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1952-12-13 第15回国会 参議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十三日(土曜日)    午前十時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            岡田 信次君            高田  寛君            小酒井義男君    委員            入交 太藏君            植竹 春彦君            一松 政二君            高木 正夫君            小野  哲君            内村 清次君            中村 正雄君           前之園喜一郎君            鈴木 清一君   国務大臣    運 輸 大 臣 石井光次郎君   政府委員    運輸省鉄道監督    局長      植田 純一君    運輸省鉄道監督    局国有鉄道部長 細田 吉藏君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君    常任委員会専門    員       田倉 八郎君   説明員    日本国有鉄道総    裁       長崎惣之助君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法  律案内閣送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第  二項の規定に基き、国会の議決を求  めるの件(内閣送付) ○一般運輸事情に関する調査の件  (新線建設に関する件)   —————————————
  2. 高田寛

    理事高田寛君) それではこれより運輸委員会を開きます。  今日は国有鉄道運賃法の一部改正の法律案とそれから裁定とまあ一括して議題といたしますが、なお一般運輸事情質疑につきましても大臣並びに総裁出席を見ておりますから、一つ質疑を願つて結構だと思います。
  3. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 ようやく運輸並びに国鉄最高幹部のかたが見えましたので、できるだけ今日は詳細綿密に質疑応答をして、この行詰つた国鉄の打開を何らかの方法によつてするというお見通し等について、十分に一つ答弁を願いたいと思うわけであります。私は九州の田舎者で町のエチケツトをよく知らない、修辞も非常に下手であります。論議の間に或いは礼を失するようなことがあるかも知れません。あらかじめその点一つお許しを願うようにお願い申上げたいと思うのであります。  先ず第一に運輸大臣に対して質問いたしますが、現在国鉄収支が非常にバランスがとれない、不均衡であります。これを補填しなければならないという事情に迫られておるということはよくわかります。併しながら国鉄がこれまでとられた方法を見ますると、収入が足らなくなるとすぐ運賃の値上をやる。もう他のことはお考えにならない。国民生活はどうなろうと、或いは産業経済がどうなるかというようなことは余りおかまいなく運賃値上の一途をたどられるような傾向が見えるのであります。やはり今回も運賃値上の方法によつてこれを補填しようとしておられるわけでありますが、このほかにいろ、方法があると思うのですが、他の合法的の方法をお考えにならないで例によつて運賃値上の一遂に頼られるというのは、どういう理由であるかということを先ずお伺いいたします。
  4. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 国鉄のほりから運賃値上の案が出ましていろいろ聞いたのでありまするが、国鉄運貝値上を三割認めてくれないか、そうするとこれで国鉄ベース・アツプは勿論であるが、そのほか老朽施設改善等に更に又力をいたすことができるというような話等もあつたのでありますが、三割を上げるということは、まあ鉄道運賃は非常に実際の影響以上に声が響きやすい問題でありまするから、成るべくこれを最小限にとどめようじやないか。いろいろ話を承わつてみますると、償却費を以て修復する範囲では戦後のいろいろな荒廃施設十分回復ができない。もう少しふだんの経費償却に当てるよりももつと多く修繕等をして行かなければならん。この機会を以て少しく横へ上げてもらつて、あらゆる今国鉄考えておる修復、改善、内容の充実ということに当てたいという熱意がありましたが、さつき申しましたようにこの運賃値上げというものが国民生活に及ぼす影響等をいろいろ考えますとどうもいけない。それじや値上げせずにすむかと申しますとそれはなかなか何やかや合せまして国鉄ベース・アツプも二百四、五十万円の実際の増をしなければならん様子であります。これはなかなかとても賄いきれない。それじやどこまで上げるかというと、成るべく少し上げるようにしてもらいたいというここで一割値上げということで二百十億こいう最小限にとどめるということで提出したわけでございます。
  5. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私の質問が徹底しなかつたのか御答弁が食い違つておるわけであります。私が聞いておるのは、国鉄収支バランスを合わせるためには運賃値上のほかにいろいろの方法があるはずだ、例えば一般会計の繰入をやるとか、或いはここに御説明にありますが資材資金の調節というような問題、或いは鉄道公債等の発行もできるわけであります。こういうような方法について御研究なつたのであるかどうかということをお尋ねしておるわけであります。
  6. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 国鉄の中だけで運賃値上をせんでもいろいろな施設をやつて行くためには払下のものであるとか、或いはいろいろ貸しておるものの値上であるとかいう、内の経営合理化という問題も勿論国鉄当局考えておるようであります。そういうものでは足りません。そうするとどうするか。今お話国庫からそれじや補給するかという問題でありますが、これは国鉄をこしらえました趣旨ができる限り独立採算制をとるのに近ずけて行くという建前でありますので、経常費になりますいろいろな費用を当然国庫がどんどん出して行くということは、これはどうであろうかというのでそれは問題になりませんのでございます。鉄道債券でも出したらどうかという問題でありますがこれも一つ方法であります。併し今そういう時期であるかどうか。今お話のような経営的のいろいろのものに出すということは相当これは問題があるのではないか。建設公債等は昔もあつたわけでありますが、それにしても今の時期でどうかという問題でありましてこれは問題にならなかつたわけでございます。  そういうようなわけでそれじや借入金でやつて行くかというと、例えば国鉄ベース・アツプを今年中にやるが運賃値上は来年にやるということになると、時間的のずれがあつて一時的の問題のためにそれを賄うための借入金を毎年々々やつて行くという経常費の問題になりますと、これは経常収入で賄うという建前にしなければなるまいということで運賃の値上に至つたのでおります。
  7. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私が鉄道公債或いは一般会計の繰入ということを申したのは、先ほど申しましたようにこの鉄道公債のごときは、運輸大臣提案理由の中にもありますが、戦時中或いは戦後の資金資材事情のために現在緊急に復旧をやらなければならん、或いは車両復元鉄道建設等、こういうようなものについてはこれは鉄道公債を発行されても決して妥当を欠くものでないと思います。又繰入の問題にいたしましてもこれは従来四十億の繰入をやつたこともあります。今年の七、八月頃に鉄道建設審議会全会一致意見として、その委員の中には国鉄総裁もおられたわけでありますが、昭和二十七年度予算で賄い切れないいわゆる新線十六線、それに三線を加えて十九線に要する三十億の費用政府資金で賄うという強い建議を出しております。これは御承知かも知れませんが、自由党政調会長会長とするいわゆる自由党中心と、それから国鉄最高幹部次官等そういうような人々によつて構成されておるところの鉄道建設審議会全会一致意見として政府資金によつてやるということを言つておる。そういう事例があるので或いは大臣はそういうことはお知りにならんかも知れませんが、事柄によつて独立採算制を侵すものでないと私は考えるものであります。又実際において国鉄国家のためにいろいろ犠牲を払つておるのであります。戦時中も、又戦後は進駐軍の人や物を運び、これはどのくらいの金を取つておるかわかりませんが、これは相当鉄道犠牲によつてこういうことをやつておるのではないか。その他いろいろの無料パスを発行しておる、国会議員には公用パスを出しておるわけであります。これは本来から言うならば国会議員は公務によつて働く場合は国が旅費を出して然るべきである、そうして乗車雰を買い、寝台券を買うてそうして仕事をすべきものだ、これらもやはり鉄道犠牲においてやつておるということになるのであります。ですからそういうようなことを考えても鉄道が非常に収支バランスを失つてつておるようなときに、国が国費をやるということは決して不合理ではない、又独立採算制を失うものでもないと私は考えておるのでございます。只今の運輸大臣の御答弁によると、独立採算制建前から国費を出して行くということはいけないという御答弁で、そう言うならば今回はもとより将来においても運輸省並び国鉄はこの方針を貫徹なさるおつもりなのかどうか、その点をここではつきりと承わつておきたいと思います。
  8. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府が金を出す道は全然ないという意味では勿論ないのであります。国鉄法にも国鉄が最後の年度末において金が足りない場合において交付金を出すという制度もたしかあつたと思うのでありますが、今の新線建設の二十七年度のあれにも政府資金新線建設をという要望が出ておりますのを私も見ました。その問題につきまして今度の補正のときにも私はその問題を取上げて、政府の出資の問題について相談をしてみたのでありますが、それはいろいろなお話が出ましたが結局いけない、今はそれを取上げないということ、それならば政府から金を貸してそうしてその利子国家で補給するということにしてもらえんかという問題で折衝を続けて、何日もかかつてその問題は留保になつております。補正予算を急いで作る必要がありまして、これは今度の五億円はとりあえず借入金で出す、政府が来年度になりますとずつと金額も多くなつて来るでしようが、その場合にはどれだけ出すかという問題と、その利子補給の問題と合せて相談するというようなことになつております。
