運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-26 第15回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十六日(木曜日)     午前十一時四分開議  出席分科員   主査 橋本 龍伍君       太田 正孝君    岡本  茂君       北 れい吉君    中峠 國夫君       三和 精一君    山崎  巖君       井出一太郎君    古井 喜實君       石井 繁丸君    成田 知巳君       福田 赳夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         内閣官房長官 江口見登留君         人事院総裁   淺井  清君         総理府事務官         (大臣官房会計         課長)     三橋 信一君         国家地方警察本         部長官     齋藤  昇君         国家地方警察本         部警視長         (総務部会計課         長)      中原ただし君         行政管理庁次長 大野木克彦君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         保安庁経理局長 窪谷 直光君         保安庁装備局長 中村  卓君         法務事務官         (大臣官房経理         部長)     天野 武一君         検     事         (公安調査庁総         務部長)    關   之君  分科員外出席者         総理府事務官         (恩給局審査課         長)      城谷 千尋君     ――――――――――――― 二月二十五日  分科員三和精一辞任につき、その補欠として  北れい吉君が委員長指名分科員に選任され  た。 同月二十六日  分科員谷川昇辞任につき、その補欠として三  和精一君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員三和精一辞任につき、その補欠として  中峠國夫君が委員長指名分科員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済審議  庁を除く)及び法務省所管     ―――――――――――――
  2. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和二十八年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府経済審議庁を除く)及び法務省所管を一括して議題とし、昨日に引続き質疑を続行いたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。古井喜實君。
  3. 古井喜實

    古井委員 警察費の問題でお尋ねしたと思います。  昨日岡本委員からいろいろ質疑がありまして、これに対して政府側の御答弁を伺つたのでありますが、そのうちで一つ明瞭でない点にまず気づいたのでありますが、それは前々の問題でもありますが、今度の新しい政府案によする責任所在がまことにあいまいなような気がするのです。一体国責任を負うのか、府県という自治体責任を負うのか、責任所在がきわめて不明瞭である。これは岡本君もそういう意味で御質問なさつたようであります。こういう警察のごときものにおきましては、ことさら責任所在が明確であることが必要な問題だと思うのです。そこで政府のお考えによる警察制度においては、責任所在一体どこにあるかということをひとつまずもつてお伺いしたいと思います。
  4. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 近く提案されようとしておりまする警察制度改正におきましては、都道府県警察責任都道府県にあるわけでありますが、しかし国の治安確保という面及び警察行政における調整をはかるという限度においては、国及び府県にあるわけであります。後者はすなわち国が直接やるわけではありませんが、都道府県警察指揮監督するという限度において責任を負うのであります。指揮監督せられない面におきましては都道府県が全面的に責任を負う、こういう建前であります。
  5. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 古井君にお断りいたしますが、自治庁長官はもうすぐ参ります。それから法務大臣は本日参議院の本会議に入つているそうでありまして、一時ごろまでかかるそうでありますから、終り次第連絡をとつて行くということであります。午後の分になるかと思いますが、留保して御質問願います。
  6. 古井喜實

    古井委員 そういたしますと、今のお話では、主として府県というものが責任者である、国は指揮監督する限度において責任があるよう意味伺つたのでありますが、府県という自治体が今度の警察に対して責任が負えるし、また負い得る体系になつておるのでありましようか。どういうことで府県という自治体が今度の警察に対して責任が負えるか。警察長というものは国家公務員であつて中央本部長官任免するのであります。それからまた警察長の下の警察職員は、警察長任免権を持つておるのであります。どうして府県というものが責任が負えるかということがわからない、負えるはずがないと思う。これは何と言われても、これで府県という自治体責任を負えと言われたのでは、もうりくつにも何もならぬと私は思うのです。国が負うのだとおつしやるならば、これはむしろ明らかだと思うのです。府県責任者だとおつしやるならば、もう少し進んでお伺いしたいことがあります。
  7. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほど申しました国が指揮監督する限度において負う責任でありますが、その範囲法律明記をすることにいたしております。それ以外におきましては、あるいは指揮監督を受けながらやる都道府県警察運営は、これは府県責任だと私は考えるのであります。その負い方は、府県公安委員会が全面的にその警察を管理をするのでりますが、公安委員会は、知事府県会同意を得て任命をする三名の公安委員、それから副知事及び府県会において互選をする府県会議員一名をもつて構成をいたすのであります。ただいま人事権の点を仰せられましたが、この警察長任免中央がいたしますけれども、しかしこれの罷免あるいは懲戒勧告という権限もこの府県公安委員に与えているのであります。従いまして運営について、府県公安委員考えるところと異なつ警察運営を、その警察長――警察本部長と申しますか、これがいたしますならば、それについての罷免なりあるいは懲戒勧告中央に向つてすることができるようにいたしておるのであります。また費用負担も原則として都道府県支弁をするわけでありますから、府県予算権を通じてもその責任の正しき作用がなし得ると考えておるのであります。
  8. 古井喜實

    古井委員 今府県責任主体であるということの理由として、府県公安委員会委員任免については、知事府県会同意を得て選ぶ、公安委員任免について関与しているという点が一点と、それから公安委員会というものが警察長罷免について意見を申し出して来るということと、それから経費をある府県に負わせているということもあるので、これで府県責任主体であるというふうにおつしやるように大体了解したのであります。しかしたつたそれだけのことで府県責任を負えましようか。それで府県知事が負うということに一体なりましようか。府県会責任を負うということになりましようか。府県という自治体がこれで責任を負うことができましようか。わずかに公安委員任免についてそこにある権限がある、また任免権は持たぬけれども、警察長考課について意見が述べられる、経費を持たされる、これで一体府県責任を負えるという体系になるだろうか。これでもつて府県責任を負えというなら、私は実に乱暴きわまることだと思うのであります。一方国の方はどれだけ関与しておるか、こういうことの半面を考えてみますと、国の方はすでに警察長任免権を持つておるのであります。国家公務員というれつきとした国の職員身分を持たしておる。任免権を持つておる。その警察長府県における中心者であるということは、これはもう明瞭な事実である。それで多少その考課について意見を述べるという程度のものと、任免権を持つということと一体どつちがウエートが重いか。また経費負担する、負担させられておつて責任を負えというりくつにはとうていならない。従来の国警の状況を見ましても、ここにおいでになる斎藤長官自身地方国警に対しては職務上の指揮監督権は何もないはずです。ただ身分についての権限をお持ちになるだけであります。県の隊長に対しての権限はお持ちにならぬはずであつて管区本部長任免権については国警本部長官任免権を持つており、府県隊長管区本部長任免権を持つている。間接であります。あと職務上のことについては何の指揮監督権もないはずであります。それにもかかわらず負その人事権を持つているというこの一点だけが急所であつて、全国の各府県国警国警本部長官の意のままに動いているではありませんか。これが現実であります。その筋は、今度の新しい案においてはだれが持つかといえば、国務大臣をもつて充てるところの本部長官隊長任免権を持つている。府県公安委員会考課について意見は述べられるかもしれぬけれども、これは従わなければならぬという拘束力一つもない。首つ玉を握つている国家公務員と、その下の警察職員任免権をこれがまた持つている。一体どつちがこの府県警察を動かす力が強いか、どつちが中心であるかということは、私をして言わしむれば明瞭だと思います。これで府県責任を負わされてはたまつたものではない、また負い得るはずのものではないと思うのであります。府県がほんとうに責任を負うというのなら、負える形になさつたらどうか。府県警察に対する責任を負わしめようというお考えであるならば、一体なぜ府県公安委員会警察長任免権を与えないのか。これでは負いようがないではありませんか。ただ言葉だけで府県責任主体であるとおつしやつてもこれは通りませんよ。むしろ国責任主体だとおつしやつた方が通りがいいと私は思うのです。ですから、今の案では国が責任者であると思う。府県責任の負いようがない。府県に負わしたいというお考えならば、この案はまるで意図とは違つた案になつている。そういうことならば、府県責任主体にする体系になさつたらどうですか。ただ言葉で負うのだとおつしやつても、どうしてもこれは負いようがないと思うのです。それならばどつちが負うかわからないということになるのか知らぬが、どつちが負うかわからないというようなことでは、これはもう警察はあぶない。だから責任所在を明確にしておかなければならぬと思う。私は、ただ議論のための議論をするのではない。こういう警察はいけないと思うのです。責任所在をはつきりなさつたらどうか。これでなおかつ府県責任を負うというのならば、これは絶対に負えないと思う。ここは、国の方の統制支配力府県統制支配力とでどつちが強いかということは、ここにおいでになる委員の方々もこの案を見たらお疑いになる余地はないと思うのであります。一体それでもなおかつ府県責任者であるというふうにお考えになるのか。あえてそうおつしやるならば、私は、事柄をもつと率直に判断しようということを言いつつ質問を重ねなければならぬと思いますが、どういうことでありましようか、お答えをお願いしたいと思います。
  9. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほども申しますように、国の治安確保の面におきましては、これは国が責任をとるという建前になつておるのであります。法律で定めるその他の警察行政のいわゆる調整と申しますか、そういう面においてもさようでありますが、そうでない点におきましては、この都道府県警察責任所在であるという考え方に立つておるのであります。それでただいま仰せになりました警察長任免権自身で持たないで、はたして責任が完全に負えるかどうかという点は、まつた仰せ通りであります。さきにも申しますように、警察の仕事は国家的な性格を持つた面と地方的な性格を持つた面と両方あるわけでありますから、前者につきましては、これはどうしても国が責任をとれる体制にしなければならない。そうかといつて地方的なものについてまで国があまりに干渉するということは、これは実際上おもしろくないし、また警察地方的な任務遂行という面と、それから住民の協力という面から考えましても、よくありませんので、これらの後者の面におきましては、府県責任の単位と考えるのが適当ではなかろうかと考えるのであります。従いまして、府県において行われる警察行政におきましては、国から法律で定められた指揮監督をせられる範囲以外は、これは府県責任である、かよう考えざるを得ないと思うのであります。警察行政自身に持つております両方性格から、ただいまおつしやいましたような点が出て来ると思うのであります。国がはたして責任を負うといたしまして、この制度にそういう解釈をとるということにいたしましても、一面から申しますならば、都道府県費用を出さなければどうするのか、あるいは公安委員会中央指揮監督に服さない場合にどうするのか、その点はやはり同じように完全に国が責任を負いきれるというわけではないのでありまして、どの程度両方の目的を達するか、そこは両方を重言ながら国の方もまあくこれで責任がとれる、府県の方もこれで責任――責任といいますか、警察行政についての必要な自治体的性格を持たせる、そういう両者をここで折衷をするということは、どうしてもやむを得ない次第だと私は考えるのであります。
  10. 古井喜實

    古井委員 昔の警察国家事務であるというように明確に言われておりました。しかしその当時でも、自治体というか、地方利害関係しないとは、だれも言わない。国家事務であつた当時でも地方利害には関係を持つている。そういうことはたくさんあるのであつて、さればこそ昔の国家警察であつた時代でも、経費府県費支弁ということになつてつた。これはそういうことは国家事務であるという性格と合わぬものでは少しもないのであります。経費を持たしたらある程度関与するところがあるからといつて国家事務である、国家責任であるということを否認する理由にはならない。これは昔の警察がその通りであつた人事の問題について、文部大臣教育職員国家公務員として人事権を持つ、これによつて国家責任が明瞭になつて来るということを言つておられるのである。教育というものに対する国家責任を明瞭にするために、国家公務員にして任免権を持ちたいということを言つておられる。人事権を持つならば国家責任を負えるというのが教育職員法の今度の案の趣旨である。まことに私は矛盾をしていると思う。人事権を持つということが中心だというのが、義務教育国庫負担のあの問題について、ことさらに国家公務員にあの職員をした理由であるのである。つまり人事ということを中心にして考え義務教育の方は、政府はああいう案をおつくりになつておる。こつちの方人事は国の方が持つけれども、しかしながら国は責任を負えないのだ。これは私は明らかに政策の矛盾であると思うのであります。この点は小さい問題だとは思いません。まさにまつ正面からぶつかつている大きな矛盾だと思うのであります。のみならず、ほとんど人事できまると私は思いますけれども、指揮監督権が限局されているということも言葉の上の問題であつて、われわれに示された要綱においてはこういうことが書いてあります。中央の「警察庁の権限として予定するもの概ね左の如し。一、国の利害に係り、又は国内全般関係若しくは影響ある事項」その次に、「その他治安維持上必要なる事項に関すること。」とある。これは何の限局がありますか、無制限な指揮監督権であります。私は形式上法律上の指揮監督権がなくても、人事権がすでにあります以上は、指揮監督権は万能だと思うのであります。それは今日の国警の現状から見てそう思います。いわんや今度の案においては、必要なる事項に関しては何でも指揮ができるという、こういう監督権が法令の上で与えられているのである。ほとんど全面的に指揮監督権を持つている。身分権のほかに職務上の指揮監督権を持つている。こうなつておれば国が責任を負い得ることは当然であるし、負わなければならぬと私は思う。のみならずある程度のことをもし地方にまかしているからという点があるというならば、それをまかしたのは国である。国がさしつかえないと思つてまかしたのである。自分でこれだけはまかしても責任が負えるからまかしておるのである。そうとするならば、この警察に対する責任は国であるということは、私はもう議論余地はないと思うのであります。これはどうして、こういうふうに国が大きな関与をし、しかも責任は国にはなくて府県にあるのだという理由一体出て来ましようか。私が今指摘しました点にもかかわらず、なおかつそうだとおつしやるならばなおもう少し議論も進めてみたいし、なお責任のある大臣に御出席願つてこの点は糾明しなければならぬ。実に根本に触れる大きな問題だと私は思うのであります。いかがなものでございましようか。
  11. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほども申し上げますように、国の治安確保という面におきましては、政府責任を十分果せるようにしたいというのが今度の改正法一つの大きな理由でありますから、その意味におきまして、国の治安確保という面におきましては国が責任をとる、またとり得るよう立法の内容にいたしたい、かよう考えておるのであります。しかし警察万般事務の中には、治安確保を広く読めば、全部が全部ということに相なるかもしれないというお話でございますが、これにはおのずから限度があるのであります。法律におきましても、またこれを十分限定をいたしたいと考えておるのであります。交通の整理であるとかあるいは普通の犯罪の予防とか、また犯罪の捜査であるとか、そういうよう事柄につきましては、これは地方にまかせてしかるべきである。まかせるという意味は、これは地方事務と解してもさしつかえない。かような立て方で立法いたしておるのであります。学者がこの法律を読まれて、これは一体どういうふうに解すべきかという、これはいろいろ議論はありましよう。これは府県事務ではない、あるいは責任府県になくて、これは全部国にあるのだ、かように読まれる、かもしれませんが、われわれ立法趣旨といたしましては、治安確保の面におきましては、これは国が責任をとる、それ以外の点においては府県責任をとる、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  12. 古井喜實

    古井委員 私は学者がこれをどういう性質のものと解釈するかということは、一向関知するところではないので、どつちでもよろしい。問題は責任がどこにあるかということを論じておるのであります。そこで今の話によると、国の治安確保という面においては国が責任を負うのだ、そうでない治安の問題については府県が負うのだというふうに、だんだん話が動いて来たように思います。つまり当初の話では、大体全面的に府県が負うのだ、こういう意味合いに伺つておりましたけれども、今度は国の治安確保という面においては国が負うのだ、つまり反面からいえば府県が負わないのだ、交通取締りとか、地方的な普通の犯罪とかいうことについては府県が負うのだというふうに、責任は二者にあるという結論になつて来たのであります。ある面においては府県が負う、ある面においては国が負う、こういうふうに両分して来ました。そこでこの二つ責任を負うという体系がいいかということを私は次に論じなければなりませんが、その前に一体二つ区分ができるものであろうかどうか、たとえば帝都において政界、実業界その他の方面の要人が殺されてしまつた、これは国全体の治安としても大きな問題であるかもしれない、そしてそれが警察の失態であつたというようなとき、これは一体どつちが負うのか。府県が負うのか、国が責任を負う面があるのか、それほど明瞭に地方的な警察の問題か、国全体の治安の問題であるかということは、区分がつくものではないと私は思います。そういうことになるとどつちが責任者かわからぬ。つまり責任者があいまいになつてしまつて、われわれは国会政府責任を問うていいのか、問うことができないのかという問題になつて来る。これは自治体範囲でありますといつて逃げられるのか、あるいは国が責任を負うべき治安の問題であつたというので、ここで論ずることができるのか、われわれ自身国会における審議権にも関係をして来るのであります。のみならず義務教育費国庫負担のあの法案の提案説明で、文部大臣究極責任を国が負うのだ、それが必要だから国家公務員にしたのだということでありました。つまりある範囲のことは地方にまかせておいても、究極責任は国が負うのだという点を貫きたいということで国家公務員という体系をとつて行く、こういうことであつた。ある範囲のことをかりに警察法府県にまかせたのである、国がまかせたのである。究極責任は国にあるのじやありませんか。まかしてもさしつかえないからまかしたということになつて究極責任は国にあるということにならぬでありましようか。そういたしますと、今のところまでは、一部分地方に、一部分は国ということになりましたけれども、究極において全面的に国が責任を負うべきものである。それならば筋が通る、りつぱに説明もつく、さもなければ説明がつかぬと思いますけれども、どうでありましよう
  13. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 責任二つにわかれたというように私の説明がかわつて来たとおつしやいますが、そうではありませんので、国の治安確保の面におきましては、もちろん国は責任をもつて指揮監督をいたしますが、その指揮監督を受けてやる範囲内において府県はやはり責任を持つのであります。府県は全然責任がないというのではありません。事項によつてこれが国、これが府県というわけではないと思うのであります。ただいま例をあげてお示しになられました国の治安確保という面、それから法律で定められる警察行政調整など、法律明記をいたしまする事項につきましては、これは国が責任をもつていたすのでありますから、国会その他においても政府責任を十分追究されることができると思うのであります。この法律に定められている以外のことにつきましては、これは府県責任で――もちろんこれを国会で論議せられることは当然のことだと思いますけれども、私はその責任は一応府県だと考えておるのであります。法律府県責任ということにきめられました以上は、これは法律で国の事務府県に委任したのであるか、あるいは本来府県がそういう責任があるのを法律において明らかにしたものであるか、この解釈は私は非常にむずかしいと存じますが、先ほども申しますように、正確にはむしろ自治体あるいは地方責任をもつてやる当然の部分が存在すると、かよう考えます。従いまして、先ほど申しますように、国の責任とせられた以外のものは府県責任である、かよう解釈をしてよろしいのではなかろうかと思つておるものであります。
  14. 古井喜實

    古井委員 そこで国が責任を負う分野と、府県責任を負う分野二つにわかれておるという意味ではなくて、一つ事柄について、府県もある面では責任を負うし、ある面では国も負うのだ、こういうふうに説明を伺つて来たように思うのであります。そういたしますと、どの事柄についてもある面では国がすべて責任を負うということにならざるを得ぬではございますまいか。つまり府県も負うかもしれぬが、国はすべての警察について責任を負うのだ、こういうことにならざるを得ぬし、また至当だと思うのであります。そこで府県の方においては、事実だれの責任を追究しようにも追究し得る相手がないのであります。府県の今度の機構において、一体だれをだれが責任を追究できるのでありましようか。知事責任を追究することもできない、まただれがこれを追究しようもない、また府県会責任を追究しようもない、また府県会責任を追究する相手もおらぬのであります。結局これは国会において責任を追究する以外に私は責任を追究し得るものもないのだと思う。かつまたその責任を追究し得る範囲、これも無制限であると私は思う。さもなければ責任を追究しようのない部分が残つてしまうということになると思うのであります。そこで今お伺いしたところでだんだん明らかになつて来たように思うのでありますけれども、大体分野がわかれておるのではなくて、どの事柄についても両面あつて、一方の面においては国が責任を負うのだという御説明ようにも伺つたのでありますけれども、それでよろしゆうございましようか、どうでありましようか。
  15. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほども申しますように、今度法律で定めます警察長の任務、この範囲内におきましては私は国が責任を持つ、持てる、こういう体制に仕組んでおるのであります。しからばその範囲内において府県は全然無責任かというと、そうではなくて、その国の指揮監督下において警察を維持運営をして行くという責任はやはり府県にもあると思つております。
  16. 古井喜實

    古井委員 大体さつき私が了解したように、ほぼ近いところのお考えように伺つて来ましたが、もうちよつとはつきりしておきたいと思うのです。そこで警察長が非常に職務上の大失態をやつた。どんなことであるにせよ警察職務上の大失態があつた。このときはどういう事柄にかかわらず、この警察長を任命した国が責任を負わなければならぬと思いますが、どうでしようか。
  17. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警察長任免につきましては、やはり任免権者が責任を負わなければならぬと思います。しかしその任免関係なく、府県経費のこと、あるいは公安委員の管理の方針に従つてつたということであるならば、それはその方針を示した公安委員会責任を負わなければならぬ、かように存じます。
  18. 古井喜實

    古井委員 そうしますと、公安委員責任を負うということはそれでいいとしまして、国が責任があるのかないのか。また国はこれに対してそういう警察長を任命した。また警察長の失態があつたということに対して、警察長に対してはどんな事柄が原因であるにせよ身分上の懲戒を加える。またこれに対して、そういう不適当なる警察長を任命したという人事のつながりにおいても国が責任を負う、こういうことになつてしまう。府県公安委員会が何ぼ責任を負いましても、国の責任を解除される理由にはならない。国も負わなければならぬ。そうすれば国は全面的に責任を負わなければならぬようになると思うのでありますけれども、どうでしようか。国の責任を明確にしておかなければならぬのであります。
  19. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 失態をしたその内容でございますが、たとえば国の治安確保という面において非常な大失態だつたということならば、これは任免権者である資格においてのみならず、国の治安確保の責に任ずるという意味から、国に責任を追究しなければならぬと思います。しかしながらたとえば交通整理のやり方において、公安委員はこういう方針で交通整理をやろうとする。ところが県民から見てそれは非常な失態なやり方だと思うというような場合には、国は責任がないし、また懲戒の対象にもならない。従つて人事権という面からも責任はないと考えております。
  20. 古井喜實

    古井委員 県の公安委員会が関与した範囲においては、県の公安委員会責任をとるということはいいのでありますが、警察長職務範囲に含まれる事柄について失態があつたというときには、いやしくもこの警察長職務範囲内であることならば、全面的にこれの身分上の権限を持つている国が責任を負うのは当然であると思うのでありますが、少しそこのところがあいまいになつているように思いますが、どうでしようか。
  21. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 その職務の失態が規律違反であるというような場合には、これは人事に伴うものとして人事権者が責任を負わなければならぬ。しかしながら規律違反ではなくて職務のやり方が適当を欠いたという際には、これは第一次的に、先ほど申しました国の治安確保あるいは警察行政における調整という法で定めた範囲外のものでありますならば、府県公安委員の管理の責任というものが追究されると存じます。しかしその管理に十分従つていないという場合には、府県公安委員罷免なりあるいは懲戒等の勧告をするというその責任はやはり府県にある、かよう考えます。
  22. 古井喜實

    古井委員 たとえば交通警察上の問題について、違法なり警察権の濫用を警察長が命令してやらせた、こういうことがあつたといたします。そういう場合に警察長身分にも及ばなければならぬということが起り得るのであります。そのときには身分上の権利は中央だけにしかないから考課の具状をするのである。考課の具状を県の公安委員会がするということは、中央責任があるから考課の具状をやるのであります。そうとすればいかなる職務であろうが考課の具状はできるはずであると思いますし、また具状させるということは任免権者が身分上の処置をとる、責任をとるのだ、こういうことにならざるを得ないように思います。府県公安委員会としては、そういう場合でもどんなひどいことがあつても、身分について自分自身ではどうしようもない。具状するだけであります。具状しろという以上は任免権者が責任をとる問題ではありますまいか、どうもそうならざるを得ないと思いますけれども、どうでありましようか。
  23. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほども申しまするように、身分上処置をしなければならない、懲戒をしなければならないという事案につきましては、これは身分権を持つておるものがその身分権に伴う責任として処置をしなければならないことは当然だと思います。
  24. 古井喜實

