説解釈をとりまして、駐留軍でありさえすればその損害本法施行後支払えるという解釈が成立つといたしましても、その九十日間の存在がどちらになるのかがきまらないといけないと思います。
  10. 木下源吾

    木下源吾君 私はよくわからんのですが、駐留軍というものの兵種或いは人員の数、もつと深く言えばどういう名前のものが来ておるということが日本政府にわかりますか。
  11. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) これは日本政府には一部の政府機関にはわかることになつておるそうであります。私どもは存じておりませんが、ただアメリカと日本政府との話合いで、これは米軍軍機事項に亘るから発表はしないというふうに聞いております。
  12. 木下源吾

    木下源吾君 一部にという、日本の一部とはどういうところです。
  13. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 私は外務省と存じております。私の想像であります。外務省以外にはこういうことを知るところがないと思います。
  14. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると現にここに駐留軍が今おる、この駐留軍に附いておる労務者、これが韓国のほうへ、戦争のほうへ出向く、こういうようなことはないのですか。
  15. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) そういうことは私ども仕事所管から考えますと、駐留軍労務者が軍の要請によつて個人的に承諾して韓国のほうに勤務地を一時的に移すということがございまして、それに特別の手当を与えるという給与規定などがあるのですが、臨時的には駐留軍労務者韓国に行くことがある、それから類推いたしますれば、その労務者を使う部隊が韓国にこれは行くことがあるということは考えられます。それ以上のことはちよつと仕事所管関係でわかりません。
  16. 木下源吾

    木下源吾君 その労務者の場合でまあ推察してのお話ですが、労務者は一体どの時期、どの地域から離れるという条件がございますか、政令等によつて駐留軍連合国軍との境になるようなものがそこにありますか。
  17. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 現在は労務者日本政府関係しておりますのはいわゆる駐留軍だけであります。従つて只今連合国軍とおつしやいましたが、恐らく国連軍意味でございましよう。国連軍関係は直接雇用になつておりますために、私どものほうではわからないわけでありますが、その駐留軍日本人の労務者韓国に連れて行くという場合は船員だけのことであろうと思います。私どもでできている規定も、船員韓国に参るということは、駐留軍の船に乗りました、その船が韓国に行つている間どうしても一種の交戦地域に入るわけですから、戦時手当的なものを見ておる。それから死亡いたします場合にも、その国の雇用者として、国に雇われておる者としてあれは公務員でないものですから、公務員の受ける死亡手当の額に相当するものを出すというわけに行きませんので、危険手当を出しております。本人は、生命保険を付けるとか、そういう方法をとつておるわけでありますが、その際命令はできないわけでございます。命令でなく、本人の個人的な承諾を得まして、軍が朝鮮まで船に乗せて行くという関係になつております。
  18. 木下源吾

    木下源吾君 その個人的な承諾が成立したということは、日本に直ちに知らせることになつていますか。
  19. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) それは日本政府の委託による都道府県知事渉外労務というのがございまして、その渉外労務を担当している人が実際は管理をいたしまして本人承諾に基いて行くということになりますれば給与の増額をする。で、その期間を定めまして、定められた期間だけで実際給与上の事務処理をするという程度になつております。
  20. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、交戦区域というよりも、むしろ承諾雇用者つまり承諾、そのときに身分が変る、こういうことになるのですか。
  21. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 身分は変らないと存じます。……変りません。そこで、今駐留軍労務者身分は何かと申しますと、国家公務員にあらず、ただ国費用を以て雇われている職員、」ういう特別の職員ができたわけでありますが、その職員たる身分を持つたままいわば勤務場所臨時的に動く、こういう関係でございます。
  22. 木下源吾

    木下源吾君 その動くつまり時期、どこでそれが区切りがつく、こういうことを聞いておるわけです。つまり国費用を以て雇入れた者が危険手当を受ける、その効力が発生するのはどういう条件によつて発生するのか、こういうことを聞いておるのです。
  23. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) これは私はしつかりした細かいところがお答えできない。それだけ知識がないのですが、元財務部をやつておりました関係上、その予算なんかを見ているときの経験から判断いたしますると、その船が実際に命令によつて出ます、そのときにはどこに行くのかわからない、実際帰つて参りましたときに航海日誌等によりまして、あとから追認の形で、何月幾日からどの海面を通過したかということで、ここから先が危険手当の付く場所である、そういうふうい処理しまして、給与を加給しておつた、こう存じております。
  24. 木下源吾

