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1952-12-04 第15回国会 参議院 建設委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月四日(木曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            赤木 正雄君            石川 榮一君            松浦 定義君    委員            石坂 豊一君            廣瀬與兵衞君            深水 六郎君            飯島連次郎君            江田 三郎君            三輪 貞治君            田中  一君   委員外議員            溝口 三郎君   国務大臣    建 設 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    建設政務次官  三池  信君    建設省河川局長 米田 正文君    建設省道路局長 富樫 凱一君   事務局側    常任委員会専門    員       菊池 璋三君    常任委員会専門    員       武井  篤君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○建設行政に関する調査の件  (河川総合開発に関する件)  (道路関係事項に関する件)   —————————————
  2. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) これから委員会を開会いたします。  後ほど大臣が見えますが、今見えておりますのは米田河川局長、又農林省のほうから伊藤資源課長及び建設省道路局長が見えております。  先ず河川行政について政府の御見解を承わります。
  3. 米田正文

    政府委員米田正文君) 簡単に今日の河川現状について申上げます。  御承知のように、終戦以来河川洪水によります、或いは高潮等による災害が激増して参つたのであります。この原因はいろいろとありますけれども、我々の最も重要な要素だと見ておりますものは、水源地方の山地の荒廃或いは戦時中の増産要請による開墾或いは河川上流部中小河川を初めとする諸河川改修というような問題が、改修等進捗等が原因いたしまして、今日の災害の要因をなしておると、こういうふうに考えられるのであります。そういう状態でありましたので、実は昭和二十四年に一応治水の十カ年計画というものを策定いたして、その線に沿つて治水予算というものを編成して要求を続け一参つて来たのであります。簡単にその当時の事情を申上げますと、昭和二十四年にこの十カ年計画を立てましたときには、こういう事情でありました。河川といたしましては、明治二十九年に直轄河川として淀川を着手して以来、昭和二十二年までに二十二河川が竣工いたしまして、昭和二十三年度において七十八の河川工事中でありました。これらの工事進捗と竣工とによりまして、日本耕地面積五百九十万町歩と称せられておりますうち、大体六十七万町歩水害から免がれておると、こういうふうに調べたのであります。なお中小河川については、御承知のように大分遅れまして、昭和七年度から着手いたしておりまして、昭和二十二年度末に竣工いたしましたものは百五十六河川昭和二十三年度において工事中のものは百七十六河川であつたのであります。これらのものを完成することによりまして、或いは工事中で、一部完成によりまして約八万町歩というものが洪水災害を免れておる、こういう数字であつたのであります。これらを合せまして、七十五万町歩というものが一応水害から免れておることになつておりますが、なお水害の全面積は百八十万町歩水害を受け得る可能地が百八十万町歩ございましたので、なお残りの百五万町歩というものの水害を除去することがこの十カ年計画の根本になつてつたのでございます。そういう基本に立ちまして立てた当時の案が、二十四年度から十カ年といたしまして、所要の総金額五千五百二億であります。それの国費といたしましては、四千二百九十二億というものを立てたのであります。それによつて改修いたします河川は、直轄河川が七十九本、中小河川が千八十、局部改修河川が千五百カ所、それからそのほかに北海道で直轄河川が十四河川特殊河川として三十六河川道費河川の補助が六十、局部改修として四十カ所というものを改修し、なお完成したものについては維持管理をして行くという経費を積算いたしましたのが、国費にして四千二百九十二億になつたのであります。その後そういう計画で進めて参つたのでありますが、昭和二十四、五、六、七、その後四カ年を経過いたしたのでありますけれども、その進捗率が実は当初の計画に比べまして非常に低く実績がなかつたのであります。で、二十四年から七年まで四カ年間に全体の一一%を完了したに過ぎないのであります。一年にして三%という状態であります。従いまして、この調子で参りますと、なお今後三十年弱の年月を要する状態になつておるのであります。我々といたしましては、今後なお百万町歩水害地を守る工事が三十年かかるということは、到底今日の国の産業事情から見まして許されない事情だというので、これを二十八年度から六カ年間で、できれば一挙に取返したいという考え方で、二十八年度の予算要求をいたしておる次第であります。これが二十八年度予算が我々の要求通りに、今後の折衝によりますけれども、うまく参りませんならば、又この事情が非常に遷延されるという結果になるのであります。なお経済効果については、今申上げましたのは、百万町歩と申しましたが、最近は年々五十万町歩程度水害を生じておるのであります。百万町歩のうちが或る年はA地区で、或る年はB地区でというふうにして現われるのでありますが、それが百万町歩のうち五十万町歩ぐらいずつが年々水害を受けておる状況であります。それによる概略の米の生産減収が見積りで二百万石から乃至二百五十万石程度を見積つております。水害を受ける戸数といたしましては、八十万戸程度と推定いたしております。これらのものを金に換算いたして見ますと、千五百億程度になるのであります。年々の水害が大体千五百億程度の損害を生じている、これを救うことが即ち治水目的でありまして、先ほど申しましたように、総事業費五千五百億かかりますけれども、年々の災害千五百億に比べれば私どもは決して高くないと、こういうふうな考え方をいたしております。今なお更に敷衍してみますと、昭和二十六年度の災害を参考に申上げますると、住家の全壊、半壊、流失浸水を全部合せまして六十五万七千八百九十七戸という数字でございます。田畑の流失、埋没、浸水全部合せますると六十二万四千町歩に達するのであります。そういう状態でありまするので、私の先ほど申上げました八十万戸並びに五十万町歩という数字が大体適当と御理解頂けることと存ずるのであります。で、そういうふうに進んで来ておりますが、ただ治水方式といたしましては、従来河川下流改修堤防を中心に施行して参つたのが、最近の情勢から上流洪水を一時貯溜して下流水害を軽減するという様式を相当強く取入れるように最近方針を転換いたしておるのであります。併し上流でとるということは、どこでもここでもできるということではございませんので、地形上その他の条件が許すならば、上流で極力洪水を一時貯溜したい、こういう方式相当強く転換をいたしたいと考えておるのであります。そういう方式が最近の河川改修一つの新らしい行き方でございます。  なお砂防に対しましても、従来から長く、これも明治三十年に砂防法ができて以来営々として当局は努力して参つておるのでありますけれども、今日なおその成果は微々たるものでありまして、全国的な立場から見ますとまだ今後多くの事業を残しておる状況であります。で、極力砂防工事推進に努力をいたしたい。その方式も現在渓流工事を大体建設省が施行し、農林省山腹工事を施行するという状態なんでありますけれども、我々といたしましては、渓流工事も勿論必要でありますけれども、それに伴う山腹工事も又同時に施行することが必要であつて、我々の手で一部やるか、或いは農林省とタイアップしてやるか、それらの方途は別に協議をいたしますとしましても、渓流工事山腹工事が同時に行われることが必要であるというような考え方で今後の砂防事業推進いたしたいと考えておるのであります。砂防事業に関しましても五カ年計画というのを策定いたしまして、やはり二十四年度から実施をいたしておるのでありまするけれども、これも計画実績とは非常に懸隔を生じておる実情でございます。これもなお今後五カ年計画で四カ年間過しまして、なお一年しか残らないのでありまして、到底当初の五カ年計画は実行いたすことのできない状態でありますので、更に二カ年を追加して、その当初の計画を遂行いたしたいという目標で進んでおるのであります。  なお災害復旧については、だんだん災害が累積して参りまして、今日国及び地方とも非常な財源の困窮を生じておる状態でございまするが、併し何と申しましても、災害を受けた場所の復旧は非常に急いでやる必要がありまするので、来年度の予算には二十三年度と二十四年度の災害の残つておるものについては是非完成をいたしたい。それから二十五年、六年の災害については残つておるものの半分五〇%は是非完成したい。なお二十七年度、今年度の災害については建設省が当初から主張いたしておりましたように、三、五、二の比例で推進をいたしたい。従いまして、二十八年度においてはやはり五〇%を実行したい、こういう線で二十八年度予算要求いたしたいと考えておるのであります。なおそのほか予算の項目がたくさんございまするけれども、これは又御質問等に応じて申上げたいと思います。
  4. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) お諮りいたします。大臣はちよつと中座されるかも知りませんが、お忙しいことでもありますので、先ず大臣質問のかたからお願いします。
  5. 田中一