    古井委員 それで大分明らかになつて来ましたが、そうするといかなる警察分野のことであろうが、私はこの分野によつて区分ができないと思うものでありますけれども、警察長職務権限になつている範囲内のことについては、失態があれば窮極において身分権を持つ国が責任を負うのだ、こういうことに結論がなつて来ます。そういたしますればこれは全面的に国が、中央が、警察に対して責任を負わざるを得ないことになると私は思うのであります。のみならずさつき申しましたように、指揮監督権においても、限界があるというのは名のみであつて、限界がない、こうといたしますと、警察に対する責任中央に全面的にあるということは、これは疑いのない問題になつて来たのじやないかと思う。同時に府県公安委員会もある範囲において責任を負うということはなるほどあり得るかもしらぬ、あつてもよろしい、あるからといつて国の責任を否認する理由にはならない。そこで私は府県における警察については、窮極において国が全面的に責任を負うのだという結論になつてしまつたのであります。そう考えてよろしいのでありましようかどうでありましようか、明確にいたしておきたいと思います。
  25. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は全面的に責任を負うということにはならないと思います。法律で定められたその範囲においては責任を負う、その範囲とは何か。先ほど仰せになりましたいわゆる身分の点は警察長身分の点、それから法律で定められた治安確保警察行政調整の面において責任を負う。それ以外は府県にまかされたものと解釈しております。
  26. 古井喜實

    古井委員 少し逆もどりになりましたが、そうすると責任を負わぬ範囲があるのでありましようか。要するにどういう分野のことであつても窮極において中央責任を負わなければならぬ筋道になつて来たように思つてつたのでありますけれども、負わぬ範囲があるのでありましようか。私は少くとも身分権を通して全面的に責任を負うことは免れぬと思うのでありますが、とにかく責任を負うことができぬ、また負わなくてもいいという範囲があるのでありますか。一体なぜ国が責任を負つたら悪いのでありますか、根本に立ち返つてこれだけの体系を立てておつて国が責任を負えぬはずはないし、また堂々と負うと言つたらいいじやありませんか。どうしてこれをことさらに責任を負えないのだということを言わなければならないのか、負うて何が悪いのでありますか、そう逃げる必要もないし、またこれだけの構えをしたら十分負い得るのじやありませんか。なぜこれで負えないのか、またその負えない範囲があるならばどこであるのか、どういう分野か、もう一ぺん伺いたい。
  27. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 国が全面的に責任を負うという立て方になりますと、警察行政に属するすべてのことについて、こまかいことまで国が指揮をし監督をするという行き方に自然になつて来る、これは私は望ましくないと思うのであります。やはりできるだけ地方の実情に応じて処理してしかるべき仕事は、むしろ国が関与しないという建前をとる方が望ましいと思うのであります。さよう考え方から今度の警察法立法をいたしたい、かよう考えております。
  28. 北昤吉

    ○北委員 ちよつと関連質問をします。実は私もよく戦時中に官吏の涜職事件で弾劾したことがある。岸商工大臣のとき、名前を言つてお気の毒ですが、今自由党の小金君が燃料庁長官のときに、その前の局長の時代の涜職事件をつかまえて、大臣責任を追究して、遂に善処しますという明言を得た。そのときに私はこういう感じを持つたのです。課長あたりの涜職事件の責任は直属長官の局長が、あるいは次官あたり、あるいは長官あたりの涜職事件は大臣責任を負う。これが私は政治常識であると思う。たとえば濱口さんが殺された事件で丸山鶴吉警視総監が責任を負つてやめたときに、内務大臣も何もやめなかつた。それから震災後のいわゆる震災内閣で山本権兵衛内閣、これは強力な内閣でありました。そのときに虎の門事件が起きた、警保局長の岡田忠彦君がただちに辞職をし、内閣もあの地震後の大切なときであつても、当時は今より皇室というものが比重が非常に高かつた。あの内閣はりつぱな内閣だ。私は、私の一生のうちでもあのくらいいい内閣はなかつたと思つておる。それが辞職しておる。そこで今の警察責任問題でありますが、実は国家公務員法あたりで責任範囲を規定するとか、それができなければ政治常識でやらなければだめで、一々地方警察官の失態に警察長官が責任を負うということは無理な話であつて、これは規則でこまかく規定するか、あるいはそれができなければ政治常識でやらなければならぬ。元来憲法そのものにも非常に不明瞭なところがありまして、私は憲法審議のときに指摘したのです。内閣事項において官吏の事務を処理するということで、官吏の任免という項を落しておるのです。これを鋭く追究したところあわてた。まあ、ありはしません。官吏の任免主体がなくて、認証だけがあります。普通の官吏の任免主体がない。そういうわけで憲法上官吏の責任問題は非常に不明瞭になつておる、けれども直属長官責任を負うというのは私の常識でありますが、そうでなくて、今古井委員から質問がありましたが、これは具体的にはなかなかきまりにくい問題で、ある程度まで国家公務員法で規定ができる、それ以外はその時の政治情勢によつて、政治上の責任で行く。地震内閣のときは、内閣がやつた。濱口さんが殺されたときは、遂に若槻さんがあとを追うて、警視総監がやめただけになつておる。これは細目にわたつて規定しにくい。今の齋藤長官お話を聞いてもぐるぐるまわりではつきりしないのです。私はどちらを助けるというのじやありませんが、これは政治上の問題じやないかと思うのですが、いかがでしようか、ちよつとお伺いします。
  29. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいま北委員のおつしやいました点は、まことにその通りであります。下級官吏の責任を上がどこまで負うか、本人自身責任ではなくて、下級官吏のしでかした失態の責任をどこまで負うか、これは政治常識とそれから旧来の慣例と両方にらみ合せて自然に決定せらるべきものと考えております。
  30. 古井喜實

    古井委員 今北委員から従来の御経験から適切な御質問がありましたが、政治上責任を問うか問わぬかということは十分考えなければならぬ問題でありますけれども問い得る法律上の建前でない以上は、ただ政治上の理由だけで責任を問うということはできない。問い得ることになつておるから、政治上必要があれば問い得るのであります。そこで一体問い得る建前になつておるか、おらぬかということが今の問題なのであります。こまかいところまで一々さしずはできぬ、これはもつともであります。またこまかいところまで責任を負う必要がないということは事実もつともであります。それを一々さしずをしなければならぬということを言つておるのでもなければ、こまかいところまで責任を負えということを言つておるのでもないのであります。筋がどうなつておるかということを言つておるのであります。往時の明瞭に国家警察だといわれた当時でも一々こまかいことをさしずしておつたわけではありません。やはり地方の官庁には地方の官庁の権限があり、その権限地方官庁にまかしておつて、やらしておつた。しかしながら身分上の監督権を持ち、あるいは職務上の監督権を持つがゆえに中央責任を負うのであります。これは同じでありまして、さればといつて責任を負わなければならぬ立場にあるからといつて、全部さしずせよという意味でも、全部責任を負えという意味でもないのであります。負わなければならぬ建前かどうかということなのであります。ことに文部大臣は、義務教育の問題について、任免権は市町村の委員会に委任する。つまり文部大臣は一々はやらないけれども、しかし責任はこれで負えるのだということを言つておられるのであります。それだから国家公務員にしておけば、委任をして、具体的には市町村の教育委員自身人事はやつても、これで責任は負えるのだと言つておる。こまかいことまで一々関与しなくても、責任は負えると言つておる、またそうであるべきであります。そこでそれは同じ筋のことであつて、不明瞭にされる必要はない。中央責任を負い得るのだ、また負わなければならぬのだとおつしやつておいても何のさしつかえもない、至当なことだと思うのでありますけれども、少しその辺ぼやつと残つておるところが遺憾でありますので、明確にしておきたいと思うのであります。
  31. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この点は、私は立法建前としては非常に大事なことだと考えておるのであります。と申しますのは、国が警察の一切の責任を負うのだ、警察長官が一切の責任を負うのだという立て方にいたしておきますと、今おつしやいますように、地方に委任もできます。しかし委任はいつでも取上げられます。まかしたことをどこまでもこまかく干渉ができる。そういう建前にいたしますことは、不必要にいわゆる警察地方的な色彩、自治的な色彩というものを侵害する。そこで国がどうしてもやらなければならぬ点だけを明記して、あとは地方にまかす、こういう立て方にした方がむしろよろしいのではないか。そういう立て方であつても、人事権を持つておると、ともすると干渉がましくなるおそれが多分にあります。しかしながら公安委員会がそういうことは国の干渉すべきことではないじやないか、そういうことはわれわれは聞けないと言い得るだけの立て方にしておくことが私は肝要でなかろうか、私というよりも、政府かさよう考えておるのであります。
  32. 古井喜實

    古井委員 この問題ばかりやつておるわけに行きませんが、いま少しというところでありますので、もうちよつと押しておきたいと思いますが、今の委任の問題につきましても、義務教育の国庫負担の方の問題では、市町村の教育委員会が法律の上で任免権を委任されておるのであります。文部大臣がかつてに委任を巻き上げるというようなことはできることではない。法律で委任しておる。それでもなおかつ文部大臣は、これで国が責任を負い得る体制ができたということをおつしやつておられる。これは明らかにそうおつしやつておられます。提案理由説明をごらんになつてもそうなつておる。同じことじやないかと思う。ところがこつちに限つて府県に委任した部分があるから責任が負えないというのでは、明瞭に矛盾になつて来ると思うのであります。そうとすれば、反面から言つて、これだけの権限を持つておれば、中央政府考えでどんな警察の干渉もできると私は思う。本部長官さえ腹をきめてかかれば、警察権の濫用によつて思い切つた干渉もできると思う。それはできるけれども、責任は負わぬということになつてはたいへんであります。またそんなはずのものではないと思う。今この政府考えられておる案によりますと、私はほとんど万能だと思う。選挙干渉だつて十分できる。けれども責任を負わぬということでは、まるで片手落ちでもあるし、筋が通らぬと思うのであります。御指摘になつた点は、今の義務教育のあの法の体制と比較してごらんになれば、私は明瞭だと思う。文部大臣はあれで十分責任を負う、国の責任を明確にするためにこういうふうにやるのだと言つて、あの法律を出し、法律の上ではつきり市町村の委員会に人事権を持たせておる。それさえも責任を負うと言つておる。いわんや人事権をこつちが持つてしまつておるのであります。これは大筋の論、建前の論としてそう回避される必要はない。それでいいんだとおつしやつても何もさしつかえないし、あれやこれやおつしやるけれども、何となしにあいまいで十分な説明にならぬように思うのでありますけれども、どうでありましようか、明確にしておきたいと思うのです。
  33. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 このたびの警察法改正では、国が治安確保の面において責任を負うことにしたい、それ以外の点は府県にまかせたいというのが立法趣旨であります。ただいま人事権を持つておればどんな干渉でもできると言われましたが、それはできるかもしれません。それは法律を犯しておるのであります。法律を犯すという考えがあれば何でもできると考えます。しかし人事権を持つておると法律を犯しやすいということはあり得ると思います。犯しやすくても、犯したことは犯したことになる。しかし法律を犯しやすくしないようにというので一国家公安監理会という監視機関を特に設けて、そして法律を犯さないように目付の役をやらせる。これがなければ、ただいまおつしやいますように、非常に干渉しやすくなるだろう、法律でそう書いて置いてもそれは単に書いてあるというだけで、事実守られにくいという御説はごもつともと思いますが、国家公安監理会というものが、監視の職責を十分果し得るようになつておりますから、その御心配は私はなかろうと存じます。また府県公安委員会も、法律を犯して干渉された指示には、われわれは従わないということができるのでありますから、その保障の道は、私は開かれておると思います。
  34. 古井喜實

    古井委員 あまりこの問題にこだわりたくはないのでありますけれども、これは基本の問題でありまして、結局今度は国家公安監理会のお話になつて来る、あるいは府県公安委員会の話になつて来るけれども、中央国家公安監理会というものは単なる諮問機関であります。のみならずその諮問機関も国の機関であります。国が責任を負うことのじやまになる機構じやありません。国にあるか、府県という自治体にあるかという問題においては、これまた国の機関であります。しかもこれの任免については政府がすでに関与しておるということでありますから、国家公安監理会というものがあるということになつたところで、国の責任を否定する理由には少しもならないと思うのであります。大筋が、事実そういうことが間々起り得る体系になつてしまつておるのでありますから、責任を国が負うことは当然であると私は思います。もし負わぬ建前なら、これは重大問題だ。負う建前にしなければならぬ、負わぬ建前なつたならば負うように補うことが正しいと思う。政府の案において私は少しもその点に支障はないと思います。支障があるとおつしやるなら直すべきだ、直さなければこの警察法はとんでもない警察法である。選挙干渉はあり得る、警察権の濫用は間々あり得る。けれども責任は負わぬのだ。そういうことは違法なことであるからないだろう、こうは言えないのであります。権力の機構でありますから、足らないというなら、どこが足らないか、その点は改めるべきものだと思うのでありますので、支障のある点があるならば改めようじやございませんか。それならば支障のある点を明確にしておいていただきたい。
  35. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 政府といいますか、警察長官ですか、これがやつたことにつきましては当然責任を負わなければならぬと私は思います。やつておいて、責任を負う必要がないと申し上げるのではありません。やれないことでもやれば、そのやつたことについての責任、これはむしろ法律を侵してやつたのでありますから、重大な責任だと私は思うのであります。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  警察法の立て方の問題といたしましては、私が先ほど申しますように、国の治安確保とか、警察行政調整ということに必要な、法律明記された以外の点については、これは国が干渉しないという建前をとる方が、警察の民主的な運営という面から、私はベターだと考えます。その点は御意見の相違であるかもしれません。
  36. 古井喜實

    古井委員 どこの点がそうなるかということを私は伺つたのであります。つまり国が負任を負うべき筋であるし、この体系ならば、十分負えるのだと私は思うけれども、そうは行かぬのだということをおつしやるなら、どの点が政府の案で支障になるのかということを明らかにしていただきたいということをさつき申したのです。もしあれば、それは直すべきだと私は思うのでありますから、どこの点がぐあいが悪いのか、支障なのかということを、ひとつ明らかにしていただきたい。
  37. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警察行政の一切について政府責任を負うということになりますと、今法案で予定をいたしておる事柄以外についても指揮監督をするということになつて参りますから、その点は政府の意図しておるのと違つたことになる、そのことはいけない、かよう考えております。
  38. 古井喜實

    古井委員 ただいまの問題は、要するに、私は明瞭な御答弁を伺うことができなかつたのでありまして、この点はいろいろお立場もありましようから、法務大臣に対して御質問することにして、一応保留しておきたいと思います。それで別の点についてお伺いしたいと思います。
  39. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 古井君にお願いでございます。実は恩給局長から先ほど連絡がありまして、からだのぐあいが悪いのですが、きよう午後は無理をしてでもぜひ出させてもらいたいという話なんです。それで夜は気の毒だと思いますので、午後に呼びたいと思います。これは御無理をお願いするつもりはありませんが、なるべく少し長目にでも午前の質問をやつて古井君の警察関係の質問を締めていただけるとまことにけつこうだと思います。
  40. 古井喜實

    古井委員 警察関係の質問は、御答弁を求めておる点が得られますれば、簡単に切り上げますが、得られなければ、ちつとは時間がかかるかもしれません。  そこで次の問題は、府県における警察職員身分が警視以上は国家公務員である、警部以下は地方公務員であるという立て方になつております。同じ府県警察職員であるにかかわらず、なぜ国家公務員という身分の者と、地方公務員という身分の者と二つ置かなければならぬのでありましようか。この体系は、国家公務員というのは一段上のものであり、地方公務員というのは一格下のものであるということを明瞭に示した体系だと思うのであります。つまり昔官吏というものと府県の吏員あるいは市町村の吏員というものといくらか差別感のようなものがあつた時代があるのであります。終戦後ようやくにしてこの差別感がなくなつて来ました。たいへんいいことだと私は思うのであります。ところが同じ警察職員で二種類できてしまう、しかも明瞭に上のものだけ国家公務員になつてしまう、こういうことになりますと、ここに再び国家公務員というものと地方公務員というものとの差別感を生み出すことになつて来る。なぜ二つ身分を違えなければならぬのか、両方国家公務員になさつたらどうか、あるいは反対に全部地方公務員になさつたらどういうものか。なぜことさらに上級と下級とによつて身分を違えなければならぬのか。これが身分が違うために、いろいろな違いが起つ集るのであります。この点についての理由をひとつ伺いたい。
  41. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 昨日も申し上げましたように、警察の機能と申しますか、職責と申しますか、これは非常に地方的な、自治体的な色彩を持つておりますと同時に、一面国家的な色彩を持つております。従つてそれを勘案いたしたのであります。さればといつて国家性格警察事務地方性格警察事務と縦割にするわけにも参りません。これに従事する職員を縦割にわけるというわけにも参りません。さようなことからいたしまして、上の方は国家公務員、下の方は地方公務員、かようにした次第でございます。  国家公務員は給与その他は国から受ける、地方公務員は府県から受ける。ことに警視以上は各府県間及び中央との交流が非常にひんぴんとしてありますから、この方を国家公務員にする方が人事の上からも適当である、かよう考えた次第であります。
  42. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 古井君に御相談でございますが、本多自治庁長官は午後一時から参議院の方で呼ばれておりますので、こちらの分科会は一番重要ではありますが、御都合がつきましたら、早目に質問していただきたいと思います。
  43. 古井喜實

    古井委員 それでは今の問題は一応お預けにします。もつともこの点については本多大臣にも私は伺おうと思つておりました。本多大臣は従前東京市政に御関与なさつてつたときが長かつたのでありまして、隅から隅まで御承知のことだと思います。そこで今の、同じ警察職員の中で上級のものが国家公務員になり、警部以下は地方公務員になる。これは私は差別感を起してまずいと思うのです。国家公務員になつてつても、地方的色彩のあることは、身分のいかんにかかわらず、職務によつてきまることであります、仕事によつてきまることであります。かつ一方からいうと、地方の吏員になつている人に対しては警察長という国家公務員任免権を持つ。これはどうしてこういうように上級と下級と二つにわけるのか。わけるということは、地方職員組織といいますか、体系として新例でもあるし、また私はまずい先例になりはせぬかと思う。さかさまにひつくり返すのならいい、地方公務員を上に置き、国家公務員を下にすればけつこうである。そういうことも考えられる。現在の警察体制は大事な都市警察自治体警察がやり、ルーラル・ポリスの方を国家警察がやる、これは同じことであつて、できぬことはない。なぜこういう身分まで差別的なかつこうにしなければならぬか。もし経費負担くらいならば、何もかまつたことじやない、警視の身分は別でもよろしい、こういうことは自治体体系の問題としても大いに考究すべき問題を含んでおると私は思うのでありますけれども、こういうことはさしつかえないというふうにお考えになるか、悪例にならぬとお考えになるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  44. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは齋藤国警長官から御答弁申し上げました通り、今回自治警を廃し国家地方警察を廃しまして、これを統合した国家性格地方性格を持つ警察を創設することになりますので、その性格にふさわしい機構といたしましては、やはりこうした制度をとるほかはないと考えております。すなわち府県警察の警視以上の任免国家が関与することによりまして、治安確保に対する国家責任を明確化するということにもなるわけでございます。
  45. 古井喜實

    古井委員 どうもえらくあつさり考えていらつしやるようで、警視以上は国家公務員にして、国家責任を明確にするとおつしやつた点だけは、さつき言つた問題に一つの材料を得ました。但し今の点は、なぜこうしなければならぬかという御説明にはならぬし、そうしたんだということは、ひつくり返せばいわばカムフラージユである。こういうふうにして自治体警察らしいかつこうにしてみたという意味になるだけであつて、その反面における弊害というものはお考えになつておらぬ、またもともとカムフラジューにもならない、そういう点に欠陥があると思いますけれども、これは本多大臣関係では深く論じないことにします。  そこで私がまずお伺いしたいのは、従来の府県という機構の体系においては、すつきりと地方公務員の体系で立つて来たと思うのです。知事は公選にしますし、地方公務員の府県体系は、いわゆる自治という観念からあの機構の中にはもうすつきりと筋を通して来ておつたと思うのです。これが今日の自治の態勢だと思う。往時の府県は、御承知のようなわけで、中央政府が任命する知事であり、これは官吏でありました。そして経費府県負担する、何がしかの自治事務というのが府県にある、それも知事がやる、しかし主宰する知事は官吏であつた知事の下には官吏もおれば吏員もおつた、こういうチャンポンになつてつたわけです。ところがすでに公選の知事という制度をしいてすつきりと自治という体系を確立しておる、そこへ持つてつて、今度は教育職員という厖大な職員国家公務員に切りかえてしまう、また警察職員の上級の者を国家公務員にしてしまう、従来の体系がここで瓦壊して来出したと私は思うのであります。こういうふうに厖大な警察とか教育とかいう職員国家公務員にできるくらいなら、なぜ知事国家公務員にできないかということになつて来る、その方がむしろいいんじやないか、こういうことで知事公選制というものとも矛盾して来るし、響きを持つて来る、大きく考えて私はそう思うのであります。  そこでこういうちぐはぐのようではあるけれども、これは大きな国家公務員体系に押し込めて、今の自治の態勢として一体これで矛盾はないとお考えになつておるのでありましようか。将来はだんだんなしくずしにくずして行つて、吏僚組織の方から国家公務員をどんどんつくつて行く、そうなれば頭の知事地方の公選の知事というのはおかしいですから、これもやがては国家公務員というかつこうに追い詰めてしまう、ここを意図されるか、腹に含んでしまつて進んで行こうとお考えになるのか、これは私は地方の自治の問題として重大問題だと思います。その場限りの意味でなしに御所信を伺いたいと思います。
  46. 本多市郎

    ○本多国務大臣 お話通り、今回警察制度性格がかわつて来るのでございますが、この警察制度にいたしましても、従来の制度でありますと、自治警察というものに対しては指揮、監督命令権がない。それで国家が十分責任を明確にすることができないという点、これを今度改正いたしまして、自治警を廃止し、国家地方警察を廃止して、国にも有機的なつながりがあり、地方にも有機的なつながりがあるというよう性格のものをここに編み出されるわけでございます。そのうちの幹部を国家公務員にするということは、その目的にかなうということから考えられたことと思うのでございます。  さらに府県制度についてどうかと申しますと、これもやはり御承知のごとく、公選知事のもとに政府が何ら監督権を持たないということでありますために、中央との有機的なつながりというものはまことに薄弱でございます。この薄弱ではありますけれども、非常に広義な意味において国の責任という場合を論ずるといたしますと、地方団体の不始末は結局は国の責任ということになつて来るのでございますから、国全体の行政について広義の意味において責任の立場にある国家といたしましては、もう少しく府県国家との有機的な関係を密にすべきではないかという考えは持つております。しかしこれは警察制度が一応今度の改正ような関連におきまして、国と地方との連絡もとれて、しかもそれが地方の機関でやれるという改正案がまとまつて参りましたが、この地方制度に関しましては、何分府県というものは警察というような、そうした一部分の行政を担当するものでなくして、全般的な総合的運営責任主体でございますので、非常に影響するところも大きいのでございます。従つてこの性格の問題につきましては慎重に考えて行かなければならない。自治の侵害にもならず中央との連絡も緊密化するという、この調和をはかつて行かなければならないと思います。そうした点について、そういう方向だけは政府として示しておりますが、具体化する場合どういう方法をとるかということにつきましては、総合的な見地から研究しておりますので、地方制度調査会に御諮問申し上げて、御審議を願つておるところでございます。この審議を経ましたならば、中央地方をいま少しく緊密にするという方向へ、これは進むべきものであると考えております。
  47. 古井喜實

