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1952-12-11 第15回国会 参議院 経済安定委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)    午後三時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     境野 清雄君    理事            田村 文吉君    委員            加賀  操君            清澤 俊英君            藤  五郎君   政府委員    公正取引委員会    委員長     横田 正俊君    公正取引委員会    事務局長    古内 廣雄君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件日本経済の安定と復興に関する調査  の件  (昭和二十六年度公正取引委員会年  次報告に関する件)  (独禁法中心とする諸問題に関す  る件)   —————————————
  2. 境野清雄

    委員長境野清雄君) それでは只今から委員会を開会いたします。  昨十二月十日の委員会における経過を簡単に御報告申上げておきます。我が国経済基本政策及びその現状と見通しについて小笠原審議庁長官及び当局から説明を聞いて質疑を行いました。又電源開発に関する件につきましては明十二日午後三時から通産委員会連合委員会を開くことに決定いたしましたが、その要領は大体次の通りであります。電源開発株式会社設立経過、これは本委員会ではもうすでに説明聴取済みなんでありますが、これは連合委員会関係上第一議題としてこの問題を取上げる。続きまして本名、上田の水利権の問題につきまして、又佐久間、御母衣等水利権問題に関する電力会社開発会社と交渉の経過、こういうような問題について小笠原通産相、それから通産省経審建設当局から説明を聴取する予定でございます。その点は委員各位におきましても含みまして、そして一つ明日の連合委員会に臨んで頂きたいと思います。  次に本日の予定でありますが、公報でお知らせいたしました通り独禁法第四十四条第一項及び事業者団体法第九条の規定に基いて去る十一月八日国会提出されました昭和二十六年度公正取引委員会年次報告について当局から説明を聴取したいと思うのであります。この年次報告につきましては極く簡単で結構でありますので問題点のみを一つ挙げて御説明を願いたいと思うのであります。続きまして独禁法中心とする諸問題についての説明一つお願いいたしたい。この独禁法中心としての諸問題と申上げますのは、最近におきましても独禁法の問題に関連しまして私ども考えております商品金融会社、或いは共同輸出会社というようなものとの関連性、或いは日本軽金属の問題がありますのでそういう日本軽金属の新しい契約というようなものについての問題であるとか、或いは四日市の燃料廠の問題であるとか、或いは行政監督というような問題につきまして単行法を制定するというようなことの必要があるのかないのか、そういう問題を一つ説明願いたい。又最近通産省側考えておられます重要産業安定法案、これに対しましての一つ公取側意見をお聞きしたい。従来この特定中小企業安定法なり、或いは輸出組合法というようなものがありましたので、これとの関連を睨み合せつつ一つ重要産業安定法に対するお考えを述べて頂きたいのであります。大体私たちはこの独禁法の運用上の難点として挙げておりますのは、この独禁法の除外というような問題が不況に陥つたときにこれを行うような仕組に今まではなつておるのであります。こういうようなものを最も現在行わなければならない企業の経営の合理化というようなものとの間に相当な食い違いができるのではないだろうかというような点もありますので、そういうような、大体私どもが諸問題というのはそういうような意味を指しますので、こういうものに関連しての一つ公正取引委員会のお考えを承わりたい、かように存じますので、ただそういうようなことも一つ参考にして御説明願いたいと思います。
  3. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) それでは御指図によりまして二十六年度の公正取引委員会年次報告の概要を申上げます。  これは二十六年の四月から二十七、年の四月までの分でございます。時期が大分古くなつておりますので、その後最近までの問題を多少加味いたしましてその主なるものを御説明いたします。この期間並びにその後の期間を通じまして我々のほうの仕事の特徴と申しますのは結局御承知のようにこの報告書の十二頁から以下数頁に亘りまして公正取引委員会の歩みといたしまして大体三つの時期に分けまして説明してございますが、この三つの時期の第三期に当るわけでございまして、結局朝鮮戦乱による特需ブームの後退、要するにいろいろな原因によります不況の慢性化というようなことからいたしまして日本の産業にもいろいろ工合が悪い状態が生じて参りますので、それらに対処しますためにいろいろの策が講ぜられますが、それが往々にして独禁法の問題になる、こういう困難な時期に当つておるわけであります。