○植原
委員 なお、中曽根君も幾らか時間がほしいということであるし、
政府もお急ぎのようでありますから、私は
一つ一つの
質問を避けまして、私の
意見全体を述べて、
政府の所見をただすところに対してお答えを願
つて、きわめて時間を節約して中曽根君の機会をつくりたいと思いますから、どうかそのおつもりでひ
とつお願いいたします。
政府はアジア諸国と、きわめて緊密な親善関係を持続し、これを強化する方針であることが、
日本の今日の状態で最も必要なることとして、
政府の重要なる政策の第二項とするくらいにされております、全然同感であります。但し、そう
言つただけではだめで、これをどうするかということを、
国民に示していただかなければならない。私が平面的の政策では困る、立体的にしてほしいというのは、この
意味であります。そこで支那は共産主義の国である、中共は共産主義の国である。それのみならず、
日本の平和条約を成立せしめる間において、
吉田首相とダレスの間の何もありましようから、支那とすぐ貿易する道を講じろとか
——これはなるほど講じても幾らの利益もありますまいが、支那とは同文同種の
国民でありますから、英国でもこれを承認してお
つて、依然として朝鮮に兵を出しておるような
建前でありますので、もし日支両国が地理的に見ても、文化の上から見ても、また人口の数から見ても、重要なる場所であるとするならば、私はダレス・
吉田の了解もありましようけれども、それにしてもここに対して、
日本の
国民と支那の
国民と何か了解するいい道をお
考えにな
つてはどうかと私は
考えるのであります。これに対して
政府の御
意見があれば伺いたいのです。
さらに朝鮮の動乱であります。これは
日本に
影響するところきわめて重要なるものがありますがゆえに、これに対しては深甚なる考慮を費さなければならないし、
国民もその将来の成行きに対して、非常な心配をされておると思います。その立場にありながら、ここに兵を出しておる朝鮮や国連に対して、
日本が講和条約の第五条によ
つて、あるいは
日本の外交上の必要として、最善の援助を与えることを考慮しなければならない。これを常に支援し援助することが、
日本と朝鮮の問題を
考えれば当然なのです。朝鮮はある
意味において
日本の防衛の第一線である。これを
日本の
国民が知らなければならない。それほど重要なところでありますならば、これに最善の援助を与えて、それで
政府が米国一辺倒だなんて非難を受けることは、これは
政府としてお
考えなさらなければいけない。ここに
国民に民主主義を徹底せしむる私は意義があると申すのであります。御
承知の
通り、朝鮮事変が起りました六月二十五日
——私は二十七日にアメリカの評論界の第一人者、「ヨーロッパの内幕」や「アジアの内幕」、「マッカーサの謎」等を書きまして有力なジヨン・ガンサーと六月二十七日の晩に私と友人二、三と話しておりました。ただちに話題は何が出たかといえば、朝鮮の問題が起りました。アメリカは朝鮮に干渉するだろうかという私は
質問をしましたところが、ガンサーは、しないと思う、アメリカは第一次世界
戦争に参加して何も得していない。第二次大戦は
日本がしかけたからというので受けて立
つたけれども、これによ
つてアメリカは何も利得しようと思
つておらぬのだ。ただ太平洋の平和が乱れた。その跡始末に苦心しておるだけだ。アメリカの元来の防衛線というものは千島、
日本、そして台湾を入れるとか入れないとか議論があ
つて、これに火を吹いてそれが飛んで朝鮮に動乱が起
つた。三十八度線が共産党に侵されたからとい
つて、アメリカはこれに
軍隊を出さないと思う、というのが、ガンサーの
意見だ。もしアメリカの
国民の全体の
意見をヴオートに問うたならば、あるいはこうなるかもしれないとガンサーは言いました。私はその場合にこう言いました。アメリカは実は第二次世界大戦で
日本にまで来たほど世界の共産主義に対して、両方の大洋を守
つて、自由国家を強く出して、世界をして民主主義を徹底せしむるようにしなければならないというのがアメリカの政策であり、アメリカ
国民の希望ではないか。しからば、もしせつかくつく
つたあの南鮮の共和国をアメリカが見殺しにして、ここで北鮮の共産軍に自由に蹂躪されるようなことがあ
