○森(幸)
委員 私の質問に対しまして、厚生、農林、通産、大蔵の主管大臣をお願いいたしておるのでありますが、実は内閣全員がお聞きを願いたいのであります。過日来各
委員の御質問を聞いておりまして、私のお尋ねせんとすることが少しずつ出ておるのでありますけれども、
政府といたしましては、はつきり私の満足する御答弁を与えておられないためにあえてお尋ねをするわけであります。
独立をいたしまして、まさに一年にならんとするのでありますが、
日本は、われわれ個人にたとえますれば、戸籍上に
日本国というものを認められたのでありまして、真の独立はまだこれからであります。形式だけの独立であ
つて、真に独立国としての体裁を整えるのには、なかなか前途遼遠なものがあると思うのであります。まず第一に、独立
国家といたしましては、自衛力を強化することは当然であります。今日安全保障条約であるとか、あるいは集団防衛であるとかいうふうに、他力本願によ
つて自分の国の安全を保障するということは、独立
国家として決して名誉ではない。自分の力によ
つて自分の国を守る、こういう力を持たなければならぬと私は思います。ところが最近再軍備という言葉が唱えられるのでありますが、再軍備という言葉は、
国民に対し非常に悪い気持を思い出させるのであります。か
つて日本は、軍備を持つ上においては仮想敵国があ
つたのであります。八八艦隊といい、あるいは四十個師団といい、あれは
一つの仮想敵国があ
つて、その敵国を侵略する
意味においての軍備拡張であ
つたのであります。ところが今日さようなことは許されぬのでありまして、ただ自分の国を守るというための、いわゆる自衛軍と申しますか、自衛力でなければならぬと思います。ところが、先般練馬の隊を視察いたしましたし、昨日も久里浜の保安隊を視察いたしましたが、この長い海岸線を持
つておるところの
日本といたしましては、あのような保安隊で、はたして
日本自体の安全が保障できましようか。あれを軍鑑といい、あれは軍備だという人がありまするが、私ら従前の
日本の連合鑑隊の状態から考えてみますると、ま
つたくおもちやであります。あれではとうてい
日本の安全は保障せられないのみならず、また保安隊にしましても、どういう動乱、内乱が起るかということは予期できない。それであるから、保安隊をどの程度まで拡張することが是であるかということは、か
つてのような仮想敵国を持たない
日本としては、なかなか計画が立たないのは無理はないと私は思う。いずれにしましても、
日本は
総理がたびたび答えておるごとくに、まず
日本の経済力が自立して、初めてそれらの自衛軍も強化されるのであります。国力を無視して、いたずらに防衛軍と申しますか、戦力と申しますか、そういうふうなものを拡張しても、それはでき得ない。わが
国民にと
つて、今後国際的状態がどうなるかという
一つの不安がある。この不安は、今日の
日本の経済力ではどうしても自分ではや
つて行けない。安全保障条約があり、また集団防衛があるとはいいながら、
アメリカが台湾の中立
政策をやめて鑑隊を引払
つたということによ
つて見ても、ああいうふうなことを
アメリカがいつ
日本に対してもやるかもわかりません。
日本に駐留しておるところの軍隊をいつ何どき彼らが引揚げるかもしらぬ。そういう場合に、
日本はま
つたく露出されてしまうわけであります。こういうことを考えましても、私は一日も早く経済力を強化して自立するようにならなければならぬと思うのでありますが、それについて、
日本の経済力を確保することは貿易に依存するよりしかたがありません。
日本は貿易によ
つて国力を充実するより道かありませんが、
日本は原料資材が足りません。ないのではありません。
日本は原料資材の見本市といわれるごとくに、あらゆる原料資材を持
つておりますけれども、わずかで間に合いません。従
つてどうしてもこれを外国から買わなければならぬ状態にあるわけであります。それに引きかえて
日本の貿易の状態は、いずれ通産大臣から御回答を得たいと存じますが、先般
施政演説において大いにその抱負をお述べになり、まことに力強く考えたわけでありますけれども、現在の
日本は、概略申しますれば、ドルの国から原料を引いて、ポンドの国へ品物を売るというように、まことに不自然、不合理な貿易状態を続けておるわけであります。今、
日本が外国から買いますもののうち、三分の一が食糧であります。これは消費財でありますが、この食糧を三分の一も買
つてお
つて、どうして
日本の貿易の伸張ができるでありましようか。一日も早く外国から食糧を買わないようにして、
日本みずから食糧を生産して、
日本国民が自活し得られるところの道を講ぜなければなりません。これは内閣において農林省だけの
責任ではありません。
