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1953-03-06 第15回国会 参議院 水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月六日(金曜日)    午後二時十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     秋山俊一郎君    理事            木下 辰雄君            千田  正君    委員            片柳 眞吉君   政府委員    調達庁不動産部    長       川田 三郎君    水産庁長官   清井  正君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    水産庁次長   岡井 正男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国に駐留するアメリカ合衆国軍  隊の行為による特別損失補償に関  する法律案内閣送付)   —————————————
  2. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今から委員会を開会たします。  前回に引続きまして、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案につきまして質疑を継続いたします。
  3. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 前回までの質問で、補償算定方式は大体了解いたしましたが、ただその算式計算された八〇%をするという問題は、これは私はどうしても理解がしがたいわけであります。法案の第一条第三項においても、「第一項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。」と書いてあつて、例えば法案が、通常生ずべき損失基準として定めるとか何とかあれば、これは八割とか、九割とかいうような、成る程度のその間にニューアンスが出ると思いますが、はつきり「通常生ずべき損失」ということになつておりますると、計算された損失額の八割では、これは私は納得しがたいと思うのであります。特にこの前も申上げましたように、第五条で「補償金の額に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から九十日以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。」、これは私はこの前の政府当局説明では理解がしがたいのであります。もう一遍その点につきまして納得の行く説明を願います。
  4. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 只今計算された損失額の八〇%を補償するのでは、通常生ずべき損失にならない。そのお言葉通りですと、まさにそうなりますが、計算された損失額のではないのでありまして、計算された利益額の八〇%を以て損失額とみる。つまり計算される利益の八割程度が通常生じ得べき損失であろう、こういう見解に立つたものであります。従つてそれが八U%でなく八五%が相当であろう、こういう議論は成立つのでありますが、只今政府といたしましては、計算された利益の八〇%を以て通常生ずべき損失である、こう考える次第であります。
  5. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 如何にも巧妙な答弁でありますが、私は理解がしがたいのであります。要するに防潜網その他の施設で、それがなければ上げ得べき利益なり、収入なりを填補するというのがこの法律の建前になつておると思う。私は先ほど損失の八割といつたことは、或いは言葉の表現が悪いかも知れませんが、やはりこういう特殊の制限がなければ、上げ得べき利益乃至は収入をカバーする、ほかに転業をするというようなことは全然みないで、要するにこの制限の結果、上げ得べかりし所得なり収入をみてやる。ですから政府がほかの、例えば漁業が成る程度制約を受けたからほかのほうの事業をやつて、そちらの収入もあるから八割でいいとか、或いは七割でいいということであれば、これは理論として一貫しますが、そういう考え方は全然ないのであつて、ほかの実際上の仕事所得があるかも知れませんが、免れとは無関係に、とにかく漁業関係のみからこの制約がなければ、上げ得る収入なり所得補償するのだということになれば、私は八割という説明はどうしてもいかんと思うのでありますが、重ねて御質問するわけであります。
  6. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 只今申されましたように、ほかの収入があるということと、就業上の業努についておる危険負担がないということ、それを二〇%とみたおけでありまして、そういう利益が別に経済的に見込まれる、そういうことが漁業につきましてのみならず、農業のほうでも、やはり農業を接収によつてとめられた場合に雑収入農業上の危険負担がなくなる、それを二〇%にみて実際に業についております場合の一〇〇%の収入よりやや低目に補償額を算定することが、却つて業務をとめられる者と、とめられない者との権衡を保つゆえんである、こう考えたわけでありまして、お説のようにやはり雑収入があるというような回も一つ考え要素に入つております。
