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1952-12-02 第15回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二日(火曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君 理事 勝間田清一君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植原悦二郎君    岡本  茂君       加藤常太郎君    北 れい吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       田子 一民君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       本間 俊一君    南  好雄君       森 幸太郎君    山崎  巖君       川崎 秀二君    北村徳太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    中曽根康弘君       早川  崇君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       石井 繁丸君    片山  哲君       河野  密君    西村 榮一君       平野 力三君    水谷長三郎君       伊藤 好道君    稻村 順三君       上林與市郎君    成田 知巳君       八百板 正君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         農 林 大 臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         通商産業政務次         官       小平 久雄君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十二月二日  委員星島二郎君及び小島徹三君辞任につき、そ  の補欠として塚原俊郎君及び川崎秀二君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これから会議を開きます。  この際お諮りいたしたいことがあります。さき委員会におきまして、明三日午前十時から参考人意見を聞くことに決定していましたが、その後における議事を進めて行く都合によりまして、さらにその日取りにつき、理事会で協議いたしました結果、その申合せによりまして、来る六日午前十時より参考人意見を聴くことに、日取りを変更いたしたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定をいたしました。  なお事情によりまして参考人の人選を少し変更いたしました。それは前会御報告いたしました八幡製鉄株式会社常務藤井丙午君のかわりに、東京商工会議所理事中小企業委員会委員長の五藤齊三君を選定いたしました。御了承を願います。     —————————————
  4. 太田正孝

    太田委員長 それでは昭和二十七年度一般会計予算補正外二案を一括議題とし、総括質問を継続いたします。北村徳太郎君。
  5. 北村徳太郎

    北村委員 現在世界情勢が容易ならぬときに、国内情勢もまたはなはだ容易ならぬものを感ずるのであります。かような際に、われわれは新しく独立した日本として、世界的視野に立つてどういう進路を求むべきか、このことはきわめて重大な問題であり、国民関心事であると思うのでありまするが、先般政府から発表せられました新内閣重要施策要綱というものを一応拝見いたしました。これが現在国民の問いかけに対する答えであると存じたのでありますが、読んでみるとまことに事務的な作文であつて、具体的な方法が示されていない。いろいろな政策が並べてありますけれども、おのおのの政策の間の統一がない。単なるお題目のような感じがするのであります。従いまして、私はこういう要綱に基いて、さらに首相以下の施政方針演説というものを十分傾聴いたしたのでありますが、これも必ずしも要綱以上のものではなかつた。はつきりした使命観も出ないし、熱意も感得することができなかつたのであります。但しその中で国民道義高揚といつたような、ある意味からいうと、復古調だといわれるような言葉が出ておるのでありますけれども道義を高めるということにむろんだれも異存はない。これは政党政派の問題ではございませんで、今の日本現状というものをまじめに考えて、そのことがいかに必要であるかということについては、もちろん私どももそのことを痛感いたしまして、こういう呼びかけに対しては、これはほんとうに真剣に考えなければならぬ、かように思つておるのでございます。  しかし何よりも道義の問題は、まず手近いところ、法秩序に対してこれを尊重するということが第一歩であろうと思うのであります。従つて法秩序を守るということを政府みずからもしなければならぬ。人事院があつて人事院の存在の意義が明らかであつて、また裁定機関等があつて、それぞれのそういう政府の重要なる機関が厳密に考案いたしました勧告あるいは裁定等があつても、政府はこれに従つていない。政府みずからが法秩序をはなはだしく軽んじて、その結果労働秩序の確立さえもはばんでおるやに思われるのであります。これでは道義高揚問題を唱えましても、はたして国民が納得するかどうか。こういうことが非常に問題として考えられるのでございますし、また国民全体の道義高揚は、われわれもまたやはり共同の責任として負わねばならぬことであると存じます。  しかし政府の部内においてどういうことがあるか。今日ほど汚職事件の頻発することはない。毎日汚職事件の記事のない日はないというくらいな現状であります。電力会社の利権をめぐつて国民の納得し得ないものが今なおある。電気通信省においては三百人以上の汚職者を出しているけれども、当の責任大臣はあまり道義的な責任をお感じになつていらつしやらない。公明選挙国民あげて非常にやかましく叫ばれたのでございますけれども、その公明選挙の目途とすることとは反して悪質な選挙違反が行われた。そうしてその悪質な選挙違反に関係あるやに聞く人が、依然として閣僚の地位におる。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)こういうことで一体政府道義高揚の宣伝をやられても効果があるかどうか。まずおひざもとの方からこれは少しく粛正して行く必要があるではないか。青年の不良化の問題、学生に近ごろはなはだ不届きな行動があるといわれておりますけれども、こういうような政治現実面並びに今われわれが毎日ぶつかつておる生活環境というものが、この状態のままで道義高揚ということができるかどうか、これは非常に大きな問題であると私は思うのであります。  ある中国の有力な新聞は論説にこういうことを書いております。「日本東京においては、三歩歩めば酒庫あり、五歩歩めばキヤバレーあり、十歩歩めばヌードあり」とこういうことを書いて、「われわれの友だちは道義高いかおりを持つてつたけれども、今やこのていたらくである。」と論説に掲げておるのであります。こんなふうな状態道義高揚を一体どこから手始めに、どういう方法でどうしてやろうとされるのであるか、こういうことについて非常にまじめに考えねばならぬ。  一面もう一つ考えねばならぬと存じますことは、最近の政治の中に陳情政治という言葉で呼ばれるほどの陳情がどうもずつと続いておる。全国都道府県市町村、その責任者はもとより、その会議体の議員の面々がほとんど連日引返し引返し東京に集まりまして、陳情運動をやつておる。陳情をやればやりがいがあるという政治である。運動しなければだめだという政治である。こういうような政治の暗い面が東京をにぎわして、そうして東京料理屋の繁昌になつている。こういうようなことは非常に情ないことである。ひとりこれを自由党内閣責任に帰するというような意味ではございません。これは国のために非常に憂うべきことであつて、どうしてこういう陳情政治をやめるか。これは国費の濫費である。新たに国を興す力がどこにあるか。こういうようなことをやつてつてよいのであるか。これは実に大きな問題であると存じます。私は一昨年ボンでアデナウアー首相に会いました。国会も見て参りました。多少向う事情も見て参りましたが、日本における現状のような陳情というものは見つからなかつたのであります。陳情をやり、運動をやればやりがいがあるというような政治の現在の様相というものを改めなければならぬ。なかんずく社会全般のことはさしおいても、公務員秩序というものを引締める必要はないか。  第三次吉田内閣綱紀粛正内閣であると首相みずから言われた。これに私どもは期待をかけた。しかるに相次いでスキャンダルが起つた。これはまことに残念なことでございまして、昔の官吏服務紀律には、官吏は宴席に列してはならないというような戒律さえもあつた。それが行われたか行われないかは別問題でございますけれども、こういうさ中に自由党遊興飲食税を軽減せられた。これは党勢拡張になるかならぬか知りませんけれども、こういうような矛盾というものは、やはり心ある国民はまじめに考えておる。こういう点を私は問題といたしたい。  道義の問題はさきに申しましたように、単なる経済政策等の問題ではございませんので、これは国民全般責任を負うべき問題であるし、われわれもまた道義を高めるということのためには努力いたしたいと思いますが、せつかく新しい施策要綱の中に道義高揚ということをわざわざうたつておられる。第三次吉田内閣綱紀粛正内閣であると首相はみずからおつしやつた。そこでこの重大な問題に対してどういうふうな方法、どういう具体的な施策をもつて道義高揚をおやりになろうとしておるのであるか、私は率直にそのことを伺いたい。このことに関しては決して協力を惜しむものではない。どうかその意味でまじめにこの問題を取上げてお考えを願いたいと思うのであります。  以上のような理由でまずこの第一点について首相の御答弁を煩わしたいと思います。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。過日国会において述べました施政方針演説は、これは決して作文考えていたしたのではないので、その中に盛り込んでおる諸政策は、実行に移す決意を持つて申し述べたものであります。また予算等において、実施面については十分御監督を願いたいと思います。  また政府がいかにも法を守らないようなお話でありますが、たとえば人事院勧告、これは勧告を尊重いたしまして、公務員給与等のベース・アツプを考えております。但しこれは財政全体から勘案して善処いたしたいと考えております。その他の勧告についても政府は決して無視はいたしておりません。  また諸官庁等においてスキャンダルその他の問題があつた場合に、政府は決して看過いたしておりません。その罪状に従つて、法を遵守し、法に従つて処罰することについては決して躊躇いたしておらないつもりであります。  道義高揚についてどうするか、あるいはいろいろな飲食店等が盛んに起るがということであります。これは御指摘通り、私もそう思いますが、しかしながらこれはおのおの成規手続従つて営業許可を申請いたすのであつて、これを取締るのにもやはり法律に従つて取締らなければならぬ。その飲食店等が非常に多くなつたということは、一方から考えてみれば、社会生活の安定した表徴とも考えられないこともないのでありまして、しかしそれが……(発言する者あり)聞きたまえ。それが社会道徳その他においてどういう影響を及ぼすか。それは御懸念の通りわれわれも考えますが、しかしながらこれも、今申した通り成規手続従つて届出を出したものを抑圧するということもできますまいし、これは国民諸君あるいは政党諸君協力にまつてのみ、その目的を達し得るであろうと思います。また道義高揚の具体的な、一層進んでの説明は所管大臣から答弁いたします。
  7. 北村徳太郎