    田中一君 大臣の先般の御説明に対する質問を続けたいと思いますが、道路法改正されまして、一応旧法よりも国土計画又は国民要望する線に近付いて来たというように考えますが、行政面に委ねたところの国道指定の問題でございますが、先般道路局長から説明がありましたが、これを大体、無論建設省原案として道路審議会に提出され、その上諮問の結果、この答申がこの一級国道指定せられたものと思います。なお二級国道も先般道路局長に聞きますと、本年度中には無理じやないかというような御意見でございましたが、大体一級国道はさておきまして、新設されますところの二級国道、これに対する大臣指定方針と言いますか、一応選定についての考え方がありますけれども、私は到底これだけでは満足しないのでございます。殊にこの説明の中に外国の道路数字を挙げて、これが相当大きな考え方にウエイトを持つているというようなことに対しては、全然余分なものが入り込んだような感じがするのであります。無論道路というものは国の産業並びに生活向上、あらゆる面において経済生活において不可分なものである。或いは今次のような場合では鉄道より以上に重要なものと考えなければならんのであります。実際に二級国道指定に当りまして、大臣は電源、鉱山、農業その他すべての開発道路というものも考慮しなければならない。或いは観光道路の問題とか、いろいろ盛沢山な御説明がありましたけれども、大体率直に大臣がどういう考えを持つて二級国道指定に当るかというお考えを先ず伺いたいと思うのであります。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。道路法改正に当りまして、国会の全面的な御指導を頂いたのでございまして、その結果一級国道選定をいたしたのであります。ところが法律的な手続等におきましては、考えられる点を十分考慮いたしまして、万全を期したつもりでありますけれども、最近の道路事情等からいろいろ御批判も頂いておるのであります。私は道路整備につきまして、今日のように国民関心が高まつたということは、これは今までの道路が非常に不整備であつたということであり、同時に国民皆様方から道路の効用というものについて深く認識を頂いたことだと思つて実は非常に喜んでおる次第であります。そこで行政官庁におきましても、これが選定等については特に地方的な実情等をも一層正確にこの選定に取入れるような処置をとるべきじやないか、そこで勿論いま田中委員お話のように、行政官庁には行政官庁の仕事があるんだという御理解のあるお言葉を頂いたのでありまするが、同時に国会皆様方におかれましても、行政面に干渉するというお気持はないことだと私確信をいたしまするが、同時に皆様方地方実情については深い認識を持たれておる、この皆様方の持たれる該博なる知識と御意見をやはり取入れることが一層行政面をして円滑な遂行を来たすんじやないだろうか、かようにも実は考え、御指摘になりましたような選定方針があります上に、更に格別な工夫をいたすべきではないか。そこでこれは道路審議会原案を諮問いたします前、適当な時期に皆様方批判も頂くような機会是非作りたい、その点は全委員のかたの御意見を聞くのがよろしいか、或いは小委員会等のかたの御意見を聞くのがいいか、これらの取扱いについて、又その時期等については委員長と篤と御相談をいたして行きたいと実は思つておるのであります。衆議院の委員会のかたがたにも、さようなお話を端的に申上げて、一層これが整備に当りましての御協力をお願いしておる次第であります。そこで申上げてみたいのは、道路、殊に一級国道となりますると、これは地方的な要請も勿論考慮に入れなければならないのでありまするが、一級国道という性格になれば、相当地域亘つて道路網整備、かような観点が実は必要ではないか、その観点に立ちまして一級国道選定をいたしますると、現在の都市状況からみて、この一級国道経由地等についていろいろの御意見があるやに聞くのでありますけれども、これはどうも純地方的な問題或いは局部的な問題として考えるべき筋のものではないように思います。やはり相当広い地域亘つて道路整備という観点に立つて頂いて、経由地等については総体の体形を一つ整えるという方向是非とも御考慮頂きたいように思うのであります。而うして現在の都市所在状況等から見まして、これらの欠点を補います場合に、やはり二級国道としての選定がよほど役立つて参るのじやないか、従いまして国道選定に当りましては、一級、二級併せて、国全体、同時に又地方的要望に副い得るような配置をすべきじやないかというので、事務当局をして原案等を作らしておるのであります。併し先ほど申しましたように、道路に対する関心が高まつておりますだけに、なかなか強い要望があるのでありまして、さような意味合において特に皆様方の御協力を願わなければならないではないか、実はかように考えております。或いはお尋ねの点と違つておるかわかりませんが、まあ最終的の問題としての結論を急いだようなお答えをいたしておるわけであります。端的に私の所信を御披露申上げたのであります。
  7. 田中一

    田中一君 無論今の御説明の中には国全体の資源開発或いは総合開発或いは国土計画、そうした面から二級国道指定しよう、同時に地方的な産業開発の面も考慮するというような御所信と思いますから、いずれ又改めて細かい点については伺いたいと思いますが、もう一つ次に伺いたいのは、有料道路は今後国道に及ぼすつもりであるかどうか、我々有料道路法を作る場合に非常に強く建設省要求したのですが、あえて国道有料道路にするというような案を持ち出しまして、そのうちの一つは、建設省もその非を悟つたのでしよう。取止めになつておりましたところが、今回の補正予算を見ますと、改めて我々に約束した以外の国道が入り込んでおるという点につきましては、非常に不満を感ずるのです。少くとも先の建設大臣は我々この委員会を瞞しておるのです。こういう点は少くとも我々が行政権に委ねたところのものに対する審判はいたしません。併しながら委員会においてはつきり約束した問題を、あえて裏切つてやるということに対しては、この跡始末は建設大臣がなされるだろうと思います。今後とも国道についての有料道路をとるか、とらないか、この際はつきりと言明願いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 只今の問題は至極根本的な問題であります。私も就任早々でありまして、今後の研究に待たなければならんものもあるのでありますので、この機会に私の率直な考え方を御披露申上げまして、これは御批判を頂きたいと思います。まだはつきりさようにきまつたとお考えにならないで、建設当局大臣としてなお研究余地のある問題として一応考えておるところを率直に御披露したまでだと、かようにお考えを頂きたいと思います。御承知のように、昨年有料道路を制定いたした際に、今までの日本国内国民感情からいたしまして、道路で金を取るということはどうもぴんと来なかつた。そこに、殊に今のお話には多分第一原案に入つていたと思う第二京浜国道、こういうのが有料になるというような話があつた。私自身も当時どうも第二京浜国道有料にするということは反対であつた。実は端的にその所見を披露いたしたものであります。それで有料道路を作りました当初において、皆様方の御批判もあつたことでありましようが、いわゆる国道の面、もうすでに既設の国道の面では、有料道路という考え方は、一応消えたように思います。それで新たに作ります特別な構造物その他について特に賃取の制度を加味したように考えておるわけであります。然るに最近の道路整備する方向で物事を考えて参りました際に、財源に限度のある今日の状況で、道路を急速に整備するという場合において、有料道路という範囲は相当拡大してもよろしいのじやないか。場合によりますれば、この財源を国の財政資金にのみ頼らないで、民間からも更にこれを吸収するという意味合において、或いは新らしい構想でありまするが、道路会社というような民間会社ができてもよろしいのじやないか。相当話が飛躍して参りまするが、国の予算のみに頼らないで、国の財源のみに頼らないで、一般民間からの財源にも頼り得るような構想ができないものだろうか、かようなことを実は最近私自身考えて参つておるのであります。で、過日もお話申上げましたガソリン税目的税化するこの考え方も、ガソリン税にいたしましても、これは普通の税源に違いないのですが、ただガソリンは、道路使用の場合に消費されるガソリン、それを対象にして課税されるのだ。ただそれだけで、それを目的税化するというのも或いは議論余地があるかも知れないかとも思いますが、もうすでに利用者受益者を先ず第一に考えて、受益者負担がまあ堪え得る程度に、その受益者負担によつて財源を得るということも一案に違いない。かような考え方が、只今ガソリン税目的税化するのだというような方向考え方をまとめつつある際でありまして、この考え方を押し拡めて参りますると、場合によりましては、先ほど申した道路会社というような構想も成り立ち得るのじやないか。従いまして非常に厳格な意味において、国道なるが故に有料道路ではいかんのだ、かようなことにはどうもなりかねはしないか。これは一つ諸君にもうんと批判を頂かなければならないものですが、非常に窮屈に考えなくてもよろしいのじやないか、今例えて申しますると、この前御審議を頂きまして、これは御賛成を頂いた、例えば関門隧道なら関門隧道、これは有料隧道になる。併しこれは国道の一部であり、又その附近の連中から見ますれば、これは国道として考えらるべき筋のものだ。併しながら特殊構造物であり、特別な巨費を投ぜられ、そうして一般財源予算だけでそれを賄うということは困難だ。別の財源を以てさようなものを建設しようとするならば、そういうものも実は考えられない。或いは又国道国道を繋いでおりまする特別な橋梁等においても、その部分だけ国道でないのだと外すわけには実は行かないのではないか。こういうものを然らば全部公共事業費で無料で建設しようと、こうなりますると、現在の国の財政状況から見ると、やや無理が来るように思える。そこらはもう少しゆとりを持つてよろしいのじやないか。ただ歩行者或いは軽車輛、そういう点にまでこの有料制度を押し拡めるかどうか。これは大いに議論があるところで、私は直ちにそこまでは賛成はいたしませんが、道路整備の急務なる状況の下において、財源確保、かような観点に立ちますると、受益者に対しまして、或る程度負担を課することも、これは考え得るのじやないかというような実は考え方を持つておるのであります。この点はまだ私も未定稿でありますから、うんと御批判を頂きたいと思うのであります。で、現在の法律の建前その他から見まして、或いは飛躍的のものであるかもわかりません。併しまあ将来の道路整備方向としては、只今申上げるようなことも一案ではないだろうかというのが只今の私の考え方であります。
  9. 田中一