そこで一方におきましては非常に競争が激化いたしますために甚だ面白くない競争方法が用いられ、独占禁止法は御承知のように自由競争を促進するという一面と競争を純粋な形にするという意味で不公正な競争やり方はやはりこれを抑えて行く、こういう両方面がございます。その不公正競争の方法の問題がかなりこの時期におきまして明らかに取上げられて参つたのでございます。この不公正の競争方法につきましては日本海運業に関して昭和二十四年に海上運送法改正がございました際に海運に関する不公正競争方法というものを抑える必要があるということで、この時期に不公正競争方法公正取引委員会において独占禁止法の規定に基いて指定をするとい往事が始まりましたが、これは御承知のように特にイギリスその他ヨーロツパの大陸系の諸国からかなり強い反対がございましたので、或る段階まで調査をいたしましたが、そのままになつておりましたのが、これは最近に不公正競争方法の指定ということをいたしまして、海運に関する不公正競争方法の取締を独禁法を通じてやつて行きたいというふうに考えております。  なおこの期間におきましてすでに新聞等で御承知と存じますが、醤油だとか味噌であるとか、そういう我々の日常生活に極めて密接な関係のあるものにつきましていろいろ面白くない方法による販売が行われておりますので、これにつきましても不公正競争方法の指定という手続を経まして二回に亘りましてその指定をいたしました。それはその当時業者の一部から非常に反対がございましたが、現在におきましてはむしろこの指定についてその後業界の動きが非常によろしくなつたといつて業界から非常に喜ばれておるようなわけでございまして、これがソースであるとか、その他雑誌であるとか、そういうようなものにこれは公取の指定を待たずにむしろ業界のほうで進んで協力をして来ておるような次第でございます。今後といえどもこういう不公正競争方法の抑圧というような方向に或る程度公正取引委員会の活動ももつと活溌化いたしたいと考えておるわけでございます。  それから公正取引委員会国会に対していろいろ意見を提出する期限がございますのですが、これに関しては公式にいろいろ国会に申入れをいたした事案は今までないのでございますが、最近の臨時中小企業安定法につきましては非公式ではございましたが、あの議員提出の法案に対しまして公取としてのいろいろ意見を申上げまして、それに基いて相当な修正がその後なされたものが現在の法律になつておるようなわけでございます。なお国会に対していろいろ意見を提出もいたしません理由は、御承知のように法律の大部分がやはり政府提案という形になりますので、政府が原案を作ります際に、公正取引委員会といたしましては緊密なる連絡をとつて、その段階においていろいろ独占禁止法の精神をこれに盛込むことに非常に努力いたしておりますので、それらの関係はこの意見書の二十四頁以下に我々がいろいろ意見を述べました法令が掲げてございますが、その後にもいろいろございました。この活動を通じまして独占禁止法の精神をでき得る限り諸法令の中に盛り込むということに相当努力をやつて来ております。  次に公正取引委員会のそういう立法に関する問題の次にいろいろ調査仕事がございまして、この点は例えば競争経済的効果に関する調査、或いは少数独占に関する調査というような極めて全般的な根本的な調査から、いろいろ各種の業種それぞれにつきましていろいろな角度からの調査研究をいたしております。これが結局だんだん積重なりまして今後の独占禁止法制のあり方なり或いは具体的な事案の処理なりに非常に役に立つのでございまして、この点は二十七頁以下に極めて項目だけでございますが、我々が取上げて鋭意調査をいたしておりまするいろいろな問題がここに提げてございます。残念ながら極めて乏しい人員と予算しか与えられませんので、到底この調査の万全を期することはできないのでございますが、併し我々に与えられました人と予算の限度におきまして、鋭意これらの調査を続けておりますし、将来この点につきましては十分に重点を置いて行きたいと思いまして、来年度の予算等におきましてもこれらの面についての相当の増額を要求しておるわけでございます。  更にこの年度並びに最近に亘りましての公正取引委員会仕事やり方一つの特徴と申せますことは、事件を徒らに違反事件として取上げてこれを審判に付するということをしないで、これらの調査に基きましていろいろわかつて参りました事態に対しては一種の警告と申しますか、手段をとりましてそれによつて業界の反省を求め、こちらの申すことに異議なく独禁法上面白くない点を是正して頂きます場合には、特にこれを取上げて違反事件として正式に処理をしないというような方面の問題がこの時期にはいろいろございました。