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説明員(
横田信夫君)
只今お尋ねになりました七百三十四号から七百四十五号の十二件は、
架空の
名義で
支払つてこれを濫りに使用したものという問題でございます。これを具体的に申上げますと、わかりやすく申上げますと、こういうことであります。
いわゆる俗の言葉で切投げと申しておりますが、
直営工事でやるべきものを、
直営工事をやらずに、正式な
契約をせずに、事実は
請負工事に出しまして、
報告は
直営工事でや
つたということにして
報告する。そうして
請負業者に金を払う。この金を払うだけでなしに、このときに浮いた金をほかに廻して、その金を不当なところに
使つたと、
架空な
名義で支払いこれを濫りに使用した、こういう問題が十二件
会計検査院から御指摘を受けたわけですが、このうち私たちのほうの自己の
会計監査で見つか
つたものも
相当あります。それから
勧告によ
つて会計検査院がなお詳しくお調べにな
つたという状況もございます。
そこで一体このような切投げというようなことをどうしてや
つたかという
原因でありますが、こういうことをやりました
原因につきましてはいろいろあるわけでありますが、先ず第一には、そんな必要の場合には
請負工事をさせたらいいじやないか、それをどうして禁止したかという問題が一つ起るわけです。ところがこれにつきましては大体当時、
本省、
只今公社にな
つておりますが、当時
本省におきましてこういう
直営工事は大体
電気通信、いわゆる電気的な
仕事は全部
直営でやり、いわゆる土木的な
仕事のみで電気的に
関係していないことは
請負わしてもよろしい、電気的なものは全部
直営でやるという
方針をと
つてたわけであります。この
方針をとりましたにつきましては、実は当時
司令部、
GHQのほうから大分強い
勧告があ
つたわけであります。
併しその
GHQの
勧告があるからといいまして、ただ「
イエスマン」的にそのまま受けたのではなくして、理論からいうと正しいのであります。
アメリカあたりでも電気的な
工事は大体
直営で、A・T・T、
アメリカン・テレフオン・テレグラフ・カンパニーという
電話会社が大体
直営でいたしております。併し
直営の
アメリカでも、その
電話会社の中の別の
専門の
会社がや
つておるわけです。これが理論的には正しいということが言えるわけです。そういう
意味で、電気的なもの、これは
直営で行くと、
土木的工事は
請負に出してもいいと、こういう
方針をと
つております。
併しそこに
相当無理が事実上
現場においては
相当あ
つたということは確かに言えるわけでありまして、季節的に或る
工事が非常に嵩まる、非常に
進駐軍工事あたりで短期間に急がれる。或いはその
工事現場において人が足らない、それから物の持合せもないというような場合には、これは
直営として
相当むずかしいからとにかく
請負に出せ、併し
通牒が
直営で来ておるから
直営という形で結果の
報告をしておけと、こういうようなことに相成
つた面もあるわけであります。そこでこれについてどういう対策をその後講じて参りましたかということでございますが、私いずれにいたしましても、こういう切投げ
工事、そういう
請負工事は
請負工事として
報告しろと、嘘を
報告するということは非常に悪いことでありまして、切投げ
工事を、いわゆる隠してやる切投げ
工事を一切
報告しろ、全部真実の
報告をしろというきつい
通牒を二十六年四月二日に出しまして、それから又一面
請負工事の幅をどんどん拡げて、場合によ
つてそういう電気的な
工事であ
つても
請負に任してもよろしい。
請負に出したほうが安くつくし、又その
工事を進捗するのにはよろしいという場合は出してよろしいというように
中央の
方針も変えて参
つたわけでございます。殊に二十七年度以降はその幅を非常に拡げて参り、むしろ
請負工事を全面的に認めまして、
請負工事が安くつくなら
相当請負工事を活用してもよろしいという
請負工事の
方針を変えて参
つたわけであります。そういうようにいたして、必要な場合に飽くまで
直営工事一本でなくして
請負工事にしてもよろしいという線をと
つて参りましたので、今後におきましてはこの
請負工事一本でやるという場合に嘘を
報告しなければならんという問題は今後なくなろうかと考えております。
次にこの問題で隠した切投げ
工事をや
つておいて、その金を不当な方面へ充当いたす。一体どつちのほうに充当いたしたかという問題があるわけでありますが、これもこの範疇を分けて申しますと、第一に充当いたしておりますものは、
建設本部のほうの
人夫賃に充当しておる。これは
本部の
人夫賃と申しますのはどういうものかと申しますと、
本部においても
成規の人間はおるわけであります。併しこの
本部のほうの
仕事に
相当波がありますし、それから又殊に
官庁経理のときには年度末に重なることが多い、そういう山のときに
人夫を、