    田中一君 今の大臣の御答弁、我々が有料道路法審議する過程において、我々の賛成する面もたくさんございます。併しながら、金がないから国民から、受益者から金を取るのだという考え方ですと、金を持たない者は通れんということになるのです。殊に国道というものは国民が建設している国の、これは自分で新設管理しているものでございます。従つて金がない場合には通れない。少くともこの考え方はもう一遍大臣にお考え直し願いたいと存ずるのです。殊に御承知のように、国道に架せられた橋梁とか、或いは隧道とかいうものはおつしやる通りです。非常にこの点については、この法案の審議に当つても各委員とも認めております。併しながら何ら先般のように鋪装、観光道路を鋪装するときに鋪装する金がないから、車道は鋪装してあるけれども、これを有料道路にするというような構想考え方は、これは前大臣考え方ですが、これはとるべきものじやないと思うのですね。もしその金がなかつたら通れない。一定の料金を出さなければ通れないという考え方は、少くとも国道においてはとりたくないと存ずるのです。これだけは随分強く要求してありました。併しなおまだ大臣は、国道でも、取つたつていいじやないかというお考えですと、根本的に我々の考えと違います。殊にこの有料道路法につきましては、政府に向つて十分附帯条項を付けまして、希望条件を付けまして可決になつたはずでありますから、一遍お帰りになりましたら、省内で、道路局長からでも書類を一つ出し願つて、成るほどこういうことが委員会附帯事項としてあつたのかということを御覧願つて、もう一度御考慮願います。従つて今のガソリン税目的税として、そして道路新設費に充てる。これも非常に結構であります。この問題も、金がないから道路はできないのだから、有料道路にして受益者から金を取るのだ、料金を取るのだという考え方のときに、そのことを申上げておきました。これは佐藤大臣必ずこれを実現させて下さるものと考えまして、非常に喜んでおります。  次に伺いたいのは、国土総合開発法改正のときに、池田大蔵大臣答弁に立ちまして、私が質問したに対しまして東京神戸間の高速度道路は、一応の調査費は二千万円計上するけれども、あれはやる意思はない、いたしませんということをはつきり言明しております。従つてこれは当時の速記録をお調べになれば、はつきり書いてございますから…。で、このことと、それから野田前建設大臣に向つてこの問題の質問をしたときにも、調査の段階である、やるかやらないかわからん、併し一応やるならばこういう見当だという計画案をお示しになりました。佐藤大臣は一応これはいつ頃までにどういう外資の導入の目当てがあつて完成するだろうか、殊にこの道路日本の今日の経済の現況から言いまして、いや、この日本財政現状から言いまして、急速にしなきやならないものであるかどうか。一面金がないから国道有料道路にして、料金を取つて国道を人民を通すというような構想を持つておられる大臣が、千五百億もかかるところのこの東京神戸間の高速度道路をやるという考えなら、どういう構想からなさるのか、外資が来ればアメリカに、或いはアメリカから来れば、アメリカの道路になつてアメリカが占用して、アメリカがお金を持つて行くという考え方なのか、日本の今日の経済現状から、財政現状から、この問題について国民が納得するような線をお出し願いたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今のお尋ねにお答えいたします前に、前の私の答弁でもうちよつと補足して、これも重ねて御意見を伺いたいと思うのでありますが、その点は有料道路といたしましても、どの範囲に料金を課するかということは、これは一つの別の問題ではないかと私自身考えておるのであります。いわゆる歩行者なり、或いは軽車輛にも料金を取るということはなかなか容易ではないし、困難ではあるし、又理論的にも疑義があるということを実は私自身考えておるのであります。従つていわゆる有料だと申しましても、外国にあります例のように、歩行者からも取つておるような考え方はなかなか日本国道状況においては、これは実現不可能じやないかという考え方を持つておる。その点が一つのまあ妥協点と申しますか、一応実際問題として解決は可能じやないかというような考え方を持つておる。この点を御披露申上げまして、又これは委員会以外の機会でも結構でありますが、御批判を頂きたいと思います。  次にお尋ねのこの弾丸道路、いわゆる高速度道路構想の問題であります。私も就任前からこの高速度道路というものにつきましては、多大の関心を持つておりますし、現在の国力を以てして、かような道路の建設が容易に実現するとは思わない、なかなか困難な問題だと思う。それかと申しまして、最初からやらないものを調査するような考え方も実は持つておりません。と申しますのは、現在の東海道の輸送状況等を考えますると、現在の国道整備状況では、ここ数年のうちに行き詰りを来たすことはもう火を見るよりも明らかな状況になつておるのであります。これは国全体から見まして、或いは東海道偏重というような議論も立ちましようし、或いは又他の地方で非常に遅れておる際に、かような道路考えることは如何かという国全体の公平的な観点に立つての御批判もあることだと思いますが、道路輸送の現状からみますると、東海道線の自動車量その他これはもうすぐここ数年のうちに行き詰りを来たすだろうということは、これはもう想像にかたくないのでありまして、大体御承知だと思いますが、只今の国内における民間自動車の輛数というものは、戦前の一番数量の殖えたというときから見まして、大体二倍半ぐらいになつております。もうすでに国内において六○万台を超しておるのであります。私どもの見方では、今後一年間に十万台ぐらいはどんどん殖えて行くだろう、而もこれらの自動車が、もとの小さい自動車でなくつて長大化され、重量化され、高速度化されると、かようなことを考えますると、現在の国道改修では、実は必ず行き詰りを来たす、まあこういうことが予想が付くのであります。これに対する対策を持たなければならない。そこで建設省におきまして高速度道路調査を始めておる。二十八年度においては、この調査完成したいというような考え方でおるのであります。で、すでにお聞き及びだと思いますが、最も輸送の輻湊しております東京、大阪間については、この建設省案以外に、民間におきましても特別な研究を続けられるかたがありまして、もつと奥地、いわゆる山岳地帯を通過する直通道路考えられておるかたもあるのであります。この案によれば、東京から甲府と、富士山の北側、その間を縫いまして赤石山脈を抜け、更に名古屋の北を通つて大垣附近で東海道線に合致するような  一案もあるわけであります。で、この構想只今申す民間構想は、現在の東海道線の輸送の緩和ということよりも、残されたこの山岳地帯の資源開発、殊に林産、鉱産、更に今後考えられるであろうところのダム建設だとか、まあかような意味合いを多分に考えまして、一つの新らしい構想の下で道路を作つたらどうか、こういうような意見が実は出ておるのであります。日本の国内で只今論議されております高速道路は、この二本だと申してもいいでしよう。この考え方を更に推し進めて、或いは東北方面の主要山脈地帯にそういうものが考えられるかどうかということになると、これはまあ相当大風呂敷を拡げることに相成るのでありますが、そこで然らばこういう構想がよろしいとして、そういうものを実現するのには一体どうしたらいいのかという問題になつて参りますると、現在の……、これ又お金がないといつて或いはお叱りを受けるかわかりませんが、これは実情でありますが、国内の財源状況から見て非常に遅れた今日の道路整備する、一級国道選定をいたしましても、国内の数カ地点においては、自動車も通れないような国道状況であります。こういうような現在の国道状況の下において、なお且つ公共事業費としての予算は二十七年において僅かに八十六億であります。只今申上げるような高速度道路の必要は感じても、一体その財源をどこへ求めるか、そういう道路国費を注ぎ込むならば遅れた地方、又今日の全国の国道状況を見れば、それだけの資金があるならば早急に全国にこれを配付して、交付して、そうして全国の道路整備すべきじやないか。これには立派な御意見が成り立つと思います。だからこういう国道高速度道路考えるといたしますれば、やはり在来の財源によらないで、別途財源をとる以内にないのであります。而も財源ばかりではない、工法自身の技術の面におきましても、これは画期的な構想を持たない限り、その要請には応え得ないものではないか、そこで一つ道路会社を作つてみたらどうだ、そうして技術とそれから資本を外国からでも導入してでもこれをやつたらどうだ、外国から技術を導入することについては、これは別に異存はないだろうと思います。殊に国内の土木技術というものが非常に遅れている、世界的水準から見ましたら非常に低位にあると、かような現状でありますので、この際積極的に外国からの技術も導入して、日本の国内の土木技術の向上を図り、それに資して行く、これは一つ考え方であります。併し外資を導入することによつて、或いはその道路自身が外国の所有物化されるとか、こういうような考え方を一部で持つておられる向きがありますけれども、私は必ずしもさようにまでは考えません。考えませんが、又国民的感情から申しますならば、外国の技術を導入することは、現在ある国内のその方面に担当の業者を圧迫するということにもなるだろうし、或いは外国資本を導入して外国人が経営するようなことは、これは困るという国民感情も必ずあるに違いないのであります。さように考えますると、構想自身は一応でき上りましても、これを実施に移しますためには、相当各方面からも批判を受け、同時に認識と理解を頂かない限り、なかなか実現するものじやない。かように考えますると、今日の高速度道路というものの完成は一体いつになつたらできるのだ。こういうことについては只今申上げ得ないような状況にある。併しながら現在の東海道線の輸送の輻湊状況から見れば、既存の国道以外にもう一つ近代化された新らしい道路が必要だ。こういう結論には恐らく異存はないだろう。それを今度はどういう方法で実現して行くか、これが今後残された問題じやないか。東京、大阪聞を一会社で外国の技術と資本によつていきなり作るということは、これ又非常な危険があるだろうと思います。場合によりますれば、この路線自身調査完成した暁において、そうして一定の区間を考えて見る。例えば東京から静岡まで一応考えて見る。そしてそれを急速に道路一つ作らして見る。こういうことはこの高速度道路実現の最も手つ取り早い方法ではないかとも考えるわけであります。然らばそういうような具体的なものがすでに交渉がよほど進んでおるかどうかということになりますと、只今はまださような段階にはなつておりません。従いまして私が只今申上げましたことも、第一の有料道路についての考え方と同様にまだ固まつたものではない。こういう点も今後研究して参りたい。まあかように考えておりますので、この機会に率直なる批判を頂きたいと思いまして、私の考え方を端的に御披露申上げる次第であります。
  11. 田中一