    木下源吾君 今のは危険手当の例でありますが、一般的にこれから先は連合国軍仕事に携るのだというその区切りがとういう条件によつてきまつて日本政府がそれを取扱うか、若しあなたが詳しくわからなければ、どこでわかるかを聞かして頂けばいいと思うのです。
  25. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その労務士はやはり終始国連軍に勤めるのではなく、駐留軍に勤めるという形で働いております。従つて実際駐留軍国連軍軍事行動に参加するということは或いはあるかもわかりません。その際もこちらは駐留軍に勤務しているという事実だけに基いて支給しておりますので、この点は所管調達庁労務部長のほうになりますが、労務部長も院内に来ておりますから、若し何でしたらば呼びましても……。
  26. 木下源吾

    木下源吾君 私が今いろいろお尋ねしておるのは、この法律で、今の駐留軍行為によつているノれの損害事項が今問題になる場合に、連合軍クラークライン作つた、そのための損失というものがこれとの関連でどういうことになるかということを実は判断したい。駐留軍が常にずるずると連合国軍になるのであれば、当然連合国軍のための恐らく損害も問題になるのではないかと、こう考えられるので、どこで区切りがついておるのか、或いは区切りはつかんで、駐留軍駐留軍としてのみ日本におつて、これは連合国軍として朝鮮の戦闘に参加しないのか、そういうことを聞きたいわけなんです。そのためにお尋ねしているので、当然今の労務関係にも及ぼすで“ろうし、今のお話では、駐留軍労務者として実際は交戦地域行つて連合国軍仕事をもしておるだろうというのであるから、この区別一つもわからんわけですね。はつきりしないわいなんです。はつきりしなければしないでよろしいのです。駐留軍国連軍だということでもいいのです。それであれば当然この法律をそういうように解釈する一つ根拠ができるのですから、そういう点を一つお尋ねしているわけです。
  27. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 今私が駐留軍国連軍関係を、調達庁として知つておる一つ根拠という意味労務者の話を引合いに出しましたのですが、労務者と切離しまして考えますと、この法案のいわゆる駐留軍というのは日本国に駐留するということになりますから、いわゆる国連軍が活動する朝鮮の戦域とは無関係場所とい一「ことになります。それからこれで補償しようとする場合の軍の行為というのは駐留軍に限られまして、国連軍のほうはたとえ日本国内都道府県内におきまして損害を与えましてもこの法律では補償できません。そこでその行為国連軍なり駐留軍なりやを事務上ははつきり区別をしなければならないということになります。
  28. 木下源吾

    木下源吾君 今私は先に申上げたようにクラークラインというものは日本国内ではないと思います。「及びその附近」という、こういうところには加わるわけです、そういうことになる。それですからこの駐留軍国連軍というものの性格は勿論違うであろうが、その実質は一緒じやないか、若し一緒であるならば、私はいわゆる「及びその附近」において損失をこうむる漁業経営者は当然或る法律によつて保護されなければならん、こう考えるわけなんです。そういう点であなたの所管内ではつきりしないならはつきりしないでよろしいが、私はその点を明確にされないでおくと、或いは又その次にクラークラインなり何なりのこういう法律を作らなければならんじやないかと思う時期も又なきにしもあらずだから、その点を明確にしておく必要があると、こう考えてお伺いしておるわけですが、これはまだ明確になりませんか。
  29. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 「日本国内及びその附近」という字句があるのは、私もちよつと答弁に困るところでありますが、大体この適用については、都道府県管轄区域内の損害だけを取扱えるという趣旨なんであります。そこで「その附近」というのは又妙なところに入つておるわけで、実際事務規定から行くと、この第二条は都道府県知事を通じてということになります。都道府県権限外にあるものを都道府県知事が扱うことはできないので、この「附近」という字句がなぜ入りましたか、提案者十分説明ができませんのは遺憾であります。その点は十分研究して参ります。
  30. 木下源吾

    木下源吾君 先ほどからお尋ねしておる駐留軍連合軍との関係は未だ不明確である、これは外務当局に来てもらつて、もう一つ法務関係の方も来て明確にしておいてもらいたいと思います。
  31. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 木下さん農林大臣見えましたから、これはその次に……。
  32. 木下源吾

