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1953-02-04 第15回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月四日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 中曽根康弘君    理事 川島 金次君 理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    北 れい吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       田子 一民君    塚原 俊郎君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       原 健三郎君    本間 俊一君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    井出一太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       古井 喜實君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    石井 繁丸君       河野  密君    西村 榮一君       松岡 駒吉君    稻村 順三君       和田 博雄君    福田 赳夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月三日  委員西尾末廣君、勝間田清一君及び横路節雄君  辞任につき、その補欠として松岡駒吉君、和田  博雄君及び成田知巳君が議長の指名で委員に選  任された。 同月四日  理事櫻内義雄君及び上林與市郎君の補欠として  中曽根康弘君及び成田知巳君が理事に当選し  た。     ————————————— 一月二十九日  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算 の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  公聴会開会承認要求の件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事櫻内義雄君及び上林與市郎君よりそれぞれ理事辞任の申出があります。これを許可することとし、その補欠は、先例によつて委員長が指名することに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 異議なしと認めます。よつてそのように決しました。それでは委員長は、中曽根康弘君及び成田知巳君を理事に指名いたします。
  4. 太田正孝

    太田委員長 次に公聴会開会についてお諮りいたします。去る一月二十九日当委員会に付託されました昭和二十八年度予算につきましては、国会法第五十一条によりまして、必ず公聴会を開くことになつております。つきましてはその開会に関する手続等については、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 太田正孝

    太田委員長 異議なしと認めます。よつてそのように決しました。  なお先刻の理事会におきまして、公聴会は一応来る二月十三日金曜日及び十四日土曜日の二日間にわたつて開くことを申合せをいたしましたので、そのように取運ぶことにいたします。御了承を願います。     —————————————
  6. 太田正孝

    太田委員長 これより日程によりまして昭和二十八年度一般会計予算昭和二十八年度特別会計予算及び昭和二十八年度政府関係機関予算の三案を一括議題として議事を進めます。まず政府提案理由説明を求めます。大蔵大臣向井忠晴君。
  7. 向井忠晴

    向井国務大臣 昭和二十八年度予算編成に関する基本方針並びに予算大綱につきましては、過日本会議において説明いたしましたが、予算委員会の御審議をお願いいたすにつきまして、あらためてその内容を御説明申し上げます。  まず歳出について申しますと、第一に、防衛支出金六百二十億円、保安庁経費八百三十億円、平和回復善後処理費百億円、連合国財産補償費百億円を計上いたしました。  防衛支出金は昨年締結せられました行政協定によつて日本側において負担すべきものとされた米軍の駐留に関連して支出を必要とする経費でありまして、その内訳米軍の役務及び需品の調達に充てるための米軍に対する交付金五百五十八億円、及び米軍の使用する施設及び区域の提供に必要な経費その他として六十二億円でございます。  保安庁につきましては毎年相当増員が行われて参りましたが、二十八年度においては、ほぼ現状を維持する方針であり、ただ船舶数増加等に伴い、警備官を二千七百人余、学校研究所等の要員として保安官警備官以外の職員を一千四百人余を増加するにとどめました。経費増加給与改善及び昨年増加した人員の維持費が平年度化するための増加のほか、装備施設充実をはかるためでございます。  以上防衛支出金保安庁経費との合計千四百五十億円は、安全保障諸費を含めた前年度のこの種経費千八百億円に比して、三百五十億円の減少となつております。  平和回復善後処理費は、連合国に対する賠償の支払い、対日援助費の返済その他対外債務支払い等平和回復の結果として必要を生ずる諸般の経費に充てることを予定いたしたものでございます。  連合国財産補償費は、連合国財産補償法の定めるところにより、前年と同じく百億円を計上したのであります。  第二に、経済力充実発展のための措置としてまず財政投融資の面におきまして、特に政府重要施策である電源の開発外航船舶建造中小企業及び農林漁業振興国鉄及び電信電話事業拡充等をはかつております。財政投融資計画については、総額三千五十五億円の投融資をいたすこととし、前年度に比して二百五十六億円を増加しております。  なお、二十八年度におきましては、外国為替資金等への一般会計からの繰入れ、すなわちいわゆるインヴエントリー・フアイナンスをとりやめるとともに、保有国債売却等による蓄積資金約六百億円の活用に配意いたしました。また日本国有鉄道日本電信電話公社建設資金調達のため、市中公募債二百二十億円を発行する道を開くとともに、新たに産業投資特別会計を設置し、三百億円の特別減税国債の発行を予定いたしております。  公共事業については千二十一億円を計上し、前年度に比し、百八十二億円を増加しており、治山治水、特に河川総合開発及び道路建設等の推進に意を用いたのであります。  次に食糧自給度の向上をはかるため、四百九十二億円を計上し、前年度に比し、九十億円を増加いたしました。  交通通信施設に関しては、国有鉄道電信電話の両公社における建設費を大幅に増加しております。また航空事業発展をはかるため、十億円を計上いたしました。  民生安定のための経費は、国民生活現状について見るに、衣食についてはおおむねその充足を見て来たのであるが、住宅についてはいまだ相当不足している点にかんがみ、民生安定施策の重点の一つを、住宅対策に置くことといたしました。すなわち公営住宅等建設については、前年度に比し、約五十億円を増額し、百二十五億円を計上し、住宅金融公庫に対する投融資百八十億円と合わせて、約十一万五千戸の建設を行う計画であります  また生活困窮者保護のための経費児童保護費国民健康保険等社会保険充実のための経費結核対策費及び失業対策費として合計六百七十八億円を計上し、前年度に比し、百十五億円を増額し、国民生活の安定を確保することといたしております。  次に懸案の旧軍人軍属及びその遺族に対する恩給の問題であります。これについては先般恩給法特例審議会建議があり、政府は慎重に検討を加えた結果、この建議の趣旨を尊重し、現在及び将来の財政負担を考慮して、あとう限りの措置を講ずることといたしました。なお恩給の対象とならない戦没者遺族戦傷病者及び未帰還者留守家族については、この際従来の援護措置を強化することとし、これらに要する経費として総額五百億円を計上した次第であります。  第四に、文教振興のための経費でありますが、まず義務教育に要する経費は、その全額国庫で負担する方針のもとに、九百二十億円を計上いたしました。この経費交付にあたつては、地方税制改正によつて都道府県間における財源の偏在が是正されるまでの暫定措置として、富裕な都道府県に対しては、これが交付を調整することといたしております。  教育施設につきましては、国立、公立、及び私立を通じて、その改善につき考慮を払い、特に六・三制実施のための校舎整備は、すでに相当充実を見たのでありますが、引続き四十三億円を計上して、一層の整備をはかり、危険校舎の改築、二部授業の解消等を行う計画であります。  その他育英事業産業教育振興科学研究費等にもそれぞれ増額し、教育学術振興をはかつております。  第五に、地方財政につきましては、義務教育費全額国庫負担とする方針といたしましたため、地方財政平衡交付金制度相当の変更が加えられることとなり、平衡交付金としは、八百億円を計上したのでありますが、義務教育費負担金とを合計いたしますと、前年度に比し、二百七十億円の増額となるのであります。  なお別に資金運用部による地方債引受けのわくを八百七十億円に拡張いたしました。地方財政につきましては、今後地方制度全般の問題とも関連して、根本的に検討を要すると認められますので、地方制度調査会審議等をまつて急速にこれが改善をはかりたい所存であります。  次に、歳入予算について申し上げます、歳入予算内訳は、租税及び印紙収入七千八十億円、日本専売公社益金千四百三十九億円、雑収入等六百三十億円、前年度剰余金受入れ四百五十六億円となつております。  租税及び印紙収入につきましては、最近の収入状況及び二十八年度における生産物価所得等の動向を予測して、その見積りの適正を期したのであります。なお酒税につきましては、相当減税を行う予定であります。今後生産物価ともに堅実な歩みを続け、国民所得も順調に増加するものと予想されますので、七千八十億円の租税及び印紙収入は、これを確保し得るものと考えております。  税制改正大綱につきましては、さきに財政演説の際申し述べたところであり、その詳細については政府委員をして説明いたさせます。  次に、日本専売公社益金につきましては、タバコの生産数量増加を見込みますとともに、従来の益金算定方式を改め、損益計算に基く益金を納付せしめることとして、千四百三十九億円を見込むことといたしました。  以上一般会計歳出及び歳入について申し上げましたが、次に、特別会計及び政府関係機関について申し上げますと、昭和二十八年度特別会計予算については、前年度まで存置しておりました解散団体財産収入金特別会計及び米国日援助物資等処理特別会計は廃止いたし一方新たに、木船再保険特別会計を設置することとし、また農林漁業資金融通特別会計を廃止して公社といたし、さらに米国対日援助見返資金特別会計を廃止して、新たに産業投資特別会計を設置いたしました。なお、輸出信用保険特別会計輸出保険特別会計に改めることといたしました。  次に、昭和二十八年度政府関係機関予算については、閉鎖機関整理委員会及び商船管理委員会が二十八年度には廃止され、他方新たに農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫が設置されることとなつております。  この農林漁業金融公庫は、前年度までの農林漁業資金融通特別会計にかわり、農林中央金庫その他の一般金融機関から融資を受けることの困難な農林漁業者に対し、事業資金の貸付を行うことを予定しております。  また、中小企業金融公庫は、中小企業振興重要性にかんがみ、従来の中小企業金融対策の欠陥を補うため、新たに設立されることとなつたもので、中小企業者が、市中金融機関から融資を受けることの困難な設備資金及び長期運転資金を供給することを目的とするものであります。  以上をもちまして、昭和二十八年度予算についての概要の説明といたす次第でございます。なお詳細につきましては、政府委員をして説明いたさせます。何とぞ御審議をお願いいたします。
  8. 太田正孝