    田中一君 住宅問題については次の機会に譲りますが、もう一点だけ伺いたいのは、今の高速度道路は、行政協定に基く裏の約束でやるというような考え方は、約束はなかつたのでございましようね。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 只今申上げる高速度道路は純然たる国内実情に基くものであります。行政協定に基く道路整備お話が出ましたから、大変いい機会でありますので申上げておきますが、行政協定に基く道路整備は、これはもう特別な地域における道路整備の問題になるのであります。この整備の方法として行政協定に基くものは全額的にあの設備資金の五百六十億ですか、あのうちから出て参るわけであります。ところがその路線について申しますと、例えば富士の裾野の演習場これは御殿場から参ります。その演習場の区間は行政協定に基く道路としてこれは比較的建設が容易であります。ところがこの富士の裾野の演習場へ参ります部隊は、或いは座間やあの附近に行くかもわかりません。そういうものが既設の国道を走つてそうして富士の裾野へ参ります場合、既設の道路等の改修等については、その費用については実は投入はされておらない。従いまして私ども折角の行政協定云々というものがあり、そうしてそれがただ単に演習地帯に行くばかりでなしに、既設の国道自身の改装にもそういう費用が投入できるならば、これは地方としても又国としても非常に仕合せなものじやないかということを考えますが、只今予算の建前ではそういうものに計上されないということに相成つておるのであります。従いまして、この行政協定によりますものは比較的工事も遅れており、今後の問題といたしましては、行政協定によつて選定された路線等の整備は別途財源からも支出されておるのでありまするし、まあできるだけ協定の出来上つたものは実施に移したいような気持もいたすわけでありますけれども、なかなか実情はそうは参つておらないようであります。言換えてみますれば、事務当局というか、建設省事務当局考えれば百二、三十億の金が必要のように考えられますけれども、先ほど申上げたような道を作つておりますために、僅か二十億前後の金を投入しておるような次第であります。従いまして先ほども言われました高速度道路一これとは全然構想が別個である、この点御了承願いたいと思います。
  13. 江田三郎

    ○江田三郎君 先ほど河川局長から、河川関係の御説明があつたのですが、大臣に先ずお伺いしたいと思います。今後この河川関係、電源開発ということがいよいよクローズ・アップされて来ると思うのですが、勿論この電源開発というものは、電源開発促進法の建前から見ましても、総合的な国土の開発という見地からおやりになると思うのですが、そういう際にまあいろんな総合的な国土開発ということになると問題がたくさんあるわけですが、その中で私特にお尋ねしたいのは農業問題なんです。直接的にはダムができればそこで水没地域ができるわけで、耕地が潰れる、林野が潰れる、或いは農家が移転しなきやならんというような問題がありますと同時に、この電源開発をやつたために附近の農業に対しまして灌漑用水の問題が非常に出て来るわけで、灌漑用水の問題になつて来ると、一つはまあ灌漑用水の量という問題があるわけです。もう一つは灌漑用水の質という問題もあるわけです。質ということは必要なときに必要な水が要るという、そういうことだけでなしに、農業として温度、水温というようなものがやはり適切でなきやならんわけで、若し水温が非常に条件が違つて来るというと、その農業というものは非常な影響を受けるわけですが、そういうような水没地域の補償の問題、それから灌漑用水との調整というような点について建設大臣の基本的なお答えをお聞かせ頂きまして、あと細かいことは又事務当局のほうにお聞きしたいのですが、河川法なり、或いは河川行政監督令なりによつて、やはり一番の権限は建設大臣にあると思いますので、基本的な構想だけを先ずお聞かせ願いたい。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 江田さんのお尋ねにお答えいたしたいと思います。この河川河川行政という面で在来から言われておるものは、申すまでもなく治水を第一に申しているように思います。併しながら最近の治水方式の進歩と申しますか、近代的工事施行等から考えますると、いわゆる防水対策ばかりでなしに、同時に又水の利用の面からも考えまして、利水ということが非常に大きくクローズ・アップされるわけです。だからその治水をいたします際に、利水と併せて考えるということはこれはもう当然なことになるのであります。この利水ということになりますると、御指摘の電源開発であるとか、或いは灌漑用水の金の問題ということに当然考えを及ぼさなければならない。そういう場合にダム建設によるということが新らしい治水、利水の方法だということに先ず意見が一致しておるようでありまするが、このダムを建設いたしますると、只今御指摘になりましたように直ちに被害をこうむると申しますか、水没地帯ができる、耕作地の問題もありましようし、人家の問題もあるだろうし、或いは又林野の問題もある。これについての補償等については比較的過去の経験から対策等も進んで参つたように考えます。併し今日なお各地におきまして相当の問題を惹起しておることを考えますると、このダムの建設による直接被害についての対策においても、なお考究の余地があるのではないかというように考えて参るわけであります。この点は一つの大きな問題でありまするが、既存の方針を更に整備充実して行く考え以外には只今のところないわけであります。ところが利水の面におきまして御指摘になりましたように水の量を確保すると、こういうことは比較的考えられて参つておる。だがそれにいたしましても現在の地方庁の所在等から見まして数府県に跨がる河川の場合におきましては水自身の確保すら実は問題になるわけであります。同一の県でありましても分水の問題がいつも地方的問題になつて来る。殊にダム建設の場合におきましてそういう事態がしばしば起つておる。これは一つの大きな政治問題に相違ないのであります。従いましてこのダム建設、その後の分水ということについての十分な慎重な扱い方、殊に地方の理解と協力を得るような方法については一層の努力を払う要があるだろうと思います。なお申されました水温、これはダム建設、更にその後の排水、用水溝と言いますか、そういうものの建設等から見ましての水温の問題も最近非常に論議されるようになつておると思います。私の僅かな経験から申しましても、鉄道にいます際に鉄道で発電所を設ける、そういう場合の灌漑用水、これはまあ溝は非常に立派なものができるが、どうも水温が変つて来ておる、こういうような非難も受けておるのであります。これについてはいろいろ工法自身でも考え余地があるやに技術者は申しておりますが、更に十分の調査ができ、そうしてこの調査に基いての結果等を待たないと如何にしたらいいか、只今のところまだ結論は出ておりません。この水温の変化のあるということだけはもうすでに結論としては出ておるというのが現状ではないかと思うのであります。これはもう大体この種の事業の場合においてしばしば起ることでありますが、新らしい工法なり、新らしい技術が発達をしたと申しましても、在来の状態或いは自然の状態に対して非常な変更を加えるのでありますので、只今御指摘になりましたような懸念される事態はどうも起りがちだ、そういう場合においてこれに対する万全の処置を講ずることによつて新らしい工法も生きて参るし、新らしい施設も地方で喜ばれて行く。だから問題は生ずるであろうところの事態に対しまする対策を十分持つこと、又それに対しましては十分の熱意を以てこれが措置を講ずるということが勿論必要じやないかというのがかいつまんで申上げる私の結論であります。      一
  15. 江田三郎

    ○江田三郎君 水没地帯の問題はこれは別問題にしまして、今の水温の問題なんですが、そういうように建設大臣としても影響はあるということは認めておられるわけですが、今までほうぼうでこれは問題を起しているわけです。黒部川でも大井川でもいろいろなところで問題が出ていますが、特に最近の○CIの只見川の設計とか或いは最近工事をされつつあるほうぼうのダムの深層のほうから取入口を作るということになりますと、従来起つた以上にたくさん問題が起きるのじやないか。それからダムの建設地点にしましても非常に奥地であつたものがだんだんと里のほうに下りて来ておりますから、それだけに今まで以上なたくさんの問題が起きざるを得ないと思うのですが、そうしたときに何かそういうことを調査されるものがあるのでございますか。今何か積極的な調査をおやりになつているのですか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 調査河川局でも始めております。同時に又農林省はかねてから作物と水温との関係は十分研究しておるわけでございまして、政府自身の資料としてはあるわけであります。ただ私十分わからないのでありますが、水温の問題は今江田委員の御指摘のように、ダムの坂入方法によつては幾分か考え方が緩和できるといいますか余り弊害を生じないで済むようなことも或る程度やり得るのじやないかということで技術的に研究も続けているようであります。  それからもう一つは水温の変化があるとして、それが将来金銭的に見積り得るかどうか、こういう問題も一つあるわけでございます。こういうものはもつと調査が進んで参りますれば一層明確になつて来るのではないか。で、在来から見まして、例えばダムを作ることによる流木と申しますか流木権或いは漁業権等の問題でなかなか賠償をするにしても金額的計算の困難な問題すらも片付いて参つておるのもあるわけでございます。将来の問題として更に研究が進んで参りますれば特別な処置を講ずる必要ができるかもわかりませんけれども、今日の状況におきましては只今変化は来たしております。それが一体どうなつておるかということになるとなかなかまだ結論が出ておらないように思います。
  17. 江田三郎

