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1953-01-31 第15回国会 衆議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年一月三十一日(土曜日)  議事日程 第二十二号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑  土地調整委員会委員任命につき同意の件     午後二時十七分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————  一 国務大臣演説に対する質疑
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。松村謙三君。     〔松村謙三登壇
  4. 松村謙三

    松村謙三君 昨日の総理大臣以下の施政方針に関する演説を承りますると、まつたく事務的のものでありまして、今や新興の気を負うて新発足をする時代政府といたして、何らの気魄を認むることができません。(拍手)何らの経綸の見るべきものがないことに、はなはだ失望をいたしたものであります。(拍手)二十八年度の予算は、日本独立最初に迎える新年度の予算であるにかかわらず、その考え方のきわめて低調であるのに遺憾の意を表するものであります。  今日、日本基礎が国際的の関係によつて大きく左右せられますことは、これは必然のことでありまして、独立後の日本外交が持つ重大性は非常に大きなものがあることは当然でございます。日本は、今やアジアにおける自由国家群の一員といたしまして、あのアジアの平和、世界の平和に貢献すべきことは、これは申すまでもないことでございます。しかるに、独立後すでに十箇月の時日を経過いたしておるにかかわりませず、列国との外交関係、特にアジア諸国との関係が依然停頓して、いまだ十分改善の跡を見ざることは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。(拍手)将来、日本平和的繁栄基礎が、これらアジア諸国との心からの親善交易にあることは、論をまたないところでございます。(拍手)われらは、もはやアジア人が互いに相剋り、相殺戮し合うがごとき悪夢は、断じて再び繰返してはならぬと存じます。(拍手)ともに共存共栄の道を歩むべきであります。  この大所高所から見まして、これら諸国との国交打開障害となつております賠償問題のごときは、いたずらに遷延することを許しません。誠心誠意、すみやかに解決方途を講じ、親善交易の道を開くべきでございます。先般、フィリピン野党オシヤス氏が来朝せられてこの問題のために非常に奔走あつせんせられましたことは、両国国交大局から喜びにたえないところでありまして、もちろん日本の国力の限度に応ぜなくてはなりませんが、しかし、誠心誠意円満なる解決をはかつて国交上の障害を除き、一日もすみやかにアジア諸国との心からなる親善を期すべきであります。(拍手フィリピンとの賠償問題の解決は、やがて全アジア諸国との親善回復発足点であろうと考えます。昨日、外務大臣演説に、両国の交渉は来月早々東京で開始せらるるとのことであります。政府は、この大局にかんがみ、最善の努力を傾注してアジア諸国との親善を期せられんことを希望してやまざるものであります。(拍手)  吉田総理大臣は、しばしば占領行政の再検討を主張しておられます。ことに、今度の施政方針演説内容は、まつたくこの占領行政の再検討がその主眼となつております。大体、吉田総理は、過去四、五箇年にわたつて占領行政を代行せられた責任者であります。占領行政が悪いならば、その当事者であつた吉田氏は、当然その責めを負うべきはずであります。(拍手)その人が、たちまち翻つて占領行政を再検討すると言う。被告がたちまち原告にかわつたと同様でございます。(拍手)その責任は別の機会に我々が問う機会があると思いますが、しかし、実際今日わが国の政治根本的に再検討をして、一大改革を要する時期に到達いたしておりますことは事実であります。金のかかる、そうして能率の上らぬ政治国民生活が脅かされて官僚いたずらにいばる政治、世は一大革新要求いたしておるわけであります。