○武藤運十郎君 私は、
日本社会党を代表して、
吉田首相、木村保安庁長官及び
岡崎外相に対しまして、再
軍備と憲法改正の問題並びに
日本の安全保障を中心とする
外交上の諸問題に関して、いささか
質問を試みんとするものであります。
まず第一に、私は保安隊並びに警備隊は今やすでにりつぱな戦力であり、明らかに憲法違反なりと
考えますがゆえに、この際あらためて
吉田首相と木村保安庁長官にその
見解を承りたいと思うのであります。ただいまも松前議員から
質問があり、木村長官から
答弁があつたのでありますが、決して満足なものではございません。私は重ねて御
質問を申し上げたいと思うのであります。
御承知の通り、再
軍備と憲法に関する
国会の論争は、今までも幾たびか行われたのであります。しかるにかかわらず、いまだに何らの結論が出ておりませんのは、なぜでありましようか。それは第一に、
吉田内閣の強引なやみ
軍備政策によるのであります。しかしながら、もう
一つの大きな
原因は、今まで保安隊、警備隊が
政府によ
つて鉄のカーテンの奥深く隠され、それが
国民の前に公開されなかつたがために、あたかも盲が象をなでるように、その全貌を見ることなくして、いたずらに議論をしておつたからであります。その意味におきまして、先般行われました木村保安庁長官の関西地方における保安隊並びに警備隊の実況視察は、これが同行の新聞記者に公開されましたので、いささか保安隊は軍隊にあらずの認識を改めしむるに役立つものがあつたのではないかと思うのであります。(
拍手)はたせるかな、視察後、木村長官は同行の記者団に向いまして、保安隊、警備隊の実況は、われわれ当局者が
考えていたよりもはるかに進んでいる、このように述懐せられたとい’うことであります。
しからば、木村長官の感動せられた保安隊、警備隊の
現状はどうであろうか。まず保安隊の現地部隊は普通科連隊、特科連隊、施設大隊、特車部隊などでありまして、それらはそれぞれ旧陸軍における歩兵、砲兵、工兵、戦軍兵などの各部隊に該当するものであります。試みにその装備を見ますならば、戦車は申すに及ばず、百五ミリないし百五十五ミリ榴弾砲、対空自走砲、四トン・セミトレーラー、戦車輸送車、四トン・レツカーなどの科学的重装備でありまして、これらはすでに前大戦当時の
日本陸軍の装備以上のものがあるということでございます。(
拍手)従いまして、各部隊の演習は、歩兵の演ずる白兵戦演習は申すに及ばず、砲兵陣地侵入、展開射撃演習、渡河作戦など、いずれも激しい近代科学戦を想定しておるのであります。さらにまた、これらの部隊を指揮する連隊長は、いずれも陸士卒、陸大卒、元参謀、元大佐、元中佐などという純然たる職業軍人の肩書を持つ旧軍人であり、隊員みずからもまた軍隊と信じて疑わない由でございます。(
拍手)カービン銃やバズーカ砲が
国会で騒がれたのは、わずかに半年前でありましたが、今は昔の物語りとな
つてしまつたわけであります。
同行した記者団の一人は、概略次のようにその感想を述べているのであります。こうして高度に機械化された保安隊の戦闘力を目のあたり見るにつけても、保安隊は軍隊にあらずの
政府答弁とははるかにかけ離れた、きびしい現実を感じた、(
拍手)しかも、隊員の多くは、保安隊は軍隊だと承知して入
つて来たと言い、
政府はなぜ再
軍備を打出さないのですかと記者に反問する、再
軍備の是非はともかく、憲法のカーテンに隠れた保安隊、警備隊がこのカーテンを破る日は近いであろう、このようにその実感を述べているのであります。木村長官の感想も、おそらくこの記者の感想と多く異るところはなかつたのではないかと私は思うのであります。(
拍手)
ただいま申し上げましたような
実情は、保安隊の現地報告でありますが、警備隊におきましても、去る一月十四日、船舶貸借
協定に基きまして、アメリカよりフリゲート艦十六隻中六隻、上陸支援艇五十隻中四隻の引渡しを受けまして、ここに
日本海軍の一歩を踏み出したことは御承知の通りでございます。(
拍手)そもそも戦力とは何であるか。それは戦争を有効に遂行することのできる一切の軍事的組織であります。今保安隊、警備隊の実態を見まするに、厳重な規律によ
つて上下服従の
