○五藤
参考人 ただいま御紹介をいただきました商工
会議所の中小企業
委員長を勤めております五藤齊三と申します。本日は各界の指導者の
方々からそれぞれのお
立場からの御
意見の御開陳があるようでありますけれ
ども、私は中小企業の
立場に限定をいたしまして、先ごろちようだいをいたしました
補正予算の説明書を拝見して感じました
ところを一言申し上げまして、御
参考に供したいと思う次第でございます。
今度の
補正予算を拝見いたしますと、その中の中小企業に関する施策の中で、歳出の中におきましては
国民金融公庫の出資三十億円、商工中金にも貸付金二十億円が見られるのであります。その他住宅金融公庫に二十億円の金が出ることに
なつておりますが、これは中小企業に限定をいたしませんのでしばらくおくことにいたしたいと存じます。この中小企業向けの
国家資金の
補正予算による放出は合計五十億になると思うのでありますが、御
承知のように現下の中小企業の窮状は、まことに切実なものがありますことは、過日来池田前通産相の
国会放言が大きく波瀾を呼びました実情からいたしましても、議員諸公におかれましてももう十分御
承知のことと思うのであります。朝鮮
戦争の好況を受けました
わが国企業がようやくその反動期に入りまして、各方面の景気が沈帯を続けておりますことは御
承知の
通りであります。ただその間に投機的資金のみが証券市場に流れまして、証券界が異常の好況を呈しておりますということも、ひつきよういたしますのに、ほかの方面の正常な
経済活動が非常にはばまれている、こういうことの結果でなければならぬと論じられているのでございます。ことに中小企業は平常におきましてその
経済力の弱さと、そうして近来は、ゼスチユア的には各界において寵児のように
なつておりますけれ
ども、いわゆる名実伴いません状態でありまして、政府の施策もあるいは
経済界の配慮も、中小企業に恩恵をもたらすことはなはだ薄いのでありまして、御
承知の
通り、繊維の暴落、その他いろいろの
経済沈滞の現象がこの暮れに差迫りまして、大企業の方にはし
かく死活の問題のようには襲いかか
つておりませんにもかかわりませず、中小企業はほとんど浮沈のせとぎわに追い詰められておる、こういうことはもう先刻御
承知のことであろうかと存ずるのでございます。終戦以来七年間の占領の苦しい期間を経過いたしまして、ようやく独立
経済に入りました本年、本年こそは多少の明るさを持
つて年を越すことができるだろうと思
つておりました中小企業は、浮沈の関頭に追いやられてしまつたというような感が深いのであります。この重大な場合に、わずかに五十億の年末金融対策としての緊急資金を政府が出してくださる、これはあまりにも現状に対してすずめの涙のような少額に過ぎる金額ではなかろうかと思うのであります。地方
財政資金によります中小企業の援助も、各都道府県でそれぞれ配慮が行われておるのでありますが、東京都におきましてすらこの年末に際しまして、二十一億円の中小企業に対する緊急融資をあつせんしようというので、都の
財政余裕金を五つの銀行にそれぞれ預託をしまして、それを呼び水といたしまして、その銀行から合計二十一億円の融資をあつせんしようといたしておるのであります。今朝前後いたしましてその申込み状況を聞いてみますと、現在までにすでに三十五億円余の申込が殺到しておるのであります。なおこれに継ぎ足しまして四億円の融資あつせんを東京都がや
つておるのでありますが、これは昨年以来続けておる小口融資と申しまして、一口十万円を限度といたしまして都下の組織中小企業者、すなわち協同組合の組合員に対して、協同組合を経て転貸をいたします
方途であろうと思うのでありますが、これがこの十五日から受付を開始いたしまして、年内に四億円の貸出しをしようとせられておるのであります。これまたその数倍の申込みがあるのは、火を見るより明らかであるのでありますが、東京都においてすら地方
財政資金の範囲において二十五億円の金を、この年末におきまして
零細企業及び中小企業の
ために融資あつせんをしてくださ