  33. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今大臣田子さんがお見えになりましたが、御挨拶があるそうでありますから。
  34. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 初めてお目にかかります。このたび農林大臣に命ぜられましたものでございますが、委員長のお許しを得まして一言御挨拶をいたしたいと思います。  農林行政、殊に水産行政は甚だ素人と申上げるより、何も知らんというような程度の者でありますが、現在の国会法委員会国会活動の中心になつておりまして、皆様は練達堪能な永年の御経験を持つておられる、又識見を持つておられる方であります。どうぞ御鞭撻御指導を得まして、日本水産発展に寄与しますることができますよう御世話を願いたいと存じます。御挨拶といたします。
  35. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 法律案が出ておりますので、大臣がお見えなつた際に以西機船底びき網漁業及び遠洋かつをまぐろ漁業許可等についての漁業法臨時特例に関する法律案、本案につきまして提案理由大臣から承わることにいたします。
  36. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 只今提案されました以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業許可等についての漁業法臨時特例に関する法律案につきまして提案理由の御説明をいたしたいと存じます。  以西機船底びき網漁業及び遠洋かつおまぐろ漁業につきましては、講和後の漁場の拡大に応じまして資源の開発に努めなければならないのは勿論でありますが、他方、資源の保護並びに国際的な関連をも十分に考慮いたしますことが必要であり、又沿岸漁業漁場関係を調整し、遠洋漁船としての装備改善近代化適正船型への大型化を図り、以て漁業合理化経営の安定を促進いたしますことが、これらの漁業の健全な発展を期するために肝要であると存ずるのであります。  このため先づ曾つて以西底びき網漁船でありまして、マ・ライン設定に伴う減船整理の際、東経東三十度以西東経百二十七度三十分以東の海域に操業を制限されました総トン数五十トン未満中型底びき網漁船、並びにマ・ラインによる漁場制限があつたため、多数集中しております総トン数七十トン以上百トン未満中型かつおまぐろ漁船のうち、希望するものに対しまして、拡大された漁場に適合した船型への移行を認め、その装備改善近代化を図ることが妥当な措置であると存ずるのであります。その際、底びき網漁船が五十トン以上となり、又かつおまぐろ漁船が百トン以上になりますためには、指定遠洋漁業としての以西機船底びき網漁業又は遠洋かつおまぐろ漁業の新規の許可を必要といたしますので、漁業法第五十八条に規定する抽籤方法によらなければならないわけでありますが、これらの漁船につきましてはいずれも優先的に許可を行うことが妥当と考えられますので、臨時に二年間を限りまして、抽籤の制度を行わずに許可ができるように法的措置を講じたいと存ずるのであります。  以上、本法律案提案理由の大要を申述べましたが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。
  37. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 本件に関しましての質疑あとに譲りまして、丁度大臣が初めてお見えになりましたので、一般水産問題につきましての質疑を行いたいと思いますから、順次御発言を許します。
  38. 木下源吾

    木下源吾君 大臣折角いらして頂いたこの機会に二、三伺つておきたいと思います。初めてお目にかかります。私は社会党の木下委員です。  御承知通り我が国漁場はかねてマ・ライン設定によつて、非常に制限を受け、沿岸漁民が困難を極めております。これが解除されました暁におきまして、然らばどういう状態になつておるかというと、相変らず漁民の困懸は同じであります。と申しますのは、御承知通り北洋漁業或いは朝鮮海域東支那海或いは南洋方面等々の漁場では非常な制限を受けておるという状況になつております。これらに鑑みまして政府は、これら国際漁場に対してどういう御方針を持つておられるのか、只今提案理由説明にもございますが、いろいろ国際的な関連をも十分に考慮するということを言われておるが、もうすでに考慮の時期ではなく、漁業協定を促進するなり、いろいろの外交上の具体的な問題を進めておられなければいけないと思います。従つて政府は手抜かりなくおやりになつておると思いますが、我が国の漁業の基本的な問題でありますので、この点について一つ大臣の御所見を伺つておきたい。並びに政府が目下どういうことをおやりになつておるかということについての御所見を一つお願いいたしたいと思います。  もう一つ、次にはこの漁業関係でいろいろ政府が御配慮になつて例えば漁業合理化経営の安定をモットーとしておられるようでありますが、得て今日まで零細漁民又は漁業労働者というものに対する方針を我々は承わつておる。経営というものに重点を置いておられることは勿論であります。又その内容において又そういういろいろのものが含まれておるが、零細漁民漁業労働者ですね、こういう者に対する方針をどういうように持つておられるかを一つお尋ねしたい。と申しますのは、日本のあらゆる産業の中で、漁業が非常に遅れておる。又漁業関係のものは日本でも一番封建的なんです。こういうことが国内のもう常識になつておる。こういう問題を私どもは等閑にしておくことはできない。何とかして民主化のために適当な措置を講ぜねばならんと考えますときに、零細漁民、即ち漁業労働者というものに対して勢い関心が集中するわけであります。こういうときに政府はどういうお考えを持つておられるのか、この機会に大臣からお聞きしておきたいということです。
  39. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 全く素人でありまして、これから皆さんの御意見をよく拝聴して進みたいと思いますけれども、私の県も実は岩手県で、漁業の県でございまして、遠洋漁業と申しますか、船を大型にしますることとか、或いは遠洋に漁業発展をさせますとか、又この国際漁場の条約改訂の、ごときは一日も早くやりたいというような感じを漠然と素人的に思つておりますが、まだ実は三日に就任しまして役所の具体的な話を聞こうと思つているんですが、なかなか予算委員会等に出ましてまだ勉強する暇がないのでございますが、なおこの沿岸漁民のことにつきましては、これらの漁民の消長というものは非常に大事だと思つているのでありまして、これらも具体的に我が国の立地面から考えたいと考えております。
  40. 木下源吾