    古井委員 この中央地方との関係を緊密にする方法としまして、ひとつはイギリス式のダラーシツ・イン・エイド、補助金制度、あの方式があることは御承知の通りであります。補助金に伴つて監察などということも行つているのがイギリスの例のようでございます。あれを通して条件的にある範囲の統制を加えている。あの行き方が一つあると思います。いま一つは機構自体を国家が関与するものにして行こうという方式が一つあると思います。今回は明瞭に警察については、つまり国家公務員にするとか、また教職員について国家公務員にするとか、ああいうふうに機構とか身分というものを国が握るという方向でもつてつて行こうという行き方を示ざれたわけであるのであります。そういう方向を示して来ますと、知事身分とか知事任免方法とか、方向としてはこういうことに及ばざるを得ぬようになつて来ると思うのであります。私はここで意見を述べるつもりではありませんけれども、二つの道の、すでに一方の道に一歩踏み込んでしまつたというふうに思うのであります。この点は十分御検討の上でそう進んでおいでになるだろうと思うのでありますけれども、いずれは知事公選制にひびが入る。地方府県の一番大きな仕事は、何と申しましても教育でありました。これはああいうふうになつて来る。それからまた警察もこういうふうになつて来る。これはもうあるところまで来てしまつたと思うのであります。しかしこれはよく考えませんと、知事公選にはやまやま中央としては困る点、不便の点もありましようけれども、また官選のごときことを身分関係から行うというと、昔のあの政党時代のごとき弊害を再びここに起さぬとも限らぬ。あれも耐えがたい弊害であつたと思うのであります。私は警察について、実はそれを憂えておる一人であります。今回の機構につきまして、警察長任免権を持つとか、これはところをかえれば、今は自由党の天下でありましようけれども、いかなる政党が政権を持つかもしれない。この機構ができましたならば、やろうという気になつたならば思い切つてやれると私は思う。恐しいことが起ると思うのであります。知事公選にまで及んだならば、容易ならぬことが私は起るのではないかということを憂えおるのであります。今の点についてはこの段階であまり長く時間を使つてもいけますまいけれども、地方制度調査会としても慎重に検討を加えてもらわなければならぬ問題だろうと思うのであります。そこで今お伺いしたところで、警察に対しては国の責任を明らかにするということが、この案でできたというふうな御見解のようでしたが、念のため、今度の機構で国の責任が明らかにできた、こういうふうにお考えになつておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  48. 本多市郎

    ○本多国務大臣 さいぜんからの今後の地方制度改革についての御意見は十分伺つておきまして、参考に供したいと存じます。今回の警察制度改正によつて、国の責任を明確化することができるか、こういう御質問に対しましては、これをもつて明確化することができると考えております
  49. 古井喜實

    古井委員 ただいま本多大臣から、国の責任がこれで明確になつたという明らかな答弁がございました。これは先ほど来、実は本多大臣おいでにならぬ間に、さんぐ質疑応答を繰返しておつた問題が、ここで一挙にまことに明瞭になりました。本多大臣の御見解はあたかも文部大臣の御見解と一致しております。文部大臣は本会議における提案理由説明でも、国の責任を明確にするために教職員国家公務員にするのだ、これで責任が持てるのだ、こういうことを強調しておられます。まさに本多大臣と同じです。政府の両大臣として一致した御見解をお持ちになつている。まことに明確になりました。但し先ほど来の質疑応答は少し食い違いが起りましたので、この問題が残ることはやむを得ないと思います。  そこで義務教育費の関係で、地方財政の面から見てのことでありますけれども、全額国庫負担という主義をとにかく掲げたわけでありますが、義務教育職員の給与につきましての二十八年度の九百二十億というものは、全額負担ではないのですか。全額負担趣旨を貫いたものなのですかどうですか。全額負担という看板通りにあれで持つておるのでありますか、この点をお伺いしたい。
  50. 本多市郎

    ○本多国務大臣 この全額国庫負担ということについては、委員会や本会議でもいろいろ議論があるでございますが、昨年義務教育費国庫負担法におきまして、半額を負担するということになつていたために、あれを半額負担法といい、それが今度は給与の半額を全額にしたから全額国庫負担法と通俗に言われてしまつたわけでございます。それでは給与の全額でも実際持てるのかということになりますと、九百二十億は、諸学校の教職員の給与の規模を大体一千百五十五億円と見積りまして、その中から二百五十四億――義務教育費として交付しない不交付団体、それから富裕団体で交付額に制限を受けるもの、この不交付のものと制限を受けるものとの金額が二百五十四億でございます。だから千百五十五億から二百五十四億を差引いた九百一億が給与費の予算となつておりますから、全額負担とはうたつておりますけれども、その面において不交付の分あり、制限をされるものがありますから、全額といえないわけでございます。それで一千百五十五億まるまるここに負担金の予算があればほんとうの全額国庫負担ができるのか、この点につきましては、定員定額で文部省の査定による給与ならば、全額負担ができるのでございます。しかし現に府県で実施しております実額はまちまちなものがございますから、必ずしも符合しないと存じます。
  51. 古井喜實

    古井委員 その県ごとのことは食い違いが起るという問題は残しましても、総額として、九百一億は――八大都府県の実例は別にいたしまして、九百一億あればこつちが考えておる給与費の全額負担は十分できるというふうにごらんになつておるのか、幾らか足らぬとお考えになつておるのか、その点であります。
  52. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これはさいぜん申し上げました通り、九百一億で、平衡交付金の交付を受けてないかつつた不交付団体のものを差引き、それから制限額も差引くということにして、文部省の定員定額ならば全額に相当すると思います。
  53. 古井喜實

    古井委員 文部省の定員定額と比較してでなく、現在における現員現給から見てこれで十分かどうかということなのです。文部省の金額はいわばかつてにこしらえた金額なのですから、その金額が現在の現員現給額と符合するかどうか。符合しなければ足らぬか余るかどつちかですから。それならば現員現給額はどれだけとごらんになつておるか、この数字を比較してみればわかるのでありますが、そつちの方面からでもけつこうです。
  54. 本多市郎

    ○本多国務大臣 現員現給につきましては、政府委員から数字に基いて説明させますが、概念的に申し上げまして、現員現給実額につきましては、今夏でもしばしば議論がございました通りに、政府の算定いたしましたものと、地方の実際の給与額との間には開きがあるのでございますから、その面から推察いたしますと、やはり府県に一部負担をかけることになると思いますから、足らないと思います。しかし文部省の定員定額、これが将来は府県間における教員の調整等も行われることになつて参りましようし、そうなつて来ると、定員定額で政府が算定しても、実際はその府県にはそれほどの教員の数がいらない、あるいは余るということもできますので、多少調節ができるのじやないかと思います。しかし概念としては、ただいま申し上げました通りに、府県負担一部分残るというのが実情だろうと考えております。
  55. 古井喜實

    古井委員 まことに率直な御答弁で、私も足らないと見ておるのであります。全額国庫負担というたのは、二十八年度限りはうそであるのであつて、全額ではない。足らないと思うのです。そこで、さればこそ、二十八年度は経過規定において府県費の負担と持つてつて、それに対して国が金を与え、足らぬところを府県費で持たせようというああいう暫定規定が起つたのだろうと思います。それならば、足らぬ部分に対して別に府県に財源を与えなければならぬ。平衡交付金になるか、他の形になるか知りませんけれども、一部足らぬならば財源を与えなければ自治体が参つてしまう。そこで、二十八年度においてはどういう形において足らぬ部分の財源をお与えになるか、この点をお伺いしておきます。
  56. 本多市郎

    ○本多国務大臣 現員現給で行きます限り、二十八年度は地方は現状のままを負担するのでございますから、新たな財政負担というものはなくて済むと考えております。
  57. 古井喜實

    古井委員 それは本多大臣、そうは行きませんよ。この点はそうあつさりと行く話ではないと思うのであります。今現員現給を出しておるというのは、本年度は出しておりましよう。それに対しては、とにもかくにも財政需要を見合つて平衡交付金も出しておりましようけれども、それならば、来年度の平衡交付金は現員現給をもとにして、あるいはやはり不足分を見て交付金を出すか出さぬかということになりますと、すでにもう今のような国庫負担というかつこうができましたならば、おそらく平衡交付金を交付するときに、不足部分を交付の対象になる財政需要には見ないだろうと思うのです。それとも見るでありましようか。そこが問題になつて来ます。結局不足部分に対してこれを財政需要と見て平衡交付金をお与えなさるかどうかということです。
  58. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは二十八年度限りは、義務教育職員の給与費については府県負担とすということで、府県負担がかるわけでございますが、その財政措置は、二十八年度につきましても、現員現給で教職員の給与を負担するものとしてできておりますから、地方団体に全然新たな負担をふやして行けるという場合であまますならば、お話通りになりますけれども、負担をふやすようなことはないわけでありますから、別段基準財政需要額を特に増額しなければならぬということにはならないと思います。
  59. 古井喜實

    古井委員 その点はどうでありましようか。二十七年度はそれは負担しておりますけれども、府県はまつたくの自己財源で経済をやつているならいいでありましようけれども、平衡交付金というものがくつついて、これが非常に大きな財源になつてやつとつじつまが合つておるのであります。平衡交付金で見ないものには、財源は自己財源では出ないのであります。そうなると、今の不足分の財源というものは、府県税のごとき自己財源か、あるいは平衡交付金か、あるいは起債かと、こういうことになつてしまうのであります。そうすると、今度の負担金で財源を与えない以上は、別の交付金で与えるよりほかは手がなくなる。さもなければ二十八年度は出しようがないということになつてしまうと思うのであります。これは一方においては府県が出すだろうとお考えになつているかもしれませんが、財源を与えませんければ、府県は、国から義務教育のあの負担金でもらつた以外は教職員の給料は出せませんよ。財源がなければこれは国が持つという建前だから、このきゆうくつな県の財政の中からほかの経費にまで食い込んでつけたしはしませんですよ。これは首切りですよ。そこで財源を見るか見ないかというこの問題は、平衡交付金の問題になつて来ると思うのです。それはまさに本多大臣の御責任の問題になつて来ることは免れないと思うのです。そこで財政需要に足らずまいを見ないというならば見ないで、これも一つの御見解です。結果はとにかくとしまして、それから県に出せというのならば結局見なければならぬと思います。この点は、今まで出しておつたからというのでは、二十八年度の予算としましてはこれは御説明にならぬですよ。大臣、これはどうお考えになりますか。
  60. 本多市郎

    ○本多国務大臣 義務教育というものの給与費については、文部省から一定額を交付いたしまして、そのあとは府県負担とする。この府県負担とするという財源はどこにあるかというと、来年度の財政計画を現員現給のまま平衡交付金を含めて立てておりますから、財源はそこにあるのであつて、新たな負担にはならない、これだけでございます。
  61. 古井喜實

    古井委員 それは奇妙なことを伺いました。現員現給をもとにして財政計画を立てる。そこでこの現員現給より、は足らない。そのあとの不足分について、それならばどこでどういう形において財源を与えるという財政計画になつておりますか。財政計画になつておるとおつしやるけれども、では、どの名目でどういう形で財源を与える財政計画になつておりますか。
  62. 本多市郎

    ○本多国務大臣 義務教育職員については、現状通りのものを府県負担して行くという建前で財政計画をやりますから、現状通りで推移いたしますならば、財政計画は伴つておるわけでございます。
  63. 古井喜實

    古井委員 これはいただいておる財政計画を見てもわかりましようが、そうすると、現員現給をもとにした財源はみなできているのですね。
  64. 本多市郎

    ○本多国務大臣 国でやります財政措置の計画と、府県が自主的に運営いたします予算計画とは違うのでありまして、府県負担とすということで、国のそれに対して措置すべき事柄法律上きまつておりまして、法律上の責任ある財政計画を立てた上は、府県が自主的にやるのでございます。教職員の給与にしても、副知事知事等の給料にしても自主的にきめるのでございますから、足らないところは自主財源をもつてまかなつて行くよりほかはないのでございます。
  65. 古井喜實

    古井委員 そうすると、結局平衡交付金では見ないとおつしやるのですか。つまり、税金を増徴してでも足らないところは払うと、こういうことになりますか。平衡交付金で見るとおつしやるのか、見ないとおつしやるのですか。法律府県責任は負わしておりますよ。
  66. 本多市郎

    ○本多国務大臣 平衡交付金で見るのか見ないのかとおつしやいますが、この平衡交付金は、国の責任で財政措置をしなければならないものを項目ごとに検討いたしまして、それに必要な財政措置を講じて行くのでございます。そうして平衡交付金の額を定めるのでございます。それ以上のことは地方の自主的にやる財政計画になるわけでございます。二十八年度につきましては、文部省から交付される九百一億の給与費、十九億の教材費、これと自治庁の方で算定いたします平衡交付金と合わせれば、今まで通りの状態になるのでございますから、今まで通りの状態で行く限り財政計画は伴つておりますので、特に財政需要額等をふやし、平衡交付金をこのためにふやさなければならぬということにはならないと思います。
  67. 古井喜實

    古井委員 そうすると結局平衡交付金で見る場合の財政需要額の中には、さつきおつしやつた不足分、あれは見ないのでしよう、見るのですか。平衡交付金の対象になる財政需要のうちに、さつき不足分が出るとおつしやつたでしよう。不足分は見ないのでしよう、どうなんですか。
  68. 本多市郎

    ○本多国務大臣 平衡交付金算定の基礎になつております基準財政需要額の額以上の支出を地方が自主的にいたしましても、それに伴う財政措置は政府としては困難でございます。
  69. 古井喜實

    古井委員 そうすると結局平衡交付金ではこれは見ない、結局自己財源で見ろ、こういうことでございます。そこで地方財政法、これは私が読み上げるまでもないことでございますけれども、念のために読み上げてみますが、第一条、つまり「この法律の目的」は「この法律は、地方公共団体の財政の運営、国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め、もつて地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的とする。」こうあつて第二条第二項「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」とあります。そこで義務教育職員国家公務員にしてしまつた国家公務員の給与は国が払うが当然である。これは議論余地はない。国が払うのが当然の建前である。その国の払うべき給与の一部を地方団体に持たしてしまう。こういうことは地方財政法第二条とどういう関係になりましようか。私は明瞭にこれこそ地方財政法第二条の違反であると思います。これは基本原則をきめる、いわば地方財政に関する根本法であります。これは私は明瞭に規定に抵触すると思いますが、いかがでございますか。
  70. 本多市郎

    ○本多国務大臣 私は基準財政需要額の算定の基礎になつております数字に地方がとらわれるよりも、この平衡交付金の一般財源に繰入れまして、自主的に運営することが望ましい思つております。従つて自主的に地方がやれることと、政府から財政措置をやります基礎になつている数字と食い違いましても、それは政府の方の財政措置の責任はないものである、かよう考えております。その法律についての考えでございますが、結局法律をもつてそう定めれば、そういうふうに府県負担になる、こう考えております。
  71. 古井喜實

    古井委員 そうすると本多大臣の御見解によれば、法律できめさえすればこの地方財政法の大原則は破つてもよろしい。こういうことになると思います。法律で書いているのだからかまわないと言われるが、それならばこそ私はことさらに地方財政法の第一条を読み上げたのであります。地方財政の基本原則をきめようというわけでできている法律であります。かつまた「国の財政と地方財政との関係」という言葉で明瞭に示している。これを法律でどんどん破つてつてもよろしいというのが御見解でありましようか。これは私は事容易でない。そういう考え方でやるならば、地方財政法をやめたらどうですか。この大きな看板を、基本原則でも何でもない法律をつくつて行けば、いくらでも破つてかまわぬというのならば、こんな法律は無用に帰すると思うのです。これはどうお考えになりましようか。
  72. 本多市郎

    ○本多国務大臣 新たな負担を増加する場合でありますと、国の責任になるのでありますけれども、新たな負担を増加しないのでありますから、基本原則に反しないと思つております。
  73. 古井喜實

    古井委員 そうは参りません。二十八年度からは義務教育職員国家公務員になるのであります。国家公務員の給与は国が払うのが当然でありましよう。今までの地方公務員ではないのであります。そうすれば話が全然かわつて来るのであります。またそうしたいために国家公務員にしたのでありますから、そうすれば、国家公務員の給与というものは国が払うのが至当のものを、要するに財源措置はしない、するいとまもないということで、足らぬものは地方団体に転嫁してしまう。これは転嫁の典型的な場合です。これは明瞭に第二条第二項の違反でございませんか。
  74. 本多市郎

    ○本多国務大臣 確かに、財政措置をすべて地方財政と中央財政との調整をやつて、その上にやれば、そうした御疑念も少かつたかと思いますけれども、本年これは緊急を要することとして実施することになりましたために、二十八年度については暫定措置でございますので、財政調整が伴つていない面からの御議論はあることと存じますけれども、いずれにいたしましても、現状通りのことならば、それに対応する財政措置をやつておるのでございますから、地方の自主的な財源も含めて、負担の増加を特にこのために引起すことはないわけであります。
  75. 古井喜實

    古井委員 しきりに現状通りだとおつしやるけれども、そんなら地方公務員にしておいたらどうですか。地方公務員なら現状通りです。かわつてしまうのだから現状じやないのであつて、話がかわつて来るのであります。これは、現状通りとしきりにおつしやるけれども、話がかわつてしまうのであります。なおまた暫定的だからということもありましたが、暫定的だからといつて、それじやこの地方財政法の原則は破つてもいいのでありますか。暫定的といつてこれを破るわけにはいかぬと私は思う。二十八年度限り暫定措置は打切ることになつようでありますけれども、当分のうちという暫定措置がもし成り立つならば、やはり暫定的だからかまわぬ、転嫁してもかまわぬ、こういうことになりますか。暫定的だからといつて原則を破ることはできないと私は思いますが、どうですか。
  76. 本多市郎

    ○本多国務大臣 財政関係を問題にされておると思うのでありまして、国家公務員でありましても、地方公務員でありましても、その財政においては同じあでるといたしますと、これは財政措置の必要は、問題は何らかわつて来ない。公務員の性格がかわりましても、かかる金が同じならば財源にはかわりはないということと、さいぜんから申し上げておりますように、現状通りならば、平衡交付金一千七百二十億の一本で交付しました場合とかわらないのであつて、新しい財政負担をかけるのではない。そこでその地方に一方的に負担をかけてはならないという財政法の精神にも反しない、こう考えております。
  77. 古井喜實

    古井委員 そうすると、本多大臣の御説明から行くと、暫定的という意味じやないので、暫定的とは関係なしに、つまり二十七年度は負担しているから、現状通りであるからかまわぬ、暫定的ということとは関係ありませんから、何年でも持たしてよろしい、これは要するに地方財政法違反じやない、こういう御見解のようになるのであります。それならそれでよろしゆうございます。私はそういう考え方を自治庁の長官である大臣がお持ちになつておるというならば、それはそれでよろしゆうございます。これは私はそういうことでこの自治が守つて行けるか、地方財政が守つて行けるかということに重大な疑問を持ちます。かつこのことは、こういう大臣におつてもらつていいかどうかということを、全国の自治体に明らかにしてみたいと思う。この義務教育の問題と警察の問題は、全国の自治体関係の方では、今わくよう議論であります。それでこの点について今のようなお考えならば、地方財政はどういうはめになつてもこれはしようがないという結論になると私は思う。本多大臣が自治を預かつて行こうとおつしやるなら、私はこれは重大問題であると思います。しかしそれ以上私は今の点については伺うことはいたさん気でありますけれども、伺つておくことがあるならば御答弁をお願いいたします。
  78. 本多市郎

    ○本多国務大臣 現在の制度のもとでは、現在の制度のもとにおける責任をお答えするほかはないのでございます。二十八年度の暫定措置と申し上げましたのは、二十八年度が財政調整を根本的にやらないで立てておりますために、古井委員自身に、その点から御疑念が起きるのではありますまいかということを申し上げた次第でございます。私は現在の制度のわくの中で、政府責任を御答弁申し上げておるのでございますが、この制度でこのままでいいのかということになりますと、根本問題になつて来るのでございまして、政府といたしましても、現在の制度はどうしても再検討の必要があるという立場に立つて地方制度調査会に諮問している次第でございますので、ぜひりつぱな制度ができるように、専門家の方々の御協力をお願いいたしたいと存じます。さらに私がさいぜん警察制度について、国の責任を明確化することになると御答弁申し上げたのですが、これは警察制度の目的であります治安確保という点におきまして、国の責任を明確化することになる、こういう意味であつたのでございますから、御了承願います。
  79. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 午前の部はこの程度といたしまして、午後は二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十七分開議
  80. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 再開いたします。  休憩前に外続き、昭和二十八年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府経済審議庁を除く)及び法務省所管予算を一括して議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。石井繁丸君。
  81. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 人事院総裁にお伺いしたいと思いますが、御承知の通り人事院においては、昨年公務員の給与べ「ス改訂の勧告を出しまして、一万三千五百十五円、大体その線であつたと思いますが、政府におきましてはそれをのまず、一万二千八百二十円の線を出したわけでございます。そういたしますと、人事院においてはおそらくこの政府の決定については総裁として不満である、こういうお考えであろうと思いますが、これについてどういうふうなお考えを持つておるか承つておきたいと思います。
  82. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答え申し上げます。御説の通り人事院といたしましては、人事院の勧告が全面的に実施されないことに対してははなはだ残念に思つております。将来この問題についていかよう考えておるかとのお尋ねでございますが、人事院といたしましては、公務員法に規定いたしました条件が具備いたしますれば、再びベース引上げの勧告をいたしたいと存じておりますが、今日までのところは物価の上昇その他を見まして、勧告をいたすべき段階に達してはいないと考えております。
  83. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それではちよつとお尋ねしておきますが、去年の五月と現在までの状態では、物価は大体において横ばいとなつておるのでありますが、人事院の方でも大体そういうふうな観測を持つておるのでありますか。
  84. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいままでのところ前より少し上つておるよう考えております。しかしながら御承知のように、公務員法におきましては、俸給表を百分の五以上動かすときに初めて勧告をいたす、こういう規定に相なつております。もちろんただいまにおきましても約千円ばかり人事院の勧告より給与の決定が下まわつておるのでございますから、それだけもう一ぺん勧告したらどうだという御意見も、各方面にあるようであります。しかしながら、御承知のように、人事院の勧告と申しますものは、そう幾たびもやれるものではないのでございます。もちろん規定から申しますれば何回もやれるのでございますが、実際の問題といたしましては、やはり相当大きな財政上の問題になりますので、最も適当な機会をとらえてやる、そういうふうに考えております。
  85. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 ただいま総裁は、去年のは不満足である、千円ばかり下まわつておるし、大体物価は若干上つておるのだから、少くとも千円はしたらどうだ、こういう意見もあるが、いろいろと財政上その他の影響等を考慮して、まだその決心には至つておらない。こういうふうなお話でありますが、しかし人事院としては、政府がそれを財政上のむかのまないかは一応別問題として、物価の傾向としても若干上向きつつあるので、少くとも昨年の、政府において勧告をのまなかつた線だけは打ち出すということが、人事院総裁としての責任ではなかろうかと思うのでありますが、この点はいかようにお考えになつておられますか。
  86. 淺井清

    ○淺井政府委員 まことにごもつともでございますが、やはり勧告をいたします以上、実現の可能性を十分に見定めてやることが必要だと考えております。その意味におきまして、適当な機会を将来に考えておる次第でございます。
  87. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そうすると実現の可能性、政府においてそれに対して予算上のめるかどうかという点の了解がつかないうちは出せないのか。それとも吉田内閣もあまり長くなさそうだから、この政府に出してもあまり当てにならないから、こういうような政治上の見通しから出さないのかどうか。それらの点についてのお考えを伺いたいと思います。
  88. 淺井清

    ○淺井政府委員 お言葉を返してはなはだ失礼でございますが、吉田内閣云云などということは、これは行政官長である人事院が考えますことは、僭越なことだと考えておりますので、さような考慮は毛頭いたしておりません。ただ最も可能性のある時機を適当に見はからつてやりたい、かよう考えておるのでございます。但しそのときに、過去におきましていわば貸しになつておりますこの千円を、切り捨てるという考えは毛頭ございませんので、それは常に計算の中に入れて勧告いたすつもりでございます。
  89. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そうすると、ただいまのところでは、今出したところでどうも政府がのみそうもない、人事院の力によつてはどうも政府にのませるという見込みはないから、もう少し情勢を観望しよう。こういうふうなお考えと思われるのですが、大体そのようなお考えで情勢を観望しておるのだということですか。
  90. 淺井清