つているのであります。これに比較いたしまして、国といたしまして
日本全国の中小企業に対してわずかに公庫出資三十億、中金貸付増額二十億と申しますのは、あまりに中小企業に対する国の配慮の薄さを感ぜざるを得ないと思うのであります。ことに中金の貸付二十億はいわゆる貸付でありますので、常日ごろ商工中金におきましてはその資金コストが高いと申します実情から、業者に貸します金利が、他の金融関機に比較いたしまして、と
かく高率であるのであります。普通の銀行ならば二銭八厘あるいはそれ以下でも融資のできますものが、中金の融資を仰ぎまして、最低三銭あるいは三銭五厘というような、比較的高率の金利
負担を中小企業にしいておる現状であります。そういうことから考えましても、この商工中金への貸付二十億は、よろしく国の出資に振替えていただきたいと私は熱望を申し上げる次第であります。なおそのほかに何とか差繰
つていただきまして、五十億
程度の資金運用部資金あるいは見返り資金の余裕金の預託をぜひともや
つていただきたい、こう考えます。しかもこの預託を従来の例のように、二箇月または三箇月といつたようなきわめて短期間の預託でありませんように、少くも期間四箇月以上、願わくは六箇月
程度の預託は必ずや
つていただきたいと存じます。新聞情報によりますと、自由党の党議として、この年末に百億円
程度の預託を
実現すべしという決議をせらるるかのようにも、きよう先ほど聞いたのでありますが、私
どもは年末を目睫に控えてゼスチユア的なことを決して望みませんのでありまして、あえて百億とは申しませんが、五十億
程度でがまんをしなければならぬと思うのでありますが、ぜひこれは
実現をするようにお願い申し上げたいと存じます。東京都の
人口は全国
人口の御
承知の
通り約一割でありますが、ここへ出入りをいたしております金の面から
経済力をはか
つてみますと、全国の
経済力の約二割と申しますのが大体定説であるようであります。そういうことから考えましても、東京都の地方
財政によ
つて二十五億の融資あつせんをいたしておりますことから考え合せても、国においては少くも全国的に百億以上の年末緊急融資
程度の配慮はあ
つてしかるべきではなかろうかと思うのであります。なおこの新しい預託をもし願いますならば、期間三箇月では足らぬのでありますから、ぜひとも四箇月以上にしていただきたい。三日分日にも参議院の通産
委員会で申し上げたことでありますが、その際に、中小企業庁側の御答弁によりますと、中小企業の金融機関のうちで信用金庫等では金が余
つて、相当巨額のコール資金を流している実情があるということでありますけれ
ども、そのことそれ自体は事実でありますけれ
ども、実情は政府の預託があまり短かいからそうせざるを得ない実情であるということを、御注目願いたいと私はここで重ねて申し上げたいと思うのであります。すなわち信用金庫等におきまして組合員に金を貸します場合に、政府預託金が二箇月あるいは三箇月であります場合に、これの引揚げを受けましても、それを償還することができないかもわからぬという危惧の
ために、そういう短期の預託金は往々にして組合員に貸付けすることを差控えて、これをコールに流しておる。これは隠れなき事実であるのであります。商工
会議所におきましてもこういつたような問題が取上げられまして、何らかの機会にそれぞれの方面へお願いをしようと申しておるような次第であるのでありまして、せつ
かくの中小企業向けの
国庫預託といつたようなことを、議員諸公の方から御心配いただきましても、その期間があまりに短かい
ために、それがほんとうに中小企業に流れずして、大銀行等にコール・ローンとして流れて行く。こういうような実情のありますことをぜひともひとつ御記憶を願
つておきまして、今後政府資金の預託等の
ためには、こういうことがありませんような、比較的長期の預託をぜひともお願いを申し上げたいと存ずるのでございます。
なお今度の
補正予算には現われておりませんようでありますが、通産当局あるいは中小企業庁等におかれまして、来