  9. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 その政府資金の繰入或いは借入、この問題を私は強く取上げますゆえんのものは、鉄道建設審議会委員というものは、御承知のように国鉄総裁も入つておる、大蔵省からも政務次官か誰か代表で入つておる、それから政府与党自由党最高顧問人々が入つておるわけなんであります。この建設審議会というものの全会一致決議が、大蔵省も含み、国鉄も含み、その他の自由党最高幹部をも含めたるところのこの全会一致決議、而もこれは政党の審議会ではなくして、国が作つておるところのこの審議会におい三十億の繰入をやれというような決議をしておるのに、実際の面に立至るとそれができないということは、政府自体或いは自由党自体自分決議したことを自分で破壊する、守らないという結果になつて政府の不統一を暴露するものと言われても私は返す言葉がないのじやないかと思います。当時建設審議会のごときは非常に強い要望をして、国民に非常に大きな期待と希望を持たしておる。必ず補正予算にはそういうものが繰入れられて、そうして多年の要望が達成せられるものであるという強い期待を持つのであります。ところが政府自体においてその国民期待要望を裏切るようなことになつておるので、後ほどこの問題を取上げて強く質問するつもりですが、三十億円が僅かに五億円くらいの借入金によつて糊塗されるというような結果に終つておるのであります。こういうような点についてはやはり政府国民に対して責任をとらなければならんと私は思うのであります。責任をとれということ、これは一体政府で一度きめたものであり、政府の機関できめた問題等については全力を注いで私はその実現に努力せられるべきものであろうと考えるのであるが、運輸大臣は成るほど就任早々であつて或いは十分のお働きはできなかつたかも知れないが、私どもの見受けるところではどうもこの運輸当局のこれらの点に対する熱意働きというものは非常に足りなかつたのじやないかということを非常に遺憾に考えるのであります。重ねて私はお伺いするわけでありますが、運輸大臣はこの問題について如何なる努力を払われたかということを一つはつきりとお教えを願いたいと思います。
  10. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 今度の補正の場合に、その前に建設審議会でお選びになつたものを取上げまして予算に組んでもらいたいということで提出をいたしておりました。ところが大蔵省の査定は補正には全然上つておりませんのです。来年の問題にしてくれということでありましたが、それでは折角今お話のように建設審議会によつて愼重審議されたはずのものであるし、本年の補正に相当の金額を盛つてもらわなければどうにもできないということで、私どもは十億ぐらい本年度にあつたならばそれくらいが丁度使える限度であろうというので出しておりましたが、いろいろ折衝いたしました結果、それは新線建設を一応認めよう、約十線見当ということではつきりしたわけではありませんでした。それで年内五億円ということで始まつたわけであります。そういうようなことで始めることになりまして建設審議会の議を無視することは勿論ありません、尊重してできるだけそれをそのまま実現する、私どもが拝見しまして尤もだというので、そのまま実現することを期待するのでありますが、国家の大きな財政金融その他の関係もありまするし、そういうような状態からいたしまして今日の状態にとどまつたわけであります。
  11. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 結局運輸当局においてはいろいろとやつて大蔵当局の同意を得られなかつた、いわゆる運輸省の力が足らなかつたためにこういうふうになつたんだというふうに受取つてよろしうございますか。
  12. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 国家財政上の都合によりまして、こういうことに決定したと御了承を願いたいと思います。
  13. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 それでは私どもは得心しかねるわけであります。運輸省或いは国鉄当局が、本当にこの収支バランス運賃の値上によらないで賄つて行く方法を非常なる決意とそうして熱意とを持つてやられるならば、私ども実現可能性があつたものと思うのであります。私は今鉄道建設の問題を取上げたのは、これは一例に過ぎないわけであります。この鉄道建設のごときは大蔵省からも委員を出しておりながら、そうして全会一致決議をしておりながら、どたん場になるとそういうような態度をとるということは、これは全く自由党内閣の不統一であるという一面を私は暴露しておるものではないかという気持がするわけであります。併しこれは或いは水掛論になるかも知れませんので改めてこの点は取上げますが、大臣の時間の関係もありますからこの点はあと廻しにいたします。  第二の問題は、国鉄収支均衡を保つて行くにはどうしても経営合理化ということが徹底しなければならんと私は思うのです。経営合理化というのは申すまでもなく積極的には収入をふやすということ、又消極的にはできるだけ経費節約をするということに徹底しなければならんわけであるが、今のように足らなくなればすぐ値上をやる、例えばペースアップの問題が出るとこれにならつてほかのものまで便乗して運賃の値上をやる、こういうような安易な考え方、こういうことをやるなら誰でもできる。運賃の値上は国会承認さえ得られればやれるのですから。こういうような安易なものの考え方で健全なる国鉄財政の樹立ができると大臣考えになるわけですか。この点については一つ詳細に御答弁願いたい。
  14. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私はこれは安易な方法をとつたものとは思うておりませんが、詳細につきましては国鉄総裁から御説明させることにいたします。
  15. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 総裁にはあとで聞きます。御答弁ができなければ御答弁できないで結構であります。これは御答弁できないものえお無理にといつても始まらんわけでありますが、この点については……
  16. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) では政府委員から……
  17. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 政府委員答弁あとで聞きますが、一つ運輸大臣一本で質疑をします。でこの点については御答弁はできないということを了承しておきましよう。
  18. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 御答弁できないというより、私はこれは経営合理化の線によつて国鉄において十分検討した結果、運賃値上を少くも一割やつて頂かなければ、国鉄の経理上運営の費用を賄い切れないということを了承して私は賛成したわけであります。
  19. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 それならば詳細に承わりますが、現在国鉄が先ほど申しましたように経営合理化、積極的に収入をふやす面においてはどういうふうなことをやつておるか、或いは経費節約についてはどういうふうなことをやつて経営合理化をやつておるのか、いわゆる健全なる財政を樹立するためにどういうふうな経営合理化をやつておるかというところに行かなければならんわけであります。併しながらこれは就任早々運輸大臣に質問することは少し無理かと思いますから、これは保留いたしておきましよう。そうして国鉄総裁に詳細に聞くことにいたします。次に第三の問題といたしまして、今回の運賃の値上によつて国民生活にどういう影響を与えるとお考えであるか。例えば物価値上り産業経済に及ぼす影響、こういう点について相当御研究なつたわけであると思いますが、これも御答弁ができなければ結構です。御答弁ができなければできないというお答えだけで結構ですが、これは併し運賃値上の根本的な問題になつて来るわけでありますから、一通り御説明ができれば承わりたいと存じます。
  20. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 基本的な産業の面で値上りが幾らかでもありますると、それが国民生活影響を及ぼすことのないということはいえないわけであります。一割の値上でも当然影響はあると思いますが、成るべく国民生活影響を及ぼすことの少いようにという心持をもちまして一割の値上にとどめて、そうしてあと国鉄内の経営合理化と申しますか、いろいろな貸しておるものとか或いは払下のものをどうするとかいうような経営合理化をこれに併せまして費用を賄つて行こうということになつておるわけであります。で特に生活物資等についていろいろ問題が論議されておりますが、これもできるだけ影響の少いそして衡平の原則にも合い得るような何らかの解決方法を講じてもらうように研究を進めてもらつておるのであります。又一方旅客の運賃問題でありますると、これの及ぼす影響も相当ありまするので、この点も成るべく響きの薄くなるようにというようなところで、ほかのいろいろの問題について余り大きな響きがないようにと考えておるのでございます。
  21. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 具体的に承わりましよう。運賃値上によつて物価にどのくらいの影響があるか、又産業面生産費等についてどういう影響を及ぼすかという具体的な例をお示しを願いたいと思うのですが、今度の運賃値上というものは、いわゆる国鉄職員給与ぺース引上ということが中心になつておるようであります。ところがこの給与ペース引上運賃の値上によつて行うということは、今申しまするように、直ちにこれが物価に跳ね返つて来る、物価値上りになる、或いはその他いろいろのものの高物価を来すことになるのです。折角給与引上げましても、実質的には何のいい結果も及さんということになるように私どもは思うのです。そこで私は先ほど来運賃値上によらない方法によつてこの給与ペース引上等を中心とする収支均衡を保つ方向に進むべきではなかつたかということを質問しておるわけなんです。そこで物価に及ぼす影響並びに産業、特に諸物資生産費等に及ぼす具体的な数字がおわかりだつたらお示しを願いたいと思います。
  22. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府委員からお答えをさせます。
  23. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 政府委員のほうはあとで御答弁を願います。これは運輸大臣に御時間がないということですからわからんことはわからんで結構で証す。私どもは無理を言うつもりはない。
  24. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府委員からお聞き願います。
  25. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 それではこの問題立政府委員でなければわからないから政府委員から聞くことにしてあと廻しにいたしましよう。  第四の問題は、運賃値上の法案が出る、そうして予算の面においても結局この運賃値上は通るでしよう。その間いろんな問題はあつても結局通るということになるのですが、私ども考えまするのに国鉄は勝手にどんどん運賃を値上する、そうしてこれは国民負担しなければならない、いろんな面において負担をして行かなければならんわけでありまするが、こういうような国民犠牲的の負担をかける半面において、国鉄はそれならば国民にどういうサービスをされるというか、一方で取上げて一方では与えないというようなことではいかんのだ。一割の値上をするならば、それ以上のサービスを以て国民にむくいるということでなければいかんと思うのであるが、この運賃値上に関連してサービス改善等はどういうような具体的なものをお持合せであるかということをお答えして頂きたいのであります。
  26. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) この運賃値上は国鉄ベースアップだけではなく、全体の支出をいろいろ勘案しまして足りない収入の面も考えてその収入増方法として提案いたしておるわけであります。従つて運賃値上げしそれが右左にどうサービスするということの具体的なはつきりしたものは出て来んと思いまするが、一番考えられます問題は、経営的な仕事においてそれじやどういうことをして行くかと言いますと、国鉄といたしましては老朽荒廃に帰しておるものを回復して交通の安全性正確性を保つというこの線がだんだん出て来なければならないと思うのであります。ところが提案理由でも申上げましたように、これだけではまだまだ荒廃しておるものの回復に廻すだけの資金ぐりには絶望だという国鉄の見込みであります。そういものについてはまだ先のことであるからわかりませんが、国家資金を借りてでもなおそれは改善して行きたいと、そういうふうに思つております。