    ○淺井政府委員 結果はその通りでございますが、お言葉は少しく私どもの考えと違つておるように思うのでございます。決して観望をしているというような、そういう無関心な態度ではないのでございまして、むしろできるだけすみやかに勧告をなし得るような機会をとらえたい、こういうつもりではおるのでございます。
  91. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 物価におきましても、御承知の通り、鉄道運賃の値上げ、あるいはまた主食の値上りその他の関係上、物価も八%の値上りの傾向である、こういうふうな点がいわれておるのであります。また昨年におきましても、千円が実現を見ずに切り捨てられた。こういうふうな状況になつておるわけでありますが、いろいろの見通しとして、人事院においてただいまの資料を収集したり、あるいはまた民間給与の実態等におきましては、相当に給与の改訂を打ち出さなければならないというふうにお考えになつておるのかどうか。これは資料の関係に基いて、さような実態になつておるのかどうか、伺つておきたいと思います。
  92. 淺井清

    ○淺井政府委員 大体におきまして、将来再び勧告する機会が来るとは考えております。ただそれがいつ参りますか、ただいま持つております資料では、今日までのところまだその段階に達していないと考えております。
  93. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 実際をいうと、ただいまのところ資料収集中、こういうふうに思われるのでありますが、それが整うと、いろいろと運賃、主食等欠くべからざる生活費の値上りがあるので勧告しなければならない、こういうふうに思われるのでありますが、総裁としましては、一応人事院総裁の立場からしまして、それらの資料、根拠等が整いましたら、ひとつ責任を持つて政府の態度等だけに右顧左眄しないで、勧告する御決心であるかどうかを承つておきたい。
  94. 淺井清

    ○淺井政府委員 お示しの通り考えでおります。但しそれは公務員法の規定に従いまして、俸給表を百分の五以上動かさなければならないという判断をいたすことが必要であろうと思つております。
  95. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 次に伺つておきたいのは、例の地域給の問題でありますが、御承知の通り、地域給は、戦後都会では主食も手に入らない、家屋も手に入らない、こういうふうな実情のもとにおいて、都会に住む公務員があまり気の毒である。こういうようなことから、都市において厚く、それから農村等においては少しも地域給がない。こういうふうな実態が定められたと思われるのでありますが、現在におきまして、地域給についてのお考えは、今まで通りでさしつかえないと思つておるかどうか、その点を承つて、おきたい。
  96. 淺井清

    ○淺井政府委員 まことにごもつともの仰せでございまして、人事院といたしましても、地域給というものはひとつ見直さなければなるまいと考えております。ただいま申されましたように、終戦直後から起りましたこの制度は、当時都市といなかとの連絡の悪い時分に、都市における物価といなかにおける物価との差の相当ありましたときに発生いたしまして、ついに今日に至つておる次第でございますが、ただいまの状況におきましては、都会といなかとの物価の開きというものは、むしろそう顕著ではないのでありまして、従つてむしろ地域給でなくて、もし給与の不足があるとするならば、これは本俸でもつて操作しなければならぬように思つております。ただ問題は、従来人事院といたしましては、だんだんと地域給を取上げたり拡張して参つたのでございますが、これは将来におきましては、率直に申せば、漸次廃止するような方向に向つて行くべきだと考えております。ただ廃止すると申しましても、現在の給与の状況におきましては、これをすぐさま無条件で給与からとりのけてしまうということは、できかねるよう考えておりますので、むしろこれは漸次本俸へ繰入れて、地域給の段階を順次減して行く方がよいのではなかろうか。こういうふうな考え方が、まだ確定はいたしませんが、起つておる次第でございます。
  97. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そうすると、これは例ですが、たとえて言うと、今まで一番高く地域給をもらつた東京等において、五%なりあるいは一割減らすというと、それを今度地方に還元する、大体そんなようなやり方になつておりますか。
  98. 淺井清

    ○淺井政府委員 いろいろの方法が考えられると思いますが、その一つの方法は、全体におきまして、本俸を五分ベース・アップをいたし、ただいまの一級地を廃して、ただいま一番上の二割五分をつけておりますところを二割に改め、四段階にする、次にさらに新しい一級地について廃止の方法を考える。こういうふうなことも一つの方法であろうかと思つております。
  99. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 大体において一割五分くらいの地域給を受けるのは都市ですが、そこにおけるところの公務員と、それから一割程度以下あるいは受けない人員は、どんな割合になつておりますか、参考までに伺つておきたい。
  100. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいまちよつと資料を持ち合せておりませんが、それはただちに給与局長からお手元に差出させることにいたします。
  101. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 全公務員のうちにおいて、二割五分を受けておる者がどれくらい、二割がどれくらいと各級にわけてひとつ資料をお願いしておきます。  そこで実際申しますと、最近山間部等におきましていろいろと問題が起つておる。どうも僻陬地は、歩が悪い、いろいろと都会並の封切映画等が見たい、こういう要求があるのです。また文化の普及というような立場から見れば、僻遠地帯の人も、われわれもやはり日本国民であり、国家公務員である以上は、当然われわれでもたまには封切がみたいというふうな考え方も持つておる。あるいは山の中にいても、やはり若干近代的な文化にも浴さないというと、われわれの教育程度その他いろいろな場合において遅れて行つてしまう。こういうふうな関係でどうも遠い者ほど無視される。やはり公務員といたしては、その方面におきましても、平等なる恩恵を受けるよう考えられるのがあたりまえじやないか、こういうふうな主張が相当高まつておるのでありますが、これらの点についてどうお考えになつておりましようか。
  102. 淺井清

    ○淺井政府委員 お尋ねの点は、いわゆる僻地手当と申しますか、隔遠地手当の問題になつて来るよう考えます。従来特別の手当といたしまして、僻地手当というものが存在いたしておりましたが、これは国家公務員地方公務員によりまして非常に意義が違つておるよう考えております。国家公務員の僻地手当は、ずつと離れ小島に在勤をいたしております燈台の看守であるとか、その他きわめて少数な者を目ざしておりますが、地方公務員になりますと、至るところに小学校がございますので、非常に大きな問題になつて来ると思つております。この点につきましては、この僻地手当の改善が国会におきましても、だんだんと問題になつておりますので、人事院といたしましては、近く勧告をいたします給与準則におきましては、これを大いに改善いたしたいと思つております。但し、ただいままでのところにおいても、その距離のとり方、その他につきまして若干の改善はすでになしておるのでございます。
  103. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 地域給で一番問題になつているのは、勤務地を基準として地域給が渡されておる。こういうふうな形になつております。そこで都市に住んでいる人、特にいなかの教員等でありますが、今度は地方の学校の教員になつたというと、自分の住所におきましては前の生活をいたして、勤務先がかわつたので地域給がかわつてしまう。こういうふうな関係になりますと、実際はそのために自転車を新調するとか、いろいろと経費がかかるのに、逆に地域給がなくなつてしまう。こういうふうな点で勤務地主義ということが問題になつておるのでありますが、この点につきまして、勤務地主義が正しいのか、それともまた住居主義が正しいのであるか、いろいろと人事院においてもお考えと思うのでありますが、どんなようなお考えを持つておるか、承つておきたい。
  104. 淺井清

    ○淺井政府委員 まことにごもつともでございますが、この勤務地手当とかあるいは寒冷地手当、これは結局住所地主義をとりますか、それとも勤務地主義をとりますか、どつちか一方へ割切つてしまわなければならぬ問題だと思つております。現行制度は勤務地主義をとつておりますから、お説のようなところも出て参るのでございますが、もしこれは住所地主義をとりますと非常に複雑なことになつて参りまして、これにもまた相当弊害ができて来る、両者ともに一長一短でございますが、勤務地主義をとりました方が事務はきわめて簡単になるので、やむを得ず勤務地主義をとつておるのでございますが、これを住所地主義に変更いたす意思は、ただいまのところ持つておりません。
  105. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 大体生活というものは勤務地によつて生活が立てられるということでなく、住居によつて生活が営まれる、これが建前になつておるわけでありますが、勤務地主義というよりは住居地主義ということ、つまり生活の本拠ということが本来の建前であろうと思うのです。勤務地主義の方が事実上便利だという意味だけで、勤務地主義を固執されるわけでありますか、その点を承つておきたい。
  106. 淺井清

    ○淺井政府委員 ごもつともではございますが、住所地主義をとりますと、非常に複雑なものになつて参りまして、実にまた困つたことも起つて来るように思つておりますので、やむを得ず一律に勤務地主義をとつておるような次第でございます。
  107. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 一番大きな問題は、都市の周辺の町村に勤務しておる、こういうふうな問題が今度また地域給の改訂等におきまして起りまして、都市においては地域給が上つたが、すぐ隣の町村等においては上らない、これはだれが見ても、そういう点については不公平である。地域給の高額の勤務地に当つた者としても、自分の俸給が高いという意味でなく、一応地域給という線から見て、すぐ隣接町村においては何らそれらの恩恵がなくて、片方が高いということはふに落ちないという考えが相当多いと思うのであります。これらについての考えはどういうふうにお持ちになつておりますか。
  108. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、大体人事院といたしましては、二つの方法々とつております。第一は、大都市周辺の地域は、これをだんだんとぼかすようにいたしまして、大都市が五級地でございますれば、その周辺は四級地、三級地というふうにいたしまして、いきなり二級地が来ないように努力をいたしておるつもりでございます。第二は、いわゆる官署指定という方法をもちまして、大都市周辺の地域にある官署を指定いたしまして、適当な地域給が支給できるよう考えているわけでございまして、地域給の法案が成立いたしますれば、ただちにそれを調整する官署指定をやつて来たような状態でございます。
  109. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それでは都市の周辺については、片一方が紫ならば、その周辺は薄紫というふうに、ぼかした線において、その実現に今後も努力される、こういうふうなお考えと承つておいてよろしゆうございますか。
  110. 淺井清

    ○淺井政府委員 その通りでございます。
  111. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 この点は東京とかあるいは大阪とかいうほどの大都市でなく、地方の三級地その他の都市等の周辺もやはりこれを準じて扱うというようなお考えでありますか。
  112. 淺井清

    ○淺井政府委員 お説の通りでございます。
  113. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そういたしますと、地域給につきましては、終戦当時のいろいろな関係からして、現在においてはいろいろと不合理の泉あるので、なるべく地域給について、未指定地等については、それを一級地等にするとかあるいは二級地等にする。そうして大都市等におきましては、少しこれについて調整をいたして、全体に地域給という線が本俸に繰入れられて行くという線に押し進めたい、かように了承してよろしゆうございますか。
  114. 淺井清

    ○淺井政府委員 その通りでございます。しかしただ最後に申し上げたいことは地域給につきましては、各地方からの陳情等が非常に多うございますので、これを廃止の方向へ持つて参りますには、人事院といたしましては、相当勇気がいるだろうと思つておりますし、これにはぜひ国会の十分な御協力がないとできかねますので、その節はどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  115. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 その点は地方の代議士が相当多いものでございますから、この地域給というものが不合理である、地方の未指定地の人たちにも地域給的な恩恵を与えなければいかぬということにつきましては、理論上も同調される人が多いと思われるのでありまして、ひとつ勇気を鼓して立案を急いでいただきたいと思うのでありますが、その際におきましてできることならば、例の昨年千円のべース・アツプをつぶされたよう関係になつておりますから、大都市においてはすえ置き、地方におきましては、その線におきましても、実質上の地域給改訂等において裏町ちができるように、かような線をも含めていろいろ努力をいたしてもらいたいと思います。ぜひひとつ格別なる努力をして、勇を鼓してやつてもらいたいと思うのでありますが、その点についてお願いをいたしておきます。  それから先ほど申した給与改訂の勧告、これらも政府に対して、政府の財政上の点をいろいろ考慮されなければなるまいと思いますが、人事院はまた独自の官庁でございますから、資料が整つて参りましたならば、特に去年の千円ベース・アップの問題もありますから、この線においての人事院の責任を果すという立場においても、御努力願つて、公務員の立場を御考慮願いたいこういう点を要望いたすわけであります。  最後にお尋ねいたしておきたいことは、給与準則の問題でありますが、給与準則の点は、どんな点を一番中心としてただいま御検討なすつておるか、その点を少しお尋ねしておきたいと思います。
  116. 淺井清

    ○淺井政府委員 給与準則につきましては、ただいまできるだけすみやかに勧告をいたし得るように、鋭意準備を進めておりますが、やはり一番問題になります点は、俸給表の点であろうと思います。つまり、現在の俸給表を、職階制に基く俸給表に改めるという点でございまして、公務員の利益を毀損しないように、いろいろと苦心をいたしておる次覧でございます。
  117. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 終戦後は生活給ということが中心として考えられておつたのでありますが、その後において職階制的なものが相当に強く現われて来ておつたわけであります。しかしながら公務員というものは妙なもので、やはり公務員となると下級の公務員でも公務員の体面を保つことについて相当に考慮が払われる。人事院におきましての職階制が、民間における会社等の職階を考慮に入れてやつておるようなお考えようでありますが、民間等におきましては、その点いろいろと、能率第丁主義ということで、職階制が立てられるとか、各会社それぞれの立場において職階制が立てられまして、特に会社の経営陣にのような立場に参画する者は準重役のような立場に立つておる、こういうよう関係で、民間給与の職階制は、上に厚く下に薄いという線になつておるのであります。それをそのまま官庁において使いますと、公務員としているくと体面も考えなければならないということで、下級の人たちは非常に苦しい立場になる。特に去年の人事勧告におきましては、政府の改訂から見ましても、下の方は二割俸給を引上げたといいながら、実際は二割より下つておる。大蔵省においては、これに反しまして一般最低でも二割は確保するという立場になつてつたのでありますが、これらについての基本的なお考えが、やはりこの前勧告したような、民間に準じた職階制で、上に厚く下に薄いという大蔵省の案よりも、その線が露骨に出ておつたのでありますが、こういう考えであるかどうか承つておきたいと思います。
  118. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいま職階制に関する給与法、すなわち給与準則のことを申し上げましたので、生活給との関係が問題になつたのでありますけれごも、給与は純然たる職階給というものも存在し得ないのでありまして、どのような職階制をとりましても、生活給を無視したものはない。またどのような生活給をとりましても、ある程度職務責任による段階が存在しない給与もまた成り立ち得ないのでありまして、結局職階制による給与準則をとるということは、やはり職務責任による段階の色彩を比較的強めた生活給ということに、結局は帰着するよう考えております。  それから人事院の勧告が上に厚く下に薄くありはしないかというお尋ねでございますけれども、あれは民間の給与と合せてあるのでありまして、むしろ職務責任という点から申しますれば、民間における会社の重役よりも、次官、局長級の方等においては、よほど大きな責任職務を持つておるものも、官庁の中にはずいぶんと存在しておるわけでありますから、決してそれがただ上に厚くしたわけではなくて、やはり職務責任による考え方によつてできおるもの、われわれはかよう考えております。
  119. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 この点について、ただいま大蔵省の例をひいたのでございますが、大蔵省の方では、人事勧告よりも下に厚く上に薄いという線が現われて来ておつたのでありますが、この点大蔵省の考え方と人事院の考え方について、総裁としては人事院の考え方が正しい、大蔵省の考え方の方がどちらかというとどうも少し間違つているんじやないか、こういうふうに思われるのですか、この点を承つておきたいと思います。
  120. 淺井清

    ○淺井政府委員 お尋ねでございますけれども、公務員法によりますと、結局民間給与と生活費に従つて出す、こういうことになつておりますので、民間の給与の線に合せますと、ああいうふうになるわけでございます。これを上の方を削りますことは、そこに別個の給与政策が入つて来るからであろうと思つておりますが、もし正直に民間と合せますれば、人事院の持つております給与曲線のようになつて参る次第であります。
  121. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 この点は、朝鮮事変以来会社等が少しもうかりまして、その関係上、会社等においているくと上の者に対して、昨年、一昨年等においては比較的に手当が出せたというふうな、特異の実例が現われたのでもなかろうかと、われわれは考えるのであります。これらの点は、いろいろと人事院においては民間給与に準ずるということを考えたときにおいても、朝鮮事変のために、特別に法人の所得が多かつた、それで上級職には割合にいろいろとよけい出した、こんなことが現われた点も、考慮に入れておやりになつたのかどうか。ただ朝鮮事変等を考えないで、上げたから、そのままの曲線をとつた、こういうふうな点であつたかどうか。その点を承つておきたいのであります。
  122. 淺井清

    ○淺井政府委員 人事院の考え方といたしましては、民間の給与の曲線に合せておくのが一番妥当ではないか。ことに公務員の給与は国民の負担でございますから、民間の給与に合せてありますれば、それは勤務者一般の給与の姿として、納税者たる国民は納得するのではないか、こういう考え方でございます。ただ朝鮮事変云々というようお話がございましたが、この民間給与の曲線も、ときによつてかわつて参るだろうと思いますから、勧告をいたしますたびに、民間の給与曲線をとりまして、合せておるのでございまして、将来その点がかわつて参りまするならば、人事院の給与の曲線もかえなければならぬ、それは当然のことでございます。
  123. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そうは申しますが、実際問題として、まさか上つた俸給を下げるというふうなわけには行かないというのが、給与の実態ではなかろうかと思つておるのであります。われわれも今まで、浜口内閣のときに俸給の引下げの問題があつただけで、前後その例を見ない、こういうくらいにいわれておるのであります。民間給与が、朝鮮事変等によつて、上級職の者には割合に厚くなつたというような点を考慮に入れないで、上の方を民間給与に準じて上げた。その後におきまして、今度は不況等が来ますと、何としても会社の上級職というものに対する給料が減る。しかしながら下の方の人の給料は、これはなかなか下げるわけにはいかない。こういうような実態が現われようと思うのであります。そういうときにおいては、やはり民間のカーブで、上級の方の人が下つたとすると、今度は国家公務員も上の方は下げるというところの勧告をするようなわけになるのでありますか。ただいまのお話を承つておると、そんなように承れるわけでありますが、その点はいかがでありましようか。
  124. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちよつとお答えの言葉が足りなかつたと思うのでありますが、しかし下げる、上げると申しますことは、ベースの下げる、上げるの問題と、給与曲線の下げる、上げるの問題とは、ちよつと別のように思つております。給与それ自体の実態額につきましては、これは下げるということは実際なかなかあるまいと考えおります。但し給与の曲線をかえて、上の方を少く上げ、下の方を多く上げる、給与の曲線の引き方は、勧告のたびにかわつてさしつかえないものと思つております。
  125. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それでは最後に、人事院としましては、給与改訂勧告について、昨年の一千円を無理せられたというような点があり、そうしてまた今年におきましては、食糧の値上げ、あるいは鉄道運賃の値上げ等がありますので、人事院の権威と責任において、ひとつ公務員のために努力を願いたいと思います。  それからもう一つ、地域給については非常に問題があるのであります。五級地等におきましては二割五分があるのに、一方においてはちつとも地域給がないところがある。こういうことはどう考えても不合理な段階に来ておると思いますので、これは五級地等においてあるいは二割五分を今度は二割にするというふうな英断までも振つて、全部にひとつ若干の恩恵があるように、地域給の線からの努力をお願いいたしておきたい。  それから最後に、給与準則におきまして、やはりまだ日本においては、生活給と能率給、職階級との間を動いておるという点が相当あるのでありまして、国家公務員となれば、下級公務員もいろいろと体面を保たなければならぬ。特に就職等をいたしたときには、洋服をこしらえたり、初めのスタートを切つたときには、生活費がかさむという点も考えられるので、特に公務員等については、いろいろとその生活給が満たされるという線におきまして、給与の改訂等におきましては、その線を考慮に入れて御研究を願いたいと思います。これらの点を要望いたしまして、総裁に対する質問を終りたいと思います。
  126. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 人事院総裁に対する質疑の通告がありますから、この際まとめて許すことにいたします。古井喜實君。
  127. 古井喜實

    古井委員 総裁にひとつ伺いたいのでありますが、人事制度について存廃の論が時折あるのであります。廃止したらどうかという論が出るのであります。それで現在の吉田政府がどういう考えをもつているかということは、これは別問題といたしまして、人事院の総裁をなさつておられて、人事制度に対してどうお考えになるかの問題であります。私は現在の人事院の実際のお働きについては、各方面からやまやま批評があると思つております。ことに俗に申せば、やらずもがなのことまでやり過ぎておりはせぬかとか、いかにも機械的、画一的じやないかとか、いろいろ批判はある患います。多分今日の段階では、むしろマイナス面の方が多くて、プラス面の方が少いくらいの実情ではないかとさえ思つておるのであります。さればといつて、それではこれを廃止することがいいか悪いかという問題になりますと、この点私は廃止することに非常に疑問を持つ一人であります。と申しますのは、今日の段階においてはとにかくといたしまして、後日いわゆる政争が、なかなか苛烈になつておるような時期も考え得ないではない。往時のあの苛烈な政争時代のことを思いますと、事務吏僚というものの地位が、実に不安きわまる状況であつて、大きな害をなしておつたのであります。今日はそういう段階でありませんから、有用性が出て来ないかもしれませんけれども、そういう時代もなきにしもあらず。そうといたしますと、今日速急に廃止した方がいいとかいう考え方が展開するのは、よほど考えものであるという気持を持つておるのであります。少くとも、そういう時期に役に立つとかなんとかいうことを一ぺんテストしてみなければならぬものであろうと、最小限度つておる一人であります。この辺につきまして、実際人事院を所管なさつてつて、どうお考えになつておりますか。この点について御所見を伺いたいと思います。
  128. 淺井清

    ○淺井政府委員 それはまことに根本的な問題でございますが、大体ただいまお述べくださいましたようなことが、私の答えになるよりほかないと考えております。ことに人事院設立の趣旨にかんがみまして、かような独立性のある機関を設けましたことは、一方において国家公務員の争議権をとり、団体協約権をとり、政治活動の制限をいたしましたかわりになつておるわけでございますから、これは双方見合いになつておるのでございます。その意味におきまして、やはり人事院の制度というものの存在理由はあるよう考えております。そのほかは、ただいま申し述べられましたことが、私のお答えというふうに御了承願いたいと思います。
  129. 古井喜實

    古井委員 もしその辺に御所信がありますならば、そういう問題が起りました場合に、御所信に基いて御行動をなさいますことを、私は希望いたします。  次に、私はこの予算委員会のほかに、決算委員会に関係いたしておりまして、見ますところによると、公務員犯罪というものがまことに多いのであります。これは時勢の関係もあると思います。しかしこの問題が、公務員の給与という問題と関係がないだろうかということを思わせられるのであります。常識論から見ても、給与という問題とそこに深い関係がありそうに思えてならぬのであります。この点についてはどうお考えになりますか。おびただしい公務員犯罪が二十五年、二十六年にあり、本年度においても出て来るだろうと思うのであります。その点が一つであります。  それからいま一つは、ああいう公務員犯罪がたくさん出て来るということに対して、人事院は何ら関知するところがないものかどうか。従前は、人事院機構がないときでありましたけれども、しばしば政府は綱紀の粛正というふうなことを政策に掲げて臨んで来たのであります。しかし今日は、政府は、人事院があるゆえか、ことさらそういう政策を掲げられるということを見ないのであります。さればといつて人事院がそういう政策を打出されるという立場でもないように思います。しかしあるいはそこに職務上何かの御責任があるのかもしれぬが、この辺のことにつきまして、人事院はどういうお立場をおとりになろうとなさるのか。この両点について御所見を伺いたいと思います。
  130. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答え申し上げます。第一点は、お示しのように給与の問題と深く関係もいたしておりましよう。すなわち。衣食足つて礼節を知るということも確かにございましようが、それのみとも考えられないのでございまして、これはやはり終戦後におけるいろいろな社会的な原因もあろうかと考えております。  第一点の問題は、まことに申訳のない次第でございまして、人事院といたしましても、十分責任を感ずるのでございますが、人事院設立以来足かけ五年にも相なりまするけれども、ほかのいろいろな建設的な仕事の忙しさに追い込まれておりまして、その方面に十分力を尽す段階になつていませんことは、御指摘の通りで、人事院といたしましても余裕があれば、そういう方面も公務員法と許されておる権限範囲内で十分努めて行きたいという考えは持つておるのでございます。
  131. 古井喜實

