○
政府委員(
木村忠二郎君)
中共からの
引揚げにつきましては、休会前のこの
委員会におきましても御
説明申上げにのでありますが、待望しておりました
中共地域からの
引揚げが、
本人が希望する者は全部帰す。その船の
手続等について協議するための
代表を出すようにというのが
中共側の
放送でありました。これについていろいろな、こちらからの答えを出したのでございますが、結局
中共側では
日本赤十字社、
中日友好協会及び
平和連絡準備会、この二つの
団体から
代表を選んでよこすようにということを申されまして、その結果三
団体及び参議院の
高良議員とで相談された結果、
日赤から
島津社長及び
工藤外事部長、
中日友好協会から内山、加島の
両氏、
平和連絡準備会から平野、畑中の
両氏、それから
高良女史、それからもう一人
有田氏とを選びまして
向うに答えましたところが、
有田氏を拒否いたしまして、あとの七人を
向うで
連絡いたして参りました。その後
工作員の選任も終りまして、先般一月二十六日に羽田を出発しまして
向うに参りまして、先般来
交渉を開始したという
連絡が現在のところ参
つておるのでございます。順調に
交渉が進みましたならば、と申しますよりは、この
交渉は
先方の港をどこにするか、その港におきまする
集結をどういうふうにするか。それに対して
日本側はどういうふうに配船するかということが、主たる
協定になるわけでございまして、技術的な問題でございますので、そんなに面倒なことはなかろうというふうに
考えております。従いまして、この
協定は早晩締結されるものであるというふうに
考えますので、非常に迅速に行きました場合におきましては、三月の上旬には第一船が
向うに参り、又こちらに三月の上旬の終り頃には還
つて来ることができるであろうというふうに
考えられるのであります。ただこれは
交渉の
模様で、
向うの
集結の都合もありまするからして必ずそうなるというふうには申せませんけれども、まあその頃からは始まるのではないかというふうに
考えられるのであります。従いまして
政府といたしましては、これに対しまする
受入態勢に万全を期さなければならんというふうに、これは
先方の
放送がありまして以来いろいろと検討いたしまして大体の
予算の折衝もできましたので、
代表団が出発いたしまする一月二十六日以前におきまして、その
内容につきまして
代表団にも一応
お話合をいたし、文書を以てこの
代表団にこの話をいたしまして、そうしてこの
趣旨を
向うに徹底さしてもら
つて、
皆さん方に早く還
つてもらうようにいたしたい、かように考ておるようなわけでございます。
その
資料につきましてはいずれお手許に差上げるつもりでおりまするか、大体船内におきまするところの
援護、それから
引揚援護庁における
援護、
援護庁から
郷里までの
陸上輸送並びに
郷里に還りまして定着いたしまする際の
援護、これだけの
援護につきましていろいろときめたのでございます。大体の
考え方から申しますと、従来の
引揚げは
本人が好むと好まざるとにかかわらず、
引揚げがきまりますれば全部こちらに還
つて来たのでございまするが、今回は
中共地域におきましては、
先方の土地においては居留民と称しております。従いまして
一般の市民と同じように
生活をいたしておるのでございまして、こちらに還りますにつきましての
やり方、
事情等は
相当従来とは異
なつたものがあると
考えられるのであります。又
日本国内の
情勢を見ましても、
終戦直後のあの混乱した時期から比べますれば、
社会は
相当安定いたしております。従いまして
国内の
情勢も従来とは違いまするし、
先方の
事情も違うというところから、この
引揚げの
受入援護につきましては、
相当手厚いものにしなければならんというふうに
考えられるのであります。又これらにつきましては、
終戦直後の混乱時のような、そのままの
状況では、還られた
人々の満足を得ることができないということも明らかな事実であります。従いまして
引揚援護庁といたしましては、
関係各省と
連絡を密にいたしまして、この
受入れに万全を期したいと考、えております。
従つて従来の
受入れとは違いまして、
相当援護の
態勢は手厚くするという方針をとりまして、例えて申上げますれば、
引揚船に乗組みまして、そうしてお世話をする人の数とか、或いはその人の組合せ方といつたような点につきましても、いろいろ従来よりは念を入れまして、鄭重な扱いをすることができるようにいたします。特に
引揚船の
乗船定員のごときも、これは最近におきましては、
航海安全保障条約におきまして制限もございますので、従来よりは非常にゆつくりした乗せ方になることにな
つております。
それから還られる
かたがたが
相当多量の
荷物を持
つて還られるということも
考え得るのであります。ソ連邦におきまして返すときには、裸一貫で還
つて来るのでありますが、
中共から還ります
かたがたは、
向うで一応それぞれの日常の
生活を営んでおられますので、
相当の
荷物を持
つて還る。これはまあ
考えられますので、その
輸送等につきまして、
受入れにつきまして、
荷物が
相当あるということを予想いたして、
準備をいたしておるわけでございます。
従つて輸送費等につきましても、それを
考えましてや
つておるわけでございます。
それから
援護局内におきまする
援護でございまするが、これはできるだけ期間を短かくいたしまして、迅速に運ぶ。従いまして、従来いろいろなことが
援護局内で行われておりましたけれども、
受入れ援護に直接
関係のない
事項は、この際全部やめてしまう。
受入れ援護に
関係のある
部分だけにとどめるということにいたします。そういたしまして、従来よりは