  27. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 どうも一貫してよりどころがないような気がするのでありますが、最初運輸大臣は、国鉄公共企業体であつて独立採算制原則とするのだから、政府資金の繰入或いは借入というものは考えないのだ。今又それと違つた答弁をしておられるわけであります。運輸大臣説明によるとこういうことがあるのであります。従事員給与ベース改訂の必要及び戦時中、戦後の資金資材事情のために、現在緊急取替えを必要といたす施設車両についての復元等を考慮しておるのだ。私どもはこの補正予算というものの性質上、これは通常予算成立後に突如として起つたようなものである。或いはいろいろな災害その他によつて補正予算を出さなければならない事情の生じたものだけを補正予算承認を求むべきであつて、その説明の中にありまする戦時中、戦後の資金資材事情のためである。或いは枕木を取替えるとか車両復元するとかいうことは、これはずつと前からわかつていなければならない。昭和二十七年度の当初予算を組むときから、否その以前からわかつていなければならない問題であつて、こういうような問題が補正予算に組まれておるということは、それ自体私は運輸省なり国鉄なりが経営合理化という点について非常に怠慢である。前からわかり切つたことを今になつてこういう補正予算でやらなければならんというようなことは、私は当局の怠慢であり、不誠実であるということが考えられるわけであります。今の運輸大臣の御答弁では納得しないのであります。運賃を上げるならばどうしても上げなければならないという国民の納得の行くようなものでなければいかんと私は思うのであります。従つて運賃を値上する以上それの対価となるべきサービス改善を当然考えなければならんと思うのであるが、それらの具体的なものがないという御答弁であつて甚だ遺憾であります。これもいずれ国鉄当局から聞くことにいたしましよう。  次に第五の問題に移りますが、一割程度の値上をするのだということ、ところがずつと見てみますると、なかなか一割程度ではないようであります。例えば補正予算の三月までの増収は四十二億という数字が出ておるが、一割程度というのは実際において旅客が幾ら値上になるのか、貨物が平均して幾らの値上になるのかという具体的の数字並びにこの運賃改正において実際に増収になる金額は幾らになるのか、この増収の数字の如何によつてども鉄道職員の給与ベース引上等についても更に考える余地があるのじやないかと思うのであります。あいまい模糊とした御説明ではなくしてはつきり幾ら上げるのだということを一つ示しを頂きたい。  なおこういうような賃金の値上に便乗ずるような形で貨物等級の改正をされるということはどうであるかということが、これは鉄道専門家の間でも相当論議せられておるのであります。貨物等においては恐らく三割も四割も値上になるようなものがあるのではないかという気持がするのでありますが、実際において旅客において何割の値上になるのか、又貨物においては等級の改正によつて何割の値上になるのか、そうしてその数字は正確に幾らになるのかということは、無論この数字の点はおわかりだろうと思うのでありますからお答え願いたい。
  28. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 貨物の問題それから運賃率等につきましては、これは国鉄総裁自分できめ得るような規定になつておると私は思いますが、いずれにいたしましても運賃旅客一割程度の値上という線に最後を合せるようにいろいろやつてもらつております。中に旅客の問題等で一割以上にも御承知のようになつておるものもあるようでありますが、結論は大体一割に落着いておるように考えております。その内容につきましてはこれも国鉄並びに政府委員からあとで御説明申上げます。
  29. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 細かい数字をお伺いますることは或いは当を得ないかも知れませんが、大きな数字、四十二億ということになつておるがこれが正確なものであるということについては明確な御答弁ができるわけであります。私らの計算によると国鉄が平常の運転をして行くならば恐らく四十二億でこれはとまらないという気持がするわけでありますが、その点は如何でありましようか。
  30. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これも詳細なことはあと国鉄並びに政府委員からお聞き願いたいのでりますが、今年度補正に出ておりますものは、旅客が一月十五日から貨物が二月一日から、只今申上げました約一割という現在想定されておる線に沿うての計算でございます。
  31. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 詳細の数字はあとで聞きましよう。ただこの運賃値上に非常に矛盾があるということを私は発見するわけであります。現在旅客運賃については遠距離逓減の法則をとつておるわけであります。これは当然のことでありますが、この運賃値上の率を見てみますと、それとは逆に近い所が安い値上げになつて遠い所は高くなつておる。例えば千キロメートル以上というものが一割一分の値上になつて、千キロメートル以下、五百キロメートルまでこれらはそれよりも安くなつて、いわゆるこの遠距離逓減の法則というものがこの運賃値上で非常に乱雑になつておるという感じを受けるわけでありますが、これは鉄道旅客運賃の根本の原則でありまするので、運輸大臣承知であろうと思うが、これらの御説明を願いたいのであります。
  32. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これもあと鉄道当局よりお聞き願いたいと思います。
  33. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 承知いたしました。  次にお伺いいたしますが、これは最も私が重点をおいている問題であり、又私の質問の中心をなすものであります。先に私は運賃一割程度というものを誤りではないか、四十二億という数字もこれを遥かに上廻るのではないかという質問をしたのであるが、これは無論平常運転が行われる場合においての数字であることは申上げるまでもないわけであります。ところが現在においてはこれは申上げるまでもなく電産或いは炭労のスト、国鉄の遵法闘争等によつて殆んど国鉄というものが麻痺状態に陥つておるということは御承知の通りであります。先ほど参議院の本会議において社会党の原君が質問したのであるが、これに対する御答弁も私どもは非常に満足することはできなかつたのであります。ここでこのストの問題をあなたを責めるということは或いは見当違いの感があるかも知れません。併しながらこういうような長い国民生活を極度に窮迫せしめ、そして国鉄を麻痺せしめ、場合によつては或いは暴動化するかも知れないというような緊迫しているところの状態を招いておる現在において、国務大臣の一人である、又閣議に列席せられて十分に国鉄事情等もお話になつて、そうしてこのストの解決に全力を注がれなければならん立場にあられる大臣であると私は思うわけでありますが、今日まで私どもの見ておるところでは殆んども政府は手をこまねてなすところを知らざる状態である。原君がこの前質問した通りである。それ以上であると私ども考える。今日ストの原因についてはいろいろありましよう。経営面にも労働者側にもそれぞれの理由があり又行過ぎがあるということを私どもやはり見受けます。併しそれ以上に特に国鉄の今日の状態というものは全く私は現内閣の無為無策のこれは産物であると言つても過言ではなかろうと思うのです。そこで私がお伺いしたいことは、この炭労スト或いは電産ストの解決に対して石井運輸大臣国務大臣として、又閣議に列席したいわゆる閣僚のメンバーとして、どういうような強力なる態度をおとりになるか、又このストがいつ解決して平常の状態に服し得る御自信があるのか、お見込みがあるのかということを一つ率直に、これは私ども運輸委員が非常に聞かんとし、又心配しておるところであるから是非一つ率直なる御答弁を願いたい。そして一面本委員会を通じて国民にこの鉄道の危機をこういうふうにして収拾するのだというはつきりした御決意をお示しを願いたいと思うわけであります。
  34. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 石炭ストと国鉄関係は今お話があつて御不満だとおつしやいますが、本会議でも一応お答えした通りであります。石炭スト対策は政府は労働大臣を主にいたしまして、労使双方の話合で解決をしてもらうのが筋だという線で以て初め静観し、のちいろいろこれに干渉ではありませんが労使双方の話合で是非進めてもらいたい、こういうあなたの御心配になるようなことが国民全般の心配しておるところであるので解決してもらいたいということの線で進んでおります。  緊急調整案を出したらどうか、折角こういう法律があるのじやないかという話等もいろいろの人から言われるし、又政府としてもその問題は研究したのでありますが、緊急調整を今出してそうして解決の途がよく進むかどうかということになりますといろいろ問題があるようでありますから、なお是非一つ労使双方でしつかり、中労委から出ておるものもあるのだし、それを一つなお両方で十分やつてもらいたいという線を強く推し進めておるのが現状であります。  それからそれに対しましての影響、これは誠に国鉄としては心配な問題であることはもう言うまでもないことであります。九月の末には相当例年に比べまして多い石炭の貯蔵もあり、ストライキが起りましたがこんなに長びくとは思うていなかつたというのが事実であります。何とかもつと早く解決の途をということで私どもとしては内閣で石炭の状況を話もし、又国鉄自分のところに運ぶものを持つておりますから、ほかよりはいろんなことがしやすい状況にあります。いろんな努力をしてやつておるのであります。今日ストの進行中でも一日一万トンずつは確保して今日まで来ておる状態であります。けれども一万七、八千トンも使います立場上だんだん貯蔵が減つて参りましたので、一方その前に通産省等にも話もし、それから国鉄からも話をされて、外国からの石炭で補いをつける、これはそうたくさんは来んでも幾らかでも補いをつけるということで話が進んでおつたのでありますが、いろいろな関係でこれが今の間に合わわない状態で一月頃からインド炭やら台湾炭が入るというふうなことなんで国内からももう少し石炭の供給が得られないかという問題、ちよつと一昨日あたりの新聞にぱつと出まして、もう第三次の制限をせんでもいいくらい石炭が入る途ができた、五十万トンあるそうだ、五十万トンあつてつてもいいのだと私たちも聞きましたけれども、これはなかなかそういうものはまゆつば物で、そんなにはあるにしても国鉄の機関車用に使えるかどうかも問題だし、どこにあるかも問題だしということで別途これは研究させてみた、ところが五十万トンがだんだん減つて参りまして実際は三十万トンくらいあるそうだ、そのうち山元で二十万トンくらい使つたそうだ、その二十万トンもだんだん調べてみると本当の数字は五、六万トンくらいで、そのうち石炭に使える五千五百カロリー以上は二万トンくらいらしいとか、それが全国にばらまかれておるという状態であります。それは余り期待できません。又そのほかから石炭をほかに廻しておるものをこちらに廻して多少でもお手伝いしようというような話もありますので、そういうものはできるだけやつて頂きたいというような、まあ御批評を受ければ、どろなわ式でそんなおぼつかないことで何になるかというお叱りを受けるかと思いますが、国鉄としてもできるだけの方法を講じ、少しでもよくなれば一線でも早く回服するようにというつもりでやつておる次第であります。
