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1953-03-09 第15回国会 参議院 水産・農林連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月九日(月曜日)    午後一時四十三分開会   —————————————  委員氏名   水産委員    委員長     秋山俊一郎君    理事      木下 辰雄君    理事      千田  正君            青山 正一君            玉柳  實君            片柳 眞吉君            木下 源吾君            松浦 清一君   農林委員    委員長     山崎  恒君    理事      瀧井治三郎君    理事      徳川 宗敬君    理事      三橋八次郎君    理事      東   隆君           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            小串 清一君            西山 龜七君            宮本 邦彦君            森田 豊壽君            赤澤 與仁君            飯島連次郎君            楠見 義男君            島村 軍次君            岩崎正三郎君            清澤 俊英君            小林 亦治君            岡村文四郎君            鈴木 強平君   —————————————  出席者は左の通り。   水産委員    理事            千田  正君    委員            片柳 眞吉君            木下 源吾君            松浦 清一君   農林委員    委員長            山崎  恒君    理事            三橋八次郎君            東   隆君    委員           池田宇右衞門君            小串 清一君            宮本 邦彦君            島村 軍次君            小林 亦治君            岡村文四郎君   政府委員    調達庁不動産部    長       川田 三郎君    水産庁長官   清井  正君    水産庁次長   岡井 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国に駐留するアメリカ合衆国軍  隊の行為による特別損失補償に関  する法律案内閣送付)   —————————————    〔水産委員会理事千田正委員長席に着く〕
  2. 千田正

