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1953-02-02 第15回国会 衆議院 本会議 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二日(月曜日)  議事日程 第二十三号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     午後二時七分開議
  2. 岩本信行

    ○副講長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。松本瀧藏君。     〔松本瀧藏君登壇〕
  4. 松本瀧藏

    松本瀧藏君 私は、改進党を代表いたしまして、政府演説に対し、外交問題に重点を置いて質問いたすものであります。前質問者によつても指摘されたことく、政府外交演説は、新聞記事に見る程度のものであり、残念ながら何ら事新しい点を見出すことはできなかつたのであります。(拍手従つて、私は、国民の知らんと欲している点を、大別いたしまして七項目にわたり質問せんとするものであります。これに対し、吉田総理岡崎外相を初め関係閣僚から、国民の納得するよう懇切なるところの答弁を要求するものであります。(拍手質問の第一点は、政府外交方針総合的一貫性を欠いているという点であります。講和条約の発効以来早くも一年になんなんとしております。独立した日本国際社会一員としての役割は、はたしてこの間においていかなる立場において行われたでありましようか。言うまでもなく、総合的一貫性を持つ、しかも自主的外交が行われることによつて日本独立が国際的に認められ、国内的には国民の自信と自覚が促されるのであります。しかるに、こうした外交方針の基調的なものの所在がいずこにあるのか、そのつかみどころのないのが現政府外交方針であり、(拍手外交演説にはその片鱗すら見出すことのできなかつたことは、まつたく失望せざるを得なかつたのであります。政府が事新しげに主張するまでもなく、サンフランシスコ平和条約締結によつてわが国ははつきり自由諸国陣営に加わり、それらの国々協力することは、すでに義務づけられているところであります。この自由諸国陣営に加わつたゆえんのものは、世界の平和と自由と民主主義を遵奉する自主独立祖国再建にあつたはずであります。しかるに、現政府外交方針には、こうした強い理念と信念に立つた一貫した総合性を認めることができないのは、はなはだ残念であります。  世間では、現政府のこの外交を、その都度外交、あるいは行き当りばつたり外交と評しており、これは今日まで政府のとつて来た秘密独善側近外交必然的帰結であると言わなければならないのであります。(拍手吉田アチソン交換文書のごときも、その秘密独善、その場外交の実例であります。この交換文書も、二、三の側近によつて作成され、そのままサンフランシスコ付属文書として交換されたものであります。吉田総理は、国会において、この文書を引用いたしまして、この文書によつて国連軍の駐留を支持した旨を説明いたしました。しかし、その経費分担については、日本側においてその責任のないことを言明したのであります。しかるに、その後英国政府との交渉に際し、英国側に、その支持は経費分担をも意味していることを指摘されて狼狽した事実を、われわれは見のがすわけに行かないのであります。(拍手)もし事前においてこの交換文書の解釈の打合せなくしてこれを手渡したとせば、これほど行き当りばつたりの外交はないと言わざるを得ないのであり、もし意識していたとしたならば、国会並びに国民を瞞着することこの上もないことであります。(拍手)  また、自分らの選んだ大公使を海外に派遣しておきながら、その活動能力に不満を抱き、情報入手が不十分であるとして、情報機関設置を試みたるがごとき、あるいは頻繁に本省の局長海外に派遣したり、個人的特使を出したりせなければならないことは、いかに一貫性がない外交政策であるかということを示すものであります。(拍手)さらに、吉田総理外務大臣を出し抜いてマーフイー大使交渉したり、外相にかわつて向井大蔵大臣米当局折衝しているありさまを見て、国民は、岡崎外相いずこにありやと慨嘆すると同時に、(拍手日本外交占領下の延長であり、その自主独立性をいつ回復するのか疑問を持つに至つておるのであります。(拍手)さらにまた、政府は、米英諸国に向つてはきわめて軟弱な外交を行いながら、国内に対して、また東南アジア諸国に対しては強硬な態度をもつて臨み、ここにおいても首尾一貫せざるものを見出すのであります。加うるに、今世界は冷たい戦争のさ中に虚々実々の心理戦争を行つており、各国外交陣はこれに対応して懸命な努力を払つているのに引きかえ、わが国外交はこれに対しまつたく無神経に近い放漫ぶりを発揮しているではありませんか。この政府無策外交は、内にあつて国民をして誤解を抱かしめ、外にあつて諸国不信を招く原因となつているのであります。通信交通機関の急速に発展して来た今日、十九世紀型の外交から脱皮し、新時代に即応する外交方策を講ずる必要があります。一体政府には一貫した総合的外交方針というものがあるのかどうか、もしあるとしたならば、国民の前にはつきりこれを明示されたいのであります。(拍手)  質問の第二点は、日米関係緊密化の問題であります。政府は、その外交政策として特に日米関係緊密化を強調していますが、これは前に述べたことく、サンフランシスコ平和条約によつて、すでに日本はその立場を明らかにしたところであり、また日本国防は、日米安全保障条約によつて米国との緊密なる関係にまたなければならないことは、贅言を要しません。私どもは、日本の運命が日米両国の平和と対等、平等の観念友好親善関係にその基盤を求めなければならないことに対して、何ら異議をはさむものではありません。この基盤を確立するためには、まず相互理解信頼がその根幹とならなければなりません。しかるに、政府秘密独善外交は、米国の真意を国民に知らしむることに失敗し、日本国民輿論要望米国側に伝える誠意に欠けているものであります。その結果、国内的には国民感情の遊離を来し、反米思想を彌漫させ、共産勢力の浸透の機会をすら与えて来たではありませんか。一体政府はこれでよいと思うのか、この点は特に吉田総理大臣の御答弁をお願いしたいのであります。  このときにあたり、政府は、占領下における国内施策の行き過ぎを是正することもけつこうでありましようが、占領下において結ばれた外交面の是正も誠意をもつて行うべきであります。日米行政協定内容にその例を見るまでもなく、その結果は決して日米両国緊密化する協定とはならなかつたのであります。(拍手)われわれは、さきに、その行政協定とりきめについての政府の取扱い方並びにその内容日米両国友好関係を害する結果をもたらすことをおもんぱかつて、強く警告を発したものであります。  政府一貫性のないその場限りの外交は、行政協定を結ぶことがその終局目的であるかのごとき錯覚を起していたことは、その後に台頭したる国内輿論によつてもこれが証明されるところであります。(拍手行政協定は決して目的そのものではなかつたはずであります。すべてがこの協定によつて終るのではなくして、締結出発点であり、独立後の日米両国関係を層一層緊密ならしむる手段であつたはずであります。(拍手政府は、この協定を通じて日米両国信頼を深め、もつて安全保障条約の運営を円滑ならしむるという終局の大目的を見のがして、輿論を無視してこれを国民に押しつけたではありませんか。
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 松本君、ちよつとお待ちください。      ————◇—————
  6. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) ただいま皇太子殿下が傍聴にお見えになりました。     〔総員起立、敬礼、拍手)      ————◇—————
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 発言を続けてください。
  8. 松本瀧藏

    松本瀧藏君(続) 吉田総理は、一昨日の答弁で、来る四月、行政協定の悪い点はこれを改正すると約しましたが、屈辱的な刑事裁判管轄権のごときも是正する努力を払う用意があるか、それを示されたい。  加うるに、吉田総理は、この施政方針演説において、アイゼンハウアー氏が新たに大統領に選ばれ、ダレス氏が国務長官に就任したことを歓迎し、日米両国緊密化を唱えました。また岡崎外務大臣は、ダレス国務長官外交演説に対する日本政府回答とも解すべき中立否定論を声高らかに叫びました。ダレス氏の信条である、自衛力強化による日本集団安全保障参加の従来の主張からいたしましても、政府演説は再軍備暗黙裡に約束した印象米国に与えたと思う。しかるに、一昨日の答弁において、吉田総理は、繰返し再軍備はやらないと、きつぱり断つた。外国に対する印象国民に対する説明に大きな食い違いがあり、ここにも政府方策一貫性を見ることができないのであります。(拍手)もし政府外交方針行き当りばつたりでないというのであるならば、自衛力なしという吉田総理態度で、はたして米国との親善関係を一層緊密にして行けると思うか、この点について、あわせて総理にお尋ねしたいのであります。(拍手)  質問の第三点は、経済外交についてであります。独立後の日本外交重要使命一つは、国際経済との関連において日本経済力を発展さすことであります。いわゆる経済外交の促進でなければなりません。しかるに、政府はこの面においても一貫した総合的計画性のないことを遺憾に思うのであります。日本の今後における経済的自立は、生産の向上と貿易の均衡的な拡大をはからなければならないという点については、政府とまつたく同感であります。しかるに、その基盤となるべき通商航海条約はい、まだ締結されていないありさまである。また通商協定についても、特に西欧諸国競争関係の深いインドネシア、ブラジル、アルゼンチン、またさらに戦前日本商品の大きな市場であつたトルコ、シリア、レバノン、イラン、イラク等について、その締結が促進されなければならないことは申すまでもないことであります。もつとも、これらの地区に対する市場開拓の問題につきましては、政府においては、先般の演説によりまして、岡崎外相小笠原大臣の間に見解相違を来しているように思われるのであります。またボンド圏各国における輸入制限等強化に対しては、日本人の入国滞在、船舶の出入港等規定する、通商航海条約に準ずる基礎的な条項を相手国と早急に協定すべきであるにもかかわらず、何ら進捗を見出していません。通商航海条約にしても、米国とのそれを親条約とし、他の国とのそれはこれにならう態度政府はとつているが、何ゆえに他の国と別個に自主的な交渉ができないのか、これを示してもらいたい。(拍手)また貿易及び関税に関する一般協定、つまりガット加入についても、いまだはつきりしていない実情責任一体どこにあるか、これを明らかにされたい。自由社会一員として復帰したわが国が、依然貿易最恵国待遇を得られないようで、どうして輸出貿易の伸張を期することができるのでありましようか。次に、経済界をあげて大きな魅力であり、一時は合言葉にすらなつていた東南アジア開発も、叫ばれてすでに数年、しかるに、いまだにその計画は日の目も見ないで今日に至つているありさまであります。政府のこの計画も、賠償問題、現地の政治情勢、対日不信等の問題で壁に頭をぶつつけ、ただ掛声だけの、ひとり相撲に終つておるのであります。  外資導入の問題についてもそうであります。吉田内閣は、久しきにわたり外資導入を叫んで来ています。そうして、あたかも巨額にわたる政治的借款政府の手によつて成立したかの観を国民に与えて来ました。しかるに、その後米当局者より政治的借款はあり得ないことを指摘されへ元閣僚であつた池田氏も、政治的借款は無理で、民間外資導入に期待すべきであると説をかえたほどであります。さらに最近、米国側は、日本が約十一億ドルの外貨を持つている現状では、この上外貨借款を必要とする理由は薄いと述べているではありませんか。これらの事情からいたしまして、外資導入の問題は単なる政府の試案の域を脱しておらず、また交渉米国の正式なる機関に受入れられている形跡のないことを暴露している以外に何ものもないのであります。(拍手)もしこの事態を妥結せんと欲するならば、ただお役人まかせ掛声だけではなく、強力な政治的経済外交を推進しなければなりません。よつて政府の唱える経済外交内容はいかなるものであるか、もつと詳しく小笠原大臣においてその説明をされんことを要求するものであります。  次に、昨年十一月、パリで開催されたココムについて質問しておきたいのでありますが、当時、パリUP通信は、日本参加が認められて、中共向け繊維品輸出は増加するであろうと伝えております。このココムの性格、機構、内容等について一切政府秘密にしているが、これについて政府当局説明を求めたい。もし依然として秘密を守らなければならないものであつたならば、その理由を明示してもらいたいのであります。  質問の第四点は、日本国連加盟の問題であります。国際連合への加盟は、わが国にとつては重要な課題であります。外相演説を聞きますると、加盟に対しては安易な考えを持つているようでありまするが、加盟は決して日本の一方的な意思努力によつて実現できるものではありません。