年度予算においては、相当思い切つた中小企業の抜本的金融対策を、よりより考えておるというようなことを承るのであります。聞く
ところによりますと、百億あるいは二百億の資金を
国家資金として出して、これを中小企業全般の
ためにプールする。
一つの構想としては、商工中金法を改正して、これを資金プールとして、ここから
一般中小企業に広く貸出しをする。従来の組合金融のらちを越えて、
一般中小企業にも個々の取引が行われるような中金法の改正を考えておる、こういつたような構想をぼつぼつ耳にいたすのであります。何にいたしましても、こういうふうに中小企業の
ために、巨額の金が用意せられますということは、私
どもとしてははなはだうれしいことでありますけれ
ども、この中金を
一般市中銀行化するという性格の変更に対しましては、私は多少異論なきを得ないと思うのであります。商工中金は御
承知の
通り組合金融機関でありますが、昨年の
国会であつたかと存じますけれ
ども、一部中金法の改正によりまして、組合員たる個人に対しては金を貸すこともでき、またその個人から預金の受入れもできる、こういうふうな改正が行われまして、組合金融一本化の
一つの前進の窓が開かれましたことは、当時私
どもはたいへん喜ばしく感じたのであります。
ところでその後、これの実際運用がはなはだ十分でないことを私は痛感をいたしまして、年来私も商工中金の評議員を仰せつか
つておりますので、評議員会等の際にはたびたび申し述べることでありますが、その一例をと
つてみますと、本年十月末におきまして、中金の貸出残高の総額は、大体二百八十億
程度であるのでありますが、この中におきまして組合員たる個人に貸付をいたしました金額が、わずかに十一億余しかないのであります。全体の貸付の四%しか個人貸しをいたしていないのであります。大体中金の性格は、組合金融がその本旨でありますけれ
ども、組合の構成員の中には、組合員でありながら中金の金融を受け得ないという面が相当にあるのであります。と申しますことは、大体中金の貸付は、運転資金においては手形割引が主点をなしておりますが、企業者のうち、ことに中小企業の中には手形取引をや
つていない中小企業というものが相当にあるのであります。たまたまそれらの業者の中で有力な人々が、組合の
理事者に就任をいたしておりますような場合には、組合全体の融資力をカバーいたします
ために、これらの
理事者はいつもただ個人の保証をするだけで、
自分の
ために中金の資金の運用は一向できない。こういう状態が非常に続いておるのであります。また組織中小企業の中に入
つていないいわゆる中堅中小企業の人々の中には、中金を利用しようとしても、中金は組合金融機関であるから、個々の金融の利用には使えない、こういう声を非常に聞くのであります。これらの声にかんがみまして、昨年中金法の改正によ
つてこの門戸が開かれましたけれ
ども、中金はこれにはなはだ消極的な態度しかと
つていないのであります。わずかに全貸出高の中の四%にすぎない個人貸出ししかや
つていないのであります。私はもしも中金に巨額の
国家資金を今後投入をせられまして、これによ
つて組織中小企業者以外の中堅中小企業者の金融もまた担任させようというお考えがおありになりますならば、何もこれを市中銀行化する必要は少しもないということを申し上げておきたいと存じます。昨年改正せられましたこの中金法の新しい行き方によりまして、組合員たる個人に自由に貸す、この貸すというやり方を大いに伸張いたしますならば、五十億でも百億でも、新しい資金がいわゆる中堅中小企業の
ためにどんどんとここから流れ出ることができると思うのであります。中小企業の金融機関といたしましては、御
承知の
通り零細な面には信用金庫あり、相互銀行があるのでありますけれ
ども、これはまず一口平均五万円から本数万円にすぎませんような、いわゆる
零細企業の金融機関でしかないのであります。中金は中小企業者の金融機関をも
つて任じておりますけれ
ども、ただいま申し上げました
通り、これが中堅中小企業の