    委員長代理千田正君) 只今より水産農林連合委員会を開会いたします。本日秋山水産委員長が所用のため出席できませんので、先例によりまして私が本連合委員会委員長をさして頂きますが、何とぞ御協力をお願いいたします。  それでは本日の議題は公報に掲載の通り日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案でございます。出席されております政府のかたがたは、農林省関係農地局和栗入植課長農地課安藤事務官水産庁清井長官岡井次長特別調達庁不動産部長川田君でございます。どうぞ皆様からこれから御質疑を一つお始めを願います。
  3. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 この法律が成立いたしますれば、今後の災害につきましては本法によつて賠償救済せられることになるのでありますが、既往における同じような補償救済につきましては、政府においてはどういうような措置をとられる方針であるか、例えてみますると、現在問題になつております福岡県の芦屋飛行場に関連する災害補償につきましては、聞くところによりますると、極めて少額の見舞金で事済まさんとしておる方針であるようでありますけれども本法制定以前のことであつて本法に準じて公正に補償する必要があると思うのでありますが、政府の御所見は如何でございますか。
  4. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 占領中のいわゆる特別損失に当ります防風林除去又は損壊等のために、農業上の被害を受けておるという種類のものは現在見舞金で出すという以外には方法が発見できないわけでございまして、見舞金につきましては最近は占領終了全額見舞金として出すことになつておりますが、その以前は他の飛行機事故、火災、そういう事故につきましても、或る時期においてはその損害額の五割程度、その時期より古いものにつきましては二割五分程度、こういう基準を立てて一般的に見舞をしております関係上、一応講和発効に至りまするまでの部分につきましては、それらの率で見舞をしなければならない事情になつております。ただ調達庁といたしましては、そこに二割五分なり五割なりそういう逓減率を適用しておることは、その根拠といたしますところが財政上の負担力という限度が基になつておる関係でありますので、今後財政余裕が生じました場合には、又その余裕を差繰つて、少しでもそうした方面に振当てるように努力をいたしまして、その率を追加いたしまして見舞の追給をするという点に現在努力中でございます。結論といたしましては、現在のところ五割程度損害補償が、講和発効に対して直前になつておる期間に対してはそういう損害補償ということになります。
  5. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 芦屋飛行場防風林の問題につきましての損害は、政府のほうではどのくらいに見積つておられますか。
  6. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 現在調査中でございまして、まだ金額についてはここで申上げることができないことを甚だ遺憾に存じます。
  7. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 次に本法第一条第一項の損失補償対象について、第三号の「政令で定める行為」とあるのは如何なるものを予定しておりますのか。
  8. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 「政令で定める行為」については、現在各省間の意見を取りまとめ中でありまして、もうすでに会議も二回開いておりますが、従来の事故の発生しました事例を取り集めまして、この一号と二号に出ておりまするもののほか、大体現在は教育施設に対する被害及び水に関係いたしまする被害、交通に関係いたしまする被害、これらは政令に盛込む話合いが進んでおります。いよいよ政令として発布いたします段階にはそれぞれ議論もございますし、又果して国の財政上そこまでの範囲を認めるかどうかという点もございます。なお十分取急いでこの協議を進めて行きたいと存じております。
  9. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 大体わかりました。農業上から考えますと立入禁止によりまして農耕の適地を失つたり、或いは飛行機爆音などによつて鶏産卵量減つたり、或いは乳牛乳量減つたりするというようなことがあるのでありますが、これらも農業経営上の損失であると論じられておりますが、こういうようなことに関しましての損失補償対象というものは、これは対象になり得るかどうかということをお伺いしたい。
  10. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) それは軍の行為、丁度先ほど御発言のございました第三号の行為がどういうものになるかという点できまつて参ると存じます。従つて航空機爆音、爆風、そうしたものによつて影響を受けたと通常観点から判断されますものは補償されることになります。その他演習に基く行為、これも軍の行為としては取上げたいと存じておりますので、航空機以外の水上、陸上の演習によりまして被害を受けたという場合に、成るべく私どもといたしましては多くの被害を救済するように政令を定めて行きたいと存じております。
  11. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 政令で広い範囲で定めて頂きますると大概のものが入ると思うのでありますが、若し今申上げましたように爆音で卵の量が減つたとか、或いは乳牛乳量減つたとかいうような、そういうような抽象的なものは、ややもすると省かれるようなことになる場合が多いのでありますが、そういう若しも明らかにこれの対象とならんというような損失に対しましては、政府はどういうように対処して行こうとしておるのかお伺いしたいと思います。
  12. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) この法律で定めます政令に基いて一定の軍の原因たる行為と、その補償対象になる事業事業のほうは只今農業という意味で御質問でございますので、一応問題はないと存じまするが、軍の行為が取上げた範囲外に亙つておる場合、やはりその原因を与えましたものが駐留軍でありますならば、その被害の直接、間接という点で、先ずその間に他人の意思や、他人行為が介在しない場合は直接の被害と存ぜられます。その際この法律で当てはまらぬ場合には総理府令によりましては直接被害に対する見舞金を出すという規定がございます。これは軍の行為なり、事業なりを限定しておりません。駐留軍によつて直接の被害があつたならば見舞金を出せる、こういう規定がございます。従つてその見舞金も額の程度が問題になるわけでございますが、これは占領中の見舞金と違いまして、全額補償をするという建前になつておりますので、成るべくは、若しこの法律及び関係政令によつて当てはめることができない場合は総理府令見舞金を活用して行きたいと存じております。
  13. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 損失が連続し、或いは巨額なために農家営農意欲失つて農耕を放棄して他に移住するような場合、移住に伴う経費及び新開地のためによる減収と移住によつて生ずる損害事業経営上の損失として本法によつて救済されるものと了解して差支えございませんでしようか。
  14. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その事業経営が受けます損害が軍の行為の結果生じ得ると通常判断できます場合には、経営上の損失として見ることができます。ただ只今お話のように営農意欲失つたという点が問題になるかと存じます。なぜかと申しますと、人によつてはまだそこに農業を続けて参りたいという方もあり、又他の人はもうそこは放棄したい、そういう場合には客観的な判断ということは、言葉では申せますが、事実に即して状況によつて成るべく多数人が納得し得る判断を下さなければならないと存じます。従つて転農する場合の次の計画に必要な資金面の補充乃至は建築費であるとか、農地構成費乃至は農地を購入する費用、そこまでこの損失補償によつて補償し得るかどうかという点につきましては、私は御想像になつておられるような経費全額をこの特別損失補償によつて補填するということは困難であろうかと存じます。併し政府としては一つ原因をこの国際情勢において与えられておることでありますので、調達庁といたしましては自分の所管の線は成るべく積極的に補償に向わしめ、且つ関係農林当局等と十分協議いたしまして、又農林行政面においてこれを善処して頂く協議にはやぶさかでない次第でございます。
  15. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 なお営農意欲の喪失に関しましてはいろいろ判断上困ることがあるでしようけれども、私が今申上げますのは、損害が連続し、或いは巨額なために農家営農意欲失つておるというような、こういうようなはつきり判断し得るような条件があるわけでありますが、それによつて先ほど申述べましたような損害補償ができるかできんかということをお伺いしたいのであります。もう一遍それについて……。
  16. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) そうした場合の損害の一部分はこちらの法律によつて補償できると存じますが、他の部分においてこの法律によつて補償できない部分も生ずるかも知れないと思います。その程度がどうなるかということは事実について判断しなければならないと思います。
  17. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 損失補償行為が連続的であるものは勿論、たとえその行為が一時的なものであつてもその影響が継続するものにつきましては当然年々補償が行われるものと了解して差支えございませんでしようか。
  18. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その影響行為終了後も続いております場合には二つ方法が考えられます。一つ只今御指摘の通りのその影響の継続しておる期間をその被害者所得を補填する意味補償を連続するということ、もう一つはその被害状況原状に回復する、例えて申しますならば、漁場の深さが非常に埋つてしまつたというような浚渫の費用をいう、農業でありますならば、荒された耕地を元のように回復する原状回復費をいう、そういうふうに原因を物理的の面で出して、そのための補償費を出すということ、この二つ方法がございます。
  19. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 防風林が伐採されましてこうむる損害というものは、その行為は一時的でありましても、農耕に及ぼす影響というものは相当長い間続くと思うのでございますが、その相当長い期間補償ということも当然行われるものと了解して差支えございませんですか。
  20. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) それは長い期間にも永続して補償いたします。丁度レンタル即ち借料のような形で補償することができると思います。
  21. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 第一条第三項の「通常生ずべき損失」とは具体的に如何なる考え方であるかということが一つ。それから「通常生ずべき損失」を通常の場合の収益と、駐留軍による行為があつたのちの事業収益との差を考えた場合、例えば被害者がその損失を軽減するため施した措置又は施設に費しました費用は当然補償に含まれるものと了解するのでありますが、さように解釈して差支えございませんですか、どうですか。
  22. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 第一点の「通常生ずべき損失」と申しますのは、特殊な結果の場合には、その結果が果して一般的な場合に起り得るかどうかを吟味する趣旨でありまして、実際の損失の算定に当りましては成るべく一般的事情権衡等を考えまして、通常の場合にそうした損害があり得るということを発見した場合にその損害額を算定することができます。至つて抽象的な説明に終始いたしてしまうわけでありますが、これは一つ損害賠償を取扱います上の従来の先例等もございまして、良識に訴えてこの額を一応算定いたしまして、又被害者の側に対しましてもその結果を十分納得されたところで協定上の損失補償額といたしたいと存じます。又第二点の特殊の予防費と申しましようか、軍がそういう一定行為をいたしましたために被害が起る、その被害を未然に防止するために一定の出費をいたしました場合、これは従来上つておりました所得と、軍が行動いたしておりますその影響を受けておる期間所得を比較するという誠にそれはお説の通りでございます。その際そうした費用がどういう扱いを受けるかということになりました場合、それはごう計算いたします、そうした費用はその事業を行いますのに必要な経費であるかどうか、まあ恐らくお説の場合では必要な経費となると存じます、そうした場合にその純収益を計算いたします場合、粗収益からそういう費用を差引きまして、つまり特別に費用がかかつておれば自然純収益一般の場合よりも少く計算される、比較的少い純収益通常収益とを比較いたしますから自然そうした特殊の経費を払つております場合は補償額が増加いたします、而もその程度は、その特殊の経費部分だけが補償額として増加するという計算になると存じております。
  23. 小林亦治