これは、とりもなおさず、国際情勢と、いまだ国交を回復していないソ連考えによつて大きく左右されることは、明らかなる事実であります。外務大臣もその演説の中で述べたことく、米国を初め西欧諸国は、確かに日本加盟を希望しております。しかし、国連安全保障理事会において、ソ連日本加盟に対し拒否権を発動する限りにおいて、どうして加盟の見込みが立つのであるか、それを教えてもらいたいのであります。伝うるところによると、日本を準加盟と訳すべきでありましようか、ノン・レギユラー・メンバーとして仲間入りさす努力が払われているということであります。政府は、準加盟国としてでも加盟意思があるのかどうか。もしこの制度が実現するとしたならば、日本に課せられる権利義務はレギユラー・メンバーと同一のものであるかどうか。その見通しについて説明されたい。そうであるとしたならば、国連憲章第四十三条の集団安全保障規定によつて軍備と出兵を義務づけられると思うが、政府見解をただしておきたいのであります。  日本国連への加盟は、それ自体が目的ではなく、国連に加入することによつて日本国際的地位を確立するとともに、世界平和への協力を誓い、同時に日本の安全をも求めるにあるのであります。加盟する以上は、りつぱな独立国家としての資格を持ち、それにこたえるだけの権利義務を持つて堂堂と参加すべきであります。さすれば、国連において権利だけを主張して義務を軽視することを許されるかどうか、政府所見を承りたいのであります。(拍手)  この項におきまして、いま一つ質問しておきたいことは、集団安全保障日本国防の問題についてでありますが、前質問者へのこれに対するはつきりした回答がなかつたので、重ねて簡単に質問いたします。国連加盟が容易に実現しない場合を考え政府は、日本国防をいつまでも日米協定に託す考えか、それとも太平洋集団安全保障機構への加盟を期待しているか、その尾通し見解を承りたい。もし仮定に立つた将来の問題は言えぬと政府が繰返すならば、やはり行き当りばつたりの無策外交のそしりを免れるわけには行かぬのであります。政府において何か施策があるのであつたならば、これを国民に示してもらいたい。  質問の第五点は、アジア外交についてであります。今日、東南アジア諸国との提携が国民の間では強く叫ばれ、これら諸国との友好関係の樹立こそ日本外交の大きな課題であります。これら諸国に対し、いたずらに強硬外交を振りまわすことなく、相互理解信頼と尊敬を基盤とした外交を推し進めることが刻下の急務であります。  そこで、まず最初に取上げたいことは、対比島の賠償問題であります。フイリピンに対する賠償問題の解決は、ただ単にフイリピンにおける対日悪感情の除去、対日平和条約の批准、戦犯者日本送還などの諸問題に結びつくばかりではなく、インドネシアを初め、いまだに折衝が開かれていないビルマ、カンボジア、ヴエトナムなどのアジア諸国との賠償決定にも大きな影響を与えると同時に、東南アジア開発計画にも関連性を持つものであります。この問題解決に対し、過去において熱意を示さなかつた政府は、ようやく沈没船引揚げ調査に手をつけたのであるが、フイリピンにおいては、キリノ大統領以下、朝野こぞつて熱心にこの賠償問題を取上げているにもかかわらず、日本側においては、局長級にこの問題を託している感を与えていることは、政府の怠慢と言わざるを得ないのであります。(拍手フイリピン賠償問題解決の基調は、その領ではなく、日本政府の示す誠意相互信頼にかかつているにもかかわらず、今日までの折衝経過を見るに、いたずらにフイリピン側不信を抱かせ、対フイリピン国との諸問題の解決を不必要に延引せしめて来たことは、いなめない事実であります。今後の交渉にあたつても、現政府特有のその場外交でなくして、日本経済東南アジア経済を結ぶ総合的長期計画に基いて行われるべきであります。日本経済力が、東南アジアの安定の要因となり、東南アジア購買力を高め、もつてその生活水準を向上せしむる大きな役割を課せられている限りにおいて、フイリピン賠償取立てによつて日本経済を破壊せんとするものではないことを信ずるものであります。フイリピンの要人も、対日賠償要求日本経済の正常な経済循環を破壊し、アジア全体の経済に支障を来す結果は希望しないことを表明しているではありませんか。従つて日本政府は、相互の厳粛なる実情に基き、いやしくもかけひきの観念を一掃し、腹を割り、真心をもつて、しかも東南アジア総合的長期経済計画に基きフイリピンとの賠償折衝に当るべきであると思うが、政府のこれに対する所信を重ねて承つておきたいのであります。  ここで、あわせて質問しておきたいことは、岡崎外相が、比島との賠償問題折衝にあたり、これを他と切り離し、比島を優先的に取扱うと言明したことであります。他の諸国を出し抜いたこの言明も、一貫的総合性のないその場外交の現われであると思うがいかん。もし一貫的総会品性に基いて確約したというのであれば、その基本政策を示してもらいたいのであります。  次にお尋ねしておきたいことは、日韓国交開始の問題でありますが、日韓両国国交の問題についても、日本政府のとつて来た外交方策無策でありました。韓国は、あらゆる意味で日本に最も近い隣同士であり、国防の観点から見ても、過去の歴史並びに現在の世界情勢からしても、わが日本国にとつては最も重要な国であります。不幸にして終戦直後、朝鮮の独立とともに離れ離れになり、昨年封日平和条約が発効し、日本独立した後も、なお日韓両国間の国交が正常な姿に帰り得ず、今日まで無条約関係に置かれるに至つたことは、不自然であると同時に、遺憾しごくなことであります。もちろん、その間には、国交開始に先だつて解決せねばならぬ幾多の懸案が横たわつており、双方見解相違からその妥結を見出し得なかつたことは事実であります。しかし、口日韓両国が、地理的にも、歴史的にも、経済的にも、はたまた政治的にも密接不離関係にあることを思うとき、さらに朝鮮戦乱の急速なる解決見通しがつかない今日、日韓両国親善を回復するために、もつと積極的に、しかも自主的に国交開始努力を払わなければなりません。韓国も、大乗的見地に立つて、古い恨みを忘れ、相互の利益のために日韓親善熱意を示すであろうことを期待すると同時に、日本側においても、また過去の行きがかりを一切御破算にし、謙虚な気持で、しかも自主的に再出発すべきであり、日本政府も、その交渉にあたつて、いささかなりとも優越感や、大国に弱く小国に強くといつた今日までの事大主義的態度を一掃すべきだと思うが、この問題に対する政府見解をお尋ねしておきたいのであります。(拍手)  アジア外交について、いま一つ質問しておきたいことは、岡崎外相演説が、ダレス国務長官の二審せんじであるかの感をアジア諸国に与えたことであります。日本自由諸国陣営にあることは当然なことであり、日本が第三勢力として存在していないことも事実であります。しかし、アジアからアラブにわたつて数多くの国々が、米ソ対立のさ中に巻き込まれないように努力していることは、見のがせない現状であります。従つて岡崎外相のごとく、あつさりと国際情勢を割切れない諸国のあることを無視できません。これら諸国立場とその原因にもつと理解と同情を持つて臨まなければ、多くのアジア諸国との友好関係を結ぶことはできません。われわれは、自由諸国陣営に加わつておりながら、地理的には特殊な立場に置かれており、国交の回復していない国における同胞引揚げ問題並びに貿易問題も深い関係を有していることを顧み、政府アジア外交根本的認識を立て直さなければならないと思うが、それに対するところの所見を承りたいのであります。(拍手)  第六点は、領土についてであります。まず最初に取上げたいことは、沖繩を中心とする琉球諸島小笠原群島日本復帰に関する問題であります。最近、これらに住む島民の間に、祖国復帰を切望する声が高まつており、一般国民もきわめて深い関心を寄せている事実は、政府も承知しておる通りであります。とりあえず、その中で最も輿論を喚起しているのが奄美大島であり、去る十二月日本政府に提出された日本復帰要望した陳情決議文には、十四才以上の島民九九・九%までが署名しているほどであります。奄美大島は、鹿児島県の一部であるがために、その復帰運動は他より一層活発でありまするが、条約上の地位は、琉球諸島小笠原群島もこれと同じであり、琉球諸島小笠原群島もまたその住民日本復帰を熱望しておることにはかわりないのであります。しかも、その住民祖国復帰の叫びは、これら諸島に住む同胞と、日本内地に住む同胞との利害を越えた、血と魂の切なる要望であることをわれわれは忘れるわけに行きません、(拍手)  これらの領土は、サンフランシスコ平和条約第三条の規定により、アメリカ合衆国の、しかも一存で解決できるものであります。すなわち、第三条の規定は、琉球諸島小笠原群島米国信託統治下に置く米国のいかなる提案にも日本は同意することを約束しているのであり、米国がこれを提案した場合のことが規定されているにすぎないのであります。第三条は、決して米国国連信託統治提案義務づけているものではありません。米国の一方的好意によつて日本への復帰の道が開かれおることを、われわれは見のがせないのであります。(拍手)もちろん、国防の見地から、米国がこれらの島々を完全に放棄することは、現下の国際情勢からそれを許さないかもしれませんが、しかし、それは、日本復帰と同時に、双方に真の理解誠意さえあれば、日米安全保障条約の範囲内において基地問題は解決できないはずはないのであります。(拍手)  思うに、島民の切なる気持米国がくみとるような外交を行い、日本復帰が許されれば、島民日本国民も感謝をもつて米国に報い、かえつて日米協力強化される大きな原因一つとなるのでありましよう。また、日米両国友好親善関係は、両国間における真の理解信頼の上に立つて初めて強まるのであります。また、米国がこの挙に出ることにより、ソ連の、日本北方地域、たとえば歯舞、色丹諸島に対する不法占有を非難する米国主張も、これによつて徹底することになると思います。(拍手政府は、この問題について、いかなる見解を持つているか、説明されたい。  あわせて取上げたいのは、歴史的にも民族的にも完全に日本領土である千島列島並びに南樺太の問題であります。サンフランシスコ平和条約は、これらの領土を、条約に調印しなかつたソ連が占有する権利を認めていないばかりでなく、その帰属権もあいまいとなつているではありませんか。そこで、これらの民族、領土は、民主主義と平和の原則からしても日本に返還されるべきであると思うが、政府はこの問題に対していかなる努力を払つて来たか、歯舞、色丹諸島の問題とあわせて国民に明示されたい。  最後に、繰返して一言しておきたいことは、国民信頼を基礎にして行われない外交は決して成功しないということであります。国民に支持されない外交が、どうして国際的信用を博することができましようか。対外的発言も、国内的支援があつて初めて力が加わるのであります。しかるに、日本外交を処理しなければならぬその重責をになつておる政府与党が、いたずらに内紛にうき身をやつしているありさまでは、国民がどうしてついて来ましようか。政府与党の態度は、世界各地に充満している危機に目もくれず、日本国民の心配をよそに、ただ人事と派閥闘争と権力争奪に終始している状態であります。(拍手)そこで、いくら政府が声高らかに外交政策主張しても、その熱意が派閥抗争のうずの中に打消されては、国民は申すに及ばず、諸外国も決して信を置くものではないのであります。(拍手政府与党内における昨年来の内紛に次ぐ内紛は、国政を醜い党内政争のあらしの中に投じているではありませんか。政府与党諸氏は、内紛を称して、雨降つて地固まると言つておるが、地は固まつたどころか、地下にはなお火山脈が存在しており、いつ火をふき出すかわからない状態であります。(拍手)党の不統一の結果、その党の内閣が壊滅するのは自業自得の成行きでありましよう。しかし、政府与党が、国際政治の危機をよそに、おめでたい内紛に終始しているときに、日本国民は、朝鮮の雪解け、ダレス演説、台湾の中立化中止等により、国際情勢の緊迫を感じて来ているのであります。(拍手国民とともに語り、国民とともに憂えて平和を闘い抜く熱意におよそ欠けているのが政府与党であります。自由党総裁である吉田総理は、かかる事態で日本外交を推進する自信を持つているかどうか、国民の前に所信をはつきりと披瀝してもらいたいのであります。  以上をもつて私の質問演説を終える次第でありますが、各質問項目に対しまして、各関係閣僚においては、国民が納得するように、懇切丁寧なるところの答弁をされんことを重ねて要求して、私の質問を終える次第であります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  わが内閣の外交政策が首尾一貫しない、いわく秘密独善なりという批評でありますが、これはただちにそのままお返しいたしたいと思う。首尾一貫しないのは、私はむしろあなたの質問演説の方が首尾一貫していないと思う。(拍手)たとえば——たとえばであります。欧米に対しては追従であり、東南アジアに対しては、何と言われたか知りませんが、圧迫と言われたか、言葉はちよつと忘れましたが、ともかく、圧迫とか、はなはだ冷然たる態度というお話でありましよう。しかしながら、もし欧米、ことにアメリカに対して追従ということを言わるるのであるならば、通商条約が——追従しておるなら、いわゆる日米通商航海条約はもうすでにでき上つたはずであります。すなわち、日本政府としては、日本立場から考えてみて交渉を重ねておるわけであります。