つたならば、アメリカは言うこととすることと違うぞという非難がある。そればかりではなく、アメリカがもし朝鮮問題に対して、干渉しなければ、アメリカはアジア十億の民族に対してプレステイジを失う、私はアメリカはこれに干渉すると思う。民主主義を擁護するため、アジアの自由国家を防衛するために、ここで共産主義を食いとめ、共産党の侵略政策をとめるために、私はアメリカは必ず朝鮮問題に干渉すると思うというたら、その夜が明けてみると、アメリカはそうきめた、国連の
政治委員会においてもこれに賛成したということがありました。ガンサーが立つ前に、私はどうだ
つたと
言つたら、この点はあなたに負けましたと
言つて立ちましたが、そういう状態ですよ。アメリカが何も進んでアメリカの国益のために朝鮮を防禦しようという必要はない。太平洋におけるところの自由国家を防衛しようとする
建前からい
つて、兵を出しておるのだ。その自由国家たる一国の
日本が、これに対してできるだけの援助をし、好意を持
つてすることは当然のことである。のみならず、
日本はアメリカに
戦争をしかけた、にもかかわらず、アメリカは今日対日援助物資も送
つてくれる。今日
日本の
国内の
治安を維持するために、東洋の平和を維持するために、
国民の税金をしぼり出して、
日本に駐留軍を置くことさえ同意していてくれるのであります。それに比較して、中共やソ連は何をなしたか。せつかくつく
つた共和国を滅ぼそうとして三十八度線を破
つて来たではないか。ソ連のごときは、
日本が原子爆弾にやられて足腰の立たないそのあとに持
つて来て、大兵を満州に送
つて、そうして百数十万の
日本の捕虜を連れて行
つた。血の一滴も流さずして千島、樺太をと
つたではないか。この国と
日本はどう手を握ろうとしてもできないではないか。そういう実情であることを
国民全体に知らしたならば、
日本の今日の外交政策が、アメリカ一辺倒だなんという
誤解を、私は一切雲散霧消せしめることができると思う。なぜそういうことに
政府はより多く御努力なさらないか。もちろんそういうことを知らせるために、外務省の役人の方などは、
日本の各地へ行
つて御講演なす
つて、おりますが、なぜそういう場合に議員をお用いなさらないかと私はこう言う。今日四百六十六名の衆議院議員、
国民と一番よく接触しておるその議員を用いて、たとい外務省のお役人が事実を
知つておるとはいえ、それが講演するならば、それらと連絡をとり、提携するようにして、なぜ
国民をして
日本の国情、極東の実情を徹底せしめ、
日本の外交政策がアメリカ一辺倒だなどという
誤解を除くようになさらないのか、これが私の
考えであります。
さらに
日本の人口問題や
経済問題を解決しようとする場合に、ブラジルの移民などは大した問題でない。遠くして、船もなし、なかなか簡単には行けない。向うで一年に九千家族を受入れてくれても自由にはならない。そこで
日本の
経済発展を
考えましても、人口問題の解決を
考えても、東南アジアに何としても目を注がなければならない。この春、アメリカのトルーマン大統領は、東南アジアに対して、アメリカはかなりの資金を投資する用意があると言うておるじやないか。それに対して、
日本は東南アジア、フィリピンにせよ、その他ジャワにせよ、スマトラにせよ、あらゆる方面に人を派して
——なるほど国交が回復しておらないけれども、私は
日本の
国民を代表する国
会議員が行
つて、向うの人と自由に接する機会を持
つても、向うは歓迎して、これを拒否するものではないと思う。また
日本ではお役人といえばたいへんいいように思いますけれども、フイリピンなどは四十年間アメリカの民主主義の
政治に教育された国でありますがゆえに、
日本の代議士だ
つたら尊敬するが、お役人だ
つたら案外尊敬しないかもしれない。実はフイリピンの問題も
考えて、最近において賠償問題を解決しようとして、その準備を進めておる。これはけつこうであります。しかしこれはどろぼうを見てなわをなうようなことで、早くやらなければならないとい
つて、今にな
つてあわて出すようなことではない。
日本の独立はことしの四月二十八日実現されております。それから今日までどういう手をお打ちにな
つたか、これらに対しても、ほとんどなさ
つたことは私はないと思います。また
日本の実業家があつちへ行
つて、ずいぶんいろいろな
経済的の連絡をと
つたこともありましようが、それを
政府で
知つておるだけではいけない。そういう人をなるべく利用して、そういう人の報告を聞いて、それを
国民に宣伝するように御努力をなさ
つたかといえば、
