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1953-02-18 第15回国会 参議院 水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十八日(水曜日)    午後一時四十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     秋山俊一郎君    理事      千田  正君    委員            青山 正一君            片柳 眞吉君            木下 源吾君   政府委員    調達庁不動産部    門       川田 三郎君    海上保安庁長官 山口  傳君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達麿君   説明員    水産庁次長   岡井 正男君    水産庁漁政部経    理課長     高橋 泰彦君    海上保安庁警備    救難部公安課長 高見 正夫君    第八管区海上保    安本部長    池端 鐵郎君   —————————————   本日の会議に付した事件証人喚問に関する件 ○連合委員会開会の件 ○水産政策に関する調査の件  (朝鮮水域における日本漁船退避命  令に関する件)  (漁港に関する件) ○日本国におけるアメリカ合衆国軍隊  の行為による特別損失の補償に関す  る法律案内閣送付)   —————————————
  2. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今から委員会開会いたします。  お諮りいたします。漁船船員射殺事件に関する件につきまして、前回の委員会において参考人から意見を聞くことに決定いたしたのでありますが、これを証人として出頭を求めて証言を聞くことに変更したいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 御異議ないと認めます。それではさように決定いたします。  本件に関しましては、この証言を聞こうとします証人といたしまして、日本遠洋底曳網漁業協会常務理事加藤喜八郎福岡北湊町百十二番地の第二大邦丸通信士切手律、それから福岡北湊町百十二番地第一大邦丸船長濱行治長崎市旭町三の一第二十八海鳳丸船長久保田伴良長崎下石山町五十大洋漁業株式会社長崎支社漁業課長永井次作、この五名を喚問いたしたいと存じます。  なお本件に関しましては、法務、外務両委員会から連合委員会を開催して証言を聞きたいというような御意向もありますので、連合委員会開会いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 御異議ないと認めます。その日時につきましては、大体来週月曜日、二十三日が適当じやないかと思います。若し二十三日に本会議がなければ午前中から開きたいと思いますが、若し本会議があるようでありましたら、午後かつきり一時から開会いたしたいと存じます。五名の証言を求めます関係上、或いは又質疑等もありますので、時間が相当かかると思いますので、是非午後一時から始めたいと思いますから、御出席を願いたいと思います。それではさように決定いたします。
  5. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 次に本日の日程の順序を変えまして、朝鮮水域における日本漁船退避命令等に関する件、過般来新聞に伝えられておりますように、朝鮮水域におきまして、日本漁船に対して、海上保安庁当局から、その水域に対する出漁を差しとめたというよう記事が出ておりまして、日本漁業界に大きなシヨツクを与えておるのでありますが、この経緯等につきまして、保安庁当局の御説明を承わりたいと思います。只今保安庁から席においでになつておるかたは、海上保安庁山口長官池端第八管区本部長高見公安課長、古森第八管区公安課長、それから水産庁から岡井次長出席されております。では海上保安庁長官山口博君から御説明を願いたいと思います。
  6. 山口傳

    政府委員山口傳君) 只今朝鮮東海岸出漁いたしております日本漁船に対して、海上保安庁関係から引揚げようにという指令を出したというような情報が新聞に出ております。海上保安庁といたしましては、本庁からさような趣旨の指令管区本部のほうに出しておりませんし、管区本部とされても、そういつた一斉に引揚げるといつたよう指令式のものは何らいたしておらないのであります。何かの間違いじやないかと思います。本日は丁度現地舞鶴にあります第八管区本部長が所用があつて上京しておりますので、実は一緒参つたのであります。その間について管区本部長から申上げてもいいかと思います。さよう指令はいたした覚えはございません。
  7. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは池端第八管区本部長から御説明願います。新聞に出たのでありますが、その当時の模様についてお話願いたいと思います。
  8. 池端鐵郎

    説明員池端鐵郎君) 私は第八管区海上保安本部長池端であります。  当管区担任海区につきまして御参考までに申上げますと、福井県から島根県に至ります一府四県の沿岸が当管区担任海区でございますが、なおそのほかに主として韓国東海岸出漁船に対する保護任務をも担当いたしておる次第であります。只今お話のございました韓国東海岸から漁船引揚げの件でございますが、長官からも御発言がありましたように、当管区といたしましては、海上保安庁からそういつたよう指令を受けたことはなく、又第八管区海上保安本部といたしましても、そういつた指令現地に出したことはございません。なお又この件につきまして、現地に派遣をいたしておりまするところの巡視船について何かそういつたようなことがあるか確めたのでありますが、現地に派遣いたしておりますところの巡視船におきましても、現地においてそういつたよう指令を出したというようなことはないのでございます。何かの間違いじやないかというふうに考えております。
  9. 青山正一

    青山正一君 ちよつとこの際この問題に関連するかしないか、一つ長官なり或いは第八管区本部長一つ私お聞きしたいと思いますが、今のお話によりますと、そういつた命令は出したこともないし、又管区本部長さんも七ういつた命令を受けたこともないこいうふうなお話でありますが、私のまあ拙い考え方かも知れませんが、恐らく海上保安庁海上警備隊との又聞遅いあたりが、ここへこういうふうに現われたんじやないかとも考えられるので、一つこの際お聞きしたいと思います。海上警備隊のいわゆる組織とそれから海上保安隊組織、どういつた方面海上警備隊がおるか、そういつた点をお話願つて、そういつた点に或いは間違いが起つておるのではないかこ思われますので、一つ参考までに承わりたいと思います。
  10. 山口傳

    政府委員山口傳君) 海上保安庁保安庁との関係、特にまあ保安庁の中における警備隊との関係でございますが、御案内ように昨年の四月に海上保安庁の中に海上警備隊というものが生まれましたんです。当時はですから一緒でありましたわけでありますが、越えて八月の行政機構改革のときに、海上保安庁にそれまでございました海上警備隊航路啓開業務をやつておる掃海隊でございます、そういつたものが海上保安庁から分れまして、保安庁の中の警備隊という姿になつたのでございます。で私のほうの残りました海上保安庁の特に警備救難業務をやつております警備救難部仕事が間違われるわけでございますが、警備救難部仕事と申しますのは、これは全くのシヴイリアンで、密航であるとか密輸、或いは密漁、或いは法令の海上における履行、或いは海難救助といつ先よう仕事日常業務としてやつておるわけでございます。従つて海上保安庁中央機関といたしましては、全国を九つ管区本部に分けまして、それぞれ担任海区を持つて、そこでさよう仕事をやつて日常海上において船舶或いは漁船等と接触を保つて仕事をいたしておるわけでございます。一方保安庁のほうへ参りました現在の警備隊仕事でございますが、それは主たる業務は一種の団体訓練をやつておられるんでありまして、我々のほうと非常な違いを持ちますのは、基地が現在のところ横須賀舞鶴だけでございまして、まあ近々に一、二カ所殖やされる計画があるやに聞いておりますが、現在は横須賀舞鶴程度でありまして、そこで御承知のよう貸与艦艇をもとにして団体的な訓練をしておられる。そのほかに掃海隊がございまして、これが爆発物処理等にも一応当つているのであります。それで先ほど申しました密航密輸密漁、或いは海難救助というよう仕事は一応全面的に海上保安庁が責任を持つているわけであります。併し御案内よう海上保安庁艦艇も不十分でございますので、手が廻りかねたような場合、即ち相当大規模の災害があつて、そのために海上でいろいろと救助をやらなくちやならんような場合は、無論海上保安庁だけでは足りませんので、そういう際には無論応援を頂きます。或いは又海難救助仕事にいたしましても、非常に遠距離で大型船で、うちの船艇を以てしては救助作業が困難な場合には無論応援をしてもらいます。それから近海におきましても、私どものほうの巡視艇では力が及ばない場合に応援を頼むことができるようになつております。一応私どものほうでそういつたものを行政として担当いたしておるわけであります。
  11. 青山正一

    青山正一君 今長官お話によりますと、海上警備隊艦艇保安庁のほうの関係に属している仕事と、こういうふうにおつしやつたようであります。現に基地は大体横須賀舞鶴と、こういうふうなことをおつしやつているのでありますが、この海上保安庁関係は大体九つつて、そうしてこのいわゆる海難救助とか、そういつた建前仕事、或いは漁船保護とか、そういうふうな仕事をやつている。おのずから仕事のやり方が違つているわけで、問題になるのはこの第八管区舞鶴を本区としておるのであつて、それから今お話を聞きますと、横須賀舞鶴警備隊基地がある。その舞鶴警備隊のほうから出したものと海上保安庁と混同しておるようにも考えられるわけなんですが、その点どうなんですか。何か水産庁あたりで今の問題何か……、
  12. 山口傳

    政府委員山口傳君) 私の想像でありますが、平常の仕事海上保安庁担任、それからいわば警備隊のほう、これは予備的存在でございまして、今回の問題が向うからそういつた指令が出るというようなことは私想像がつかないのであります。出しておるはずはないのであります。
  13. 青山正一

