○和田博雄君 私は、昨
日本議場において行われました
総理大臣の
施政方針演説並びに
関係各大臣の
外交、財政、経済に関するそれぞれの
演説に対しまして
日本社会党を代表いたしまして、若干の質問を試みたいと思うのでございます。
〔副
議長退席、
議長着席〕
今日の国際情勢を動かす一番大きな要因の一つは、アメリカの
世界政策と、これに対します共産圏及び非共産圏の国々の反応であることは、言うまでもないことでございます。それゆえにこそ、新たに成立しました共和党政権が、その内外の
政治の基本
方針をいかに具体化し、いかに
政策化して行くかは、
世界各国の注視の的であると私は
考えるものでございます。(
拍手)もちろん、アイゼンハウアーも、新国務長官に就任しましたダレスも、
外交方針の基本線が政権の交代によ
つてかわるものではないということは今までもしばしば確言いたしております。しかしながら、その遂行の具体的過程において、重点の置き方が、おのずから民主党の政権とアイゼンハウアーの共和党の政権との間に、共和党の伝統から
考えまして、そこに多少の差があることは
考え得るところでございます。たとえば、トルーマン政権のソ連に対してと
つて来た封じ込め
政策を巻き返し
政策に切りかえるがごときは、その重要なるものの一つであろうと思います。(
拍手)
しかして、今共和党政権が直面しておりまする
世界的な事実は、ヨーロツパにおける彼らの封じ込め
政策の失敗であり、第三次
世界大戦の危機が一応遠のくかに見えるとともに露呈して参りました西方陣営内における矛盾の相剋、ザール問題を契機とした独仏
関係の悪化を中心とした、アメリカが昨年行
つて来たヨーロツパ
防衛共同体の樹立の危機であり、植民地における民族運動のほうはいたる勃興であり、再軍備反対の傾向の増加でございます。アメリカが年間四百八十億ドルの国防
予算をも
つてしてさえなお維持することのできなか
つた世界経済の行き詰まりであり、あるいは共和党の
アジア第一
政策、援助費打切りに対する西欧側の一方的な不安であり、ことに
アジアにおいては、
日本をその中心として、押し返し
政策の具体化に対して
国民の抱いている大いなる不安であります。
かかる
世界情勢、
アジア情勢のもとにあるだけに、ダレス国務長官が、去る二十七日、アメリカ本国において、ラジオやテレビを通じて初めて行
つた外交演説はきわめて重要でありまして、軽々にこれを看過することのできないもののあることを、私は感ずるのでございます。(
拍手)はたせるかな、二十八日発のAFPの報道によればアメリカの消息筋では、この
演説について、これは新
政府が朝鮮、インドシナ
戦争の終結を目ざす幾つかの軍事
計画を暗示したものであると
考え、その
内容を次の五点として推測いたし、行動いたしております。一、より多くの韓国軍及びヴェトナム軍師団を装備する、二、より多くの国府軍師団を装備する、三、台湾の中立化措置を解除し、国府軍が中国本土を
攻撃できるようにする、四、北鮮に対する空中
攻撃を強化し、事態によ
つては満州にも行動する、空海軍により中国沿岸に効果的な封鎖を実施する、五、今春朝鮮の共産軍陣地後方に大規模上陸作戦を行い、現戦線よりも保持しやすい北緯四十度線沿いのマツカーサー・ラインに戦線をしく、というのであります。
これらの項目は、いずれも昨年の暮れにおいて、アイゼンハウアー大統領と会見した
マツカーサー元帥の進言
内容として巷間に伝えられているものと、多少は異な
つておりますが、その志向するところの方向においてはま
つたく同一なるものでございます。そして、これらの項目は、か
つて朝鮮事変が第三次
世界大戦への発展の契機となるものとしてイギリスの猛烈なる反対にあい、遂にマ元帥罷免の原因と
なつた事項を含んでいることは、私たちの容易に気づくところでございます。あるいは、これらの事柄は単なる情報にすぎないかもしれません。しかしながら、ダレスの
演説から、彼の志向する方向が何であるかは、私たちには容易にくみとれるように
考えられるのでございます。すなわち、それはソ連
侵略の
脅威を事新しく強調することによ
つて日本の再軍備を促進することであり、
アジアにおける反共同盟へのより一層の接近をはからんとする者と
