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1952-12-05 第15回国会 衆議院 労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月五日(金曜日)     午後二時二十五分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 吉武 惠市君 理事 山村新治郎君    理事 石田 一松君 理事 前田 種男君    理事 青野 武一君       伊能繁次郎君    今松 治郎君       大平 正芳君    倉石 忠雄君       中  助松君    松山 義雄君       持永 義夫君    菅  太郎君       森山 欽司君    春日 一幸君       矢尾喜三郎君    山口丈太郎君       山花 秀雄君    石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  西村健次郎君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 十二月四日  看護婦既得権者衛生管理者免許付与に関する  請願坂本泰良君紹介)(第四九七号)  名古屋市に労災病院設置請願辻寛一君紹  介)(第五一九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  電産スト防止に関する陳情書  (第六七九  号)  同(第六八  〇号)  電産、炭労スト等禁止法的措置に関する陳情  書  (第六八一号)  電産争議即時中止並びに電気料金値上げ反対  に関する陳情書  (第六八二号)  電産争議早期解決に関する陳情書  (第六八三号)  同(第六八四  号)  けい肺特別法制定に関する陳情書  (第六八五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、  議決第一号)     ―――――――――――――
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより労働委員会を開きます。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出議決第一号)これを議題といたしまして審議を進めます。     ―――――――――――――
  3. 田中伊三次

    田中委員長 本件に関しては、すでに昨日連合審査会において、参考人諸君意見を十分に聴取したのでございます。本日は政府に対して質疑をいたしたいと存じます。  質疑の通告がありますので、これを順次許します。石田君。
  4. 石田一松

    石田(一)委員 今私は政府法律の有権的な解釈のできる権威を持つた法制局長に御出席をお願いしておるのですが、その前に運輸大臣ちよつとお伺いいたします。  自然休会労働委員会が開かれましたときに、運輸大臣にもいろいろ質問いたしました。そのときに運輸大臣の御答弁に引続いて主計局長は、十四日の閣議において二十七年度補正予算の概数がほぼ決定して、休会明けの二十四日までには、印刷に付して補正予算国会提出する。その際国鉄裁定基本給の採用の部分は、この案とあわせて御審議を願うことになる、こういうふうに説明をなすつたのであります。それで今回出されておりますところのこの裁定承認を求める件なるものは、まだ補正予算国会提出されないうちに出されたものでありまして、先日も私はくどく申し上げましたように、この提案理由説明などから見ましても、これには「右裁定の第一項の実施及びこれに関連いたします経費のみにても本年度約百十億円、平年度約百七十八億円を必要とし、第二項」云々ということが書いてありまして、この裁定実施することが非常に困難であるというような意味のことが書いてあつて、ほとんど承認を求めるの件ではなくして、不承認を求めるの件という形でこれが出されておるということであります。私は手続上からいえば、先般も言つた通り補正予算が出たあかつきには、その予算特に国鉄関係予算を抜萃でもして、この仲裁裁定とともにこの程度が履行できるのであつて、これから先はこれこれこれこれの事情でできないという事由を付して、その金の支出承認を求める国会承認を求める件として出されなければ、手続上私は不備である、(「その通り」)こういうふうに思うのでありますが、運輸大臣は、これに対してどういうふうにお考えでございましようか。
  5. 石井光次郎

    石井国務大臣 休会中に出しましたときの情勢はそうですが、事由を付して出せということでありましたから、こういうふうに、このままやればこの通りこうなるのだという説明をいたしました。しかし、その後政府においては、いろいろ数字的の問題も研究いたしました結果、基本給においてはこれを認めて行く、仲裁裁定通りにする、ただ実施期が財源の関係、それから一般公務員との振合いの問題もありまして、十一月からにしていただきたいということ、それから第二項から四項までの問題は、これは団交にまつということになつておりますので、基本給の上る基準に従いましての、おおよその見当の予算が組まれて出されておるわけでございます。これをまとめて申しますと、第一項については、八月からというのを、十一月からにしていただきたい。基本給はそのまま、あと団交にということでありますから、団交にまかせるということで御承認願いたいというのが、政府のその後の態度でございます。あるいはそういうことを何か書面でというよりは、御説明してからの方がいいと思つておりますので、きよう御説明申し上げるのであります。
  6. 石田一松

    石田(一)委員 今、運輸大臣のお言葉の中に、給与点等について、公務員等のつり合いもあるので、この点については裁定基本給というものは認めた、しかしその実施期についてこれを十一月からにした、こういうことをおつしやつたのですが、第二、第三、第四項は当事者団交にまかされておるので、手当の方は基本給の上る率に応じて、これこれというわくを組んで出した、こうおつしやいます。それでは手当の方も公務員並に考慮して、どうしてそのわくをおとりにならないのでしようか。手当の方だけは、公務員並じやなくて、基本給の上る率に従つて基本給の方だけは公務員のことを考えてやはりつり合い上というのできめる。これでは私はちよつと筋が通らないと思います。
  7. 石井光次郎

    石井国務大臣 基本給そのものは、適当なる裁定ということでそのまま認めたのでありまして、公務員とのつり合いと申しましたのは、実施期関係だけであります。それから、あとの問題の団交にまかせる云々の中に、予算を一応組んでおるので、公務員と違うということでありますが、公務員においても、それから国鉄の場合においても、補正予算には〇・五というものが組まれてあるわけなんです。結果において差が生じたというのは、本年の予算に組まれておりますものが、国鉄公務員とは違うのであります。どうして違つたかということを聞きましたが、これは昨年に年末手当のつもりで組んであつたものを、それだけいらないから本俸にぜひというようなことで、またこれは本俸の方に来ればずつと続いての給与になりますけれども、そのときの国鉄経営状態からそれは可能であるということで、年末賞与を本俸に繰入れたというような関係から、今度の予算そのものが年末手当の額とは違つてつた。それで公務員の方は、夏〇・五を出して〇・五残つておる。それから国鉄の方は、そのとき予算から〇・二五というものを出しました。そのほかの方法によつて捻出したものがやはり〇・二五加わつて公務員と同じように出ておりますが、残りが〇・二五というようなことが、今度の結果において〇・七五こちら側に残つておるというぐあいであります。
  8. 石田一松

    石田(一)委員 ただ公務員とのつり合いという実施時期ばかりでなくて、ただいまの残つておる〇・二五と政府手当を支給しようと考えた〇・五とを加えても〇・七五にしかならぬ。しかるに公務員関係は一・〇〇であるということをわれわれ商いおるのです。それは私は今運輸大臣にはつきりお聞きしたいのだが、この仲裁裁定のごとく、実施時期を八月にしないで十一月からとした。十一月からとするから、結局これはただいまおつしやるような、総合的にいえば〇・七五というものが残るのであつて、これをもし国鉄当局内の予算的な処置によつてこれが基本給そのものが八月からさかのぽられて裁定通りに支給されたとなりますと、これは今運輸大臣のおつしやつた〇・七五などの手当はとうてい支給できぬと思います。そこで私は、運輸大臣は、なるほどこの国鉄仲裁裁定なるものは、基本給においては一応了承するということを根本的に態度がきまつたのでありますから、ただその実施時期を公務員とのつり合い上、公務員とのつり合い上と、こうおつしやるのでありますが、私は公務員と同じであつてはいけない、要するにこれは公共企業体という一つ企業体としなければならぬ、こういう考えから、別個に一つ法律を持たされて、公共企業体労働関係法というものをつくられて国鉄専売公社あたりが、あの当時公務員から分離された。その観点からしても、いつの場合にでも、何かがあると公務員との平均公務員との平均とおつしやいますが、私は国鉄従業員あたりのような現業に携つておられる諸君の職種といいますか、すべての場合に考えても、いつの場合でも、公務員との均衡上実施期を十一月にしたということは、ちよつと本案件を審議する上においてはそれほ音の大きな理由にはならぬ。少くとも政府の言う通り裁定を尊重する――私は尊重するという言葉自体に、どうもあいまいなものを感じておる。これは法律用語ではないと思います。裁定を厳守する、裁定責任を負う、私はこういう意味の尊重であろうと解釈しておるのですが、そういう意味であつたならば、政府は、今の予算で八月から実施して、しかもなお〇・七五というものが残り得る、あるいは公務員並におつしやる通りにいうならば、一・〇〇というものが手当として支給できる、そういう措置が講じられなければならぬ。そこで私は運輸大臣予算的な措置を――今こうして予算委員会で、この予算審議しておる。審議していて、ただいま運輸大臣が二項以下四項までは、手当の面は団交にまかされておるので、ほぼこれくらいの給与の引上げに応じて手当の増額をするはずだというのでわくを組んでおかれる。しかしそのわくを組んでおかれたことは、まだ議会では議決もしておらなければ、審議最中でありまして、わくにはなつていない。そのわくになつていないことを、今度は国鉄総裁は十六条の予算資金上という予算というのにひつかけて、そうしてこれがあるから団体交渉をいくら強く国鉄従業員要求しても、それ以上には出ないということを理由にして、ほとんど要求が聞いてもらえない。こういうことになりますと、予算資金上というのは、どの限界でこれを予算というのか。審議中でもそうなのか、改府の閣議決定だけで、それだけでいけないのかどうなのか、十六条のわくに縛られるのかどうか、このことが大きな問題になつて来ると思うのですが、今運輸大臣にお尋ねしたいのは、現在予算委員会審議しておるあの補正予算案なるものが、いわゆる十六条にいうところの予算であるかどうか、この点をひとつお尋ねしたい。
  9. 賀来才二郎

    賀来政府委員 十六条の予算と申しますのは、仲裁裁定が出ましたときの、その当時定められておる予算であります。
  10. 石田一松

    石田(一)委員 仲裁裁定が定められたそのときにあつた予算であるということであれば、今日審議されておるところの補正予算というものは、いわゆるこの公労法十六条の予算ではないということならば、この際もう一度あらためて、私は国鉄総裁ちよつとお伺いいたしますが、いわゆる二項以下四項を団交によつて決定しろということが裁定にはうたつてあるにかかわらず、組合側がこの団交による円満なる妥結をはかろうとして、いろいろと交渉しておるにもかかわらず、三千円以上には手当が出ないと言われる。いわゆる今の補正予算において、十一月以降を裁定通り基本給を増額して、しかも残つたわく内でこれを手当としてやるならば、一人頭三千円平均にしかならぬので、それしかわくがないからだめだと、組合側要求に応じようとしないこの態度は、そうすると国鉄総裁公労法十六条にいうところの、予算でないものを予算として、それを理由として国鉄組合要求を拒否しておる、こういうことに相なりますけれども、いかがでございますか。
  11. 長崎惣之助

    長崎説明員 昨日来私が申し上げております通り、今の補正予算は目下審議中でありまして、まつたく仮定でございます。団交の際に、大よその話で三千円など言つたことはございませんけれども、それを仮定にして、いろいろ切迫して駆る時期でありますから、話をしておるのでありまして、補正予算というものは、まつたく仮定でございます。
  12. 石田一松

