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1952-12-23 第15回国会 衆議院 労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十三日(火曜日)     午後三時四十二分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 吉武 惠市君 理事 前田 種男君    理事 青野 武一君       伊能繁次郎君    今松 治郎君       重政 誠之君    持永 義夫君       森   清君    菅  太郎君       春日 一幸君    菊川 忠雄君       矢尾喜三郎君    山口丈太郎君       山花 秀雄君  出席政府委員         調達庁長官   根道 広吉君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君  委員外出席者         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    堀  秀夫君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 十二月十九日  委員春日一幸辞任につき、その補欠として土  井直作君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員土井直作辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十二月十八日  港湾労働法制定に関する請願山口丈太郎君外  二名紹介)(第一二六三号)  電産並びに炭労スト早急解決に関する請願(  河野密君外二名紹介)(第一四五五号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  労使関係に関する件     —————————————
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより会議を開きます。  お諮りをいたします。去る十九日春日君が委員辞任せられましたので、港湾労働に関する小委員会が一名欠員となつております。この際小委員補欠選任をしなければなりませんが、これは先例によりまして委員長より指名をいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中伊三次

    田中委員長 御異議がなければさようにいたします。港湾労働に関する小委員会の小委員春日君を再び指名をいたします。
  4. 田中伊三次

    田中委員長 次に、労働行政に関する件を議題といたしまして、質疑をいたしたいと存じます。まず前田君。
  5. 前田種男

    前田(種)委員 私は労働政務次宜に希望を申し上げ、さらに二、三の点についてただしておきたいと思います。  せつかく炭労スト解決いたしましたが、聞くところによりますと、経済団体はいまだに中山案に対して回答を与えていない。要するに承認を与えていないというようないきさつがあるわけです。もう年末も押し迫つて来ておりまするし、争議自体につきましては、いろいろな批判もあるし、いろいろ見方もありますが、せつかくあの基幹産業解決ついたにもかかわらず、事業者団体が快く回答をしていないために問題が残つております。この問題が残つておるということは、年末に押し迫りまして何十万という炭鉱労務者の年末等に対しましては相当悲惨な状態の面もあるわけです。どうしても早くこの問題を根本的に解決してやつて、そうして中山案の内容に盛られてあるものでも、最小限度実行されるということにしなければならぬと思います。もう日がございませんから、ぜひともこれを承諾せしめるように努力を願いたい。実はこの問題につきましては、中山案としてあういうふうに出て参りましたが、官房長官政府を代表いたしまして、あの争議解決のためには、政府もできるだけ努力するということで、その努力をするという中には、経営者が無理を言う場合には、経営者に対しても政府は強くものを言つて、そうして打開のためにやつて行きたいという気持も十分あつたと思います。その意味において、炭労ストが完全に解決できるようにしていただきたいというのが第一点。  さらにもう一つは、昨日の名古屋東亜化学の問題もそうですが、今のような八十何日もストをやつて炭鉱坑内が相当荒れております。もし従業員が協力せずに、今のような問題が引続いて現場にかもし出されて来るということになりますと、炭鉱坑内の問題というものは、いついかなる事件が起きないとも限りません。特にガスその他坑内の問題につきましては、十分対策を立てて、そうしてそういう問題に対して遺憾のない方法を講じなければならないということを、この争議を経験し、そして昨日の大惨事を見たときに、相当炭鉱坑内心配だと思います。これは直接には通産省の所管であるかもわかりませんが、安全衛生立場から考えてみまずと、完全に労働省所管でございますから、そういう点等も考えあわせますと、そういう問題に対する対策並びに基本的には労資関係の問題を、この際一日も早く妥結せしめるということに集約的に最後の努力を傾けていただきたいと考えますが、そういう点につきまして、その後の経過あるいは労働省のそれに対する対策等を承つておきたいと思います。
  6. 福田一

    福田政府委員 お答えいたします。  第一点の、争議解決にあたりまして、中山案の実行の問題でございます。これにつきましては、政府としては関係者がいろいろ羅協議もいたしまして、すでにこの段階になつてあの解決案が出ておるのでありますから、これはなるべく早く経営者側においてもこれを認めてもらいたいという気持においては、私たちは一致をいたしておるのでありますが、しかし御承知のように、労資双方の自主的な解決によつて争議解決をするのがいいのだという建前をもつて、今までずつとやつて参りました。この段階に至りまして、一応中山案が出たのでありますが、これも私たち政府として圧力を加えて納得せしめたという形は、なるべくとりたくないと思いましたので、実は私たちは直接ではございませんけれども、そういう方面に話がつくような人を介しまして、なるべくすみやかにこの案をのんでもらうように骨を折つているわけでございます。今得ておりますところの情報によりますと、大体もう二十四日には、経営者側もあの中山案をのむのではないか、なお年末にあたつておりますので、山々によりましては、二千円ないし三千円の手当を、実はその中からでありましようが、出しておるというような報告も得ているわけであります。しかしながら、お説の通りこの年末にあたりまして、非常に長い間の争議のあとの年末ということでありますから、労働者方々、組合の方々もずいぶんお困りのことであろうと存じますし、御注意もございますので、この点なお一段とそういう面に注意を払いまして、そうして明日中に解決ができますように努力をいたしたい、かように考えている次第であります。  なお、第二点の問題でございます。名古屋の問題は、ただいま調査中でございますけれども、実はこういうような危険なものとして指定してあります工場が、大体六十二箇所くらいあるようであります。今回の事件が発生いたしましたからというわけではございませんが、今後こういう問題が起きてはたいへんでございますので、そういう危険なところに対しましては、各地の基準局を通じまして、特に注意をいたすようにとりはからつた次第でございますけれども、お説の通り今回の争議の後における炭鉱荒廃並にこの荒廃に伴う労働者の安全と衛生の問題は非常に重要でございますから、この点についても十分の対策を立てまして、そうして労働者の安全と衛生のために骨を折るように措置いたしたいと考えております。
  7. 前田種男