後にも申しますが、化繊の操短問題につきましても二十六年度、最近の二十七年度が問題になつておるのでございますが、二十六年度においてすでに今申しました方式によりまして共同操短は余り面白くないということを警告いたしましたこともございまするし、その他三十一頁に書いてございますように、学校の給食問題であるとか、主食の配給の問題であるとか、或いはこの後の問題といたしましては百貨店の販売のやり方或いは教科書を出版いたしまする会社の面白くないやり方等につきまして次々と警告を発しまして、幸いにこちらの、十分とは申せませんが、我々の警告に基いてそれらの業界において独禁法上面白くないという点が相当是正されて参つておるように考えております。  その次に公取のいわば行政的活動とでも申すべきものがいろいろございます。例えば国際的契約について届出を受けましてその内容を検討いたしますことや、或いは株式の保有状態をこれも届出を受けまして調べる、或いは会社の合併、営業の譲受等につきましてそれが独禁法上の違反になりはしないかどうかという点を、届出を受けまして調べるというような問題が、概括しまして行政的な公正取引委員会仕事としてあるわけであります。この国際契約につきましては、一時独禁法上いろいろ遺憾の点がある契約が多うございまして、もう一つ前の年度であつたと思いますが、大変違反事件が多かつたのでございますが、最近はそういう事案は相当減つて参りました。勿論国際契約技術提携その他各種のものが続々と出て参りまして、案件もこの報告書には三百七十七件となつておりますが、その後に参つたものを入れますと、今年の十二月一日現在で四百七十一件というような国際契約の数になつております。なおこの中で主要なものにつきましては、先ほど御指摘がございました日本軽金属問題等がございますが、これは外国の有力なるアルミニユーム会社と御承知のように日本軽金属が提携いたしまして、日本軽金属の株式の半ばをその会社が持つことによりまして、日本におけるアルミニユーム製造販売に関しまして日本軽金属の地位が、非常に大きくなるという問題がございました。この点は我々といたしましても十分にその面を研究いたしまして、相当長いことかかりましていろいろ考えたのでございますが、技術提携という点がかなり必要なものでございますし、なお株式を半分は持たれますが、併しその結果日本アルミ製造業に対する影響というものは、やはり今後相当よく見て行かなければわかりませんので、一応この問題は株式保有問題としまして我々の検討の対象になつたわけでございますが、一応見送りまして、今後の動きを十分に注意したいと考えておる次第でございます。  それから合併につきましては、最近御承知のようにだんだん企業の合同ということがかなり行われて参りました。殊にいわゆる財閥糸会社商事会社等が次第に統合されて行く顕著な傾向があります。これは勿論昔のいわゆる財閥とは違いまして、極めて微力なものでございますので、我々は現在の段階におきましてはむしろ或る程度の合同が行われることがむしろ日本国際的競争力を強めるというような点から見まして、独禁法上とやかく申すべき段階ではないと思いまするが、併しこれが或る段階に達しました場合には相当問題が起る。殊に外国に対する関係はともかくも、国内におけるそれらの合同されました企業地位といのものは、国内の取引の制限というような働きを持つて参ります場合につきましては十分に注意して行きたいと考えております。現在のととろまだそれほどの問題は起つておりません。なおいろいろ会社の縦の系列による一つの合同、或いは一種のコンツエルン式のものがだんだん形成せられて参る傾向もあるようでございます。これらにつきましても今後独占禁止法の観点からいたしまして、或る程度の結合は勿論競争力を強める意味におきまして結構でございまするが、やはり先ほど申しましたのと同じような意味におきまして、相当今後注意して参りたいと考えております。  それから最後は先ほど申しかけましたが、いわゆる違反事件の五十三頁以下に書いてあるところでございます。これは前年度の報告を御覧になりますると、違反事件として取上げられました件数が極めて多いのでございます。これは大体先ほど申しました国際契約関係のものがこまごましたものを一々取上げられましたような関係で非常に多かつた時代がございますが、今期並びにその後最近までの件数は、件数としましてはそう多くないのでございます。ここにございますように違反として正式に取上げまして事業者側で直ちに違反を認めてすぐにこちらの申しました勧告に服して、その勧告に基く審決がなされた事件が四件、その後にもこの報告書に載つておりませんもので三件ございます。この中に御承知自動車タイヤの操短問題の一件が含まれております。これはやはり事業者側勧告に応じまして、勧告審決ということで片がついております。それから審判開始決定をいたしましたものが、これが正式に審判を開始するという手続をとりましたものがこの報告書に十件載つておりまして、そのほかにその後のものが四件ほどございます。