    北村委員 ちよつと首相お答えの中に食い違つている点があるのでありますが、私が遊興飲食店等のことをあげましたのは、元来こういうわれわれの直面しておる時代においては、ほんとう国家意思をもつて、できればそういう浪費は蓄積に向わしめるべき、道義的な一つ政治の原理というものがあるはずである。しかるに自由党においてわざわざ遊興飲食税を軽減したということは、こういう奢侈に属する消費性向に対してむしろ奨励したような感があるので、私の申し上げましたのは、遊興飲食税等を軽減されたということの考え方の中に、現代の庶民の悩みというものをほんとうにまじめににらんでそういうことをされたかどうか、そういうことを問いたいのであります。但しこれは必ずしも御返事をしていただくに及びません。  ただ一つ、役人の中に、もし法に反する者があるならば必ず処分するという意味のことをお答えなつたので、これは私はきわめて満足をいたします。そういう事実があるいは近く現われるかもしれぬというおそれを持つておりますので、そういう際にはただいまのお言葉従つて、断固処分をされんことを望んでおきたいと思うのであります。  それから第二の点は、これはやはり重要施策要綱の中に現わるべくして現われていないと思いますことに、人口問題があるのでございます。人口政策というものが一つも出ていない。これはまことに今日の日本の直面しておる大きな問題であつて日本において人口歴史苦悶歴史であるといわれておりますが、この苦悶歴史現実に直面して、われわれは、いまさら言うまでもございませんけれども、敗戦によつて領土は約四割五分少くなつた。しかし人口密度は逆に五四%上昇しておる。徳川時代よりも少し領土減つて人口は約三倍、正確に言えば二・七倍増加しておる。こういう中でいろいろな資源地帯失つて、この日本自立経済をこれからやつて行くのでございますから、これは容易ならぬ問題である。これはたとえば鉱工業生産などは、戦争前三年の平均に対して四割近くも上昇しております。これは非常にありがたいことだと思うけれども、一方国民生活水準戦争前三年の平均にはまだ達していない。ようやく八〇%程度である。これは私は一つには今日までやつて来た政府財政方針というものが国民経済を圧迫しておる、この事実を見のがしてはならないけれども、同時に日本過剰人口の圧力のために、生産は上昇したけれども今なお低い生活水準に置かれなければならぬという非常に苦しい宿命を持つておる。しかもこれをどうして解決するかという問題は、これはなかなか容易ならぬ問題でございます。一朝にして解けないし、おそらくまた多くの方法が必要であると思うけれども、たとえば一つ、いまだ加入はできませんけれども国連などの国際正義あるいは国際信義に訴えて、日本過剰人口の問題について、何かはけ口を求めるというふうなことも考えなければならぬでありましよう。私はやはり一昨年、国連の本部でオースチン・アメリカ全権大使あるいはリー総長から招かれたときに、日本人口問題を率直に述べて来たのでありますが、こういう問題について何ら人口政策がない。人口政策なしに日本産業構造考え日本自立経済考えるということは無理である。これに対しては、少くとも政府人口政策はまずこういうものであるというような方向でも示していただかないと、問題は依然として問題である。こういう意味で、何がこれについて、日本人口問題、ことに人口政策について政府の所見をこの際伺つておきたいと思うのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 人口問題についてはしばしば国会においても述べておるのであります。この人口政策は、今御意見通り、これに対してただちに、適切にかくのごとくするということによつて問題が解決するというような、単純な問題ではなくて、さらにこれは日本だけの問題ではなくて、いわば世界的の問題といつてもいいのであります。たとえば食糧問題にしても、人口増加に伴いこれに比例する食糧増産がはかられておらないのであつて人口が憎加した結果食糧がどうなるかということは、今や世界的の問題になつているので、従つてこの問題は、結局国連とかあるいはその他の国際的会議において、取上げらるべき問題でありましようし、また取上げしめることが日本としても政治的に考えてみても、技術的に考えてみても、あるいは経済的に考えてみても、必要なことは明らかでありまするから、政府はむろんその場合においては提案するなり、あるいは適当な解決へ導くように努力はいたしますが、それにしても、そう簡単な問題ではないことは御指摘通りであります。今日日本としては、お話通り領土が狭くなつた。人口は多くなつた。どうするかといえば、まず産業を興す。あるいはふえただけの人口を収容するに足るだけの産業を興すとか、あるいは経済施設を改良して行くという以外に、だれが考えてみてもないと思います。政府として国力培養とかあるいは産業合理化ということを言うゆえんも、またここにあるので、これは単に政府だけが考えるべき問題ではなくして、国家問題として、特に国民政党、相協力してこの解決に当るべき問題であろうと思いますが、政府としてはできるだけのことはいたす考えであります。
  9. 北村徳太郎