  35. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 鉄道経営を今日のような危機存亡の状態に追込んだ一番大きな原因はストに対する政府の認識というものが誤つておるからで、只今運輸大臣答弁の中にもストがこう長くは続かんだろうと考えておつたが、ついこんなことになつたということに帰着するようですが、私どもは現内閣が、ストというものの性格、又なぜこのストがかくまで拡大しなければならない事情があるのかというその認識も欠かれたということがその根本原因であつたと思うのであります。労組においても或いは又経営者側においてもストの認識については、国民生活に非常な重大な影響を及ぼすということをよく知つている。而もこの国民生活の重大なる影響、或いは場合によつては国の安寧秩序をみだるような重大な危機に立ち至るかも知れないということを知りながら、そうやらなければならないという羽目に追込れておるという実情をよく知らない。いわゆる吉田内閣というものはよく言われるが、占領下に何か窮迫する問題があるとすぐ司令部のお声がかりで何もかにも解決したというような甘い考え方、それから今日労働運動というものがどういうような性格を持つておるものなのか、どういうふうに労働組合というものが進歩発達しておるのかということをよく御認識がない、これが私はこのストを大きくした原因だと思うのです。いわゆる安易に過ぎた、非常に甘く見過ぎたということが、私は問題の大きな原因になつておると思うわけであります。これらの点については国務大臣として、特に又運輸大臣として鉄道の監督者であられる大臣は、十分に責任をお考えにならなければならんと思うのでありますが、ストがかくまで拡大し、そうして遂に今日の破局を生んだというその根本原因は吉田内閣の認識不足に起因する。もつと具体的な言葉で申しまするならば、労働運動というものを知らず、労働者の生活というものを知らず、そうして血の通つたところの労働争議の解決に乗出されないということが、私は最大の原因であろうと考えるのでありますが、この点についての大臣の御見解をこの際参考までに伺つておきたいのであります。
  36. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これはそれから先になりますと少し議論になるようでありますから、御意見として承わつておきます。
  37. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 議論ではない、これはこの見通しを付けるかどうかということが鉄道初の諸般の問題を解決する私は根本問題だと考えるのです。吉田内閣は今のように拱手傍観して、そうして或いは中労委或いは労働大臣の勧告くらいでこれがたやすく私はストの解決が得られるという御認識が実に不満なんです。こういうことが国民生活を今日のような窮乏におとしいれている原因だと思うのであります。決して議論ではないと私は考えるのであります。  然らばこのストをどういうふうにして解決されるお考えなのか、又鉄道のこの石炭不足をどういうふうにして克服されるお見込なのかということを一つ承わつておきましよう。
  38. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 決して労働争議と申しますか、労働問題を関せずえんと考てもおりませんし、労働争議を放つたらかしておるわけではありません。ただ動かないということは、放つたらかしておるということとは私は一致せんと思つております。動いて解決を妨害する場合もあるし、政府として動かないで解決する場合もある。只今の階段におきましては、さつき申しましたように労働大臣を通して労使双方にいろいろの場合応じては発言をしておる程度で、それ以上政府の力を解決することに強く出さないほうがいいという解釈を持つておるのが現在であります。これから先どうするかという問題になりますと、これはそのときの情勢に応じて適時きめて行くよりほかない、なお今の階段では労務者側の反省を待つておるという形をとつておるわけでございます。  それから私のほうの石炭の問題は只今申しましたように、第一はこの石炭ストが一日も早く解決して皆が山に入つてくれることでありますが、今の状態において許し得る限りの方法を講じて、その貯炭と入手炭との割合を見まして、それでできる限りのことを国鉄にやつてもらうよりほかに途はないだろうと今思つております。
  39. 高田寛

    理事高田寛君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  40. 高田寛

    理事高田寛君) 速記を始めて下さい。
  41. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 どうも今の大臣の御答弁ではストはいつやむかわからん、政府は成行に任せると、平たく言えば今力を加えるべきときでない、そういうような結論に達するようでありますが、私どもはストに対して力を和えるということは非常にいかんと思う。力を加えないで而も円満に解決する方法政府は努力されたらいいじやないか、どうもこれは余談に走るようですが、池田さんは大蔵大臣時代から通産大臣になるまでいろいろ失言をされた、中小企業の五人や十人死んでもしようがないじやないかとか成行に任せるような放言を自由党内閣はよく止るのですが、私はこれじやいかんと思う、政治というものはそういうものじやない、食えないものなら食えるようにする、死ななければならんようなものがおればこれに温い手を差のべてその急場を救つてやるというのが政治で、石炭の問題でも同様です。私は政府が本当に労使双方の立場を十分に理解し、労働運動を理解し労働者の窮迫せるこの生活状態を十分に把握しておられるならば、もつと打つべき手はあるのじやないか、解決の方法はあるのじやないかと思うの、だが、これは自由党は怠つておられる。これは私一人の意見じやない恐らく国民の大部分の意見だ。吉田さんの言葉をそのまま借りるのじやないが、これは私の意見じやなくて国民の声であると私はお聞き願つて決して誤りないと思うわけであります。このままにしておくと鉄道は恐らく動かなくなる、三回の削減をやつて而も遵法闘争をやつてダイヤというものは全くめちやくちやになつておる。九州あたりでは五時間も遅れておる線があるということです。又運転休止をしておるものも相当にある。こういうようなことで国鉄の使命が果されるか、国鉄の乱脈によつて産業が破壊され、国民生活は極度に困難になる、そうして今や国鉄というものが国民怨嗟の府になろうとしておるときであります。こういうときに政府が今手を出すべきじやないと楽観しておられることは以てのほかと思うのですが、併しあなたと議論しても始まらんわけであります。国務大臣の一人として私は閣僚の会議に出席されるメンバーの一人として強くこのことをお考え願いたい。一日も早く双方の立場を十分に考えられてこのストの解決をやつてもらいたい、こういうことを思うわけでありますが、今のところ全くストが解決せられ、石炭が入つて来て列車が平常の運転になる見通しがないわけでありますかどうですか、その点をはつきりお伺いしたい。
  42. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 今お話がありましたが、さつきから申上げますように動いてないということは政府として強い手を打たないと、それは御了承あつた通りでありますが、労働の責任者たる労働大臣は絶えずこの問題を念頭におくばかりでなく、表に政府として動く場合もありますが担当責任者といたしまして、労使双方に向つてできるだけの話合いをするような努力は必ずしております。まあそれがうまい結果が現われて来んということは誠に遺憾なことでありますが、石炭がどうしても出て来ないと、そうしてこのまま日がだんだん続くと、そうして今一万トン内外の石炭しかないということになれば、これはもうはつきりした結果になりますのは、列車の運行がだんだん困難になつて参りますということであります。一万トンで動かせる範囲しか動かせないと、それが一万二千トンなら一万二千トンになるという計算はその通りなるのであります。で、何とかして石炭をもう少し入るような方法をということで、私毎日いろいろ通産大臣などと話しております。そのほか個人、個人と申しますか、団体と申しますか、山のかたであります、とも話しております。
  43. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 結局今のところでは全然見通しがつかんという結論になるわけですね。そういうふうに承わつておいていいわけですね。……それならその程度にしておきます。  そのほかにまだあるのですが、最後に私は先ほど申上げました経営合理化という問題について運輸大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。今日の機構においては、一人の優秀なる運輸大臣、或いは国鉄総裁、局長によつて直ちに一〇〇%の経営合理化ができるとはこれは考えない。そういうことを望むことは非常に無理であります。併しながら最高首脳部というものに人を得るならば、相当の成績を挙げるということは、これはまあ申上げるまでもないところであります。国鉄公共企業体になり、独立採算制を目標として今やつておるわけでありますが、公共企業体になりまして、いわゆる独立採算制建前をとりましてからも、決して経営はよくない。これは御承知の通りであります。幾たびか運賃値上げをやり、或いは政府資金借入れをやり、そうしてようやく辻褄を合しておるという状況であるのでありますが、今後においても、恐らく私は国民要望するような国鉄になるということは当分見込みはないのじやないか。新線建設の面、その他のサービスにおいて、国民期待に応え得る時期は果していつであるかということを非常に私は考えるのであります。これについても、やはりどうしても適当なる最高首脳部がおるということが必要になつて来るのじやないか。吉田内閣は吉田という一人のワンマン総裁によつてつておる。そうしてこの人が殆んど一〇〇%の力を持つて内閣を動かしておる。吉田さんの前に行くと、さすがの大臣もものも言えないと、まあこれは事実であるかどうか私見ておりませんが、縮み上つておるということであります。こういうふうに、まあここで吉田内閣を例にとるのは非常に失礼ですが、一人の優秀な何か力のある首脳部がおると、そういうふうな結果がすぐに現われるわけであります。私は今の国鉄総裁或いはその他の幹部を非難するわけじやありませんが、果して今日国有鉄道というものは人を得ておるかどうかということをやはり運輸委員の一人として考えざるを得ないわけであります。御承知かどうか知りませんが、公共企業体になつて鉄道総裁を物色する際に、どうしてもこれは運輸大臣相当のいわゆる大物の総裁を持つて来なければいかんという議が現政府の間においても、国民の間においても相当論議されたのであります。ところが、御承知のように、いろいろの事情で、最初は何といいまするか、下山という初代総裁が就任された。この人はその後非業の死を遂げられた。他殺か自殺か知らないが、今日謎のうちに葬られておるようなわけでありますが、これも国民の感情から言うと、決してそう立派な総裁であつたとは見受けていなかつたようであります。次が加賀山という総裁、これは桜木町のあの事故のためにあえなくついえてしまつた。第三番目に選ばれたのが今の長崎総裁であちます。その前にいろいろの八が挙げられた。我々が非常に適当だと思われるような人も候補者の間にはあつたようでありますが、そういういわゆる世間で見る大物、相当に経綸もあり、力もあるというような人は、国鉄の内部の反対によつて実現を見なかつたというような実情を聞いておるのぐあります。そうして今国鉄総裁でめる長崎氏が国鉄の輿望を担つて総裁になつておられるわけでありますが、一生懸命にやつておると私は実情は見しおりますが、果してこの人によつて経営合理化国鉄の進展ということが、実現せられつつあるかということは、御本人を前に置いて甚だ失礼でありますが、私は多少の疑問を持つておる。私は国鉄総裁という大きな幅の広い、場合によつて運輸大臣よりも非常に広範なる権限と責任を持つておるところの国鉄総裁にその人を得ないということになれば、これは経営合理化鉄道の発達も望むことはできんのではないかと考えるのであります。国民国鉄総裁を日本一の最適任者を以て充ててもらいたいという気持を持つておるだろうと思うのでありますが、大変に問題が具体的になつて恐縮に存じますが、こういう問題について、運輸大臣はどういう御意見を持つておられるか、この際承わりたいと思います。現在のいわゆるこの国鉄の首脳部というものは、誠に最適任であつて国民の輿望に応えるに足る人物であるとお考えになつておるかどうかという点について明快なる御答弁を願いたい。