    石田(一)委員 そこで私はまた運輸大臣にお尋ねしたいと思うのですが、今も国鉄総裁がおつしやるには、ただ仮定として話し合つているので、これを予算として話をしておるのではない。こうおつしやるにもかかわらず、先ほど運輸大臣のお話を聞いておりますと、もうすでに政府としてはこれ以上出ないものだということの、いわゆる手当の額については、少くとも政府は、団交によつて決定すべしという仲裁裁定があるにもかかわらず、今度の補正予算では、その団交がいかに努力しても、八月からにさかのぼつてベース・アップをやるとすれば、残りが三千円しかないから、結局これだけしかない、三千円以上は手当が出せないのだ、こういう一つの大きなわくで、政府はとにかく仲裁裁定というものを踏みにじろうとしておる。要するに、仲裁裁定というものを一つも尊重しておらぬ。仲裁裁定があるのかないのかわからないような、無視したような態度をとつておる。こういうことになりますけれども、これはいかがですか。(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)
  13. 石井光次郎

    石井国務大臣 今私の方で、非常に拘束しているようなふうにおつしやいますが、予算を出しておりますのは、早くこれを出しておかなければ、年末手当でありますから、かりにここに金額を明示せずに、そのまま団交だけやれということになつて、これから先また予算という問題になると、それでなくても年末は差迫つておりますのに、なかなか困難な問題であるというのが、政治的の問題であります。さつきから、それを組んだ由来は申し上げた通りでありまして、三千円などということは、まだ私どもの計算ではならないわけです。というのは、ベースが一万三千四百円、その〇・七五を組んでありますから、もつと多いわけです。そこらを基準として、今どういうふうになりますか、今度〇一五というものが補正に組まれたのでありますが、前から余つているもの等を勘案されまして、国鉄総裁が、このくらいなら出せるということで、御相談になるものだと思います。
  14. 石田一松

    石田(一)委員 今三千円にはならぬ、〇・七五とあるのだから、しかもベースがこれこれだからとおつしやいますが、それは実施時期にかかつている問題です。それは政府の思うように、十一月からとすれば、これは〇・七五になるのですよ。しかし政府が言う通りじやなくて、裁定通りに八月からこれを今の予算実施したら、〇・七五どころじやない、三千円になるかならぬかです。その前にあるのを含めて、それではいかぬじやないかと私は聞いているのです。今ちよつと倉石労働委員長からやじも出ましたので、この際私は純法律問題として聞いてみたいのですが、法制局長官はおいでですか。(労政局長がいるじやないか。」と呼ぶ者あり)彼は裁判官ではなし、一つ権威がない。ただ言うだけのことである。(笑声)しかし法制局長官がいなければ、賀来さんでもかまいません。私はこの際、またむし返すようでありますが、これは第一回の専売国鉄裁定のときですか、当時の官房長官でありました自由党の増田さんあたりと、非常にこまかい論議をしたことですが、この十六条に、要するに政府拘束さ為るものじやない、こういつております。拘束されるものじやないということは、そういう協定をしたというだけで、金銭的な支出をすることはできぬ。要するに政府が、協定ができた、仲裁裁定があつたというだけで、国会に諮らずして予算的措置を講じて、その金額支出してはいかぬ、これを裁定通りに、あるいは協定通り支出しようとする場合には、国会承認を求めなければならぬ、これはこういう解釈でなければならぬと私は考えます。これはいろいろ法律的な考え方はあるでしようが……。そこで賀来さんに聞ぎますが、この十六条のいわゆる「協定」という文字は、三十五条からして裁定と読みかえるということは昔からいわれております。そういたしますと、協定裁定とは同じ効力がある。しかもこの協定なるものは当事者のみを拘束する、こういうふうに相なりますけれども、当事者がこれに拘束されていないのです。要するに現在の国鉄当局は、仲裁裁定というものに拘束された責任のある行動はとつていない、政府予算わく拘束された行動だけしかとつていない。そうなると、この公労法にいうところの当事者同士協約協定あるいは仲裁裁定というものが、当時者、特に国鉄当局によつて、これが守られていないという結果になりはしないか。そこで、裁定協定というものとが同じ効力を持つものであるというこの点と、それからもう一つは、この十六条が政府拘束するというのは、国会承認を求めなければならぬといつている。それをわざわざ議決を求めるの件として出して、国会に全責任を転嫁して、政府は何ら仲裁裁定の命ずるところの予算をここに計上していない。これは政府のやり方が十六条の違法であると思うのです。賀来さんは、違法であるということは答えられないでしようが、あなたのこの十六条に対する見解を、ふだん私たちに話している通りに、ここでこの際――占領治下ならあの話で私たちも了承したのです。しかし独立国になつたのだから、ひとつあなたは労働行政のエキスパートとして、この際ほんとうに、公共企業体に今後こういう煩わしい問題を残すまいとしたら、信念を持つて、首になつても平気だというような気持で――首になればすぐ衆議院議員に当選して、この次には労働大臣になれるのだから、(笑声)ひとつここではつきり、あなたの本に出されたような気持のことを答弁してもらいたい。私は法制局長官にお聞きしたいのですが、まだお見えにならないので、ぜひひとつ賀来さんから明快なる御答弁をお願いしたい、こう思います。
  15. 賀来才二郎

    賀来政府委員 三十五条によりまして、裁定協定あるいは協約同一効力を有する、すなわち両者拘束いたしております。それに対しまして、国鉄側拘束されていないような態度をとつておるかどうかは、御判断によらなければなりませんが、法律的に申しますと、両者労働協約同一効力をもつて拘束をいたしております。ただその効力が発生いたしますのは、予算上、資金上不可能な場合においては国会承認を経なければならないということになつておるのは、もう御存じの通りであります。承認という言葉につきましては――国会承認を求めるということは、いろいろな法律で使われておりまして、この公労法十六条の承認というのが、一体どういう手続になるべきとかいうことにつきまして、公労法施行以来数次の裁定にわたりまして、国会でいろいろ議論がありました。また今日におきましても、議論としてはいろいろあるということは承知をいたしておるのであります。しかしながら、すでにこの取扱い方についての慣行は確立されておりますし、さらに先般の改正によりまして、前国会におきまして、この点につきましては、政府解釈というものも明確に申し上げておるのであります。これはやはり予算関係することでありますならば、国会という予算審議権を持つております最高機関の御判定によつて政府措置すべきである、こういうふうになつておりますので、これに従つて措置されたものと考えますので、私といたしましては、いろいろ議論はありますけれども、われわれが今扱つおりますこの解釈扱い方から見ますならば、違法とは考えていない次第であります。
  16. 石田一松

    石田(一)委員 今、賀来労政局長は、もうすでにこの三十五条と十六条との関係の実際的な取扱いというものが慣行となつておるとおつしやいましたが、これはちよつとさつきも申し上げましたように、占領治下におけるところのいわゆる客観情勢というような説明があれば、ほぼ察して慣行として認められるのですが今はそんなものは慣行にも何にもならない。今、政府自体占領治下におけるところのあらゆる立法とか、あるいは制度を再検討しようとかいつているときなんですから、少くとも労働問題が今日のようにやかましくなり、しかも社会的不安を起しておるというようなときに、国鉄の労組にのみこの公労法の義務を負わせて、しかも争議権というものを剥奪して、それを救済するものとして仲裁委員会制度を設けて、これが両当事者拘束するものだといつておいて、そうして十六条にこれを書いて、しかも時の与党、政府の多数を持つておりさえすれば、こけ仲裁裁定なんか全然踏みにじられるものだということに相なりますと、これは労働組合労働者というものを、この法律で、まんまと一ぱいひつかけたということです。それ以外に何の解釈もできません。慣行ということをおつしやいますが、私は慣行で今問題を論じようとしておるのじやなくて、ここに新しい慣行出発点をつくらなければならぬときだ、こういうふうに考えるので、私はお聞きするのですが、賀来さんの御意見はそれ以上には出ないだろうと私は思います。あなたは考えていても、なかなかおつしやらない。そこで私が運輸大臣に最後に一言お聞きしておきたいことは、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件として提出をなさいましたが、その反面、運輸大臣は、この公共企業体等労働関係法三十五条の仲裁裁定が下された趣旨とは違つた予算を組んで国会承認を求めていらつしやる。そうすると、あなたはどちらの承認を求めようとなさつておるのか、要するに予算の方の議決を求められておるのか。予算の方をやつてもらいたいのか、それとも公共企業体等労働関係法の十六条の第二項の規定に基いて仲裁裁定そのものについて国会議決を求められておるのか、どつちなんですか。あなたは意思が二つにわかれておるかどうか。
  17. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。この裁定書を出したときにも、その問題は衆参両院の本会議でも質問を受けましたが、この規定そのものが、しばらくひつ込んでいて、このごろ出て来た私には、わかりにくいところもあるのであります。皆さん方、こうこういうわけである、こういうことで皆さん方の御判断にまつというだけで案を出しております。意見がないかと言われれば、意見はあるが、いろいろ予算の問題もにらみ合せて、そのうちにいろいろ御相談、お話申し上げるという意味のことを申しておつたのであります。予算ができて提出をいたしました。それについてのいろいろ内部的な交渉もありましたが、結果は第一項において基本給はそのままであるが、裁定時期を十一月からにしていただきたい、そういう心持で予算を組んだものであるということを含んで御決定をお願いしたいのであります。
  18. 石田一松

    石田(一)委員 それでは運輸大臣は、ここは予算委員会ではございませんから、ここにはただ裁定されたときの裁定案なるものだけの議決を求めると出されておりますが、これをもしこの労働委員会あるいは衆議院国会仲裁裁定完全実施をすべしという議決をしたとするならば、これは国会意思を求められておるのですから、そうおつしやつておるのですから、国会がその意思決定をしたら、今日提出されておりますところの補正予算の、少くとも国鉄関係予算だけでも、仲裁裁定完全実施に沿うようにあなたは組みかえられますか。
  19. 石井光次郎

    石井国務大臣 政府といたしまして予算が片一方に出ておりますことは、この機会にも、またあらゆる機会にも御説明しておる通りでありまして、この仲裁裁定につきましては、八月から実施せよということが書いてありますが、政府としては十一月から実施したいという意思予算の上にも表わしております。その線に沿うて議決が願えれば好ましいと思つております。しかし、これは皆さん方議決にまつわけであります。心持はそうであります。
  20. 石田一松