    太田委員長 ただいま大蔵大臣説明にありました通り、補足的に政府委員説明を聞くことにいたします。  まず主計局長説明を求めます。河野一之君。
  9. 河野通一

    河野(一)政府委員 大蔵大臣の御説明につきまして補足的な御説明を申し上げます。お手元に「昭和二十八年度予算説明」というのが渡つておりますが、それにつきまして御説明申し上げます。  昭和二十八年度予算編成基本方針といいますか、あるいは特色と申しますか、こういうものをちよつとピツク・アツプして申し上げますと、まず歳入の面につきましては、第一に昨年実施いたしました所得税軽減臨時措置を平常化いたしたのでございます。この臨時措置は今年の三月をもつて終るのでございますが、それを平常化いたしておる。それとともに、法人税相続税及び酒税につきまして、軽減合理化措置をとつておる。有価証券の移転に対して取引税を創設いたしまして、譲渡所得税をやめたのであります。この税制改正内容につきましては、後ほど主税局長から詳細に御説明をお願いするわけであります。  第二には、財政によりまして積極的な投融資を行つたことであります。つまり今までのような総合予算収支均衡方式を多少緩和いたしまして、過去の蓄積資金を活用いたしまして、また特別減税国債を発行いたしまして、産業投資特別会計を設けております。蓄積資金につきましては、資金運用部におきまして、公債百八十億円、前年度からの繰越し百二十八億円、見返り資金において百九十七億円の公債売却を行つておるのであります。  それから次は経費の配分の問題でございますが、インヴエントリー・フアイナンスという方式をとりやめまして、また保安庁経費及び防衛支出金を削減いたしまして、この財源経済力充実、つまり公共事業食糧増産対策といつたような経済力充実の面、あるいは住宅社会保障あるいは旧軍人等恩給復活といつた民生の安定の経費文教振興経費にこれをさいたことでございます。  以上のような基本方針に基きますとともに、既定経費については極力節減をいたしました。すなわち補正予算のときには旅費の一割、庁費の五分を節約いたしたのでありますが、それはそのまま踏襲いたしまして、その他既定経費については極力節約いたしまして、財政規模をできるだけ圧縮いたしたことでございます。  まず財政規模の点でございますが、この予算説明の第一ぺージの右の欄に、一般会計歳出予算国民所得との割合というのが表になつておるのでありますが、二十八年度一般会計予算九千六百五億円は、国民所得五兆六千七百四十億円に対して一六・九%、大体一七%でありまして、前年度の一七・三%より多少下まわつておるが、大体同一程度であります。それから一般会計以外の投融資の額を一般会計に加えまして、いわば純計と申しますか、そういうようなかつこうにいたしましても、次の欄にございますように、国民所得に対する割合は二割一分八厘で、前年度の二割一分七厘と大体かわりないことになつておるのでございます。  次に先ほど申し上げました基本方針一つ内容でありますところの財政による投融資計画でありますが、これは第四ページをごらんを願います。非常に複雑な表でございますが、括弧内の数字は前年度当該額であります。ミスプリントがございまして、これは正誤表でお手元に参つておると思いますが、四ページの資金需要総額自己資金等公募地方債——ABCとありますが、Cの欄の百七十億とある数字を百八十億と御訂正を願います。それから資金需要総額の欄でございますが、そこのその他の地方債、千四十億とありますのを千五十億と御訂正を願います。それから一番下の合計欄の四千五百十四億というのを四千五百二十四億と御訂正を願います。続いて御説明を申し上げます。  需要資金総額の欄は、その年間において必要とする資金需要総額でありまして、これが以下の各欄によりまして供給されるわけであります。自己資金等と申しますのは、自分の会計における回収金でありますとか、減価償却積立金でありますとか、そういうものでまかなわれる額であります。それから地方債については一般公募であります。差引、財政資金需要というところをごらん願いたいのでありますが、つまり財政によりまして追加投資をいたす金額がその欄に出ておるわけであります。つまり一般会計特別会計を通じまして、本二十八年度において三千五十五億円の追加投資をいたします。前年のこれに該当いたします金額は二千七百九十九億円であります。  そのうち次の財政投資として括弧をいたした数字のところをごらんいただきますと、これがいかようにわかれるかということでございますが、まず一般財政プロパーのものといたしましては、一般会計で二百八十億円の投資をいたします。これがここに書いてありますような項目にわかれておるわけであります。この二百八十億円という数字は、次の一般会計歳出の五ぺージのところに出資及び投資として二百三十五億円という数字が出ておりまして、そこのところと四十五億円ほどの違いがございますが、これは備考の一に書いてありますように、電信電話公社に対する投資二十億円は、国際電信電話株式会社が今年の四月から独立いたしまして、その株式を一般会計が取得いたしまして、これを売却いたすのでありますが、それをそのまま電電公社交付してやる分がありまして、これは雑件に計上されております。それから特定道路、いわゆる有料道路であります。前年度預金部から出しておつたのでありますが、二十八年度一般会計からその資金を出します。これは公共事業の方の道路のところに入つておりますので、その関係で次の表と一致しないことを御了承願いたいと思います。  資金運用部におきまして千六百七十億円でございますが、先ほど申し上げましたように、この資金内容は大体保有国債売却が百八十一億円、前年度からの繰越しを食う関係が百二十八億円、それから原資の増が千三百六十一億円ということに相なります。簡保の資金は前年度原資の増の二分の一ということになつております。  それから産業投資特別会計でございますが、これが七百億円、これは見返り資金の資産を引継ぎます分と特別減税国債三百億円を発行いたしまして、その収入をこの会計において受入れ、開発銀行輸出銀行に対する投資を行うものでございます。  特別減税国債でございますが、これは二十八ぺージのところをごらんいただきたいと思います。二段目の辺に書いてございますが、金利は大体四分、償還期限は最高五年で三年すえ置き、二箇年償還というような考え方にいたしております。減税の率は法人の場合は買入額の二一%、個人の場合は二五%ということにいたしております。百万円の減税国債を買うということにいたしますと、法人の場合は二十一万円減税になり、個人の場合は二十五万円減税になる。利率はそこに書きましたように法人が年一割五厘、個人が一割二分五厘程度になるのであります。  また前のところに帰つていただきまして、以上のような財政から直接投資するもののほかに、国鉄及び電電におきまして公募事業債を出すことになつております。これにつきましては政府元利支払いの保証をいたすつもりであります。  次に防衛支出金及び保安庁経費の問題でございますが、これは七ページをごらん願いたいと思います。前年度防衛支出金は六百五十億円でございますが、これが六百二十億円に減少いたしております。このうち米国軍交付いたします交付金が五百五十八億円でありまして、これは行政協定第二十五条第二項(b)の年額一億五千五百万ドルという額に相当するわけでございます。前年度におきましてはその方針年額で組んだのでありますが、平和条約の発効が四月二十九日になりまして日が切れました関係で、この金額が五百七億円ということになつております。いわゆる施設等提供費明年度六十二億円、前年度は百四十三億円ということで相当減つておりますが、これは前年度は接収いたしました土地、建物の解除の補償費が一時に多額に上つたことが一点、それから明年度におきましては安全保障費営舎等を建築いたします関係で、民間等の接収のものがさらに解除せられ、また縮小するというような関係で、この程度金額で足りる見込みでございます。但し本年度の百四十三億円につきましては、補償の基準がようやくきまりましたが、なかなか具体的な補償算定その他に手間取りまして、このうち幾分は明年度に繰越しに相なるかと存じております。  安全保障費につきましては、明年度はこういう経費の計上はございません。  保安庁経費でございますが、保安庁経費は前年度は五百九十一億五千百万円、非常に端数のついた金でございますが、これはベース・アツプの関係でございまして、明年度は八百三十億円ということに相なつております。その経費の積算といたしましては、保安隊の方の保安官定員の十一万人は全然ふやしてございません。ただ海上の方の警備官につきましては、船がさらに八隻よけいに貸与に相なりましたこと、それから一隻当りの定員につきまして、その設備等状況から、日本人の体格等から考えまして、多少増員を要するものがございますので、そういう関係で人をふやしております。また学校研修所物品調達、そういつたようなところの職員で、賃金支弁でまかなわれておつたようなものを定員に組みかえております。保安庁関係経費一般の維持的な経費で申しますと、大体四百五十億円程度に相なります。これは保安庁の本部の経費約六億円でございますが、それを合計してございます。それに対しまして、三百八十億円ほどのものが増加いたしているのでございますが、これが施設装備充実強化に充てられているのでございます。三百八十億円のうち、保安隊の系統といたしましては大体二百三十億円、それは装備品のストツクでございますとか、燃料貯蔵、こういつたものが約六十億円、それからこういつた貯蔵のものの倉庫二十六億円、自動車の修理工場、それから病院車庫、北海道における車両の車庫、現在野積みなつておりますが、そういつたものが四十億円、それから教育訓練施設充実といたしまして演習場充実でありますとか、あるいは学校の新設というようなもので三十八億円、ヘリコプター十二機、軽飛行機五十機、この経費が十七億円、その他官舎、庁舎、営舎内の道路施設といつたようなことで四十五億円ということに相なつております。警備隊の方におきましては警備船建造が百五億円、掃海船建造が十七億円、補給工作船建造が八億円、軽飛行機五十機七億円、雑船一億円、港湾の基地整備四億円、燃料タンク通信施設病院官舎等四億円がおもなる内容に相なつております。  次は経済力充実の問題といたしましての公共事業及び食糧増産対策でございます。第五ぺージの六の公共事業に載つておりますが、河川、砂防、山林、道路等一般的公共事業災害復旧を合せまして千二十億円で、前年度に比較いたしまして百八十二億円を増加いたしております。その中で最も著しいのが河川六十億円、これは河川総合開発のための経費増加がおもなるものでございます。河川総合開発といたしまして六十七億円を計上いたしております。前年に比較いたしまして、その関係で三十二億円ほど増加いたしております。詳細は八ページ以下にしるしてございます。  道路につきましても七十九億円という画期的な増加をいたしておりますが、このうち二十五億円は先ほど申し上げました特定道路整備会計に繰入れる分でございます。  