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1953-02-12 第15回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十二日(木曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    加藤常太郎君       小坂善太郎君    重政 誠之君       島村 一郎君    砂田 重政君       田子 一民君    塚原 俊郎君       永田 亮一君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    原 健三郎君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    井出一太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       石井 繁丸君    河野  密君       中村 高一君    西尾 末廣君       西村 榮一君    平野 力三君       伊藤 好道君    稻村 順三君       上林與市郎君    八百板 正君       和田 博雄君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         宮内庁次長   宇佐美 毅君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小林 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  この際御報告申します。先般私に御一任願いました公聴会公述人は、次の通り選定いたしましたから、御了承を願います。朝日新聞論説委員土屋溝君、日本鋼管会長林甚之亟君、日本労働組合評議会組織部長石黒溝君、自由人クラブ事務局長林正夫君、日本中・小企業団体連盟常務理事山本義夫君、日本貿易会専務理事猪谷善一君、第一銀行頭取全国銀行協会連合会会長酒井杏之助君、日本海員組合長蔭山壽君、経団連副会長植村甲午郎君、評論家富岡定俊君、紅陵大学総長経済学博士鈴木憲久君、以上であります。  この際私から一言申し上げたいのは、従来の公聴会におきまして、とかく委員の御出席の乏しかつたことはまことに残念のことでございました。この制度の運用は、一に各位の御出席に関係することと思います。また政府席におきましては、閣僚も政府委員もほとんど出席する者さえないほどでございまして、これも遺憾しごくに存じます。本制度アメリカの示唆によつて取入れられたことは御承知通りであり、アメリカにおきましては、議会制度のうちで非常なよい成績を示していることも御承知のことと思います。学界及び経験者の平静にして公平なる声を聞くことは、立法府と政府とともに心すべきことと存じます。この意味で、委員各位政府関係者の御出席を願う次第であります。     —————————————
  3. 太田正孝

    太田委員長 これより昭和二十八年度一般会計予算外二件についての質疑を継続いたします。中村高一君。
  4. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣に対しまして、二、三点施政方針に関しまする御意見をお聞きいたしたいと思うのであります。今度の国会に現われておりまする政策の上に見えまする一つ方針は、占領期間中行われました日本政治の偏向を相当に考えておられることが見えるのでありまして、たとえば財政方面におきましては、いわゆる占領政策中の超均衡財政是正しようとする方途がうかがえるのであります。もう一つは、先般も本会議におきまして、あるいはこの委員会におきましてもすでに問題になつておりまする通り占領政策行き過ぎ是正するという意味において今回——われわれから見まするならば、総理大臣の考えるのとおそらく違うと思うのでありまするが、政府の考えるように、われわれは占領中の政策が必ずしも行き過ぎであつたということは考えられない点がたくさんあるのであります。たとえば日本の現在の憲法にいたしましても、戦争放棄の規定を入れられましたが、これは日本民主化のために役立つりつぱな憲法であり、また労働組合法のごときも、戦前になかつたものが、今日では団結権罷業権団体交渉権というような、労働者に対しまするところの基本的な人権が確保せられたのであります。あるいは農村の問題などにつきましても、農地改革が行われましたが、おそらく日本政府の力だけでは、かくのごとき画期的な、日本封建性改革するような農地改革などという容易に行われなかつたものが、この占領期間中に行われておるのであります。あるいは自治体警察の創設のごときも、従来の日本警察制度というものが警察国家であり、あるいは長い間の軍閥政治とからみましていわゆる憲兵警察であつた。これにつきましては総理大臣自身、いかに憲兵警察がひどいものであるかはすでに体験をせられている通りであります。これまた日本はいまだかつて知らなかつた自治体警察というような一つの芽ばえも与えられ、あるいは教育制度全般につきましても、遅れた日本教育の上に六・三制という一つ義務教育制をつくられた。私たちの見方によりまするならば、多年の日本封建性を打破して、日本民主化のためにわれわれは非常な前進であつたと考える点が非常に多いのであります。しかるに最近は、何かこれらのことが行き過ぎ行き過ぎだというような言葉で、すべては占領中の行き過ぎだというふうに片づけようとする、きわめて保守的な思想を持つた行き方が濃厚に現れておると私は思うのであります。今度の政府提案しようといたしておりまするところの労働組合法改正、あるいは教育制度改革、これなどは私は行き過ぎ是正ではなくしてむしろ逆コースだと思うのであります。せつかくここまで日本民主化して来たものを、何ゆえにこの逆コース的な方向日本を持つて行かなければならないのか、この点についての首相の構想を承りたいのであります。むしろこれは政治行き過ぎではなくして客観的条件変更をされて、急激にかえなければならぬというような国際情勢、あるいは日本教育が遅れておるために、このりつぱな民主的な制度を咀嚼し運用するだけの力に遅れているということであるならば、この遅れた方を引上げるということに努力をしなければならないのに、遅れておる方面に力を入れずに、単にこれを行き過ぎなりとして逆もどしをしようとする点については、われわれはまつたく承服することのできない傾向だと思うのでありまするが、総理大臣の御見解はいかがでありまするか承りたいのであります。
  5. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。占領中にできた諸制度がことごとく行き過ぎだと申すわけではないのであります。またこれはこの間この委員会において説明いたしたと思いますが、占領当時において必要であつて、今日その必要がなくなつたものもありますし、また中には、日本の国の制度がまつたく封建的であるとか、あるいは警察国家的であるとかいうような観点からして法律をつくることを占領軍が要望した場合もありました。それで占領中において、すでに日本の法制中  おいて実情に即しないもの、国政に相応しないもの、あるいは日本の歴史、日本国民性に合わないような制度については、何というか名前は忘れましたが、委員会を設けて、そうして検討することに努めたわけであります。そうしてその道の権威者研究を依頼しまして、委員会の見るところはかくのことしといつて占領軍当局者に話をいたしておつたのであります。中にはまことにもつともだといつて、当時の総司令部においても認めたものもあります。また同時に、これは独立した後に改正するのは御自由であるが、占領中に是正されるのは困るといつて反対を受けたものもあります。いずれにしましても、当時の委員会での研究の結果については、一応当時の総司令部当局者に話をしたのであります。それに引続いて、その委員会等において研究の結果できたものを土台として、そうして改正を試みる。占領中できた法律がすべて悪いと申すわけではない。その中にただいま申したように、実際に適応しないもの、もしくは当時の占領軍当局者日本に対するある誤解から、あるいは先入主となつて、今申したように日本警察国家であるという観点からして改正をせられた法律もあると思います。それらのものを是正するという意味であつて、ことごとく悪いと申すわけではないのであります。いかに改良するかということは、警察法労働法等を漸次政府から提案をいたしますから、その審議の際に御研究を願いたいと思います。
  6. 中村高一

    中村(高)委員 悪いから全部を直すというような意味ではないという、その趣旨はわかるのでありまするが、しかしたとえば今度の教育行政の問題などにつきましても、ああいうような重要なる問題を、十分な準備と十分な調査も行わずに、いきなり教育の根本に動揺を与えるようなやり方をすることは、一体いいのか悪いのか。現にもつとやつてもらわなければならぬ点がたくさんある。たとえば今年大学を卒業する者が十二万もあるそうでありますが、これがさつぱり就職ができない状態にある。しかもこのたつた四つの島である日本の国に、大学が四百二十もあつて、これから年々十万も大学卒業生が出て来るというのでありまするが、新制大学内容は低下いたしておるということも、これは定評であります。あるいは六・三制の内容充実の問題などについて、やらねばならぬ点がたくさんあるのにもかかわらず、今度はいきなり義務教育に携わるものを国家公務員変更をする。一体国家公務員を監督するものは地方教育委員であるのか、あるいは市町村長との間の権限の問題などが一体どうなるのか、あるいは地方財政について変更が加えられるのではないかという問題について、なぜ急いでやらなければならないのか。世間では参議院対策だというようなことをいうのでありまするが、そんなけちな考えをもつて教育行政をいじられるとは、われわれは考えないのであります。参議院選挙に間に合わせるために、義務教育国庫負担法をどうしても通さなければならぬというような意気込みであると世間で伝えられておるのでありまするが、こういうような教育の問題などは、二月か三月前の選挙対策というようなことではないとしても、わずかの期間の間にこういうような問題を解決しなければならぬとして、無理押しをするところに、私は政府にもそういう非難を受ける余地があると思うのであります。日本教育問題を研究調査をして、地方財政との間の均衡というものを十分に検討をして、その上に実施をするというふうに、一年や二年なぜ待たれないのであるか。なぜ一体ここ二、三箇月に急いでこの問題を——ことに政府では、義務教育半額国庫負担は一年延ばそうということがすでにきまつてつて、この問題は延期をするということになつておるのに、今度は全然逆な方向に進んで、無準備なものを強行しようとするところにわれわれは無理があると思うのであります。これは行き過ぎ是正というようなものとはまつたく違う性質のものだと思いまするが、何がゆえにこの刻下重要な教育問題を急いで強行しなければならないか、その辺のところをお尋ねいたしたいのであります。
  7. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私からお答えを申し上げます。全額国庫負担の問題でございますが、これは御承知通り、二十四年に平衡交付金法ができまして以来、全額国庫負担をしてもらいたいというようなことが世間輿論でございまして、昨年あたり半額にするについても、その輿論から出て来た一つの現われと思います。そこで半額国庫負担を一年延ばすにきまつた仰せになりますけれども、そうではございませんで、半額国庫負担をどうするかということが予算編成の時期に閣議の議に上りまして、やるかやらぬかということでいろいろ閣議で打合わせた上、以前から全額を負担してもらいたいというような要望がありますならば、これは予算ができるならば全額にした方がいいのじやないかということでやつたわけでございます。そういう意味でございますから、長年そういうような希望があり、文部省といたしましても、それに対して準備をして現に努めておつた次第でございまして、予算編成のときにいよいよそうしようというこことになつたのでやつておるわけでございます。決してこれを、世間でいろいろうわさされているごとく考える必要はないと思います。  それからただいま仰せのごとく、占領行政行き過ぎということにつきまして、いろいろ御批判がございましたが、お説の通り、二百四十幾つも新制大学かある、しかも学力は低下した、こういうような一般非難がございますが、しかしこれとても、十三万三千人の大学卒業生は非常に多いという感じにはなりますけれども、しかし二百何十かの大学なつたということは、元の高等専門学校が全部大学なつた。そして大学なつ教育内容は、昔のごとく専門的の知識を狭く深く研究させるという専門学校が、今度は大学として、社会人として一般のサムシング・オブ・エヴリシングというような方面教育にかわつておるのでありまして、エヴリシング・オブ・サムシングというような高等専門学校教育とは違つて参つた、私はこの意味において考えなければならぬと思います。これは占領当時のいわゆる政策行き過ぎだと思います。大学卒業生は何も学者ばかりをつくるのではございません。日本文化国家としての活動に、国民が必要とする人材を出すのが目的でございます。そういたしますれば、社会方面に役に立つという人材をつくる、長い間たてば何か役に立つだろうという今の教育法でございます。しかしながら長い間人材を待てないという部面もございますから、そういう方面にとにかく役に立つような人間をつくる。これは今後大学教育内容あたり相当検討しなければならないと私は考えております。
  8. 中村高一

    中村(高)委員 こまかいことはいずれ法案が出るときに審議をされると思いますから、その問題につきましては打切りにいたしますが、なお首相に対しましてお尋ねをいたしたいのでございます。今日の新聞を見ますと、国連日本大使を派遣するということになつて沢田廉三氏が赴任をせられるということが出ておりますが、むろんまだ国連に参加しておらぬのでありますから、正式の大使とは思わないのでありますが、とにかく国連参加に一歩近寄つて行くようでありますが、九日のアメリカ上院外交委員会におきますダレス国務長官演説によると、中共の沿岸封鎖あるいは満洲の爆撃等に関しまする意見が出ておるのでありまするが、その中に朝鮮における原爆使用の計画はいたしておらぬということも出ておるのであります。原爆戦争使用せられることについて、最も大きな関心を持つものは日本国民であると思うのでありますが、わが党の同僚から、原爆戦争使用の禁止について国連のような国際機関に向つて提案をすべきことを、加盟各国日本は要請をするのが適当であるというような決議を先日提出いたしまして、そのままになつております。米ソの闘いがどういう状況に進展をいたしますかは別といたしまして、人類戦争に再びあのような残虐な武器が使われることについて、最も大きな発言権は、この被害を受けた人類唯一国民であります日本にこそあると思うのでありますが、この問題に関しまして、われわれが決議として提出いたしておりますような案を、国連加盟国家に向つて提議をすることについて首相の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  9. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 決議というものは拝見いたしておりませんが、アメリカ側でも、原爆武器として使用しないという案について、ずつと国連を通じて提案したり、協議したりしておるのは御了知の通りであります。ソ連側も対案を出しておるようでありまして、これについては意見が一致せずして、長い間そのままになつております。主義としては、原爆武器に使わない。普通の平和的な動力にのみ使うということについては、おそらく世界に反対する国はないだろうと思います。ただそれをいかにして完全にやり得るか、つまり一方はまじめにやつても相手方がまじめにやらなかつた日にはたいへんだというので、管理機構等について意見が一致しないだけと考えておりまして、主義においてはもちろんそういうことは賛成であります。ただその内容を見ておりませんが、日本側がまだ正式にそういうものを国連側提案し得る立場にありませんことは御了承通りでありますが、方向においては同感であります。
  10. 中村高一

    中村(高)委員 国会審議促進についての希望を申し上げまして、おしまいにいたしたいと思うのであります。本国会に重要な議案として提出を予定せられておりますのがたくさんありまして、われわれ審議に携わるものといたしましては、このごろのように本会議にさつぱり重要な議案提出をせられないでおることについて——会期はもう三月三十一日ときめられておるのでありますが、会期ぎわになつて重要議案提案されますことは、審議の上において非常に迷惑でありますので、この点についてどうして審議促進せられますか、その方針だけ承つておしまいにいたします。
  11. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 重要法案が多少遅れがちになつておりますことは、ただいま御指摘の通りであります。政府といたしましても、目下その促進に全力をあげておるような次第でありまして、先般総理施政演説の中に盛られておりました四つか、五つの重要法案につきましては、できるだけ二十日前後までに提案をいたしたいと考えております。そのほか相当数法案がありますが、本年は参議院選挙もありますので、国会の延長というものにおのずから限界がありますので、そういうことも考えまして、できるだけ二月一ぱい、あるいは三月上旬までに提案いたしまして、それに間に合わないものは提案しないようにしたい、そういうふうに考えております。
  12. 太田正孝

  13. 福田赳夫

    福田(赳)委員 総理大臣行政整理に関する考え方の問題について伺つてみたいと思います。その前にただいま御質問がありましたが、行政整理につきましての昨日の官房長官の御答弁によりますと、いずれ案を具してはかるということでありますが、これはいつごろになる見込であるか、ちよつとお尋ねいたしたいと思います。
  14. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これもなるべく早く提出いたしたいと思つておりますが、これは二月末日までには少し無理のように思つております。まだ今のところはつきりいつごろ提案できるということを申し上げかねる次第であります。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)委員 官公吏増加といいますか、これが総理大臣の考えておられる行政整理の底にあるのではないかというふうに思うのでありますが、これはなるほど非常に数がふえておる。大数観察をいたしまして、戦前に比べまして戦月中に官吏の定員は大体倍になつておる。戦争中でありますからこれはいたし方ないといたしまして、戦争が済みましてからも非常な勢いでふえておるのであります。終戦時に比べまして、今日またそれが大量にふえまして三倍になつております。今二百六十万人ということでありますが、家族を入れて考えますと、千万人を越えるのではないかと思われる。七人の一般国民が一人の官公吏を扶養しておるというような状況になつておりまして、これを一体どうやつて行くかということは非常に大きな問題であろうと思うのであります。ことに占領下の諸制度改正によりまして激増しておるものも相当ある。たとえば一般官庁におきましても、農林省の官吏は倍になつておるとか、運輸省でも約倍になつておるとか、あるいは国会においては五倍になつておる。裁判所は二十倍になつておる。あるいは検査院は三倍になつておる。いくさに負けた国でそういうふうになつておるというような状況でありまするが、一体それはどういうことであるか。どこに原因があるかということになりますと、私はこれは占領政策の結果ということが一番大きな問題じやないかと思う。しかしながらその占領政策を受けて立つ政府にも非常な責任がある。政府といえば、これは大体吉田内閣なんです。吉田内閣はこの官吏の問題、官公吏増加国費増加ということについて非常に大きな責任を持つておると思うのでありますが、総理大臣は、この責任を痛感されておるかどうか一つ意見を承りたい。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 行政整理については、数日前にも私が申しましたが、これはちようどすすはきのごときものであつて、普通に参りましても、人員はよけいになりがちであります。でありますから年々整理するということが自然起つて来ると思います。しかし行政整理と申して、ただ人を減らすだけではなかなか整理がつかないので、機構をかえたり、あるいはまた行政の仕方をかえるとか、いろいろな方法がありましようから、その方法についてはもう二、三年来研究をいたしておるわけであります。しかしながら行政整理といつても、いたずらに人を減らすということではないのでありまして、そのために失業問題が起つたり、いろいろ社会問題が起るのでありますから、それとにらみ合せなければならないので、あまり急激な変化もいかがと考えますが、政府あるいは国家として冗費を省く上からいつても、あるいは行政を能率化せしむるためにも、簡素化せしむるためにも、どうしても考えなくてはならぬ問題であります。責任にむろん痛感いたしますが、どうかして冗員を減らし、国費を節約するという方向に持つて参りたいと思つて政府も非常な決心をして係員は勉強をいたしておる次第であります。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)委員 ただいま総理大臣の御意見を承つて私はやや安心したのです。というのは、吉田総理大臣から言われるところの行政整理というものは、いつも首切りというような感じを受ける。大根でも切るような感じ一般に与えがちである。ことに一昨年総理大臣におかれては、大規模の行政整理というものを計画されまして、新聞などの報道するところによりますと、五十万人首切るとおつしやつた。それが行政管理庁を中心にしていろいろ検討されたところが、三十六万人案になるとか、あるいはだんだん減つて十八万人になり十六万人になり、だんだん減つて来まして、実行された官吏の減少というものはわずかに六万人にとどまつたのであります。それが首切り——大体首切りというものは、そう簡単にできるものではないと私は思うのです。何と申しますか、やはり首を切られる方の身にもなつて考えてもらいたいというふうな感じを持つておりますが、さような首切りというような感覚の行政整理というものは、これはなかなか大きな社会問題であり、大きな政治問題であつて、そう簡単にはできない。総理もただいまのお話によりますると、さような首切り的感覚ではないのだということで、私はいささか安心いたしたのでありまするが、そう考えるにいたしましても、しかしこの官公吏の定員を何とかもう少し常道にもどさなければならぬという考えは、どこまでも堅持してもらいたい。しかしながら本年度の予算を見ましても、前年度に比べまして一万三千何がしの増員になつておる。これなんかは、そういう感覚さえ少し入つておれば、ありようがない。ことに官吏の数というのは、自然退職者というものがあるのであります。大体きのうの御答弁によりますると、三%は毎年ある。三%というと、七万五千人になる。ほうつておいても七万五千人は減るのですから、その三人の一人を補充するということにいたしましても、五万人ずつは必ず減るわけなんです。前年度に比べて本年度の予算が一万三千人もふえるべぎはずがない。これは何かりくつがありましようけれども、まだ官公吏の定員がふつり合いに膨脹しておるという事実について、私は政府全体の認識が足りないのじやないか、かような考えを持つておるのでありまするが、ただいまの御言明の通り、ひとつこれにつきましては十分に御配意を願いたい。同時に政府におきましては、年来定員の不補充というようなことを言われております。私は不補充方針というのは、非常にむずかしいのではないか。しかし三人減れば一人補充するということで、二人減らして行くということくらいは、これは確固たる御方針さえありますれば必ずできる、かように考えておるのでありまするが、この確固たる方針を持ちまして、欠員を、三人減れば一人補充するにとどめるというくらいなことは必ずやつて行くというかたい御信念が総理にあるかどうか、ひとつ承りたい。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 新しい必要のために新しい機構を設け、もしくは官吏をふやすということは、これはそのときどきの必要において自然生ずるところでありますが、政府としてはまず新しい機構もしくは官庁に対しては、なるべく流用して、他の面において不用になつた、冗員になつたような人は、そちらの方に向けて行くというようにいろいろな研究をいたしております。と同時に、行政機構全体を通じて研究をいたして、廃止できるものは廃する、あるいは合併ができるものは合併をするというような方法で、予算は一応組んでおりますが、同時に行政整理をすれば、それによつて節約された費用は、予算から取上げて行くというようにして、冗費を省く考えで行政整理当局者は当つております。
  19. 福田赳夫

    福田(赳)委員 要するに、行政整理という言葉を使うと、何だか非常に冷酷無情だというような感じを与えるのでありますが、これは行政整理という言葉が持つておる意味が悪い、響きが悪い。ぜひこの言葉をやめて、財政整理というような言いまわしにしてもらいたい。私は総理首切りだと言うならば、行政整理でよろしゆうございますが、しかしただいま総理が考えておるような意味合いでいたしますと、これは財政整理であるというような感覚をもつて今後この問題に対処してもらいたい。また近く提案されるという整理案につきましても、さような国民一般の誤解を受けない趣旨におきまして、ひとつこれを推進してもらいたい。これを希望いたしまして、この問題の質問を終ります。  次に今度の二十八年度予算でありますが、これは財政というものが非常にむずかしい段階になつておる。そのむずかしい段階に対しまして、総理としても、これは大蔵大臣その他関係大臣ばかりにまかせないで、ぜひ陣頭に立つてもらいたい。かような趣旨から御質問を試みるのでありますが、今度の予算というのは、一般に非常にインフレであるという印象を与えておるのであります。新聞界におきましても、評論界におきましても、あるいは財界におきましても、あるいはこの国会の野党各派におきましてもさような印象を持つておるようであります。私はこの予算予算そのものとして、破局的なインフレ予算であるというふうな考えは持つていない。おりませんが、しかしながら財政というものが前に比べて非常に悪化しておる、これは私は事実であろうというふうに思うのであります。昭和二十四年、五年、六年、七年のドツジ指導の財政に比べますと、今回の予算は非常に悪化しておる。というのは、政府の資金の散布起過という問題もありまするし、また財政の均衡を非常に弾力性のないものにしたというような点もありまするが、要するに、急激に脆弱化したということは、これは争えない事実であろうというふうに思うのであります。世界が今非常に財政の建直しには努力しております。イギリスにおきましても、あるいはアメリカにおきましても、財政の建直しということについては努力しておる。その世界的傾向の中にあつて日本の財政だけが少し弱化の方向に進むという非常に目立つた傾向にあることについて、一般輿論が心配しておるのじやないかというふうに思のであります。もう一つは、予算の成立の経過に理由があるというふうに私は思うのであります。向井大蔵大臣の提案されました予算案によりますれば、公債は募集すまい、また投資特別会計というようなものは設定しまいというかたい決意をもつて臨んだというふうにいわれておるのでありまするが、これが与党の意見によりまして大きく修正を受けまして、その二つの防壁が二つとも押し倒されておる、そういうところに、非常に世間が事実以上におそれをなしておる点があるのではないかというふうに思うのでありますが、それは総理大臣が、あるいは外交その他のことに没頭されて財政を軽視しておる、向井大蔵大臣は孤立無援というような立場に置かれておる、そういうような事実があるかどうか知りませんが、ともかくもそういう印象を与えておる。この予算を編成するにあたりまして、総理大臣はいかなる態度をとりましたか、これをひとつ国民の前に明らかにしておいてもらいたいのであります。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのお話は多少事実に異なつておると思います。詳細は大蔵大臣からお答えがあるでありましようが、占領後において、あるいは戦前から引続きまして——戦前においてあるいは戦時中は、国費の多くは軍事費に使われたということはいなむべからざる事実であります。従つて行政方面に対する費用の支出は、これを軍事費に比べて、非常な権衡を失う程度までと申していいくらいに行政費には支出が少かつたことは事実である。そのために河川の修築にいたしましても、港湾の修築にしても、その他の行政費はなるべく節約して軍事費に持つてつたということは事実であり、いなむべからざることであります。そして敗戦の結果ますく行政方面の費用はきゆうくつになつた。終戦後七、八年の今日、各方面において国土荒廃という事実が現われて、応急の設備も、応急の支出もしなければならぬ時期にちようど再会しておるために支出はよけいになりましたが、内容をごらんになれば、決してそれがお話のような、あるいはうわさのような性質を帯びた予算ではないということがおわかりになるであろうと思います。またそこに大蔵大臣としては苦心をせられたのであります。政府としてこの予算を編成するためには、なるべく冗費を省くとともに、必要な方面に重点的に費用の支出をする。たとえば鉄道であるとか、あるいは電源の開発とか、あるいは河川の修理であるとかいうような、応急必要欠くべからざる方面に重点的に支出する考えをもつていたしたのであります。しかし同時に均衡予算の線は維持する。多少の公債は募集するにしても、これはインフレを促進する、招致するようなところまで行かないように、インフレにならない程度において募債をするということで、相当の注意を払つたつもりでおります。詳細は大蔵大臣からお答えいたします。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)委員 総理大臣から、いろいろ財政問題についても配意しておるということを伺つたのでありまするが、しかしながら最近の国の政治の動き方を見ておりますると、一番心配されるのは、何と申しましても財政の基礎原則というものがだんだんだんずれかかつて来ておる、このことなのであります。たとえば昨年の秋の臨時国会におきましても、ガソリン税というような問題がある。ガソリン税は全部これを道路に使うという法案が通過したのであります。これは総理大臣の率いる自由党全部あげて賛成したように私は思うのでありますが、さような問題。またあるいは預金部の問題がある。預金部資金というものに簡易保険の資金が統合運用されておる。これが今度分離されることになつた。これも自由党の強力なる支援のもとにさようなことになつたのでありますが、さような財政の統合運用というような、簡易な財政の第一原則というものが次々と乱れておるという問題。これはなかなかひとり大蔵大臣だけの力ではできない。どうしても強力なる総理、副総理等の支援がなければやつて行けないのでありまするが、しかしながら、財政の立場は非常に弱い。総理大臣はさような財政の基礎原則を陣頭に立つて擁護して行く、さような決意があるかどうか、ひとつその御意見を表明されたいと思います。
  22. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 きのうも福田さんに御返事いたしましたが、御趣意の通りでありまして、私は今後十分政治力を発揮して仕事をしますから……。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)委員 これは大蔵大臣に伺つておるのじやない。総理大臣伺つておるので、ひとつ総理大臣から、孤立無援の向井蔵相を大いに支援して、閣内を統一して……。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 大蔵大臣は決して孤立無援ではございません。また私としても、官房長官その他閣僚においても、大蔵大臣の財政方式については援護はいたしております。孤立無援ならしめる立場に置いておりませんから、この点は御安心を願います。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)委員 もう一つ簡単でありますからお伺いいたします。昨日大蔵大臣にお伺いいたしましたが、今度の予算の非常に大きな問題である減税国債三百億円の問題であります。この減税国債はいろいろ非難すべき点を持つておると思うのであります。その非難する点につきましては、昨日申し上げた通りでありまするから省略いたします。これは大いに冗費を節約する。冗費の節約ということに非常に総理大臣が心がけておられる点には敬意を表するのでありまするが、これはできるのであります。一昨年の秋の特別国会におきましても、官吏の一時資金の財源がほしい。これは年末の切迫しておるあの際でもあれだけの節約ができる。年度当初から心がけますれば、必ず私はできると思う。総理大臣は陣頭指揮によつて大いに冗費を節して、日本の独立一年の財政として非常な欠点とも言うべき、この惜しい傷である三百億円の国債を出さぬで済ませるという方向に努力する決意があるかどうか、これをひとつ承つておきたいのであります。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま説明をいたしましたように、ちようど本年あたりが独立第一年であつて、国土の荒廃を救うために、あるいはまた必要なる設備をいたすために、予算はふえましたけれども、同時に均衡予算あるいは行政整理等によつて、なるべく節約をする決心であります。必ず実効を上げて、こらんに入れる考えであります。
  27. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は終りました。
  28. 太田正孝