    ○江田三郎君 変化の度合ということに対する考え方が恐らく私は私たちが考えておること、建設省当局考えていること、農林省当局考えておること、それぞれ違うと思います。そこでその技術的な問題はこれはあとから河川局長からでも十分にお承わりしたいと思うのですが、すでに影響があることを認めておられるとすれば次々と起つて来るダム建設に当つて、水利権の許可、或いは工事の許可をなさる場合に、そういう起きて来る損害に対する補償であるとか、或いはそういう損害を起させないような、水を温める施設の問題であるとか、そういうことについては何か許可をされる場合にはつきりと指示をなさつておられますか。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今の水温を温める云々はこれは私余り聞いておりませんから、若しそういうことがあるかどうか、これは事務当局があとで補足するだろうと思いますが、ものの考え方といたしますれば、生ずる損害等について損害を補償するという考え方はこれは在来もあると思います。併しその損害補償の範囲なり、或いは方法なりが相当非科学的であつただろうとはこれは容易に想像がつくところであります。だから只今言われるような問題等が具体化して参つて来て、科学的資料に基いての補償を要求されるということになるならばこれは一層話は容易だろうと思います。今日まで許可いたしますような際に、まあ通常生ずべき損害についての補償をすべきことはこれはもう条件として必ず指示をいたしておるわけであります。で、ありますが、今日までの恐らく地元との交渉、関係者との交渉等は非常に大まかなものではないかという感じが私にはいたします。
  19. 江田三郎

    ○江田三郎君 大体そういうような問題は建設省としては当事者に任されるというお考えなのですか。そうだといろいろなところで紛争が起きて、而も今おつしやいましたような余り科学的でない根拠、これは要求するほうも要求されるほうもどちらも科学的でない根拠に基いて紛争を繰返すということになるわけですが、そういう点どうお考えになつていますか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ行政の範囲といたしましては許可いたします際に、只今申すようなその損害の補償を条件にして許可して参るわけであります。一応話がつけばそのまま済んでしまうでありましようが、なかなか話がつかないと必ず建設省である行政官庁に結論を持込まれるものだと思います。
  21. 江田三郎

    ○江田三郎君 そこでですね……。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 只今申上げましたのは誠に不十分でありますので、今河川局長から聞きましたが、知事が大体許可権者になるわけでありますので、建設省としては知事にそれを認可いたしまして、知事がこの補償等の条件を円満に解決するようにという指示を地方長官にいたして許可さしておるというのが実情だそうであります。
  23. 江田三郎

    ○江田三郎君 知事がやつてもですね、これはなかなかかたがつかないわけですよ。現に各地で紛争が起きているのです。そういうときに一番必要なのは一体そういう水温に及ぼす影響というものはどういうものか、そういう点に対してはつきりとした調査をして科学的な答えを与え得るものが何かなくてはならない。現にそういうものがないために今までも大変紛争を来たしておる。そうして同じ政府の中で農林当局建設当局とは必ずしも同じような見解でない。そういう何か専門的な調査をする機関を作る必要が私はあると思うのですが、その前に一体そういう水温に及ぼす影響というものはどういうものか。勿論これは私も多少調べておりますけれども、幸い今日その方面の権威の溝口議員が委員外としてここへ来ておられますから、一度溝口議員に専門的な見解の話をしてもらうことは建設大臣にもこの問題についてはつきりとした認識を持つてもらうことになるのじやないかと思うのですが、それをお伺いして又質問をいたします。
  24. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) お諮りいたします。水温のことにつきまして委員外の溝口君の発言を許すことに差支えありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) それではこれに関して溝口君の御意見を伺いたいと思います。
  26. 溝口三郎