    青山正一君 警備隊といえども…。
  14. 山口傳

    政府委員山口傳君) はい、さように存じます。
  15. 岡井正男

    説明員岡井正男君) これに多少関係があるのではないか、或いは又こういうことから今日問題になつておるようなことに相成つておるのではあるまいかと想像せられるような点があるのでありますが、それは今から約十日くらい前ですが、日本海の香住底曳業者から水産庁陳情がありまして、それによりますと、防衛水域で、いわゆるクラークラインで、あの附近操業しておりました香住漁船相当の漁獲を収めて喜んでおつた。然るに約十日くらい前ですが、韓国軍艦から逮捕されまして一応釜山まで引張られて行つた。そうして間もなくすぐ釈放になつた。その時分に決してもうこういう所へ来ちやならん。即刻防衛水域からは操業などやらないで立退いてしまえと、こういうふうに韓国軍艦から言われたと、それで香住の連中は内地側では漁がなし、せめて防衛水域あたりでやれば採算がとれる、この際に今までとにもかくにもやれておつたのに、向う軍艦から手ひどいそういうふうな退去指示を受けたためにどうも行けんのだ、外交手段によつてなり、何とかもう少し操業向うでやれるようにできんものだろうかというよう意味陳情があつたのであります。そういたしますと、そういうふうな退去命令というのは、いわゆる日本側の官庁からなされたものでない。むしろ向う側のほうからそういうふうなことが出たのを漁業者退去命令によつて行けなくなつた、こういうふうに単に結果だけを言う者があるとすれば、これが拡まりまして、国内のいわゆる我が国のほうからそういうふうな命令でも出たように誤解されているんじやあるまいか、こういうふうにも思われるわでございます。
  16. 青山正一

    青山正一君 どうもその点が今まで漁業上に及ぼす影響が非常に多いのだろうと思いますが、これは繰返すことになるわけなんですが、公海の自由というのは大体三海里の線で言つておる。この点がソヴイエトは十二海里とか、朝鮮では通称クラークライン、今防衛水域というようなことになつておりますが、カナダでは百五十海里、それからアメリカでは百二十海里とい’うようなことで、それぞれ各国によつてつておるのですが、水産庁自体として今起きたような事情は少くとも公海をどこに線を引くかということに問題が起因するのじやなかろうか、こういうふうに考えております。その点について水産庁の行き方は一体どういうふうなところに心構えを持つておるか、これは昨日ですか今日ですか知りませんが、私ちよつとこの席上お見えになつておる新聞社のおかたにお聞きするところによりますると、UP通信では例のアラフラ海の真珠採取の問題ですね、四月に濠洲側のほうから特使を日本へ派遣いたしまして、そういつた操業の問題についてとくと相談したい、それまでは如何なる理由があろうとも立入りは禁止する、とこういうふうに伝えておるわけなんですが、そういつたこの日本水産庁建前、或いは政府建前として船も用意し、或いは人間も用意しちやつて、折角行くことになつておる。こういつた公海の自由というふうなその線をどこに引くか。それから又そこまで徹底していないじやないか、殊にアメリカ或いはカナダあたりとのいわゆる漁業條約によつてもそれらが如何にもあやふやである。その結果この韓国におきましても、或いは濠洲においてもそういつた問題が次々と出て来るのじやなかろうか、とこういうふうに考えておりますが、今後こういつた水域の問題、いわゆる海上の自由をどの線に引くかということについての水産庁心構え一つ承わりたい、こういうふうに考えております。
  17. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 青山委員からの御質問ですが、水産庁といたしましては、三海里沖は全部公海の原則を適用して漁業は絶対自由であるべきだという考え方は一歩も退却いたしておりません。アラフラ海の問題にいたしましても、現在濠洲のほうからは相当世論もやかましいという意味を以て向うのほうの大使館からももう少し出漁の時期をずらすということはどうかというような照会は来たらしゆうございますが、但し少くとも準備完了する三月末か、四月早々には出したいというつもりで、折角業者も張り切つているようなわけでございます。決して従前から言われている三海里という線を水産庁はあやふやな考え方に退却しているというようなことは決してございません。
  18. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 私からちよつと海上保安庁長官にお尋ねしますが、今朝の新聞によりますと、海上保安庁巡視艇取締をし、監督をして行く上において火砲を備えて警備と言いますか、取締に当るというようなことを長官からお話になつたよう新聞で拝見しましたが、果してそうであるか。若しそうであるとすれば、従来はどういう装備をしておつたのか、又今回そういうものを特に装備をして行かなければならん状態等につきまして、御説明を伺いたいと思います。
  19. 山口傳

    政府委員山口傳君) 実はその問題は、昨日衆議院のほうの水産委員会で御質問があつて答えたわけであります。新聞記事は若干変つているようでありますが、ここに又お答えを申上げます。  これまでの巡視艇装備という点では単に海上乗組員が数挺の拳銃を持つている程度でございました。この状態だけでは兇悪な海上犯罪に対抗するには拳銃だけでは不安でございまして、勿論捕えてからの船内捜索の場合にはこれで結構でございますが、相手が船でございますので、これが遁走するような場合に拳銃ではとどかない。どうにも普通の業務として職務を執行する場合に拳銃だけでは不十分であると考えまして、そこで昨年二十七年度の補正予算でこれは成立したわけでございますが、巡視艇本来の職務執行上例えば嫌疑のある船に対して停船命令を信号したけれども、それを拒否して遁走する、或いはその船が言うことを聞かないで逃げる場合に威嚇的にいわば号砲用に或る程度火砲を持ちたいということで、補正予算でありますから期間が短かかつたので、二十六隻分くらいの装備関係予算を実は取れたわけでございます。なお本年度に入りまして残余の巡視艇の、一部のものは認められなかつたわけでありますが、引続きそれの継続の意味で、若干の又予算只今国会に出ているわけであります。いずれもこれは巡視艇警備業務をやる平常業務の上において号砲用に、いわば威嚇的に、これは撃つことが本来の目的ではないのでありますから、どうしてもそういつた程度のものは各国の例によりましても、沿岸警備船にはその程度装備が必要でございますので、そのことが認められてさよう火砲を或る程度つけることになりました。一番大型のもので三インチ砲であります。あと四十ミリ、二十ミリの機銃というものを計画していることは事案でございます。二隻ばかり試験的にやつていろいろ船がうまく操作できるかというテストを大体終つた程度であります。これから改装にかかる段取の程度でございます。
  20. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) その火砲を備える船はどのくらいの船でありますか、トン数量は……。
  21. 山口傳

    政府委員山口傳君) 只今巡視艇としてあります最大のものは七百トン型が四隻ございますが、次の型、中型になりますと四百五十トン、小さいのが二百七十トン、新造の巡視艇というのはその三つの型に大体分れております。これらのものは今の七百トンに三インチ程度がつきますし、小型においては機銃がつく。
  22. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 従来、海上保安庁のそれらの巡視艇が監視をし或いは警備をして取締をして参つた過去において、さよう装備がなかつたために犯人を取逃したとか、或いはつかまえることができなかつたというような事例が相当にございますか。
  23. 山口傳

    政府委員山口傳君) 今までにも、そういうものがどうしても必要だという件数は相当にあつたと聞いております。
  24. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それはどういう状態でありますか。
  25. 山口傳

    政府委員山口傳君) お答えします。多くの場合その停船命令をしてもそれに肯んじないで遂に遁走してしまつた巡視艇は御案内かと思いますが、スピード等が従来占領下においては制限がございまして、十五ノットぐらいしか出ませんので、ついそういつたために切歯扼腕したという場合の例があります。
  26. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) そういう任務の遂行中に犯人等からむしろ逆に襲撃を受けたようなことはございませんか。
  27. 高見正夫

    説明員高見正夫君) 今の御質問でございますが、ダイナマイトを以てしますところの悪質な密漁事犯等におきましては、先方からダイナマイトを投込んで来たり、或いは小廻りに運動できる特質を利用しまして、追跡しておりますと、逆に体当りして来るというような例が従来しばしばあつた事案ございます。
  28. 青山正一

    青山正一君 今のそのお話は、これは内地関係ですか、それとも外国との関係ですか。
  29. 高見正夫

    説明員高見正夫君) 国内関係でございます。
  30. 青山正一

    青山正一君 この海上保安庁で現在持つておる船は一体何隻ぐらいあるんですか。それから又七百トン級四隻と、こういうふうに承わつたんですが、普通常識的に考えて、例えば朝鮮水域とか、或いは北方水域あたりで、いろいろそういつた漁業を擁護するよう意味合において必要なトン数とか、或いは現在の速力はこれで足りるかどうかというような問題、例えば速力が何ノットか知りませんが、まあ外国艦艇と比べて相当スピードが遅れておるものかどうか。それから昨年までは大体海上保安部の中に警備隊というものが一緒になつてつたのですが、今こうして分離する必要があるかどうか、そういつた点について一つ承わりたいと思います。
  31. 山口傳

    政府委員山口傳君) 警備救難部業務用に使つております船艇の数でございますが、巡視艇が現在九十三隻です。それから港内艇が二百四隻、その他に海上保安庁といたしましては、水路部とか燈台部でその目的のためにほかにも雑船を持つておりますけれども、まあ警備救難部で使つております船は、只今申上げた九十三隻と二百四隻です。それで九十三隻のうちたしか四十四隻ぐらいが新造したもので、その他は旧海軍から譲受けた非常に性能の悪い老朽船です。型の大きさから申しますと、先ほど申上げたように一番大きいのが七百トンでPLと称する。その次はPMで四百五十トン、それからPSで二百七十トン、その他従来の海軍から受継いだのは大部分が駆逐特務艇、駆潜艇というやつですね、それと飛行機救難艇と申しますいずれも木造船です、あとの分は。それでスピードは従来制限があつて十五ノットまででしたが、我々の仕事関係から申しますと、少くともせめて十八ノットぐらいはほしいと思うのであります。それから型にいたしましても現在のところ七百トンが最高でございますが、太平洋の最近の海難救助の実相からいたしますと、一千海里を超えた遠くで大型船が難破して救助を求められるよう関係もございまして、できることならば千二百トンぐらいということを従来から要望いたしておりましたが、遺憾ながら今日まではその程度しか持てずにおりました。従つて現在のままで行きますと、たまにはどうしても警備隊艦艇応援をせざるを得ない場合が出て来やしないかと思います。今日までのところでは未だ救助応援を頼んだことはございませんですが、七百トンで相当千一二、三百海里も出て、救助に二週間もかかつてつて来るということがときどき出て来ます。そういうことであります。
  32. 青山正一

