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1952-12-11 第15回国会 参議院 厚生委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤森 眞治君    理事            大谷 瑩潤君            藤原 道子君    委員            小杉 繁安君            長島 銀藏君            中山 壽彦君            井上なつゑ君            河崎 ナツ君            山下 義信君            深川タマヱ君            谷口弥三郎君   政府委員    外務省アジア局    長       倭島 英二君    厚生省政務次官 越智  茂君    厚生事務官    (厚生省医務局    長事務代理)  高田  浩君    引揚援護庁長官 木村忠二郎君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○保健婦助産婦看護婦法の一部を改正  する法律案内閣提出) ○あん摩師はり師、きゆう師及び柔  道整復師法及び診療エツクス線技師  法の一部を改正する法律案内閣提  出) ○社会保障制度に関する調査の件(引  揚対策に関する件) ○請願及び陳情の取扱いに関する件   —————————————
  2. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それでは只今から厚生委員会を開きます。  前回に引続きまして保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法及び診療エツクス線技師法の一部を改正する法律案、この二案についての御質疑をお願いいたします。ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  3. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 速記を起して……御質疑ございませんか。
  4. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 この改正案が通過いたすとしますと、私計算いたして見ますと、大体なんですけれども一つ部落に現在は二人ぐらいでございますのに、更にやはりあん摩、はり、きゆう学校に入りやすいかたが殖えますと、結局同業者が殖えるということになりますので、ああいう特殊な身体障害者生活を脅かすことになると存じますので、この法案が通過いたすと同時にどうやら来年度では政府のほうでもうすでに考えていらつしやるらしいのでございますけれども、眼の見えない人たちあん摩、はり、きゆうばかりでもいけないのじやないかというので、新らしい何らか職業補導の途をお考えになつていらつしやるようですね。ミシンとか、何でしたか、いろいろ精密の機械の補導らしいのですけれども、何かお考えおきがございましたら、この際一つ御説明願いまして、なお今後ともそういう方面のこともやはり併せて御考究になる必要があるかと思います。
  5. 越智茂

    政府委員越智茂君) いろいろ目下そういう方面につきましては検討をいたしておりますが、御趣旨に副いまして大いに頑張つて見たいと思います。只今どういう補導考えておるかということにつきましては資料を持ち合せませんので、次の機会に申上げます。
  6. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 他に質問ございませんようですから、私から一つ伺います。  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案について一言伺いたいのですが、それは只今乙種看護婦制度が二十九年で打ち切られるということで、この延期方の声が相当方面で起つておるようですが、それについて政府のほうで何かお考えになつておられましようか。その点だけ伺いたいのです。
  7. 高田浩

    政府委員高田浩君) 御承知のように看護婦制度につきましては、甲種看護婦乙種看護婦とございましたのが、この前の改正によりまして、そういう二本建というよりもむしろ一本建のほうがよろしいのだ、そういう意味看護婦、それから準看護婦というような形になつたと記憶いたしておるのでございますが、そういう趣旨からいたしまして、いわゆる乙種については例えば経過的に一定の期限を付したような法律の形になつておるのでございます。その改正趣旨からいたしますと、経過的な期間というものが成るべく短いほうがよいというのが理窟にもなるのじやないかとも思うのでありますが、併し一面から見ますと、看護婦は結局社会的な機能の一部を果しておるものでございますし、そういう意味において社会要求がこれを必要といたしますならば、この延長という問題も十分考えなければならないものだと考えておる次第でございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 ちよつと速記をとめて下さい。
  9. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 速記をとめて……。    〔速記中止
  10. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 速記を始めて。
  11. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 私もそういう人の生活を安定さす点ですけれども、今私が申しましたのはおぼろげな記憶でございまして、多少間違いがございましたので訂正の意味を加えましてもう一遍申上げますが、丁度厚生省から配付して下さいました資料が今見つかりましたので、それによりますと現在のあん摩、はり、きゆうかたがたの人数が挙つておりますが、勿論北海道のような人口稀薄なところと、多い都市とは違いますけれども、大体私がここに平均をとつて、中をとつて四国調査をいたしましたら、大体一村十一人くらいなことになつておりまして、只今部落半に一人になつておりますので、只今でももうすでにやや多いかと思うくらいでございます。而もこの厚生省から配付された資料昭和二十四年でございますので、それから三年経つておりますので、もう余ほど殖えております。そういたしますと、今度のこの法律改正によりますと、あん摩、はり、きゆう学校に入りやすい改正でございますので、ますます同業者が殖えるとなりますと、特殊な身体障害者生活を圧迫いたすことになりますので、それと併せましてその弊害を解きますために政府のほうでも大分お考えになりまして、今度神戸の国立光明寮というところに一学級を増設されまして、いつまでも日の見えない人にあん摩、はり、きゆうばかりでもあるまいというので、ラジオとかミシンとか、そういう職業補導をされるという御計画もあるように聞いておりますので、誠に時宜を得た方法だと思いますので、是非明年度におきましてはこの法律が通過すると合せまして、こういうふうな方策もお取りになりますことを念のためにお願いいたしておきます。
  12. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 他に御質問はありませんか。別に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。
  14. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 討論を省略いたしまして直ちに両案の採決に入られんことの動議を提出いたします。
  15. 中山壽彦