    委員外議員(溝口三郎君) 江田委員から灌漑水温について御質問がありました点に関連いたしまして、委員外の発言をお許し頂きまして有難うございます。この機会政府当局にお伺いいたしたいと思いますのは、ふだん建設大臣は利水事業について、潅流水温のことについて非常に御理解のあることを伺いまして非常に敬服に堪えないところであります。建設大臣のお考えは、十分に利水の方面に努力して、将来研究をして行くということでございますが、これはどなたもそういうことは言われていることで、当然やつて頂かなくては困ると思います。お説のようにこれから先の水資源の開発、これはダム式によつてやる電源開発、殊にこれから先のやつはダム式でやるが、今までのやつは大体水路式でやつてつたので、水温のことはトンネルの問題なんかで水温低下なんかがあつたのですが、一番大きいのは御承知のように黒部川の六千町歩の水温が十度以下に下つて殆んど収穫皆無になつてまつた。農林省でその対策を約六億円ぐらい出してやつている。これは農民が負担してやつている。もう一つ大きな代表的なやつは北海道の忠別川の流域がやはり六千町歩、これもトンネルの影響で十二度以下に温度が下つて殆んど六千町歩が収樺皆無になつてしまつて、現在遊水池等をつけてやつている、それも約六億円であります。これから先にダムを作つて今までのようなやり方でやつて行けば、私はダムができればできるほど農業の方面に非常に影響が大きいと思うのですが、中谷さんが前に指摘されておりましたが、これから先にダムの建設をやつて行けばダムがだんだんに埋没して行つて、ダムの埋没だけならばいいが、それが日本の埋没になるようなことだつたら、総合開発は必ず失敗する。併しこれから先は雪融けの水を一滴でも貯水してやつて行けば、日本ではまだ一千万キロぐらいの電気が起きてもう一千万人ぐらいは悠々生きて行けるのだがら何とか本当の総合開発をやつて行こうじやないかということを指摘されております。私はそれと関連いたしまして、雪融けの水を貯溜して行くためには何度の温度になるか、そういうことについては、水温のことをよく言われますけれども、何度になるのだということになると、私は建設当局のほうは殆んど関心を持つておられないのじやないかと考えるのであります。私はほうぼう旅行しましてダムを調べて数カ所見たのですが、そこの所長さんに伺つても今水温何度の水を出すのかというようなことを伺うと全然それは考えていないという例があるのでございます。幾春別のあの大きなダムがあそこで六十メートルぐらいのところから水を出している、そうして電気を起して、そのすぐ下で、約五千町歩の水田の頭へその水を持つて行く、十度ぐらいの水温の水を水田の頭へ持つてつてしまうような計画をやつて、何度の水を出すかということは全然考えていない。それはもう絶対にやめてもらいたい。計画を変更してもらいたいと私も言つて来たのですが、そういうものの計画を今実際に考えてやり直しをしているかどうか、そういうものを許可するときにも水温のようなことについては何ら指示をしていないのじやないか。現在ほうぼうでダムをこしらえるときに、今の河川の水温なんというものは計つたことは私はないのじやないかと思うのですが、今この新聞を拝見しますと、将来五カ年で四十ぐらいの多目的のダムを作つて発電をやる、発電の工事をやつて食糧増産五十万石ぐらい、この四十カ所のダムについてどういう程度の施設をやつておるか、そういうことについては殆んど考えなしに今までと同じような私はやり方でやつて行くならば、五十万石の増産どころか、五十万石ぐらいの現在は減産をして行くのだということを非常に憂うるのです。今ここに資料をお持ちかどうかわかりませんが、これは是非一つ再検討して頂いて、その結果を又この委員会でも御報告をお願いするように委員長からお取計らいを願いたいと思います。  私は昨年の電力特別委員会で、その当時OCIが日本政府に一億円調査費を出して調査を始めるということを委員会で申上げたのですが、OCIが来て、一体日本の只見川の開発をするときに、OCIが日本の水田農業に対する知識を全然持つていない。それがアメリカから来て調査をした場合に、日本の風土と一致したような計画ができるかどうかは私は非常な疑問なのである。それをアメリカに調査してもらう場合に、本当にそれに協力して、日本の水田農業に影響を来たさないように是非つてもらいたい。政府では十分に気を付けて、発表する場合には検討した上で発表するというようなことを言うておりましたが、この七月のOCIの報告があつた。それについて河川局長のほうでは十分御検討になつたかどうか。あの報告には、OCIの鶴告には、世界のあらゆる場所でやつておる最も優秀な技術、設計を以てやつたのだということを書いておりますが、あの一つずつのダムを見ますと、ああいうものを日本でやられたら、電気をやつてその代りに、例えば阿賀野川ならば一万六千町歩のあの流域というものは非常な減産になつてしまう。若し信濃川のほうに持つて行くならば、信濃川のほうは五万六千町歩でありますが、これも非常な減産になるということになると思います。世界中の一番最新式の設計方法だというので、それを皆金科玉条のように考えておるかも知れないが、その一例として奥只見のダムが百五十メートルぐらいのダムをこしらえた。そうしてその取入口は水面下七十五メートルである。水面下七十五メートルというところは水温は五度になるのであります。五度は氷水と同じである。それをトンネルを通して出すならば、これを、水田の頭の上に氷水をぶつかけたならば皆死んでしまう。途中に手当して大気にあつてから水田に入るならば水温が上がる場合もあります。水温と作物の影響というようなことについては、これは農林省で長い間調査をして、専門的に調査をしておる。OCIのあの設計に対して水量がどうかということは言われるが、そうしてあの計画で千何百億という、一キロ当り幾らかというようなことはやつておりますが、あのままやられたらどつちへ出しても私は農業は非常な大きな減産になつてしまうから、是非ともあれは再検討をして、そうして別途に灌漑水のための治水設備をやつてもらわないと困る。それには一カ所のダムでやはり二億円ぐらいは別途に金がかかるのだが、それをやらない限りはああいうものは、農業方面としては絶対にあのダムは採用してもらうことは困るのだということを今私は申上げておきたいと思います。  先ほど江田委員からお話がありましたが、あのダムがほうぼうにできまして、それを許可するのは知事が許可する。現在でも水温の問題はほうぼうで問題を起しておる。最近でも、どうも水温が低下するから、水温の問題について十分に話合つた上にダムの許可をしてもらいたいということをしばしば私どもは申上げているのですが、それはまだもう少し研究しなければというようなことで保留をしておる。問題を別途に協議しようというようなことで捨てて、ほかしておいて、そうして許可しておるようなことがある。そうするとずるずるべつたりダムができてしまうというようなことである。これから先のダムの設計というようなことについては、一つ根本的に……。金はかかる。今までの一キロ十万円でというわけには私は行かないのだが、それをやらなければ必ず減産を起す。それには建設省大臣関心を持つておられるから、一つあの設計書の記載の要項の中に、灌漑用水の坂入の計画というような条項を入れて、関心を十分に末端の人まで持つような方法を提案して頂かないと、いつまでたつてもこの問題は徹底しないのじやないかと思う。あの昭和十年頃までは農林、内務、逓信三省で河水統制計画というのをやつておりますが、そのときに代表的にできましたのね田沢湖と十和田湖、それが具体的に河水統制計画を三省で立てて、それを実行して行つたのであります。昭和十年頃に田沢湖におきましても、水温の問題があつて、電気を七万五千キロ起して、二千五百町歩の開田をやる。そのために取入れる設備は発電会社でやる。その費用は百二十五万円をくれということになるが、百二十五万円をかけて、そして約十トンぐらい水を入れて、十二メートルぐらいに調節して出す場合に、直ちに角落を三十五枚つけるというような細かい調書までつけてやつたのですが、それが現在の予算では約二億円になるのですが、二億円くらいかけてやれば、田沢湖の下流は、そのあと毎年のようにあつた冷害がなくなつて来た。そして水温も川の水でやるよりも二度ぐらい上つているということになると、この利益は今までよりか利益が出て来る。やりようによれば費用がかかるのでありますけれども、利益が出て来るならば私はその分は農林省方面でも負担してもいいじやないか。ただ補助しろ、補助しろと言うから、いやがつてやらないので、合点が行けば、もう少しいい設備をやれば今までよりももつと水温も上つて、食糧の増産になる。この四十ダムの公共事業費の三百五十億と、発電が七百億ということになつていますが、私は三百五十億で五十万石できるような施設は考えていない。恐らくこの上にもう四十億か五十億の金をかけてやれば、五十万石以上に食糧増産になると思う。そういうことになるなら、その費用は分担をして、農林側と出すということになれば、それが本当の総合開発である。そういうことについて農林省建設省で具体的に河水統制計画をやつたようなやり方は、昭和十年以後は一つも私はないと思う。ただ話合つて話がつかんと、片一方は放つて置いて、認可してしまうというふうなことが現状じやないかと私は思うのであります。そういう点について建設大臣は非常に関心を持つておられるので私は敬服しておるのですが、具体的に今度は建設大臣としても、是非農林大臣と御相談になつて、具体的に将来の方法をやつて頂きたい。差当つてあの大きな只見川の問題でもそうだ。ああいうダムについて、世界的に誇るダムだ、あれはいいダムだというふうに建設省の技術者のかたがたは考えられているんじやないか。七十五メートルで五度の水温が出るなんということは思いも及ばんのではないか。そこらについては研究の資料は十分に私は農林省で持つていると思う。そういう点について将来本当の総合開発ができるように真剣に一つ建設大臣はやつて頂きたいと私は思うのです。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 溝口さんはこの方面の権威者であられるだけに、お話も至極私ども素人にもわかりいいお話をして下さり厚くお礼申上げます。仰せのごとく私どもも水温に影響を持つということ、又問題を起したという話はしばしば伺つておるわけでありますが、この建設省自身におきましても、勿論将来考えてもつと広くしなければならない点があるだろうと思います。只今お話で、それらの点については今後万全を期して参る考え方でありますが、それには具体的にお示しになりましたように、やはり関係省との完全な協議を遂げるということ、これはまあ絶対に必要だと思います。先だつてもまあ河川等について、一元的に統制の要を実は主張いたしたのでありますが、その際にも敷衍いたしたことだと思いますが、同時に専門化し分業化して行くことはこれは当然でありまして、私どものほうでこの建設省工事自身がいわゆる農業土木について十分の知識を持つておるとはなかなか言い得ない。そういう専門的な分業的な面においては大いに農林省意見を取るべきだろうと、かように考えまするし、又農林省自体においても建設省の専門的な技術にはやはり敬意を表して頂きたいように思う。で、問題は専門化し分業化して参りますが、それを合せて総合的に単一の計画を出すところが政府であり、或いは国家なりの仕事のように実は考えておるわけであります。その意味合において、お示しになりましたような両省間の協議、完全な協議を遂げる方法、これを是非ともつけたいと思いまするし、更にそういう場合に専門的の権威者の御意見等をも取入れるような方法を是非とも実施に移すべきじやないか、これは早急にそう行くべきじやないか、かように考える次第であります。  先ほど来申しましたように、非常に素人でありますから簡単な考え方を申しておりますが、まあ水温維持の方法を取入れる方法について、特別な措置が必要でありましようし、その後の施設等においても勿論考えるべきものがあるだろう、その方向がいわゆる損害補償という考え方よりも、一層進んだ根本的な考え方であり、まとめ上げるにも容易な方法ではないかと私は感じます。従いまして、今お話になりましたような方向で今後の問題の処理に当りたい。かように考えておりますので、御披露申上げておきます。  なお今お話になりました北海道の忠別川での水温上昇の措置というものは、どういう工事でありますか、もう実施に移して成績が出ておりますか、如何でございますか。
  28. 溝口三郎

    委員外議員(溝口三郎君) 忠別川の水温上昇の問題は、多分昭和十六年頃に起つたことじやないかと思いますが、そのときは電気会社のほうで小規模の遊水池をこしらえた。極く小規模な百万円ぐらい出して、もうこれつ切りということで話がついておるが、そればかりでは駄目で、現在では遊水池を、完全でもないけれども中ぐらいの、完全にやるには約六億ぐらいかかるので、それは工事中であるわけですが、先ほど申上げたように、あそこでは十二度ぐらいの水温に下る、それが普通にやれば二度か三度上つて現在はそれでやつております。私はもつとこれを変えればまだ水温は上つて来るというようなことができるんだと思う。けれどもそれにはやはり金の問題がかかる。それを現在農民が負担して、国庫の補助がありますけれども、農民が負担することになつておるから問題を起しておる。富山県の黒部川のごとき水温は十五度に下つて、その十五度というのはこれは稲の葉も根も丸坊主になる水温なんです。申上げておきますが、二十度という水温は、これは八月の中頃の朝十時ぐらいに測定した水温ですが、それは青立ちというので一粒も米がならん水温である。二十五度というのは限界水温と言いまして、これは減産になる水温。ところで今普通の河川の水温というのは二十二三度じやないですか。それを先ほど申しましたように七十メートルも下ならば五度になるんだ。水面から三メートルぐらい下ればこれは三度下るんだ。十メートル下れば十二度になるというようなのは、皆貯水池の性格によつてわかつていることです。だからどこら辺から出たらばいいんだというようなことは大体見当がつくと思うのですが、そういうことは一つ考えずに、七十五メートルぐらい下から出して、それで世界で一番誇れる設計書だというものを見せつけられて、一億円もの金を出して、そうしてそれをどつちへ持つて行くかということを言つている。あれにはもう五、六十億の金を出してもらわないと減産を必ずしますから……。そうしてあれはもう少し設計書を直しまして、一番温い水を取るようにしてもダムが二十二もあつて、百六十五キロぐらいの間にトンネルもあるし開渠があつたりするんで、一つずつ計算しますと揚川へ出るときの水温が何度になるかということの見当はつくのでございます。この問題はどつちからしましても、絶対に冷水障害を受けないとは保証ができないと思うのですが、そこで今あの千九百億の上にもう百億ぐらいの農業用のために費用を出せと言つても、一キロ当り七万円かかるからもうできないというようなことになつて、今までの慣習からも水温の問題は、そう言つても電気会社のほうとしては非常に痛いのじやないか、だから話がつかないという点があるのでございますが、そういう点について新らしく農業方面の増産をやるというようなことにして建設大臣考え頂きたいのですが、発電施設やなんかについて特別なそういうものをやる場合に、何かその費用の一部分の補助を出してやるというようなことを是非考えて頂かんと話がつかないと私は思うのですが、先ほどの田沢湖のような百十五万円だか、その当初は電気会社が負担したのですが、河水統制計画などでいろいろ分担してそういうことをやつて食糧増産に随分なつておるんです。そういうものについては将来は私は農林省で出すべきだということは農林省には言つておるんです。そこの限界に達しない分はただ電気会社に出せといつても今までそんなことは考えたこともなかつたんだからというので大体拒絶するというようなことに今なつているんでございます。だからその点について呼水でもいいから幾らかの補助金は出すから是非総合開発のためにやつてつて行くようにという考え方一つつてつて頂きたい。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 有難うございました。
  30. 江田三郎