    北村委員 今の御答弁は、私は少し不満足でございますが、これは他日また申し上げる機会があると思うのであります。  ただいま私は首相人口問題について若干の御質問を申し上げたのでありますが、人口問題との関連においても、あるいはその他の意味においても、どうしても貿易の問題が重要であると思うのでございまするが、政府で御発表になりました重要施策要綱の第一の二項というところに、「民主主義国との通商航海条約の締結、その他経済関係増進」こういう言葉がございます。経済関係増進というのはちよつとはつきりしませんけれども、これは輸出促進と読みかえてもいいのじやないかと思うのであります。同じく第五のところに、「生産規模拡大し、流通機構を整備して生産増強をはかる」云々とあるのでございます。これもきわめてごもつともな題目でありまして、これはこの通りに解していいと思うのでございますが、しかし問題は、輸出増進、あるいは生産規模拡大する、流通機構を整備する、生産増強をはかるといつてみたところで、需要のないところに供給のしようがないのでございまして、現実は八方ふさがりの状態である。生産は制限しなければならぬ。わずかに戦前に比べてまだ十分の回復をしてない事業において操業短縮を行つておる。こういうような現状でございまして、輸出は毎月減退しておる。当初、本年は十五億ドルぐらいの見込だといわれておりましたが、今や十一億ドル、あるいは十億ドル台になるのじやないか、そういう減少の傾向がございます。ポンド圏あるいはオープン・アカウントの地域において、特に減少がはなはだしいことは、御存じの通りであります。要するにこれらの地域ドル不足に悩んでおる。ドル不足を解消するために、輸入を制限したり、あるいは関税を引上げたり、そういうようなことを盛んにやつておる。これが輸出減退の大きな原因であると思う。もちろん日本経済の劣勢ということも忘るべからざるものでありますけれども、こういうようなことが、貿易に依存すべき度合いがますます高くなつているのに、逆に貿易の成果は上らない。非常に不振の状態である。これに対して、こういう減退を見ながら、やれ生産増強貿易増進生産規模拡大、こううたつてみても、今の現実にマッチする政策とは何かということになると、これまたから念仏の感がないとは言えない。二十六年末の国際収支を見ますと、一億八千万ドルの黒字になつております。このことは一応まことにけつこうでございますけれども、内容を見ますと、貿易においては六億三千万ドルの赤字になつておる。これが特需であるとか、駐留軍国内消費であるとか、言いにくいけれども特殊婦人のかせぎであるとか、そういうものによつてカバーされておるのでありますから、結果として黒字一億八千万ドルを上げたいというけれども貿易そのものにおいては六億以上の赤字である。こういう不健全、不安定な状態であるときに、これは一体生産増強する、貿易増進する、輸出促進するといつてみても、具体的に一体どうしようとするのであるか。ドツジさんが日本竹馬を切つた。しかしまた新しい竹馬ができた。それは貿易赤字である。貿易赤字という新しい竹馬ができて来た。これをこの状態のままで放置することはできないのでございます。日本経済が頼りに頼つていたところの輸出というものは、簡単に申し上げました以上の事実から見ても、はなはだしく不振である。従つて操業短縮をやつておるとか、滞貨金融をやつておるとか、内需への切りかえをやつておる、こういうことによつてかろうじて支えておる。エジプトあるいは近東諸国にまで少し伸びかけた輸出も、これは統制を受け、ドイツの進出等によつて東南アジア地域まで日本の商品は追い返された形になつておる。こういうような中で、政府のうたつておられる輸出促進生産規模拡大生産増強、この言葉は、まことに気楽に読める言葉でありますけれども、あまりにも苦しい現実から離れ過ぎておる。そこで、一応こういうことをうたわれた政府は、どうして輸出を振興させられるのであるか、どうして今の困難な状態を切り抜けようとするのであるか、まずその基本的な態度と申しますか、ざつとでけつこうでありますから、そういう根本的な方針について、関係大臣の御答弁を一応求めたいと思います。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 北村さんの御質問お答えいたします。  最初にお許しを願わなければならぬのは、私はほんの数日前に兼任を命ぜられたばかりでありまして、十分なお答えができぬかとも考えますから、ただ私が感じたままを申し上げさせていただきます。(「そんな信念のないことでどうするか」と呼ぶ者あり)私の信念を申し上げる次第であります。  今の輸出促進につきましては、これは今日のところ非常に重要な問題であります。しかしながらこの輸出の困難な点はどこにあるかということをきわめまして、それでこれに対処して行く以外に道はなかろうと思うのであります。その困難な点はどこにあるかと申しまするならば、第一に、何と申しましても各国が日本輸入を制限しておるという点にあると思うのであります。従いまして、その輸入の制限に対しましては、これはどういたしましても経済外交を展開いたしまして、経済外交によつて向うとの話合いをつける、こういうこと以外に道がないので、この点に努力をすべきであると思つております。  第二に、日本の品物が比較的高い、こういう点にあるのでありまして、この高いという点につきましては、国内の各産業合理化をいろいろ行う等、そういうことによりまして、どうしても生産費を安くして行く、こういうことにしなければならぬと思います。さらに現在のところ相当外貨を持つておるのでございますから、その外貨によりまして、輸入日本にできるだけはかつて、交換的に物をよけい出し得るようなぐあいにして、輸出規模の拡大をはかつて行くことが必要ではないかと考えておるのであります。その他あるいは金利を低下するとか、あるいはプラント輸出をどうかするとか、こまかい問題につきましてはいろいろございますが、ごく大筋はそういうことであろうかと考えております。
  11. 北村徳太郎

    北村委員 ただいま輸出が困難なことの原因の一つに製品高のお話がございました。これはまさにその通りでありまして、日本経済の悲劇は原料高、製品安というところにあると思うのであります。それで製品高の原因がどこにあるかと申しますと、原料高にある。なぜ原料が高いかといえば、近いところから持つて来ることができない。これは今経済外交というお話がございましたけれども、今日まで経済外交らしいものはなくて、言葉は非常に悪いですけれども、あまりにアメリカ一辺倒であつた近東諸国やアジア地域との関係を調整するための努力がはなはだ少かつた。この点が非常に大きな原因になると思うのであります。  たとえば銑鉄一トン当り日本では八十三ドルかかる、イギリスでは四十ドルくらいでできる。これはどういうわけかというと、鉄鋼を遠いアメリカからアメリカ船で積んで持つて来なければならぬというような状態にあることでありまして、日本経済自立のためには、私はどうしてもアジア地域の調整をもつと積極的にはからなければならぬと思う。それでなければ、日本の経済はいつまでたつても、原料高、製品安という悲劇が終らない。これは今小笠原大臣のおつしやつた通りで、製品高ということが一つはばんでいる。これは私が申すまでもありませんけれども、最近台湾で行われました硫安の入札についても、イギリス、西ドイツ、イタリア等々と比べると、日本の入札は一割あるいは一割以上高かつた。それがために国際入札がとれない、こういうような現状であります。従つてこの根本原因である原料入手先の転換をはからなければならぬ。  それにはアジア地域における経済外交と申しますか、友好善隣関係を一日も早く回復しなければならぬ。それに向つて努力は、今日までおやりになつていなかつたとは私は言わないけれども、はなはだとしかつた。この点もう少し御奮発なさる必要があると私は思います。  それからもう一つこの機会に私が伺つておきたいのは、いわゆる防衛生産の問題であります。今出血受注をやつている。これは資本の食いつぶしであります。しかも政府の防衛生産に対する態度ははつきりしていない。そこで注文を受けて、設備を広げた方がいいのか、悪いのか。資本を寝かすことが安全なのかどうか。そういうふうな不安な状態であつて、しかも背に腹はかえられぬので、やはり出血受注をやつているというような、資本の食いつぶしを依然としてやつている。これまた、私はドツジさんの言葉をかりれば、竹馬のもう一本の足がこういうところに出て来た。しかも世界市場はだんだん人為的に狭小化して行く、こういうふうなことになつている現状において、原料入手先は一日も早くかえるような方向へ努力をしなければ、いつまでたつてもだめであると思うのでありますが、この点について何か具体的な御成案があるかどうかということが一つ。  それから今合理化によつてというお言葉がありました。これは日本の設備が陳腐化している、これを早く近代化しなければならぬことは、いまさら言うまでもないのであります。しかし日本現状において、現に紡績の操短によつて、本年に入つて約四万三千人の女工さんが首を切られており、漸次農業人口がふえる傾向が見えて来た。こういうときに、合理化に伴う人員の整理と、これに対処する失業対策をどうするのであるか。この問題をきめてかからぬと、合理化は簡単に言えない。小笠原農林大臣は、日本産業合理化と、よつて起るべき失業並びにこれに対する対策、並びに先に申し上げました原料入手先の切りかえにつきまして、どういう御計画があるか、そのことをこの際承つておきたいと思います。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま原料入手先はできるだけポンド地域にしたいというので、それぞれさような方向に進んでおりますが、それなら具体的にどうするかという問題につきましては、たとえば日英貿易協定等は目下改訂の途上にありまして、これにつきましても、できるだけ日本の方もそういう地域にこちらからの輸出促進するとともに、向うからも原料をよけい買い得るような方向に、今話を進めているのでありまして、これはおそらく本年中には話がまとまると考えております。  それから合理化の結果失業者が出るではないかという今のお話ですが、失業者の問題はこれは何らかの措置を必要とするのであります。しかし私が先般も申し上げました通り、たとえば公共事業が今いろいろな点で行われておる、こういう方面にもそういうことができましようし、かつまた農村で今度いわゆる食糧自給五箇年計画を立てまして、その線であるいは開墾、開拓等相当な面積をやりますので、その方面にも相当の吸叫ができるのではないかと考えております。なおまた北村さんよく御承知でありましようが、牛一頭は人間十人を養うといわれておりますから、畜産の奨励等をやることによつても、相当これはできるのではないか、かように考えております。そのほかできますだけは移民等の奨励をいたしますが、これはその点だけお答えを申し上げます。(「それは思いつきじやないか」と呼ぶ者あり)  兵器生産の問題につきましては、私どもは現在のところ、これは北村さんもよく御承知のごとくに、日本輸出産業一つのものとして考えておるのでありまして、輸出産業の点のみで今考えておるのですから、いわゆる防衛そのものについての防衛生産としてのそういう考えでなく、輸出産業として向うの注文に応じて、できるだけのことをいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 北村徳太郎