    太田委員長 先ほど御報告申し上げました公聴会公述人中、猪谷善一君は、野崎産業取締役会長野崎一郎君に変更いたしました。御了承を願います。  森幸太郎君。
  29. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 私の質問に対しまして、厚生、農林、通産、大蔵の主管大臣をお願いいたしておるのでありますが、実は内閣全員がお聞きを願いたいのであります。過日来各委員の御質問を聞いておりまして、私のお尋ねせんとすることが少しずつ出ておるのでありますけれども、政府といたしましては、はつきり私の満足する御答弁を与えておられないためにあえてお尋ねをするわけであります。  独立をいたしまして、まさに一年にならんとするのでありますが、日本は、われわれ個人にたとえますれば、戸籍上に日本国というものを認められたのでありまして、真の独立はまだこれからであります。形式だけの独立であつて、真に独立国としての体裁を整えるのには、なかなか前途遼遠なものがあると思うのであります。まず第一に、独立国家といたしましては、自衛力を強化することは当然であります。今日安全保障条約であるとか、あるいは集団防衛であるとかいうふうに、他力本願によつて自分の国の安全を保障するということは、独立国家として決して名誉ではない。自分の力によつて自分の国を守る、こういう力を持たなければならぬと私は思います。ところが最近再軍備という言葉が唱えられるのでありますが、再軍備という言葉は、国民に対し非常に悪い気持を思い出させるのであります。かつて日本は、軍備を持つ上においては仮想敵国があつたのであります。八八艦隊といい、あるいは四十個師団といい、あれは一つの仮想敵国があつて、その敵国を侵略する意味においての軍備拡張であつたのであります。ところが今日さようなことは許されぬのでありまして、ただ自分の国を守るというための、いわゆる自衛軍と申しますか、自衛力でなければならぬと思います。ところが、先般練馬の隊を視察いたしましたし、昨日も久里浜の保安隊を視察いたしましたが、この長い海岸線を持つておるところの日本といたしましては、あのような保安隊で、はたして日本自体の安全が保障できましようか。あれを軍鑑といい、あれは軍備だという人がありまするが、私ら従前の日本の連合鑑隊の状態から考えてみますると、まつたくおもちやであります。あれではとうてい日本の安全は保障せられないのみならず、また保安隊にしましても、どういう動乱、内乱が起るかということは予期できない。それであるから、保安隊をどの程度まで拡張することが是であるかということは、かつてのような仮想敵国を持たない日本としては、なかなか計画が立たないのは無理はないと私は思う。いずれにしましても、日本総理がたびたび答えておるごとくに、まず日本の経済力が自立して、初めてそれらの自衛軍も強化されるのであります。国力を無視して、いたずらに防衛軍と申しますか、戦力と申しますか、そういうふうなものを拡張しても、それはでき得ない。わが国民にとつて、今後国際的状態がどうなるかという一つの不安がある。この不安は、今日の日本の経済力ではどうしても自分ではやつて行けない。安全保障条約があり、また集団防衛があるとはいいながら、アメリカが台湾の中立政策をやめて鑑隊を引払つたということによつて見ても、ああいうふうなことをアメリカがいつ日本に対してもやるかもわかりません。日本に駐留しておるところの軍隊をいつ何どき彼らが引揚げるかもしらぬ。そういう場合に、日本はまつたく露出されてしまうわけであります。こういうことを考えましても、私は一日も早く経済力を強化して自立するようにならなければならぬと思うのでありますが、それについて、日本の経済力を確保することは貿易に依存するよりしかたがありません。日本は貿易によつて国力を充実するより道かありませんが、日本は原料資材が足りません。ないのではありません。日本は原料資材の見本市といわれるごとくに、あらゆる原料資材を持つておりますけれども、わずかで間に合いません。従つてどうしてもこれを外国から買わなければならぬ状態にあるわけであります。それに引きかえて日本の貿易の状態は、いずれ通産大臣から御回答を得たいと存じますが、先般施政演説において大いにその抱負をお述べになり、まことに力強く考えたわけでありますけれども、現在の日本は、概略申しますれば、ドルの国から原料を引いて、ポンドの国へ品物を売るというように、まことに不自然、不合理な貿易状態を続けておるわけであります。今、日本が外国から買いますもののうち、三分の一が食糧であります。これは消費財でありますが、この食糧を三分の一も買つてつて、どうして日本の貿易の伸張ができるでありましようか。一日も早く外国から食糧を買わないようにして、日本みずから食糧を生産して、日本国民が自活し得られるところの道を講ぜなければなりません。これは内閣において農林省だけの責任ではありません。  一体食糧問題になると、農林省ひとりまかせであつて、農林省が食糧のすべてをあずかつて、そうして八千三百万の国民を養わなければならぬ責任を背負わせておるような感がするのでありますが、そうであつてはならない。これは政府全体が日本の食糧事情がどうであるかをよく考えられて、通産省も協力し、大蔵省も協力し、そうして厚生省も協力して日本の食糧問題を解決して行かなければならぬと思うのであります。私がここにお尋ねせんとするところは、日本の人口であります。昭和二十三年六月の統計委員会推計によりますと、三十一年には、日本の人口は九千万を越えます。そうして三十五年には一億万人になることが推計されるのであります。このふえて行く人口を、一体どうして処理して行くかという問題でございます。国土は百年前の大きさになつてしまいました。人口は九十年に三倍ずつになつて行くのでありますから、国土は日清戦争当時の日本の国土になつてしまつて、人口は三倍の八千三百万を越えております。そうして戦争中のように産めよふやせよとは奨励しませんけれども、やはり百四、五十万人の人間がふえて行く、これを一体どうするのですか。大蔵大臣は先般九十億円の予算を増額しておるのだからそれでいい、こうおつしやる。総理大臣は人口のふえるのは世界的だ、こう言つておる。そんな安易な考えでどうして行けるか。われわれ人間生きている以上、食うことを考えなければなりませんが、食つて行けるでしようか。本年の予算によりますと、来年の食糧増産は百万石、百五十万の人間がふえて百万石では、五十万石足りません。ここで問題が起つて来るのでありますが、一体日本人は食生活に無知なんです。この主食ということを言いならわして参りましたが、米、麦等の五穀を主食と考えておるから、米、麦に依存しておるのであります。農林省においては事務的に五箇年計画を立てられた。われわれもまた国土の開発、食糧増産の弾力性を認めます。かつて毎日新聞が富民協会をやつたときに、島根県でありますが、五石三斗八升という記録をつくりました。二、三日前の朝日新聞によりますと、六石一斗三升というレコードをつくつております。これは過去においては採算を無視して、とにかくとればいいという意味においてとつたのが五石三斗八升、今回朝日新聞のやられたことは、いろいろ合理的に、金肥を使わず、労力といわゆる理論の上に立つて増産されたのが六石一斗何升でありましたか、レコードをつくつております。これはだれもがまねができない。三百万町歩の水田からかように六石もとつたら、米が余つて逆輸出をしなければならぬ、これはなかなか容易ならざることでありますが、しかしまだまだ日本に増産の道があり、自給度を高める道が私は残されておると思う。それにはただ予算だけではありませんけれども、政府が一致協力して、この食糧の不足な程度を考え、その増産にひたむきに協力してもらわなければならない。農林省が増産計画を立てても、大蔵省がわけわからずにその予算を否定してしまう。せつかくつくつた食糧も厚生省の指導よろしきを得ぬために、むだな食糧消費をいたしてしまう。それではいかに食糧増産自給の道を立てようといたしましても、できないのであります。ここに私は考えなければならぬことは、今、外国から食糧を買いますのに、申し上げるまでもなく千五百余億円の主食代を払つております。これの価格の補給に三百億の金を使つておることは御承知通りであります。この三百億の金は内地の金でありますから、そんなものはどうまわつてもかまいません。けれども千五百四十億という金は、これは外国から原料を買い得られるドルで払つておるまことにもつたいない金である。ドルを少しでもためて、日本の経済力を確保せんければならぬ。それなのに、食つてしまうのに千五百四十億というドルを払つておる。こんなことで日本の経済自立はできません。ここを考えなければならぬ。それでありまするから、ここに大蔵大臣にお尋ねすることは、九十億円くらい増して、それで食糧の増産ができるだろうというような認識をお持ちになつておることは、政府の立てておる食糧増産計画に御理解がない、閣議が一致しておらない。大蔵大臣は千五百億というドルを外国に払つて、それで日本の貿易を振興して経済が自立するとお考えになつておる。これは通産大臣もどうお考えになつておるか。これを私は考えていただいて、食糧増産をして、そうして千五百億という海外に支払いする食糧代をやめて、それだけ鉄なり石炭なり、コムなり綿なり、いわゆるほんとうの原料を購入して貿易を伸張することが、日本の自立の上において最も必要であると考えるが、通産大臣や大蔵大臣はいかにお考えになつておられるのでありましようか。  そこで私は時間の関係上、質問をまじえて意見を先に申し上げるのでありますが、私はこの食生活の改善ということが今日の一番の問題と思つておる。主食という言葉をもうやめてもらいたい。主食というと、米とか麦とかいうことにとられるのであります。一体、日本人は今日まで長い間の惰性で、五穀を主食とし、海産物を副食としてやつて来たのでありますが、戦争以来飢餓状態にありましたがために、とにかく米を食べなければならぬ、麦を食べなければらぬ。たまたまパン食や粉食をやりましても、やはり口にはそんなものは合わない、こういうふうにどうも米に対する執着が多い。これは文部大臣もおられるのでありますが、子供のときから、われわれはいかなるがゆえに食べなければならぬか、いかなるものを食べなければならぬか、いかにして食べるのであるか、われわれが食をとるというのはどういう必要があつてとるのか、とるなればどういうものをとるのか、とるならはどういうようにしてとるか、この食生活の合理化を子供のときから教え込まなければならぬ。今はそんなことは教育では何とも考えておらない、これは大事なことだと私は思うのであります。  そこで主管が厚生大臣の方へ移つて参りますが、われわれはあまりにもカロリーに偏重しておる。この間も厚生大臣は、今度中国から引揚げて来る者に三千カロリーを保障するということを、意識あつてか、無意識であるか、お話になりましたが、われわれ戦前には二千五百カロリーというものが保障されておつた。ところが申し上げるまでもなく、われわれ人間はカロリーだけでは生活ができないのである。このごろ厚生省の統計においても、蛋白質源というものが統計に表わされて参りました。いわゆる澱粉、蛋白、脂肪、それから厚生省の統計でいうと、ビタミン、カロリー、糖分を六要素として入れておられるのであります。脂肪でも動物質油、植物質油、いわゆる脂肪と油と二つにわかれますが、カロリーだけの澱粉ではどうしてもいけない。そこに動物質、もしできなければ植物質でもいいが、油をとらなければわれわれ健康状態ではない。今、日本はどうもこういう食生活に無知なために、食糧の配給でも、二合七勺とかなんとかいうます目で配給しておる。カロリーなんか一つも考えておりません。あるいはその他の栄養量なんか考えておりません。こういうふうなことで将来の日本国民を養つて行けるとお考えになるのでしようか。今、日本がアジアにおいて一番人口の密度の高いことは御承知通りであります。一平方キロメートルに二百十二人もおるわけであります。朝鮮はこの動乱で少し減つておるでしようが、朝鮮が第二位であります。世界ではオランダ、ベルギーに次ぐ日本の密度でありますが、このごろ産児調節というような問題が起つておるし、また人口問題審議会ですか、近くこしらえようとしておられるようでありますが、どういうところに目的を置かれるのでありまするか。わが大和民族はふえることがいいのです。増加する人口を養い得ないのは政治の貧困です。これは外国にいろいろおだてられて、日本は人間が多過ぎる、だから減らせくと減らしてあとまた困る、フランスのように奨励しなければならぬようになります。もうそうなつてはだめです。オーストラリアのごとくに、産めよふやせよをやろうと思つたけれども、奨励金がないから、妻帯しない者から税金をとるというようなことまで考えているそうでありますが、このふえるところが大和民族のいいところなんです。これをつまらぬそろばんから、むちやくちやに人間を減らして、国の底力を弱めるということは私は反対だ。厚生省はどういうようにお考えになつているか。ここに考えなければならぬことは、局限された国土で、無限に伸びている人口をどう養つて行くかということです。先般農林大臣は、食糧十箇年計画を立てるとおつしやつたが、十箇年くらいで日本の人口がどれだけふえるかということをお考えになつてのお話でありますか。五箇年計画を昨年われわれも研究し、これを発案して政策を樹立しておつたのでありますけれども、大蔵省はそれを承認しなかつたという話を聞いております。大蔵省はそれだけ食糧増産をする必要がないとお考えになつたのであるかどうか。とにかく一つの計画、五箇年計画なら五箇年計画を立てますれば、それに予算の裏づけがいる。政府が一年あとにかわるか、三年あとにかわるか知りませんけれども、その国家の立てた政策は、あくまでもその当時の方針によつてこれを進めて行くだけの熱意がなければいけない。五箇年計画だ、十箇年計画だと、その場当りの計画をお立てになりましても、ただ混迷するのは国民だけであつて、不安はますます増すのみであると私は考えるのでありますが、一体大蔵大臣は、この日本の食糧増産と人口の増加をどうお考えになつておりますか、これを第一に伺いたい。
  30. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 御説の通りでございまして、食糧の自給ということが非常に大事なことは私も御同感でございます。財政の力の及びます限り、農林省の案に協力して行くつもりであります。今度の予算につきましても、ほかの方が相当減りましても、農林省の食糧増産費用には重きを置いたつもりであります。
  31. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 大蔵大臣は主管農林省の考え方に協力するというお話でありましたが、事実容易におやりにならない。これは予算の上でいろいろ御苦労もあると思いますが、ともかく日本の食糧については、大蔵大臣もものを食べなさる方だからひとつ特に心配してもらいたいと思います。日本は島国だから、海外依存というのは危くてできないのです。もしアメリカがこの支那海を封鎖してごらんなさい。南方から来る米は来ますか。外国から飛行機に積んで持つて来るだけの価値のあるものではありません。私はかつて食糧の主管をさしてもらつたときに、心配したのです。外国からあてにした米が来ないで、どうして日本国民を養つて行けるのですか。飛行機には積んでくれません。軍艦には積んでくれません。戦争が始まつたら、米なんというものは船の底へも積んでくれません。そして八千万の国民がわんを持ち、はしを持つて仰むいて待つてつても食糧はくれない。この心配があるのです。ことに日本の内地では年々歳歳風水害に見舞われて、せつかくとろうと思つた田畑が泥海に化してしまう。治山治水が叫ばれるゆえんはここにある。これはほかの工業と違いまして、五から六になり、八が九になるというそろばん通りには行かぬのです。六千八百万石とろうと思つておりましても、ちよつと風が吹き、ちよつと虫がつく、そうするとそれががらつと根元からくつがえされるのがこの原始産業の悲しさだ。だから私はかつて備荒貯蓄ということを考えた。少くとも半年間くらいは外国から食糧が入らなくても、不作があつても、国民にパンを食わしうどんを食わしてでも、食糧を食いつながす方法を考えなければ、政府としては責任を持てぬとまで考えた。その用意がありますか。ただいたずらに南方の米やら、アメリカ、カナダの小麦をあてにして、安易に暮らしているのはのんき千万だと私は思う。ことに小麦協定の一プツシエル一ドル八十セントがもう安いといつてアメリカはこの協定を今ぐずぐず言つている。これはわずか五十万トンでありますけれども、五十万トンの小麦を日本が買う約束をしておつてアメリカがそれでは困る、もつと高いものでないと売らぬということになつたら、日本はそれを買い入れるか買い入れないか考えなければならない。食糧を外国に依存すること、こんな危険千万なことはない。だから食糧増産には政府がこぞつて力を尽してもらわなければならぬ。どうか大蔵大臣といたしましては、何をおいてもこの食糧増産に対して力を入れる予算を考えてもらはなければならぬと私は考えるのであります。  ところで通産大臣でありますが、通産大臣は外貨獲得などと大きなことをおつしやいました。外貨は戦争武器でもつくつたら入るかもしれませんが、ほかの産業では入りはしません。そこで私が考えることは、日本の貿易で、綿糸、綿布が最高を示しております。綿糸、綿布の原料は綿です。綿を外国から買つて、これを加工して手間賃かせぎをしております。そうしてお互いが着ているのは羊毛なり綿織物であります。綿糸は国内で消費しますから、買うただけそれに加工して売つても、まだ金が足らぬことは御承知通りであります。ただいいのは絹糸、絹織物、それから人工繊維——人工繊維は、全体のうち七、八パーセントが国外に依存する部分でありまして、絹糸、絹織物は一〇〇%の外貨獲得率であります。これをもつと外国に出す考えはないかということです。海外宣伝費を予算で見ると、二百万円か二千万円かのけちなものでありました。私は一昨年アメリカに行きましたが、そのとき絹織物はチヤイニーズ、支那だと言います。無礼千万だ。日本なんか知りません。昔は輸出の大宗といわれた絹糸や絹織物は、アメリカが第一のお客様だつた。それにその宣伝ができていないし、知らない。これではどうも外貨獲得にお骨折りになつておる通産省としては、ほんとうに力を入れておられるのか入れておられぬのかわからない。近時アメリカでこの絹糸の消費が非常にふえて参りました。これは単に絹だけでなしに、人造繊維と混織するのであります。それで絹糸の大規模の需要が起つておるのであります。今までは絹そのものの単純な絹織物でありますから、日本の絹糸が不足のために、工業原料としての価値がなかつたのでありますが、今はスフ、人絹等を混織いたしますために、非常にこの絹糸の需要が高まつておる。ところが御案内の通りに、二十四万円の最高価格をきめたのであります。A四になりますと二十五万五千五百円ぐらいに売れるわけでありますが、どうも国内の需要が多く、七割ほど消費しています。一反の絹織物が、西陣あるいはつむぎなどというような高級織物になりますと、何万円という工芸品になります。それだからどうしても内地に流れ込んでしまつて輸出が三〇%を下らんといたしております。日本がそれだけ消費が盛んなことは、養蚕家としてはけつこうかもしれませんが、外貨獲得の方からできるだけ国内需要を押えて外国へ売り、ドルを獲得する。私はイギリスに行きませんから知らぬけれども、イギリスでは、いいスコツチのウイスキーは国内ではちつとものまない。そつくりこれを外国へ出している。そしてまずいウイスキーでがまんしているということを聞いておりますが、国力を回復するためには、国民がそれだけの覚悟をしなければならない。政府はさように指導をしなければならないと私は思うのでありますが、まだまだ絹糸の海外需要は盛んになります、それは日本の宣伝が下手くそなのだ。これは業者にまかしておる、そんなことくらい業者は宣伝してもよいじやないかとお考えになりますけれども、それはやはり政府が、絹糸の輸出にどれだけ力を入れておるか、本腰が定まつて、初めてアメリカは本気になつて来るのです。通産省の絹糸の輸出に対する今後の方針を承りたい。
  32. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 絹糸は、日本でできるものの中で最も大きな輸出品でございますので、できるだけその輸出奨励をいたしたい考えであります。さきに、これは容易にできる方法でもございましたから、森さんも御承知のごとくに優先外貨を、従来二類テン・パーセントの割当であつたのを、第一類一五%に引上げたのであります。そのほかに今年七万俵であるのを八万俵の割当にいたしておる。なお宣伝費は、御承知のごとくきわめて僅少でありますが二千万を予算に計上してございます。さらに養蚕方面の方も奨励いたしましてできるだけ輸出をはかりたい、かように考えておる次第でございます。
  33. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 口ではさようにおつしやるけれども、まだまだ本腰が入つておりません。蚕糸業を奨励し、これを世界に宣伝して、外貨を獲得して、日本の経済を自立に導くことにもつともつと力を入れてもらわなければならぬと私は思いますが、そういうお考えがあることはまことにけつこうであります。しかし絹糸の輸出業者も商売人でありますから、外国に売るよりも国内で高く売れれば、何ぼでも国内に売つてしまうのであります。そこで問題は、一定量は外国に出さす、その出さすものが、もし国内需要よりも安い場合には、政府が裏打ちをしてでも外国に売り込ましてやる、これは私はけつこうなのです。日本銀行の札はいくら使つても問題ない。これはドルをとるのですから、裏打ちをしてでも外国に絹糸をどんどん売るようにする。それにはどうも内地が高いと、みな内地にまわる。昨日の新聞を見ますと、もう今年の春繭までも予約しております。こんな乱暴なことをやり出すと、あの価格では外国にとても輸出ができない。そうすると、政府が二千万くらいな宣伝費を使つていかに絹糸を宣伝されても、向うはそろばんをはじいて高いものは買いません。日本銀行の札をいくら使つてもかまわぬから、ドルを獲得することに考え直していただけませんか。通産大臣ひとつ、五、六億出すように大蔵大臣と相談してもらえませんか。
  34. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その点は大蔵大臣とも相談いたしますが、御承知のごとく外貨割当の一割五分というものは、割合から申すと相当効果があるのであります。今二十四万で、それの一割五分に相当する外貨ですから——一割五分というものは、ものにもよりますので、何ぼに相当するかということは申されませんが、相当割合に当ります。これは輸入するものによりますので、はつきり数量的に申されませんけれども、私の時分に五分上げた、二類から一類に上げたということについて、当業者が非常に喜んだ事実を見ましても、相当効果があることは、当業者にお聞きくださればわかると思います。
  35. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 そんな手数のめんどうくさいことはどうでもいい。とにかく日本の輸出貿易は黒字になつたとお考えになつておるでしよう、それは黒字でしよう。しかしこれは特需のおかげです。朝鮮にあんな問題が起きて、日本は特需で金がもうかつておるのです。こんな国際道義に反した金もうけをしておつてはいけない。今後朝鮮動乱が治まりましても、朝鮮と日本の間は特別関係が深いのですから、輸出は盛んになりましようけれども、現在の動乱のおかげで日本は黒字になつておる。あれを除いてごらんなさい、赤字です。こんな国際道義に反した金もうけをしておることは、私はいけないと思う。それだから日本の貿易をもつと伸張して——それは東南アジアの開発も必要でありましようけれども、向うは民度が低いからろくなものは買いやしない。ですからアメリカからできるだけドルをとつてやる、そしてアメリカから買う石炭なり綿なりを南方諸国から買う、安い原料を買つてアメリカになるたけ金を払わぬようにしてやらなければならぬと思まいす。日本唯一の絹糸でありますから、蚕糸業の発達ということをひとつ政府として一生懸命に——通産省や農林省だけで、ございませんで、政府として考えてもらわなければならぬと思います。  それから食糧問題に持つて参りますが、いかに農林大臣がはち巻して食糧増産をやりましても、人口増加に追いつきません。それだからここで厚生大臣にお聞きするのでありますが、一体日本の人口をどういうように持つて行くお考えでおられますか。やはり中絶、堕胎でやるおつもりでありますか。三十年たちますと米食う虫が一億になります。これはどうお考えになつておられますか。
  36. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。人口問題につきましては、これは重大な問題でございまして、厚生省でも検討いたしておりますが、ただ人口の増加については、しさいに検討いたさなくてはならぬのであります。出生率は、終戦後は大体二十二年が最高で千人について三十四人、最近は減つております。日本の出生率が減つておりますことについては、相当検討を要する点がございますが、昨年あたりは千人につき二十四人くらいに相なると思うのであります。ただ一方におきまして死亡率も減少いたしておるのでありまして、死亡率は大体戦前平均千人につき十七人でありますが、昨年あたり九人くらいで、これは公衆衛生の普及によつて減つております。ただ出生率が減つております点には検討すべきものがあります。しかしそれは時間がありませんから申し上げません。従つて増加昭和二十三年度千人につき二十六人を最高にいたして昨年はおそらく十五人くらいと思つております。でありますから、人口の増加は、一時心配いたしておつたほどの率にはなつておりませんで、おそらく昨年あたり百三十万人くらいと思います。しかし、上つておりませんけれども、御承知通り国土が非常に狭小でありますし、資源も非常に少いのでありますから、人口問題は非常に大事でありまして、先般この委員会におきましても御質問に応じて申し上げましたが、人口問題審議会を設けて、五つくらいの方面からこの問題を解決いたしたい。これはいろいろございますが、その中で一番大きな問題はやはり二つであろう。それは、かねて内閣にありました人口問題審議会で取上げられました線——産業構造から人口を吸収して行く面、あるいは人口を調整する面、この二つの面について、一面の産業構造は通産省そのほかにおいていろいろおやりになりますが、人口調整の面は厚生省においても今せつかく検討いたしております。これは公衆衛生上の見地がありますから、母体に支障のないように受胎調節をやつております。  なおその他食糧問題に関しましては、御質問に応じまして……。
  37. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 私は人間をあまり積極的に減らすことは反対なんです。奨励する必要はありませんけれども、自然増加して行くものは、これは生を受けてこの国土に来るのですから、これを養えなければその国の政治が貧困なんです。ただ今までのような主食ということを訂正してもらいたいんです。くだものなり、蔬菜なり、魚なり、あるいは酪農なりを奨励すれば、米をつくること、麦をつくることを主体としなくても、日本の人口は養つて行ける。食糧増産というと、米をつくる、麦をつくることと考えるが、澱粉をとるのならさつまいもが一番多い。一反歩の面積から澱粉の量を多くとり、カロリーをとるのにはさつまいもが一番多い。それで戦争中さつまいもを主食の中に入れまして大分奨勤した。ところがアメリカが小麦が多くて困るから、日本のさつまいもの管理をはずせというような無理なことを言つて、とうとういもをやめさせてしまつた。こういうふうに、占領治下にあつては、アメリカがかつて気ままなことをやつて日本の食糧を、——三十億ドルもガリオアが持つて来たんだから文句は言えませんけれども、日本の食糧政策にまで干渉して来た。もう今は自由に、自分らの食糧は、いかなるものをいかにして食べるかということを、自分で考えて行く時代であろうと私は思います。それであるから農林省だけではいかぬから、厚生省も、農林省も、文部省も日本国民の将来の食生活はどうして行つたらいいか、これを研究してもらうと、現在農林省の考えておる増産でも、まだ十年も、十五年も、私は海外に依存しなくても行けるのではないかと思うのであります。しかしやはり米だ麦だといつていると、五箇年計画、十箇年計画を立てなければならぬ。大蔵省はその面に予算を出さないという。そうすると、せつかく立てた予算ががちやがちやとなつてしまつて、一体農林省は何をしておるか、こういう問題が起つて来るわけであります。これは根本問題として——総理大臣に聞いてもらつたつてわけがわからないからしかたがない。あなた方がひとつ閣議の上で、日本の食生活はこうして行かなければならない、それには農林省も考え、そして文部省は教育面、厚生省は国民体位の向上の上から、食生活をこういうように合理的にかえて行かなければならぬ。またそういう意味において海外貿易の上からも食糧をできるだけ減らして、千五百億円ものドルを内地にまいてごらんなさい。どんな仕事ができますか。これは日本銀行の札じやない。どうかひとつそういう気持で、内閣あげて日本の食糧問題を解決していただきたい。みみずのたわごとということがあります。みみずは土を食つておるが、この土を食つてしまつたらどの土を食おうといつて心配するそうですが、あるいは私の申すことはそういうみみずのたわことになるかもしれませんが、四つの島にこもつた八千三百万人、もう三十年ぐらいたつと一億という人口になる。この繁殖力を持つ民族をどうして養つて行くか。ブラジルにちつとくらい移民したつて何の役にも立たぬ。これは何をおいても、独立国家としての日本が生きる重大な道である。これをやらなければ独立国じやありません。施し米をもらつていて独立国なんということは言えませんから、どうかひとつそういうことに閣僚全般の方が責任をもつて善処せられん、ことをお願いして、私の質問を終ります。
  38. 太田正孝