食糧増産対策につきましては四百九十二億円でございまして、前年度に比較いたしまして八十九億円、約九十億円を増加いたしているのでございます。土地改良、開拓等に重点を置きまして、開拓につきましては八千戸新規入植ということで計算をいたしております。前年度は七千戸でございます。土地改良及び開拓事業による米麦の増産数量は、玄米換算で大体百万石というように推定いたされます。食糧増産その他の経費と申しますのは、耕種の改善あるいは病虫害の防除、耕土培養、緑肥作物の奨励といつたようなことに相なります。  その次は旧軍人恩給、遺家族、留守宅の問題でございますが、軍人恩給の問題につきましては慎重に検討を加えまして、現在及び将来の財政の許す限度において、これを復活することを考えたのでございますが、大体その趣旨は、さきに建議になりました恩給特例審議会の案を大体踏襲をいたすことにいたしております。但し財源関係もございまして、その軍人恩給の実施を四月からにいたしております。また単価につきましても——単価と申しますか、仮定俸給についてでございますが、軍人恩給審議会におきましては、仮定俸給を大体昨年の十月の一万円ベースにとつておられたのでございましたが、四級程度引下げてこれを実施することにいたしております。軍人恩給関係経費が四百五十億円、それから遺家族の関係が二十八億円、軍人恩給はいわゆる軍人軍属という恩給のあるものについての問題でありまして、雇用人等につきましては、たとい軍人恩給が復活することに相なりましてもこれは適用がないので、従来の遺家族援護法が適用になるのでございます。それが二十八億円、その他未復員者その他の留守宅の関係が二十二億円ということで、合計して五百億円ということに相なつております。これは多少内訳について申し上げますならば、この軍人の恩給につきましては加算をやめるという方針にいたしております。恩給特別審議会の案も大体そのようでございます。ある程度の階級差というものは、恩給制度としてこれを復活する以上、やむを得ないというように考えております。この人員につきましては十四ページの右下の欄にございます。普通恩給と申しますものは下士官でありますと十二年、将校でありますと十三年で恩給がつくわけでございますが、加算はもちろんとりますが、これが二十二万二千人、その次の増加恩給と申しますのは、これがいわゆる傷痍軍人に対するものでございまして、これは傷病の種類によりまして、また将校、下士官等の階級によりまして差がございますが、最高を下士官のところでとつてみますと、特別項症と申しまして、両眼失明せられました方、あるいは両手両足のない方につきましては、下士官の場合で行きますと、十八万二千円程度に相なるわけであります。増加恩給の普通の場合は第四項症程度と申しまして、手首から先のない方の程度が、全体の軍人の平均程度なつておりますから、その辺のところでは四万三千円程度になります。もちろんこれに対して普通恩給が併給される次第でございます。公務扶助料は、公務によつて戦死されました方に対しての扶助料でございまして、これは人数にいたしまして百五十万四千人、金額においても一番多額を占めるのでございます。公務扶助料の大体の平均は伍長くらいのところに相なりまして、普通の公務扶助料は、細目についてはまた検討を要する点があるのでございますが、大体二万八千円程度に相なると思います。これに扶養加給がつきまして、未亡人、遺児一人という家庭が大体の平均でありまして、一人につきまして、四千八百円の扶養加給がつくのであります。二人ですと九千六百円ですから三万七千円余りに相なると思つております。普通扶助料は、普通恩給がついておられる方がなくなられた場合の扶助料であります。これは普通恩給の二分の一ということに相なつております。合計いたしまして、支給人員としては百九十二万四千人、年金として九箇月分として四百三十三億円でございますので、平年度化いたしますと、五百七十億円ということに相なる次第でございます。  次に一時金といたしまして傷病賜金というのがあるのでございまして、これは傷病の程度増加恩給程度に至らない軽度の障害の方に、一時金として差上げるわけであります。それから一時恩給と申しますのは、恩給年限に達しないで、つまり十二年あるいは十三年に達しないでやめられた方で、七年以上の勤務をせられた方に対して、一年について一箇月というような割合で一時金が行くわけでございます。これは財政関係もございまして、三年くらいの分割払いにいたしたいというふうに考えております。ここに十五億円という金が計上せられておるのでありますが、この総額は大体百億程度になります。もちろん裁定につきましては、遺家族を最優先的に裁定をいたさねばなりませんので、そういつた関係で、こういつた方面は多少遅れるということもあると存じます。また留守家族、遺家族援護が、結局軍人軍属の方につきましては、軍人恩給の方に乗りかわるわけでありますが、裁定の関係で多少遅れるということも考慮いたされますので、まず遺家族援護法の方で金が行つて、後に軍人恩給の方で追給されるという向きも相当あろうと思つております。従つてこの軍人恩給、遺家族援護、留守家族援護が相互に融通して運用されるように、予算総則の方でお願いいたしたいと思つておるわけであります。  遺家族援護の内容につきましては、同じページの左の十七というところに書いてあるのでありますが、これはやはり軍人恩給復活に伴いまして、これとバランスをとつてきめなければならないものでございまして、障害年金につきましては、同じような方針増加恩給等にバランスをとりまして、最低二万四千円から十八万一千円、現行は二万四千円から九万円でありますが、上の方を相当上げることにいたしております。それから遺家族の年金でございますが、現在は妻が一万円、それから家族が五千円ということになつておるのでございますが、これを基本給に直しまして、月額二千百円ということに現在考えております。その結果遺族年金は二万五千二百円、ほかに扶養加給が五千円ということでありますので、妻及び子一人の、先ほど申し上げた標準世帯といたしましては、今まで一万五千円のものが三万二百円程度に相なります。未復員者の留守宅につきましても、これと同じような方針に基きまして、基本給現在一千円を二千百円ということにいたしております。この制度の運用につきましては、方針としてはきまつておるのでございますが、技術的にいろいろ検討を要する点もございまして、なお細目について関係当局において打合せ中であることを御了承をお願い申し上げる次第でございます。  次は食糧の問題でございますが、食糧の問題につきましては、今年の出来秋における米価と数量等は、なかなか現在から予測いたしかねるのでございます。食糧の問題につきましては、二十八ページの四というところ以下をごらん願いたいと思います。国内産米につきましては、前年通りの統制を継続するという前提に立つております。また国内産の麦につきましても、前年と同程度政府買上げを行う。前年度においてはてん菜糖を買つております。それから飼料について先般この会計において価格安定のために飼料の売買を政府が行うという法規が出ておりまして、そういう建前で進んでおります。  国内食糧につきましては、そこに買入れ数量がございますが、米につきましては四百二十三万七千五百トン、これは二千八百二十五万石ということに相なります。大麦は六万トン、裸麦九万トン、小麦三十六万一千トンということに相なつております。そのほかてん菜糖三万六千トン、澱粉一千百万貫ということを一応予定いたしております。  輸入につきましては、米が少し減つておりますが九十六万トン、大麦八十二万一千トン、小麦百五十七万三千トンでございまして、合計いたしまして三百三十五万四千トン、前年は三百五十一万四千トンで、多少減つておりますが、その一番減つておりますのは米でございまして、米が約十万トンほど減つておるのでございます。これは昨年の産米の供出状況が非常によく、米の需給も相当よろしゆうございますので、多少他国からの買入れを減らしてもよいと考えた次第でございます。  価格につきましてはその次に書いてございますが、前年におきましては、基本米価を七千五百円といたしまして、これに超過供出奨励金二千五百円ないし三千円をつけたのでございますが、これを全部一本化して平均価格にいたしますと、七千七百九十二円ということで、これに前年と同額の早場米奨励金八十一億一千九百万円を計上いたしておるのであります。これを全部平均いたしますと八千百円程度に相なります。麦につきましては、この価格を前年と動かしておりません。     〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕  輸入の価格でございますが、次に掲げましたように米は二百十三ドル、大麦は九十二ドル、小麦は九十四ドルということで、価格補給金もこの数量及び価格の基礎のもとに計算いたして、三百八十億円が三百二十億円に減少いたしておる次第でございます。消費者価格については動かしておりません。麦につきましては、これは現在統制がないので公定価格はもちろんございませんが、原麦を払い下げる場合における想定末端価格は多少上つております。これは今回麦をすえ置きましたが、一月から米価が上つたので、米価比率の点から考えまして、多少末端価格が上つてもやむを得ないのではないか、またその程度のものならば、これも実際のマージンいかんの問題にもなりますが、大した影響はないのではないかと考えている次第でございます。次に、民生安定の当面の一番大きな問題は住宅であろうと思うのでありますが、住宅の問題につきましては今回の予算においては特に意を用いた次第でございまして、これは十一ページの左の欄をごらん願いたいと存じます。一般会計自体におきましては約五十億円の予算増加、つまり公営住宅前年二万五千戸を五万戸にふやしておるのでございますが、住宅公庫その他、全体を通じまして住宅経費相当増加いたしております。そこにございますように、二十八年度におきましてはこれらの一般会計特別会計及び住宅公庫全体を通じまして十一万四千五百六十戸、三百三十億円、前年は八万三千三十二戸、二百八十一億円ということでございまして、画期的な増加と申し上げることができると存じます。  生活困窮者保護、国民健康保険、社会保険、結核対策というような経費についても、いずれも増加いたしておりまして、これらをいわゆる社会保障経費と申しますならば、この経費が六百七十八億円、前年より百十五億円ふえておるのでございます。その数字は三ぺージをごらん願いたいと思います。三ページの左の方の欄にこういつた経費の額がございます。  文教経費についても相当ふえておるのでございまして、これはもちろん義務教育費国庫負担といたしました関係が一番大きな原因ではございますが、これを除きましても全面的に相当ふえている次第でございます。その他細部の点についてはいろいろございますが、大体大蔵大臣の御説明に尽きておりますので、その説明に譲らせていただくことにいたします。  特別会計におきまして……。     〔中曽根委員「その前に義務教育費負担の関係をもう少し詳細に聞かせてください。」と呼ぶ〕
  10. 小坂善太郎

