○
専門員(
森莊三郎君) これは工事に関するものでありまして、技術上の問題と申しましようか、非常にむずかしい問題なのでございまするが、それにつきまして
検査院の
関係のかた及び
当局の
関係のかたにお越しを頂きまして下調べをいたしましたものがございまするので、簡単に御
参考に供したいと存じます。
千二十五号は、場所は四国の予讃線という鉄道線路で、下灘、喜多灘という間の、その辺の土質が非常に悪いので崩れてしようがないという所がござります。それは山からもう直ぐ海に接しているという所でございまするが、そこの法面の移動及び崩壊の予防対策としまして、切取工事及び擁壁、開渠工事を施行したのでありまするが、上のほうから滑り落ちるところの土の圧力のために擁壁及び開渠が破壊された。それから土を切取
つた場所は土が滑りまするので、その移動のために工事完成したときに元の形が失われている。この箇所は主要断層地帯と申しますのは、たしか本州の真中どころで、私が
ちよつと誤解いたしておるかも知れませんが、日本海側は糸魚川あたり、太平洋岸は天竜川あたりと思いますが、それを貫いた線、それが非常に土質が悪い。それからずつと西のほうへ直角に渡りまして、奈良県下、和歌山県下のあの辺をずつと通過し、それから四国の真中あたり、或いは瀬戸内海の海岸に近いような所をずつと貫いて非常に崩れやすい地帯にな
つているということであります。その中の一箇所なものでありまするので、従来から法面即ち山の傾斜地が移動し、崩壊の慮れが多分にありまするので、
昭和十八年以来すでに数回に亘
つて補修工事を行な
つて来た地区でありまするから、
検査院の見解としましては、何か特殊な対策を講じなければならない、それがためには、さつき
検査院の
局長から
お話がありましたように、技術研究所もあることでありまするから、そこでよく研究をした上で何らか特殊な対策を講ずべきものと認められるのに、通常の斜面に対すると同様に、法面の緩和をめどとしまして、一番表面の、表の土を取
つたものでありまするから、表土と申しますれば、
如何に土質の悪い、崩れやすい所であるにしましても、多年雨が降
つて叩かれてもおりましようし、草も生えておりましようから、或る
程度すでは雨水の浸透を防ぐ力があるわけでありまするが、その表土を切取
つたためにますます雨水の浸透を増し、却
つて崩壊の虞れも生じているので、このときの二十五
年度の工事は、その
計画通りの効果は挙げ得なか
つたということが
検査院の御
指摘であります。
これに対して
当局の答弁としましては、この切取り工事につきましては、その地形、それから地質などの特異性をよく研究をしまして、そうしてだんだんと地滑りの土砂を切取るということにされまして、それについては九州大学の教授の安蔵博士の有名な地滑りに関する理論がありまするので、その理論に基いて設計をした、そうすると、山の岩盤まで全部土を取るものとすれば、八万立方メートルの切取りを要することになるわけでありまするが、亀裂が入
つておるその
状況から判断をしまして、実際に滑り出した土砂に対しては先ずこの際の工事としまして、ここに
指摘されておる約三万立方メートルの切取り工事を行な
つたものでありまするが、なお附加えて申しますると、滑り出して鉄道の運転がとまる虞れがあ
つた、その際に応急工事として先ず最初に一万立米取
つてありまするから、結局は合せて四万立米を取
つたことにまあな
つたわけであります。問題としては三万立米と現われております。そういうわけでありまするから、御
指摘のような単なる法面の緩和というわけではない、それから又この切取りによりまして、鉄道の線路に対する崩落の危険性は減じた、なおこれで四万立米取りましたが、理論上残
つておる土は、なお四万立米あるわけでありまするが、これは
経費の
関係もありまするので、その後の
状況を一応見て、どうしても取らなければならなければ第二次の
計画ということに考える。とにかく費用の点を考慮して半分ばかりの土を取
つたのであるということであります。
なお御
指摘のほうに、表土を切取
つたので云々と書いてありまするが、その表土の点については、実はもうここはたびたび切取られておる所であ
つて、表土はほんの上のほうにしか残
つていやしない、而もその所は大部分が戦時戦後の食糧混乱の時代にいも畑にな
つてしま
つてお
つたので、本当に表土の残
つておる所はずつと上のほうのほんの
一部分で、而もそこが今度はえらく崩れて落ちたというような
事情もありまするので、実は表土の残りというようなものは殆んどないわけでありますということが答弁に出ておりまするが、それは
只今この刷り物には成るべく文章を短かくしたいと思いましたのでつい書き残しました。さてこれだけの工事をや
つたものでありますから、残
