運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-15 第15回国会 参議院 運輸委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十五日(月曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小泉 秀吉君    理事            岡田 信次君            小酒井義男君    委員            入交 太藏君            植竹 春彦君            仁田 竹一君            小野  哲君            内村 清次君           前之園喜一郎君            鈴木 清一君   政府委員    運輸省鉄道監督    局長      植田 純一君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君    常任委員会専門    員       田倉 八郎君   説明員    日本国有鉄道総    裁       長崎惣之助君    日本国有鉄道営    業局長     津田 弘孝君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法  律案内閣送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第  二項の規定に基き、国会議決を求  めるの件(内閣送付)   —————————————
  2. 小泉秀吉

    委員長小泉秀吉君) これより委員会を開会いたします。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を一括して議題といたします。御質疑のあるかたは順次御質疑を願います。
  3. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 この前運輸大臣質問したときは、総裁おいでになりましたね、大体あのときの私の質問の要項並びに運輸大臣の御答弁はおわかりになつておりますね。大体おわかりですな。
  4. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) ええ。
  5. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 まあそういう点成るべく重複しないように質問いたしますがう第一の問題は、この収支均衡を補填するのに一般会計から繰入れをすることもできるし、又そういうようなことも今までやつているのですが、こういうような方法について何か手段を尽されたことがあるのですか。もうすぐ運賃何割増しという方法に持つて行かれるのかということを伺いたい。
  6. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) お話通り政府から補給というような途もございます。併しながらそれはいよいよいよ決算になつて赤字なつた場合に起つて来る問題でございます。殊に石炭々価の値上りであるとか、給与ベース引上げ等による支出は経営的なものでありまして、これを借入金によるというわけにも私はいかんのじやないかと思います。又補給金にしても一時はそれで済むかも知れませんが、後年度ずつと長く続くことになりますから、できる限り経費の節約或いはいろいろな方法で捻出して収支を図らなければならん、あらゆる手段に訴えましたが、到底金額を償うわけにも参りませんので、実は前々から申上げておりました通りに、そのほかに施設の荒廃その他のローカル線サービスの改善というようなことにも相当経費が要りますので、それらに充当するために或いは借入金というような方法もあります。その方面では例えば経費繰延決算をするということも事ます。いろいろ考えたのでありますが、私の今まで大蔵省その他の話、財政資金の話を伺つて見ますと、これを借入金だけでやるというわけにもなかなか参りませんので、止むを得ず、御承知ではございましようが、三割の運賃値上げということをお願いしたのでありますが、これは政府物価に対する方針経済政策というような面から一割というようなことに相成つたのであります。それで御承知のように本年度あと二、三カ月しかございませんので、やはり収支不足があるので、この借入金で賄うということにいたして参つたような次第であります。
  7. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 前の村上大臣の時代に、電化並びに新線建設等の費用に充てるために、それだけに使う金として運賃も二割ぐらい値上げしたらどうだろうという話を聞いたのでありますが、これは公式であつたか非公式であつたか記憶いたしませんが、かなり真剣な気持を持つておられたように聞いておつたのでありますが、そういう問題について、やはり総裁のほうでも何か具体的なお考えを持つておられるのか、それを今後においても考えることはなさらんのかどうかということを承わつておきたいと思います。
  8. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 実は三割の運賃値上げの場合にもそういうような根本的な問題について考えたわけであります。大体新線建設については、私は政府の出資、利息のつかない金を出して下さい、それはもう国家の財産の増加することは必然でありますから、それでよいじやないかと思います。それができないなら利子補給とか、或いは無利子の貸金というようなことにしてもらいたいという強い希望を持つております。これは本年度補正予算にはいたしませんが、来年度は是非そういうふうにして頂きたい、かように考えております。  それから電化その他将来の改良で行くもの、そういうようなものについては、これは借入金に頼りたいと思います。それから復元減価償却不足と囲いうようなものはこれま実は経営費と見るべき性質のものでありますから、やはり収益から持つて来るのが本当だろうと思います。けれどもこれはなかなか容易じやありませんから、その面も先ほど申しました通り、でき得るなら借入金でも仕方がない。ともかく一日も早く立派な鉄道に持つて行きたい。又それによつて収益もだんだん上つて行くようになりましようし、御承知のようにローカル線などは昔十数回やつたものが今五回になつているというようなことで、それらについてはヂーゼル動車化というようなことをやりますれば収益が上つて来ることは目に見えているのです。ですからそういうものを一日も早くやりたいという計画で、大体の計画は二十八年度、即ち今度の三割値上げのときに立ててございますから、そういうことを又御説明申上げる機会があるかと思います。
  9. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 運輸大臣提案理由の中に、「戦時中、戦後の資金資材事情のために、現在緊急取替えを必要といたします施設、車両についての復元等を考慮します。」というふうになつております。今申上げましたようなことは、これは当初予算で当然考慮すべきものであつて補正予算にこれを盛るということは、経費の上からも非常に当を得ないものではないかと思うのですが、そういう点についての御意見はどうですか。
  10. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 今度の補正予算には復元経費増加とかというようなことは見てございません。これは来年度以降に起る問題でございます。
  11. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 そうするとこの運輸大臣提案理由説明違つていることになるわけですね。
  12. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) これは運賃値上げがなぜ必要であるかということの問題でありまして、補正予算財源にするという意味では必ずしもないと思います。将来に亘つて運賃値上げ理由としてはそういう考えもあるからと、こういうふうに言つているのではないかと思います。
  13. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 つまり運賃値上げというものが補正予算で使われるいろいろな財源になつているのですね。例えば給与ベースの問題とか、その他これに書いてある財源になるわけなのですから、運賃値上げといわゆるこの説明とは合致しなければならんと思う。運賃値上げとこれとは別だという説明はおかしいでしよう。現に運輸大臣はそう言つている。こういう必要があるから運賃値上げをしなければならんという説明をしておられる。
  14. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) それは運賃値上げ必要の理由ではございますが、その金がすぐ補正予算復元とか、それに使われているわけではございません。そういうものは御説の通り年度当初から考えなければならん問題でありまして、今度の補正予算に上げるべき性質のものではないと思います。
  15. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 これは後ほど数字をはつきりして頂くところで聞きましよう。最も大事なことは経営合理化という問題だと思うのです。この前も質問いたしましたが、どうも金が足らなくなればすぐ運賃値上げをやる、これは一番簡単ですね、国会通りさえすればくれるのだから。国会で今まで通らなかつたことはない。これくらい簡単なことはないのです。運賃値上げによつて足らないところを賄つて行くということは非常に安易でやりやすい。併しこういうことでは私は健全な国庫の財政というものは確立できないと思う。ですからどうしてもこれは運賃値上げというような安易な考え方でなく、根本的な一つ経営の樹立をしなければならんと思うのです。今のこの点については、総裁運輸大臣違つてこれは玄人です。専門家ですから、運輸大臣のようないい加減なことをなさらんと思うのですが、恒久的な経営合理化健全財政の確立ということについての何か根本的なお考えをこの際承わりたいと思います。
  16. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 全くお説の通りでありまして、運賃さえ値上げして、それで済ませるものなら非常に簡単でございます。おつしやる通りであります。我々としてはできるだけ安い運賃でよいサービスを提供するということが根本の原則でなければならんことはお説の通りであります。ただ国有鉄道は御承知のようにいろいろな国の財政経済政策というような面から、必ずしも私は運賃が高いとは思いません。むしろ諸物価その他から見ますと少し安いのではないかというような気もいたします。が、併しこれはおのずから国鉄公共性というような面から参る一つ考え方でありましようから、これも或る程度私はそういう政策従つて行かなければならんかとも思います。無論そのほかに積極的、というのは、仰せのように経営合理化をやる、或いは増収計画を立てる、いろいろなすべきことはたくさんあると思います。ただ併し消極的な経営合理化、人員の整理でありますとかいうようなことは、ほぼ私はこれ以上はなかなかむずかしい。六十数万ございましたものを二十万も減らしまして、そうしてそのほかに新らしい制度の労働基準法でありますとか、或いは当時、戦前におきまして相当拡張されておらなかつた自動車営業キロ程が非常に多くなつたとか、或いは志免の鉱業所を引受けておるとかいうような観点から考えますと、只今の四十四、五万というところはぎりぎりの線じやないかと思います。これ以上これを切詰めることは困難だと思います。そこで細かい仲裁裁定理由書なんかにも指摘されてありますように、土地物件貸付料を上げるとか、いろいろな点がございます。それらについては、今回の補正予算の場合においてもすでに一部実施したものもございます。ただこれらの貸付料等は、土地物件貸付料に関する統制がまだ解けておりませんので、これに従わなければなりませんから、もう世間一般でやつているような大幅の引上げということはできなくても、少くとも今度の予算等においても二十数億円でありましたか、そういう面についても十分の努力をしておるつもりでございます。まだまだ併しこれでは足らない部分が大いにあると思います。更に積極的に増収を図るというようなことは、先ほど申上げましたように、ローカル線などにヂーゼル・カーというようなものを動かせばいいのでありますが、それを作る資金がなかなか手に入りませんので、何をするにもやはり多少の金は要るのでございまして、みすみす増収ができるのにできないというような悩みがあるのが現在の国鉄の姿でございます。併しながらそれらもできるだけ工面をいたしまして、早急に健全化すると同時に増収を図り、そうして仰せのように国鉄がだんだんよくなつて行くという方向に持つて行きたいと思つて、来年度予算においてはそういう面を相当に私は持つて行きたいと考えております。
  17. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 お話はよくわかるのでございます。又筋の通ることなんですが、実際においてはこれは収入増加、いわゆる増収ということは総裁の御希望、或いは御決意と逆のコースを辿つておるのじやないかという気持がするのです。現在の国鉄の動きを見ても全くその通り、これは客観的に或いは国鉄内部紛争等によつて逆減収の一路を辿つて行くのではないかという気持が強いのであります。これはあとでストの問題とも関連して更に質問をいたしますが、恐らく現状のような問題が、これは将来も起るでしよう。労働争議のごとき問題は起るでありましようし、いろいろな面において私は国鉄増収ということには困難な問題が今後も続々起るのではないかという気持がするわけでございます。ですから私どもその経営合理化ということについては、各方面亘つて考えなければならんと思うわけでありますが、その一つとして、前の村上運輸大臣のときに自動車経営について私は運輸当局根本方針を聞いたことがあるわけであります。その答弁によりますると、村上運輸大臣自動車民営に移すということを考えておる、民営に移してそうして自動車民営でやるようにするということを根本方針としておるという御答弁を得ておるわけであります。併しこれは総裁のお考えと違うかも知れませんが、私どもそういうふうに持つて行くのが多少いいのではないかという気持を持つて研究もしておるわけでありますが、現在の国鉄経営しておる自動車というものは非常なる欠損をしております。年々十億内外の欠損をして、又これに要する運輸省国鉄人件費等を加えると非常に相当額欠損になるのではないかということが考えられるわけであります。こういうようなものを早急に民営に移し、現在又国鉄民営といたしましてどちらが優れているかというと、私は非常に狭い範囲でありますが、国鉄の車より遥かに民営の車のほうがいい、九州あたり私の乗つた範囲では遥かに民営のほうがサービスもいいというようなことが考えられるので、こういうような切離していいようなものは、成るべく早い機会民営に移すべきものは民営に移して、そうしてできるだけ国鉄減収を防いで行くというような方向に持つて行くべきものではないかと考えるわけでありますが、そういう点についての総裁の御意見をこの際承わつておきたいと思います。
  18. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 自動車現状は、今日までのところ御説のように赤字でございましたが、だんだんと改善されまして、来年あたりにはほぼ収支相償うようになるのではないかと思つております。併しながら御説のような考え方もありますので、これは大いに研究しなくちやならんと思つておりますが、一方において又国鉄で是非やつてくれという御希望の多いところもあるのでございまして、ここらはよほど研究を要する問題ではないかと思います。と申しますことは、まあ御説のような点もあり、こちらのサービスが非常に劣つておるというようなこともありましようが、そうでなくてむしろ国鉄などは几帳面に運転をするというような点で歓迎される向もあるのでございまして、これらの点とくと考慮してやつて行きたいと思つております。
  19. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 自動車関係は、私は一例として申上げたわけでありますが、併し私はこの問題に非常に関心を持つておるわけであります。地方において国鉄が、民営が現にあるのに強硬に乗入れをやろうというようなことで摩擦を起している所も相当にあるやに聞いておる。国鉄方針としては、やはり私は将来は自動車民営に移して、そうして民営を育成して行く、監督育成して行くという方向に持つて行くことが国鉄経営の上から言つても非常にいいのではないかという気持を持つておるのでありますが、これらに要する資料、まあ昭和二十七年度、今お話の二十八年度は大体バランスがとれるというようなお話でありますが、そういうような資料等一つ提出を願いたい。  それから次に、これは運輸大臣お答えにならなかつた点でありますが、運賃値上げによつて物価産業経済、いわゆる国民生活影響を及ぼす面は十分な御研究になつておると思いますが、どういうような程度影響国民は受けるか、物価値上りその他について一通り説明を頂いて又資料等もお出しを願いたい。
  20. 津田弘孝