    北村委員 なるべく私は質問を簡単にいたしたいのでありまして、通産大臣になおお尋ねしたいこともございますが、今度は農林大臣としての小笠原さんの御答弁を願いたいと思います。  今食糧増産五箇年計画等のお話がございまして、これは当然やるべきことであると思います。日本では三十年前の人口四千万時代に、六百八万町歩の耕地をもつて、六千三百万石くらいの生産をしておつたのでありますが、三十年後の今日、その間国費をつぎ込むこと莫大でありますけれども、結果としては耕地は九十九万町歩、約百万町歩減つており、人口は二倍になつておる。こういうような状態でありまして、その他資源地帯と切断されたことは申すまでもないのであります。こういうふうな現状にありまして、食糧についての考え方というものは、今までのような考え方でいいのかどうかということを、この辺でよほど考え直す必要があると思う。  それはしばらくおきまして、私は本年の米の問題について、農林当局のとりきめになお合点の行かぬ点が少しあるのであります。本年度の産米は十月十五日の発表によりますと、六千四百八十二万石と発表されておる。これは前五箇年の平均に比しまして二百三十七万石の増産で、実にありがたいいことであると思うのでございます。従つてこれだけ増産がございますと、本年の供出量は大体二千七百万石くらいになるといわれておる。しかるに供出は二千四百万石を切れる二千三百何十万石というところできまつたのでございます。そこで米は豊作であつた、しかし供出量は減つた、こういう矛盾があるのでありまして、もしこのことについて何か解釈を加えようといたしますと、これは超過供出に比重をかけて、農家を喜ばしてやるというような意味ではなかつたかと思うのでございます。そうであつたかどうかわかりませんが、少くとも本年は過去五年の平均に比べて、二百数十万石の増産をしておるにかかわらず、供出量が二千三百万石台で決定したということは合点が行きにくい。従つて少し悪い言葉で言うと、これは物価体系全体の重要なるものとしての米価を考えるよりは、一応政治的なやみ取引で農家を喜ばせるというような方策をとられたのじやないか。こういう点について一応まずお尋ねをしておきたいのであります。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの点は、実は御承知のごとく、率直に申しますと、従前はあるいはGHQとかいろいろのものがありまして、占領軍の関係で——言葉が悪いかもしれませんが、相当強く話ができたのでありますが、今の独立した態勢におきましては、まつたく自由に相談をするほかございませんので、つまり相手が納得が行きませんことには、結局供出をさせられませんので、相手が納得の行くということで話をとりまとめることになりました結果、御指摘のごとく本年増産になつておるのに、供出量が減つておる事情でございます。
  15. 北村徳太郎

    北村委員 私は農家の今までひどく圧迫されておつた経済が是正されるということは賛成なのであります。しかしながらこれは日本の物価体系の中で非常に重大なものでありますから、その総合的な勘案に基いて、きわめて科学的なきめ方をなさるべきである。政治的考慮から、この辺でよかろうというようなことであつてはならない。もちろん悪い言葉でありますが、ジープ供出という言葉があつた。そういうことがなくなつたので、農家の張切つた気持がゆるんだ、政府努力もこれと同じようになつたというような結果であろうかと思います。  それはそれといたしまして、私はもう一つの面から、日本の農村のことを考えてみたいと思うのでございます。昨年十一月の労働力人口から申しますと、総体で三千七百三十二万人、その中で農業人口は千七百三十四万人、すなわち全体の労働力人口の四割六分四厘を農業が占めておる。これだけの約半分に近い農業人口が、日本の労働力人口の中を占めておつて、そうして昨年の農家の収入が国民所得全体の中に占める割合は、一割六分八厘に落ちておる。二十六年は一割八分、二十四年は二割四分七厘であつた。だんだん下つて参りまして、二十七年は一割六分八厘。戦争前の最もみじめな、日本には農業奴隷が存在するなどとアメリカ人が言つた時代が、一割五分台でありまして、それに近づきつつあるという現状は、このまま放置すべきではない。私は農家の収入を増すことは非常に必要だけれども、さつき申しましたように、物価体系全体、日本の総合経済のわくの中で、全視野においてこれを見直すことが必要である。今回のような措置は、まことに手かげんでやられたような感がいたしますので、そのことの国民経済全体に及ぼす影響というものを考えなければならない。そういう点から、労働力人口の半分近くをかかえながら、所得は一割六分台であるという現状を何とかして打開しなければなりません。これについて私どもは米価の二重価格制というものをとなえた。これは先般私ども改進党の川崎代議士の質問に対して、二重価格制はやらないという農相のお答えでございましたが、やはりそうであるかどうか。  なお日本の経済不況の一つの原因——ほかにももつとございますけれども一つの原因は、人口の半分を占める農家が今のような状態にいためつけられておる、妥当な米価を受取つていない、このことが日本の不景気の原因である。日本の都市は発生的に申しましても、農村を背景としておる。農村を背景として都市を形づくつておる。今のごとく人口の非常に多くの部分を占める農家が、購買力を持たぬという状態で、都市の商売が繁昌しないのはあたりまえである。金詰まりもあたりまえである。従つて国際的な市場の開発がなかなかできなくて、外需を内需にふりかえなければならぬという現状において、そういう観点から考えても、国内市場開発のために、私は農家経済をもう少し真剣に見直す必要があるのじやないか、こういうふうに思うのでございますが、これについて農林大臣のお考えを伺つておきたいと思うのであります。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えします。米価をきめました事柄については、先般川崎議員の御質問に対してお答えいたしました通り、パリテイ計算等を考慮いたしまして、七千五百円と買入れ価格を決定した次第でございます。ただこの価格が安いか高いかという問題につきましては、農林省の調査によりますと、十二分とは申されませんが、相当な価格である、こういうふうに言えると存じます。  さらに二重価格制をとるかどうかという問題につきましてお話がございましたが、この点につきましては、ただいまのところ二重価格制をとる考えを持つておりません。
  17. 北村徳太郎

    北村委員 私の申し上げた意味は、米価が妥当であるかないか、これはもちろん問題であります。しかし特に申し上げましたのは、日本の物価体系を構成する中で米価が重大である、従つて日本経済を総合的に見て、これで妥当であるかどうかということと、もう一つの観点は、国民所得の中に占める農業の所得があまりに少い。これを考えることが政治であつて、米の値段を幾らにしようかということは必ずしも政治でない。これは取引であります。従つて政治家としての小笠原農林大臣は、日本経済の中に占める、また日本国民の中に占める農業人口というものに対して、国民所得的に見て、今の比重でよいとお考えになるのであるか、これを是正するということが政治の行き方であるとお考えになるのか、政治家的な見解を伺つておきたいのであります。(拍手)
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの御質問でございますが、私どもはこの農家の所得部分が増加することは非常に望んでおりますが、大体現在のところ、たとえば生活水準について申しましても、農家は九—十一年に比べまして一一四以上のところにありますので、現在の国民経済の建前から見ればこの程度でやむを得ない、かように考えております。
  19. 北村徳太郎

    北村委員 この辺にしておきます。なお二陣、三陣の質問がございますから、詳細な点はあとで新進気鋭の私どもの代議士から質問をいたしましよう。  この際私は、これは農林大臣の所管であるかどうか存じませんが、日本食糧政策を再検討しなければならぬと思うのであります。これは各般の事情を詳しく申し上げる必要はないと思いますが、たとえば食生活そのものをかえて行かなければ、いつまでたつてもいたちごつこをやつて日本経済は貧乏を続けなければならぬ。すなわちそのことは、米麦中心ということ、宿命的に米麦中心でなければならぬと考えること、それは一面国民保健的に申しますと、含水炭素に片寄り、蛋白質、脂肪が足りない、また一面国民経済的に申しますと、もし含水炭素を減らして、蛋白、脂肪をふやすような方法をとると、私の計算では輸入を半減することができる。こういうことを考えて行かなければならぬのじやないか。それで私は詳しい統計を持つておりますけれども、めんどうですから申しません。ごく簡単に申しますと、日本で蛋白が百分比にして二一・二、脂肪が五・九、含水炭素が八二。イタリアが蛋白が一四・八、脂肪が一三・一、含水炭素が七二・一。ヨーロツパでは含水炭素をよけいとる国民はイタリアでありますけれども、これは日本よりどうも大分少い。その他の国は略します。そこで日本国民の体位を高めるという点から考えましても、この八二という含水炭素をイタリア並の七二程度にする。そしてこれを少し改善いたしまして、蛋白一三、脂肪一五というくらいに持つて行きますと、さきほど、一匹の牛が十人養うというお話があつたが、畜産も奨励し、立体農業を奨励し、そういうことを通じて植物の脂肪もとる。あるいは海が広くて魚が多いのでありますから、そういうものを蛋白給源として、食生活そのものの改善に少し心をいたして行けば、少くとも輸入食糧のために払う莫大な金の半分を減らすことができる。そうして保健上もはるかによい結果を生むことができる。こういうふうなことについて私は——これはあるいは厚生大臣の仕事かよく存じませんけれども、農林大臣においてお答えができるならば、そういう方向へ努力をなさるべきではないかと思う。米麦一本やりで、今もなお食糧増産五箇年計画というものは、日本人は宿命的に米と麦を食つて行かなければならぬものだという前提に立つている。これを改善する意図があるかどうか。  なお蛋白の給源としての魚の問題がございますが、処理方法が悪い。それがためにいわし、たい等は魚体の五四%しか吸収していない。あとを捨てている。いろいろな方法があると思うのでありますが、そういう技術的なことはおくといたしまして、この問題に対して、一応農林大臣としてお答えができますならば、お答えを願いたいと思うのであります。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの御質問、私どもも同様な考えを持つております。日本人の食生活の改善につきましては、できるだけ努力をいたさなければなりませんので、その点からも、畜産の振興にも、お示しのような水産物の増産等を非常にはからなければならぬと思いますが、この食生活の改善ということはなかなか一朝一夕にも参りませんので、都市におきまして食生活の改善の普及及び啓蒙等に努めまするほかに、特に学童給食を今やつておりまするが、あの学童給食を通じまして、食生活の改善に進みたいと考えているのでございます。数百年にわたつている含水炭素、澱粉中心の食生活の打破は、いろいろ難儀な問題を含んでいるのでございますので、総合的な食糧自給あるいは食生活改善、また今お示しになつたような国民体位の向上、こういつたような目的のためには、ぜひとも強力に食生活改善のことを進めて参らなければならぬと考えております。
  21. 北村徳太郎