この中にいずれ後に申しますが、例の化繊の操短問題が審判開始決定といたしまして一件載つておるわけでございます。それから審判開始後間もなく審判で争うことをしないで、こちらの開始決定の事実と法律の適用を認めて直ちに審決になりました事件が六件、それから被審人側で争いまして、その結果正式の審決になりましたものが八件というような数でございまして、この数は必ずしも多くないのでございます。又内容もいろいろでございまして、この一々を御説明いたしますのは煩雑に過ぎますので省略さして頂きます。いずれその内容は五十六頁以下に相当事件の概要を掲げてございますから御覧願いたいと思います。この中で御承知の操短問題、それから先ほどのはゴムを申しましたが、ゴム、それから化繊、それから綿紡、これらは相次ぎまして操短問題が起りました。これにつきましてはこの前の国会で、丁度その頃でございましたので一応の御報告をいたしたと思いますが、要するに、ゴムにつきましては正式に取上げまして、化繊も正式に取上げ、綿紡だけは通産省の制裁の附いた強い勧告によつて行われたという面が非常に他のものと違つたところでございますので、このほうは違反として取上げることはいたしませんでしたが、併し通産省勧告に基くものとはいいますが、やはり独占禁止法の建前から行過ぎた操短というものは余り好ましくないという観点からいたしまして、操短が行われました後相当たちまして綿糸の値も非常に回復いたしました頃を見計らいまして、今年の六月中に通産省に対しましてもう操短の勧告はやめてはどうかということを申合せをいたしました。併し通産のほうはいろいろ綿紡関係国際会議もあり、その他の関係からいたしまして、御承知のように枠は相当拡げましたが、最近までずつとそれを続けて来ておる、こういう状態でございます。化繊につきましては審判を開始いたしまして、その後暑い夏から最近にかけまして事実を調べまして、一応事実調べの段階を終りまして、いずれ最近に公正取引委員会としての審決が下されることだろうと思います。これは三人の委員の人を特に審判官にいたしまして最近に事実の取調べだけは済みました、こういう段階でございます。違反事件のことにつきまして我々が非常に悩みました点は、結局独占禁止法が成立後二十四年になりましてかなり改正がございましたが、併しやはりなおまだいろいろな特殊の事情のあります場合に、あの法律をそのまま当てはめますことにつきましては、いろいろなむしろマイナスの面もありますので、それらを如何に調整するかということが我々の非常に苦労をいたしたところでございます。従いまして独占禁止法改正、或いは事業者団体法改正というものを常に裏に持ちながら困難な仕事をやつて来ておつたわけでございます。幸いに事業者団体法につきましては、前国会におきまして長年の改正の問題が結実いたしまして、或る程度の改正がなされまして、独占禁止法につきましてはなお諸般の考慮を要する点がございますので、前回の国会には遂に改正案が出ずに来ておるわけでございます。この改正の問題は前国会においても私からも申上げたことと思いますが、いずれ公正取引委員会としても真剣にこの問題を検討したいということを申上げましたし、政府の各方面におきましても、これに関係のある部局はおきまして、いろいろ検討いたしておる次第でございます。いずれ公正取引委員会、或いは経済審議庁通産省というようなところで共同にこの問題を検討いたしまして、政府としても何らかの結論を出したい、こういうふうに考えまして、今盛んにその問題を検討しておる最中でございます。ただこれは前国会にも申上げましたように、先ほど申しましたような独占禁止法のこの根本精神を活かしながら、それから出て参ります諸般の或る意味の行過ぎを是正して行く、マイナスの面を払拭して行くというこの仕事かなり面倒な仕事でございまして、この線の引き方についてはいろいろな考え方もあるわけでございます。非常に困難を伴います結果なかなか早急に結論を出しかねておるわけでございます。  一方国際情勢から申しましてもアメリカの反トラスト考え方というものは、単にアメリカだけの政策でなくなりつつあるような面がございまして、これは勿論アメリカが中心となつて国連或いは条約等を通じまして世界に強く働きかけておる結果ということも言えるのでありますが、併し現実の問題としまして反トラストの政策というものは相当いろいろな国に滲透しつつあるというのが現状でございます。殊に最近に成案ができました西ドイツ競争防止を禁止する法律というような名前の法律がございますが、これにはかなり今までのドイツカルテル尊重の行き方を相当に修正いたしまして、かなりアメリカに近い反トラストの線を出しておることが、この法案を見ますと明らかにいえるのでございます。