    ○江田三郎君 今問題は溝口さんがはつきり述べられたのですが、私は具体的にもう一つ大臣にお伺いしたいのですが、これは只見川の問題もありますが、例えば私の国でもやはり旭川に湯原ダムという問題があるわけです、これなんかも取入口が三十五メーター下になる、それから隧道がずつと長くなるのでありますが、結局その最後の隧道から出たときにはすぐそれが灌漑用水になる、そうならざるを得ない、そうするとどう計算してもダム内の水温、それから隧道の中の温度の変化、こういうものを計算してもどうしても十三度から十五度ぐらいの水が出て来るわけです。そこに百何十町歩という耕地があるわけです。これは今も溝口さんの言われましたように、限界温度が二十五だということになれば、二十五度でも枯死するというようなことになれば、これは全く大変なことになつて来るわけです。そういう問題があるからして、今度の電源開発促進法に基きまして関係農民が意見書を出しておるわけです。そういうような意見書が出ておるような問題は、具体的にどう処理されるか、これはもう従来の例で行くと、うやむやのうちにやられちやつて、特に電気をやらなくちやいけないのだということによつて、大きな世論の圧力をかけられて、その関係農民というものは、知らん間に押し潰されてしまうのです。今度は幸いにしてああいうような電源開発促進法によつて意見を述べるというような途が開かれておるわけですが、そういう意見が出ておるような場合には、これについてはつきり審理をして、然る後に工事の認可を与えられるのか、或いはそれは従来通りつて置いて、いきなり工事をどんどん進めて行かれるのか、この点はどういう工合に考えていられますか。
  31. 米田正文

    政府委員米田正文君) 只今お話は、実は我々のほうで許可をいたしますときには、知事から上申して来たものに対する許可をいたすときには、それぞれの項目についての条件をつけております。例えば灌漑用水等の支障を生ずる場合には、それに補償をすることというような条件をそれぞれつけてあります。それによつて知事が現地において解決をすることに建前がなつております。まだ今まで具体的にそういう問題で我々のところに来たことはないのでございますけれども、そういう先ほど来のお話のように、実は特に溝口さんからお話が出た水温に関する問題について、我々のほうでも研究を始めておりまして、農林省のほうでも相当資料をたくさん持つておられると思いますので、いずれ我々のほうも一応の書類を作り、農林省の資料を一つ見せて頂いて、そこで協議をいたして行きたいと思いますが、要するに私ども今までのやり方として底現地で知事の裁量に一任しておつた形でございます。それが我々のところに上つて来た場合には、一つこれは個々の場合についていろいろと条件が違うと思いますので、それぞれについて考えてみたいと思います。まだ具体的の例は持たないものですから、今ここではつきり申上げかねます。
  32. 江田三郎

    ○江田三郎君 だから今私が言うのは、具体的な例になつておるわけです。そういうものが知事のほうへ任せておかれるような考え方のようですけれども、併し知事では解決がつかないのです。若しつければこれはもう従来と同じようなことで、従来やつて来たことが知事の解決方法なんですよ。どこでもやはり地方によつて大きな圧力をかけられて、農民の問題なんというのはそつぽを向かれてしまつておるんですよ。だから知事に任すということは、今溝口さんのおつしやるようにたくさんの弊害を生んで来ておるわけです。黒部でも大井でも北海道でもそういう問題を起して来ておるのです。そこでこういう意見の申立をしたということが具体的な事例ですから、意見の申立があれば、それを今おつしやいましたような或いは建設大臣のこの心がまえをさつき聞かしてもらいましたが、そういうような考え方から、先ず農林省と協議をして、専門家を交えてちやんと調査をして、具体的な答えを出して、それからこの知事の許可に対して、認可を与えるのか、或いはもうそういうことは放つて置いて、もう知事が来さえすれば、何がしか水の温度についてはよく考えろ、何ぞ補償してやれというようなことでおやりになるのかということです。
  33. 米田正文

    政府委員米田正文君) その問題についてはそれぞれ措置をいたしておつたのでありますが、例えば銅山川というのがございますが、あのときには我我のほうから農林省に行きまして、農林省と打合せをした上で、あれは表面水を取るのがたしか四カ所ぐらい取入口ができておる。その他にもありますけれども、そういう特に問題になつた点については、今まで協議をしております。併し一般の場合についてそういうものが予想されなかつたような場合については、一般的な条項として灌漑用水等の支障を来す場合には補償をするという条項をつけてございますが、若しそういう損害を、実害を受けたならば、私は知事をしてその補償の調停をきしたいと思つております。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今江田さんの言われた意見書が出て参りますれば、十分慎重にその意見書のあり方について検討を加えるのは、これは当然だと思います。思いますが、まあ先ほど来私自身もこの水温についての在来の取扱方は、誠に不十分ではないかという感じを実は率直に受けたわけでありますから、まあ率直に御披露申上げておるわけです。そこで或いは過去の意見書等が十分その慎重を欠いておるものがあるかもわからないというさような虞れを多分に感じております。率直に申上げます。まあ問題は、今日のこの委員会におきましても非常に明確にされ、又事務当局におきましても最近この水温の問題が非常にやかましい問題になつておることについて、関心を持つておりますので、建設省自身もすでに調査を始めたと申しておりまするし、工法等についても格別な工夫をしたいと申すし、更に具体的には溝口さんがお示しになりましたような主務官庁である農林省とは十分な協議を遂げたい、こういうことを申しておりますので、まあ今後の問題といたしましては対策において一層注意をされるものじやないか、かように考えます。従いまして旭川でございましたかね。その附近の過去の意見書等の取扱方はどういうことになつておりますか、もう少しよく調べさして頂いて、御返事をするようにさして頂きたいと思います。
  35. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は具体的に旭川の問題を言つたんですけれども、これを機会に私たちが申上げたいのは、又溝口さんの考えもそうだと思いますが、この問題を契機に、今大臣が言われましたような、一つ大きな前進をして頂きたいと思うのです。何にしましても、今後どんどんとこのダムができて行く、而もそのダムの設置地点というものは、附近に耕地のたくさんある地帯へ地帯へと下りて行くわけですから、そうなつて行くと、これは大変なことになつて行くわけです。これは補償では問題は片付かんわけです。長期の計算をした場合に、一体農業による損失と電気から得る利益と、どつちがどうかということにもなつて来るわけです。国土の総合開発ということになると、補償でなしに、やはりそこからもう一つ前進した本当の総合開発にならなければならんと思うのですよ。これを機会一つ大臣のおつしやいましたようなお心持で、具体的にはつきりと何かの調査機関なり、そういうものを作つて頂きたいと思います。なおいろんな事務的な問題があるんですけれども、これは又別な機会に……。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 只今の御意見至極御尤もであり、同感でございます。
  37. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) お諮りいたします。午後も委員会を続けますか、或いは本日はこれでやめますか。
  38. 江田三郎

    ○江田三郎君 電源開発調整審議会のほうの管轄の経済審議庁のかた見えておりますか。見えておられれば、これは大臣のほうは私はないのですけれども、河川局長とそれから経済審議庁のおかたに、なおもう少し質問したいと思います。
  39. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) 別に大臣に御質問なければ、大臣御用があるそうですからこれでようございますか……それでは、有難うございました。  経済審議庁から佐々木計画部長が見えております。
  40. 江田三郎

    ○江田三郎君 じや委員長、もう少しやつてようございますか。
  41. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) よろしうございます。
  42. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつと河川局長さんのほうと、審議庁と両方に関係しておると思うのですが、特に電源開発促進法のことについて多少お尋ねしたいのですが、この促進法によると意見の申出があつた場合に、国の行政機関の長が協議をする、必要ならば総合調整の申出によつて、電源開発審議会の議を経て総合調整するということになつておりますので、一体この総合調整をやつた結果は、結論はどういう強制力があるのですか。そう強制力がないのですか。
  43. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 調整審議会の法的な性格は、飽くまでも諮問機関ではございますが、審議会令の第二条に、審議会の議題になつた事項を所管する国の大臣が、即ち行政機関の長が審議会に出席しない場合には決議をしてはいかんという規定を設けまして、そうして例えば水利権の問題とかは建設大臣が出ないときはきめてはいかんと、逆に申しますと、その審議会で大臣の御出席を願つてきめたものですから、きめたものは大体実行に移せるというふうな、実質的には一種の議決機関のような審議庁でございますので、きまつたものは大体行政処分に付するように従来はなつております。今まで五回開かれたのでございますが、きまつたことは大体やつております。
  44. 江田三郎