(拍手ひとり占領行政のみならず、政治の全面にわたりてこの場合一大革新を断行し、人心を一新して、国民のすべてが新興の意気に燃えて新しい日本の前途を開くことが、現下の急務であると考えます。(拍手)  ただ、この改革は、断じて旧時代への復元であつてはなりません。(拍手)世の中は日に日に新たになるわけであります。政治の目標は、あくまで、国民が多大の犠牲を払うて得ましたこのデモクラシーの発展による大改革でなければなりません。(拍手)昨日の総理施政方針演説を見ますると、多分に復古的、復旧的の傾向を有する危険がほの見えておるのは、断じて看過することのできないところでございます。(拍手占領行政の再検討をはかるには、少くともその再検討尺度、標準をもちまして、これに当てはめて、統一脈絡のある改革を行わねばならぬのでございます。大体、吉田総理のいわゆる占領行政の再検討とは、どんな尺度、いかなる範囲、いかなる内容を持つのか、承りたいのでございます。(拍手)また、やがて、占領行政の再検討は、自然憲法全体の再検討にまで発展する可能性がございます。総理はそこまで考えておるのであるか。これらに対する吉田首相の構想を承りたいと存ずるのであります。(拍手)今度の予算案編成はすこぶる不手ぎわでありまして、向井大蔵大臣の意図いたしました健全財政及び通貨安定の方策は、与党の公約履行の名のもとに、各省のいわゆる予算ぶんどりにあい、きわめて特色のない、散漫な予算と化し去りましたることは、おおうべからざる事実でございます。(拍手総理大臣は、占領行政の再検討施政の眼目といたしておりますが、この独立初年度予算内容、この予算内容こそ、この意味において、一貫したる方針のもとに再検討をして、新しい新興日本建設経編をそのうちに盛るべきわけ合いのものでございます。それが実現をいたしておりませんのは、まことに遺憾に存ずるのであります。独立日本の門出にあたる来年度の予算案がかくのごとき始末でありますことは、まことに国の不幸であると申さなくてはなりません。(拍手)  大蔵大臣は、今後も全体として健全財政及び通貨安定の基礎を引続いて維持し、国内物価国際物価との均衡をはかることの必要を唱えております。この厖大な予算には、このことが必要であることはその通り。しかし、私は、この予算が今ただちに通貨安定の基礎を動かしてインフレーシヨンとなるものとは考えておりません。しかしながら、当然起ると予想せらるる補正予算、これに伴う公債濫発等の危険を想像いたしますれば、やがて押えがたきインフレとなり、国際物価との均衡を破り、国民生活の大なる脅威となる道を開いたものと思わざるを得ないのであります。(拍手)いわんや、義務教育費国庫負担の増大、あるいは防衛費追加等の必要が起つて大なる補正予算の提出を見ることがありますことは、現在の場合必然の勢いと想像せらるるのであります。政府の所見を伺いたいのであります。はたして補正予算を出すに及ぶのか、場及ばないのか、その見すえを承りたい。  また、政府は一千億に上る減税を断行すると言う。しかしながら、政府の企図する義務教育費は、名は全額国庫負担であるけれども、それは羊頭を掲げて狗肉を売るもので、実はなお地方負担となる分が多いのであります。(拍手)この地方負担の捻出のために、勢い地方税増徴を許さざるを得なくなりまして、政府が増税を許す場合があるのかないのか。もしもあるといたしましたならば、それは右に与えて左に搾取することとなるのでありまして、国民生活国民の福祉は保保障せられないのでございます。(拍手政府地方税増徴等をせない決意であるかどうか、それを承りたいのでございます。  なお、この予算の実行には、インフレを押えて行きます上から言いましても、金融操作の面が今日よりさらに一層強くなつて来ることは、昨日も小笠原君が申された通りでございます。その結果といたしまして、大資本は融通がききますけれども、中小工業者は、今よりもさらに一層の困難を来し、没落の一途をたどる危険のあることは、おおうべからざる事実でございます。政府はこの点をいかに処置する考えであるか、それ承りたいと存じます。  さらにこの予算につきまして承りたいと存じますことは、政府は、今度艦艇数隻をつくり、また百台の飛行機をつくるはずでございます。これをもなお軍備でないと言わるるならば、それはいわゆる耳をおおうて鈴を盗むものであります。(拍手)今は、そのことをここで論議するのではありませんが、しかしながら、これはわが国土を守る施設であることは言うまでもないことでございます。