○今澄勇君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
吉田内閣の
財政経済政策、とりわけ自立
経済達成の方途と、
貿易並びに
経済外交について、
政府の所信を問わんとするものでございます。(
拍手)
昨年下半期以降、
日本経済最大の希望でありました
貿易は極度の不振に陥り、当初十七億ドルと予定せられました輸出を十一億ドルに修正しなければならなか
つたことはきわめて重大な問題であり、全
国民は
経済自立達成のための抜本的
政策を待望しておるのであります。思うに、独立の基礎は
経済の自立であり、
日本経済自立の中心は、一つは
貿易の
振興であり、一つは国内
市場の拡大でございます。
現在の
日本経済と戦前の
日本経済とを比較してみるときに、
貿易指教と
生産指数との関係において大きな相違を示しております。
経済審議庁は、
昭和二十八年度
経済指数について、鉱工業
生産一四〇%、輸出総額十一億五千万ドル、特需三億二千万ドル、
国民生活水準八八%と発表しておりますが、このことは、
生産指教は戦前を上まわ
つたにもかかわらず、
貿易規模だけが戦前の四割にも達しないで、一応の均衡が実現したということであり、戦後のわが国の
経済機構が大きく戦前に比して変化したことを物語
つております。(
拍手)すなわち、戦前の軽工業中心の
産業構造が重化学工業に
重点を移して来たのでありますが、今やその重化学工業が、
コスト高のために輸出競争力を失
つたところに、現下の重大問題があると存じます。(
拍手)他面、世界の
貿易市場は、今次大戦の結果、東ヨーロツパ諸国や中国の世界
市場よりの離脱とな
つてますます狭まり、加うるに深刻なるドル不足と世界各国の輸入抑圧
政策は、まさに
日本経済の活路たる
貿易を窒息せしめんとしつつあるのであります。
日本経済の現段階は、かくのごとき一瞬の楽観をも許されざる情勢でございます。
そこで、私は
小笠原経済審議庁長官に伺いたいのでございますが、率直に申上げまして、
政府はこの停滞したわが国の
経済回復にどういう
手段をとろうとしておるのか。か
つてルーズヴエルトは、一九二九年来のあの大不況に際し、ニュー・デイール
政策をとり、公共事業
投資の増大と農産物価の引上げをなし、国内購売力を増加させて成功いたしております。現下の西ドイツは、
国家の総力を輸出
貿易に注ぎ、免税
措置を初め、あらゆる
政府の助成策によ
つて、これまた成功しつつあります。一体、
吉田内閣は、そのいずれを選ばんとしておるのであるか。
小笠原長官の
貿易振興計画は、苦心のあとも見られまするけれども、残念ながら
予算的な
裏づけがございません。積極的な国際
市場開拓の助成案もなく、さりとて国内
市場開拓に対しても
計画的な対策が見られません。この際、
政府は、このいずれの対策をとるかというその基本的
態度について、明確なる御
答弁を願いたいのであります。(
拍手)
次に、
日本経済の将来をどう建設するかという設計がなくては、
経済政策というものの樹立はございません。その青写真の中で、今年度、来年度と工事が進むわけでありますが、大蔵省当局が承認をいたしまして、
政府として責任を持つべき
経済再建の設計図があるのかどうか。
内閣の諮問機関にすぎない
経済審議庁の
計画などではなくて
予算の
裏づけある
政府の
長期経済再建
計画があるならば、
小笠原、
向井両大臣から伺いたいものと存じます。(
拍手)
今回の
政府の施政
演説を承
つて、まことに奇異にたえないのは、
小笠原、
向井両大臣の食い違いであります。それは本年度
予算の上にも明瞭に現われておりますが、その一例として、通産省の自立
経済達成
予算中、外航船舶、自動車、輸出向けプラントなどに出す鉄鋼補給金二十六億円は、全額大蔵省によ
つて削除されております。また、二十八年度分七十万八千キロワットの電源開発を行うための
財政投資所要額は、当初三百五十億円と言
つておりましたが、二百五十億円に押えて出した通産省の
計画は、百五十億円にこれまた減額、さらに二十八年度から五箇年間で、石炭