    中山壽彦君 私あん摩、はり、きゆう法案採決に当りまして若干要望事項を申上げたいと思います。只今深川委員からお話になりましたように、盲人の人々に対しては従来あん摩、はり、きゆう等が専業にされておりますが、何か新らしい窓口を開くということが是非当局として考えて頂きたい。それから学科の重い軽い、修業科目の軽重によりまして、その学習の時間を適正に考慮して、素質の低下をしないように、特に私立の養成所におきましては政府が監督を厳重にされたい。この三つの要望を申上げておきます。
  16. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 只今井上委員動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。それでは討論を省略いたしまして、採決いたします。保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに御賛成かたは挙手を願います。    〔賛成者挙手
  18. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決することに決定いたしました。  次にあん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師及び診療エツクス線技師法の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに御賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手
  19. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 全会一致であります。よつて原案通り可決することに決定いたします。  それから委員長が議院に提出する報告書には多数意見者署名を附することになつておりますから、両案を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     山不 義信  谷口弥三郎     河崎 ナツ  藤原 道子     井上なつゑ  深川タマヱ     大谷 豊潤  中山 壽彦     長島 銀藏  小杉 繁安
  20. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 御署名漏れはございませんか……、襲名漏れないと認めます。  なお本会議における委員長口頭報告については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。   ━━━━━━━━━━━━━
  22. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 次に社会保障制度に関する調査といたしまして、引揚対策についての先般来の北京放送その他についての情勢並びに情報等外務省並びに引揚援護庁から伺いたいと存じます。
  23. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 最近と申しますか、十二月一日の夜の北京放送で、中共政府当局の言明としまして、中国に約三万の日本人居留民と少数の戦犯者がおる、で、この引揚については日本側で船腹の問題を解決するならば、その引揚の援助を行なつてもよろしい、更にこの引揚手続のために、日本の適当な機関或いは人民の代表中国赤十字話合をすることによつて解決もできるという放送がございましたことは、すでに皆さま新聞等御存じのことと存じます。この放送は実は我々としては、数年来待ちに待つてつた件でございまして、大喜びでこれに至急対処したいというのが政府気持でございまして、実は政府といたしましては、終戦以後ソ連並び中共地区同胞が大分残つておられまして、その大部分引揚げて来られるように斡旋をし、大部分帰つて来られたわけでございますけれども、まだ現地で亡くなられたかたの氏名がはつきりしないというのが一つと、それから現地のほうへ生きて残つておられるかたがとにかく相当ある、少くとも我々が承知しております資料では相当な数字に上るというのが政府考えでありまして、ソ連並び中共に何回となくこの引揚について交渉して来たわけであります。ソ連の問題は別にいたしまして、この際この放送のありました関係中共の問題でございますが、中共政府との関係は従来直接の政府としての連絡がつきませんでしたので、インドその他のすでに中共を承認しておる国、或いは赤十字関係或いは国際連合というような国際的な機関を通じまして、何とか早く返してもらいたいということをたびたび言つてつたわけでありますが、その返事は従来残念ながら一回もございませんでした。従つて返事がないままにしても何回もそれを繰返しておつたわけでありますが、このたびそれに対して突如として十二月一日夜の放送があつた。我々としては大変大喜びで、これにすぐ対処したいという気持でおるわけであります。従つて、又この引揚の問題は考え方によつてはいろいろ各方面の御意見もあるようでありまして、政治だとか、経済だとか、外交だとかというような各方面から考えますと、いろいろなこともあるでありましようけれども、我々引揚げの問題を直接お世話しておる立場から申しますと、本件は人道問題、何にも増して人道問題ということで、いろいろなほかの関係を次にいたしまして、この引揚げの一日も早く、一人も多くできるように努力したいというのがその気持であります。政府のほうといたしましては、早速その放送のありましたあとで関係庁と協議もいたし、又引揚対策審議会というものが政府にございますが、その関係のかたにもいろいろ諮りまして、とにかく早速実現できるようにしようじやないかということにきまつたわけであります。そういうことで、すでに二回インドを通じて申入れをいたしました。なぜインドを通じて申入れをいたしたかと申しますと、これは従来もインドに頼んで引揚げ促進向う申入れ斡旋を頼んでおります関係もありますし、又中共との連絡にはインド関係が一番円滑に行つておるように我々従来心得ておりましたので、インド政府にお願いした。それから又インド政府としてもほかの関係もあつて、どの程度にすでに向うにつないでおつて頂くか、まだはつきりしたその後の経過の返事はございません。併しながら、在京のインド大使館に、早くこの引揚げ実現するように連絡をしてもらいたい、斡旋をしてもらいたいという申入れに対して、インド大使館は欣然政府要求を容れて向うにつないでおつて頂く状況でございます。又私の承知しておるところでは、ほかの団体でもすでに御連絡なつたところがあるかも知れませんけれども日本赤十字では、これも従来から赤十字機関を通じ、会議等に出ますたびに中共引揚げについても赤十字として希望を何回も申述べておつたようでありますが、このたびも赤十字のみずからの意思として、早速赤十字連盟のほうを通じて、引揚連絡並びに実現ができるように斡旋して貰いたいということを申入れ、その本部ではすでに中国赤十字のほうへ連絡をしたという報道があつたことを聞いております。引揚団体のほうでも面接にこの問題の実現をしたいという希望を表明し、必要ならば人をやりたいと思うから、入国を許可して貰いたいというような連絡をせられたように聞いております。なお政府といたしましては、先ほども申上げましたように、この問題は一日も早く一人でも多く帰つて貰うようにしたいというつもりでありまして、今後もその目的を達するためにおいて、向うからどんな条件なりを言つて来るか、まだわかりませんけれども、できるだけの手を尽したい、こう考えております。
  24. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 引続いて援護庁長官の御説明をお願いします。
  25. 木村忠二郎