    ○小坂委員長代理 どうぞそうしてください。
  11. 河野通一

    河野(一)政府委員 義務教育費国庫負担につきましては、これはそういう方針のもとに近い将来におきまして税制改正をいたすことになつておるのでありますが、当面二十八年度の問題といたしましては、教員の給与については定員定額、かつ富裕な——富裕と申しますと語弊があるかも存じませんが、いわゆる平衡交付金をもらわないような団体にはこれを交付しない、あるいはこれを調整して交付するという建前でございます。九百二十億円のうち大体給与費が九百一億円でありましたか、教材費が十九億円程度であつたかと思いますが、教材費についても定額を負担するという建前で考えております。  次は特別会計でございますが、特別会計につきましては、二十八年度におきまして、これは二十六ページをごらん願いたいのでありますが、解散団体財産収入金、それから見返り資金農林漁業資金融通、米国対日援助物資等処理、この四つの特別会計が廃止されており、先ほど申し上げた産業投資特別会計、それから木船再保険特別会計が新設せられることになつております。従つてその会計の数は三十二ということになつております。それから輸出信用保険を輸出保険と名前を改めておりますが、今回新たに輸出手形保険という制度を設けました関係上、従来の名前がふさわしくないので、これをかえておるのでございます。  特別会計の問題としては外為が一番大きな問題でありますが、国際収支の見通しにつきましては、二十七ページの左の欄にこれを書いてございます。受取り二十一億八千八百万ドル、支払い二十一億四千三百万ドル、四千五百万ドルの受取り超過という一応の見通しでございます。最近におきまする外貨の保有状況及び資本の内容につきましては、右のぺージに書いてございます。十一億三千万ドルというのが最近における外貨保有の実績でございます。  それから政府関係機関についてでございます。これは三十二ページでありますが、政府関係機関は前年度閉鎖機関整理委員会商船管理委員会というのが廃止されまして、新たに農林漁業金融公庫中小企業金融公庫が設置されることになつております。農林漁業金融公庫は前年までの農林漁業金融特別会計、これを公社式に改編いたすことに相なつておるのであります。中小企業金融公庫は新たに設けられるものでございまして、前年度補正予算で計上いたしました二十億円と合せて百五億円の資本金でスタートをいたします。     〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕  国鉄については特に申し上げることはございませんが、電信電話公社につきましては、電話料金を平均一割程度引上げることにいたしております。そして老朽施設の改廃、とりかえ、近代化といつたようなことのために全額を充てておるわけでございます。  以上大体御説明申し上げました次第でございます。また御質問によりましてお答えを申し上げることにいたしたいと思います。
  12. 太田正孝