    前田(種)委員 大体次官の答弁で、一応私は了承しておきたいと思いますが、問題は明日経営者団体の方にも何らかの返事をする、あるいは妥結を見るであろうと言われておりますが、できるだけ妥結願えるように政府は最善の努力をする。しかしどうしてもしなければ、しないということに対する対策も建てなければなりませんが、差迫つておりますから、この際は争議妥結妥結として、炭鉱労務者に対する年末の金融その他の問題等につきまして完全な妥結が得られなければ、政府としても特別な考慮を払つて、これに対する対策も立てていただきたいという点を特に希望申し上げて、これ以上質問しようとは思いません。
  8. 田中伊三次

  9. 春日一幸

    春日委員 福田政務次官にお伺いをいたしたいのでありますが、実は失対労務者に対する越年給付の問題でございます。これはずつと以前の労働委員会でこの問題が議せられましたとき、これは自由党並び福田政務次官の、大体の御了解というよりも、むしろイニシアチーヴのもとにここにこういう決議がもたらされたのでございまして、その当時、決議の表現は非常に抽象的なものでございましたが、当時社会党左右両派並びに改進党を交えて、野党側の支給すべしという強い意見に対して福田政務次官の大体の御回答というものは——労務者要求しているのは有給休暇一週間であつたのでございますが、私どもは大体において、年末といえば二日間であり、年始といえば三日間である。従つて常識的に見ても、また政府の財源から見ても五日間ぐらいが適切妥当なものではないかと考えまして、そうしてこの五日間の要求を申し上げたのであります。五日間の要求金額に換算いたしますと、平均賃金が今一日二百五十円ということでございますので、千二百五十円、こういうような数字が出て参るわけであります。そこで私どもは、少くともこの千二百五十円をここに表現されておる賃金増額という形において年内に支給されてしかるべきであろう、こういうことを申し述べたのでございましたが、当時福田政務次官の御意見としては、数字はそういう結果になるのであるが、いずれにしても国家財政非常に乏しい折から、何とかひとつ千円限度で押えざるの余儀なきに至るであろう、こういう御回答でございました。そこで私どもは、千円ということは四日間ということになるので、年末年始のそういう休暇をほしいという彼らの痛切な要望をかなえるために、もう一段奮発してもらつて、とにもかくにも文字通り名実とも年末年始の五日間ということをお願い申し上げたところ、あなたは、野党の意のあるところは私もよくわかる、しかし最悪の場合は、ひとつ一千円程度妥結せしめたい、関係労組の方に対してもひとつよろしくというようなお話もございました。これはひとり私どもだけの折衝ではないのでありまして、社会党左右両派労農党、さらに改進党の諸君を交えての交渉経過において、そういう意思表示がなされたのでございます。そこで申し上げたいのは、本月の八日、九日、十日の三日間にわたつて自由労務者全国代表者会議が持たれましたが、その当時私ども野党代表はその会議出席いたしたのでございます。そうして福田政務次官の言質と申しては語弊があるかもしれませんが、そのお言葉をそのままお伝えしました。しかして、少くとも最悪の場合といえども、千円というお金はもらえるように当の政務次官からそういう御回答があつた従つてせつかく得た成果であるから、こういう立場においてひとつこの際は国へもどつてもらいたい。しかしながら、諸君がこれでは足らないということで、さらに地方でデモを起して来るということになると、せつかく自由党の好意も、さらに野党側努力に対しても、かえつてあだになるので、千円では足りないかもしれないが、これはできるだけの誠意を示すという形で御了承願いたいということで、野党はこもごも立つてその報告をしたのでございます。そこで全国から集まつてつておりました代表者諸君は、われわれの要求は三千円であり、さらに集約されたものか一週間ということであつたが、しかしながら、政府筋においてもそれだけやり、しんしやくをしてくださつた努力があるならばわれわれはこの機会にこの千円というものを目標として、とにもかくにも残余のものは地方においてもまたあわせて御心配を願う、こういうような含みのもとに、中央から支給されるものは千円を下らざる額、こういうことで了承しようということで諸君はいなかへ帰つて、本日に至つておるのでございます。こういうような経過と、てんまつのもとに、この越年給付に対して全国の三十万の労働者がかたずをのんで見つめておるという状況でございます。そこで、はからずも十二月十六日付の安定局長通牒をもつて都道府県知事に対して、三日間の賃金増額措置を講ずべきであるという通達がなされておるのでございます。このことが前々回の労働委員会において斎藤局長から明らかにされましたから、そこで私どもは、これは福田政務次官並びに極力善処を約しておるところの田中委員長の御公約とはなはだしく反する結果になるので、こういうことであつては困る。従つてわれわれが全国労働者代表に対して食言をした形になつては相ならぬし、のみならず、そのことは福田政務次官食言ということになつてはきわめて政治問題であり、ことに相手が気の毒な自由労務者であるという立場において、少くともこれはさらに二日間、すなわち御公約を願つておる五日分、五日分ができなければ少くとも一千円の額にまで政府との間に再度御交渉願うことによつて、次回に開かれるであろう労働委員会において、その最終案について御回答を賜りたい、こういうことについていろいろ応酬いたしました結果、田中委員長の御回答は、そういう経過であつたことは認めざるを得ない、従つて福田政務次官とよく意見を交換をして、趣旨はよくわかるので、その趣旨にのつとつて政府交渉の結果、御希望に沿うような努力をしてみたいと思う。また、こういう通牒が発せられておるが、さらに委員会としても、なお与党としても政府といろいろ折衝の上、御希望に沿うような努力を傾けているということで、本日の委員会にその結論が持ち越されておるのでございます。そこでお伺いしたいことは、委員長並びに政務次官政府とそういうような議論の応酬をして御折衝願いました結果が、本日どういうふうに現われておるかということであります。同時に、そういうような論議によりまして、この問題に対して政治的にいろいろと努力が進められておるこの過程におきまして、ここに職業安定局長の名において最終的な通牒都道府県知事あてに発せられております。このことは院議を無視するもはなはだしきものでございまして、私どもは国政を担当する立場において、慎重にこの問題を取扱つておる。こういう考えにおいて、なおかつ結論に到達しないということはよくわかつておるにかかわらず、機先を制して一方的な、官僚的なこういう通牒を発せられたということは、明らかに院議を無視する執行方法であると私は考えるのでございますが、これはどういう意図に基いてかくのごとき通牒を発したものであるか。斎藤局長から承りたい。この二つの質問について御答弁を願います。
  10. 福田一