    太田委員長 午後は一瞬から開きます。  暫時休憩いたします。    午前十十時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時二十四分開議
  39. 太田正孝

    太田委員長 会議を開きます。  質疑を継続いたします。成田知巳君。
  40. 成田知巳

    ○成田委員 外務大臣が御所用があるそうでございますから、まず外務大臣に質問申し上げたいと思います。これも副総理からお聞きするのが筋かとも思いますが、副総理がお見えになつておりませんために、外務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。  先日の委員会でわが党の伊藤好道氏が、アイクの一般教書に関する質問をいたしましたのに関連して、私総理大臣に質問いたしました。関連質問の関係で時間が制限されて、総理の明確な御答弁を得ることができなかつたのであります。私の聞こうとしたところは、今までこのアイクの一般教書に対する各議員の質問に対して、総理国際情勢の緊迫の度は緩和している、戦争の危機はそんなに迫つているとは思わない、あるいは将来の見通しについて的確な判断を下すことは困難である、こう答弁されておりますが、私はそういう将来の見通しを聞くのでなくして、アイクの一般教書そのものに対して、吉田内閣として、日本政府として、どのような考え方を持つておるか、と申しますのは、イギリス、フランス・あるいはインドその他の諸国が、アイクの教書に対して、おのおの自国の立場から率直な批判と印象を述べております。特に今度のアイクの教書が問題になりますのは、台湾の中立解除の問題、あるいは韓国軍の増強の問題等、日本にとつては非常に重大な問題を含んでおるのですから、当然吉田内閣が、いわゆる日本が独立国となつたならば、このアイクの教書に対して十分検討して、率直に吉田内閣として受入れ方、考え方を天下に表明するのが筋だと思います。ところが吉田総理は、批判は差控えたいとか、ただ読んだ程度とか、こう言つて問題をごまかしていらつしやるのです。これは副総理に御答弁を願うことがほんとうかと思いますが、事外交に関しますので外務大臣に伺いますが、外務大臣はこのアイクの教書が、日本にとつて好ましい結果をもたらすと思うか、あるいは教書に盛られておる政策というものが遂行された場合に、日本にとつて不幸なる、好ましからざる結果が起きるのではないか、こう考えるので、率直なるお考えをひとつ述べていただきたいと思います。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この教書の多くの部分は、実際にこれが具体化されてみないと、はたしていい結果を及ぼすかどうかということの判断は、できかねるのでありまして、たとえばアメリカで関税を考慮するとか、あるいは原料輸出国から輸入を大いに増大するとか、こういうことを言つておりましても、実際はたしてどれだけやるかということによつて、実は批評することのできない部分が非常に多いのであります。但し、そのはつきりわからない原則論たけではありますけれども、一般に見てこれは非常にいいと思われる場合もあり、あるいはどうかなと思われる部分もあることは、これはその通りでありますが、私は大きく全体から見れはどれはプラス・マイナスいろいろ差引かなければならぬわけでしようが、大体の傾向はわれわれにとつて歓迎すべきものだと思つております。たた台湾の中立解除とかいうような問題、あるいはヤルタ協定の廃棄というような問題、たとえばヤルタ協定の廃葉などということも、直接日本にとつては関係があるもので、これはどつちかといえば賛成すべき方向に向いておるとは思いますけれども、他方中立放棄にしてもヤルタ協定廃棄にしても、いろいろ国際間の紛争を大きくしやしないかという懸念を持つて、方々で心配しておることは事実でありまして、つまりその心配ということがあとで雲散霧消するかもしれませんけれども、午心配を持つておるということは、ある程度マイナスかもしれないわけであります。しかしこれは今すぐにこれがマイナスであるとか不利であるとか言うべくあまりに抽象的で、実はそれだけの判断はどこの国も下せないのだと思います。ただこれがだんだん進んで行くと、たとえば中共沿岸封鎖というような問題も起つて来て、将来の貿易静に支障を起すのみならず、もつとこれが拡大されるのではないかという心印を持つての議論だろうと思いますが、これもダレス国務長官がヨーロツパでいろいろ話をして、そのあとではよほどその心配は緩和されたように見受けられます。イギリスの議会等の質擬を見ましても、ダレス長官の行く前と行つたあととでは、大分論調もかわつておるように見えますので、だんだんこれは現実化される状況において判断しないと、早計に意見を述べるのはどうかというのが総理の考えだろうと私は思います。一言にして申しますれば、先ほど申した通り原則論であつて、的確な判断はできないけれども、大きく見れば日本にとつては、むしろいい方の傾向が多いのではないか、こう考えておるわけです。
  42. 成田知巳

    ○成田委員 好ましい面と好ましくない面とある、しかし全体として見れば日本にとつて好ましい、こういうお話で非常に抽象的だから、詳細の批判は差控えたいという御答弁でありましたが、そこで、問題をひとつ具体的に申し上げて行つてみたいと思います。教書の第五項でございますが、第五項の、「自由の友として確認された国々の所要と力量等を現実的に測定した上で、これらの各国が自国の安全保障と福祉とを成就できるよう支援する方針である」これだけを考えますと、何ら問題はないと思うのですが、ただ次に、「同時にこれらの各国がその資力の限度内で自由のための共同防衛に正当な負担を全的に引受けてくれることを期待する。」とこういう条件がついているのです。先般の本委員会の質問で、多分自由党の尾崎さんだつたと思いますが、アメリカの対外援助の方式が、軍事援助から域外調達、貿易の面に移行しつつある、これに対して外務大臣は、どういうお考えを持つておるかという質問で、外務大臣は、全面的に賛成だと、こういう御答弁があつたと記憶しているのですが、これもこの「正当な負担を全的に引受けてくれることを期待する」という条件を無視したところの一方的な御意見だと思うのです。「自由のための共同防衛に正当な負担を全的に引受ける」このことは一体何を意味しておると、外務大臣はお考えになつておるか、御答弁願いたいと思います。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、むろんそういうものを読んでから、この前もお答えしたのですが、第一に国際連合の憲章からいいますと、地域的安全保障の措置というものを初めから考えておりまして、大きな国連機構の中で、各地域的に、おのおの自由と安全を守るような組織をつくることを予期しておるわけであります。また自由主義国家間の意見としましては、これはダレスさんも申されましたように、共同生活の中で一つの国、つまり社会でいえば、町の中の一つの家が火の用心が不始末なために、火事を起せば、よその家も迷惑をこうむるし、あるいは戸締りをおろそかにしてどろぼうが来るような状況になれば、よその家も迷惑をこうむるのだからして、おのおののその能力に応じて安全を守る措置を講ずべきが当然であるというのが、自由主義国家間では一致した意見であります。従いまして、そういうようなアメリカの大統領の意見というものは、私は当然だ思うのであります。そのおのおのの義務は何であるかということになりますと、それはヨーロツパのように、お互いの軍隊を出しあつて、統合するとか、あるいは共同体をつくる、欧州軍を創設するというような場合もありましようし、あるいは日本アメリカ、あるいはフイリピン、濠州、ニユージーランドとアメリカのように、お互いの間に両国間の安全保障に関する条約を結ぶような場合もありましよう。またそうでなくして、ヨーロツパ共同体に似たような経済的な、お互いの自由を確保するために鉄や石炭の共同の市場等を確保するというような経済的の部面もありましようし、これはその時と場所、その国々の力によつておのおのきまるのであつて、一概にこういう方式でやるのだということはないと思います。
  44. 成田知巳

    ○成田委員 今地域的集団安全保障の問題を言われたのですが、これは後ほどお尋ねしますアイクの教書の第七項が特に問題だと思うのであります。この第五項の問題で、共同防衛の正当な負担を全的に引受けるということは、各国によつて事情は違うと言はれましたが、日本として、日本に要求されるものが大体どういうものであるかということは、一応外務大臣として構想を持つておられるだろうと思う。たとえば防衛生体制の確立をやれとか、あるいは保安隊の増強をやれ、こういう具体的な問題が提起されるのではないかと思います。具体的に各国の事情によつて違うと言われましたが、日本にもし要求されるとすれば、いかなる要求があるとお考えになつておりますか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本に対して、要求ということはないでありましようけれども、期待されている部面は、自衛力漸増だと思います。自衛力の漸増と申しますと、すぐに保安隊などの人数をふやすというようにお考えになる人が多いのでありますが、そうでなくして、たとえば道路の整備にしても、あるいは港の整備にしても、あるいは食糧の確保にしましても、あるいは大きくいえば道義の高揚というようなことまでが、やはり自衛力の漸増になるのであります。(「でたらめ言うな」と呼ぶ、その他発言する者あり)どうしてもこれはすべての問題であつて、何も兵隊とかあるいは保安隊とか、あるいは武器とか、それだけをふやすという問題じやない。また保安隊にしましても、人をふやすよりは、もつと精鋭の度を加えるという部面もありましよう、それでその線に沿つては、われわれもアメリカに言われるまでもなく、当然いたすべきことだから、いろいろ努力いたしておるわけであります。その他におきましては、日米経済協力という部面でいろいろ考えられる点がある思います。たとえばいわゆるオークシヨン・プログラムといいますか、特需的のものはいろいろあるだろうと思います。要するに日本としては、自分の方の保安隊等の整備のみならず、国内の政情の安定から、すべてそういう安定の方向に向うことを努力すると同時に、インダストリアル・ポテンシヤリテイといいますか、その方面の努力がさしあたりはなすべきことだろうと考えております。
  46. 成田知巳

    ○成田委員 外務大臣は国民精神、道義の高揚まで言われましたが、私たちは直接にこの教書から日本が要求され、希望されるものは、防衛生産体制の確立、あるいは保安隊の増強、こういう形で現われて来ると思うのです。先ほど外務大臣の言われました地域的集団安全保障の問題ですが、教書の第七項に「経済上の必要から言つても、軍事的安全保障の観点から言つても、政治上の配慮から言つても、自由各国民の地域的集団を結成すべきで、われわれは国際連合のわく内でかかる特別の結集を全世界にわたつて強化することに協力する」こうあります。この地域的集団の問題でございますが、総理大臣の答弁では、軍事同盟、太平洋同盟というものは、現在のところは聞いてもいないし、考えられない、こういう御答弁であつたのですが、なしくずし再軍備と同じように、一挙に私たちは太平洋軍事同盟という線が出るとは思いません。しかしながら過去の戦争中に日独伊軍事同盟の前提として、日独伊防共協定というものが結ばれた。最近政府は盛んに防共々々と言つておられる。従つて太平洋の防共同盟、こういう線が近く出るのではないかということを私たちは考えておりますが、外務大臣の見通しとして、もしそういうものが出た場合に、政府としてはどういう方針をおとりになるのか、承りたい。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今のところ、そういう話はございませんし、また政府としてはそういうことを考えておりません。従いましてそれが出た場合とおつしやるけれども、一体それはどういう形で出るのか、それにもよりましよう。ただ抽象的にはちよつと申しかねるので、今申し上げ得るのは、政府としてはそういう問題を考えておりませんということだけであります。
  48. 成田知巳

    ○成田委員 次に行政協定の問題についてはお尋ねしたいのですが、この委員会の答弁で、NATO方式が目下アメリカ国会で批准手続中である。四月二十八日までに批准されたならば、当然行政協定によつてNATO方式に自動的に移行する。しかし四月二十八日までに批准がなかつた場合には、外務大臣の御答弁は、内容について特にリーズナブルな解決をしたいという考え方である、こういう御答弁であつた。このリーズナブルという言葉の内容ですが、まことに抽象的です。最近政府はしばしば行政協定による治外法権の問題で、これは国際慣行の新しい趨勢なんだから、決して主権を侵害しているものではない、こういう御答弁で、現在の行政協定によるところの治外法権というものを、合理化しておるという傾向が見受けられるのであります。そこで私特に御質問申し上げるのですが、もしNATO方式が四月二十八日までにアメリカ国会の批准を得なかつた場合、リーズナブルな改訂をやるというのですが、具体的にはいかなるものをお考えになつているか。行政協定の審議のときに私たちの受けた印象というものは、NATO方式によつて、四月二十八日までにこれが批准されたならば当然自動的に移る。しかしながらできない場合でも、NATO方式と大体同じような改訂をやるのだ、だから国民は不満でもがまんしろという政府の御説明であつたと思います。従つて当然NATO方式の批准が得られない場合に、リーズナブルな改訂をされるとすれば、NATO方式における外国軍隊の地位の問題これと同じような内容のものに改訂されると考えるべきだと思うのですが、いかがでございましようか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそう単純には割切れないような気がします。なぜかといえば、NATO方式がアメリカで批准されますれば、よその国もこれを採用いたします。従つてこれがさらに今度は新しい国際慣行の一つに成文化されたものとして出て来ますからそれはけつこうであります。しかしアメリカで批准されないということは、アメリカ国会がNATO方式に反対だということになるわけでございます。そうすると国会で反対の意思表示をしたものを、政府がそのまま取入れて国会を無視するような協定を結ぶことは、これは実際上困難であろうと思います。ただ日本政府としては、行政協定の際も、実はNATO方式に一番近いような案を、こちら側としては提出しておつたのであります。ただアメリカ側で、その当時国会がNATO方式に反対で、批准をしないということがはつきりしておりましたものですから、アメリカ政府としてはNATO方式を今日は採用できない、国会が承認すればそれは採用できる、こういうことであの協定におちついたのでありますから、NATO方式がかりに批准されなかつた場合、この批准が遅れてあと何箇月たてばというような場合は、これは別でありますが、批准を否決されたような場合には、これはそのままの協定を行政協定に盛り込むことは困難だと思います。しかし日本政府としてはできるだけあれに近いもの、つまりリーズナブルなものというのは主としてそういう意味ですが、あれに近いものに改訂いたしたい、こういう考えはかわつておりません。
  50. 成田知巳

    ○成田委員 NATO方式に近いものに改訂するという御方針だそうでありますが、具体的に申しまして、たとえば軍事基地内だけの犯罪あるいは公用中だけの犯罪、あるいは、軍属、家族に及ばないという問題について、具体的に現在政府は、どういうお心構えで御交渉なさる御方針であるか伺いたい。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お答えする前にお断りしておきます。さつきは治外法権という言葉を使われ、今度は軍事基地という言葉を使われておりますが、われわれは治外法権とか軍事基地というものは存在しないと考えておりますから、念のためにお断りしておきます。しかしそのやり方でありますが、NATOのやり方と今の協定、あるいは今までのほかの国とアメリカとの協定とは形が違つておるのであります。つまり一定の地域の中と外というような観念は、NATOでは大分少くなつておりますが、犯罪の内容について、その国の主権に及ぼすような内容であるか、あるいはその国の軍隊のみに関係する内容であるかということが判断の基準になりまして、両方に裁判権がある。そのどつちが先議権を持つているかというような判定で、いろいろものをわけていつております。今のように地域でわけるような考えをいたしておりませんから、今のNATO方式に近いというのは、そつちの方のわけ方になるべく近くして行きたい、これがまた国際間では新しい方式になりつつあると考えておりますので、そういうつもりでおります。
  52. 成田知巳

    ○成田委員 次に対日援助費の問題についてお伺いしたいと思います。これは大蔵大臣にも御関係があると思うのですが、終戦以来米国から受けました対日援助というものは、一応世上では二十億ドル、こういわれておりますが、これがいつの間にやら日本の債務になつてしまつた感じがある。しかしながら私人の間でも、金を借りるとか、物を借りるときには貸借契約を締結するのですが、いつどんな形で終戦以来日本に入つて来た対日援助費というものが、債務として確認されたか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  53. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 これはある時期に確認とおつしやるのですが、確認したことはないのです。それで一応債務と心得ておるわけです。いずれその金高あるいは返す方法を話し合うという程度であります。
  54. 成田知巳

    ○成田委員 今正式に債務ときまつたわけではない、債務と心得ておる、こういう御答弁があつたのですが、これは非常に重大な問題だと思うのです。債務になるか、ならないかということは、今申しましたように、私人間においても契約の締結をしてはつきりするのです。債務者といえども債務者の権利がある。心得ておるというと、何だかアメリカの言う通りになるのだ、こういう印象を受けるのですが、今は債務と心得ていらつしやるそうですが、大体債務にするつもりでありますか、あるいは債務にしないつもりでありますか。また債務にするとすれば、大体幾らの金額が債務になるのか、ただアメリカからこれだけやつたのだから、これだけ債務にしろと言われて、それをうのみにする必要はないと思いますが、現在政府のお考えになつている債務の金額及びその支払いの条件について、明確に承りたいと思います。
  55. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいま申しました心得るということは、われわれが心得ているので、向うと打合せたわけではございませんから、その点はお含みおきを願います。それから返済の条件とか、金高とかいうことも、今までに話のあつたことではないのでございまして、これから話合いをするわけでございます。ある時期に話合いを始めるということに了解をしていただきたいと思います。
  56. 成田知巳

    ○成田委員 アメリカからの要求もないのに、なぜ日本が一方的に債務と心得る必要があるでしようか。特にこれは西ドイツだとかイタリアの例を見てもわかるのですが、西ドイツでは四十八年から五十二年の間に十三億八千万ドルの援助を受けておる。そのうち交渉の結果、贈与になつたのが十一億五千万ドルです。借金はたつた二億ドルになつております。イタリアの場合でも同じ期間に二十二億九千万ドルの援助を受けている、そのうち十八億六千万ドルというものは贈与になつてしまつている、借金はたつた四億三千万ドルになつている、こういう例から見ましても、一応世上で二十億ドルだといわれておりますが、日本政府が向うから要求もないのに債務と心得るというのはまことに不見識だと思う。また向うの要求がないとすれば、債務と心得られるときには、心得られる経過としてどれだけの金額を債務にする、どれだけのものは贈与にする、そういう心構えがあつて心得られたに違いないと思います。その心構えなくして債務と心得るということはおかしいと思います。その心理的な経過があると思う。現在政府は大体どれくらいのものを債務にしようと思つているか、どのような条件でお払いになるとお考えになつているか承りたいと思います。
  57. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 そういう点については少しも話合いはしてないのですから、こちらも今から腹をきめる必要はないのです。それからもう一つ申し上げますが、向うからほしいとも言わないのに、債務と心得るのは不見識とおつしやつたのですが、もらつたものを債務と心得るのがむしろ見識があるので、払わないつもりになるのが不見識になるのではないか、これは私見でございますが、そう考えております。
  58. 成田知巳

    ○成田委員 もらつたものを債務と心得ることが見識だそうですが、贈与されたものはあくまでも贈与なのです。借りたものを借りたものと考えることは当然なのです。贈与されたものを債務と心得ることが見識であるということは私は受取れない。これは今日までの状況では、政府が債務と心得るのだということを言い出すまでは、国民感情としては実際のところ、これはただもらつたものとして考えているのです。また自由党あるいは政府は、これだけアメリカから援助を受けた、ありがたいじやないかといつて、いかにも国民に贈与だ、もらつたのだという印象を与えて来ておる。それを今ごろになつて債務だ、しかも一方的に政府アメリカが要求しないのに債務と心得るというのは、不見識だと思うのです。債務と心得られるというなら、今申しましたように、アメリカの要求はないのですから、日本政府としてはどれだけのものを債務としてお考えになつておるか。今申しました西ドイツ、イタリアの例からいつても、こういうものはほとんど贈与と考えていいと思うのです。また贈与となし得る性質のものだと思うのです。ここではつきり政府は、大体どれだけのものを債務とされ、どれだけのものを贈与と考えるかということをお考え願いたい。交渉する必要はないのです。今債務とお考えになつておるというのですから、その考えている内容の詳細を承りたいと思います。
  59. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 金額とか条件とかいうことを考えませんでも、これは話し合いまして、その結果において現われることで、今からそれを考える必要はないと私は考えております。
  60. 成田知巳

    ○成田委員 今から考える必要はないと言われましたが、今から考えなければいけない。また今から考えるのではおそいのです。世上約二十億ドルといわれておる。二十億ドルとしますと、今三百六十円の為替レートで約七千二百億円、一年の国家予算に該当するのです。これだけの金額が債務になるか、債務にならないかという問題は、今後の日本の財政状態に重大な影響があると思うのです。今から考える必要はないということは、少くとも財政の衝に当つていらつしやる大蔵大臣のお言葉としては当らないと思うのです。今から考えるべきだと思います。しかも私が申し上げたいのは、債務と考えておるということを言われておる。債務と考えておるとすれば、大体の金額、その支払いの条件というものを考えないで債務と考えるということは、論理的にもおかしいと思うのです。もう一度御答弁願いたい。
  61. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私はおかしいと思わないのです。二十億ドルということは、これはだれかの概算した金高で、それを元にするから今おつしやるような七千何百億円ということになるのです。これは極端に申せば、相当に減額されるものと私は考えておる。今腹をきめる必要はございません。
  62. 成田知巳

    ○成田委員 二十億ドルというものは根拠のない数字で、相当減額されるという御答弁だつたのですが、先ほど申しましたイタリアの例あるいは西ドイツの例からいつても、約八割近くのものが減額されているのです。大体その程度減額されると考えてよろしゆうございましようか。
  63. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 どの程度かということは、私は考えておりませんので、今の八割引かれるというふうにおつしやるのに、さようでございますとは御返事はできません。
  64. 成田知巳

    ○成田委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、過日の本会議で、私たちの党の和田博雄君の質問に対して、武力なくして中立はない、こういう御答弁であつた。それからこの委員会で、さらにこの問題を外務大臣は二つの場合におわけになつて戦争になれば中立というものは武力なくしてはあり得ない、平時の場合においては、経済、文化、そういう個々の面においては一応中立というものは考えられる、しかし国全体の動向としては、正しい方に味方すべきである、正しいかどうかという判断は、自由を守るかどうか、自由を尊重するかどうか、こういう判定で自由主義国家に入るのが正しいのだ、こういうような結論をお出しになつたと思います。その最初の、戦争になれば武力なくして中立はあり得ないということは、これは外務大臣の言葉としてはまことに私は遺憾だと思います。これは保安庁長官だとか、陸軍大臣の言葉ならば当然かもしれない。しかしながら外交の衝に当つておられ、樽俎折衝の間に問題を解決して平和を守る、こういう立場におありになるところの外務大臣が、武力なくして中立はないのだということを言われることは、まことに放言だと思うのですが、外務大臣としてやはりそういうお考えを持つておるか、まずお尋ねしたい。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の答弁を非常に簡潔に要約されて、かえつて誤解を起しておられるようであります。第一に保安庁長官であろうが、外務大臣であろうが、真理は一つでありますから、だれでも同じことを言わなければならぬわけであります。そんなに人によつて違うことを言つたら、それこそ内閣不統一に相なるのであります。  そこで申し上げるのですが、一朝事あつたときの場合ですけれども、私は中立というものは地理的に行われる場所もあると思います。何も武力がなくとも、だれもその土地を占領したり、軍事基地に便つたりする必要がないところにある場合は、中立政策だけでその国を守ることは当然できると思います。しかしベルギーのように、イギリスとドイツとの要衝の間にあつて非常に重要な国でありますと——あのベルギーは単に自分が中立政策を行つたのみならず、イギリスとの間にも、ドイツとの間にも、フランスとの間にも条約を結びまして、平素から中立政策を行つておる。この中立は戦時といえどもこれを守るという約束を条約上いたしておるのですが、そういう国でも、戦争の非常に苦しいときになりますと、あそこを使わなければ相手を攻撃することができない、あるいは相手に攻撃されるものと思えば、どちらかが早くあそこに入つて行こうということになる。そのときに武力がないとか、あるいは非常に弱い場合には、自然中立を侵されてしまつて、どうにもならないという実情は歴史の示すところであります。  その反面、スエーデンが中立を守り得たのは、あの当時の記録を、ごらんになればよくわかると思いますが、要するにドイツが武力を分散したからでありますが、スエーデンに入つて行くだけの力をあの当時持てなかつた、反対にスエーデンが非常な武力をたくわえて、ドイツが侵したならば、これを撃退する決意があつたので、ドイツは遂にあそごに入ることをやめたという記録があるのであります。従つて地理的に見て、中立ということを口で唱えただけでは、他国の軍隊が入つて来ることを防ぎ得るとは必ずしも言えないのであります。日本の場合は、これは見方はいろいろありましようが——一朝事あるような場合を想像するのはいやな話でありますが、ただ日本は中立である、こう言つて八千万国民の運命を預つて大丈夫だと言い得る実情にあるということは、私は疑問だと思うのであります。
  66. 成田知巳