ためには、はなはだ役割を演じてないような実情であるのであります。そこで各都道府県におきまして、中堅中小企業を専門の対象とする金融機関が必要だということが、累年唱えられて参りましたが、東京都におきましても、昨年都がたいへんなあつせんをいたしまして、純民間の資本を集めまして東京都民銀行ができたのでありますが、これは一年にまだ足りません。昨年十二月十八日に開業をいたしたのでありますから、一年に足らぬのでありますが、先月末をも
つてすでに預金が二十五億を突破いたしておるようなふうでありまして、非常な好評を中小企業者の中に与え、また普通銀行よりも三時間の長時間営業をするというふうに、中小企業の
ために大いなる便益を与えております。こういつたような金融機関が、各府県におきましても今後できようという機運を非常にはらんでおるのであります。こういつたようなことを、いわゆる国の
政策におかれまして、往年各都道府県に農工銀行がありまして、農業金融の
ために、ことに長期不動産金融の
ために大きな使命を果しましたように、今後各都道府県に中小企業専門の商工銀行的な性格のものができまして、これに
国家資金が大きく流れて参りまして、組織しない中小企業の
ために大きな金融的役割が果されますことを、私は切に念願いたしたいと存じます。今度の
補正予算にはもちろん盛り込まれるわけには参らないでございましようけれ
ども、来
年度以降におきまして、そういう施策をお考えになります場合に、この点はぜひとも御
考慮おきをいただいておきたいと存じます。
次に歳入の面におきましては、今度の低額所得層に対する減税的歳入
予算の組まれておる点を一言申し上げておきたいと存じます。
予算説明を拝見をいたしてみますと、二百三十億ほどの減税がこの
補正予算で行われておる。来
年度はさらに八百億円以上の
予算が気構えられておるということを承るのであります。これは小所得階層に対する一大福音であるのでありまして、双手をあげて賛成を申し上げる次第でありますが、これを中小企業という
立場から見ますと、これは中小企業に対する減税には全然
なつていない、こういうことを断言してはばからないと思うのであります。
補正予算の説明書を一覧申し上げましても、これは
申告所得税の減税に対しましては、二百三十億の減税の中でわずかに一億二千万余円しか
申告所得税の減税には
なつていないのであります。これは要するに社会
政策的な
観点から、主として
勤労者の
負担軽減の
ために
考慮をせられたことであろうと思うのでありまして、
勤労者の家計改善に関しましても、多々ますます弁じなければならぬことは申すまでもないことでありますから、これは当然のことでありますけれ
ども、これに継ぎ足して中小企業の減税もまたひとつ御
考慮を願わなければならない。こういうことを強く私
どもはお願い申し上げておきたいと思うのであります。
中小企業の
生活状態は、その所得が五十万円以下の階層におきましては、まず
勤労者の
生活と選ぶ
ところがないということは、つとに論ぜられている
ところでありまして、皆さんも御
承知の
ところでありますが、企業者であります
ために、勤労控除の恩恵に浴することができません。また今度の改正案に盛られておりますような、
社会保険料の控除というものも大
部分はこれを受けることができないのであります。でありますから、これを分解してつぶさに研究をいたしてみますと、五十万円以下の中小企業者の
生活状態は、
勤労者の
生活を下まわ
つているという現状がはつきりと出て参るのであります。私先ごろいささかその点を研究いたしてみたのであります。それは総理府の統計によりまして、本年五月の都市における
勤労者の実態から税を差引きまして、——中小企業者でありますので、税は別途に考えなければなりませんので、
勤労者の家計支出から税を引きましたものを、かりに中小企業者の家計支出と見ますならば、すなわち
勤労者と同じ