この予算要求をなすにあたつては、全体にわたる防衛計画がなくてはならぬわけであります。おそらく、今回の要求は、その計画の一部分であることは間違いないことと思うのであります。しからば、政府はその防衛計画の全貌をここに明示すべきものであります。(拍手いたずらに思いつきで、金があるから船をつくり、飛行機をつくるというわけのものではなかろうと思います。それで、全面的のその計画を承るということは、将来の予算の見通しにも必要なことでありますので、ぜひここに発表せられんことを望む次第でございます。  食糧の問題、ことに米価の問題に至りましては、ますます重大なる性格を加えて来ております。何らかの措置を今にして講ぜないならば、国民生活脅威し、農村脅威すること実に大なるものがあると思うのでございます。きわめて端的に申しますと、吉田内閣がこれまでとつて参りました、ぬえのような分裂しておる政策の結果は、今やその行き詰まりを来しておるのであります。簡単に申しますならば、米の統制を解くと申して、これを解くことができませんで、麦だけの統制をはずしております。また、米の統制を持続しながら、その生産の大きな部門をなす化学肥料統制をはずして、自由経済にいたしております。供出制度をそのままとしておきながら、残余の米の販売の自由を許すと言いながら、その実は、依然政府へ強制的に納めさせておるのでございます。かくのごとき、複雑怪奇で、支離滅裂な、連絡のない政策は、ますます食糧問題を困難ならしむるのみであります。(拍手)そのために、米価統制のもとに政治的に抑圧せられ、その生産費の大部分を占むる化学肥料は、統制を解かれて自由奔放にまかせ、価格にほとんど統制時代の倍以上の騰貴を見ております。農家経営根本脅威しておるのであります。その上さらに、農地及び農業所得に重税を課しておる。農家が疲弊困憊するのは当然ございます。(拍手)しかも、そのはね返りで米価の値上げを余儀なくせられて、そうして消費者たる国民全体の生活に大なる脅威を与えておるのであります。(拍手)これはまつたく矛盾せる、誤まれる政策より来る必然の結果でありまして、農民を苦しめ、あわせて消費者をも苦しむるものであります。  大体、米の統制主要食糧統制戦時統制考えてこれをやめるという考え間違つているのでございます。(拍手)米の統制は、大正十年、今から三十年前、平和のときから、国民生活の安定、農村維持のために漸次強化されて来たものでありまして、決して戦時統制ではありません。それを、めちやくちやに、容易に戦時統制とともに解こうとしたところに、大きな誤まりがあるのでありまして(拍手)解かんと欲して解くことができないので、今も米だけは残しておる。そしてほかのものは自由経済にもどしている。まるつきり、これはへびの生殺しであります。(拍手)このような政策は、農民を殺し、国民生活を乱るものであろうと思うのでございます。  そこで、これが解決には、主要食糧統制をこのまま持続して、そしてあわせて化学肥料その他のおもな農業生産資材を再び統制し、米価とのつり合いを保つことをやるかしからざれば、めちやではありますが、米を一気に自由経済へ返すか、その二つの道があるばかりでございます。それを、今日のような、まるつきり矛盾した政策のもとに放棄して、消費者農民もこの上苦しめるというとは、断じて許すべからざるところであります。(拍手政府は、この国民生活農村維持根本に触れる重大な問題に、はたしていずれの道をとるのであるか、ここに明白なるお答えを得たいと思います。(拍手)  昨日、総理大臣は道義の高揚を力説されました。これはだれしも異議のないところでございます。ただ、それが義務教育費国庫負担、あるいは国家公務員にするというだけでそういう目的が達すられるとは、われわれは思いません。(拍手)私は、それにつきましても、総理は第一に、厳重に官場綱紀粛正をはかるべきであると思うのであります。(拍手)戦前、世界にその廉潔をうたわれておりましたわが日本官僚綱紀は、戦時以来、ことに占領行政のうちに一変して、腐敗堕落、見るに忍びないものがあるのであります。(拍手)もちろん、これは、数多き官吏の、ただそのうちの一部であつて廉直潔白官吏は今もなお多いことと思うのでありますが、占領行政中のこの悪風は、独立後の今日、第一に粛正せらるべきものと考えるのでありす。