    青山正一君 大体朝鮮水域関係佐世保管区でやつているのだろうと思います。北海道の稚内のほうの関係稚内にそういうふうな、どういう管区か知りませんが、管区があるのですか。  それともう一つ稚内にしても佐世保関係にいたしましても、大体こちらの船はどの附近まで出られるのですか。やはり日本漁船が出るくらいしか外に出られないのですか。その辺について一つ
  33. 山口傳

    政府委員山口傳君) この漁船拿捕に対する、或いは襲撃に対する保護対策として特別哨戒を始めたのが昨年たしか九月だつたと思いますが、問題は東支那海朝鮮海峡と、それから北方の宗谷海峡と、それからこつちの何と言いますか、野付水道と言いますか、あの水域でございます。そこへ常時その三つ水域を合せまして五隻乃至六隻を出そうということで、非常に沿岸警備の点からいたしますと、船も小型でありますし、数も少いので困難ではありますが、当時閣議できめられまして、その線に沿つて常時五隻乃至六隻を、それも先ほど申上げた四百五十トン、若しくは朝鮮海峡あたりでは二百七十トンを使いますが、比較的優秀な船ばかりそれらの用途に当てたわけであります。それだけの船を配船するためには、これは四六時中行つているわけに行きませんので、大体十日乃至二週間が精一ぱいでございますので、その行動予定でその海域で交代するわけでありますから、少くとも十二、三隻はこのために絶えず欲しいわけです。而も初めからそういつたことを予定に入れていませんので、その方面に出ている船艇の苦労はまあいわば言語に絶するわけであります。距離といたしましても、東支那海では台湾近くまで行つておりますが、あとはずつと周辺を廻つているわけです。一航海行つて来ると、ひどいときには二、三貫もやせる、平均一貫匁はやせるということ、あとつて来まして、幾らか楽な哨戒に当てるということで、今日辛うじてやつておりますが、これ以上隻数をこのほうに割くということは到底困難な状態であります。
  34. 青山正一

    青山正一君 まあ漁船拿捕相当あるわけなんですが、保安隊の船、或いは警備隊の船でソヴイエトとか韓国あたり相当監禁か軟禁が知りませんが、そういうふうな例があつたことがありますかどうですか。いわゆる取調を受けたとか、或いは発砲されたというようなことはありますか、どうですか。  それから海上保安庁として一番業績を称えなければならないことは、海難救助相当力を入れているわけなんでありますが、昔は何ですか、海難救助会といつて民間にそういうふうな団体があつたわけですが、昔は確か伏見宮殿下ですが、その人が総裁をやつていたわけですが、今何か自主的にそういつたものに代るものがあるかどうか。それから海難救助で去年あたり相当海上保安庁として業績を挙げたのであろうと思いますが、そういつた実績が何かおわかりになりますか。
  35. 山口傳

    政府委員山口傳君) 海上保安庁巡視艇拿捕されたとか襲撃をされたという例はございません。  この際御参考に、本年度に入つてからの日本漁船拿捕されたり或いは襲撃された件数ですけれども韓国関係で以西底曳が襲撃が八件で八隻、拿捕が二件で三隻、この中には例の問題の第一、第二大邦丸の二隻があります。現在佐世保に帰つて来ております。以東底曳関係で四件十八隻、この中の大部分は香住のこの間の二月十日の事件が入つております。韓国関係はその程度でありまして、中共は以西におきまして八件九隻、これは襲撃です。拿捕が五件五隻、ソ連関係は本年度に入りましてから皆無でございます。  それから海難救助只今の冬季間というものが海難の一番多いときでございまして、各管区でそれぞれ担当海域の事情に応じて対策を立てて大童になつてつてもらつておるわけですが、一月の統計から行きますと、たしか件数にして四百二十件ですが、一日平均十数件、まあ一番これは年間で言えば比較的多い、巡視艇が大体一月のうち十日間はこの海難救助の作業にとられておる形になつております。昨年度の海難救助の実績も、皆統計はとつております。だんだん出動回数も殖え、成績は挙つて来ております。それから水難救済会の話がありましたが、お話の通り戦前にはこの水難救済会というものがありまして、そこが昔は補助金を政府からもらいまして、宮様が総裁で各府県の知事あたりが支部長になつて或る程度の船を有し、それから又臨機に漁船等を雇い上げて救助をいたし、大規模の場合には当時海軍の駆逐艦等に応援を求めたというような事情もございましたが、現在ではこの海上保安庁におきまして、応急救難は海上保安庁が一応の使命としてやりますので、大分仕事の面としては縮小しておりますが、結局これは万一の場合の遭難に対応するのでありますから、本職のこういう制度ができましても、従来からある水難救済会というものは今日の事態に合して何とか立て直さなければならない、殊に補助金というものは今日ございませんので、寄り寄りどういう態勢にするかという声が起つておりまして、私どものほうでも運輸本省のほうがこの海難関係の総合政策の本庁になつておりますので、寄り寄り我々も実施部隊になつておりますので相談して案を練りつつあるのであります。差当り、実は明日衆議院の運輸委員会のほうに議員のほうから提案されるわけでありますが、海難の場合に民間側で援助をされたかたで、そのために死亡されたり傷害を受けた場合に、今日まで海上における分については何らの救済措置がなかつたわけであります。それで丁度陸上における警察官等に民間のかたが応援して死傷を受けられた場合の罹災給付というのがありますが、その制度に倣つたものが実は提案になるわけであります。取りあえず先ず応援された人の救済はそれで行くのでありますが、これだけでは海難救助に対しての制度としては不完全でございまして、いろいろ今後の研究ではございますが、財産的な補償、或いは水難救済会それ自体をどういうふうに扱つて行くかということは目下研究いたしておるところでございます。
  36. 千田正

    ○千田正君 長官にお伺いしますが、海上保安庁任務の問題について、日米協約並びに日米安全保障條約の規定のもとにおける日本側においてあなた方が日米間において協力するか、或いは何かの指図を受ける場合の限度というものはどういうふうになつておりますか、それが先ず一点。  第二点は公海の自由の原則から言つて、例えば今度のいろいろな問題が朝鮮海峡の間で行われておりますが、そのうち曾てクラーク大将が宣言したところの朝鮮防衛水域というものに対しての日本のあなた方の船舶というものが自由に出動できるかどうか、こういう問題については外交的な立場でいろいろ何があると思いますがどういう指令を受けておるか、これが二点。  第三号は御承知の通りアイゼンハワー新大統領の指令のもとに今度のいわゆる台湾の政府が中立を解除された、同時に台湾海峡、南支那海におけるところのいわゆる海上の不安というものは当然起きて来る、そういう場合における日本漁船があの近くに行つて操業するような場合においては、あなた方のほうでは何か将来支障を生ずるような大きな問題にぶつかる虞れがあると我々は考えておるのだが、そういう場合に海上保安庁としては何らかのとる措置を考えておられるかどうか、この三点を先ずお伺いいたします。
  37. 山口傳

    政府委員山口傳君) 第一点の日米安全保障條約、並びに協定を前提にして海上保安庁アメリカ側と協力する限界というお話でございますが、ちよつと私今思い付かないのでありますが、このほうの分科会が実はございますが、そのほうで現在問題になつておりますのは、佐世保横須賀の港内取締について従来アメリカの極東海軍がやつておりましたが、これを日本に返す、その場合には海上保安庁がやつてくれというような話があつて、それには我々としては若干の港内艇或いは人員、予算等が要りますので、その点は実は二十八年度の予算で折衝はいたしましたが、合同委員会の分科会になりますか、あれの最終結論がまだ出ないので実は懸案として聞いております。これがきまれば所要の舟艇を若干増強してもらわんと仕事をすることができない。港内取締と防潜網の所の監視を向うがやつておるが、日本側海上保安庁も両方でやろじやないかというよな申入でございます。これは一に分科会の決定を待つて日本政府としてやるようになれば見ようということで、併し今のところきめかけるところで、きめるごとについて懸案になつております。  それから第二のクラークラインの中へ巡視艇が入れるかどうかというお話でありましたが、これはたしか国連軍の作戦上きめられたデフェンス・エリアでございますので、原則として巡視船はその水域には入らないで、一定の哨戒線を引いております。併し絶対入らないのではございませんで、例えば襲撃事件、或いは拿捕事件があつた場合には、現場がクラークラインの中であれば、その現場に対してはどんどん入つて行くということは向うも了解しております。原則としては平常の基本哨戒ラインというものが、いわばクラークライン沿つてつているということに相成つております。
  38. 千田正

    ○千田正君 第三点は……。
  39. 山口傳

    政府委員山口傳君) ちよつとわかりかねたのですが……。
  40. 千田正

    ○千田正君 第三点は、アメリカの新政策によつて、台湾中国政府の今までの中立的態度を解除した。その解除したことによつて、御承知の通り大陸反攻も可能であるわけなんだから、そういう場合における海上の安定という意味から言つて、或いは早い話は水産業の立場から言えば、あの近くまで行つて日本漁船操業する場合が多い。そういう場合においても日本の漁民を保護するという立場から、あなたがたのはうに何らかの将来そういうことがあつた場合の準備、或いは予想された予定の下に何か考えておられるかどうか、その点です。
  41. 山口傳