    政府委員木村忠二郎君) 大体のことは只今倭局長から申上げた通りであります。我々といたしましても、只今中共放送に対しましては、非常な期待を持つております。引揚援護庁といたしましては、従来から対中共引揚につきましては各般手段を講じておるわけであります。これにつきましては、個別的な引揚についても船運賃は負担するという制度をとりまして、今年の四月以来これは実施しております。これによりまして帰還いたしましたものも相当数に上つておるわけであります。併しながら、いずれにいたしましても、この帰還促進するためには、やはり集団引揚によるものが最も適当であると考えております。これにつきましては、なるたけ中共側並びにソ連側から、集団引揚配船要求がございました場合におきましても、これに対処するだけの準備は常にとられておるわけであります。現在御承知のように約一万トンの高砂丸を常に舞鶴港に繋留いたしております。従いましてこれは要求がございますならば、いつでもこの配船ができるような状態になつております。又これが引揚げて参りました場合におきましても、これを受入れる用意は、現在のところ一ヵ月一万人程度引揚につきましては、舞鶴におきましては十分に処置できるだけの準備をいたしているわけであります。従いましてなお今後の対中共側との打合せの模様によりまして、これにつきまして必要なる準備は、更に如何なる場合におきましても、こちらの準備ができないために引揚ができない、或いは遅れるということはないようにいたしたい、かように考えまして、現在それにつきましても各般の手配もいたしておる次第であります。
  26. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 只今の倭島局長並びに木村長官発言に対して、御質疑等がありましたらお願いいたします。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 ちよつとお伺いいたしたいのでございますが、過日木村さんには御質問申上げましたが、その後新聞等発表がまちまちでございまして、私たちは大変心配いたしておるのでございますが、政府政府代表を派遣するというようなことを発表されたようでございますが、その後において、向うでは日本政府相手とせずというようなことが発表されておる、この点はどういうふうになつておるのでございましようか、外務省のかたにお願いします。
  28. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) この問題はまだ実は先ほど申上げましたように、インドを通じて何とか直接の正式の、正式と申しますか連絡をつけたいと思つて今、頼んでおるところであります。それで勿論この放送につきましては、一つ北京から放送され、それからその後タスによつて三日の夜でございましたか、必要ならば政府のものが中国交渉に来るときに、中国のほうでは入国することを許すであろう、でまあタスがそういうことを伝えますときには、相当その根拠があるように思われますし、勿論政府といたしましては、先ほども申上げましたが、あらゆる手段を尽してその実現を期したいということでありまして、向う要求なり希望が、例えばどういうふうにしろ、どういうふうなら実現してよろしいということならば、それをよく考えまして、先ほど申上げましたように、考え根本精神は人道問題の解決という点に重きをおきまして、できるだけのことをしたい、こう思つておるわけでございます。従つてもう今の政府代表の派遣なり入国なりということは、タスのことでちよつと一つ出ておりますが、又その後或いは何かあつたかも知れませんが、その点についてはまあいずれ連絡がつくだろうと思いますし、そのついた上で、双方の都合のいいように話をして行きたい。ただ都合のいいということでこつちがこだわるつもりはありません、できるだけ早く相当向う要求に副うようにしてものを取運んで行きたい、こう考えております。それからこの引揚の問題は、御存知でございましようが、私の一つの見当を申上げますと、ソ連からの引揚のときも、大して交渉はございません、要するにもうこちらとしては何ら条件をつけることはない、もう帰りたいということですし、一人でも多く返してあげたいと思うのが一念でありまして、要するに条件が付くなら、向う条件が付くかも知れませんが、こちらはもう一人でも多く一返つてもらいたい。そうして船を持つて行けばどこに、何月何日どの地点に船を持つて来いということであれば、それに所要の船や食糧や衣類を持つて迎えに行つて、とにかくもらつて来るということで済むのではないか、従来のソ連からの引揚は皆そういうやり方であります。従つて引揚そのものについては、条件だとか、交渉だとかいうことは余りないのではないか、又必要がないのじやないか、要するにもうもらつて来さえすればいいわけだ、まあそう考えております。併しながらそれはまあ私の一つ想像でありまして、つまりソ連からの引揚をみましたときのことから言つて想像でありますけれども、更にこれは先方の都合もありましよう。それを聞いた上で善処したいと、こう考えているわけであります。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 只今局長は大変楽観的なお話なんでございますけれども、誠に早急にそうなれば大変結構なんです。終戦以来七年以上経過している留守家族気持等察しますときに、人道上の見地というお言葉がたびたび出ておりますが、私どもとしても堪えられない気がしている。こういう点からいたしまして一日も早く返したい。返してもらいたい、と同時に今まで中共日本とのいろいろな関係等考えた結果、ソ連条件なしに船を持つて来い、いつ返してやるというようなことで来たからと言つて、それが即中共がそのままの方針で返してくれるかというところにも又問題があるようであります。留守家族といたしましては一日も早く迎え取りたい、肉親の顔を見たいという気持が、ああした発表があれば一瞬昂じて来ていると思うのであります。これに対して私どもとしても、何とか一日も早くというようなことで、一度現地帰還促進情勢視察等というようなことも申出が相当あるし、留守家族団体から申請がございます。又私たちもそういう気持もございます。若し仮に民間からそういうことの、引揚促進のために向うへ行きたいというような意向がございましたときに、政府は従来のように、北京等に対しては一切。パスポートを出せないというような態度を堅持されるのか、この問題に限つてはそれに対して帰還促進のために、そういう従来の行きがかりは一切捨てて、そういう便宜をお与えになるか、そういうお考えを聞かして頂きたい。
  30. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 御意見御尤もでございます。その点についてはまあほかのいろいろな関係もございますので、具体的な問題について研究を進めて見ました上で御返答申上げたいと思いますが、今度のこの引揚の問題については、先ほどちよつと私が繰返して申上げましたが、船の都合がつけば、そして向う相手赤十字が返す、これと話をすれば返えすことができるんだということであります。先ほど援護庁長官からの話のように船は用意してありますし、一杯で足らなければ何杯でもこれは政府としてはこういう際でありますから都合すると思います。従つて向う発表自身交渉に来いとか何とかということでは現在ないのでありまして、そういうもう向う発表を素直に受けて立ちたいというのが我々の気持であります。それからまあ楽観なり、この今度の放送についてはいろいろ御想像なり御意見があるようであります。例えば我々のほかのこの国会の委員会でも例えば真偽を確かめたのかとか、どうとかということを言つておるのもございました。それは併しながら我々といたしましては事柄が大変我々も待ちに待つたことでありますし、それから真偽を確かめるとか何とか、そういう何と言いますか疑いを持つて見る必要もないので、むしろ欣然としてこれに応ずる、向う発表があつた範囲においていつでもやりたい、あらゆる方法を尽くしますということを言つておるわけでありまして、楽観ではありませんけれども、問題を余り深刻にこちらから憶測をしたり、考えることは却つて私は向うに対してもよくないのではないかと思いますし、勿論まあそういうような気持楽観というよりは欣然これに応ずるというのが我々の態度であります。  それからもう一つの点は、御参考までに申上げますと、留守家族のほうへ来ております通信、まあ現地からのことでありますので、その点はむしろまだ通信をされた人が現地におられますから、むしろその人の不ためになつては悪いので、その現地のことも申上げませんし、名前も申上げませんが、或る地域ではどうも集団引揚が大分あるらしいというので、個人的に願いを出したり帰還手続をしておつたのが、いずれ間もなく相当大きくあるらしいからという空気向うの末端の機関を通じてわかつて来ておるらしくて、そういうことで向うでも或る空気が動いておると思います。それからただ御存じのように同胞が、中共地区と申しましても今は満洲方面のみならず大陸に広くあつちこつちにおられるようでありまして、従つてそのかたがたが例えば或る港のところへ、どこの港になりますか、どこへ集まるにしても相当やはり時間がかかりましようし、それから又向うでやつておられる仕事の種類によつては、ちよつとまだ帰れん、もう少しおつてくれ、或いはもうあなた帰つてよろしいとかいうような区分けがございましようから、従つて地理的に言いましても、仕事関係から言いましても、例えば向う発表にある約三万というのはどの程度早く、時間的に申しまして帰つて来れるか、これについてはそうはつきりした見通しも何もまだ立ちません。併しながら先ほどからも申しますように、我々としましては欣然これを受けて立ちたい、そうしてあらゆる方法考えたいと思つておる次第でありまして、先の御質問の点につきましても今後の情勢の発展と睨合せて研究してみたいと思つております。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 向うから三万返すということだが、併しいろいろなほうほうに散らばつておる、或いは商売の点ではなかなか帰れないだろうというようなお話でございますが、向うの三万人ということの話は新聞発表だけでございますか、あれ以外にもつと詳しい何か発表はこちらに連絡政府にあつたのでございましようか。
  32. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) この三万というのは、先ほど申しましたのは向う北京放送の話であります。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 放送だけなんですか。
  34. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) それだけであります。我々政府といたしましてはこの前も別の機会に御説明をしたことがあるのですが、従来この現地に、つまり中共地区だけで、つまり満洲それからほかの大陸方面を含めまして、日本政府の持つている資料で名前が一一わかつておる数字は今細かいところは忘れましたが、たしか五万八、九千の名前そのものがわかつております。それからこの二、三年前に通信がございました数も二万二、三千ございます。それでまあ通信のほうは今の名前の知れておるのよりは少いのでございますけれども、これはまあ家ではそのうちの大人の人が通信する場合が多いのでありまして、我々が承知しております名前はそのうちの家族、子供等が皆人つておりますから、当然まあ通信数が二万二、三千あれば更にいま少し多いということは当然想像がつくわけであります。それで政府が持つております数字から言えば、この向う発表にあります約三万というのは遙かに少い数字であります。とにかくその数字にこだわるとか、それをどうこういうとかいう気持はございません。とにかく帰れる人は一人でも早く帰るようにお世話したいと、こう考えております。
  35. 山下義信