考えられるのであります。このダレスの志向するところ裏書きするがごとくすることがあわただしくとくに、年初以来、一連の要人があわただしくわが国に去来しております。李承晩大統領の訪日、同氏と国府駐日大使との懇談、葉
外交部長の来日、芳沢国府駐在
日本大使の帰国等々、一連の現象でございます。
か
つて、F・D・ルーズヴエルトは、
世界的な恐慌を克服するために初めてホワイトハウスのあるじと
なつたとき、われわれが恐れなければならないないものは、ただ一つ、それは恐怖そのものであるということを言いました。ダレスは、人を恐怖に陥れることを、その常套手段としておるようでございます。真空理論をか
つて持ち出して巧みに
日本人の心理の盲点をついて
日本に安全保障条約を
占領下において締結させ、今また事新らしく
侵略の危険を叫んで、再軍備の促進と太平洋反共同盟べの道を暗示せんとしておるのであります。私は、
吉田総理のごとく、かかる状況を見まして、ダレスが国務長官に就任することによ
つてアメリカと
日本との
関係の将来に新しい希望を感ずるよりは、むしろヨーロツパにおけるところの
防衛態勢が困難になればなるだけ、
アジアにおける巻き返し
政策が具体化されて
日本に対するアメリカの
要求は熾烈をきわめて来ることを恐れるものの一人でございます。(
拍手)
そこで、私が
吉田総理にお尋ねしたいのは、アメリカ共和党の
外交方針である、ソ連に対する巻き返し
政策の
内容が、以上のごときものとして推測されるとき、ソ連のインド案拒否によ
つて長期化を予測されるところの朝鮮事変は、その
解決を一体促進されると
考えられるのか、あるいはこれをますます長期化して行く方向に持
つて行くものと
考えるのか、朝鮮事変に対するところの見通しを、私はまず第一にお聞きしたいのであります。(
拍手)
アジアにおける平和、
日本における平和は、朝鮮において戦乱が続けられている限り、これわれわれとしては期待すことができないのであります。
吉田総理は、この点に関し、今まで何ら明快なるところの見通しを、この議場において
国民に発表したことはないのであります。
第二に、極東
政策の具体化によ
つて当然予測される、以上述べた
日本の再軍備や太平洋同盟に対するアメリカの働きかけに対して、
吉田総理はどういう態度をも
つて臨む
方針であるか。この点は同僚の三宅君が聞きましたが、私も再びこれを繰返して、
総理の明快な答弁を求めるものでございます。
質問の第二は、経済
政策に関するものでございます。
政府は、現在における
日本経済の状態を朝鮮ブームの中だるみによる
調整過程であると、池田君以来規定し続けて参
つたのであります。しかしながら、事態はもつと深刻であり
日本の不況は
世界の不況につながるものであり、恐慌の戸口にあるといわねばならないのであります。(
拍手)昨日、小笠原長官は、事実の前にはいかんともすることができず、国内情勢の分析において、
日本における産業活動の一般が停滞状態にあることを率直に認めざるを得なか
つたのであります。(
拍手)
第三次
世界大戦の遠のくことによ
つて、各国間の利害の
調整の重要さがますますましてきた来ることは、各国が経済の拡大と自国の
生活水準の低下を防ぐ
意味からいいましても、貿易面における資本主義国間の競争のますます激甚になることの
必然を物語
つていると思います。去年の十一月の末より十二月の十一日にかけてロンドンにおいて開かれましたイギリス連邦首相経済
会議は、一九三二年に開かれましたオタワ
会議以来最も重要な経済
会議といたしまして、
世界の注目を浴びたものでございます。
会議の
内容は、ドル不足の問題、ポンドの免換制実現の問題、開発
計画などが討議されたのでございますが、何ら具体的な結論には到達せず、共同のコミユニケを発表するに終
つております。しかしながら、私は、一九三二年のオタワ
会議の場合と異なり、ここに一つの大きな
世界の経済の動向を発見するのであります。
イギリスが再びブロツク経済の方向に歩まんとする点に関しましては、集まりました連邦各国はこれに同意をいたしておりません。そうしてむしろ参加国の意見は、貿易の拡大をこいはかることについて意見の一致を見ておるのであります。このことは、私はきわめて重要なことだと
考えるのであります。もちろん、かかる結論が出ましたのは、第一次