    木下源吾君 今のでは、それで具体的なことはあとでというお話のようでありまするが、それではあとでよろしいのですが、もう一ぺんだけお伺いしておいて私の質問を終ります。  と申しますのは、昨年北洋漁業許可、日米加の条約による許可関連として、いわゆる独航船のみでの漁場、四十七度以南流し網の許可、これが極めて根拠が不明確であります。陸岸から一体どのくらいがいいのか、或いは隻数をどうするのか、これの隻数の割当というようなものをどう考えているのか、これに割当をするならば、その根拠を一体どこに求めているのか等々のことについて私は次回でもよろしいから、もう期日が切迫している問題でありまして、これらを不明確にしておけば国際的紛争まで盛り上る要素を多分に持つているわけでありますので、重大と考えましてこれは一つ次の機会でもよろしいから、なお大臣は非常に御多忙のようでありますから、私は本日はこの程度で打切りますけれども、努めて只今の御趣旨のよう。に、皆の話を聞くということを実行して頂きたい。この委員会はまじめに深く検討するために皆が来ておりますから、どうかそのようにお願いしたいと思います。
  41. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今農林大臣農林委員会の中途で出て来られたようでありまして、少し紛糾しているようで、是非今出られるようにと言われて参りましたので、大臣も、いろいろ我々としても伺いたいことはたくさんありますが、早急のときにはなかなかいけないので、この次の機会に一つゆつくり時間をこしらえて頂きまして、又よく部内でもお打合せを願つて、我々の質問にお答えを願うようにしたらと思いますので、今日は大臣の御都合が悪いようでありますから、一つ他日に譲ることに願いたいと思います。
  42. 松浦清一

    ○松浦清一君 その点に関して、議事進行……もうすぐお立ちになるのですか。
  43. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) ほかに、今呼びに来られまして、少し紛糾しているようですから……。
  44. 松浦清一

    ○松浦清一君 何が紛糾しているか知らんが、農林委員会も重要でしようか、今日突然出て来られて、今は提案された法案説明するだけというつもりで御出席になつたか知りませんが、この委員会大臣見えることは数が少い、而も大臣なかなか新任早々人気かあつて、あなたが御出席になるということで、これくらい委員の顔触れが揃つたことは未だ曾つてないのです。今日各委員がいろいろ日本の漁議題についての大臣の施政方針ともいうべき基本問題について聞きたいと考えている、私も基本的な漁業問題に対する施政方針のみならず、具体的に起つておる重要問題について二、三点伺いたいことがあつて、今待機しておるところなんです。ですから今日そういう事情ならこれは止むを得ないと思いますから、この次の委員会なりにしつかり時間を割いて頂きたい。一つ御所見を伺いたい、私こう思います。それで希望を申上げておきます。  それからただ一点だけ御退席になる前に、農林大臣であり、又自由党の有力な議員であるあなたにちよつと伺つておきたいのですが、今国会法の改正の問題が議運の国会法改正小委員会で議せられ始めているわけであります。その主要な点は、各委員会の統合を行なつて水産委員会をやめにして農林のほうに合併しようという案が、自由党の小委員長をやつておる草葉委員のほうから試案というものが提案されているわけなんです。ここに御着席になつて開口劈頭に、日本水産業の重要性というものを説かれ、而も又国会の審議の中心というものが各種の委員会におかれるということは、冒頭御挨拶にあつた通りでありますから、大臣としてのみならず、その水産委員会廃止の問題が議せられている小委員会に対して、農林大臣という立場、自由党の有力な議員としての立場から十分御勘考の上、党内においてかような空気が強く起つて来ないということのために御配慮を願いたい。これは基本的な、一番先に申上げたいことなんであります。
  45. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 承知いたしました。
  46. 木下辰雄

    木下辰雄君 ちよつと私のは非常な緊急問題ですからして、一言大臣のお耳に入れたい。それはこの間通過いたしました農林漁業金融公庫ですね。これは四月早々発足になる。現在発起人でその公庫の設立をやつておる最中であります。これは総裁一名と、それからその下に理事四名となつておる。もとより農林漁業金融公庫ですからして、大臣が言われたように農林水産共に重要な問題である以上、その理事には少くとも一人は水産のほうから出るものだと私ども期待しておりました。案によると、総裁は一名、これはもとより農林関係でしよう、それからあとの四人のうちに大蔵関係が一人出る、あと農林関係或いは水産関係が出ると、こう思つておりますが、巷間伝うるところによると、水産のほうは或いは出んかも知れんというようなことを聞くのです。水産金融という問題は水産業の非常に重要な問題です。折角できた金融公庫に水産の理事がないということは、私は水産のために非常に惜しむのであります。水産に最も力を入れてもらえるという練達堪能の大臣の出られた機会に特にこの問題の御善処を願いたいと思います。
  47. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは只今調達庁の山内総務部長が見えておりますから、質疑を継続いたします。
  48. 木下源吾

