○国務
大臣(
石井光次郎君) 只今から
臨時船舶建造調整法案の
提案理由について御
説明申上げます。
戦後、我が国商船隊の再建につきましては、臨時船舶管理法によりまして建造の許可
制度が行われ今日に至
つておりますが、同法は来たる四月二十八日までに廃止することとなりますので、新船の建造に関する諸般の情勢に鑑み、右の許可
制度を、向う四年間に限り
国際航海に従事いたします船舶について存続させたいというのがこの
法律案を提出いたすゆえんであります。
さて、我が国海運界の現状を見まするに、戦争によ
つて崩壊した商船隊の再建のために、戦後巨額な財政資金及び市中資金が投下されて来ましたが、最近、世界海運市況の悪化により船主の建造資金調達が一段と困難となりましたため、
政府は建造資金の造成を容易にするために、新たに七割の開銀融資を行うと共に、三割の市中融資分に対しても
利子補給を行い、更にこれに対して損失補償措置をも講じようとしております。更に商船隊の船腹構成を改善するために、質の劣悪なE型船二隻をスクラップ化することを条件として新造船一隻の建造を認め、これに対して
利子補給を行う
制度も今回
決定を見ております。
海運についてのこのような
助成策は、我が国がその存立のために、戦争によ
つて壊滅した商船隊の再建、特に
戦前に比して極めて貧弱な定期
航路船舶の整備充実に努めねばならず、このためには目前の市況如何にかかわらず新船の建造を進めなければならないという止むに止まれない要請があるからであります。
而してこのように乏しい国家財政から貴重な資金を出す以上は、これらの資金が商船隊再建方策に適合して最も有効且つ合理的に使用されなければならないことは論を待たないところでありまして、新造船の
決定については
政府が開銀を初め金融
機関の融資に対して助言と協力を行うと共に、右のような
趣旨から国民経済の要請に適合する海運の再建策を実現するための体制をとることが是非とも必要とな
つて来るのであります。
即ち新造船の
決定には、金融ベースからの判断と同時に、海運政策上の配慮、例えて申しますれば、緊急に整備を要しまする
航路の判定とか、適正なる船腹量及び船質の
決定とか、航海条約や
運賃同盟等に関連する複雑な対外
関係とか、或いは海運業者なり造船業者なりに対しまする一般的な政策面の考慮等、この種の問題についての総合的な配慮というものが必然的に要求されて来るのでありまして、そこにおのずから建造されます船舶の選択について一定の順序が存在するのであります。そしてこれらの問題の判断は単に融資
機関のみにその責任を負わすべきものではなく、商船隊再建の一応の目標達成の時期まで、これに協力しつ2
政府の願う理想を実現して行くことが必要と思われます。
この体制によ
つて初めて、
政府の海運再建方策と融資
機関の建造融資
決定とが車の両輪とな
つて新造船計画を誤りなく遂行して行くことができるのであります。次に、本
法案の主な
内容といたしましては、先ず、造船
事業者が、
国際航海に従事し得る五百総トン以上の鋼製船舶を建造又は重要な改造をいたします場合には、
運輸大臣の許可を必要とすること、又、
運輸大臣が右の許可をいたします場合には、一定の基準に
従つてこれをなし、その場合許可の判断の基礎となります重要な事項につきましてはあらかじめ海運造船合理化
審議会に諮
つてこれを
決定しなければならないこと等を挙げることができます。
なお、現在建造許可制を
規定してあります臨時船舶管理法は講和発効後一カ年、即ち本年四月二十八日を以ちまして廃止しなければならないことにな
つておりますので、これを本法によりまして廃止することを
規定いたしております。
又、本許可
制度は、それが企業の活動に対する制約となる点より、商船隊再建の一応の目標達成時期即ち四カ年間の臨時立法であることを
規定いたし、許可の対象につきましても、臨時船舶管理法では鋼船の全部と、木船の二十総トン以上でありますのを、本
法案では単に五百トン以上の、而も
国際航海に従事し得る鋼製船舶に限定しておるのであります。
なお、最後に、漁船法との
関係でありますが、現在までは、漁船のうち母船、トロール船、魚獲物運搬船、捕鯨船の四種についてのみ、同法第八条によりまして、臨時船舶管理法の適用を受けることにな
つているのでありますが、本
法案では、一般商船に準ずるような機能を有するものに適用するのみで、特に漁船としての建造許可を行わないことといたしたのであります。
以上を以ちまして、
提案理由の
説明を終りたいと存じますが、何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらんことをお願い申上げます。