○小笠原国務
大臣 早川さんの御指摘になりました点はきわめて重大でございまして、実は私どもも
日本の将来の
経済をどう持
つて行くか。また
産業構造等をどう持
つて行くかということは、日夜苦心をしておるのであります。それで今早川さんがお読みに
なつた本は、あなたの方の芦田君からいただきまして、読んで非常に示唆に富んでおる点をたくさん発見いたしました。それで先般も
予算委員会で御答弁申し上げたのでありますが、私といたしましては、
日本がこの少い面積のところに多大の人口を擁しておるという事実から、どういうふうに
日本を持
つて行くかということをまず
考えなければならぬ。それにはどうしてもまず
日本が一方では輸出を増加さす、一方では輸入を減少さす、こういうことと、一方では国の中でできるだけ国内
産業を興して、国の中でまかなえるものを多くして行かなければならない、この三つが実は重点になるのではいか、こう私は申し上げたわけであります。しからば
日本では輸出
産業をどうするかと申しますと、現在
日本では原料を入れまして、そうして加工してこれを出しておるものが一番多いので、今御指摘になりました繊維類は
——生糸は例外でありますが、
生糸を除きましては大体そう申してよろしいと思います。ところが綿などたくさん入れて輸出すると、ちようど早川さん御指摘に
なつたように、インドその他の後進国でだんだん繊維工業が興
つて参りまして、だんだんと開拓する余地が少くな
つて来ております。もつとも精巧なよい品物を出しますれば、これは
相当余地があると思いますが、そういうような状況でございますから、私どもは
日本は現在のところはまだ繊維工業は
相当出て行くから、これはできるだけ助長はする。しかし結局はだんだん草
化学工業というものにかえて行くという方策をと
つて行かなければならぬだろう。それにはやはり
日本の商品の比較的売れやすいと見られる東南アジアであるとか、中南米地方を目ざして、その方面で開拓して行くべきではあるまいか。それにはいわゆるコストの切下げ等が必要であるからというので、早川さんにたびたび申し上げたように、いわゆる基幹
産業に対するあらゆるコスト切下げ方の努力をいたしておるのであります。まだ十分なことには行きませんが、すべてその方向に向
つて進めておるのであります。
そこで輸出はだんだんと需要の多いものをよけいにつく
つて出すようにしなければなりませんが、だんだん輸出面というものが狭くな
つて来るのじやないか。輸出市場はずつと先に行くほど狭くな
つて行くのじやないか。狭くな
つて行くとすると、輸入したものへ加工して輸出するという建前でなく、できるだけ国内のものを使
つて輸出するというようなこと、あるいは加工精度の高いものをつく
つて行く。
従つて同じ繊維品なら、できるだけ化学繊維のようなものをよけいつくることによ
つてや
つて行く。こういうことが比較的入れるものが少くて出すものが多くな
つていいのではないか、かように
考えてお
つて、特に繊維品のうちでは、従来の綿紡績偏重よりは、化学繊維の方に今後重きを置くべきではないか。但しこれは繊維についてだけ申すのです。あとは重
化学工業方面につきましても、いろいろそうい
つた考え方から割出して行くべきではなかろうかと
考えておる次第でございます。
それから輸入の方を何とかして減さなければならない。その最初に来るものがいわゆる
食糧なんです。
日本はとにかく年に三百五十万トンも
食糧を入れなければならぬ。価格にしてもおそらく、ときによりましようが、
相当大きな金額で、国際貸借のうちほとんど四割くらいが、今
食糧にな
つておるのじやないか。この輸入をできるだけ少くしなければならぬ。それには国内で自給度を高めて行くということにならなければなるまい。従いまして、
農林省に私も一月ほどおりましたが、いわゆる五箇年
計画というものを強力に推進して行くということが、ぜひ必要である。同時に、
日本は米だけでまかな
つて行こうとすると無理である。どうしてもやはり麦というものも、もう少しよけいやらなければならない。それから占領政策で一時
増産をとめられたのですが、かんしよ、ばれいしよというものを、もう少し
増産する。これは割合に
土地が貧弱でも栽培法によ
つてよけいとれますから、今の米麦中心ばかりでなく、そういうことによ
つてや
つて行く。同時に少し気長なようですが、
日本人の食生活の改善方をはか
つて、何でも飯を食うなら米だとい
つたような
考え方をかえて行く方に持
つて行かなければならぬ。そうして
日本の
食糧を入れる限度を最小限にとどめたい。できるなら入れないでや
つて行きたい。それで現在のところ足らぬのは二割かそこらのところでありますから、麦、かんしよまでまぜれば、それまで入れなくていいと思います。
従つてそうい
つた点について、まず
食糧の輸入を削減するためには、少し
計画は大きいようでも、いわゆる
増産五箇年
計画はぜひ実行したい。それと並行して食生活の改善等をはか
つて、輸入をだんだんと少くして参りたい、こういうふうに実は
考えております。
それからまたもう
一つの、今申し上げた国内
産業の開発につきましては、これは
日本は何としても努力しなければいかぬと思います。この点について今まで施策に足らぬところがあるように
考えますので、やはり国内
産業をもう少し発達さす。特にただいま申し上げました、これがよいときには輸出
産業にかわ
つて行くものについては特別な配慮がいるのではないか。そうい
つたことを
一つの大きな見通しとして、私としては今の政策を進めております。
従つて私は、このごろ貿易々々と言われるものですから、輸出貿易の振興ということを最初に掲げておりますが、同時にただいま申しました輸入を減少さす。そうして国内
産業を振興さす。国内の
食糧その他まだ未開発の資源を非常に開発する、こういうことはぜひとも必要だと思います。けれども何とい
つても終局において大きい目で見てみると、足らぬところがたくさんある。それにはやはり国民が、イギリス人と同じような心持で、耐乏生活に耐える。耐乏生活というと語弊があるかもしれませんが、国民の覚悟ももう少しいるのではないか。言葉が少し過ぎるかもしれませんが、あまり待合や料理屋が繁昌しておるような、資本の効率化に遺憾な点があるような
時代は、私はどうもほんとうじやない、こういうふうに実は
考えておる次第でございます。