    ○成田委員 外務大臣は、武力がなければ外国の侵入を拒否できないと言われながら、逆に今政府は、アメリカ日本の土地を提供して、アメリカの軍隊を日本に入れ、日本を軍事基地化し、そうして戦争の原因をつくつておる。私たちは中立の問題については、単なる抽象論をやつておるのではない。いわゆる戦争回避でなければならない。現在の吉田内閣アメリカ一辺倒の政策は、講和条約から安保条約、行政協定、こういう形で日本アメリカの軍事基地化し、ソ連、中国を仮想敵国にしており、戦争を挑発しており、戦争に一歩近づこうとしておる。戦争になれば武力を持つてもだめです。日本のような国では戦争を回避するのが、私たちの中立政策の具体的の根拠です。こういう意味において外務大臣の御答弁には、私は満足することはできないのです。  次に先ほど申しました正しいか正しくないかという判断ですが、正しい方に味方をするということはあたりまえです。正しいか正しくないかということを、自由を認めるかどうかによつて判定し、自由主義国家群は自由を認めておるのだから、これにつくのは正しいのだ、要約すればこういう御説明ですが、もしこれに誤解があつたらあとでひとつ御説明願いたいと思います。そのとき外相は、例を車中のけんかにとつて、車の中でけんかをし、乱暴する者があれば、それを取押えるために力を貸すことは当然だと言われた。この例自体としてはまことに正しいのです。しかしながら、日本がいかなる外交政策をとるかということをこの例にとられて、いかにも一方で乱暴をしておるものがあるかのごとき前提で御説明なさることは、外務大臣の御答弁としては、私はいささか不穏当だと思います。一体だれが乱暴しているか。とりようによつては非常に問題だと思う。外務大臣は一体だれが乱暴しているとお考えになつておるか。これについてひとつはつきり御答弁願いたい。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は必ずしも自由ということだけを言つておるのではないのです。私の外交演説の中にも、正義がいずれにあるかということは、おのずから明らかであるということを言つております。私は共産陣営の行為が侵略の行為であり、自由主義国家群の努力は平和を守らんとする努力である、こう確信しております。
  68. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると、車中のさきの例の乱暴者というのは共産主義国家だ、こういう御前提の上で外務大臣はお話になつたと解釈いたします。  それから単に自由だけを標準にしているのではないと言われたのですけれども、外務委員会の答弁で私が受けましたのが正しいかどうか、速記録を見たらわかると思います。正しいかどうかというものは、自由を認めるか自由を擁護するか、ここに論拠を置いて判断すべきであると言われて、自由主義国家、自由主義国家と申しますが、そもそもその中心はアメリカだと思いますが、アメリカにはたしてどれだけの自由があるかということです。たとえば外務大臣も御承知のように、今マツカーシー旋風でアメリカでは言論の自由は完全に抑圧されている。ある女学校の先生が、独立宣言の文章の一部をプラカードに書いてそれを持つて歩いたというので、共産党員だといつて処罰を受けている。そんな現状なのです。また「ライム・ライト」のチヤツプリンのあの映画はけしからぬといつてアメリカヘの入国を拒否しようとしている。進歩的な学者のオーエン・ラテイモアが海外に旅行すると言つたら、ちようど吉田内閣と同じに海外旅行の禁止をやつている。こういう状態で決して私は自由があるとは思わないのです。ただ自由主義国家という言葉だけでごまかそうとしているのです。それから問題は、戦争なつたらもう自由なんというものはなくなつてしまうということです。外務大臣は自由自由と言われますが、戦争になればもうあらゆる自由というものは否定される。それで私たちの言つているいわゆる中立政策というものは戦争を回避する、戦争を回避することが自由を守る唯一の方法である、こういう具体的な論拠に立つて私たちは中立政策をとつているわけです。先ほど申しましたように、講和条約、安保条約、行政協定、六百三もの軍事基地が日本にできている。十数万のアメリカの軍人が日本にやつて来ているのです。朝鮮動乱の今後の見通しいかんによつては、この日本が戦場にならないとも限らない。いくら外務大臣が満州爆撃があつても報復爆撃を受けない、こう強弁されても国民は信用しないと思う。こういうアメリカ政策に一辺到で、それにのみ追従している吉田内閣の外交のもとでは、必ず日本戦争に巻き込まれるのです。またその危機に近づきつつあると思うのです。そこで私たちは、この吉田内閣アメリカ一辺到の戦争政策に反対するのだ、そういう意味で現状を否認して、講和条約、いわゆる全面講和を主張しておる。その全面講和はやはり中立論につながつているのです。現在の片面講和あるいは安保条約、行政協定、これを否認して、アメリカ軍隊の撤去を求めるとか、あるいは軍事基地の撤去を求める、これがほんとうに平和を守るゆえんだ。平和を守るということは戦争回避です。外務大臣のいわゆる自由を確保するゆえんだと考えております。むしろ私たちの中立論を抽象的だと言われている吉田内閣、自由党の諸君が、自由々々という抽象的な言葉に隠れて戦争の危機に日本を持ち込もうとしている、こう私たちは判断しているわけです。これについて外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろな問題を提起されましたが、私が車の中での乱暴者の話をたとえたのは、もし車の中に一人なり二人なり乱暴者がいて乱暴する場合には、その他の乗客がすべてみんな一致協力して、その乱暴をさせないようにするというかたい決心がはつきりしておれば、一人や二人の乱暴者が変な乱暴をしなくなるであろうという、私どももそういう意味の平和の擁護をいたしておるのであります。つまり乱暴者がけんかをしても、大勢の人が、私は中立だから横を向いて何もしないぞと言えば、そうすれば乱暴者は安全に乱暴ができるかもしれない。そうでなく、乱暴すればみんなでもつてこれを取押えるのだという自由主義国家の結束があつてこそ、初めて平和が守られるのであつて、その結束が乱れて、どこが攻撃されても私は知らぬということでは、かえつて戦争の危険が起る、こう考えて、自由主義国家の結束が今の世の中では残念ながら唯一の戦争を防ぐ道であると考えております。その意味ですべての問題が判断されるわけであります。あといろいろおつしやいましたが、それは成田君のお考えと私の考えがどうも根本的に違うようでありますから、それから割出されるいろいろの政策についてはおのずから違うと私は考えている、こう御了解を願いたいと思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  70. 成田知巳

    ○成田委員 この正月に李承晩大統領がクラーク大将の招聘で日本に来て、総理と外務大臣にお会いになつたが、その経過について当委員会で質問があつたとき、総理大臣は、李承晩大統領はただ遊びに来たのだというお話だつたのであります。しかし常識的に考えまして、特に今ああいう動乱を続けている朝鮮で、李承晩大統領が物見遊山にたとい二日にしろ三日にしろ日本に来るはずはないと思う。一部に軍事同盟締結の問題でやつて来たのだという観測もあるようですが、これは少しうがつた観測で、二日や三日で軍事同盟ができるとは私は思わないし、またそんな話に来たとは思いません。しかし一部の伝えるところによりますと、御承知のように、今南軌鮮が兵隊の強制徴収をやつている。十八歳から三十五歳まで強制徴収をやつているけれども、もう人的資源として十万くらいしかない。そこで在日朝鮮人は約六十万、そのうち十八歳から三十五歳までの青年は約二十万といわれておりますが、その人的資源の動員とかいう問題で日本政府に協力してもらいたい、こういうお話があつたやに私たち聞くのであります。もしこういうことが事実だとすれば、次に来るのは日本の青年が動員されるということです。アイゼンハウアーのアジアはアジア人で戦わせるという言葉が今盛んに使われております。まず韓国軍の増強ということですが、韓国軍としては今人的資源は枯渇しているので、日本内地におるところの朝鮮人の動員について政府に協力してもらいたいという要請があつた、その動員のあとは、人的資源としての日本の青年の動員ということを、予想しなければならぬと思いますが、そういう事実があつたかどうか、承りたいと思います。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 李承晩大統領との話合いについては、簡単でありましたが私は外交演説の中で国会に報告しております。両国の親善関係を樹立するのは目下の急務である、早くいえばそういう意味の話合いで意見が一致したわけであります。その他には、今おつしやつたような話合いは全然一言もなかつた。この際はつきり申し上げておきます。
  72. 成田知巳

    ○成田委員 次に大蔵大臣に伺います。防衛生産費というものは再軍備につながつている、しかも非常に非生産的な支出となつておるから、国民生活を圧迫するという建前より私たちはかねてから反対して参つたのでありますが、今度政府がお出しになりました資料によりますと、防衛費の二十七年度におけるところの使用の現況及び今後の使用見込についての数字が出ております。これを見まして私たちがまず不審に思うことは、二十七年度の予算において防衛生産費、安全保障諸費、平和回復費、連合国財産補償費、保安隊費は約二千二百六十三億になつておりますが、そのうち一月三十一日現在で使用済のものが千三百十四億になつており、未使用のものが約九百四十九億あります。過去十箇月間で約三分の一以上の九百四十九億という厖大なものが未使用で残つておる。ところがあとの二箇月で約五百四十億使つて残は四百九億、こういう資料になつておりますが、これは常識からいつてこんなに使えるとは思えない。さらに個々について申し上げてみますと、保安隊費であります。保安隊費は、二十六年度の繰越しと二十七年度の予算を見ますと七百四十三億で、一月三十一日末現在で使われておるのが三百六十九億、残は三百七十四億あります。半分以上のものが残つてつて、しかもあと二箇月たつとこの三百七十四億は六十九億に激減しているが、こういうことは想像できないと思う。これは大体政府側で野党の追究にあつて政策的な数字をここに羅列したものじやないかと思うのです。相当の金額が残ると思います。もし残らないでこの資料の通りお使いになるとすれば、これは非常に国費の濫費だと思う。事実この通り使用の見込みがあるのかどうか、特に保安隊費の三百七十四億の問題について御答弁願いたい。
  73. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 こまかいことは政府委員から御返事をいたさせます。しかし、さつきお話の野党の攻撃によつてごまかすことを考えたということはございません。それはなぜかと申しますと、残したところで、何にもならない金で、(「残したところで何にもならないとはどういうのだ」と呼ぶ者あり)再軍備でもするためにうんと金をためようといえばこれは別ですが、そういう意図がございませんから、ためるという意味ではございません。それともう一つは、実際問題としてこの金の使い方が遅れている事実があるのです。いろいろ注意して物を要するというような点で使い方が遅れたということがあるので、今の一箇月幾らという勘定で、去年の四月から勘定して計算をするというのは当らないのであります。やはり初めのうちは金がいらずにいてあとからいつて来て、三月までに使つて行くということになるのでございますから、それもお含みおきを願います。
  74. 成田知巳

    ○成田委員 今のやじもございましたが、残したところで何にもならないと、この前の私たちの伊藤君の質問に対して、同じような御答弁をなさつたのです。二十八年度の防衛生産費も全部使つてしまうつもりだ、こう言われているのですが、しかし二十七年度の実績を見ましても、相当の金が残ると思うのです。また今度の予算を見ましても——この前の予算も同じでありますが、大蔵大臣が全部使つちやうとおつしやつていらつしやるけれども、予算総則で繰越明許費としてこれらの防衛生産費は翌年度に使うのだ、財政法の第十四条三で、予算の性質上あるいは予算編成後の事態に応じて翌年度に繰越し使用できるのだ、予算総則に繰越明許費としてはつきり上つているのです。だから相当のものが繰越されるということは当然予想されると思うのです。それを全部使つちやうといつた予算総則との関係でおかしい。何ゆえに繰越明許費として計上したか、やはり相当のものが残るという前提なのです、また残そうとしているのです。残しても何にもならないとおつしやいましたけれども、二十七年の実績見ましても、また繰越明許費に上つている点から見ましても、相当の金額を残しまして、ある段階に来ると一挙に保安隊の増強、いわゆる再軍備をやる、その伏線だと私たちは考えている。残しても何にもならない、あれは全部使つてしまうつもりだとおつしやいましたが、繰越明許費の関係からいつても、相当のものが当然翌年度に繰越される、これは予想されているはずなのです。大体二十八年度においてはどれくらいを繰越明許費として残すつもりであるか、ひとつ承りたいのです。
  75. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答えします。防衛支出金、安全保障費あるいは保安庁の経費を年度内に全部使い切つてしまうのだというふうなことは、私は申し上げたことはないと思います。(「いや大蔵大臣が言つたのだ」と呼ぶ者あり)大蔵大臣のおつしやる意味はそういう意味でなしに、これは成田さんが御指摘になつておりますように、こういう経費は予算の丙号で繰越明許費になつておりまして、計画が整わない、あるいは調査、設計等のために遅れるということになりますと、翌年度において繰越して使用することができる建前になつておるのであります。それで昨日お出しいたしましたこの表は、そういつた意味合いの表でございまして、この一部というものは、もちろん契約の面もそうでありましようし、あるいは現金の支出の面においても、こういう場合には繰越して使われる。しかし予算自体としては余るものではない。二十八年に行つて使用するものでありまして、予算自体として余るものではない。ただ二十七年度としては全体が予算として使用されるということがないであろう、こういう意味において大臣は申された次第であります。
  76. 成田知巳

    ○成田委員 そこで二、三月にたくさんの債務負担行為をおやりになることになつておりますが、この資料ではわかりませんので、大体件数別、契約別に、大きいところでけつこうでございますが、どういう債務負担行為をやつておるかという資料がおありだつたらお示しを願いたいと思います。
  77. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。昨日お出し申し上げました表の一月三十一日までに移替使用済額の分につきましては、これは現に設計ができまして、工事に全部着手しておるものでございます。あるいは道路なんかにつきましては、関係の公共団体に補助指令等を出しておるものもあります。しかし現実の支出負担行為になりますと、もちろん金額そのものが契約になつておるのではございません。と申しますことは、いろいろ入札その他のために支出負担行為として契約をするといつた場合に、部分契約の問題もございますし、それから府県に対しては内定の通知をいたしておる、現実の補助指令を出しておるといつたところまで行つていないものもございますので、必ずしも全部が支出負担行為済みであるとは申し上げかねると思います。ことにこれらの経費につきましては、地方の建設局、一々箇所別になつておりまして、また府県につきましても多数の府県にわたつておるのでございまして、それらの支出官の手元において現に幾ら契約しておるということは、これは調べればわかることでございますが、今の段階において早急にお出しす書料としてはなかなか困難であろうと思います。それからその次の今後の使用見込額というものは、主として安全保障費について申し上げますれば、駐留軍の方から設計書が参りまして、それを審査して、大体近日に設計が整つて、それによつて各省に予算をつけて契約をするという段階に運ぶ見込みのものでございます。  それからその次の繰越し、二十八年度というものは、大体こういうところをこれだけやつてもらいたいのだということで、駐留軍からまだ現実に設計書の提出がない、あるいはその設計書の提出がありましても、先ほども申し上げましたように、いろいろ規格を直すというようなことがございます。それから場所の選定その他もございますし、現実に遅れるのでございますが、二十八年度のものとしましては、場所的には大体こういうものとしてきまつておるが、現実に設計等のでき上つておらないもの、こういうふうに御了承願います。
  78. 成田知巳

    ○成田委員 安全保障諸費の方は、まだある程度具体的になつておりますが、保安隊の方の関係については、まだ何ら内容を示しておりません。きようでなくてもよろしゆうございますから、今申しましたように、どういう契約を何件やつておるか、その金額、これをひとつ資料としてお出し願いたい。
  79. 河野一之

    河野(一)政府委員 保安庁の方につきましては、大部分のものは中央で調達いたしておりますので、ある程度のことはわかると思いますが、これは保安庁当局から御提出を願いたいと思つております。
  80. 成田知巳

    ○成田委員 次に今度の予算の特徴は、公債の発行と過去の蓄積の放出にあると思います。そこでその関係でひとつ承りたいのですが、最近の国庫余裕金の状況をひとつお示しを願いたい。その内容は、政府預金、見返り資金、運用部資金を長期国債と短期証券とにわけて幾らか、あるいはインヴエントリーが幾らか、最近の実情をお示し願いたいと思います。
  81. 石田正

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。今お尋ねの点は、どういうふうに申し上げてよろしいか、多少迷う点があるのでございますが、たとえて申しますと、インヴエントリーと申しますものは、たとえば外為なら外為でそれだけ資金は繰入れましたが、その金は外貨にかわつておりまして、円の現金として残つておらない、外貨にかわつておる、そういう部分でございます。それから預金なら預金と申しますと、これは円で残つておるということになりますので、財政余裕金というのをどういう観点から統一的に申し上げるかということがむずかしいのでございますが、そういう点で現在の状況におきまして、政府のキヤツシユ状況等がどういうふうになつておるのかということだけ申し上げたらいかがかと思います。  今月の十日現在におきまして、政府の当座預金は三百四十七億円ございます。それからいわゆる見返り資金でございますが、これは一億円しかございません。なお先ほど申しました三百四十七億の中には、資金運用部関係といたしまして十九億が含まれておるわけでございます。これが第一段の、政府の預金はどういうふうになつておるかということについての数字になると思います。  それから次に見返り資金、資金運用部の持つておるところの国債なり、短期証券はどういうふうになつておるか、こういう点でございますが、これは資金運用部といたしましては、大体長期国債といたしまして四百八十四億円ばかり持つております。それから食糧証券、短期証券でありますが、四百七十五億円ございます。それから見返り資金の方でだざいますが、これは長期の国債といたしまして四百四十億円、それから短期証券といたしましては食糧証券を五億持つております。さような数字に相なつております。これは先般私が申し上げました、大体計画が実行された場合にはどうなるかという数字とは、違つた観点でキヤツシユばかり申し上げたので、その点は御了承願いたいと思います。
  82. 成田知巳

    ○成田委員 それから政府は今度の予算で、いかにも防衛費を減少したといつて宣伝していらつしやるのですが、しかしながら減少したのは安全保障諸費です。安全保障諸費というのは、駐留軍が郊外に移転するところの費用で、これは一回限りの費用です。性質上別わくに私たちは考えなければいかぬと思います。結局は防衛支出金と保安隊の経費、それについて減少したか増加したかということを検討しなければならぬと思うのですが、この保安庁費と防衛支出金の増減の関係を見ますと、二十七年度は保安庁費は五百九十一億、防衛支出金は六百五十億、二十八年度保安庁費は八百三十億、防衛支出金は六百二十億、そういたしますと、二十七年度は千二百四十一億、二十八年度は千四百五十億、差引二百九億のいわゆる防衛生産費というものは増になつております。その上に広義の防衛費でありますところの軍人恩給の四百五十億を入れましたら、約六百五十億の増となつております。ところが政府はもともと別わくである安全保障諸費がなくなつたからというので、いかにも防衛生産費が減少した、こういうような説明をしていらつしやるのですが、こういう観点からすれば、防衛費というものは大幅に増額している、こう結論が出ると思うのですが、いかがでしよう。
  83. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 防衛費が減つているという宣伝をいたした覚えはございませんけれども、しかしこれは減つたとも言えましようし、ふえたともどうとも言えましようが、おつしやる通り保安の経費はふえております。しかしこれは内容をひとつお考えになればどうしてもいるもので、これはやむを得ないと思います。それから旧軍人恩給を防衛費とするということは、私としては承服できない議論ですが、これも御見解の違う点があると思います。これを加えて防衛費がふえているということは、私は言えないと思います。
  84. 成田知巳

    ○成田委員 それから財政規模の問題についてお尋ねいたしたいのですが、政府はことしの一般予算九千六百五億、国民所得を五兆六千七百四十億とこう算定されて約十六・九%に当り、昨年度の一七・三%よりも下まわつている、こう宣伝されております。これは説明書にも書いてある。しかし第一に一般会計の九千六百五億に、特別減税国債が入つていなければいかぬと思います。それから国鉄、電電公社の公社債の二百二十億、この二つは当然加算されなければいかぬと思います。これを加算しましたら一兆百二十五億、いわゆる一兆億予算になつて、これで国民所得に対する割合を計算しますと一八%になる。これから考えましたら、国民所得に対する財政規模の割合は、むしろ去年よりも大幅に増大している、こう考えなければいかぬと思います。  それからまたここに数字のインチキがあると思いますが、二十七年度のそれと比較するときには、九千六百五億というのは当初予算でありますから、二十七年度の当初予算と比較すべきだと思います。二十七年度の当初予算は八千五百二十七億、これの国民所得に対する割合は一五・八%です。そうしますと二%近くの財政規模の拡大になつておると思います。これでも大蔵大臣は財政規模の拡大はないと、こうおつしやるかどうかひとつ承りたい。
  85. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 計算の基礎をいろいろに動かしますと、数字はかわつて参りますが、私は一般会計というものとそれから財政投融資と両方に、二十八年度の予算はわけて考えまして、それを国民所得に比例させますと、ほぼ前年度と同じ率で行つておる、そういう計算を立てておるのでございます。それから二十七年度の当初予算と比べますと、なるほどこれはふえておりましよう。私も詳しく勘定しませんが……。私は補正予算を加えた勘定をしたものですから、少くなつております。
  86. 成田知巳

    ○成田委員 それから財政規模と国民生活の関係についてお尋ねしたいのですが、戦前昭和——十一年、これを平均しましたとき国民所得に対する財政支出の割合は一四・六%です。それが今申しましたように一八%に増大しているわけです。そこで昭和——十一年を基準として、この当時の生活水準が一応ノーマルのものと考えた場合、政府の数字の御発表によりましても、国民の生活水準は、都市においてはまだ八四%にしか達していない。従つて戦前にまで回復していない。こういう実情では財政支出というものは、むしろ国民生活の安定、民生安定あるいは再生産に役立つ方向に財政支出をやるということは当然だと思います。この逆の方向に行きましたら、それだけ国民生活というものは低下しなければいけない。ところが今回の予算を見ましても、防衛支出金が六百二十億、保安庁費が八百二十億、平和回復善後処理費が百億、連合国財産補償費が百億、それに軍人恩給の四百五十億を入れますと二千百億になる。昨年度はこれに該当するものは約二千億です。こういう点から行きましたら、それだけ民生安定とそれから再生産というものが圧迫を受けておると思います。このことは同時にやはりインフレーシヨンの原因であると思います。大蔵大臣はインフレーシヨンは起きない、こういうことを言つていらつしやるのですが、このインフレーシヨンの起きないという理由を、あまり明確に大蔵大臣はお示しになつておらないと思う。今回の予算を見ますと、公社債が五百二十億、それから資金運用部資金の国債の売却百八十一億、見返り資金の関係が百九十七億、余裕金の減が資金運用部関係で百二十八億、見返り資金の関係で八十七億、これは過去の蓄積の放出であります。それからインヴエントリーの廃止によつて外為関係百六十二億、食管関係が百十億、公債の発行それから過去の蓄積の放出、それからインヴエントリーの廃止、こういうようにインフレになる条件が整つておると思うのです。インフレというのは急には起らない。真綿で首を締めるように徐々に起るのですが、少くともこういう財政方針というものはインフレ要因を含んでおる、こう考えなければならぬと思うのでありますが、いかがでしようか。
  87. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 インフレにつきましてはたびたび申し上げましたが、やはりこれは散布したものを吸収する方法を適当に行つて、インフレを防いで行きたいというふうに考えております。  それから財政規模は、これは小さいほどいいのでございますが、二十六年、七年に比べますと税金は幾らか安くなつております。  それから防衛費というものは、これは全然なくなすということはできないものと私は思つております。治安を保つという点からしてある程度の支出はしなければならぬが、しかしそれはなるべく少い方がいい、そう考えております。  それから九年、十年ごろになかつた社会保障という意味のいろいろの保護政策は、近来に至つて著しくふえておつてこれは民生の安定には十分の力を添えておるものと考えております。従つて今の財政の方針は、不要なる非生産的の防衛費というようなものの比例が全体と比べて多過ぎるというのではなく、社会保障というふうな方面相当の考慮を払つておる。今後もその方に力を入れて行くべきものと私は考えております。
  88. 成田知巳

    ○成田委員 時間がございませんので、ほかの大臣に御質問したいと思います。  緒方総理に御質問する予定のが、お見えにならなかつたものですから大部分外務大臣に御答弁願つたのですが、一点だけひとつ承りたいと思います。これは後ほど文部大臣にもお尋ねしたいと思うのですが、国民道義高揚の問題であります。文部大臣と私たちの所見の違うことはあとでまた御質問で申し上げますが、一点副総理にお尋ねしたいのは、国民道義の高揚をやることはけつこうなんですが、政府みずから国民道義を頽廃さしているような行為に対しては、とるべき処置をとらなければならぬと思います。その一つの例なのですが、今度自由党から、自由党の議員が中心になつてハイアライ法案という前古未曽有の一大ばくち法案提案いたしておるのです。聞くところによりますと、スペインから何か四十人ばかりの選手を雇つて来る。この四十人の選手の一年間の給与だけでも二億円だと言つております。これを厚生委員会その他でわが党の議員が追究いたしますと、一応話は進んでおることなのです。しかも進んでおる話を途中からぶちこわすことは国際信義に反するということで、政府としてはなかなか御納得が行かないらしいのですが、博徒の仁義ならともかく、こういう信義というものは私たちないと思うのです。さらに聞くところによりますと、閣議吉田総理がこの法案について一応賛意を表せられたというようなことも聞いておるのですが、緒方国務大臣は、このハイアライ法案に対して政府としてどういうお考えを持つておるか、これだけひとつ伺いたいと思います。
  89. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。ハイアライの議員提案のいきさつは私よく存じませんが、閣議総理大臣がこれを何か勧めたいと言いますか、賛成したということはございません。それから自由党が中心になつて推進しておるということも私は伺つておりません。議員提案として出ておるということは聞いております。自由党が特に党として熱心にやつておるということは聞いておりません。
  90. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 成田君ちよつと御相談ですが、時間が相当経過いたしておりまして、あとの質問者にも関係がありますので、しかるべくお願いいたします。
  91. 成田知巳

    ○成田委員 私がお尋ねいたしたいのは、政府としてこういう法案に対して——もちろん吉田総理が積極的にこれに賛成するということはないと思いますが、政府としてどういうお感じを持つておられるか、こういう法案はあまりいい法案ではない、こうお考えになつておるか。
  92. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国会としてお出しになれば、政府として何とも申し上げません。国会の意思として今進行中であるやに承つておるだけであります。
  93. 成田知巳

