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前之園喜一郎君 私はこの
運賃値上
法案は非常に
不満であり、不平でありまするけれども、今日の
国鉄の
財政的面から
言つてこの際止むを得ないものと
考えて賛成するものであります。
先ほど
岡田先生から、今日の
国鉄の
経営は能率的に
合理化されておる、大体においてよくや
つておるというような御
意見がありましたが、私は或る面においては成るほど能率的に動いておる面もありましようが、大体に申しますると、
経営の
合理化というものにかなり遠い面も相当にあるのではないかという気持を持
つております。先ほど
中村委員からも御
発言がありましたが、
鉄道がいろんな
経営の面においてやるような、或いは
賃金の
値上げその他の
経営の面において足らなくなると、すぐ
運賃値上げということに呑み込んで、最も安易な
運賃値上げということによ
つてや
つて行くという
考え方については、私は
質疑のときも強く申上げましたが、非常に
不満であります。
経営の
合理化という面については、特に詳しく申上げたいのでありますが、おいくと里げまするが、
鉄道の
経営を賄
つて行く上においては、単に
運賃の
値上げというこれは誰でもできるような安易な方法を
考えるのでなく、多方面に亘
つて私は
考えなければならんのではないかと思うわけであります。それは
サービスの面とも関係がありますが、例えば非常に腐朽しておるところの枕木を取替えるとか、或いは機関車をよくするとかいうような保安上の問題についても、当局の御説明では千八百億から金が要るということで、こういうような金を現在の
国鉄で賄
つて行くなどということは全く夢である。恐らく十年や二十年でそういう時代は来ない、或いは一生来ないか、も知れないという気持を持つのであるが、こういうような面については借入金でやる、
政府の
一般会計からの繰入でやるというような積極的な、又非常に高度の
経営を
考えて、そうして
国鉄の整備をやるという方向に進まなければならないのではないかと私は
考えるのであります。この点については、特に私は運輸
大臣に申上げておきたいのでありますが、現在の
国鉄というものは、非常に
荒廃して非常に腐朽しておるということは、
国鉄の
専門家の人がこの
委員会に来て説明をされておるわけです。こういうような非常に不安定な
国鉄によ
つて国民が運ばれておるということは、全く許すことのできない問題だと私は
考える。これらの点について運輸
大臣は相当にこの際適当な方法を
考えられて、
運賃値上げというような安易な方法でなく、もう少し積極的な方法をお
考えになるように私は切にお願を申上げたいのであります。
なお、この
運賃値上げにからんで私は特に言いたいことは、先ほど他の
委員からもお話があ
つたと思いますが、この
貨物の
等級の
改正というものは
国鉄総裁の
権限においてできることにな
つている、
国会の承認も何も要らないことにな
つておるのでありますが、今回はたまたま
運賃値上げと関連してその
等級改正というものが強く
国会で取上げられて、
只今高田先生から
附帯決議のありましたような結論を我々は出したわけでありますが、併し
国鉄総裁がこれを
単独にその
権限で自由にやれるということは、私は
運賃値上げを
国会に承認を求めるというその
建前から
言つても、非常に矛盾ではないかという気持がするわけであります。ですからこれはどうしても法規等の
改正によ
つて、
等級の
改正によ
つて運賃値上げになるという場合には、
国会の承認を必要とするというように法規を
改正せらるべきものであろうと
考えるのでありまして、その点も私は希望
意見として申上げておきたいのであります。
今回の
運賃の
値上げは、
旅客、
貨物とも一割ということで、
国民は一割
値上げになるものだという期待を持
つておるというふうに
考えて、止むを得ないと思
つておる
国民もあるだろうと思うのでありますが、実際においては
旅客においても
運賃表をもら
つたのでありますが、或る区間では一割三分五厘、或る区間では一割二分、遠距離についても一割一分以上ということで、実際の面からいうと、一割ということは単に掛け声だけであ
つて、実際においては一割以上の
旅客運賃においても
値上りしておるということになるのであります。又
貨物のごときは、
等級改正と、この
運賃値上げと両方からみて五割も上るというような
品物もあるということにな
つて、この