コスト引下げ用の七十三本の採炭用縦坑に対する、五百億と
計画せられた
長期金融が、大蔵省の
産業資金計画によれば、せいぜい三十億の開銀の融資にな
つております。なお運輸省が出しました新造船四箇年
計画の二十八年度三十万トンも、
財政資金の圧縮で二十万トンに切り下げられており、
金融資本に
生産経済が隷属いたしておる現
吉田内閣のもとにおいては、輸出増進のための具体的な
予算はほとんど見ることができない
状態でございます。(
拍手)施政
演説において
小笠原長官が文字
通り大声叱咤されましたけれども、二十八年度
予算に関する限り、自立
経済達成の基礎は崩壊しておるものといわなければならぬ。(
拍手)
吉田総理の関心薄い商工行政は、ときに文部大臣の通産大臣兼務という、
常識では
考えられぬこともございましたが、今や通商は外務省に、
資金は大蔵省に押えられておりまする今日の商工行政においては、担当者として努力を傾けつつある
小笠原長官の
経済自立対策も画餅と帰したところに、
吉田内閣の基本的な性格がうかがえると思う次第でございます。(
拍手)この八方美人
予算から、どうして自立
経済を達成するのか。私は、
資金運用部が持
つておりまする
国債数百億すらも日銀に売却、現金化してまで
投資しようとしておりまする
インフレ的
財政投資を、何がゆえに
重点的に自立
経済達成に使わなか
つたかということを、
大蔵大臣並びに通産大臣に伺いたいと存ずるものでございます。(
拍手)
次に、私は、
政府が
貿易第一主義で行くからには、政治
外交とともに通商
経済外交が活発に動かねばならないと思います。その意味において、
貿易に重大関係を持
つておりまする
外交について岡崎
外務大臣に
質問いたします。わが国は、ただいま米国を初めイギリス、イタリアなどと通商条約を結ぶべく折衝中でございますが、これらの
経済外交の結果は、ただちに
日本経済の運命を決する重大要素であるにもかかわらず、とかくその協定内容が、わが国に常に非常に不利に定められておるということは、遺憾にたえざるところでございます。
まず、私は、日米通商航海条約について、
日本経済の死命をアメリカに押えられないよう、次の諸点をお伺いいたしたいと思います。一、銀行の貸付業務に対し、外人にも内
国民的待遇を与えるのかどうか。一、第七条、外国業者が取得した円貨によ
つて既存株式を取得することも含むのかどうか。一、さらにまた、同条の既得権については、占領中における不平等の既得権を認めるが、ごとぎ
態度に出るのかどうか。一、
政府独占の業務と同業種の業務に従事せんとする外国企業に対し、
政府企業と同等の待遇を与えることを
要求せられておるが、これに対しては同意するのかどうか。以上の諸点は、
日本の国内資本を擁護し、
経済自立のための最低線でありますが、交渉の経過並びに
政府の所信を伺いたいと思います。(
拍手)
次に、ガットの加入について、
外務大臣は、ロンドンで開かれている委員会で、今回は加入でき得る見込みであると答えておられますが、わが国に対しては相当大幅なる制限がつけられることを、われらはほのかに承
つております。なおアメリカ新
政府が、ガット
機構を通じて西ヨーロッパと
日本の通商をいかに調整せんとしておるか、外相の見解を伺いたいと思います。
第三には、現在中共向け禁止物資を各国で協議するためと称せられるココムのことでございます。これが内容、性格並びにそこで決定されておる事項などは、きのうのお答えにまると、秘密にするという申合せであるとのことでございましたが、一体だれの許可を得てさような申合せをしたのか。
吉田内閣交代の際は、
政府はどうするつもりであるか。かつまた、
日本は加入したか加入しなか
つたかくらいのことは発表できないはずはございますまい。(
拍手)
国会にも発表できない国際協定を結んだということは、
国会の権威を無視するものではないか。一体、だれが代表者として臨んだのか、ひとつ御
答弁を承りたいと思います。もしこれが
答弁できないとするならば、文字
通り岡崎
外交は秘密
外交とのそしりを免れないものと存じます。(