    小林亦治君 従来の損害に対しては、おおむね五割程度見舞金をやつてつたと、こうおつしやるのですが、それはなんですか、一般規定によつて損害補償を求むるところの相手がおらないために、調達庁が特に計つて損害を填補する意味において、五割程度補償を与えておつたと、こういうのですか。
  24. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 損害をもらう相手はおつたわけであります。ただ国一つ賠償をいたします場合は事実はあるのです。賠償しなければならんという事実はあつて、誠にお気の毒だと思うのですが、一つの国の事務扱いといたしましては、それに対して占領中のものにはこうした法律乃至は行政協定十八条による補償というようなものができておりません。誠に他の被害を受けた国民に対しまして国が支出する根拠がなかつた、ただ非常にこれはお気の毒であるから、何とかして財政上の差繰りをして見舞をしよう、沿革的に申しますと、占領当時は人が一人死亡するような事故が起りましても、その生命に対する見舞金が五百円しか出ておらないというような事情がございました。それも国に直接債務がないからと、こういう見解に立つていると思います。債務が直接ないという理論的な見解は、占領中においてはやはり残るのでございますが、それをだんだんと契約なり法律規定に基くなりいたしまして、国が債務を負つておらなければならない、債務を負うべき状況に近付きつつあつたわけであります。講和の調印後のものを五割認めた。それ以前のものも又あとから追加をいたしまして二割五分認めた。これは漸増的にこれが実情に近付きつつあるわけであります。
  25. 小林亦治

    小林亦治君 国が債務を負担してからは、これは損害に対する全部賠償ということが一般法上の原則なんです。あえてこれは規定を設ける必要がない。若しくはそういうふうに部長がおつしやるようなことであるとするならば、本法はこの損害賠償の特例を定める法律で、而も一般法によれば全部賠償を受けられるにかかわらず、本法制定によつて部分しか得られない。いわば国民に対する権利の縮小になるわけなんである、その点はどうなんですか。
  26. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 先ほど申しましたように占領中の、まあ実質は賠償でございますが、見舞金というものが五割……二割五分という線になつております。それを全額賠償にするために国が特別のこういう法律を設定いたしまして、その賠償責任を負うことを明らかに根拠付けるというのが本法の大きな趣旨でございます。
  27. 小林亦治

    小林亦治君 それならばですね。第三条でしたか、法案は見ておりませんが、政令に定むる行為といつたような枠をきめる必要がないのであります。民法の七百九条というものがあるのですから、故意、過失によるものは全部これは如何なる場合でも全部賠償しなければならんでしよう、それからこういう過失がなくても七百十五条によれば、起業者無過失責任というものがこれは炳乎としてあるのですから、かような特別な立法は必要がないのじやないか、そこでなおこの民法に定めてある保護よりも簡単な方法で、而も早急に賠償を与うるための法律であるとするならば、政令で定むる行為ということは、これは削らなければいけないのじやないか、だから出訴の方法、或いは請求の方法についても、一般法令よりも遙かに簡便な具体的規定を盛る必要があると思います。それらについてはどういうふうになつておるか。
  28. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 民法の七百九条、七百十五条に関連いたしますと、或いは行政協定の十八条に基く損失補償ということで、駐留軍関係は行けるようにすでになつております。更にもう一歩進めて、私は法理上これを無過失賠償責任なりというところまでの研究はまだいたしておらないのでありますが、俗に言う無過失賠償責任と甚だ似ておる、責任を負うための法律と考えられます。つまり原因たる行為を与えたのは駐留軍という外国の軍隊であります。それがただ日本政府協定によりまして、日本国においてそうした被害原因作つた、その際日本政府は果して民法責任があるかどうかという点は、駐留軍を駐留せしめておるという原因がありますので、これは過失とは申せませんが、何か法律原因なくして他人損害賠償責任を負うという関係になります。従つて仮にこれを無過失賠償責任に準じて考えまするならば、そうした特殊な法律上の責任関係に立つ、こういう特殊の観点に立ちました立法でございますので、或る意味においては我が国の賠償方法といたしましては一つの期を画するものであろうと存じます。従つて政府といたしましてもその適用につきましては慎重を期さなければならん、国民負担を又一面においては少くとも軽くしなければならない、こういう観点から現在明らかに国がその特別な賠償責任を負うべきであるというものを法定いたしまして、防潜網その他水中工作物等の設置及び防風施設防砂施設除去損壊、そういうものを法定原因たる行為として取上げた次第であります。然るにこれだけでは到底軍の行動の現状からいたしますと、国民被害は十分に擁護されない、併し事急を要するのでありまして、今その軍のあらゆる行為立法に際して網羅いたしまして、ここに各号として掲げるためには、若干の時日を要しますので、一応これを事態に即し得るように政令に委ねさして頂こう、こういう考え方でございます。
  29. 小林亦治