    政府委員山口傳君) 研究が十分ではないのでありますが、そうでなくても日本漁船相当広い海域で操業をしておられるし、マツカーサー・ラインがなくなつた今日では、我々の予想外の所まで行つておられます。それはいろいろ遭難事故やなんかございますと、そのことがわかるわけでありまして、今の海上保安庁船艇の数若しくは性能では十分なことができないので、その点は非常に日常苦慮しているわけで、今後どうしても、そうでなくても沿岸警備でも今の何と言いますか、その度合が不十分で、特に第一管区の北海道とか、或いは第七管区の対馬から西南諸島、あの辺はもつとしつかり警備しなくちやならないと思いますが、漁船保護のためにあらゆる方法を尽しても実はこれ以上もう割く余地がないので、実は困つておるのであります。今のようなことが将来起れば、何といたしましても、やはり或る程度の勢力増強を御考慮頂かないと、今のところ海難救助と、沿海警備その他で精一ぱいというところだと思うのです。
  42. 千田正

    ○千田正君 これはまあ長官を前に置いて、ちよつと皮肉のように聞こえるかも知れんけれども、どうもあなたがたのほうの予算の出し方や何か見るというと、とかく海上保安庁の増強ということは、再軍備へ向つての方向であるかのごとく考えられる虞れが多々ある。むしろ増強する面において予算の折衝或いはその他のような場合においては、私から言えば、日本のこの平和産業であるところの漁業操業を守るんだ、漁民の生活を守るんだと、水産庁の監視船や或いは指導船じや足りないのだ、だから我々は海岸の防備を固くし、且つ又この産業を守るんだという行き方のほうが、よりよく徹底した海上保安庁の現段階におけるところの増強だと私は思うんだが、あなたはどういうふうにお考えになるか、その点を一つ伺います。
  43. 山口傳

    政府委員山口傳君) 誠にその通りでございまして、実は私どものほうの持つて行き方が確かに少し遅れたのでございますが、今度の二十八年度の予算折衝のまあ迫つた頃から、実は漁船保護ということでいろいろ資料を準備いたしまして、実は運輸委員会は無論のことですけれども、水産委員のかたが非常に熱心にやつて頂いて、最後のときに新造六隻くらいは少くともこの特別哨戒あと埋めに、現に出ている数くらいをとるのは当然だということで、非常な御後援を受けたのですが、少し時期が遅れたのは事実でございまして、お考えも御尤もで、それが本当でありますので、現在の漁船保護は無論水産庁の監視船と相協力してやつており、或いは特別に出ておるのでありまして、もうちよつと船をたくさん出してやれば或る程度襲撃や何かの事故を未然に防げるという確信は持つております。
  44. 千田正

    ○千田正君 まあそういうふな方向に向けておかんというと、風当りが強いから、前以て御参考までに申上げておきます。
  45. 山口傳

    政府委員山口傳君) 有難うございました。
  46. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) もう一点私から伺いますが、韓国東海岸における日本漁船保護は、これは大体第八管区のほうで扱つておられると思うのですが、それはどういうふうな方法で保護しているか、これが第一点。  もう一点は先ほど来防衛水域、即ちクラーク大将の決定した防衛水域に対しましては、その巡視の状況が大体その線に沿つての巡視をしており、若し事故の起つた場合にはどんどんと線内にも入るということでありましたが、俗に言われている李承晩ラインというものをどういうふうに見ているか。日本政府としてはこれは認めておらん。我々もこれも認めておらん。公海の自由ということから行きまして、勝手に引かれた線に対して我々はこれに同調しているわけに行かないのでありますが、この海上保安庁といたしましてはこの線、即ち俗にいうクラークラインよりもつと広いのでありますが、このクラークラインというものをどう見ているか。これには公海の自由ということからどんどん中に入つて行くのであるかどうか。若しその線内において拿捕、銃撃等の事件が起つた場合に、その附近におつた巡視船はそれへ飛び込んで行つて日本の船を保護することができるかどうか。この二点を伺いたいと思います。
  47. 池端鐵郎

    説明員池端鐵郎君) 韓国東海岸哨戒方法についての大体の要領を申上げます。管区といたしましては、先ほど長官からお話がありましたように、昨年九月二十以降ずつと連続して目下続行中でございます。当管区といたしまして、韓国東海岸漁業保護に使つておりますところの巡視船でございますが、これはいわゆる新造巡視船五隻全部を充てておりまして、四百五十トン級巡視船が二隻、二百七十トン級巡視船が三隻でございます。哨戒の方法といたしましては、この五隻の巡視船を、大型の四百五十トンにおきましては一回九日間の連続行動、二百七十トン級の巡視船におきましては、一回の行動日数七日ということにいたしまして、この五隻を順次一隻ずつ東海岸附近に派遣いたしまして哨戒をいたしております。哨戒線は東経百三十度北緯三十七度を北端といたしまして、主として東経百三十度線に沿い、なお又韓国と対馬の間の海面をも哨戒いたしております。その哨戒線の長さが概略三百マイルということに相成つております。派遣されておりますところの巡視船哨戒の要領でございますが、これも長官からすでにお話がございましたが、おおむね防衛線に沿いまして哨戒いたしておるのでございますが、何らかの事態があつた場合、又必要に際しましては、随時防衛線の中に入りまして、漁船団と接触、連絡を保つと申しますか、その必要な場合に、必要な警告を発するというふうな行き方で参つております。この五隻の巡視船を順次一隻ずつとこういう工合に申しましたが、この特別哨戒から帰つて参りました巡視船は、それぞれ又内地における業務に従事いたすのでございまして、九日又は七日の連続行動は、非常に乗務員にとりましても過重な労働を与えているように考えます。これも先ほど長官がお触れになりましたが、非常な疲労を感じておるような次第であります。なお又特にこの漁期というものも季節の関係があるのでございますが、冬季は御存じのよう日本方面は非常な大しけでございまして、四百五十トン又二百七十トン、これらの船が傾斜四十度、そういつたような荒天をおかして、速力も或るときはニノツト程度しか出ないというような、非常な難航に難航を重ねてこの業務に従事しているような状況でございます。  第二点の李承晩ラインのことにつきましてお尋ねがございましたが、哨戒に当りましては、今のところ李承晩ラインは一応考えないことにしております。
  48. 千田正

    ○千田正君 速力ですが、非常に荒天の場合はニノットしか出ないとおつしやつたが、平時の速力はどれくらいなんですか。
  49. 池端鐵郎

    説明員池端鐵郎君) 普通十二ノットでございます。
  50. 千田正

    ○千田正君 そんな程度で大体うまく行くかね。もう少し速力の増した新造船が配置にならんのかね。
  51. 池端鐵郎

    説明員池端鐵郎君) これは先ほど長官からお話がありましたように、少くとも十八ノットというふうに……。
  52. 千田正

    ○千田正君 現在は十二ノットですか。
  53. 山口傳

    政府委員山口傳君) 現在の新造船は十五ノットに抑えられておりましたから止むを得ないのですが、今年の予算案に出ておる三百五十トンあたりは何とかして十七、八ノットは出すことに計画しておるわけです。せめてそこまで行かんと仕事にならん。
  54. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今池端本部長からのお話がありましたが、李承晩ライン防衛水域との状態は、東海岸においては殆んど一致しているのじやないかと思うのですが、南から西にかけての線が大分違う。李承晩ラインのほうが広いのです。そこでこの間においてしばしば日本漁船拿捕襲撃を受けるのですが、運悪くと申しますか、保安庁の船がその場におつて保護したという事例は今のところ聞かないが、事実はどうなんでございましようか、そういう場合に、拿捕されたときにその附近におつて、それを保護して或いは取戻したというような事例がございます。
  55. 山口傳

    政府委員山口傳君) その点は、非常に広い海域に僅かしか出ておりませんので、非常に疑問視されまして問題になつておるわけでありますが、多くの襲撃事件拿捕事件というのは大概その巡視船が北なら北へ行つている時間に南でやる。南へ下つたときに北でやるというふうにして、いつも事件のときには隙を狙われているわけです。恐らく向うであいろいろ電探等で一応見ているのじやないかと思います。今まで保護した効果のあつた例としましては、たしか監視船か何かが襲撃、臨検を受けんとしたような場合に、たしかこれは東支那海で臨検を受けそうになつて接近して来た。それでその旨無電でキャッチしましたから、頑張れ、すぐ今から行くからということで、そのときはその後すぐ向うが逃げてしまつたという実例はございます。数としては少うございますが、恐らく東支那海でも二隻ぐらいしか出ておりませんので、向うでは常に巡視船の行動といもうのはキャッチしていろいろやつておるのじやないか、これは想像でございますけれども、そういう感じがいたします。
  56. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 海上保安庁当局に対しての御質疑はほかにございませんか。
  57. 千田正

    ○千田正君 私が来る前にすでにお話があつたらしいのですが、この間アメリカ側の指令においてというようなことが新聞に出た、それが虚報である、こういうことなんでしよう……。
  58. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) アメリカ側の指令ではなくて、日本のあれから出たんじやないかということを尋ねたのですが、それは虚報である、朝鮮軍艦から、ここから奥へ入つちやいかんということを言つて釈放されたという報告は水産庁次長からありました。
  59. 千田正

    ○千田正君 新聞に出ておるのは…。
  60. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) あれは誤報である、何もその事実はないという海上保安庁側のお答えでした。
  61. 千田正