生活をいたしましたならば、所得から税を引いてそれが支弁し得るやいなやということを計算いたしてみますと、現行税法では五十万円以下の年段階層では、ことごとく赤字になるのであります。年収二十万円の階層におきましては、年額一万九千余円の赤字になりますし、四十万円の階層におきましては三万二千余円の赤字になるのであります。これが今度の
所得税の軽減改正の適用を受けました結果といたしましても、若干これが減るだけでありまして、依然として五十万円以下におきましては、赤字が出るということはいずれも同じでございます。と申しますことは、総理府の統計に現われております
勤労者の家計は、エンゲル係数が本年の五月におきましてようやく四六に
なつておりますことから考えましても、決して戦前の健康にして文化的な
生活に返
つておるわけでないことは、容易に考えられるのでありまして、そのおのおのの収入階層に応じまして、その階層における体面を保つ
ための
最低生活を、自然欲求的に行
つているものと考えなければならぬのであります。この点はあるいは公務員の待遇改善あるいは
一般勤労者の待遇改善の上につきましても、大いに
考慮せなければならぬことでありますとともに、その
生活の実相を中小企業に当てはめてみますと、中小企業者はさらにそれ以下の
生活に切り下げざるを得ないような税をとられている、こういうことの実態がはつきりと把握せられるのであります。
そればかりでありませんで、ようやく多少の蓄積が行われ得ると考えられます年収五十万円以上二、三百万円のいわゆる中堅中小企業の階層におきまして、最近の
日本再建の上の至上命題であります
ところの
資本蓄積が、はたしてできるような税をとられておるかどうか、こういつたようなことをまた分析研究をいたしてみたのでございます。四十万円以下の
生活状態は、
勤労者の家計調査というものが、総理府統計にもありますし、東京都の統計にもありますし、あるいは主要なる各府県の都市及び村落において、それぞれ統計ができておりますので、これはもう隠すことのできない実態がはつきりとわか
つておるのでありますが、収入四十万円までの
勤労者家計におきましては、大体収入が二・五倍になりますごとに家計支出が二倍にふえておるということが、この統計の示す
ところによ
つて、はつきりと看取することができるのであります。しからばそれ以上の収入階層においてはどうだろうかということになりますと、これは統計が全然ありませんので、私は商工
会議所等におきまして藤山会頭初めいろいろ高額の所得層の
方々の家計の状態をそれぞれ伺いまして、それから想定をいたしまして、四十万円以上の収入の階層においての家計支出がどれだけであろうかということを算定いたしたのでありますが、大体中額とか、高額所得層におきましては、所得が四倍にふえるごとに家計支出が二倍になるということが、最も実情に近いものであるということを知り得たのであります。これは御列席の議員諸公におかれましても、御
自分の御
生活と比較してお考えになりますれば、ほぼおわかりになることと思うのでありますが、この私の分析研究をグラフにいたしまして、そのグラフから抽出いたしました各階層別の想定
生活費というものを、税引きの所得の中から引いてみますと、八十万円から二百万円の階層におきましては、現行の税法においては七%ないし一四%の
資本蓄積しかできないことがわかるのであります。それに反しまして、三百万円以上二千万円
程度の階層におきましては、一八%以上二五%余
程度の
資本蓄積ができるのであります。すなわち上の方へ行くほどパーセンテージも多くなる、絶対金額はもちろん多いのでありますが、絶対金額ばかりじやありませんで、所得が多くなるほど蓄積がよけいできる、こんなふうに
なつているのであります。
ところでこれを
所得税の総額から見てみますと、
昭和十年におきましての国税、
所得税の担税階層別調査によりますと、当時の高額所得層と考えられておりました年収三万円以上の階層におきまして、全
所得税額の五三%余を担税いたしておつたのであります。すなわち半分以上が高額所得層において
所得税を
負担いたしておつた。これを今日の物価水準から換算いたしますと、少くも年収千万円以上になるわけであります。この千万円以上の