    小林亦治君 一種の無過失責任だとおつしやるのですから、それならば七百十五条というものもありますから、お話はそういう角度でなくてもこれは国家であつても、地方団体であつても同じだと思うのですが、只今第三者との特別な契約国家なり地方団体が結んだ場合に、直接に或いは間接にその契約損害が由来する場合には、これは損害賠償を求むる権利があるのであります。そういう観点からも本法は当然のことを法文化するようなもので、本法によつて特別に損害をこうむつた側が保護せられるようになつたとは相成らないことになると思います。殊に危険なのはこの第一条の三の規定なんです。第一項三号、政令で定める行為となるそのあらゆるものを網羅する、差当り時間がないので結局そういうふうに定められるとおつしやるのですが、かかるものを、損害種類というものを予定する必要がないと思う。若し政令に定めざる、うつかりして落した場合には、政令に載つておらないところの事項による損害には何ら賠償せられないということの危険性があるのじやありませんか。やはり一般法原則によればそんなものを定めない、いやしくも駐留軍行為により損害を受けたるものはといつたような規定のほうがより保護せられるのだ、いわば官庁各位にその具体的事例挙ぐることを我々は委任すると、それがあなたみたいに有能な人ばかりが揃つてつて下さるのなら結構なんでありますが、うつかり落した場合、落した事項原因する破損害者というものはオミツトせられることになる。ですから成るべく政令で定むる行為などというような特段なことは目を開いて、いやしくも損害を受けたる場合としなければ、却つて本法制定によつて一般損害賠償を求むるところの範囲というものは挟められることになつて、御趣旨とは反対な結果になると思うのであります。何のためにこんな余計なことを書くのか。たくさんまだ書かなければならん、というのは一号でも二号でもこんなことは書く必要はない、いやしくも損害を受ける、予防の場合なら格別なんでありますが、その点をどういうふうにお考えになつているか、もう度御説明願いたいと思うのであります。
  30. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 只今の御意見は、御趣旨において私どもも全くその通りに考える次第であります。ただこうして号を分けまして、一号、二号を法定事項とし、三号を政令事項に譲りましたことは、全く無用な手数、無用の考慮を払つたように見えるわけでありますが、お説のように駐留軍行為による損失というだけの原因を明定すれば、全部が細大漏らさず補償対象になるわけで、補償を受ける側といたしましては最も理想的であると存じます。ただ前提の違いでございます。私どもは、国が駐留軍を存在せしめるといえ、何もかも駐留軍の行う行為に対する損害賠償責任を、日本国として負わなければならんことはないという見解を持つているのであります。只今小林委員のお説は、駐留軍をそうして存在せしめている以上、何か被害が生じた場合には、日本国が全部責任を負うべきであるというお立場に立つているのではないかと存じます。御意見のような立場からいたしますれば、こうした細目の規定は要らないと存じますが、私どもが現在考えております日本国として負うべき責任の限界を、いずれにおくかという点になりますと、やはり社会的に見まして相当被害度の高い、又その影響が経済的にも大きい、御本人のみならずその事業、又その事業関係します日本国民経済影響如何にあるか、又社会福祉の点が如何にあるかという点を考えまして、各省間の意見総理府において十分取りまとめて、又各省間の意見を交換して頂いて、現在日本財政力によつて補償し得るか、又負担の限界から考えてはいけない、負担すべきだと考えられるものを、成るべく重点的に取上げる、重点的にという言葉が或いは只今意見のように補償を限局するものではないか、こういうことになるのでありますが、端的に申上げますならば、こうした特殊の賠償責任は或る程度限局しなければならないという要請が、どうしても現在の財政状態からは出て来るのであります。もつと我々事務官僚として苦衷を申述べますならば、非常に拡げてしまいました場合に、取扱います所管の官庁、殊に予算的にその衝に当ります調達庁といたしましては、国庫当局との予算折衝にも相当骨が折れるということになるのでありまして、国庫当局もこの程度責任は負担しよう、又各省においても所管の各業界を相手にいたしましてこれならば納得せしめ得るという幾分の兼ね合いの問題がございますので、この限局が行われるという点については、現在の日本財政状態から考えまして御了解を願いたいと思う次第でございます。
  31. 小林亦治

    小林亦治君 伺うに従つて了解できなくなるのですが、結局最初に伺つた通り一般法によるところの請求権を、つまり或る程度抑えるためにこの法律ができると、こういう結果になるのじやないですか、その点について。
  32. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 一般法による請求権はないという前提に立つております。ないが、国が実際の事情から特別の負担をみずから立法をして買つて出ようという趣旨なんでありまして、あるものを限定するのじやなくて、ないものに或る程度、或る程度というと言葉が悪いのですが、できる限り負担をして行こうという趣旨であります。
  33. 小林亦治