    北村委員 なお通産大臣としても、農林大臣としても、少しお伺いしたいことがございますが、あとが急ぐと思いますから、この辺で一応打切りまして、大蔵大臣にあとお尋ねいたしたいと思います。  これは私は御就任間もない大蔵大臣に、いろいろめんどうくさいことを申し上げてお答えを得ようと思つてはいない。ごく基本的なものの考え方についてまず最初にお尋ねをいたしたい。今日までやつて来た財政政策というものが、ドツジ・ポリシーというものでありますが、とにかく非常に型の古い通貨数量説的な考え方の上に根ざしている。そうして一面インフレーシヨンを収束させねばならぬという大きな問題がございますけれども、何にしても財政偏重の財政政策であつたということは、これははつきり申し上げてよいと思います。従つてこういう財政偏重の財政政策を強行したために、国の財政黒字で非常にゆたかであるけれども、地方財政赤字の火の車である。国民経済は漸次衰弱している。金融機関はオーバー・ローンである。私は均衡財政と言い得るためには、これは国家財政でも、地方の財政でも、国民経済でも、また金融機関でも、みなバランスするようなものでなければならぬと思う。これが今日まで国家財政偏重の財政政策を唱えたために、国民は金詰まりに青息吐息の状態である。こういう基本的な点においてこの際切りかえをやらなければ、私は日本経済の衰弱度というものはますます増して行く、こう考えるのでありますが、この点について向井大蔵大臣の補正予算等を考慮なさる、あるいは予算を考慮なさる上において、基本的な考え方としてドツジ・ポリシーはおやめになるのかどうか、あるいは修正なさるならばどういう方向に修正なさるのであるか、その点をまず最初に伺つておきたいと思う。
  22. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 北村さんにお答えいたします。財政金融政策運営の基本方針は、国民経済全体の安定と健全な発展をささえ、かつこれを促進して参りたいと存じます。従つてこれが運営の方式は、経済情勢の変化に対応する伸縮性を持たなければならないと存じます。ただいまドツジ方式云々とおつしやいましたが、経済の現状は、戦後の悪性インフレ収束時に次いでの朝鮮動乱後の世界的情勢に対処しなければならなかつた時代に比べますと、一応安定を示しております。これらの変化に応じて、従来の方式に変更を加える必要もあろうと存じますが、財政国民経済の一環として運営されるものでございまして、今日回復と安定をとりもどした国民経済を堅実に育成して参りますには、どうしても一部論者の唱えるようなインフレ政策は、この際採用するものではないと存じます。従つて今後の財政経済の基本方針としましては、健全財政、健全金融の方針をあくまでも堅持して、経済の実情に即してその運営方式を講じて行きたいと存じます。
  23. 北村徳太郎

    北村委員 私の申し上げた意味は、健全財政でなければならぬと思います。また均衡財政でなければならぬと思いますし、また国民経済財政が圧迫するようなことがあつてはならぬ。しかもインフレーシヨンになつてよいというのではございません。ただ、今までやつて来たのが財政偏重であつたと私は思う。均衡ならよろしいのでありますけれども、超均衡であつて、そのことをもつと具体的に申しますと、私はごく素朴な考え方としては、税金をとるのは行政経費をまかなうためだ。さらにつけ加えるならば、必要な度合いの社会保障と、それから財政投資によらなければとうていできない。一般企業ではできないような仕事はやむを得ないから財政投資でやる。これだけが税をとる目的でなければならぬ。しかるにドツジ・ポリシーというものは、資本勘定に属する財政投資の種を税金で吸い上げる。従つて税が重い。そのことが国民の力を越えて圧迫となつておる。これが経済活動を非常に鈍くしておる。こういうような事実にかんがみて、これは経費の勘定と資本勘定とは別個のものであつて、資本は投下されればもどつて来るものであるから、そのときの国民の購買力に依存して税の負担で吸い上げなければならぬものじやない。但し蓄積を失つた日本現状に顧みまして、税という強制貯蓄的な意味をもつて吸い上げるということは、これは急いで蓄積をやるという点からいえば、イージー・ゴーイングである程度やむを得ないと思う。やむを得ないが、いつまでもこの方式を金科玉条として税で吸い上げる。いつの間にか国家は大きな資本家のようなかつこうをして財政投資家になる。もつと具体的に言えば、官僚投資、官僚資本家というふうな形になつてこれが投下されて行く。投下されて行くところに一方においては国民経済を圧迫し、それは循環過程において一応還元がすみやかにされて、うまく浸透した場合にはうまく行きましようけれども、今日までの現状ではいつも吸上げ超過であつて、下の方は非常な火の車である。しかも財政に非常に大きな資本力を持つておるということが、その資本力を取扱う官僚と国内のいろいろな勢力と結びついて、国の政治をややもすれば腐敗させる。いろいろなスキヤンダルがその間から起り得るすきがある。こういうふうなことを今後も続けてやるということならば、これは日本の経済の前途にはなはだ望みが持ちにくい。そこでごく基本的な考えとして、今申し上げたような具体的な意味で、考え方をおかえになるのかどうか。今まで通り財政に吸い上げて、そうして地方財政赤字になつてもしかたがない、国民経済はどうも金詰まりで衰弱してもかまわない、オバー・ローンが解消しないけれどもそれもやむを得ない、こういう考え方であるのか、全体をもつと調整するために、全的視野に立つて再検討なさろうとするのであるか、これを私は向井大蔵大臣に重ねてお伺いしたいのであります。
  24. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまの御質問はしごくごもつともです。これからもどんどん政府の金をためて、かつてにこれを使つて行こうというふうな考えは毛頭ございません。それでできますならば、金融上産業資本にただいま持つておる財政資金を活用して、それでもつて産業を助長して行く。それからよけいな金を吸い上げるために地方財政が困るようなことはいたさないつもりでおります。
  25. 北村徳太郎

    北村委員 私どもは、ただいま申し上げましたような、基本の線に沿つて、これは税金でなければまかなえないという以外のものは、すなわち資本勘定として、経費勘定でないものは区別をつけて税負担を軽くするという意味において、補正予算の修正案をつくつておるのであります。ただいまの向井大蔵大臣のお言葉によりますと、私の言つたこと全部でないかもしれませんけれども、しごくもつともであるという御見解のようでございましたので、いずれ私どもの補正予算に対する修正案を提出いたしまして、具体的に御相談をいたしたいと思つております。そのことについて、どうかその際は大臣も御協力を願いたいと思う次第であります。  私は日本の経済の非常に不景気なもう一つの原因は、財政偏重で購買力を吸い上げぱなしになりがちであるという一つの事実と、いま一つは、さきにも申しましたけれども、労働力人口の四割七分ほどを占める農家に対する国民所得の割合があまりに少い。このことが日本全体の不景気の原因になつておると存じますので、これを修正しなければならぬ。このおもなる二つの観点に立ちまして地方財政を調整し、国民経済に活力を与える、こういう方策をとりまして、衰弱しておる経済にひとつ注射をしなければならぬ。こういうような考えを持つておるのでございます。これにも御賛成を得るかと思いますが、いかがなものでございましようか、これをお尋ね申し上げておきたいと思います。
  26. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 地方財政につきましては、いろいろ複雑な事情がございますから、そう簡単に、北村さんのおつしやるように、御賛成は申し上げかねますが、むろんそういう考えで進行はいたしております。
  27. 北村徳太郎