    山下義信君 ちよつと私は今倭島局長の御説明を承わつておりますと、印象としては結局長いことおつしやつたけれども、つずめてみると外務省態度は口では人道上の問題だから政府は極力やると言いながら、もう極めて消極的な態度、今しばしば御説明中におつしやつたように、こちらは受けて立つのだ、受けて立つのだとおつしやる。それで向うがこれだけ返すと言つて、どこの港から送り出すからと言うて来たらすぐ配船する。すぐとやる、当り前のことです。我々の要望するのは如何にして促進をさせるかということについて、どれだけ当局が御努力下さるかということがいつも問題になるのだ。そうすると結局その道がないからとか、直接両国の国交がない今日としては手が尽せんとかいうようなことを言つてつて、たまたま民間で何かのものが何らかの材料とかいろいろなものを持つて来た、それに便乗してはいろいろなことを当局が言つているという印象しか我々には受けられない。それでいつまでも受けておつたのでは仕方がないのでありますが、いつでも、外務省は最近にでも例えば北京の何とか会議に行くことを拒否し、又は行つたものについてはかれこれ言つておるかと思うと、だんだんこの中共との貿易が事実上本当か嘘か知らんけれども、新聞で見ると、約束して多少取引して戻つた者があるようになつて来るとざわざわと色めいて来て色目を使つてみたり、私は外務省がこの引揚についてどれだけ積極的な手を打つて下されるという、そういうことの御努力があるのかないのか疑わざるを得ないのです。それで今まではこれは常識として、私どもは情報を知らないのですから、この節は秘密外交ですからなお更わからないのでありまするが、情報を知らないから本当の常識的なことしか言えない、門外漢のことしか言えませんが、今日までは占領政策の下においては或いはどうすることもできなかつたでしよう。併しながら今では日本政府が一応国民は自主的に動けると考えておりますよ。併しながら実際は中共に対して何らか外務省が手を打とうとすると、いちいち米大使館と打合せをしなければできないのか、やはり米大使館に難色があるからどうすることもできないのかということを疑わざるを得ない。若しも外務省が少くとも、大きな意味中共との外交関係ということと、それはまあ国策ですから事容易ならんことは我々としても諒といたしますが、例えば引揚のことなら引揚のことで、先方が放送であろうと何であろうと呼びかけたら、その問題に関してのみ局限するならば、私は外務省が積極的な行動に出られてもちつとも大きな国策の上に心配の点もなけらねは、私はこういうときに一つの道を切り開いて行く。今藤原委員質問は、若し促進のために民間から行くということがあつたならば、旅行免状を出す気かということを端的に言つた。まあ考慮するというような不得要領の答弁だつたが、民間の交渉使節とか何とか、そういう者が行くこともいいが、政府みずから何か出かけるという考えはないのですか。或いは政府機関を通じてやつてみるとか、まあ大事を踏んで本当か嘘か、いろいろな情報をよくよく知つてから、第三国を通じてだんだんやつて、いよいよ出られるようになつたら出るという、どこまでも受けて立つ、受けて立つというそういう消極的でなしに、例えば出かけて行つてみても無駄足になるかも知れないが、政府みずから国民の前で積極的に、政府が手を運び足を運ぶ、或いは呼びかけるというような、積極的な対策を一体今とらないのですか。今諄々として御説明を聞いていると、ただ向うが呼びかけるという話を待つておる、そうして返すと言つて来たら船を廻すのであつて、そうして或いは赤十字だとかインドだとか、それもインドへ行くのではないので、こつちの大使館に電話をかけるだけで、インドまで行つてみて下さるならば御苦労であるが、そうでないので、東京都内におる大使館に害うだけでなしに、外務省みずから何かいい人を選んでそれに託して行かせるとか、民間の者が実績を作り上げて来るまで待たないで、実績を作り上げたことに便乗して……、そんなことしないで政府みずから何か一つつてみて下さいよ。何か実績を挙げてみて下さいよ。ですから外務省の役人が行くと言えば、大きな意味で国交上の大問題になるかもわからんが、誰か嘱託として行かしたらどうですか。それで従来も何かそういうことをやつておるかもわからん、或いは旅費も何か相当やり過ぎるほどやつておるかもわからんが、実降何かはつきりした手を打つという……、この際ただ受けてばかりでなく、放送であるとか、タス通信というものばかりをじつと坐つて聞いておるというのでなしに、そういう呼びかけがあつたら、その呼びかけに関することだけは遠慮なしに、外務省当局の正規の役人が行けば弊害があるという御心配ならば、誰か嘱託して派遣するということを、事実先を見越してやるということをやつたらどうか。民間の者に旅行免状……ではない。あなたたちが行くならば旅行免状もパスポートも要らんということは常識であります。或いは無茶な議論かも知らんが、もう少し私は肚を据えて一つの積極的にやつて下さるお考えはないかということを伺つてみたい。
  36. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 大分言葉の上の表現が違いますので……、私は相当穏やかに申上げたつもりなんでありますが、ただ二つの誤解があるように私少くとも拝聴いたします。一つは受けて立つという言葉を使いましたことは、向う側がこういうふうに言つたのについて、或る方面意見としてはこれを確かめるとか、詮索するとか、よくいろいろな御意見があるようでありますけれども、これはとにかく待ちに待つた問題であるからして、向う発表をそのまま誠に結構なことだと言つて立ち上つたらいいじやないかというのが問題でありまして、それでぐずぐずして何もしておらなかつたとか、積極的なことを考えておらんとか、これは私は受けて立つという言葉を申上げましたが、向うの言つたのをそのまま素直に受けて、こつちはすぐできるだけのことをしたらいいではないかということを申上げたのでありまして、向うが何かやつてくる際に、待つておるということは毛頭申上げたつもりはございません。それから前にながながと申上げましたように、従来も政府はあらゆる努力をいたしておるのでありまして、決して坐つてつておるようなことは毛頭いたしておりません。  それから積極的なということで、政府といたしましては現在でき得る限りの積極策をとつておるつもりであります。先ほど御説明申上げましたけれども、必要ならば政府の人間でも誰でも行くのですから、それで第一モスコーの発表……、発表ではありません、タス通信の報道によりまして、政府の人間が来るならば入国できる、それならばいつでも行きますということも申出ておるわけです。詳しくその言葉の内容を申上げませんから、どんなことをやつておるのだというので御不審の点があることによくわかりますけれども政府がただぼんやりして待つておるとか、従来も何もしていないとか、ただ向う言つて来るまで待つておるとか、そんなことは毛頭にやつておりません。あらゆる方法を尽してこの問題の解決に努力したい必要ならばというが、これは話がつかなければ行つてみたいところが、政府の者がただ自分だけで出かけるわけにも行きませんから、向うと話をつけました上で、政府の人間が行つてこの関係解決促進できるということならば、これは喜んで出すつもりであります。行くつもりであります。そういうことに考えております。
  37. 山下義信