  44. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 国鉄経営して行くということは、これは誠に大変な仕事でありまして、御承知のごとく、運輸大臣よりも私はこの任務は重要だと思うくらいであります。同時に考えてみますると、誰がなつても非常に今の国鉄法の範囲内に動く問題になりますると、その人の意見というもの、その人の創意というもりがなかなか現わしにくい。よくこの間から論議になりますが、公共企業体であるという面と、それから独立採算という責任を持たされておるという面と、そうして予算政府によつてすつかり縛られておるという点等を考えますと、非常に困難でありまして、これは私は相当根本的に考えなくちやならん、国有鉄道というものが発足して四年、今日までやつて来まして、ここも直すべきだ、あすこも直すべきだと、ちよくよく直されておりますが、もう少しいろいろ考えてみる余地がありはせんかと、まだ日が浅いけれども私自身は考えておるくらいであります。そういうふうな制約された立場におりますので、いろいろな人が創業以来総裁になられて、その人たちは大いにあれもしたい、これもしたいと思いながら、いろいろな制約受けてできないうちに代つたということ等もあつたと思うのであります。又そのときにあの人この人と噂に上つたような人がなつて、それではそのときの総裁以上にどれだけのことをしたかというと、私はやはりなかなかむずかしかつたんじやないかなあという心持がいたします。併し成るほどあのくらいな大きな人がなつたんだというようなことになると、世間が予期しておればそれだけの信頼感が起るということはそれは事実でありますが、まあそれは抽象論であります。さて、現実の問題でどうかというお尋ねでありますが、私は今の幹部のかたがたといろいろ折衝いたしております。今の法規の制約の範囲において仕事をして行くのには、実に立派な人たちだと思うて私は信頼いたしております。
  45. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 運輸大臣のはつきりした御答弁を聞いて私も安心したわけでありますが、大臣は御就任まだ二カ月早々で、国鉄内部或いは運輸省内部の人事関係について十分に或いは御検討が済んでおらんかと思うのであります。抽象的な御意見でなく、国鉄公共企業体になつて以来のいわゆる鉄道経営というものについては、真剣な態度で一つ研究を願いたい。そして鉄道経営と人の関係という問題についても、私は甘い考えでなしに非常に強い厳密な気持で一つ研究を願いたいと思うわけであります。経営合理化の問題については、私は先ほど申上げましたいわゆる積極的に収入を殖やし、消極的に経費を節減するということがこれが経営合理化であります。非常に私はこれは言いたくな)とでありますが、この前私は鉄道総裁の御招待を頂いて有難く出席したのでありますが、築地の某料理屋で豪華絢爛たる御招宴、美酒美食、新橋の名妓を部屋に溢れるように、非常な歓待を頂いて恐縮したわけでありますが、その帰りに国鉄の脇を通ると、提灯を下げて天幕を張つておる一団がある。見ると国鉄の機関車労組の人々のハンストであつたのであります。今年初めの、雪がちらちら降る、私の乗つている自動車の窓ガラスに吹きつける、車の中におつて外套を着て襟巻をしておつても非常に寒い晩です。こういう寒い晩に、テントの中であなたの関係であるところの機関車労組の人々が切実なる闘争をしておる。ハンストをやつておる。この実情を見た時に、私は実に胸を打たれたのです。何とも言えない気分になつて、頭を垂れて私は彼らの前を通つたのであります。一方では豪華絢爛たる夜宴を張り、そうして新橋の名妓を侍らして宴会が国鉄の中で行われておる。一方では正月に子供にせめて木綿の洋服でも買つてやる金もない、餅の一切れ、数の子の一片でも買つてやりたいという親心を充たすこともできないで、賃金引上げの闘争或いは年末手当の支給の運動のために強い決意を以てハンストをやつておる。この実情を見るときに私はここに経営合理化というものが当然に起つて来るのじやないかという気持ちが起きたのであります。私でもその招宴に呼ばれて非常に有難かつたが、帰り遂に誠に慚愧に堪えない心持ちがしたのであります。こういうような事実についてこれは人間の心の問題だと私は思うのであります。経営即心の問題、国鉄の幹部と国鉄の職員とのいわゆる温かい血の繋りの問題であると思うのでありまするが、経営合理化というものはこういう面にも私は響くんじやないかと思う。これらの点について一つできれば運輸大臣の御感想を承わつておきたいと思う次第であります。
  46. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 只今のようなお話は、これは十分注意をいたすつもりでおります。気を付けるように私からもあれします。
  47. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 繰返して申上げることは非常に憚るわけでありますが、人間の仕事というものは、これはまあ釈迦に説法のようなことだが、蟻の穴から崩れて行く場合もあるのです。こういうような一席の宴を張つて、一方ではこうして雪の中でハンストをして、そうして血の叫びをしておるという非常に相反するこの二つの事実というものを私は運輸大臣なり国鉄総裁その他の人々が切に考えなければならんと思うのであります。こういうことに私はストの大きな原因がこもつておるのじやないかと思うわけでありまするので、非常にいやな心持ちでありましたが、特にここに取上げてお話をしたわけであります。  大体二十分ぐらい過ぎましたが、もう一つつておりまするのは、鉄道新線建設の問題であります。これにも相当の時間を要するので改めて質問をしてもいいのですが、委員長如何でしよう。
  48. 高田寛

    理事高田寛君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  49. 高田寛

    理事高田寛君) 速記を始めて。
  50. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 運賃問題に対するまあ大体の質問、これは細かいことは更に重ねて質問いたしますが、大筋だけを質問をいたしまして、一応保留いたしたわけであります。運賃問題に関連をいたしまして、鉄道建設新線建設問題について、運輸大出にお尋ね申上げたいと思うわけでありますが、その前に一応承わつておきたいことは、新線建設の問題に対して、運輸大臣は前村上運輸大臣から引継ぎを受けておられると思うわけであるが、大体において石ル運輸大臣が前の村上運輸大臣の方針を御継承なさるおつもりなのか、或いは独自の立場でお考えになるのか、この点を承わつておきたいと思います。
  51. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 村上君からは簡単な引継ぎを受けておるだけであつて新線につきましても、こういうふうな予定線があるということ、本年度着工した線がこれこれであるということ等を受けておりまして、それについての具体的に何らの意見を承わつておりません。
  52. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 新線の問題は、これはまあ非常に大きな問題で、運輸委員会でも陳情請願その他委員会の問題等においても、恐らく委員会で取上げた大きな問題の一つであろうと考えるわけであります。私が承わつておるのは、引継ぎを受けられた意味においてこれは同じではないか。大体において方針はお変りないと思うのでありまするが、やはり村上大臣と同じようなお考えでなさるのかどうかということを承わるほうが質問するのに非常に都合がよいと思つて承わつたのであります。
  53. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 只今申上げた程度しか聞いておりませんが、今おつしやる通りであります。大体大きな差はないだろうと思います。
  54. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 戦争を境にいたしまして、この鉄道建設の問題が大きく浮び上つて来ておるわけでありますが、戦争中には御承知のように土工をやつたものを中断して来た。或いは又現に営業線を、鉄道を外したり、鉄橋をとり壊したりして、それを戦争の資材用に使つたりしたようなものもあるわけであります。又当然新線建設をしなければならない、必要度の高いところにおいても、そのまま延ばされておつて、終戦後新線の問題については、本委員会において採択いたしましたものでも、恐らく百数十件、百二、三十件に上るのじやないかというふうに思つております。私はこの問題で運輸大臣に質問をしたことがありますが、その他調べましたものは百二線、ここで取上げましたのが百二線、新線建設の問題がこれは日本の産業経済の根本をなす問題でありますので、全国的に非常に強い要望があつたということは、恐らく運輸大臣も御承知であろうかと思うわけであります。そういうことで、本年の初めに、夏頃でありましたか、建設審議会というものができて、自由党中心として、国鉄総裁、或いは大蔵省の次官、その他の人々がメンバーとなつて愼重に研究をされた。その結果、昭和二十七年度建設費、この予算を以て十一線をやる。これは主に土工のできたものが中心になるのでありますが、十一線を二十七年度の当初予算でやる。残りの十六線ほか三線を補正予算でやる。そうしてこの残りの十六線というものは、いずれもこの重要度において甲、乙はないのであります。同一にこれは取扱うのであつて、二十七年度補正予算においては、どうしても実現しなければならないのだという強い答申を運輸大臣になされたということは、恐らく御承知であろうと思うわけであります。先ほどお話を申上げましたように、その三十億を政府資金の繰入れによつて実現するようにという建議案が出ておる。政府にこの委員会から建議案が出されておる。これも全会一致で通つておる。その上において、私は運輸大臣にいろいろと質問をして、補正予算においてこの十六線の実現を期するようにお話申上げると、その決議も聞いておるので、是非一つそういうふうにやりたい。全力を期してやりたいということを御答弁になつておる。このことは運輸委員会の会議録を御覧になれば詳しく出ておると思うのでありますが、私ども自由党中心にしたところの審議会、而もこの中には国鉄総裁がおり、大蔵次官がおる。その他現政府の、或いは現政府関係のある相当重要な地位におられる人々委員になつて強い答申をなし、その建議案まで出しているのであるから、当然私どもはこの建議業というものが取上げられるべきであるということを強く信じ、又関係地方民も非常な期待を持つておつたわけであります。ところが先ほどお話のように、本年度補正予算を見てみると、僅かに五億円が計上されておる。国鉄経営の非常に困難なことはよくわかりますが、それ故にこの建設審議会政府資金でやる。政府資金で賄えということを強く要望しておるわけであります。僅かに三十億予算の金があれば、建設審議会要望というものは十分に達成される。又関係県民の目的も達成せられて、日本の交通というものが期せずして進歩するわけであります。ところが僅かに五億円ですから、この五億円ではどうしたつて審議会の答申のごとき建設はできないことは当然であります。そうすると十六線というものが残つておる。十六線は五億円ではやれない。それはやれんことはないかも知れない。手をつけるぐらいのことはやれる、やればやれないことはないかも知れないが、先ず無理だろうという考えも起つて来る。そうすると建設審議会の答申案にあります通り、又その他の建議案にあるごとく、或いは又村上前大臣の御答弁にございますように、この十六線というのは甲、乙はない、重要度においては甲、乙はないのだ。一律に、これは一緒に当然やらなければならんのだということを言つておる建前上、十六線やるか、或いは一線もやらざるかという結論に達せざるを得ない、これは十六線のうち甲、乙をつけるということになればやれる、ところがそうじやないのです。審議会では岡田先生のごとき最も経験の豊かな人も入つておられる、日本の権威者が集つつてこういう結論を出しておるのですから、甲、乙はない、我々はそう信じておる。ところが今回の決定によると、どうも甲、乙をつけておるように聞いておるのでありまするが、若しそうであるとするならば、十六線のうちどういう線を補正予算の五億円でやろうとしておられるのか。そうしてこの十六線のうち十線選定せられた基準、この十線を選定せられたところの基準というもの、先ずこの点について一つ答弁願いたいと思います。