    小林亦治君 ないものを負担するというのですが、それはちよつとおかしいのです。先ほどもあなた自身がおつしやつてつたように損害原因を与えた場合には賠償しなくちやならないとおつしやるのですが、その通りなんです。ですから一般法によればないものを本法によつて新たに与えるのだということにはならない。本法なくともこれは国家が直接間接の全賠償責任があると私どもは解釈しておる。それからもつとそれをわかりやすく申上げるために御参考に申上げるのですが、占領中の占領軍の行為に対しても、国民は、つまり被害者賠償請求はできるのですよ。これはどういうところかといいますれば、結局これは理窟を言うようですが、ポツダム宣言の受諾という当時の日本政府行為によつてつたのであります。実際の戦いによつて占領した占領軍じやないのであります。あれも一つの広義の条約なんです。その場合ですら私どもはあると解釈しておるのですから、講和後においては行政協定によるところの駐留軍の場合に対しては、当然政府はこの駐留せしめたところの行政行為に対しては損害上の責任を負うのは当然なんであります。こんなものを今更恩着せがましく出して来て、実は損害賠償する義務はないのだが、これを作つて義務を負担しましようということは、ちよつと何といいますか、人を馬鹿にしたような、ないのだがこれによつてやるのだというようなことは、そういうふうに受取れるのです。かかるものがなくとも、当然直接間接損害に対しては、政府賠償しなければならない、こう思うのであります。でこの議論というのは法理上通るか、通らないかということは、これは問題なんです。私どもの法理常識としては通さなければならない、こういうふうに考えておる。国家一つの行政的な取極によつて損害を受けた場合に、特別なる法律がなければその賠償請求権がないなんということは、従来の成文法を棚上げにした考え方なんです。従来の諸成文法からいえば、こんなものがなくとも直接間接損害に対しては当然賠償しなければならない、こう思うのです。
  34. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) その点は私も全面的に賛意は表しがたいのでありますが、私も先ほどこの法律は無過失賠償責任規定した性質を持つておるということについては、まだ自信がないと申上げました。というのは、只今小林議員の言われたように国にそうした条約上の事実関係がありまして、そこに国民被害が、これを遠い原因として具体的に発生する場合、国が民法上の賠償責任者になるものかどうかという点については、小林議員は大体において、若干の疑いというよりは結論的にまだ異論のあることをお認めになつていらつしやいますが、私も別の側から国に全然責任がないということについては異論のあることは了承いたします。併しこの法理論を今ここで決定的にきめるということはなかなか容易ならぬことであろうと存じます。従つてこれが現在日本政府自身に一般的に賠償責任ありという結論が出るまでの暫定措置としても、こうした責任関係をでき得る限り広く認めるという趣旨でこの法律を出すということは、現在甲論乙論両方ありますこの国際的賠償責任の問題を、具体的の問題については先ずこの形式で解決をいたしまして、朝に夕に飛行機事故等で被害を受けている国民、又防潜網、防風施設等の影響ですでに損害を受けている国民、これを一日も早く救うためには、法理論の観点はそれぞれ一時留保しておきまして、本法制定し、そうして具体的の損失に一日も早くその補償を支給したいというのが私どもの念願でございます。根本的には或いは御納得の行かん法理的の解釈も存在すると存じます。併しこの際これを施行することによりまして、従来の問題が殆んど解決するという結果を一日も早く得たいと存じておる次第であります。
  35. 小林亦治

    小林亦治君 現在この賠償が遅れておるということは、多方面に亙つて、而もその損害の数、額が莫大であり、日本財政が貧困であるためにそれが遅れておるに過ぎない。ですから早くやるためとおつしやるのですけれども、早くやるために而も一部賠償であつてはならない、却つてこういうものを作つたために、百円の損害に対しては五十円なり六十円という程度で諦らめさせられてしまうのじやないかという気がするのです。法理論だけの御意見の交換をするのは目的でありませんが、やはりそこははつきりしておかないと、暫定的というが、これをはずした場合には、又これは問題がたくさん出て来るので、要するに損害賠償を受取るものの権利の縮小になる、権利主張の制限になる、損害額算定の圧縮になる虞れのある本法案はこれを出すべきではない、よろしくこの原則従つて政府財政当局も今までの卑怯な態度を捨てて、早急にこの民法上の原則に戻つて賠償を実施すべきものだ、それは政治問題だけで、かかる立法問題を今ここに持つて来て作る必要は私は断じてないと思つておる。これはごまかしなんです。ごまかしのつもりがなくとも、不誠意な官僚によつて、これでもつていい加減にさせられる虞れが十分にあるのです。そこを私どもは気にするのであります。
  36. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 只今損害がこの法律扱い方によつて六割とか七割になるというお話がございました。併し私がここに限定しておると申しますのは、取上げるべき事業と、軍の原因たる行為が、或いは全部を網羅しない結果になるかも知れないと申上げるのでありまして、取上げられましたものについては、その発生しました損害全額賠償するという趣旨でございます。で全額ということについては事務側の査定によります関係上、或いは被害を受けたほうとしては全額賠償でないという感じを持たれるとは存じます。その場合には手続については一般の民事訴訟の手続まで行かなければなりませんが、第五条によりまして訴えを以て査定額の増額を請求することができるとなつておりまして、その場合は第二項によつて国を被告として争いますから、一般民事訴訟法の点で争い得る訴権等は保障されておるということになります。先ほど訴えの方法をもつと簡略にすべきではないかという御意見、誠に結構でございますが、今そのところまではこれで規定することがちよつとできませんでしたので、一般の訴えの方法によつて最後の解決をし得る、全額補償の線は実現したいと存じております。
  37. 小林亦治

    小林亦治君 そうすると何ですか。この政令で定めるところの例示に該当しない、而も損害を受けたのは本法による賠償でなく、一般司法裁判所によるところの関係で請求をなし得る、こうおつしやるのですか。
  38. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 政令に漏れておる被害者一般民法規定によりまして要求する、訴えを起すことはできると存じます。ただ訴えました場合に裁判所が法規を元にして裁判いたします際、如何なる判決が下りますか、私はやはり何らかこうした法律、又その委任による政令根拠がなければその賠償責任というものは認めにくいのではないかと憂慮いたします。従つて総理府令による直接の被害という範疇に入りました場合は、そのほうで見舞金を出すことにいたしております。それ以外では実際の裁判の結果に待たなければならんと思います。
  39. 小林亦治

    小林亦治君 それだから私が気にかけるわけなんであります。この政令の例示事項に漏れた被害者が普通の、通常の司法裁判所に出訴した場合にはそれは敗訴するのです。どこで敗訴するかと言いますれば、この法律が出たことによつて、この法律さえ出なければ堂々と請求し得る、勝訴の判決は与え得るものを、新らしい法律によつて損害範囲額というものが明定せられておるのですから、それに、その範囲に該当しない請求というものはこれは法律上理由の立たない請求になるのです。それだから一般権利の制限になる。こういうふうに申上げるのです。必ず裁判所は何ですよ、この法律にないのだから、この法律によつて請求権がないということになつておるのだから、お前のほうの請求が不当であるとこう解釈するに相違がないのであります。故にこの例示というものはやめなければ折角この新らしい法律を作るところの御趣意というものが逆効果になる。そういう例もあるのです。
  40. 千田正