拍手)
第四には、近く再開されまする日韓会談、特に李承晩ラインについて、業者代表の民間
外交のみにこれをゆだね、なすところなき外務省の
態度は、まことに無為無策と申さなければなりません。わが国は、李承晩ラインの撤廃と引きかえに請求権を放棄する方針であるなどと伝えられておるが、事実かどうか、外相の信念をお伺いいたしたいものと存じます。(
拍手)
さて、次に
貿易の
振興策でございますが、問題は、世界の
貿易市場として残された東南アジア、中国、南アメリカ、その他の後進諸国が、消費植民地
経済から
計画的な年次
生産計画を遂行しつつあることでございます。
日本をはるかにしのぐ、綿紡千二百万錘といわれるインド、四箇年
計画のビルマ、パキスタンなどは、必然的に相手の
計画に合致する
貿易でなければ取引は不可能でございます。わが国が無
計画に買付に出れば、手元を見られて値段がつり上り、
反対に輸出の際は、国内業者が相争
つて安売りをしておる
現状では、
国家の責任において管理
貿易を断行し、
市場相互の総合調整を行う態勢確立の必要を認めまするが、これに対する通産相の見解を求めます。特にアジア
貿易については、これら諸国の
生産計画に対応した
貿易計画を立てるために、アジアの
経済会議を開き、
貿易の促進をはかり、抜本的な対策を
政府みずから積極的に展開すべきものであると思うが、これに対する見解を承りたいのであります。(
拍手)
第二点は中共
貿易でございますが、私は、ソ連圏に編入せられた中国との
貿易に、戦前の経験をも
つて過大な期待をかけるものではございません。しかしながら、これを最小限度の軌道に乗せるためには、西欧諸国のパリ・リストの線、すなわち硫安、亜鉛鉄板、苛性ソーダぐらいまでは輸出を認むべきであると存じます。中共向け輸出入申請手続処理の不円滑、保証料率の高率問題、銀行金融のあり方など、中共
貿易に介在する不明朗なる姿を一擲いたしまして、石炭と鉄鉱石の輸入ぐらいは、
吉田内閣としても最低限やるべきものであると思います。(
拍手)かくすれば、バーター・システムで年間二億ドル見当を期待できると思うが、これに対する
政府の所信はいかがでございますか。
第三点は、東南アジア開発であります。ただいま、通産相から、抽象的な東南アジアに関する開発構想が述べられましたが、私は、英国のコロンボフラン、米国のポイントフォア、国連のエカフェなどの後進国開発
計画が急速に推進されるとともに、米国の過剰ドルを、
政府みずから
経済援助の方式で、急速にアジア開発に投入されることが必要と思います。アジアは、人口総数十二億五千万人、世界人口の五三%を示しながら、総
国民所得は一〇・五%にすぎない五百八十億ドルという低水準であります。米国の海外援助による開発
計画が促進されるならば、ドル
投資のアメリカ、
経済復興の東南アジア、輸出
市場を求めている
日本並びに西欧、この三者の間に、アジアを中心とする物資の交流が行われ得ると存じます。われらは、
市場であるアジア
国民の生活を高め、その
購買力を高くいたしまして、開発のための技術と
生産財の提供を通じ、東南アジア
市場の
開拓と組織化をはかることが、わが国当面の急務であると
考えます。アメリカ新
政府は、スタツセン氏を通じて東南アジア開発に手をつけさせるといわれておるが、外相並びに通産相は、強力なる意思のもとに
経済外交を行うべき絶好のチヤンスであると思うが、その
見通しやいかに。(
拍手)
第四点は、
貿易不振の原因である
コスト高についてお伺いをいたします。ただいま、
コストは全般的に
引下げに努力するという御
答弁でございましたが、安くてよい品をつくるために、現在最大の隘路とな
つているのは、石炭と鉄鋼の価格が国際価格に比し高過ぎるということでございます。すなわち、石炭は
コストの中の半分がきわめて低い労務費であるにもかかわらず、わが国において、七千カロリーのものがトン当り二十一ドル三十セントであるのに比べ、米国においては九五ドル、イギリスにおいてはハドルである。実にわが国の石炭は、米英に比して三倍強の高炭価を示しております。