  55. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 村上前大臣が今申されたようなことを申したということでありますが、それは恐らく私もその立場におれば是非十九線をやりたいということを申したんだろうと思います。併しどの問題にもその問題が起つて参るのでありますが、懐ろ勘定のいつも睨み合せるということになりますと、成るべく余計懐ろの中からひつぱり出して来るという努力をしなければならないのが日本の今日の財政状況であります。それは私も十九線ということを聞きました。ところがさつきも申上げましたように補正予算では一線も見ておりません。これは話が違うじやないか、僕はそのときは代議士に出ていない頃でありますが、今度の補正でこれを組まんというのはおかしいという線で折衝したのでありまして、約十線というものをそれじや認めるということで話がまとまり、而してその後は成るべく早い機会にやつてもらいたい、これは今おつしやるようなはつきりした意味にも聞いておりませんでした。実際十九線というものはちやんと出ておるのだからこれから選ぶということは、これは審議会仕事にお願いしておるけれども建設審議会としてもこれは大変な御困難な仕事だと思うのだということは申しております。そういう意味で約十線くらいということで補正を五億組んだ、これが通つて参りまして動き出すというと来年に入つてからになりますと、正月等になりますと、日も短いので頭を出すだけなら十九線を皆やるということを言つても言えんことはないのであります。併しこれは来年度借入金の問題があつて、それがなかなか手狭まだということをしきりに大蔵省は言つておる際でありますから、今年は五億で、約十線でスタートしてそして来年度、まあ主として再来年度等に金が出るということになるだろうと思います。そういうことで話合いを付けまして建設審議会のほうに頼んで、その中からよつてもらわなければならん、全部が認められないのだという理由を申上げてお願いしておるわけであります。その結果出て来ておりますのが、運転休止線の三線を返すことと、そのほかで十線ということで私は全部で十線というようなつもりで話しておつたのでありますが、運転休止線が、別になつてあと十線をするという決定を得ましたので、その答申を暫らく前に受けております。これにつきましては来年度予算の問題にも関係いたしますので、大蔵省とこれから折衝を始める予定であるわけであります。
  56. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 これはあなたにくどくど質問することは無理かも知れませんが、建設審議会の答申というものは、あの十六線は甲、乙はないと言つておる。これはどうしても頭に入れてもらわなければならん。甲、乙なく一緒にやらなければならん。金がないなら政府資金でやれ、これが結論です。ですからこれは政府はどうしても、若し今言われるように、一から十まで建設審議会責任を転嫁しなければやれんようだつたら、建設審議会の議に従つてどこまでも骨を折らなければならん。五億なら五億でできる、可能な範囲において十六線をやるべきだと私は思う。ところがそうでなくて責任を転嫁する意味においてかどうか知らんが、建設審議会に十線の選定を頼んだということは我々はどうしても腑に落ちない。甲、乙と分けて、この本線をやるためにいろいろの問題が起つておる。事務的に政治的に又いろいろ技術的に問題が世間に流布されております。私丁度家へ帰つておりましたのですが、鹿児島県のごときは一線予定線に入つておつたことは御承知でありましよう。二の二線の予定線というものは、三十数年前からやつておつた山川枕崎の線は三十二年前から運動を始めて、そうして一遍は十二線の中に入つておつた一ところが戦争が始つて、そのうちの十線はやつたがあと残された二線の中に入らなければならんということになつて、その後いろいろの事情で延びくになつおる。当然これらは第一に考えなければならん線である。又隼人、古江線のごときは、小川平吉という鉄道大臣の時分にわざわざ鹿児島まで視察に来られて、これも三十年も前からのことで非常に必要な線だというので予定線になつておる。そのときはもつと距離が遠いのです。隼人、それから大隅半島の横別府といういわゆる古江とかいうところまでで、これはずつと昔に建設しなければならん予定に編入されておつたところなのであります。ところが丁度私が病気で帰つたとき、当然この鹿児島の二線と宮崎の一線と南九州の三線というものは間違いなく入るものだとと思つておつたのが入つていない。調べてみると、非常にそれをきめるのにいろいろ政治的、或いは事務的な動きがあつて、或いは権力或いは政党の力、或いは甚だ言いにくいことであるが、そこに汚ない取引さえあつたように鹿児島あたりでは音沙汰されておる。これは恐らく事実でありませんでしよう。事実だつたら大変なことである。事実だつたら、私どもどこまでも闘わなければならんが、私は事実でなからんことを切望するが、そういう噂が出ておる。そして鹿児島県民のごときは怒り心頭に発しておる。運輸大臣の石井はなんだ、国鉄総裁の長崎がなんだということを言つておる。実にこれは非常に行過ぎた言葉でありましようが、こういう言葉が出るということは、鉄道建設に対する地方民の熱意が如何に大きいかということを示すものであります。これは三十年前、親の代から引続きやつておるのです。この十六線というものは建設審議会意見通りこれは一緒にやらなければいけない。残されておるのは、北海道の山の中とか、南九州の三線だけですぞ、あなたは御承知ですか。こういうような不公平、不合理がどこにあるか。新生日本の運輸行政を建設しようとするならば、すべからく鉄道の問題、新線のごとき問題については十分なる研究をして、誤りなき認識を持たなければならんと私は思うのであります。それを自分で決定することができないで、諮問機関であるところの建設審議会に選定を頼んだなんということに至つては、これは言語道断です。そういうことをしなければやれんようではこれは困る、国民は迷惑します。国の産業というものはそれで破壊され、国民の感情は悪くなります。私は実に残念でたまらない。誰が考えても十六線のうち北海道と南九州だけを除くという理窟はないのです。この委員の中の人々、いろいろな人がそう言つている。不公平だ、誰ということは私は言わないが、そういうことを言つている。私が来ると国鉄の相当の幹部のかたがそういうふうに私に言つたこともあるのです。国鉄部内において或いは国会議員の間において、委員の間においても、そういう声が起つておる。十六線のうち、南九州と北海道を残された理由、又十線を選定された基準内容、それらについて詳細な御答弁を願いたい。
  57. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お叱りを受けましたが、私はこの問題について、第一のお話の何かスキャンダルでもどこかにありはしないか。それはまあ発言中にそんなことをおつしやいましたが、そういうことはないと私は確信いたしております。又なぜこれを全部かゼロかにしなかつたかというお話でありますが、全部ということは、どうしても金の将来のやりくりを考えてできない。今度の補正にはそれは認められんということになつて、いろいろ折衝した結果、せめて本線をというので、私はいろいろ話をしてやつたのであります。それでその意味におきしまして十線はどうしたらいいか、どれをお選びするかということは私が勝手にはできない点であります。これは法律の規定によりまして、審議会のほうにかけて、又もう一遍御決定を願わなければならないと思つておるのであります。それを御決定になつたものを、そのまま又それじや運輸大臣はそいつを呑んでやらなくちやならんかという問題になりますると、廻りくどいようでありますが、これは政府財政の都合その他によりまして、その通りできるだけ尊重はするけれども、その通りできない場合も起つて来るのであります。まあ十九線に行つたときも、是非十九線を一斉にやりたいということでありましたでしようが、それがまあできない情勢になつたから、改めてお選び願つて、どれがいいか、どれが悪いかとかいうような問題等につきましては、私どもが常に意見をつけておるのではなく、各方面のかたがた出ておられるのでありまして、この審議会そのものの組織は、御承知のように一党一派にも偏しておりません。衆議院参議院にも偏しておりません。官界、民間の各方面、これは皆さんがたのおこしらえになつた法律で、これが適当だというような組織になつておりまして、その人たちがみんな集つて公平に論議されまして御答申になつもたのであります。この九線を除いて十線、これをおきめになるのは、大変だろうと思います。私はこのおきめ願える内容にサゼッシヨンもしなければ、それに対して指導的な行動も一切やつておりません。皆さんがたがフエアーな態度で、そうして日本の産業線としてどれから先にやるか、皆んなやりたいができないから、これくらいの線において皆さんお選び願いたいということで、何回も皆さんお寄りになつてデイスカッシヨンされてきまつたものであると私は……、私の頭と少し違つたのですけれども、何とかしてこういうことで始めさしてもらいたい、そういうふうなことでございます。
  58. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 くどく繰返して申上げるまでもないのですが、建設審議会というものが、最初先ほども申上げましたように二十七線をこれは採択しております。十六線を補正予算で全部やれと言つている。そうして金がないから政府資金でやれというところまで強く来ているのです。ですから建設審議会意見というものは、これは十六線やれということなんです。若しこれを十六線やれないというのならば、これに甲乙をつけなければならない。めくら滅法に勢の強い所だけ、或いは力の強い所、或いは運動の激しい所だけを……、どういうふうに選定されたかわからんが、そういうふうなことが予想されるような選定にしかなつていない。十六線のうち十線を選ぶというならば、その間に十線を先にやらなければならない内容が出て来なければならない、必要度というものが出て来なければならぬ。ところがこの十六線というものは、全部一緒だと言つている。答申案の中にもはつきり出ている。十六線を一緒にやる、運輸大臣もそういう答弁をしている。最初の答申案、次の建議案にもそういうことがはつきり出ている。ですから必要度が少しも変らないというこの十六線から十線を選ぶには、どこに内容の相違があるか、又特殊の事情があるかということを当然考えなければならんことではないでしようか。運輸大臣というものは、答申案に基いてその当否をおきめにならなければならない、答申案が果して当か不当か、妥当かどうかということを御検討にならなければいけないでしよう。諮問案なのですよ。あなたの諮問に応えて答申をしておる。その通り実行しなければならないというのじやない、それを検討しなければならない。あなたが十線を選んで、それはその内容において十線を優先的にやるべきものだという御認定になつているそのなつた内容を聞きましよう。