    委員長代理千田正君) ほかに御質疑はございませんか。
  41. 小林亦治

    小林亦治君 ここを少し部長、先ず決定しようじやありませんか、必ずそうなる、私ども経験がある。この法律が出なければ七百九条、或いは七百十五条によつて保護せられるのですから、かかるものを作つて、その保護の範囲から追いやるということになるので、私はそれを言うのであります。
  42. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) この法律が出なければ七百九条等によつて保護せられるという御見解は、私ども直ちにこの法律が要らないというところまでにはお受けいたしかねるわけであります。そういう議論があると同時に、一般民法原則によつてはこうした駐留軍原因を与えた行為補償はできないという議論がありますればこそこういう法律を出すことにいたしましたので、その際この法律を出すについても、法務省も相当の検討を加えた上で出したわけであります。法務省がこれを出すことを、即ち国民権利を少しでもより多く擁護しようとすることにほかならないのでありまして、若し法務省が御見解一般民法原則によつて補償できるという見地に立つたといたしましたならば、この法案の起草は法務省自身いたさなかつたと思います。実際私どもが起草いたしまして法務省の審査を受けたわけでありまして、私どもはやはり日本の法務を司つておるその省の機関がやはりこの法律がなければ現在のいわゆる間接被害というようなものは補償されないという見地に立つたればこそ、これが法案として提案されたものと存じます。又先ほど政令に漏れた者が若し訴えた場合、この法案があると却つて法案の掣肘を受けまして、この法律にないからというようなことで訴権なしという御見解でございました。併し私はこの法案が出る出ないによつてそうした民法上の根本的な法理が覆えるものとは考えられません。若し民法上お説のように国家賠償責任ありとされますならば、この政令に漏れた者にも補償が行きますでしよう。又政令に載つておるものでも、あえてこうした手続を踏まずに民法土の請求ができると存じます。併し現在は御見解とは違いますが、政府といたしましては、こうした特別の法律を設けるにあらざれば国民の利益が完全に近くまで保障できないという見解に立つておるわけでありまして、現在争われておる国際間の損害補償に対する補償方法といたしましては、こういう法案によつてその処置をとる、幸いに御見解通り民法上の責任が国にあるということになりますれば、その法案を廃止いたしまして、もつと広い範囲民法上の処置において堂々と損害の要求と補償を行うということができると存じますが、今日はこうした法律を提案し施行いたしまして補償することが、その民法の大原則に基き補償することに何の支障になりましようかということを私は逆にお考え願いたいと思います。何らこの法案を施行してやることが民法上のそうした別の見解に基く一般補償の支障にはならないと存じます。併しここで小林委員は、いや政令で限定するから、限定に漏れた者が補償されなくなるという悪い副作用があると、こう仰せられるのでありますが、私は政令に漏れたものでも、若し小林委員の言われるごとく民法上の一般原則があるのでありますれば、たとえ政令に漏れても訴えによつて本法におきましても損失の有無なり損失補償の額を決定し、と書いてあります。これは第二条第三項にございます。そうすると或る補償の要求をいたしまして、補償の有無について無であるという決定をいたしました場合、民法上の大きな原則から言えば当然これは補償さるべきであるという異議がありますれば、これをやはり訴えに乗せで争いをされれば、只今見解のような前提に立つた法令に基いて裁判されますならば、国が必ず補償しなければならないということになるはずでございます。従つて本法を出しましたことによつて政令で限定された結果、国民が不測の損害を招くということはあり得ないと存ずるのであります。
  43. 小林亦治

    小林亦治君 私の思い付きの議論を今ここで申上げておるのではなくして、私の民法の議論というのは世界的な通説でございます、御承知のように従つてそこから参りますれば、これがなくても当然賠償請求権があるのだ、今おつしやる通り一般民法上で出ておるものならば、これがあつても何ら邪魔にならないのではないかと、二段構えにおつしやられるのですが、あなたの先ほどおつしやつたのは、権利のなき者に与え、而も法理的にやるためにこうだということを前提として御説明なすつたんで納得が行かなかつた。今この二段構えでおつしやつたように、民法上の原則断じてやるのだ、にもかかわらずこれを更に作つてこれをより保護してやろうという、こういう措置ならば、これは結構なんであります。何ら私どもも反対しない。民法にないのだがこれによつて与えるんだと、恩着せがましく、あつてつて困るようなものを恩に着せて出されるのでは受取れないので、あなたに今日念を押したのであります。これは重要なんでありますが、それは本当なんですか。私が申上げるように民法上も差支えないと御確信があるのですか。
  44. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) いえ、私が今申しました、長々とした私の答弁では小林議員の見解に立つてもなお且つこれを出しても差支えないということでありまして、私は民法上の一般賠償責任が国にあるということについては、現在ないと信じておるのでありますが、これは私も本当の法律屋ではございません。単なる行政官でございますから、そうした根本的な見解につきましては、こうである、ああであるということは答弁を差控えたいと存じます。どちらの側に立つてもこうなるという説明をやつたわけであります。
  45. 小林亦治

    小林亦治君 それは若し政府の側においてないとおつしやるならば、やはりこの「政令で定める行為」これは削られてばらつとお出しになつたほうが御趣旨に副うように思うのですが、ないならば。従つて第一条の第一項一号、二号、三号、これは削除すべきものだと考えるのか。
  46. 松浦清一

