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衆議院議員(
關谷勝利君)
只今議題となりました
地方鉄道軌道整備法案につきまして、
提案者を代表いたしまして
提案理由並びにその概要を御
説明申上げます。
御
承知の
通り地方鉄道、
軌道の中には、戦後の混乱を脱1して立直りの顕著なものもありますが、
地方によりましては、まだ、
運輸量が比較的少いため、
経営維持の困難なものが多いのであります。
従つて、
地方鉄道補助法による
補助が
昭和二十二年で停止にな
つて以来、
地方鉄道、
軌道の
営業廃止を行うものが続出して、終戦以来その件数は二十二件にも上
つております。今
地方鉄道、
軌道を具体的に検討しますと、
経営が困難なため
営業廃止の寸前にあるものの中には、例えば、降雪のため
冬期間は他の
交通機関がすべて杜絶して、
鉄道だけが唯一の
交通機関になるというようなものが
相当数に上り、又これに似た例は、
山間地帯についても考えられるのでありまして、これらは、いわば陸上の
離島航路ともいうべきものであります。而も、このような
鉄道の多くはその
地方住民の
負担力から見て、
限度と思われる高
運賃をも
つてしてもその
維持は困難であります。このような
鉄道を廃止いたしますと、沿線住民の生活に及ぼす影響は誠に甚大で、生活物資その他日常生活に必要なものの確保が不可能になるのであります。
従つて、かような
鉄道は、国策上存置してその
経営を
維持させる必要があります。
又、電源開発、重要資源の開発が各地で進められておりますが、そのためには、先ず、道路の開設、改良又は
鉄道の敷設が前提となるわけでありまして、そのいずれが有利かと考えますと、地形の
関係や重量貨物の輸送の問題から見て、
鉄道の敷設のほうが、道路に比べてその二分の一乃至三分の一程度の用地利用で済みますので、遥かに有利な場合が
相当あります。こういう産業開発の
目的を持
つて敷設される
鉄道は、その
目的とする開発が
相当な段階に達するまでは、収支相償わないのが普通であります。その間、育成的な
措置を講ずることが必要で、やがては自立し、国民経済に大きな寄与をすることは明らかなのであります。
以上のように、国民生活上不可欠な
鉄道を
維持するため、或は重要資源の開発上重要な
鉄道の建設を促進するために、国家において適当な
助成措置を講じる必要があります。
最後に、
日本国有鉄道の新線建設に伴いまして、その
鉄道線路が
地方鉄道、
軌道に接近又は並行して敷設されますと、
地方鉄道業、
軌道業は非常な打撃を受けることになります。従来、
我が国がこういう
鉄道を敷設した場合には、国においてその
損失を補償することにな
つておりましたが、これは
地方鉄道業、
軌道業の公益性から見て当然のことでありますが、
日本国有鉄道という
公共企業体ができましたので、
政府と
日本国有鉄道との
関係を明確にすると共に補償
金額につきまして、最近の金利
状態等を考慮して新たな立法
措置を講じまして、旧
規定を廃止する必要が生じたのであります。
以上述べましたような
事情と、現在の国家財政の
実情とを勘案いたしまして、慎重検討を重ねました結果、成案を得ましたので、ここに
法律案として御
審議を願うことにいたした次第であります。
以下
法案の大要を申上げます。
第一は、天然資源の開発、その他産業振興上重要な
鉄道新線、並びに国民生活上不可欠な
鉄道に対する
助成措置であります。先ず、如何なる
鉄道を
助成の
対象とするかの点でありますが、今後敷設される
鉄道新線及び本法施行の時に運輸開始後十年を経過していない
鉄道のうち天然資源の開発、その他産業の振興上特に重要と認められるもの、並びに設備の
維持が困難でありながら、その運輸が継続されなければ、国民生活に著しい障害を生ずる虞れのあるものであります。以上の
鉄道に対しましては、平素特別の指導
監督をいたしまして、極力
経営の健全化を図らしめることといたしますが、それにもかかわらず、なお
経営困難と認められるときは、その
鉄道の
維持を
助成するための
補助をすると共に、こういう
鉄道の輸送の安全並びに
企業合理化上必要な改良に要する
借入金につきまして、金利の一部補給を行うことにな
つております。なお、
補助の
対象となる
鉄道につきましては、
地方税の減免ができる
建前といたしました。これは、国庫の
補助を必要とするほどの
鉄道でありますから、最も
関係の深い
地方公共団体もまた相応の援助をなすべきでありますので、
地方税を減免できるように特に
規定したわけであります。
第二は、
地方鉄道、
軌道に関する
営業補償の
規定であります。
現行の
地方鉄道法及び
軌道法には、こういう
営業補償の
規定がありますが、
日本国有鉄道という
公共企業体が
設立されましたことと、
営業補償の
金額の算定につきまして、最近の金利状況等に照して妥当な方式に改める必要がありますので、
現行法の
規定を廃止しまして、新たにこの
法律に
規定することといたしました。即ち
日本国有鉄道が新線を建設したために、これに接近し又は並行する
地方鉄道、
軌道の
営業が困難に
なつた場合において、
営業廃止による
損失又は
営業継続の場合の減収を
日本国有鉄道が補償することといたしましたが、この場合、
日本国有鉄道の
鉄道建設が
政府の命令に基く場合には、
政府が
日本国有鉄道にその補償
金額を交付することといたしました。更に
現行法には廃止補償
金額算定の場合の収益還元率が法定されていましたが、これを金利体系の変動に順応できるよう
政令に移すことといたしました。
第三は、
地方鉄道、
軌道の
補助に関しましては、一元的にこの
法律によるのが望ましいと考えましたので、
地方鉄道補助法及び北海道拓殖
鉄道補助二関スル
法律を廃止いたしますと共に、現在、北海道拓殖
鉄道補助二関スル
法律によ
つて補助を受けているものの既得権は十分に尊重するよういたしたことであります。
以上が、この
法律の概要でございまして、これらの
措置を講じて
地方鉄道、
軌道の
整備を図ることにより、産業の発達及び民生の安定に貢献いたしたい所存でございます。
何とぞ慎重御
審議の上、速かに御可決あらんことをお願いする次第でございます。
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