次に鉄鋼も、その
生産コストに占める石炭の比重の大きいことを
考えるとき、鉄鋼価格の
引下げも、石炭価格を
引下げることによ
つてのみ達成できると存じますから、輸出
振興の最大眼目は石炭
コストの
引下げにあるという結論に相なるのであります。(
拍手)にもかかわらず、このようなわかり切
つた問題を、現在に至るも
政府があえて
実施しない
理由がどこにあるのか、疑わざるを得ません。しかも、高い高いといわれている石炭が、きわめて低い労務者の賃金によ
つて、この
程度で押えられていたことを忘れてはなりません。(
拍手)
政府は、この炭価の
引下げに、いかなる具体策をお持ちにな
つているか、通産大臣の明確なる御
答弁を望みます。(
拍手)
伝えられております
政府の消極的施策によ
つて今すぐどのくらいの値下げが可能か、縦坑やカツペ採炭などの施策による成果は、三年先か五年先かに現われることで、ございまして石炭価格の
引下げは、今すぐ、あすからでもやらなければならない、きわめて緊急を要する問題であります。この逼迫した
現状を打開するために、石炭の価格を
国家統制することが一番よろしいし、またこれ以外に方法はないと思いますが、
政府は石炭価格を統制する
考えはないか。(
拍手)
石炭鉱業資本家にあらゆる支援を送ることはできても、
国家経済死活の要請に彼らを従わせることのできないような
政府は、何と弁解しようとも、石炭業者に致命的な弱みを持
つておるものといわなければなりますまい。(
拍手)また、どうしても石炭の価格統制ができないとするならば、現在GIF十五ドル
程度の外国炭を、輸出用の物資を
生産しておる面に優先的にまわすために輸入してはどうでしようか。さらに、私は、わが国の石炭
産業が
日本経済の要請にこたえるためには、すでに私企業としてその限界に来ておると確信しておるものであります。(
拍手)われらは、石炭の持つ
国家性を
考えるとこに、この際、
政府は、イデオロギーとらわれない
日本民族の自立
経済のめ、石炭を
国家管理にするような意志はないか、これをお尋ねいたしたいと思うものでございます。(
拍手)
次に、現在鉄鋼が国際価格に比して二割強の割高のため、最近プラント輸出はほとんどストツプにな
つております。この実情を打開するため、輸出用鉄鍋に補給金をつけようとした
小笠原予算は、
向井氏に一蹴せられておりますが、通帝相は、一体化のいかなる方法でプラント輸出の促進を
考えておられるか。鉄鋼は、最近の国際情勢ではますます輸出困難で、ベルギー、西独などに比して太刀打ちできない
日本は哀れな情勢でございますが、通産大臣の対策いかん。(
拍手)
第五点は、
貿易に伴う海運の
振興策であります。せめて特定航路を命令航路として、国の助成策によ
つて外国海運と対抗するくらいな
政策を樹立すべきものであるが、どうか。新造船
計画の
資金計画についても、新しい本年度
予算に対する石井運輸相の
計画並びに三十万トン既定
計画は遂行できるかどうか、御
答弁を願いたいと思います。(
拍手)
次は国内資源の開発でございます。電源開発と
食糧増産は、資源開発の中核をなすものであります。豊富にして低廉な電気があれば、動力として石炭も必要なく、それだけでもわが国の製品価格が安くなるにもかかわらず、現
政府は、これに全力をあげないで、その責任をあげて九電力会社にゆだねておることは、いかなる
理由によるものか、了解に苦しむものでございます。
去る十三
国会において、電源の早期開発を
理由にして電源開発促進法を立案し、本法によ
つて行う電源開発には外資の導入も可能である、開発
コストは安くつくと
答弁されましたが、電源開発のための外資の導入は、今やま
つたく見込みのない
状態で、開発
コストの安くなるといわれた低金利
資金の
見通しも困難である。二十八年度
財政投資も
半額に削減せられておるような
状態であります。
政府は、電源開発
計画にどの
程度の
重点を置いておるのか。少くとも
重点が置いてあるならば、
予算も
財政投資も集中的に使うべきではないか。利権の争奪に
重点を置くような電源開発で、