これらが丁度今この改正問題を検討いたしております私たちにとりましても非常な参考になるわけでございまして、その一端を御紹介いたしますると、例えばカルテル問題につきましては、日本独禁法のいわゆる第四条の関係でございますが、カルテルにつきましては恐慌の場合のカルテルと、それから貿易についてのカルテルというものを認める、それから更にその上に、或る制限の下におきまして合理化を促進するためのカルテル、この三つのカルテルを例外的に役所の許可を条件といたしまして許すというような線が出ておりまして、この考え方は丁度前回の国会におきまして御承知輸出取引法というものが或る意味におきまして貿易のカルテルを認めるという線を出しておりまするし、それから特定中小企業安定法が或る意味の恐慌に対する一つの対策をあそこに持つておるわけでございます。我々が止むを得ずカルテルを認めなければならんと思われる線が、丁度西ドイツの最近の法律の中にも出ております。問題はいわゆる合理化カルテルということがまだ日本ではそれほどはつきり取上げられておらんというところが多少違つております。でこれらのドイツの法制は今後の我々のこの改正案の検討につきましても十分勘酷いたしたいと実は考えておる次第でございます。  次に、甚だ簡単でございますが、これで一応この報告書に基きますお話と、最近におきまするいろいろな問題の極くあらましのことの説明は終ることにいたしまして、只今委員長から御指摘がございました二、三の問題につきまして簡単に申上げたいと思います。  最近に紡績関係におきましていわゆる商品の買取会社というようなものを、或いは輸出に関しての共販組織というようなものが考えられておるようでございます。ただこの問題は、実は私どもも新聞紙等におきまして間接に知つておるだけでございまして、正式に実はまだそちらの関係のお話もないので、実は仮定的なことになりますので、はつきりしたことは申上げられないと思います。これは最近関西のほうからもいろいろ関係のかたが見えおられるようでございますが、いずれ公正取引委員会のほうにも何かお話があると思います。その上で正確なことを我々としましては検討いたしたいと思つております。ただ問題点は、結局この買取会社というものが、単に一つ商事会社としてその自己の判断に基いて或るものを、綿糸なら綿糸を買入れ、或いはそれを必要に応じて売るという普通の商事会社的な性格を持つておれば勿論これは問題でないのでありますが、或いはこれが丁度生糸の買取機関のような公けのものでございますればこれは勿論問題がないわけでございます。併し紡績会社の寄り集まりました一つ会社組織であり、而もその会社を通じましていろいろ操作をする、かなりの操作をやるというようなことになつておりますと、これが危機のための一つの止むを得ない方策というようなことでございますれば、先ほど申しました我々の線にも或る意味で乗つて来るわけでございますが、併しそういう点の非常なはつきりした保証も何もない状態におきましてこういう会社ができて、それがいろいろな操作をするということになりますると、独禁法上やはり問題があるように思われます。  輸出の問題につきましても、輸出の機関につきましても輸出組合法に許される以外の形式というものにつきましては、やはりその作用如何によりましては、独禁法上の問題があると考えるわけでございますが、ただ輸出取引法につきましては我々といたしましてもあれは一つの試みとしまして、ああいう形のものを一応通産省で立案いたしまして、先般の議会を通つたわけでございますが、あれが最も理想的な形態であるとは私たちも思つておりません。この輸出取引法改正というようなことについては我々ももう少し検討する余地があるということを我々自身も十分に承知をしておる次第でございます。  それから四日市の問題も、これは全然公正取引委員会に相談と申しますか、お話のない問題でございまして、専ら問題は通産、大蔵方面で検討されておるようでございます。これにつきましても丁度日本軽金属の問題で、先ほど申しましたように、或る一社が四日市の施設を譲受ける。而もそれに外国の有力の事業者が結び付いておるということによつて、その企業の持つ力というものが非常に大きくなつて来るというような事態がございますると、これはやはり独占禁止法の問題はあり得ると思います。又一方同業の数社が集まりましてここに一つの機関を作つて、会社を作つてこの四日市の施設の払下等を受けましてこれを運営するということになつて参りますると、この会社を作ること自体が、御承知のように競争会社が株を持ち合つて一つ会社を作るということについては、独占禁止法上のいろいろな制約が現行法上はあるわけでございまして、それらの方面の問題もあるというようなことで、いずれにいたしましても独占禁止法上多少の問題は含まれておると思いまするが、これも実はまだ正確にどういう形式でどういうことになるというようなことにつきまして、公正取引委員会としての調査も具体的の資料を実は持ち合せておりませんので、はつきりした結論を申上げることはできないと思います。  次に重要産業安定法とでも言うべき立法が通産省で検討せられておりますることはすでに皆様の御承知の通りでございます。