    ○成田委員 議員提案として出しまして、国会審議するのは当然なんですが、その内容です。政府の立場からいつて政府国民道義の高揚の政策からいつて、こういう法案提出されることは好ましいと思つているか、好ましくないと思つているか、政府の判断をひとつお聞かせ願いたい。
  94. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私はハイアライの内容はよく知りませんので、ここではつきり申し上げることはできません。研究をして申し上げます。
  95. 成田知巳

    ○成田委員 これは競輪以上の大賭博法案であるということをお考え願いたいと思います。  それから岡野文部大臣に……。先日の委員会で自由党の北さんと岡野文部大臣との間に国民道義高揚問答が行われた。それを聞いておりますと、政府だとか自由党の考えている国民道義とは愛国心と言いますか、非常に古い型の封建的な国民道義である、軍国主義的な愛国心というものを考えておるのじやないかという感を深くしたのです。一体政府国民道義の高揚を政策に掲げるときは、大体その政府の末期的な内閣の命脈尽きたときにそういう国民道義高揚ということが問題になる。政府政策の貧困の結果、無為無策の結果、人心がうんで来た。政局の転換をはからなければならぬ。こういうときになると、必ず国民道義の高揚を唱える。結局国民責任をなすりつける北吟吉氏との問答を聞いておりますと、文部大臣の御答弁は、国民道義高揚のためには生活の安定と精神面との両方考えなければならない。これはもつともだと思います。生活の安定のために自由党がどういうことをやつたかは、私はここで論じませんが、文部大臣は、教育勅語は千古不磨の真理を含んでいる、こう言われた。どこが千古不磨か承りたい。
  96. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。道徳というものは、私昔聞いたことがあるのですが、機械にさす油のようなもので、いつも油をさしておかぬと、人間というものは野性と善性とがございますから、それを直して行くのには、内閣が末期的になつているとか、命脈が尽きたということは別として、やはりいつも道義の高揚に心がけなければならぬ、こう私は考えております。  同時に戦後道義が非常に頽廃したということは、成田さんも御承知だろうと思います。しかしあるいは私の意見として一致せぬかとも思いますが戦後の日本国民というものは道義が少し頽廃してはおりませぬか、こういう観測を持つ次第であります。  それから教育勅語の点に触れられましたが、私は千古の真理を含んでいるということははつきり申し上げます。しかしそれが何か教育勅語を復活するとか何とかということにとられておりますれば、これは私の言葉の足りぬところでございますから、御容赦願いたいと思います。ただ私申しましたことはここに「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ連ヒ」という言葉があります。これは私はどんな時代でもやはり守つてつていいものだろうと思います。そういうことを私は申したのであります。もしそれ以外のことにとられるようなことがございましたら、いつでも前言は取消します。
  97. 成田知巳

    ○成田委員 その父母を愛すとか、何ですか、むずかしいことを大分言われましたが、こういうことは教育勅語でなくてもどこでも通用していることです。ことさらに教育勅語をお取上げになつて、千古不磨と言われるところに私たちは問題があると思う。今道徳というものは機械にさす油みたいなものだと言われますが、そうかもしれません。しかしながら機械の内容によつては、たとえば戦車だつた戦争に使われる。機械の内容によると思うのです。今まで政府の言つて来た道義の高揚、たとえば従順である——道徳というものは相対的なものだと思うのです。従順であれということは正しいのです。しかしながらその従順さを利用する時の支配者があつて、自分たちの利益のためにその従順さを利用した場合には、その従順というものは決して正しい道徳にはならないのである。過去における戦争の歴史がそうです。上の言うことを聞け、教育勅語の言葉を聞け、あまりに従順であつた、あまりに無批判であつたために今度のような戦争が起きたのです。道義の高揚、これは民主主義政治の前提だと私たちは思うのです。言葉をかえて言えば、批判精神を涵養することが一番だと思います。批判精神のないところには必ず社会は腐敗堕落する。ところが吉田総理はなかなか批判されることがおきらいのようです。批判精神というものを否定していらつしやる。私たちは批判精神の涵養が道義高揚の根本前提だと思うのですが、文部大臣はいかがお考えですか。
  98. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。むろん自由主義国家でございますから、各個人々々がその意思によつてすべてのことを批判し研磨して、そして文化に貢献し尽すということは最も必要なことであります。  それからまた従順であれということですが、私は従順であれということを道徳の高揚の中には考えておりません。不従順でもよろしい。しかしただそれは何かはかのある一種の目的のため、もしくはイデオロギーのために従順になれ、またそれに従順であれと言うことは国民としておもしろくないことであると思います。ただ要は御承知通りに、この前も申し上げましたように日本国民思想、すなわち道徳の基準というものが明治維新以来ついに確立せずに今日に至つておるような感じがいたします。それで昔のお釈迦様がこうおつしやつたと言えば、もうほんとうにその通りだというように、何か一つよりどころがあつてほしいと思つて出たのが教育勅語だそうです。私はそう承つております。そこでその教育勅語は御承知通りに、いわゆる君主と被治者との間の関係によつてできたものであります。それを無条件に取入れようなんということは一向考えておりません。また同時に取入れるべきものでないからあれは廃止されておるのであります。しかしその中に書いてある個人の道徳律は民主主義の今日でも、やはり社会生活をするのについては最もいい綱領であるということは私の信念であります。もしまた今後修身科のことを社会科の中でどういうふうに教えて行こうかということをいろいろ研究しつつありますが、ただいまその審議会の方に諮つておりますから、またそういうことが出ました後にその内容については御高見を承りたいと考えております。
  99. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 成田君、この一問でひとつお願いします。
  100. 成田知巳

    ○成田委員 あと二、三問問題があります。この前の委員会で歴史、地理の復活のことを文部大臣は御答弁になつたのですが、大体いかなる内容の歴史、地理を復活するのか、これが六・三制教育で必修科目として復活さすというお考えであるのか承りたい。
  101. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。そういうことは文部大臣は独断でやるということはございません。教育課程審議会というものがございまして、その教育課程審議会でただいませつかく検討中でございます。
  102. 成田知巳

    ○成田委員 それからこれは新聞でも取上げて非常に問題になつたと思いますが、岡野文部大臣の北さんに対する御答弁で、今度の戦争日本人の優秀性を示すものだ、こういう御答弁をなさつているわけなんです。これがいかに世人に反響を与えたか、私たくさんは知りませんが、朝日新聞の「天声人語」をお読みになりましたか。「天声人語」にこう書いてある。「春風亭自由党の水入らずの漫才もこの辺まではのどかだが、文相の次の一句は記録にとどめて首をひねつてみる必要がある。「太平洋戦争の善悪はいわぬが、とにかく世界各国を相手にして四年間も戦つたことは、日本人の優秀性を示すもので、日本人はまず自信を取りもどすことが必要だ」これが文部大臣岡野清豪氏の言だ。それも床屋で髪をかりながらの世間話ではない。国民の道義を高揚させる文教方策として国会で述べた言葉だ。国を破り友邦に迷惑をかけた戦争について何の反省もない放言で、東条の思想とあまり変るところもない。日本民族の優秀性を「世界を相手に四年間戦つた」点に求め、道義の拠り所とすべき自信を、戦争に強かつた思い出の中から引き出そうとは全くあきれたものだ。太平洋戦争についてこんな考えをもつた人を、文教を司る文部大臣として国民の道義に指図をさせるのは、右翼のボスの家で政敵と飯を食つた大臣より、もつと有害だ。人を作る立場に置ける材ではない。金を勘定させておけばよい。」とこう言つている。まさにその通りだと思う。よく政府は、たとえば貿易の輸出振興の問題で東南アジア貿易をやるのだ、あるいは東南アジア開発をやるのだ、なかなかそれがうまく行かない。行かない一つの大きな理由というのは、今度の戦争で東南アジアの諸国は人的にも物的にも非常な被害を受けている。従つてまず日本人としては謙虚に反省し、あやまるところはあやまらなければならない。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが文部大臣は今度の戦争日本人の優秀性を示す、こう言うに至つてはまつたくの暴言だと思うのでありますが、文相は相もかわらずそうお考えになつているか承りたい。
  103. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。世間に伝えられていることは非常に悪く伝えられましたならば前言は全部取消しますけれども、しかし私は速記録をちやんと持つて来ておりますが、敗戦後、非常に国民が自信を失つたということから引出しまして、一番手近いところで例を述べますれば、日本人がほんとうにいろいろ大きな文化をもつくる技能もあつたし、それからまたりつぱな飛行機をつくる技能もあつた、こういうことがあまりほかの民族に劣つてはおらぬじやないかということを手近く申し上げた次第であります。もし非常に大きな反響が起きますならば私は取消します。私の答弁の中には、私は大東亜戦争がいいとか悪いとかいうことは申し上げませんけれども、しかしこういうことで言葉を進めている次第でございます。でございますから自信を失つた原因が敗戦にあり、そうしてそのときの戦争相当優秀な機械をもつくり得た日本人であるということだけはもう一ぺん思い起してみたらどうか、こういう意味です。しかし悪ければ取消します。
  104. 成田知巳

    ○成田委員 最後に義務教育国庫負担の問題についてお尋ねしたいと思いますが、義務教育国庫負担といえば何だか義務教育を全部国家が持つてくれるというような印象かあるのでございます。またそういう宣伝も一部でやつているわけでありますが、しかし政府の考えているのは教員の給料と教材費の一部だけであります。しかもその財源は平衡交付金の横すべりで、まつたく羊頭狗肉の策であると思う。これに関連しまして文部大臣の説明によりますと、給与のみ国庫で負担する結果、教員は国家公務員になる、こう言つている。この国家公務員は御承知のように一般職と特別職がございますが、いかなる形の国家公務員になるとお考えになつているのでありましようか。
  105. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。国家公務員一般職でございます。
  106. 成田知巳

    ○成田委員 一般職として国家公務員なつた場合に教員の政治活動、特に選挙運動の関係はどうなるか御答弁願いたい。
  107. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。国家公務員として一般の公務員が許されたる範囲内において政治活動ができる、こういうことであります。
  108. 成田知巳

    ○成田委員 逆から言えば現在教職員として認められておりますところの政治活動というものは禁止される、こういうことになると考えてよろしゆうございますか。
  109. 岡野清豪

    岡野国務大臣 現在地方公務員でございましても、やはり全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者じやございませんから、よく世間に言われますような教員組合の今までの政治活動というものは、私は、国家公務員としてまた普通の地方公務員としても禁止すべきものではないか、こう考えます。
  110. 成田知巳

    ○成田委員 すべきものというのではなしに、現在の選挙活動や政治運動に対する取締り法規、あるいは制限規定の問題について私はお尋ねいたしたいのですが、一般職の国家公務員なつたからといつて、なぜ選挙運動その他の政治活動を禁止しなければならないか。国家公務員政治運動を禁止されること自体がおかしい。というのは、国家公務員の最高峰である自由党の岡野さんも選挙運動をやつておる、政務次官もやつておる。だから国家公務員であるから政治活動、選挙運動をやつてはいけないということは成り立たないと思う。従つて現在の一般国家公務員政治運動を禁止されておることがすでにおかしいのです。これを一歩譲つて一般国家公務員は、行政権を担当しておる、国家権力を担当しておる、こういう者が政治運動、選挙運動をいたすことは行き過ぎであるという建前から禁止しておると思うのですが、教職員の選挙運動が問題になりましたときに、これは改進党などの意見もありましたが、教職員というのは、もともと行政権を担当するものではなく、教育に携わつておる。それでも教員であるという立場から、父兄に与える影響を考えて、勤務地においては政治運動、選挙運動をやらせない、しかしながら勤務地外においてやらすのは当然じやないかということで現行の規定になつたと思うのです。今度国家が給料を支給して国家公務員にする、だから選挙運動を一般公務員と同じように全面的に禁止するということは、筋としておかしいと思う。教員は教職をつかさどつておる。従つて最小限度、現在の法規である勤務地において政治運動、選挙運動をすることはだめだといたしましても、勤務地外においてはそういう心配がないのですし、政治運動、選挙活動を禁止した趣旨からいつて、現行法のままで残して置くのは正しいと思うのですが、いかがでございましよう。
  111. 岡野清豪

    岡野国務大臣 大分成田さんのお考えが飛躍しておるように感じます。と申しますことは、私が国家公務員にするというほんとうの意思はどこにあるかと申しますと、ただいま、ある村に勤めておる人間が、その村の地方公務員であると、隣村へも転勤ができない。そこで辞職して、新規採用の形になる。新規採用になつた場合には、恩給も切れ、同時に勤務地の昇給に必要な勤務月数が減つてしまう。また地方地方に上りまして、富裕県には退職慰労金とか公務傷害手当とかいうものが相当ありますけれども、貧弱県にあつては、やろうと思つても財政上いけません。結局、全国一律であるべき義務教育を担当する大事な聖職を持つている小学校の教員が、その地方々々の情勢によつてそう差別待遇を受けることははなはだおもしろくない。こういうことから出発して、国家公務員にして、どこの村へでも自由に転勤でき、同時に、退職慰労金とか、公務傷害手当とか、恩給が続くとかいうことをさせてやりたい、すなわち小学校教員の身分の安定をさせたいために私は今度国家公務員にしたのです。それが政治活動の方にぽんと飛んで来るということは、私は心外です。
  112. 成田知巳

    ○成田委員 文部大臣は私の質問を飛躍していると申されますが、文部大臣の答弁は的はずれです。私の質問しているのはそういうことではない。国家公務員なつたからといつて身分がよくなるかならないか、文部大臣は待遇がよくなると言われる。それは事実が証明すると思いますが、そういうことを私は聞いているのじやない。国家公務員にしたからといつて、なぜ行政権を取扱い、国家権力を行使している一般公務員と同じように、全面的な選挙運動、政治活動の禁止をやるか、それを聞いているのです。
  113. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。児童を預かる教職員は、児童が非常に敏感でございますから、そのときに教員が政治運動に専念されるということは、教育上はなはだ支障があるという私の考えであります。
  114. 成田知巳

    ○成田委員 もう一点、小笠原さんだけに簡単に伺いますが、この前私たちの党の伊藤氏が、国際収支の見通しについて質問したのに対して、長官は、十七年度は、輸出は十二億八千万、貿易外一億七千万、特需が八億二千万、輸入は十七億八千万、貿易外三億四千万、特需は多分一千万、二十八年度はこれと大同小異である、但し大蔵省と若干の見通しの差がある。こう言われた。本年度の見通しについては詳細に数字をあげられなかつたが、私たちの聞いているところによりますと、大蔵省と経済審議庁の間には相当見通しの差がある。特に輸出、特需の関係で見通しの差がある。経済審議庁では、輸出は十億四千八百万ドル、駐留関係は八億二千七百万ドル、大蔵省では輸出が十二億三千万、駐留関係が七億二千万ドル、こうなつておる。この輸出と特需関係でなぜ違つたかといつたら、ポンド地域に対する見通しと特需に対する判断の相違らしいのですが、昨年度の輸出は十二億八千万ドル。もし経済審議庁の十億四千八百ドルということが事実だとすれば相当な輸出減になると思うので、その詳細な二十八年度の見通しを述べていただきたい。それについての質問はまた分科会その他でやります。
  115. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 二十八年度の国際収支の見通しにつきましては、私どもは、大蔵省と経済審議庁との間にそう大きな違いがあるとは思つておりません。その違いが出ておりますのは、一つは、少し内輪にものを見るか、あるいはその見通しを立ててものを見るか、こういう点が違うのでありまして、それは特にポンド地域に対する分なんです。これは成田さん御承知でありましようが、昨年下期以来ポンド地域からの輸入を相当つたものですから、現在一億三千万ポンドほどポンド地域へこちらが輸出してもいいというようなものがある。これはまだ正確な数字は交渉中でありますから申し上げられませんが、きようのニツポン・タイムズには一億七千万ポンドぐらい入れてもいいというイギリス側の数字が出ております。これは正確な数字ではありません。そういうものを一応立てますると、現在のままで行くのと、そういうものを見まするのとでたいへん違つて参ります。そこで、今数字をお求めになりましたから少し数字で申し上げますると、現在のままで推定いたしますると年額四億ドル程度となるのでありますが、昨年下期以来原材料の輸入に努めて参り、ポンド地域との輸入制限の緩和を交渉しておりますので、その交渉で年額五億五千万ドル程度の輸出に拡大を求め得ると見込みますれば、今申し上げましたように一億七千万ポンドほどとニツポン・タイムズに出ておりまするから、五億五千万ドルと見込みますると、その五億五千万ドル程度求めたいということを今努力いたしております。  それからドル地域につきましては、現在の情勢をもとにすると三億七千万ドルぐらいと推定されるのであります。また駐留軍の関係等が現在年額にしまして八億一千万ドル見当あります。しかしアメリカ政府におきましても、援助より貿易、こういつたような政策をとつておることもこの間の教書その他でも伝えられておりまするし、それこれいろいろやつてみますると、総計いたしまして輸入の方が十八億五千万ドル程度、それから輸出の方が十二億ドル強、こういうようなぐあいに相なります。
  116. 成田知巳

    ○成田委員 あと独禁法の問題をお尋ねしたいと思つたのですが、非常に時間をとつておりますので、後の機会に……。
  117. 太田正孝

    太田委員長 残念ですが、分科会等において……。  稻村順三君から成田君の質問に関連してごく短時間とのことでございまするので、これを許します。稻村君。
  118. 稻村順三

    ○稻村委員 向井大蔵大臣に、成田君に対する答弁に関連して簡単な質問をいたしますが、大蔵大臣は、成田君の質問に対して、対日援助費は債務であると心得えておる。それでこれは返済しなければならないという意味があるでありましようが、しかしながらまだアメリカ側とは話合いがされたわけではないからして、幾ら払わなければならないかということの総額あるいは支払い方法については何にも打合せていない、こういうようなお話であります。ところが予算書には、平和回復善後処理費の中のこの経費は、連合国に対する賠償の支払い及び米国に対する対日援助費の返済、こういうようなことを言つております。そうするというと、総額のわからないものをどういうわけでこの予算書の中にわずかであつても計上しているのか、また、どうやつて支払うかを決定していないものをこういうふうに計上しているということは、これは支払わないところの予算であるのか、その点お伺いいたします。
  119. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 主計局長お答えいたさせます。
  120. 河野一之

    河野(一)政府委員 この経費はなかなか額の確定の困難なものでございます。といつて、起り得べき債務につきまして全然予算上備えをいたさないこともこれは困ることでございまして、本年の予算につきましても、外債の交渉があつたのでございますが、そのきまり方がどうなるかわからぬというようなこともございまして、平和回復善後処理費として計上いたしておつたというような経緯もございます。こういつた経費につきまして、そういう財源をとる意味で平和回復善後処理費として計上いたした次第でございます。
  121. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますると、これは使う当てのない予算であると解釈していいですか。
  122. 河野一之

    河野(一)政府委員 使う当てのない経費ではございません。将来、今後の交渉等によつてそういう具体的な債務が確定した場合においては、この中から支払いいたしたいと考えております。
  123. 稻村順三

    ○稻村委員 債務が確定した場合にはこの中から払うというのならば、大体において確定すべき債務の総額というものの腰だめがなければ、この中から幾ら払うなどというような計算が出て来ないと思うのでありますが、こういう計算をしないで、こういう費目を一体どうして予算の中にあげておるのか、その点お伺いいたします。
  124. 河野一之

    河野(一)政府委員 この種の経費は、平和の回復に伴いましていろいろな渉外債務が発生いたしておるのでございますが、こういつた債務の処理につきましては、日本政府が単独でできる性質のものではございません。しかし平和条約にもこの規定がありますように、これが日本の債務である。たとえば外債処理等につきましても、それを支払うことはすでに確定的な事実になつている。しかしその額というものは交渉によつてきまるものでありまするので、そういうことの起つた場合に予算上支障がないような措置を講じまするために、こういう経費の計上をいたしたのであります。
  125. 稻村順三

    ○稻村委員 話がますますわからなくなつてしまいました。なぜかというと、外債であるとか、その他支払わなければならない義務を持つておる問題に関して明確なものと、それからもう一つは対日援助費の場合とごつちやにして答弁しております。額がまだ決定していないという対日援助費の一部分が何でここに頭を出しているか。その点を債務だと心得ておるというけれども、それは心得ることはかつてです。しかし一体どれくらいの債務になるかといつてわからないものを、何でその一部のものを払わなければならないと、頭を出しておくのです。だから私はその点の明確な答弁を願いたい。それはただ技術的な問題ではなくて、相当政治的な問題でもあります。主計局長のは事務的な技術的な答弁でありますから、こういうことが予算の組み方において正しいかどうかということについては、これは大蔵大臣が責任を持つて答弁すべきものだ、こういうふうに考えております。
  126. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 対日援助費と書きましたのはあるいは穏当でないかとも思いますが、気をつるけようにいたします。
  127. 稻村順三

    ○稻村委員 穏当でないようなものもここに費目として掲げまして、そしてそれに対して予算審議をするということであるならば、それが穏当でないということが明確になつたときには、これは削除する意思がおありであるかどうか。この点もう一度御答弁願います。
  128. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 対日援助費ということを書きましたのは、あるいは全体の、アメリカに対するほかの債務もあるのですから、それと混同しておるのではないかと思うのですが、よく研究しまして、それは私がごまかすのではなく、よく研究して返事をいたします。
  129. 稻村順三

    ○稻村委員 なお聞きたいことはたくさんございますが、この点だけ明白にしておけば、またあとのときにあらためて質問したいと思います。
  130. 太田正孝

    太田委員長 ただいまの問答を聞いておりますと、政府の答弁も多少未熟のように思いますので、よくお調べになつて御返答されることを希望いたします。——原健三郎君。
  131. 原健三郎

    ○原(健)委員 私はこの際宮内庁次長にお尋ねいたしたいと思います。皇太子殿下が、英国エリザベス女王の戴冠式に、天皇の御名代として渡英されることが報じられておりまして、これは国民ひとしく慶賀にたえないところであります。またこれを機会に皇太子殿下には各国をまわられる由でありますが、われわれとしては、この戴冠式への御出席及びその他の旅行を通して皇太子殿下の御収穫の多いこと、あるいはまた空路の御無事であることを、ひたすら祈り上げるものであります。全国民は非常に慶祝いたしておりますが、ここで宮内庁次長にお尋ねいたしたいことは、新聞に若干のアウト・ラインが出ておりましたが、実際はたとえばお供の方がどうなつておるとか、あるいは日程がどうなつておるとか、あるいは順路、それからその日程中各国においてどういうことを研究になられるか、見学されるかというような、日程の内容等についてもこの機会に詳しく御報告が願いたいのでありまして、全国民もこれを非常に刮目して期待をし、お喜びを申し上げておるのでありますから、御答弁が願いたいのであります。
  132. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 お答え申し上げます。皇太子殿下には六月二日に行われますイギリス皇帝の戴冠式に、三月の三十日をもつて御出発の予定になつておるのでございます。随員は三谷侍従長初め六名でございまして、その他事務関係者が三名、全部で九名でございます。目下御旅程につきましては、外務省を通じまして関係各国の在外公使館と打合せ中でございまして、詳細な点がまだ確定いたして参つておりませんが、御訪問になります国は、カナダを経てイギリスにおいでになりまして、イギリスの国内を御旅行になり、五月の末日から一週間にわたる正式の国賓としての日を過されまして後に、フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、ノールウエー、スエーデン、スイス、アメリカを経まして、約六箇月の御旅程でございます。先ほど申し上げました通りに、目下在外公使館とも打合せ中でございますので、まだここでこまかいことは申し上げかねるのでございますが、戴冠式に御臨席になるという国際儀礼のお仕事を果された後は、各国をめぐられまして国際親善をはかられ、殿下の御識見が加わるように各国の国情なり文化、国民生活を見学されることとなろうと考えております。
  133. 原健三郎

    ○原(健)委員 随員が六名とのことでございましたが、これは約六箇月にわたる長途の旅行であらせられ、しかも殿下にはこれがおそらく一世一代一回だけの御旅行になられるであろうと想像されるのであります。それでその経費でありますが、その経費は大体一億円内外と聞いておるのであります。ここでお尋ねいたしたいことは、日本国の代表として正式に渡英されて戴冠式に列席され、しかも一世一代のいろいろな見識を深められる、こういうときでありますので、この一億円ぐらいの費用で——もちろん敗戦の日本でありますから渡英のために濫費されることは戒めなければならぬことは言うまでもない。しかしながら、それかといつてあまりに経費を節減し過ぎて国の面目を失することも困るし、また途中で経費が足らなくなつて予定を変更し縮小されるというようなことでもまことに迷惑である。それであまりぜいたくにもならず、しかも面目を失うこともない適当な予算を組むということが、実際問題として非常にむずかしくなるのでありますが、この一億円内外で、今私が申し上げましたような御旅行がつつがなく完了されるとお考えになるかどうか、その辺をお聞きいたしたいのであります。
  134. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 殿下と随員六名の約六箇月にわたりまする旅行に要する経費は一億一千万円でございます。もちろんただいま仰せ通り、わが国の現在の情勢及び財政の状況からいたしまして、極力御節約願うところは御節約願い、しかも御旅行の目的を達せられるように努めたつもりでございまして、現在のところはこの経費をもちましてまかない得るものと考えております。
  135. 原健三郎

    ○原(健)委員 次にお尋ねいたしたいことは、立太子礼を終えられて御成年になられましたのでありますから、将来皇太子殿下はこの御旅行を完了されると妃殿下をお迎えになられるということは、国民としてもみな待望しておるところでありますが、この妃殿下をお迎えになるのに対し、この画期的敗戦の日本におきまして私ども国民が申し上げたいことは、旧来の法規や慣習にとらわれずに、八千五百万の国民の中から皇太子妃殿下をお選びになられることがよろしかろうと私どもは思うのである。といつて決して私どもは旧皇族あるいは華族を排除するというのではなくして、旧皇族あるいは華族を含んだところの八千五百万の全国民の中からお選びになられる方が、優生学的に見ても、あるいは皇室のいやさかから考えもけつこうであろう、また皇室と国民の関係をいよいよ深くする意味においても、密接にする意味においてもよろしかろうと思うのであるが、こういう点について宮内庁次長はどういうふうにお考えになつておるか、ひとつお聞きいたしたいのであります。
  136. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 お答え申し上げます。皇太子殿下には成年に達せられましたが、まだ昨年の十二月をもつて満十九に達せられたばかりであります。抽象的には、そういう問題が将来起るのは当然でありますが、宮内庁といたしましては、具体的に何らまだ進んでおりません。御意見の点は各方面の御意見を伺いまして今後に備えたいと存じます。
  137. 原健三郎