    山下義信君 わかりました。ですから受けるほうのことばかり私は非難するわけではありません。受けて立つという言葉の揚げ足をとるわけではありませんが、立つ用意があるというなら結構です。お手並み拝見しましよう。ですから今あなたの御答弁によりますと、先方との話合い中である。そうして話の模様によつては、政府は事ごとに交渉に出かける用意があるという意味の言葉がありました。そのように了承してよろしうございますか。
  38. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) その通りであります。先ほどからその通りに申上げておるつもりであります。
  39. 山下義信

    山下義信君 政府の出かけられるような機会は、およそ見通しとしてはどういうふうな、いつ頃にそれが実現できるような見通しでございましようか。
  40. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) その点もまあ具体的な交渉をやつておりますけれども、案はインド都合もございまして、現在、先ほど御説明いたしましたが、政府として正式の、正式というか、連絡をつける方法としては、諸般の関係からインドにお頼みするのが一番よろしいと考えましてインドに頼んだのであります。インドのほうの、これはここの大使館に行つたのでありますけれども、現在はインドにも我々の大使が行つております。大使からもこれはいろいろ事情を説明し、頼んでおります。従つてここの大使館だけでただ書類を放り込んでじつとしておるということではございません。インドでもいろいろ話をしております。そうしてインドでは又今度はそういう口をきく際の都合もあるようでありまして、それの一番いい方法考えてくれておると存じますが、それは暫らく預けておいてくれということで、今日今朝までのところまだ何らその後の報告を受けておりません。
  41. 山下義信

    山下義信君 大分わかつて参りました。私はね、先ほど問題が問題でありますので、或いは年に似合わん、或いはちよつと興奮したかも知れません。又局長も私の言葉が少し過激と見えて多少興奮したかもわからん。何としてもこれはあの人たちのためでありますから、ついお互いに緊張しますが、大変よく御説明でわかりましたが、今政府のほうでいろいろ交渉しておるとおつしやいましたが、そのいろいろ交渉しておるとおつしやいますことを承わることができますれば、承わりたい思う。
  42. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) その点のもう要点は、先ほども申上げました通りでありますが、日本政府の……、第一にはこの報道があつたのについて、日本政府としては欣然これについても一日も早く一人も多く実現できるようにしたいというので、日本政府の意思を伝えてもらつております。そうしてそういうことをやることに必要な連絡を早く付けたい、具体的の連絡を早く付けたいという希望申入れております。大体大きく申上げればその二つであります。日本政府としては誠にこれについて喜んでおる、これの実現を期したい、その早く具体的な実行方法連絡を付けるように斡旋して欲しいというまあ要領であります。
  43. 山下義信

    山下義信君 大変御親切な答弁を頂きまして多といたしますが、その連絡を付けまするということは、どうしてもこちらには先方の利益代表国はいないわけですね。その利益代表国はこちらにありますか、ありますればそれを通ずるわけでありますが、連絡を付けるということになりますれば、やはり先ほどからおつしやいました或いは場合によつて現地連絡なり、交渉に出かけて行く用意があるというようなことも御交渉のなかに入つておりましようか。
  44. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 入つております。
  45. 山下義信

    山下義信君 了承しました。それで先ほどの御答弁のありました、先方から向う連絡をしようということになれば、外務省はこのことについて交渉するために人を派する用意がある。こういうことになるわけですね。
  46. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) その通りであります。
  47. 山下義信