これだけでも、追従でないことはおわかりになるだろうと思うのであります。(拍手)  さらに、独善と、こう言うが、再軍備を約束したじやないかとおつしやるが、これはそうお考えになれば、それが独善であります。(拍手)かつて、しばしば申した通り、私は再軍備は約束いたしておりません。安全保障条約及びただいまの防衛機構をもつて日本の安全は防衛し得る、日本独立はこれをもつて防衛するに十分であると考えておるのであります。条約の定むるところによつて、また条約規定を守つて、そうしてわれわれは行くのであつて条約規定を守るということが追従であるならば、われまた何をか言わんやであります。(拍手)  計画性がないと言われるけれども、計画性はあるのであります。計画性があるから、日本政府としてはあくまでも国連協力をなし、自由国家と協力をする、このことをはつきり申しているのであります。このことに計画をいたし、このことに外交を進めておるのであります。  しこうして、東南アジアについて云々と言われますが、東南アジアとの関係は日にますます善良化しております。日本外交機関なり、それぞれの機関を設けてもらいたいということは、インドネシアにしても、あるいはビルマその他からも要求があります。ただ日本は、そう方々に一時に外交機関を置くということは、財力がこれを許さないからいたさないだけの話であつて日本の財力回復とともに、できるだけ多くの公館を各地に持つて、できるだけ多くの国と通商航海条約その他の条約関係に入りたいと思つておるのであります。その結果、日本の——お話によると、現在日本外交ははなはだ行き詰まつておるか、あるいは、ことにアメリカとの関係において悪いようにお話になりますが、アメリカと日本との関係は日にまた親善を加えつつあるのであります。この点は御心配はいらないのであります。(拍手)  国連加盟の問題にしても、これは加盟国の多くは日本加盟を支持し、あるいは歓迎しておるのでありますが、何分、機構として全会一致を要するために、ある国がヴイートーを行つているという事実であつて、これもやがて私は解決いたすと思うのであります。  外資導入も口ばかりだと言われますが、時々刻々と外資は入つてつております。いわゆる政治借款なるものは、初めから政治借款を私は予期したことはないのであります。政治借款と言つたのは、諸君か、あるいはその辺のところから言われたのであつて政府としては、政治借款ができるということは、かつて申したことはないのでありますが、いわゆるアメリカとの間において、私は、外資は必ず入つて来ると思う。ただ、日本の国情が安定しない限りは入つて参りません。日本の国情を安定せしめることが第一であります。しかるに、諸君は、ただ自由党において何とかかんとか言われるが、昨日申した通り、政党において議論のあるのは当然な話であります。ゆえに、それこれ議論があるのが内紛と言うならば、内紛ますます可なりと私は言うのであります。(拍手)のみならず、いわゆる内紛なるものは、自由党ばかりではなくて、諸君の方にも大分あるように聞いております。(拍手)  その他詳しいことは関係大臣から答弁いたさせます。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  10. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。  ただいま総理が申された通り、日本外交は、自由主義国家の間で不信を買つているとはとうてい考えられないのでありまして、たとえば国連加盟資格承認の決議案等も、国連で圧倒的多数で可決されております。もちろん、ごく一部には、国内にも反米思想等のこともありましようけれども、これはほんのごく一部でありまして、これによつて日米関係がどうというようなことは決してないと確信しておりまするし、今も総理の申されたように、むしろ今日ほど日米関係が緊密の時はないとさえ考えております。  それから行政協定でありまするが、刑事裁判権について屈辱的という言葉を用いられましたけれども、私は、これは決して屈辱的じやないと考えております。たとえば、イギリスにおいてもその例があつて、むしろ新しい国際慣行になりつつあるような状況であります。しかし、行政協定につきましては、NATOの協定が発効するか、しからずんば一年後に改訂する考えでおりまして、その研究は爾来ずつと進めております。  それから再軍備の問題について、外国と国内との間に言い方が違うようなお話でありまするが、それは決してそういうことはないのでありまして、国内で言つております通りに外国に対しても説明をいたしておりまして、外国側で誤解をしておるような状況は少しもないのであります。  それから、貿易の振興のためにいろいろのお話がありましたが、これは、われわれといたしましても、桑港条約の通商条項の適用を考えまして、中立国を含める諸外国との間に、戦前条約の復活とか、あるいは新しい条約締結について交渉は進めておりまして、フランスその他数箇国との間にはすでに復活が行われております。アメリカとの間にも通商航海条約交渉しているのは御承知の通りでありまするが、アメリカだけを先にして、ほかのはしないというわけではなく、現にほかの国とも随時やつておるのであります。  それから国連加盟の問題でありまするが、これは、イタリアその他の諸国を含む加盟問題の行き詰まりを打開するために、昨年十二月、国連総会で、十九箇国からなる特別委員会を設けて、この問題を研究させることにいたしております。そこで、政府は、その委員会の結論が出ますれば相当の打開策が講ぜられることと考えて期待しております。  加盟が実現するような場合に、加盟の条件として軍備とか出兵とかいうような種類の義務づけがあるかないかというお話でありまするが、これは、先ほども申しました通り、昨年十二月二十一日の、日本国連加盟の資格が決議されましたときに、その決議の中に、日本が平和愛好国であり、かつ国連憲章義務を履行する意思と能力があるということを国連加盟の五十箇国が承認したわけでありまして、その意味から申しましても、別に特に日本に対して新しい義務づけを求めるというようなことはないはずと考えております。  それから、太平洋安全保障条約と申しますか、機構と申しますかについてのお話でありまするが、これは実はまだ、新聞等には出ておりまするけれども、具体的な案件として研究されておるとは考えておりません。従いまして、まだそういう状況でありまするから、日本においてこれに対していろいろの批評を加えることは差控えたいと考えております。  それから賠償の問題についてのお話でありまするが、まず第一に東南アジアとの総合的見地からこの問題を考えるべきだという御意見にはまつたく賛成でありまして、われわれもそのつもりで研究をいたしております。現に、国内におけるその方面の権威者に依頼して、いろいろ研究もいたしておるのであります。フイリピンを優先的に取扱うということはないのでありまして、比島に対して話合いをいたすとともに、ほかの各国とも話合いをいたしておるのであります。ただ、かりにどの一箇国かと話合いができた場合に、ほかの国との話合いができないからといつて、そのできた国との間の賠償問題も引延ばすということはどうかと考えておりまして、話合いができれば、それで進めて行きたい、こういう意味であります。     〔副議長退席、議長着席〕  それから、日韓関係につきましては、お話のように、積極的にかつ自主的に問題の解決を行いたいという意向で、ただいまいろいろ研究いたしております。そういう趣旨の具体的な方法も、あるいは近く明らかにできるものと考えております。  なお、私の演説ダレス氏のまねのようなお話でありましたが、(「その通り」)そんなことは決してありません。これは、政府といたしまして、慎重に国際情勢を検討いたしまして、さらに将来の見通し等も加えました結論を出したのでありまして、これが長い方針になると考えております。それがまた、お話のように、決してその都度外交でないという点に御了解を願いたいのであります。(拍手)  なお南西諸島についてのお話もありますが、これは政府としては非常に関心を払つておりまして米国側ともしばしば話合いをいたしおります。  千島、樺太については、現状が御承知のようでありまするから、しばらく事態の推移を待ちたいと考えております。(拍手)     〔松本瀧藏君登壇〕
  11. 松本瀧藏

    松本瀧藏君 政府答弁は、外交方針と同じように、実にばらばらであります。そればかりでなく、質問者の声を聞かざること、輿論を聞かざると同じであります。非常にピントのはずれた答弁に対しては承服できないのであります。たとえば、自衛力の問題をアメリカにコミツトしたということを私は言つてないのであります。印象を与えたではないかということに対して独善的にこれを解釈しておる。そればかりではなく、政治借款という言葉は、周東大臣が初めて使つた言葉であります。これによつても、いかに閣僚内の方針が不一致しておるかということがわかるではありませんか。  さらに、私は、太平洋機構の問題に関しまして、見通しについて答弁を求めたのであります。政治は動いておるのであります。ただ新聞に出ておる程度であるから、これに対して何も言えないというような無策であつたならば、一体外務省は何をしておるかということを国民考えるのであります。(拍手従つて、私の言つておるのは、その見通しについて、一体外務省はいかなる見解によつて外交方針を進めておるかということであります。  さらに、私は、小笠原大臣答弁を求めたのでありますが、その答弁がなかつたので、あわせてこれを求めるものであります。(拍手)   (国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  12. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ただいまの太平洋同盟機構につきましては、実際にこれは具体的の話合いがないのであります。また、これはどうなるものが実際わからないのであります。そこで、一々新聞に出ることについても見通しを述べろとおつしやつても、それはできないのでありまして、われわれの方では、もう少し具体的にならなければ、こういう本会議の席上等で申し述べることは差控えたい、こういう意味であります。  なお、先ほど申し残しましたが、欧州における輸出制限に関する機構がありますが、これは各国の話合いによりまして、どこの国でも発表するもの以外は秘密にするという約束のもとに行つておりまして、これはいずれの国も同等に取扱つておりますので、日本もさように取扱つておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  13. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 松本さんにお答えします。松本さんのお尋ねのうち、政府貿易の振興を力説しておるが、その根幹になる経済外交はかつていないではないか、外資導入掛声だけで、通商航海条約締結とか、ガット加入もいまだに実現していないじやないか、ココムのとりきめについてもまつたく明らかにされていないが、その内容はどうか、こういうお話であつたのであります。これに対してお答えいたします。  アメリカ、カナダ等少数の国を除いて、いずれもドルの不足に苦しみ、輸入制限その他外貨収支の均衡保持のために行つた自衛策が、今日ではお互いにさらに他の自衛策の強化を招くような状況になつておることは、御承知の通りであります。しかしながら、英連邦首相会議の後に発表されたコミユニケを見てもわかります通り、各国とも、このような方策のもたらす結果につきましては、お互い認識を深めつつあるのでありまして、次第に互恵的条件による通商の拡大によつて自由諸国の繁栄を回復する方向に一致して参つて来ております。わが国が目下英国との間に貿易量の拡大について協議を開始しておることは御承知の通りであります。これを端緒といたしまして、その他の諸国との関係にも漸次好転する機会がもたらされるものと確信いたしております。(拍手)  外資の導入問題につきましても、たとえば米国輸出入銀行からの綿花あるいは火力発電設備に関するクレジツトのように、見通しの明確なものについては、すでに成功し、または具体的に進行中であります。日本経済事情が安定して、投資の条件が備わつて参りますならば、今後相当見込みありと信じておるものであります。  通商航海条約について、日米条約締結一歩前のところまで来ておることもお聞き及びの通りである。その他自由諸国間にもそれぞれの話が進行いたしております。  ガツトの加入についても、見通しはほぼ明るくなつてつており、会期間、委員会及び事務局の多大の努力により、近く個別折衝に入り得ることになると考えております。  対中共輸出統制の問題については、お話の通り、日本を含む関係国間において非公式の委員会が設けられ、討議されておることは事実でございますが、その委員会の申合せによりまして、内容に触れることはここで差控えるほかないことを御報告申し上げておきます。(拍手
  14. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 松前重義君。     〔松前重義君登壇〕
  15. 松前重義