    ○千田正君 それが例えばこの席上においてあなた方がそれは全然虚報であるということをはつきり明言せられておつても、たとえ小さい新聞でもそういうことが書かれるということは、将来日本の外交上非常な問題が起きて来る、でありますからそういうことは十分注意して頂きたい。今正に国交回復の行われる直前であつて、而もいろいろな不祥事件が相次いで起つておる。そういう際においてたとえ小さい新聞でもいろいろの誤伝なり或いは虚報なりが起るということは、将来の日本の国交回復の上に非常な支障を来たす虞れがありますので、そういう点は十分に御注意を願いたいと思います。
  62. 木下源吾

    ○木下源吾君 ちよつとお尋ねしたいのですが、保安庁としては今のクラークラインとか李承晩ラインとか、そういうラインの中に入つて行くことは差支ないのですか。
  63. 山口傳

    政府委員山口傳君) 先ほどから関係官からお話しておりましたのですが、李承晩ラインのほうは我々全然頭に入れておりません。考えておらないのです。ただ線のことは承知をいたしておりますけれども、それは行動には何らの考慮を払つてはおりません。クラークラインというほうは、これは国連軍の作戦上の要請であるものですから、普通の巡視艇哨戒するラインは大体それに沿つて歩いておるのでございます。但し日本漁船がその海域の中で、防衛水域の中で何か事故があつて救援を求めた場合は即刻入つて行く。但し何もないときにそこへは入らない。こちらは公船でありますので、まあディフェンス・エリアの周りをずつと歩いて常時行つておるわけです。このことは極東海軍も了解いたしております。そういうようなやり方をしております。
  64. 木下源吾

    ○木下源吾君 その了解というのは、そういう何か問題がないときは入らないという了解になつておるのですか。
  65. 山口傳

    政府委員山口傳君) それはいろいろ向うとの間の話合もありましたのですが、我々のほうでその点は、事件も何もないときにデイフェンス・ラインの中へ行くのは、当時いろいろと刺激するというので、その周りを廻つてつて事件発生の場合には入るという建前をとつたということです。
  66. 木下源吾

    ○木下源吾君 ちよつとそこのところはつきりしないのだが、こちらでは刺激してはいけないから入らないというのはこちらの考えで、それはよろしいとしても、入つて差支がないということになつておるのかどうか、こういう点です。お互いの話合いでどうなつておるか、あなたのほうではわからなければ、わかつておる範囲内でいいのです。
  67. 山口傳

    政府委員山口傳君) 只今の御質問は私のほうの巡視艇の行動のことでございますか、漁船じやなくて……。
  68. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうそう。
  69. 山口傳

    政府委員山口傳君) 私のほうの巡視艇は一応普段は入れないという話合いをいたしております。そして事件があつた場合には勿論入るということで話合いをいたしております。
  70. 木下源吾

    ○木下源吾君 その普段は入らないという話合いは、保安庁がやはりそのことの話合いの何に立会つておるのですか。
  71. 山口傳

    政府委員山口傳君) 私のほうの海上保安庁ですか。
  72. 木下源吾

    ○木下源吾君 ええ。
  73. 山口傳

    政府委員山口傳君) 無論自分のほうの巡視艇哨戒線を引くわけですから、いろいろアメリカのアドヴアイザーズ・グループとは話合いをいたしたことはございます。一応我々はこういうライン哨戒する、それで事故があつた場合には中へどんどん入つて行く、公船でございますので普段未然にあれするという意味で自由に入るということは遠慮しております。
  74. 木下源吾

    ○木下源吾君 それではそのラインを、あなたのほうではライン内はどういうものだということがはつきりわかつておるわけなんですね。
  75. 山口傳

    政府委員山口傳君) その点は当時クラーク司令官の声明があつたあと、外務省を通じていろいろ尋ねて大体聞いておるわけですが、この水域は要するに国連側の作戦上の必要があつてきめたんだ、特に済州島、巨済島あたりにはいろいろスパイ行為だとか或いは利敵行為がある。そういうこともあつて、その代り当時日本漁船は非常に問題になりましたが、そこを作戦行動にさえ支障がなければ全面禁止というわけではないというお話で、その後日本漁船は或る程度つておられる。併しそういう状況でございますから、いつ何時支障があつて立退きを命ぜられるかも知れない。その場合には従順に従つてくれということを言われておる。そういう條件で入つて来ておつて、その後いろいろと現実には事件があるわけでございますが、そういうふうに私どもは考えておるわけでございます。但しその場合私どものほうの巡視船は普段は入らない。ですから大体クラークラインと申しますか、その線に沿つて一定の哨戒を常にその辺を行動しておるという形をとつております。
  76. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると利敵行為というのが作戦のほうの一番の問題だと思います。漁船が利敵行為をしているというようなことは、保安庁としてはやはり認めているのですか。その辺はどういうふうに考えておられますか。
  77. 山口傳

    政府委員山口傳君) 別に利敵行為、あの中へ入つたから日本漁船は利敵行為だなどという認定などは無論しておりません。ただアメリカの駐在武官等の話を聞くと、ときどきやはりいろいろな小さな漁船を操つて物を運んだり或いはスパイ行為をやつたりするのがあるので、実は非常に困つているという話は聞いております。日本漁船についてそういつた嫌疑は私どもつておりません。
  78. 木下源吾

    ○木下源吾君 その利敵行為というものにつきましては、日本漁船はそういうものではないということを積極的に向うへ何か表明したか、そういう機会を持たなかつたか、その点については……。
  79. 山口傳

    政府委員山口傳君) その点につきまして、ずつとあのラインが引かれた後に、どういうふうにして円満に解決しようかということで、これは外務省、水産庁とも御相談の上で、こちら側の考えとしては、一応公認されたマークを附けたり或いは出漁証というものを持たせて入らせるからということは、大使館を通じて国連側と交渉してもらつたりして、その努力は十分やつているわけであります。
  80. 木下源吾

    ○木下源吾君 その形の上でマークを附けたりいろいろするということも勿論必要でありましようが、根本的に利敵行為をするのじやないということであれば、こちらでも確信がなければ向うへ言えないわけであります。その確信はつかないですか、あなた方のほうで。
  81. 高見正夫

    説明員高見正夫君) その点につきましては、そういうことを他の防衛海域を設定するとき理由にしておりますし、その後も聞いたことがありますので、私のほうといたしましては、現地に指示をいたしまして、そういう事実の有無につきましては十分調査を遂げたのでありますけれども、現在までのところ、日本漁船がそういう利敵行為をやつているという確証は握つておりません。併しだからと言つて全然ないということを断言することもできないと思われるわけであります。
  82. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこが問題だと思うのですね。何が故にそれが断言することができないか。断言することができないからあやふやになつているので、政府が少くとも責任を帯びてこれは大丈夫だという確信を持ち得るようにいろいろ講じてそうして行つたならば、私は問題は解決するのじやないか。ただ標識を附けるとか、いろいろそんなことは一つの形式の問題で、根本の問題ではないと思う。それは政府は、そういうところへ行つた場合利敵行為をするかもわからないというような、不確実なそういう状態においては、幾ら折衝をしたつて解決つかんと思うのですが、そういう点については政府当局で何かいろいろ御協議などなすつたことはございますか。
  83. 山口傳

    政府委員山口傳君) まあそういう点が問題だと思いますが、今日まであの水域がきめられて以来、外務省、水産庁、我々と、この三者での会談というものはその都度再々開催して、何とかこれを日本の水産が成立つようにという見地からいろいろと案を練つて、それで先方とも交渉をいたしておるわけであります。遺憾ながら今日までその面が十分な解決を見ていないのは甚だ遺憾でございますが、何とか円滑にあの辺に入れるようにということで、その間の折衝は非常に外務省とされても苦心されておやりになつたわけであります。今日までのところ現実には事件がその後もいろいろ出て弱つおります。
  84. 木下源吾

    ○木下源吾君 そういう利敵行為を日本漁船はするのではないという確信を持たないで幾ら折衝したつて交渉したつて、それは私はただ話合いをしているというだけに過ぎないと思うのであります。そこで逆にこの漁船が何か国連軍の利益になるようなことを、特に漁船に対して保安庁が報告しろ、そういうことがあつたら報告しろというようなことを、保安庁みずから漁船に指示しておつたという話を聞いているのだが、そういう事実の有無はどうですか。
  85. 山口傳

    政府委員山口傳君) そういう事実はないそうです。
  86. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはまあないということは言わなければならないと思うんですが、私もないと思うんです。けれども向うのほうに拿捕されて、そうして向うの取調によつて、そうして取調べた結果は、中共関係あたりにおいては、こういうようなことを保安庁から命ぜられておる、連合国、アメリカ等の船舶以外のものの様子は報告しろ、いろいろそういうことを命ぜられおるんだと、そうして報告しておるんだということを向う拿捕されて抑留された者の口から向うのほうへそれを言うて、そのほうから確実な情報を我々は聞いておるわけなのです。そういう点についてはやはり今のお答えのように何も根拠がないと、こうおつしやるのかどうか。
  87. 山口傳