つたところの土の地滑りは一応落着いたというふうに考えられましたので、そこで山の傾斜地の傾斜の表面を流れて来るところの、雨が降
つたときに流れて落ちる、その水を横のほうへ取り流してしまうという目的で排水用の溝を作
つた。それから崩れて落ちる土を少しでも支えることに役立つかと
思つて、小さい擁壁をこしらえた、ところがその後になりましてやはり土が
ずれて来たのでありましよう、擁壁に変状を来して、とうとうそれは倒れてしま
つた。この点は誠に残念なことであり、又工事の設計としても余りよい結果が得られなか
つたので、この点ばかりは誠に申訳がないということのようで、この点は全く失敗であ
つて、遺憾であると
言つておられまするが、その後の豪雨がありましても、この傾斜地のその地滑りは少くな
つておりますし、ここで切取
つたその効果が大さか
つたと考えられるので、防災上この設計は適正であ
つたと、こういうふうのことなのでございます。
ここで御
説明をやめて置いてもよろしいかと思いまするが、或いは何かの御
参考にもなるかと存じまするので、少しばかり立入
つたことを申上げることをお許しを願いたいと思いまするが、そこに
参考として書きましたこと、この擁壁及び排水用の開渠を作
つた、そのことはこういう場所でそんなことをすべきものでない、不適当であるという点は
検査院の御
指摘の
通りでもあり、
当局においても十分認めておりますということ、次にこういうところの土は、
如何に安藏博士の地滑り論によるとはいうものの、それも一つの見解ではあろうけれども、もつとほかの何らか特殊の工法を講ずべきだという
検査院の御見解も、私などそういう技術方面のことには暗い者でありますから何とも申上げかねますけれども、恐らく権威のあるかたのお説でありまするから妥当であると認められまするし、そうかとい
つて又
当局の御
計画も必ずしもこれが不当であるというふうに断定することもできないような次第とも思われますので、まあこの点につきましては強い意味での批難というようなことではなく、
検査院から
当局へ対しての
注意、併し単純な
注意という意味ではなく、よく改善を要するというような意味での御
注意があ
つたものと見るのが或いは適当ではないか。
それから先ほど総説のところにおきまして、国鉄の技術研究所の活用が不十分なこともあるという
お話がありましたが、その一つの例が丁度ここに現われていることと思われまするので、勿論これも国鉄のほうで全然御利用にならなか
つたというわけではありませんけれども、いま一段の活用が望ましいというふうに見るべきものではなかろうかと感ぜられましたので、全く素人考えを申上げて恐縮ではございますが、まあ御
参考に供したいと思うのでございます。
それから次の千二十六号、これは浜名湖の鉄橋なのであります。あそこの橋脚の中に少し弱いものがありまして、是非とも応急の補強工事をしなければならないということ。これは技術研究所において十分御研究の上でその橋脚の中のこれこれの橋脚はこういうふうに補修をする必要があるということを
検査の上でこの工事を始められたのであります。併しそれを実行するに当りまして、現場のほうでは捨石工法という方法をとられたのでありまするが、その結果を見ますると、洗掘、波に洗われて下のほうが掘れて行くとい
つたような洗掘と、それから臨時的な制動その他の衝撃に対しては有効ではあるけれども、この工事の意図するところは、鉄橋の上を汽車がこう走
つて行きまするその際の震動でありまするから、反覆的な震動を防止するということが目的である、それには適合しないものである。然らばどうすればよいかと言えば、試みに一つの案を
検査院のほうから出せば、橋脚の周囲に杭を打
つて、それに適当な工法を施すということにすれば、同じだけの費用を以て遥かに有効な補強ができたはずだと、こういう御
指摘であります。
なお附加えて申上げますると、このときは橋脚が八本悪か
つた、その中で四本だけは特に悪か
つたものでありまするから、これに対しては厳重なる補強工事を施された。残りの四本が比較的軽微な損傷でありまするので、簡単な工事を施されたというのであります。なおもの一つ附加えますると、この鉄橋はこれと併行して新らしい鉄橋ができまするので、それが出来上るまでの間ほんの二年か三年、ただ当座の間だけこれが間に合えばよいというような
事情の下に行われた工事なのでありました。で、この
検査院の御
指摘に対しまして
当局の答えとしましては、杭を打つという杭打工法を採用しなか
つたのは、実は従来から橋脚の下のほうに水の中に多数の元の捨石がありまして、それに上
つてこの橋脚を支えておる。それをその元からある捨石を一時取除いた上で施行しなければならないので、却
つて多額な費用を要すると認めた。それでその工法は採用しなか
つたと、つまり