    古井委員 先ほど石井委員から、地域給の問題について御質問が出ておつたようでありますので、重複してはいけませんから簡単にお尋ねいたしておきたいと思いますが、重複いたしておりましたら、御注意願つてもけつこうです。  昨年の地域給の級地指定というものの結果を見ますと、まことに均衡を失した状態を現出しておると思つております。これは私は資料を持ち合せておりませんけれども、明らかに均衡を失した、まるで真反対の立場になつておるというような例も起つておるようであります。ついてはこれを是正するというか、均衡を保つように直すことが一つの問題になつて来たように思うのであります。この点についてはどうお考えになつておりましようか。これが一つであります。  それからもう一つは、あの煩雑な級地指定ういうことをいたしますと、きりがつかぬようになつてしまう。国会の両院の方々も、それぞれの関係等であるのか、いろいろな要望も出て来て、きりがつかぬようになつてしまう。これはむしろ根本は、給与全体の引上げというか、そういうことで大筋を解決するということでないと、結局多数のところが割込んで行つて、級地指定というものがぼやけてしまう結果になりはしないかと憂えておるのでありますが、この両点について御所見をお伺いした。
  132. 淺井清

    ○淺井政府委員 第一点につきましては御説の通りでございますが、人事院といたしましては、全国的にちやんとバランスをとつて勧告をいたしておる次第でございます。それを、かように申し上げましては失礼でございますが、国会の方におきまして、これはアンバランスであるというので、国会でそれに追加をなさる、その結果またアンバランスになつたという批判を受ける、そこでこのアンバランスを是正するために、人事院としてはまた勧告をしなければならぬところに追い込まれる、その勧告が出ますと、これがまた国会において追加されるというふうで、結局いたちごつこになると思つておるのでございます。さいぜん石井さんにもお答え申し上げました通り、これはひとつ思い切つて廃止の方向へ参るということを申し上げたのでありまして、第二点は、すなわち御説の通り考えておるということでございます。
  133. 古井喜實

    古井委員 もう一ぺん確かめておきたいと思いますが、そうすると、昨年級地指定があつて、あの通りの状況になつておると思いますが、あの級地指定の問題については、是正はもうなさらない、やるならばもつと基本的な、今の給与全体の引上げというふうなことで行こう、こういうことであつて、あの補正はもうなさらないという考えであるかどうか。
  134. 淺井清

    ○淺井政府委員 その点はまだはつきりここで申し上げることはできないと思います。結局その二つのものを一緒にやりますか、あるいは若干の補正をいたし、引続いて根本な改正をいたすか、その辺はまだ何とも申し上げかねますが、ただこの国会中には、人事院が再び地域給の勧告をいたすことはないと御承知を願いたいと思います。
  135. 古井喜實

    古井委員 最後にお伺いしたいと思いますが、公務員体系といたしまして、国の事務だけを行う公務員を地方公務員という形で置くということは、今日の体制から行つて不合理ではないか、またそれと逆に、府県事務、市町村の事務という自治体事務を行うために国家公務員を置く、こういう二つの真反対の場合ですが、そういうことは今日の公務員体系から言つて不合理なおかしなことじやないか、そういうことも十分考え得るものであるかどうか、その点についての御所見を伺いたいと思います。  なお一つ――国家公務員という身分を持つた人間の給与を、国庫はまつたく払わないで、地方費をもつて全額支弁させるというような、こういう合いの子の体系はどういうものであるか。  それからもう一つは、国家公務員任免権を、まつたくの地方機関に委任する、こういうことが今日の体制において不合理ではないかどうか、こういうことも一向かまわぬということになるかどうか、この点についての御所見を伺います。
  136. 淺井清

    ○淺井政府委員 どうもこの御質問には非常な含みがあるように思われます。これは本国会における重要法案に関係して来るように私は思いますので、これはちよつと抽象的に、この席上での御答弁は政府委員として差控えたいと思つております。
  137. 古井喜實

    古井委員 それはどういうことでありましようか。現実の問題であればこそ特に伺う必要があるのであつて人事院総裁は今日の公務員体制からいつてどうお考えになるかということを、これは御答弁になれぬはずはない。で、回避されるという必要もなければ、少しも躊躇されることはないと思う。
  138. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただこれはその法案の付託されておりますときに、さだめし私もひつ張り出されて御答弁をしなければならぬようになるかと思いますが、この席上では、ちよつと事が抽象的でございまして、お答えをしようがないと思つております。
  139. 古井喜實

    古井委員 ごの席は忌避するというお話でありますが、この席も少くとも警察費も審議いたしております。それから地方負担に対する平衡交付金も審議をいたしております。この席でなくてどこならば御所見を伺えるのか――どうお考えになりますか、ここでおやりになれぬならばどこでもできぬはずだと思う。
  140. 淺井清

    ○淺井政府委員 おそらくそれらの法案が付議されます席上で私も御答弁に立たなければならぬような事態が起つて来ると思いますが、これは個々の具体的な問題としてお答えをいたすよりほかはないと思いますから、この席上で、何か学説のように抽象的に申上しげますことはお許しを願いたいと思います。
  141. 古井喜實

    古井委員 それじや具体的に伺いましよう府県警察職員のうちで上級の者は国家公務員にする、その国家公務員がその下級にある地方公務員を任免するというふうな案も、御承知の通りあるのであります。そこでこの警察事務がかりに国家責任に属する国家事務であるといたしますれば、これは地方公務員というのが下に置いてあるというかつこうになつて来る、上は国家公務員であります。こういうことが不合理なしに成り立ち得るかどうか。それから警察事務がもし自治体事務である、こうありますれば、この上級幹部が国家公務員であります。これは自治体事務であれば、自治体事務のために国家公務員を置いたという形になる。そのいずれかに相違ない。どつちかが国家事務であるか、自治体事務かに相違ない、幸か不幸か国家公務員地方公務員と同じ事務について、同じものについて置いてあるのですから、明らかにこれはまぬがれ得ない問題が一つ出て来ている。そこでこういう体系が成り立ち得るかどうか、これが一つであります。  それからもう一つ実際例から申しますれば、市町村教育委員というのは地方機関であります。それが今度国家公務員たる義務教育職員任免権を委任されようというわけであります。それで市町村の教育委員に対しては、文部大臣もだれも身分上の権限はない。どんなに言うことを聞かなかつたところでどうしようもない相手であります。これが国家公務員任免権を持つわけでございます。これは実際問題上起つておる、こういうことはかまわぬのかどうか、また八大府県においては国家公務員というものの給与の全額を地方費で持たせようとしておる。こういうことも今の体系上さしつかえないのか。これは実際例を申せというならばこういうわけで、さつきお尋ねした問題はいずれも今日の実際の問題であるから、なおかつこの問題はここで伺い得ない問題ではないと思う。裏腹の関係を持つ予算の問題が、ここにかかつておるのでありまして、まさにわれわれはここで審議しておるのであります。それで法案審議の場所でなければ答弁できないというはずはないと思います。われわれは案ずる権利があると思います。御所見を伺います。
  142. 淺井清

    ○淺井政府委員 第一の警察の問題は、これは人事院の所管外のことでありますし、私の知れる限りにおいては、まだ政府が法案を提出していないじやないか(古井君「提出して、ここにありますよ」と呼ぶ)というふうに考えておりますが、それはちよつと人事院の方から御答弁がいたしかねると思つております。  それで義務教育職員法に関してのお尋ねでございますけれども、これはすでに法案が提出されておるように思うのでありますが、私は政府委員として政府提出の法案を批判することはできないのでございますが、お示しのような点は、法律によつて委任をされておることでございますし、給与は国家公務員でも地方負担ようなことも従来からもあつたことでございますから、さしつかえないように思つておりますが、これは結局国会の御意思でもつてその当不当を御判断になるべき問題のよう考えております。
  143. 古井喜實

    古井委員 そういたしますと、どんな法律をつくろうが、人事院としては意見も何もない。国会を通つてできる以上は、これはもう関知するところにあらずというお考えようで、それならそれでけつこうであります。そういう無定見なる人事院であるならば余儀ないことであります。そういう人事院総裁おいでになるということも、これも一つの知識でありますので、それならそれで余儀ないことであります。今お話の中に、国家公務員で給与を地方費で負担しておる実例は従来もあるということでありましたが、どういう実例がありますでしようか。
  144. 淺井清

    ○淺井政府委員 これはすでに明治憲法の時代からもさようなものはあつたのではないかと思つております。なお手元に今何にも資料を持つておりませんので、あるいは私の考え違いかもしれません。
  145. 古井喜實

    古井委員 これは明治憲法時代にも、異例であるが、あつたのであります。郡役所廃止の際に官吏たる身分を持つた者を府県庁に移すときに、ごく限られた範囲の者の扱いとして、そういう例が起つてつたのです。しかし当時でもこれはよくないことだということであつたのであります。本筋にあらず、いわんやこの新憲法のもとにおいて、新しい自治法の体制においては、こういうことはできないかつこうになつておるのじやないかと思うのであります。まだ例は全然ないと私は思つております。あるということだつたから、あるかどうかと思つたのでありますが、しかとした御記憶がありますれば伺います。総裁でなく、人事院からおいでになつておるお方で、そういう実例があるとおつしやるならばお伺いをして、私はこの問題だけで質問をとどめたいと思います。
  146. 淺井清

    ○淺井政府委員 おりません。所管が違いますから……。
  147. 古井喜實

    古井委員 それでは希望だけを述べておきます。今の点でもし実例かありますならば、すみやかにお示しを願いたい。ここの席でなくてもよろしゆうございますから、ひとつこれをお願いをいたします。
  148. 淺井清

    ○淺井政府委員 私ただいま非常に不用意に申したかもしれませんが、私が申しましたのは、主として明治憲法時代の異例についてその記憶があつたものですから、申し上げたのでございます。
  149. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 午前の会議で、午後三橋恩給局長を呼ぶということをお話申し上げましたが、病院に入つていて、まだ出られないそうであります。それで古井委員の質問が続いておりますが、犬養法務大臣も本会議の済むまで出られないそうでありますから、その間に恩給局審査課長から恩給に関する説明を聴取いたします。福田赳夫君。
  150. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私はただいま主査からお話ように恩給問題を中心にいたしまして御質問を申し上げたいと思います。今回の予算を通じまして、財政上の新規施策というのは恩給だけであります。旧軍人恩給四百五十億円というのでありますが、この予算書を見ると、この四百五十億円は旧軍人恩給として特掲をされておるわけであります。これは何か詳紙な説明でもあるのではないかと思つて、各自明細が出るのを待つておりましたが、各日明細を見ましても依然として四百五十億円だけで、何らの内訳もついておらない。政府のやり方としてはきわめて不穏当なところではないかと思うのですが、何か特別な理由かあるのですか、ないのですか。
  151. 城谷千尋

    城谷説明員 四百五十億円の内訳を申し上げたいと思います…。
  152. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 そうではなく四百五十億円というのは各日明細でも一本となつておるが、予算の付属資料として、何か他に説明するものがあるのか、ないのかということなのであります。
  153. 城谷千尋

    城谷説明員 他には別にないそうであります。
  154. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 恩給ばかりではないのですが、政府の予算のやり方というものは、戦時中の残滓が、また占領政策において指導されておつたころの押しつけ予算の残滓が、非常に残つておると思うのです。一番顕著なのがこの恩給であろうと思う。政府の唯一の新規財政施策であり、かつ金額も四百五十億円というのに、これをどこまで追究して行つても四百五十億円一本しか出ていない。これは非常に不当なやり方ではないかと思うのです。あなたはその主管者でありますが、こういうことで審議の対象として十分だと思つておるのか。国会に対してははだけしからぬ行動だと思うのですが、どうですか。
  155. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 福田君に御相談ですが、審査課長では御答弁がいたしかねると思います。――内閣の会計課長が来ておられるが、今言われたような御質問の趣旨に対する答えをする立場にあるのはあなたですか、それでは答弁を願います。
  156. 三橋信一

    ○三橋(信)政府委員 私総理府の会計課長をしております関係で、恩給予算につきましても、政府委員といたしましては私の所管になるわけでございますか、これは単に私のみの考えで組めるわけでもございませんので、あしからず御了承を願いたいと思います。
  157. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 総理府会計課長というのは、他よりも強大な地位にあるはずでありますが、もう少し見識のある御答弁を願いたい。つまり福田委員は、これでよいと思つておるかどうかという御質問です。あなたは責任者として、それでよいと思つておるかどうかという回答をなさるべきであります。
  158. 三橋信一

    ○三橋(信)政府委員 十分であるとは思つておりません。
  159. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 この恩給問題につきましては、非常に審査の材料がないのです。各日明細を見ても、一本で旧軍人等恩給費四百五十億円、これつきりない。さらに法律案につきましてもまだ上程にもなつておりませんし、恩給法の一部を改正する法律案要綱というものも、いろいろな重要事項を省略した、何といいますか、刺身のつまみたいなものでありまして、法律案については、この元になる審議会の建議というものは一体どうなつておるのか。これは一切の提出がない、どうも審議の態勢を整えておらぬように思うのです。でありますから、実は質問のしようもないのでありますが、ごくあらましのことだけをお聞きいたします。  軍人恩給問題というのは、これは実は在外財産の補償というような問題もあるわけであります。それから政府支払いの打切りという問題もむろんある。あるいは預金の封鎖、預金の切捨てといつたような問題もある。戦後一貫して戦争中に生じた債務を政府はほとんど軒並に切り捨てたわけです。その切捨てに際しまして、軍人恩給というものも一環のものとして切り捨てられたわけです。今度それだけを特出して軍人恩給を復活する、こういうことになるのできわめて重要なる意味を持うわけです。それともう一つ国会の各派におきまして社会保障をやつて行くのだということをみな公約をしておる。社会保障制度を全面的にみながやつて行こうという気運になつておる際に、この二つの問題を背景として軍人恩給の復活ということを考えてみますと、ここに今後の経済財政というものを考えて行く根本的な問題が、ひそんでおるのではないかというふうに考えておるのでありますが、まず審査課長に伺いますが、在外財産問題その他各種の戦争債務を切り捨てるという問題と、この軍人恩給の復活問題を、どういう感覚をもつてつておるのか、これをひとつお尋ねしたい。
  160. 城谷千尋

    城谷説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。これは非常に大きな問題でございまして、一介の事務官の私が御満足の行くような答弁ができようとは、ちよつと考えられないのでありますが、何と申しましても、私の私見という程度で御了承を願うよりほかに方法はないのでありますが、軍人につきましても一般文官同様に法律で恩給を約束されておつた。こういう意味が多分にあるように私個人は理解しておるのであります。従いまして在外財産とかいろいろな問題もあろうとは思いますが一物的補償といいますか、とりあえず法律で約束されておつたものをやるという趣旨ように私は理解しております。
  161. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それを伺つておるのではないのです。在外財産補償などという非常にうるさい問題がある。預金の封鎖、打切りという問題もある。あるいは戦争債務の打切りという問題もあります。そういう問題が、軍人恩給復活という問題を契機として、今後大きな重味を持つて政府にのしかかつて来ると思うのです。それを一体政府はどういうふうに考えているかという問題なんで、これはあるいは審査課長さんに伺うのは適当でないかもしれませんが、ひとつ私がそういうことを言つてつたということを伝えていただいて、しかるべき人から適当な機会に――これは非常に大きな問題なんです。一体腹をきめてやつたのかどうかというところを伺いたいのです。
  162. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 福田君に申し上げますが、今のお話は、江口官房副長官が来たそうでありまして、今江口君の出席を要求いたしております。その間に成田君の法務省に対する質問は短い時間で済むそうでありますから、せつかくですが、官房副長官が出るまでの間お待ちを願つて、成田君に願いいたします。
  163. 成田知巳

    ○成田委員 最初に公安調査庁関係についてお尋ねしたいと思います。明細書を見ますと、団体等調査報償費というのが約一億四千七百万円、それから団体等調査旅費というのが六千二百二十五万円あるが、この団体等調査報償費というのは一体何でございましようか。
  164. 關之

    ○關政府委員 団体等調査報償費は、公安調査庁において、破壊的団体の規制のために役立つところの情報及び資料を収集するにあたりまして、その主として実費の弁償的な意味費用であるのであります。
  165. 成田知巳

    ○成田委員 情報収集の実費の弁償だというお話でございますが、これは個人を対象にしておるのでございますか。それとも地方団体とか、団体への調査依頼を対象にしておるのでございますか。
  166. 關之

    ○關政府委員 これは破防法の規定するところが、破壊的団体の規制ということに相なるわけでございます。そこで調査の対象は、結局その団体が破壊活動をして破防法に該当し、これを規制するかどうかということになるわけであります。従いましてすべての情報及び資料は、団体の活動がどういうふうになつておるかという点を調査するわけであります。すべて調査のねらいがそこにあるわけでございますから、結局のところそういう意味においての情報及び資料収集の実費弁償ということに相なるわけでございます。
  167. 成田知巳

    ○成田委員 私がお尋ねしましたのは、破防法の関係で情報、資料を収集する、その報償費として一億四千七百万円をお組みになつておるのですが、この目的は破防法の関係でございましようが、この報償費をお出しになるのは、ある団体にお出しになるのか。たとえば地方自治団体にお出しになるのか、あるいは個人にお出しになるのか、それを伺つておるのです。
  168. 關之

    ○關政府委員 情報及び資料を収集するにあたりまして、こちらが協力を受けあるいは依頼するというのは、ある場合には個人の場合があるわけであります。ある場合は団体の場合があるわけであります。
  169. 成田知巳

    ○成田委員 その団体というのは地方公共団体なんですか、それとも私的な団体なんですか。
  170. 關之

    ○關政府委員 主として私的な団体でございます。ときには地方公共団体にも御依頼する場合があります。
  171. 成田知巳

    ○成田委員 今の御答弁ですと、個人と団体、団体は私的な団体と公共団体というお話でございましたが、二十八年度の一般会計予算、この中を拝見いたしましたならば、今年は地方公共団体にそういう調査を委託費というものを組んでおつたが、来年はゼロになつておるのです。従つて来年は地方公共団体というものは対象にお考えになつていないのではないのでしようか。
  172. 關之

    ○關政府委員 御指摘の点につきましては、これは少し長くなりますが、御説明いたしたいと思うのであります。本年度におきましては、団体等調査地方公共団体委託費というのが載つておるわけであります。それはこういう次第でさような金額が載つているわけであります。団体等規正令という政令が占領時代にあつたのでありまして、これは昨年破防法が実施された七月二十一日に失効しておるわけであります。その規正令のもとにおきましては、その事務中央では法務府内の特別審査局が担任していたのでありますが、地方におきましては、特殊な地方的組織を設けず、その調査事務はもつぱら地方公共団体に委託いたしまして、その事務を遂行していたのであります。その事務を遂行するからには、やはり費用を差上げなければならないというわけで、さよう地方団体に対する調査委託費というものが計上されてあるのであります。ところが破壊活動防止法の実施に伴いまして、公安調査庁が設立されまして、公安調査庁は本庁のほかに全国の都道府県に、小さいながら一つの役所というか、末端機関を持つたのであります。そこで従来のさよう事務を委託するという意味合いにおけるところの費用というものは、計上する必要がなくなつて、それで落しておるわけであります。
  173. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、委託費としてはない。しかしながら報償費というものは、地方自治団体にも支給することがあるというわけですか。
  174. 關之

    ○關政府委員 それは、少い例ではありますが、若干あり得るだろうと私どもは考えているわけであります。たとえて申しますと、地方自治体の自治警察にあることを協力していただくというような場合には、やはり実費を若干差上げるというような場合において、さようなことが考えられるのであります。
  175. 成田知巳

    ○成田委員 公共団体の方はわかりましたが、私的団体というのは、大体どういうものを予想していらつしまいましようか。
  176. 關之

    ○關政府委員 私的団体は、たとえて申し上げますならば、各種の通信あるいは情報などの報告をなされるところの各種の団体であるとか、あるいは各種の研究をされている団体であるとかいうようなものが、この例であります。
  177. 成田知巳

    ○成田委員 個人の場合ですが、これは二、三年来相当問題になつているのですが、私たちの聞いたところによりますと、公安調査庁の役人の方が、俗に言えばスパイというのですか、それにこういうことを調べろ、こういう情報を提供すれば幾らやるというようなことを盛んにやつている。去年の予算委員会分科会でも、私この問題をお尋ねいたしましたが、確かにそういう費用を出している。報償費というのは科目に上つていなかつたと思いますが、出しておつたと思います。最高どれくらい出しておるかと聞いたら、それは言えないと言われましたが、大体の予算をお組みになつているでありますから、それは言えないことはないと思いますが、重要案件に対しては五万円出す、十万円出すとか、あるいは小さいものでしたら五百円とか千円とか出して、事実上全国でそういう情報収集が行われている。悪く言えば、スパイに対する報償金が出されておるのですが、その大体のめどを教えていただきたい。
  178. 關之

    ○關政府委員 これは要するに調査庁におきまして御協力を願つて、情報、資料を収集するその実費を支払うという大体の基準でありまして、これらは非常にニュアンスがありまして、画一にこれこれというふうに、ここで申し上げかねるような事態になつておるわけであります。
  179. 成田知巳

    ○成田委員 情報の収集を依頼して、その依頼によつて情報収集をやつた実費だと言われるが、実際はそういう場合はほとんどないだろうと思います。知つている事実を金を出して買つている、その報告を受けている、これが事実だと思います。報償費だということになると、こういう仕事をしてもらいたいと依頼されて、それでいろいろ調査する、あるいは走りまわるというなら、実費という問題が起るだろうと思いますが、従来行われているのはそういうものではなく、たとえば労働組合で働いている幹部がいる。この人は今まで労働組合運動をやつてこういう事実を知つている。また政党の間でも、政党運動をやつた結果ある事実を知つている。それに対して金をお渡しになつて情報をとつている、こういうのが大部分だと思います。そういたしますと、先ほどの御答弁とは少し筋が違うのです。そういうものもこの一億四千七百万円でお払いになつているのでずが、その点はいかがです。
  180. 關之

    ○關政府委員 情報を入手する経過、筋道、動機等につきましては、いろいろの場合があり得ると思うのであります。お尋ねのごとく、向うの方からこういう情報があるがというふうに来る場合もあろうと思うのであります。もちろんそういう場合においても、その内容、事情などを聴取いたしまして、それ相応の実費を払つているのであります。
  181. 成田知巳

    ○成田委員 その調査に要した実費を払うというのは、それは一つの御説明なんですけれども、実際はそうではなしに、案件の重要性に応じて金をお払いになつておる。実費じやないのです。持つて来る資料が相当重大な案件でしたら五万円、十万円やる。こういうことを知らしてくれ、この事実をお前が知つているのだから知らしてくれ、そうすると、五万円、十万円やる。実費弁償じやなしに実際は案件の内容によつて金をお出しになつておるのが実情だと思うのです。つかみ金を持つていらつしやつて、それをどんどん渡して行く、こういう実情だと思うのですが、そういう実情をお認めになりませんか。
  182. 關之

    ○關政府委員 提供を受けた情報、資料に対しますその報償の程度でありますが、これは私どもはあくまでやはり実費の弁償であるというふうに考えておるわけであります。そうしまして、その報償の程度は、今お尋ねのごとき内容の重要性ということももちろん一つの判定の基準であろうと思うのでありますが、そればかりではないのでありまして、やはり諸般の、その人の活動の実際を伺いまして、これらを主として考慮して、そこに実費的な報償をするということに相なつておるわけであります。
  183. 成田知巳

    ○成田委員 この調査報償費一億四千七百万円というのは、本庁の方でもお持ちになつておるのでしようが、地方の局の方にもおわけになつておるのですね。
  184. 關之

    ○關政府委員 これは予算といたしますれば、公安調査庁一本になつておるのでありますが、具体的な手続といたしましては、大臣の訓令によりまして、それぞれ各五十の地方局に四半期ごとの予算編成をいたして配賦いたしまして、使用している実情であります。
  185. 成田知巳