    木下源吾君 さつきからの問題とも関連いたしまして、ちよつと私に時間を借して頂きたい。この上程されておる、今審査しておる特別損失補償に関する法律案にもありますが、大体この損失というものの根拠が事業経営という面に限定されているようでありますが、この以外に、まあ一口に言えば財産の損失以外に生命の損失というようなことについてはどのようにお考えになつておるか、この点を若しほかにそれらの問題でこれを救われるものがあるならば、どういうもので救われるのか、こういうことを一つお尋ねしたい。
  49. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 今御上程になつております特別損失補償法案というのは、単なる財産の損害補償するという意味ではないのでありましてやはり産業別の基礎に立つたここに列挙しております農業、林業、漁業、その他それに類するそういう産業経営損失を与えるという場合の補償でありまして従つてお尋ねの単なる財産の損害というような場合につきましては、軍の行動による直接の損害、言い換えれば、不法行為に相当する或いは故意、過失、或いは又軍の施設の瑕疵とかというようなことから原因して起つた損害は民事特別法のほうで補償することになつております。従つてこの法律では包含されないというようになつております。
  50. 木下源吾

    木下源吾君 いずれも経営ということが中心になつておるわけでありまして……ですからそれを伺つたのですが、今のようにほかの法律と、こういうことになつておる。然らばそのほかの法律とこの法律との実施面におけるバランスは取れておるのかどうかということを一つお伺いしたい。
  51. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) この法律では間接の被害損害、この民事特別法とか或いは一般法である民法、そういうものに該当しない、相当因果関係という点から言えば損害補償をできるかどうか、他の法律では非常に疑問とするようなものがこの法律で特に補償されるわけでありまして、従つて民事特別法では直接の被害であつてこの法律との間には、非常にむずかしい、どちらでやるかというような問題は余りないのじやないかと思うのでありますが……。
  52. 木下源吾

    木下源吾君 私の言うのは、損害補償の実質がバランスが取れるかということです。取れるならばどういう根拠でそれを取るのかと、こういうことをお伺いしておるのです。
  53. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 損害がどれだけあるかということは、この法律でも、それから他の法律でも同じでありまして同じ根拠の前提に立つて計算をされるわけであります。ただそれを幾ら、どれだけ補償するかということにつきましては、例えばこの法律につきまして全額補償するかどうかという問題があるわけですが、同じような意味で、従来の見舞金では金額補償等はいたしておりません。損害を計算してそのうちの幾らというような考え方をいたしておりまして、基礎の計算についてはどの法律も変りはないものと考えております。
  54. 木下源吾

    木下源吾君 この補償は、日本の国の責任においてやるのでございますか。そうしてそれらの支出する金……、端的に言えば金は日本国民の税金をこれに充てるのかどうか。
  55. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) この現在提案になつております法律による補償“は、日本政府の歳出になりましてそのアメリカ軍の行為そのものに、特にアメリカ側の責任がありと日本政府側において考えました場合には、国家間の賠償を別に外交交渉によつて要求するつもりでございます。本法から直接には日本政府が先ずみずからその責任を負担して補償する、そこまでで本法の限界は終るわけであります。その後は一つの国家間の外交問題といたしまして、アメリカ側に対して、日本政府が払いました補償金を更に求償するというつもりではおります。
  56. 木下源吾

    木下源吾君 そのアメリカ側から取るこの根拠は、行政協定のいわゆる合同委員会、そういうものだけできめるのか。ほかに何か根拠が明らかにされておるものがあるのかどうか。
  57. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) アメリカから向うの責任の程度に応じてもらうという金は、今お話の合同委員会できめる以外に他に根拠はございません。今不動産部長からお話がありましたこの問題については、私どもはこの法律の実施についての考えは、アメリカからもらうということは考えておりませんで、この法律に関して補償する場合には、先ず日本政府が負担するというよな考えに立つております。
  58. 木下源吾

    木下源吾君 私はそれはちよつとさつきのあなたの答弁と食い違いがあると思うのです。あなたの答弁では、自作向うの責任が重い場合には向うから取るのだというようなことを、どちらからか只今言われたのです。当然そのことは予想されておるのであつて、こり法律上のものは日本政府の責任だけで全部を何するのだというところとはちよつと食い違いがあるようですが、ての点はどうですか。
  59. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) この法律では間接の損害補償するのが根本の建前になつておりましてこれにつきましてはアメリカとの話合い全然いたしておりません。従つてこの法律施行そのものについては、先ずこの米軍状態程度によりまして、先方に交渉して払つてもらうということは原則としては考えておりませんので、今不動産部長のお答えしたのは、若しこの内容に非常にアメリカ側に何か少しの責任を持つてもらつてもいいじやないかという場合には、交渉するというような問題があり得るという意味で答えたので、必ずしも向うから金をもらうとこいう前提だという意味ではなかろうと私は解釈したのでございます。
  60. 木下源吾