これは重要産業につきましていろいろな、一種の不況を打開するということのために、丁度中小企業安定法によつて中小企業の安定を図られると大体同じ方式を以ちまして、あれに盛られておりませんその他の重要産業について同様の方策を講じようというのが、我々が只今まで承知いたしておりまするこの案の内容でございます。これにつきましては先ほど申しました独占禁止法改正というものが或る程度、例えば恐慌カルテル、或いは合理化カルテルというようなものが独占禁止法改正自体で或る程度解決されるということになりますると、重ねてこういう法制を作る必要があるかどうかという問題が起つて参るわけでありまして、ただ独占禁止法改正にも或る限度がございますので、それを越えてなお例えば一種の統制的な、単にカルテルを許すとか許さんとかいうことを更に越えまして、政府がその企業に対して或る種の統制を加えて行くという段階まで推し進めるということになりますると、これは独占禁止法の問題より更に一歩進んだ問題になりまするので、独占禁止法改正だけでは問題は片付かないということになりますので、そこにはみ出した部分があるというような関係からいたしまして、今度予定せられておりまする独占禁止法改正と、この重要産業安定法を如何に処理するかという問題は、今後独占禁止法改正の問題を通産省方面と検討いたします際に十分に話合つて、最も妥当な線に落着けたいと考えておるわけでございます。  以上甚だ簡単でございまするが、御指摘になりました問題についてお答えをいたします。
  4. 藤五郎

    ○藤五郎君 引続いてお話がございましたら、少し質問をさせて頂きたいのですが……。
  5. 境野清雄

    委員長境野清雄君) 質問してもらいましよう。それでは委員の各位から質問がありましたら……。
  6. 藤五郎

    ○藤五郎君 大した質問をできる段階まで私は勉強がまだできていないのですが、公取委員長に一点伺つておきたいのです。まだ独占禁止法のほうも当国会には出ないようでありますが、参考までに伺つておきたいと思うことは、今いろいろな商社が、前に分断された商社が、又合同して元に戻ろうという動きが非常に大きく出ていると思うのです。そうしてその理由として、日本の商社が非常に分断されて小さい資本になつてしまつたために、外国の大きな資本と競争することができない今の状態では、結局外国資本の下請のような形になつて思うようなことができないというのが一つの理由になつておるように思うのですが、それと同時に曾つての独占企業時代にその衝に当つておつた人が問題なので、組織は問題でないというようなことが挙げられて、その理由とされておるようなんですが、果して以前のような商社に返つた場合、昔のその商社は日本、いわゆる帝国主義日本の背景を持つておつたからこそ、外国の商社と太刀打ちしてやつて行けたので、今日の日本の国力から見て、果して昔のようなことができるかということが問題であります。それからそれでなしにそういう合同して大きな商社ができた場合は、それの果す役割は決して外国の商社との競争ということでなしに、国内の中小業者を圧迫してそれを潰してしまう結果を招来するので、結局それが目的であるというふうに又考えられるのですね。公取委員長考えはどちらに、どういうところにあるか伺つておきたいと思うのです。
  7. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 先ほど申上げましたように、今の商社はどれをとりましても戦前の有力な商社とは比べものにならない極めて貧弱なものであることは、これは万人が認めるところであろうと思います。その意味におきまして、この商社がだんだん結合いたしまして大きくなつて参つて、特に外国との競争というような面で、日本貿易の促進というような面に貢献することを私どもとしましても、実は期待いたすわけでございますが、先ほど申しますように、又そう期待いたしますが、只今段階では如何にあの商社がだんだんに集まりましても、近いうちに非常に有力なものになれるとは到底思われないのでございますが、併しまあ或る程度の力を持つようになつて欲しいとむしろ私たちは思つております。ただその結果只今おつしやいましたように、国内の他の小さな業者が不当な圧迫を受けて行くという点は、これは十分に注意して参りたいと実は考えておるわけでございます。御承知のように、戦前の商社は単に商社として力強いということのほかに、その背後にいろいろな繋がりがございまして、そういう関係からいたしましてその商社が極めて有力な力を持つておつたわけでございますが、現在そのバツクの力というものがだんだん感ぜられつつあるわけでありますが、これ自体がやはり戦前に比べますと非常に弱いという関係で、ここ暫らくは余り大きくなりましたために、国内の中小企業が不当に圧迫されるという面はそれほど心配しないでもいいんじやないかと思うのでございますが、併しこれがだんだん時がたちまして非常に大きなものに育つて参るということになりますれば、やはり相当警戒しなければならんというように考えております。