    ○成田委員 四半期ごとに五十の地方におわけになつておるというのですが、そのわけ方なんです。今のお話では、ある調査を依頼する、その実費を補償するために報償費というものをとつたのだと言われますと、おわけになる基準は、各地方の局から出して参りますこういうことを頼もう、こういうことを頼もうという件数に応じてお出しになつているわけですね、つかみ金を、ぽかつとお前のところは幾ら、お前のところは幾らというふうにわけるじのやなしに、地方から出して来る詳細なこういう調査をやるのだ、これには実費がこれだけかかる、こういうことでおわけになつておるわけですね。
  186. 關之

    ○關政府委員 配賦の基準につきましては、今御指摘のごとく、やはり各局における情報収集のそういう実際の具体的な件数というのがもちろん資料となりまして、それらの実績その他必要な度合いということを勘考いたしまして配賦しているわけであります。
  187. 成田知巳

    ○成田委員 やはり一億四千七百万円という金を予算にお組みになるとすれば、一応のめどがあるはずなんですが、件数は何件くらい、最高は大体どのくらいのものをお出しになるつもりか、伺いたい。
  188. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの大体のめどという点でありますが、これにつきましては、われわれといたしまして一応今日までの過去の実績というものを基準といたしまして、その上に、将来私どもの役所が千九百人に職員を充足いたしまして、これくの活動をなさなければならないというような一応の目安を置きまして、その上でこの金額を割り出したわけであります。
  189. 成田知巳

    ○成田委員 過去の実績と将来の見通しを加味して一億四千万円をおきめになつたというのですが、大体調査依頼件数は何件あるのですか。それから最高幾らお出しになつておるか。
  190. 關之

    ○關政府委員 昨年度におきましては、これは予算調書をごらんいただけばおわかりになりますが、五千五百万円の報償費があつたわけであります。これにつきましては、今お尋ねの、従来の特審局関係職員において収集した一切のものについて、これが何件というふうに累計的な統計を実はとつたことはないわけでありまして、その点あるいはそこまでやらなければならないじやないかというようなお尋を受けるかと存ずるのでありますが、実は今日までのところ、さようなことをこまかい点まで調べたことはないのであります。それはこの情報資料の収集につきましては、非常にいろいろのニュアンスの程度がありまして、一々そこまで調査をいたしかねた次第であります。
  191. 成田知巳

    ○成田委員 今の答弁と先ほどの御答弁と少し食い違いがあるように思います。一億四千七百万円とおきめになつたのは、過去の件数その他の実績に将来の見込みを加味しておきめになつたというのですから、当然過去の実績がなければこの数字は出てこないわけです。算定の基礎なんですから……。だから今手元にお持ちにならないかもしれませんが、予算の要求書をお出しになるとぎには、やはり過去の実績を各地方からおとりになつて、それに基いておやりになつたはずです。ですから調べはすぐつくはずでございますね。
  192. 關之

    ○關政府委員 今のお尋ねの点でありますが、今まで特別審査局で千二百人の職員をもちまして、主として規制令に基く破壊的団体の規則の事務をいたしたわけであります。そうして、公安調査庁になりますと、それが約五百人増加いたしまして、千七百という人員を擁しまして、破壊活動防止法に基く調査の事務をいたすことに相なつたわけであります。その人員の差、法律上の根拠、調査の内容というようなものも参酌いたしまして、かような増額を要求いたした次第であります。
  193. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、先ほどの御答弁はお取消しになるのですか。今お聞きしましたのは、報償費は過去の実績を基礎にし、将来をしんしやくしておる、過去の調査依頼の実績は何件あつたか、その最高は幾らであつたかということをお聞きしたわけですが、じやその調査を依頼した実績じやなしに、特審局時代には、職員が千二百人、これが千七百人になつたから適当にふやしたんだ、こういう御答弁になつておるわけですが、それじや何件依頼して、最高幾ら出し、最低幾ら出した、こういうよう意味の過去の実績に基いて予算を編成されたということじやないということになりますね。
  194. 關之

    ○關政府委員 言葉が不足いたしましてたいへん恐縮でありますが、もちろん千二百名の特別審査局時代の職員がそれぞれ情報活動をいたしたわけであります。それは今申し上げたように、あるいは依頼もし、あるいはある情報の提供を受けた。それに対してこの五千五百万円の報償費を支払つておるわけであります。それらの現実の事実、事情、それを基礎といたしまして、さらに公安調査庁における千七百ているわけであります。
  195. 成田知巳

    ○成田委員 それでわかりましたが、そうすると二つの要素があるわけですね。一つは、特審局の千二百人の時代にいろいろ調査を依頼したというあの件数とその実績、もう一つは、千二百人から千七百人になつたことを加味して一億四千七百万円というものをお組みになつたと了解してよろしゆうございますか。
  196. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの通りであります。
  197. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると、やは過去の千二百人時代いろいろ頼んだという実績があるわけですね、これをひとつ御報告願いたい。千二百人の特審局時代に何件頼んだ、そして頼んだ相手はだれだという人名、それから金額、この調書を至急にお出し願いたいと思います。
  198. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの点は、私どもの役所といたしますれば、一つの秘密の事項に属するものと私は思うのであります。上司に相談いたしましてお答えいたしたいと思うのであります。
  199. 成田知巳

    ○成田委員 役所としては秘密でございましようが、これだけの国費をお使いになつているのですから、私たち予算を審議する上において、どういうようにこの金が使われたかということは重大関心がある。だから秘密会でもよろしゆうございます。今の御答弁ではつきりいたしたのですが、要するに件数も一つの資料になつており、また地方で特審局時代にお出しになつた事定があるはずです。だからだれに幾ら渡したという件数別の資料を早急にお出し願いたいと思います。
  200. 關之

    ○關政府委員 前回お答えしたことく、上司に御相談いたしまして、しかるべく御回答いたしたいと思います。
  201. 成田知巳

    ○成田委員 次に、人権侵犯の調査の費用を相当お組みになつているのですが、去年どれだけの人権侵犯があつたか、それをどういうように処理したかということを御答弁願いたい。
  202. 天野武一

    ○天野政府委員 ただいま資料を持つておりませんので、さつそく帰つて調べまして御報告いたしたいと思います。
  203. 成田知巳

    ○成田委員 これは性質が違うのでございますが、人権侵犯の二十七年中の件数と、その具体的な内容をお知らせ願いたいと思います。それから今お願いいたしました調査報償費の具体的な件数、相手の名前と金額だけはぜひ知らせていただきたいと思います。  次に営繕費についてお尋ねいたしたい。昨日も裁判所関係の営繕費についてお尋ねしたのですが、予算全体として営繕費は約三十八億、そのうち裁判所が八億、法務省関係が十億で、両者で約半分を占めておるわけです。この十億の営繕費の内訳をお知らせ願いたい。
  204. 天野武一

    ○天野政府委員 営繕費の内訳ということになりますと、御存じの通りに、法務省所管の役所が、本省のほかに検察庁、それから刑務所関係、それから法務局関係、さらにまた公安調査局関係等の建物があるのでありまして、その営繕を予定しておる建物の数ということで表現いしたますと、次の通りになります。法務本省は、今建築中のものをさらに継続して続けて行きたいということであります。それから法務局関係は、出張所を含めまして全国で三十八箇所を予定しております。それから保護観察所では四箇所、それから公安調査庁関係で一箇所、入国管理局関係で二箇所、それから矯正関係で、改築整備等全部含めまして、刑務所関係で四十二箇所、それから少年院、同じく継続整備を含めまして四十一箇所、少年鑑別所につきまして同様の趣旨で九箇所、大体かようなものを営繕費として計上してございます。
  205. 成田知巳

    ○成田委員 刑務所関係で四十二箇所というお話でありましたが、刑務所施設整備費というものを二億六千四百十五万三千円お組みになつておるのです。これが四十二箇所で、金額としても相当厖大なものですが、そういたしますと、刑務所の収容人員は相当ふえているのだろうと思うのですが、二十六年度、二十七年度の受刑者の数及び二十八年度の見込みを伺いたい。
  206. 天野武一

    ○天野政府委員 収容者の数につきましては、昨日も申し上げました通り、刑務所の方は前年度予算を十万と予定して組みました。今度二十八年度はそれが減つて来るだろうという情勢にございますので、九万二千で組んでございます。これは少年等を別にいたしました成人の分でありますが、現実はあるいはもう少し減るのじやないかと存じます。
  207. 成田知巳

    ○成田委員 受刑者の数は減つておる、そして刑務所の施設整備費はふえているというのは、施設の内容をよくされるという意味経費でありますか。
  208. 天野武一

    ○天野政府委員 さようであります。具体的に申しますと、外塀が非常に腐朽したり弱つているところがございましたり、建物の囲いが弱つておりましたり、あるいは放送機と申しますか、拡声機のようなものをとりつけて連絡を密にしたいというような、こまかいものを全部含みます。
  209. 成田知巳

    ○成田委員 次に入国管理官署の関係でお尋ねしたい。護送収容費を二億二千三百九十三万九千円組んでありますが、何人護送収容される御予定ですか。
  210. 天野武一

    ○天野政府委員 これはやはり職員の数を充実して活動を敏活にすればするだけふえるという状況にあります。二十八年度予算で要求しております一応の目安は、一時に収容する数が千五百名くらいのことがあるということを予定しております。
  211. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると不法入国した人を本国へ送還する、その間一時収容もしなければならぬ、こういう経費が全部入つているのだろうと思いますが、今の御答弁でしたら、一時入るのが千五百ということですが、二十八年度に不法入国した者を本国へ送還する予定人員は大体どのくらいなのでしようか。
  212. 天野武一

    ○天野政府委員 私どものほうで立てましたのは七万五千人だつたかと存じますが、とてもそれだけできないので、収容できるだけのことをするほかないということになつております。
  213. 成田知巳

    ○成田委員 一応七万五千送還される御予定だが、収容の設備がないからそれほど行けないという。そうすると収容設備というのは大体どれくらいでしようか。
  214. 天野武一

    ○天野政府委員 今申したように、一時には千五百名くらいしか収容できないのです。もう少し申し添えますと、強制送還を促進するという目標は、七万五千人くらいを目標にすべきではなかろうかと考えますが、とてもそこまでは手が及びませんので、実際問題としてはできないだろうと思います。
  215. 成田知巳

    ○成田委員 不法入国者というのは七万五千人もそんなたくさんいるのでございますか。
  216. 天野武一

    ○天野政府委員 強制送還をする対象は、今不法入国をして来る者をつかまえて返すものもございますし、それからいろいろ事件あるいは犯罪を起しまして、そして強制送還する必要がある者を全部含めます。
  217. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、適法に日本に入国しまして、その後犯罪を起した、事件を起した、こういう者を送還する費用だ、それが七万五千人という目安を立てているということでありますが、その七万五千の内訳、何国人が何人という内訳をひとつお知らせ願いたい。
  218. 天野武一

    ○天野政府委員 詳細なことを私、存じませんけれども、七万五千人と申しましても、一応計数を立てる上の一種の大観でございまして、実際にどれだけの朝鮮人、その他の不法入国者が現実に潜在しておるかということは的確にはつかまえておらないわけでございます。
  219. 成田知巳

    ○成田委員 一応の目安で、的確でなくていいのでございます。大体朝鮮人が幾らか、台湾人、中国人が幾らかという目安はあるはずでありますから――朝鮮人は今日本には六十万くらいおりますが、今の御答弁では適法に日本にいても犯罪、事件を起した者を帰すのだ、不法に入国して来るというのはそうないだろうと思うのです。場私、端的に申しますと、現在いる朝鮮人というものは相当強制送還の対象になつていると思う。この七万五千人の内訳は大体おわかりになつているだろうと思うのですが、それをひとつお伺いいたします。
  220. 天野武一

    ○天野政府委員 今わかつておりませんからそれとも調べまして、先ほどの人権擁護の事件と一緒に報告いたします。
  221. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 それでは先刻の福田君の質問を継続いたします。福田赳夫君。
  222. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 先ほどは軍人恩給の問題について御質問を始めかけたのです。第一の点は軍人恩給の扱いが非常に国会に対して押しつけるような形になつておるのです。実際これは予算上の問題です。たとえば法案の出し方にいたしましても、いまだに法律案は出て来ないし、要綱というものが先般発表になりましたが、この要綱も建議を基礎にいたしまして、それにちよいちよい備考をつけた程度の要綱、それから予算書を見ましても、私はもう各日明瞭に見れば相当詳しくわかるかと思つてつたところ、これは旧軍人等恩給費という一本の組み方である、これは恩給の問題ばかりではないのです。各省全体を通じた問題なんですが、副長官でありますからぜひひとつあなたに御意見を承つてみたいのですが、戦時中の、また次いで占領中の予算という色彩が各所に非常に残つておる。ことに軍人恩給のごときは、これは本年度の政府財政施策の唯一の新規事項で、この扱いなんかよほど慎重にすべきじやないかといとふうに思いましたところ、かような状況なんです。やはりこれは頭の切りかえが必要じやないか、司令部やあるいは軍の要請によつて押しつけるという基礎がまた独立最初の二十八年度予算にも、多分というか、全面的に残つておる、ぜひこれは改正して行かなければならぬ点だろうと思うのでありまして、ちようど副長官でありますから、政府全体の立場において所見を承りたいのです。
  223. 江口見登留

    ○江口政府委員 恩給予算の組み方が非常に粗雑ではないかという御質問のようでございます。われわれといたしましては、従前の文官恩給の計上の方法につきましても、御指摘のような点があつたのでありまして、それにならいまして、今回新たに軍人恩給を復活するに際しましても、その形式に従つたのであります。しかしその計上の方法についてはもう少し考慮の余地があるのではないかというようお話でございますので、今後の扱い方につきましては大蔵当局とも十分連絡をとりまして、もう少し考究を加えて行きたい、かよう考えております。
  224. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 文官恩給に準じてやつたと言いますが、そこが問題なんですよ。この今までの予算というのが、すなわち戦時中の残滓でありまして、また司令部当時の占領行政のしからしめるところでありまして、これ自体を改めて行く必要があるので、ぜひそういうふうにお願いいたしたいと思います。これは余談であります。それから軍人恩給について承つてみたいのですが、これは大きな問題を含んでおると私は思うのです。と申しますのは、軍人恩給を昭和二十一年度に停止したというのは、これは戦後いろいろな施策をやつておりますが、戦後財政処理の一環としてやられたものの一つなのです。あるいは在外資産の問題でありますとか、あるいは預金を封鎖し、これが支払いを打切つたというような問題でありますとか、あるいは政府支払いの債務を不履行にいたしますとか、いろいろむずかしい問題があるのでありますが、そういうものと一連の問題の一つを取上げた。そうしてこれを今回実施しようというよう考えになつて来ているわけでありますが、そこに一つ大きな問題があると同時に、戦後一貫した思想、これは各党点派みな言つている社会保障制度をやる。社会保障制度というのは特定の人に援護するというのではなく、国民全体に、これを社会的に援護して行こうという趣旨なのでありますが、そういう大きな流れがある際に、またこの軍人恩給というものは特定の階級に対しまして援護の手を差延べようとする、こういうことになるのでありまして、この二つの角度からこれは非常にいろいろ問題を含んでいると思うのです。私は現在の客観情勢特に文官恩給というものがある現況においては、軍人恩給というものを出さないということは、これは片手落ちである、不合理である。だから現在の客観情勢においては、結論としては、どうしても軍人恩給という制度がこれは必要になつて来るという考えなのですが、しかしそういう考えをとるにつきましては、いろいろ用意がいる。ことにただいま申し上げました二つの問題、その第一の問題である戦時処理の問題これに対しまして相当腹をきめてかからなければならない問題であうと思う。ことに在外資産の処理問題これは軍人恩給のきまつたあとにおいては相当今後うるさくなつて来て大きく政府にのしかかつて来るのじやないか。そこまで考えてやつているのかどうか、これをひとつ承りたい。
  225. 江口見登留

    ○江口政府委員 ただいま在外資産の問題が提出されましたが、御承知の通り、戦争災害というものは実に各方面にわたつているのでありまして、それらの善後措置と申しますか、一つずつ次々に処理されて参つているのであります。軍人恩給に対してもそうでありますし、最近支給するようになりました旧令共済組合の関係の支給金の問題もそうであります。まだ残つている問題も一、二あるかと存じます。その中で最も大きな問題は在外資産処理問題じやないかと思います。この点につきましてはやはり戦争災害も次々に公平に処理して参らなければならないという立場からいたしまして、在外資産は一体どのくらいあるかということの数字を調べることが先決問題であり、一方には台湾なり朝鮮なりの外交問題も付随しておりますので、急速その数字だけを調査するというわけには参りません。それを調査する心構えだけでも、このような戦争災害の援護調査ができて参る以上は、それらの損害を受けた人たちにも何とか手を差延べなければならないというので、ここ半月ほど前から関係大臣が集まりまして、在外資産の点も何とか調査をする態勢を整えて行こうではないかということで、目下その調査をする組織と申しますか、その機構などについて関係省が相談中でございますので、近いうちには何とか非常に困つておられる方々の気持を多少ともやわらげるような方法がとれるのではないか、かよう考えております。
  226. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そうしますと、第二の問題である社会保障制度という考え方とこの問題との関連はどうなりましようか。
  227. 江口見登留

    ○江口政府委員 申し落しましたが、社会保障制度に関しましても、数年来審議会ができまして、いろいろな答申を行い、いろいろな調査をやつて来ておるのでありまして、その社会保障制度審議会の意見というものも、相当政府にはわかつておるつもりでございます。ただ非常に大きな機構でありまして、社会保障全体の線を推し進めて参ります上には、非常にたくさんの金がいるわけでございます。今日までいろいろな研究はして参つておりますが、そのホール・スケールというものがどうもまだ固まつていないようでございます。固まつて参りますれば、それについての予算の額もきまりますが、それは非常な多額に上る。そうしている間に、一面におきましては軍人恩給のように、夫年の講和条約発効のときから何とか処置しなければならないというような差迫つた問題が、一方にございますので、その問題を一方で処理しながら、さらにそれら全体を見まわして社会保障制度の大きなわくの中から別にまた考え直してもらおうではないかという態度で、社会保障制度審議会からもいろいろ意見が出ておりますが、それを一方にやりながら現実の問題を処理して行く、こういう方向に出たのが今度の軍人恩給の問題でもあるわけです。
  228. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 どうもこの軍人恩給という問題は、割り切つて社会保障制度にずつと持つて行くという考え方からすると、少しじやまが入つたという形だろうと思うのです。私は現実の問題としてはしようがないと思うのですが、考え方の問題を聞いておるわけなんです。今後社会保障制度政府としてあまり重視しないという考え方で、そのときどきの現象を処理して行くという考え方なのか、あるいは旧軍人恩給法は施行いたしますが、将来においてはこれは大きな社会制度に併合して行くというような含みを持つてやられるのか、その辺の考え方がこの内容を見まして少し割り切れないところがある。たとえば軍人恩給を払う場合におきまして、私ども社会保障制度的な考え方をとつて行くならば、これは大将だ中将だ少将だという上の階級は相当薄くていいと思うのです。反面におきまして、下の下士官とか兵とかいう階級には相当厚くしてやるべきものではないかと思うのです。それが退職当時の俸給によつてきめられておるという、一律的なやり方をやつておりまして、何ら将来社会保障制度を示唆するところがないのです。そこが私どもは少し疑問に思うところなので、また政府の旗じるしとも大いに違うと思うのです。これはどういうふうに解して考えて行つたらいいのだか、私もちよつと見当がつかないのでただしておきたいと思います。
  229. 江口見登留

    ○江口政府委員 社会保障制度審議会でいろいろ研究しておられる題目と、個々ばらばらに、その時々によつて処理して行かなければならない問題と両方あるわけでございます。軍人恩給を復活いたしますにつきましても、御承知のように、恩給法特例審議会というものをわざわざ設けまして、そこで長い間もんで一連の答申が出て参つたものでありますから、その線に沿いまして今度の法律案を作成したわけでございます。その審議会の途中におきましても、ただいまのお話になりましたように、社会保障的感覚を入れて、大将がどうだ、兵がどうだということであまり金額をわけない方がいい、むしろ数を減して、三階級か四階級ぐらいに圧縮した線を出すべきではないかというよう意見も多々出まして、いろいろとその点は議論されたのでございますが、社会保障制度審議会の感覚と違いまして、やはりできるだけ旧制に近いような、しかし多少は新しい感覚を盛り込んだものにしようという線の方が勝ちを制したと申しましようか。いろいろお話よう議論は出たのでありますが、今提案されますような案に、結局おちついたのであります。従いまして時間的余裕さえありますれば、この恩給法特例審議会で答申になりました答申案を、もう一度別の面から社会保障制度審議会の方にかけまして、その意見の答申をまつて両方にらみ合いながら、この軍人恩給の復活という点を考えるべきが至当ではなかつたかとも考えるのでありますが、何分にも時間的余裕がございませんでしたので、しかも恩給法特例審議会には相当各方面の専門家も集まつて答申されたのでありますので、ただその線に沿つて急ぎ立案をしたというような事情があるわけであります。御説の社会保障制度とにらみ合せるという点は、今後とも十分研究いたしまして、近く厚生年金等も始まりますので、それらの実施をいたします際に、もう少し大局的に大きな面からこの恩給の問題を研究し直してみなければならぬのではないか、さよう考えております。
  230. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 恩給法特例審議会はいつ設置になつたのですか。
  231. 江口見登留

    ○江口政府委員 去年の六月ごろから設置されまして、月一、二回ぐらいずつ会議を進めて参りまして、十月に答申案を出したわけであります。
  232. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 これは前の司令部、今のアメリカ大使館、こういう方面とは設置に関して何らかのいきさつがありますかどうか。
  233. 江口見登留

    ○江口政府委員 私の参ります前でありますが、今聞くところによりますれば、司令部ないしアメリカ関係とは何ら交渉がなく、日本の自主的な法律でそれを設けて、審議をやつたわけでございます。
  234. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 今大体審議会の答申を基礎にしてやつたということでありますが、そのままでもないようでありますが、主要なる相違点について御説明願いたいのです。
  235. 江口見登留

    ○江口政府委員 大体の構想は恩給法特例審議会の答申に基いたのでありますが、仮定俸給をつくります際に、四号ほど基礎を下げております。つまり金額をできるだけ減すという意味から、その点で一番答申案とは異なつたやり方を盛り込んだのが、今度提出しようとしております恩給法の骨子でございます。
  236. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 四号というと金額の割合はどのくらいになりますか。
  237. 江口見登留

    ○江口政府委員 割合は平均して一割四、五分ではなかつたかと思います。ちよつと今確かな数字を覚えておりませんが、もちろん平均でございますから、階級による事実差を比べてみますと、違うかもしれません。
  238. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 その他は大体違いがないので、主たる違いは一割五分ぐらい仮定俸給を下げたというお話でありますが、これはおそらく財政負担が非常に大きくなるというようなことを心配されてしたと思うので、私もこれは適当な措置だと思うのです。しかしながらこの軍人恩給の犠牲になつてというか、文官恩給の方が影響を受けておる。これは文官恩給の受給者が非常に心配している点で、その妥当性というようなものについてよほどはつきりと説明されておく必要があるのではないかと思うのです。どういうふうにこの文官恩給のベースを上げないかということについては、政府として説明されるか、この点をはつきりしておきたいと思います。
  239. 江口見登留