    ○松前重義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先日行われました総理大臣の施政演説並びに各大臣の演説につきまして、いささか質問を試みたいと思う次第であります。私は、すでに同僚議員三宅正一君より質問申し上げましたことに対しましては重複を避けまして、以下の質問をなそうとするものでございますが、私の見るところによりますれば、日本政治の最大の欠陥は、政治の科学化、換言すれば科学を政治に取入れるという考え方が著しく欠如しているということでございます。(拍手従つて、私は、日本の再建が科学と政治の欠如にあるという観点に立ちまして、経済の復興、貿易の振興における科学技術の役割、教育の振興、さらに保安隊の問題等の諸点を中心といたしまして質問を展開せんといたすものでございます。(拍手)  先般経済審議庁長官の演説にもありましたように、今日のわが国経済は、輸出貿易の不振を特需によつてつている現状でありまして、従つて貿易の振興とその安定なくしては、わが国経済は、特需の発注者たる米国の一挙手一投足によつてその盛衰を支配されることは明白であります。(拍手わが国経済の基礎的な課題輸出貿易にあるといたしますならば、この輸出貿易の振興に必要なる政策は、年頭において吉田総理の述べましたように、単なるコスト高の克服によつてその市場の護得ができるかどうか、これが実現の前にはいかなる困難が横たわつているか、独立最初の年における経済出発点に際しまして、ここに私どもは厳粛に世界経済市場におきまするわが国の歴史的な立場を自覚し、その基盤の上に立つて、不動にして永遠の国策を樹立いたしまして、悔いを千載に残さないようにしなければならないのであります。  かつてわが国の重化学工業におきましては、米国やドイツなどから生産機械を買い入れまして、これによつて生産いたしましたものを、日本国内及びその勢力圏でありました満州あるいは中国の一部にのみ販路を求めまして、国産技術によつて立ち上らんとする産業を圧迫することをもつて特徴といたしたのでございます。すなわち、特許権と生産機械の導入の条件として、生産されました製品の市場に関しては、日本の歴史的な政治的経済圏以外に輸出することを禁止するという市場協定のもとに行われたのでありました。現在日本米国に支払つておりまする導入技術の特許料は、わずかに三十億円ではありまするけれども、この裏には、その特許でつくりました品物を売り出すところの販路は日本国内だけに限定するという条件があることを忘れてはならないのであります。外資導入の問題が考えられておるようでありまするけれども、これらの実現の裏にはこの制限があるということを私どもは認識したいのであります。(拍手)そうして、最近においても、この条件は大よそ技術の導入において行われておることは当然であります。しかのみならず、生産機械は、アメリカ、ドイツなどにおきましては時代遅れのものであつて日本輸出するそのときには、すでにこれにまさる優秀な、生産能率の高いところの生産方式ができ上つてから後において日本に入れる。このようなのが、いわゆる外資導入の姿であるのであります。(拍手)ゆえに、外国依存の生産態勢を維持いたしまして、しかも科学技術の高度に発達いたしました先進諸国市場の獲得戦を展開することは、なまやさしいことではないということを認識しなければなりません。(拍手)  先ほど来岡崎外務大臣のお話などを承ると、何でもなく輸出ができるように伺うのでありまするが、まことに甘い考えであるといわざるを得ないのであります。(拍手)もし市場の制限がない場合におきましても、外国の生産機械をもつていたしまするときには、外国と同じ種類の製品を生産するのでありまして、必然的に貿易の闘いは熾烈をきわめ、遂には険悪なる国際情勢を誘致いたしますることは、過去における歴史の証明するところであります。  吉田内閣は、経済再建のための貿易の振興を品に唱えながらも、今日のごときアメリカ依存の自由主義政策をもつていたしましては、絶対にその目的を達することはできないのであります。(拍手)それは、石炭のコスト高は独占資本の利潤追求のもたらすところでありまして、鉄鋼のコストの高いのは、何といつてもその原料をアメリカ大陸に求めるためであります。しかも、鉄鋼の生産高は、米国の年産約一億トンに対しまして、わが国のそれは三百数十万トンにすぎないのであります。多量生産はコストを安くいたします。世界市場において、米国の厖大なる生産力と競争せんとするという、そういうことで東南アジア貿易を甘く考えてはたいへんなことであります。(拍手)しかも、米英はもとより、西欧の諸国は、政治家の懸命なる努力により、今や戦争の疲弊よりようやく脱却いたしまして、海外への経済発展の素地を築き、市場の獲得に努力いたしておるのであります。これに反しまして、日本は、戦争の痛手いまだいえず、ここに平和の市場において立ち遅れましたのは、一に自由主義経済を基調とする吉田政治の怠慢の責任であるといわざるを得ないのであります。(拍手)  かくいたしまして現政府貿易政策の一貫性はいずこにも存在しないのであります。たとえば、貿易手形の金利政策、または生産コスト高の是正におきまして、あるいは市場の開拓において、技術の向上とその刷新において、政府は何らの対策と考慮を払わなかつた結果が、しんしんとして進出して参りました西独その他の諸国に押され、かつ輸入制限措置並びに東南アジア諸国の景気後退とに直面いたしまして、わが国は八方ふさがりとなつたのであります。かくのごときは、両三年来明らかに見通し得たのにもかかわりませず、政府朝鮮動乱僥倖によつて漫然手をこまねいていた結果が今日の貿易の行き詰まりとなり、なおその打開の兆をも見受けられないのは、明らかに現政府責任であるといわなければなりません。(拍手)この打開に対して、政府は何らかの方針をお持ちでございますか、この際明確にお答えを願いたい。  このようにして、科学技術の後進国家たるわが国は、東南アジアはもとより、南米アフリカに至るまで、米英の生産力がようやく正常に復帰いたしておりまする今日、米英と同種の生産を行いまするときに、これが輸出はいよいよ困難に相なるのであります。
  16. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 松前君、ちよつとお待ちください。      ————◇—————
  17. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) ただいま皇太子殿下が御退場になられます。     〔総員起立、敬礼、拍手〕      ————◇—————
  18. 松前重義

    ○松前重義君(続) この貿易の八方ふさがりを打開いたしまするところの中央突破の道は、まさにこの炭価高を是正いたしますために、石炭、鉄鋼、その他重要原料生産産業及び動力産業の国家管理を断行する社会主義的産業革命に基き、軽工業、重化学工業の分野において、優秀にして世界に誇る特異の製品を輸出いたしますることこそ、日本貿易の中央突破の道であります。この目的を遂行いたしまするためには、わが国経済構造の社会主義化と相まちまして、科学技術の飛躍的、重点的研究を行う研究機関の設立増強をはからなければならないのであります。(拍手)スエーデンは特殊の鉄鋼と機械工業によりまして、デンマークは、バターとベーコンによつて、またスイスは時計とチーズによつて世界市場の歓迎を受けつつあります。そうして、これらはいずれも科学技術を尊重し、政策に計画性を盛つた、忍苦と努力の結晶のしからしめるものであります。科学技術的努力と社会主義的産業革命こそは、日本貿易の、そうして日本経済の救世主であります。(拍手)  かかる理由に基いて、私は政府に対してお尋ねいたしたい。その第一点は、政府日本産業構造に対する産業革命の一翼として、原料生産工業及び動力産業の国家管理または統制を強化する意図ありやいなや。(拍手)その第二点は、これを裏づけいたします科学技術振興の方策として、英国におけるがごとく科学技術省を設置して、今日におけるごとき貧弱なる研究体制にほうつておくことなく、研究機関の新設または拡充を行い、貿易政策に基く重点的な研究体制の強化、そうして貧弱なるわが国の物的資源にかえますに、すぐれた頭脳的な資源の開発、これを行うところの意図が政府にあるかどうか。その第三点といたしまして、政府は技術導入の制限を行い、国産技術の助長育成に努力する意図があるかどうか、これらの点につきまして政府所見を拝聴したいのであります。  なお、経済審議庁の五箇年計画は、昭和三十二年度に至つても、なおかつ三億数千万ドル米軍の駐留費並びに特需を見込んでおるのであります。このことは、明らかに五年後も米国軍の駐留を承認することになり、完全独立を念願する国民意思に反するのみならず、経済的にも独立を期待しない奴隷的感覚をもつて立案せられたものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)何がゆえに、現内閣は、五箇年後には日本の政治的、経済的完全独立の方途を講ぜられないのでありますか。この点、経済審議庁長官の明確なる御答弁をお願いしたいのであります。(拍手行政協定におきまして米軍の撤退を声明し、経済自立を選挙スローガンとする現内閣の政策の中に、これを貫徹する具体的方策を示さずして、五箇年後においてもなおかつ駐留軍費と特需において日本経済のつじつまを合わせんとするがごときは、明らかにその本質を暴露するものといわざるを得ません。(拍手)かくのごとき他国依存の経済政策は、私のまつたく遺憾とするところでありまして、重ねて長官の御答弁をお願い申し上げる次第であります。  第二に、私は教育の問題について政府責任をただしたいと思います。およそ教育が、敗戦後に、その混迷せる国民思想と、廃頽せる道徳の復興に対しまして最も重要な役割を演じますることは、ここに贅言を要しないのであります。特に憂うべきは、最近の思想と道徳の廃頽であります。都市は希望を失つた国民の歓楽場と化し、犯罪は日に日に増加しつつあります。長い間の吉田内閣によります自由主義政策により、不健全なる非生産的なる歓楽場はいよいよ栄え、まじめなる生産者は息も絶え絶えになつておるのであります。金融は利潤に奉仕し、その計画性は失われ、国の姿は水の低きに流れるがごとく、経済の苦悩をよそに濁流に押し洗されつつあります。これは一にかかつて吉田内閣の金融資本の奴隷としての自由主義的資本主義経済の生んだ悲劇であると思うのであります。(「ヒヤヒヤ」拍手)しかし、私どもは、この悲劇を悲劇として終らしめてはなりません。そうして、この思想の泥迷と道徳の廃頽より日本を救うものは、何というても教育であります。  先般行われましたわが教育制度の改革に伴い、その六・三・三制と新制大学の設立とは、わが国の教育界に一大変動をもたらし、今や貧弱ながらも一応体裁は整つたかのごとくであります。しかしながら、あまりにもその形式の整備を急いだために、地方財政を極度に圧迫いたしまして、小学校の校舎は腐朽し、まことに危険な状態に立ち至るものが随所に見られるに至つたのであります。しかも、その内容において、ことに理化学的な教育施設におきましてはまつたく空虚にひとしく、明日の国民の教育に対して寒心にたえないのであります。加うるに、高等学校並びに大学は、その不完全な教育体制の中において年々多くの卒業生を出しまして、そしてその卒業生の路頭に迷う者、失業の悲哀に泣く者、日を追うて増加しつつある現状であります。これらの卒業生は、一応知識階級として、失業の苦しみの中に社会の矛盾を感じて、思想の動揺に悩みつつあります。しかも、あたたかい社会保障の制度も失業の救済も今日のごとく著しく不完全な状態では、社会問題として深刻なる現象へと導かれるであろうことは明らかであります。(拍手)これ実に政府計画性のない教育の責任に帰すべきものであるといわざるを得ません。文科、理科を通じて、専門学科と就職戦線との関連性の欠如などは、まつたくこの現象を生んだ直接の原因をなすものであつて、就職に迷う若人たちの悩みはまことに深いものを感ずるのであります。無計画なる教育制度は、今後いよいよ幾多の問題の原因をつくるでありましよう。政府は、これらの教育体制の計画的な再編成について、またその施設の充実について、まことに冷淡であります。これを現状のまま放置いたしますることは、まことに明日の日本にとつて、砂上に楼閣を築くがごとき危険を感ずるのであります。  本年度の予算に示されました教育費の増額は、おおむね人件費におきまするぺース・アツプに相当する金額を計上したにすぎず、独立日本にふさわしい教育予算としてこれを見まするとき、まことに慨嘆の至りと言わねばなりません。党利党略と見られる不経済な予算は多額に計上しても、この誠実にして謙遜な国づくりの根本問題を忘れていることにつき、政府はいかなる見解をお持ちでありましようか。(拍手)  政府は、さきに同僚三宅君の質問演説にも述べましたように、義務教育費の全額負担という美名に名を借り、民主主義に逆行するがごときことには熱心でありまするが、これは教育本来の道を忘れたといわなければなりません。(拍手)しかも、勤労青年諸君の唯一のよりどころでありまする定時制高等学校、その他短期大学等の夜間進学への道を開くところの予算のごときはほとんどその影をひそめ、さらでだに危険な、中学卒業直後の最も動揺期にある青年の教育に対して、まつたくその誠意を認めることができないのであります。(拍手)さらに私立学校は、そのいずれも、下は幼稚園から上は大学に至るまで、その経営に悩んでおります。しかして教育におきまする私学の占むる地位は実に重いのであります。