    松浦清一君 簡単にちよつとお伺いしたいのですが、第二条の「損失補償を受けようとする者は、」とあるこの者は損害をこうむつた個人を指しておるものと了解するのですが、若し委任状等を提出して、その補償金の交付を受ける場合に、例えば損害をこうむつた者が農協という団体或いは漁協という団体にその交付受理方を委任するという行為があつた場合には、漁業協同組合、農業協同組合等に補償金を交付するということがあり得ますか。
  47. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 委任者に交付することはできます。
  48. 松浦清一

    松浦清一君 それから附則の第二項の調達庁設置法の一部改正のところも、五頁の一番最初のところに、中央調達不動産審議会というのがあつて、これは現存しているものと思うのですが、二十人を二十三人にすると、こういう含みは新たにこの法律ができることによつて委員を追加すると、こういう意味に了解するわけですが、その意味に対してはどういう御関係……、農業関係、漁業関係等から関係者を出すと、こういうお含みなんですか。
  49. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 農業、林業、漁業、この三者から一人ずつお願いするという心組で増員を許したわけであります。
  50. 松浦清一

    松浦清一君 それからこの法律制定されますと昭和二十八年度において大体どれくらいの損害補償をしなければならんというふうにお考えになつておりますか。推定額……。
  51. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) これは計画的な義務でなくて事故であります。そしてまだこの法律によつては初年度でありますので、前年の実績もありませんので、推定額というものが出て来ないわけであります。従来の見舞金が出ておりますが、見舞金範囲とも違いますので、一応本年の防衛支出金に相当します予算の中に大きく含めておきまして、本年が九十二億でございます。新年度が、まあここに資料がございませんが、たしか九十二億にやや少いくらいになるのではないかという見通しをしておりますが、その中に大きく含まれておりますから、若しこの補償が非常に多い場合はその割当が多くなつて来る。現在推定額というものがまだできておりません。又これはちよつと前年の実績によるわけにも行かず、事故を統計的に見るという資料もまだ初年度の関係で出てないわけであります。
  52. 松浦清一

    松浦清一君 この法律は何ですか、例えば九十九里浜等の演習地における損害とは全然別ですね。
  53. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 漁業制限に基く補償というのが別に法律がございます。九十九里のは大体それで補償されるようになりますが、それに漏れます場合は、それで救われるということであります。
  54. 松浦清一

    松浦清一君 この法律案自体の問題ではないのですが、先ほどお伺いを申上げました、第二条の損害をこうむつた者が、例えば漁協或いは農協等に委任状を提出して、損害補償金の交付を受けることはできるということに関連して若干の質問を行いたいのですが、具体的に申上げますると、昭和二十四年度、二十五年度、二十六年度、昭和二十四年度に千葉県に七千七百万円、それから昭和二十五年、二十六年に九千七百万円という見舞金というものが出ておるのですが、仄聞するところによりますと、この見舞金の総額から一割五分頭をはねて、そしてあとの残つたものを損害をこうむつた漁業者に分配したという話を聞いておるのですが、川田部長はそういうことをお聞きになつておりましようか。
  55. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) それは私は聞いておりません。又当時の補償につきましては、漁業見舞金という形、漁業補償と申しておりますが、実際は見舞金でありまして、水産庁の査定によつて各都道府県が出しておりまして、たまたま私は当時調達庁の財務部長でございまして、その総理府所管の予算を水産庁の査定資料に基いて府県に配付をいたしました関係者でございますが、この七千七百万円を出します場合に、千葉県庁に対してその予算を全部その漁業組合なり漁民なりに交付する意味合で出したのでありまして、天引をするということはあり得ない。ただ経費がかかつた、雑費がかかつたということで別の形式で寄附を求めるということは、一般農業補償などでもございますので、県庁に対しましては全額その当事者に支払うような予算のつけ方をし、又そういう支出も始終いたしております。
  56. 松浦清一

    松浦清一君 昭和二十四年度は一二%、それから昭和二十五年、二十六年度の九千七百万円に対しては一五%の頭をはねたということは、調達庁水産庁が頭をはねて、それを支給したというのでなしに、実際に損害をこうむつた本人が受取つた総額の一五%というものを頭をはねられたとこういうのです。それを御承知かと言うのです、私の言うのは。
  57. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) これは承知しておりません。又恐らく一二%という低率でやつたかどうかはわからないわけでありますが、実情といたしましてはその間の組合員の旅費だとか、そういうことで経費補償を受けたものから分担させたという例は全国にございます。併しそれもすべて一旦交付したものを任意に寄附をさせるという意味で扱つておるのであります。天引はないというふうに御了解を願います。
  58. 松浦清一

    松浦清一君 これは何ですか、あなたの御説明によりますと、本人から任意で寄附をさした形で取つたことがあるかも知れないと、こういうことなんですが、そういうことはやつてもいいわけなんですか、そういう御了解なんですか、役所のほうは……。
  59. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) やつてもいいという了解はいたしておりません。ただその本人のために県が支出をいたしまして、その結果そういう事態がありましても、それはその実費に対しまして補償を受けましたものが了解し得るような、比較的少い額であるならばそうした事態が起ることにつきましても止むを得ないと存じます。
  60. 松浦清一