    説明員津田弘孝君) 只今前之園委員からお話のありました今回の一割程度運賃値上げを以ちまして、それが国民生活に、或いは産業にどのような影響を及ぼすかということにつきましては、国鉄といたしましても慎重にこれを研究いたしたのでございます。先ず第一番目に勤労者に及ぼす影響、その点につきまして申上げたいと思うのでございます。昭和二十七年度におきまする国民の総所得は四兆八千四百九十四億ということになつております。で、二十七年度における定期外国鉄収入は七百五十五億ということに相成つておりまするので、国民所得の中に占める運賃の割合というものが〇・〇一五、一分五厘ということに相成つております。昭和二十六年度におきましては、先ほど国民所得四兆八千四百九十四億と申上げましたそれに相当する国民所得が四兆八百三十九億、それから二十六年度における定期外国鉄運賃収入は五百二十二億でございます。その比率は〇・〇一二七、一分二厘・七毛ということに相成つております。従つて一分二厘七毛のものが一分五厘五毛に殖えて来ていると、こういうことでございます。それにいたしましても、それほど比率の上昇を見るというわけではございません。これは個々の実際の勤労者の家庭にどういう影響があるかという点でございまするが、現在これは官吏、一般公務員の例で先ず申上げてみたいと思いますが、一般公務員の現在の賃金ベースは、労働省の調べによりますると、一万六百五十円でございます。それに対しまして一人の平均旅客運賃、これは平均の距離に掛けておりますが、五十七円九十銭ということでございまして、その比率が五彩四三ということに相成ります。それで公務員が今回考えられておりまする給与改訂によりますると一万三千二百円になるのでございます。で、今回の一割の値上げによりまして一月平均旅客運賃が六十三円六十八銭ということに相成りまするので、この比率は四%八二ということになりまして、むしろ公務員一人当り運賃についてみますると、比率が下つて来ているということでございます。勿論このことはその公務員が一月に一回旅行した場合こういうふうな比率になるわけでありまして、一回の旅行ということはこれはやはりあり得べからざることでございますが、私の調べてみたところによりますると、官公吏は一カ月平均に三・八回旅行する。で、そのうち私用が一・〇六というような統計も出ておりまするので、まあこういつたことも一つ参考になるのではないかと思います。公務員以外の工業労働者によりまして、今申上げましたようなふうに弾きますると、現在が四・〇二だつたものが四・八三とこの場合は上つておりますが、上り方が少い。これはまあ定期外の場合でございますが、定期につきましても同じような計算をいたしております。一般公務員賃金ベース改正の一カ月の定期運賃とを比べてみますると、賃金に対しまして五・〇七で、従来は五・五四ということになりまして、これは比率は下つて来ております。これは給与ベースが上る予定という前提に立つておるから、こういうことに相成るのであります。これが旅客関係でございます。  今度は貨物関係につきまして、今回の運賃値上が如何ような影響を及ぼすかということでございます。二十六年度の国内の総生産高が五兆三千六百九十八億円ということでございます。それに対しまして、二十七年度の現行の運賃ベースによりまする貨物収入が九百九十億円でございまして、その比率は一・八%ということでございます。で今回の一割値上によりますると、貨物運賃収入が千百九億円ということになりまするので、その比率は、総生産額の二%ということになります。で、総生産額に対して、貨物運賃の一割値上げはそう大した影響がないであろうというような計算を一応いたしておるのでございます。で、個々貨物物資が、今回の運賃値上げによりまして、価格の中に占めるところの運賃がどのような比率になるであろうかということにつきましては、細かく計算したものがございます、主要物資につきましては。お手許にあとから差上げたいと思つておるような次第でございます。で、ただ貨物関係につきましては、従来の運賃値上げの際もそうでございますが、運賃値上りしたからそれだけ物価影響を及ぼすということも勿論あるでございましようが、それ以外のいろいろな需給の関係、貿易の関係、或いは景気不景気の経済景況関係によりまして、大きな影響を受けております。昨年三割五分の値上げ貨物運賃につきましていたしました。それがそのまま物価に反映しているかと申しますと、全体としては物価は横ばいの状態であるということに徴しましても、運賃産業に及ぼす影響というものは、そのまま計数に現れるのではないかということが言えると思つております。御参考までに……。
  21. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 これは前から資料の御提出を願つておりますから、一応貸料の御提出を頂いて、更に適当な機会に御質問いたしますが、今営業局長お答えになりました貨物運賃は、平均一割程度値上りとしての数字にばるのが、その等級改正、いわゆる昇級の改正によりますると、貨物運賃値上りは恐らく一割やそこいらではきかないということになるように思うのですが、そういう点はございませんでしようか。
  22. 津田弘孝