    太田委員長 次に主税局長渡辺喜久造君の説明を求めます。
  13. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 大蔵大臣及び主計局長説明を補足いたしまして私の方で担当しております租税及び印紙収入予算の見積り、及びこれの基礎になつております税制改正の案の大綱について、御説明を申し上げたいと思います。  お手元に二つの資料を御配付申し上げてあるはずでございます。一つは  「昭和二十八年度租税及び印紙収入予算説明」と、もう一つは「昭和二十八年度税制改正の要綱」でありますが、説明の方をお開き願いますと、二ページに一応各税の見積りの内訳が書いてございます。二十八年度に見積つております租税及び印紙収入総額はそこの(D)の欄にございますが、七千八十億円であります。この数字は、(B)の欄の二十七年度補正予算の額六千八百五十三億円に比べますと、二百二十七億円の増加なつております。但しこれを(C)の欄の現行法による収入見込額八千九十億円に比べますと、千九億円の減になつております。もつともこのうちには、備考に書いてありますように、六十七億円は特別減税国債による減収の見込みでございます。なおついでにちよつと補足的に申し上げさせていただきたいと思いますが、この場合、現行法による収入見込額と申しておりますのは、そごの備考の(1)に書いてありますように、臨時特例法及び超過供出の免税関係がありましたが、ああいう今議会ですでに成立しました分も、まだ実施されない場合という意味の見込みを現行法の見込額として含んでおります。従いまして現行法によつてこの予算に見積つております見積額は七千八十億円でありますが、これが大体所得とかいろいろな関係からしまして、どういうようになつておるかという点につきましては、うしろの方に表が出ておりますのでごらん願いたいと思います。  三十八ページをごらん願いたいと思いますが、そこに直接税、間接税その他の比率の関係が出ております。これは今申し上げました租税及び印紙収入のほかにたばこの専売益金を入れまして、その上で直接税、間接税、その他の比率がどうなつているか、改正法によります比率は、直接税が五二・一%、間接税が四五・三%、その他が二・六%となります。これは二十七年度の場合に比べまして直接税において減じ、間接税においてある程度ふえております。最近におきます減税の主たる対象が所得税その他の直接税になつておりますことと、経済が大分安定いたしまして間接税の対象になつております消費がふえたということが、こういう結果をもたらしているのではないかと思います。  なお租税国民所得に対する負担の関係につきましては、その次の三十九ページにございます。二十八年度についてみますと、国税だけでは一五%、前年の一五・二%に比べますとやや減税なつております。地方税を入れまして二〇・四%、これも前年の二〇・六%と比べましてやや減になつております。  話の順序といたしまして、今度の予算の見積りの基礎になつております税制改正につきまして、どういうことを考えているかにつきまして簡単に御説明申し上げたいと思います。「昭和二十八年度税制改正の要綱」をごらんいただきまして、これについて逐次御説明を申し上げて行きたいと思います。今度の税制改正は、その中心は、「昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律」によつてすでに実施されております。すなわち臨時的に実施されております所得税の軽減措置を平常化するということが一番中心でございます。そのほかに相続税につきまして負担の軽減をしよう。それから酒税について税率の引下げをしよう。ただしかし酒税の税率引下げにつきましては、後に申し上げますように、価格の引下げによりまして相当の消費増を期待いたしておりますので、これによる収入の変化はきわめてわずかなものでございます。その他租税負担の調整、課税の簡素化、資本の蓄積に資する措置というものを幾つか加えまして、本年度税制改正を行つて行きたいと存じているわけであります。  まず所得税について申し上げますと、臨時特例法によつて実施した控除及び税率の改正を平常化するということがまず第一でございます。1に書いてございます(イ)の基礎控除を五万円から六万円に引上げる。扶養控除の最初の一人につきまして、三万五千円に引上げる。勤労控除の最高限度額を四万五千円とする。社会保険料を控除する。また次の新しい税率をつくる等のことは、いずれも臨時特例法ですでに実施済みでございます。新しく顔を出しておりますのは、三百万円超、百分の六十、五百万円超、百分の六十五というこの二つの面でございます。これは冒頭に書いてございますように、片方で富裕税を廃止いたしますので、それと見合いまして高額所得者の税率をある程度引上げたいと考えているわけでございます。  (2)以下は臨時特例法以外のものでございます。(2)は、生命保険料の控除限度額を四千円から八千円に引上げる。これは資本蓄積の一端と考えております。  (3)は、医療費控除の問題でございます。現行制度でございますと、医療費の額が総所得の額の一割を越えた場合に初めて医療費控除ができる。同時にその控除できる限度額は十万円ということになつております。それでは実効が少いと思われますので、今度それを広げまして、医療費が総所得の百分の五を越えた場合には医療費控除ができる。同時に控除限度額は十五万円ということで、控除できる場合も広げましたし、限度額も引上げようと考えております。  (4)は、青色申告の専従者控除とわれわれは申しておりますが、営業、農業等におきまして、家族の人がその仕事に従事している場合の控除でございます。現在は五万円になつておりますが、大体この金額は基礎控除の額と合せてございますので、基礎控除を上げる場合に六万円になります。また親族の範囲を、現在は高等学校卒業者以上を頭におきまして、十八歳以上となつておりますが、これを中学卒業者以上ということにいたして、十五歳以上に改めたい。  それから退職所得につきましては、控除額を現行の十五万円から二十万円に上げよう。現在は退職所得につきましては、まず退職金から十五万円差引きまして、残つた金額をほかの所得とは別にしまして、半額にして税率を適用しております。今度は二十万円を差引きまして他の所得と別にして半額にして税率を適用する。半額にして税率を適用することは従来と同じように考えております。  有価証券の譲渡所得に対する所得税はこの際廃止しよう。  山林所得、不動産譲渡所得等の一時的所得の課税につきまして、軽減簡素化しようということを考えております。山林所得につきましては、現在はシヤウプの勧告によりまして変動所得の一つなつておりまして、かなり複雑な計算になつております。りくつの上からはいいことでありますが、何と申しましても実行上非常に難点がございまして、いろいろな批判を受けていたわけであります。今回考えておりますのは、山林所得をいわゆる五分五乗と申しておりますが、山林所得が百万円ありますと、それを五分した二十万円、この二十万円をほかの所得と合算いたしまして税率を適用して税額を出す。同時に残りの五分の四につきましては、前の税額対所得の割合で平均税率ができておりまして、その平均税率を五分の四にかけましたその数字を出して、両者の合計額によるという考え方であります。なお山林所得、不動産譲渡所得等の一時所得を合算しまして、現在十万円の控除を行つております。少額のものに課税しないという趣旨だと思いますが、今度は山林所得につきましては、これを山林所得だけについて十五万円の控除をするということを考えております。総額の山林所得に対する負担を考えての上であります。それから不動産の譲渡所得及びその他の一時所得につきましては、この両方を合算した上でもつて現在の控除十万円を十五万円にしよう。それからなおこの分も現在は変動所得になつておりますが、これを半額にいたして、それを他の所得と合算して税率を適用して税額を出して行く、こういうようなことにしたいと思つております。  それからもう一つ山林所得につきましては、あとで御説明申し上げますが、第三次の再評価を行うことになつておりますので、この点で相当の負担の軽減があるものと思つております。なおもう一つ山林所得で一番議論の多い問題は、財産税当時の評価額を求めることがなかなか——たとえ間伐などの場合におきまして特にそうなんですが、むずかしいということなんでありますが、それを考えまして、いわば標準経費といいますか、そういうようなものを見積りまして、収入金額の何割を経費と見積つて所得を算定してもよろしい、といつたような措置措置法で講ずることを考えて、現在研究しております。もちろんその措置によらないで、本来の姿でもつて山林所得を計算することも、納税者の御自由であるというように考えて行きたいと思つております。  それから(8)の源泉選択の税率でございますが、いろいろ議論がございます。片方では所得税の最高税率を上げる時期でございますので、むしろ現行より上げるべきではないかという議論があります。貯蓄奨励の関係からいたしますと、もつと下げるべきではないかという議論もございます。いろいろ勘案いたしまして、現行の五十を四十に引下げるということを考えております。  それから法人税でございますが、法人税につきましては、税率を動かすことは現在考えておりません。他の方法によりまして、資本蓄積等に資することをできるだけ考えて行きたい。  第一は、企業合理化促進法及び租税特別措置法による特別償却の問題でございます。企業合理化促進法によりましては、業種、機械の種類等を限定いたしまして、所得の当初の年度に五割、特別な償却をしてよろしい。それから租税特別措置法につきましては、三年間五割増しの特別償却をしてよろしいという制度になつております。この業種の範囲、機械等の範囲を広げて行きたいと思つております。これは政令にそのことが譲られておりますので、政令で直して行くことになると思つております。  それから貸倒れ準備金及び価格変動準備金の制度の拡張改善でございますが、貸倒れ準備金につきましては、現在の制度といたしましては、期末の貸付金の一定割合と、それから利益金の一定割合とのいずれか少い方を毎期積立てることができる。但し総額について一定の限度があります。その場合における貸付金の一定割合というのを、率をかえて行きたい。現在は卸小売等が千分の十、製造金融が千分の七、その他が千分の五になつておりますが、千分の十のものを千分の二十に引上げ、七のものを十に引上げ、五のものを七に引上げる等のことを考えております。それから価格変動準備金制、度につきましては、いろいろ検討を加えておりますが、現在きまつておりますところでは、国債を価格変動準備金の対象に入れようというのが一つ、それから四期にわたりまして順次積立てる制度になつておりますが、もう大分たちましたので、その制限を撤廃しようということを考えております。  (3)は、貿易振興の問題と結びつきまして考えた問題でございますが、輸出契約取消準備金について免税する制度をつくろう。現在考えておりますのは貿易商社の毎期の輸出契約の金額の一定割合と、利益金の一定割合とのいずれか少い方を積立ててよろしい、大体貸倒れ準備金制度と同じような考え方を入れまして、一定の制限をつくつて行きたいと思つております。それから海外の支店の設置につきましては、その設置費の特別償却を認める、大体企業合理化促進法の例にならいまして、半額をその年に償却してもよろしいということを考えて行きたいと思つております。  なおここには書いてございませんが、やはりこれも貿易振興の一環として多少役立ち得ると思いますが、現在の制度でございますと、二重課税になつております。たとえばアメリカに持つておる支店でアメリカの税金を納めますと、これは経費に認めますが、税金はやはりそれをも含めてかかる。これは租税協定で別途話はしておりますが、それとは離れまして、アメリカで納めた税金につきましては、日本で納める法人税からこれを差引く制度を考えて行こう、多少こまかい制限がつきますが、そういうことを考えて行こうと思つております。  (1)の、交際費、機密費につきまして一定の限度額を越えるときは、超過額の二分の一を損金に算入しないものとする。税法でいろいろ資本蓄積の措置を講じておりますが、片方で交際費、機密費等が算入されることになりますと、せつかくの資本蓄積の措置も意味ないじやないかというような考え方から、こういう制度が一応考えられたものと思います。交際費、機密費等の範囲につきましては、一応法律で書くつもりでおります。なお一定限度につきましては、業種によりまして非常に差別がございますので、今せつかく資料を集めて研究しております。大体の考え方といたしましては、資本金の一定割合、利益の一定割合といつたようなものを一応の基準にし、さらに取引金額の一定割合というものを基準にしまして、大きく業種別に制限をつくる必要があろうと思つております。ただどう制限をつくりましても、正確性に一応の限度がありますので、超過額の二分の一ということで、全額を損金に算入しないということは避けたわけであります。  なお個人有価証券譲渡所得税の課税が廃止されますので、清算所得に対して課税をしよう。清算所得の制度は昔やつてつたのであります。会社が解散いたしましたときの資本金を越ゆる剰余金の分配につきまして、個人の方で課税することも考えられますが、なかなか複雑な点もございますので、法人のところで課税しようというつもりで、清算所得の制度を昔のような姿においてつくることを考えております。  富裕税につきましては二十八年分から廃止します。  相続税につきましては、従来はシヤウプ勧告によつてできておりまして、われわれは、累積課税制度と呼んでおりますが、人の一生を通じまして、その人が贈与を受け相続をしたその金額を、順次毎年積重ね、それによりまして最初の三十万円になるまでは課税がありませんが、その後におきましては順次課税がある、こういう制度が現在の制度であります。しかし長くなりますと、税務署の方におきましても、なかなか記録が残りかねる点があります。特に納税者が住居を転々したような場合におきまして、その点が痛感されます。納税者におかれましてもなかなか困難があろうと思つております。そのような点からいろいろ批判があつたわけであります。今度これを改めまして、取得者課税の制度はそのままにとつております。従いまして遺産税の制度というわけではありません。遺産が千万円ありましても、五人の方が相続すれば、その二百万円ずつに課税がされて行く。昔の相続税ですと、その場合は一千万円を課税の対象としたわけでありますが、今度は取得者に対して課税する。その場合におきまして、相続及び包括遺贈につきましてはその都度、贈与及び特定遺贈につきましては一年分を合算して課税して行こう。  基礎控除の額は現在の三十万円を五十万円に引上げる。贈与税につきましては、現在は相続税と合せて控除が行われておりますから、贈与税だけの控除はございません。今度はこれにつきましては、総額贈与に課税しないという趣旨から十万円の控除をつくりたい。死亡保険金及び退職金に対する控除も三十万円に引上げる。退職金につきましては、生前に退職金をもらうことになりますと、先ほど出ました退職所得の所得税課税になります。