一つもしておらない。東南アジアの開発はアメリカでは歓迎いたしております。
日本の人口問題に対しても、
日本がこれに手をつけることに同情をいたしております。
日本の原料資材もこれから得られることが少くありません。技術や労務者をや
つて、
日本の人口問題の一部の解決ができることも、これにあります。ただ問題は、インドネシア、フイリピンは、
日本が侵略してはいけないと、
日本の再
軍備に対しては非常に恐怖の念を感じておることも事実であります。そういうことを解くについては、NATOと同じく、
日本が太平洋におけるアジア全面における安定勢力として、みずから主唱して、太平洋の集団共同防衛機構をつくるぐらいなことを
——今計画した
つて実行できないかもしれないけれども、そういう方向に御準備をなされてはいかがかと思います。しかるにただいまは、
日本を守るために、
日本において
安全保障条約に基き、アメリカの駐留が行われておる。フィリピンとアメリカの間では特殊な防衛協定ができておりましよう。またアメリカと濠洲とニユージーランドの間でも、三国のある協定ができておりましよう。ばらばらじやないですか。太平洋の前面にお
つて、東洋の前面にお
つて、アメリカも
日本の将来の安定勢力たらんことを希望する。
日本の
国民も、少くもアジア諸国の中においては、うぬぼれるわけではないが、ちよつと他と比べると、群を抜いておる
国民でありましよう。しからばこの
国民が独立にな
つたならば、それらの国の
誤解を解くこと。その
誤解を解くには、私はこういうことが一番いいと思う。
日本の
国民は好戦主義者だ、あるいは
日本に再び
軍備を持たせれば危険であるというような
考えを起すのは、過去における
日本の歴史を知らないからである。
日本の
国民は好戦
国民でもない。軍国主義者でもない。これを
日本国民をかくあらしめたものは、明治三十一年に山県公が、
日本の陸海軍大、中将にあらざれば、陸海軍大臣たることができないという規定を設けたことであります。最初はこれを陸海軍の省令として、後にはこれを勅令として、ほとんど
国民をごまかして、
憲法違反であるにかかわらず、これをも
つて日本の中心勢力とした。その結果、陸海軍の大、中将が結束さえすれば、どんな内閣でもつぶすこともつくることもできた。そのために軍人はやがて
日本の政権を壟断するようにな
つた。そうして大それた、
日本の
国民の希望せざるところの太平洋
戦争のようなものを引起して、そうして
日本を今日のようなみじめなことにしたのである。これが
はつきりしたならば、どうです、特別の人を送
つて、濠州やニュージーランドに講演さしたりいろいろして、
日本の
国民は好戦
国民でない、過去において
日本が誤
つたのは、こういう法制、制度が
日本の
国民をここまで引きず
つたのだということを、親切にこれらの国々に納得せしむる方法をおとりになりましたならば、こういうことも氷解して、
日本が再
軍備をいたしても、
日本は御同様に共産主義の防衛をしてくれるので、
日本が再び侵略主義を繰返すようなことの心配は絶対にないと、フイリピンにおいても、インドネシアにおいても、濠洲においても、ニユージランドにおいても、私は納得してくれるものと思います。なぜ
政府はこういうふうな方針をおとりなさらないのか。
また御
承知の
通り、アメリカは将来は太平洋の平和を守るためには、何としても
日本の
国民と提携しなければならない。アメリカ人は口に同盟などということを言うことをきら
つた国民でありますが、近ごろはアメリカにおいても、どうもやがて日米同盟でもするくらいな密接な提携をしなければならないというようなことを、アメリカ人みずから
言つております。極東における
日本人というものは、どうも他の
国民とは違
つた国民だ。この
国民がなぜこんなにな
つたろうというので、アメリカではどの大学においても
日本語を教えない大学はない。そればかりでなく、英国における東洋通の一番偉か
つたジヨージ・サンソン男爵を、コロンビア大学が聘して、東洋研究の講座を持たしておる。「羅生門」などは、アメリカのような進んだ映画国でほとんど興味を持たれないと思
つたが、あれを、少数でありますが、アメリカの芸術家、識者
たちは非常に認めておる。なぜこういうものを至るところで上演しておるかといえば、アメリカ人はこう言う。これによ
つて日本の
