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政府委員(天野武一君) 七十七号について申上げます。これは
会計検査院の
検査報告にございます
通り二つの問題がございまして、前段のほうは神戸の刑務所で
昭和二十五年四月丸紅株式会社から
購入した亜鉛引鉄線四十九屯四の代金としてその四月に百八十万円を
支出したことに
なつておるが、これは実際は丸紅に渡
つた支払いではないので、そのうち百九万六千二十九円というものを二十四
年度刑務所収入の収納未済の額に
充当いたしまして日本銀行に払込み、残りのものは
現金でこれを保有いたしまして、一方その丸紅に対しましては五月から十二月までの間に数回に亘りまして
手許に持
つてお
つた金、それから前
年度収納未済であ
つたもののうち、他の方面からの回収金のうちから百四十七万五千円を払いまして、そうすると
あとまだ三十二万五千円というものが残りますが、これは丸紅に実際払わなくていい金であ
つたのでありますので、二十六年三月に至りまして別途二十五年七月に同会社に対して過払いしていたものの回収すべき額に
充当して歳出の
金額に戻入れたという事実でございます。この前段の点はここにございますように当時神戸の刑務所は非常に内部の
秩序が紊れておりまして、そうしてこの事実は本省の矯正局から巡閲に参りまして発見したのでありますが、作業
課長、もうすでに
あとで退職いたしました作業
課長が作業収入を挙げろということを非常に中央から強くその成績を求められるために、丸紅に対しまして払うということで
小切手を振り出しておいて、その
小切手を
現金化いたしまして、それで実際に丸紅に払うことをやめて二十四
年度の刑務所収入の収納未済額のほうに
充当して、それで五月から十二月までの間、これは五回に
亘つてや
つておりますが、そうしてほかのほうから収納した
金額を丸紅のほうに百四十七万五千円というものを払
つた。これは百八十万と言いますのはそれだけ丸紅に払わなくていいのでありますが、丸紅に対しては百四十七万五千円でよか
つたのでございますから、残りの三十二万五千円というものは又歳出のほうに戻入して、
あとに戻したということでまあ帳面のほうは綺麗に
なつたということをや
つたのであります。この事実は私どもの立場がらいたしますと、こういうふうに
小切手を振り出しておいて
現金を
手許に持
つておくということは最も戒めておる、又間違いの起しやすいことでございますし、非常にいけないことでございます。一作業
課長がこういうことをやるということはこれは実際出納官吏でございませんし、最も禁じておることでありましたが、かようなことが行われてしま
つたのであります。
それから次の後段はこれは又別の
職員でございますが、二十五年五月に
架空の
名義で
物品購入代金二十四万二千八百三十円を出しまして、そうしてこれを二十四
年度刑務所収入の収納未済額のほうに
充当したのであります。これは当時刑務所の中に不正を働く者がおりまして、その不正と申しますのは明石にあります日本農具株式会社というのがございます。この日本農具株式会社が農機具の製作をこの神戸刑務所に頼んでお
つたのであります。その当時担当技官がおりまして、その担当してお
つた技官が日本農具株式会社からその代金を受取りまして、そうしておいて、実際それは詐欺で起訴され、
判決がございまして、裁判所では詐欺と認定いたしましたが、役所に納める意思がないのに、役所に納める金を刑務所ではこの会社から担当官が代金としてメーカーから受取
つた。役所に納まらないから
年度末に
なりますと穴があいて来るということになるのであります。そこで役所の人
たちは困りまして、この田中を責めたのであります。田中はすでに刑務所におりませんでしたが、その結果、田中は家財道具、不動産、親戚から集めた金などいろいろ弁償に努力いたしました結果、二十四万二千八百三十円というものが残
つてしま
つたのであります。そこで当時の作業
課長であるこれもすでに退職いたしましたが、それから所長代理をしておりました男、やはり退職いたしましたが鈴木という総務部長、これなどが相談いたしまして、この役所のほうの穴があいたのを何とかして埋めようというので謀議いたしまして、
架空の
名義を用いまして二十四万二千八百三十円というものを出しまして、それを刑務所収入の先ほど詐欺で穴をあけられた収納未済のほうに
充当したのであります。もうおよそ問題にならない非常に悪辣なことであります。これは当時そういうことに
関係してお
つた、つまり作業
課長でありますとか、こういう連中だけで相談いたしましてこういうことをやりました。当時刑務所長は出張中でありましたが、戻
つて参りまして結局行なわれた過ちを追認したような形に
なりました。これも退職させました、
あとの問題といたしましてはこれは
検察庁のほうにすぐ刑務所のほうから告発が行われました。二十六年二月でございますが、告発が行われまして、神戸の
検察庁は地方裁判所に起訴たしまして
判決がありました。
只今申しました田中という技官、これは懲役二年、やはりその分け前をもら
つた臓物の収受ということに
なりますが、分け前をもら
つた事務官は懲役一年、それから分け前をもら
つたのでございませんが、取引に
関係して収賄の事実があ
つたというので技官が懲役十カ月、
判決は三年乃至五年の執行猶予に
なりましたが、所長は辞め、その他はそれぞれ外に転出いたしましたり、それから
あとで辞職して辞めているというような者等が出たのであります。全くこれは犯罪でありまして、
経理を見る者といたしましては何とも申訳がないのでありますが、その後神戸刑務所は陣容を立直しまして、所長以下すつかり替りまして、こういうような事実もこちらの巡閲で作業
課長が交替したというようなことを怪しんで調べたことからわか
つたことでありまして、今後ともかようなことのないように十分注意いたします。