経済再建は断じてできません。(
拍手)ポツダム政令で、再編成令のもとに九分断されました電気事業形態のごときものこそ、占領政治
行き過ぎの最大のものであるとして改むべきでございましよう。もし、
政府は、この電気事業の形態については、現在の私企業のままおやりになるとするならば、元の所有者から電力復元の
要求が起ることは当然でございまして、この際これらの
地方公共団体並びに元所有者の復元に対する
政府の明確なる
答弁を求めるものでございます。(
拍手)
次に、私どもが最も留意し、監視せなければならない
政策は、兵器の
生産でございます。
経済審議庁の資料を見るまでもなく、
昭和二十七年度の
貿易が辛うじて均衡を保
つたのは、八億二千四百万ドルの特需並びに新特需があ
つたからでございます。このいわゆる米国の特別発注によ
つて辛うじて
日本経済が維持せられておるところに、わが国
経済の
根本的な弱点があります。
政府の行き当りば
つたりの
財政経済政策で、基幹
産業は不安となり、商品
コストは高く、
貿易は不振、国内
市場も余力なき現在、たといそれが出血受注でも、雨だれ発注でも、生きんがため必死にな
つて、血に飢えた資本家がこれに殺到する姿は、まさに
吉田内閣の
経済政策失敗から来るところの大きな悲劇であると申さなければなりません。(
拍手)兵器の
生産は、目下
教育発注の段階でございますが、本格的な受注近しと
見通した業界は、出血受注を強行して、実績の確保と受入れ態勢確立のため狂奔いたしております。
昨日、アイゼンハウアー大統領の一般教書により、わが国に対する再軍備の要請は必至であり、これがわが国の兵器
生産の本格化を推進することもまた明らかなところでございます。
政府が、総理の言明のごとく、真に再軍艦はやらないというのであるならば、軍需消費から
国民生活を守るべき基本的な対策をこの際樹立すべきではないか。(
拍手)さらに航空機の製造を通産相は強力に
主張しておるが、わが国
産業構造中における兵器
産業の
規模と、航空機も含めた軍需
産業計画をどの
程度に規正するのか、通産大臣の懇切詳細なる説明を私は求めるものでございます。(
拍手)
以上申し述べました自立
経済達成の矛盾が、人口問題も包含しながら集中的におおいかぶさ
つておりますのが
中小企業の問題でございます。私は、前大臣に比して、率直に、新通産大臣が
中小企業対策に熱意を示しておることを認めます。しかしながら、
吉田内閣の弱肉強食の基本的な性格と、
財政金融
政策がすべて
中小企業の犠牲の上に打立てられておる
現状のもとにおいては、
小笠原通産大臣は、麻酔をかけることはできても、断じて
中小企業を救うことはできないのであります。(
拍手)すなわち、金融対策これ
中小企業対策というがごときは、
中小企業振興の
根本方策を慮れたものでございます。私は、
日本経済全体の有機的な発展が民主的に行われ、その中で
中小企業の立場が守られて行くことこそが抜本的な対策であると存じます。占領
政策是正の名のもとにおいて、逆コースと財閥復活の
日本経済、しかもこれが自立の道を指導し得ずして自由放任する現
政府のもとでは、断じて中小業者の活路はございません。いわば鬼の念仏的なる
中小企業救済対策について、私は簡単に以下の諸点をお尋ねいたしたいと思います。(
拍手)
一つは、通産省は今もなお
中小企業庁については
廃止の方針であるのかどうか。一つは、設備の近代化と
中小企業関係の
貿易振興対策があるのかどうか。一つは、協同組合化促進の具体的な指導方針と、経営経理指導機関の確立対策及びこれらの
予算的
措置について伺います。新たにできた
中小企業金融公庫は全
中小企業金融機関の統合的機関たらしめて、個人金融は
国民金融公庫、組合金融は商工中金、相互金融は
信用協同組合等々の既存機関の機能を整理体系づけて、これらの総合的なトンネル機関として新たな公庫ができるというのが理想的な姿である。当初三百億の一般会計の中に別に特別会計も設けて
中小企業金融をなさんとした
政府が、にわかに金庫に変更した
理由は、巷間相当とりざたされておるが、その