    ○原(健)委員 次に通産大臣にごく簡単に二、三の点をお尋ねいたしたいのであります。けさからも貿易を振興しなければならぬということはしばしば各委員が質問いたしました。日本戦前と戦後の状態を比べてみますと、昭和二十七年の実情き見ましても、生産の方は鉱工業の生産でも農業生産でも、戦前以上に上つております。また一人当りの実質の国民所得もほとんど戦前になつておる。消費水準においてもまあまずまず戦前になつておるのである。しかるに戦前昭和九年及び十一年に比して昭和二十七年の輸出入の数量を見ますと、輸出数量は戦前の一〇〇に対して二十七年度は三三である。輸入の数量にいたしましても、戦前の一〇〇に対して五四である。こういうふうに日本のいろいろな経済実情の中において、貿易だけがきわめて敢行的に悪くなつておるのであります。しかも今後はさきの質問者に対しても通産大臣はいろいろと二十八年度の見通しを申されたのでありますが、本年度、たとえば特需が減少する、外債償還だけでも今後毎年四千万ドルくらい加えて行かなければならぬ、こう考えて来ると、どうしても貿易がよくなるとは私どもは考えられない。それでお尋ねいたしたい点は、政府がこの貿易振興にどれほど熱意を持つておるか、私どもは非常に疑わざるを得ないのであります。第一点はこの予算を見ましても、政府の出した予算の中に貿易振興に対する積極的な、直接的な予算はほとんど見当らぬというていいくらいでありまして、九千何億の予算の中でごく少量である。これでははたして貿易に政府が熱意ありやいなやをわれわれは疑わざるを得ないのであります。この点についてどうお考えであるか。ついでにいろいろお聞きいたしたいのでありますが、たとえば日本輸出入銀行に本年の予算は四十億円組んでいる。しかも去年に比べれば四十億削減いたしておる。これはどういうのであるか。輸出信用保険にいたしましても、十億組んで昨年度に比較して十億円削減いたしておる。こういうふうに予算面を見ましても、何ら貿易振興に政府は財政的にも考慮を払つていないのであるが、これについてどういうお考えであるか通産大臣にお伺いいたします。
  138. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。貿易がきわめて大切であるにかかわりませず、このごろその金額が少いということは、まことに私ども遺憾に存じまして、あらゆる貿易対策をとつておるのでございます。なかんずく、ポンド地域に対しましては、さつきちよつと申し上げました通り、現在二万数千ポンド、昨年以来日本の方が輸入をいたしておりました関係等もございますので、昨年日英支払い協定を一年間延期いたしましたけれども、約二週間前から向うの方と東京においてさらにいろいろ会談を進めておりまして、この日本の輸出方につきまして、相当良好に話は進んでおります。それから、今お話が出ております東南アジア諸国につきましては、プラント輸出等に対して、重機械相談室のごときものを、これは予算はわずかでありますが、今度新設することにいたしまして、プラント輸出等に努めることにいたしましたほか、輸出入銀行は、ことしは財政投資の方は減つておりますから、新たに輸出入銀行法改正案を出しておりまして、輸出入銀行が投資をなし得る措置がとられることにも相なつております。これは昨今あの方面へ非常に努力したにもかかわらず、あまり出ません、約十億円昨年に比べて金額としては減つておるわけでございますが、しかし今後はそういつた点を乗り越えて少し積極的にやつてみたい、かように考えております。またいわゆるオープン・アカウント地域、台湾とか、アルゼンチンとか、そういつた方面に対しましても、今積極的に貿易政策を立てて、また中南米の方にも重機械相談室などを設けることについて予算措置をとつております。アメリカには商品などのあつせん、所をつくる、これも予算措置がとつてあります。などにつきましても二千万円ほど宣伝費が見てあることは、さつき森幸太郎さんのときに御説明申し上げた通りであります。しかし根本は何といいましても、これは正常な外交関係が早く進むことが第一でありまして、この点について目下外務大臣の方でも最善の努力をされておりまして、日米通商条約も、おそらくは今月中には締結されるのではないか、それができますと、各種の各国との条約関係も進んで参るだろう、かような期待を寄せておる次第であり、また根本は、日本の品物は優秀な品物がよけい出て参るというような、国際競争力を持つことが何よりも必要でございますので、やはり元へもどる、こういう考え方で、石炭、鉄鋼等の基幹産業を合理化する、近代化すること等ですべての商品のコストの引下げ方について努力いたしております。貿易商社につきましては、強化策をとつておりますことは、各種の税制その他の処置を、今度も法案提出いたしておるのでおわかり願つておることと思うのであります。私ども貿易には、実は正直申し上げて即効薬はない、右左にやれる、これをやればすぐに日本の貿易が出るというものはないが、しかし徐々にできるだけのことをすべて進めて参れば、貿易は必ず伸展できるものである、のみならず、各国とも自分が狭いところへとじこもつてみたところが、うまいこと行かぬということがわかつて参り、いずれの国もやはり貿易の拡大をしなければならぬということがわかつて来ましたので、この機運に乗じつつ、われわれもその政策を続けて参れば、本年は昨年よりはもう少し有利に展開して行くであろう、またそう展開するように、あらゆる努力を進むべきであると考えている次第であります。
  139. 原健三郎

    ○原(健)委員 質問いたしますと、通産大臣は非常に熱意をもつて、そういう貿易振興その他をやりたいという意欲が盛んでありますが、実際にはどうもはなはだ心もとないのであります。  私はさらに貿易振興のいろいろな施策についてお尋ねいたしたいのである。去年の暮れに、元米国の駐日大使館の参事官をしておつたユージーン・ドーマンという人が来朝しまして、その人が意見を発表した中に、こういうことを言つておるのであります。日本がかつて鎖国時代から抜け出して、資源乏しくしてわずか数十年の間に、世界の一大貿易国となつたのには、二つの理由がある。その第一は、貿易のよいリーダーがいたことである。第二は、国民が愛国心に燃えて、日本の興隆のために一致協力、献身的な努力を傾けたからである。こう言つておるのであります。それで私はここでお尋ねしたいのは、今申した偉大なリーダーなんか、そう急に出るか出ないかわからぬ。出なくてもけつこうでありますが、少くとも国民自身が一致協力して、輸出貿易の振興に進むくらいのことは、あつてしかるべきであると私は考えるのであります。英国の例なんかを見ましても、食糧輸入国である英国は、すでに牛肉とか鶏卵とかバターとか、そういうような食糧品までも統制をいたしておる。酒でも、スコツチ・ウイスキーは輸出に向けておる。タバコの良品は輸出に向けておる。あるいは良質の純毛の生地は輸出に向けておるというふうに、国民一致非常なる協力をして、政府も指導してこれをやつておるのであります。しかるに日本においては、単なる消費的なもの、享楽的なものまでも平気で輸入をやつておる。と思えばまた、少しでも輸出をしなければならないのに、国内消費などというものは野放図にやつておる。外国人が来てみると、日本の国内では享楽にふけつておる。キヤバレーが盛んであるとか、宴会が盛んであるとか、また賭博がきわめて盛んである。競馬、競輪、先ほどもハイアライの話が出ておる。私どもはこんなものには反対であります。こういうことをやりますから、賠償問題などにいたしましても、おそらく外国から見れば、日本がこんな国ならば少し苛酷に賠償をもらわなければならぬと考えて来るのも、実際やむを得ない。そこで政府は、英国のような戦勝国でもやつておるのであるが、今申したように、日本の貿易振興のために、もう少し何らかの施策をやる必要があるのじやないか。戦争時代の統制経済に懲りて、あつものに懲りてなますを吹くというたとえがあるが、どうも政府がやつておることは、このごろあまりにおじけてしまつて、何もかも野放図にやつておいた方がよいというようなお考えではなかろうかと思うのであるが、これらについてどういうお考えであるか。通産大臣の御所見をお聞きいたしたいのであります。
  140. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はその点について原さんとまつたく同感であります。戦勝国たるイギリスが、過去数年間営営として努力し、国民が非常な努力をささげて来た。しかもいわゆるオーステリテイーに徹底し、耐乏生活を続けて、一時はポンドの危機が叫ばれたにもかかわらず、最近のポンドの強さというものを見ますときに、われわれ日本人が——すべての国民がそうではありませんが、野放図な国民が少くないのを見て、私もまことに遺憾しごくに感ずる一人であります。但し、日本は昨年の四月ようやく独立したばかりであつて、いわばようやく自由に復したばかりでございますので、やはり日本人がお互いに反省するのには一年ぐらいかかりましよう。しかしその一年にほんとうに心から反省しないと——これは力をもつて、あるいは権力をもつてやりましても、やはりばくちの好きな者はばくちをする。ハイアライの好きな者はハイアライを計画しておる。競輪の好きな者はこれを許可してくれといつて、始終私のところに来る。これは心からそこへ行かなければだめなんです。やはりこれは資本がもつと効率的に使われ、待合とか料理屋というものが繁昌しないようになり、ほんとうに資本というものが生きて使われる時期が来る、これは国民の自覚以外にないと思います。そういう国民がだんだんとでき上つて来る、それはお互い国民一人々々が真に自覚するということでなければならぬ。全的に原さんの意見に賛成いたすものであります。
  141. 原健三郎

    ○原(健)委員 ただいま競輪や競馬をやりたい国民があつてやるし、あるいは享楽する国民もあるから、国民が自覚すればいい、それはその通りであります。私もそれは賛成である。そこで国の重要なる政務を扱つておる政府として、たとえば競馬、競輪を廃止するところの法律案をもし出すならば、私自身はこれに賛成であります。そういうものを積極的に出して、それをやめる。ただいまハイアライをやれと言つておるが、そんなものはやめてしまう。政府はそういう処置をやるのかやらぬのか。国民にまかしておつて、自主的にやらすというのとは、大分話が違うのであります。そういう点に向つて今申したように、政府はあつものに懲りてなますを吹くことばかりやらずに——決して私どもは統制の昔に帰れと言うのではありませんが、その辺の兼ね合いを——英国の例や、アメリカでも食糧の最高価格をきめておるというくらいやつておるのでありますから、あまりに自由放任ばかりではどうも困るのであつて、そういう方面にもう少しやるお考えがあるかどうか、もう一度聞いておきたいのであります。
  142. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 どうも通産大臣の域を越えるようでございます。あるいは一国務大臣として申せば、但し政治というものはやはり相当複雑なものでありますから、私がお預かりいたしておる通商行政についてだけ申し上げますならば、私は現在のところは、やはりこの一つの計画のもとに話を進めておりますので、また案を立ててそれぞれやつております。まあ人間ですから、あまりきゆうくつのみで押しつけるということも、国民に勇気を失わすようなことにならぬとも限りません。副総理がおられますから、あるいは副総理から全部についてのお話があるかもしれません。
  143. 原健三郎

    ○原(健)委員 通産大臣は副総理に聞いた方がよろしいというから、それではひとつ副総理に御意見を伺いたい。
  144. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 申しかねますが、私はちよつと労働大臣と話をしておりましたので、かんじんな要点を聞き漏しましたので……。
  145. 原健三郎

    ○原(健)委員 それでは、それを質問しても大体答弁はわかつておりますので、次へ参ります。  もう一つ西ドイツの例を申し上げたいのであります。西ドイツは半減した領土で、しかも人口は三割増加いたしております。荒廃した戦災地域を持つておるのに、昨年の十月において輸出が三億四千八百万ドル、前年の三倍ぐらいになつている。日本は人口は西ドイツのちようど二倍に近い。しかも昨年平均は月一億ドルぐらいになつておるのでありまして、こういうふうにドイツは日本の三倍くらいの貿易をやつております。その理由は、もちろん西ドイツには米国の援助が多かつたとか、ガツトに入つているとか、いろいろ理由はあるとは思いますが、それにしても日本としては、大いにこれに学ぶ点がある。第一に、西ドイツでは軍需生産を廃止して、正常輸出の増大に一貫しておるのであります。軍需生産を廃止して正常輸出貿易の増大に、西ドイツはもう過去数年間全力を傾けて来ております。この点はわれわれ日本人としても非常に学ばなければならぬと思う。米国からの兵器の受注にしましても、フランスは三億五万ドル、イギリスは一億五千万ドル、しかるに西ドイツはわずかに五百万ドルよりやつておりません。ところが日本では反対で、どうも民間でもあるいは政府でも特需のドルの収入を非常に当てにしている。またアメリカの軍隊や国連軍に、兵器の注文でも内地でしてもらうということを計画したり、またそれを予期したり、民間の団体事業家においてもそういうことをやつておるのでありますが、日本もそういう当てにならぬ軍需生産などを当てにせずして、西ドイツのごとく正常輸出増大に一貫した施策をやることが、今日及び以後日本にはきわめて重大であると思うが、通産大臣はどういうふうにお考えであるか伺いたいのであります。
  146. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 現在の日本の正常貿易のみによりましては、非常な赤字でありますことは原さんよく御承知通りであります。ただたまたまそういう特需その他によりまして、ようやく国際貸借が若干の黒字になつておる。もつとも年度で見ますと二十七年度は二百万ドルばかりの赤字になりますが、そんなような情勢なのであります。そこで私が平素たびたび申しておりますのは、この特需はまだしばらく続くであろうから、その間に日本産業の基礎を固めて、それで日本の貿易が正常貿易によつても黒字になるように、あらゆる努力を傾注すべきであるということを申しておるのであります。なお私どもも西ドイツ人の勤勉さ、組織力その他には、まことに学ぶべき点が多々あると思います。ただ西ドイツ人などが国際貿易その他に対して、いろいろ助成策をとつておりますが、その助成策は、西ドイツが置かれている国際環境と、われわれ日本人が東亜に置かれている国際環境と少しく違いますのでただちにこれを東亜で行おうといたしましても、これは行い得ない事情があることは、原さんもよくおわかりのところと存ずるのであります。
  147. 原健三郎

    ○原(健)委員 その西ドイツと日本と若干趣を異にする点、私もそれを考えて申しておるのでありますが、西ドイツではこういうことをやつておるので、日本においてもやられてはどうかということをお尋ねしたい。  第一は輸出手形の割引率を仕向地の金利に応じて引下げるということをやつております。第二には輸出高に比例して、一定率の利益を積み立てさせて、その積立金に対しては免税措置をとつておるのであります。日本でもこういうことをやられてはどうかと思うのですが、いかがでございましよう。
  148. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大いに参考にはなりますが、すぐにこれを行い得るかどうかは大蔵省ともよく相談をいたしてみます。
  149. 原健三郎

    ○原(健)委員 さらに輸出について輸出取引法というのがございまして、それによつて輸出組合をつくつて、公正な取引をやつて、外国からも信用を得るようにしたいということでやつておるのでありますが、これについては利益の点もあるが、すべてこれに入らなければならぬというので、不便な点と両方あると思いますが、これを将来そのままやるつもりであるかどうかを聞きたいのが一点。さらに昨日の外務委員会において、政府委員からの答弁によると、この輸出組合に加えて輸入組合をつくる。そして独禁法の改正研究中であるということであるが、これもおやりになるのか、やるとすればいつごろからおやりになるつもりであるか、そういうこともお聞きいたしたいのであります。
  150. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 輸出組合法につきましては改正を加える必要を感じまして、この国会提案をする用意をいたしております。輸入組合につきましても、これは特にくず鉄その他を輸入する場合に非常な必要を感じておりますので、これは目下研究中でありますが、多分本国会提案することに相なろうと存じております。
  151. 原健三郎

    ○原(健)委員 貿易の振興には国際条約とかいろいろありますが、さつき通産大臣もおつしやつたように貿易の振興には根本的に国際条約、あるいはガツトの加入、あるいは日米通商航海条約を締結するというようなことになつて来るのであります。しかし日米通商航海条約が済みましても、あとに何らか百五十も百八十もあるそうでありますが、そういうような条約をたくさん結ばねばならぬ、また賠償問題も解決して行かなければ条約も結べない。さらにまた東南アジアについては、ことに積極的に条約のことを考えなければならない等々、今申しましたようなものについてのこれからの見通し進行状態、今通産大臣の意見によると、日米通商航海条約は今月中に締結されるというようなことを申されたのでありますが、それらの内容進行状態、さらに第二段として東南アジアに対してどうするか、さらにその他百八十もあるそうでありますが、それらに対してどう考えられるか、あるいは賠償もこれにからんで参りますが、いかがでありますか、お伺いしたいのであります。
  152. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米通商航海条約は、ただいま御説のように交渉中でありますが、財産取得という問題と、外国人の企業活動に関連していろいろの問題が、まだ話合いがついておりませんために遅くなつております。政府としては、これらはいずれも国内の産業に関係のある事項でありますので、民間側の意見を十分取入れた案をつくりたいと思いまして交渉しておるのでありますが、まだ多少時日がかかるかと考えております。それ以外の国とは、大部分は平和条約の規定に基きまして、その第十二条の通商条項がそのまま適用されております。ただフランスのように、部分的に戦前の条約を復活するという提案のあるものもありますし、またトルコのように、戦前の条約を全面的に取入れようという話を持つて来ておるのもあります。それから平和条約に関係のない、たとえばインドとか中華民国などには、平和条約が別にできましたので、その中の通商条項によつて通商をやつております。そのほか中立国、たとえばスイスとかスエーデンとか、こういうような国においては、国交が開かれると戦前の通商条約がそのまま適用されることになりますので、相互にその確認の手続をとることになつております。こういうようにしていろいろの問題がありまして、いろいろ違う事情がありますが、今それに対してできるだけ早く条約をつくるために努力いたしておりまして、ただいまのところはアメリカとの条約のほかにカナダ、イタリア、スペインなどと交渉を行つております。アジアの諸国につきましても同様でありますが、これは今お話のように一部には賠償関係がひつかかつておる場合もありますので、賠償問題の話合いも並行的に進めておるのは御承知通りでありまして、フイリピンからは今月末か、あるいは向うの都合で来月の初めになるかもしれませんが、代表がこちらへ来ることになつておりますが、今までのところは非常に円満に話合いが進みつつあります。その他の国につきましては、たとえばビルマなどはサンフランシスコの平和条約の賠償条項が不満だというので、参加しなかつたわけでありますので、ビルマにもインドネシアにも話合いはいたしておりますが、まだ具体的に進むところまでは行つておりません。しかし先方でも日本側提案を待つて話合いをしたいという意向は見えております。  それからガツトの加入についてちよつとお話がありましたが、それにはいろいろの経緯がありますが、これは原則的に申しますと、加入の話がきまりましても、実際の加入をするまでにはその前に各国との間に関税に関する協定をつくらなければならないわけであります。これはなかなか時間がかかると思うのであります。従いまして実際上はかりに非常にうまく行きましても、結局本年一ぱいくらいはかかるのじやないかと思いますが、それは主として関税交渉に時間がかかるのであります。
  153. 原健三郎

    ○原(健)委員 次に貿易振興について、さつき通産大臣がおつしやられたが、安い優良品があれば、貿易に向いて行くということは言うまでもないのであります。日本で今輸出品が高いことはいろいろ原因もありますが、一つはやはり金利の高いことであります。大蔵大臣はこの際低金利にする方法を何か考えておられるかどうか、それをお聞きいたしたいと思います。たとえば財政措置によつて銀行のオーバー・ローンを解消すれば金利が安くなる、だから日銀貸出しに見合う約二千億円くらいの公債を日銀引受けで発行して、その資金を開発銀行に預けて、市中銀行はこれを日銀借入れの返済に充てる。こうしたらオーバー・ローンがなくなつて、金利が安くなるという意見を言う人もある。これには賛否両論いろいろあるのでありますが、大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。わずか三百億円の国債を出したから、すぐインフレになるなんという近視眼的見方をする人もありますが、そんなものはインフレにはならない。もしこの二千億円の公債を日銀引受けで発行しても、インフレという点からいうなら心配はない。しかしながらその他いろいろ影響するところが大きいので、一大英断を必要とします。でありますから低金利についての大蔵大臣の見解、それから今私の申したオーバー・ローン解消の方策、これについてどういうふうにお考えかお聞きいたしたいのであります。
  154. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 低金利が望ましいということは明らかです。しかし今おつしやるような英断は考えておりませんが、銀行の採算のとれます限り金利を引下げさせるということには、努力いたしております。
  155. 原健三郎

    ○原(健)委員 それから労働大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、炭労や電産のストライキに対して、若干制限すると言つておられるのであるが、私がここでお聞きいたしたいのは、たとえば一部の労働組合員がストライキをやつて国民多数に迷惑を及ぼすようなものであつてはならない、そういう観点に立つて、きわめて公共性の多い、たとえば交通機関については、全面的にストライキを禁止せよというのではありませんが、若干の制限を加えることはやむを得ないと思うのであります。ことに最近の傾向を見ると、交通機関がしばしばこれを恒例のようにやります。これについて若干の制限を加える意思があるかないかをお聞きいたしたいのであります。
  156. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 電産、炭労等と比較して、交通機関についても考える余地があるという今の御意見のようであります。これはせんだつてから、たびたび申し上げておるところでありますが、争議の抑制をするのに、こちらから予想をしてというような考え方でなくて、実際過去の実情を考えてみて、公共の福祉に非常に大きな影響があるものについて最小限の規制をいたしたい、こういうのが今回考えておるところでありまして、あるいは性質、理論としてはお話のような点も考えられるところがあるかもしれませんがそういうふうに一般的に考え出される争議行為の制限というような意味で考えておるのではございませんから、その点で多少違うところを御理解願いたいと思います。
  157. 原健三郎

    ○原(健)委員 最近中小企業の振興ということを、本委員会においても取上げて盛んに言つておる。その対策としてただちに言われることは、金融の道をつけるということでありますが、私の考えでは金融の道をつけることも非常に困難であつて、なかなか口ばかりで実際はついていないのであります。しかし少しその方面に注意を向けて来たことはけつこうでありますが、それだけでは中小企業が没落に瀕しておるのに解決の道にならない。ことに中小企業でも小さい町工場を持つておるような人たちが一番困ることは、大工場のように時間が八時から四時までというようにきちきちと行かない。仕事の量とか仕事のやりくりが違うのであります。一日十五時間働いて間に合せる場合もあるし、翌日仕事がなければ遊ばなければならないという場合もある。これは日本の中小企業、特に小さい町工場の特色であります。それに向つて労働基準法というものをやかましく言う、そのことが金融の面に災いして、小さい町工場などでは非常に迷惑しておる。でありますから、決して労働基準法を廃止せよというのではないが、この中小企業の町工場程度のものについては、大工場と同じ法律を適用することが実際に当を得ていない。それであるからこの小さい町工場のごときに至つては、その実情に沿うように労働基準法の適用を少し改めるとか、あるいは適用ができなければその基準法自身を改めるとか、そういうことについて労働大臣はどういうふうにお考えになつておるか。お聞きいたしたいのであります。
  158. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 中小企業に対する労働基準法の扱い方についてのお尋ねでございますが、御承知のように中小企業については、労働時間とか、安全衛生の基準、その地話手続等では相当の特例を認めておるのでありまして、これだけではまだいかぬというような御意見のようなことも、だんだん伺つてはおりますけれども、やはり労働条件の国際水準といいますか、そういうふうな点も考慮いたさなければならないと思うのであります。昨年それぞれ法の改正の際に、基準法についても相当改正をいたしておりますので、今しばらくその状況をよく注視いたしまして検討を加えたい。今お話のような実態についても十分調査をいたした上で考えてみたい、かように考えます。
  159. 原健三郎

    ○原(健)委員 その次に緒方国務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、この前、私は行政整理機構いじりをやらずに天引をやれということを申し上げたのであります。それで、そのわけでもありませんが、今度政府行政整理をやると言つておる。それには法律がいるので、行政改革案というものを国会提出する、それが緒方国務相の新聞の発表によると、この国会には間に合わぬから出さぬと言つてみたり、またけさの御答弁によりますと、吉田総理施政方針に言うた重要問題は、今月二十日ごろまででしたか、今月中には必ず法案を出す、こういうふうに言うておる。出すのか出さないのか、出すがごとく出さざるがごとく、はなはだあいまいなのでありますが、これは緒方総理にお尋ねいたしたいのであります。
  160. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。行政整理の成案について今国会に出さぬということは、私申し上げた覚えはありません。私も何か夕刊で実は読んだような気がいたしますけれども、私はそういうことを申した記憶はありません。  それから午前中にここで申し上げましたのは、きのう大体の方針を決定したものであります。
  161. 原健三郎

    ○原(健)委員 今国会法律案を出されるのでしたら、まことにけつこうであります。今まで吉田内閣行政整理を三回やり、こういう審議会というようなものを組織したのでも四回か組織して、いろいろ答申案もとつておるのでありますが、むずかしくて必ずしも思うように行つていない。最近聞くところによると、行政管理庁の人たちがどうもあまり熱がない。この前の補正予算のときにも質問いたしましたが、本多国務大臣もあまり熱がなかつた。だが、総理が熱心なので、今度はそれに引きずられてやろうとされておるように思いますが、真にやると重大決意を持つておるのかどうか、これを本多国務大臣にお聞きしたいのであります。
  162. 本多市郎

    ○本多国務大臣 行政整理につきまして、先日原さんから行政整理には天引き整理がよろしいという示唆を与えられたのでありましたが、しかし今日の合理的な行政整理ということになりますと、結局人員に見合う仕事、仕事に見合う人員でございますから、どうしても行政事務の簡素化ということによりまして、その事務を縮小して人員を整理するというのでなければ、合理的であるということは言えないので、一概に天引きをやるということは、一面仕事の分量等からおのずから差がありまして、非常な負担の不均衡を生じて来るわけであります。今度の総理演説にもありましたように、旧来の政策についての改廃、占領政策行き過ぎ是正、不要不急の事務の整理等を順次やつて行くつもりでありますので、それらに応じて行政整理を進めて行く、さらに日常欠員の不補充ということによりまして厖大化を防いで行くという方針になつておりますので、行政整理の全部の機構人員に適用される案が、一つ法律案として出て来るというわけではございません。昨日もお答え申し上げましたように、警察制度改革、これもその一つでありまして、占領政策是正に当りますか、そうした制度改革によつて相当人員を縮減して行くということで、各省の御協力と申しましようか、非常な検討を煩わしておるところでございます。まとまつたものから御審議を煩わして行きたいと思つております。
  163. 原健三郎

    ○原(健)委員 大体わかりましたが、それでは大体どのくらいの人員を減らし、どのくらいの経費を削減する予定でおられるのか、お聞きいたしたいのであります。
  164. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これはただいまも申し上げました通りに、政策改廃に伴うものでございますから、どの程度にその政策改廃等ができるかによつて整理できる人員の数がきまるのでありまして、あらかじめ何割とかいうようなことをもつて律することはできないことを御了承願いたいと思います。
  165. 原健三郎