  7. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 そうなつて来ると、今までの説明とは全く違うのであつて漁業が成る程度できなくなつたから実際にはほかの仕事をやつて行くと思いまするが、他の兼業収入をみて行きますると、これは各個のケースによつて遅いが出て来るのであつて、ひとしく一割じや足らん場合もあるし、或いは剛つて他の業種よりもいいという場合も起るので、今までの説明では、要すなに他の仕事から入つて来る収入は一心みないで、漁業の点から、要するに制約の結果失つた収入なり所得補償してやるのだと、こういうふうに理解して、今までの御答弁ではそう理解ししおつて、今日他の雑収入もみるのだ。いうことになると、私は今までの御答弁と非常に違つて来ると思う。これは成る程度この法案運用解釈上非常に重大な問題だと思いますので、もう一遍その点を明らかにして頂きたい。
  8. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 今までの答弁もそういうことに触れておつたと存じます。今までの答弁を今日急に変えた理由を持出したというつもりはないのでありますが、実際に働いている者が、仮に年間十万円の収入しかない、それに接収された人に十万円の補償をいたしますと、働いている人はもうそれ以外に精力をさけませんと十万円それきりであります。一方は仮に十二万円の収入補償副業と申しますか、他の雑収入によつて得られると却つて権衡が起るというわけでありまして、そこを二〇とみるか一五とみるかは別問題でありますが、やはりこういう減額した歩合を掛けておかなければ、遊んでおつても働いておつたと同様の収入があるという結果になりますので、その調整をさせて参頂きたいと思うのであります。
  9. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 ですから、私は実態的にはそ、ういう御意見もあると思うのです。ただ如何にも法律案の条文を見て参ると、一番基本の第一条の第一項においても、要するに、左に掲げる行為により、従来、事業を営んでいた者がその事業経営損失をこうむつたと、要するに漁業経営損失をこうむつたというわけでありまして、その結果漁家の経済が苦しくなつたとか、或いは農業経済が苦しくなつたということであれば、それはほかの収入を入れてもやつて行けないからそうみるのだということになりますが、第一項の「その事業経営上」ということで非常にリンクして書いてあるので、而も用三項では「通常生ずべき損失」ということをはつきり謳つている以上、他の収入があるとかいうことは、これは法律解釈上は私はそれはできないのじやないかと思います。
  10. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 私は今計算が明確になるということを念願して雑収入ということを申しましたが、パーセンテージでは現われないのでありますけれども漁業にしても海難の危険がある、農業では虫害、天災がある、そういう無形の、併し結果においては経済的に有形になるところの危険が全然ないのであります。十万円儲かる仕事があつた場合、それに八万円の補償をもらいましても、その差額というものは一種の就業上の危険負担保険料的なものとも考えられますので、第一条の事業経営上こうむる損失、これにつきましては、誠にお説の通り事業経営の面だけで副業考えないで計算された損失額をみる、即ち事業上の利益そのもの損失額とみることが妥当であると存じます。けれども、今のようにそれだけの利益を上げる場合には、必ず漁業であれば海難でありますとか、そういう経済的損失をこうむる危険を含んでおります。それが全然補償の世界においてはもう実現する虞れがないのであります。従つてそこの危険負担部分を八〇%にする差額二〇%の要素とも考えられるわけであります。
  11. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 どうも私は重ねての御答弁では理解できないのであつて、というのは、この算式の表にもありまするように、損失を算定する基準収入は、要するに平年度収入であつて、豊漁も不漁もありますが、それを平均した平年のあれでいつておりますから、或る程度ここに危険のプラス、マイナスは入つておると思います。それを重ねて算定された八〇%を取るということでは、二重にむしろ保険料を支払つていることになるのであつて、依然として理解ができないのですが、そこで、この前の御説明では、これは調達庁では我々の意見に対しまして庁議を場開いて、調達庁としては完全に一致をした御意見になつたそうでありますが、他の官庁、特に水産庁とはまだ完全な理解がないということでありましたが、水産庁当局は、かようにして制約なかりせば得べかりし収入の八割ということで水産庁が納得せられるかどうか。これは非常に大きな問題だと思うのであります。ここでやつて水掛論でありますから、最後の場合には民事訴訟決定する以外には、法律解釈でありますから、解決の途はないと思いますが、いつまでたつて議論が尽きませんから成る程度に打切りたいと思いますが、水産庁はどういう考えを持つておられますか。