経費の点を考えて、又ほんのここ二年か三年持ちさえすればよいというような
事情のためにこの工法をと
つたのであるという、こういう答弁なのでございます。これも又甚だ僭越ではございまするが、御
審議の御便宜、若しくは促進というような意味から素人考えを
参考に供したいと思いまして
参考として掲げましたが、
検査院の御見解も尤もと認められまするが、又振動防止についての研究が
不足であ
つて、ロジカルな設計という点についてはこれは多少不十分な点があろうかと思われまするが、それ以外には
当局の工事の
計画が不当であ
つたというような断定もしかねるものでありまするから、やはり本件もこの前のものと同様に強く批難しがたいものと思われるのではないかというふうに考えられる節もあるのでございます。
それから次の千二十七号、これは琵琶湖の水が大津附近から瀬田川にな
つて流れます。あの瀬田川の鉄橋を架け換えますについて自然鉄道線路を移さなければなりません。それで新設の瀬田川のこの鉄橋に至るためのその鉄道の路盤建設工事が、左のほうの岸は草津側、右の岸は大津側と申しますか、京都側と申しますか、同時にや
つたのでありまするが、その草津側のほうについて土堤が崩れた。それで更に応急工事を行わなければならなくな
つたのでありまするが、
検査院の見解では、これは築堤の仕上工事の施行に当り盛土締めを均等に行わず、且つ筋芝、土羽打等の施工が不十分であ
つたことによると認められるし、請負工事についての施工監督上の
注意が不十分であ
つたと認めるという御
指摘であります。と申しまするのは、少し申し遅れましたが、その左岸の草津側は相当長い距離に亘るところでありまするが、そちらのほうが崩れた。これに反して右岸の大津側のほうは僅か四十五メートルというほんの短い工事でありましたが、そちらのほうはちつとも崩れていない。同じときにや
つた工事であるのに、右岸と左岸との間にそれだけの差を認める。それは、これも先ほど
検査院の
局長から総説としてお述べになりました操機工事
事務所を利用した
仕事でありましたので、左岸の草津側はその操機工事
事務所が機械力を用いて先ずやりましたところが、その築堤の中間に当りまして道路がありまするので、そこに樋門を設けなければならないとか、いろいろそういうふうの手でやるような
仕事があ
つたものでありまするから、そういうような
仕事を別の請負工事にやらせた。そんなことのために機械力を用いてや
つたその
仕事と、中間に手の
仕事が入り、そうして最後の仕上げをするようにな
つた。それらの
関係などがあ
つてこのような不結果を来したものと認める。これに反し右岸の大津側のほうは、全部を人手でや
つたものでありまするから、うまく行
つておるのであろうというような事柄がこの問題の中に入
つているわけなのでございます。
当局のこれに対する答えとしましては、施工なり監督なりについては同一の請負人がやり、同一の監督者が監督をしたので、そちらのほうに差があろうということは一応考えられない。ところがたまたまこの年は夏前からしばしば大雨が降
つた、又何とかいう台風などもや
つて来た。殊にこの問題の最も重大問題とされる、この御
指摘の問題の中心となる工事の被害は七月に起
つたことでありまするが、その七月上半期の間の豪雨の呈というものは、実に近来稀なる大雨であ
つたのでありまするから、恐らく今作
つたばかりの新らしい堤防にその
通りの雨が連日降
つて来た。又その中には台風もまざ
つておるというようなことでありまするから、飽和状態に達しておるようなところへ持
つて来て大雨が降
つて、こういう結果にな
つたものと思う。豪雨による災害が主たる原因であるというふうに
当局では述べておられるのでありまするが、いろいろと双方の
お話を承わりまして、これ又甚だ潜越ではございまするが、御
審議の御
参考までに素人考えを
ちよつとここに附加えて記しておきましたが、この芝付の時期などの点について、これは時期が悪か
つたということは、
当局も認めておりまするし、
検査院の見解も妥当であると認められまするが、土堤が崩れました……土堤と申しまするよりも高い線路、その線路が崩れました当時の雨の降り方、それらの記録を詳細に見ますると、その線路の一部の崩壊は、災害に基くものではないとは到底断定いたしかねるという点もございまするので、これも又余り強くは批難ができないものではないかというふうにも思われるのでございます。それからその次の千二十八号は、
検査報告に図面を添えて詳細に
説明がされておる問題でありまするが、これは
ちよつと本当を申しますればこの図面なぞについて一つ一つ申上げなければならないわけでございまするが、素人がそんなことを申しましても、又場合によりましては専門のかたに
お話を伺いましても、