    石田(一)委員 苦しい答弁はわかるのですが、こんなことではだめなんです。
  21. 田中伊三次

    田中委員長 石田君……。
  22. 石田一松

    石田(一)委員 ちよつと待つてください。委員長。ここが今一番大事なところだ、ここでぼかされたらしようがない。
  23. 田中伊三次

    田中委員長 法制局第三部長の西村健次郎君が出席しました。
  24. 石田一松

    石田(一)委員 そこで、今いろいろと私語の中にもあつたのですが、政府は議会にその判断を求めておるのだといいながら、政府自体ですでに判断してしまつて、要するに予算の面までびしつと判断してしまつて、この通り議決しろ。今あなた自身が、政府考えておる通りに、八月の実施というのを十一月にして、これこれでやつてくれるように、実はそうしていただけばけつこうだと思つていますということは、そういうふうに議決してくださいというのであつて、こちらの判断を求めるのじやない。それでは公労法の精神というものは、全然踏みにじられるではないか、それじや違うじやないか。そうじやなくて、要するにこれこれのものは仲裁裁定ではない。そうしてこれを全部実施すれば、これだけの予算がかかります、と予算わくを示して、仲裁裁定通り実施していいか悪いか、とにかくこれだけの予算をとつておりますといつて、これがもし出されたならば、これなら、なるほど判断をまかされて、実施した方がいいか悪いか、結論づければいい。あなたのおつしやるのは、一部分を認めておいて一部分は認めないで、そうして尊重しておる、尊重しておるといつて、一部だけ尊重しておいて、そうして、これは要するに、国会の御意思にまかせて、国会判断にまかせておるのだと言われる。判断にまかせられるのだつたら、自由に判断しようかと思うと、今の裁定の中でも、政府としては財政的に、財源から申しましても、十一月以降の実施で、八月からはむずかしい。しかも、手当の方はこういうふうにしてもらつた方がいいのだというのでは、何を求められておるのか、一つもわからなくなつてしまう。これでは、私は、公労法の十六条と三十五条のあの当時の解釈占領治下における特殊事情というものを勘案して解釈をした――今賀来労政局長慣行と言われましたが、占領治下解釈の間違いというか、その当時の事情に合つた解釈の仕方をしたところに、こういう混乱が今日起きておるのだ。こんな問題を起さないで、もう少しスムーズに解決する。それでなければ国鉄の従業員も満足できないと思います。  そこで、先ほど来私は賀来さんにもお尋ねしたのですが、もう一ぺん法制局の方がおいでになつたのですから特にお伺いしたいのです。これは重点的な解釈として、公労法の十六条と三十五条の関係ですが、この十六条にいうところのいわゆる「政府拘束するものではない。」この拘束するということは、政府国会承認を経ないでいかなる金銭の支出もしてはならぬ。支出の面の承認を求めるべきことが書いてあるのであつて裁定が下された場合には、この裁定を尊重して、政府拘束はされないが、これこれの予算がいりますと、予算を付して――これには事由を附してというふうにあいまいに修正されましたけれども、出さなければならぬ。こういうふうに解釈するのですが、法制局側として、これはどういうふうに御解釈になつておるか。仲裁裁定が起るたびにこういう疑義が起るのです。私はこれでは公労法の制定された意義が失われると思いますので、立法精神ではなく、法律的な解釈としてひとつ権威のあるお答えを願いたいと思います。
  25. 西村健次郎

    ○西村政府委員 今、石田委員から御質問になりました点につきましては、国鉄の第一次裁定が出されたときから、しばしば議論なつた点であります。その際におきましても、石田委員御自身からも、ほかの方からも、そういう御意見が出たと承知しております。ただ、私どもといたしまして、この公労法を、法律のありのままの姿に解釈いたします場合におきましては、仲裁裁定は、なるほど三十五条によりまして、最終的なものとして効力を有する。但し、予算資金上不可能なる部分については、十六条の規定によつて国会承認があつた場合初めて効力を有する、こういうふうに御承知の通りつておるわけであります。国会になぜかけるかという意味は、要するに予算資金上不可能なわけでございます。しからば国会がそれに対してどういう制定を下すかということを申しますと、それは予算資金上不可能な部分について、労働関係を見て国会が判定するのではなしに、財政上の見地からこれだけは許すべきかどうかという意味で、国会仲裁裁定の一部を担当する。これは非常に特異な立法であろうと思いますが、こういうふうに解釈いたさなければならない。そう読んで参りますと、第十六条で、裁定そのものを出す、不可能な部分について国会議決を求める。言いかえれば、政府が仲裁委員会裁定に対してあれこれ言うということも、もちろんできないと同様に、予算的な見地から不可能な部分について、国会は事実上裁定をするわけです。それについて、もちろん政府の希望というものはございますが、政府があれこれ言うべき筋合いではなかろう。従つて予算資金上不可能な部分について、国会がこれを全幅的に承認する、あるいはこれこれを限度として承認するということになれば、国会承認されました範囲において裁定効力を生ずるということになるのであります。従いまして、もし予算をつけて出すということならば、十六条の規定の仕方は当然かわつて来るのじやないか、こういうふうに解釈いたします。
  26. 石田一松

    石田(一)委員 そういたしますと、予算を付して出すものじやないが、たまたま今日補正予算国会提出されている。しかも国鉄裁定なるものがちようどこれと時を同じゆうして審議されておる。同時にこれが付して出されたものではないけれども、先般主計局長あるいは運輸大臣自身も、この裁定承認を求めるの件は、近く国会提出されるであろう補正予算国鉄予算基本給の部分とあわせてこれを御審議願いたい、こういうことをはつきりおつしやつた。そうなりますと、政府自体はもうすでに仲裁裁定というものは、これこれはよくて、これは悪いということを討議してしまつている。それで不承認の場合、これくをやつてもよいということを国会にまかせるんだとおつしやいますが、国会には予算の編成権はありません。政府自体予算の編成権を持つてつて、これ以上はできぬといつて出して来ておる。そこに矛盾が生ずるということと、それからもう一つは、この前にもお聞きしたが、予算上、資金上不可能な裁定があつたときにはこうしなければならぬと十六条に書いてあるのですから、三十五条の仲裁裁定の中に、予算上可能であるところの裁定がなされる場合があつたら――それは具体的にどういう場合に仲裁委員会給与の面で予算上可能な裁定をする場合があり得るか、これは私は大きな問題だと思う。私の考えでは、給与の面に関する限り、仲裁委員会裁定は、予算総則上、給与総則上可能な裁定を下すときというのはあり得ない。それは給与総則はきまつておるのです。いつの場合でも仲裁委員会裁定予算資金上不可能のものばかりです。要するに三十五条で、労働者の基本権である団体交渉権あるいはいわゆる争議権を剥奪しておいて、こんな全然架空なものを持つて来ておる、こういうことになると私は思います。もし法制局側で、あるいは労働省側でもいいのですが、給与の問題に対して労働者が不服を唱えて仲裁裁定なつた場合に、予算上質金上もらつておる給与よりは安くなるという裁定がなされ得ることがあるかどうか、給与を安くすることは予算上可能であるから、十六条にもどらないが、給与の値上げの要求当事者と話がまとまらない、調停委員会もまとまらないで、遂にこれが仲裁委員会に行つたにもかかわらず、これが予算上不可能であるからといつて、十六条に返るというのだつたら、この仲裁裁定予算上不可能でない裁定はしないから、いつの場合でも不可能である、これは全然実行できない法律であるということになる。それでは、さつきも言う通り、げびた言葉ですが、一ぱい食わしたということになるのじやないか、それではこういう法律はない方がいいじやないかという立法論になつて来る。労政局でも法制局でもけつこうですが、労働者が賃上げの要求をしたときに、三十五条が十六条にもどらないで最終決定としてすぐ決定されてやられるという場合があるのかどうか、給与の問題でひとつお答えを願いたい。
  27. 賀来才二郎

    賀来政府委員 専売公社の労働者要求に関します仲裁裁定が、前回でありましたか、前々回でありましたか出ましたときに、一応予算上、資金上不可能であるという考え方で国会承認を求めております途中で、当時倉石労働委員長のときでありますが、委員長その他委員の方の御尽力によつて可能ということになりまして、政府もこれを認めまして、全部仲裁裁定が認められたことがございます。
  28. 石田一松

    石田(一)委員 そうすると、政府のいうところの予算資金上不可能ということは、不可能が可能になることなんです。そうだとすると、今日この部分が実施不可能だなんということは、これは一つも信用できない、間違いだ。専売のが不可能が可能になるのだつたら、少々のことはみな可能になるはずである。であるからして、私は、この際そういう実例があるとするならば、それは予算上、資金上不可能であるところを、それを何かのやりくりでそうしたということであつて答弁はあの当時のいわゆる専売局の従業員の給与があまりにひどかつた。実際専売局は、大分国家にもうけさせて、国鉄の方は大分国家が一般会計から貸しをしておる、これだからだめだ。専売局の方は、ほかの税金のかわりにしぼり上げるのに働いてくれたわけだから、これはしてやるという。これは政治的含みであつて法律的には、ほとんどそんな解釈はないと考えます。  そこで私は最後に申し上げますが、この委員会決定しましたから、この仲裁裁定実施すべしということをしたら、予算は変更されますかどうですか。ひとつ国家の議決だけでいいのですから、労働問題に対する仲裁裁定に関する限り、もし仲裁裁定を完全に実施しろという国会議決があつたら、予算委員会はともかくとして、予算は当然に組みかえられるかどうか、このことをもう一ぺん念を押しておきます。
  29. 石井光次郎

    石井国務大臣 そのときになつてみなければわがらないのでありますが、政府といたしましては、さつき申し上げましたように、第一項の実施期は遅れて非常に残念でありますが、基本給はそのまま認めた。そのほかの項目も決定はしないが、大よそこのくらいの線においてはどれも支給したいということで進んでおるのでありますから、私どもは、これは一本になつておるそうでありますが、それと今までの残余と合せて、しかるべく国鉄総裁においてやつていただきたいということを念願いたしております。ここでどういう決定になりますかしれませんが、もしその決定では予算がどうにもまかなえないということであれば、これは別であります。やりくりできるかもわかりません。そのときの場合になつてみないとわかりません。
  30. 前田種男

    ○前田(種)委員 ちよつと関連して……。今の運輸大臣答弁は、国会で完全に裁定実施せよという決議がなされたときには、そのときの情勢で考慮すると言われましたが、国会で完全に実施せよという決議がなされたなら、それに対して政府は異議をさしはさむ余地はないと思います。完全に八月にさかのぼつて実施するという答弁を、運輸大臣は当然なさらなければならないと存じます。この点は、今の答弁が非常に慎重なる態度答弁されたのでありますが、国会で完全にそういう決議がなされた場合は、当然それは効力を最終決定されることは言うまでもないと思う、これが第一点。  もう一つは、先ほど法制局が十六条の解釈については、石田委員の質問に対して、三十五条を受けて立つている十六条の問題に対して、むしろこれは労働問題としてというよりも、予算上、財政上の問題で、国会が仲裁委員会の延長のような役目を果すというような答弁をしましたが、これはとんでもないことだと私は考えます。しかも、この法律案が提案されたときの当時の増田労働大臣の繰返し答弁の中には、これは最終決定がなされたときには、これに従わなければならぬということを繰返し答弁されております。しかもそのときの代償として当然労働組合にあるべき罷業権を、この際マッカーサー指令によつて労働組合から剥奪する。それは団体交渉権を大幅に制限するということは、労働組合の死命を制せられるような重要なる行為が制約されるのです。そのかわりに、最終的には仲裁裁定がなされた場合には、それは拘束力を持つ。ただ政府拘束せないということは、裁定が下つた場合に、まさか政府機関が約束を不履行するようなことはないから、政府まで拘束するという字句を掲げなくても、常識的にこういう点は当然政府責任を持つて最終裁定に対しては従うという気持が十分あるから、政府拘束するという字句は穏当でないからというので、十六条の字句等は、そういういろいろな関係でああいう字句が使われた。これが一番問題になつているのです。こういう法律の制定された審議経過は、そういうことを繰返し自由党内閣の労働大臣、法制局などが答弁して、この法律案が成立するや、一番先に不履行の行為をとつたの政府です。そういう不履行な行為を政府がとるから、幾たびかこれが問題になつて来ているのです。それを今日に至つて仲裁裁定の延長を国会がやるような解釈をするということは、これはとんでもないことである。これはすなおに、法それ自体の解釈については、いろいろな解釈があるかもわかりませんが、この法律ができた前後の事情、それからいろいろな点等を勘案してみますと、このことのためには最善の努力をして、政府はこれを完全に実行せしめるという線に持つて行かなければならぬということについては、もう議論の余地はないのです。ただ財政、経済が許さぬからといつておりますが、それは許さぬからという理由とは私は聞き取れない。むしろ公務員並ににらみ合せなければならぬというのが、重要な理由であると私は考えるのです。しかし、私はこの点はもつとすなおに、裁定が実行されるような解釈が正しくなされなければならぬと思います。もう一度法制局の先ほどいかにも仲裁裁定国会がやるような解釈をされておりますが、この点について御答弁を伺つておきたいと思います。
  31. 西村健次郎