関係に立つ十一万の隊員、これに施された軍装備、毎月専門的に行わるる猛烈なる軍事訓練、何どき戦争に投げ込まれましても、りつぱに役立つ軍事的組織であります。これこそりつばなる戦力であり、これをしも軍隊と言わずして何をか軍隊と言うでありましようか。(
拍手)ことに、今後の戦争が
政府の言うがごとく、数箇国による集団防衛にまつといたしまするならば、おそらく
日本の部隊は、アメリカその他の軍隊と連合して、あるいはこれに混入せられて、近代戦に参加することになるのでありましよう。この場合、保安隊に属する十一万の歩兵隊、工兵隊、砲兵隊、戦車隊、航空隊、衛生隊などは、原子爆弾こそは持ちませんが、いずれも連合軍の一翼として重要な
役割を果させられる武力であると申さなければなりません。(
拍手)
さらに、保安隊の実態を予算の規模から見まするに、二十八年度保安庁の予算は実に八百三十億、まさに総予算の九%になんなんとしておるのであります。しかも、この額は、今後アメリカの要求により、あるいは補正予算によ
つてさらに増額せられ、総予算の一〇%を越すであろうことは、火を見るより明らかなりと申さなければなりません。しかも、このように増大した保安庁予算の使途は、まず飛行機百二十一機の購入、警備船——これは実は駆逐艦でありますが、七百トンないし千五百トンのもの五隻の建造に充てられる。このほか、建物では、陸海空軍省としての保安庁ビルの建築を初めといたしまして、各庁舎の建築、演習場、飛行場などの軍事的施設の建設に使用さるることにな
つているのであります。ことに注目すべきことは、本年度の予算が、このように飛行機、軍艦、演習場、飛行場などの基本的軍事費ばかりではなくして、保安研修所、技術研究所、保安大学、専属病院等々、旧陸海軍とまつたく同様な規模による補助的、外廓的軍事施設をも完備して、総合的な軍組織としての形態を整備しつつあるということでございます。
国際的に用いるものが戦力であり、国内的に用いるものは警察力であるとか、あるいは戦争をする
目的がなければ
軍備ではないとか、さらにはまた、自衛のための武力は
軍備ではないとかいうような、あらゆる戦力論の防衛のもとに、
政府は着々として
日本の再
軍備を進めつつある。
政府は、この既成事実の上に立
つて、
国会と
国民を欺瞞し、あるいは、もうしかたがないとあきらめさせるための時をかせいでいると申さなければなりません。(
拍手)
吉田首相は、いまだに、憲法は改正しない、改正しないと繰返しておられるのでありまするが、事実においては、すでにか
つてに憲法の改正をいたしておるのであります。これこそは最も悪質違法な憲法の改正であり、平和憲法の敵はまさに
吉田内閣なりといわなければならぬのであります。(
拍手)
一体、
政府は、かくのごとく保安隊、警備隊をあくまでも戦力にあらず、憲法違反にあらずとして、今後これをどの程度まで拡大せんとするのであるか。また保安隊、警備隊が、その隊員の数において、その予算の額において、その重装備においていかなる限度に達したとき憲法を改正して、これを
軍備と言わんとするのであるか。私は、
吉田首相並びに木村長官より、良心的にしてかつ率直なる御
見解を承りたいと思うのであります。(
拍手)
第二に、私は、
日本の安全と
アジアにおける地域的集団保障との
関係並びにこれと
日本再
軍備との
関係をお伺いいたしたいと存ずるのであります。
吉田首相並びに
岡崎外相は、常に地域的
集団安全保障の必要性を強調しておられるのであります。先般アメリカにおきましては、
アジアの戦いは
アジア人にやらせろと強く
主張するアイゼンハウアー元帥が
大統領に就任をし、さらに巻返し戦術と太平洋同盟の
主張者
ダレス氏が
国務長官に任命されましたことは、御承知の通りであります。このアイク・
ダレス・ラインによる対
アジア政策は、早くも昨年暮れ、アイクみずからの朝鮮訪問とな
つて現われ、これに続きまして、正月早々、反日政治家として有名な李承晩
韓国大統領が、にわかに
態度を改めて
日本を訪問して参つたのであります。李承晩
大統領は、
吉田首相との会見において、軍事同盟の必要性を強調したということでありまするが、さらに続いて葉国府
外交部長も、
国連総会よりの帰途に名をかりて
日本を訪問し、
岡崎外相などと会談をいたしておるのであります。近くアメリカ新
政府によ
つて行われるという台湾中立化の解除とともに、このような一連の動きを見ますときに、われわれは