在職中になくなられまして、遺族の方が退職金をもらう場合におきましては、この規定の適用を受けるわけでございます。相続税の税率は、最高の一億円ちようど百分の七十の税率はそのままにすえ置きますが、下の方は少し高過ぎる面もございますので、これを五くらいずつ引下げて行きたい。ただ贈与税につきましては、どこの国でも同じ傾向のようでございますが、相続税に対する補完税という趣旨が多分にございますので、相続税よりも五くらいずつ上つたくらいの税率、大体現行の税率をそのまま使つてつたらどうかという案になつております。  それから相続税の延納でございますが、現在は一時に金銭をもつて納付することが困難と認められる場合においては、延納を認めるということになつておりますが、これを相続税額一万円以上の場合におきましては五年、但し相続財産の中に不動産が五割以上占めておる場合は五年ないし十年の延納を認めて行こう、但し一回の年賦的なものは一年一万円を下らないということで考えて行つだらどうかと考えております。  酒の税につきましては、この三月一日から二割ないし三割の税率引下げをいたしたい。四月は花見酒が売れる時期でございまして、四月一日になりますと、ちようど酒が流通過程に入つて、卸売、小売にたくさん手持ちのできる時期でございますので、端境の三月一日を実施期間にしたいというふうに考えております。なお税率につきましては、収入予算説明のうしろの方に同じような要綱がついてございます。三十二ページでございますが、清酒二級、合成二級、しようちゆう二十五度、ビールというのが出ております。ただちよつとミス・プリントがございまして、しようちゆうの二十五度のところが一万二千七百円になつておりますが、これは一万四千三百円のミス・プリントでございます。現行が一万九千円になつておりますのは二万五百円のミス・プリントでございます。別途正誤表は差上げてございます。これによりまして、小売価格は大体そこにも書いてございますような金額になる見込みでございますが、実はこの小売価格につきましては、相当生産者、販売業者の間のコストの切下げを一応予定しております。まだこの方は多少検討の余地がございますので、この数字は多少動くかもしれないと思つております。もつとも動きましても、五円以上ということはないと思つております。  それから2の点でございますが、従来基本税と加算税——加算税という制度は、これは自由販売酒ができましたときに、配給酒は基本税だけで、自由販売酒は基本税のほかに加算税を加えた税額を課税するという制度で、自由販売酒ができた機会にできた制度でございますが、現在におきましては、配給酒がどちらかと申しますと、量的には非常にわずかになつてしまいましたので、同時に税率全体が大分低くなつておりますから、この部分は一応廃止いたしまして、一本の税率にしよう、但し配給酒の制度、指定販売業者の制度は向う一年間存置をする、こういうことを考えております。  砂糖消費税につきましては、税率を二割程度引上げる。但し鹿児島県とか高知県とかでできております黒糖いわゆる含密糖でありますが、これは現在四百円という非常に安い税率になつておりますが、これは現行のままですえ置くつもりであります。  物品税につきましては、貴石、貴金属製品等につきまして、現在製造課税をやつておりますが、これは物品税ができた当時は小売課税であつたのでありまして、終戦後一時製造課税に直りましたが、どうもやつてみますと施行上おもしろくない点が相当にありますので、これをこの際小売課税に改めたい。また同時に日用品の性格の強い物品につきましては、税率の軽減と負担の調整を行う。多少新しく負担をかけてよいものもありはしないかと思つておりますが、二十億くらいの減税財源を考えておりまして、内容については目下検討を続けております。  次に有価証券取引税でありますが、有価証券の譲渡所得に対する課税を廃止する機会におきまして、有価証券の移転に対して有価証券取引税を課税することにいたしたい。これは譲渡所得に対する代償とは考えておりませんが、この機会に課税したらどうか。但し公社債等につきましては、現在まだ市場等も十分に立つておりませんので、一年間を限つて課税しない。なお課税の方法といたしましては、大体昔の有価証券移転税の例にならうつもりでありますが、従来は譲り受け人を納税義務者としておつたが、今度は売渡し人を納税義務者とする。税率については、いろいろ議論がありまして目下検討いたしておりますが、しろうとの場合においては千分の二を考えております。それから有価証券業者が売る場合におきましては、ここには千分の一程度なつておりますが、大体一万分の八にしたらどうか。説明の方の資料には一応一万分の八で計算してあります。  それから次は第三次再評価であります。かつて第一次の再評価が行われ、第二次の再評価が行われましたが、第二次再評価はどちらかと申しますと、基準日もまた再評価の限度も第一次再評価と同じでありまして、ただ再評価のなし得る時期が第一次再評価の方で一応限られておりましたので、第一次再評価をやり得なかつた方に新しくやり得るような道を開いたのが第二次再評価であります。第三次再評価はそれと多少意味が違いまして、基準日も従来二十五年一月一日となつておりますのを、二十八年一月一日というように、三年ほど遅らせます。従いましてその後における値上り——土地などに顕著に現われておりますが、値上り等を考えまして、再評価限度額も引上げることにしたいと思つております。  なお法人税で再評価をする場合におきまして、あまり再評価の期日を短かくいたしますと、第二次再評価の必要がまた出て来ますので、といつて、あまり長くするのもいかがかと思われますので、今後二年間の間に一回限り行い得る。また再評価の税率につきましては、従来の通り百分の六とする。その他減価償却等につきましては大体従来の一次、二次の再評価のあのやり方が、納税者の方もなれておりますので、できるだけ従来のやり方をそのままやるような方向をとつて参りたいと思つております。  特別減税国債を購入した場合の減税の点につきましては、理財局長から御説明があると思いますが、一応租税関係といたしましては一定の減税をしよう、考え方としましては、法人の場合をお考えくださると一番簡単だと思いますが、購入額の二分の一に相当する所得に対する法人税を軽減する。百万円一応国債をお買いになりますと、百万円の半額五十万円に対する分の税金を課税しない。税額にしますと四割二分になつておりますから、五十万円の四割二分、百万円お買いになりますと、二十一万円税金が軽くなるわけであります。個人の方は累進税率になつておりますので、多少それと違つたやり方をとろうという意味におきまして、購入額の二割五分、法人に比べて個人の方が軽減が大きい、割がよいということに考えております。なお軽減を受けることができる購入額は、法人の場合には所得の百分の四十と考えております。所得が百万円あれば、購入限度額は四十万円、その二分の一の二十万円の所得に対する軽減を受けるわけでありまして、二十万円の四割二分、八万四千円ということになるわけであります。これは所得金額百万円に対する税額四十二万円に対しては二割にあたります。それと同じように、個人の場合におきましては、軽減額は所得税額の百分の二十を限度といたしております。  その他の問題といたしましては、収入印紙の不正使用の防止のための登録税法の改正。登録税法は古い税法でございまして従来その欠陥をあまり感じていなかつたのでありますが、最近不正使用等がありますと、どうも現在のままではぐあいが悪いというので、少し直す必要があろうというので行う改正であります。  それから間接税につきましては、従来は利子税をとつておりませんでしたが、直接税との見合いからしまして、やはり利子税をとつた方がいいのじやないかというので、利子税の制度をつくりたい。もつとも現在担保を提供して延納しておる場合がありますが、これは大体代金の回収の時期を見合つておりますので、この延納分につきましては利子税をとることは考えておりません。  なお(3)の方は、これは税制と直接の関係はございませんが、何と申しましても酒の税金が非常に高い。酒類の値段の中で占める酒の税金の額が非常に大きいことを考えまして、現行法ですと、酒税法の五十二条に政府相当大きな権限が与えられておりますが、これは現在の時期ではいささか行き過ぎのように思いますので、酒税法を全部改正いたしまして、五十二条のような規定は酒税法からははずしますが、それのかわりといたしまして、ある意味において酒類業者団体法とも申すべきものをつくりたい。独禁法の特別法になるものと思つております。現在政府がやつております公定価格は、これは物価統制令でやつているわけでございますが、できればこういう団体の協定価格に順次移して行きたいという意味においてこういう法律を考えております。  その他税法の規定について必要な整備をはかることを考えております。  大体以上が税制改正のおもな点でございますが、これを織り込みました歳入の見積りにつきまして、予算説明の方で簡単に申し上げたいと思つております。今の税制改正を行いますことによりまして、どれだけの減収が生ずるかという見積りにつきましては、三ページに事項別の増減収額が出してございますから、これをごらん願いたいと思います。  見積りの方法につきましては四ページ以下に詳細に書いてございますが、おもな税金につきましてだけ特に簡単な御説明を申し上げたいと思います。  まず所得税でございますが、源泉所得税につきましては、四ぺージ以下に説明が書いてございますが、一番大きなものは給与所得に対する源泉徴収の所得税でございます。昭和二十六年における支給人員及び支給金額を基礎といたしましてその後における支給人員の増加、雇用の増加、給与額の増加、こういうものを経済審議庁の資料とかいろいろなものも勘案しまして、大体二十八年における支給人員は二十六年に比べれば三%増、二十七年に比べれば二%増、給与額は二十六年に比べれぱ三二%増、二十七年に比べれば八・九%増、これによりまして総額におきましては二十七年度に対しまして一一・一%増という推計をいたしまして、各種の控除を差引いて一応数字を出しているわけでございます。まず現行法による平年度数字を出しまして、これから改正法による人員の減、課税額の減を差引きます。結局、改正法によりますと、課税見込人員は、六ページにございますが、七百八十万人に減る見込みでございます。  それから申告所得税につきましても、大体同じような計算方法でございますが、昭和二十六年の課税の実績をもとにしております。七ぺージにございます。これに生産物価増加割合、それから同上の相乗積、申告及び調査能率の増といつたようなものを見込みまして、総合的にどれだけ増加するか、これでもつて現行法による場合におきましての課税人員は三百五十万人になる。これに対しまして、九ページ以下にございますが、改正法におきましては、控除の引上げ等によりまして人員も減りまして、二百七十九万人、約二百八十万人の納税人員になる。営業が百十六万六千人、農業が九十八万三千人その他事業が十四万六千人、その他が四十九万六千人、こういう見積りをしております。これをもとにしまして、あと繰越決定額の分とか滞納の分の収入を見積りまして、結局七百五十九億円の歳入を見積つております。  法人税につきましては、十二ページ以下に詳細書いてございますが、調査課の所管の分と税務署の所管の分の申告の実績をもとにいたしまして、生産物価の相乗を出しまして——ここで生産とか物価が調査課所管の分と税務署所管の分と多少数字が違つておりますのは、税務署所管の分におきましては、どちらかと申しますと、物品販売業が多いといつたようなことで計数を少しかえておるわけであります。同時に最近の状況から見ますと、会社の所得率は相当減るだろうというので、所得率の減を一割見ております。これによりまして一応の申告見込みの利益額を出しまして、ほかに更正決定による増加額等、さらに法人成りの分あるいは滞納の収入、こういつたようなものを全部計算しまして、まず現行法を出しまして、その現行法による見積りから改正税法による減を一応見積りまして最終的に千七百六十七億という数字を見込んでいるわけでございます。  相続税につきましては、二十六年度の課税実績をもとにいたしまして、課税価格の増加を一応見込んでおります。土地とかそういうものにつきましてはその値上り、それから預金とか株式のようなものですと、全体の量の増加をも見込みまして、そうしますと相当ふえるわけでございますが、これをもとにしましていろいろな計算をして出してありますが、一応そこに書いてございますので、さらに御質問によりまして詳しく御説明申し上げたいと思つております。  富裕税は、現行法によりますと、二十七億円程度歳入が見積れるのでありますが、改正法によりますと、八億三千二百万円になるわけであります。これは残つている分だけでございます。  再評価税でございますが、再評価税は第一次、第二次の分が相当つております。これと第三次の分を一応改正法の案におきましては入れまして、総額を百二十七億と見積つてございます。  それから酒税につきましては、大体考え方としましては、今度米が九十四万石にふえましたので、それによる酒の増加を見込まれる。しかし現在相当量がふえておりますので、しようちゆう、合成酒につきましてはかなり供給過多の姿がございますので、清酒がふえれば、合成酒、しようちゆうの消費は、現在の価格のままだつた相当減るだろうということで、ふえただけすぐ増になりませんで、減を片方で見ております。そういうふうにしまして、現行法による場合の一応酒に使われる消費金額を出しまして、それが新しい価格によつてその消費金額程度はまず使われるだろう、量がそれに従つてふえます。そのほかに多少安くなるので、さらに消費も多少増加するだろう、これはわずかであります。それと密造酒の方がこちらの方へまわつて来るのじやないか、これらのことを考えて計算してございます。その総体の数量としましては、六百七十九万石を予定しております。なおこのほかに二十万石繰越しを見ておりますが、これは減税の前に買控えがあつて減税後にそれが出て来るものだというふうに考えております。  砂糖消費税につきましては、一応こまかい税率が出ておりますが、もう少し多少の手直しが必要じやないかと考えておりますが、総額としましてはこの程度確保できる、大体一〇%ないし一五%の消費増を見込みまして、増税は見込んでおりますが、増税による消費減は一応考えておりません。  それから揮発油税につきましては、最近の消費の状況から見まして、七%程度増加を考えております。  それから物品税につきましては、従価税と従量税の二つの種類にわけまして、従価税のものにつきましては、物価生産の見通しからしまして、あるいは消費の見通しからしまして、二割程度ふえるだろう、従量税の方につきましては一割程度ふえるだろうということを予想しまして計算ができております。  なお、有価証券取引税につきましては、これほ十月から十二月までの実績を一年間に引延ばすということで計算の基礎をつくつております。  ほかにこまかい税もございますが、一応の説明がついてございますので、時間もございませんようですから、この辺であとは御質問についてお答えしたいと思います。
  14. 太田正孝