政府は、おのおのその教育に特徴ある私学の振興をはかり、官学における画一教育の刺激たらしむべきであります。  私は、ここに文部大臣に対し、次の数点について大臣の所信をお伺いいたしたいのであります。  まずその第一点として、教育は国家と社会の要求に沿うことを使命とするものでありまするがゆえに、社会の要求と教育計画との問に十分の連繋ある教育計画を樹立しなければならないのであります。政府はいかなる基本的計画をお持ちでありましようか。政府のこの問題に対する所信をお伺いしたい。  第二点としてお伺いしたいことは、何ゆえに、いたずらに義務教育費の国庫負担の美名のもとにこれを断行するのか。そして、そのような裏に党利党略のあるようなものをやつて、教育施設その他の充実に対しての予算をまつたく放置しておる。このことについてお伺いをしたい。  第三点といたしましては、勤労青年教育の唯一の向学の道でありまする定時制夜間高等学校及び夜間短期大学等の設立助長、また勤労学生に対する所得税の免税等の特別措置を講ずること、このような問題につきまして、どのような見解をお持ちでありまするか。これらの実現に努力して、勤労青年の希望にこたえる熱意をお持ちであるかどうか。  第四点としては私学の振興についてでありますが、その教育を健全ならしめるための政府の助成計画について、はたして熱意をお持ちであるかどうか。  以上につきまして、文部大臣は、青年あるいは少年たちに対して愛情を持つて、親切なる気持を持つてお答え願いたいと思うのであります。(拍手)  最後にお尋ねいたしたいことは、保安隊の性格についてであります。私は保安隊について質問を展開しようとするのでございまするが、保安隊は国内の治安を目的とし、間接侵略に対抗することを限度とする装備及び訓練をなすべきものと考え、その観点において、以下の質問を展開いたしたいと思うのであります。(拍手)  一言にして言えば、吉田内閣によつてつくられた保安隊の性格は、まことにあいまい模糊と言うことができます。私は、先日保安隊の営舎に一夜を明かし、つぶさに保安隊の現状について視察し、一隊員としての生活を通じて、保安隊のあり方とその現状を体験することができたのであります。そうして、私どもが常に想像しておりました保安隊と、現実に体験してみた保安隊とは著しい逕庭があつたことを否定できないのであります。私は、宿舎の中で彼らの装備を見、その訓練に参加し、二十才前後の愛すべき青年隊員とまくらを並へて寝ね、食卓をともにして、彼らの思想と信条に接しまして、保安隊の現状に対しで少からざる疑問を抱くに至つたのであります。その訓練は敵陣地の攻略を目的とし、その方法は、いわゆるアメリカ式の物量を頼みとした遠方からの制圧方式でありまして、完膚なきまでに敵の陣地を粉砕してから後に、おもむろに、日本軍がかつてやりました、あの突撃とはまつたく違つた、悠々とした突撃を試みる、     〔議長退席、副議長着席〕 これはまさに異民族あるいは他国との戦争にのみ利用し得るアメリカの戦法である。(拍手)保安隊が国内治安の確保のために存在するといたしまするならば、その治要確保の道は、これとまつたく異なつた方法によらなければならないことは当然であります。(拍手)そのあやつる二十トン戦車ならざる特車は、その重量のゆえに、日本内地における作戦においては、いたずらに橋梁の破壊に役立つのみであつてその行動の制約のために、ほとんど用をなさないのであります。  このように、保安隊は、国内の治安に当るにはあまりにも日本の現実に即応しない、同一民族の内乱処理に対しては無価値にひとしいものといわなければならないのであります。(拍手)加うるに、愛すべき青年隊員は、君らは朝鮮に出動を命ぜられた場合、これに従つて出動するかと私が質問したのに対しまして、彼らは異口同音に、朝鮮への出動命令に対しては行きたくない、しかし北海道への出動はいたし方ありませんと答えました。保安隊は、その訓練内容と、隊員の心構えと、その装備において著しい矛盾がありますることは、これによつても明らかであります。(拍手)  その特車や、バズーカ砲や、機関銃から銃に至るまで、全部アメリカ軍の貸与品であります。しかも、この貸与は、増原保安庁次長とワトソン保安顧問団長との間に協定されて貸与されているとのことであります。船舶は、船舶貸与協定によつて国会の承認を得て日本側に貸与されているのであります。この船舶は消耗品でないから、両国の正式な協定でやつたのであるが、他の陸上の兵器は消耗品であるから、正式協定をしないでもいいと言われるかもしれないのでありまするけれども、大砲を持つた船舶が備品で、対戦車砲を持つたところの戦車ならざる特車が消耗品であるということはあり得ないし、日本側の購入にかかるトラックは備品となつておるのであります。このことは、独立国としてのこの国会の何らあずかり知らざるものであり、聞くところによりますれば、増原君とワトソン氏との間においてやみ取引されたのであるとのことであります。しかも、このやみ取引を基礎として保安庁予算が堂々と国会に提出されておりますることは、占領下におきまする米国の占領政策の具現としてならばいざ知らず、独立日本の主権をみずからの手によつて侵害しておるものと考えざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、保安隊員に対する教育訓練の内容は、まつたく純粋なる戦闘技術の訓練でありまして、この訓練を経ました若人たちは、全然日本の歴史や国への意識を教えられないで、自己の受けた訓練の目的を自覚せしめない教育であります。このため、部隊指導者のいかんによりましては、その指導者の意のままに戦闘に参加し得る部隊と見ることができるのであります。アメリカの指導者が、これを何らかの目的のために戦闘に参加せしめることもできるだろうし、また間接侵略に際しましても、この指導者によつて侵略の前線におもむかしめることもできるような教育内容であります。私どもには、独立国家としての自衛権があります。但し、この自衛力は、間接侵略に対する治安力の確保のためにのみ培養すべきでありまして、保安隊はあくまでも海外に出動せしめてはならないのであります。(拍手)もし保安隊が国内治安のためのみの部隊とするならば、その装備に、その訓練に、そしてその規模において、その限度を越して今や再軍備の領域に達し、憲法違反の疑い十分なるものがあります。(拍手)しからずんば、完全にアメリカの傭兵的な存在であると言うことができるのであります。(拍手)  以上の実情によりまして、おたまじやくしは遂にかえるとなりました。これでも政府は再軍備をせずと言うならば、その欺瞞的答弁は、一時はそれで過し得ましても、明日の歴史と国民をごまかすことはできないのであります。やがてはその欺瞞性を白日のもとに暴露されるのみならず、この言辞は政治それ自身の信を失い、過日の吉田総理大臣の施政演説において最も強調せられましたところの道義の高揚を、政府みずから蹂躪するものといわざるを得ません。(拍手)私は、ここに総理大臣並びに保安庁長官に対して、次の数点について政府所見をお伺いいたしたい。  その第一点は、現在保安隊の装備と訓練と規模とはすでに再軍備の域に到達し、憲法偉反の疑い十分である。この点に関し政府はいかなる見解を持つておられるか。(拍手)  その第二点は、保安隊の兵器の貸借の問題であります。兵器の大部分はワトソン保史顧問団長と増原次長との間の貸借になるとのことでありまするが、これはほんとうでありましようか。もしほんとうであるといたしまするならば、保安隊の厖大なる予算は、このやみ取引を基礎として成立していることとなります。兵器が保安隊の生命であるといたしまするならば、この生命は米国によつて完全に支配されている形になります。しからば、保安隊は、日本の保安隊たるよりも、むしろアメリカの軍隊の一部と見られ、その傭兵的性格を持つているものと見ることができるのであります。(拍手)この点に関して、政府見解をお伺いいたしたい。  その第三点といたしまして、この貸与された兵器は保安顧問の責任において管理され、しかも保安層間団の人員は五百名を数えるとのことであります。政府は、いつまでこの多数の保安顧問制度を存置するおつもりでございまするか。  その第四点として、政府の今日までの計画をもつていたしますれば、自衛力として保安隊を十一万人程度とするとのことでありまするが、今後さらにまだこれを増強される意図があるのかどうか。  この四つの点について政府の明確なる答弁をお願いしたいのであります。(拍手)  さらに保安隊に関連いたしまして、私は安全保障条約に含むレーダーという、いわゆる電波兵器の問題についてお尋ねいたしたいのであります。日米安全保障条約によりますれば、電波によるレーダーの設備は米軍が日本の周辺に施設することになつているのでありまするが、これは空に対する国家の目であります。レーダーによつて、雲の上といえども飛行機の存在を知ることができて、初めて他国機の侵入に対し抗議を提出することができるのであります。もし目のない人間であるといたしまするならば、それは不具であります。剣を手にする必要はないが、目をあけて空を見る能力を持つことが完全な人体であります。(拍手)先般、北海道上空に他国機が飛来したとき、これを発見いたしましたものは日本側ではなかつたはずであります。この真偽について、保安庁長官の御説明を伺いたい。さらに、総理は、日米使命保障条約行政協定の改訂を明言いたしましたが、レーダーその他のもろもろの施設に関する日米関係について、独立国として、政府は将来いかなる方針をもつて臨むのでありまするか。将来とも、不具者として、目を持つアメリカの命令に従つて行動するのでありまするか。この点、政府の明確なる御答弁を期待いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御質問の要旨は大分専門的になりますから、主管大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  20. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 通商産業関係に対する御質疑にお答えいたします。  松前議員のお言葉のうちに、日本経済の後進性を認識して、その上に立つて計画経済、保護政策を行うべきではないかという意味のお尋ねがございましたが、政府といたしましては、自由主義経済を基調として経済の発展をはかつて参る所存であり、長期的観点のもとにわが国経済の真の自立を達成するため、内外の経済情勢に即応しつつ、経済政策をば総合的かつ重点的に実施し、貿易の発展を中心として経済規模の拡大をはかつて参りたいと考えております。将来、仰せの通りに一部の統制を必要とする場合が起らないとは言えませんが、目下のところ、統制ないし計画経済的な考えは持つておりません。従いまして、電力、石炭、鉄鋼等の基幹産業につきまして、国営ないし国家管理等とする考えは持つておりません。  次に技術のことについてお話がございましたが、わが国の産業は、戦争による荒廃、蓄積資本の喪失等の結果、産業設備が著しく老朽化いたしまして、欧米諸国に比して特に重化学工業方面で技術的に立ち遅れておることは御指摘の通りであります。また、東南アジア等、従来の後進国の工業化が進みまして、すでに繊維生産等において相当の進出を示しており、わが国としては、このような情勢のもとに、今後国際市場において激烈な競争に耐えて行くためには、商品の品質の向上のコストの低下を必要とし、特に軍化学工業を中心としました技術の近代化、経営の合理化を推進せねばならぬと考えております。そこで、政府は、さきに制定せられました企業合理化促進法の運用を積極的に行い、また機械輸入のための別口外貨貸付を行うほか、金融、税制上の優遇措置をもつてこれが助成を行い、また技術導入のための外資導入を促進し、技術振興のためには工業化試験補助金、応用化試験補助金、発明奨励補助金等を、本年度に引続き来年度の予算にも計上いたしまする等、諸般の施策を行つております。もとより、これらの施策は、わが国の科学技術の向上を目標として、できるだけ短期間にこの立遅れを回復いたしたいという意図に基くものでございます。かような点に立つておりまするので、さつき松前さんのお話のうちに、外国の機械設備を入れると、ひいて日本の工業発展の芽をつむようなことになりはせぬかという意味のお話もございましたが、産業合理化用の機械類についても、入りますのはサンプル用の機械を輸入するにとどめておりまして、その後の新設分は、特許料のみを支払う方法によつてわが国の製品をもつてこれをまかなうように指導いたしております。また乗用車等につきましても、国産車の品質向上を目標とする技術提携のみを認めておるというものであることを御承知願いたいと存じます。国際経済日本の置かれておる立場はまことに容易ならぬものがあり、経済自立を目標といたしまして、極力短期間に経済力強化いたそうといたしますれば、単純な保護政策あるいは統制政策はかえつてこの目的に反するものと考えられる。むしろ優秀な技術等を積極的に導入し、大いにわが国の科学技術を振興し、これを基礎として諸般の産業を進めることが適切であると考えておるのであります。  さらに経済審議庁長官としての私にお尋ねが一つございましたが、先般政府経済五箇年計画を発表した云々ということがございましたが、さようなことはございません。実は先般、電源開発等につきましては五箇年計画を確立いたしておりまして、本年度はその予算等が計上いたしてございまするが、一般的な経済五箇年計画は、これは松前さんもよくおわかりのごとくに、今日のような事情のもとに、種々の前提を置いて確立し得るものでは実はございません。けれども、世界銀行の調査団がこちらへ来られて、一応どう見るか、ひとつ素案を出してみてくれということでございましたので、その質問に対して、外資導入立場から、いろいろなことを前提といたしまして——それは現状が大体基礎になつておるのであります。従いまして、五箇年後には電源を開発する、こういうことになるという一応の腹案を事務当局から出して説明をいたしたにすぎぬのでありまして、経済審議庁といたしまして、まだ正式に一般的な経済五箇年計画をつくつたことはございません。率直に私は申し上げておきます。今日の国際情勢下で、何人も確たる経済五箇年計画を立てがたいことは、松前議員が最もよく御承知であると存じます。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