    ○西村政府委員 私が先ほどお答えしましたことの、あたかも仲裁委員会の延長みたいなことを国会がする――あるいは表現が多少悪かつたのかもしれませんが、三十五条と十六条、ことに十六条の二項をごらんになれば、予算資金上不可能な部分については、裁定はまだ効力を発生しておらないのであります。そうして十六条二項をお読みになると、国会がそれについて承認したとき、初めて裁定裁定としての効力を生ずる。これはすなおに読めば、私の申し上げたようになるのじやないかと思います。もちろん、これは御見解が違えばそれまででございますけれども、私の申し上げたような意見は、表現の字句は違うかもしれませんか、従来一貫して政府がとつて来た解釈であります。この公労法制定の際におきまして、当時の増田労働大臣が、笠岡田委員のおつしやつたような発言をされたかどうか、私ははつきり記憶しておりませんけれども、少くも私の承知している限りおきましては、当初がら今申し上げましたように、裁定国会承認があつて初めてその部分は効力を生ずる。従つて、仲裁委員会裁定のみでは、まだ完全なものではない。私の表現が悪かつたのかもしれませんけれども、そういう意味のことを申し上げたつもりであります。  それからもう一つ、第一の点、これは運輸大臣への御質疑で、私が出過ぎているかもしれませんけれども、かりにこの国会承認をしたという場合、政府はどういう態度をとるべきか。これは承認をすれば、十六条二項に規定されてありますように、当然協定として効力は生ずるのであります。政府としても予算案を国会へ出すのが当然であろう、こういうふうに思うのであります。そうでないと、国鉄は債務を履行できないというようなかつこうになる、そういうふうに解釈します。
  32. 石田一松

    石田(一)委員 そこでさつきも私は聞いたのですが、この予算上という予算というのは要するに裁定がなされた当時の予算を言うのであつて、今提出されているところの審議中のいわゆる予算ではない。こういうことになつておるにもかかわらず、事前になされておる裁定が――今二十七年度補正予算として国会審議しつつあるあの予算は、この国鉄裁定を、十六条の予算上不可能ならしめるところの予算が、今ここで進行しつつあるということですね。要するに予算審議が可能であるかないかということが、今までの予算では不可能であつたかもしれないけれども、新たに政府が今度組んで出した今審議中の予算自体が、十六条のいわゆる裁定実施するに不可能なる予算を今ここに提出して審議しつつある、こういうことです。これは大きな矛盾じやないか。結局これでは裁定が不可能か可能かということは、政府判断によつてのみ決定されるという結論になりはせぬか。国会審議権がないんじやないか。なぜかといえば、国会には予算の編成権がないのでありまして、政府が不可能な予算を組んで今出しておるのであるから、この法律と矛盾しはしないかということをさつき聞いた。これはいかがです。
  33. 西村健次郎

    ○西村政府委員 今、この裁定とあたかも時を並行しまして補正予算が出されおりますので、いろいろ混淆を生ずるのでございますが、私の申し上げた意味は、かりに今の補正予算が成立しても、今度の裁定実施は不可能だ、少くも不可能な部分があるとしましても、かりに国会が今度の裁定を全面実施という議決をすれば、やはり政府はもう一度補正予算提出すべきであろう、そういう意味で申し上げたのであります。
  34. 春日一幸

    ○春日委員 関連して……。そうすると明らかにされたことは、この第十六条の第二項は「前項の協定をしたとき」――協定をしたときに初めて議会にその承認を求めることができるわけであります。ところが、現在この仲裁の裁定は下されたが、協定はまだ成立していない。すなわち第一項目については具体的に指示がされておるけれども、二、三、四項目については団交にまつということになつておる。しかしてその団交が成立せざる場合においては、あるいはいろいろ解釈を異にした場合においては、仲裁委員会が指示を行うことになつておる。ところが、現在のところは協定は成立していない。協定が成立しなければ、政府国会にこれの承認を求めることができない。これは明らかに第二項に示されております。従つて、ここに議会に承認を求めて来ておるこの議案というものは、すなわち議案を提出するに至るまでの前提的条件を、なお具備していないと解釈することができると思うが、これは専門的にどういうふうに御解釈になつておるか、御答弁願いたい。
  35. 西村健次郎

    ○西村政府委員 今度の裁定がその裁定自体の中におきまして、団体交渉によつてきめる――裁定というのは仲裁判断でございまして、最終的に権利義務を確定すべき性質のものであります。しかるに、その裁定の中で、団体交渉にまつといつておりますために、問題が非常にむずかしくなると思いますが、しかし、少くも国鉄国鉄職員との間に一つの紛争がありまして、それが仲裁にまで持ち込まれまして、それについて下された一個の裁定であります以上、二項以下につきましては、今のところ、はつきりどの程度可能か不可能か――むしろこれは不可能になる可能性の方が多いということも言えるかもしれませんが、それはともかくとしまして、二項ないし四項につきましては、はつきり確定はいたしておらないわけでありますけれども、今申し上げましたように、裁定というものは一つのものとして取上げて、これをやはり審議の対象にするということが、仲裁判断の性質からいつても適当であろう。従いまして、国会で今二項以下につきまして確定的な結論を下すというわけには、あるいは参らないかもしれませんけれども、あわせて二項以下を見つつ、この議案について最終的な伴断を下していただくことが適当であろう、そうすべきではないか、こういうふうに思います。
  36. 春日一幸

    ○春日委員 それは、やはりその裁定が下されて、その裁定案を両方が服従して、服従することによつて協定が成立する。こういう協定が成立して、予算を不足とするならば、国会承認を求めて来る、こういうことが法律に明確に示されておる。しかるに、現在のところ協定段階にある。団交が進行中であり、団交はしなければならないし、できなければ指示するということが委員会において明示されておる。従つて、これはまだ協定交渉過程であつて協定をなした場合において承認を求めるというそういう条件を備えてはいない。従つて政府がこれを提案するということは、できないわけです。すみやかにその協定を成立せしめるということが必要なんです。ここに提案されておるこの議案は、ここへ提出する資格条件を欠いでおると私は考えるが、これは法律的にどうでしようか。
  37. 西村健次郎

    ○西村政府委員 これは仲裁委員会の下した裁定でございます。それから十六条の協定というのは、ほんとうに当事者同士ででき上つた協定なんです。仲裁裁定も公権的な協定にかわるものですが、そういう意味でありまして、今度の場合、その協定できめろという裁定でありますので、非常に問題が、何といいますか、委任命令みたようなかつこうになつておる。しかし、全体として、やはりこれは裁定でありますから、それを考慮しつつ審議していただくということにならざるを得ないのではないか。もちろん最終的には、額は二項以下について確定いたしませんから、かりに二項以下について団交ができた、あるいは指示があつたという場合に、もしそれが予算上、資金上不可能であればどうなるかという別の問題はあるわけでございます。
  38. 森山欽司

    ○森山委員 国鉄総裁にお伺いいたします。今回の仲裁裁定書の中に、裁定実施のための財源について意見が述べられておりますが、これについて、国鉄総裁として、いかにお考えになりますか。おそらくは政府意見と同じではないであろうと思いますので、お伺いしたいと思います。  まず公安員の経費の政府負担という点については、いかがお考えになつておりますか。
  39. 長崎惣之助

    長崎説明員 公安員の経費の問題でございますが、これは一部一般会計で持つてもいいものがあるかと思います。しかしながら、国鉄でもつてやらなければならない仕事もいたしております。それらの間の限界が非常に困難でありまして、まあ一般会計で持つべき分は比較的少い、むしろ損害賠償の問題でありますとか、いろいろな点で、国鉄自体の仕事をやつております。それからお客さんの誘導であるとか、案内であるとかいうような仕事もいたしておりますので、いわゆる純粋の公安の部分というものは、ないではありませんが、非常に少い。まあ、国庫から出していただいても、大したことはないと考えております。     〔委員長退席、山村委員長代理着席〕
  40. 森山欽司

    ○森山委員 裁定書は、平年度約六億円という金額を見込んでおりますが、総裁のお考えによると、どの程度になりますか。
  41. 長崎惣之助

    長崎説明員 その数字については、どういう根拠でお調べになりましたかわかりませんが、先ほど申しましたように、純粋なる公安関係というものは、おそらくこういうものではなく、もう九〇%くらいは国鉄自体の仕事としてやつております。数字の内容は、今ちよつと詳しいことがわかりませんので、いずれ調べてから……。
  42. 森山欽司

    ○森山委員 今度の裁定実施の問題は、財源問題に帰着する点が非常に多いと思うのであります。法律論も重要でありますが、同時に財源の問題、ひいては二十七年度補正予算の問題と、非常に重大関係を持つて参ると思いますので、すでに国鉄御当局として御研究になつておられると思うのでありますが、この六億円はどうして出たかわからないというような御返事を総裁から承ることは、ちよつと残念であります。後ほど専門の方にお伺いしたいと思います。  それから高架線下用地、広告関係などの使用料、賃貸料の一般民間水準への引上げというようなことも指摘されております。これもおそらく今回の補正予算の中に織り込まれておると思うのでありますが、こういう点について御意見を伺いたい。
  43. 植田純一

    ○植田政府委員 運輸省からお答え申し上げます。本年の補正予算におきましては、不用品の売却、あるいはここにあります料金の引上げ等によりまして、約十四億を補正予算によりまして計上いたしております。
  44. 森山欽司

    ○森山委員 高架線下用地、広告関係などの使用料、賃貸料の一般民間水準への引上げというのを、どの程度やつておられ、またそれによつてどの程度の財源を今回見込まれ、将来もまたお見込みになろうとするのかということを、伺いたいのであります。
  45. 植田純一

    ○植田政府委員 あとでお答えいたします。
  46. 森山欽司

    ○森山委員 すでに裁定は八月に下つておるので、こういう最も重要な問題については、すぐ御返事ができなければならぬと思うのですか、あとで調べるとか、そういう御返事ははなはだ好ましからざる御返事であろうと思います。労働委員会に対する不逞の答弁であるということになりますので、すみやかなる時期にそれの御返答を願いたいと思います。たとえばガード下の借賃なんというものは、過当に安くなつておるような面もある。それを今度はどの程度に上げられ、そしてどの程度の財源を見込まれるかというふうな一例を御報告願いたいと思います。今おできにならなければ、後に本委員会で、できるだけすみやかなる時期に、そういつた点について御返答願いたいと思う。実はこの問題については、国鉄労働組合側では、かなり詳細な調査をいたしておるのでございます。あなたの方でどういう数字というふうに出してもらいませんと、労働組合が出して来た一つ意見がある、一体どこが食い違うか、財源問題について労使間に意見の食い違いがあるのです。その点をもう少しこの委員会として地道につつ込む必要があると思つてお伺いしたのです。  その次に伺いたいのは、この裁定書の中に運賃問題、特に定期券の運賃の値上げ等について指摘してあります。もしこれが国民生活とか、他の産業経済に及ぼす影響が甚大であるというので、政治価格でもつて値上げを避けようとするならば、鉄道債券でまかなつたらどうかという意見が出ております。鉄道債券という問題について、国鉄総裁はどう考えておられるか承りたい。
  47. 長崎惣之助