    木下源吾君 まあこの法律の形式はそうでありましよう。併しながら根底に、私はさつき言うように、ざつくばらんに言えば、日本国民の税金によつてこれらのものを負担するかどうかという点については、必ずしもそうではないというようにさつき聞いたわけなんです。そこが問題なんです。現にアメリカ軍が、それは考える人によつては、日本のためにやつているんだから、これらのものは日本がやればいいじやないかという考え方で行けば別広あるけれども、必ずしも国民の中にゆそう思わん者もある。アメリカの防衛のために日本がこういう犠牲を払つていると考えている者もある。そういう見解から行けば、当然アメリカからもらう筋のものじやないか、こういうように考えるわけなんですが、併し政府はそういう考えでこの法律提案しているというなら、一応それで聞いておきましよう。  次に現在でも別の場合で見舞金というようなことをやはり支出することなつておりますか、見舞金という名目でやつておるか。
  61. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 民事特別法に該当するようなものにつきましは、これは無論損害賠償であります入ら、法律の性質から、講和条約の発効日以後のものに適用するごとになつておりまして、それ以前のものについては法律として適用しないわけです。但し同じような内容のもので、ずつとその以前からその原因があつて損害のあるというようなものを放つておくわけにも行きませんので、こういう法律をまだ想像しない時分から、ずつと厚生省が主管しておつた時分に、閣議決定で見舞金を渡すような制度がありまして、それをその後物価の変動等によりまして若干単価を引上げたというさうなことはありますが、同じような精神において現在でもいたしております。
  62. 木下源吾

    木下源吾君 現在は見舞金というものは如何なる面においてもやつておられると、こういうように了解してよろしいのですか。
  63. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 現在存在しております見舞金は、民事特別法によつて補償する場合には一つの要件があります。軍の行為に違法性があるという、軍の不法行為の場合、不適法の軍の行為には民事特別法で補償いたします。それから軍の施設に瑕疵のある場合、崖崩なんかあつた場合とか……、軍が完全に管理をしておれば、これは民事特別法では補償できません。そうした場合、軍に違法性がないし、又施設に瑕疵がない場合でもやり得る措置として直接の被害があつた場合、総理府令によつて見舞金を全顎支給する、昔の見舞金でなく、実際の補償の全額を見舞するという制度が一つつております。
  64. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、そういう場合には国民は権利としてそれらの損害補償を受けるということはないので、政府の一方的な恩恵的な考え方によつてのみ行われると、こういうことなんですな。
  65. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) さようでございます。
  66. 木下源吾