    政府委員山口傳君) 今のお話のありましたそういうことを、少くとも海上保安庁に関します限りは漁船に依頼したことも指示したこともございません。これははつきり断言してはばからないところであります。ただ抑留されておりました乗組員たちが帰つて来ましてときに、一体どういう状況の下に拿捕されて、そして連れて行かれてからどういう処遇を受けたかということにつきましては事情を聴取いたしております。
  88. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはなければ結構であり出す。が、少くも向うの側の利敵行為は、向うによつて不利益になりますので、又逆に日本のそういう漁船がこちら側の利益になることを何すると、向うのつまり利敵行為になるわけです。そういうことを一方的に若しやつたとするならば、幾ら交渉しても私はそれは成立せんとこう思うので、少くも漁船の場合においては、何というか、中立的だ、そういう立場で進んで行くのだということが根本的に了解されなければ、話合いしても私はだめだと思う。これは私の考えですが、現政府ように一方的に片寄つた考え方を押しつけておつては、私はそれは幾ら話してもだめだ。勿論李承晩ライン、先方に対しては別だと言われるかも知らんが、同じことなんですから、どうか今後日本漁業のために何されるならば、起きた事実に対していろいろ保護をするとか何とかいう問題よりも、そういう問題が起きないような根本をもう少し究明されて、そうしてこの問題を解決するように進めてもらいたいと、こう私は思うのであります。そうでないというと、この問題はただ小手先の駈引やら技術やらで解決できないと私は思うので、これはお願いする。  そこでもう一つは、李承晩ラインは認めない、こう言われるのですが、現実に李承晩ラインというものが引かれておるのはこれは事実です。事実なんです。そこで李承晩ライン内における制限に触れた場合には拿捕されておるわけです。そうして制裁まで受けておる。これは事実です。これはどういうわけでこの事実を認めないとおつしやるのか、これを一つお尋ねしたい。
  89. 山口傳

    政府委員山口傳君) お答えしますが、李承晩ラインについて、我々は巡視艇の行動上それは頭に入れていないというふうに申上げたので、李承晩ラインというものはちやんと一応海図の上で引けます。そういうことは無論知つておりますし、又それを建前にして向う側では取扱つておられることも承知しております。私のほうでは、それを何と申しますか、巡視艇の行動についてはこういうふうにやつておるという意味での趣旨と言いますか……、お答えしたわけです。
  90. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはどうも私どもには了解できないのですね。現案に李承晩ラインというものは、その名前の如何を問わずあつて、そしてそのライン内における内容というものがすでに日本の漁獲を禁止されておる、これは事実なんである。この事実を認めないと言うたところが、これは理窟に合わんじやないか。誰でも国民は考えておると思う、そういう点については。そういう矛盾に対しては何ら皆さんは責任も感じないし、障害も感じないですか。あなたにお聞きするのは無理かも知れませんけれども、現実の問題を頭の中だけでそんなものはないのだと、そんなことではおよそあなた通用しないじやありませんか。
  91. 山口傳

    政府委員山口傳君) 私どものほうの巡視船の行動上、李承晩ラインに入つていいとかいけないということを考えずにやつているということを申上げたので、李承晩ラインのあることは、向うでは引いておりますし、こちらでもそういう制限のあることは承知しております。李承晩ラインのあることは承知しておりますけれども、ただ巡視艇の行動上李承晩ラインの中に入るとか入らないということを論議しないでおるだけのことであります。
  92. 木下源吾

    ○木下源吾君 それが論議をするしないじやなく、クラークラインというもののときにはこうだつた、同じ李承晩ラインの問題になつて来ると、それは国連軍と話合いをして今進めておるわけです。まずいながらも……。同じところなんです。名前は変つてつても或る部分に行けば同じものなんである。この分に対してはよく話合いをしなければいかんのじやないのですか。それについてはどういうお考えですか。具体的なものは一つなんですよ。
  93. 山口傳

    政府委員山口傳君) お答えします。お話の通り東海岸だけでは一致した恰好になつております。これの交渉は今日まで外務省を通じていろいろ李承晩ラインの問題も交渉に当つて頂いておるわけです。そのほうのお考えを聞かないと、私どもとしても十分なお答えはいたしかねるわけです。
  94. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはまあ御尤もです。役所としては御尤もです。が、その結果から起きて来る具体的ないろいろな障害は、あなた方のほうで負担しなければならん。そうなんでしよう。行動の上で負担しなければならんのです。その行動をやる上において、矛盾を感じて行動をするということは、恐らく私は問題が本質を考えておらんのじやないか。なぜ外務省にあなた方のほうから強く話してもらつておるというような態度ではなく、なぜこれを早く解決せんのであるか、お互いに話合つて、外務省はただ水産庁、あなた方の話合いをまとめて外務省はやつておるだけでありまして、内容においてはあなた方がその主体なんである。内容においては主体なんである。であるからそれをどうして等閑に付しておるのか。それは外務省でやるべきことだということは、これは形式上はそうであろうと、内容においてはあなた方が皆相談の上でやつておるのである。それがここで十分な御答弁ができんということは、外務省でなければ向うとの交渉経過等はどうだということは言われないと言われるかも知れないけれども、少くともその内容は御相談の上にやつておるわけなんです。そこでその問題は今日どういうように一体発展しておるのか。結論から言うならば、日本漁船が安全に漁業ができんというこの障害に対して、これを除くためにどういう一体努力を現実にしておるかということをお聞きしたいのです。
  95. 山口傳

    政府委員山口傳君) これはもう昨年の秋以来外務省と再々協議して、問題のあるたびに事件の内容を申上げて、抗議すべきものは抗議するし、相当まあ折衝して、成るべく早くこの李承晩ラインそのものについての考え方なり、何か解決できるように我々としても熱望いたしております。ただ遺憾ながら今日まで十分な成果が挙らないのを甚だ遺憾に思うのです。
  96. 木下源吾

    ○木下源吾君 それではまあ何ともしようがないという程度に了承しておいてよろしいのですか。
  97. 山口傳

    政府委員山口傳君) そういうことでなくて、一日も早く何とか外務省でも、我々も無論いろいろな考えを持ちますけれども、例えば日韓会談でも再開されて早く解決するとか、或いは国連等の仲介等によつてこういつたむずかしい問題が何とか解決することを望んでいるわけですが、未だその時期が来ませんのを遺憾と存じます。
  98. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のおつしやることの希望していることは、これも又私は末節だと思うのであります。何とも今壁にぶつかつて進めようがないというのがあなたがたの実状だと私は思うのです。そこでこれはやはり朝鮮のあの戦争をやめにやいかんのですよ。これをやめさせるために日本政府は一体何の努力をしているのか。逆に戦争に火を付けるようなことばかりやつてつて、そうして片一方においては、君それを消そうと、いやポンプはどこにある、水はどこにあるといつてつてもそれは駄目なんですよ。そこまでぶつかつてしまつてもまだわからないで、そうして標識を附けるとか、今言われるような日韓会談だといつても私は駄目だと、思うのじやなくして事実そうなんです。なぜアメリカ政府に早くこれを撤兵して、やめなさい、これくらいのことをようやらないでおつて、あなたがた何ぼ苦しんでも駄目だと思うのですが、これは私は一応言うておくだけですが、ここまで壁にぶつかつても問題がわからないで、そうして日本の漁民を苦しめる。そうしてこんな状態になつてつて、転んだら起してやるという程度でお茶を濁しておくのは無責任極まる。みんなそんなことで責任が果されていると思つたらこれは私は大間違いだと思います。あなたがたは相当にこの問題に対しては心配しておられるのだから、政府に、大臣だろうと何だろうとに堂々とこの問題解決のためには、これ以外にはないのだというように進言して私は然るべきだと思う。そういうことをなさつたことがありますか。問題の本質を究明してやつたことがありますか。まあその程度にしておきます。   —————————————
  99. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは時間もたちましたが、前回に審議をやりかけております例の日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律案につきまして質疑を継続いたします。
  100. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは水産庁ですね。
  101. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 特別調達庁です。
  102. 木下源吾

    ○木下源吾君 水産庁のかたが見えておりましたら、あと三分か五分でよろしいのですから、水産庁一つ、これに関連せずに………、だから水産庁が急がれるようならば、先にでもやつて頂きたいと思います。
  103. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それじや水産庁を先にいたします。
  104. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは簡単なことですが、今年度の漁港に関する問題です。御承知の通り当委員会が発議をしまして、参議院では前国会の終りに決議案を上程して、あの通りに満場一致で通過しているわけなんです。予算の面においては特に水産庁から要請された分も満足に行つておらん、こういうことで甚だ遺憾に思つているわけです。つきましては整備計画のうちで、現在未着手の部分が百何十港かあるという話ですが、水産庁としては大体この未着手の部分は今年度はやらないのだ、こういうような方針らしいということを聞き及んでいるのであります。この点についてはどうなつておりますか、一つお尋ねしたいと思うのです。
  105. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 第一次整備計画に載せましたうちで現在未着工の分は百五十港あるわけであります。百五十ありまするのを、二十八年度にはそれに全部手を着けるという意味で、水産庁といたしましては適当なる予算を要求したのでございまするが、結論的に言いますると、要求は容れられずして、二十三億円程度予算を振当てられた、ということに相成りますると、北海道の五億円を除いて十八億になります。十八億になりますると、前年度八十八港というものを着工しましたが、いわゆる自然増の形において前年度と同じように新規着工数を見るわけには到底行きません。それに加えて大蔵省の意向といたしましては、従前着工している港でも、極く悪い例を取れば三十年余もかかる速度ではないか、こういうことでは困るから、相成るべく未着工の分は暫らく眠らしても、すでに着工分だけの完成を急ぐほうが国としても適当じやないかというような強い意見がございましたが、併し未着工の分といえども、これは現在の日本漁業だんだん復元しまして、船型も徐々に大きくなります。漁場もマ・ラインが解けて、多少遠距離に出るという関係にありますので、全然見んわけにはいかんのじやないかということで、目下大蔵省と折衝しておりますのは未着二分、いわゆる百五十残つているうちで七十程度、七十港程度、全国的にですが、一つ予算に上げるようにいたしたい、こう思うているということで大蔵省と話合をいたしております。多分今の見込では大蔵省も七十程度、私のほうの考え方といたしましては十一が北海道、残りを内地、いわゆる内地側のほうは五十九に相成りまするが、その程度は大蔵省のほうも了解するのじやあるまいか、こういう見込でやつております。
  106. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のお話水産庁の御努力は非常に感謝するわけでありますが、実はそれでも本院の決議に副わないことが遠いわけです、実際において……。そこで百五十のうち七十だけという案は、一体水産庁のほうから出た案なんですか。
  107. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 大蔵省は当初予算折衝の第一段階におきましては、北海道一港、内地二港程度の三港くらいを一応いわゆる明年度、新年度に新規着工として、あと予算は全部すでにつけたもの、いわゆる継続的な港のほうへ流して、早く速度を高めろ、まあこういう強い大蔵省の意向だつたのです。併し我々としましては、今まで参衆両院さんがたの強い御要望もあるし、全国的な漁民関係者からのきつい陳情もございますので、それらを勘案いたしまして、合理的に七十ということを計数的に出したのでありまして、七十という計数を出しましたのは、例えば年次計画によつてこの程度のものであれば、最大限度十一年なら十一年で終るじやないか、そうすると年次計画に基いて当初終つたものとその次に終つたもの程度の港数に、プラスいわゆる二年目に終るものの半分くらいを乗つけて行くとか、まあ多少違うかも知れませんが、大体思想としてはそういう方向で、或る理論付けた方向で大蔵省も延ばして行こうというので、こういうことでこの計数を一応出したのであります。
  108. 木下源吾