国民を理解できるのだ。ある加州大学の教授のごときは、近松の「紙治」を訳した。これから近松のものをみんな訳して、アメリカに紹介するつもりだとさえ言うております。こういうほどアメリカ自体が
日本に手を伸ばしております。これに対しては、
日本はどうしてアメリカ人を
日本の
国民にもつと徹底せしむるようになさらないのでありましようか。アメリカ
国民には、領土の野心なんか歴史の上においてはありません。アメリカが朝鮮において、ただアメリカの利益のために兵を出しておるなどと
考えるのは、アメリカの
国民に、一人もありません。ただ極東における共産主義の侵略行為、共産党の進出をどうして防衛するか、ここの第一線で食いとめなければならないという、ほんとうに東洋の平和を愛し、自由国家の提携をし、民主主義を世界の各
国民に普及せしめたいという一念にほかならないのであります。ここにおいて
日本国民の中に、アメリカ一辺倒の外交政策だと非難の声を上げさせるということは、いかにも
政府が私は不用意ではないかとこう思うのであります。これらに対しても、私は
日本の
国民をしてもつとアメリカ人というもの、アメリカの歴史、アメリカの現状というものを徹底的に理解せしめて、ちようど大西洋において多数の
意見の違いはありましても、最後には英米が提携して、NATOのような共同の条約をつくるように、太平洋のこなたにおいて、
日本が重要なる
地位を占むる国として、
国民をしてよくアメリカを研究させ、アメリカを理解せしめて、もう少しアメリカに対する
誤解を解いて、ほんとうに日米水入らずの親善提携のできるような方策を、なぜもう少し積極的にお立てにならないか、なぜそういう行動をおとりになららないか、こういうことが私の
質問の要旨であります。
さらにまだこまかいことがありますけれども、私は
質問することが
目的でないから、ただひ
とつこの場合大蔵大臣にも伺
つておきたいことがあります。大蔵大臣は御
承知でありましようけれども、今までの補正
予算というものは、十五箇月
予算とか、十八箇月
予算とかい
つて、相当補正
予算を見れば、明年度の
予算計画がわかるようにな
つてお
つたのでありますが、今度の補正
予算はほんとうのサプリメンタリ・バジェットで、それが何もありません。そしてすでに御
承知の
通り、米価の問題もきま
つております。また公務員の給与の問題もきま
つておるし、鉄道の運賃も定ま
つております。これらの見通しから明年度の
予算は、どういう方針で編成するつもりであるかというようなことも、御
説明ができはせぬかと思う。またそればかりでございません。進駐軍に対する五百何十億の問題も、これは
国民にはどうもわかりにくい問題でありますが、これらの問題も、ただ数字を並べるばかりでなく、なぜこういうことにな
つたか、これをどうするか。さらに私は大蔵大臣としてお
考えを願いたいことは、池田大蔵大臣はよくおやりくださいました。最も困難な時期にアメリカのドツジの政策に対応してよくやりました。けれども池田大蔵大臣のやりましたことは、あまりにインフレーシヨンを抑制せしめたいということの一方と、根が租税だけの、大蔵省におるときに知識を持
つた人でありますがゆえに、生産方面や
経済方面に対して、どうも徹底的の知識がなか
つたためか、それで先生が気の毒だけれども、中小商工業者の問題を起すようなことにな
つたと思います。独立の
日本としては、もう少し中小商工業者を活発に働かせるような金融政策を講じなければ、
日本の貿易を振興せしめたい、
日本の産業を振興せしめたいと申しても、
日本の大規模な工業は紡績工業、繊維工業くらいなもので、まことに微々たるものであります。何とい
つても
日本の貿易を振興するにも、
日本の
経済を堅実に引伸ばして行くにも、中小商工業者が主体であります。これをよく
考えなか
つたところに、池田財政に対する非難が盛んに行われたのであります。向井大蔵大臣は幸いに税をとることや銀行のことには、あまり経験を持つよりは、通商貿易や産業のことに御経験のある方で、仕合せだと思いますが、そういうことを考慮して、明年度の
予算をいかに編成するか、どういう
目的でやるか、重点をどこに置くかということを、この機会において御
説明なされば、
国民が向うところを
知つてかなり安心されると思いますが、きようでなくもいいが、どうかひ
とつそういうことのために御努力願いたいと思います。
これだけで私の
質問を打切
つて、あと中曽根君に時間をお譲りしたいと思います。