    福田政府委員 お説の通り失事業に従事されております日雇い労務者人たちに、年末年始に際して手当を出すという問題は、当委員会におきましても、委員会決議として決定いたされたわけでございます。そこで私たちといたしましては、実はいろいろと省内において研究をいたしたのでございますが、前にお答えをいたしました通り失業対策事業というものは、あくまでも臨時的な性格を持つておりますので、法規建前から申しますと、なかなかこれを大蔵省をして納得させ、そして手当を出すということができないのであります。いろいろ研究をいたしました結果、割増し賃金を出すという形において一応とにかくお気の毒な人たちを救うよりいたし方がない、かように考えました。そしてこの割増しがどの程度にできるかということをいろいろを研究いたしてみたのでございますが、大体三日分に相当する限度までの割増しであつたならば、大蔵省としても納得できるけれども、それ以上のことはどうしても承知できないというのが大蔵省側の意向でございまして、これをやつてみますと、結局三日限度にしかどうしても割増しができないのであります。これを手当として出すということが法規できまつており、あるいはこれが認められておるものでありましたならば、四日分でも五日分でも出せるわけでありますけれども会計検査院の検査規則もございますので、どうしても法規従つて処置しなければならない。その法規によつてやるということになりますと、割増しは一日に三十円ないし三十、五円というような程度割増ししかできない。就労日数二十一日に対しまし三二十円ないし三十五円ということでありますと、どうしても三日分ぐらいしか出て来ない、これが実相なのでございます。従いまして、やむを得ず三日分ということにいたしまして、こういう通牒を出したのでありますが、これは出した当時さつそく皆様方に御報告をいたすべき筋合いであつたのでありまして、この点は労働省の失態といいますか誤りと申しますか、まことに申訳ないとは存じております。たまたま電気と石炭の争議がありまして、われわれも委員会出席する機会も非常に少かつたものでございますから、そういう御連絡等も遅れまして、まことに申訳ないと存じております。しかし私たちは、これでは十分でないということはよくわかつておりますので、今後の問題といたしましては、失業救済事業の費用といいますか、予算を二十八年度ではもつと増額をし、さらにまたこういう気の毒な人たちのために、何らかの方法を講じなければならないという意味合いで研究はいたしております。しかしながら、今回の措置といたしましてはこれが最高限のやりくりでありまして、これ以上に私たちとしてはやり得る方法がなかつたのであります。  なお春日さんから、今私が千円ということを申したように仰せられるけれども——このことはあるいは水かけ論になるかもしれぬが、私としては、できるだけ希望をかなえたい、できるだけ努力をいたしたいということを申し上げたつもりでございまして、千円というお約束をしたとは覚えておらないのであります。できるだけひとつ御希望に沿いたいと思うということを申し上げたのであります。これは言葉の行き違いと申しますか、あるいは私の発言がそういうふうな誤解を起させるような話し方をしたかもしれませんが、少くともごの委員会の席上においてはそういうことは申し上げませんし対談の間において、そういうことをできるだけお骨折りいたしましようと言つたことは、確かに覚えているわけであります。以上のようなわけでありまして、これが皆さん方食言となり、ひいて私の食言になるということは、まことに皆さんに対しても御迷惑をおかけしたことになると思います。しかしわれわれとしては、これが最高限努力でありまして、これ以上何とかならぬかと思つて研究はしてみましたけれども、とてもこれ以上出すことはできないわけでございます。昨年あたりはこういうこともできなかつたので、私たちとしてはそういう一つの新例を開いた、春日委員あるいはその他の皆さん方の御熱意によつて、今までは二年も三年もこういう例がなかつたのをここで新例を開いたというところに、ひとつ重きを置いていただきたい。金額の足らざる点は、どうか関係皆様方においては、この意味において、法律の建前からいつて割増しという形をとらざるを得ないが、その金額には限度があるということからひとつ御了承を願いたいと思うわけであります。委員会の御決議がありましたのに対して、これを連絡せずに通牒が出たことに対しては、これはわれわれの手落ちでございますから、幾重にもおわびをいたしますがどうかその関係については、さよう御了承が願いたいのであります。
  11. 田中伊三次

    田中委員長 調達庁から根道長官出席をしております。それから、外務省からは国際協力局伊関局長出席しております。そこで時間を非常にお急ぎになる事情がありますので、途中でありますが、菊川君。
  12. 菊川忠雄

    菊川委員 私、この間からこの問題を二、三こま切れ程度ですが、質問しておりますので、大体事情了承しているつもりであります。そこできよう締めくくりをつけるため御質問申し上げたいのであります。  第一に、この関係でお伺いしたいのは、今駐留軍労務者関係所管は、一体どういうふうになつておるかを、長官からひとつ御説明を願いたい。と申しますのは、これはいつの場合でもそうですが労働関係の実質は各省にあつてなかなか複雑な問題がある。今の労働大臣担当しておられるというふうにもなつておられるようでありますが、こういう関係も含めて一言だけお聞きしておきたいと思います。
  13. 根道広吉

    根道政府委員 駐留軍労務者に関する調達庁立場と申しますのは、政府を代表して現在の間接雇用形態による雇用者立場であります。一般の労働行政に関しましては労働省であります。ただいま、労働大臣調達庁担当者とかいうようなことがあつたと思いますが、それは業務の上の直接の責任ではございません。調達庁の扱う現実の労働問題は、やはり国の労働行政の根本に触れる点も多いだろうという関連から、内閣において労働大臣担当というふうに扱つたのだと思つております。
  14. 菊川忠雄