    ○木下源吾君 そういたしますと、水産庁としては整備計画を根本的に変更したということになるのですか。
  109. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 根本的に計画を変更したわけではございません。ただ大蔵省から指摘されましたように、乏しい予算で、大蔵省が我々の要求する予算を全部くれるのでございましたら、もう例えば七年なら七年で長いものでも完成するというように相成りまするが、予算がいわゆる前年度に対して本年度も大体自然増の見込は同じであるというような、予算の計数を一応動かんものと仮定しますと、我々がその予算の範囲内で最大限度の漁港の進捗する姿をどこに持つて行くかというのを計算しますと、そういうことに相成るのです。
  110. 木下源吾

    ○木下源吾君 大蔵省は一体漁港の実情を知つておるのですか。あなた方の説明が足らないのではないですか、その点はどうですか。
  111. 岡井正男

    説明員岡井正男君) それは両方だろうと思います。御指摘の通り大蔵省も知らなければ、我々は最善のつもりではありまするが、併しなお且つ足りないのかも知れません。
  112. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると大蔵省並びにまあ農林省、水産庁はだな、国会のつまり決議、そういうものを一体どう考えておられるのですか。
  113. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 国会の御要望に副うべく最善の努力は尽したつもりでございます。それで言訳がましくはなりまするが、農林省の公共事業関係予算の比率からいいますれば、漁港必ずしも……農林省の枠内では多少上廻つた予算は獲得はしたわけではございまするが、併しそういうことは言訳になるとお叱りをこうむるかも知れませんが、我々としては最善の努力を尽したつもりではございます。
  114. 木下源吾

    ○木下源吾君 御努力のことはさつきから感謝しておるのですが、今も国会の御要望と言つておられるが、国会が決議をして何するということは、政府に対して一つ命令ですよ。この点を一つはつきり考えてもらわんければ、それは皆そのやり方によつては、役所に陳情にも何も行くし、国会にも行くでしようが、そんなことに馴れてしまつておるから、要望だなんということを私は言われると思うのです。そうではないのです。我々は、いやしくも国会で決議をしておることは、政府に対して義務を負わしておることなんですね。それができないというて、今のように大蔵省はこうだの、整備計画はどうでもいいようなことを言われたんでは、我々は、我々が言つているんではありません。国民がすぐ我々の後に皆繋つておる。我々は地方に行つて何も言いようがありますまい。国会で決議案を出して、そうしてそれが通過しておつて政府がそれを国会の要望だぐらいに軽く扱つては、我々は国民に対して説明のしようがありません。国会の議決に対してはあなたもう少し忠実にやつてもらわなければならんと私は考えるのですが、それは皆様どういうふうにお考えになつておられますか。そうして百五十を七十でいいなんということは当局として、あなた方のほうとしては断固としていけない、そういうことで夜店のバナナ売りみたいに、これだけより金がないからこうだ、とんでもない話だ、そういうことが私は日本漁業の現状になつているんじやないかと、こう思うような気がするのです。そこをもう少しおやりにならなければ、今大蔵大臣でもここに呼びますか、あなたたちは、そういう仮に安易な考えでおやりになつてつて、どうして一体日本漁業が維持できますか。今の海上保安庁に聞けば、壁にぶつかつてしまつてからべそをかいているようなこういうようなことじや、もう一遍一つ大蔵省にあなた方のほうでも、どういう考えで何しているんだか交渉して、できるだけおやりを願いたい。私は、今大蔵省当局を呼ぶ、そうして七十港まだきまらないのか、とんでもない話だ、どうしてその百五十を押せないのか、押せなかつたなら、できなかつたならもう少し理由が明確でなければ私はいけないと思う。答弁のため大蔵当局を……、この次に一つ大臣でも呼んで下さい。
  115. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 今日ですか。
  116. 木下源吾

    ○木下源吾君 今でも呼べれば今でも……。
  117. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 今衆議院の予算一応片付かないとなかなか大蔵大臣はここに来ないと思います。
  118. 木下源吾

    ○木下源吾君 片付きませんよ。そんなものを待つてつたらいつまででもだめです。まあ一つそれをお取計らいを願います。
  119. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それじや水産庁に対する質問はこれ終ります。前回からの継続の法律につきまして御説明を願います。前回日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律案につきましていろいろと質疑が交わされおりますが、そのうちこの損失を補償する問題につきまして、その額の算定を如何にするかということが論議されているんでありますが、本日調達庁から補償算定方式がプリントで示されております。これについて一応御説明を願います。
  120. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) お手許に差出しました資料に「漁業補償算定方式概要」となつております。これはこの提案になつております法律の補償につきましても準用する。同じ方法で計算をするという趣旨で参考資料としてお出しした次第であります。  現在御承知の通り漁業補償につきましては、漁区が駐留軍の演習等のための制限がございまして、その制限がありました場合に、損害を受ける漁業を如何に計算して補償するか、これにつきまして漁業補償算定規準というものを調達庁において作つておりますので、その算定方式をここに出したわけでございます。では特別損失の補償法とこれとの繋りはどうなるかということにつきまして、前回の委員会の際に委員長からも、庁議を開いてその方針を確認せよ、私は思想統一はすでにできておりますと、当時その席上で申上げてあるわけですが、折角のお言葉でありますから、昨日まじめに庁議を要請しまして、この特別損失補償の場合においても現在の漁業補償と同様の計算方式をとるという方針を調達庁としてはとりたいという趣旨でここに出したわけです。それで初めてこの資料が本法案の資料として意味をなす次第であります。ただここに御了解を願つておきたいことは、この特別損失を補償いたしまする場合に、その基準としてこういう方式でやるということについては本日ここで御審議をお願いすることになつたわけでありますが、先ず政府部内におきましても、各省の協議会にかけまして、それから初めて政府全体としての方針が定まるわけであります。総理府調達庁としての案に過ぎないということは御了承願いたいと思います。  さて内容に入りますが、この式は何か英語を使つてありまして、妙にくどいようでありますが、結果は一番簡単な方法を選んだ次第でありまして、このRでありますとかEでありますとか、そういう字の下に出ております字と置き換えて頂けば文章で書いた式になるわけであります。  第一番、「漁業者二対スル補償」、これは平年の純益から制限を受けました期間の純益を引いたものの八割額を補償額とする、こういう趣旨でございます。これは前回において大変問題になりましたが、「通常生ずべき損失」というのは、その八割額が「通常生ずべき損失」の全額であると見るという趣旨でございまして、起つた損失の八割だけしか補償をせないという趣旨ではございません。従つて見るところによりましては、八割と押えることが少な過ぎはしないか、九割でもいいじやないか、こういう御議論の出ることも私どもも議論としてはそれはあり得るという段階で御説明を申上げるわけであります。先ず私どもといたしましては、計算されました収入の差の八割程度を見ることが補償額として相当のところではないかと存じております。これは争いのあり得るところでございまするから、その意味でこう申上げます。  二番は、「漁業労務者二対スル補償」でございましてしと書いてありますのは説明にもございますように平年の場合の平均賃金であります。結局この式の持つております意味は、いつでも平年の平均賃金の八割までを補償する、結局全部計算しました結果は平年平均賃金の八割が補償されるという結果にります。  三は、「水中養殖物二対スル補償」、即ちこれは二つの場合に分けて、ございまして、移転を要する場合は移転費とそれから移転に伴つて生ずる減収の予想額との合計を補償額といたします。次の場合は移転しない場合でありまして、これは平年粗収入と提供後の収穫までに要する経費との差をとりましてそれを補償いたします。又水中養殖物の中にもう一つBの欄が謳つてありまして、荒分けの次の欄では、「当該収穫年度ノ翌年度以降ノ補償」はどうするか、これは継続する場合でありまして、これは「漁業者二対スル補償ト同様トスル」、その場合片々によりまして一定の推定の収穫の収入減をそれから見まして補償するということにいたします。  以上でやり方についての御説明は終つたわけであります。あとここに説明と書いてありますことにつきましては一応省略さして頂きまして、御質疑に際してこれを参考に供しながら説明を申上げることができるかと考えております。
  121. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 只今説明に対して御質問はありませんか。
  122. 木下源吾