理由を伺いたいと思います。(
拍手)
最後に、私は、
吉田総理に以下四点の
質問を申し上げます。重複するかもしれませんが、特に総理のために、私はこの四点については御
答弁を願いたいと存じます。
第一点は、第二次
吉田内閣以来、
日本経済再建の中心を、総理は外資導入に置いておられたものと存じます。元日銀総裁たりし新木氏の駐米大使としての布陣も、再度にわたる白洲特使の派遣も、いちずに外資導入のためでなか
つたのではございませんか。しかるに、きのう、総理は、外資は入りつつあると御
答弁なさいましたが、われらの調査によれば、とるに足る外資導入はどこにも見当りません。(
拍手)われらは、総理の責任ある
答弁と、今後の外資導入に対する
見通しを承りたいと存じます。(
拍手)
第二点は、かくて、今や総理は、
日本経済再建の中心を、やむなく
貿易の
振興に求めておられることと存じます。しかるに、
政府の通商
外交は、イギリスに対しては特に事ごとに苦杯をなめさせられております。このときに、皇太子殿下が戴冠式に渡英されることは、
経済外交の絶好のチャンスであるにもかかわらず、
国民の代表者たるにふさわしき人物を同行せしめないで、宮内庁式部官以下数名のみで出発をされるということは、
国民外交の何たるかを知らざるものと評するのほかはございません。(
拍手)武器なき
日本のひのき舞台は
外交であることを思うならば、私はこの際特に
首相の考慮を要望して、その見解を求めます。(
拍手)
第三点は、日米通商条約を初めとして、中共
貿易、ガット加入等、一連のこれらの締結
条件は、極端に西ヨーロッパの諸国に比べてわが国が不利でございます。わが国が対等なる
条件を独立国として当然与えられなければならないと
考えるのに、何ゆえ総理は、あらゆる条約にわた
つて、かかる一定の
原則的な不利なる
条件に服従されておられるのか、私は総理がアメリカと秘密協定をしておられるものとしか理解することはできません。おそらく、米国は、
日本の再軍備実現まで、この不平等なるいばらの道を
日本に歩ましめるのではないか、私は総理に伺いたいと思う次第でございます。(
拍手)
第四点は、
政府の外資に対する期待がはずれ、
貿易についても自立
経済を達成できない
状態と
なつたとき、総理は
日本経済再建の中心を一体何に求められんとするでございましよう。もし
貿易が伸びなければ、
国民は死するのか、それとも再び軍需
産業の勃興によ
つて最後の活路を求めるのかどうか、これが
政府の
財政経済政策を通じてながめた率直な私の感想でございます。私は、
経済を通じ、
産業構造の変化を通じ、
国民の生活を通じて、死するか、それとも再軍備して特定国の言うことを聞くかという関頭に
日本国民を追い込んで行くような勢力に対しては、断固として屈服することはできません。(「その
通り」
拍手)このことが、国内に共産党の脅威をますます増大せしめる真の原因であり、私は常に共産主義と対決する
国民の一人として、この現実を心から憂うるものでございます。(
拍手)
今や、アイゼンハウアー米国
政府の強硬な巻返し
政策は、極東における戦争の気構えを濃厚にいたして参りましたことは、本日の新聞紙上にもこらんの
通りであります。今や、
国民は、対岸の朝鮮事変に加うるに、樺太、千島についても無関心たり得ない
状態となりました。総理はいかなる解決策を持
つておられるのか。ただに樺太、千島のみならず、それらを含む東洋の北辺は、力と力の対立という憂うべき形勢とな
つて参りました。これまでの総理の
答弁では、
国民の危惧と不安はますます増大するばかりでございます。私どもは、国の自衛力は認めるけれども、再軍備については断固
反対でございます。願わくば、総理は、
日本の運命のわかれ道となりまするこれらの国際情勢の
見通しと、兵器
生産と再軍備について、良心に恥じざる御
答弁をいたされんことを御期待申し上げまして、私の
質問を終る次第でございます。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君登壇〕