アジアにおける太平洋同盟の結成近きにありと感ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
一昨日、
吉田首相は、太平洋同盟とは何か知らないと答えられた。先ほど、
岡崎外相は、ただ新聞に出ている程度のものだと言われました。しからば、
政府の言う
アジア自由主義国家群による地域的安全保障とは、具体的にはいかなるものであるか。(
拍手)私は、これにつきまして、成立の
見通し、同盟の性格、
加盟国の範囲などをお伺いいたしたいと存ずるのであります。
私の
考えるところによりますれば、
政府の言う
アジア自由主義国家群による地域的
集団安全保障は、太平洋同盟その他名称のいかんにかかわらず、北大西洋同盟と同じく、
アジアにおける軍事同盟としての性格を有するものであります。(
拍手)
従つて、もし
日本がこれに
加盟せんとするならば、
日本は当然にまず
軍備を持たなければならないと思うのであります。この場合、
政府はどうしても憲法改正をやるほかないではないか。再
軍備はしない、憲法改正はやらないという言明と、
日本の防衛を
アジアにおける地域的
集団安全保障に求めるという
主張とは、まつたく相矛盾するものではないか。(
拍手)この点について、私は明確なる
吉田首相の御
答弁をいただきたいと思うのであります。
私は、
アジアにおける地域的
集団安全保障としての太平洋同盟に反対をするものであります。けだし、太平洋同盟への加入は、
日本が決定的に自由主義国家群に従属して、中ソ
両国を敵にまわすことである。それは、中ソ
両国を必要以上に刺激して、
アジアに戦争の危機を招くことにもなるのであります。(
拍手)かくして
日本は再び好んで、みずから、ばかばかしい戦争に飛び込むことになるのでありましよう。この場合、同盟国中、その人的、物的資源におきまして一番損をするのは、現王まつたく自主性のない、不完全
独立の
日本であるといわなければなりません。(
拍手)
申すまでもなく
韓国、国府、フィリピン、
東南アジア諸国など、この同盟の同盟国と
考えられる
国々は、いずれも海のかなたにあり、もし
日本がこの同盟に
加盟しますならば、いくら
政府が、
日本には
軍備はない、軍隊はないとい
つてみましたところで、
国民をごまかすことはできましても、外国をごまかすことはできないでありましよう。(
拍手)やみの
軍備ではありますけれども、アメリカその他の近代的兵器によりまして重装備を施され、しかも厳重な軍事的訓練を経た十一万の保安隊、警備隊は、おそらく同盟国のどこの軍隊よりも精強な軍隊として、まず朝鮮出兵を手初めに
海外に派遣を要求せられるものであろうことは、火を見るよりも明らかなのであります。(
拍手)私は、心から
日本の
独立と平和を念願するがゆえに、
アジアにおける地域的集団保障としての太平洋同盟には絶対に賛成することができないのであります。しかるに、
政府は、はたしていかなる根拠に基いて地域的集団保障の必要性を強調せんとするのか、その
見解を伺いたいと思うのであります。
私は、
日本の安全を、もつぱら
国際連合による国際的集団保障に求めようとするものであります。申すまでもなく、
国際連合は、地域的な軍事同盟と異なりまして、米ソ両
陣営を含む国際的な平和維持の機構でございます。この点につきましては、先ほども
質問応答がありましたが、私はこれへの加入と協力には必ずしも軍隊を持つことを必要としないと
考えるのであります。ことに、
日本は、米ソ
両国を含む連合軍によりまして完全に武装を解除せられ、彼らの強力なる要求のもとに平和憲法をつくり、
軍備のない平和国家を建設いたしたのであります。従いまして、
日本は
軍備を持たないまま、堂々と
国連への加入を要求する国際法上の
権利があると申さなければなりません。(
拍手)この意味におきまして、私は
国連へ加入するためには、
日本が当然に警察軍を持たなければいけないという一種の再
軍備論には遺憾ながら賛成できないことを、この際明らかにいたしておきたいと思うのであります。(
拍手)もちろん、私は、
権利を
主張するものは同時に
義務を尽さなければならないことを忘れるものではありません。しかしながら、
国連への協力は必ずしも