    菊川委員 賀来さんにお尋ねします。駐留軍労務者退職金問題の性質ですが、これはやはり退職金規定によつて労働条件の一部として明示されていることは言うまでもないのであります。でありますから、当然労働基準法の第十一条にいうところの賃金とわれわれは解釈するのであります。従つて退職とみなした場合においては、当然二十四条の規定によつて即時支給すべき性質伴つた清算である、こういう解釈でなければならぬと考えておりますが、この問題の性質について伺います。
  15. 根道広吉

    根道政府委員 これは私の方の直接所管に属すると思いますので、私から御答弁申し上げます。性質としては、賃金の一種であろうと存ずるのであります。当時の事情を申し上げますと、占領が終りまして、一応占領下における労務者という身分はなくなつたのでありますが、その当時すでに日本政府米国政府との間に契約を結びまして、いわゆるLSOという形態、すなわち日本政府が払います労賃その他の経費を、米軍が後に日本政府に還元するという契約に基いて、米軍が使う労務者を、日本政府雇用者として提供しておつたわけであります。それで当時労務者側より、占領終つて自分たち身分がかわつたのだから、退職金を清算してもらいたいという要求があつたのであります。しかし、一面におきまして日本政府雇用であるという状態は、少しもかわつておらなかつたのでありまして、その他の労働条件至つてもかわつておらなかつたのであります。ただかわつたのは、占領下という事態がなくなつたということであります。しかしまた同時に、一面今までの占領下における労務者というものは、相当なるある制約条件下におきまして、占領軍労務者として働いて来たという事実はあるのでありまして、その労をわれわれはどうしても認めざるを得ないのであります。しかし退職したのでなくて退職金を払うというわけにも参らない一面もあるのであります。しかしまた、当時の退職金というものは、労務者側との間に協約をもつて定められた規定がございましてそれによつて支給することに相なつてつたのであります。そのうちに特異なることは、当時は駐留軍の方から過失ありと認められて退職せしめられた者は、退職金の全額を失うというような規定があつたのであります。また自発的に退職する場合には退職金が半額になるということも規定されておつたのであります。それは現在もそのように規定されておるのでありますが、占領下における労務者として勤務した者が、その占領下におけるある種のきつい事態において、とにかく既得権的に得た退職金を、その後自発的にやめるということによつて急に半減するという事態は、ここで何らか適当な措置をとらねばならぬというように考えられたのであります。従いまして、占領当時の退職金既得権を認めるのが妥当であろう、こういうふうになつたのであります。しかしながら、一面におきまして当時の政府状態といたしまして、財政的に、百億に近い数と算定されたのでありますが、それだけのものを一時に払うということは、非常に困難な事情があつたのでありましてその当時労務者側とも協議の上、一種の証文としてその既得権を認め、将来退職の時まで年利五分の利を付してこれを払うというふうにしたのが、先般の退職金に関する附則であつたのであります。
  16. 菊川忠雄

    菊川委員 この問題の経過はわかつておるつもりであります。そこでこの問題について労働基準法の今後の精神なり、あるいはこれを他の場合に適用するということから、実は賀来さんがその権威であられますから、一応伺つておこうと思つたのです。それについて私どもの見解を申し上げますと、これは多く申し上げませんが、今の長官の御説明のように、既得権として一応認め、たな上げをされる。但し、それは当時の財政上の事情で許されなかつたということであれば了承するのであります。但し、ほかのいろいろな理由づけにつきましては、むしろ労働省所管ではないかと思いまして、その点については了承しかねる点があるのであります。というのは、たとえば、これは明らかに雇用の切りかえであると認めます。従つて雇用の切りかえでないならば、当然勤続の起算が問題が出て来るのであります。引続いて勤続年限に入れなければならぬ。でありますから、動続起算は行わないで、しかも利子を付して清算して、個人別に計算するというのは何と申しましても雇用の切りかえである。従つて、当然基準法によつて退職金として清算とともに現金支給をすべき性質のものであると考えます。この場合は、特殊な例であるからして、既得権として一応たな上げして現金化する、財政上の事情が許さなかつたからこういう扱いになつたということは了承いたしますが、こういうことが他の民間会社その他において行われてよろしいか、あるいは将来他の場合において行われてよろしいかということになると、われわれは感心しない。しかし今の御解釈でこれが正しいという見解は、労働省としてはいかがかこういうことを伺いたい。
  17. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまの御質問につきまして、労働基準局としての見解を申し上げます。これにつきましては、切りかえ後の作業の態様も、大体同種の性質のものであります。それから雇用主体も同じく日本政府ということになつておるわけであります。切りかえの際におきまして、いろいろ問題はあつたのでありますが、特調と労働組合側といろいろ協議されて、現在のような措置をとられたわけであります。従いまして、今のような実態を考えて見ますときに、身分関係雇用関係が一応そのまま承継されたものであるというぐあいにわれわれは解釈しておる。従いまして基準法二十三条の規定の適用に関しましては、これは既得権としてもちろん払うことは払うのでありますが、その切りかえの時に払わないでも基準法の違反ではない、こういうぐあいに解釈した次第でございます。もとより、これが民間の事業に同種の態様の問題が起きた場合にどうなるかという問題に関しましては、これは労働者の権利の問題でございますので、われわれとしては今後ももちろん厳重に運用するつもりでございますが、この身分の切りかえの性質の問題につきましては、ただいま申しましたように、違反ではないと考えております。
  18. 菊川忠雄