    説明員津田弘孝君) 今回の国鉄貨物運賃値上りは、大体現在の収入千億に対しまして、一割の百億の増収を平年度において見ておるのでございます。政府の御決定によりましても、おおむね一割の増収を上げるというふうに賃率考えるということに相成つておりますので、賃率自体といたしましては若干一割を超えているところもございますし、へこんでいるところもござまして、これは賃率作成上の技術に属することでございます。只今前之園委員から御指摘のございましたのは、恐らく今回国鉄計画いたしておりまする貨物等級改正によりまして、一割値上げ言つているにもかかわらず、物資によりましてはその影響が一割以上に及ぶものもあるのではないかというような御趣旨ではないかと想像するのでございます。まさにその通り物資によりましてはそういつたものもあるのでございます。で、それにつきましては、等級改正趣旨、経緯、或いはそれに盛られておる内容につきまして細かく御説明を申上げる機会があればと思つてつたのでございますが、まだそういう機会がございませんので、極めて簡単に結果だけ申上げますると、従来この貨物等級ができましたのが、もう昔からあるのでございますが、根本的な大改正をいたしましたのが昭和五年でございまして、今回の等級改正は二十年振りの大改正に属するのでございます。この前の議会におきましても、去年の十一月の運賃値上げの条件といたしまして、貨物等級の再編成、合理的な均衡のとれた等級を作成すべしというような御意見が非常に圧倒的に強かつたのであります。それに伴いまして国鉄といたしましては、貨物等級審議会をこの春作りまして、各界の産業の代表のかた、学識経験者、或いは各主務官庁責任者というようなものをメンバーにいたしまして、鋭意慎重に作業を進めて参つたのでございます。等級改正根本的な方針として御答申を頂いたところによりますると、先ず貨物負担力、これは価格によつておおむね表示されるのでございますが、それを一つ要素にして等級の再編成をする。それから次には貨物輸送原価コスト。物によりましては冷蔵車で運ぶ。或いは通風車で運ぶというふうに、特別の貨車で運ぶような場合には、特別に原価コストを余計に要する次第でございますが、そういつた輸送コスト、そういつたものの要素を第二番目として考える。それから第三番目には、そういつた負担力、或いはコストだけで弾じいたものに対しまして、社会公共的な見地から考えなければならないものがあるのでありまして、そういつた公共的な考慮を第三番目にする、こういつたような三つの要素によりまして、私どもは細かく全部の具申につきまして等級を再編成いたした次第でございます。新らしくできました等級表によりますると、そういつた等級審議会の御答申そのままによつたにせよ、個々物資につきましては、従来に対しまして相当等級が高くなる、或いは従来特殊な考慮から非常に等級が下つていたものが、今回の方針によつて上るというようなものもできて参りまして、現在の等級或いは等級表に対しまして非常に或る程度変化が出て参りました。その結果一割の値上げは当然にすべての物資がこうむるわけでございますが、更に等級改正によりまして、値上り率が多くなつて行くというようなものがございます。併しそういつたものにつきましては、すべての取引がやはり現在の運賃ベースでやられておるというような関係もございまするし、余りに急激な変化を物資に、又産業面に及ぼすということは、これはとるべきところではないというふうに考えますので、そういつた運賃値上げ率の特に大きなものに対しましては、目下物資官庁でありまするところの通産省、農林省と鋭意打合せを遂げておる最中でございます。
  23. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 国民の受ける感情から言いますると、運賃一割を上げる、旅客にしても、貨物にしても、大体一割程度のものを上げると言いながら、同時にこの等級改正をやつて、或るものによると大幅な運賃引上げになるというようなことで、あたかも国鉄国民を欺瞞しておるような印象を受ける面も非常に多いと思うのであります。そこで私はお尋ねするわけでありますが、等級改正によつて、大体貨物運賃値上りは幾らになるのか、数字の面について幾らになるのかというその数と、これの影響というものについて大ざつぱでよろしうございますからお教え願いたいと思います。
  24. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 只今の御質問に対しまして根本方針だけを私は申上げておきますが、実はこの等級審議会が最初に仕上りましたときに、私から委員のかたがたにお願い申上げましたのは、この等級改正国鉄増収を見込むものではない。不増収、不減収の建前でやつて行きたい、こう申上げてあるわけであります。でありまするから、数字がどういうふうになるかわかりませんが、根本方針としては増収もせず減収もせず、現在の運賃収入そのままで、ただ世の中の変遷に従つて等級の中にアンバランスがあるのを改正してもらいたい、こうお願いしてあるのであります。
  25. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 併し実際においては非常に上るのじやないですか、どうなんですか。
  26. 津田弘孝