ちよつと簡単にはわかりにくいことでございまするので、もう本当に最後の点を端折
つて申上げますると、ここに坑道が四つ掘
つてある。これは三本まで掘るのはよいが、四本日の坑道を掘
つて空気抜けに使
つた。ガスを抜くために使
つた。それはあ
つて悪いことはない。あるに越したことはない。けれどもなくてもよいものであるから、その緊急性を認めがたいというのが
検査院の御
指摘なのであります。
これに対して
当局の答えは、この答弁書のほうの二百三十一頁から二百三十二頁に亘りまして書いてございまするが、ここの炭鉱はガスの噴出で有名なところであり、従来この災鉱においても、又その附近の炭鉱においてもしばしば大爆発を起したことがあ
つて、多数の犠牲者を出しているという例があるので、この場合にも
当局としましては保安という見地から万全を期するということを考えなければならない。万一にも普通の炭鉱同様の考えで
仕事をや
つて若しものことがあ
つたときには、
あとにな
つて多数の犠牲者を出したということがあ
つては、それこそ何と申しても弁解の仕方がないので、保安上の見地から万全を期するというところに最も重点を置いたのである。なお附加えて申せば、当時石炭増産ということがやかましく要望されたときでありましたから、増産という点から技術上やはりこれが大いに必要なことでもあ
つた。なお又将来これが不必要になるかと申せば、石炭をだんだん掘
つて参りますると、採掘量が増加いたしまするので、現在の運搬の道路だけでは足りない。
従つてここを運搬道路として使うということにも
計画がしてあるのでありますから、その点から見ても経済的に決して不利益なものではないというような
説明であります。
それでこれ又甚だ僭越でございますが、若干私の感想をここに
参考として記したのでございまするが、
検査院の御見解もまさに適当なことと思われますが、
当局としてはこの人命の尊重、保安という見地からその万全を期したいというようなお考えの余りにこういう方法をとられたのでありますので、その
処置としましては
事情の諒とすべきものがあり、これ又余り強く批難はできないのではないかというような感じを持
つているのでございます。
それから最後に千二十九号でありまするが、この志免鉱業所と申しまするのは、元海軍が経営しておりました鉱業所で、それを現在国鉄のほうで受けて直営事業でや
つておられるのでありますから、従来その附属の機械類なども旧海軍時代の機械がずつと多く引続いているというわけであります。そこで四千馬力というような大き過ぎるような機械がそこにあり、それを国鉄のほうで、それでは余り力が強過ぎて不経済だから、それを改造して、二千馬力のものに直して現在使うということにされた。それを
検査院のほうで
御覧になれば、こんな大きい機械に高い修繕費をかけたのは間違いであ
つて、ほかに小型の機械が十三台もそこにあ
つたのだが、それに対して予備の機械を一台かそこら増加しさえすればこんな余計な費用はかけなくともよいものだという、こういう御批難なのでありまするが、
当局の答えとしましては、この四千馬力もある機械が二台ありまするが、すでに海軍時代において基礎工事も、それから収容する建物なども、かような力の強い機械も入れるのにふさわしいところの立派な設備もそこに残
つてお
つて、全然これが遊休施設とな
つておりまするので、これを活用すれば石炭の増産にもなお役立つということからこれを利用したのでありまするし、又当時使
つておりました小型の機械は、同じ
会社で作
つたものならばいいのですけれども、ほうぼうの
会社で作
つた品物の寄せ集めであり、又もうすでに相当古くな
つておりまして、耐用年限がもう切れておるとい
つたような状態のものでありまするから、それで折角ここに遊休設備があるんだからそれを利用しようという考えからこの機械の修理を行な
つたのであります。結果を申すならば、電力の費用などは多少不経済な点があるけれども、それは止むを得ないという答えであります。
それでこれ又僭越ではありまするが、御
参考に供したいと思いますることは、
検査院の御見解は実は御尤もなことでもあり、又改修工事の
計画に当
つて十分よく研究されたかどうかという点については、必ずしもそれは万全であ
つたとも認められない点があることはあると思いまするが、併し遊休設備がそこにあり、それを活用しようという考え、単に機械ばかりでなしに、厳重なる基礎工事があり、立派な建物の中に入
つておる、それを利用しようというようなことでありまするので、これ又その
事情を聞けば諒とすべき点もあり、これ又余り強くなお批難をするということもできないような性質のものかと思いまする。
以上甚だ
説明が長くなり過ぎまして申訳ございませんが、何分にも事柄が事柄で、つい御
説明が長くなりましてお許し願いとうございます。