軍備だけに限るものではないのであります。私は、この堂々たる政治的、法律的
見解に立ちまして、
政府が平和憲法を堅持しつつ
国連への
加盟に
努力すべきことを要請してやまないものであります。私は、これに対する
吉田首相の御
見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
第三には、
日本の
外交政策の基本をどこに置くのか、また
日本の
独立と平和はどうしたら保てるかを、重ねてお伺いしたいと思うのであります。
政府は、われわれの強い反対にもかかわらず、強引に押し切
つて、米英
陣営だけとの多数講和を
締結し、これによりまして、
国民の前に
日本の
独立と平和とを高らかに誤歌いたしたのであります。しかるに、その結果はどうでありましよう。つかの間にして、アメリカより、あの屈辱的な
行政協定を押しつけられ、全国六百箇所に広汎な治外法権を持つ軍事基地の設定を甘受し、アメリカ人に対しましては、軍人、軍属はもちろん、家族に至るまで、公務外、施設外の犯罪につきましても一切刑事裁判権を喪失するに至つたのであります。しかのみならず、何ら
協定のないイギリス、オーストラリア、その他の
国連軍に対してさえ刑事裁判権を行うことができないという、まことに情ない
実情でございます。もし
日本が真に
独立国でありますならば、
日本国内で大どろぼうを働いたイギリス水兵を
日本の警察が逮捕して、
日本の裁判所がこれを裁判するのは、当然過ぎるほど当然ではありませんか。(
拍手)しかるに、それをあたかも、こちらが何か悪いことでもしたかのように、ひたすらに恐縮をし、何とかして身柄を
英国側に引渡さんと苦心さんたんしたのが、
独立国
日本の
外務大臣、ここにおられる岡崎君なのであります。(
拍手)英濠兵のどろぼう事件につきましては、遂に起訴することさえもできないで、みすみす身柄を英濠側に引渡してしまつたではありませんか。
国連軍
協定が、すでに半年余も経まして、いまだに
解決しないのも、
政府が
日本の刑事裁判権を強く押し切れないからでございます。
申すまでもなく、刑事裁判権は、国家主権の中核をなすものであります。すなわち、ある国が完全に
独立しておるかどうかの判断は、その国が完全な刑事裁判権を持
つておるかいなかによると申しましても、決して過言ではないのであります。(
拍手)かの
サンフランシスコの
講和条約によりまして
日本に
独立を与えたのは、自由主義のアメリカ、イギリスだと
政府は言
つておる。しからば、それによ
つて独立したはずの
日本が、何ゆえに
日本に
独立を与えたアメリカ、イギリスに対してその
独立主権を対抗できないのか。奇怪しごくと申さなければなりません。
一体、
岡崎外相は、
日本の
外務大臣なのか、それともアメリカの
外務大臣、いな
アジア局長なのか、私はまずそれから伺いたいと思うほどであります。このようにだらしのない岡崎
外交は、与党側からさえ腰抜け
外交とののしられ、その都度
外交と笑われまして、ますます
日本の主権を縮小し、いよいよも
つて日本をアメリカに従属させる結果とな
つておるのであります。(
拍手)かかる情ない、属国のような
日本の
実情は、
岡崎外相の無能もさることながら、根本的には
吉田政府がわれわれの全面講和論に反対をして、米英
陣営だけとの多数講和を強行した結果にほかならないのであります。(
拍手)
一体、
政府は、これでもなおあくまで自由主義
陣営に属して、決定的に共産主義
陣営を敵にまわすことが
日本の
独立と平和を守るゆえんであると
主張するのか、それとも中共、
ソ連の
陣営に対しても
国交を回復する
意思があるのか、私はこの際あらためてお伺いいたしたいのであります。
吉田首相は、か
つて米英との
講和条約を結ばんとするにあたりまして何と言われたか。全面講和は理想である、私もできればそうしたい、しかし今それができないとなれば、まずできるものからやるほかはないではないか、このような趣旨の
答弁を繰返されたのであります。われわれは、この言葉によりまして、
吉田首相が、米英
陣営との
講和条約締結の後は、
外交政策における理想実現のために、ただちに
ソ連、中国との
国交回復に
努力を始めるであろうと思
つておつたのであります。けだし、全面講和を理想と言い、なしくずし講和のやむを得ないことを