  12. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 只今片柳先生からの御質問でございますが、御尤もなような場合もあるわけでございまして、事実八〇%では難儀になるというような場合もありましようが、併し過去における漁船がやはり同じような関係で、制限された場合に計算された過去のケースは、やはり八〇%、そうすると、失業保険などをみましてもやはり八〇%というのが大体計算の基礎になつておるようであります。多少の理窟はありましようが、いろいろな従来のそういうケースを勘案し、農業など同じ原始産業の他産業との見合いも考え、まあ不十分ながら先ずこの辺で納得せざるを得ぬじやないかというような気もいたしておるわけであります。
  13. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 水産庁当局意見としては、甚だ私はむしろ不満に思うのでありまして、過去の例がどうかということは言わないで、法律をそのまま見れば、私は当然、私が裁判官であるとすれば、そういう解釈を私はするだろうと思う。すつかりその例ではありませんが、例えば米価なら米価決定する場合においては、必ずしも一本できめない、生産費とその他の経経上のことを参配してきめる、勿論生産費は出て来ますけれども、その他のフアクターを入れて、ほかの物価との均衡その他を見てきめるという、何かそこにニュアンスがあるのですが、これはさつき言つたように「その事業経営損失をこうむつた」場合は、「その損失補償する。」、而もそれは「通常生ずべき損失」だというふうに明文化されておれば、私はどうも水産庁当局説明も少しおかしいと思うわけでありますが、併しこれは水掛論であるので、幸いには第五条で「訴をもつてそ一の増額を請求」とありますから、これは最後は裁判所の決定に待つほかないと思いますから、この問題はこの程度で打切るよりほかないと思いますが、解釈としては、私は調達庁水産庁のいずれの解釈にも賛成いたしがたい、納得しがたいということをはつきりさせておきます。それに関連して参りますと、水産庁長官もおいでになつておるのでお聞きするのであります。これは農業の場合と違つて農業の場合には、農業上の補償という以外に、農地が取上げられれば他に移住をするとか、そういう転業と言いますか、そういうことを実際はみておるわけです、作離れに相当する場合もたしか五年間のあれをみておる。これで行けば、若し私の解釈のごとく一〇〇%の補償をするという場合、仮に政府の言うように八割で行つても、それがいつまでもやつていると、果してこれは日本の大きな国民経済見地から見て、大して仕事をせんでも大体の所得が保証されるという態勢がいつまでも続くということは、私はやはり大きな見地からはどうだろうかという感じがするのですが、そこで水産庁当局は、駐留軍のこういう施設がいつまで続くか見通しはなかなか困難だ思いますが、私はやはり相当期間続くものとみなければいけませんし、特に現在の政府においては当分の簡単備は持たないということを言つておれば、駐留軍駐留期間というものは、相当長いものとみなければなりませんが、そうなつて来ると、水産庁がいつまでも損失補償だけで甘んずるか、農業方面のようにむしろ他の漁業に転換するとか、或いは漁業が不可能であれば農業その他の他の産業に転換して行くというようなことを指導して行かなければ、いつまでもこれに安んじて行くことはいかんと思う。そういうお考えがあるのかどうか。若しこれでいいのだということになれば、積極性を欠くのじやないかという感じを持つのですが、その点如何でありますか。
  14. 清井正

    政府委員清井正君) 只今の御意見でございますが、私もこのアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償について、只今こういうことで単に補償をするという消極的なことだけでなしに、むしろ当該関係漁民を他の漁業、或いは又進んで地種産業に転換させる積極策を講ずる必要がないかという御質問のようでございますが、私は結構な御意見であると拝承いたすのであります。無論水産庁といたしましては、単にこの問題のみならず、一般的にこれはマッカーサー・ラインの撤廃による漁区の拡張に伴いまして、或いは又昔に比べまして最近の漁船大型化或いは能率化等の情勢に伴いましていろいろいわゆる漁業調整一つ方策といたしまして、一般の漁業より他の特殊漁業に転換せしめるとか、或いは沿岸を沖合沖合を遠洋というふうに漁業を転換せしめまして、そして事態に即応する適当な方策を講じて参るつもりでおるのでございますが、この問題につきましても、私どもといたしましては、単に消極的にこれに甘んずるということであつてならないことはお話通りであろうと存ずるのであります。関係の者にそれに妥当する補償をするということは勿論でありますが、更に事態推移等に応じては適当な就職斡旋の方途をも講じて行かなければならないのじやないかと考えております。只今具体的にはつきりどういう方向ということをお答え申上げる準備はございませんけれどもお話の御趣旨は誠に御尤もだと思うのでありまして、今後この問題につきましては、単に補償によつて甘んずるという消極的な態度でなしに、進んで関係者をいたして就職斡旋その他の積極策を講ずるということも補償の問題と併せて進めて行かなければならんものと考えているわけであります。具体的にはちよつと只今答弁申上げかねますが、方針としては誠に結構なことでありますので、今後はそういうふうに進んで参ろうと思つております。