    北村委員 私は補正予算に対してもつといろいろな御質問を申し上げたいことがございますが、これはいずれ第二陣、第三陣にも質問があると思いますから、詳細なことは略することにいたします。ただこの際一つ二つ私ども考えを申し上げましてお考えを承りたいと思うことは、私は一つは大蔵省が現在の大蔵省の機構で予算を取扱うということが、妥当であるかどうかということについて、若干の疑問を持つのであります。まことにこれは、言葉は悪いけれども、予算に対する分取り政策というものが行われて、盛んに大蔵省に突貫する、予算季節ともなれば主計局長などはたいへんだということであります。これは大蔵省は、たとえば税をとるとか、金融政策とかいう他の官庁と同じような仕事に限りまして、予算に関する限りは、一大蔵省の主管でなくて、内閣の直属した、アメリカのバジエツト・ビユーローみたいにした方がいいではないか。私はバジエツト・ビユーローの当時長官のペースに会つていろいろのことを聞いて参つたのでありますが、これは国情が違いますけれども、やはり向うでは大統領直属のものとして、予算は各省に越えて、そしてその事務をとつておる。むしろそうした方がうまく行くのではないか、こういうふうな考えを持つておるのでございますが、これについてお考えはどうか、これが一点。  もう一つは、この財政投資がだんだん多くなつて来る。これがさつきちよつと触れましたように、陳情運動等によつて動かされやすくなる。一大蔵大臣が必ずしも恐意的におやりになるとは言いませんけれども、やはり運動が大いに成功したといつて東京で田舎の陳情団の人が大宴会をやつておる場面にしばしば接するのでありますが、こういうふうなことがあることは、やはり政治として不健全である。すでに財政投資の資金が相当大蔵省の所管の中にある以上、これをもつとビジネス・ライクに、銀行の事務的な方法等によつて、合理的にといいますか、効率的にといいますか、運動陳情等によらざるきわめて事務的な、冷静な、効率的な、公正な独立の機関として、そういうものを扱わせる機関を設けるべきじやないか。こういうふうな考えをちよつと持つておるのでありますが、この二点について、なおさらに後日ゆつくりとお尋ねしたいと思いますけれども、一応これは大蔵大臣としてどういうふうにお考えになるか、この点を伺つておきたいと思います。
  28. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 内閣に予算局というふうな考えは前からもございました。それについて最近におけるわが国の経済運営の実情を考えますと、財政と金融の運営は緊密不可分な関係にありまして、この両方を通ずる総合的な調節が最も緊要でございます。また歳入の見積りと歳出の審査とは、予算編成にあたつては切り離すことができないというふうな関係がございますので、予算編成事務を金融行政並びに歳入調整面から切り離してこれを管轄するということは、適当でないと存じます。また外国の例を見ましても、イギリスあたりはわが国の現行制度とおおむね同様のやり方をいたしております。  次に、資金運用部の資金運用を大蔵大臣が管理運用するに、銀行ビジネス的に、効率的に運用するというような意味の御質問でございましたが、資金運用部の資金は、銀行貸付のように、一般産業に個別的に運用するのでなく、政府機関に対する出資金または貸付、あるいは金融債の引受けというような、財政及び金融全般の立場でその資金の運用をいたしますので、財政所管大臣である大蔵大臣がこれを管理運用するのが適当であると存じます。
  29. 北村徳太郎

    北村委員 今の運用部資金の問題でありますが、これはもちろん一般の金融機関の仕事とは違うのでありまして、財政運用の一つであるというふうなこと、従つて一方において政治問題にからむことは当然でありますけれども、これを運動陳情等によつて運動を多くすれば、陳情を多くすれば効果がある、運用部の資金がひつぱり出せるというような現状のままでは、これは何とかもう少し改正の必要があるのじやないか、こういうふうに思うのでありまして、私は、単にバンキングな、そういう仕事の通りにという意味ではありませんけれども、もつと合理的な事務的な、何かすつきりした姿でこれを処理する、たとえばという意味で銀行のビジネスのようなということを言つたのであります。そういうことにした方が一層効率的ではないかというような考えなのでございまして、これはさらに御検討願いたいと思う。私どもも検討いたしますが、検討の要があるのじやないかと思うのであります。  次に、私はさつきも申しましたけれども日本の経済の実情は、貿易赤字をわずかに他の国際収入でカバーしておる。そのカバーしているものが非常に不健全な不安定なものである。そういう竹馬に乗つかつているということを申しましたが、一方においてまた資本の食いつぶしをやりつつある。これはいかに資本の食いつぶしをやつておるかということは、たとえば今回の減税に見るように、低額所得者の減税を多くするということには、もちろん社会政策的に異議はないのでありますけれども、さればといつて、そういう最低額所得者の減税は、消費性向に拍車をかけるという事実が過去においてもある。そういうことになつては減税の効果がない。かえつてある意味においては害があるのでございまして、これはもつと全体的にものを見る必要があることはもちろんでございますが、同時に法人税というものはとりやすい、今までも盛んに増収をやつた、それでどうも少しイージー・ゴーイングで法人税をとることになれて、その方にウエートをかけ過ぎるきらいはないか。資本の食いつぶしの一例として申し上げますと、昭和十二年に比べて、昭和二十七年は法人の企業利益は二百倍になつておる、減価償却は百六十三倍に及んでおる、社内留保は二八四%である、しかし法人税は六百八十一倍になつておる。こういうような事実を考えると、これは要するに税金で吸上げつばなしにして、設備の改善もあるいは蓄積も何もできないという現状になつておると思うのでございます。日本産業というものをまじめに起そうとするならば、そういう観点から零細なる所得者を大いに優遇するということを考えながら、一方において、日本経済の興隆のために、積極的な面において経済活動を自由にし、資本の蓄積を食いつぶしをしなくてもいいように、税金のために食いつぶして来た、こういうことがないように考慮すべきであると私は思う。税問題についていろいろ税制の改革もおやりになるやに聞いておりますが、そういうこまかいことは別として、ただいま一応数字をあげて申し上げたのでありますが、こういう事実から見て、いかに資本が食いつぶされているか。税という重圧のもとに資本が食いつぶされているか、これは、もつと企業自体において蓄積ができるような方向に、これを育てる意思はないかどうか、こういうことについて大蔵大臣の見解を伺つておきたい。
  30. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまの御質問の御趣旨はよくわかりましたが、法人税の比率が割合に高いということは、みなも申しておりますし、私もそう思いますが、これをにわかに減ずるというわけには行きませんが、いろいろの方法でもつて、法人の税金が軽くなるようにという方法は立てられております。それはたとえば、減価償却を早くできるようにしようとか、または、準備金の制度について税金を軽くしようとか、そういう点で法人としての税金の負担が軽くなるように努力はいたしておるのですが、ほかに方法考えましてその方向に向いたいと考えております。(「どういう方法か」と呼ぶ者あり)それは考慮中でございます。
  31. 北村徳太郎

    北村委員 ただいま法人税を軽くすることについて御考慮もあるようで。ございますが、私は詳しくは存じませんけれども、アメリカでは、軍需産業等の、一時の好景気で利潤を得たものは、償却を五箇年ぐらいでさせることを認めている。そうして早く償却をして身軽にして、反動的な不況が来ても耐え得るような体制をとつているが、日本においては耐用年度が依然として長く、なかなか償さえも認めない、それでは蓄積が必要だといつてもうまく行かない。日本においても、兵器産業であるとか、今の当面のはやりの商売もあるのでありますが、こういうものはやはり早くもうけて早く償却させるという方策をとるべきである。そういうことに関して、たとえば特需とか、そういう特殊な産業については、きわめて短い期間において償却させるというようなことについて、何か具体的な御考慮があるかどうか、あるならば伺いたいと思います。
  32. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 特需でもつてそう急速にもうかつているものがあるかどうか、私は事実は存じません。但し、確かにそういうふうに急にもうかるというようなものがあれば、方法考えてみてもいいと思いますが、事実問題としてはちよつと疑わしく感じます。  それから先ほどの法人の税率のことでございますが、同時に私の考えますのは、法人は配当が少し高過ぎはしないかということであります。これは資本蓄積をやはり妨げる大きな原因になるだろうと存じます。
  33. 北村徳太郎