  8. 藤五郎

    ○藤五郎君 お考えはわかつたのですが、今日、日本の商社というものが対外貿易を昔のように、昔の商社には対外貿易を主にやつておつたのでなしに、非常に国内的な面が多いと思うのですね。それだけに無制限に商社が大きくなつて行くということは、先ず第一その結果として現われて来るのは国内の中小業者を圧迫して、そうしてそれを潰してしまおうということが先ず第一現われて参るのじやないか。そういう面で私は非常に問題があるのじやないかというふうに心配しておるのですが、その点公取委員長も同じような観点に立つていらつしやると思うのですが、十分注意して頂きたい。そういうふうに存ずる次第です。
  9. 境野清雄

    委員長境野清雄君) ほかに御質問如何です。
  10. 清澤俊英

    清澤俊英君 燃料廠の問題、もう少し詳しくわからんですか。
  11. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 燃料廠は実は先ほど申上げました、公正取引委員会にはまだ正確ないろんな資料はございませんので、或いは今検討されております何かいろいろなあれがあるようでありますが、それがだんだん具体化して参りますれば、当然に株式の問題とかその他の独禁法上に問題になるような点についてはいろいろ相談なりが当然あると思います。只今のところ正確なものはありません。
  12. 境野清雄

    委員長境野清雄君) 大体私のほうからも一、二点横田委員長に質問したいのですが、今横田委員長お話では、西独の競争防止取締法案ですか、というようなものができたという面を聞きましても、これが恐慌合理化貿易と、この三つに対しては一応除外例を作つてもよろしいのだというお話ですが、私ども考えると、どうも恐慌というものと合理化というものが果して両立するかどうか、一応考えれば恐慌というようなものによつて逆に合理化は鈍つてしまうのではないかというふうに考えますが、公取の人としてのお考え恐慌というものとその合理化というものがどういう意味合理化意味するのか、その辺を一つ説明願いたいと思います。
  13. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) このドイツ考えておりますものはいろいろな主として技術的な関係じやないかと思うのでございますが、この法律の三条にこれはかなり制約が上つておるのでございますが、企業の能率性交は経済性を技術的、経営的若くは組織的な面において著しく同上せしめることによつて需要の充足を改善することに適合しておる場合というような文句になつておるのでございます。で、この合理化の点は価格の統一性とかいうようなことに関係のないものでなければならんというような面におきまして主として技術的な面で非常に業者と結合することによりまして、生産力を増すとかいうような点を考えておるのであります。
  14. 境野清雄

    委員長境野清雄君) 今須藤委員からも質問がありましたけれども、大体私ども考えておるのは公取委員長として新らしく事業が、鉄鋼界が再編成されるとか、或いは業者が統合する、株式の取得というような問題で相当カルテル化を図つておるような空気が相当ある。併し委員長お話では戦争前の三井、三菱のような大基盤を持つたものじやないので、現在の商社ならばそう大したことはないというようなお話ですが、私どものほうの考えとしては、一応そういうような形になつても経済の構造の根本が相当違つておつて、戦争前の三井、三菱というような財閥のあつたときの中小企業の基盤というものは、まあ或る程度根強い基盤を中小企業が持つておつた、戦後の今日の形では中小企業の基盤というものは非常に弱くなつておりますので、そういうような点から考えると、戦争前の財閥というような力はなくも、その比率は今日の、今の貿易商社の合体なり或いは鉄鋼業者の再編成なんというようなもの、言い換えれば企業が集中されるというようなこと、カルテル化されるというようなこと自体が、むしろ基盤の弱い今日の中小企業にしわ寄せさせられること、これはもう中小企業だけでなく消費者の面にまでしわ寄せさせられるという比率において、私ども考えれば戦争前の大財閥というものと、当時の中小企業というか、今日の再編成されるであろう商社と基盤の非常に弱い中小企業というものはそう差がないようなふうに感じられるので、こういうような面については、私はいろいろ公取としても未然にこれを防ぐ方法をお考えなつておるかどうか、こういう点が一点。もう一つ、私は非常に大きな疑問を持つておるのはいわゆる再軍備の問題同様に、日本が戦争に敗けましたあの当時においては、いわゆるこういうようないろいろな法律によつて財閥というものも解体せられた、そうしてもうカルテル化というようなものは成るべく禁止しようという形態になつたものが、戦争が済んで今日七年ばかり経過した今日では、むしろ逆で、アメリカ自体の考えとしても従来禁止したようなものの、日本の経済というようなものは或る程度大きいものをおかなければ生産力は非常に伸びぬのじやないか、こういうような形でむしろ企業の統合的なものを慫慂しておる。