世界大戦のあとにおける英連邦各国の地位と利害と、第二次
世界大戦のあとにおけるそれとの間に大いなる差のあることはもちろんでありまするが、ブロツク経済に立てこも
つて行くことはそれぞれの市場をますます狭くすることであり、やがては第三次
世界大戦の勃発への道を歩むものにほかならないという第二次
世界大戦のとうとい経験から、各国がこのことを学んだのだと私は思うのでございます。しかしながら、私は、約一箇月余の準備を整えて経済
会議を開き、何とかして自国の貿易の進展をはかり、国の再建をはか
つて行こうとするイギリス保守党のこの熱意に対しては尊敬の念を禁じ得ないのであります。
ところが、ひるがえ
つて日本の
吉田内閣を見てみまするときに、貿易の問題について経済発展の問題について、その無能ぶりはまことに驚くべきものがあるのであります。西欧
諸国におきまする貿易問題は、いろいろの観点からこれを観察することができるのでありまするが、結局アメリカのどうしても同意することのできない策であり、アメリカの援助がもしもないならば、これは東欧との間における貿易を開いて行くことが残された唯一の道であるということにかわりはないのであります。
昨日の
演説において小笠原長官は、国際経済情勢の分析をするにあたりまして、イギリス連邦首相経済
会議に触れますると同時に、中国の貿易にも触れておられるのであります。そして特需やその他特別の収入を期待し得る間に、長期的な観点から、国際的な視野に立
つて、諸般の施策を総合的、重点電点的に実施し、
日本経済の自立を達成したいと述べて、この構想のもとにおける重要施策の第一に貿易の振興をあげ、経済
外交以下数箇項目を羅列いたしておるのであります。しかしながら、これらの方策は、いずれも個別のものではなくて、深い関連を持つものであり、その背後に総合的な
計画を持つのでなければ、昨日の小笠原長官の
演説そのものが私に与えました印象と同じように、単なる希望的な願望であり、一片の作文であり、問題の提起にすぎないのであります。(
拍手)
こまかいことは、私は委員会に譲りますが、小笠原長官に聞きたいことは、昨日るる述べられた諸
政策の
基礎になる総合的な経済
計画を、はたしてお持ちにな
つておるのであるかどうか。
日本の経済において、今まで
自由党のと
つて来た経済
政策が、ま
つたくでたらめであり、自由放任であることに対する反発と嫌悪とは、今や
日本の財界や産業界においてすらこれが瀰漫しておるのであ
つて、最も長期
計画を必要とし、最も合理化を必要とする産業界自体が、すでに
日本の経済の売居のための長期の総合
計画を求めておる事実にかんがみるときに、昨日小笠原長官がるる述べられた多数の項目を、ほんとうにこれを実行に移し、効果をあげるためには、
政府は
責任をも
つて総合的な経済
計画を立てるべきでおり、また当然持
つておるべきだと思のでありますが、あれば、これを示していただきたいと思うのであります。
そして、第二点は、昨日の項目を聞いておりますときに、この羅列された項目の実施は、もはやすでに
自由党の
政策のもとでは実行されないものを多分に含んでおるのでございまして(
拍手)
肥料その他の国営のみならず、あるいは炭鉱、鉄鋼等における重要産業の
国家的な管理等の機構を伴わなければ効果をあげ得ないように思うものが多々あるのでありますが、
政府は、はたしてこれらのことを実行する意思があるのかどうかをもお聞きしたいのであります。(
拍手)
第三には、イギリスの連邦首相経済
会議の結果が、
日本に対していかなる
影響があると
政府は
考えておるか、この点も、ついでに聞いておきたいと思うのであります。
次に私の聞きたいことは、これらの経済貿易
政策を実行して行く上の前提条件として、
政府は経済
外交を盛んにすることを申しておるのでございます、しかしながら、経済
外交は、その前提としては、その国がいかなる
外交方針をとるかに依存することがきわめて大きいのでございます。(
拍手)相互の信頼がなくして、どうして経済
外交が成功するでございましようか。
自由党のと
つておる
外交方針は、アメリカ一辺倒の
外交方針であり、決して平和を希求し、
戦争を避けんとするところの中立
外交ではないのであります。(
拍手)そして、
日本において特に