    木下源吾君 私は総務部長に少しお伺いしたいのですが、これはまあいろいろ問題はこの法律とは直接関係はありませんが、実は先般川越市へ我々議員三人行こうとしておつた。ところが途中でアメリカのヘッド・クオーター・エンジニアというものです。名前もわかつておるらしいのです。これが正面からぶつけて来た。こちらの運転手は、我々も気絶するまでは見ておりました。何の瑕疵はない、又立証する者はたくさんおるのに、すでにそれまでに酔つぱらつてつて来て、三台も畑の中へ日本の車を落してしまつたというような乱暴なことをやつて、そうして我々の車にぶつけたわけです。怪我もいたしました。当時気絶もした。こちらの運転手はあばら骨三本も折つた。川越市役所の運転手です。当時日本の警察も、向うの憲兵まがいの何かそういうような者も、両方で立会つて、車の走つて来たあとを白線を附けて、写真を撮つたり、いろいろその事情はよく、みんな当時の証拠を確保されておるのですが、私は今自分で怪我をしたから、この機会にお尋ねしておきたいのは、大体聞くところによれば、その附近の話だけでも女や子供たちがそういう類の米軍関係のものにしばしば被害を受けておる。みんな泣寝入りをしておる。こういうことをその現場でもうすでに私は聞いて来た。これらは日本の運転手はどんなに練達であつて、注意をしておつても、丁度鼠に石油をぶつかけて火をつけてとつ放したようなものです。その被害の及ぼすところ測り知らざるものがある。こういうことが、一体日本の官憲が日本の自動車の安全のためそれぞれ取締るように、向うの運転手、そういう者を取締る何か取極か、そういうものが、法律的の根拠というものがあるんだかないんだか、こういう点を先ずお尋ねしたいわけなんです。その真意は、今どのくらいあるか、資料を出して頂きたいと思うのですが、あとでお願いしますが、恐らく全国では何千、何万じやないかと私は思うのです。こういう種類のものは皆泣寝入りをして、或る者は生命を失い、又いわゆる涙金を僅かぐらいもらつて、そうして泣寝入りをしておる者がたくさんあるのだろうと思うので、この機会に私はそういうことをお尋ねし、明確にし、そうしてそういう不幸な者に対しては何とか一つ救済の途を講じにやいかん。現に運転手が重傷を負つて寝ておつても、アメリカから私のところへもはがき一本の挨拶もないわけです。こういう、まあいわば不遜だというか、不遜ということを考えることは誠に私の独善だかも知れません。向うではどう考えておるかわかりませんが、そういう慣習はないのか知らないが、これでは非常に国内の危険、不安というものが濃つておるのじやないか。ひとりこれは自動車だけじやないかと思うのです。ですからこの自動車のたまたま問題で私は十日間ほど身動きができないで休んでおりました。ようよう二、三日来こうして出て来ておる。全身です。右、左の手、又ここらは深く傷になつている。ガラスの破片なんか至るところ膝関節はやられておる。指は一本脱臼してしまつておる。ここをやられて頭がじんじんれして、洋服着ておると堪えられないで、こうして和服を着ておるわけです。こういうようなことで、私は犠牲になつてもいいが、多数の国民がこのような状況に置かれても泣寝入りをして、どこに何を訴えることもできないというような、そういう不自由な国は私は誠に困つたものだ、こう考えるので、たまたま皆さんがそういう方面に、事務的な面に携わつておられるのだから、今までの経験、そうして状況等について調べられておる点だけでも一つここで御説明願いたい。そういうことに関連して一つ一つで一問一答なんと、そういうことはいたしませんから、一つ説明願いたい、こう思うのです。
  67. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 只今駐留軍行為によるいろいろの被害は遺憾ながら全国にたくさんありますことは非常に残念に思つております。同時に木下議員のお径我に対しましては衷心からお見舞申上げます。今のお話順序不同に申上げたいと思いますが、件数は非常に多いのでありますが、実はこの件数を的確に全国押えるということは非常にむずかしくありまして、今ここに責任を持つて何千件、何万件と申上げることは差し控えたいと思いますが、非常にたくさんございます。それが把握しにくいことは、お話のようにちよつとした、まあ仮に女の方或いは年寄りの方、泣寝入りになるものがあつて、表面に現われて来ないもの、それからちよつと表面に出ましても、すく当事者同士で示談する。なかなか示談を好む傾向がありまして、ついその場で簡単に示談をしてしまうというようなものもございますので、それからその取扱いの官公署というものがいろいろに亘つておりますので、そんなよりな関係からもなかなかこの数量の把握が困難でございます。一番比較的正しいと思われるのは、警察報告を私どもは基礎にして一応の計算等を立つておりますけれども、これとても必ずしも正確というわけに参りません。それから次の問題は、手続がなかなか複雑になつておりまして、この仕事は府県知事に一部委任をいたしております。法律の上で……、そんな関係での調査とか、或いはどれぐらいの被害があるかというようなことの一応の算定等は府県知事がやりまして、決定権は知事はありまん。決定はもよりの調達局長が決定をする。併しこれも或る金額以上、今五十万以上と記憶しておりますが、それくらいになりますというと、本庁に協議することにたつております。さようにしてきめられたものが府県知事に通達されて、支払いはこれは府県知事が支払つておる。なおもつと第一線の手続からいえば、市町村長から府県知事のほうへ出し、市町村長は一番大事な書類としては事故発生証明、これは警察署が作りますが、そういう事故発生の証明を警察から作つてもらつて、そうしてそれを附けて、勿論完全な書類からいえば、牛方の加害者の名前、階級、所属、そういうようなものを、まあいろいろありますが、とにかく市町村長から府県知事に出して、府県知事がもより調達局長に出す、極く例外の場合に本庁の協議にかける、かようなことになつて繁りまして、この問題を一番私ども悩むのは、事の大小にかかわらず、軍のほうの担当者に対して公務上であるか公務外であるかということの決定を受けなければ、これはもう前提条件であります。これを公務上であるという決定を受けないというと、今の手続で支払いができなくなります。併し公務外でありましても別に、例えば公務上ではないけれども、向うに非常な手落ちで責任があつて、放つておくことは非常に相済まんというようなときには慰藉料として駐留軍が出す場合もあります。それから先方では出しませんが、日本側として放つておいては非常にお気の毒だというような場合には見舞金として出す場合もあります。併し正式の手続関係はどこまでも損害補償という形になるわけであります。そんなような手続になつております。  それからこの具体的の問題で、まあ木下議員のお話の場合には、その現地の所轄の警察署が知つておればこれが一番いいわけであります。とにかくその事故が、軍のトラックなり何かによつてつたということの証明を取つて頂いて、そしてそれをまあ市町村長に出してもいいし、或いは手続等は市町村でも大体知つておるはずでありますので、私のほうでその場所を伺つておきますれば、どんなような書類を作つたらいいとか或いは手続をしたらいいというようなことは、なおはつきり私は書いて木下委員にお上げしてもいいかと思つておりますが、今のお話では十分補償ができることと考えております。ただ書類作成等に少しややこしい手続がありますので、非常に恐縮に存じますが、そういう手続をとつて頂いて補償はするようにいたしたいと考えております。  で、私どもの指導方針としては、泣寝入にはなることをできるだけなくするように、こういう手続があつて救済ができるということをできるだけ宣伝をするに努めておりますけれども、なかなかまだ思うに任せない点があります。なお又示談ということにつきましても、必ずしも私どもは示談を欲しておりませんので、余りいい加減な条件で示談をしないようにという指導方針はとつておりますが、何としても表面に現われないうちに駐留軍の加害者と本人との間にきめてしまいますと、どうも如何ともしがたい場合が多いので、非常に残念に思つております。以上若し漏れておりましたら……。
  68. 木下源吾