    ○木下源吾君 第一の場合とあるが、これは「制限期間中ノ経費」が「制限、期間中ノ粗収入」より多い場合はどうなるんですか。第一の補償額の公式の中で(R—E)というのが出ておるんですね。マイナスできないことになりはしないか、こういう点を先ず……。
  123. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 制限期間中の部分につきまして、粗収入より経費のほうが多い場合は却つて補償額が多くなります。
  124. 木下源吾

    ○木下源吾君 プラスになる。
  125. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 少い場合よりも多くなります。
  126. 木下源吾

    ○木下源吾君 漁業労務者という定義は、これは雇われて賃金をきめての労働者ですか。
  127. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) さようであります。
  128. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると平均賃金L、これはどこで押えるのですか。
  129. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) これは実際にもらつておりました賃金を平均いたします。
  130. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはどこで一体正確にわかるのですか。
  131. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それは実地につきまして漁業組合であるとか県庁であるとか、そういうところで調べるわけでございます。
  132. 木下源吾

    ○木下源吾君 この場合この平均賃金は生活給と考えるかどうか。
  133. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それは生活給という観点から出ておる場合でも能率給で出ております場合でも、いろいろな歩増しなんかありましても、そういうものを全部含めまして実際にはそれが組合から幾らもらつておるか、乃至はその組合でなくても、会社なら会社から幾らもらつておるか、その実績によつて、その人の従来の収入を八割まで補償しようという考えであります。
  134. 木下源吾

    ○木下源吾君 今の御答弁で大体はいいと思いますが、インフレが強いときはこれはスライデイングしなければ駄目になる。これは賃金が高い場合はインフレが来ても辛うじてそれは生活できるかも知れんが、インフレとなればスライディングしないと、これは平年なんて言いましても私は不十分だ。そういう意味で生活給かどうかということをお聞きしているつもりですが。
  135. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 平年という言葉が何か遠くのほうを見ているような印象を与えましたが、大体一・四半期ごとにやつて行く方針でございますので、すぐ前の同じ年の中の賃金を見ることになります。その間若し大きな賃金の変動がありましたら、それはやり方についてスライドにいたすように又基準を変えます。
  136. 木下源吾

    ○木下源吾君 この場合最低の賃金というものを何らかの形で内定でも何でもしておくほうがいいと思うのですが、どうですか、そういう点については。
  137. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それはこの資金を作りましたときの思想に入つておりまして、最低八〇%までは絶対に出すというふうで、仮に制限中一文も賃金をもらえない場合は昔もらつていた賃金の八〇%は上げる、そのいわゆる平年の賃金、これが最低給であるかどうかという点につきましては一応実績主義で参ります。
  138. 木下源吾

    ○木下源吾君 私の今お尋ねしているのは、最低八千なら八千というものは補償されるというようなことの考え方はないかどうか。できればそういう最低の……。
  139. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それが最低、昔のもの平時のものの八割までというのが一つの最低補償額をきめました思想であります。それが自然最低賃金になる……。
  140. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、八割でなく、その基準を八千なら八千、そういうことはできませんか。
  141. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それは全然、不可能ではありませんが、今はそこまでしなくてもいいと考えているわけであります。今後の事態で何か最低を金額で切つて行わなければ補償の体をなさんというような事態が参りましたらそういたしたいと思います。今のところはこの八〇%見ておけばむしろ八千円なら八千円より多くなるという感じがいたしております。
  142. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はくどいようですけれども、例えばほかの、底曳でも小型の場合などは漁業労働者に対しての保護というものはないわけなんです。実際において。船の補償だとかいろいろはある。それから中型、大型はある。中型は漁業労働者の補償がある。これは得て零細な小さいほうへ行くと補償も何もない。ですからこれはできるだけ保護せんといけない。こういう考え方から、これは実際からお願いしておくわけです。そういうつもりでお尋ねしているわけです。十分その辺を考慮の中に入れて実施してもらいたい、こういうのであります。次にこの零細漁業、この程度はどの程度にお考えになつておりますか。
  143. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) これは零細漁業の限界といいますか、程度につきましてちよつと水産庁の意見を聞いて頂きたいと思います。
  144. 高橋泰彦

    説明員(高橋泰彦君) 別にどの限度から零細漁業であるということは考えておりませんが、ここで問題になりますのは、自己労賃が大部分のいわゆる経費を占めるような場合、これがここでこの補償の際に問題になる零細漁業の内容でないかと考えております。
  145. 木下源吾

    ○木下源吾君 これはやはり一人で小さい船を操縦しているばかりじやなく、家族等でやつている、二人或いは三人で、子供とか女とかいうような者もやはり零細漁業というようなものに大体内定しておかれたらいいのじやないか、こういうふうにまあ考えておりますが、雇われたのではなく、家族的な、陸上ならば家内工業というようなのは今日は零細の中に入れてもらえると思いますけれども、この範囲、そういうものの場合はよく検討して、そうして府県にも知らしておいてもらいたい。これも非常に恩恵に浴する機会が非常に少いので、地方のほうでのいろいろやかましいのはやはりこういう人たちが多いのですよ。ですからまあそういう点に十分御注意を頂きたいと思います。
  146. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 この算式につきましては了解いたしました。今の木下さんの質問と同じ点で補足して質問したいと思うのですが、この第一の漁業者に対する補償の場合も、平年粗収入というと、これは漁業制限の起る前のやはりこれは収入ということになると思いますね。ですから初年度あたりは時間のずれが余りありませんから、インフレなりデフレなりの影響というものが大したことはないと思います。これが二年、三年たつて参りますと、数年前とその年との間に例えば非常にインフレがあつて、魚価が上つておるということになりますると、やはりこの間に非常に不公平が起きはせんだろうか。ですから例えば米あたりでやつておるような原単位計算というようなふうに漁獲数量と経費、いずれもその数量をその年のまあ時価といいますか、補償時における時価によつて算定し変えてやりませんと、或いは不公平が大きくなるというようなことがあつて、補償の意味をなさんと思いますが、その点はどうですか。
  147. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 誠に御尤もなお話でその通りでございます。これを細かく申しますと、平年粗収入を算定します場合、前三年の漁獲量を見まして、その平均の年漁獲量を出します。それで当然収入を見るために魚価をかける、その年の魚価を使います。最も有利な方法で計算する、有利というよりも合理的な方法で計算をする。こういうことになつております。
  148. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 わかりました。それからその次にまあ平年粗収入の算定は今言つたようにスライディングに考えて行きます。ところがこの補償する制限期間中の純益というものは、その年のやつぽり豊凶といいますか、豊漁なり不漁があると思います。そうなるとこの制限期間が相当続く場合においては補償金額が毎年変るということになりますか。
  149. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 年々の魚価を押えて参りますから、年が変つて参りますと補償の単価と申しますかが変つて、自然補償の何と申しますか、減収をした貫当りの補償額は変ります。その魚価によつてつたり下つたりするのでございます。
  150. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 それはもう先の質問でわかつておるので、貨幣価値の変動による価格の変動はこれは当然なわけですが、併し制限期間中でも魚が、或るときは取れたり非常に不漁だと、こういう絶対数量に単価をかければ、絶対数量の変動というものを見るかどうかということですね。
  151. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 制限期間中の漁獲の変動は結局見られないということになります。制限を受ける以前の三カ年平均の漁獲高を中心にしまして、それが一応推計された制限期間中の漁獲を算定する基礎になるだけでございます。すると制限期間中の漁獲の減少ということは、制限期間が或る程度、三月なら三月過ぎました場合の漁況、漁業の状況をとりますから、おつしやるような収獲の変動は反映いたしません。
  152. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 そこのところは私は実はこういう建前から聞いているのです。(R—E)は、これは今言つた貨幣価値の変動はこれは当然でありますが、これは平年で一応見ているのです。漁業生算高は。ところが(R`—E`)のほうは、平年時の毎年の漁獲高を押えて行きますれば、補償全額が毎年変るということになりはせんだろうか。それは更に言いたいのは、今年は制限期間中であつたけれども、非常に例えば潮流その他の関係で魚がたくさん取れた、それだけ補償が減るわけですね。併しそれは若し防潜網がなかりせば、これは潮流がよくなればその年の分量が殖えて来るので、それを平年で押えられるとその点がどういう意味質問しているわけです。
  153. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) さつき私は影響しない点があると申したのはそこなんです。いつも引かれるものは前三年の桝はきまつております。その年の漁獲が、制限されている間の漁獲が減つたときに、その桝との差は出て来ますけれども、桝そのものは本当はもつと殖えるべきではないかという点は反映しておらん計算になつております。
  154. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 なおその点はもう一遍私も研究いたしまして御質問いたすかも知れませんが……。それから、もう時間もありませんから極く簡単に伺うのですが、第二の漁業労務者に対する補償の場合ですね。Lは、賃金というのは要するに現金で払われている賃金だけが、これは漁業経営から見れば或いは乗組中の食糧、被服費のような現物給与が相当あると思います。それから更には漁獲高の一部を乗組員にやつて、それで或る程度の賃金のペイをするというケースもあると思うのですが、そういう両方とも含んで算定されるかどうかですね。
  155. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 現金以外の給与の意味で出されている被服とかそういう現物給与も入りますし、それから漁獲を分けました場合も換算できる場合は換算いたしまして給与にいたします。成るべく積極的に給与は漏らさないように調査いたしまして、本人の補償に手落ちのないようにいたしたいと思います。
  156. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 百分の八十につきましては意見がありますが、今日は時間がありませんから、又この次の機会に御質問いたします。
  157. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは本案はなお質疑を継続することにいたしまして、本日はこれを以つて委員会を散会いたします。    午後三時五十六分散会