    北村委員 このことについてはなお問題がございますけれども、先を急ぎまして、ただ一点最後に伺つておきたいのは、かつての復興金融金庫時代に、炭鉱業者に貸し出された炭住資金、いわゆる炭鉱住宅資金でございます。これに対して最近金利の払いもどしをせられたというように伺つておるのでありまして、銀行局から出ました印刷物の中にもこれは明示されております。明示されておるのですから聞く必要はないと思いますけれども、これがかなりの金額でありまして、過去に収得したものから二十億円払いもどし、これから収納すべきものを三十八億何千万円かの権利放棄をしている。これはひとり炭鉱業者の炭住に対してそういう払いもどしをされただけであるか、類似の公共性の高い事業についても同じような払いもどしをされたのであるか、本来、一旦契約ができて、そうして金利は納め済みで、各企業は決算済みである。それを今に至つて取引の当初にさかのぼつて金利の払いもどしをされたということは、普通ではない。これは何かよほど特別のことであると思うのでありますが、そのことのわけが納得行きませんので、この点少し御説明を願いたいと思います。
  34. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その点につきましては政府委員から御説明をいたさせます。
  35. 河野通一

    河野(通)政府委員 かわりまして私からお答え申し上げたいと思います。終戦後におきまして、石炭の増産を急速に実現いたしますために、設備の不足を労働力によつて補うという方針のもとに、政府昭和二十二年一月七日の閣議決定におきまして、炭住——炭鉱住宅でありますが、これの建設計画を定めたのであります。その後、半年ごとに計画を樹立実行いたして参つたのであります。  現在この融資の状況はどうなつておりますかは、たしかお手元に資料が参つておるかと思いますから、見ていただきたいと思いますが、この昭和二十二年一月七日の閣議決定の内容は、次のようなことになつております。  第一は、建設資金は復興金融金庫から融資をする。第二は、貸出し金利は日歩一銭五厘、年に直しますと約五分四厘七毛ということになりますが、日歩一銭五厘とする。それから第三は、炭鉱住宅の税法上の耐用年数は十年とするとともに、この償却金額及び金利は炭価に織り込む。それから第四は、今申し上げましたところに伴いまして、炭鉱業者の復金への償還は十箇年の年賦均等償還とする、こういうふうな閣議決定があつたのであります。  その閣議決定に基きまして、この炭鉱住宅の融資がなされたのでありますが、その後、当時占領軍当局からの意向もありまして、閣議決定の金利につきましては、一般の復金の貸出し金利に準ずるということに改められたのであります。もつともいろいろ時期的に金利は違つておりますが、大体九分五厘、日歩にいたしまして二銭六厘程度にこれを改めたのであります。それから炭住の税法上の耐用年数は、一般原則にのつとつて、当初の閣議決定の手数よりも相当長くこれを改めたのであります。また炭住の償却金額及び金利は、炭価に必ずしも適当に織り込まれなかつた。これは具体的に炭価の決定にあたりまして、償却及び金利は十分に織り込まれなかつた、こういう結果になつたわけであります。その後石炭業界といたしましては、その後の出炭量の状況から見まして、これらの、当別閣議決定になりましたラインで、炭臥住宅の問題の処理をせられることを強く要望せられたのであります。  政府といたしましては、二十七年の二月閣議の了解という措置によりまして、第一は、金利は昭和二十七年三月まではさかのぼつて五分五厘とする。つまり当初の昭和二十二年の閣議決定のラインまで金利を下げる。それから第二は、炭住の償却年限は建設当初にさかのぼつて十年とする。第三は、この旧置は確実な返済計画を樹立し、実行するものに適用する、そうして前年度の税法上の償却額を勘案して返済を確実に実行する。こういうふうなことが閣議了解に相なつたのであります。この措置によりまして、開発銀行の——復金の融資は御承知のように開発銀行に引継がれたのでありますが、この結果開発銀行の金利収入に相当影響を来したのは、皆様御承知の通りであります。過去にさかのぼりましたために、すでに収納いたしました金利について、約二十億円の払いもどしをいたしました。(「だれのところに行つた。」「麻生か。」と呼び、その他発言する者多し)第二は、昭和二十七年度中における切下げ分が三億、合計二十三億円だけ復金の利子収入が減じた、こういうことに相なるのであります。その結果、開発銀行の納付金は、当初予算の六十億が二十三億程度減じた、こういう結果に相なつております。
  36. 北村徳太郎

    北村委員 この問題はどうも少しはつきりしにくいように思うのでありますが、二十二年一月七日に閣議の決定があつた、これはわかるのです。当時占領下にあつたのですから、行政上の最高の決定は連合軍がやる、連合軍の決定が最終決定になるはずである。従つて閣議できめたけれども、それは連合軍の否認するところとなつたということになりますと、占領軍から文句が出て金利がかわつたということは——かわつたということが適法な最後の決定である、こう考えねばならぬと思うのです。従つてそういう法的根拠に基いて行われた取引であると解釈しなければならぬ。そうすると、今になつて——各企業はすでに決算を数回経て決算済みであり、相当な配当をやつておる。それが今日になつて、取引の当初の昭和二十二年一月にさかのぼつてこれを払いもどしたということは、一体どういうことであるか。財政法との関係、会計法規との関係、あるいは当時占領下にありますから、日本の主権が制限せられて、行政上の最高の権威を持つてつたものは連合軍である。その連合軍の決定によつて、一応これは確実に取組みがなされたものと解釈すべきではないか。そういう解釈ができるものとして、払いもどすということによつて一旦収納したものを吐き出し、また将来取り得べかりしものの権利を放棄した。これは私は財政法規も会計法規もよく知りませんが、何か法的に考えて妥当であるのかどうか、その合法性なるゆえんをもう少し説明を加えていただきたいと思います。(「なぜ石炭だけ優遇するのです。」「大蔵大臣どうした。」と呼ぶ者あり)
  37. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 政府委員答弁をいたさせます。
  38. 河野通一

    河野(通)政府委員 財政法、会計法との関係は、この点につきましては適用ございませんので、精神論の問題はいろいろございますけれども、その方の法規に抵触することはございません。  それからほかのいろいろな企業にも同じように行われぬかという点でございますが、この点は、昭和二十二年の閣議決定のときに、ほかの企業よりも特別に炭鉱住宅というものを、政府はどうしても援助をして行かなければならぬという特殊の事情があつたのであります。その事情に基いて、炭鉱住宅に限つてそういう特殊な閣議決定ができておるわけであります。その閣議決定の趣旨にのつとつて、今申し上げましたような、閣議の了解をいたしたのであります。
  39. 北村徳太郎

    北村委員 これは私は記憶がはつきりしないのですけれども、石炭管理法ですか、いわゆる石炭国管というものが行われておつた当時であるか、あるいは行われていなかつた時代であるかどうか。それからなお石炭を特に優遇せられるということについては、私もわからぬことはないのでありますが、これは他のあらゆる方法においてすでに当時石炭が優遇され過ぎた。それでこれほど食糧事情の困難なうちに炭鉱労働者ばかりでなく、炭鉱労働者の家族にまで——われわれは米は食えないけれども、炭鉱労働者には潤沢に米の供給量を増した。食糧を増した。それからそのほか国家資金を投入していろいろな優遇をやつたのでございます。それだからこれに対しては国家意思を介入して、石炭増産のために国家管理をやるべきであるという見解で、国家管理が行われたのでございます。それはひとり金利の問題ばかりではない。当時復興金融金庫の厖大な金を借り得たということ自体が、政府の金を使い得たので、非常な優遇であつたのでありまして、当時の金利に比して特に高いわけではない。当時の金利水準において取扱えと、政府考え方を修正した当時の連合軍の見解というものは、私は公正であつた政府に対して公正な注意を与えたものであると思うのであります。それでこれは、さきに申しました、石炭国管というものを始めての後であるか、あるいはそれ以前であつたかどうかということはよくわかりませんので、そのことを伺つておきたいのと、それから占領軍の決定というものが当時は最終決定であつて、もちろん閣議を越える——これは憲法さえも越えたのでございますから、閣議などの決定を越えるものである。従つて占領軍から何か違つた要求が来たときには、閣議は消滅しておる、それで取引が行われた、こういうふうに理解すべきではないかと思うのでありますが、こういう理解の仕方は間違つておるかどうか、この点をもう一度伺つておきたい。
  40. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 この点もひとつ政府会員から……。
  41. 太田正孝