    説明員津田弘孝君) 只今総裁から申上げました通り、総体の額におきましては不増収、不減収でございまして、この等級改正によりまして特に増収を見込んだというものはございませんであります。下る物資相当ございますし、上る物資もある、全体といたしましてはとんとんである、こういう点におきましては間違いございません。
  27. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 これに要する資料、今お話の内容等について詳細の資料一つお出しを願いたい。木材運賃の問題も、その興ろくと私どもも疑問を持つておる点が多いので、改めてその点を御質問したいと思います。  次に、運質の値上げをやる、私どもも運輸委員を三年半、四年近く委員をやつておるのでありますが、その間に何回か運賃値上げをやつておる、足らなくなるとすぐ運質の値上げをやるのですが、今後においても恐らくそういうことがあると思うのですが、率直に申上げて国民感情から言うと、運賃はむやみに上げるがサービスはこれに伴わないという気持が非常に強い。国鉄で言われるサービスというものは非常に広範囲である。例えば枕木を取替える、或いは貨車をよくするというようなことで非常に広範囲のものをサービスであるというふうにお考えになつておりますが、それはそうでありましよう。併し国民の感情から言うサービスというものはそういうものじやない。鉄道は完全なる運転、運行をやるということは当然なことです。サービスというものはそれ以上に出なければならないものではないかと私は考える。終戦後に非常に鉄道サービスの点においてお話にならなかつたが、漸次によくなつておるということは私どもは認めるのでありますが、私ども年中旅行をいたしております者でもそういう点は認めるが、現在においても私は大変サービスが悪い面が多い、特に最近国鉄における争議も頻々として起つてサービスはむしろ低下しつつあるのではないかという感じを受けるわけでありますが、運賃値上りと同時にサービスの改善等も当然考慮せられていいものであろうと思うのです。具体的な例を一々申上げるわけに行きませんが、旅行をいたしまする一旅客として私ども考えますと、私どもは主に霧島号という急行列車に乗りますが、この列車に乗つて非常に愉快だという気持を持つたことはありません。実に不愉快だ、車掌は乗つているのかどうか知らんが、乗つているのでしようが、めつたに来ない。ボーイだつてなかなか掃除もしない、三等のごときは殆んど塵芥と同居して三十時間も汽車に乗つておるというような状況であります。食堂にいたしましても非常にこれはひどいものを食わせる。旅客が一番困難を感じまする食事等が非常に愉快に得られるかというとそうではない。恐らくこれは日本一の私はまずいものではないかという気持を持つております。食堂の食事が非常によかつたという声を私はまだ聞いたことがない。恐らくこれは日本一のまずい食堂の見本みたいだという感じがする。自由党内閣の運輸大臣と似たり寄つたりのまずさだという私は感じを持つた。こういうものに対して国鉄当局はどういうようなサービスの改善を心がけておられるのか。具体的にどういうものを提供しておるというような点について御調査になつたことがあるのかどうか。又客車の中の衛生上の問題にしても、どういう程度の設備或いはサービスをしておられるつもりであるのか、現在で満足しておられるのかどうか。又時間にいたしましても、鹿児島から東京まで三十三時間もかかつておる。途中の駅で相当長い間停車しておる。もう少しスピード・アップができそうなものだが、これも一向できない。或いは又東京、博多間の特急をやれという声も相当に長い間あるのだが、これも実現をされていないというような実情で、私は賃金値上げはするがサービスは一向やらないという感じを非常に強く常に抱いておるものでありますが、この値上げによつてサービスの面等においてどういうような施策を講ぜられるつもりであるかお伺いをしておきたいのであります。
  28. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 私から概略的に今の御質問に対してお答えをいたします。お説のように、国鉄サービス戦前の状態はおろか、まだまだそこまで行つておらんという点は御指摘の通りであると思います。つきましては、私は先ほど来しばしば申上げておりますように、何と申ましても国民鉄道を我々は信託を受けて動かしておるのでありますから、国民各位から信頼され喜ばれる鉄道にしなければならんということはもうしよつちゆう安全、迅速、快適というような三大原則と申しますか、そういう面は厳重に心がけて行かなければならんことは申上げるまでもないことでございます。それにつきましてはでき得る限り一生懸命やつておるつもりでありますけれども、いろいろな困難、殊に御承知のように日本全国に跨つておるというような広汎なものでありまして、而もそれが戦争中或いは戦後の五、六年間というものは資材その他の隘路のために放つたらかしておかれた。それを急速に回復しなければならんのでありまして、非常に手が廻りかねるということは事実でございます。けれども、我々が苦しいということは、何も国鉄だけの問題ではなくて、日本全体の生活なり経済というものが皆苦しいのでありまするからして、私どもとしては苦しい中からも一歩々々よいほうによいほうにと向つて行きたい、かように考えておりますので、先ず私は無論幹線についても御指摘のような点が多々あると思います。或いは急行の増発ということについても考えたのでありますが、諸般の事情はなかなかそこままで進みませんで、今日もまだそうなつているというような状態でありまして、又一歩々々前進して行きたいということについてはしよつちゆう考えておる次第でありまして、来年度予算においては、先ずローカル線のために考慮一し、或いは電化をもう少し進めて行く、或いはヂーゼル機関車というようなものの施策をいたしておりまするが、これが完成の暁には、煙の出ない機関車を使つてもつといいサービスをするというふうなこともいろいろ考えておる次第でございます。なおそのほか都市附近にいたしますと、通勤の激増というような点で、これらにおいても相当な金を注ぎ込んでいるが、或いは北海道の開発に伴う港湾或いは港湾に至る線路の開発、殊に御承知のように日本の国情が一変しまして今までは朝鮮、台湾方面相当依存という言葉は穏当でないかも知れませんが、向うからいろいろな物資が入つて来るというようなわけで、南方の資源に日本の産業の基盤をおいておつたという点がございますが、これは今度は北方に変つて来ましたので、東北本線でありますとか、或いは中央線というような方面に非常に荷の勝ち過ぎる点が出て参りますので、これらの点にも十分意を使わなければならん。考えて見ると四方八方いろいろなことがございますので、これは一遍にそうやられんのであるから、順序を立てていずれは継続的な計画をしてやつて行かなければならんと考えております。
  29. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私の非常に申上げたいのは、結局鉄道職員の心がまえとかサービスの面において非常に大きな役割りをするのじやないかという気持がするのです。同じ急行に乗りましても、九州線と東海道線で非常に違う。九州線ではボーイでも非常によく働くのです。これが実にこまねずみのようによく働く。車内も非常に清潔だ。ところが一歩東海道に入ると、もうそれが乱れて、給仕はどこにいるかわからない。今申上げましたように非常に車内は不潔だというような状態で、結局鉄道職員に対する国鉄幹部の平素の訓練と申しますか、そういうような点について欠けるところがあるのではないか。尤も戦後においては、昔のような上官が下僚に対する態度では無論いかんのでありますが、そこに何かしら不徹底なものがあるのではないかという感じを私は非常に強く持つのです。同じ国鉄の中で同じ列車に乗つてそういう感じを強くするのでありますが、こういうような点について総裁はどういうふうにお考えになつておるかということが一つ。  もう一つは、客車が、今お話もありましたが、幹線とローカル線と、まあ幹線のうちでも一部の地域と非常に違う。例えば東京、熱海間を走つておる三等と、ローカル線を走つておるところの三等では、これは雲泥の相違である。この熱海線を走つておる三等というものは、九州線を走つておる二等よりもずつといいというような感じを受けるのですが、大体客車などの標準というものがどこを標準にしてあるか。どこを標準にしてやつておられるか。この前、今衆議院議長をやつておられる大野伴睦さんが鹿児島に旅行に来られて、日本にもこういう汽車があるのか、これは全く五等車だと言つて非常に政府与党であることも忘れて攻撃をされている。そうして大きく取上げたのでありますが、そういうふうな状況であります。少し勾配のある汽車に乗つて見ると、例えば鹿児島の日豊線の霧島、新宮あたりの汽車に乗つて見ますると、殆んど汽車の中はもう煙で一ぱいになつてつて窒息しそうになつておる。今申上げたが、鹿児島線では八十人くらい窒息で死んだ。新宮駅のあの駅でも、窒息はしないが、恐らく一帯に被害を受けておるものは相当にあるだろうと思うのです。こういうようなふうに、同じ三等でも非常に違う。どこに標準を設けておられるか。農村を走つておる列車と遊びに行く列車は、無論人間は休養も必要であり行楽も必要でありますが、遊びに行くような列車は非常にいいのです。農村のごとき孜々として働いて国民生活資料を稼いでいる者の乗る汽車はお粗末で、ともすると煤煙が出て窒息をする。ガラスもない。今はそういうものはないかも知れませんが、以前には窓ガラスもなければ、腰掛は破れているというようなものが走つている。どこに標準を置かれるのか。熱海のようなああいう客車を標準にして考えられるのか。或いはローカル線のあのお粗末な汽車を現在においては標準として考えておられるか。この点を一つ、二点お伺いしたいと思います。
  30. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) ローカル線の客車が非常に荒廃しているということは率直に認めます。従いましてローカル線の三等ですか、それはできるだけ標準に直して行かなければならんと思うのであります。それで実はこういうことが御参考になるかと思いますが、戦争前の昭和十一年の頃は、木製の客車が七〇%、鋼製の客車が二八・八%です。この木製車が非常に悪くなつたのが原因でございますので、その後終戦後鋭意木製車を鋼製車に改造いたしております。今日では木製車が逆に三三・五%、鋼製車が六六・五%というふうに殖えて参つております。これは漸次殖やして参りまして、木製車を全部駆逐してしまおうというつもりでおります。基準はどこにあるかと申しましたら、これは無論大衆の二等車というものを改善して行かなければならん、そこに重点を置く。そうすると、今日においてはローカル線、地方路線というものを改善しなければならん、かように考えております。  従事員の指導訓練につきましては、これはもうどんなに施設が立派になりましても、それを動かすものが人でございますから、その人に当を得なければいけないということは、もうしばしば私は機会あるごとに申しておるのであります。それで指導訓練につきましても、今日では、お説のように昔のような方法ではいけないので、何と言いますか、教育方面かいろいろなことを考え、通信教育のようなものをやつております。それから学校と申しますか、私のほうでは教習所と言つておりますが、この教習所は程度の高いここを教えるものをやつております。今年八十周年記念の事業としてやつておるほか、教育訓練という面には一瞬努力して参りたいと思います。
  31. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私のお尋ねしているのは、遊びに行くところの列車に使てている車は非常にいい、そうして本当に働く人々の農民の車というものは非常に悪い、これらをどちらを標準にしておられるのかということを聞いているわけです。私の見るところでは、ローカル線のごときは鉄製の車を使つているものは殆ど見たことがないのです。殆ど私はないと言つてもいいのではないかと思うのですが、この六六%或いは三三%というこの車を、どういうふうに使つておられるか。例えば幹線にどのくらい使つておられるか、ローカル線にどのくらい使つているという数字がおわかりであるならばお話を承わりたいと思う。この前衆議院の運輸委員会で、私と同郷の永田君がこのことを非常に強く伺つたということを聞いて、全くその通りであります。ローカル線、殊に地方の辺鄙な所にある汽車なんか全くお話にならない。この比率についてお教えを願いたいと思う。
  32. 津田弘孝