昭和二十五年の
所得税がどれだけ
負担せられたかを調べてみますと、わずかに全額の〇・三五%にすぎぬのであります。して当時の年額八百円から三千円くらいの年収にしかすぎなかつた今日の二十五万円以上百万円の階層におきまして、
昭和二十五年においては五八%余の
所得税を
申告所得税の上においては
負担をいたしているのであります。すなわちいわゆる中堅中小企業において税の半分以上を
負担している。要するに中小企業者が国税の太宗をなします
ところの
所得税の半分をささえている、こういう現状であるのであります。こういうことから考えますならば、いかに中小企業に税のしわ寄せがせられているかということが、一言にして尽されるのではないかと私は思うのであります。これはどうしてもこの中堅層における
負担の軽減を今後はか
つていただきませんならば、
日本の社会機構はいわゆる中産
階級の没落を来す何ものでもない、こういうことになると思うのであります。累次にわたる税法上の減税が行われました。また来
年度もそれが行われようとしているようでありますが、いわゆる勤労
階級及び零細業者の階層におきましては、順次税の軽減がはかられておるのであります。まだ足れりとはいたしませんが、だんだんよくなりつつあるのでありまして、おそらく来
年度あたりには年収二十万円
程度までの
勤労者及び企業者に対しては、税がかからぬといつたようなことが、期待できるようになるだろうと思うのでありますが、さて実際
資本蓄積のできる階層に対しましてはどうかと申しますと、九月十六日の各新聞に載
つておりました池田前蔵相の名古屋における御発表によりますと、来
年度においては八十万円以上に対しては増税をして、そうしてずつと小さい所得階層に対しては、減税をはかるつもりであるというようなことが伝えられておられておりましたように、ややもいたしますれば、この中堅層がおいてきぼりになるという傾向が、非常に
政治の上では強いのではないか、この点をぜひとも御
考慮願わなけらればならぬ点であると私は思うのであります。
国家のほんとうに安泰になる今後の再建の
ためには、どうしても中堅層の
生活が安定をいたしますことが、至上命題でなければならぬと思うのであります。
日本の
国家が大所得層と貧困
階級とにわかれてしまいまして、いわゆる
階級闘争がいやが上にも巻き起るというようなこととなりますならば、
わが国の安泰というものは期待ができないのではないか。その
ためにはこの担税力の上において、最も重圧をこうむ
つております中堅中小企業の
ために、今後抜本的な
資本蓄積の可能でありますような税制の改正を、ぜひともお願いを申し上げておきたいと存じます。これは要するにこういう現在、大
部分の税を
負担しておる
ところで、大いに税の軽減をはかると、
国家財政の収入が激減するのでどうにもならぬ、こういうことでいつも片づけられるように思うのでありますけれ
ども、これはやらなければ、
日本の
国家のほんとうに安泰な再建は不可能ではなかろうかと思うのであります。これはなかなか困難でありますが、なお
行政簡素化の徹底を何回にもわた
つておはかりを願いまして、そうして簡素化した機構によ
つて、個人の収入は大いに増加するようにお考えを願
つて、国費全般としては歳出の減少をはか
つていただきたいと存じます。
そのほかには、ぜひともこの
財政投資の中で、
一般会計から出しておられます
財政投資は、できるだけ資金運用部資金または見返り資金に切りかえていただきたい。そうして
一般会計の歳出を減していただきたい。これが
財政簡素化の
一つの方向でなければならぬと私は思うのであります。二十七
年度の
予算によりますと、
一般会計の
財政投資が七百九十億円に及んでおるのでありますが、いわゆる超均衡
予算から要するに均衡
予算を続けておられます現状から、インフレーシヨンを克服するという
観点から、これが必要だということは一面においてわかりまするけれ