  15. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 それでこの程度にしておきたいと思います。最後に一点、第一条の第一項にこれは字句だけの問題でありまするが、「適法農業林業漁業又は政令で定めるその他の事業を営んでいた」、こういうふうに書いておりますが、調達庁のほうにお尋ねしたいのでありますが、不適法農業林業を営んでおるというのは具体的にどういうのがありますか。
  16. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 漁業でありますれば、密漁もございましよう。それから農業林業であれば、林業では盗伐などの利益があつたというのは認めない。農業の場合は、割合にその実例が想像できないのでありまするが、盗伐密漁に類するような、人の農地無断で実際種播きをしてしまいましてその収穫があると、こういう権利を主張した例がございます。そういう場合は適法かどうかをよく判断いたしまして、そういう社会秩序を乱すような者にまで補償はしないという趣旨でございます。
  17. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 まあ非常な潔癖な書き方であるのですが、ところが農業ではもう他人土地農業をやつておるというケースは相当あります。これはむしろ農林省でも或いは暗黙のうちにそれを奨励とまでは行かんのですが、やらしておる場合が相当あると思います。それは例えば河川敷地で或いは牧畜をするとか、或いは河川敷地に御覧のようにこの附近でも鉄橋通りますれば、多摩川の鉄橋でもそこに麦なり野菜を作る、或いは堤防の草で牧畜をやるというような問題は、非常に最近は畜産局も取上げておりますが、これは必ずしも建設省の正式の許可がないでも、特にそういう堤防管理等に支障がなければ、これを黙認しておるケースが相当あります。他人土地である所で農業なりをやつておる、それが損失を受けないということになると、実態的には相当問題があると思います。殊更適法にということを謳わぬでも、私は他にも例があるやに聞いておりまするが、余計な字句ではないかというような感じがするのですが、如何でしようか。
  18. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) やはり適法にというのを入れておきませんと、他人権利を侵害した状態収益を上げておつたものが、損害補償要求をいたしました場合、そこに本来の権利者との間に紛議が起る虞れがあります。それで適法という字句によつて、その事業経営上の利益が果して国のこういう特別補償の対象になるかどうかを吟味し得る余地を残しておきたいと思います。若しこの適法という字句が入りませんと、もう法定乃至は政令で定められた事業をやつておりさえすれば、一定の原因によつては必ず補償を要求できるということになりまして、社会的な均衡を保つことができなくなるんじやないか、そういう見解から適法ということは入つておると思います。
  19. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 これは詳しくは申上げませんが、私はこれはやはり一つの全然別のものをここに混淆するきらいがあるのじやないかということをいろいろな点で実は痛感するわけですが、ただ漁業法違反をすれば、それは漁業法で定めておる制裁なり、それを課すればよいのであつて経済上の所得、例えば盗伐はいかんのです。これはもうむしろ刑罰であつて、恐らくその所得はむしろ没収さるべきものでありましようから、とにかくその法律による刑罰なり、制裁と、経済上の補償の問題を混淆するのは間違いじやないだろうかということを思つております。私は一つの例を挙げたいのですが、私は役人生活を長くやつてつたのですが、例えば役所で非常に長く勤めておつた人が、何かふとした出来心から例えば刑事上の責任を負つたという場合に、今までは退職金であるとか、給与を全然やらんというような実は考え方があつた。これは私は、当時の占領軍当局においてはそうしたわけでありますが、アメリカではそれは非常にクリアーに差別をしておるわけであります。それは刑事上裁判をした場合には、国家公務員法なり或いは刑法の責任をとらせればいいのであつて、とにかく十年なり二十年役所に勤めておれば、過去の勤労に対する保障という問題は、当然退職金なり給与をすることが正しいのだ。