    菊川委員 私これだけで同意するわけには行かないのですが、このことだけを議論するわけには参りません。ただ一言、どういう点に問題が残るかということだけをお話申し上げておきたいと思います。野分関係に変化がないと言いますが、明らかに法律第百七十四号は従来の進駐軍労務者駐留軍労務者にかわつたことによつて、国家公務員の特別職から単なる駐留軍労務者にかわつたのであります。これは大きな身分の変化であります。でありますから、このことを、身分関係にかわりがないと強弁するわけには参らない。仕事の内容の性質はかわつていなくても、ここに大きな法制上の制約においての変化がある。これを無視して身分関係にかわりがないということには参りません。  それから、どうしても納得できない問題は、そういう場合であれば、どういう場合でも勤続の起算を当初から継続するということが、一般に今までの慣行その他による原則でございます。これは労働基準法の違反であるかどうかは別といたしまして、労働基準法を正しく守つておるということではない、私はどうもこの主張が正しいのではないかと考えております。しかしそれはしばらくおきましてこの問題は一つの特例である、こういうふうにして私は了承したいと思います。  そこでこの問題について、従来もいろいろとこの委員会におきましてもお尋ねしましたし、直接に関係者にもお尋ねしましたし、また組合と調達庁との間でいろいろ交渉なさつた経過を伺つておるのでありますが、本件について、できるだけ早い機会に、これを一体どういうふうにして解決をしたらよろしいかということを考えておるので御質問申し上げるのであります。結局、法律第百七十四号におけるところの附則三項をいかに改正するかが、一つの問題であると思います。しかし、それには資金操作の面における御当局の裏づけについての確たる見通しがないと、単に法律改正ということには行かないのでございます。ところが、今まで組合と調達庁関係で、いろいろと協議なすつたことを聞きますと、最近ではそれについての大体の見通しができて参つておるように伺つておるのであります。私その報告を組合の方からもとつておりますけれども、できましたならば、このことにつきましてひとつ御報告を願いたいと思います。
  19. 根道広吉

    根道政府委員 先刻も申し上げましたように、また御解釈のように、これは一つの特例でございます。またこの退職金を後に払うことにいたしましたのも、主たる理由は、もちろん政府の財政上の問題であつたのであります。その当時、及びつい最近までは、この退職金を払うべき財源の見通しがつかなかつたのでありますが、いろいろ研究をいたしました結果、年内はもちろんむずかしいのでありますが、従来まで米側に立てかえております金額及び退職金等で若干積立金もあるはずであります。それらのものを全部集計し、あるいは米側からすみやかに回収いたしまして、さらにまた、もう一つの手だてといたしましては——これはわれわれの希望でございますが、来年一月以降の分については、月初めに労務者に支払います経費及びその他の経費を、月末に概算的に払つてもらうという方法を講じますと、大体二、三月ころ、おそくとも四月には全部退職金を払い得る余裕が生ずるだろうという見通しがほぼ立つて来たのであります。従いまして、私どもといたしましては、元来労働者側の要望にこたえて払うべきものを、労務者と協議の上で待つていてもらうという建前でありますので、一日も早く払いたいという考えをもちまして、その限度といたしましては、おそくとも退職金を払うことをきめた当時の、本年の四月二十九日より一年以内にこれを払うことにしたいと思つて、目下政府で準備中であります。
  20. 菊川忠雄

    菊川委員 それでは大体今の御報告をこういうふうに了承して間違いがないかどうか、もう一ぺんお聞きしたいと思います。それは日米合同委員会の労務基本契約委員会で労務調達資金のために設けられました特別の分科会があるわけでございますが、そこで了承された事柄として、これは外務省の協力局長としての立場からでございましようが、ここに見えられる伊関局長から、十月十日に組合側に連絡があつた内容でございます。なおこの会議には、調達庁、その他大蔵省からは、石原主計局次長も出席して、この協議に参加しておられた、こういう向きであります。その経過はそういうことにいたしまして、内容は、一つは昨年七月一日以前の分ついては日本政府において支払う。それから二は、百十六億の求償遺金のうちで概算払いとして七十五億支払う。三は、退職金を即時支給するとすれば、七十五億でもつて一応一月より二月末まで、五〇%ないし六〇%概算払いが可能である。この時期は三月末の予定となつておりますが、帳簿の整理の終了の上は、支払い完了ができる。こういうふうに了承してさしつかえないか、こういうことでございます。  なお、このことにつきましては、御承知でもございましようが、本月の十二日に労働組合の代表の質問に対する伊関局長からの回答の中にも、次のようになつておるのであります。一つは、退職金の現金化に対する特別委員会は、調達庁の帳簿整理の未了のため、前回報告した通りである。二は、支払いの見通しは九五%まで確信がある。但し、年内は無理だと思う。三は、合同委員会の内容は発表しないことになつておるが、大蔵省でも了承しておるはずである。もし組合で明確な発表を要望するならば、大蔵省と打合せて、組合員が納得できる程度までの発表をしてもらいたい。こういうようなことをつけ加えての組合の報告があつたということをわれわれは聞いておりますが、この点について、もし何か間違いがございましたならばお聞かせ願いたい。これでよかつたならば、了承したいと思います。
  21. 根道広吉

    根道政府委員 ただいまの数字の点でありますが、私もいろいろ話の途中におきまして、それに似寄つた数字が出たという話を聞いたことはあります。しかし、その後におきまして時々情勢の変化もありまして、最終的に見て私どもが今申し上げられますのは、本年内に日本政府が払うものはすみやかに一月、あるいはどんなにおそくても私としては二月までに返してもらいたい。しかしそれについては、時々向うにインヴオイスをつけるものはづけて、少しずつでも蓄積しておきまして、最終的には、今年内のものはできるだけ二月までにちようだいすると同時に、一方、来年に入りましてからの分は、月の終りに——大体の計算としては四十億ぐらいになるかと思うのでありますが、これをもらうことによつて、現在の資金及び借入れ限度を活用すれば、三月ごろには払い得る状態に立ち至る、こういうふうに考えておる次第であります。
  22. 菊川忠雄

    菊川委員 それでは、内容のこまかい数字などの点はしばらくおいて、年度内には大体そういう資金繰りの面、回転資金の操作の面で解決し得る見通しをお持ちであるというふうには了承できるわけですね。それでよろしゆうございましようか。
  23. 根道広吉