関係があり、また
政府の最も力点を置いておると見られるところの東南
アジアの
諸国は、いずれも中立
政策をその
外交方針の基本といたしておるのであります。(
拍手)それゆえにこそ、今まで
自由党内閣のもとにおいて、緒方官房長官その他経済使節が
アジア諸国に多数行かれましたが、何ら業績についてはわれわれは聞くところがないのであります。(
拍手)経済
外交を推進せんとするために、
政府はこういう点をいかして
調整して行ごうと
考えられておるのか。また、二十八年度の
予算を見まするときに、これだけ
政府が重点を置いておるところの経済
外交に関しては、
予算的な裏づけがほとんどないのであります。(
拍手)
予算的な裏づけなくして経済
外交をいかなる方法によ
つて、——単なる
外国の好意にだけ甘えて行こうとするのでございましようか。この点について、私は
政府の所信を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
第三は、
占領政策の
行き過ぎについてでございます。昨日、
吉田総理は、その
施政方針演説におきまして
占領中の施策の
行き過ぎを是正するのは国の自主性のために当然なことであるということを言いまして、警察法の
改正や公共的な性質を有するところの重要産業の争議に対する制約を加えることを
内容とした法案の今期
国会提案を述べております。独禁法の
改正もまた伝えられるところでございます。諸君も御承知のように、
日本の
占領政策は、その前半と後半とにおいては大きな変化を来しております、
日本が再び軍国主義化することの根を絶
つて封建的な
基礎を破壊し、
日本を、民主化することの
政策に重点を置いた前半と、
世界情勢の大きな変化、ことにソ連、アメリカとの
関係の変化によ
つて、アメリカの
世界政策の一環として、アメリカ自身が反動化するとともに、
日本の民主化はいつしか等閑に付せられて再び逆コースヘの道を歩み始めた後半期とでございます。(
拍手)われわれの民主主義が与えられたものであ
つたにしても、私たち
国民は、このために高価な代価を払
つております。民主主義は、今後みずからのものとして完成して行かなければならないことは、諸君も同感だと思うのでございます。経済民主化の支柱の大きな一つは組合運動の自由であり、一つは、
日本を再び財閥や少数の独占資本家の支配の下に置かないために、あるいは一般の
消費者の利益を独占の侵害から守るために、独占を排除することであります。私は、公正なる自由競争を本来その経済
政策の
根本理念としておるはずの
自由党が、その立場からして、今度提案されんとしておるような
占領政策の
行き過ぎの是正をやることは、ま
つたく自己矛盾ではないかと
考えるのでございます。(
拍手)独占資本が、たとえば現下の
肥料問題において見まするごとく、きわめて不合理な方法でタンピングをやり、内地の
農民を搾取しているときに、このことには目をおお
つて、もつと
農民をしぼりとりやすいものにしようと願うとでもいうのでございましようか。去年の冬行われました炭労争議の場合において見ましたごとく、高率の配当を続けながら、みずからは団体交渉はこれを拒み続けてようやく開かれた交渉においてさえ、前
国会において勝間田君が指摘したごとく、賃金の四形の切下げ案を固執している炭鉱独占資本家の態度こそが、むしろ是正さるべきものではないでしようか。(
拍手)
安全保障条約や
行政協定の締結以来、平時経済の
日本の中に、準
戦時的な要素が、
防衛関係の
予算を中軸として介入して参
つております。
日本経済の一部は、すでに特権的なアメリカの基地経済の占むるところとな
つておるのでございます。
防衛生産における出血受注や、管理工場における労働者に対する強大な管理権の示すがごとく、
戦時的な経済は労働者の自由を最も忌むものでございます。事実上の軍備態勢が進行して行くにつれまして、労働運動に対する制約を、あるいは公共の利益の名のもとに、あるいは
占領政策の是正の名のもとに、そしてそのための中央集権化の機構をつくらんとして行こうとするのが、今度の
政府のとらんとしておるところの
政策の真髄でございます。(
拍手)
義務教育費の
全額国庫負担の問題もまたこの
政策の一環であると私どもは信ずるのであります。