臨時事務員を使う。ところが大体
本部あたりの
定員の枠で
相当きつく縛
つておるわけで、そういうものを使う余地がひどく制限されておる。そこで安易に就いて行く一つの傾向があ
つて、
工事現場で
臨時人夫を
使つたことにして、それを
本部で
人夫を
使つているその今
夫賃にこれを払う、そういうので
架空処理をや
つておる、これについてどういう
措置をや
つてきたかと申しますと、実は
臨時人夫というものが、場合によ
つて本部でも必要があれば、本当に止む得ないときは
使つてもいいんじやないかということを、その後どうしても仕方がなければ、これは
人夫という
費目があ
つてもよろしい。併しこれは本当にそうルーズに、
経営を楽にするのに使うという
意味であ
つてはいかんわけでありますから、それで
現場の
工事人夫を
本部へ使うということは一切やめろということを、
昭和二十六年八月二十九日
通牒を出しまして、それ以来厳重にこれを遵守いたすことにいたしております。この
臨時人夫問題はほかにもいろいろ問題があるわけでありますが、一応
定員というもので枠をしば
つておりますので、
臨時人夫は現在もまだおります。併しこの
臨時人夫というものは二カ月毎に……、長いものも
相当あるのでありますが、二カ月毎に
契約を更新しておる。これも
相当そういうふうに事実上長くおるものを、急に首切るわけにもいかんという問題もあるわけでありますが、併しこれは
経営上にもできるだけ非常に人を少なくして行こうという場合において、実質上の人員でありますので、
経営上はこれをしめて行くということに
相当努力いたしております。
次にどういう
費目になお充当いたして行くかと申しますと、第二には、
現場の
工事材料等に充当いたしております。
現場の
工事材料に充当するのは当り前のことでありますが、
工事材料等に充当するということはどういうことかと申しますと、実は物もどういう物が
本省調達品で、どういう物が
通信局調達品で、
現場はどういうものしか買えないと、こういうふうに定めておるわけであります。
本省調達品、
地方調達品いわゆる
通信局調達品、それから
現場調達で、これは
物品購入の方式としては現在でもと
つておりますが、このほうが正しいと思います。
大量購入で
中央で購入して
行つたほうが経済的であるという場合には、いわゆる
本省購入、
通信局購入、それから
地方で数量を或る
程度まとめて
行つても、
本省で運賃そのほかを考えて行くと、
地方でや
つたほうがいい、これは
地方調達品にしております。
現場のどこで
買つても、余り
値段が変らないという雑品のようなものは、
現場購入品にしておる。その
調達をしておる
品物の分類をいたしておるわけであります。これは現在も採用いたしておる制度でありますが、ただこれも原則的には正しいけれ
ども、その
現場で僅かの
品物が来ないために全体が動かない。而もそのものがとにかく町にあるというようなものもあるわけであります。それを急ぐ場合にはそういうほうに
物品要求をしましても、なかなか来ないということで、
要求もせずに
現場で
買つてしま
つてやるものは、
現場で買うものは幾分
値段が高くな
つて来るのも止むを得ないわけでありますが、そういう場合に急いで
買つて来る。そしてやはりそれを
買つたということにせずに、今の切投げ
経理からそれを出している。こういうことをや
つておるわけであります。この点も今もやはり先ほどから申しましたように、
物品といたしましては
中央で購入するもの、それから
地方の
通信局で購入するもの、
現場で購入するもの、これが現在も同じような体系をと
つておりますが、ただその後
措置を講じましたことは、今後そういう嘘のことをやるな、併し場合によ
つてはそういうように分けた
地方調達品本省調達品であ
つても、どうしてもこのうまく行かん場合には、この物はどうも来そうがないからこれを先に
買つてやるぞということを言
つておれば許可をする。それを嘘をつくなという
通牒を
昭和二十六年六月三日に出しまして、どうしても必要な場合にはこれを承認するから、嘘のことを言うなという
通牒で、その後こういう問題をなくしようという手段を講じております。なお
物品以外におきましても、これは本
委員会におきまして昨年度二十四年度の
決算委員会で
相当御
注意を受けましたわけでありますが、いわゆる各自
現場におけるところの
箱番、いわゆる
監督者詰所、それから
監督員詰所、
箱番、そういうものは或る
程度必要だ、これを又嘘を言うのはいかんということで、大体この
工事費に対する
比率を……、どういう
工事に対してはどの
程度使つていいんだという、この
基準を示しまして、それでや
つてもいいんだ、而もそう無駄を使つちやいかんのでその
比率を示しまして、どういう
程度の
工事にはどの
程度を、
監督員詰所なり
箱番なりに必要な
経費を
使つてよろしいと、こういうことの指示をいたしまして、これが
昭和二十六年の八月に出しております。でそういう
意味でとにかく
架空処理をやるなという