主張した
吉田首相が、引続いて、残つた国との講和に
努力することは、政治家としても、また政権担当者としても当然のことと
考えたからであります。(
拍手)しかるに、
吉田首相は、一たび米英
陣営との
講和条約に成功するや、ますますこれ偏して、こうも中共異、
ソ連との
国交回復を
考えない。のみならず、むしろこれを敵視するような
態度をますます強化しておるのであります。
申すまでもなく、私は共産主義に反対であり、共産主義の国家形態に賛成するものではありません。従いまして、
日本を中共、
ソ連に従属させるようなことは、
日本を米英に従属させることと同様に反対するものであります。しかしながら、このことと、
日本が中共、
ソ連を現に存在する
世界の一国家として承認することとは別個の問題であると申さなければなりません。(
拍手)私は、
日本が中共、
ソ連の
両国ともすみやかに戦争状態を終了して
国交の回復をはかると同時に、米ソいずれにも傾かず、自主中立の
立場をとることこそが、真に
日本の
独立と平和を守るゆえんであると
考えるのであります。
中立問題につきましては、一昨日、わが党の和田博雄君の
質問に対しまして、
岡崎外相より反対の
答弁があつたのであります。しかし、われわれは決してこれに満足し、あるいは屈服するものではありません。私は、
岡崎外相が中立政策を攻撃する前に、まずアメリカ一辺倒政策の誤れる結果を深く反省すべきだと思うのであります。(
拍手)すなわち、
岡崎外相の信奉するアメリカ一辺倒政策の結果、
日本に与えられた
独立がどんなにみじめなものであるかは、直接
外交の衝に当る
岡崎外相自身が最もよく知
つているはずであります。さきに私の指摘いたしました軍事基地の問題にいたしましても、英水兵事件、英濠兵事件、
国連軍
協定問題などにいたしましても、
日本の
独立がいかに情ないものであるかを骨身にしみて感じられたのは、おそらく
岡崎外相その人だと私は思うのであります。(
拍手)昨年以来、
岡崎外相に対する
不信任問題が起りつつあるのは、同
外相の
外務大臣としての能力の限界を示すものではありますが、同時にそれは、その代表するアメリカ一辺倒
外交に対する
国民的憤懣の爆発であると申さなければならないのであります。(
拍手)私は、ここにあらためて
吉田首相並びに
岡崎外相に対しまして、
政府は
日本の
独立と平和のために、アメリカ一辺倒の
外交方針をここに転換する
意思はないかを伺いたいと存ずるのであります。第四にお伺いしたいことは、中共引揚げの
見通しと、その後に来る中共対策についてであります。今般、中共側の申出によりまして、中共地区に在留する邦人の引揚げが実現の運びに至りましたことは、まことに喜びにたえないところでございます。しかしながら、ここに私が最も遺憾にたえないことは、中共よりの引揚げ
交渉が、
日本政府に対してなされることなくして、民間三団体に対してなされたということでございます。(
拍手)申すまでもなく、引揚げ問題のごときは、
両国政府の間においてなさるべきが当然なのであります。しかるにもかかわらず、
日本政府は何がゆえにかくのごとく無視されたか。かかる醜態は、
岡崎外相による無能
外交の結果でありますると同時に、
吉田政府の全面講和を無視した拝米一辺倒
外交の破綻を示すものと申さなければなりません。(
拍手)何たる醜態であるか。私は、これでは
日本の外務省も
外務大臣もいらないのではないかと思うのであります。(
拍手)いずれにいたしましても、代表はすでに出発をいたしました。よ
つて、私は、次のことを
吉田首相並びに
岡崎外相にお尋ねをいたしたいのでございます。一、引揚げの
交渉並びに実施は順調に行く見込みがあるか。二、代表の資格は
日本政府代表ということになるのか。三、代表のなした
協定事項はすべて
政府の
責任に帰属するのか。四、住宅、就職などについて、
政府はすでに万全の受入れ態勢を整えておるのか。五、
政府はこれを機会に中共
政府との
国交を回復し、
貿易を再開する
意思はないか。以上の諸点につきまして、具体的な御意見を承りたいのであります。
以上をも
つて私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君登壇〕