    ○江口政府委員 ただいまのお尋ねは、昨年の十一月に文官のベース・アップが行われまして、すでに退職しておる人の恩給の基礎ペースをそれに合せてなぜ引上げないかという御質問ではないかと思うのであります。これはもちろんわれわれの心組みといたしましては、それに要する恩給額数十億円というものを見込んであつたのでありますが、いろいろ予算をあちこち操作いたして来る途中におきまして、やはり他に不足する経費を生じましたよう関係で、初めそういうものを組もうかと考えておりました金額が遂に載らずして済んでしまつたのでございます。このことは、すでに恩給をもらいつつある人たちに対しまして、はなはだまずいことになつたわけでありますが、前から現職の官吏のベース・アツプが行われるたびにすでに退職しております官吏のベースをそれだけ必ず上げなければならぬかどうかという点について、まだ多少の議論があるわけでございます。例といたしましてはこれまで上げて来ております。去年の十一月の分だけが上げていないのがおかしいではないかということになろうかとは思いますが、これも社会保障制度的見地から考えますと、その恩給の中には、いわば退職金的なものと、それからほんとうに生活を守つて行かなければならぬという最低限度の生活費というようなものまで含まれておる、それを物価が上つたからということで、生活費をそのままベース・アップすることはわかるけれども、それ以外の退職金に相当する部分と見られる恩給額にまで、全部べース・アップするというようなことはどうであろうかというよう議論もありまして、たまたま去年の十一月のベース・アップにつきましては、予算上はそれを認められなかつた。と申しますのは、もう少し国家財政がゆるやかになるまでお待ちを願いたい、こういう話で、しばらくの間はがまんしていただくよりしかたがないのではないかと思つている次第でございます。
  240. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 この軍人恩給を見てよだれを流す、といつては語弊がありますが、非常に関心を持つている人がたくさんあります。その第一は引揚げ未済であります人々の留守家族でありますが、これは軍人恩給と――いろいろ読んでみてもはつきりわからないのですが、大体どのくらいの権衡をとつておるか、その見当をお示し願いたい。
  241. 江口見登留

    ○江口政府委員 引揚者の問題は厚生省の関係に属する部分が非常に多いのでございまして、ただいま私の方として何かお示ししなければならない数字と申しますと、どの点を申し上げたらよろしゆうございますか……。
  242. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 これはしかし内閣としても相当重大問題でありまして、総合的に検討されておると思うのですが、引揚げ未済の者の家族、これは私は引揚げをいたさない間は死没者であるというぐらいに考えて処置すべきものじやないかというふうに考えておるのでありますが、その権衡が大体においてとれておるべきはずです。しかしながら政府の案によりますと、どういう権衡になつておるか、何割程度の違いがあるのか、あるいは権衡がないのか。軍人恩給による遺家族の年金と、それから未帰還者の家族の手当というものはどういうふうになつておるか、こういう点がちよつと伺いたいわけです。
  243. 江口見登留

    ○江口政府委員 未帰還公務員の処遇でございますが、恩給が復活いたしますにつきまして、昭和二十年九月二日から引続き公務員として海外にあつてまだ帰国していない者に対する処遇について申し上げますと、こうなつております。未帰還公務員がことしの三月三十一日におきまして普通恩給についてのすでに最短恩給年限に達しております場合には、その日に退職したものとして、帰つて来なければその家族に、代理の者に恩給を手渡しする、こういう方法を講じたいと思つております。それからまたことしの三月三十一日が参りました際に、いまだ最短恩給年限に達していない者につきましては、最短恩給年限に達するまでまだ身分が継続するという扱いを続けて行きたい、かよう考えております。
  244. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 これもちようど同じような立場にあるのですが、戦犯者の家族はどうなりますか。
  245. 江口見登留

    ○江口政府委員 これもいろいろとむずかしい問題があるのでありますが、いわゆる戦犯者に対する扱いといたしましては、こういうよう考えて参りたいと思つております。連合国最高司令官によつて抑留または逮捕されて有罪の刑に処せられたる者、及びその遺族に対しましては、抑留または逮捕された際に受け、もしくは受けるべきであつた恩給またはその恩給に対応する扶助料もしくは一時扶助料を支給することにいたしたい、かよう考えております。ただし現に拘禁中の者につきましては、その間現実の支給をとめておこう、これはいろいろ対外的にはばかられるところもありますので、それらのことについてはその人が出てから、あるいは刑の執行をしてから後に、その遺族の扶助料を考えて行きたい、こういうよう考えております。
  246. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そうしますと、現に抑留中の者留守宅なんかにつきましては今回何らの処置はない、かようなことになるわけですか。
  247. 江口見登留

    ○江口政府委員 その方の、いわば援護でございますが、この方は厚生省の方で多少の援護的な給付が行われていると承知いたしております。その金額はちよつと今記憶しておりません。
  248. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 これは内閣として非常に注意を払つてもらいたいと思うのです。ことに軍人恩給につきましては、さような軍人と同列視せらるべき人が非常に注目しているのです。厚生省の措置はちぐはぐになつたのでは困る。よく連絡をとつて、大体において軍人恩給の趣旨に沿つた援護ができるように善処願いたいのです。
  249. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 主査からひとつお願いをいたしますが、ただいま福田委員からお話のありました通りであります。内閣の側でも、予算委員会において、五大法案として恩給法をお出し願いたいということを申し上げたところが、恩給法という範疇として、恩給法のほかに二つ法律をつけてお出しになつたことは、御承知の通りであります。おそらく内閣委員会においても、一括して審議の対象になると思いますから、答弁の衝に当られる方は、十分それをこなして、同じように答弁のできるように御準備願いたいということを要望いたします。
  250. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それから同じような問題でありますが、今国立病院に入つているあの白衣の将兵であります。これも非常に重大な関心を示すと思うのです。これは一体恩給法の改正と関連してどういう措置をとられるか。これは未帰還者あるいは戦没者と同じに考えていい種類のものと思うのです。これに対して十分の処置がとられておるのかどうか、これをひとつ伺いたい。
  251. 江口見登留

    ○江口政府委員 傷痍軍人で、まだ国立病院などに入つている者は相当ございます。その人たちの傷病の認定などにつきましても、いろいろ相談が来るのでありますが、現にまだ療養中の者につきましては、まだその症状の固定しない者もありますし、固定しまして、もうその治療を受ける必要がなくなつてから、第何項症という認定を受けて、それから恩給額が確定することになると思います。恩給の点はそういうふうに承知いたしおります。
  252. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 その本人の恩給はなかなか決定しがたいと思うが、私が伺つておるのはそうではなくして、その傷病兵の家族、留守宅、これが非常に困窮しておるのではないかと思う。これも軍人恩給を復活するという措置の一連の問題でありまして、これについてはどういう措置がとつてあるか、こういう問題なのであります。
  253. 江口見登留

    ○江口政府委員 その方は特に病院に入つておる傷痍軍人の家族に対して、特別の給付をするという制度ができておりませんので、それらの点はやはり厚生省の生活保護という方の救済を受けて行くようになるのではないかと考えます。
  254. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私はその考え方じや非常に足らないと思う。恩給法の実態として考えらるべき問題なのです。それが援護という形になろうが、あるいは恩給法による恩給という形になりましようが、やり方は同じだと思うのであります。要するに軍人、軍属をどういうふうに扱うかという問題としては一環の問題でありまして、バランスがとられていないと、これは相当大きな社会問題になつて来るのではないかと思う。この点をぜひ伺つてみたい。これは厚生省の方の予算に出ておる。しかしながら厚生省の予算と今度の軍人恩給とは彼此移用できる同じような予算です。これは予算総則にはつきり書いてある。彼此移用することができるというふうに書いてある問題でありまして、これを副長官が厚生省の問題だといつて片づけられるのは、私はきわめて遺憾に思う。  主査にちよつと伺いたいのですが、これは恩給法の問題といたしまして、未帰還者の留守宅の問題それから戦犯者の問題、またただいまの傷病兵の留守宅の問題、これは一体の問題なのです。これは軍人恩給とからんでどういう措置になつておるか。私は大体において同じ程度の待遇をしなければならぬ問題だと考えておるのですが、はたしてそういうことになつておるのかどうか。この三つの問題について、適当な機会でよろしゆうございますから、厚生省当局からひとつ説明をお願いしたいと思います。
  255. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 福田君に伺いますが、今晩すぐ呼ばなければいけませんか。あるいは内閣委員会等でよろしゆうございますか。
  256. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それでよろしゆうございます。
  257. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 承知しました。私も当然そうあるべきものだと心得ております。
  258. 江口見登留

    ○江口政府委員 ただいまの点につきましては、法律案をつくる際に、また厚生省関係二つ法律案とにらみ合せてきようあたり全部が片づいた、かように承知をいたしております。ですから、この次の機会には、厚生省と口裏を合せて十分御納得の行く答弁ができるであろうと考えております。
  259. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思うのです。  もう一つは。陸軍の共済組合というのがあるのですが、これは御所管ですか、御所管外ですか。
  260. 江口見登留

    ○江口政府委員 大蔵省でめんどうを見ております。
  261. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それではこれは大蔵省に伺います。
  262. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 次に、質疑の通告があります。古井喜實君。
  263. 古井喜實

    古井委員 それでは恩給関係について二、三のことを伺いたいと思います。それで恩給制度の基本問題ということは、問題が大きいですから、江口副長官にお伺いしてもどうかと思いますけれども、これは国家財政上昔からの大問題でありますし、国民の思想の上でもまことに微妙な問題でありますが、いずれ恩給制度というものは、将来この筋で行くものか、あるいは他の方角に切りかえるものかという問題があろうと思うのです。とりわけ社会保障との関係は重大な基本問題だと思うのですが、さらばといつて、社会保障の制度が幾らかずつは前進はしておつても、そう大きな体系的な進展も見ない。三年ばかり前に社会保障制度審議会の答申があつたけれども、これはたな上げみたいになつてしまつて体系的にこれを取上げて実行しようという段取りにもならない。今度の予算にもある程度色のついておるような面もありますけれども、これに本腰を入れてやろうという施策に、吉田政府が出ておる模様には見えぬのであります。こういうふうにしておりますと、恩給の今の制度が元になつて、一歩々々先に進んで行く。恩給の受給者、関係者がだんだん広まつて行く。百遅れれば一日遅れるだけ、関係者がふえて来るということで根本的に考え考えないというようなことは、問題にはなつてつても、かえつてだんだん遠のいて行くことになつて来るかもしれぬということを、ある意味では心配しておる一人であります。そこで恩給制度の基本問題、将来の問題については、従来どういうふうな調査研究が進んでおるものか。とても手につかぬ問題だということになつてしまつておるものが、やはりできれば早いときに根本的に考えてみようということになつて来ておるのか、その辺の事情をひとつ簡単に伺つてみたいと思います。
  264. 江口見登留

    ○江口政府委員 お話通り公務員に対する恩給というものは、昔から非常な困難な問題でありまして、このたび軍人恩給が復活するにつきましても、公務員の恩給全体との問題を、十分研究した上で措置することが至当であるということは申し上げるまでもないのであります。何分にも去年の四月に講和が発効いたしまして、その後ただちに何とかしなければならぬという差迫つた状態でございましたので、恩給特例審議会の十分な御審議を願いまして、恩給法の改正案を提出することになつたのでありますが、恩給の根本的の問題につきましては、国家公務員法に基きまして、ただいま人事院におきまして十分調査研究中でございます。近く厚生年金保険等の支払いの始まる際に、これらの問題は、社会保障の問題とあわせて、大きな目でもう一度見直して、改正する時期が必らず来るのではないか、かよう考えております。
  265. 古井喜實

    古井委員 この問題はきようはこの程度にいたしまして、次に多分福田委員からお話が出たのじやないかと思うのですけれども、将来の問題は別にしまして、従来の既得権を持つておる者の関係でありますが、その一つの問題は、十分御承知のスライド・アップの問題であります。この問題が今回は見送られてしまつたということについては、関係者は非常に不満を持つておることは御承知の通りでありますが、それで切りかわるべき社会保障制度というものは非常に大きく進展をしておるなら別としまして、そうでもない。こういうことであれば、既得権を持つておる者の関係は、やはり今までの体系をもとにして、公正妥当に取扱うほかは道がないことになるのではないか。それで不均衡是正の問題は、一応のところ解決を得たかのようでありますが、これについても議論はあるようであります。いわんや去年のべース・アップにからまつて、その後の問題、特にスライド・アップの問題については関係者は非常に不満を持つておるわけであります。この恩給関係については根本的にさつきの問題、社会保障との関係で切りかえるというならば別でありますけれども、さもないと、これをただ特権階級の不労所得のように見てしまうことも、今の段階ではちよつと間違いだと思うのです。この恩給受給者あるいは扶助料の受給者というものは自分で働く力のない、これだけにたよつて暮している者もたくさんあります。それからまだ働く力を持つておる者でも、地方などでは恩給があるからということを見合いにして、そしてほかの職を求める場合の給料などもきまつて来ておる、両方合せてとにかく暮しが立つというふうなところで新しい職の給料もきまるというふうなこともたくさんあることであります。そうしますと、この問題を、少くとも既得権を持つておる者の関係は、やはり公正に進めるということが穏当な必要なる問題ではないかと思つておるのであります。このスライド・アップ問題が見送りになつたのは財政上の理由もあり、あるいは軍人恩給の関係もあつてのことだろうと思います。しかしこれもきよう勤めておる人間本位にものを考えてはいかぬので、発言権を持つておらぬからといつてその連中が不利な立場に置かれるということは、これは公正でないと私は思うのであります。そこでこの問題をひとつ今後十分に検討されて、理由があるとするならば実行に移されるという必要があるように思うのであります。この辺についてどういうお考えであるのか、お伺いいたしたいと思つております。
  266. 江口見登留

    ○江口政府委員 現職の公務員の給与が上りました際に、すでに退職しております元公務員であつた人たちの恩給の基礎額を増額するという問題がありました。先ほど福田さんからもお尋ねがあつたのでございますけれども、大体は従来ずつとベース・アップして来ておりました。探してみますれば、現職の公務員がベース・アップしても退職公務員についてべース・アップしなかつたという例もあるようでありますが、最近はずつとベース・アップして参つておるようであります。先年のベース・アップに伴いまして、退職公務員の恩給基礎額を上げるとしますと、十三億ばかりの経費がいるということで、われわれも大蔵省とさんざん折衝いたしたのでありますが、何分にも経費多端で、そういう恩給らベース・アップする経費は認められぬということで、やむを得ず国家財政の現状にわれわれは順応せざるを得なかつたのであります。確かにお話通り、最近はベース・アップをして参つておりまするのに、今度だけしないということは、軍人恩給が復活したということも一つ理由であり、それが答申の線全部を出していないということも一つ理由でありますし、軍人恩給とのにらみ合いから行きましても、もう少し国家財政がゆたかになるまでごしんぼう願いたいという説明しかできないのではないかと考えております。予定されておりました方々には、はなはだお気の毒だとは存じますが、ただいまのお話ように、できるだけすみやかな機会にベース・アップができますよう、今後努力いたしたいと考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  267. 古井喜實

    古井委員 ちよつと聞き漏らしたのですけれども、今度取上げなかつたのは財政上の理由でこの問題を取上げていない。事情が許すことになればすみやかに実行したい、こういう意味でありましたね。  それでは次の問題に移ります。軍人恩給について多分福田委員からお尋ねがあつたと思います。同じことであるかないか、ちよつとわかりませんが、軍人恩給四百五十億、これは私は政府がこれを取上げて実行に移されるということはけつこうだと思つておる一人であります。なぜかと申しますと、さつき申したように、社会保障とか申してもなかなか大きくは進展しないという一面があるのでありますから、これを別にして、従来既得の権利を持つておる者の権利をはばむことはできないだろう、軍人恩給の問題については、とにかく新しい問題じやなくて、従来権利を持つておる人間のその権利をどうするかということが問題であつたと思うのであります。これは白紙にして、新しく軍人に恩給権を与えるという問題じやなかつたはずだと思います。この点はまことに財政上はむずかしい点があることは十分わかるのですけれども、財政上の理由だけで権利を無視するということは筋が通らぬ。それならば私も旧官吏でありますけれども、われわれの文官関係の恩給も同様に停止するとか、減額するのが至当である。われわれ文官関係の者だけは恩給をもらえる、それから軍人関係の人はもらえぬ。これではいかにも不つり合いであるし、財政上の理由であるというなら両者は同じでなければならぬ、こういうふうに従来思つて来ておつたのであります。一部には一種の感情的なものがあつて、戦争の責任者であるといわぬばかりの論もあつたようであります。しかし全軍人にそういうことを考えるということはどう見ても間違いであります。これは要するに、今幸いに無きずで免れて来ている人間が、罪を一部の者になすりつけて、自分たちだけ得をしようというか、うまくやろうという、むしろずるい考え方だというふうに思つて来ておつたのであります。とにかく財政の許す限度においてこの問題がある解決を得るということは、私はけつこうだと思つておるのであります。きようすぐさまあの四百五十億というものをふやすということは財政が許しますまい。けれども同じ四百五十億を使うにいたしましても、やはりあの案にはまだ考慮を要すべき点はあると思うのであります。これは細目になりますから、私も若干具体的な点について意見もあり伺つてみたい点もありますけれども、きようは割愛して置きたいと思つております。ただ問題は、既得の権利の問題であるというところは重要な点であり、財政の許す限りはやはり考慮を加えて行かなければならぬ、拡充のことも考えて行かなければならぬ、改善のことも考えて行かなければならぬと思つておるのでありますが、この辺はどうお考えになるか、なおまたこの問題はすでに問題がああいうふうに提供された以上は、これをめぐつてその関係者の要望というものは非常に熾烈になつて来ると思うのであります。政治的に考えても、これを無視することはできないようになつてしまうと思うのであります。そういう点についてどういうふうなお考えを持つておいでになるものか一点お伺いしておきたいと思います。
  268. 江口見登留

    ○江口政府委員 先ほどお話申し上げましたように、ただ国家財政の都合上切れるところだけは切るのだというようなやり方が、きわめて安易でりくつのないことは御指摘の通りでございます。ただ一方におきまして、軍人恩給が軍人の期待しておりました通りには出されないというようなものとの均衡もありまして、昨年の官吏のペース・アツプにつれたベース・アップも退職公務員についてはしんぼうしていただく。要するにそういう均衡論と金がないということが理由であるのでありますので、ただいまお話のありますように、いろいろ政治的にも重要な問題であると思いますので、今後十分財政当局とも相談いたしまして、さらに恩給法全般の問題を検討いたしました上で、できるだけそういうでこぼこと申しますか、不均衡は是正して、すべての公務員あるいは軍人であつた者がみんな満足して行けるよう制度が案出されれば、これに越したことはないと存じますので、今後ともその方向に一層努力したいと考えます。
  269. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 以上で恩給に関する問題は終りました。  それではこれから午前の部で留保されておりました警察関係に関する古井君の質問を続行いたします。古井喜實君。
  270. 古井喜實

    古井委員 大臣がせつかくお見えですからお尋ねいたしますが、公安調査庁というものを、新しい警察考えるときに、統合してしまうという点は御研究になりませんでしたか。
  271. 犬養健

    犬養国務大臣 ごく率直にお答え申し上げます。確かにそういう研究もいたしてみたのでございます。ただ公安調査庁の調査官のする仕事は、古井さんよく御存じの通り、現実の犯罪ではございませんで、いわば一般の思潮をまず研究し、その思潮のあるところを掘り下げて行つて、個々の潜在的な暴力主義的破壊行動の可能性というものを調べて行くのでありまして、これはどうも私服の巡査とかいうものでは、たいへん社会に不安を与え、摩擦を起すという結論に達したのでございます。いかにも犯罪の可能性を扱うということでは警察とよく似ておりますので、私も初めは統合した方がいいのじやないかという研究をやつてみたのでありますが、今のよう意味でしばらくこれは切り離す、そうしてその成績を見る、こういう気持になつているのでございます。もう一つ、政治情勢からの御説明で申し上げますならば、破防法が通過いたしましたときに、やはり世論を公平に見ておりますと、大体一部の人を除いてはあれはやむを得ないだろう、しかし日本人はああいう運営は非常に下手なんだが、さてその運営はどんなものだろうという心配を非常に持つのでありまして、その世人の世論的な心配をよくくみとりまして、公安調査官というものを一般警官と切り離した役所に置いて、また切り離した任務をさせることにいたしたわけでございます。
  272. 古井喜實

    古井委員 公安調査庁のごとき機構にも一面の理由があることは、これは申すまでもないことで、どろぼうにも三分のりくつがあるくらいでありますから、理由がないことはないと思うのであります。それからまたこれはこのほどできたものでありますから、これをまたここでどうこうどいうのは政治的に見ていかにもまずい点もあつたかもしれません。けれども私はわれわれの国力からいつて、ああいうぜいたくな機構というものをかかえて行くほどの余裕はないと思うのです。あれは大した機能を発揮しない。少くとも二重機構になつて来ることは免れません。これは一本の機構で求める必要はほぼ満たされるのじやないかと思うのであります。これはたぶん朝令暮改の点もいろいろ御考慮だつたと思いますが、ああいういわばぜいたく機関は、ひとつなるべく早く統合することを御研究になつたらどうだろうか、多少のマイナス面もないとも限らぬけれども、大ぎく考えて私はプラスであると思つておるのでありますが、これは今後の御研究にまつことにして深入りをいたしたくないと思います。  そこで今度の警察機構の問題で犬養法務大臣に伺いたいのは、中央公安委員会というものを公安監理会というものになさつて、諮問機関にされたのであります。これは目付役であつてなかなか役に立つのだというふうにお考えになつておるようでありまして、役に立つ機構を置いたのだ、これで行き過ぎもあるいは党派的なかつてな動きも、できなくなるだろうとお考えになつておるかのように伺いましたが、私はこれはほとんど問題にならぬと思う。まつたくこれは表向きからも諮問機関にもなつてしまうし、それから今度の体系ではとにかく国務大臣長官になる、これは閣議にも列席し、行政においては最高の責任者でありまして、これにかれこれ監視するとか、強い発言をするなんということはできるものでもなし、やればおかしいのでありまして、大きな影響を与えるというなら大臣の地位自体とも矛盾して来るくらいだと思うのであります。これは要するに一つの紛飾でありはせぬか、もし度胸をきめた長官が出て来たならば、全国の警察は与党の走狗に十分なり得る。犬養大臣は円満な御性格でありましようから危険はありますまいけれども、人によつては全国の警察を十分思う通りに動かせると思うのであります。今日の政治情勢はそれほど政争が苛烈でないのでありますから、さほどでもありますまいけれども、もうちよつと政争が苛烈になればほとんど思う通りになる。想像してみるとたいへん危険な制度をおつくりになつように思う。今日の政治情勢の程度を頭に置いてお考えになつているように思うのであります。一番危険な点は、やはり一つにはある政党の警察になるということである。この危険が排除されないで残つているように私は思つておるのであります。この点について、公安委員会のごときものを設けられますれば、大臣内閣警察に対する責任がぼやけて来てまずい一面がありますけれども、しかし少くとも恐るべき弊害は起らない。こういうふうに考えて憂えているのでありますけれども、こういう点について公安委員制度を深刻にお考えなつたものでありましようか、どうでありましようか、お伺いしたいと思います。
  273. 犬養健

    犬養国務大臣 私い古井委員の真剣に考えておられる御意見に対して、御承知でもありましようが、ふだんからおせじではなく深甚な敬意を表しておるのであります。この問題は、聞いていただいたまことによい機会に、ああいう形にしたことをお話してみたいと存じております。今度の改正で一番やかましくなりましたのは、事の起りは昨年のメーデーでありまして、あれだけの不祥事が起つたのにだれも責任をとらない、責任が明確でなくて、一国の治安をこれから事の多い日本において、世人が納得して警察にまかせられるかどうか、こういう議論がやかましくなつた。これはなかなかもつともだと思う次第であります。どうして責任が明確でないかよく考えてみますと、この前の予算委員会でもちよつと申し上げたと思うのでありますが、ドイツ学的な頭で訓練された日本人から見ますと、複数制の公安委員会責任があるということでは世人もピンと来ない。政府もピンと来ない。この国家公安委員会が任命しました警察長官というものに同意を与えたという意味において、内閣総理大臣責任があるのでありますが、平たく言いますと、内閣総理大臣はあまり偉過ぎて一々責任をとるには大物過ぎる、便宜上下に担当大臣というものを置いたのでありますが、これはすこぶる妙なものでありまして、予算をお願いしたり、皆さんにしかられたりする役なんでありまして、ほんとうの上官というのと違うのであります。ここをはつきりさせようということになつたのであります。その思想からだんだん引出されまして、国務大臣がみずから責任を背負つて警察行政をやる。そういう観念からいうと、警察庁の次長を長官がかつてに任命すればいいのでありますが、それはいけない。この点は古井さんと私はほぼ同一の思想の道を歩いていると思うのであります。行政組織法に従つて、諮問機関を委員会と言わないそうで、国家公安監理会になりましたが、そこの意見を聞いて任命する。古井さんの御心配のあまりのお考えとしては、そんなことでは飾り物でだめじやないか、第一国務大臣に対してこういう国家公安監理会が監視したり助言するなんてことはあり得ないというお話でありますが、私はその点いささか違つているのであります。個人の名前を引いては御当人に御迷惑かもしれませんが、今の国家公安委員会には金正さんという総盟同の長老もおります。非常にりつぱな方で私は個人的に敬意を表している。ああいう民主政治で鍛えられた古つわものが、近来大分相場の下つておる国務大臣に物を言えないなどということは私は考えない。ことに国家公安監理会というのは大臣の待遇を受けておる人たちでありまして、世人から注目のまとになつておる。この重要なる責務を果すのに決して大臣のわがままをうやむやにしない、したら世間がやかましい、県の公安委員会からも問責が来る、こう思うのであります。そうなつて参りますと、かりに警察長官たる国務大臣がかつてなことをしたり、政治警察をやろうとしたり、選挙干渉をやろうとしましたならば、国家公安監理会は意に満たなければ総辞職の意思表示をするでありましよう。これは大きな政治問題である、こう見ておるのであります。この点残念ながら古井さんと見方をかえておるのであります。また何か御質疑がありましたら率直にお答え申し上げたいと思います。
  274. 古井喜實