(拍手)同時に、総理大臣やわれわれもまた、真に国民の代表としての矜恃と至誠をもつて政界の郭清に当らなくてはならぬと深く考えるものであります。(拍手)これ議会政治の信頼、民主主義徹底の第一義であると信ずるものであります。  ここで私が承らんと欲しますことは、吉田総理議会政治に対する態度であります。議会制度に対する心境であります。今度の予算不満でありまあは、ひとりわれわれ反対党ばかりではございません。予算編成当事者責任者であります向井大蔵大臣も、不満の欝憤を漏らして、地獄と天国の中間の予算だと言われております。(拍手吉田総理大臣もまた、予算ぶんどりを憤慨して、国会のいかんにかかわらず緊縮政策を断行すると、国会無視演説までなされております。(拍手)しかしながら、かかる不満足な予算案を組むのやむを得ざるに至りましたのは、端的に申しますと、総理総裁自身統率力の問題になるのであります。(拍手)まつた総理自体責任であることを反省せらるべきであると思うのでございます。(拍手)さきにも申しました占領行政の再検討のこともさようでありますが、何か今の総理大臣は、かつての天皇と同じで、政治上無責任の位置にあるように考えておられるように見えるのであります。(拍手)とんでもないことであります。この間から新聞などに流布せられておるところなどを見ますと、自由党内紛の結末がつかないと解散をするという、政府責任のある当事者、はなはだしきは議会議長の重責をになう大野氏までが解散説を唱えておる。これはとんでもないことであります。(拍手解散という公器の使用は、そう軽々しいものではない。そのことは、吉田総理は存じておらるるはずだ。少しは下僚または党員を戒飭せられてしかるべきではないかと思うのであります。(拍手)これを申しますことも、議会政治は最も大きな責任政治であることを総理大臣に思い起していただきたいからであります。(拍手)昨日の衆議院議院運営委員会において、国会無視演説の陳弁を総理がなさつたようでありますが、ここにあらためて議会政治に関する総理大臣心境を承りたいと存ずるのでございます。  私の質疑はこれで終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 松村君にお答えをいたします。  私の施政演説その他閣僚施政演説がまことに失望すべきものである、何らの抱負もなければ、あるいは新日本再興に関する抱負も何もないと言う。(「その通り」)その通りと言われることが、そもそも私はおかしいと思うのであります。一体、施政演説その他は、大本のことを出すべきものであるのであります。もし松村君の失望が本心から出られたことであるならば、私は、これははなはだ満足に考えるのであります。政治はまじめであるべきものであり、質実であるべきものであり、もしわれわれの演説がまじめでなく、質実でないという攻撃に対しては喜んで受けますが、しかしながら、それ以上のお話は、私は受取れないのであります。単に抽象的に、抱負がないとか言われずに、この点がいかぬ、あの点がいかぬ、よろしくこの点議会政治において是正すべきものである。——いやしくも政治家が、単に抽象論でもつて攻撃せられることは、私はこれを首肯できないのであります。  また、隣国との外交について、一年もたつてまだ目鼻がつかないのはけしからんということでございますが、とにかく過去五、六年の間、戦争、死闘を続けた国柄であります。フィリピンその他の国とは、過去五年の間非常な戦争を続けてその間に死傷もあれば損害もあるということは当然でありますが、これを一朝にしてぬぐい去るということは、たとい誠心誠意をもつて善隣外交を行おうといたしましたところが、これはむずかしいことであります。できないことであります。外交は、誠心誠意のほか、さらに忍耐をもつて臨むべきであります。(拍手善隣外交の精神と心がけを持つと同時に、忍耐をもつてその外交に当るべきものであります。一年たつた、十箇月たつた、その間に善隣外交ができる、あるいは隣国との間の外交が復帰するということをお考えになりますならば、戦争の惨害がいかにはなはだしかつたかということをお考えにならなければ、善隣外交さえもできないと私は思うのであります。  また占領行政について攻撃がございましたが、占領行政については、これは過去をごらんになるとよくわかるのであります。占領当時の最初の第一年、第二年、その間の占領軍の対日政策は、今日とはよほど違つたものがあるのであります。