    山下義信君 私は貿易にせよ、引揚げにせよ、殊に引揚げ問題というものは従来これが遅延して来ました最大の原因は彼にもあろうが、我にもある。即ち彼は不法に日本人を抑留しておる。言を左右にしてそして返さない。いろいろ向うの政策として返さない。併しながらこれが今日に及んだという一つの又責任はこの現内閣が、政府が従来中共に対するところの国交を殊更に切つて、それでこれらの交渉を開始する緒口を持たなかつた、努力のしようがなかつた。ただ拱手傍観するより低かなかつた。この政府の外交政策が生んでおるところに責任があるということはもう天下周知です。ところが今ようやく先方の呼びかけに応じて交渉のために話が付けば出かけて行くということは、私は事一つ引揚問題であつても、これは私はこの政府の外交上の非常に大きな私は何と言うか、変化というか、私は考え直しをされたものであろうとかように考える。或る意味におきましては、私は非常にいいことだと思う。どうかこの引揚促進交渉を契機とされて、殊にアジア局長の重責にある倭島局長にはいろいろお考えがありましようが、引揚促進のみならず、我が国の国交の上に、国の国運の上にこのことが大いに刺激されるように、プラスになりまするように、非常な成果を納められることを私は期待しております。
  48. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 私もやはり倭島局長にお尋ねしたいのですが、まあ藤原委員と今の山下委員との御質問で私が伺おうと思つてつたことの大部分はもうすでにお答えを願つたように思いまするが、奥は我々引揚特別委員会委員をいたしておりまする時代から、この引揚の問題については留守家族かたがたからどうもはかはかしく運ばないが、国会議員として命がけでかの地へ渡つて、そうして向う政府とよく懇談をして、その引揚問題を促進してくれるほどの熱意のある国会議員がおらないことは誠に残念だが、何とかしてそういう方法をとつてくれないかということは実は各方面から、留任家族のかたがたから私は要求されておる一人であります。その関係上実は九月の北京におきまする太平洋の平和会議というものがここに催されて、そうして私は自由党員でありますが、この自由党、保守党である自由党員の私を推薦されまして、招聘するから是非出て来て平和の問題に対して話合つてくれないかというような実は招きを蒙つたのであります。先にも申上げましたごとく、留守家族かたがたの心情を察しますると、私どもどうしても命がけででもこの問題の解決にたとえ一部でもお尽しをいたさなければならないという覚悟を持ちまして、実は倭島局長の所へ伺いまして、こういう問題がございまするが、何とか一つ旅行券を下げて頂けないか、私は横すべりをしてそうして行くということのできないことはないということは了解いたしておりますが、自由党のいわゆる与党としての議員といたしましては、そういう方法をとつて彼の地へ行くということは私どもの良心が許しません。故に私は国会議員の立場からこれをお願いすると共に、私は宗教の方面から申上げまして、いわゆる国民外交とでも申しますか、宗教を通してこの引揚問題に対しまする先方の了解を得て、一人でも早く、一人でも多く返してもらえるように歎願をいたしたいと思いますが、旅行券を出して頂けないかということをお伺いしましたら、それはできない、生命財産を保障することができないから、いわゆる講和条約の結ばれていない国の旅行は許すことができないということでありましたので、実は残念ながら私はそのとき思い止まつたのであります。そのときに局長は、それに附加えて、これは甚だ申しにくいことでありまするが、まあ私の受けました感じでは、こう何だか脅迫されたような気がしたのでありますが、将来大谷さんがほかの国に旅行される、いわゆる民主国家群に旅行される場合には旅行券が下りませんよ。そういう所へ行つたらあとはもう下りませんよと、こういう言葉すら私は承わつたのであります。そのときに私といたしましては非常に困りまして、私といたしましては、いつなんどきどこへ行かなければならんかも知れない私としては、その身分にありますので、そういうことになりますと非常に困るということも考えまして、かたがた私はすべて思い切つたのであります。然るところ今度又ウイーンのほうで平和会議が開かれるときにも私は実は推薦をされております。京都の警察にはすでにこちらから通知があつて大谷が又ウイーンへ行くそうな、どういうわけで行くかという実は警察のほうの取調べも実はあちらへ参つているというような状態であります。私与党の者として、こういうことを政府の当路所のかたに申上げることは非常に苦痛でありますが、併し私といたしましては、この留守家族人たちの心情を考えますと、我々国会議員といたしまして、どうしても何とかこれを早く解決して頂きたい。先にも縷々お話がありましたが、今日まで御当局は積極的にやつておると言つておいでになりますけれども、私どもから見ますると、何だかこう受入態勢だけを整えておつて、積極的に受入れようという積極性のない点に対しまして、この外務省としてのお取扱がまあ非常に私として心外に考えられるような次第であります。つきましては、どうぞこの引揚の問題に対しましては、国民外交という点を一つ考えになつて、殊に我々宗教の立場にある岩を何とか向うへ渡らして頂くような、いわゆる宗教を通じての交渉に当らせて頂くだけのお考えがあるかないか、もう一度お尋を申上げておきたいと思う次第であります。
  49. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) いろいろ御意見がありましたが、殊にこの公開の記録付の席上でお話になりました点につきまして、二、三誤解がありますので訂正を……、訂正というのは私が御説明した点についての、私の説明が足らなかつたならば、この際申上げることによつて御了解願いたいと思いますので、土、三附け加えさして頂きたいと思います。  第一に申上げたいのは、政府の者の立場でありまして、先ほどから積極的でないという点についての、だんだんの御意見を承わりまして、我々不敏にして力の足らんところは今後一生懸命に更に努力いたします。併しながら政府の建前としてとり得る限度というものがございます。これは又政府の者として考え一つの限度がございますので、民間或いはそのほかのところの建前でお考えになる、御発言になる、或いは行動されるという点と、政府として一つとり得る国際法上なり或いは政府の建前としてのものがございますので、その建前の範囲においては積極的に考えているつもりでございますし、今後もそういうふうにやつて行きたいと存じます。  それからもう一つの点は、中共のほうへ行かれる件でありますが、この点は私もあとで又違つてつたら、別の機会に訂正をさして頂きたいと思います。直接の担当でありませんからして、旅券法の問題を今私の了解している範囲で御説明をしたい。で更に違つてつたら又訂正申上げますけれども御存じ通り旅券法というものは普通の、平時の時に適用せられる法律であります。つまり国と国とが平常状態にある、平和状態にある、そのときに適用せられる法律であります。従つてその戦争関係、平常状態でない国と国との間において旅券法の範囲内でこれを規律しようというところに一つの無理がある。従つてこの旅券法、或いは又それからその旅券法の旅券を出します趣旨は、平常状態にある国に日本なら日本人が旅行をするという際に、政府はこれは日本人でありますから、この人の保護、その他はよろしく頼みますという意味の、むしろ御旅行になる御本人の保護なり便宜のために出すものである。そうしてその相手政府というものは、これは戦争状態にあるところの政府には出しません。これは平時状態を前提とした法律であります。それで平時状態を前提といたしましても、その中で本人の危険があつたり或いはその旅行されることが直接に、又著しく国の利益を害する時には平常状態にある岡といえども御旅行になるときに旅券は出さないということになつているわけです。ところが問題といいますか、御指摘の中共関係については、現在国交関係がございません。そこへ旅券法に基いて旅券を出すかどうかというそれが一つの大きな研究問題である。従つて政府に正式に旅券を出して旅行をさせろとおつしやいます点に大きな研究問題があるわけであります。なお、その研究問題という意味で私が言葉を申上げておるのは、普通ならば、戦争が済みますならば、もう一年か半年のうちに国交が回復するわけであります。ところが、この数年間そういう状態にない。これは又、その普通の国際関係から言えば甚だ例のない、或いはイレギュラーな関係でございます。そういう際にどういうふうに対処するか、或いは旅券法を改正して、そういうものも含めるようにするかというような問題があるわけでありまして、従つて正式に出すという問題については、そういう点味において幾多の研究問題があるという点と、それから旅券法の建前というものについて御了解頂きたい。これが一つの点であります。  それから言いにくいということでおつしやいました点は、これは誤解でありまして、私は何ら脅迫するつもりも何もございません。(笑声)そういう又立場にもありません。従つて、ただこの今のようなことで旅券をお持ちにならないで、或いは旅券をお持ちになつて、旅券の発行し得る範囲のものをお持ちになつて、そうしてそれに書いてない別の御旅行をなすつた際には、これ又別の取締関係なり、別の関係を生ずるわけでありまして、ただそういうことがあり得る。例えば或る所へお持ちになつた旅券に対して別の御旅行をなさる、或いは又、現在の日本法律として通つておること以外の御旅行をされるということは、これは政府がどうこうということでなくて、法律上の問題でありまして、そういう問題を生じますということが一つであります。それからもう一つの問題は、要するに中共なり、そういう国交関係がアブノーマルな、数年間にしろあります所に御旅行なさいます際には、この旅券というものについて、旅券の発行という問題もございますし、又ビザという問題、査証の問題ございます。そうして或る地域へ御旅行になつた際に、例えば別の地域へ御旅行になる際に、査証のとれない場合に、つまり今度ほかの国が……、日本が旅券を出さんということではございません。日本が旅券を出すか出さないかという問題は日本の旅券法の範囲の問題、ところがそうでなしに、旅券をお持ちになつて日本政府が旅券を出しても、たくさんの多くの人が或る国へ旅行を希望される際に、査証がもらえない国がたくさんある。これはもう例を一々申上げることは差控えますけれども、そういう場合が起るわけでありまして、それは今度は査証を出すというのは、入国を許可する国の政策の問題であります。これは私が何ら脅迫も何も申上げるのじやなしに、それは旅券法の建前を御説明し、それから査証というものについての一つお話を申上げたわけでありまして、それが残念ながら、そういうふうに私の言葉の足らなかつた点について、そういう印象を得られたならば、この点はこの際一つはつきりこの記録のついたところで、そうでないということを、一つ私の知つている限りにおいて御説明申上げたいし、その点を一つ承知願いたいと存じます。
  50. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 今局長お話でよくわかりました。私の誤解であつた点はこれを訂正いたします。ただこういう平和会議等の特別の場合に、特別の旅行許可というようなものをお出しになる考えがありますかどうかということを一つ承わりたいということと、もう一つは最近局長が南方、フイリピンのほうにおいでになるようなことをちよつと新聞で見たように思いますが、その事実おいでになるのかならないのかをちよつと承わりたい。
  51. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) この例えば、私は中共への渡航という問題については、一つ二つ少くとも問題があると思います。一つの問題は、現在の出入国管理令という法規の問題から申しますと、日本から出られる際に旅券を持つておいでになる、その旅券へ、日本を立たれるときに一つのはんこと言いますか、それを捺してもらわれる建前になつておると思います。従つてまあ旅券を出すか出さないかという問題は、先のような点があります点が一つと、或いは若しも旅券とは別に御旅行になる、それを例えば正式のものにしたいという際には、その旅券というものとは別に出入国管理令の恰好からどういうような書面にすれば正式な出国になるか、こういう問題があると思いります。この出入国管理令の問題は直接外務省の問題ではないのでございまして、今出入国管理令の実施官庁は法務省でございます。この問題もいずれいろいろな関係でもう少しはつ書しなければならんかと存じますが、そういうわけでございまして、出国そのものへの手続上の、現在の法令下における手続の何かまあ便法を考えれば、何かしなければならん問題があるかと存じます。これは実は私直接の担当でないので、その程度に御説明申上げます。  それから私の最近の旅行の点でございますが、これは新聞等にもちよつと出ておりますが、実はニューデリーで最近アジア全体の在外公館の会議がございますので、それに出席をしなければならんことになつておりますし、その機会を利用いたしまして、かねて担当いたしております関係国に懸案その他が溜つておりますので、現地で或るものは交渉し、少し見聞を拡めて帰りたいと思いまして、相当数カ国に極く短期間旅行して来たいと考えております。
  52. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 私希望を申上げておきます。フイリピンヘおいでになりましたら、戦犯者の解放問題について、外務省のお役人といたしまして、どうか一日も早く日本の内地へ送還されるよう御尽力をお願いいたします。
  53. 藤原道子