  59. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 一番新らしい答申案を、私はこれに副つて動かして見たいということを申しております。これは十二月二日に答申案が出ております。これによると、只今申しましたあなたのおつしやるような営業休止線の三線とそのほか十線というものを答申になつております。
  60. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 その答申案が妥当であるとお認めになつた根拠を承わりましよう。
  61. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は運輸審議会にお尋ねして、運輸審議会が自由な立場で各方面から論議されて決定されたものでありますから、その線についての甲、乙がどうであるとかということでなしに、この報告を頂いております。
  62. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 答申案というものは、そういうものでしようかね。十線を選ぶならば、十線を選んだ理由というものが明確でなければならない。前の答申案にいろいろな地下資源とか何とか、そういうものを勘案して二十七線を選んだということが書いてある。それを十線を選定するところの……、そういう優先的に選定するということが明確でなければならない。又運輸大臣もそれを明確に認知されて、成るほどこの答申案は間違いがないということでなければいかんと思うのです。建設審議会というものは、何回も開かれて最初に十六線を平等に考えた、甲、乙がないのだということをはつきり言つている。それならばこの十六線をいろいろな事情で甲、乙をつけて十線選ぶというならば、地域的な或いは又産業的ないろいろな点を考えて、もつと公平にやらなければならないということをあなたはお考えにならなければいかん。公平にそれは行つておりますか。南九州と北海道だけを除いて、そうしてその中間の所だけを選んでいる。これが公平と言うならば、あなたの頭はどうかしていると言わなければなりません。
  63. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) あなたのお話を私はそのままお受けしますが、運輸審議会の決定は非常に大事なものだから、それを尊重しろということをおつしやつておる。私は尊重するつもりで先ず十九線をそのまま持出して政府の間の御相談をいたしたのであります。ところが不幸にしてそれだけそれを進行するには、予算措置等がなかなか困難であるというようなことになりましたので、審議会に又かけて、そうして審議会はいいかげんに建議して行くということはない、又勝手にどこでもきめられるということはないと私は確信しております。審議会の顔ぶれを見ますならば、私はこの人たちが今おつしやつたような経済の面とかその他の面を、すべて今まできめられたと同じような条件で各方面から愼重熟慮され討議されそうしてこの答申が出たものだと私は確信しております。
  64. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 実際の答申の内容として、線を選んだその理由がはつきり出ておると思うのですが、それを一つ御披露願いたい。
  65. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) この答申は一個々々の問題は書いてございません。
  66. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 理由も何も書いてないのですか。
  67. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 諮問第三号に対する答申として審議会会長益谷君から運輸大臣石井宛です。  昭和二十七年十一月二十一日付諮問第三号「昭和二十七年四月二十八日付答申第三項十六線及び同日付建議営業休止線三線のうち昭和二十七年度補正予算を以て着手すべき路線の選定を如何にすべきか」について別紙の通り答申する。別紙として、左の十三線(北から順次列挙)は昭和二十七年度補正予算五億円を以て直ちに着手することを適当と認める。なお着手した路線については、昭和二十八年度以降経済速度を以てその工事を継続し得るよう予算措置を講ずべきである。というので三線を挙げております。それから、第二項として残余の六線については、昭和二十八年度において着手し得るよう予算措置を講ずることを適当と認めるということが書いてあります。
  68. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 実に杜撰極まる答申だと私は思うのです。第一回の分は非常に該細に書いてある。地下資源その他産業の面などを取入れて多数の線のうちから二十七線を選んだということが書いてあるにもかかわらず、この答申案にはそういうことは一つも出ていない。十六線の中から十線選ぶならば、当然十線選ぶ根拠が明確にならなければならん。又根拠が明確でなければ、あなたが御決定になるということは非常におかしい。十六線というのは国民の強い要望なんです。国民の強い要望の中から十線を選ばれておるのです。二十七線の中から十六線残つておる、その中から十線を選ぶなら、その十線を選ぶという根拠が明確でなければならない。どういう理由で優先的にやるのだという御答弁がなければこれはおかしい。運輸省は根無し草のようで今日はこちら、明日はあちらというので、あつちの岸に着いたりこつちの岸についたりということであつてはいけない。運輸大臣ともあろう者が答申案の不明確な、全く杜撰極まると思われるような答申案に対して、何ら研究もしないでそのままにするということはどうでしようか。それで私は運輸大臣の職責を全うしておられるどうかということに非常に疑問を持つのであります。答申案がそういうものであつて、これは内容の検討もしない、そのままこれを運営すればいいのだという気持で、十線をそのままおきめになつたわけなんですね。そういうふうに承知してよろしいですか。
  69. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) すでにどの線も十九線はこしらえたい、こしらえるべき値打ちはある線だということはもう前に御決定になつた通りであります。その御決定になつたものでありますから、どの線も私は成るべくやりたいという熱望を持つております。併し予算の振合い上から考えまして、どうしても十線見当でなければならないようになりましたのでありますから、その中から如何なる方法かで皆さんがたの建設審議会で選んで頂きたいということでやつたのでありますからどちらも必要であつたと思いますが、その中でどういう論議を尽されましたか私内容を存じませんが、建設審議会そのものの初めの決定通り、その中からお選びになつたこともいろいろ情勢を御考慮の上で、お選びになつたと思つて、私はそのまま受入れてそれから先の予算折衝に来年度問題等も入るものと思つておりますが、入つてもなかなかこの通りに行くかどうか、これはまだはつきり……今後の折衝でありますが、私はこの答申をそのまま呑込んでおるわけでございます。
  70. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 運輸大臣の御答弁を承わつておりますと、私は全く呆然たらざるを得ないのです。これは素人の運輸大臣で、国鉄のことはお知りにならないので、そう責めることも無理かも知れませんが、こういう大きな問題、鉄道建設という大きな問題でみんながこうしろと言つたからこうするのだ、おれは何も知らんのだということは答弁にならないんじやないか。十六線というものがある、而もこれは長い間地方民が要望し、日本再建のために、日本産業の開発のために強く叫んでおつて、そうして鉄道審議会が平等な立場から、全平な立場から十六線をきめておるのです。そのうちから十線選ぶならば十線選ぶ明確な根拠がなければいかん国民が納得する根拠がなければいかんわけです。賢明な各般の委員が出て、俺はこれはいいと言つたからやつたのだ、何も知らんのだ、それじや答弁にならんでしよう。或いは責めるほうが無理かも知れない。だから俺は何も知らなかつたのだ、これを建議する当時何も知らなかつたのだという、それはそれで納得しましよう。知らんものを攻めたつてしようがない。納得するが、あなたがああいうふうにこれが正しいというようなことを言われるなら、我々納得するわけに行かない。国鉄の現状から考えても、鉄道建設のみならずその他いろいろの問題のある今日、私は国鉄というものは国民の関心の的になつておると思うのです。そういうような際に新線をきめるのに審議会のきめた通りにやるのだ、そういう馬鹿な大臣がおつて国民が納得するでしようか。私どもは何も他意はないのです。むしろ我々は自由党内閣というものに非常に好意を寄せておる。日頃から援助もして来ておる。ところがこの大事なときにおいて運輸大臣が根無し草のように風のまにまにどこの岸にでも着くというような態度でおられては私は困るのです。あなたは根つからのいい人だということを私どもも聞いておるのです。併しはつきりするところははつきりして頂きたい。一つ若し今日御答弁ができないならば、十線を決定したのはどういう理由で、こういう理由で十線は残さたた六線より優つているのだ。だからあなたはこうやつたのだということを明確に御答弁願います。
  71. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは何度も申上げても同じことになるかもわかりませんが、私は建設審議会の答申を尊重して、そうしてこの新線建設の線をはつきりさして行くというのが筋だと思つております。従つて第一段としては前にお選びになつた全線の工事を早くやるということでありますが、これは予算措置等によつて制限を受けたのであります。第二段としては制限を受けた工事をどうするかということは、今までの鉄道審議会の諸君の審議の状況、今あなたもおつしやつたように経済的であるとか、いろいろな国策的としてもこういうふうなものが必要であるとかというようなことについて詳しいデータを以ていろいろ論議されておきめ願うのでありますから、私は線を選ぶときには、自分がその中に入つてそういうものはいかんとか、これはいいとかというようなことよりは、自由な立場でこの審議会決議のようにやつて行くということにしたほうがよりいいのではないかということを考えておるのでありますが、仮に私がその問題を今あなたから聞いて、成るほどあなたのおつしやる通り尤もだと言つてほかのものを引つくり返して入れる、或いは今のものよりももつといい意見を聞いても、ただこれは参考するだけにして、運輸大臣自身がきめるべきだ、人の言うことを聞いてうろうろしておるのは見つともないじやないか、これも一つの理論の筋だと思います。併しこれは鉄道審議会を設けられた精神からいたしまして、私は鉄道建設審議会の御意向を尊重するということでやつて行くべきだというふうに思うておるのであります。それがきめられた理由等につきましては或いは委員のほうから申上げ、或いは又政府のほうの委員もありますから、そういう若から申上げることもあるかも知れませんが、私はそれ以上のお答えはできません。