    太田委員長 次に理財局長石田正君の説明を願います。
  15. 石田正

    ○石田政府委員 理財局関係の若干の数字につきましては、お手元に謄写刷りにいたしまして御配付申し上げてあるはずでございますが、それによりまして重点的に御説明を申し上げます。  まず第一に、資金運用部資金計画でございますが、これは第一表としまして第一ぺージに掲げてございますこの表の一番下の欄をごらん願いますると、二十七年度は二千五十五億円でありましたのに対しまして、二十八年度は千七百九十億円でございまして、その間二百六十五億円の減と相なつております。  原資の方の内訳でございますが、預託金の増加の方におきましては、郵便貯金と厚生保険につきましては、二十七年度に比べましてそれぞれ増額を見込んでおります。簡保年金につきましては、二十七年度の三百七十億円に対しまして、二百十五億円という減少の数字がここに掲げてございまするが、実際に簡保年金につきましては、二十八年度におきましての新しい簡易保険の募集等を考えますれば、二十八年度におきまするところの剰余金の増加は、二十七年度の三百七十億円に対しまして大体四百億円程度と見込まれる次第でございます。しかしながらこの二十七年度の三百七十億円の余裕金は、二十八年度に至りましては積立金となるので、ございまして二十八年度におきましては、その三百七十億円の積立金の半額を郵政省において、資金運用部とは別に単独運用することに相なりまするので、その数字を引きまする結果、二百十五億円と数字が小さくなつておる次第でございます。その他の方におきまして、百五十億円が七十五億円と半減いたしております。これは国有林野特別会計、失業保険特別会計等、いろいろな特別会計におけるところの余裕金が二十七年度におきましては相当出まして、それが資金運用部に預けられたために相当多かつたのでありますが、二十八年度におきましては、余裕金が少くなるような情勢にございますので、減額して計上いたしておる次第でございます。それから第三番目に既運用金の回収というのがございますが、これはほぼ似たような金額が二十七年度、二十八年度に上つておる次第でございます。貯蓄債券の収入金につきましては、貯蓄債券の発行を本年度において努力いたしたのでございますが、その成績も思わしくございませんし、また来年度におきましては、特別減税国債を発行いたしますことも考えられますので、その関係におきまして、二十八年度におきましては、貯蓄債券の発行をとりやめるという意味におきまして、金額を計上しなかつたわけでございます。それから一番最後の項の保有長期国債売却につきましては、運用部が持つておりますところの国債百八十一億円を日本銀行に売却いたしまして、その資金をもつてこれから申し上げますところの運用の一部に充てたいという考え方でございます。  運用の部でございますが、その運用の仕方は、財政をもつていたしますところの投融資の全体の需給を考慮いたしまして、産業投資特別会計によるところの投資額をも勘案いたして樹立したものでございまして、そのこまかい運用先につきましては、ここに掲げてある通りでございます。特に説明を加えますと、特別会計貸付の第二番目の農林漁業資金融通特別会計に対するところの貸付が二十七年度の百十億に対し、二十八年度におきましてはゼロと相なつておりますが、これはその次の項の政府関係機関貸付の一番最後から二番目の農林漁業公庫、これに対しますところの貸付百三十億に見合うわけでございます。要するに農林漁業資金融通特別会計がなくなりまして、農林漁業公庫が新発足いたしますので、その関係において配置がかわつておる次第でございます。それから政府関係機関の貸付の電信電話公社のところで、二十七年度の百三十五億が四十億に減つておりますが、資金運用部の貸付四十億のほかに、一般会計からの繰入れが二十億あり、ほかに百億の公社債発行が予定されておりますことは、主計局長から御説明のあつた通りでございます。それから国有鉄道につきましては、百六十億が百十億に減少いたしておりますが、別に公募を百二十億予定しておりますことは、主計局長からまた御説明申し上げた通りでございます。次に地方債のところで、二十七年度の七百七十億が六百八十五億に減つておりますが、これは先ほど申し上げましたごとく、簡易生命保険及郵便年金、特別会計におきまして百八十五億の地方債の引受けを予定いたしておりますので、この両者を合計いたしますれば八百七十億となりまして、前年度に対して百億増加という計算に相なる次第でございます。それから一番最後のところに合計欄がございますが、その前に翌年度への繰越しが二百四十八億で、二十八年度の翌年度繰越しが百二十億と相なつております。その一つ左の欄の原資の方の二十七年度のところにおきましては、前年度よりの繰越しが五百四十億と相なつております。すなわち二十六年度から二十七年度に繰越しました余裕金は五百四十億でありますが、二十七年度から二十八年度に繰越すものが二百四十八億となり、二十八年度から二十九年度に繰越します余裕金は百二十億円になるということが示されておるのでございまして、資金運用部といたしましては、その余裕金がこの三箇年間に五百四十億から百二十億に減るということに相なります。大体百二十億という数字は、資金運用部資金の運用をいたして参りまする関係におきまして、その最小限度の運転資金にほぼ近づいておるということを示しておる次第でございます。  第二に、第二表をごらん願います。ここに産業投資特別会計の収支見込みということがしるしてあるわけでございますが、この特別会計は、特別減税国債発行によるところの収入金、それから米国対日援助見返資金特別会計からの承継資産等を財源といたしまして、これを電源開発、海運その他重要産業の拡充及び合理化をはかるための投資資金に運用することを目的として設置される予定でございます。この収入の部におきまして、1に国債発行収入三百億とございまするのは、特別減税国債発行の手取金でございます。第二の見返資金承継余裕金とございまするのは、見返り資金がこの会計に承継いたされまするときに予想いたされまするところの余裕金を掲げたのでございまして、これは全額使用する予定に相なつております。3の運用収入金の中で(3)の国債売却というのが百九十七億上つておりまするが、これは見返り資金が保有いたしておりまするところの国債残額、これを全部日本銀行に売却いたすことを予定しておる次第でございます。  支出の部におきまして、開発銀行、輸出入銀行がそれぞれ五百十億及び四十億掲げてございますが、これは貸付となる予定でございまして、これに対し(3)の電源公社に対しまする百五十億円は出資となる予定でございます。  今申し上げましたごとく、この特別会計の設置に伴いまして、見返り資金はこれに吸収されましてなくなる予定でございますが、見返資金特別会計昭和二十四年に設置いたされまして、この引継ぎに至るまでどういう形になつておるかという大体の態様につきましては、その次の第三表にございますのでごらん願いたいと存じます。これは見込みの数字でございますが、一番上の欄を御説明申し上げますと、この会計が設置せられましてから繰入れられました額は、総額三千六十五億円、この三千六十五億円のうち、従来支出のうちで使用いたしまして、見返り資金の資産から離れて行きましたものが千四十九億円、それを差引きますと、資産といたしまして残りますものが二千十六億円でございます。これに運用利益金の二百五十三億を加えまして、結局純資産合計二千二百六十九億円というものが、産業投資特別会計に引継がれる予定ということに相なつておるのでございます。今申し上げました見返り資金から離れて参りましたところの使用されました額の内訳につきましては、その大様が一番下の欄に書いてございます。それからまた引継がれますところの純資産の合計というものにつきましては、これは第二の欄に書いてございますので、それによつて御承知を願いたいと存ずる次第でございます。  最後にその次の表をごらん願います。第四表でございますが、これによりまして二十八年度予算が施行せられました場合において、国庫の民間に対するところの収支の状況はどうなるかということの見込みを御説明申し上げたいと思うのでございます。一般会計といたしましては、これは収支均衡を保つておるわけでございますが、しかしその中におきまして、昭和二十六年度に生じました歳計剰余金四百五十六億円というものを収入に見ておるわけでございます。これは二年前の収入を二十八年度において放出するというのでございますから、その意味におきまして、一応それだけ一般会計において、民間に対するところの支払い超過が起るという計算に相なる次第でございます。もちろん実際この二十八年度予算が実施せられまして、最後に締めくくりがつきました場合において、かりに歳計剰余金が生ずる場合におきましては、その額だけ四百五十六億円から減ずるということも考えなければならないのでございますがここにおきましては、一応歳計剰余は二十八年度においては生じないという前提のもとに、この数字を掲げてある次第でございます。  それから次に資金運用部におきましては、先ほど申し上げましたごとく国債を百八十一億日本銀行に売却いたします。それからまたその持つておりますところの余裕資金を百二十八億使いまして減少するという形に相なりますので、この両者を合しますと三百九億円という数字が出て参る次第でございます。これもまた民間に対するところの支払い超過ということに相なる次第でございます。  その次に投資会計でございますが、産業投資会計におきましては、見返り資金から引継ぎました国債を、百九十七億日本銀行に売却いたしまして使います。また余裕金の八十七億は、先ほど申しましたことく、全額使用する予定でおりますので、この両者を合せますると、二百八十四億という数字が出て参るわけでございます。これも支払い超過として考えられるべき数字なのであります。今申し上げました一般会計の剰余金、資金運用部及び産業投資特別会計におけるところの数字というものをここに合計いたしますると、千四十九億円という数字が出て参るのであります。これまでの関係は一応ある意味において、割合にきちつと出ておる数字と考えられますが、なお国庫の民間に対するところの収支関係を考えるにあたりまして、非常に大きな動く原因といたしまして、国際収支の関係と食管の関係があるわけでございます。この二つの特別会計の動きというものは、なかなか予測が困難でありまして、一番初めの予測と実際の結果とが相当大きく食い違いますところの要因をはらんでおるわけでありますが、ここにおきましては、かりに今の予測に基いたらどんなことになるだろうかという数字をあげてみた次第でございます。国際収支の関係につきましては、関係の方面におきまして、一応二十八年度におけるところの国際収支は四千五百万ドル見当の受取り超過であろうという予測がございますので、この数字を円に換算いたしますと、百六十二億円よいう数字に相なるわけでございます。これだけの受取り超過が実現いたしますならば、インヴエントリー・フアイナンスはやめたのでございますから、その関係におきまして百六十二億円の対民間散布超過ということが考えられる次第でございます。  それから次の食糧管理特別会計におきます関係でございますが、これは食糧証券の増発がどのくらいまで行くだろうかということになるのでありまして、この点につきましては、一応本年度予算におきましては、ことしの三月末と来年の三月末と比較いたしまして、大体食糧証券が百十億増加するという予算なつておりますので、一応その数字をここにとつた次第でございます。この両者を合せますと二百七十二億円と相なります。これを先ほどの数字の千四十九億円に足しますと千三百二十一億円、今申し上げましたような計算あるいは見込みによりましてこういう数字が出て参るわけでございます。この数字は、二十八年度予算がその予算通り施行せられたといたしました場合には、こういう数字になるということを申し上げました次第でございます。実際の動きは、今までの経験に徴しますならば、相当の食い違いを生ずるというのが現実でございます。  それからなおこの際もう一つ御注意申し上げておきたいことは、これは予算が施行せられた場合にどうなるかという数字でございまして、現実の会計年度内における収支、ことしの四月から来年の三月までの具体的な数字というものとは違うのでございます。出納整理期間の関係もございますし、繰越し等の関係もありますので、それらの関係によりまして、会計年度間の数字とは違つた算定方式でございます。この予算がずつと施行せられたといたしました場合に、それがどういう形になるかという意味におきまして算定いたしました次第でございます。はなはだ簡単でございますが、理財局所管の点につきまして、これに関係ある部分を重点的に御説明申し上げました次第でございます。
  16. 太田正孝