一体食糧問題になると、農林省ひとりまかせであ
つて、農林省が食糧のすべてをあずか
つて、そうして八千三百万の
国民を養わなければならぬ
責任を背負わせておるような感がするのでありますが、そうであ
つてはならない。これは
政府全体が
日本の食糧事情がどうであるかをよく考えられて、通産省も協力し、大蔵省も協力し、そうして厚生省も協力して
日本の食糧問題を解決して行かなければならぬと思うのであります。私がここにお尋ねせんとするところは、
日本の人口であります。
昭和二十三年六月の統計
委員会推計によりますと、三十一年には、
日本の人口は九千万を越えます。そうして三十五年には一億万人になることが推計されるのであります。このふえて行く人口を、一体どうして処理して行くかという問題でございます。国土は百年前の大きさにな
つてしまいました。人口は九十年に三倍ずつにな
つて行くのでありますから、国土は日清
戦争当時の
日本の国土にな
つてしま
つて、人口は三倍の八千三百万を越えております。そうして
戦争中のように産めよふやせよとは奨励しませんけれども、やはり百四、五十万人の人間がふえて行く、これを一体どうするのですか。大蔵大臣は先般九十億円の
予算を増額しておるのだからそれでいい、こうおつしやる。
総理大臣は人口のふえるのは世界的だ、こう言
つておる。そんな安易な考えでどうして行けるか。われわれ人間生きている以上、食うことを考えなければなりませんが、食
つて行けるでしようか。本年の
予算によりますと、来年の食糧増産は百万石、百五十万の人間がふえて百万石では、五十万石足りません。ここで問題が起
つて来るのでありますが、一体
日本人は食生活に無知なんです。この主食ということを言いならわして参りましたが、米、麦等の五穀を主食と考えておるから、米、麦に依存しておるのであります。農林省においては事務的に五箇年計画を立てられた。われわれもまた国土の開発、食糧増産の弾力性を認めます。か
つて毎日
新聞が富民協会をや
つたときに、島根県でありますが、五石三斗八升という記録をつくりました。二、三日前の朝日
新聞によりますと、六石一斗三升というレコードをつく
つております。これは過去においては採算を無視して、とに
かくとればいいという
意味においてと
つたのが五石三斗八升、今回朝日
新聞のやられたことは、いろいろ合理的に、金肥を使わず、労力といわゆる理論の上に立
つて増産されたのが六石一斗何升でありましたか、レコードをつく
つております。これはだれもがまねができない。三百万町歩の水田からかように六石もと
つたら、米が余
つて逆輸出をしなければならぬ、これはなかなか容易ならざることでありますが、しかしまだまだ
日本に増産の道があり、自給度を高める道が私は残されておると思う。それにはただ
予算だけではありませんけれども、
政府が一致協力して、この食糧の不足な程度を考え、その増産にひたむきに協力してもらわなければならない。農林省が増産計画を立てても、大蔵省がわけわからずにその
予算を否定してしまう。せつ
かくつく
つた食糧も厚生省の指導よろしきを得ぬために、むだな食糧消費をいたしてしまう。それではいかに食糧増産自給の道を立てようといたしましても、できないのであります。ここに私は考えなければならぬことは、今、外国から食糧を買いますのに、申し上げるまでもなく千五百余億円の主食代を払
つております。これの価格の補給に三百億の金を使
つておることは御
承知の
通りであります。この三百億の金は内地の金でありますから、そんなものはどうまわ
つてもかまいません。けれども千五百四十億という金は、これは外国から原料を買い得られるドルで払
つておるまことにも
つたいない金である。ドルを少しでもためて、
日本の経済力を確保せんければならぬ。それなのに、食
つてしまうのに千五百四十億というドルを払
つておる。こんなことで
日本の経済自立はできません。ここを考えなければならぬ。それでありまするから、ここに大蔵大臣にお尋ねすることは、九十億円くらい増して、それで食糧の増産ができるだろうというような認識をお持ちにな
つておることは、
政府の立てておる食糧増産計画に御理解がない、
閣議が一致しておらない。大蔵大臣は千五百億というドルを外国に払
つて、それで
日本の貿易を振興して経済が自立するとお考えにな
つておる。これは通産大臣もどうお考えにな
つておるか。これを私は考えていただいて、食糧増産をして、そうして千五百億という海外に支払いする食糧代をやめて、それだけ鉄なり石炭なり、コムなり綿なり、いわゆるほんとうの原料を購入して貿易を伸張することが、
日本の自立の上において最も必要であると考えるが、通産大臣や大蔵大臣はいかにお考えにな
つておられるのでありましようか。
そこで私は時間の関係上、質問をまじえて