ども、これは何とか差繰りいたしましてこれを可及的に減額をして、そうしてこれを資金運用部資金または見返り資金に置きかえる。幸い資金運用部資金におきましても、
補正予算のあとにおきましても、二百四十八億円の今
年度繰越しが見られますし、見返り資金におきましては百億円が見られるようでありますが、この合計三百五十億になんなんとする
国家資金を、要するに税によらない
国家資金を、何とか
財政投資に多少でも振り向けていただきまして、それらの面からひとつ中小企業に対する減税、この
補正予算の上において二百三十億を予定せられておりますけれ
ども、その中で
申告所得税ではわずかに一億二千万円しかその恩恵を浴することに
なつておらない、この中小企業の
ために、ぜひともこれらの方面から何とか御配慮が願いたい、これが私の痛切なお願いであるのであります。
なおこれらの
措置をとりましても歳計の足りないような場合には、これは非常な反対はございますけれ
ども、私は間接税の一部増徴を考えていただきたい。これも現在の奢侈的物品税やあるいは酒税、タバコ税のように非常な高率
課税でなく、低率公課の原則によりまして、広く
国民全体から確実な間接税がとれるようにいたしまして、これによ
つて、
行政簡素化の結果、なお足らない
ところは経過的に
日本経済の再建ができるまでそれでまか
なつていただきたい、こういうふうに私は考えます。フリゲート艦は船であ
つて艦ではないというようなおもしろい
議論を伺うのでありますが、
議論は何といたしましても、とに
かく日本は自衛的な再軍備は、行く行くはどうしてもやらなければならぬと思うのでありますけれ
ども、数日前の
国会における新蔵相の演説にもありましたように、現在の
わが国の国力はこれに耐えない、耐えないというのは私はほんとうだろうと思うのであります。これは要するに
国民それぞれがいわゆる国利民福と申しますか、自己蓄積を持つように
なつて、初めてそこに担税力が生れる、国もまたそれからたくさんの税をとれる、まず自己蓄積をはからなければならぬというのが、今日の合言葉に
なつておりますけれ
ども、実際は長良川の鵜飼いではありませんが、のみ込んでは吐き出し、のみ込んでは吐き出し、一向腹の中へは入らぬような今日の
政治であるのは、もう隠れもなき事実であると思うのでありますから、これは何とか是正せられまして、まず
国民の自己蓄積がふえまして、これによ
つて国力の増強ができまして、次第に自衛が行われて、
わが国が独立の形態を名実ともに完成をするということを一日も早く願いたい、私
どもはそう考えるのであります。
私はそういう
観点からまず蓄積のできるような減税をはか
つていただきたい。国費に足らぬのでありましようけれ
ども、そういうことを言わずに、まず蓄積のできるような税制にしていただきたい。そうして足らぬ
ところは何とか繰りまわすようなことを考えていただきたい。これは国の
経済でも個人の
経済でも同じだと思います。入るをはかることばかり考えておつたのでは個人の貯蓄でもできません。やはり出ずるをはからなければいかぬのであります。とに
かく個人でも貯蓄をいたします
ためには、天引貯蓄ということがよくいわれますように、
国家におきましても天引的な減税をしていただきまして、そうして現在最も必要だと思います中堅
階級の育成になりますような中小企業の
ために減税が行われるならば、やがてその点から
資本蓄積が行われて、
日本の
経済が再建せられ、やがて
日本が弾力性のある
徴税国家になりますように、ぜひともお願いを申上げたい。
はなはだ時間が超過いたしましたけれ
ども、金融の緊急対策は、先ほど申しましたように、ぜひともここで資金運用部資金または見返り資金等によ
つて五十億以上の四箇月以上六箇月
程度の預託を緊急にこの年末金融対策としておやりを願いたい。来
年度になりましたならば、できるならば百億、二百億の中小企業融資を、中金法の改正によらずして、中堅中小企業の階層にこれが流れますように御配慮をいただきたいと存じます。
はなはだつまらぬことを申し上げましたが、これで終ります。(拍手)