    説明員津田弘孝君) 鋼製車、客車がだんだんと鋼体化されて参りました。木製車と鋼製車との比率につきましては、総裁から申上げた通りでございます。今前之園委員はそのように鋼製車が殖えて来たならば、もう少し地方のローカル線にも廻りそうなものだ、その比率はどんなふうになつているか、こういう御質問でございますが、今比率の点をはつきり手許に資料を持つておりませんです。実はこういう点のあることは御了承願いたいと思うのですが、これは主として国鉄の運転、保安、運転、保守というような技術的な面からと、それから客車の運用というような、かなり技術的な面から来るのでございます。何分にも、やはり何と申しましても交通量の多いのが本線、幹線関係でございますので、先ずそういつたような所に出来上りました鋼製車を優先的に廻すということは、交通の需要供給の関係から申しまして、当然そういうふうにならなければならんと思うのでございます。更に一列車の大部分が鋼製車である、その中に木製車を噛まして中に入れて行くということになりますると、一朝事故が起つた場合には非常にその事故の結果が甚大になるというような関係もございまして、先ず本線を走りまする列車から鋼体化の車を入れて行くというような順序になつておるのでございます。併しながら、私ども方針といたしましては、やはり地方のローカル線サービスが余りに悪い、客車が余りに本線に比べて貧弱であるという点は御指摘の通りでございますので、まあ若干将来は支線にも鋼製車が入るのだというような期待を地方のかたに持つて頂きますためにも、できます車両、これはそれぞれ管理局ごとに車の配属はいたしておるのでございます。管理局長に対しましては、まあそういつたような意味において、一車でも二車でも、少しずつでも入れて、地方のかたに期待を持たせるようなふうに措置をしたらどうかというような指導はいたしておるのでございます。
  33. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 汽車に等級がある。一等、二等、三等というふうに等級があつてそれぞれ金額が違うわけです。これは申すまでもなく一等は二等よりもいい、二等は三等よりも設備、サービスのいいということになることは間違いのないところでありますね。そういたしますと、やはり客車というものは等級の如何にしても、やはり国民の受ける平等の権利という建前からいつても、中央地方を問わず、客車の改善その他は平等に行われなければならんものだと私は思うわけであります。建前からいつて一等は二等よりも高い、二等は三等より高いということは今申す通りでありますが、それならば幹線は、特に遊楽地方に行く客車が非常にいいのなら、そういうものは高くして、悪いものはやはり運賃の原則に従つて安くするという、同じ賃金を取つて「甲の地方の乗客には非常にいい車をやつており、同じ賃金を取つて乙の地方の者には非常に悪い車を与えるということは、これは鉄道はおのずから暴利を貧つておるということになる。いい車を標準とするならばそういうことになるわけじやないですか。鉄道は非常に悪い車を使つて暴利を貧つておるという結果になる。等級というものがある。だから客車は殆んど、私の乗るところのものは二等が三等と言えるような車を使つておるのですね。鉄道はそういう暴利を或る地方の国民から貧つておる。そうして平等の権利を享受するところのこの憲法の精神に反するものがあるのではないかという気持を持つておる。その点は如何ですか。
  34. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 前之園先生のお説も、私はそういう考え方もできるかと存じますが、併し鉄道が暴利を貧つておるという言葉には私承服いたしかねるのでありまして、大体この国鉄の営業線数、収支の割合でございますが、それから見まして一〇〇%以下の線というものは本数で申しますと二十一本しかございません。あとの大多数、全部でここに載つておる本数というものは二百九線ですが、その約一割、これは又キロ数で申しますと大体三割程度ではないかと思いますが、そこだけ儲かつてつてあとは全部損をしておる。逆に申しますと儲かつておる線のほうが高い運賃を払わせられておるということが言えるかも知れない、皆にかぶつておるわけですから。総体としては何とかバランスがとれておるというわけでございますから、暴利を貧つておるというふうにおつしやられては困るので、そういう儲からん線を一つだけ切離してやつたら恐らく今より運賃が上るのではないか。そうしてむしろ儲かつておる東海道線なんかは却つて安くなるのではないかということが言えると思います。だから国鉄といたしましては、そういうものは総体的に考えるのでありまして、一つ一つ揃えますといろいろ問題が起るのでありますが、と言つて私はローカル線を悪くして放つて置いていいというのではなくして、できるだけ早くよくしなければならん、ローカル線を走る汽車も東海道線を走る汽車も立派なものにしたいと考えておるわけですが、何しろ場面が広くて、営業局長からお話申上げましたように技術的の面もございまして、一遍に手廻りかねるという状況でございますから、その点そういうふうに御了承を願いたいと思います。
  35. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 暴利を貧つておるということは理論的に申上げるので、悪い汽車に乗つてもいい汽車に乗つても同じ運賃を払うならば、悪い汽車に乗つて高い運賃を払うということは非常に不穏当である。今の局長の言をかりると、ローカル線は五等車である。五等車だというと、三等の運賃と、私計算してみると三等運賃の四倍払つておるということですね、客車のほうからいうと。一方は三等車で一方は五等車である。二十五円のものを百円払つておるということになるのですが、まあ道理から考えてそういうことになるのです。これは非常に暴利を貧つておる。而して乗客は悪い汽車に乗つて損をしておるということになるのですね。公共企業体であるから、儲かる線も損する線もあることは当然である。そうして足らないならば一般会計から繰入れるという法律もあるのですね。ですからそういう話は私どもは納得ができないのです。具体的にあなたのほうで暴利を貧つておるということを言つておるのではなくして、理論的にはそういうことになるということを十分にあなたのほうはお考えになつて然るべきものだと思います。ローカル線だけは非常に虐待されるということは私どもは承服ができないのです。それ故にこの公共企業体は独立採算制であるが、国費の繰入れもできるという窮通の途もあるのですから、こういうふうな方面にもう少し全力を注がれて然るべきではないかと私は考えるわけです。  併しながらこれは非常に議論になりますからこの程度にしておきますが、最後に、現在行われておるスト、電産スト、炭労スト、更に鉄道の遵法闘争、或いは賜暇闘争、こういうようなものの国鉄経営に及ぼす影響等を考えて、この一割運賃値上げ年度内の四十二億というものが確保できるのかとうか、換言すればストに対する見通し、正常運転に返されて、いわゆる予定の収入を挙げるのはいつになるのか、その間どういうふうな収入減を来たすのであるか、収入の面からお伺いしたいのでありますが、差当り直接あなたのほうに関係のある、あなたでできるところの国鉄の闘争ですね、このストの見通しについてお話を承わりたい。
  36. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 炭労、電産等のストライキにつきましては、これは私も非常に困つたことであると思つて憂慮をいたしておりますが、これはもう私のほうの範囲でないので、全く外部のことでございますから、いつまで続くかわからんというふうに考えております。これによる収入減も、従いましてこれはいつまで続くかということによつて違つて来ると思いますが、今までの経過ではまあ収入減が二十億くらいに達するんじやないかと思います。或いはそれより少いかも知れません。併し同時に石炭その他使わなくても済む費用も、妙な話でございますが、出て来るわけですが、それを差引きましたら半分くらいになつてしまうんじやないかとも考えております。これはまあ見込でありますからわかりませんが。今私のほうの経理局長の弾いた数字は私の申上げたのとは違いますので、少し詳しく申上げます。収入減が二十七億、経費の減が約九億、差引き十八億程度減になるんじやないかというのが、事務当局の弾いたものでございます。これはもう見込でございますから、どういうふうになりますか、できるだけ経費の節約、或いは収入の今後の増加ということを図りまして、減というものを小さく食いとめて行かなくちやならん、かように考えております。うちのほうの国鉄の労働組合と私ども関係は、御指摘の通り遵法闘争或いは賜暇というようなことで誠にこれも心配なことでありますが、これは私は団体交渉その他の手段によつて、てきそだけ早いうちに円満に解決して行きたい。ただここで一言申上げておきたいのは、一斉賜暇というようなことは、明らかに公労法の禁止しておるところでございますので、これについては再三そういうことをしないように、そうして汽車の正常運転に影響を及ぼすようなことがあつては大変なことになるからやめるようにと言つて、昨夜までもそういう意味の勧告と申しますか、警告を幹部の人に話をしたのでありますが、遂に今朝から門司、広島それから名古屋、本庁、大井の工場というところで一斉賜暇というような形勢の中に入りましたのであります。これは極めて私は遺憾であると思いますが、どういう理由で何のためにやつたのかちよつと解しかねるのであります。実は年末に差迫つて参りましたので、国会のほうでまだ予算その他の議題が審議中でございますけれども、併し何分にも事態が大きいので、いざきまつた、そらと言つてもなかなか行かないので、これも政府と話合いまして或る程度の暫定払を二十日以降にやる準備をしようという話までもうすでに来ておつたのであります。然るにそういう事態になりましたことは、私はどういう理由であるかその意のあるところを解しかねるのであります。
  37. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 もう二、三、遵法スト或いは今の賜暇のストというものは、やはり法律違反であると御認定になるわけですか。若しそうであるならばどういうふうな手段をお講じになるつもりであるか。吉田内閣というものが電産スト或いは炭労スト或いは炭労ストに対しては殆んど拱手傍観であるということは、これは国民の常識になつている。緊急調整をやろうと言つているようですが、この緊急調整なんというものは、これは私に言わせれば殆んど役に立たない、罰金二十万円、聞かなければ二十万円、その二十万円を決定するのに幾多の裁判を経なければならない。果して政府の言うように二十万円払えという裁判になるかどうかということもわからない。こういうような私は緊急調整がどうだこうだと言つて、伝家の宝刀などと言つているが実におかしくてしようがない。こういうもので私はスト停止はできない。要するにこれは労使双方に対して政府、或いは今の国鉄の問題であるならば国鉄総裁その他幹部の理解と認識だと思うのであります。これを欠いておつたのでは私は争議はやまらないと思うのであります。今あなたはこの賜暇は違反だとおつしやつた。それで、併しながらこれについても何とも術がないようですが、仮にやつて見たところが、それによつてあなたが勝利を得られるということは私はできないと思うのであります。ですから、今何のためにストをやるかわからんとおつしやるが、開き捨てならん言葉じやないか。団交をやつている、団交の中にストの理由ははつきりとわかつている。いわゆる裁定の完全実施ということがストの目的である。この方向に向つてあなたがたが進まれぬ以上は、簡単にストがやまると思わない。ですから今のような御認識であるなら、恐らく今の国鉄のストでも解決することは困難じやないかと思うのであります。要するに私は、認識の問題である、誠意の問題である、真心の問題である。ここから出発して行かなければならんので、今日の労働関係のいろいろな法律を見て見まして、力のある法律は私はないと思うのであります。殆んどない、多少の力はありましようが、直ちにストをやめさせるというような力のある法律は一つもない。ですからこれはどうしても、お互いに納得づくでなければいかんということに帰着をするわけなんであります。ですから今のようなお考えでは私は駄目だと思う。遵法闘争によつて列車が目茶苦茶である。五時間も遅れる、或いは又今日の賜暇闘争によつて、一層それに輪をかけるということになることは、これは必然であります。ですから私はその点をはつきり御答弁をお願いしたいと思つて質問をしているわけでありますが、今の答弁では私ども満足いたしません。今後どういうようなふうに団交を続け、そうしてストの解決をなさるつもりか、もつと具体的に一つお話を願いたい。
  38. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 御承知のように、予算も裁定の案件も今国会に審議中でございます。団体交渉もまだ私は最終の段階に達しているとは思つておりません。無論国鉄労組も我々と共に団交をやり、円満に解決するという方向に行きたいという意思は十分にあると考えております。でありますからお説のように、できる限りお互いの誠意を披瀝して、予算の御審議のあつた後、或いは裁定に関する御決定があつたと殆んど同時に、私は今の問題を円満に解決して行きたいということは考えております。併しながら同時に一斉休暇というような明白な公労法の禁じているところをやつた以上は、それをやつた責任というものはやはり関係者が負わなきやならんじやないか、かように考えております。
  39. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 予算が通るまではまあそのままにしておく以外はない、こういうことなんですね、煎じ詰めれば。予算はいつ通るかわからない。国会の情勢を見るとわからん。或いは通らんかも知れない。否決されるかも知れない。そういうような緊迫した政治情勢下にあるのですね。併し国鉄というものは寸秒といえども停止しちやいけない。国民の足であり産業の基本が今日のような麻痺状態にあるのをのんべんだらりと団交によつて解決することもできない、或いは又あなたの言われる公企法違反であるといつてこれに適当な手段を講ずるということもできんということになると、結果はどうなるのでしよう。今お話収入減の十八億、これも非常に痛手でありましようが、それよりも年末を控えて国民の迷惑というものは非常に大きい。これはどうお考えになりますか。
  40. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 列車の取消その他の問題は、これは主として石炭が入手困難であるというところから来ておるのであります。私は最大の原因がそこにあると思います。私どものところの組合の遵法闘争というようなものによつてはそう御迷惑をかけていると思つておりません。その点は絶無ではないかも知れませんが、そう大きなものとは思つておりません。又これは一日も早く解決しなくちやならん問題であると思います。併し今お言葉の中に、予算はきまらんかも知れん、それはそのときになつて考えなければなりませんでしようが、いずれにしまししもお話のように暮迫つて何の給与もしないということには参りませんから、それはそのときに又何らかの方法考えて、そうして先ほど来からのお話のように、やはり仕事をしておる人たちが喜んで働けるという境地におくことが一番大事でありますから、私としましては飽くまでもそういう趣旨で早く問題を解決して行きたい、かように考えております。
  41. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 遵法闘争によつて迷惑をかけておらんということはどうも我々納得行かない。新聞などの報ずるところによると、十日の遵法闘争で大阪では九本の、東北でも貨物列車の運転休止をやつておる。それから東海道線でも相当の遅延をしておる。九州線のごときは大方二、三時間遅延しておる。これは新聞記事ですからわかりませんが、相当影響があるだろうということが考えられる。又賜暇闘争にいたしましても、私はどの程度かわからないが、今日国鉄の公社、運輸省の前を通ると、労組の人たちがピケラインを張つて出入りもできないというような状況にあるということを聞いております。私はこの影響相当に大きいし、更に拡大するものであろうと思うので、そう総裁が楽観的な御答弁をなすつても、私どもは承服できないのであります。年末を控えて国鉄は削減に削減を重ね、或いは闘争に闘争を重ねて行くこの現状をどういうふうに打開し、年末年始にまあ不満足にしても平常に近い運転ができるようなお見通しがあるのか、或いは全く無為無策なのか、この点をはつきりもう一つお伺いしておきたい。
  42. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 削減列車の復活につきましては、どうしても先ず石炭の入手を幾分でもすることが必要でありますから、ここ数日来いろいろな方面に働きかけまして石炭の入手に努めております。そうしてその入手の模様によつてでき得る限り削減列車を多くしないように、むしろ逆に動いている列車を殖やして行くということに持つて行きますために、仰せのように暮或いは正月の国民各位に対する奉仕というものに努力したいと考えております。
  43. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私はまだ残つておりますが、何かあなたのほうへ御質問があるようですから、一応私の質問は留保いたしまして、そうして何かその問題は本職のかたが御質問になるそうですから、そちらに一応お譲りして……。
  44. 小泉秀吉