    古井委員 去年の実績から見て、責任の明確化ということを非常に望んでおるように見えるのでありまして、これが警察機構の改革の主眼点のようにも伺えるのであります。一方からいうと、公安監理会というものが役に立つというのでこういうことにもなるのでありまして、責任の明確化を非常に強く考えられるならば、公安監理会などはない方がいいかもしれないし、弱い方がいい。そこでどつちを重く見て行くかという問題になつて来る。その辺今度の警察の機構においては責任所在がどうもつかみにくいうらみがあるのであります。むしろこれをロボットとか、軽い弱いものと考えてしまえばわかる点もあるのですが、責任の一半を分担するかのよう考え方もあるかのごとくである。これは実際の運用を見るほかはないと思いますが、私は、責任の明確化ということも大事でありましようが、やはり政党の警察にならぬということが大事な問題だと思つている一人で、その意味においては公安委員会をちやんと置いた方がいいという頭があるものですから、そつちの方の気持からお伺いしたわけであります。しかしこれはおそらくこれ以上申し上げてもせんないことかもしれません。ただお考えいただく必要のあることは、ここに齋藤長官おいでになりますが、今の国家公安委員会は諮問機関ではなくて齋藤長官の主人であるというか、警察責任者であり、その下に齋藤長官おいでになるのでありますけれども、齋藤長官の手腕のいたすところが、今日の国警公安委員会がやつておるとはだれも思いません。齋藤長官が一人舞台でおやりになつておる、こういうふうに見ているし、これがおそらく実情でありましよう。今日の体制でさえそうであると思います。いわんやこれが諮問機関になり、国務大臣長官になるというときには、その人にもよるでしようが、ほとんど長官たる大臣の意のままに警察は動かせ得るものと思います。そういう危険が必ずある。将来ほんとうに戦争がはげしくなつた場合に、これはどういうことになるかということは、今日私は申し上げておきますけれども、これではとてもだめです。私は実はこれを憂えておるのです。     〔主査退席、岡本主査代理着席〕 必ずこれは弊害を起すと思つておる。しかしこの点は押問答いたしましてもしようがありませんから、この程度にいたします。  それから午前中の応答で大体明瞭になつて来たように思いましたけれども、少し残つてしまつたのでありますが、府県警察に対する責任所在であります。この府県警察に対する責任一体国にあるのか、府県にあるのか、これがまことにあいまいな気がするのであります。警察のことでありますから、責任のあるところはことさらはつきりしておく方がよろしい。どつちにあるかわからぬというのでは、これはしつぼの持つて行きようもないということであります。この点は政府の御案ではどうもはつきりしないように思う。午前中の応答では、府県責任を負うのだというような御説明があつたのでありますけれども、結局国が負うのだということになつて来たようであります。少くとも、府県が負うても、それと重なるかもしれぬけれども、国が負うのだという結論になつて来たようであります。私はこの政府の案では、国が負うべきものである、また負い得る体制であると思うのであります。府県にこれを負えといつても、負いようのない体制だと思うのであります。そこでこれは何もはばかる必要はない。国が責任を負うのだというふうにはつきりなさつても、何でそれが悪いだろうかという気がするのであります。しかし何かそこに残つたようなあいまいな点があつては、一体どつちに責任があるかという問題が残らざるを得ぬ。この点は基本問題でありますので、はつきりいたしたいと思うのであります。ある範囲事柄については、指揮監督のできないこともあるかのようであります。しかしそれは国が法律をつくつて、まかしてもさしつかえないからまかしたのである。文部大臣義務教育法律の御説明に、任免権は市町村の教育委員法律でまかせておいても、義務教育については国が全責任を負うのだということを強調しておられる。結局これは一体だれが責任を負うかということになると、この体制では国である、こういうふうに考えざるを得ぬのでありますが、そうはつきり行かぬのか、あいまいに残つてしまうのか、これはやはり伺つておかざるを得ないのであります。御答弁を願います。
  275. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。これはあいまいにするという気はありませんし、またあいまいになるべきものではないのでありまして、結局私どもの考え方というのは、警察行政について全責任を国が負うという立て方は、警察について地方性格を持つている部分についてまでも、無用に干渉する結果となるのはよくない、こういう考え方でありまして、従つて警察行政万般については、府県公安委員会が全面的に管理をしているのであつて、その責任府県会委員会にある。しかし中央警察庁の所掌する国の治安中心とした事務、御承知の第六条第二項については、これも第一次的には府県公安委員会責任でありますが、その最終責任警察長官が負うものである、こういうふうな考え方をしているのであります。
  276. 古井喜實

    古井委員 それでまた少しわからぬようになつて来るのですが、一体今度の府県公安委員会というものは、国の機構でありますか、府県という自治体の機構でありますか、そこにまでさかのぼつて来るのであります。それからまたこの警察長というものに対して任免権も持たないので、公安委員責任を持てといわれてもこれは責任の持ちようがない。なるほど考課の具状ということはできるようでありますけれども、具状したつて、必ず聞かなければならぬわけのものでもない。任免権を持つているというのは非常に強いものでありまして、これは中央の本部の長官任免権を持つている。任免権を持つている、身分上の権限を持つているということである以上は、これは一番の骨の筋を握つているわけであります。それをとられてしまつて府県公安委員責任を持てと言われても、私は持てないと思う。わずかに考課具状の権があるだけでは、とても責任は負えないと思うのであります。それからまた指揮監督権範囲におきましても、職務上の関係におきましても、ほとんど無制限な指揮監督権が実際上はあると思う。また全然なくても、現在齋藤長官が何ら法律上の指揮監督権はなくても、いかに全国の警察を駆使しているかということは、ごらんになつている通りで、これは何も職務上の指揮監督権はないのです。ただ管区本部長を任命するだけです。警察隊長も任命できない。これは管区本部長がやつておる。ただそれだけのことで、ごらんの通り全国の国警は動いている。それを負任を負えないといつても、負えるものではないと思う。むしろ持つている者が負うべきだ。職務上の指揮監督権においても、これは相当広汎です。そうすれば国は負い得る。ある程度限局しているならば、それは直接にさしずせぬでもいいから、まかしているのであつて、負わぬりくつにはならない。一方府県公安委員責任を負えない。負えといわれるのは無理である。なお府県公安委員自身国家機関になつているのじやないかと思うのです。またそう考えたらどうして悪いだろうか、こういう点が残ります。この案にはまことに紛飾が多くて、色どりはしてありますけれども、大筋ははつきりしているように思うのです。色どりをするために、かえつていろいろな説明のしにくい問題がたくさん残つている。むしろ私はこれはごまかしのしそこないであるというように思つているのであります。なぜそう考えたらいけないのか。そこをあいまいにして、責任がどこにあるかわからぬように言われる必要もなかろうし、はつきりなさつておいたらいいだろうと思うのですが、何か責任が国にないように言つておかなければならぬ理由があるのでしようか。
  277. 犬養健

    犬養国務大臣 ごまかさなければならぬ理由というものは一つもないのでありまして、いろいろ御意見がありましたが、府県公安委員知事が任命するまつたく純然たる府県の機関であります。なるほど警察本部長の任命は、広く日本の人材を適材適所に置くという意味で、中央でいたしますが、しかしそれが気にくわなければ、罷免勧告権も、懲戒勧告権も、府県公安委員会が持つのであります。それは紛飾だと言われますが、実際広い県に行きまして、公安委員会とうまが合わない警察本部長は勤まるものではないと思つております。古井さんは法理的に非常にすつきりしなければ満足なさらない、非常に明快な御性格なんですが、私は実際の政治の運用からいつて公安委員なんていうものはへでもないというような、そういう本部長は暮しにくいと思う。ましてふだん考課表をつけられ、罷免勧告権と懲戒勧告権を持たれて、相当地方的色彩を持つている。なぜそれでは全部を把握するのは困る点があるがとおつしやいますが、地方のことはなるべく地方にまかせようという政治の上の考え方から来ているのでありまして、これはどうしてもそうする方が地方の人のためによろしい、こういうふうに考えておるわけであります。公安委員が苦い煙い後見役になるかならないかということで、どうも御意見が違うようでありますが、府県公安委員運営一切やつていて、懲戒罷免勧告権を持つていて、ふだん点数をつける。私は相当はばかるものになると思うのであります。こういう席でこういうことを申し上げるのはいかがかと思いますが、私は法務大臣職務として、弁護士連合会とか、三つの弁後士会からいろいろ注文があります。これは何も職務権限はないのでありますが、弁護士連合会長が今度こうしたらどうかと言えば、私はこれは相当心中はばかりまして、十言つて来れば、そのうちの三つぐらいはいれておるのであります。何の権限もない。しかし事実上弁護士会が始終ふらちだということならやりにくくなる。こういうことになつて来るのでありまして、まして法律明記した権限を持つ府県公安委員というものをなめてかかる警察本部長というものはないはずだ。またあつてはならないし、そういう根性で行く人は必ず罷免勧告か、懲戒勧告を受けて、それがたというやむやになつても、事実上世間が狭くなつてその府県にいられない、私はこういう考え方をしているのでございますが、どんなものでしようか。
  278. 古井喜實

    古井委員 私が質問を受けても困りますけれども、しかしそれだから府県公安委員責任が負えるとおつしやるのですが、それならば府県公安委員がそれで責任を負える、任免権がなくても負えるとおつしやるのか。私は府県公安委員責任は負えないと思うのですが、府県公安委員責任が負えるのですか、負えないのですか。簡単な話です。一方私は中央の方は十分負い得ると思うのですが、犬養大臣のごとき人格円満なるお方がおすわりになつていらつしやるばかりが普通でもありますまい。自由党の中にもずいぶん度胸のいい、腕つ節の強い方もおいでになる。まかり間違つたら、これだけの機構を持つたらどんなことでもできますよ。全国の警察をどんなにでも動かせます。何だ公安委員なんか首を切つてしまえばいいじやないか。切り得るじやないか。そこで私は中央は十分負い得る、同時に府県公安委員は、負えないとこういうふうに思つておるのでありますけれども、やはり私は府県公安委員人事権はなくても、法律の上で運営管理というものを、職務権限が書いてあるから負えるのだ。こういうふうにお考えになるか。どうもそこが――私は別に法理論を言つておるのじやない。実際の筋がそうなりはしないかということを言つておるのです。それだからいけないというまで言つておるのじやありません。そういう考え方が立つのじやないですか。そうなつつてかまわないじやないですか。なぜそれをそうでないと言われなければならぬのか。これは十分了解がつかぬのであります。しかしこれはどうしてもそこは――責任はどつちが負うかちよつとあいまいなようなことであるならばそれでもけつこうです。それならむしろこの案は、大きな欠陥を持つておる。この警察に対する責任所在が不明確であるという重大な欠陥を持つことになるのであります。この点は御答弁が得られるならば得たいと思いますけれども、得られないようならば、同じところを行きつもどりつしてもいけませんから次の点に移りたいと思いますが、いかがでございましようか。
  279. 犬養健

    犬養国務大臣 古井さんに誤解のままこの議論がわかれるのは私残念に思いますので、御賛成が得られるかどうか別として、一言申し上げてみたいと思います。これは政治上煙い後見役だから責任を持たせる、そういう政治論ではないのでありまして、それだけの運営管理についての責任を持つ。法律明記してあるので、府県公安委員会責任者である、こういう考えであります。そんなことをしなくても責任をずつと上から下まで通せばいいではないか、どうして通してはいけないのかという御質問ですが、私は府県のことはなるべく府県にまかせて、中央からそれこそ古井さんの御心配のような、あご一つで使うことを心配しております。中央警察庁の持つ権限というものは、第六条第二項、これは広いというおしかりでありますが、とにかく私どもとしては制限をして、それに限る。これは国の内外の情勢から見まして、戦争の危険が遠ざかつたけれども、それだけに地下に流れている暴力主義的破壊活動の動きに対して備えをしなければならぬ、それこそ責任であると考えるので、そういう備えのために中央から地方への――言葉が悪ければお許し願いますが、一つのかけ橋をして、あとは全部まかせる、こういうつもりなのであります。お言葉ではありま、たが、府県警察本部長が、気に入らなくても、公安委員会は首を切れません。そういうしかけになつておるのであります。なぜいけないかというのは1私は通さない方がいい、それがかえつて古井さんにほめられるのではないか、こういう気持になつておるわけであります。  もう一つこういう機構ならば警察長官が少しずうずうしい者ならば何でもできるというお話でありますが、これは政治問題としてたいへんな騒ぎになりまして、内閣国会内において、国会外において世論の攻撃を受けるのでありまして、結局政治問題として対立する。そういう政治問題の味というものを、やはり国会政治に携つているわれわれは過小視してはならないと考えておるのでございます。
  280. 古井喜實

    古井委員 先の問題に進めたいと思います。犬養大臣法律家でおありにならないと思つていたところが、たいへんな法律家で、法律に書いておけばそうなるというふうにお考えになつておるようで、さすがに法務大臣であると思つて敬意を表するのでありますが、法律に書いたからといつてその通り動くものではないのです。それで私は申し上げておるのであります。  それから政治的な輿論ということをおつしやるけれども、これも幾らでも押切る政府もある。現に警察制度についても、義務教育国庫負担についても、全面的に全国の非難ごうごうを構わずにおやりになる、これくらいな勇気のある内閣でありますから、それでどうなるというほどのことでもなかろうと私は思うのでありまして、要するに今日のところでは、私のお尋ねしております問題については、少くとも私にわかる御答弁はいただけなかつたと思うほかないのであります。あまり時間をかけてはいけませんから、余儀ないのですが、次の問題に移らせていただきます。  この案では十月までには施行するごとになつておりまして、半年の余裕がここに与えられておるのでありますが、半年の余裕があるならば予算の組みかえなどは十分できるはずだと思うのであります。半年余裕があるのになぜこれをそういうふうになさるのか。そのために無理な半年間の経過措置が起つておる。半年かかれば私は十分できると思うのです。できないのがむしろふしぎであります。それをどうしてもなさらぬで、半年間の経過措置というものが実に乱暴きわまる経過措置になつておる。府県経費負担し、府県の公務員になる警察職員の給与まで市町村が払うとか、財産を府県に無償で持つてつてしまうという乱暴きわまる経過措置が起つてしまつておる。私はこの経過措置というものはまことに乱暴である、できが悪いと思うのであります。そういうことをなさらぬでも、すなおに半年の間かかつて準備をして組みかえられたらいいのじやないか、こういうふうに実は思うのであります。むしろ半年間経過措置を置いておくということのために、警察界に大混乱を起すということを憂えておるのであります。第一、府県の公務員になつた者の給料が市町村から払われる、また他の諸経費も市町村が支出するのだ、こんなことはおよそ混乱を起すもとです。時勢緊迫のために警察制度改正するということでありながら、半年間警察を実に混乱状態に陥れるだろうと憂えるのであります。これは準備ができないのでありましようか、どうでありますか。できるのじやありませんか。この点について本多国務大臣でも、どちらでもけつこうですけれども、どうも得心が行かないのでお伺いしたいと思います。
  281. 本多市郎

    ○本多国務大臣 実施までの期間が相当あるのじやないかという御趣旨ですが、これはいろいろと実施までに準備等の必要があり、市会の議決等もできることならば得て、そのときから発足というようなことを考慮されることもあるのじやないかと存じます。財政措置を本年限り従前の通りにいたしましたのは、実は地方財政の調整という問題が、ただいま地方制度調査会等によつて再検討されているのでありまして、それが来るべき通常国会を目途として答申していただくということになつておりますので、そうしたことも勘案いたしまして、二十九年度に財政調整ができるものと期待しておりますので、暫定措置ということになつたものと思います。
  282. 古井喜實

    古井委員 多分そういうことであろうと思いました。私は組みかえができないのじやなくて、むしろ税財政の改革という問題が解決つかぬというと、これは本格的な実施ができないだろう、その点にむしろ理由があると想像しておつたのでありますが、そのように今伺いました。しかしそれならば二十八年度でもつて暫定期間は足らない、これはそのときまで、むろん本多大臣も、吉田内閣の閣僚として有力な地位を占めておいでになろうと思いますが、そのときになつてごらんなさい。二十八年度では税財政の改革とひつからまる以上は、本格的な姿にもどりません。これは私は断言しておきます。おそらくもどらぬと思います。それだから前回の警察法のときも、地方税財政の確立するまでを経過措置の扱いにしておつた義務教育の方の関係もあつて、なかなかこれは地方の税政対政を立てる方策はめんどうだと思います。私はそういう意味から二十八年度と限られたことがむしろ無理を起すのではないか、そういうふうに思うておりますが、この点は時間の節約上この程度にしておいて、次に移りたいと思います。  それから次の問題は、これは午前中明敏な齋藤長官から御答弁をいただいて、なおかつ得心ができぬのでありますから、多分筋の通らぬ話だろうと思うのでありますが、つまり府県警察職員の上級の者を国家公務員にし、下級の者を地方公務員にした、これは私は非常に悪制度だと思うのです。いわゆる粉飾のためにこういう地方公務員というものをおつけになつたのだろうと思うけれども、悪制度だと思う。やつとこの数年の間に昔の国家公務員である官吏と吏員の差別観念がなくなつて来たのに、再びここで今のよう制度を行うならば――とにかく上級の者が国家公務員、下級の者が地方公務員、とんでもないことをお始めになつたと思う。私はこの両方のものを組み合されたということについては、理論上欠陥がある。ほとんど説明のつかぬ欠陥があると思つております。しかしこれはここでは時間の関係上論じますまい。少くともこういう国家公務員地方吏員に差別感を起すような立て方は非常にまずいと思うのであります。一体どうしてこういうことをなさるのか。警視以上がやる仕事とそれ以下の者がやる仕事も同じ警察事務です。国家公務員で上の者がやつてよいことならば、下の者も国家公務員でやれるはずである。これは実に悪制度を御採用になつたと思うのでございますけれども、その辺については何の心配もない、これがりつぱな制度だとお考えになつておるかどうか。     〔岡本主査代理退席、主査着席〕  従前官選知事時代の府県庁において幹部職員は官吏である。その下に府県吏員というものが置いてある。府県吏員というものを免れたいということをなんぼ府県吏員諸君が思つたことでありましようか。それどころではない、官更の中に暫定的というか、限られた範囲でありましたが、地方支弁というものが都制廃止以来何人か置いてあつた。これが国費支弁になりたいというだけでも非常に望んだものである、それくらい微妙なのであります。私はむしろ情ないことを持ち出されたと思つておるのであります。この点について何かお答えをいただけましようか。
  283. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは午前の委員会で御答弁申し上げたのでございますが、結局その地位の性格によることでありまして、自治警、国警を廃して府県警察をつくる、そのために中央との連絡、また地方との連絡というようなことから、そういう国家公務員地方公務員とが府県警察の機関の中でつながりがつくということで、こういう制度をとることが、今回の改革にふさわしいというところから来るやむを得ない事情だと存じます。お話通り、すつきりしたものにするということは望ましいのでありますけれども、自治警、国警を統合した性格ということになりますと、そうした性格はやむを得ないと考えております。これらはよくこの警察制度の精神を理解してもらうことによつて、ただいまお話のありましたような弊害は、なるべく少くして行きたいと思つております。
  284. 古井喜實

    古井委員 今のお話は御説明にも何にもなつておりませんけれども、ここのところはお伺いした程度で先に進みます。しかし確かにこれはできが悪いと私は信じ込んでおります。悪いことをなさつたと思つております。その辺がまことにどうもすつきりした制度をお立てにならないで、やはりそのしつぼを出した一つの点だと私は思つております。これが後日どういうことになるか、お互いにそれを見て、この法律が成り立つたならば論ずることにしたらどうかと思います。そこで私はどうしても得心の行かないのは、この七十万以上の都市の問題です。これが市会の決議だけで独立した警察単位になるという点であります。これは法律が施行になる前に決議する場合もありましようが、施行になつてから決議することも事情であり得るのであります。また法律もそれを認めておる。そこで府県警察になつておるところに、今度は市会だけで決議すればこれが独立たし警察になつてしまう。こういうことがどうしてできるのか。府県の機構なんです、これがまた府県経費を払つておる機構になつておる。すべて府県のかまいになつておるものを、市の市会だけで決議して、これが府県から独立してしまう。これはどう言われても乱暴きわまる。きめるならむしろ府県会がきめる方が私は至当だと思う。のみならず私はむしろ住民投票によるべきものだと思うのであります。で、この点は私は法律論としても十分論じ得る点があると思ひますけれども、法律論は抜きにいたしましても、事柄が乱暴じやありませんか。私はどう考えてもこういう悪法は成り立ちようがないと思うのです。この点はほんとうに自分で御修正になつた方がいいくらいだと思う。こういう悪法がもし成り立つならばたいへんです。人のものを他人がひつくり返してしまうというのであります。そうしてまた府県の財産となつてつたものが、今度は独立した単位のものになつてしまう。これはいかにも乱暴です。そうお考えにならぬのかどうか。私はこの問題は、ただ見解の相違くらいじや済まぬ問題だろうと思つておりますが、とにもかくにもこれでいいのだとおつしやるのか、どうしても伺わざるを得ないのであります。
  285. 本多市郎

    ○本多国務大臣 お話通り、これで適当であると考えております。それは従来も大都市は自治警察を持つてつたものであり、その規模は府県に匹敵する規模のものでございます。従つて従来警察を経営しておりました、その府県に匹敵する規模を持つたものが、自主的にその市で警察府県と並立して持ちたいという意思表示があれば、現在もそうなつておるのでございますから、それで適当だろうと考えております。
  286. 古井喜實

    古井委員 そういうふうにお考えになるならば、これはもう論議をしてもほとんど無用だと思うのです。どんなことであろうが、これでけつこうだという式のお考え方であるならば、もう論ずる余地もないと思います。私はこの警察機構の制度の問題のみならず、義務教育国庫負担に伴う地方財政の問題にしても、実際問題があると思うから論じておりますけれども、こういう状況では私はもう質問をする興味も勇気もなくなりました。とにかく出してあるのだから、りくつが通ろうが通るまいがそれでよかろう、こういうことは私は適当でないと思う。非常に不満です。多分ここにおいでになる委員の方だつて筋が通つておるとはお考えになるまい。とにもかくにもこういうことでありましてはしようがありません。多分後に別の機会もありましようから、きようは私はこれで伺うことをやめたいと思います。
  287. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 他に質疑はございませんか。――なければ昭和二十八年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府経済審議庁を除く)及び法務省所管に対する質疑は終了いたしました。
  288. 岡本茂

    岡本委員 この際動議を提出いたします。本分科会主管の予算各案に対する討論採決は、予算委員会に譲られんことを望みます。
  289. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 お諮りいたします。ただいまの岡本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 橋本龍伍

    橋本(龍)主査 御異議なしと認め、岡本君の動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後七時五分散会