  72. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 運輸大臣答弁を聞いておると、どうもその審議会意見尊重の一本槍で、私の聞いているのは意見尊重即何といいますか、無為無策、即無能、みずから鉄道建設に対して、建設線の甲、乙をきめる能力がない。言葉は非常にあなたのは結構です。審議会の言うことを挙げて尊重しておる。併し裏を返せば、これは自分に能力がないということになる。十六線出ておるから、そのうち十線と限つたならば、あとに残つた線と十線とを比較しなければならないでしよう。これくらい自明の理はないじやないですか、運輸大臣責任において大いに検討しなければならない。これはこういうふうに比較すれば、十六線の中から、この十線を選ぶのが相当である、二十七年度補正予算においてやるのが週当である、こういうことで決定されるべきものである。審議会は答申の機関であつて、決定機関ではない。あなたの答弁を聞いていると、あたかも審議会というものは諮問機関ではなくして決議機関、執行機関であるような錯覚を私どもは受ける。この上答弁ができないと言われるのなら、これはもう追究してもしようがないが、私はあなたの今度のおとりになつた態度は不満である。国民も不満である、そうしてあなたの真価というものを著しく下げておる、世間に多くの疑惑を残しておる、不合理である、これにあなたは返す言葉はないでしよう。十六線のうち南九州と北海道を残してそうして十線を選んだ、あなたの部下でも不公平だと言つておるのですよ。私は名を言えと言えば言いますが、あなたはあなたの決定に対して不満に思うと答弁しますか。国民の声はもつと激しい。私はあなたは非常に今まで正直ないい人だということを聞いておつたが、今日の答弁を聞いておると、実に老獪である。そういうことでは政治はやれませんよ。誠意を以て私たちはやりたい。人の問題にしても、これは政府に誠意があれば解決していたと思いますが、国鉄は今どういう状態になつておるかということをあなたは本当に認識しておいでになるだろうか。梅田の駅でも三千人の大衆が駅長室にどなり込んで暴動に追込んでおる、上野の駅、東京の駅でも夜を徹して切符を買うのに立つておる。一昨日も昨日も行つたのですが、鹿児島から陳情に来ておる或る年とつた町会の議長が盲腸をやつて動けない。併し帰らなければならん事情がある、何とかして切符を手に入れたいと思つても入らない。私ども微力であるが、運輸委員会として何とか手に入らないかと言われるので国鉄に御相談したが手に入らない。この人が非常に憤慨しておる。今に暴動が起るかも知れない、そういうような状態になつておる。のほほんとかまえておるべきときではないでしよう。私はすべての点においてあなたの本日の運輸大臣としての御答弁は非常に不満である、非常に不満であるということをはつきり申上げます。今日は時間の関係もありまするからこの程度でおくにいたしましても、私は私がこの運輸委員会委員である間、否、国会議会議員である間、日本国民である間、あなたのそういうような不誠実な、無責任答弁を黙過しないということをはつきり申上げておきます。  そこで第二段に移るが、残つた六線を二十八年度予算に繰入れる計画があるのかどうか。すでに二十八年度予算の編成に着手されておると思うが、あなたの政治力、或いは熱意によつて残された六線を二十八年度の当初予算に計上する覚悟と自信をお持ちであるかどうかということをお尋ねいたします。
  73. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それをお答えする前に、前のお話の中に私の一身上に何かスキャンダルでもあるようないろいろ噂をしておるという御発言がありましたが、私はそういうものは何かどこかに噂があり、又そういう事実が何かあるとするならば、これは由由しい問題だと思います。私自身はさつきも申しましたように、無能とか有能とかいうこの問題は如何ようにも受けます。併し私が変なことがあるという噂があつて、それをお信じになることはないと思いますが、私はそういうことは決していたしませんということを御了解願つておきたいとと思います。
  74. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 これは最初に申上げたように、そういう噂がありますよ。或いは饗応、或いはあなたの具体切な問題、或いは抽象的にこういう噂もある。私は運輸大臣ということは言つていない。
  75. 高田寛

    理事高田寛君) 一応運輸大臣一つ答弁を終りまで伺いましよう。その上で又一つ……。
  76. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) いやちよつと……、私のほうがあなたの発言によつてそのままそれを聞きとりますと、如何にも何か了承したように見えますから、そこでその点は決してないんだということたけを、私の心境と実際を申上げておきます。  それから二十八年度予算にこれを盛るかという問題、これはさつきもちよつと申しましたが、今年からかかりまして来年にかかりますると、この総計十三でありますか、これでどのくらい数が出ますか、やはり五十億近くの金が要ると思います。それから本年度の今着工しておりまする分を合せますると百億くらいでございますか、今はつきり承知しませんが、そのくらい要るのじやないか。これを政府が出し、そうして政府から金を借りまして更に六綿というものを続いて出すということが、この二十八年度の本予算で直接てきますかどうか、これは私はまだはつきりと申上げられないのであります。この線に副うて当然私は努力すべき立場にありますし、努力するつもりでありますが、それが必ず盛られるということははつきり今お答えすることはできませんが、勿論この線に副つて努力いたします。
  77. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 二十八年度の当初予算というものはもうすでに編成に着手しておるんじやないですか、どうですか。
  78. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 予算には私らのほうでは組んでおりますが、まだ折衝までは入つていないそうであります。
  79. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 大臣審議会意見をどこまでも尊重する、一〇〇%尊重してそれを実施すると先ほど御答弁なつた。審議会は六線を二十八年度でやれといつておる。国民要望はもつと強いのですから、これは一つ熱意を以て、その場限りの御答弁でなくて、どうしても実現するという一つ気魄を示してもらいたい。そうでなければ我々は得心しない。こういうような不公平なことをやつて、誰が考えても、これが公平な処置だと思う人はありません。馬鹿や白痴でない限り……。そういうようなちやらんぽらんなことではいけないと思うのです。こういう不公平なことをやるならば、運輸大臣としての責任を持つておられる国務大臣は、はつきり一つどこまでもやるのだという御決意を私は聞きたいのです。やるかやらんかわからん、予算には組んでおるがまだ折衝もしないと言われるのでは答弁にならんですよ。運輸大臣の御決意を一つ簡単にお伺いしたい。
  80. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 同じことをお答えする以上にお答えのしようがないと思います。私が自分自身の懐ろの金を出すわけじやありませんから、あり余つておる金からこれもやろう、あれもやろうというわけじやありませんから……、或る範囲の中から、物の軽重もありまする上、私としては運輸大臣として努力するということをこの際お答え申上げます。
  81. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 あなたの懐ろから出してもらいたいなんということを言つておる人はない。そういう詭弁は弄せんようにして下さい。そういうよう下らんことを言つているのじやない。残つた六線というのは今度の十線と平等の立場において重要性を認めてやる。それならば十線をやらんで残りの六線は早急にやるという努力をすべきじやないごすか。どこまでもこれをやるという決意を持つて欲しいと私は思うが、やることはやるができるかできんか知らん、そういう頼りないことを私は聞いているのじやない。どこまでもやる、或いは結果においてやれんかもわからないが、運輸大臣として国民要望に応えて何かの決意を持つてやるのだという強い熱意示して頂きたい。傍聴人もたくさん来ておるし、私のほうからもたくさん来ておる、鹿児島からわざわざ来ておる人もあるのですよ。
  82. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私の申しであります。熱意を持つてやることは当然であります。それをいい加減に出そうというような考えは勿論持つておりません。ただそれができるかできんかの問題は、これはできるかできんかわからんが一生懸命やる、一生懸命やつてできるかできんかわからんという表現はあなたのおつしやつた通り、そうしてできない場合には止むを得んけれども一生懸命やる、その通りのことを私は言つておるのです。いい加減なことは一つ考えておりません。
  83. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 こういう問題はやろうと思えばできるのです。大した金じやないのです。残つた六線というものは、この補正予算考えれば、僅か五億円あればできる、それは僅か三億かそこらで着手できるのです。そのくらいのことが運輸省でやれんというのでは、これは問題にならんですね。実際こういう請合いのできない運輸大臣では、我々は信頼ができないのです。これは何十億とか何百億とかいうのじやありません。五億でも六億でもあればやれる。それもやれるかやれんかというようなことでは、これは運輸省国鉄の将来は実に憂慮に堪えん。こういうことで国鉄の発展、特にこのストの解決、又遵法闘争などというものも起つて、全く国鉄は麻痺状態になつておるのですが、これは当然でしよう。こういうだらしのないことだから……。その反省を求める意味でもこれはやる……、私は実に残念に思う。だからあなたとこれ以上論議してもしようがないから、私はこれを本会議においてもう一度正面別つて言うつもりです。
  84. 高田寛

    理事高田寛君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  85. 高田寛

    理事高田寛君) 速記を始めて。
  86. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 本日の私と運輸大臣との質疑応答は、非常に私としては不満足であります。運輸大臣の誠意を求めたい。こういうような運輸大臣のお考えであると、国鉄の前途はどうなるかということを私は非常に憂慮する。当初申上げたように私はいなか者です。種々の点において或いはエチケットを知らないというような点もあつたかも知れません。そういう点はお許し願うが、もう少し運輸大臣委員会等に来られたら、誠意を以てお話を願いたいです。国鉄がこういうふうになつておるのだから、本当にこれは年末にかけてどうなるんです。これを馬耳東風でもありますまいが、非常に軽い気持でお考えになつて答弁はちやらんぽらんの答弁をする御意思はないかも知れませんが、結果から見るとそういうことになつておる、こういうことでは私は困ると思うのです。ですから私はいずれ又もう一遍やります、もう一遍質問しますが、月曜日には本日の残りの運賃その他の問題について国鉄総裁に対して質疑を行う通告を申上げておきます。
  87. 高田寛

    理事高田寛君) それでは御異議なければ本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十六分散会