    松浦清一君 くどいような質問ですけれども、比較的少額という少額とはどのくらいのなら差支えないと考えておられますか。
  61. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) それは普通或る一つ事業を行います場合に、その事務によりましては、例えば一般の官庁でありますならば事業費に対しまする二%、そういうものが事務費になりますが、そういうパーセントの意味でなく、実際に今まで書類の整理のために県庁まで出て行く、乃至は調達庁水産庁へ出て参ります場合の旅費でありますとか、そういう実費、当然濫費でない意味の実費額が補填されるという程度であれば、やはり一定の直接費として見る、これ竜県庁は県の仕事があるわけでありますから、当然県費で見るべきであると存じますが、組合の理事者等が特に組合のために動いているというような費用でありますならば、一般経費としてそれは認めても不当なものではない。それが非常に無駄使いであるとかいうことではいかんと思いますが、成るべく私どもは指導といたしましては、補償額は完全に被害者に入るようにして、止むを得ない事態として、そういう寄附等を必要とする場合は私どものほうとしては別に関知はいたしておりません。起つた結果に対する批判としては止むを得ない費用であれば、そういう寄附によつたものは望ましいことではないのですが、誉めるまでにはならんと思います。
  62. 松浦清一

    松浦清一君 アメリカ軍隊演習によることの漁業被害が非常に大変なものであつて、そのためにその被害演習区域の漁民の生活が持ちこたえられない、こういう悲痛な陳情を受けて、我々もできるだけ多額の見舞金を出せるように一つつてもらいたい、こういうことを強く要望して来たわけであります。今ここで日本財政の現状ということを御説明申上げるまでもございません。非常に苦しい中から税金という形で金を持つて来て、その金の中から真に漁民の生活が窮乏のどん底に陥つておるという状況を見かねての見舞金であつたと私は了解しておるわけであります。その見舞金を支給された人数というものは二万八千二百三十三人という、千葉県の九十九里浜を中心とする区域で現在あるわけでありますが、そのうちで二十三年度、二十四年度に補償された大原あたりの最高額が一人について千五百七十円だそうです。最低が千三百四十円、それから中心地のあたりでも最高が四千円、最低が三千五百円何ぼ、二十五年度、二十六年度最高が二千二百円、最低が千七百円しか渡つていない。極めて零細な見舞金しか渡つていない。そのうちから一五%、私は県庁が差つ引いたのか、漁業協同組合が天引したのか知りませんよ、そいつを調べてもらいたいと思つて聞いておるのですが、よく知りませんが、それをやつていろいろ政治資金に流用したのだろう、誰かのところへ金を持つてつたとか問題になつて、慌ててこういう承諾書をあとから取つておる。あなたのお話によると事前にその補償金の交付を受けるものが自分の意思に基いて、そして寄附をする、こういう形なら差支えないというお話でありました。私もそれならば差支えないと思います。併しながらそういうことを先にやらないで、そして問題が表面化し始めて、あとからその承諾書を取つておる形跡がある。その承諾書の内容はときの昭和二十五年度、二十六年度分として交付せられた米軍演習による損害補償金より左記経費として一五%差引くことを承認する。一、補償金獲得運動資金。一、水産加工業者への見舞金。一、超短波無線機七台購入資金。こういうのであります。一体こういう食うに困つておりながら、こういう大きな被害を受けたものが、受取るべき交付金の中からこの金を、獲得運動資金とは一体何事であろうかと私はこれを見たとき思つたのです。そこで今その明細な、一五%天引したのは誰が天引したのか、どのように使つたかということの答弁を今この席で求めません。それを一つ調べてもらいたいのです。一五%天引してどのようにそれが、これは決算委員会の分野でしようけれども、我々もこれに関連をして来て、交付されるときの金の扱い方というものが不明瞭であつてはどうも釈然といたしませんので、この委員会に対して、少くとも農林は別として水産委員会に対して、天引をした一五%の使途の内容について報告を他の委員会においてして頂きたいと思います。
  63. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 結論的に、その使途の内容は御報告することにいたしましよう。ただこれは調達庁が所管するべきか、水産庁が所管するべきかについてあとでこちらで協議いたします。当時の水産関係を監督せられておつたのは水産庁でありますから、水産庁から、こういうことに対しては無論そういう経費を天引するようなことのないようにという注意は常々やつておられます。ただ結果においてこういう事態があつたといたしますれば、水産庁協議いたしまして……、これ自体は協議を要さないことです、事実を聞くのですから。これは聞いてよろしうございますけれども、私のほうで出しますか、水産庁で出しますか、いずれかからこの委員会に出すようにいたします。
  64. 松浦清一

    松浦清一君 水産庁でも特調でも結構でありますから、責任のあるところから私どもの気持が釈然とするような結果の御報告を頂きたいと思います。その御報告の結果如何によつてはたやすいことでは過されないという感じを持つております。
  65. 山崎恒

    山崎恒君 只今松浦委員から質問されました問題と関連いたしましてこの種の補償金と申しますか、見舞金と申すか、この調査のために二万二、三千人の水産業者が個人々々の損害を調査されるために莫大なるところの書類を出しておる。これは千葉県でもトラツクで以て二台ぐらいの個人々々の書類を出したと、こういう話ですが、この費用が、又漁民ですからなかなかできない、人を頼んで書出すというようなことで、非常に費用がかかつておる。推測では七千万円もらうのに一千万円ぐらいかかつておる、こういうようなことである。こうした煩瑣なことは、殊に漁民から取上げるところの調査書類というものはなかなか漁民自体が字も書けない漁民があるというような点がありますので、こうしたものは自今一つ役所でもつて、これだけの適当なるところを補償すべきである、或いは見舞すべきだということがあつたら簡易にして頂きたい、これは希望として申上げておきます。
  66. 川田三郎

    政府委員川田三郎君) 書類の簡素化につきましては十分私どもも注意いたしまして、かなり現在は簡素化されました。なお代表的に記載してもらうという方法もとつております。
  67. 千田正

    委員長代理千田正君) 御質疑がなければ本連合委員会は今回を似て終了することといたしたいと思いますが、御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 千田正

    委員長代理千田正君) 御異議ないと認めます。これを以て本日の連合委員会を散会いたします。    午後三時一分散会