    太田委員長 終りに国民所得に関しまして経済審議庁から説明を求めます。調整部長岩武照彦君。
  17. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 経済審議庁の方から明年度国民所得の見通しについて御説明申し上げます。お手元に一枚刷りの昭和二十八年度国民所得推計と申すものがございますが、これにつきまして概要を御説明いたします。  この推計の基礎になつておりますものは、一つは昨年の十一月におきまして一応確定いたしました昭和二十六年度の実績でございます。これは一番左の欄にありますように四兆八千四百九十四億、これが一応実績として確定しました数字でございます。これに対して各種の所得の区分に従いまして、明年度生産物価、その他の経済事情の動きを考えまして延長推計いたしたのが昭和二十八年度のものでございます。合計数字は五兆六千七百四十億になつております。この基礎を申し上げますと、まずいろいろな生産物価等の見通しでございますが、ことに鉱工業生産におきましては、明年度一般的な賃金水準の向上あるいは減税等の関係もございまして、可処分所得は相当増加すると思われます。従いまして、相当貯蓄にまわりますほか、やはり消費財関係の需要と相まつて、その面からある程度生産を促進して参るのではないか、こう見ております。また生産財の方におきましても、現在はある程度もだれぎみで、在庫の増加等も見られておりますが、これも物によりましては、財政投資増加等に伴いましてある程度また生産が促進されて参るだろう。従いまして、これを生産指数で申し上げますと、明年度の鉱工業生産指数におきましては昭和九—一一年を基準といたしましたもので、一応一四六というふうに推定いたしております。二十七年度の見通しは、目下のところ一三七程度でございまするので、これが約六%程度増加するかというふうに見通しております。これは二十六年度に比較いたしますると、約一割二分の増加に相なろうかと思います。  それから農林関係生産状況でございまするが、これは御承知のように二十七年度におきましては、米麦の増産等が相当目ざましいものがございましたので、これは工業生産のようには増加いたしませんで、ことに麦の方は作付反別等の関係もございまして、あるいは若干減少するんじやないか。他方米作の方を平年作と考えますと、なお農業関係といたしましては養蚕あるいはタバコ等、その他のいろいろな工芸作物関係の増産が相当最近目ざましいものがございます。また林業方面におきましても、用材の需要等が相当ふえておりますので、若干増加して参るんじやないかというふうな見通しを持つております。従いまして一応生産指数としましては、これは鉱工業と違いまして七—一一年基準でありますが、約一〇八、二十七年度対比約一%増加というふうに見ております。  それから物価状況でございますが、これは今申し上げました生産の見通しと裏表になりまして、生産財の方は、現在昨年の三月以降ずつと低落を続けて参つております。これが今後財政支出増加等に伴いまして、あるいは若干強けはいになるんじやないか。しかしその状況もそう急激に高騰するということは見られませんで、むしろやや強ぎみの横ばい、全体といたしましてはそういうふうな状況ではないかというふうに見ております。他方消費財の方でございますが、これは昨年におきまして米価の引上げ、あるいは運賃、料金等の引上げもございました。そういう関係から、これは平年度に直してみますと、むしろやや上りまして、生産指数的に申し上げますと、約二%程度前年対比上るんじやないかというふうに見ております。  その他の賃金水準等につきましては、これは将来のことはなかなか予測がつきませんが、まあ大観しまして、二十七年度における給与あるいは賃金といつたものが一応そのままで年間を推移するというふうな——これは一つの前提でございまして、これが幾らになりますか、とても今推測はつきませんので、一応そういう前提で計算しております。また雇用量の増加等も、財政投資増加等によりましてある程度増加は見込めますが、この比率におきましては、そう多く期待はできないかと存じております。  以上のような前提に立ちまして二十六年度の各所得を延長したのでありまして、ここにありますように、勤労所得におきましては、二十七年度対比一〇六%と見まして、二兆五千七百五十億程度かというふうに考えております。この一番大きな増加は、賃金水準の上昇に伴うものが多いようでございまして、あと若干雇用量の増加等も見込んでおります。  それからその次は個人業種所得でございます。いわゆる中小企業等の問題もここにある業種でございますが、これは先ほど申し上げましたような生産のある程度増加と、それから消費財関係の物資の強含み等を反映いたしまして、一応三%強ふえて、二兆四千三百四十億程度に相なろうかというふうに存じております。  それから三番目の賃貸料並びに利子所得でありますが、このうち賃貸料につきましては、御承知のように昨年末におきまして、地代並びに家賃の公定価格の引上げ措置が認められましたので、これを平年と比較いたしますと、このくらいの増が見込まれるわけでございます。なお利子所得におきましては、これはいわゆる貨幣利子のほかに帰属利子、つまり金融機関の利益金等を見ておりますので、その関係で金融機関の運用資金増加に伴いまして利子所得もふえて参る、この関係が約二割二分ふえまして、千七百十億ということに一応推計いたしております。  それから法人所得でございますが、これは最近におきまするいろんな収益低下の傾向もございますが、明年度におきましては以上申し上げましたような一般的な見通しに立ちますると、おしなべて収益率等もまあ横ばいに推移するのではないか。もちろん二十六年度に比較いたしますと、相当収益率は減少するという前提に立つておりますが、他方若干の物価の強含み、あるいは生産取扱量の増加等に伴いまして、約五%程度増加いたし、四千九百十億見当に相なるのではないかというふうに推計いたしております。以上合計いたしまして五兆六千七百四十億。二十七年度対比五・四%の増加というふうに推計いたしております。この構成の比率は、勤労所得の比率が伸びまして約四五%、個人業所得は四三%、これは二十六年、七年を通じて大体同じ現象であります。利子所得は、パーセントは若干上りました。法人所得は二十七年度と大体比率は同じ、二十六年と比較いたしますと、収益率の低下もございますので、一%程度下るのではないかと存じております。  以上の所得を一応人口一人当りで比較いたしますと、昭和二十六年度の実績におきましては、五万七千三百円余でありましたが、これが二十八年度におきましては六万五千二百円というふうに増加して参ると見通しております。なお一般会計等との比率におきましては、先ほど御説明がありましたように、大体二十八年度一般会計との比率は一六・九%、二十七年度はその実績推計からいたしますと一七・三%で、若干の比率の低下を来すようになつておるというふうに推計いたしております。  なおこの前の当委員会におきまして、私から二十七年度の推計を一応御報告いたしましたが、その際二十七年度国民所得の推計は五兆三千二百六十億、お手元にあります資料と約五百九十億の差が出て参つておりますが、これはその後いろいろな経済事情の動き等を勘案いたして参りますると、農林業あるいは鉱工業におきまする生産量の若干の増加、それから賃貸料の方面におきまして地代等の値上げ等がございますが、それらの点を勘案いたしまして、約五百九十億の増加をいたして参つておるという状況でございます。この機会に前会の訂正をいたしたいと存じます。
  18. 太田正孝

    太田委員長 ただいままでの説明資料は、予算審議の上に非常に重要なことと思いますので、速記はきわめて早く整えて、皆様方のお手元へ届けるようにいたしたいと思います。
  19. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ただいま国民所得の問題で御説明がございましたが、その中で鉱工業生産数字があげられましたけれども、それと関連を持つ物価に対する見通し、雇用量に対する見通し、賃金水準に対する見通し、主としてこの三点の説明が足りなかつたのでありまして、きようでなくともよろしゆうございますから、至急この三点に対するいわゆる国民所得を推定される基準になる数字をひとつ審議の前にまとめてお出しを願いたい。
  20. 太田正孝

    太田委員長 政府委員、お聞きになりましたか。なるべく早くその資料を御提出願いたいと思います。
  21. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 明日出ますか。
  22. 太田正孝

    太田委員長 明日午前中お届けするとのことでございます。  以上をもちまして予算三案の提案理由説明を終了いたします。  次会は明五日午前十時より開会いたし、予算三案に対する質疑に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十六分散会