    委員長小泉秀吉君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  45. 小泉秀吉

    委員長小泉秀吉君) 速記を始めて。
  46. 内村清次

    ○内村清次君 只今私は緊急的な質問だと、こういうことで国鉄総裁に聞きたかつたのでございますが、今前之園委員質疑の最後の段階にもお話があつたように、前之園委員の御心配又考え方に対しましても、私は殆んどそういうような考え方にも、内容につきましても一緒な考え方総裁一つ質問申上げますが、私今日のラジオと新聞を見てみましたときにおいて、労組におきましては一斉賜暇の全国に亘る約八カ所くらいの賜暇がなされておる。この賜暇をやらざるを得ないような立場に追い込まれたことも、新聞及びラジオによつて見ますと、昨日の団体交渉におきまして当局は依然として閣議の決定の線から一歩も出ないと、こういうような態度の表明であるということを承わりました。これは重大な問題でありまして、私はまだ国鉄総裁がその心境で団体交渉に臨んでおられるというような時期ではないだろうと思う。先ほども言われましたように、やはりこの事態の直接の関係者というのは何としても公社の当局及び労組の問題である。すでに私たちもこの国会においてこの議案が出ておりまする以上は、国会において判定をせなくてはならないという責任はよく存じております。併しながらこの国会で今回の裁定を判定する上につきましては、二項及び三項、四項というものは団体交渉によつて決定をするという項目である。従来前二回の裁定と異なつておるのです。そこで問題はその前にこの予算総則では百六億のオーバー額しか決定していない。ここに政府の不誠意が一つある。団体交渉を拘束しておる問題が一つある。この点に対しましては私たちは大蔵大臣にも運輸大臣にも、この拘束の状態はいかないということはもうあなたが来ておらんときによく話は進んでおる。自由な団体交渉は拘束しない。そうしてそこで妥結したところの問題というものは手続上においてはこういうふうになりましたということも総裁は聞いていらつしやる。そういうような事態で、国会国会の立場から政府当局に対してこの裁定の問題について重要視しておりますにかかわらず、当の責任者の人たちが昨日までも、組合が一斉賜暇を出そうというような動きに対しましても恐らく、これは公式ではないけれども、非公式にはいろいろな情報を察知しておられたかも知れません。私はその点はこれはどうであるか存じませんが、そういうような重要な段階のときにまだ一歩も出ておらないような相手のしかたでどうして国鉄のこの輸送の重大な問題に対しまして責任がとれるか、私はこう思うのです。国会の審議というものはこれはやはり水物でありまするから、いろいろな情勢で一日遅れ二日遅れという状態もあるのでございましよう。併しながらもう年末に片付けなければならないというような、時期というものは差迫つて来ている。このときになぜ総裁は、このときにも総裁は最初言われたように、裁定は神聖にして侵すべからざるものであるからして、この裁定に努力するというような決意を以ての意思表示で、何とかそこは具体的な数字は出ないにしても、交渉に当つたところの労組に対して、何とか含みのあるような、誠意のあるような決意のあるようなことを以て望まれないのか。これをやらずして、やつたからこれは法律違反だ、何とか処置しなくちやならんというようなことでどうしてこの事態を解決できますか。私はその点の、どうも総裁はやはり総裁を取巻くところのいろいろの人たちもおられるでございましよう。そういうような血気にはやるようなかたがたの意見だけをくみ取つて総裁としての重大な責任をお忘れになつたならば、これは総裁の責任だ、こう私は思うのです。この点に対しましては、総裁はただ現われた現象、それから現われた法律違反の問題だけを片付けさえされれば能が済むのだ、この事態はどう悪化して行こうとも済むのだという御決意であるかどうか。この点に対しまして総裁の本当の決意を聞きたいと思う。
  47. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) このお答えは非常にむずかしいと申しますか、どう申していいのですか、理窟では私はこう考えているのです。予算はきまつておらない、無論政府の査定はございます。併しながらそれだけでは予算というものはない。どうしても国会の御決議がなくちや予算にならない。予算にならない以上どうこうという問題はまあ先ずないわけですね。それで仰せのように、それは無論団体交渉も自由でありますから、予算で拘束すべからざるものではありますが、と言つて、事実上はどうかというたら、やはり給与総則とか何とかいうことで縛られてしまうということなんですが、併しそれにもかかわらず、できる限りのそういう運輸大臣、大蔵大臣の心組があるならば、できる限りの措置をしなくちやならんということは私考えております。併し同時に先ほども前之園先生にお答えいたしましたが、だんだん暮も迫つて参りますから、この調子ではいつきまるかわからん、きまつたからといつてすぐ右から左と国鉄は動かない。全国に散らばつているというような関係上、土曜日でしたか、金曜日だつたかと思いますが、団体交渉をやりまして、そうしてまず暫定払の準備をしようじやないかということの交渉をしたのでありまして、政府提出予算案の限度内において二十日以降暫定払をしよう、こういうことを話しましたのであります。これも併しはつきりはまだ国会の御審議を得ておりませんから、そういう準備ということぐらいにしかならない。そういうふうに私としましては事態の円満解決の方向に向つて努力を続けて来たつもりであります。その点は御了承願いたいと思います。
  48. 内村清次