    ○原(健)委員 しかし方々の役所を改廃し整理して行く場合に、大体それによつて幾ら数が減り、財政約にはどれだけの縮小になるかということはわかりそうなものである。何も二割とか一割とかいうことでなくて、それらの結論として全体的に政府が今構想しておる整理が、国会提出して通つた場合には、それによつて幾らくらい減るようになるか、このくらいのめどがなくて、ただ見当がつかないというのでは、はなはだたよりないのですが、その点いかがでしようか。
  166. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは改廃、是正整理すべき事務の大体の見通しが立ちますと、およその算定はできるのでありますが、今のところ、それらの項目について検討いたしておりますので、それのきまらないうちに数の見通しをつけるということは、まだ困難であります。
  167. 原健三郎

    ○原(健)委員 今まで政府行政整理を三回やつて行政審議会というような制度をつくつて、答申案を四回とつてやりましたが、必ずしも思うようには行つていない。あるときには国会の反対にあい、あるときには行政官の反対にあつて、あともどりしたというような実情にあります。そのことが難事中の難事であつたということは、私どももともとと了承しておるのであります。アメリカにはフーヴアー・コミテイーというものがあり、一年におよそ二百五十万ドルも使つて行政整理その他のことを研究いたしておりますが、これは非常な成績を上げておるようであります。それで、政府においても、今までのような行政審議会というようなものをつくつたり、あるいは政府部内で行政管理庁にやらせてみたり、そんなことでは断じてできない。これは今までの経験によつて明らかであります。自由党が二百八十名の威力をもつてつたときでもできなかつた。ここで私の提案いたしたいことは、このフーヴアー・コミテイーにならつて日本でも法律によつて行政制度改革審議会というような別のものをつくるのであります。これには政府も関係させないし、国会議員も入れない。政府国会と別個に独立したところの行政制度改革審議会というものを法律でしつかりつくる。ただ政府がかつてにだれか五、六人頼む、十人頼むというのではなくて、フーヴアー・コミテイーにならつて法律でつくつて、その答申案を待つ。そのかわりにその答申案ができたときには、政府はあまり自分の意見を言わずに、その任命された人を信頼して、その結果に従つて行政整理改正法律案を国会提出して審議にかける。こういう方法でもやらない限りはなかなか解決しそうにもないのであるが、こういうことをやられる考えがあるかないか、将来のことについてお伺いいたしたいのであります。
  168. 本多市郎

    ○本多国務大臣 アメリカのフーヴアー委員会のお話を例にとられましたが、私もこの委員会調査された資料等を拝見したこともございます。確かに長年月にわたつて大規模な総合的な研究をされておるのでありまして、その研究相当深いものがありますけれども、アメリカにおいても、やはりこれを実際に実現するという段階になると、停頓状態になると思つております。原委員は自由党内閣の行政整理の成果をばかに小さく見ておられるようでありますが、昭和二十四年の行政整理のときには二十六万の予算定員を縮減したのでありまして、この行政整理のときには司令部の人たちも、アメリカのフーヴアー委員会は三年がかりでやつておるけれども、まだそう大した改革もできておらない、日本は短期間にしてよくやつたと言つてほめたくらいでありまして、その後引続き六万、十万という縮減をやつて来ておるのでございます。従つて国会の御協力さえありますならばやり得るのでありまして、前回のときにも、やはり政府の予定いたしました通りには縮減できなかつた。これはむろん国家のためこうあるべきであるという意見の相違するところから出て来ることではございますけれども、かりにフーヴアー委員会のようなものを国会から全然離れてつくつて、そこで強力に答申さえすれば国会を通るかということも、これはなかなかその通りには期待できないものでございます。現在行政機構につきましては、行政審議会というものが法律によつて設けられて、各界の権威ある方方が今審議をいたしておるのでございますが、これもそれに当ると存じます。さらにまた中央の行政機構を縮減するにつきましては、どうしても中央からの出先機関が非常に多いのでございますから、地方にわたらざるを得ない。今日国家公務員の八割以上は地方に出ている出先機関の公務員でございます。こういう点にかんがみて、中央と地方を通じて考えなければならぬ点からいたしまして、今日法律に基いて創立されました地方制度調査会において、各界の権威者、さらに国会からも相当数出られまして、非常に熱心に、ただいま審議を煩わしておるのでございます。こうしたところでりつぱな御答申を得られますならば、あるいは中央地方を通じた行政整理と申しましようか、国力の規模に応じた縮減ということも可能になつて来るのではないかと思います。たとえば府県の性格がどうきまるかによりまして、今日中央各省がそれぞれへ持つておりまする出先機関等も統合することができるというような問題も起きて来るのでありまして、原さんの申されました大きな、また政治力の強い委員会を置いたらという御意見については、地方制度調査会はまさにそれに当つておると存じます。さらに中央においても今の行政審議会をさらに拡充したらどうかという御意思と思いますから、この点につきましてはさらに研究をいたしてみたいと存じます。
  169. 原健三郎

    ○原(健)委員 ついでにもう一つお伺いいたしたいのは、地方教育委員会であります。いなかの人口五百とか千とかいうような小さな町で、やはり教育委員会というものをつくつております。大都市だとか人口の多いところにおいては活用もできるでありましようが、いなかの千や二千の人口のところでは、教育委員会は活動もできないし、非常にじやまになつている。これを私は廃止した方がいいと思つておるのであるが、(「自由党でつくつたんじやないか」と呼ぶ者あり)自由党でつくりましたが、私はどうも反対でございます。それについて政府はどういうふうに考えておるか。もう一つは、これがいろいろ災いして、小さい町村でも町村長があり、教育委員会の委員長がある。この二つがすでに対立を始めて参りました。それでいなかの僻村におきましては、何とかこういう教育委員会を廃止することができなければ、町村長の諮問機関くらいに格下げをやつてもらいたい、同じようなものが二つ併立されては困るというような議論が非常に多い。大都市においては私はけつこうだろうと思いますが、いわゆるいなかの僻村にはこれでは困るので、これを町村の諮問機関とするというようなお考えはあるかないか。これをお伺いいたしたいのであります。
  170. 本多市郎

    ○本多国務大臣 教育委員会は、とにかく法律によつて実施せられたのでございますから、政府としては今その実績を見守つているところでございますが、私個人として考えますれば、地方行政機構の簡素化の見地から、原さんの言われました方向、すなわち町村の諮問機関等の方向へしてはいかがかと考えております。しかしこれは教育制度に関することでもございますので、他の機会に文部大臣へでもお尋ね願いたいと思います。
  171. 原健三郎

    ○原(健)委員 時間が来ましたから最後に簡単にお尋ねいたします。人口問題が非常に問題になつているので、この結論だけをお聞きいたしたいのであります。昭和二十八年一月の人口は、厚生省人口問題研究所の推計によりますと、八千六百十万人になつております。八千三百万人と言つておりますが、八千六百十万人であります。毎年百三十万人ふえるから、あと二年で九千万人、あと十年で一億となる。それで人口問題について、日本でいろいろ問題になつているのは食糧が足らぬということである。午前中の森委員からの質問では、主食だけだからそういうことになるが、いろいろ考えれば食うだけは何とかなるだろうという話でありますが、人口一億にもなつて参りますと、これが解決策はそう簡単でない。食糧だけでも今日これを解決することが、ただちにできるという案がなかなかないのであります。いわんや憲法で保障している文化的生活などに至つてはとうていできがたい。それをほおかむりをして荏苒日を送つておるのであるが、厚生大臣はこれをどういうふうに考えておるか、お伺いしたいのであります。
  172. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答えいたします。  けさほど森委員の御質問に一部お答えいたしましたが、人口問題は非常に大事でございます。ただいま百三十万人というお話がございましたが、大体その見当と思つております。けさほど実は御質問があればお答えしようと思つておりましたが、この問題は非常に大事でありますので、かつて内閣に人口問題審議会が設置されておりましたが、今回あらためて人口問題審議会を設けることにいたし、予算上の措置がとられております。この審議会で取上げます問題は、食生活の改善の面からの人口問題の解決でありますが、ただいまの御質問は人口の吸収つまり産業構造の中に、いかほど人口を吸収するかということと、また人口をいかに調整するかという問題でありましたが、これらの問題に対しましては、厚生省は両面とも最善の努力を払つております。
  173. 原健三郎

    ○原(健)委員 今ごろになつて人口問題審議会をつくて、そこで審議してから、しようと思つているというのでは、はなはだ日暮れて道遠いのであります。人口問題解決について厚生大臣はいろいろ問題を提案されましたが、食生活をどうするか、文化的生活をするにはどうして解決するか、それを具体的にお教え願いたいのであります。
  174. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 人口問題の解決に対して、人口問題審議会では、大体五つの部門にわたつて最善を尽すと思いますが、大きな面では食生活の改善、人口の調節の二つであると思います。食生活の改善につきましては、昭和二十三年食糧及び栄養対策審議会が設けられました際に、大体全国平均カロリーにおいて二千百五十、蛋白において七十五グラム、脂肪において二十五グラム、含水炭素四百五グラム、こういう目標をつくつて、それに対応した食糧構成の試案をつくつておる。これは内閣の審議会がいたしましたが、厚生省も参与してつくつて、大体最近におきましては、たとえば蛋白六十八、脂肪十八まで参つております。含水炭素は四百二十四で超過しております。先ほども森委員からお話があつたのでありますが、食糧政策の見地からも、従来の米の偏食をやめて粉食にするとか、あるいは栄養の見地から脂肪に転換するとかいう政策に対しても、厚生省は案をつくつております。なおこれは農林大臣から御答弁もあろうと思いますが、脂肪に転換するについても、大体今米食が昨年あたり三百五十グラム、大麦小麦合せて百三十五グラム、合計四百八十五グラムであります。これをかりに三割削減いたしますと百四十五グラム。これを脂肪に転換いたしますと五十グラム、カロリーにして五百グラムであります。脂肪に転換いたしますためにはいろいろな問題がありますから、これを畜産とか水産の増産をはかつてつて行きたい。これは農林省とも連絡をとつて、今施策を講じております。  なお人口調節の問題につきましては、かねて優生保護法が昭和二十三年に施行されて、その後一部改正いたして、現在優生保護相談所を設け、あるいは受胎調節相談所を設けてせつかくつております。大体本年度におきましては、今保健所が七百五十二箇所ありますが、これの全部に受胎調節相談所を設けて万全を期したいと思います。
  175. 原健三郎

    ○原(健)委員 この食生活のことはわかりましたが、もう少し積極的に予算でも組んで、たとえば受胎調節、産児制限、それらのことを積極的にやられたらどうか。またたとえば器具その他少し金をかけましても、全国の保健所を通しまして予算的措置をもつと考えて、きわめて積極的にやつて、人口の調節をはかつてはどうかと思うのでありますが、今の予算だけではどうも心もとないし、いたずらに今日は人的資源などと申しますが、優秀な人間ほど必要でありますが、人間がやたらにふえましても、文化的生活の程度が下るのでは何もならないのでありますから、これについて予算的にも今後やるお考えがあるかどうか、積極的にやられるかどうかをお聞きしたいと思います。
  176. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答えを申し上げます。ただいま受胎調節のお話がありましたが、これは御承知の優生保護法が施行されまして以来、いわゆる妊娠中絶の範囲を拡大いたしましたので、最近の統計によれば大体六十三万八千人ほどやつております。そのほかにいわゆる堕胎とか、非合法的なものがありますが、母体に重大な支障を及ぼすので、優生保護法を改正いたしましたり、いろいろいたして受胎調節面について積極的にやりたい。すなわちこれは二十六年の閣議で了解をいたして、政府はその施策を講じております。ただいまのお話では、おそらく国庫の負担においてこういう面、ことに器具でありますとか、あるいは薬品、こういう面を国庫の負担においてやつて、もつとこの面から人工調節をはかつたらどうか、こういう御質問だつたと思います。でありますが、こういう御質問に対しては、今は優生保護、受胎調節に関する指導あるいは事業に関しましては国庫負担をいたしております。ただお話の器具でありますとか、薬品については一応形式的には国庫の負担をいたしておりません。これを国庫負担でもつてつて行くかどうかという御質問でありますから、多少その点を詳細に申し上げますと、問題は有産階級にはそういう国庫負担はいらないのであつて、生活困窮者に対して国庫負担をしたらどうかということに限定してお答えをいたしたいと思います。生活困窮者になりますと、大体今ボーダー・ラインが約千百万人くらいありましよう。そうした人を対象にいたしましてのいろいろの統計がありますが、それは省略いたしまして、大体それを対象にいたして、そのうち受胎調節を必要とする者が、従来の統計では大体においてそれに対して百八万人くらいになる。百八万人くらいになりますと、大体今薬品の原価あるいは器具の原価からいたしますと、九億四千六百万円ほどいります。国民数で割りますと、大体一人当り十円になります。しかしボーダー・ラインの人には、今の国家財政の見地からはそういうない。むしろ生活保護の対象となる人々が二百八万人ありますが、その中で受胎調節を必要といたしますものが、大体十七万七千人になる。そういたしますと一人当り一円七十銭であります。これは今二つの方法が考えられるのであつて、平衡交付金の中のいわゆる基準財政需要額の中に入れるか、あるいは生活保護法の中の生活扶助の中に入れるか、これは大蔵省とも連絡して、今後検討いたしたいと思つております。この際申し上げたいのは、生活扶助の中には成人男子に二十五円、成人女子に八十五円の衛生費が入つておりますから、一人当り四十五円くらいと思いますが、これをこの面にまわしてお説のようにいたしたいと考えております。
  177. 原健三郎

    ○原(健)委員 これで終ります。
  178. 太田正孝

    太田委員長 重政誠之君。
  179. 重政誠之

    重政委員 私は、主として食糧問題と肥料問題に限定をいたしまして、関係各大臣に御質問をいたしたいと思うのであります。本日の午前同僚森委員から、食糧問題がきわめて重要であることをお述べになつたのでありますが、私もまつたく同感であるのであります。大蔵大臣には特にこの点を御認識をいただかなければならぬと思うのであります。なかなかこの食料の増産ということは、工場生産のごとく簡単には参らないのであります。大蔵大臣が国費を支出せられまして、その効果があるかどうかということについて非常に危惧の念をお持ちになつておることをかねがね私は承知いたしておるのでありますが、まことにごもつともなことであります。食糧増産というこの事業そのものが、きわめて困難なものであるということを御認識いただきたいのであります。と同時に、どうしてもやらなければならぬ問題であるということを、深く御認識をいただきたいと思うのであります。元来わが国の食糧、むろんこれは総合食糧について申さなければならぬのでありますが、かりに、米について申し上げますと、戦前におきまして、内地が平年作であつても、なお朝鮮、台湾から一千万石前後のものが輸入されなければ需給はとれなかつたのであります。でありますから、結局年々一千万行ないし一千五百万石は朝鮮、台湾からいつでも輸入をいたしまして、需給のバランスをとつてつたのであります。御承知通りに終戦になりまして朝鮮と台湾を失い、朝鮮は今日なおあの状態でありますので、朝鮮から日本には米が来るということも考えられない。台湾からもまたもちろん十分なる米は来ないのであります。最近に至つて、あるいは若干のものが来ているかと思うのでありますが、そういう状態でありますので、将来日本といたしましては、この朝鮮、台湾にかわる米の供給場所を、このままに放置しておけばどうしても見つけて行かなければならぬ。しかもけさほどもお話がありましたように——二十八年度予算において御計画になつております外米の輸入は、米が九十六万トン、大麦が八十二万トン、小麦が百五十七万トン、合計いたしまして三百三十五万トンをどうしても入れなければならぬということになつている。しかも支払うべき外貨は実に四億ドルを越えておるのであります。先ほども通産大臣のお話がありましたように、十二億ドルの輸出をしておつて、四億二千万ドル以上の主要食糧の輸入のために外貨を払つているというのですが、これで日本の経済、産業が簡単に再建するとは思う方がどうかしていると私は思う。これは何としてもこの食糧輸入を防遇して、外貨の支払いをどうしても減少いたさなければ、日本の産業、経済は将来立ち行かないと私はかたく信じておるものであります。終戦後五億ドルに近いこの外貨を支払つて今日に至つているというのが現状であるわけであります。ドルの不足に悩んでいる日本が、それほど厖大なる外貨を支払うという現状は、放置することはとうていできないのであります。もはやこの食糧問題の解決、主要食糧の増産ということは、戦時中においていわれておりましたような、ただ一旦緩急といいますか、日本が非常に危機に陥つた場合に困るというような考え方、あるいは農家の経済を改善するために増産をやらなければならぬという考え方、それ以上に、一般日本の産業経済全般にわたつての問題として、どうしても大きく取上げなければならぬ問題であると私は思うのであります。現在中小企業は非常に苦しんでおる、貿易は不振である、にわかに好転はむずかしいということを、通産大臣も先ほど来申しておられるのでありますが、内地に市場を求めるということは、こういう時代におきましてはきわめて重要なことであります。食糧を増産して農家のふところをよくすれば、自然中小企業のこの方面に対する発展もできるのであつて、これはその意味におきましても、産業経済全般の問題として、何としてもやり遂げなければならぬと思うのであります。どうぞごの意味におきまして、大蔵大臣におかれましては十分に御認識をいただいて、この予算の運用につきましても、将来できるだけ絶大なる食糧増産に対する御援助と御同情を賜わりたいと私はお願いをいたす次第であります。この予算の数字を見まして私がちよつと不審に思いましたのは、食糧増産に支出をせられます金は約五百億円に上つておるのでありまして、そのうち、土地改良その他に約四百億円の支出がなされることになつておりますが、前年に比べて、九十億足らずの増加であります。道路の経費は、前年に比べますと八十億円の増加になつておるのであります。もちろん道路は、産業的な意味におきましても、あるいは文化向上の意味におきましても、きわめて重要であることは、私は決して疑うものではないのであります。しかしこれほど重大な食糧増産をやらなければならぬときに、二十七年度に比べて、道路に倍の増加の経費を組むということが一体適当なのであるかどうか。これは予算全体について、大蔵大臣とせられましてはその重点々々をほんとうにお考えになつて切盛りをしておられるのかどうか、私はこの点を見まして疑つたのであります。どうぞひとつそういう意味におきまして、予算の運用につきまして、将来格段の御配慮を食糧増産のためにお願いいたしたいと思います。ただいま申します通り、二十八年度におきましては、四億二千万ドルの大切な外貨を使つて三百三十五万トンの外国食糧を輸入することになつておるのでありますが、私が農林大臣にお伺いいたしたいと思いますことは、この外米とか外麦の買付の方法が一体当を得ておるかどうか。外米について申しますると、予算では一トン二百十三ドルということになつておりますが、私が昨年の暮れ並びに本年の正月でありましたか、その当時の外米の輸入について話を聞きましたところでは、カリフオルニアの米は実に一トン当り二百五十ドル、タイの米は百九十ドル、これで輸入をしておるという話を聞いたのです。そうしてまた輸入の仕方の内容を調べてみますと、農林省において十万トンの外米をタイから買われる、こういうことになれば、これは五十万トンになつて注文が行つておる。船賃は、十万トンでいいものが五十万トンの船が必要であるということになるから、暴騰をいたして参るのであります。これは占領中におきまして、公平に公平にということを言つておる。そうしてこの競争入札——ビツド制をやつておるが、これがために日本は外貨の支払いについてどれだけ損したかわからぬと思う。これは単に主要食糧だけではおそらくあるまいと思うのであります。件年は仏領インドシナは三菱商事が受持つ、あるいはタイは三井が受持つ、ビルマは日綿が受持つということで、そういうようにむだなく入つて来ておつたと私は思う。そういう方法がいいか悪いかということについては、なお研究の余地はありましよう。しかしながらから手で、中にはひやかしも入つてこの競争入札をやつて、船賃をつり上げ、米の値段、小麦の値段をつり上げて、血の出るような外貨を支払うというこの方法は断然やめなければならぬ。私は農林大臣がその弊害を承知せられまして、最近において若干やり方について御修正になつておるということを聞くのでありますが、それはどういうふうにやつておられますか。さらに先ほども話がありました通りに、これは輸入組合をつくらすとか、あるいは何らかの監督の方法等を設けて、特定のものに信用をしてこれをやらすとかいうような方法を講じられてはどうかと思うのでありますが、農林大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  180. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 御指摘の通り、戦後においてはあまりそういうことについて整理をしなかつたのでございますが、昨年来米の買付につきましては、二回にわたり商社を整理いたしたのであります。ただいま御説明の通り一つの品を注文いたしますると、同じ品物について四十本、五十本という同一の電報が行きますると、現地において物が上つて行くのは当然でありまするので、それを整理いたしまして、逐次あなたのおつしやるような輸入組合というか、そういうような方向に向けて行くように、ごく成績のいいものを残しまして、それを指定いたし、あまりに多かつたものを切つてつたようなわけであります。
  181. 重政誠之

    重政委員 二十八年度予算に計上せられております食糧増産の金額は、先ほど申しました通り、約五百億、四百九十二億円で、二十七年度に比較して八十九億円の増加計上と相なつておるのであります。その内容を拝見いたしますと、土地改良について約四百億、耕種改善に三十九億、その他いろいろの開拓費等のものがあるのでありますが、この土地改良の約四百億の経費によつて、百万石ないし百三十万石の増産をはかる。耕種改善の経費約三十九億円、四十億でありますが、これによつて百二十六万石の増産をはかり、合計二百五十六万石の増産を目標としてやられることになつておるようであります。ところが私がここで申し上げたいことは、この耕種改善によつて増産をせんとするところの百二十六万石というものは、平年作に比較しますと約二%になると思うのであります。つまり食糧増産の非常にむずかしいところはそこにあるのであります。これは天候によつて支配をせられるのでありまして、二百十日に一ぺん風が吹いて大雨が降れば、百万石や二百万石はすぐ減るのであります。そこで私は、二百五十六万石というこの計画の基礎が——一方の土地改良による百三十万石は、これは比較的かたいのでありますが、この耕種改善による百二十六万石の増産というのは、これはしかく確実なものではないのであります。そこでこの耕種改善も大いに実行はいたさなければならないことはもちろんでありますが、この耕種改善の部分は、堂堂とこれだけふやすということを言うのには、少しこれは遠慮した数字でなければならぬ、そう私は思つておるのであります。そこでこの土地改良による増産の百三十万石というものが、これは比較的確実であり、非常に大切なものであるのでありますが、これに要する経費として四百億円を計上せられておりますが、おそらくこの土地改良というのは、大規模のものを私はおやりになるのではないかと思うのであります。その点について私は御質問をいたしたいのであります。占領下におきましては、土地改良事業の助成の対象となるものは、集団耕地三百町歩以上でないとこれはやらぬことになつていた。戦前におきましては三十町歩以上になつていた。戦争中におきましては、私どもはそれでは真の食糧増産はできないというので、小開墾でありますとか、あるいは簡易暗渠排水についても、五町歩以上のものについてみな実行したのです。それが占領アメリカさんがやつて来て、三百町歩以上ということになつたのでありますから、多くの日本の農村では、ほとんど改良事業というものが行われなかつた。私どもは、日本が独立したからには、これは少くとも二十町歩、三十町歩以上のものについてすみやかに助成をやらなければ、真の食糧増産というものはできないと主張をいたして参つたのでありますが、これはおそらくそういう方向に農林大臣も向けておられると思うのであります。この三町歩、五町歩の小開墾あるいは簡易なる土地改良事業というものをなされなければ、この土地改良による一番確かな増産をするということには参りませんぞ、こういうことを私は特に申し上げたいのであります。ところがこの予算には、おそらくこういう三町歩、五町歩というような小開墾及び簡易暗渠排水というようなものが中に入つておらぬのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  182. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧増産を限られた予算の中でやる場合には、やはり重点的に予算を使わなければならぬことは御承知だろうと思つておるのであります。また大きなところばかりでなく、小団地の土地改良、開墾等をやつたらどうかということでありますが、これは御説の通りでございまして、その現われが、占領中でありましてもこの国会の非常な要望であつたのであります。そこでこの予算の上におきましても、団体営等については二十町歩のものにも助成するようにして、だんだんそれを下げて行つているようなわけでありまして、小さな団地を重要視しなければならぬことは、あなたの御指摘の通りでありまして、その方向に向けて進んでおるわけであります。
  183. 重政誠之

    重政委員 私の思いました通り、おそらくこの中には小規模の土地改良というものは入つておらぬのであります。特に大蔵大臣に申し上げておきたいのでありますが、この小さい土地改良というものは実は安上りなんです。そうしてこれは日本全国至るところの農村にあるのであります。由来農林省の行政というものは、私は常にそう思うのでありますが、関東から東北、北海道の農村を中心にしたような行政が行われておる。ことにこの食糧の増産の問題につきましては、そういう傾きがどうもあるのです。ところが近畿にしましても中国にしましても、関東以西における農村においては非常に耕地が狭いものでありますから、この小規模のものが非常にたくさんあるのであります。水利にしましても、ため池がかりの小さいものがたくさんにあるのであります。そういうところは農家も開墾を希望し、また簡易暗渠排水というようなものの希望をいたしておるのであります。これは非常に安上りであります。でありますから、大きなところの百三十万石の増産というものは、これはむろんやらなければならぬことでけつこうでありますが、さらにこの小さいものをおやりになれば、私は相当の増産になること間違いなしと思うのであります。将来におきましては、この点はどうぞひとつ特にお考えを願いたいと思うのであります。  それから農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、年々つぶれ地が相当にあると私は思うのであります。ことに二十八年度におきましては、その内容はわかりませんが、先ほど申し上げましたように、道路でも昨年の二倍のたくさんの予算が計上せられておつて、これは相当美田がつぶされることになると私は思うのであります。二十八年度においては、一体つぶれ地がどのくらいで、それによる減収はどのくらいになるという見積りをしておられますか、それをお聞きいたしたい。
  184. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農地が家屋とか道路あるいは工場等によつてつぶされるのは、大体年三万町歩程度になつております。これによつて減収になるのは、大体百万石程度と推定されております。
  185. 重政誠之

    重政委員 そうしますると、確実なところで行けば、四百億の金を使われて百三十万石の増産をせられまして、片方において百万石の減収がこれでできておる。差引三十万石しか確かな増産を請合うことはできぬと思うのであります。非常に多額の投資額になるのでありますが、現実はそういう現実です。でありますから、食糧増産ということを一方において言つてつてもつぶれる方の対策を何とか講じなければさいの河原です。この点を私は常に心配をいたしておるわけでありますが、そういう問題について農林大臣はどういう方策をお講じになつておりますか。
  186. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 大体人口の増加と、それからつぶれ地で、どうしてもそれをカバーして行かなくちやならぬものが二百五十万石、どんなにしてもこれだけはやらなければならぬというので、われわれは予算を要求してやつておるのであります。輸入を削減するためにこれ以上の方途を講じて行きたいのでありますが、国家予算も制約されまするので、その他の方法において、あなたのおつしやいましたいわゆる耕種改善のほかに、あるいはまた農薬等を用いたり、あらゆる方面のことをやつて、衆知をしぼりまして増産に努力をいたしておるようなわけであります。
  187. 重政誠之