  21. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 松前さんの御質問にお答え申し上げます。  戦後、思想が混迷しておつて道徳が頽廃しておる。お説の通り、私も御同感でございます。また、それに対してどうしたらよいかということについて教育の力によらなければならぬとおつしやつてくださいましたことは、私として非常にうれしいことでございます。どうぞそのおつもりで、御援助を今後お願いいたしたいと思います。できるだけ御期待に沿うようにいたしたいと存じます。  それから、全額国庫負担の問題につきまして何か党利党略という言葉がちよつと耳に入りましたが、私はそういうことは考えておりません。義務教育を拡充して行く、義務教育は国の責任である、そうして義務教育に従事する職員の身分の安定をしなければ、りつぱな義務教育ができて行かぬということにつきましては、一昨年以来の国会の御意思でございます。でございますから、昨年、地方財政が非常に困つておるときに、地方財政ばかりに平衡交付金をまかしちやおけないから、国庫が少しでも負担してくれ、こういうような御要望があつて、昨年半額だけでも国庫負担を考慮するということで、たいへんこれは喜ばれたことなのであります。私は、その当時から、むしろ全額負担をした方が憲法の精神に合うという意見を持つておつた次第であります。その意味におきまして、私は、文部大臣の職責を務めます以上は、私の信念に従つて、半額でなくて全額ということにしたいわけでございます。  そのほか、科学の問題とか、勤労青年とか、社会教育、定時制高校、夜間短期大学、産業教育、勤労学生の問題、私学振興とか、いろいろお尋ねがございましたが、これは十分とは申せませんけれども、明年度予算にはすべてこれを織り込んで、お説のような趣旨によつてこれを遂行して行きたいという予算上の措置がしてございますから、御承知おき願います。     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  22. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  ただいま松前君から、今の保安隊は再軍備の程度に達しているものではないかというお尋ねであります。私は、決してしからず、こうお答えいたしたい。と申しますのは、御承知の通り、保安隊はわが国国内の平和と治安を維持するために創設されたものであります。しかも、保安隊のこの目的と申しまするのは、要するに警察力をもつてはとうてい鎮圧することのできない大騒擾、内乱等を制圧するために設けられたのであります。しかして、かつてのスペインにおける大内乱、その他各国に例を見ますところの大騒擾、反乱を見ますれば、わが国においても、ただいま保安隊の持つておるくらいの装備と人員はぜひとも必要であることを私は確認するのであります。しかして、現在の保安隊の人員、装備は、近代戦を遂行するにははるかに劣るべきものであることは、専門家であります松前君も十分御存じであります。要するに、憲法第九条第二項の戦力は、近代戦を有効適切に遂行する能力であります。現在の保安隊の持つておりまする人員、装備に至りましては、はるかにかような程度に達していない。従つて、これは再軍備の程度に達していないことは明々白々であるということを申し上げたいのであります。これは専門家である松前君も十分御了承くださることを私は信じて疑いません。  また、この保安隊員の精神問題について御懇切なるお話がありました。私は、松前君が、一日保安隊において、この保安隊員と寝食をともにされたことに対して、深甚の敬意を表します。(笑声)この点について、私は保安隊員のいわゆる土気はどうであるかということは、おおよそ松前君も御存じであろうと思います。私も就任旧浅いのでありますが、この保安隊員の精神訓練につきまして、できるだけの努力をいたしております。最近におきまして、私は近畿地方の隊をつぶさにまわつて参りました。保安隊の十七才から二十二才に達するあの青年が、みな保安隊に入つて、いわゆる人間の修業をしたい、保安隊は人間修業の道場であるとさえ言つておるのであります。この点におきまして、私は、この保安隊員の精神問題についていささかも憂えるところはありません。国家の治安確保のために万全の方策を講ずることを信じて疑わないのであります。  次に武器の点でありまするが、これは各隊において、米軍から好意的に個々に借用していることは事実であります。これは無償でありまして、この保安隊の任務遂行上必要な範囲において借りておるのであります。しかしながら、この点については、私は一括して中央においてこれを借り受けることが適切であろう、こう考えておつて、ただいまその手続中であります。私は、できる限りは日本においてつくつた武器を彼ら隊員に持たせたいという切実なる希望を持つております。これは私の個人の意見でありますが、どうか松前君においても、できるだけの御助力をお願いしたいと考えております  第二に顧問団のことでありますが、私は顧問団はなるべく早く引揚げてもらいたいと考えております。ただいまの程度においては、いわゆる武器の操作、これは取扱いの点についての、いわゆる一つの補助、進言を受けておる程度でありまして、決して訓練その他について米軍の指揮は受けておりません。(「受けているではないか」と呼ぶ者あり)断じて受けておりません(発言する者多し、拍手)  それから自衛力の漸増でありますが、私は現在の十一万程度において十分であろうと考えております。できるだけこの十一万の保安隊員、警備隊員の内容を充実して、日本の治安維持のために万全の方策を講じたいと考えております。  次にレーダーの問題でありまするが、いかんせん、日本においてはレーダーを持つておりません。われわれは、一日も早く何とかしてこのレーダーを持つて通信その他の設備に万全を期したいと、ただいま考えております。御助力を願いたいのであります。(拍手
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 松前君、再質問がありますか。
  24. 松前重義

    ○松前重義君 ありません。
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) よろしゆうございますか。  武藤運十郎君。     〔武藤運十郎君登壇〕
  26. 武藤運十郎

    ○武藤運十郎君 私は、日本社会党を代表して、吉田首相、木村保安庁長官及び岡崎外相に対しまして、再軍備と憲法改正の問題並びに日本の安全保障を中心とする外交上の諸問題に関して、いささか質問を試みんとするものであります。  まず第一に、私は保安隊並びに警備隊は今やすでにりつぱな戦力であり、明らかに憲法違反なりと考えますがゆえに、この際あらためて吉田首相と木村保安庁長官にその見解を承りたいと思うのであります。ただいまも松前議員から質問があり、木村長官から答弁があつたのでありますが、決して満足なものではございません。私は重ねて御質問を申し上げたいと思うのであります。  御承知の通り、再軍備と憲法に関する国会の論争は、今までも幾たびか行われたのであります。しかるにかかわらず、いまだに何らの結論が出ておりませんのは、なぜでありましようか。それは第一に、吉田内閣の強引なやみ軍備政策によるのであります。しかしながら、もう一つの大きな原因は、今まで保安隊、警備隊が政府によつて鉄のカーテンの奥深く隠され、それが国民の前に公開されなかつたがために、あたかも盲が象をなでるように、その全貌を見ることなくして、いたずらに議論をしておつたからであります。その意味におきまして、先般行われました木村保安庁長官の関西地方における保安隊並びに警備隊の実況視察は、これが同行の新聞記者に公開されましたので、いささか保安隊は軍隊にあらずの認識を改めしむるに役立つものがあつたのではないかと思うのであります。(拍手)はたせるかな、視察後、木村長官は同行の記者団に向いまして、保安隊、警備隊の実況は、われわれ当局者が考えていたよりもはるかに進んでいる、このように述懐せられたとい’うことであります。  しからば、木村長官の感動せられた保安隊、警備隊の現状はどうであろうか。まず保安隊の現地部隊は普通科連隊、特科連隊、施設大隊、特車部隊などでありまして、それらはそれぞれ旧陸軍における歩兵、砲兵、工兵、戦軍兵などの各部隊に該当するものであります。試みにその装備を見ますならば、戦車は申すに及ばず、百五ミリないし百五十五ミリ榴弾砲、対空自走砲、四トン・セミトレーラー、戦車輸送車、四トン・レツカーなどの科学的重装備でありまして、これらはすでに前大戦当時の日本陸軍の装備以上のものがあるということでございます。(拍手)従いまして、各部隊の演習は、歩兵の演ずる白兵戦演習は申すに及ばず、砲兵陣地侵入、展開射撃演習、渡河作戦など、いずれも激しい近代科学戦を想定しておるのであります。さらにまた、これらの部隊を指揮する連隊長は、いずれも陸士卒、陸大卒、元参謀、元大佐、元中佐などという純然たる職業軍人の肩書を持つ旧軍人であり、隊員みずからもまた軍隊と信じて疑わない由でございます。(拍手)カービン銃やバズーカ砲が国会で騒がれたのは、わずかに半年前でありましたが、今は昔の物語りとなつてしまつたわけであります。  同行した記者団の一人は、概略次のようにその感想を述べているのであります。こうして高度に機械化された保安隊の戦闘力を目のあたり見るにつけても、保安隊は軍隊にあらずの政府答弁とははるかにかけ離れた、きびしい現実を感じた、(拍手)しかも、隊員の多くは、保安隊は軍隊だと承知して入つて来たと言い、政府はなぜ再軍備を打出さないのですかと記者に反問する、再軍備の是非はともかく、憲法のカーテンに隠れた保安隊、警備隊がこのカーテンを破る日は近いであろう、このようにその実感を述べているのであります。木村長官の感想も、おそらくこの記者の感想と多く異るところはなかつたのではないかと私は思うのであります。(拍手)  ただいま申し上げましたような実情は、保安隊の現地報告でありますが、警備隊におきましても、去る一月十四日、船舶貸借協定に基きまして、アメリカよりフリゲート艦十六隻中六隻、上陸支援艇五十隻中四隻の引渡しを受けまして、ここに日本海軍の一歩を踏み出したことは御承知の通りでございます。(拍手)そもそも戦力とは何であるか。それは戦争を有効に遂行することのできる一切の軍事的組織であります。今保安隊、警備隊の実態を見まするに、厳重な規律によつて上下服従の関係に立つ十一万の隊員、これに施された軍装備、毎月専門的に行わるる猛烈なる軍事訓練、何どき戦争に投げ込まれましても、りつぱに役立つ軍事的組織であります。これこそりつばなる戦力であり、これをしも軍隊と言わずして何をか軍隊と言うでありましようか。(拍手)ことに、今後の戦争が政府の言うがごとく、数箇国による集団防衛にまつといたしまするならば、おそらく日本の部隊は、アメリカその他の軍隊と連合して、あるいはこれに混入せられて、近代戦に参加することになるのでありましよう。この場合、保安隊に属する十一万の歩兵隊、工兵隊、砲兵隊、戦車隊、航空隊、衛生隊などは、原子爆弾こそは持ちませんが、いずれも連合軍の一翼として重要な役割を果させられる武力であると申さなければなりません。(拍手)  さらに、保安隊の実態を予算の規模から見まするに、二十八年度保安庁の予算は実に八百三十億、まさに総予算の九%になんなんとしておるのであります。しかも、この額は、今後アメリカの要求により、あるいは補正予算によつてさらに増額せられ、総予算の一〇%を越すであろうことは、火を見るより明らかなりと申さなければなりません。しかも、このように増大した保安庁予算の使途は、まず飛行機百二十一機の購入、警備船——これは実は駆逐艦でありますが、七百トンないし千五百トンのもの五隻の建造に充てられる。このほか、建物では、陸海空軍省としての保安庁ビルの建築を初めといたしまして、各庁舎の建築、演習場、飛行場などの軍事的施設の建設に使用さるることになつているのであります。ことに注目すべきことは、本年度の予算が、このように飛行機、軍艦、演習場、飛行場などの基本的軍事費ばかりではなくして、保安研修所、技術研究所、保安大学、専属病院等々、旧陸海軍とまつたく同様な規模による補助的、外廓的軍事施設をも完備して、総合的な軍組織としての形態を整備しつつあるということでございます。  