    藤原道子君 ちよつとお伺いしたいのでございますが、今大谷委員への御答弁の中に、戦争状態の国へは出さないということをはつきり言われたのでございますが、そういう戦争状態にある国へは出さないと、いま一つは、こちらから出しても向うのビザの関係もあるというようなことをお答えになつたようでございますが、向うから招待があつた場合、これは向う関係はもう解決しているわけですね。日本の旅券の問題だけで片付くはずだと思いますが、この点についてのお考え、戦争状態にある国には出さないと言われる、いわゆる戦争状態ということについて一つお答え願いたい。
  54. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) どうも私の直接担当の問題でないところへ入つて行きましたので、甚だどうもちよつと御答弁がしにくくなるので、もう少し詳しくは、実は旅券の問題は外務省の中では欧米局長が担当しておりますので、適当な機会に又欧米局長から正確な御答弁をするようにしたいと思いますが、私がさつきお答え申しました趣旨は、出さないということを直接申上げたつもりはございません。旅券法というものの建前はこういうふうになつておりますと、つまり平時状態の関係の、平和状態の国へ御旅行になるときの、そのときの旅券を発行するというのが建前でありまして、ところが普通なら戦争が済んでから一、二年で片付くのが、もう数年間国交関係、少くとも平常関係の回復しない状態にある国があるわけであります。それとの関係をどうするか、又それとの関係で旅行を正規にするためにはどういう書類を作るかということは、これは相当な研究問題だろうと存じます。従つて、その点は研究問題でございますという点で、直接出しませんということは、私当の責任者でもございませんし、そういうふうに申上げるげたつもりはございません。従つて、その点は更に正確な返答を御要求ならば、その担当の者から申上げさしたいと存じますので、まあその程度に御了解おき願いたいと存じます。  それからもう一つ査証の問題は、私先に大谷委員へ御説明申上げましたのは、当該国への査証の問題ではございません。例えば甲の国に御旅行になつたときの関係が、乙の国に御旅行になるときに査証を得られない場合が多々あります。そういうことを申上げたのでありまして、従つて普通の建前から申しますれば、向うが招待しておるのだから査証もへつたくれもないじやないかと、或いは査証は要らないじやないかという御議論ですが、普通の状態ならばもう招待するくらいならば査証は喜んで出すわけでありまして、まあそういうわけでありますから、査証の問題の件は、さつき私が言及しましたのは、第三国と言いますか、別の国との関係を婉曲に申上げたつもりであります。
  55. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  56. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) 速記をつけて下さい。
  57. 藤原道子