政府が民生の安定、治安の確保を真剣に
考えているならば、
政府は、労働階級の
生活の安定と労働意欲の増進のために、利潤にこそ制約を加え、他面においては最低賃金法を制定して、所得の分配の公正を期することこそが、真に私は民生安定、
生活安定の方法ではないかと
考えるのであります。(
拍手)労働大臣は、最低賃金法を制定する意思があるかどうか。また、伝えられるところの労働法の
改正の具体的な
内容をお示し願いたいと思うのであります。
次に財政金融
政策について、主として
向井大蔵大臣に質問いたしたいと存じます。
昭和二十八年度
予算の特色の一つは、
吉田内閣が従来と
つて来ました金融と財政との両断的な分離、これをきつぱりとわけ、財政は財政、金融は金融としてや
つて参
つた方針を一擲して、むしろ金融と財政とを通じて弾力性ある施策の運用をはかるべきだといたしまして財政金融の
調整的の立場をと
つて、いわゆるドツジラインを放棄した点にあると思うのであります。それゆえに、二十八年度
予算の運営の成否いかんも、この点にかかるところが多いのでございます。そうして、この点に関する
政府の施策を見ますときに、民間の金融機関については、貯蓄増強であるとか、公社債の消化、日銀依存の脱却、あるいは資金融通の重点的な配分等、民間に要請するところは、すべて民間の自主性を認めて、これを
要求しておるのであります。しかしながら、現在における金融資本の支配の機構の中において何らの権力もない
政府が、この自主的な手段にのみ訴えて、はたして財政と金融の
調整を完全に達成することができると思
つておられるのでありましようか。(
拍手)私は、この
調整が成功しない場合には、本年度
予算の中に含まれた多くの
インフレ要因が現実に活動し、中小企業や
農民や勤労階級が
インフレのために塗炭の苦しみを受け、
インフレによる収奪の結果が目に見えるようでございます。私はこの金融と財政との
調整については、
政府がもしも
国家的の規制を
考えておるならば、その
内容を示していただきたいのでふります。経済分析においてと
つておるその態度、それから来るところの
政策を論理的に批判しますならば、実際この
予算が
インフレにならず、かつまた
政策の実現を期するためにも、私はもはや
自由党の限界を越えた手段を用いるのでなければその実現を期することができないと思うのでございます。(
拍手)
第二は、もうすでに前の質問者が聞きましたので、簡単に触れておきます。それはこの
予算の性格が依然として軍事
予算であり、
インフレ的の要因を多数含む
予算であるがゆえに、経済の施策の点について、常に出たとこ勝負をや
つておるところの
自由党のもとにおいては、
インフレの危険が非常に多いという点でございます。この点につきましては再び質問を繰返すことをやめまして、私は先に進んで行きたいと思うのであります。
最後に、私は岡崎外相に対してお尋ねをしたいのであります。昨日の
外交方針演説におきまして、岡崎外相は、特に中立の問題に触れまして、中立論なるものは抽象的
議論としては成立するのであるが、現実の事態においては、たといこちらが中立を唱えても、相手方はこれを認めないということになるのであるからこのような切実事実に直面することをせずに、あいまいな中立論を唱えても、それは自己欺瞞をするにすぎず、問題の
解決とはらない、もしそれ国を共産主義の
侵略に売り渡さんとして中立を唱え、防備の不必要を説くがごときはもとより論外であると断じて、さらに国際間における今日の争点は、共産陣営の
侵略に対して
自由国家群が集団的自衛をなさんとすることに発しているもので上
つて、その規模は
世界全体に及び、争いの中心は
世界観の相違に根ざしてもる、そうして正義がいずれにあるかは明白であるのだから、この際わが国が自由と正義にくみしてこれに一臂の力を添えなければ、民主主義
国家の結束は乱れ、
世界平和の維持も困難にたる、その結果、さらに災いは
日本の用全体に及んで来る、従
つていたずらに中立を唱えて現実を逃避し、尽すべき義務を免れんとするがごときは卑怯であるばかりでなく、遂に平和
国家を維持せんとする精神的支柱をも失
つて、
国民をしてその行くところに迷しめる結果ともなる、よろしくわれわれは堂々立
つて自由
国家と提携し、その一員として