    木下源吾君 今の点は、一つはそういう事故の起きる原因に対する質問と、一つは起きた場合における損害とか或いは補償とかいう問題なわけなんですが、原因については向うのほうの運転手などを日本の交通取締規則といいますか、或いは自動車免許規則といいますか、そういうものに匹敵するような取締を一体やつておるのかどうかということが一つと、一つはその補償の問題については、何か法律的に権利として日本国民が主張し得る法律があるのか、そういうような点を承わつておきたい。
  69. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 今ちよつとお答えが漏れまして恐縮でしたが、原因の取締といいますか、という問題でありますが、運転手等向うで、私もちよつと直接の担当外でありますので、或いは幾分想像も交ることがあるかも知れませんが、運転手等先方で試験を通つて駐留軍としての免状を持つておる場合には日本のほうでは別にやらない、そのままできるはずであります。それから交通取締のほうにつきましては、これは駐留軍でありましても普通の日本の交通取締には従つておるはずであります。ただ何としても教養の少い、或いは中には酒にでも酔つておるような場合等は、つい取締を無視して走つたり、或いはゴー・ストップを無視して通つたりするようなこともありましてとにかく非常に交通事故が今の民特の場合……民事特別法の被害のうちの大半を占めておるような状態でございます。それからこの被害を受けた場合の要求する国民の立場は、今の民事特別法に関する限りは権利として主張ができる、かように考えております。
  70. 木下源吾

    木下源吾君 私資料を一つお願いしておきたい。今の事故の数は正確にはわからんでもよろしいから、過去における状況を一つ、それとそれがどういうように補償されたかという具体的な件数といいますか、そういう内容についての資料を一つ出して頂きたい。それから交通事故は日本の運転手の交通事故と比較してどういう状況になつておるか、これは神奈川、東京、埼玉、主として東京の近郊だけでもよろしいです。日本の乗用車なら乗用車の数に対してなんぼあるのだ、一方は駐留軍関係の車がどういう種類のものがどのくらいでその数がどうという、つまり事故の比較を私は出して頂きたい、ということは、結局どうしてもあれは形式的な取締ではいけない、具体的な事例を示して、先方さんに厳重にやはり交通事故を防ぐという建前に立たせなければいけないと思うので、そういうためにそういう資・料をお願いしておるわけですから、一つ御面倒でも出して頂きたいと思います。私の場合は、車は川越市からの招聘によつてつたのです。従つて車は川越市の車です。運転手も川越市の運転手です。それからやられた所は朝霞という村か町ですね。それで一時気絶をして、手術を受けるために二キロほど病院のある所まで行つた。そこは志木町といいますか、そこで私はすぐそこの町長を呼んだ。それで現場が朝霞だということはあとで聞いたので、それだつたらすぐ現場の朝霞の町長か村長を呼べばよかつたのだけれども、病院の所が二キロほど離れた所で、志木町長は私のところへすぐ来た。そういう事情になつておるので、警察もすつかり調書を三人別々に坂つておるからよくわかるわけです。これはあなたが今お話のように泣き寝入りをしたり、単独で話合いをされたりすることは好まんという精神に基いてあなたのほうも参考までに、進んでどういう状況であつたかを一つ御調査を願いたい、こういうふうにお願いいたします。今申上げるように川越の市長も来ましたし、警察署長もやつて来ました。こういう関係で向うのつまりそういう町村の理事者は皆来たのですから、事情はよく調べております。あなた方のほうでも進んで問題を解決するという建前に立つてよく御調査を願いたい、こういうふうにお願いしておきます。今の資料は是非一つ出して頂きたい。必要があれば我々又国会でそういう不幸なことがたびたび起きないように、起きても補償できるようなことを考えにやならんと、こう思つております。どうかお願いします。
  71. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それではちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  72. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 速記を始めて。  それでは本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後三時十一分散会、