    根道政府委員 具体的にさらにどの程度に実行可能であるかということについては、目下大蔵省とも協議中であります。ただ調達庁側といたしまして、私どもの計算におきましては、大体そういう可能の見通しを持つておるわけであります。私どもとして、つけ加えて申し上げますならば、はたしてそれで足らぬのならば、借入れ限度もふやすというような法律改正も要するわけであります。現在のところ、大体において四月に入ることも可能であれば、見通しとしてはほとんど大丈夫であろう、こういうふうに考えておりまして、その間の計数等の整理については、大蔵当局とも最近毎日打合せをしておるような状況であります。
  24. 菊川忠雄

    菊川委員 長官初め当局の方のこの問題に対しての御努力については感謝いたします。御努力によつて、大体年内にそういうふうにやつていただけることを希望するのでありますが、問題の性質から見ましても、さらにまた従業員の切実な要望から考えましても、これはやはりあとう限り早く解決すべき性質のものであると考えるのであります。ついては、万一年内に資金繰りのみで解決しないという場合においては、当然これは特別調達資金設置令との関係もありまして、新年度において、あるいは回転資金の増額などのことでも御尽力を願いたいと思うのであります。そのためには、やはり何らか事前にこういう法律第百七十四号に対する不足の分について、修正の拍置とつておくことは無意味じやないと私は考えて、研究して参つておるのであります。しかもその内容は、大体において先ほどお話のように、講和発効の一週年に当る四月二十八日ということを考えて期限としておるのですが、こういうことについては必要と考えておるかどうか、伺いたい。
  25. 根道広吉

    根道政府委員 ただいま御質問の趣旨のようにいたしたいと考えておるわけであります。なお将来の法律改正の問題でありますが、現在の法律におきましては、退職する時に払うことになつておりまして、この法令を直さぬ限りは退職前に払うことは困難であると思いますので、この改正だけはぜひとも必要に相なつて来る。それから資金繰りの関係上他の法令の必要があるかどうかこれはさらに検討してみたいと思います。
  26. 田中伊三次

  27. 春日一幸

    春日委員 ただいま福田政務次官からの御答弁に引続いて御質問をいたします。御答弁によりますと、これは技術上、三日間しかどうしてもできない。会計検査院の了承は大体得られないというお話と、なお財源の問題にかかつておる由でございます。しかしながら、大体これは次官がおつしやつた千円という額を対象として考えますときに、十二月の稼働日数を二十五日といたしますならば、これは大体一日四十円、こういう割増しができさえすれば、千円という割増しができるわけでございます。二十五日間を稼働日数の対象にするということは、先般来本委員においてしばしば繰返された問題でございます。従いまして、三十円ならば会計検査院は了承するが四十円ならば、了承できないというはずは私はあり得ないと思う。従いまして、私は法規上云々という御答弁了承いたし得ないのでございます。さらにまた財源の問題でございますが、大体安定局長の通達は、すでに配賦された予算の差繰りを行えということでございまして、少くとも配賦予算にそういうような大きな余裕ボあるかどうかということは、重大な問題であろうと考えるのでございます。われわれ少くとも本委員会の論議を通じて要請いたしておりますものは、新しく財源措置を講ずるか、あるいは何らか別途の方法によつて、こういう新しい財源が繰合わされるということが期待されておるのでありまして、地方庁に対してすでに配賦されておるものをこちらべ充当するということならば、残余の作業に対してそれだけきゆうくつな結果を来しはしないかということを非常に構えるものでございます。この点に対して、どういうふうな見通しであるかも承つておきたいのでございます。  なお、問題は、いずれにしても一千円をやつてもらわなければ困るということが、最終的な問題でございます。水かけ論だとおつしやるが、これは私一人が個人的に聞いたことではなしに、青野先輩も、また山口君も、それから改進党の方も同席のところで一千円ということをおつしやつておる。私ども全部が精神錯乱症に陥つておるのならともかく、われわれが正常な状態で、とにかく私個人が聞いただけではなくて、みんな同様のことを聞いておる。少くとも本日労働大臣がお休みになつて出席にならないので、福田政務次官のお立場は、日本の国における労政の最高権威である。その責任者の申されたことが後日食言ということになれは、われわれは一体何をたよりにいろいろな政治を行い、さらにいろいろな質疑をかわして行くか、まことに戸惑うわけであります。従いまして、福田政務次官がその職責を通じて、とにかく千円ということを申された以上は、あくまで千円の交付が行われることのために、私は良心的な努力を願わなければならぬと思うのでございます。  特に委員長にお伺いしたいのでございますが、問題は本年度において新例でございます。このことはよく私ども了承いたしております。さらに与党並びに委員長、次官たちが、本問題について非常に同情ある、理解ある御努力を倣つたことに対しては、私どもは非常に尊敬いたしているのでございますが、しかし、このことはただ単にお情というような考え方であつては、私は筋が立たないと思います。講和と独立を契機といたしまして、私どもが従来かくあるべきだと要請いたしておりました諸問題が何ら解決できなくて、そのことは非常に隔靴掻痒の思いであつたのでございますが、今や独立と主権を回復いたした今日、なすべきことをなすというようなことに対して、お情的な考え方でありましては、これは私は本逆をもとると思うのでございまして、彼らがとにかく生活困窮者である。問題をむし返すと長くなりますので、繰返しませんが、働かなくてももらえる生活保護法の適用者諸君と彼らの実態はちつともかわらぬのであるから、何とかやつてくれということでございます。それならば何とかやろうというあなたの御答弁、その言葉を信用して帰つた全国労働者、そこに問題はあるのでございます。従いまして、私はあくまでこの千円というものをやつてもらわなければ、全国の指導者もやはり食言したという形こおいて彼らの組織から糾弾を受けるでございましよう。われわれも同様でございます。従いまして、千円出すか出さぬか、とにかく何とかその出すことのために私はさらに与党の善処を要望したい。これに対して、委員長は今後どういうような処理をされるお考えであるか、重ねてこの機会に伺つておきたいと思います。労働省からも、あわせてこの点に対して御答弁願わなければ相ならぬのでございます。
  28. 福田一