国際的に用いるものが戦力であり、国内的に用いるものは警察力であるとか、あるいは戦争をする目的がなければ軍備ではないとか、さらにはまた、自衛のための武力は軍備ではないとかいうような、あらゆる戦力論の防衛のもとに、政府は着々として日本の再軍備を進めつつある。政府は、この既成事実の上に立つて国会国民を欺瞞し、あるいは、もうしかたがないとあきらめさせるための時をかせいでいると申さなければなりません。(拍手吉田首相は、いまだに、憲法は改正しない、改正しないと繰返しておられるのでありまするが、事実においては、すでにかつてに憲法の改正をいたしておるのであります。これこそは最も悪質違法な憲法の改正であり、平和憲法の敵はまさに吉田内閣なりといわなければならぬのであります。(拍手一体政府は、かくのごとく保安隊、警備隊をあくまでも戦力にあらず、憲法違反にあらずとして、今後これをどの程度まで拡大せんとするのであるか。また保安隊、警備隊が、その隊員の数において、その予算の額において、その重装備においていかなる限度に達したとき憲法を改正して、これを軍備と言わんとするのであるか。私は、吉田首相並びに木村長官より、良心的にしてかつ率直なる御見解を承りたいと思うのであります。(拍手)  第二に、私は、日本の安全とアジアにおける地域的集団保障との関係並びにこれと日本軍備との関係をお伺いいたしたいと存ずるのであります。吉田首相並びに岡崎外相は、常に地域的集団安全保障の必要性を強調しておられるのであります。先般アメリカにおきましては、アジアの戦いはアジア人にやらせろと強く主張するアイゼンハウアー元帥が大統領に就任をし、さらに巻返し戦術と太平洋同盟の主張ダレス氏が国務長官に任命されましたことは、御承知の通りであります。このアイク・ダレス・ラインによる対アジア政策は、早くも昨年暮れ、アイクみずからの朝鮮訪問となつて現われ、これに続きまして、正月早々、反日政治家として有名な李承晩韓国大統領が、にわかに態度を改めて日本を訪問して参つたのであります。李承晩大統領は、吉田首相との会見において、軍事同盟の必要性を強調したということでありまするが、さらに続いて葉国府外交部長も、国連総会よりの帰途に名をかりて日本を訪問し、岡崎外相などと会談をいたしておるのであります。近くアメリカ新政府によつて行われるという台湾中立化の解除とともに、このような一連の動きを見ますときに、われわれはアジアにおける太平洋同盟の結成近きにありと感ぜざるを得ないのであります。(拍手)  一昨日、吉田首相は、太平洋同盟とは何か知らないと答えられた。先ほど、岡崎外相は、ただ新聞に出ている程度のものだと言われました。しからば、政府の言うアジア自由主義国家群による地域的安全保障とは、具体的にはいかなるものであるか。(拍手)私は、これにつきまして、成立の見通し、同盟の性格、加盟国の範囲などをお伺いいたしたいと存ずるのであります。  私の考えるところによりますれば、政府の言うアジア自由主義国家群による地域的集団安全保障は、太平洋同盟その他名称のいかんにかかわらず、北大西洋同盟と同じく、アジアにおける軍事同盟としての性格を有するものであります。(拍手従つて、もし日本がこれに加盟せんとするならば、日本は当然にまず軍備を持たなければならないと思うのであります。この場合、政府はどうしても憲法改正をやるほかないではないか。再軍備はしない、憲法改正はやらないという言明と、日本の防衛をアジアにおける地域的集団安全保障に求めるという主張とは、まつたく相矛盾するものではないか。(拍手)この点について、私は明確なる吉田首相の御答弁をいただきたいと思うのであります。  私は、アジアにおける地域的集団安全保障としての太平洋同盟に反対をするものであります。けだし、太平洋同盟への加入は、日本が決定的に自由主義国家群に従属して、中ソ両国を敵にまわすことである。それは、中ソ両国を必要以上に刺激して、アジアに戦争の危機を招くことにもなるのであります。(拍手)かくして日本は再び好んで、みずから、ばかばかしい戦争に飛び込むことになるのでありましよう。この場合、同盟国中、その人的、物的資源におきまして一番損をするのは、現王まつたく自主性のない、不完全独立日本であるといわなければなりません。(拍手)  申すまでもなく韓国、国府、フィリピン、東南アジア諸国など、この同盟の同盟国と考えられる国々は、いずれも海のかなたにあり、もし日本がこの同盟に加盟しますならば、いくら政府が、日本には軍備はない、軍隊はないといつてみましたところで、国民をごまかすことはできましても、外国をごまかすことはできないでありましよう。(拍手)やみの軍備ではありますけれども、アメリカその他の近代的兵器によりまして重装備を施され、しかも厳重な軍事的訓練を経た十一万の保安隊、警備隊は、おそらく同盟国のどこの軍隊よりも精強な軍隊として、まず朝鮮出兵を手初めに海外に派遣を要求せられるものであろうことは、火を見るよりも明らかなのであります。(拍手)私は、心から日本独立と平和を念願するがゆえに、アジアにおける地域的集団保障としての太平洋同盟には絶対に賛成することができないのであります。しかるに、政府は、はたしていかなる根拠に基いて地域的集団保障の必要性を強調せんとするのか、その見解を伺いたいと思うのであります。  私は、日本の安全を、もつぱら国際連合による国際的集団保障に求めようとするものであります。申すまでもなく、国際連合は、地域的な軍事同盟と異なりまして、米ソ両陣営を含む国際的な平和維持の機構でございます。この点につきましては、先ほども質問応答がありましたが、私はこれへの加入と協力には必ずしも軍隊を持つことを必要としないと考えるのであります。ことに、日本は、米ソ両国を含む連合軍によりまして完全に武装を解除せられ、彼らの強力なる要求のもとに平和憲法をつくり、軍備のない平和国家を建設いたしたのであります。従いまして、日本軍備を持たないまま、堂々と国連への加入を要求する国際法上の権利があると申さなければなりません。(拍手)この意味におきまして、私は国連へ加入するためには、日本が当然に警察軍を持たなければいけないという一種の再軍備論には遺憾ながら賛成できないことを、この際明らかにいたしておきたいと思うのであります。(拍手)もちろん、私は、権利主張するものは同時に義務を尽さなければならないことを忘れるものではありません。しかしながら、国連への協力は必ずしも軍備だけに限るものではないのであります。私は、この堂々たる政治的、法律的見解に立ちまして、政府が平和憲法を堅持しつつ国連への加盟努力すべきことを要請してやまないものであります。私は、これに対する吉田首相の御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。  第三には、日本外交政策の基本をどこに置くのか、また日本独立と平和はどうしたら保てるかを、重ねてお伺いしたいと思うのであります。政府は、われわれの強い反対にもかかわらず、強引に押し切つて、米英陣営だけとの多数講和を締結し、これによりまして、国民の前に日本独立と平和とを高らかに誤歌いたしたのであります。しかるに、その結果はどうでありましよう。つかの間にして、アメリカより、あの屈辱的な行政協定を押しつけられ、全国六百箇所に広汎な治外法権を持つ軍事基地の設定を甘受し、アメリカ人に対しましては、軍人、軍属はもちろん、家族に至るまで、公務外、施設外の犯罪につきましても一切刑事裁判権を喪失するに至つたのであります。しかのみならず、何ら協定のないイギリス、オーストラリア、その他の国連軍に対してさえ刑事裁判権を行うことができないという、まことに情ない実情でございます。もし日本が真に独立国でありますならば、日本国内で大どろぼうを働いたイギリス水兵を日本の警察が逮捕して、日本の裁判所がこれを裁判するのは、当然過ぎるほど当然ではありませんか。(拍手)しかるに、それをあたかも、こちらが何か悪いことでもしたかのように、ひたすらに恐縮をし、何とかして身柄を英国側に引渡さんと苦心さんたんしたのが、独立日本外務大臣、ここにおられる岡崎君なのであります。(拍手)英濠兵のどろぼう事件につきましては、遂に起訴することさえもできないで、みすみす身柄を英濠側に引渡してしまつたではありませんか。国連協定が、すでに半年余も経まして、いまだに解決しないのも、政府日本の刑事裁判権を強く押し切れないからでございます。  申すまでもなく、刑事裁判権は、国家主権の中核をなすものであります。すなわち、ある国が完全に独立しておるかどうかの判断は、その国が完全な刑事裁判権を持つておるかいなかによると申しましても、決して過言ではないのであります。(拍手)かのサンフランシスコ講和条約によりまして日本独立を与えたのは、自由主義のアメリカ、イギリスだと政府は言つておる。しからば、それによつて独立したはずの日本が、何ゆえに日本独立を与えたアメリカ、イギリスに対してその独立主権を対抗できないのか。奇怪しごくと申さなければなりません。一体岡崎外相は、日本外務大臣なのか、それともアメリカの外務大臣、いなアジア局長なのか、私はまずそれから伺いたいと思うほどであります。このようにだらしのない岡崎外交は、与党側からさえ腰抜け外交とののしられ、その都度外交と笑われまして、ますます日本の主権を縮小し、いよいよもつて日本をアメリカに従属させる結果となつておるのであります。(拍手)かかる情ない、属国のような日本実情は、岡崎外相の無能もさることながら、根本的には吉田政府がわれわれの全面講和論に反対をして、米英陣営だけとの多数講和を強行した結果にほかならないのであります。(拍手)  一体政府は、これでもなおあくまで自由主義陣営に属して、決定的に共産主義陣営を敵にまわすことが日本独立と平和を守るゆえんであると主張するのか、それとも中共、ソ連陣営に対しても国交を回復する意思があるのか、私はこの際あらためてお伺いいたしたいのであります。  吉田首相は、かつて米英との講和条約を結ばんとするにあたりまして何と言われたか。全面講和は理想である、私もできればそうしたい、しかし今それができないとなれば、まずできるものからやるほかはないではないか、このような趣旨の答弁を繰返されたのであります。われわれは、この言葉によりまして、吉田首相が、米英陣営との講和条約締結の後は、外交政策における理想実現のために、ただちにソ連、中国との国交回復に努力を始めるであろうと思つておつたのであります。けだし、全面講和を理想と言い、なしくずし講和のやむを得ないことを主張した吉田首相が、引続いて、残つた国との講和に努力することは、政治家としても、また政権担当者としても当然のことと考えたからであります。(拍手)しかるに、吉田首相は、一たび米英陣営との講和条約に成功するや、ますますこれ偏して、こうも中共異、ソ連との国交回復を考えない。のみならず、むしろこれを敵視するような態度をますます強化しておるのであります。  申すまでもなく、私は共産主義に反対であり、共産主義の国家形態に賛成するものではありません。従いまして、日本を中共、ソ連に従属させるようなことは、日本を米英に従属させることと同様に反対するものであります。しかしながら、このことと、日本が中共、ソ連を現に存在する世界の一国家として承認することとは別個の問題であると申さなければなりません。(拍手)私は、日本が中共、ソ連両国ともすみやかに戦争状態を終了して国交の回復をはかると同時に、米ソいずれにも傾かず、自主中立の立場をとることこそが、真に日本独立と平和を守るゆえんであると考えるのであります。  中立問題につきましては、一昨日、わが党の和田博雄君の質問に対しまして、岡崎外相より反対の答弁があつたのであります。しかし、われわれは決してこれに満足し、あるいは屈服するものではありません。私は、岡崎外相が中立政策を攻撃する前に、まずアメリカ一辺倒政策の誤れる結果を深く反省すべきだと思うのであります。(拍手)すなわち、岡崎外相の信奉するアメリカ一辺倒政策の結果、日本に与えられた独立がどんなにみじめなものであるかは、直接外交の衝に当る岡崎外相自身が最もよく知つているはずであります。さきに私の指摘いたしました軍事基地の問題にいたしましても、英水兵事件、英濠兵事件、国連協定問題などにいたしましても、日本独立がいかに情ないものであるかを骨身にしみて感じられたのは、おそらく岡崎外相その人だと私は思うのであります。(拍手)昨年以来、岡崎外相に対する不信任問題が起りつつあるのは、同外相外務大臣としての能力の限界を示すものではありますが、同時にそれは、その代表するアメリカ一辺倒外交に対する国民的憤懣の爆発であると申さなければならないのであります。(拍手)私は、ここにあらためて吉田首相並びに岡崎外相に対しまして、政府日本独立と平和のために、アメリカ一辺倒の外交方針をここに転換する意思はないかを伺いたいと存ずるのであります。第四にお伺いしたいことは、中共引揚げの見通しと、その後に来る中共対策についてであります。今般、中共側の申出によりまして、中共地区に在留する邦人の引揚げが実現の運びに至りましたことは、まことに喜びにたえないところでございます。しかしながら、ここに私が最も遺憾にたえないことは、中共よりの引揚げ交渉が、日本政府に対してなされることなくして、民間三団体に対してなされたということでございます。(拍手)申すまでもなく、引揚げ問題のごときは、両国政府の間においてなさるべきが当然なのであります。