    太田委員長 北村さんに申し上げますが、大蔵大臣は政府委員をして説明させようというので、その説明を大蔵大臣が承認したならば、その御返事でよろしゆうございますか。
  42. 北村徳太郎

    北村委員 私は何も今ただちに大蔵大臣から聞こうとは思いません。御就任間もないことですから、十分御承知ないかもしれない。十分お調べになつて、資料をもつて後にお答えを願いたい。私は答弁は後に承ることに留保いたしまして……。
  43. 太田正孝

    太田委員長 今の問題は一応政府委員から聞く必要はございませんか。
  44. 北村徳太郎

    北村委員 今さしあたり御答弁ができるなら承りましよう。
  45. 太田正孝

    太田委員長 河野政府委員——念のために申しますが、その法律が行われた前、後というはつきりした問題と、それら占領軍の決定は閣議決定に優先するものなりやいなやというはつきりした返事が、北村君の要求するとこであります。     〔「君はそのときは局長じやないのだ、だめだ。」と呼び、その他発言するのあり〕
  46. 太田正孝

    太田委員長 静粛に願います。
  47. 河野通一

    河野(通)政府委員 その当時において炭鉱国家管理が行われておりましたかどうかは、はつきり実は記憶しておりません。私の今記憶しておりますところでは、たしかまだ炭鉱国家管理は実施されておらなかつたと思います。ただこれはもう少し詳細に調べた上でお答え申し上げたいと思います。  第二点につきましては、私から御答弁申し上げる資格はございませんので、また内部で打合せた上でお答え申し上げます。
  48. 太田正孝

    太田委員長 北村君、今の御返事でよろしゆうございますか、御要求があるのでございますか。
  49. 北村徳太郎

    北村委員 私は決してこの問題を妙に意地悪くお尋ねしておるのではないので、現在中小企業等も非常に困つておりますし、年末に際して、こういう問題がもし妥当な方法でないとすれば、これはかなり大きな問題だと思います。その点をはつきりさしておきたいこいうだけなのでありまして、従つて当時占領軍のさしずというものが、閣議を超越するものであるというふうに私は考えておるのでありますが、その点は吉田総理大臣はどうお考えになつておるか、まずその点だけ最初に総理大臣から御答弁を願いたい。(「ヒヤヒヤ」)
  50. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、われわれの経験いたしているところでは、閣議の決定を司令部が無視して、あるいはまた拒絶してということは、今記憶に残つておりません。たいがい政府との間に話合いでもつてきめて行つたように思いますが、しかしながら今お話のような事例は私の記憶にないのであります。
  51. 北村徳太郎

    北村委員 ただいまの御答弁では少しはつきりしかねるのであります。私はこういう問題をなるべくはつきりして、片づけたいと思うのであります。それでこれは、申すまでもなく、連合軍の占領下にあります間は、連合軍最高司令官の命令は日本国憲法さえも越える。いわんや閣議決定のごときはその前には問題でないはずである。それであるからこの閣議で決定したことに対して横やりを入れて、これはいけない、こうやれとさしずをした。従つて当時の政府はそれに従つて処理をしたというのでありますから、閣議決定は連合国の命令によつて消滅した、こう考えることが私は法律上当然であると思う。その点をもう少し明らかにいたしたいと思いますし、また当時連合国が何ゆえ金利のような小さいことまでさしずをしたか、これはよくわかりませんけれども、当時の事情として五分五厘というような金利はあまりにむちやだ。だからこれはやはり一般金利水準によつてつていい。私企業は私企業で相当の収益をあげているじやないか、こういうような意味で連合国側全体の公平理論の上に立つたのではないか、こういうふうに考えますので、この二点。ことに私は閣議決定を連合国司令官のさしずは越えるものである、そう解釈するのでありますが、その解釈は間違つているのかどうか、こういう点を少し明かにしておきたいのでございます。それでこれは一つ率直にお答えを願いたいと思います。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申したのは事実でありまして、法律論としてはまさにそうでありましよう。司令官が内閣に対して命令をする。内閣は、総司令官の権限といいますか、監督といいますか、権限のもとにあつたということは事実でありましようが、私の記憶に残るところでは、閣議の決定を総司令部なり、あるいは総司令官が拒否した、あるいは無効ならしめたということの記憶はないという事実を申すのであります。
  53. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連して……。
  54. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申し上げますが、関連質問は、その範囲をどうぞ越さないように御注意を願いたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの石炭の問題はきわめて重大な問題でありまして、一つの問題は、ただいま北村先生からお話になりました閣議の問題です。もう一つの問題は、政府が突如として今年の選挙前二十七年の三月になつて、閣議で了解事項として石炭業に対してのみ二十三億円という金を返したということであります。あの当時復金あるいはその他の金融機関から、傾斜生産あるいはその他の関係から金を出して貸した。それはみな同じ利率で大体貸しておるはずです。従つてほかの産業は、鉄鋼においても、肥料においても、同じ利率で返却を迫られて苦しんでおるわけです。それが何ゆえ石炭に限つて、ことし金利を下げて二十三億円にわたる金を、しかも選挙前に石炭屋に返したか。この問題は明白になつておりません。この問題を明白にしたいために、お答えを願いたいと思います。
  56. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいま御質問がございましたが、私は従前の事情を知りませんために、御返事が不十分でございました。よく調べまして北村さんに御返事をいたします。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 調べましてあとでお答えなさるというお話でありますが、御存じのように、予算委員会国会におきまして一番大事な委員会であり、政府は十分な対策を持つてここへ臨まなければならぬはずです。私は向井さんの御人格を信頼いたしますけれども吉田内閣全体をそう信頼するわけに行きません。そこでこの重大な問題が起つたこの場所におきまして、ただいますぐ至急調べていただきまして、お答え願いたいと思います。ここで休憩しないで、何時間でも待ちますから、どうぞひとつ十分お調べになつてお答え願いたいと思います。これは国民としても一番重大な問題として見ておる。中小企業は死んでもいい、米の食えぬやつは麦を食え、片一方ではこう言つている。そのくせ大資本である石炭に対しては、二十三億円返しておる。これは国民として見のがしにならない問題である。道義の問題である。あるいは政治スキャンダルに発展する問題であるかもしれません。これだけはただいま明確にしていただきたいと思います。
  58. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申し上げますが、ただいま向井大蔵大臣が言われた通り、調査して御返事するというのでございますし、また問題の範囲をあまり広げて行くのもどうかと思いますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二十三億円という金は、国家予算の比率から見ても厖大な金です。また中小企業に実際今何ぼ金融がまわつておるかということを見ても、この二十三億円は国民として見のがしにならぬ問題です。こういう重大な閣議の決定や了解をしたというのは、これに対応する十分な理由がなければならぬ。今日起きた問題じやない、三月に起きた問題である。従つて政府国会に臨むについては、当然それに対する答弁なり対策ができていなければならぬ。こういうことができていなくて、こういう重大な決定をなすことはあり得ない。もしこういう重大な内容に対して答弁資料がなくてやつたならば、国会をばかにして、陰でこそこそとある一部の者と取引をしたものと言わざるを得ない。二十三億という金は大事な金です。陰で取引をしたと見られてもしかたがない。すぐ答弁できないということは、責任ある政府としてあり得ないことです。どうかただちに御答弁願いたい。
  60. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私は事実を存じませんで、ここに現われましたのは、はなはだ恐縮でございますが、どうしても取調べをしませんでは御返事はできません。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 向井さんはそれは最近御就任になつたから知らないかもしれませんが、吉田総理大臣は閣議の主宰者として十分のみ込んでおつたはずです。責任ある処置をやつたと思います。しからば吉田総理大臣からお答えを願います。吉田総理大臣は、特にその女婿が炭鉱業者でありまして、斯業にたいへん通じておられると思いますので、お答えを願いたい。
  62. 吉田茂

    吉田国務大臣 主管大臣からお答えをいたします。
  63. 太田正孝

    太田委員長 ただいま中曽根君の言われましたことは、同君においては非常に重大なる事項と言われることでもあり、政府におきましても、調査してお答えすると主管大臣が言われたのでございますし、しかも関連事項としての趣意は政府によく通じたと存じますので、さよう御了承願いたいと存じます。  北村君の御質問はこれにて終りました。  本日はこの程度にいたしまして、次会は明三日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後零時六分散会