    福田政府委員 そういうものを出したことによりまして今後の失対事業がきゆうくつなことに相なりはしないかということでございますが、これは御承知の通り、補正予算に四億円の追加を実は要求いたしておりまして、それが通りますまで、それらのことも勘案いたしまして、年内の失対事業についてはきゆうくつな思いをさせないで済むことであろう、かように考えております。  なお第二の点でございます。千円の食言問題でございますが、私は実はできるだけお骨折りをいたすということは申し上げましたが、千円ということを申し上げた覚えはございません。なおこれを追究していただきまして、そういうことでお前はだめだ、私としては責任があるということを皆さんが御断定になれは、責任をとらざるを得ないという点でございますが、私は一向委員会答弁においてそのようなことを申したことはないと心得ておりますので、これ以上この問題について申し上げることはできません。しかし、今仰せの通り、この問題は新しい例を開いて、将来の問題としても、自由労務者人たちについて、われわれは適当な措置をいたして行くべきであるということについて——これは決してお情という気持でなくて、同じく日本人である、生活に困つておられるそういう人たちに、適当なる措置を講ずべきであるということについては、同意見でございます。今後も大いに研究をいたしたいと考えているのであります。
  29. 田中伊三次

    田中委員長 山口君。
  30. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今次官のおつしやつた自由労務者の問題ですが、これは私と春日委員自由労務者の代表とともに行つて、労務大臣、政務次官にお願いした時から、千円の支給方についてお話を進めていたことは、政務次官もよく御存じのはずだと思います。そのときに、確かにその要求の線で極力善処するということで了解を得ておつたものと私は考えているのであります。この委員会で発言を求めて、野党各派がともにこの千円を下らない線で年末の手当をやつてもらいたいということを言いましたところ、極力その趣旨を尊重して実現のできるようにいたします。それは責任を持つて了承する、こういう言明を得、田中委員長からも、それはもうわかつていることであるかち、十分その趣旨に沿つて善処するということの言明をされ、われわれは了承してあの決議文を可決した、こういういきさつに私は了解しているわけです。であるから、そういう意味からいつて、ここに出席をいたして傍聴して帰りました代表も、やはりその線で了承しているはずだ。ところが、地方帰つてみますと、この通達が出て、三日後になりますとこれは千円どころではなしに——この審議されます過程において各地方日雇い労務者の日当を聞いてみますと、低いところでは二百十円、高いところでは二百八十円ないし三百円というふうに、その地方々々によつて給与も異なつているということも明らかになつたわけでありまして、そのとき少なくともこの千円を基準にして出すということで、日数を基準にして出すということではないということも、これは明らかに両方において了承されておつたと、私としては考ているのであります。でありますから、そういうふうに代表も了承して帰つておりますのに、このような通達が出ているということになりますと、確かにこれはそのときに決議された趣旨とおよそ違つている。なるほど決議には、千円を出すという数字は明確になつておりませんけれども、それを了承した上でこの決議ということになつたのでありますから、そうなりますと、確かに違うと私は思うのです。そういう意味から行きますと、政務次官は、その当時の考えに立つて処理される場合に、どういうふうにしてこの決議趣旨並びに精神を実現されようとするのか。この点は労働者に対する議会決議の信用の点から行きましても、将来非常に憂慮すべきものがあると考えますので、ひとつ明確にしておいていただきたい。
  31. 福田一

    福田政府委員 先ほども申し上げたのでございますが、私は努力をいたしますということは申し上げましたが、千円出すということは、一度も申し上げておりません。努力をするという意味の内容になるのでありますけれども、私たちは、事務当局その他ともいろいろ数学的に研究をいたしまして、何とかしてそういうふうにしたいと思つてつて来たのであります。会計検査院の検査、その他いろいろ事務的な面から見まして、どうしてもこれ以上は出せないということが明らかになりましたけれども、私としては十分努力をいたしたつもりであります。従つて私の関係いたす面において、千円出せなかつたということは遺憾ではありますけれども努力だけは十分したつもりであります。
  32. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 青野委員が質問されておりますから、この点ははつきりいたしておると思います。青野委員の質問は、議事録によりますとこういうことになつておる。「年末手当あるいは有給休暇という意味で、一人千円程度のねらいで、終戦後初めて——いろいろな制約を受けておりまして、今まで形はかわつて支給せられておつたかもしれませんが、労働委員会決議によつて支給されるようになりました。今回の全国日雇い労務者諸君の年末における有給休暇、裏から申しますと、年末手当でございましようが、それは全国では一体どれくらいな額に上るか。また年内に支給せよということが決議の内容になつておりますが、いかなる方法で処理しようとしておられるか、私はもう少し具体的にこの際承つておきたい。」こういう質問を発しております。それに対して福田政府委員は「日雇い労働者の問題につきましては、本委員会において議決をいたされまして、委員長より労働省に対してその旨を申し入れられました。よつてたちは、今事務当局をして決議趣旨を、尊重ではなくて」——非常に語気が強いのです。「尊重ではなくて、遵奉するように、事務を進めさせておる次第でございまして」——こういうぐあいに答弁をされておる。そうすると、そのときの答弁は、もうこの千円というものを実行しないのだという頭でああいうふうに答弁されておるとすれば、われわれはこれは非常に食言されておるといわざるを得ない。それならば、その当時のあなたの心境と、今の心境というものには大きな食い違いがある。これは労働委員長としても非常に窮地に陥れられる問題であろうと思います。一体その時の心境と今の心境はどういうぐあいにかわられたか、それを重ねて伺いたい。
  33. 福田一