    ○内村清次君 今暫定払の交渉をやつた、これは基本的な態度がきまらずして、又総裁自体の熱意がはつきり組合に反映せずして、ただ暫定払の問題で、この闘争の態勢を、これは当局の戦術といたしましてはやはり幾らかやわらげて行こうという戦術、これは従来とられたようなことでありまして、戦術的な即ち交渉のきつかけを作ろうということでありまするが、それで組合が直ちにそれに応じて来るというようなことはないことはもう前例によりましても万々の話です。それよりもむしろ組合自体が考えているのは、総裁が一体この裁定に対する最初の言質に対して今こそ決意をいたさなければならない。そして内部的な政府の態度をはつきりさせなくちやならないというような段階にあると私たちは見ておつた国会におきましてもやはり参議院の運輸委員会でも、又は労働との連合委員会でもそういう決意の醸成を考え政府と相対しておつたことは、もうあなたもよく御承知通りであります。その決意の醸成を、何故組合に誠意を示さないか、それを示さずしてやはり一歩も退かないような、この予算の百六億の枠内でという基本的な態度で以て進んでしまつて、そうして交渉に臨むという態度そのものというものは一歩も進んでいない。それでこういうような事態というものは起つて来るのであつて、ただ法律を違反したからというだけで責めて行こうという総裁の態度では、これではこの問題の円満な解決は私は覚束ないと思う。同時に私は事態がどういうように重大な事態に発展して行くか、この点は私は前之園さんの御意見と思いを一緒にして心配するのでありますが、発展して行くかわかりませんよ、これは。この段階ではあなたが真つ先に立つて公社をこれでやつてもらわないとおれは責任を持てんぞというような決意を私は示すべきときではないかと思うのです。その点に対しまして総裁はどのようなお考えであるか、やはり国会議決をただ素直に待つておる、明日になるか、明後日になるか知らないような事態を、議決を素直に待つておるという態度たけでございますか。そうして内部的なお互い協力して行かなくてはならないところの労組の行為のみを業務命令か何か知らないが、あなたのほうで対抗的に出した、その命令によつて処理して行こうという態度、それだけですか。私はこの点を聞きたいのです。
  49. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 私は協調すべきものは協調し、同時に厳格にすべきものは厳格にしなければならない。努力すべきものは飽くまでも努力する。厳格にやらなければならないものは又厳格にやらなければならない。それを彼此混同することは非常に遺憾なことだと思います。
  50. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 今内村君から聞いている中で私思つたのですが、例えば非常に今回の団体交渉で、この間の団体交渉でポイントになつたいわゆる暫定払、これは勿論各感覚はいろいろあるでしようけれども、私らから考えるというと、いわゆる組合の内部情勢というものと、組合運動のあり方は大体当局は知つておられる。いわゆる戦術というものがある。そういうような観点から殊更に暫定払というものを中心にして過日団体交渉をしたと、そのようにこの問の団体交渉を解釈せざるを得ないのです。何故かというと、あなたのしやべつておられるように、予算の解決がつかなければ額に触れての話合いというものはでき得ないので、自信がないので、本当の団交というものはなかなかでき得ないので、そういうように言われておるのですけれども、私は額を問題にするのではなくして誠意というものを、内村君もこれを盛んに追究しておるのですが、その誠意を親心を以て暮が差迫つて組合員が困るであろうということが一つの原因です。それといま一つは、大きい企業体であるから、暮に差迫つて予算が出てもすぐ間に合わないから準備をするのだ、その準備の団体交渉をしたと、こう言われる。親心を以て、従事員が暮に非常に困るからということで、暫定払をするのだという団交を持たれる前に、組合員は勿論暮は困るのはわかつておる。併し基本線だけは、完全実施の基本線だけはどうしても獲得しなければならないという、いわゆるこれは遵法闘争なんです。いわゆる法律の、国鉄部内の整備規程なり、服務規程の闘争ばかりではなく、仲裁裁定の権威というものを守る上においての遵法闘争だ、それを片方だけにしか、遵法闘争という組合の掲げておる闘争の根本的な考え方を、少くとも私は相当はき違えておる。国鉄に関する限りは整備規程の問題かも知れない。併し組合員の掲げておるのはいわゆる裁定を完全に実施させるというのが、仲裁裁定を権威付けるいわゆる法律を守るだけの闘争なんだ、それも含まれておるわけです。それで本当にあなたが親心を以て云々されるならば、するくらいなら何故暫定払の程度のことで以て話をする……、と同時に枠というものに拘束されてあなたがたはどうにもならない。その枠の上にあるものは政府だ。政府であるということははつきりしているわけだ。これは国会においても認め、我々も認めておるのですから、何故そういう方面に向つて努力をして下さらなかつたか。私は先ず第一番にお尋ねしたいのは、只今の闘争宣言に入つてから後に、政府に対してどういうふうにこの枠外において何とか処置しろということを今まで努力して下されたかということを一つお尋ねしたいと思う。それからこの間の暫定払の交渉を中闘としたという、そうして当局が一方的にこういうことで団体交渉をしようじやないかということを持ち出した、持ち出したと同時にそのときに若し真に親心があるならば、当局としてはこういつた線によつて政府はこういう考えを持つけれども、自分はこう考えるのだが、これに関してどうだというようなことについての団体交渉というものを、あなたとして気持を出してくれたのか、それとも中闘にこういう話をしてくれたのか、こういう私は誠意をお尋ねしたい。先ず具体的にそういうことをしてくれたかということをお尋ねします。
  51. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) それは仲裁裁定の完全履行ということについての私の見解はしばしば述べてあります。私は当事者として十分拘束されるものであるということを申上げたわけであります。これ以上現在申上げる必要はないと思います。それについては予算編成前後を通じてしばしば代議員にもお話し、政府にも要求してあるところであります。その後の事態の推移というのは、私はそれ以上に、私にどうしろと言つたところでそれはしようがないので、しようがないと言つては甚だ何ですけれども、飽くまで今日まで私は、裁定というものは完全に守つたほうがよい、守らるべきものだという確信を持つております。
  52. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 それでは具体的に、ただそう言うだけでなく、具体的に、例えば運輸委員会に対してこういうことを決議してくれ。その場合には総裁としてもそれに名を連ねてもいいというだけの固い意思表示はありますかどうか。
  53. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 私はあなたがたにそういう注文をすべきものでないと思います。
  54. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 我々がそういう話を委員会でしたら、総裁はそういう決意でおる、そういうことを決議の内容に含んで総裁の名前を出されても差支えありませんか。
  55. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 決議も何も、私は仲裁裁定に拘束されておるのですから……。
  56. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 あなたは仲裁裁定に拘束されておるけれども、残念ながらあなたには行政権はあつて予算権に対しては、残念だがあなたの御自由にならない。なれば四十万の組合を指導する、四十万の従業員を持つ大企業体の総裁は、今あなたは公労法を云々された。公労法によつて直ちに遵法闘争に対して処断をすると言われるけれども、その権利はあなたはあつても、実は組合員に対して生活的な裏付けに対するあなたの自主権というものはないじやないですか。そうでしよう。その点あなたの立場に対して我々もむしろ同情しておるのです。併しその点に対してあなたがたが、国鉄の主脳部が、少くともそういう点に対しての陳情なり訴えというものを国会に持つて来たことがありますか。勿論これは国会で決定するものですから、それは勿論その限界はあなたはおわかりになつておられると思う。おられるとするならば、そういう意思表示はしたことはありますか。残念だが私は独算制が実施されて、公労法が実施されても束縛されてあなたの権威が本当に使えないという点においては、我々使えないことは、この点残念に思つておる。その点についての意思表示はあなたがた国鉄主脳部から私は具体的にはつきりこういうことをしてもらわなければ困るということを政府に進言し、且つ国会委員会あたりに進言したということを今まで聞いておらない。ただ問題は私はそういう意味からこれをとつて行けば、行政権はあるけれども生活保障権はないというような総裁では困る。あなた自身も困るという意思表示をするくらいの、意思表示の仕方があると思う。たまたまこの間の委員会で今井仲裁委員長相当国鉄の主脳部に対して激烈な言論を出したが、私どもとしては実に残念だ。併し事実そんな状態じやないかというのが問題だ。従つて私は確かにいろいろの法律に拘束されて、権限に拘束されて、あなたがたに対してそれ以上のことを言うのではなくて、問題は先ほど示されたように、親心を以て、本当に暮に差迫つた人たちに対して何とかしなければならない、現にしようじやないかという親心を出されて、団体交渉に持ち出されたことを私は伺つて、それは先ほど申上げた考えによつて、我々のほうから見ればいわゆる鞏固なる闘争態勢に対してそういうことを出されれば、これは明らかに闘争戦術の上からいつても組合員の意識に水をかけるようなものだ。その点はあなたがたよく知つておられるにかかわらず、特に団体交渉自体は取上げないが、それを取上げて団体交渉しよう、しようと言つて申込んで来ておる。而もそれを裏付ける言葉として、暮に差迫つて気の毒だから、政府の予定された範囲内でやろうじやないか、親心を示しておるものと言われる。それだけの親心を示されるならば、少くともあなたがたの地位に対するあなたがたの不満があらなければならん。こういうことも含めて少くともこの裁定を完全に実施しろということを我々と呼応して、先ず団体交渉をやりながら政府に、組合と一緒になつてこの点だけは獲得しようじやないかというぐらいの誠意を示して頂けば、私は闘争なんということについては、組合員が理解する限りにおいて遵法闘争とか賜暇戦術とか問題は起らないのです。そういう点についての御熱意を示してもらいたかつたということなんです。
  57. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 鈴木委員お話は一個の御意見として拝承しますが、しばしば繰返します通り、私は裁定を実行すべき当事者でありまして、その熱意においては欠けるところがないということは何遍も申上げた。
  58. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 それではどうですか。総裁は先ほど一斉賜暇に対して公労法に抵触であるということを言われたのですが、その公労法の何条の規定でしようか。個人が自由に、それは服務規程なり業務規程の中にある法律に従つたところによつて賜暇を要求して、そうしてたまたまそれが集団になつたということの問題で、公労法の何条に牴触するのでございますか。
  59. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) これは法規の解釈運用の問題でしよう。
  60. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 法規の解釈運用の問題だというように、法規そのものをそういうふうに御解釈なさるのは困るのであつて、それは公労法自体に対してはこれはいろいろの角度から解釈のしようもあると思うのです。併し要するに極論で言えば、力の如何によつてその法律の解釈が歪められるというように法律を常識的に考えられては困るのですがね。そういう考え方は私は法を守る上から言つてもいかんと思うのですよ。ですからあなたははつきり言われているのだから、公労法の何条に抵触して、どういう理由であるということだけをお知らせ願いたい。
  61. 長崎惣之助