世界平和の維持に尽すべきだと、この追随
外交のマラソン選手は大みえを切
つておるのであります。
私が長々と岡崎外相の言葉を繰返しましたのは、問題をただ明確にしたいからでございます。昨日、私はこの議場において岡崎君の
演説を聞きながら、一人思い浮べてお
つたのは、日独防共協定が締結される前夜における
日本の情勢であり、ヒトラリズムに追随これ努めてお
つた外務
官僚の姿であります。リツペントロツフはより強力なダレスに今や変形し、大島公使はより変質的な岡崎外相にかわ
つただけであります。(
拍手)事実に目をおお
つて現実を逃避しておるのは、自主中立
政策を
外交の基本
方針としている、岡崎君のいわゆる中立論者ではなくてかえ
つて新しい神話をつくることの好きな、アメリカ一辺倒の岡崎外相なのであります。(
拍手)
わが党は、立党以来、自主中立
政策を
外交の基本
方針といたしております。岡崎君は、なかなか巧妙な言葉を使
つておるのでございまして、あいまいな中立論という言葉を使い、具体的な中立とい言葉をわざわざ避けておるのであります。そうして、中立論は抽象的な理論としては成り立つが、現実には成立しないし、これは自己欺瞞であり、問題の
解決とはならないと言
つております。しかし、諸君、理論というものは、本来、性質上抽象的なものであります。これは、近代科学の洗礼を受けた者ならば、だれでも承知しておるABCであります。(
拍手)中立理論がそのまま現実において存立しないことはその
通りでありますが、しかし、中立理論は現実になくても、中立
政策は厳として存在しておるのであります。(
拍手)第三次
世界大戦を阻止しようとする強い意思や、再軍備
政策に対する反対、
国民生活水準の低下に対する抗議、
国家の軍事的、
政治的、経済的な従属に対する強烈なる抗議の現われとして、中立
政策をその
外交方針の基本としている国の現に存在することを、たとえばスエーデンやインドやフィンランドやビルマやの国々が、中立
政策をと
つている国として現実に存在していることを、岡崎外相は認めないのでありますか。(
拍手)その中立
政策をとり、中立の道を選ぶことこそが、現実の険しい
世界情勢の中で決して現実を逃避することではなくして、われわれの平和に対する義務を尽す道であることは、単にわが社会党がこれを確信しておるだけでなしに、ラングーンに集ま
つた世界の社会党の大半、勤労大衆を代表するところの社会党の大半の一致しておるところでございます。(
拍手)
平和
国家を維持しようとする精神的な支柱を失
つておればこそ、近代の進歩した兵器のもとにおいては役にも立たぬ竹やり的な軍備という物的な支柱を求めて困難な
外交は一切これを避けて、安易なアメリカ一辺倒の追随
外交を事として、尽すべき義務を尽していないのは、
日本の国をこのような状態に1経済的にも
政治的にも、かかる従属的な状態に陥れた岡崎外相その人ではないでしようか。(
拍手)中立論者ではなくて時の政権を担当しておる
吉田内閣そのものであると私は思うのであります。中立の可能、不可能論をまず掲げて二つに割切
つてしまい、米ソ
戦争を不可避なものに近い蓋然としてこれを前提にして、これを避けるために再軍備をしなければならないという矛盾の論理を用いることは、
世界における中立反対者に共通した特徴であります。岡崎君の論理もまたこれと同様なのであります。しかし、一国の
外務大臣の
外交方針の
演説でありますだけに、われわれは昨
日本議場において述べられた岡崎君の意見を軽々に黙殺することはできないのであります。
外務大臣の言う、堂々立
つて自由
国家と提携し、
世界平和の維持に尽すべき、その具体的な方法は一体何でありますか。唐突として中立論を出した真意は、今や日程に上らんとしているところの
日本と韓国と台湾との反共同盟に対する外相のアドバルーンなのでしようか。それとも、
総理を初め
関係各大臣の
演説に一貫して流れているところの反動的な底流の単なる現われなのであるか。私は、この四つの
演説を聞いて、
日本がまことに、ことに
日本の勤労階級がきわめて重大な事態に直面していることを感ずるも亀あります。
以上をも
つて私の質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