    重政委員 私はこの問題については、ほんとうにお考えをいただかなければならぬと思うのであります。先ほど来申し上げました通りに、ただ食糧の増産に何ぼかの金をやつておけば、それで農林大臣が始末をつけるだろうというような安易な考えをせられておつたのでは、これは大蔵大臣なり、通産大臣が非常に御努力をせられましても、私は日本の産業経済はよくならぬと思う。こう私は断言してはばからないのであります。どうぞひとつ、そういうわけでありますから、真剣に内閣としてはこの食糧問題について——これは重要問題です。これについて御尽瘁にならんことを切に希望いたす次第であります。  同僚議員から先日質問があつたのでありますが、災害復旧費を二十八年度予算におきましては、過年度災害の三分の一を復旧するという予算百三十七億しか計上していないのです。そうすれば、またことし災害が来るのです。これでは堤防か切れつぱなしになつたり、たんぼの埋まつたりするものがいつまでたつても復旧するわけがない。これは少々金はかかつても、こういうものはすみやかに復旧して、それだけ増産になるのでありますから、この外貨の支払いを少くすることに努められんことを私は希望いたす次第であります。
  188. 太田正孝

    太田委員長 重政君、大蔵大臣に発言を求めますか。これらの問題は大きな問題だと思いますから……。
  189. 重政誠之

    重政委員 大蔵大臣も、ひとつ御所信をお願いいたしたいと思います。
  190. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまの点、よく了解いたしました。今後十分その辺は努力をいたします。
  191. 重政誠之

    重政委員 次に、先ほど原君からの御質疑もあつたようでありますが、主要食糧は以上申し上げましたような事情でありますから、一千万石ないし一千五百万石の朝鮮、台湾から来ておつたものを、日本で急速に実際増産をしようといつても、これはなかなか困難なことなんです。でありますから、どうしても総合食糧の計画を立てなければ、食糧の需給は、おそらく今後十年や二十年の間には日本はできないと私は思つておるのであります。先ほども厚生大臣からもいろいろこまかいことを言つておられますが、その数字で、ただ机の上でどうやる、こうやるというのではないのでありまして、大ざつぱに言つて蛋白給源にしたところが、北洋の漁場は全部失つている。千島辺からカムチヤツカのあの辺は失つている。それだけ魚がほかでとれるかといえば、とれぬために、それだけ日本には蛋白給源が減つている。蛋白だけから見てもそうなのです。満州から来ておりました大豆は今アメリカあたりから来るようになつておりますが、これだつてあの当時に満州から来ておつた豆かす、それから大豆を合せまして二百万トン、飼料を合せまして四百万トンが年々入つて来ておつたという状態では、今日はないのであります。どうしても畜産の振興に求めなければ、蛋白の給源を確保することはできないのであります。しかるにこれも予算を拝見しますと、畜産振興に五億六千万円というすずめの涙ほどの予算が計上してある。これで食糧問題の解決をしようというのは言う方が間違いだと私は思う。それと同時に食生活の改善をやはりやらなければいけない。いつまでたつても米の飯を食わなければいけないというのでは、日本の食生活の安定ということは得られぬことは言うまでもないのであります。ただ非常にむずかしいことも、これまた事実であります。小麦を食えといつてみたところで、パンを食えといつてみたところでバターの値段は一体どうするか、肉の値段はどうするかということまで解決をつけなければ、これは簡単に行かない。でありますから、この問題は何とか政府研究をなさらなければいけない。農林大臣は御承知ないかもしれませんが、農林省には食糧研究所というものが昔からあつて、そういうことを研究するための機関がある。今日お話を聞いてみれば、一億何ぼ金を使つているのだが、何をやつているか何やらわからぬという、こういうことでは話にならぬと私は思う。厚生省においても、総合食糧研究所というものを前に設けておつたが、一向にその後これらが活動して食生活の改善に具体的に資したいということは、話に聞いたことはない。どうぞこれらの点もひとつ十分に将来御活用になつて、食生活の改善も具体的に進められ、総合食糧の計画も実施せられんことを私は希望してやまない次第であります。  次に、私は食糧増産といたしますためには、農産物の価格政策というものがきわめて重要であるということを申し上げまして、二、三の御質問をいたしたいと思うのであります。米の供出制度を撤廃するということは、これは自由党が初めてできまして以来、でき得る限りすみやかに米の供出制度は撤廃をすべきものであるということを唱道をいたして参つたのでありますが、今日に至つてなお現状のままであるのであります。私は戦時中にいろいろの統制ができましたが、今日まで残つておるものは米だけだ。主要食糧だけについての統制が残つておるのであります。なぜこれが残つておるか。結論的に申し上げれば、要するに農家の犠牲において、この食糧の配給制度を実行しておるというのが、私は結論だろうと思う。一体なぜ農家だけが戦争が済んでも犠牲の負担をしなければならぬかということは、私どもはほんとうに農民のためにこれは考えざるを得ないのであります。この供出制度を実行いたしておりますと、どうしてもこれは低米価政策にならざるを得ない。(「ヒヤヒヤ」)今年度において農林省、大蔵省において御相談になりまして、自由供出という最後の供出については、米の値段は七千五百円にしておいて、二千五百円の奨励金を出されたという。これはちようど一石一万円になる。今二百十三ドルで外米を計算してみますと、これがトン七万六千八百八十円になる。そうすると一石が一万一千七百円になる。これは予算単価である。現実の外米の輸入については先ほど申しましたように、加州米が二百五十ドルでありますから、これはよほど高いものです。でありますが、とにかく農林、大蔵両省において、最後の自由供出についての二千五百円の奨励金をやられて、これをちようど一万円前後のものにせられるというところは、これは何かのねらいがあつてつておられるに違いないと思う。そうすると、その他のものは七千五百円から順々に行つて、それだけみんな農家に犠牲をしいておる。いわく財政上許さぬという。財政が許さぬ、そういうことは百姓にはわからぬ。これは百姓だけに犠牲を強制せらるべきものではないと私は思うのであります。政府も負担をするがよい、要すれば、消費者もこれを負担すべきものであると私は思うのであります。今日の農民にはやはり不平がある。不平があつてこの米の増産をやれというのでありますから、なかなかうまく行かない。どうしてもこの主要食糧についての価格政策というものは、重要なる問題としてお考えになるか、さもなければすみやかにこの米の統制を撤廃せられるべきものであると思うのであります。もちろん米の供出制度を撤廃するためには準備がいるでありましようが、農林大臣はどういう準備を今までにしておられますか。私はおそらく大なる御準備はないだろうと思う。(「その通り」)それではほつておくということになる。これでは農村はたまらない。私をして言わしむれば、これはやる気になればやれる。たとえば大都市の食糧の配給だけを政府がやる。あるいは今のごとく二合七勺の配給をやる。しかもそれは米だけじやない。いろいろなものをまぜてやつておる。だから米について一合は政府責任を持とう。これは何とか考えれば私はくふうがあると思う。それだけの親切を持ち、なおこれほど重大なる食糧の問題でありますから、真剣に御研究をなさればできるもの、だと思うのでありますが、これらの諸点について農林大臣の御所見を伺います。
  192. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 わが党としては、米の自由販売ということはこれは高く掲げておる政策であります。しかしこの米現状はなかなか麦のようなわけに参りませんので、順次それに寄せて参りまして、不安を来さないようにいたしまして、はずす考えでおるのであります。その準備として、われわれは食糧の増産のためにいそしんでおるのでありまして、決して無準備ではないのであります。
  193. 重政誠之

    重政委員 次に私は主要食糧と他の農産物との価格政策と申しますか、これの関係について若干の御質問をしたいのであります。政府は今度の食管特別会計予算において、菜種を買い上げるために三十六億円の予算を計上せられておりますか。
  194. 河野一之

    河野(一)政府委員 菜種の買上げについては、食管会計においては予定いたしておりません。
  195. 重政誠之

    重政委員 ただいま主計局長の御答弁によれば、食管特別会計に予定をしておられぬそうでありますから、私はそれで安心をいたすのであります。と申しますことは、農林省におかれまして年々菜種の増産をしておられる。そして菜種の植付の反別がふえるのは、多くは麦作の畑を食つてつておる、こう見られるのでありまして、私の計算によりますと、それが年々ほとんど百万石に達するのではないかと、こう私は思つておるのであります。すなわちこの菜種の価格は、小麦、大麦、裸麦に比べまして非常に高い。菜種をつくりますと反当二千円前後のプラスになるが、裸麦や大麦、小麦をつくれば、これがマイナスになる、ことに裸麦、小麦をつくれば一千円前後のマイナスになるというのでありますから、これはほつて置いてもどうしても菜種はつくるのであります。しかも政府はこれに予算を計上して助成をやつておられる。そこでどうかというと、昭和二十七年度は麦の作付反別は六万三千九百町歩も減つたのであります。菜種の方は七万六千町歩殖えておる。菜種は開墾地に作付をするということももちろん考えられるのでありますが、この統計によつて見ますと、多くは麦の作付が菜種に転換をしておるということになる。かりにこの六万三千余町歩が転換されたとなると、百万石の麦が減収になつているという計算になる。そこで私は一方ではきゆうくつな財政資金を土地改良その他に使つて食糧の増産をはかる、一方では菜種の増産をやつて麦畑を食つてつて麦の減産を来す、こういう矛盾した行き方が行われたのでは、食糧増産は逆櫓でやるということになる。これではとうてい私は真剣に食糧の増産をするということにはならないのであると思うのであります。この点について農林大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、御所見を伺いたいと思います。
  196. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 お説の通り菜種はだんだんふえて参つております。これにはいろいろ原因がありまして、戦時中非常に油というものが節約されて入手が困難だつた関係上、農家が自発的に油をとる菜種をつくるということが一つ、それからまた麦の統制時代に適地でないところまで麦をつくらしておつたということが、その一つであろうと思うのであります。それからまた農林省として裏作導入をやる場合に、一番手取り早くやれるのはやはり菜種でありますので、そういうようなことが積つてこの菜種の増産になつたのではないかと、こう考えておるのであります。
  197. 重政誠之

    重政委員 農林大臣の御説明は了承いたすのでありますが、私の申し上げますのは、麦作を菜種に転換することはおやめになつたらどうか、無理なところに麦をつくらしておるということであれば、その麦の作付について政府は助成をされるなり何なりして、とにかくそこに百万石でも麦ができれば、それだけ外麦の輸入は減るのでありますから、そのつもりでおやりになると私はいいと思うのであります。おそらく一方におきましては、ただいまお話になりました通りに、戦時中に油が不足であつて、それで菜種を農家がつくるようになつたというお話でありますが、これは私もそうだろうと思うのです。ところがこのごろは、それを若干の予算をもつて奨励をしておられるというところに問題があると思うのであります。そうすれば油料原料を輸入せずして、内地で増産した菜種でまかなえば、それだけ得だろう、しろうとはこういう考えをせられるかもわからないが、これはなかなかそうは行かないので、菜種をつくつて油料原料を入れないでも、やはり必要なものは必要なのだ、みそやしようゆをつくるためにはやはり豆かすは必要なのです。そういうことの勘定をしてみると、菜種を増産せられて油料原料を入れなければ入れないほど——昭和二十七年度において七百ドルくらいよけいに支払つておることになつておるので、私は詳しいことは申し上げませんが、ここらの点もよくひとつ御検討になつて、そうしてこれは下僚におまかせにならずに、ひとつ農林大臣が食糧増産という根本方針に従つて、そういういろいろな奨励作物についても御検討を加えられて、本筋におやりになつていただきたい、こう私は考える次第であります。  食糧の問題につきましてはその程度にいたしまして、次に肥料の問題につきまして、一、二の点をお伺いいたしたいと思うのであります。肥料問題はきわめて重要な問題であることは申すまでもないことでありまして、私もまたその全般についてここで御質問を申し上げようと思うものではないのであります。政府におかれましては、経済審議庁に審議会を設けられて、いろいろ御研究になつておるということでありますが、私どもは一日も早くその結論が出て、この肥料問題が安定することをひたすら念願いたしておるのであります。私どもも議員同僚が相寄りまして、この肥料問題については実は研究をいたしておるのであります。意見がまとまりますれば、政府に対してまたこれを要望する機会があろうかと思うのでありますが、私はここで御質問をいたしたいと思いますのは、例のいわゆる出血輸出に関する問題であるのであります。硫安の生産は、政府並びに製造業者の協力によりまして、著しく生産が増加いたしておるのであります。これは私どもといたしましてはまことに感謝にたえないところであります。昨肥料年度におきましては、その生産がすでに百九十万トン、二百万トンになんなんといたしおるのでありまして、戦争直前のことを思いますと、実に今昔の感にたえないほど能力も多くなり、実生産も上つて来ておる。これはお国のためにまことに喜びにたえないところであります。そういう状態でありますから、内地の需要を満して、なお余剰があると見込みが立つた際には、これを輸出するのが当然である。貿易の問題が日々問題になつておるのでありますが、私は将来の日本の貿易産業としては、アンモニア製品の輸出ということが最も適当であり、また日本にとつては最も割のいい産業であろうと思うのであります。どうしても増産をはかつて、輸出を増進し紡績などのごとく原料を輸入するのと違いまして、これは水と空気と石炭と電気があればよい、売つたものはまるまるもうかるのでありますから、おそらく将来の貿易品の王座を占めるものと私は希望を持つておるものであります。通産大臣はこれを輸出に充てたい、こう言われ、農林大臣は内地の肥料の需要に不足を生ずるようなことがあつてはならぬ、こうお考えになつて、いろいろ御協議になることと思うのでありますが、しかし見通しを立てて余るとなつたら、日本の貿易上、日本の産業のために非常に重要なる製品でありますから、輸出をしなければならぬと私は思うのでありまして、これは農林大臣といえども御異存のないはずであると思うのであります。たまたま昨年の十一月十三日の国際入札で、硫安が二万六千トンの輸出が、FOB価格の四十六ドルで日本に落札いたし、その後また最近朝鮮向けの硫安が五十一ドルで日本から出すようなことがあつて、いわゆる出血輸出の問題として、やかましく世間でいわれることになつたのであろうと私は思うのでありますが、昨年の八月には農林大臣、通産大臣御協定になり、さらに製造業者も了承をして、いわゆる一俵当り九百円、上に三十円、下に三十円で八百七十円ないし九百三十円の間で内地で硫安を販売する。こういうことに御協定ができて、一時安定を来したのでありましようが、たまたま今の十一月以後の輸出になつて問題が起きたと思うのであります。この安定帯価格を三百六十円のドル換えにしてみますと、これが六十五ドルないし六十九ドルになると思うのであります。これに比べますと、四十六ドルないし五十一ドルというのは非常に私は安値であると思う。これでは業者の方では血が出る。こういうことを言つて来るのは私は当然かと思います。日本の金にすれば一俵当り三百円ないし二百円安く外国へ出すというのでありますから、そこで私は問題が起つて来たと思うのでありますが、この問題は私は農村に対しては二つの考え方を与えたと思うのです。その第一はあの損失をわれわれ農民に転嫁せられては困るというのが一つと、いま一つはあれだけ安く外国へ売れるなら、われわれにだつて安く売つてくれていいのじやないか、こういう二つの考えを私は農民にさしたと思うのであります。ところが私をして言わしむれば、この出血輸出というのは実は出血ではないと思うのであります。それはなぜ出血をしたかといえば、これは為替管理をやつているから、している。現在三百六十円で一ドルをかえて、そうして製造会社は五十一ドルで出せば、そただけの金をもらう。ところがドルのやみ相場は、私の聞くところによれば五百四十円もしているということである。そうするとその間の百八十円というものは一体だれがもうけるのか、私はこれは政府がもうけるといつてはおかしいが、政府がこの必要によつて為替管理を行われる、ために、製造業者に損をかけているのだと私は思うのであります。これを政府が全部出されれば損はない。私は計算をやつてみたところが、こういう計算になるのであります。一俵八百七十円としますと、トン当り六十五ドルになるわけであります。これを一ドル三百六十円として計算をしますと二万三千四百円となる。これを一ドル五百四十円のやみ相場で計算をしてみますと三万五千百円になる。これで行けば一つも損はない。今のように騒動をやるわけがない。やらぬで済む。ここをひとつくふうをしてください。通産大臣は、それはくふうをしていると、先ほどもお話がありましたが、優先外貨制でおそらくこの硫安の輸出は第一種にあげて、一五%ですかはフリー・ダラーをやつているということを言われるだろうと思いますが、これは通産大臣、政府が恩典を与えているものでも何でもない。政府がみな取上げている。本来からいえば政府が払うべきものです。それを三百六十円という国の根本の方針によつて、為替レートをフイツクスして人為的につくつているから、迷惑を与えているのでありますから、私がここで提案をいたしますのは、優先外貨制の第一位に入れるのもいいが、これを五〇%をフリーダラーにしてやられたらどうですか。これを通産大臣にお願いをし、御所見を伺いたいのであります。
  198. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。肥料の問題につきましては、肥料が農村に及ぼす影響、また化学工業においてもきわめて重大でございますので、非常に慎重に、私の方でもよく農林省と連絡をとりつつ検討をいたしている次第でございます。さきに皆様の総意を反映いたしまして、各方面の権威の万々に集まつてもらいまして、審議庁の中に内閣総理大臣の任命のもとに、一万田日銀総裁を委員長といたしまして、肥料対策委員会をつくつて、すでに数回、特に小委員の方々は十数回会合をして、目下日々これらの問題の検討を進めておられるのであります。今お話の出ました輸出の問題は、これより先、日本の硫安が、お話のごとくに、約二百万トンも出るようになり、国内の需要から見ますと、約四十万トンばかり過剰の状況になりましたので、農林大臣ともお打合せの上、これを輸出することといたしたのであります。ところがちようど七月ごろ、それまではずつと六十ドル以上の値段であつたのが急に世界的に下つて参りまして、今お話のような数字の四十ドル台、五十ドル台というようなのが出て参つたのであります。一方これは、私が御説明するまでもなく、二百万トンの能力を持つているものを、かりに一斉に二割操業短縮をいたすとすれば、たちまち原価が上つてしまいますので、やはりフルに動かすということが何よりも必要な関係にございますので、そこで国内での需要に事欠かすようなことがあつては相なりませんから、まずこれは日本の農村のために最も重きを置くことは申すまでもございませんが、余力の四十万トンくらいのものについては、絶えず輸出ということを頭に置いて考えて、両省相談の上にこれを処理しておつたのであります。ところが電産スト、炭労スト等がありまして、昨年下期は少し減産にも相なり、また価格を調べますと、ああいつたことが影響いたしまして、少し上つて来ているような数字が出て参つているのでありますが、世界の事情等を映しまして、私どもは何かもう少し農村の利益になるようにということの意味を、各委員の方々に申し上げて考えていただいている次第であります。そこでこれも率直に申し上げますれば、私ども政府の側でも、できるだけのことをしたらどうかというので、それがたまたま日銀総裁等の新聞筆出ている言葉となつていることかと思いますが、現在開発銀行から約四十億足らず肥料会社に金が出ております。それを、現在一割でありますが、七分五厘に下げたら影響があるであろう。それから石炭でやるところについては、コークス用の原料炭等を少し輸入さすことにすれば少し下るではないか。電力でやるところについては、電力の割当等を少しよくすれば——これはもつとも三月まではできません、もうきちんと割当ができておりますから、——少し値段か下ることになる。そういうような措置をとり、電源ストや炭労スト等による悪影響等も避けさすことによつてやり得るのじやないか。それで幾らかでもそういつた悪影響の分を避けさすことによつて、農村の方々の心持に沿つたらどうか。そういうことで相当具体的に案が進められつつありますから、いつ発表ができるかということは申し上げられませんが、少くとも春肥価格の決定には間に合うように、これは発表ができると思つております。委員の方々も非常にお忙しい方々であるが、熱心にこれに当つておられます。きようも委員の方々の数人にお会いいたしました。そんなようなぐあいであります。  なお今の重政委員の御提案は、まことにごもつともな御提案でありまして、以前には、昨年十二月まではこれをやつておりませんでしたが、ことしの一月から今の優先外貨の制度をとつておりますが、何しろ第一類が一割五分ですから、一割五分だけですと、まだ全的に損をカバーするところまでは参りません。しかしこれは全体を通じまして取扱わなければならぬ。日本にとつては貴重なドル外貨でございますので、それを全部肥料業者の方というわけにも参りません。しかし一割五分については、この一月から取扱うことにいたしましたので、いわゆる出血輸出は漸次そういうことで減つて参りましようから、いわば俗に言うたな上げをさして、漸次そういうこと等で解決することにいたしまして、農村の負担には一切させない。こういう建前をとつております。ですから、御意向の点はこの一月からすでに実行いたしておる、こういうふうにひとつ御了承をお願いいたしたいと存じます。問題が肥料工業で、比較的重要でもありますし、やはり私どもは農村の関係を深く考え、同時に、やはりこれが衰えて来ますと、また高い肥料を農村で使わなければならぬということになつて参りますので、化学工業としての肥料工業は、あくまで育成して行く。この両用の建前をとりつつ、すべての施策を進めて参りたいと考えておりますから、さよう御了承を願いたいと存じます。
  199. 重政誠之

    重政委員 ただいまの御答弁を承りまして、おそらく農村の農民諸君も非常に喜ぶことであろうと私は思うのであります。先ほど申しました第二の、あれだけ二、三百円も安く売れるのなら、われわれにも安く売つてくれというこの感じは、りくつはどうもむずかしいと思うのでありますが、こういう感じを起さしたということは、とにかく何か政治的にこれを取扱つて、けりをつけなければならぬ問題だ、こう私も思つてつたのでありますが、ただいまお話を聞きますと、金利も下げられ、あるいはコークス等も輸入コークスで値段を下げてやられるというので、何とか少しは下げられる方向へ進んでおるというお話でありますから、まことに私は満足をいたす次第であります。優先外貨制の問題もいろいろ御事情はありましようが、ドイツは硫安については四〇%やつておるそうでありますから、これも事情は御承知のことと思いますが、やはりそろばんの合うようにすれば、非常に大切な貿易の上から言つても、化学製品のごときものは最も有利なんですから、原料である綿を買つて紡績でやるよりか、これは水と空気と石炭がまるまるこつちのものなんだから、どうぞその点は御如才もありますまいが、すみやかにひとつ実現をするように、御配慮あらんことを希望いたしまして、私の質問はこれで打切ります。
  200. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ちよつと一言関連して……。
  201. 太田正孝

    太田委員長 簡単でございますか。
  202. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 二問だけ、簡単です。先ほど農林大臣の御答弁の中に、土地改良についてはもと三百町歩ということだつたのを二十町歩まで下げた、こういう御答弁があつたのであります。数年来この予算委員会のたびに私はこれを御質問申し上げ、議論を申し上げ、五町、十町歩まで下げなければいかぬじやないかということを言つてつたのであります。その二十町歩まで下げることは下げるが、二十町歩程度のところも、同じ地方に五つなり六つなりそういうふうなものをまとめなければ、これに補助金をやらない、こういうようなやり方をとつていらつしやるのではないか、二十町歩だけでもおやりになるのか、これをひとはつきりしておいてもらいたいと思います。
  203. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 その懸念はないそうであります。
  204. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 その懸念はないということでありますが、それならば昨年から二十町歩ということになつておるようでありますが、実際問題といたしましては、二十町歩、三十町歩の土地改良には移つていないのであります。でありますから、これはおそらく各府県に対して、およそその年度の土地改良の件数は、三つとか五つとか大体の割当をなさるので、各府県がこまかいのを出して来ない。三百町歩、五百町歩という大きなものだけしか出して来ない。こういう結果になるのではなかろうかと思われますので、これらの点については府県との連絡と申しますか、指導と申しますか、その点に違算なきを期してもらいたいと思うのでありますが、その点はどうでありますか。
  205. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 よく府県に通知をいたして、連絡を密にしたいと思つております。
  206. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 先ほど重政委員の御質問の中で、一体本年度の予算の中に小さな土地改良に対する予算が幾ら入つておるか、こういう御質問があつたのは、私が今質問したのと同じ御趣旨だろうと思いましたのでこの質問を申し上げたのですが、今御答弁になつたことを十分に各府県に徹底してもらいたいということと、あともう一問は、農薬の中でドイツ製のポリドールという非常にきき目のある農薬が入つてつておるようでありまして、全国各府県の農民はこれを非常に希望しております。ところがこれが輸入されるにあたつて政府の方ではこれに非常に制限を加え、希望する三分の一ぐらいしか入つて来ない、こういう実情にあるように聞いておるのでありますが、これには二つの考え方がいわゆる農民等の批評として起つておるようであります。その一つは、外国のものを必要なだけ輸入すれば、結局外貨の点に影響するのではないか、こういう政府の考えではないかということか一つ。いま一つは、国内においてDDTその他、従来農家が使つてつたようなものに対する製造の設備等をいたしておる会社が、この有効なポリドール等を輸入すると目をまわして参つてしまう、だからこれらを擁護するために輸入を制限しておるのではないか、こういうふうな批評が出ておりますが、その二つの問題についてどういうふうにしておられるのか、この際明らかにしておいてもらいたい。
  207. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは。パラチオン剤というのだそうでありますが、ドイツの専売特許であります。近ごろはアメリカでその専売特許を買つておるようでありまして、アメリカとドイツの両方から入れるようにして、このままに制約されておるようなことを除きたい。それからまた今までは試験期でありましたので、そうたくさん入れてもどうかという考えであつたのでありますが、実際農家にこれを試験いたしましたところ、非常に広範囲に試験いたしたのでありますが、その結果は非常によろしゆうございまして、日本農業の一つの革命に相なるのではないかといわれておるようなわけでありまして、決して今までの日本内地の農薬製造業者を保護するためにそういうことをやつたのではないのであります。そんなけちな考えよりも、食糧を増産することが重大でありますので、来年度は思い切つてこれを入れると同時に、日本の企業家が特許を買つてくれて、日本で製造してくれれば、私は農民のために非常に喜ぶべきことであろうと考えております。
  208. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これで満足をいたしますが、第二回の輸入計画かあるやに聞いておりますので、来年を待たずして、本年の第二回の計画において、すみやかに今御答弁になつたようなことを、やつていただきたいということを希望を申し上げまして、終ります。
  209. 太田正孝

    太田委員長 二月九日に社会党の伊藤好道君から要求されました、各国の軍事力リストについては、政府から資料がないからできかねるとのことでございました。さよう御承知を願います。  今日はこの程度にいたし、明十三日と十四日とは、かねて御報告申し上げました通り公聴会を開きます。  明日は午前十時より開きます。本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十分散会