    長崎説明員 鉄道債券は、法律上は一応出すことができるようになつておりますので、しばしばその発行方について、予算編成のときに要望申し上げております。しかしながら、やはり財政政策全般の関係等がありまして、まだ発行は認められておりません。来年度予算につきましても、私は鉄道債券の発行方について希望を申し上げたいと思つております。
  48. 森山欽司

    ○森山委員 それから修繕、取替、償却費が国鉄の経理を非常に圧迫している。仲裁委員会裁定書によりますと一時的にシワ寄せされた経費の負担を、後年度に繰延べて平準化させることは、むしろ経営の常識である。企業における独立採算は、会計年度毎のバランスの意味に解されてはならない。殊に運賃を政策的に低位に止め、しかも修理復旧を急ごうとするならば、それ以外に途はあり得ない。そしてこれは補給金的な政府負担に俟つよりも一層合理的である。」という考え方のもとに、国鉄の現在の借入金は、他の一般民間事業――これはむしろ借入れが少し多過ぎます。戦前の一般企業的な観点からいたしましても、国鉄の借入金というものは非常に少いので、そういう意味で、これらの経費を借入金によつてまかなうという意見、こ駐についてはどうお考えになつておりますか。
  49. 長崎惣之助

    長崎説明員 仲裁委員会の経営上の点についての意見は、私は必ずしも全面的には賛成いたしておりません。しかしながら、一部非常によい意見もあると存じます。一体復興、復旧あるいは取替というような経費を、いかなる財源に求むべきかという問題は、慎重に考慮を要する問題であります。しかしながら、国鉄のような非常に固定資産の多い事業ごとに皆さん御承知のように、戦時中あるいは戦後を通じまして非常に荒廃して、このまま放置すれば危険も生じかねないような設備におきましては、今日急速なる取替をしなくてはならぬと思つております。その資金を一体どこに求むべきか、また経営的な減価償却の価額、これについても、裁定では減価償却が多過ぎるではないかというようなことを言つておりますが、これだけの大きな設備になりますと、相当な減価償却費がいるのであります。それと収入との関係で、また非常にアンバランスになつているということを言つておりますが、私は運賃収入が、やはりこの裁定に言つておられるように、いろいろな面から低位に押えられているという点が、相当大きな障害をなしているものと思います。これらの償却ないし復興を急速にやりますためには、運賃においてまかなうべきものもまかなえないとすれば、やはり何とかしなければならぬ。これはやはり借入金という道に行くよりほかに方法がない。しかし、その借入金にしても、いつかは償還しなければならぬというようなことで、それらの計画を立てまして、実は過日三割運賃値上げという計画を立てたのであります。しかし、これまた物価政策その他によつて、一割値上げという面に押えられましたから、その不足分については、これまた来年度予算において借入あるいは出資その地の方法によつてこれを遂行して参りたい、かように考えております。
  50. 森山欽司

    ○森山委員 そうすると、修繕、取替、償却費というもの、これを借入金によつてつて行こうという考え方、この裁定書の中に書いてある意見について、あなたは大体賛成だ、こういう意味にとつてよろしゆうございますか。
  51. 長崎惣之助

    長崎説明員 戦時中あるいは戦後の非常な時勢のために、取替あるいは修理の足りなかつた部分が非常に多いのであります。これらの修理とか、あるいは取替というようなものは、経営経費でありますから、私は借金によるべきものじやないと思いますけれども、いわゆる繰延べ方法によつて処理して行くということも、一つの方法と考えております。
  52. 森山欽司

    ○森山委員 そうすると、運賃の問題については、政策的に運賃を押えられて行くならば、これは鉄道債券でまかなうということについても国鉄総裁は賛成である、今回もそれについての御意見を出されたというような御意見を伺いました。それから修繕、取替、償却費というようなものを繰延べて、借入れによつてまかなつて行くという考え方についても、これはほぼ御賛成のようです。従つて、もしそういう考えで参りますと――国鉄資金上という考え方で行くならば、これは政府関係機関予算という形をとつても、予算上質金上可能な形をとるということができるわけでございますか。
  53. 長崎惣之助

    長崎説明員 私はその繰延べに全然賛成で、そういう方法をとれるものならばこれは非常にけつこうですが、そういう厖大なる資金がはたして借入金によつて借りられるかどうかという実際上の問題がまた起りますので、必ずしもこれが全面的に行われるものだとは思われません。
  54. 森山欽司

    ○森山委員 そういうことが全面的に行われ得るかどうかということは、これは実際やつてみなければわからない。私が先ほど来お伺いしていることは、運賃の問題にしろ、修繕、取替、償却費の問題にいたしましても、運賃自体の問題として取上げ、また修繕、取替、償却費自体の処理の問題として取上げておるわけです。しかし、ここの委員会でこれらの問題に論及するゆえんのものは、要するに今回の裁定実施のための財源が、そういうことにあつて出て来るのではないか。そうして、日本国有鉄道という公社の管理者側に裁定実施しようという熱意があるならば、そういう点について、具体的に強く御推進になつていいのではあるまいか。そういうような御推進をなされたことが、一体あるのかということについて伺いたいのでございます。
  55. 長崎惣之助

    長崎説明員 裁定実施資金というようなものは、経営的経費でございますので、これを借金によつて毎年心々まかなつて行くということは、私は健全なやり方ではないと思います。ただ今年度に限つては、これから運賃改正によつて増収をはかりましても、一月からやりましても三箇月しかございません。そういう関係上、やむを得ず借入金をいたした予算をお願いしてございます。
  56. 森山欽司

    ○森山委員 今回の裁定完全実施のために借入金をするというお話でございますが、この仲裁裁定書の基本的な考え方からすれば、賃金を払うために借入金をするということにはならないわけです。借入金をするというのは、政治的な観点から低位に置かれた運賃に対する補給金的な意味において、鉄道債券の発行を認めるとか、あるいはまた修繕、取替、償却費というような問題に対して、繰延べする形において借入金をするということになるのであつて、賃金自体は、何らこれは借入金においてやるわけじやないのです。そうすれば、何も賃金を人から金を借りてやつて行くという不健全なことには私はならないと思うのです。ですから、問題は、国鉄の賃金を論ずるということは、国鉄の経営者といたしまして、これらの運賃問題が政策的に押えられるならば、これは鉄道債券でまかなうという一つのアイデアがここに示されておる。また修繕、取替、償却費というような問題については、これを繰延べて借入金によつて処理して行くというアイデアが示されているということになると私は思う。なかんずくこの裁定書を読んでみますと、裁定の賃金額自体というものも、決して高いものではないのであります。さらにまた団交によつてとりきめるべきもの、これも労働組合はそう過当な要求は出さないと思います。また現に表面上掲げておるものも、もつと現実的に妥協する余地があるのではないかと思う。そうなつて参りますと、現在補正予算審議は進行中でございますが、この補正予算審議の進行中に、少くとも日本国有鉄道の管理者側は、監督官庁の立場にある運輸省ないし大蔵省とは、別個の見地において一個の案が出なければならぬと私は思うのであります。しかしながら、不幸にしてわれわれは、日本国有鉄道側からそういう建設的な御意見を伺うことが今日までできておらないのであります。近く専売裁定も出ることと思いますが、しかし、専売裁定が出るにあたりましては、日本専売公社は、その監督官庁である大蔵省と明らかに対立して、きわめて注目すべき一箇の建設的意見を出しております。それによつて専売裁定完全実施が可能ということになるのであります。しかるに日本国有鉄道の管理者側は、一体何をせられておるのか、少くとも、われわれがこの席上において求めておるものには何ら答えていない、しかも用意すらないということは、はなはだ遺憾であります。それについての総裁の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  57. 長崎惣之助

    長崎説明員 それは、あらゆる機会において――当委員会においては、私は、国鉄裁定その他について意見を申し述べる機会が今日までございませんでしたが、しかしながら、運輸委員会等におきましては、熱心に、国鉄の再建が必要であるごと、国鉄が財政的にいかに困つておるかということ、それをどうしたらいいかというようなことは、しばしば述べておるのであります。ただしかし、この機会において、時間が許されるならば申し述べてもけつこうでありますが、時間がかかるので、要領だけ申し述べておるのでありまして、いずれかの機会にまた機会をつくつていただいて、ゆるゆると申し述べてもよろしゆうございます。
  58. 森山欽司

    ○森山委員 いずれ機会を見てゆるゆると聞いているひまはないのであります。というのは、今回の裁定の問題というものは、時間的に迫つている。しかも二十七年度補正予算は、目下審議中であります。近く衆議院であがるのであります。そういう際に、この裁定実施しなければならないという信念を、あなた方日本国有鉄道の管理者側がお持ちになるならば、少くともこの補正予算審議中に、国有鉄道側として一個の見解をお出しになることは、大蔵大臣あるいは運輸大臣にも何ら遠慮する必要はないと思う。そういう具体案を、少くもあす中か、あさつて中ぐらいに本委員会に、委員要求によつて提出される御意図があるかどうか、承りたいと思います。
  59. 長崎惣之助

    長崎説明員 今日ここでお話申し上げてもけつこうなんですけれども、しかし、それは数字等も入りますから、明日にでも申し上げます。
  60. 春日一幸

    ○春日委員 第三部長にお伺いいたします。仲裁裁定協定である、このことは私は異議はございません。ところが、問題の現実は、ただいま労組と公社側とがいろいろ対立をしおります財源は、労組の要求しておるのが二百二十四億、そこでもつて政府補正をしておる、このことは公社が了解をしておるというのが百六億というもの、それだけ公社がのんでおるわけです。そこで自己資金を入れても、なおかつ百五億不足なんです。従つて協定は半分しか成立していないわけです。すなわち労働組合要求しておるものが二百二十四億、それに対して政府補正予算をし、なおかつ公社がその範囲内において応諾をしておるものが百六億、従つてここになおかつ不足とするものが、国鉄の手持ち資金十数億を入れても、なおかつ百五億不足しておるわけなんだ。すなわち協定は今や半分しか成立しておらぬのだ。そして十六条の第二項は、協定が半ば成立した場合ということは書いてない。協定が成立をした場合において、初めてこれを議案として国会議決を求めることができるわけなんだ。そういうような意味合いにおきまして、現在は団交に二、三、四項目がゆだねられておつて、それが現在協定に至るまでの過程にあるわけなんだから、従つて、この団交が成立した後でなければ、この議案を提出することができないということは、明確な法律の科学的な判断、学問的な判断から見れば、当全出なければならない帰結だと私は考えるが、これについて御答弁を伺いたい。その御答弁によつて大臣に御質問いたしたい。
  61. 西村健次郎