丁度軍備の問題と同じように、私は経済面にこういうような問題が起つておるのではないか、そういうような点があるので、どうしても独禁法その他に対する政府自体が、国家政策というものと独禁法というようなものとの考えで、政府の方針がきまつていないのだ、きまつておればもつと私は独禁法についてもこういうような単独法をちよいく出して、この単独法がたくさんになつてしまえば、これも又体裁の悪いものになるのだというふうに考えておりますが、その点公取としてのお考えはどんなお考えでおられるか承わりたいと思います。
  15. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 先ほど私が多少企業合同しても大したことになるまいと申上げたのは、主として最近問題になつております例えば三菱系の商社が、何回かに亘りましてだんだんに統合されております。大体あの程度のことを申上げたわけでございます。御指摘のように企業全体が非常に脆弱化しておりまするときに、特に中小企業程度のものが極めて弱いのでありまして、企業合同その他コンツエルン的な形態が仮に戦前のような強力なものにならないでも、相当中小企業面にいろいろな悪影響を及ぼすということは私も確かにそう考えております。この点は最近に或いは見ようによりましては独占禁止法を殆んど無視したようなカルテル化の傾向がいろいろな業界に見えております。この点につきましては私ども甚だ手不足でございまして、気の付かん点も多々あると思いますが、我々の能力の限りを尽しまして、それらの問題につきましては成るたけ未然にこれを防止するということに今後十分力を尽したいと存じております。なお最近のいろいろな問題につきましても、我々のほうの調査の結果がだんだんまとまりましたので、国会方面にもいろいろ適当な方法を通じて御報告を申上げたいと思つております。
  16. 藤五郎

    ○藤五郎君 もう一つですね。今委員長の質問なすつたことはもう私も同感なんですが、そういう企業ができて、例えば商社が大きくなつてもそれを利用するのは結局アメリカが利用される、アメリカに利用されてしまうという結着になつてしまう危険が非常に大きいという点を委員長がおつしやつたんだろうと思いますが、そういう危険があるということを私たちは危険に思うと同時に、そういう危険があるからそういう方法に対しては賛成できないというような気持を今現在持つておるわけなんです。今日表ではそういう形ができなくとも、裏ではすでに住友系の事業に対しては住友系の銀行が融資する、千代田銀行は三菱系、それから前の三井銀行は自分の系統に、そういうふうに実際はいわゆる地下においてですね、地下運動においてもうすでに大きなそういうものができ上つてしまつたのではないかとこういうふうに思うのですが、その点どういうふうに考えていらつしやいますか。
  17. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) その点もこれは銀行に関する調査というものは、実はまだ十分にできておりませんが、成るほど戦後暫らくの間は、大体昔のような或る銀行が或る系統へ特に強い繋がりを持つというような関係かなり稀薄になつて来ておりまして、これはいろいろの金融の梗塞をしておりますような事情もあつたせいとも思いますが、非常に一社が或る一銀行と強く結んでおるという関係かなり薄れて来ておりますので、これはたしか朝日新聞の人が調べましたものなどもございますが、それが最近お示しのようなだんだん傾向をとりつつあるように感ぜられます。この点は一種のコンツエルン形態がだんだん復活しつつあるというふうにも考えられますので、これらの点については、今後私どものほうの調査機能を十分発揮いたしまして、警戒の目を緩めないようにいたしたいと思つております。
  18. 境野清雄

    委員長境野清雄君) この問題は、今日初めて公取委員会のほうから説明を聞いたのですが、当委員会としては、私は相当これは重要な問題ではないか、かように考えておりますので、委員の皆さんも一つよく御調査を願いまして、次の機会にこの問題を本格的に一つ質疑応答をなさればいいのではないか、かように考えておりますが、如何でございますか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり)
  19. 境野清雄

    委員長境野清雄君) それでは次の機会にこの問題を取上げるといたしまして、今日はこれで散会いたしたいと思いますが、如何ですか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 境野清雄

    委員長境野清雄君) ではこれで散会いたします。    午後四時二十二分散会