    藤原道子君 それでは一つだけ聞いておいて、結論が出なかつたら保留しておきます。私はアジア局長が今度アジアの在外公館の会議においでになるということですから、余計この点を申上げておきたいのです。どうもアジア諸国、中共、それからソ連等に対して、殊更に何やら奥歯に物が挾まつて来るような恰好になつて来やすいのですね。この引揚問題にしても、パスポートの問題にしても、これはやはり私は或る大きな力が加わつておると思うのです。それが率直に言えないから答弁がしどろもどろになつて来るのだと思うのです。ですけれども我々は独立しているのだから、独立日本ということを絶えず政府言つておいでになるのだから、もつと政府が勇気を持つならば、私は解決する問題だと思うのです。戦争状態の国だから云々と言われる。確かにそうなんですけれども、理窟から言えばそうでございますよ。併しながら、国交が回復していない国は中共だけじやない。まだほかにもある。けれどもその低かの国には、私ども日本から。パスポートをもらわないで行つて出先から入つておりますけれども、それは少しも問題にならない。それではそこの国は一体国交は回復しておるかと言えば、まだ回復していない。ここに問題があると思う。中共を殊更敵としてこちらが考えるところに問題があると私は考えるのです。ですから、戦争状態ということについての局長の御見解を一つもう一遍くどいようですけれども伺いたい。
  58. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 一つ二つ申上げたいと思いますが、一つの点は、何か大きな力があつて遠慮しておるのではないかということでございますが、その点は毛頭そうではございませんので、私の承知しておる限り、又私が分担しております仕事を片付けて行きますに当つては、この平和条約成立後、日本の利益の立場に立ち、自主独立な一番よい、国のためになる方法だという考え仕事をしておるわけでありまして、何ら大きな力によつて遠慮をしておるとか何とかいうことは毛頭ございません。まあその点は一つ御了解おき願いたいと思います。  それからもう一つ、今の御質問の点でございますが、これはその戦争というようなこと、或いは平和というようなことではつきり事態を分けてしまいますと、例えば敵だとか味方だとかいうことでこの説明なり議論は極めて明確になりますけれども、現在の国際情勢考えて見ますと、その点敵であるのか味方であるのかということが明確に行かないものがあると存じます。それから先ほど私は戦争状態ということを申しましたのは、これはつまり少し言換えます、言い直します。こういうふうにおとり願いたいと思います。さつき御説明したところで御了解得たかと思いますが、平常状態と言いますか、平和状態、普通の国交関係があることを前提としてまあできているのが旅券法だと、私了解しております。ですから、それでそういう意味がまあ趣旨となつている旅券法を、平帯状態と言いますか、平和状態と言いますか、普通の国交関係がない国の関係へ適用しようというところに困難なり、無理なり、或いは研究しなければならん問題があると考えられるということを説明したわけでありまして、私の言葉が戦争状態ということが少し当らんようであります。この際訂正させて頂きまして、平常状態にない国というふうに、まあおとり願つたらいいんじやないかと私思います。その際に、例えば中共との関係は敵との関係か、戦争との関係かというような点を余りお問い詰めになりまして、政治的な問題としては、私一つの見解を持つておりますけれども、旅券法の問題につきましては、先ほどから私申上げておりますように、その問題の詳しい議論はこれは私の直接の担当でございません。ただ大谷さんが先ほどいろいろ私のところでお話になりました結果について、釈明なり御了解なりを願いたいという意味において、旅券法の建前を申上げたわけでありますから、その程度一つ御了承を願いたいと思います。
  59. 藤原道子

    藤原道子君 局長向うからのお呼出しも大分激しいようでありますから、私、いずれ又この問題は、私、今日納得しておりません。この次又一つ……。  それからいま一つ局長がアジアヘおいでになるということは非常に私結構、だと思います。この前お目にかかつたときにもお願いしましたように、どうぞアジアヘおいでになりましたら十分に、形式的な儀礼的な外国との折衝でなくて、本当に胸襟を開いた立場で一つ十分視察して頂きたい。恐らく日本においでになつて、在外公館からの報告だけをお受けになつている局長のお考えは、現地においでになると相当つたものになるだろうと私は思うのであります。是非ともあらゆる階層に会つて日本はどうしたら本当に生きて行けるかということをあなたのような進歩的なかたが向うにおいでになつたら、裸になつて取組んで研究して頂きたいということを私はこの際特にお願いいたしまして、大谷氏からお話のございましたような、モンテンルパには私も行つて参りまして、涙の会見をしておりますことは局長にもこの前申上げた通りでございますので、是非一日も早く帰れますように御努力を願いたいと同時に、私としては一挙に返すことは何としても国民感情が悪いから、時期を見て返すと言明されましたキリノ大統領が、過日二人の人を返して下さつたという点につきましては、私、非常に感謝しておりますので、あなたがおいでになりましたときにもその気持をお伝えになつて一つなお折衝して頂きたいことを特にお願い申上げます。
  60. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それではこの問題につきましては、一応今日はこの程度にいたしまして、それでなお御相談したいのですが、請願、陳情の問題でございまして、遺族援護に関する請願、陳情、母子福祉に関する請願、陳情がございまして、これおのおの小委員会に付託したいと思うのですが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それでは遺族援護に関する小委員会に付託いたします。請願、陳情は、請願二百七十一号以下大体同趣旨のもの二十一件、それから陳情九件、これを遺族援護に関する小委員会に付託いたします。それから請願六百六十号、これを母子福祉に関する小委員会に付託することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それでは今日の日程に上つておりまする請願、これは次回に廻すことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 藤原道子

    藤原道子君 私、引揚問題に対して納得がいかないのでございますけれども、この次に残しまして、引揚問題が現実にこういう状態になつて現れて来たのに、ただ向うから言つて来るのを待つているということでなくて、参議院の引揚委員会相当働いて参りました。そうして今度は厚生委員会引揚問題は取扱うということに相成つているわけであります。この際大谷さんからも宗教団体からという強い要望がございまして、この厚生委員会から代表を派遣する、引揚促進調査のために代表を派遣するということを、厚生委員会で私は決定して頂きたいということを提案したいと思います。
  64. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それにつきまして、先ほどこの速記のないとき、私、御相談申上げたことは、そういう点もありますし、できますなれば、このあとの理事、小委員長打合会議でこれを具体的にきめて、そうして正式に委員会に御提案下さると、そういうふうな方法をとりたいと存じますので、その点さつきああいうふうな発言をいたしましたわけですが。    〔「結構です」と呼ぶ者あり〕
  65. 藤森眞治

    委員長藤森眞治君) それでは今日はこれで散会いたします。    午後零時十七分散会