    ○江田三郎君 そういう際に、例えば水利権の問題ならそれはそれでいいでしよう。ところが損害賠償の問題ですね。これは賠償するのは事業主がやつているわけで、それに対する強制力というのはあるのですか。
  45. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 電源開発促進法の七条で、公正な賠償をしなければならんということは、特に参議院で御主張になつてつておるわけでございまして、電源開発審議会のほうでも再三委員からそのお話がありまして、先ず審議会として補償の基準をはつきりしたものを作つたらどうであろうかということで、今通産省の原案を中心にいたしまして各省間で審議中でございます。従いまして審議会として補償の基準がきまりますれば、開発会社と言わず或いは九電力と言わず、電気の担当者はその基準に則りまして、具体的に問題を解決して行くというふうな手順になろうかと思います。そういうふうになりますと、それほど補償に関する問題は、勿論ケース・バイ・ケースが起きて来ると思いますけれども、従来ほど紛糾した問題というのはなくなつて来るのではなかろうかというような感じを持つております。それから補償の手段といたしましては、現在考えているところでは昔からあつたように革に金銭賠償というものできまるというのでなくて、できるだけ換地その他を与えまして、本人の生業というものを将来維持向上さしてやるといつたような、経済環境を作り上げてやるというのを主眼にして基準を作つておりますので、そういう点を併せ考えまして、大体この問題も合理的に解決して行くのではなかろうかというふうに考えます。
  46. 江田三郎

    ○江田三郎君 私事務的な取扱方をお尋ねしますが、例えば損失の補償について意見の申立が出るわけですね。基本計画が発表されて一カ月ぐらいすると出て来る。而も現在はそういうような損失補償の基準というのはまだできていない、工事は非常に急ぐ、これは日本の電気事情から急がなければならん、そういうときに問題はどう解決されますか。
  47. 米田正文

    政府委員米田正文君) 事務的にお答えいたします。  水利権の許可のときに、先ほど申上げましたように、種々条件を付けて、例えば灌漑その他の水利及び農業に支障を来たす、又その虞れがあるときには、許可を受けた者は関係者と協議し、水路の改築その他の適当な方法を講じなければならない。例えばこういう条件が付いております。そうするとですね、今の行政権の問題になつて来るわけです。そうすると最後に来まして、次の場合には何々県知事は許可の全部又は一部を取消し、又は工事の変更、中止を命ずることがある。こういうふうに謳つております。その中に許可を受けた者が法律、命令、又はこの命令書、若しくはこの命令書に基いてなした処分に違背したときと、こういうふうにしてあります。強制力は、水利権許可のときの条項に違反した場合には、許可権者の知事はこれの取消し或いは一部取消しをすることができる、こういうふうにしてあります。
  48. 江田三郎

    ○江田三郎君 それでは本当は片付かんのですね。
  49. 米田正文

    政府委員米田正文君) まあ一応の趣旨としてはこういう趣旨で……。
  50. 江田三郎

    ○江田三郎君 だから順序としては水利権の許可があつて、それから又追つて工事の許可があるわけですね。そうして水利権のときに今のようなものをつけておられる。そうして工事の主体のほうは今度工事の許可を求める、そのときまでに、許可を求めて来ているけれども一向今おつしやつたような問題は片付かないわけですね。片付かないから意見の申立をするわけです。ところが意見の申立はするけれども、例えば損失賠償について言えば、この審議会としても何らまだ基準ができていない。今鋭意作つている最中だということになると答えの出しようがなくなつて来る。そうすると工事は急ぐからまあそれはその次ということでやめてしまうのじやないのですか。
  51. 米田正文

    政府委員米田正文君) それは従前はそういう傾向が非常に濃厚だつたのです。併し最近の顕著な傾向は、なかなか現地の者が、地元の者が納得をしないと工事をさせないというような傾向になつて参りましたから、昔より大分地元の力が強くなりまして、それが承知しないとなかなか工事にかかれないというわけであります。まあ特別の場合には今おつしやられたような危険がないとは言えないと思いますが、大体の傾向としては最近地元の要望が通らないと、地元が納得しないと工事にかかれないような一般の傾向になつてつております。
  52. 江田三郎

    ○江田三郎君 どうも局長の御答弁は全部地元へ委譲されてしまうので困るのですが、もつと私は建設省としてはつきりとした態度を持つて頂きたいと思います。そういうような、この水利権の許可をした場合の条件が満たされていないとするならば工事の許可は与えない。それまでにはつきりとそういう問題について解決をつける。具体的に解決がつかんでも、然らばこういうふうな組織によつて協定して行こうというようなはつきりしたものができるか、何かやらないとやはりうやむやになつてしまう。私が今さつき申しました災害の例や何か見ても、そういうような方向に行きつつあるので非常に心配しているわけです。それで一つ局長のほうでももつとはつきりしだ態度をとつて頂ぎたいと思うのです。而も従来、私露骨に申しますと今溝口さんは非常にやんわりと言われましたけれども、この建設省の例えば水温なんかに対する問題の捉え方というのは、どうも本当ではなかつたと思うのです。それと同時に損失補償の問題についても、本当にまだ総合開発全部のものを納得させるというような努力というものはなかつたと思う。そういう点について、幸い水温の問題について、ここで大きな前進をされるということを大臣が言われるならば、やはり損失補償の問題についても、もう少しきつぱりとした態度を持つて臨んで頂きたいと思うのです。そうでなければ、これから何ぼかダムをおやりになるわけです、何個所かでこの問題が紛糾すれば、将来起きて来る問題をことごとに紛糾させることになると思う。ダムというものができれば騒がなくちや損だという気分さえ与えるかもわからんと思う。そういう点について、特に建設省のほうで、これに出ているようにたくさんのダムをこれからおやりになるというのなら、もうそろそろはつきりとした態度をおとりになつても遅くはないと思う。
  53. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) さつきちよつと言い落しましたのですが、今までの傾向と違いまして、促進法が出ました以後の一種の前進と申しますか、状況を申上げますと、さつき申しましたような補償の態度で臨んでおるわけでありまして、従来でありますと、府県が中心になつて許可その他手続を扱つておつたわけですが、今度の解決方法はさつき申しましたような改築その他集団移転といつたような工合になりますと、一県の問題ではなかなか片付かんようなことになつて参りますので、異議の申立がありますと、又なくても当然やらなければならんのでありますが、各省間が必ずその問題を全国的な視野で討議するというような恰好になるものですから、例えば通産省のほうに問題を申込んで来た場合には、必ず農民の問題であれば農林省でやる。農林省では自分の立場から如何に解決するかということを相談いたしまして、その結果どうしても両省の話がつかんということになりますと、審議庁へ持つて参りまして、審議会で決定してやるという手順になつていますから、従来の業者対農民の話合いで以てきまつてしまうということから見ますと、随分この点は何と申しますか、改善されつつあるものであります、従つて今後も改善されるのじやなかろうかというふうに考えているのでございます。
  54. 米田正文

    政府委員米田正文君) 今事務的にこういう条項があるというようなことはお話申上げた通りで、やるとすれば、若しそれを現地の問題が解決しないような場合には、知事に取消しを命ずることもできます。だから我々としては、いよいよ現地でそういう事態が粉砕してまとまらないということになれば、強硬な処置もろつ意思はございます。ただ知事にその許可権を与えておりますので、極力まあ現地でやらせるという建前をとつておりますので、ちよつとお話があつたような、現地に任せ過ぎているという御意見があつたかも知れませんが、そういうふうにどうしても行かん最後の場合には、強硬措置もとるつもりでございます。ただ我々も、今までの電気会社の関係の取締のみならず、今後はこういう或いは電源開発会社で多くのダムをやろうといたしておりますので、先ほどお話がありましたように、特に溝口さんからの水温の問題については、これは私どもも、非常に深刻な問題だと感じております。で、この問題は今後も大きいダムができますので、特に影響が多うかろうと思いますので、真剣に一つこの問題は解決しなければならん。で、そういう方法についても、農林省当局協力を得たいと考えております。
  55. 江田三郎

    ○江田三郎君 一つしつかりお願いします。私もつとお聞きしたいことがありますけれども、大体電源開発促進法が今の第七条のほうでも公正な補償をすることに努めなければならんというような、何か間の抜けた法律なんですね、そういう法律の下で審議会あたりで、本当に経済審議庁なりでおやりになるのは骨が折れると思うのですが、併し今おつしやいましたように、一つ特に今まで農民の問題が非常に置き忘られて来ておる。而も今後大きなダムであればあるほど、而も里へ下りれば下りるほど、そういう問題はたくさん真剣に考えなければならんことであると思いますので、しつかりお願いいたします。
  56. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後零時二十六分散会