現実に直面いたしまするならば、
国民が非常に驚くだろうと私は思うのであります。こういうようなことを私はいろいろと
考え合せまするときに、
貨物等級の問題、又今回の
運賃の
値上りによる一割以上の
値上げというような問題は、
国民に一割という約束をしたならば、一割の限度にとどめるということでなければ
国民は
国鉄を信用をしなくなるだろうということを私は強く申上げておきたいのであります。同時に
国鉄は事あるごとに
運賃の
値上げをやる。そうして
国民の生活を脅すのであります。官民を非常に困難に陥れるというような状況でありますが、止むを得ず
運賃の
値上げをやるならば、それに伴
つてサービスの改善をやらなければならんのではないか。私は具体的なことは申しませんが、先ほど申しましたような、
鉄道の保安的な面についても積極的な施策を講ずる、或いは又新線の建設の問題等についても
政府資金、或いは
鉄道公債等によ
つて積極的にや
つて、
国民に最大限の
サービスをして行かなければならないと私は思うのであります。新線の問題を特に取上げることは憚かりますが、先般運輸
大臣との
質疑の間にも申しましたが、今回の補正予算で組まれておりまするところの五億円で十三線の新線を建設する、同様に取扱
つたところの他の六線は二十八年度の予算であるか、それさえ明確でないというような誠に不公平なことをや
つておる。こういうようなことでは私はいけないと思います。これらの点についても
国民が納得するように運営をして頂きたいということもここに強く申上げておくわけであります。
それから
最後に申上げたいことは、いろいろな争議、
鉄道に直接関係のない炭労、電産等の争議、引続いて
国鉄内部の遵法闘争、或いは賜暇闘争等によ
つて非常に列車が削減せられておる。
国民は非常に困
つたのでありまするが、こんな問題については、私はやはり運輸並びに
国鉄当局というものが現在の労働運動に対する認識を欠いておられるのではないかというような気持が強くするのであります。この前
国鉄の幹部のかたが炭労ストを以て我々を責められるのは非常に遺憾であるという、これは公式の問題としてではありませんが、そういうようなお話もあ
つたのであります。私は終戦後におけるところの労働運動を、占領軍の監督下において相当な制限を受けてお
つたところの労働運動と同じように
考えておられるところに、非常な削減を止むなくせられたところの大きなる原因があるのではないかと思うのであります。
国鉄は六十万トン
石炭を貯蔵してお
つたと
言つて非常に威張
つてお
つた。それがそういう炭労ストで殆んど使い果して、第三次の別な削減をしなければならないという状況に立ち至
つておる。今後労働運動というものは恐らく今よりももつと猛烈になる、或いは時間的にも長い労働運動か或いはストが行われるということを我々は
考えなければならんのであります。炭労のごときは
国鉄のあずかり知らないものであるという
考え方は非常に誤ま
つておるのであります。ですから六十万トンで事足りるというような安易な
考え方ではいけないと私は思うのであります。この炭労、電産のストというものによるところの背後関係、思想関係というものを十分に
考えて行かなければならないのであります。
国鉄のストにいたしましても、或いは法規上遺憾な点もありましようが、私は今日のストなどというものは権力を以てたやすく抑圧できるものではないということを強く申上げて、よく労働運動の性質、方向、思想、そういうようなものを十分にお
考えにな
つて、温かい気持を持
つて労働運動を眺めて行く、取扱
つて行く。そうして
国民に迷惑を及ぼさないような方向に持
つて行くように
運輸当局なり
国鉄の幹部はお
考えにならなければならないのであります。六十万トンの
石炭があるから能率化されるというようなあまい
考えはこの際お捨てにな
つて、どのくらいのストが続いても
国鉄は安全であるという方向にお
考えをお変えになるようにお願い申上げたいのであります。将来においても、
中村委員からお話がありましたように、
国鉄の
経費というものがだんだんとかさんで行くということは、これは容易に想像ができるのであります。でありまするから、
経営の
合理化等の面において万全の策を講ぜられて、一にも二にも
運賃の
値上げで賄
つて行くというような安易な
考え方はこの際お捨てを願いたい。今回は私ども止むを得ずこの
値上げの
法案に賛成いたしまするが、以上申上げましたようなことを附加えて
意見として申上げるわけであります。