家族はやはり若し給料がとまれば困つてしまうということで、昔の日本役所のように、何か悪いことをすれば全部生活保障に類する給与なりをとめてしまうことは、私は一つの制度の紛淆だと思いますが、それにやや類した問題があります。若し違法の行為をしておれば、或いはこれは森林法なり漁業法で処罰すればよいのであつて、泥棒をしたのでは正式の所得ではない。ただ他人土地なり道路でやつてつても、それでできた米なり麦を売つて取れば、それは正規の所得としてみていいと思うのであります。これは他人の金を借りておるから、それを取上げるなり或いは損害賠償ということは別個のルートで考えらるべきもので、それまで補償問題をつくるということはいかんことだと思います。これはあらゆる場合にそういう考え方を持つております。ここにその場合が出たものですから、私の意見を申上げるわけでありますが、どうかよろしくお願いいたします。
  20. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 適法という解釈は、私ども補償に当りましては、相当広くとりたいと存じます。他人土地無断で借用して、おりましても、実際今までこの法律以外土地の接収をいたします場合に、無許可で建築をしておつたものの立退料、これも払つております。それから農地法耕作権のない者に対しましても、一応所有者補償を払いますが、その際に実際に耕作しておつた人間損害をその所有者がそういう行掛りを認めて、所有者自身の立場から補償してやるという、いわば分け前を話合いを付けさせて定めてから、所有者への補償を行1う、こういう方法をとつておりますので、そういう事例から御判断願いますと、この適法というものに対しても、それほど厳格に、一々やつている事業とその関係法規を照し合せて排除をするほうを念願としてやるという態度はとらないわけであります。運用上を一つ御期待を願いたいと存じます。
  21. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 その適法という字句は成るべく広く解釈をしたいと、むしろ逆に狭くゆるやかにということでないと、只今冒頭に「適法に」というのは成るべく広く解釈して行きたいということですが、むしろ狭くゆるやかにという御趣旨だと思いますが。
  22. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 誠にその通りであります。適法の結果がゆるやなになるということでございます。
  23. 木下辰雄

    木下辰雄君 第一条に「従来適法農業林業漁業又は政令で定めるその事業」、こうなつておりまするが、漁業においては、すぐそれを処理するいわゆる製造をかねておる漁業もある。又いわしあたりを取つて、そのいわしを処理する、即ち煮干とか丸干とかいうやつに買つて製造するということを業としておる製造業者もおるのです。この人は漁がないという場合においては、そういう人は共に失業する、こういう結果になりますが、私数日前に千葉県に行きまして、漁業組合長大会の席上でこれは非常に議論になつてつた。この「政令で定めるその他の事業」に製造業というのが含まつておるだろうかということを一つはつきりお述べ願いたいと存じます。
  24. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 「その他の事業」のうちに製造業は今のところ政令の際に含まれる可能性がない見通しでございます。それでいわし加工と言われておるような状態につきましては、純粋の加工面においては、従来の移管作業でもその面の収入を査定いたしまして、補償金額から減額しております。そういう傾向もありまして、やはり第一次的な影響を受けた事業に対して補償をする。従つて加工業者が若し第一次的な漁撈、魚を取る仕事に従事しておる、そこから収益を得ている、それが失われたということになりますれば、この漁業補償そのもの補償される。この特別立法の範囲でもそうでありますし、現在漁業制限に関する法律補償されておるものもございます。その面に丁度適用します場合には、その漁業補償のほうでもそういう漁撈面についての収入減補償されるということになつております。
  25. 木下辰雄

    木下辰雄君 今言われたように第一次即ち、漁業者みずからが製造するというのもあるが、あぐりとか、きんちやくとかで取つて来たものをそのまま生を買つて処理をすることを業としておる製造専門業者もおる。それで第一次のほうは漁業補償もあるからいいとしても、漁業者からこれを買つて補造する人は、漁撈がなくなれば失業する、こういうような結果になると思いますが、そういう場合においては、これは何ら補償する用意がないというわけなんですね。
  26. 川田三郎

    政府委量川田三郎君) さようであります。それは漁業の面以外にも運輸業旅館業、興行、映画とか劇場、そういうものが第二次、第三次には出て参りまするので、どの辺で切るかということになりますと、これは第一次のところで切らなければ、財政上も到底収拾つかず、事務上にも、今この法案を作ります際に、それを全部取入れるということは、法案自身の実現が非常に遅れるということから、今のところ、その面までは拡張しないという見解でございます。