援護局内におきまする
援護の実施を完了いたしたい、できるだけ早く
郷里に帰
つて頂けるようにいたしたいと
考えております。
それから
援護局におきまする
給与措置にいたしましても、
援護物資は従来よりは量を殖やす、質も変更する。こういうことによりまして
援護費として支給いたしますにも、できるだけ従来よりは手厚くするようにいたしたいと思
つております。これにつきましては、まだ
内容の詳細に関し目下
在庫品等と
考え合せまして検討中でございます。
その他
引揚者に対しまして直ちにこちらに還りまして
生活の困難を訴えるということがあ
つては困りまするので、落着きました際におきまして
生活の一応の安定を得ることができるようにいたしまするために、
帰還手当の
制度を新たに設けまして、大人が一万円、
子供に五千円、これは昨日大臣から
お話があつたかと思いますが、これを新たに交付するようにいたします。これは全員に交付すると言いますが、やはり還りましてから
生活に直ぐ困るという
趣旨から
考えて、できるだけ
多額の金額を差上げたいと
考えまして、一万円、五千円ということにいたしました結果、
先方から
持ち帰り金が
相当多額にある人には、これを差上げない。
持ち帰り金のない人、或いは
持ち帰り金の
少い人にこれを差上げるという
趣旨にいたしたいと思
つております。そういうようなことで以て計算いたしております。
それから還りましてから、故郷に帰りますまでの間の車中の問題につきましても、従来は、途中で差上げる
弁当の
内容が不十分であるということから、これに対しまする他の
措置も講じたと思いますが、今度はその他の
措置が余り適当でないというふうに
考えますので
弁当の質を良くする、いい質の
弁当を差上げることにいたしたいと
考えております。従いましてそちらの面におきまする御不満もないようにしたいと思います。
なお、その
輸送につきましても、今日の列車の
事情によりまして
運輸省当局におきましても
相当余裕のある車輌で以て送り返すようにいたしたいというふうに申されておるのであります。ただ時期が非常に
我が国におきましてはお客の多い時期にぶつかりますので、どういうことになりますかわかりませんが、
運輸省といたしましてはできるだけ
輸送につきましては円滑に行くようにいたしたいというふうに申しておるわけであります。
郷里に帰りました当座の問題でございますが、これにつきましては一時
収容所を今回は整備いたしたいと
考えております。従来の一時
収容所と今回の一時
収容所と異な
つております点は、従来は特定の所だけにあつたのでありまするが、今度の一時
収容所は全国各県の
主要都市、大体県庁の所在地に一時
収容所を設けたいと思
つております。これに対しまする
予算も通
つておるのでありまして、これによ
つて各県に整備をさせるつもりであります。即ち従来ありましたものを補修するものもありましようし、又既設のものを補修するものもありましようし、新らしい建物もありましよう。これは帰りまして一応
留守家族がこちらにあ
つて、そこに落着くことのできる人、或いはそうでない人でも
知人等がありまして一応落着くことのできる人は、そこに落着いてもらうのでありますが、そういうものがない人は一応落着く所を新たに作らなければならない。殊に長らく
中国におられた人でありますから、この
措置を新たにいたしたわけであります。
それから
引揚者住宅、これは暫く従来の
集団住宅に疎開する以外には
引揚者住宅の新設はなかつたのでありまするが、今回
引揚者住宅のために特に三千数百戸の
引揚者住宅を作ることにいたしました。従来の
引揚者の数と
住宅の
建設の戸数との
割合を比べますと
相当割合は高くな
つております。従いまして大体この
程度で何とかなるのじやないかと思いますけれども、これにつきましても今後実際に
引揚げて来ました
かたがたの
状況によりましては、或いは不足を生ずるかも知れませんが、その場合におきましては直ちにこれに対する
手当をいたしたいというふうに
考えております。そうしてこの
引揚者住宅は従来のように大体各県に割当をするようにいたしませんで、帰りまして定着をしました者の
状況によりまして
建設をするということにいたしたいと
考えております。それまでの繋ぎとしまして一時
収容所を活用いたしたいと
考えております。
その他問題になりまする点は職業の斡旋、それから子弟の就学の問題、それから戸籍の問題、これが重要な問題であります。これにつきましては、現在労働省、文部省、法務省、それぞれそれに対する
対策を立てておりましてこれにつきましてはその
方面の
かたがたから又適当な時にお聴き取りを願いたいと思います。
大体そのような
情勢を以ちまして、現在のところ
引揚援護の
受入につきまして万全の
準備を備えておるわけであります。勿論これで以てそれじや十分であるのかと申しますると、必ずしも十分とは申せませんけれども、ともかくも一応従来よりは
相当手厚い
受入ができる。これに対しましては
援護庁といたしましては、できるだけ
国民全体と一緒に温い
気持でお迎えいたしたい、かように
考えまして現在これに対しまする
態勢を整備したわけでございます。
それから
只今委員長から
お話のございました
機構の問題でございまするが、現在
引揚援護庁は御
承知の
通りに先般の
行政整理によりまして、今年度一ぱいで以て
内局になるということに相成
つております。
内局になりまして、
定員につきましては、
内局になる際に
内局になるための若干の減員、つまり構成が変りまするからして、そのために少くなる人員は五、六名の者が減るだけでありまして、大体現在の
態勢のままで
内局になる形にな
つておるわけであります。