    ○西村政府委員 お答えいたします。十六条の二項の協定、これは三十五条によりまして裁定と読みかえてもいい。これは前項の裁定があつたときはと読みかえる。だから今度の場合におきまして、裁定第何号でしたか、さつき申しましたように、一体として紛争についての裁定を下した。裁定は下された。ただその裁定の一部分に、予算資金上不可能な部分がありますので、国会の協賛を求める、こういうようになつておる。従いまして、御質問の趣旨は、まだ確定的でない部分があるじやないか。従つて、それについては審議のしようがないじやないかということであろうかと思います。これは先ほどもちよつと申しましたように、おそらく仲裁裁定というのは、本来最終的な判断でありますから、確定的なものであるべきであります。こういつた団体交渉しろという仲裁裁定というのは、はたして仲裁裁定であるか、あるいは妥当であるか、それはおそらく議論のあるところと思いますが、それはそれとしまして、こういう仲裁裁定が下されたのでありますし、これは一つの紛争について下された裁定であります。全体として御審議願う。但し二項以下については、最終的なものが確定しておりませんから、それが確定するまでは、国会としてこれにどういう議決をするかという、はつきりした意思をおきめになるわけには行かないのじやないか。これは非常に特異な場合だと思うのです。裁定の中で協定しろ、団体交渉しろということでございますから、私どもの考えとしましては、かりに今後におきまして、むしろこれは実際の取扱い考えますと、協定があつた場合に、その部分が予算資金上不可能である場合は、またその部分を付議するという方が、より実情に即した妥当な方法じやないか、かように考えます。
  62. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 春日君、大臣にお願いいたします。
  63. 春日一幸

    ○春日委員 予算資金支出を不可能とする状態ではなくして、予算資金審議を不可能とする状況にあるわけなんです。従つてわれわれは、こういうものがかりに議案として提案されても、審議する材料がないということです。だから、この実情に立つて考えますとき、この議案というものは、提案するところの資格条件を欠く、こういうことに了解をせざるを得ないわけなんです。そこで石井大臣にお伺いをいたしますが、昨日も今井仲裁委員長の御答弁によりますと、そもそも十六条の解釈と三十五条との関連は、政府は仲裁委員会裁定したところのものを国会にお取次をしていただくべき性質のものであり、それが法律の精神である、そういうことが望ましいと、今井さんは御答弁になつておるわけでございます。少くともこの委員会は、法律従つて内閣総理大臣が任命した国の機関であるわけなんです。従つて、その国の機関がそういう意思の表示を行つております限り、これはやはり仲裁委員会が下したところの裁定原案そのものを、そのまま国会に御提示になつて、かくのごとく決定が行われたんだから、しかるべき予算措置をいたされたい、こういうことであろうと思うわけです。このことは、すなわち仲裁委員会に対して囲が予算提案権を付与したというような解釈をするということも成り立つのであつて、これに対して「事由を附し」という解釈は、財政上困難であるとかどうとかというような事由を付せられることは自由であろうけれども、そのことも含めて仲裁委員会はおそらく裁定をしておるわけであります。しかもそれらの条件をさらに含めて国会審議すると思うわけです。従いまして、私どもは今あなたの方から百六億の補正予算をここに一方的に組んで、国会にそれを承認を求めて来ておる。こういうようなことは、明らかに公労法の精神に違反するものであると考えるが、これに対してどういうお考えであるか、御答弁願いたい。
  64. 石井光次郎

    石井国務大臣 私ども公労法の十六条二項によつてつておるのですが、これは事由を付して皆さん方判断をお受けするために提出をいたしました。しかし、それには予算が足りないというような問題もありますが、ちようど補正予算を出す。またその中には団交にゆだねておりますが、年末賞与等の差迫つた問題、石炭手当等もありますので、これはどうしても政府としては予算補正予算に組んで出すのが適当だというので、それではどういうふうに政府は一般の財政上その他の振合い等を見て、どこまで政府が出せるかということを研究いたしました結果、先ほども申すような線で出たのであります。これは先ほどから申しますように政府はいろいろな振合いから見まして、基本給はそのまま裁定通り認めるが、時期を数箇月待つてもらいたいということ、それからそのほかの問題は団交にまつということは、先ほどから申す通りであります。こういうふうなところで、何かの変更が生じますれば、それは政府は従わざるを得ないと思つております。
  65. 春日一幸

    ○春日委員 法律の第三十五条は、これは一方の自由裁量を認めていないわけである。すなわち双方とも最終的にこれに服従しなければならないということが規定されているわけである。従つて裁定に八月実施ということが、規定されているならば、政府はそれに必要あるところの予算措置を講じなければならない義務を生じているわけである。ところが、それを十一月――それは一般的な振合いを考慮するとか、自由裁量するということは、法律が認めていない。それにもかかわらず、十一月という自由裁量をされたという、その理由は何であるか、御答弁を願いたい。
  66. 植田純一

    ○植田政府委員 先ほど法制局の方から御説明がございましたように、三十五条におきまして、なるほど最終的決定といたしまして、これに服従しなければならないのでございますが、十六条に規定する事項、すなわち予算上または資金上不可能な資金支出を内容とする部分につきましては……(「不可能じやない、百六億あるじやないか。」と呼ぶ者あり)裁定の最終的効力を生じないのであります。百六億云々というお話がございましたが、これはあくまで補正予算におきまして御審議を願つている過程にあるのでございまして、これはまだ可能の域に達しておらない。補正予算が成立いたしますまでは、予算的には少しも情勢がかわつておらないわけであります。
  67. 春日一幸

    ○春日委員 そこで今、法律でいわゆる予算資金上不可能ということは、ここの第三項目に書いてあるように、予算総則十三条を含めて二十七年度予算に含まれていないということである。こんなことはあたりまえなんです、今石田君が指摘された通りである。そこで現財政において、現補正を組まんとする国家の財政状況において、予算資金上可能であるか不可能であるかということは、これは裁定案に基いて国会審議すべきものであつて、これが不可能であるということを一方的に断定するということは、これは越権のさたなんだ。そういうことは許されないということを、国の機関であるところの仲裁委員会の今井委員長が、明確に昨日ここで証言をして行つた従つて、国の機関同士の中で、そういうような相反する意見を述べてもらつては、われわれとしては非常に困るわけである。そこで私は大臣にお伺いをしたいことは、予算資金上不可能であるからこそ、補正に組まねばならぬが、現段階における国家財政の全体的規模から考えて、どのように組むべきであるかということをきめて行く例というぐあいに、国会審議を求めて来なければならぬ、議決を求めて来なければならぬ。それなのに、現在百六億というものを一方的にきめてしまつて、そうして、これだけしかない、こういうことを提示するということは、これはもう明らかに三十五条の権威を蹂躙するものであると思われるが、これに対してどういうお考えであるか。
  68. 石井光次郎

    石井国務大臣 これは私は、法律的のいろいろ議論は別にしまして、実際上においては、これを皆さんのところで判断していただくというには、政府がいろいろな国全体の振合いを考え、財源その他の問題ともにらみ合せまして、このくらいの裁定はそのままのむことが最も望ましいことでありますが、そういう振合い上、問題があれば、どういう点にあるかということを示して、皆さんのところへお出しするということが、私は実際上は望ましいのじやないかと思うのであります。それで皆さん方にこれを自由に論議していただく、そういうことで行きたいと思つております。
  69. 春日一幸

    ○春日委員 十二分に論議して、さらに財源の探索を行つて、そうして国会がさらにこれにプラス・アルフアという議決を行うならば、政府はこれに対して再補正を行うのもやむを得ない、こういう考え方の上に立つておるものと了承してさしつかえありませんか。
  70. 石井光次郎

    石井国務大臣 私どもはどういう結論が出て来るかわかりません。さつき申しましたように、どの場合には賛成とか、どの場合には不賛成とか――予算を変更されますのは、これは皆さんの力によることでありまして、政府といたしましては、ここらぐらいにしていただきたいという意思を表示しておるのであります。
  71. 春日一幸

    ○春日委員 それでは三十五条において、最終的に服従しなければならない、こういう規定がある。このことは、すなわち最高裁判所の判決と同じ権威を持つものだ。法律で最終的な行動を制約しております。そういう権威あるものに対して、その権威たるや八月実施ということになつております。これを政府は十一月実施という線を出して来ておるわけなんだが、このことは明らかに法律を蹂躙し、法律に違反した一つの行為であると思うが、これに対してどういうお考えであるか。
  72. 植田純一

    ○植田政府委員 この三十五条につきましては、先ほど来たびたびお話が出ましたように、予算上または資金上不可能な部分につきましては、最終的決定効力を持たないわけでございます。その意味合いにおきまして、もちろんこの裁定の精神は尊重しなければなりませんが、予算上また資金実施不可能である、かような見解に政府は立ちまして、十六条第二項によりまして国会の御審議をお願い申し上げておる次第でございます。
  73. 春日一幸

    ○春日委員 法律にいうところの予算資金上不可能ということは、二十七年度予算において、予算総則第十三条の中においては不可能なんだ、ところがそれが十一月実施ならば可能だ、こういう線はどこにもないわけである、どこにもそういう基準を出していいということは示してないと思う。だから、不可能ならば全部不可能であつて、十一月から出すなら出せるという案は、これは国会の権限をあなた方は蹂躙するということになる。すなわち仲裁委員会裁定は、それをそのまま原案として国会にこれを承認を求めて来るべきものであつて、十一月からならば可能だという線を政府が出すということは、これは許されないと思う。すなわち仲裁委員会裁定は、そのままこれを国会に取次いでもらうべき性質のものだということを、今井委員長も昨日明確に証言しておる、私はかように理解しております。
  74. 植田純一

    ○植田政府委員 十一月から実施したいといいますのは、政府の意向でございまして、この意向そのものにつきましても、予算と同時に御審議をお願い申し上げておる次第でございます。
  75. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 山花秀雄君。
  76. 山花秀雄

    ○山花委員 同僚委員の方から、たびたび質問がありましたが、ひとつ運輸大臣にお尋ねしたいことは、今度の仲裁委員会裁定をどうお考えになるか。非常に不当な裁定をしたものであるか、正当な裁定をしたものであるか、どうお考えになりますか。
  77. 石井光次郎

    石井国務大臣 これは私先ごろ、どちらかの本会議でお尋ねを受けたとき、返事をしましたように、基本給裁定は――基本給だけは数字は出ておりますが、基本給裁定は私はおおむね妥当だと思う。その実現はけつこうだという心持は私持つております。その通りに思つております。ただ期日が、ただいま申し上げましたように、十一月からということになりましたのは、さつきからいろいろ国鉄総裁からも申しましたように、財源の関係その他の振合い等の関係で、やむを得ず十一月からということにしていただきたいということであります。
  78. 山花秀雄

    ○山花委員 私が聞いているのは、八月からとか、十一月からとかいうような、そういう予算的措置、財源的措置に関連して聞いておるのではない。仲裁委員会裁定がいいか悪いか、大臣の心境を聞いておるのです。
  79. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま申し上げましたように、基本給に対しての裁定は、私は妥当だと思つております。そのほかの問題は団交にまかせるということでありますから、その線もそれでけつこうだと思います。
  80. 山花秀雄

    ○山花委員 基本給の、これは八月から実施すべしという裁定が出ておるのですが、これは大臣の心境としては妥当である、こうお答えになつたと理解して間違いございませんか。
  81. 石井光次郎