  27. 木下辰雄

    木下辰雄君 これは質問の時間ですからして、別に質問以外に意見も申しませんが、私の意見を討論の際申上げたいと思います。大体私の質問はこれで終ります。
  28. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 私からこれに関連してちよつとお尋ねしたいのですが、この法律によりますと、政令で定める行為と、こういうことになつて、これは政令でどういうことを定められるかわからないのでありますが、実はこういう実例があるのです。長崎県の犬村湾に双島という島がありまして、その島が占領直後からですが、演習地となりまして、そうしてこれはもと日本海軍もやつてつたのでありますが、米軍によつて大村湾の一角からその島を目当に射撃をする、こういうために初めから松の林が欝蒼と茂つてつた島を切り倒し、木を伐つてしまつて、而もそこにどんどん実弾をぶち込んだために全くの裸島になつてしまつたのみならず、その砲弾の破片が四辺に飛び散つたり、或いはその島が崩れて沿崖にいろいろな貝類であるとか、魚族の棲息している岩礁のどろどろとしたもので埋まつてしまつて非常な損害を受けておる。併し演習をやつておりまして時分には、これに対して補償金がでておつたのでありますが、この演習がやまつてしまつてそのまま放置される、従つて今日ではその周辺では漁業も何もできなくて、非常に開放はせられたが、何にもならないことになつてしまつて、而も補償は一文もない、こういうことで地元の漁民は非常に困つて、これに何らかの措置を講じてもらいたいという陳情も出ておりますが、そういう問題に対しまして、この法律において処置ができるのでありまするか、この点を伺いたいと思います。
  29. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) この法律の一運用でできると存じます。それはどういう観点からかと申しますと、今のように漁場になつてつた所が軍の演習の影響により速して、将来漁場としての効用を失う、まあ現に失つておるというような場合、これは事業で申しますならば、一種の休業状態とよく似ておりますが、休業になつた、廃業にな  つた場合、どの期間までを補償で見るかということは、不動産補償のほうでは一定の取扱がだんだん例ができて来ております。従つて漁場の世界におきましても、そういうふうに従来の漁場の状況が変更してしまつて、実質的に失業である一年間なり二年間の所得を一応補償しまして、それで打切る、そういう話合いがつきますならば、そういうものは本法の運用によりまして、何らか損害を補填するという取扱をいたしたいと存じております。これは私ども考えでありまして、水産庁御当局において、はもつと積極的なお考えをお持ちでありましようし、国庫当局では、それを成るべく短い期間だけの打一切補償にせよという場合もありまして、結論は只今はつきりは申上げられませんが、私どもとしては、この法案に軍の演習という行為政令で定めたいと存じております。従つてこれは法」一定の事業でありますから、運用によりまして何らかその損害を緩和する方法一をとれるのではないかと考えております。
  30. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 大体御意思はわかりましたが、そういたしますと、この法律によつて、内閣総理大臣に書類を出す。第二条の規定によりまして、補償なり、或いは漁場を復旧するという経費の支弁を請求するといつたような処置を第二条によつてとることができると、こう解釈してよろしうございますか。
  31. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その補償の方法に、つきまして、丁度只今おつしやいましたように、漁場の回復というような線が一番適当じやないかと存じますが、そういう方法でこの要求としてお取扱することができます。
  32. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは水産庁に一応伺いますが、今私の質問したことに対して調達庁から御答弁がございましたが、こういう事件に対して、水産庁に対する何か要請等が出ておりましようか。
  33. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 只今まで出ておりません。
  34. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 今後この問題が出て来ると思いますが、どうか出て参りました際には十分、水産庁も勿論議にあずかることと思いますから、一つ御善処方を要望しておきます。ほかに御質問はございませんか。  それでは、本日は議員の御出席も少いようでありますので、このまま継続いたしまして、次回に又他の議員が出ました際に質疑のある場合には質疑をいたしたいと存じます。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後二時五十八分散会