    福田政府委員 当時の心境と今の心境とは、少しもかわつておりません。
  34. 田中伊三次

    田中委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  35. 田中伊三次

    田中委員長 速記を始めてください。  さらに質疑を続行いたします。山口君。
  36. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 再質問をいたしますが、自由労組の問題につきましては、私は政務次官が、この速記録から見まして努力されたことは了承いたします。けれども、その点多少の食い違いがあるので、労働省の方ではさらにこれを納得の行くよう、明確に地方通牒をしていただくように希望を申し上げておきます。  それから、先ほど前田委員から、東亜化学の爆発事件あるいは東京ガスの千住工場でしたかのタール・タンク爆発事件等が最近頻発しつつありまして、労働者は非常な危険にさらされようといたしております。これは主として基準局にお尋ねをいたしたいのでありますが、基準局安全衛生の監督行政というものが十分に行き届いていないのではないか、あるいは勧告されていても業者の方でこれを忠実に守らない傾向があるのではないか、こういうふうに私は考えて、非常に憂えるのですが、これは基準局の監督行政として、将来そういう勧告を忠実に守らない向きについては、やはり法規の示すところに従つて厳重に処分をするなり、いろいろな方法をもつて規定通りに遵守させて、最大限に危険を防止すべきではないかと思うのです。現在危険物件の取扱いについて、基準局はどういう措置をしておるか、これがまずお尋ねしたい第一点であります。基準局からお答えを願いたいと思います。
  37. 堀秀夫

    ○堀説明員 災害の防止につきましては、これは事労働者の人命に関係のあるきわめて重大な問題でもあります。また企業自体から見ましても、企業の経営上にもただちに響く重大な問題であります。従つてそういう両面の観点からいたしまして、基準局といたしましては本年度の監督の第一の重点を、災害の防止ということに置きまして、危険物を取扱つております工場、事業場に対しましては、優先的に監督を実施したいということで進んで来ているわけであります。また一面におきまして特に災害の多いような事業場、あるいは危険物を特に取扱つている事業場、これらのものにつきましては、特別安全指導事業場という名前をつけまして、これを各地の基準局で指定をいたしまして、これについては監督だけではなしに、指導も加える。それで労使一体となつて災害の減少に協力して行く、こういう指導もしているわけでございます。その結果といたしまして大体のところを見ますならば、災害の度数率等について見ましても、二十五年、二十六年あたりが全産業平均大体四〇ないし五〇というようなところでありました。それが二十七年におきましては、四〇を下まわるというような状況で、度数率は漸次好転しつつあります。またさらに特別安全指導事業場についてだけ見ますならば、これは二十五年度年間度数六〇・五、これが二十七年度におきましては三九・四、実に三五%の減少を示しております。こういうような状況でございますので、全般としてみますれば、労使双方の御協力によりましてわれわれの努力もやや実を結んでいるように見受けられます。ただ、一面におきまして今回のような事故が突発的に起きましたことは、まことに遺憾に存じておる次第でございます。なお、ただいまお尋ねのありました、どうしても協力しないような使用者に対してはどうするか。これらも、悪質な使用者に対しては、遠慮なく基準法違反として、基準法の違反があれば送検して行くというようなことで、緩急よろしきを得たいというぐあいに考えております。
  38. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これは監督行政の面では、地方の監督署などでは、監督行政に対する職員の手不足等が訴えられ、またその職員の中で、日雇いで普通の職員と同じような仕事をしておる向きについて、不満が訴えられておるのでありますが、これについて、基準局では一体こういう状態で置いておくということは、基準監督行政の面からも、あるいはまた人事行政の面からも、非常におもしろくない結果を生ずると思います。本年度はすでに時日も経過していることでもありますが、来年度にでも、新しい年度にそれだけの予算を見積つて、この行政について完璧を期する意思ありやいなやをお尋ねしておきます。
  39. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまお尋ねの臨時職員の件につきましては、御承知のごとく大体労災会計事務に従事しておる人間が、相当臨時職員になつております。これらにつきまして、根本的な問題としては、他の各省にも関連がある臨時職員の制度自体についていろいろ問題がありますので、これらの問題については、人事院や大蔵省とも相談の上、なるべくこれらの職員の勤務条件が向上するように努力を続けたいと思つております。  なお増員につきましては、来年度において平均賃金の保障、賃金スライド制等も実施して参りまして、それに見合うような職員の増員を要求しておりますが、これらはまだ折衝中でございまして、われわれとしては十分努力いたしたいと思います。
  40. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 金融関係をお伺いいたしますが、私は地方で金融関係をやつておりましたので、もう一点お尋ねしたいと思います。労災の全国的な災害というものは、非常に多く発生をいたしておりまして、この労災保険の再審査請求に対する問題は、非常な件数に上つておるのではないかというふうに考えるわけであります。大阪においても相当件数が渋滞をいたしまして、解決を持つておる状態に置かれております。こういうふうな問題が全国的に見て非常に山積して参りますと、だんだんとその処理が遅れ、実際にその災害をこうむつた労働者の家庭というものは、みじめな状態のままで放置される結果になる。私、地方にいて痛切に感じますことは、やはり労災保険審議会の機構を根本的に能動的に改めなければならぬのではないかということでありますが、基準局においてはこの労災金融をもつと活発に動かして、事案を急速に処理させるための方法等を考えられておるかどうか、お伺いいたします。
  41. 堀秀夫

    ○堀説明員 労災保険の運用を迅速にするために、労災保険審議会の活発な活動を促してはどうかという御意見でございますが、これにつきましてはわれわれも同様に考えております。ただそれをどういうふうにしてやつて行くかについては、いろいろ問題がございまして、実施機関的なものにして行くというようなことも一案として考えられます。これらの点につきましては、労災保険審議会等もございますので、これらに審議をお願いいたしましてなるべくこの給付が迅速化し、あるいはまたさらに適正化するという方向に向けて行くための方法を今後練りたいと思つております。
  42. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 労災委員などの動かない一番の理由は、機構にもありますが、第一に労災保険審議会の予算が全然ないことであります。地方における労災委員は、無償で働いているという状態であります。これはすみやかに来年度の予算におきましては交渉をして、予算化して、出し得るように措置をすることが必要であります。ただ能動的に動ける機構をと、機構だけいじつてもだめでありまして、それをひとつ急速に予算化してもらうようにお願いしたい。  以上の希望を申し上げまして、私の質問を終ります。
  43. 田中伊三次

    田中委員長 本日はこれにて散会をいたしまして、明後日午後一時より開会いたします。     午後五時六分散会