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国務大臣(岡野清豪君) 今回
政府から
提出いたしました雑務教育学校職員法案について御
説明申し上げます。
戦後、もが国の教育制度が、新憲法にらたおれている民主主義の基本理念に立
つて、教育の機会均等とその水準の維持向上とをはかるため、諸種の改革を経て来たことは、すでに御
承知の
通りであります。いわゆる六・三・三・四の新学制の実施や、教育委員会の設置を初め教科
内容の諸改革等は、いずれも民主主義の基本理念と、教育の機会均等、その水準の維持向上とを目的として、漸次その成果を収めて参
つたのであります。しかしながら、これらの諸施策は、短かい期間に早急に行われましたがゆえに、その是正を必要とする事項もありますことは、また申すまでもないところであります。
政府は、目下それらの事項について再検討を加え、真に独立後の国情にふさわしい制度を確立いたし、その面に向
つて努力を重ねておるのでありますが、何と申しましても、義務教育は
国家として最も意を注ぐべき
国民の基礎教育であり、これが振興をはかりますことは、わが国文教の基本でありますがゆえに、この義務教育についての必要な改正をまず第一に取上げようといたしておるのであります。この法案を
提出いたしましたゆえんもまたそれにほかなりません。すなわち、この法案は、義務教育に対する国の
責任を明らかにし、義務教育に従事する教職員を
国家公務員とするとともに、あわせてその教職員の給与を直接国が負担支給し、も
つて義務教育の水準の維持向上をはかることを目的とするものであります。
御
承知のごとく、義務教育に従事する教職員の給与は、現在都道府県の負担とされております。
昭和十五年以前には市町村の負担とされていたのでありますが、市町村財政の窮乏により、
昭和十五年都道府県の負担と切りかえられて以来、現在に及んでいるものであります。しかしながら、この教職員の給与費は相当な金額に上るものでありまして、地方公共団体にのみその負担をゆだねることは困難であると考えるのであります。現に、
昭和の当初以来、国は実質的にその給与費の半額
程度の金額を負担し、
昭和十五年給与費の負担が市町村から都道府県に切りかえられた後も、国がその二分の一を負担するという制度がとられて来たのであります。ところが、右の義務教育費国庫負担金は、シヤウプ勧告に基く地方財政平衡交付金制度の実施により、
昭和二十五年度以来地方財政平衡交付金に吸収せられ、その結果、教職員の給与費は都道府県の
一般財源によ
つてまかなうようにされたのであります。この給与費は、義務教育の進展に伴
つて逐年増大し、実に都道府県の
一般財源中、ほぼその半ばを占むるに
至つております。このため、財政的に恵まれない府県にあ
つては、給与費がその財政を圧迫するところ大であり、ひいては
国家的事業たる義務教育の機会均等、その水準の維持向上という、義務教育の基本的要請の実現にさえ支障を来すのではないかと憂慮されるに
至つたものであります。
昨年、
国民多数の御支援を得て、教職員給与費の半額を国が負担するという義務教育費国庫負担法が制定されましたのも、かかる実情を考慮したものと考えるのでありますが、今回、
政府は、義務教育に従事する教職員給与費についてのかかる経緯にかんがみ、さらに一歩を進めて、その教職員を
国家公務員とし、その給与の全額を国が直接負担し、支給することといたしたのであります。ただ、何分にも、千百余億円に上る給与費を都道府県の負担から国の負担に切りかえますことは、国及び地方の税財政制度に影響するところ大であり、その調整に若干の時間を必要といたしますので、とりあえず、
昭和二十八年度は、従来
通り都道府県が負担支給するものとし、国は一定額の義務教育費国庫負担金を都道府県に対して交付することといたしたのであります。なお、その際、地方財政平衡交付金制度との
関係上、
基準財政収入額が
基準財政需要額を越える富裕都道府県に対しては一定の調整を加えて、国、地方を通じての財政にむだの起らないよう措置することといたした次第であります。
次に、この法案は、義務教育に従事する教職員の身分を
国家公務員に切りかえようとするものであります。さきにも申し述べましたことく、義務教育は
国民の基礎教育であり、
国家的事業として営まれているものであります。現実に、個々の学校は市町村が設置経営に当
つているのでありますが、しかし、義務教育そのものは、あくまでも最終的には国の
責任において行おるべき
国家的事業であることは、わが国の学制制定以来の一貫してかわらざるところと考えるのであります。今回義務教育学校教職員を
国家公務員にいたしたいと考えますのは、義務教育に対し、国の有する右の
責任にかんがみ、その教育に従事する教職員を
国家公務員といたすべきであると考えたからであります。義務教育は、まさに国と地方公共団体とが相提携してその振興に尽力すべきものと考えるのでありますが、その際、国は、義務教育の機会均等と、その水準の維持向上という義務教育の基本的事項を確保し、市町村には個々の学校の具体的経営を託することが望ましいあり方であると存ずるのであります。かかる観点から、義務教育の教育活動に従事する教職員の身分を
国家公務員とし、一方その給与を国が負担して、義務教育に対する国の
責任を明確にしようといたす次第であります。
以上、この法案の提案
理由とその
趣旨を御
説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同を賜わらんことをお願い申し上げます。(
拍手)
ただいま
義務教育学校職員法案の提案
理由とその
趣旨を御
説明申し上げたのでございますが、同法案によ
つて、義務教育学校職員の身分を
国家公務員とし、その諸給与を国が負担支給いたしますことは諸種の法律に関連するところ多く、それら
関係法規との調整をはかる必要がございますので、ここに所要の
規定をとりまとめて
法律案を
提出いたした次第であります。
この法律は、右の
趣旨にかんがみ、ほとんど関連
規定との技術的な調整、整理にとどまるので、その詳細については
説明を省略させていただきたいと存じますが、ただ恩給法に関する部分につきましては、実質的な
内容を有するところがございますので、以下その要点を御
説明申し上げます。
義務教育学校職員を
国家公務員にいたすにあたり、これらの職員を現行恩給法上いがに取扱うかにつきましては、諸種の
方法があろうかと存じます。
政府といたしましては、今回次のような観点に立
つて、現在恩給法の適用なき助教諭等について、その勤続期間の二分の一を恩給法上文官に準じて扱う等の措置をとることといたしたのであります。すなわち、現在義務教育学校職員のうちには、
昭和二十四年一月以前からの在職者、すなわち現に恩給法の準用を受けておる職員が相当数含まれております。これらの職員が現に有する恩給法上の地位は、これをできるだけ尊重することが望ましいと考えられますし、また現に恩給法の準用のない職員もひとしく
国家公務員となります以上は、その準用を受けていた職員と
取扱いを異にすべきではないと考えるからであります。義務教育学校職員に関する恩給の
取扱いを、かくのごとく助教諭等を恩給法上の文官に準するものとしての
取扱いを認め、それらの職員の身分と地位の安定に資するところ大であろうと期するものであります。
以上、簡単でございますが、この法案の提案
理由と、その
内容の概要を御
説明申し上げました。何とぞ
義務教育学校職員法案とあわせて、慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。(
拍手)
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