    石井国務大臣 でき得れば八月から実施したいということも、私としては思いますが、国の全体のいろいろな関係がありまして、また引合いに出してどうかと思いますが、公務員の今度の給料を上げる問題も、これは実施を六月からということになつているのが十一月からということに、やむを得ず国の財政上きまつたというようなこと等も勘案いたしまして、やむを得ず私も十一月でしんぼうしていただきたいということに賛成いたしておるのであります。
  82. 山花秀雄

    ○山花委員 仲裁委員会裁定は妥当であると考える――それは言うだけで裏づけを一つもやつてないと思う。たとえば八月実施を十一月から行いたいというようなことは、決して妥当と思つていない。私どもはそう理解するより以外にないと思うのであります。そこでお尋ねしたいことは、大臣は新しく大臣になられたから、前のいきさつはよく御存じないと思うのでありますが、国鉄は今度三回目の裁定である。専売も何回かの裁定が出ております。この前の裁定のときにも、予算資金上云云ということで、裁定をそのまま尊重していない結論を出しておるのであります。そのときに政府は、今後は必ず裁定を尊重いたします、こういう答弁を本会議ではつきりしておるのです。今後は必ず裁定を尊重いたします、こう言つていながら――内閣はかわつていないのです。ただ運輸大臣やあるいはその他の労働大臣や、所管大臣はかわつておるかもしれませんが、吉田内閣としてはかわつていないのであります。今後は必ず尊重いたしますということが、再びここでくつがえろうとしておるのです。こういう問題に関して、大臣はどういう心境を持つておられるか、御答弁を願いたいと思います。
  83. 石井光次郎

    石井国務大臣 まことに遺憾なことでありますが、国の財政、要するに国のふところぐあいから、やむを得ずそういうふうな結論に到達しておるわけであります。願わくは日本の財政がもう少しよくなりまして、こういう仲裁がことごとく気持よく実施され、あるいはそれ以上の状態になることを念願しておるのであります。まことに遺憾でございます。
  84. 山花秀雄

    ○山花委員 仏の顔も二度、三度ということがございます。財政上とか国全体の経済とか、いろいろ陳弁を努めておりますが、これはもう三度目でございまして、しかも明白に今度は必ず尊重するということを、内閣は言明されたのであります。ところがまた今度も、結論としては尊重しないという結論で押し通そうとしておられる。その理由は、国民の全体の経済の均衡を考える、こう言われる。これは私どもさよう了承できないのであります。これは一例でありますが、たとえば予算の面でも、予算委員会でいろいろ紛議をまいた、論争の種になりました、ごく少数の石炭資本財閥に対する利子引下げのごときは、私はこれは国民全体の経済の均衡をはかつてという大臣のただいまの説明は、これらの問題に関連してわれわれは了承することができません。特にこの問題は、まかり違えば国民の交通の動脈をも破壊されるような事態が予測されるのであります。そこでお尋ねしたいのは、この法律の第十七条、十八条に争議行為のことが出ておりますが、私どもは政府法律を守つていない、こう考えるのです。三十五条には、この最終決定に双方とも服さなければならないことになつている。それを服さないで、その理由を財源とか予算とか資金というところに求めている。私はこれはこじつけた理由だと考えております。政府みずから法律を守らずして、一般職員に法律を守れと強要するのは、不可解な政府の言動だと考えております。この点につきまして、大臣は一体どうお考えになつているか。
  85. 石井光次郎

    石井国務大臣 私はいろいろな説明を、ここで一般財政論とか国の状態から論議する気はないのでありますが、手近に申しまして、国有鉄道が今の状態では、この裁定通りにやれない。それには値上げをしなければならない。値上げをあまりたくさんやれば、これはまた国民生活に大きな影響を及ぼす。まわりまわつて同じようなところに帰つて来るようなものであります。できるだけ運賃の値上げを少くする。これはベース・アツプのためだけではもちろんないのでありますが、国有鉄道全体の経営上の問題として考えて、もう少し上げたいというのが国鉄の希望でありましたけれども、これは今申しましたような全体の国民生活上、上げるのを最低に置きたい、それで一割ということになつたのであります。そういうふうな線からも見ましてどうしても国有鉄道は、本年度だけにおきましても政府から相当大きな借入金をしなければ越して行けないというような状態であります。そういうふうな問題も勘案いたしまして、今のように決定したわけでございます。
  86. 山花秀雄

    ○山花委員 大臣は、われわれから見れば、るる陳弁これ努めておられるような態度がうかがわれるのですが、この問題に対しては、運輸当局は何らの誠意がない。先ほど同僚委員から、いろいろ鉄道当局の財政上の解剖について発言がございました。それに対する答弁につきましても、たとえば、カード下の問題に関するような問題についても、これに対する答弁が即刻できないというような点は、裁定問題について真剣にとつ組んでいない。この裁定問題に関連いたしますのは、四十数万人の国鉄で血みどろになつて献身的に働いている職員の大きな問題である。これをちつとも考えていない。そういう不誠意なことで、国鉄という大きな企業体が運営でぎるかどうかと、われわれはその責任を問いたいと思うのであります。問題になりますのは、われわれとしては、これは政府法律を破つていると考える。もしこの場合に、国鉄の職員が、十一月実施というようなことでは生活ができないということで、仕事に対する熱意を失い、あるいは興味を失う。そこで国鉄職員に与えられたる、一年間に通算して何日かの賜暇休暇であるとか、あるいはその他の関係で、もし大量に職員が休むというようなことが起きて、それによつて交通に支障を来したような場合に、この十七条、十八条の法律と、それらの問題に関連する解釈をひとつはつきり聞きたい。
  87. 植田純一

    ○植田政府委員 第十七条に「職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。」とございますが、これの解釈問題になろうかと存じます。もちろん社会通念上の解釈の問題になろうかと思いますので、生ずる事態によりまして、この問題は決せられる問題じやないか、かように存ずる次第でございます。
  88. 山花秀雄

    ○山花委員 生ずる事態によつてこの問題の解釈は成り立つということでありますが、私どもは、法律学者でございませんけれども、そういうような解釈は断じて成り立たないと思う。たとえば、おのおの持つている権利の行使によつて、かりにそれが集団的欠勤というような場合に生ずる事態は、交通の肺癌状態であります。そういう場合に、計画的あるいは意識的に行つた場合と、個人の自由意思によつてつた場合と、同一結果が出ても、私はただいま答弁されたような解釈は出て来ないと思います。計画的にやつた場合と、個々の意思によつてつた場合と、この問題についてどう解釈するか、もう一度お伺いいたします。
  89. 植田純一

    ○植田政府委員 十七条の純粋の法律上の適用解釈につきましては、私から申し上げるのは、適当ではないかと存じます。ただそういう法律解釈を離れまして、そういう事態のないように、私どもとしましては極力努力したい、かように考えております。
  90. 山花秀雄

    ○山花委員 大いに努力すると言われますけれども、その努力こそは、四十数万人の従業員に安堵を与えて仕事に励ませるために、やはり裁定の精神を尊重する以外に私はないと思う。ところが、その裁定を尊重しない態度に当局は出ておる。そういうような形で正常なる運輸行政ができるかどうか。できると考えたら、とんでもない間違いだと私は思う。私はいろいろ質問したい点がございますが、時間がもう限られておりますし、同僚議員も大臣に特に質問をなさる方がたくさんございますので、私は一応この程度で質問を終えておきます。
  91. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 山口丈太郎君。
  92. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 大臣にちよつと質問しますが、今までたくさん質問が出ておりますが、当局の方では、この補正予算の財源がない、財源がないという一点ばりだが、その財源がないという理由について、私どもははつきりとした説明は、まだ十分に納得の行くまでに聞いていない。この仲裁裁定によりますと、十分に財源をまかなうことができると断定をしておる。一体この裁定の精神と、そうして今運輸省で考えておる、運輸大臣答弁されたこととは、大きな食い違いがある。一体それについてどういう考えを持つておるのか、もう少し具体的にその理由を明確にしてもらいたい。
  93. 長崎惣之助

    長崎説明員 だんだん伺つてみますと、御承知かと思いますが、私の方の国鉄の財政の現状その他についての参考資料を差上げてないようでございます。これは追つて差上げますが、簡単に申し上げますと、今日まで、経営合理化については、いろいろ努力して参つたのでございます。たとえば、先ほどもお尋ねがございました増収対策というようなものにつきましても、努力はして参りましたが、何分にも外郭のいろいろな諸条件に支配されるものでありまして、積極的に大きな増収対策というようなことは、きわめて限られて参ります。ことに建造物の貸付等については貸付料の整理その他もございましたり、用地の貸付等にいたしましてもそういうことがございますが、漸次料金等は引上げて参りまして、昭和二十四年ごろにはこれらの収入が全部合せまして二十五億円程度でありました。それが昭和二十七年度には六十二億円というようになりまして、倍以上の増収を見て参つたのであります。そのほか人員の縮減ということについては、これはすでに皆さんよく御承知のことでありまして、運輸数量は貨物において二倍、お客さんにおいて三倍近い増加になつたにかかわらず……(「そんなことはこの裁定書に書いてある。」と呼ぶ者あり)そういうふうに努力して参りましたが、今後は工事の方について――裁定書に非常に詳しく書いてございますが、緊急を要する工事がたくさんあるというようなことで、思うように今度の裁定を自己資金でもつてまかなうということができません。やむを得ず――そのほかいろいろ工事費等についても、単価の引下げその他いろいろ努力しましたが、何分にも一方においては石炭費が上る。あるいは電力料金が上るというような関係でそれが相殺されまして、自己資金でまかなえるという部分が非常に少い。結局運賃の増収によつて、別にこの裁定だけに充てるわけではございませんが、やり繰りをして穴を埋めるというようなことでございます。そういうような次第で、どうにも財源としては、今日ことに二十七年度補正等につきましては、先ほど申し上げましたように、運賃増収だけではまかなえないので、三十億円の借金をする、そういうことになつております。
  94. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今運輸大臣答弁要求していたのであります。しからば、今言われる点では、出せないということだけを前提にした資料ということになるのだが、仲裁裁定をする場合においても、これはやはり公社の方で十分にその資料を提供されて、裁定責任をもつて出されておるものと思う。そうなりますと、あなたはどういう資料を仲裁裁定のために仲裁委員会に出されたか。資料がなくては、こういうものは出ないはずなんです。ところがはつきり出ておる。それをあなたの方で財源がなくてできないということになると、一体この裁定責任はだれが持つのですか。
  95. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の国鉄総裁答弁を聞いておりますと、われわれ委員が資料を持たずに十分知らないというようなことで、明日でも資料を出しますということを言つておられますが、少くとも八月に裁定が下つて、今日までの間に、一体運輸当局なり国鉄当局は、いかにして財源の捻出のために努力したかということは、この案件が提案されると同時に、付託されたこの委員会には、進んでその内容について出すべきだと私は考えます。それを出さないところに、当局に誠意がないと言われてもいたし方がないと思います。もつと端的に私が申し上げますならば、閣議決定がありますがために、国鉄当局は遠慮しておると私どもにらんでおる。もし完全なる企業体系であつて政府の干渉がなくしてやつておりますならば、もつとく財源があると私はにらんでおる。それを閣議決定政府との関係等があつて、いろいろな点で遠慮しておられると思いますが、こうした深刻な問題を引起しておりますところの裁定完全実施の内容につきましては、全部を満たされなくとも、たとい十億でも二十億でもこれだけの努力をして、企業の内部でひとつけり出します。そうして足らざるは何とか国会でも御審議つて、少しでも完全実施の方向にしてもらいたいということを、少くとも国鉄総裁としては誠意をもつてここで説明されてしかるべきだと私は考える。私はどうも運輸大臣なりあるいは大蔵省に対して、遠慮していろいろものを言つておられるのではないかというようににらんでおりますが、私はここでは、進んでそういう財源等についてはもつと内容を検討する、先ほどからいろいろ言われておりますところの、今日のいろいろな賃貸価格の上にありますところの、あるいは高架下、あるいは大阪でもその通りです。これは今度の補正予算の財源には間に合いません、しかし来年度以後には、この問題もこういうふうにして財源をつくります。しかしさしずめには間に合いませんから、それはこういうふうにして借入金でやるとか、こうこうしますということを言うべきであろうと考えます。あまり世帯が大き過ぎるから、そういうけちな高架下等の財源等については触れたくないというのか、あるいは当局の考え方かもしれませんが、今日の四十五万の従業員があれだけ苦しい状態に置かれて、なおかつストライキもやらずに、じゆんじゆんと頼んでおりますところのあの誠意をくまれますならば、そういうわずかな財源でも当局は捻出する。それが政府の忌謹に触れますならば、総裁は自分の職責をなげうつても努力するという気慨があつていいと思います。私たちはその点を聞きたいのです。ここでいろいろな形式的な質疑応答をしようと私は考えません。しかも今日もう時間的に見て、これを十分審議する時間がないのです。われわれは明日でも、あるいは月曜でも、この結論を出したい。出さなければ間に合わぬと思つておりますから、堀り下げて審議をしたいとは考えませんが、要は、何とかわれわれ努力して、少しでも財源を見出して、そうしてこれが完全に遂行できるように持つて行こうという上に立つて質問をしているのであります。ただあなた方をいじめようという質問ではないと考えますから、その点を一つ了とされて善処願いたいと考えます。
  96. 長崎惣之助