通牒をいたしまして、その後ずつと来ております。従いましてこういう事故はその後だんだん少なく
なつおります。し、まあ今後は絶無を期してや
つておるわけであります。
なお、その次にどういう費途に
使つておるかと申しますと、いわゆる
部内外折衝費と申しますか、
関係の人と一緒に飯を喰う、或いは料理屋で飯を食うというようなこともやる。そういう
経費に充当いたしておるわけでありますが、これはどういう場合にや
つておるかと申しますと、やはり
工事現場におきまして起工式がある、完成式がある、或いは土地について、或いは道路の
関係について、道路とか土地とか建物、橋梁或いは地下工作物、或いはそういうものを移転してもらう必要があるというような場合に、そういう管理者といわゆる懇談会をやるというようなことを
現場でやる。これも事実或る場合には必要であります。でそういう
意味におきまして、これを全然やるなと言
つても事実上むずかしいと思う。併し当時はこれは
費目になか
つたという点があ
つたわけであります。そういうことに充当いたしておる。それから
部内のほうにも起工式の場合など暗に
部内のもの同士、或る
程度、
部内のものも一緒に入
つて一ぱいやる。それから設計の打合せ、それから
現場においての工法上の打合せ、そういう場合などにも一ぱいやる。こういうものにも
使つておる。この問題はルーズにやるということは非常に
経営上も困る問題でありますし、又当然国といたしまして、国の
経費を無駄に使うということにもなりましたので、非常によろしくないことでありますが、併し或る
程度はこれも必要なことがある。これを絶対や
つてはいかんということになると、又
架空処理をやらざるを得ないという点も起りますので、これにつきましても
昭和二十六年七月十八日に、起工式、完成式、それから部外の折衝費というものについては、これ又
一定の
比率を設けまして、
一定の
基準を設けまして、こういう
程度はや
つてよろしい、それ以上はや
つてはいかんという
基準を設けて
通牒をいたして、それに則
つてやらせる、
部内同士でやらせる場合は茶菓費以外は出してはいかん、茶菓費の
基準はこれだけという
通牒を出しまして、この無駄使いをその後締めるようにと、こういうようにいたしております。
なお、その次に充当いたしております
経費は、
現場の人間のいわゆる士気高揚のために、まあ待遇ということではなくて、
現場のものの士気高揚のために慰労費とか、諸手当とかいうようなものを出しておる。いわゆる
成規の手当でないものを出しておる。こういうことであります。これにつきましては、この
給与の低い点もあるわけでありますが、同時に
工事といたしましても、
工事を予定期間内にいわゆる突貫
工事をやるというような場合、或いは夜間作業を非常に長期間継続してやろうというような場合、そういうような場合にやはり
現場の
工事長としては、部下を使うために何らかこの激励をしてやらんとうまくいかん。それで併し正式には出す道がないというようなことで、これを充当いたした。これにつきましては、どういう手段を講じて参りましたかと申しますと、この諸手当というようなものは、
成規のもの以外はやはり出してはいかん。併しこれを長期夜間作業をやる場合、夜
相当長時間に亘
つて食事時簡をこえてなお居残りをさすというような場合に、補食費を或る
程度や
つてよろしい。いわゆる補食費というのは、物を
買つて食事を食わすわけです、これは元来は食事そのものをと
つて食わしてやるわけですが、場合によ
つて、それに
相当する、一食五十円、低いのですが、一食五十円の単位でそれをや
つておる。食事をと
つてやるのが本当でありますが、五十円で勝手に食えということをや
つてよろしいということにいたしております。で、この五十円につきましては、現在これでは
ちよつと無理だという声も上
つておりますが、一応それでや
つて、それを隠した形でやるなということの処置を講じて来たわけであります。
以上のように、この
架空の
名義で
支払つてこれを濫りに使用したと申しますのは、以上のように、切投げで
直営工事でないものを
請負工事にやらしておきながら、
直営工事のような形で
架空の
経理をいたした、而もその
経費を今のような
使途に又
架空で充当いたした。その中には必ずしも必要不可欠だと思われない
経費、これは無駄な
経費にも
使つてお
つたようなものもあるので、無駄な
経費に
使つてこれを国に損害を与えたというようなものもあるわけであります。そういうものにつきましては、国に損害を与えたと認めるべきものにつきましては、弁償命令を講じて来ております。で、資金前渡官吏の樫崎、或いは大橋
工事長、佐成
工事長、或いは前島
工事長、こういう人々に対しまして、
総額約百三十万円くらいに上
つておる金額を国家、国に損害を与えたものとしてこの弁償を命じて、そのうち、これは分納にな
つておりますので、まだ全額は入
つておりませんが、少しずつこのおのおのの人が払
つて来ておる、こういうような情勢であります。一応……。