    説明員長崎惣之助君) 公労法のあれでしよう、第十七条じやないのですか。
  62. 内村清次

    ○内村清次君 いや、その問題はですね、これは又一斉賜暇の性格、即ち賜暇の性格というものは業務上の規約といたしましてもありまして、それが斉に賜暇をとる、或いは何人賜暇をとる、とる権利というものは即ち附与されたところの従業員にあるのであつて、そしてそれには勿論内部的の規約としては現場長の許可が要るというようなこともありましようが、併し最初の権利というものはやはり賜暇をもらつたかたがた、即ち皆勤労働をやつたかたがたに賜暇というものは附与される問題であつて、その点から掘下げて行きますると、賜暇をとるかたがたの法に対する正当性か不当性かというものはこれは具体的な問題です。具体的な問題としてよく論じなければならない問題です。直ちにこれが公労法の違反であるというようなことの断定ということはこれは早計であつて、併し私たちはそういうような事自体の現象が起る、起るということ自体に対して憂えておるわけです。これを何とかそういうふうに持たないようにできないものであるか。で、これは先ほど長崎総裁委員会に出られれば直ちに自分たちはこの裁定に対しては十分誠意を持つておるのだということは常におつしやつておる。ところがそれが一歩組合との団体交渉の面になつて来ると、一つもそれが現われておらない。私たちが側面から聞いておる即ち問題からしては一つも出ていない。これは総裁の意に反しておるのです。総裁の意に反したいわゆる取巻の人たちの態度、一貫した態度がそこに私は何か流れておるような気分がするわけです。そうでないと団体交渉が直ちに決裂をするとか、或いはこういう行動が現われて来るというようなことにはならないと思う。だから若しもその長崎総裁委員会の席上において出されるような一貫した精神というものを誠意を以て表現して団体交渉の場面に当てはめて頂きたい。そうやつたならばこれは恐らく今後の、どうせ解決しなければなりませんが、公共性がありますからして、事態を国民の迷惑にならないようにして解決をしてもらわなくちやならない。その道程というものは私はもう限界が来ておる。当局者の方途は限界が来ておる。待つなら待つてもらいたいということの言い分にしましても、国会で判定をするまで待つてもらいたいという言い分にしましても、やはりこれはまだまだ誠意の問題であつて、誠意が団体交渉の方面に現われておりさえすれば、そういうようなことはお互いが了解し合うと思う。ところがやつて来るところの話合いが、先ほど言いましたようなことで、ただ向うの組合に対するところの戦術面においては組合の分裂を考えている。ただ表面的には内払というような精神で出て参りますけれども、基本的な態度がきまらずして内払をしようということは、組合としてはやらないことはもう前例にも現われていること、又その誠意があつたならば、これは当局自体でもいつでも用意さえしてあれば、これは一日でも三十分でもそれで決定する問題です、内払いの問題は。それよりもなぜ基本的な問題を解決をするところの努力をお互いに了解し合わないか。私はこの点が問題だと思うのです。この点をやつぱりもうこの段階になつたならば総裁国会ばかりに任せずに、やはり自分としての直接の労使関係の場面において、経営責任者としては先ほど言われた委員会の誠意を団体交渉の面に現わしてもらいたい。私はこれが総裁として最善のとるべき途であつた。同時にこれをやらずしてただほかのほうの空気を悪化するような方面にのみ引ずられて行つて、そうして結果が生じてから法によつて厳格に処断するというような態度は、今後においての解決というものは、私は解決はあつても重大な影響を及ぼすような解決になりはしないかということが私は心配です。これだけ申上げておきます。今日の段階ではだからあなたのほうで厳格にやるならやるという御思想であれば、又我々は何をか言わんやです。併しこの結果というものは非常に重大なる問題になつて来るということだけの警告を私はやつておきます。その前に何かとるべき誠意がありはしないか。何かこの際になつたらありはせんか。それはあなたが一貫してお考えになるように、裁定は一つつて行こうじやないか、併し裁定は守るがこれだけはどうしてもできなかつたというような言いわけのできる誠意はもう出すべき時機ではないかと、私はこれを最後に一つ御注意申上げておきます。
  63. 小野哲

    ○小野哲君 総裁との間の質疑応答は極めて重要な案件であると思いますが、時間も大分過ぎておりますので、この辺で今日は散会ということに取計らい願いたいと思うのですが、委員長からお取計らい願いたいと思います。
  64. 小酒井義男

    小酒井義男君 先ほどほかに質疑がないから内村委員の発言を認めてというふうにおつしやつたように聞いたのですが、運賃問題で二、三質問をしたい。併し今日は時間が大分遅れておりますから、次の機会に譲つてよろしいが、ただ「音総裁にやはり要望しておきたいということは、もう十分論議されておるので言うまでもないのですが、私に対する総裁答弁の中で受取つた問題で一つ重要な問題、それは公労法の問題で処罰するというようなふうに総裁考えておられるような発言があつたようです。私はこの点を一つ考えて頂きたいのです、一応。公労法によつて裁定が出された、その裁定を完全に実施しないのですね、一方ではできないのですね、そういう状態に吹いて片方の組合のやつた態度だけは公労法に照して厳重にやつて行くという処置は、これは極めて妥当性を欠く)思うのです。そういう一方責任を持つて解決のできない問題を残しておいて、できることだけは一方的にやろうというような処置をまさかおとりにたるとは思いませんけれども、そういうことだつたらもう一度その点について十分総合的にいろいろな観点からお考えをして頂く必要があるということを気付いたので、その点を一言申上げておきます。
  65. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 小野委員から動議が出ております。これには私は異議熱りません。ただ私申上げておきたいことは、私の質問はまだ中途なのです。ところが今国鉄関係の深い各委員からいろいろと御質問があるような状況であつたので、一応私は保留いたしましたが、引続き運賃問題を中心とし、その他新線の問題等の質問があるということを御通告申上げておきます。
  66. 岡田信次

    ○岡田信次君 先ほどの小野委員の御動議に私も異議ございませんが、委員長が言われたように、特に御質問がないというように御解釈されても困るので、従来のいきさつもあつたので、今日は前之園委員に譲り、その関連質問の必要上内村、鈴木両委員質問を拝聴したわけですが、私のほうにも質問があるということを御了承願つて、本日は一つ散会して結構だと思います。
  67. 小泉秀吉

    委員長小泉秀吉君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  68. 小泉秀吉

    委員長小泉秀吉君) 速記を始めて。今日はこれにて散会をいたします。明日午後又運輸委員会を開くことにいたします。    午後一時十一分散会