しかるにもかかわらず、日本政府は何がゆえにかくのごとく無視されたか。かかる醜態は、岡崎外相による無能外交の結果でありますると同時に、吉田政府の全面講和を無視した拝米一辺倒外交の破綻を示すものと申さなければなりません。(拍手)何たる醜態であるか。私は、これでは日本の外務省も外務大臣もいらないのではないかと思うのであります。(拍手)いずれにいたしましても、代表はすでに出発をいたしました。よつて、私は、次のことを吉田首相並びに岡崎外相にお尋ねをいたしたいのでございます。一、引揚げの交渉並びに実施は順調に行く見込みがあるか。二、代表の資格は日本政府代表ということになるのか。三、代表のなした協定事項はすべて政府責任に帰属するのか。四、住宅、就職などについて、政府はすでに万全の受入れ態勢を整えておるのか。五、政府はこれを機会に中共政府との国交を回復し、貿易を再開する意思はないか。以上の諸点につきまして、具体的な御意見を承りたいのであります。  以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申し上げます。  現在の保安隊は戦力にあらずということは、しばしば申しおるのであります。これに対して受入れない諸君の意見は意見として、政府はあくまでもこの意見を固守いたします。従つて、憲法改正は考えません。(拍手)保安隊は絶えず公開をして、国民の了解のもと、あるいは国民が保安隊はいかなるものであるかということを了解するように保安隊に努めさせております。現にただいま保安隊に宿泊せられた議員がおらるるそうでありますが、それによつて見ても、保安隊なるものを公開して、その性質が国民によく了解せらるるように努めておるのであります。それは鉄のカーテンの中に隠しておるものではないのであります。(拍手)また、知らず知らず保安隊が軍隊になるということは、これは———————————ということを申すのであつて、保安隊が軍隊になる場合には、予算が伴い、法律が伴い、諸君の協賛によつてできるのであつて国会が知らず知らずに軍隊ができたとするならば、これは政府のごまかしではなくて—————————————————。(拍手国会侮辱だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然)  また、李承晩大統領が見えたときに、私との間に協定があつたという……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)軍事同盟が……(聴取不能)さようなことは全然ないのであります。  太平洋同盟云々ということは、政府考えておりません。  また、私が申す自由主義国家との間に安全保障ということを……(議場騒然、聴取不能)考えておりません。かつてこういう話は、政府としては取上げておりません。私は自由主義国家と善隣関係に入るということを申したので、その安全保障について協力するということは、かつて申したことはないのであります。  また、朝鮮派兵ということは断じていたしません。  また、平和憲法を守つて国連加盟……(議場騒然、聴取不能)ということは、私も賛成であります。日本独立と安全をいかにして保障するか。これは現に日米安全保障条約及び保安隊その他の強化によつて安全を期し得ると考えるのであります。  行政協定は、これは屈辱なりと申すのでありますが、私はそうは考えないのであります。国際の慣例により、現在の国際法の示すところによつて協定をいたしたのであつて、これは屈辱なる条約とは私は考えないのであります。刑事裁判またしかりであります。  また、全面講和をいたすべし、全面講和をいたさないからここに至つたというのでありますが、全面講和は事実できないのであります。現に中ソ同盟条約によつても、日本を敵国と考えておる。その敵国と全面講和はできないのであります。中ソ両国がみずから考えを違えた場合には、日本を敵国視しない、敵国関係に置かないという考えができた場合にはできますが、すでに敵国と考えている日本が、進んで中ソと講和条約ができないのは当然であります。(拍手従つて、現在わが政府がとつております外交方針を転換する考えはございません。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  28. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 国連の安全保障に依頼するという武藤君の御意見によりますと、国際連合憲章は地域的の安全保障を認めておるのでありまして、この地域的安全保障に反対するというのは、はなはだ矛盾であります。しかしながら、実際上には、太平洋同盟のごときは、前述のごとく、まだ具体的な問題とはなつておりません。(発言する者、離席する者多く、議場騒然)アジア地域の安全保障というような言葉は、何かの誤解であろうと思います。私は、この演説中にも、その他の場合にも、こういう問題を公表したことはございません。  一体、自主外交を唱えられるならば、外国の言動に一々注意されるよりも、それこそ自主的にお考えになるべきものだと思います。行政協定の中で、軍人、軍属、家族に対して裁判権を行使できないのは屈辱的だと言われまするが、英国その他欧州各国においても同様の裁判権は認めておるのでありまして、刑事裁判権が完全にならなければ独立国でないと言われるならば、これはイギリスもフランスも独立国でないというにひとしいのであります。かかる狭量な、旧式な国家、国粋主義を鼓吹されることは、武藤君にも似合わないことだと考えます。どうぞ現実の国際慣習を十分にごらん願いたいと思います。  なお通常の場合は、正義がいずれにあるかわからないような場合には別でありますが、今般の争いのごとく、私の演説の申しておる通り、正義がいずれかにある場合に、その正義にくみしないということは、まことに卑怯なことだと考えます。  引揚げにつきましては、政府はこれを政治的に持つて行く意向は全然ないのでありまするから、これに関連して中共政府国交を回復するかいなかという問題は御答弁を差控えます。但し、帰還者につきましては、各般の準備を整えて万遺漏なきように用意いたしております。     〔「議場を整理しろ」「散会、散会」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) この際一言申し上げておきます。先ほどの吉田内閣総理大臣の答弁……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  30. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) ちよつとお待ちを願います。お静かに願います。——お静かに願います。ちよつと申し上げておきます。先ほどの吉田内閣総理大臣の答弁中、不穏当の言辞がありとの申出がございますから、この会議中において、総理大臣より何らかの発言があるか、もしなき場合は、議長において速記録を検討の上、適当な措置を講ずることにいたします。     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  31. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) ただいまの武藤君の御質問にお答えいたします。  私が風帆近一関西地方の部隊視察後に、記者に対して、はるかに進んでいると申したのは、隊員の訓練、精神状態、その他諸般の情勢から見て、昔の軍隊にあらざる、りつぱなものであるという意味において申したのであります。すなわち、保安隊員の精神的訓練においては’昔の軍人とはおよそ離れた、りつぱなものであるということを私は信じて、さような言をなしたのであります  次に、武藤君は、ただいまの保安隊の人員、装備をもつてすれば、すなわち憲法第九条第二項の戦力ではないかという御質問のようでありますが、これに対しましては、私は先刻松前君にお答えした通りであります。決して現在の保安隊、予備隊は軍隊ではない。まつたく警察力をもつてしては鎮圧することのできない大騒擾、反乱に備えるものである。しかして、この現代の諸外国における大騒擾、反乱の事実を十分お調べを願いたい。賢明なる武藤君も十分おわかりであろうと私は考えております。この近代的の大騒擾、大反乱に備えるには、現在の保安隊、警備隊程度の人員と装備を持つことがきわめて適切であろうとわれわれは考えておるのであります。しかして現代の近代戦についてよく研究いたしますれば、ただいまの保安隊、警備隊の人員、装備は、百およそ近代戦を遂行し得るだけの能力と、はるかに隔たつたものであります。従いまして、現在の保安隊、警備隊をもつて、ただちに憲法第九条第二項の戦力であるということは、当らざるもはなはだしいものであると私は考えております。  次に“現在の保安隊において、旧軍人が相当数入つておるではないか、これらについて相当の疑問を抱かれておるのでありますが、事実、旧軍人は相当入つております。しかし、これらの人たちは、厳重なる選考を経て、その人格、識見すべて現在の保安隊を指導するに足れるものであるとわれわれは確信しておるのであります。この人たちのりつぱな訓練を経さえすれば、私は近代的の保安隊員がここに育成されるものと確信して疑わないのであります。  次に、警備船のことについて御質問がありました。御承知の通り、先月の十四日においてアメリカからフリゲート艦及びLS船を相当数借りたのでありまするが、御承知の通り、日本の海岸線は九千マイルの長きに達しております。戦前におきましては、この海岸線を警備するにあたりまして、数百隻の相当の艦船を用いておつたのであります。これが終戦後において、まつたく空白状態になつております。密輸入その他密入国がひんぴんとして行われておる。この九千マイルに至る海岸の警備に対しては、相当の手当をしなくてはならぬのであります。幸いに、アメリカの好意によりまして、フリゲート艦、LSを借りるに至つたことは、私はまことに欣快にたえないのであります。しかし、これらの船をもつていたしましても、なおかつ十分なものとは言えません。浮遊水雷の処置、その他いろいろの手当をいたさなくてはなりませんので、この二十八年度予算においては、はなはだ不十分ではありまするが、数隻の警備船の建造を要求したような次第であります。  次に、武藤君は、日本の保安隊がやがてはアメリカ軍のうちに編入されて、外国のために戦いに用いられるような懸念があるのじやないかというような御質問でございまするが、さような懸念は毛頭ありません。われわれは、断じて日本の保安隊を外国軍のために使用するようなことはないということを、ここに確言をもつてお答えいたしたいのであります。(拍手
  32. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 内閣総理大臣から発言を求められております。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ただいまの私の発言中、速記録を見た上で、不穏当な言葉があれば、その部分を取消します。(拍手
  34. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 武藤運十郎君、再質問がありますか。——武藤君。     〔武藤運十郎君登壇〕
  35. 武藤運十郎

    ○武藤運十郎君 ただいま私の質問に対しまして、吉田総理大臣から御答弁がございました。そのうちで、保安隊の予算につきましては、政府は議院の協賛を経てやつているのでありまして、もしそれに不服ならば—————————————————という趣旨のことを申しました(発言する者あり)、武藤君とは申しません。趣旨のことを申したいと思います     〔発言する者多し〕
  36. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 静粛に願います。
  37. 武藤運十郎

    ○武藤運十郎君(続) 武藤君と、私の名前を指名いたしましても、不都合だと思いますが、議院なり、諸君なりという意味におきまして、衆議院議員全員を指しますことは、まことに政府吉田首相のわれわれ国会軽視の現われだと思うのであります。このような国会軽視は、従来しばしば行われておるのでありまして、ただ単なる失言と私は考えることはできないのであります。(拍手)私も速記録を見なければ、はつきりわかりませんが、とにかく私が今申し上げたような趣旨の発言がございましたことは明らかであります。この点につきまして、吉田首相の御釈明をいただきたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 速記録を見た上で、不穏当の言葉があつたら取消します。(拍手)     —————————————
  39. 久野忠治

    ○久野忠治君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明三日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  40. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。   本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十六分散会