    長崎説明員 ごもつともなお話であります。私といたしましても、どんなこまかい財源につきましても、しらみつぶしに調べまして、われわれの同僚従業員諸君の福利あるいは給与の改善ということについては、できる限りの努力をいたすつもりでおりますし、今日までもいたして参つたつもりでございますが、はなはだ微力でありまして、遂に運賃値上げによらざるを得ない、しかも今年度は借入金にも仰がなければならぬということに相なつたのでございますが、今後といえども、決して少しもそういう大きな世帯だからこれはいい、あれはいいといつたらみんなだめになりますから、そんなことは考えておりません。しらみつぶしに調べまして、できるだけのことは私どももいたして行きたいと考えております。
  97. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今の国鉄総裁答弁で、多少誠意の点も認められぬでもありませんが、今までの答弁からいたしますと、私は初めて国会に来て、かような答弁しか得られないのかということで、非常に憤慨しておりました。運輸大臣においても、この裁定の問題について出し得る財源については、こういうふうにすれば出るということを明示しておるのでありますが、監督行政の立場からこの補正予算を出しておられる。この場合に、裁定を実行するにあたつて、なぜ補正予算にこれらの財源を十分に検討した上で、もう少し進んだ補正予算を組んで、そうしてわれわれにその賛否を問わないのか。一体どういう行政をし、監督をし、そしてあの結論を出したのか、その経緯について、もう一度説明願いたいと思います。
  98. 石井光次郎

    石井国務大臣 三箇月の八、九、十が裁定に沿わないわけであります。その費用等の点から見ますと、どうしても私どもの聞いたところでは、運賃値上げをせざるを得ぬ、その方向に持つて行かざるを得ぬような状態でございます。しかし、運賃を多く上げるということは、さつきから申し上げます通りの国の大きな国民生活に、これだけでない、そのほかの響きも大きくなつて来るおそれがありますので、それではかえつて国民生活全体の上におもしろくないということで、一割にとめたということなのであります。そういたしますと、さつきから国鉄総裁が申しますように、十一月からいたしましても、いろいろな計算をいたしますと、そのほかの収益等も多少あつたわけでありますが、一方にまた値上り等の問題もありまして、十分な財源を得られません。十一月からということにいたしましても、約三十億の借入れをしなければいけない。来年度になりますと、多少またほかの方面から収益も上げて、そのいろいろな方法を講じて、そろばんを合せて行くようにしたいというようなことで、十一月にしたわけであります。
  99. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 財源の主たる増収を運賃値上げ――口を開けば運賃値上げに求められているようでありますが、それはきわめて安易な考え方によるものだと思う。われわれも運賃値上げをただちに肯定して、そして裁定実施せよと言うているのではない。私は運賃値上げには反対をしたいと思うのです。そこで、ただちにそういう安易な考え方に立つて、財源の捻出、増収の方法をお考えにならなくとも、ここの勧告にも出しておりますように高架下用地であるとか、あるいは広告関係の使用料の問題であるとか、それに対する敷地の賃貸料の問題であるとか、あるいはまた死蔵品の販売にいたしましても、私どもはまだ数字的にどうということをそこまで調査はいたしておりませんけれども、もう少し合理的にこういつたものを運用をして増収をはかることは、私は可能だと思う。しかるに、そういう企業努力をしないで、従業員が定員数をだんだんと削減されて行つて、そうして自分の身を削つた犠牲によつてこの企業の実績を上げ、収入を増加して行く、こういうようなことは、実にもつてその経営能力を疑うものだと私は思うのです。私の知つている範囲においても、さらにこれは総裁にお尋ねしたいが、高架下の使用関係、これはどういうことになつているのか。実質使用者の負担は、賃貸料というものは直接国鉄との契約によつてなされているのか。あるいは弘済会が仲介しておるとか聞くのでありますが、しからばその弘済会との関係はどうなつておるのか、こういうことについて、十分説明をしてもらいたいと思う。それから腐朽品とか死蔵品として納められておる向きなども、規格外品として使用しない、また元の工場に払い下げたり、あるいは民間に払い下げたりもする。そういう場合に、ほとんど新品であつて、使つていない、そういうふうなものの取扱いについて、一体どういうことをしているのか、総裁にこれを明確にしてもらいたい。
  100. 長崎惣之助

    長崎説明員 御指摘の不用品の売却あるいは不用施設の売却というようなことにつきましては、十分これを考慮しております。当初の計画のほかに、さらに八億六千万円増加して、今度の予算を編成いたしております。そのほか修繕費の節約でありますとか、石炭の節約でありますとか、土地物品貸付料その他の値上げ等、いろいろなものをこまかく実は拾い上げておるのでございます。これらを前もつて御参考にお見せしなかつたことは、まことに遺憾でございますので、さつそくととのえまして、お目にかけるようにいたしたいと思います。
  101. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 石野久男君。
  102. 石野久男

    ○石野委員 大臣に対して二、三の問題をお聞きいたします。  運輸大臣は、今度の裁定につきましては、いろいろと御研究なさつおると思うのです。この裁定に関しては、昨日も今井仲裁委員長が参りまして、どうも当局において誠意に欠くるところがあるというような意味のことをしばしば言つておるのでありますが、運輸大臣はすでに同僚各位に対しては、誠意をもつてこれに当るということを言つておるようであります。  そこで私はまずお尋ねいたしますが、裁定委員会権威については、どのようにお考えになつておるかということを、まず一番最初にお聞きしておきます。
  103. 石井光次郎

    石井国務大臣 裁定委員会の構成も、政府が信頼をもつてお願いした方方でありますし、その裁定につきましても、敬意を表しておることはもちろんであります。従つて裁定にはできる限りこれに従うべきだという方針をもつて政府はこれに臨まなければならぬということも承知しておるわけでございます。
  104. 石野久男

    ○石野委員 そのような趣旨に基いて第一項の点は了とされる。但し、先ほど山村氏やその他の同僚議員に対する答弁によりますと、いろいろな都合から、八月に裁定になつておるものを、十一月にしたのだという話であります。しかし、この裁定書を見ますと、裁定委員会の方としては、この賃金は本来ならば本年四月に遡及さるべきものであるということが書かれておるのであります。ここで私はひとつこれは国鉄総裁にお聞きしたいのですけれども、総裁はあとでよろしいと思います。  運輸大臣にお聞きいたしますが、この仲裁委員会の、本年四月にさかのぼるべきであるというような裁定をしておる問題に対処して、これに対するいろいろな予算的措置をするにあたつては、できる限りそれに沿うような趣旨で予算の編成に当つたかどうか。この点をひとつお聞きしておきたい。
  105. 石井光次郎

    石井国務大臣 裁定の線に沿うてできる限りの努力をするということは、国鉄総裁というより私の立場が一番それに近いものでありますが、やるべきものだ思つております。いろいろと折衝をいたしたのでありますが、先ほどから幾たびか申し上げましたような理由によりまして、やむを得ず八月裁定を十一月ということに了承したわけであります。
  106. 石野久男

    ○石野委員 大臣は今の御答弁とあわせて、この裁定の中の四項に、特殊勤務手当の問題を説明して、こういうふうに書いております。「各職種別新本俸を基礎として、団体交渉によつて決定するを妥当と認め」――こういうふうに特殊勤務手当の問題については、裁定は言つておるのであります。従つてそのようなことも十分御承知であるかどうか、お聞きしておきます。
  107. 石井光次郎

    石井国務大臣 団交にまかせるということを了承しております。
  108. 石野久男

    ○石野委員 団交にまかせるということじやなくして、その特殊勤務手当は新しい賃金、その本俸を基礎として考えるべきだということを言つているが、それをはつきり承知しているかどうか。
  109. 植田純一

    ○植田政府委員 特殊勤務手当は職種別新本俸決定の後と書いてあることは事実であります。
  110. 石野久男

    ○石野委員 かようなことを十分承知の上で、この補正予算の中に組まれております百六億というものが、これらの内容とどういう関係になるかということについて、すでに大臣としては十分了知しておると思うのであります。この百六億の問題は、昨日来われわれが論議しておるように、国鉄の総裁が、もしこの百六億というものでわくを締められるとすると、労働組合諸君要求あるいは団交の幅というものは、全然なくなつて来るわけであります。ここにやはり今日の争議の一番大きなポイントがあり、盲点がここにあるのだ、こういうふうに思つておりますが、大臣はこの百六億という額については、団交の後にきまつて来る第二項、第三項、第四項等の問題との勘案において、どのように伸縮性を考えておるか、これをお聞かせ願いたい。
  111. 石井光次郎

    石井国務大臣 政府は新しい基本給を土台といたしまして、次の三項についてもここらが適当ではないか、ここらが基準と思われるという線で一応予算に組んでおります。しかし、これは団交にまつのでありまして、国鉄総裁と組合の方との話合いいかんによつて私も善処するものであるということを申し上げます。
  112. 石野久男

    ○石野委員 私は善処するつもりでやるということでは、ちよつと私の質問にはピントが合わないわけであります。この団交の結果として、これではとても足りないという場合、大臣は、そういう団交がきまつたときには、その幅をぐつと広める決意があるかどうか。これは非常に重大な問題でありますので、はつきりと明確に御答弁願いたいと思います。
  113. 石井光次郎

    石井国務大臣 それは実際に当つて見た後のことでなければ、ほかとの振合い毒はなかなかきまらないのであります。そのときは国会意思を尊重するような行動をとりたいと思つております。
  114. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来る八日午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十五分散会