意見を先に申し上げるのでありますが、私はこの食生活の改善ということが今日の一番の問題と
思つておる。主食という言葉をもうやめてもらいたい。主食というと、米とか麦とかいうことにとられるのであります。一体、
日本人は今日まで長い間の惰性で、五穀を主食とし、海産物を副食としてや
つて来たのでありますが、
戦争以来飢餓状態にありましたがために、とに
かく米を食べなければならぬ、麦を食べなければらぬ。たまたまパン食や粉食をやりましても、やはり口にはそんなものは合わない、こういうふうにどうも米に対する執着が多い。これは文部大臣もおられるのでありますが、子供のときから、われわれはいかなるがゆえに食べなければならぬか、いかなるものを食べなければならぬか、いかにして食べるのであるか、われわれが食をとるというのはどういう必要があ
つてとるのか、とるなればどういうものをとるのか、とるならはどういうようにしてとるか、この食生活の合理化を子供のときから教え込まなければならぬ。今はそんなことは
教育では何とも考えておらない、これは大事なことだと私は思うのであります。
そこで主管が厚生大臣の方へ移
つて参りますが、われわれはあまりにもカロリーに偏重しておる。この間も厚生大臣は、今度中国から引揚げて来る者に三千カロリーを保障するということを、意識あ
つてか、無意識であるか、お話になりましたが、われわれ
戦前には二千五百カロリーというものが保障されてお
つた。ところが申し上げるまでもなく、われわれ人間はカロリーだけでは生活ができないのである。このごろ厚生省の統計においても、蛋白質源というものが統計に表わされて参りました。いわゆる澱粉、蛋白、脂肪、それから厚生省の統計でいうと、ビタミン、カロリー、糖分を六要素として入れておられるのであります。脂肪でも動物質油、植物質油、いわゆる脂肪と油と二つにわかれますが、カロリーだけの澱粉ではどうしてもいけない。そこに動物質、もしできなければ植物質でもいいが、油をとらなければわれわれ健康状態ではない。今、
日本はどうもこういう食生活に無知なために、食糧の配給でも、二合七勺とかなんとかいうます目で配給しておる。カロリーなんか
一つも考えておりません。あるいはその他の栄養量なんか考えておりません。こういうふうなことで将来の
日本の
国民を養
つて行けるとお考えになるのでしようか。今、
日本がアジアにおいて一番人口の密度の高いことは御
承知の
通りであります。一平方キロメートルに二百十二人もおるわけであります。朝鮮はこの動乱で少し
減つておるでしようが、朝鮮が第二位であります。世界ではオランダ、ベルギーに次ぐ
日本の密度でありますが、このごろ産児調節というような問題が起
つておるし、また人口問題
審議会ですか、近くこしらえようとしておられるようでありますが、どういうところに目的を置かれるのでありまするか。わが大和民族はふえることがいいのです。
増加する人口を養い得ないのは
政治の貧困です。これは外国にいろいろおだてられて、
日本は人間が多過ぎる、だから減らせくと減らしてあとまた困る、フランスのように奨励しなければならぬようになります。もうそうな
つてはだめです。オーストラリアのごとくに、産めよふやせよをやろうと思
つたけれども、奨励金がないから、妻帯しない者から税金をとるというようなことまで考えているそうでありますが、このふえるところが大和民族のいいところなんです。これをつまらぬそろばんから、むちやくちやに人間を減らして、国の底力を弱めるということは私は反対だ。厚生省はどういうようにお考えにな
つているか。ここに考えなければならぬことは、局限された国土で、無限に伸びている人口をどう養
つて行くかということです。先般農林大臣は、食糧十箇年計画を立てるとおつしや
つたが、十箇年くらいで
日本の人口がどれだけふえるかということをお考えにな
つてのお話でありますか。五箇年計画を昨年われわれも
研究し、これを発案して
政策を樹立してお
つたのでありますけれども、大蔵省はそれを承認しなか
つたという話を聞いております。大蔵省はそれだけ食糧増産をする必要がないとお考えに
なつたのであるかどうか。とに
かく一つの計画、五箇年計画なら五箇年計画を立てますれば、それに
予算の裏づけがいる。
政府が一年あとにかわるか、三年あとにかわるか知りませんけれども、その
国家の立てた
政策は、あくまでもその当時の
方針によ
つてこれを進めて行くだけの熱意がなければいけない。五箇年計画だ、十箇年計画だと、その場当りの計画をお立てになりましても、ただ混迷するのは
国民だけであ
つて、不安はますます増すのみであると私は考えるのでありますが、一体大蔵大臣は、この
日本の食糧増産と人口の
増加をどうお考えにな
つておりますか、これを第一に伺いたい。