その当時、日本世界の平和を脅かす、まことに危険な国なりと考え占領行政が始められたのであります。その気持、その日本に対する誤解がだんだん解消するとともに、対日関係、対日占領行政も緩和せられて今日に至つたのであります。しかしながら、なおそれは七年の間の占領行政であります。七年の間の占領行政について、多少の行き過ぎがあるということは当然であります。のみならず、これは占領軍において全然認めなかつたことではないのであります。当時、マツカーサー元帥は、私に対して、占領行政行き過ぎがあるから、是正することについては一向異存がないから、研究してもらいたいということ言つた。(「ノーノー」と呼び、その他発言する者あり)そこで、行政審議会をつくつて、いかなる点が行政行き過ぎであるかということの検査を始めたのであります。その結論に従つて占領行政を直さんといたしておるのであります。  また憲法改正までの考えがあるかということでございますが、私は、ただいまのところはございません。一国の政治は、そう急激に変化をなすべきものではなく、ことに憲法のごとき基本法改正は、いやしくもいたすべき、ものではないのであります。(拍手)輿論のおもむくところを考え、また国情を考えて、慎重に、憲法のごときは、改正する必要ありとしたならば考えるべきものである。一朝にしてこれをなすということは、国家百年の災いを残すものであります。(拍手)  次に綱紀粛正ということがございましたが、吉田内閣成立以来、綱紀粛正については最も注意を払つております。かつてわが党内閣あるいは閣僚の間に涜職事件が起つたことはないのであります。(拍手)また、かりに下僚の間に涜職その他の事件が起つた場合に、政府は決してこれを看過いたしておりません。法の示すところによつて厳罰に処しております。  また解散云々ということがございましたが、政府解散については何ら申したことはないのであります。また自由党内内紛があるこれは、先ほども参議院において言明いたしましたが、政党の間に議論があるのは当然であります。これが政党政治であります。甲論乙駁してそのおちつくところにおちつくのが政党政治であります。この議論の対立が内紛と言うならば、私はこの内紛はますます盛んなるがいいと考えるのであります。(拍手)私の自由党総裁もしくは総理としての統率力が足りないと言われておりますが……。     〔発言する者多し〕
  6. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 静粛に願います。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君)(続) お話内紛なるものは、過日の幹事長選挙でありましようが、昨日挙党一致いたして、何らの紛擾なくして納まるところに納まつたのであります。私は、私の統率力が欠けたとは考えないのであります。(拍手)  その他は所管大臣よりお答えいたします。     〔国務大臣向井忠晴登壇
  8. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 今回提出しました昭和二十八年度予算は、健全財政方針のもとに、必要経費を重点的に配分してこれを編成したものでございます。今日織り込み得る要素はすべて織り込んでおりますから、現在のところ予算補正考えておりません。  公債の発行につきましては、市中消化可能な範囲内にとどめる方針でありまして来年度の計画では、この方面からのインフレの懸念はまつたく存しません。     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  9. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。政府が二十八年度予算において数隻の警備船、百余の軽飛行機の建造を要求しておることは事実であります。しかし、この要求は、主としてわが国内地の平和と治安を維持することを目的とする保安隊警備隊内容を充実するがためでありまして、決して外国よりの直接侵略防衛の一環としてこれを計画したものではありません。申すまでもなく、外国よりの直接戦略に対しまして日米安全保障条約によつて、アメリカがこれを分担することになつております。従いまして、ただいまのところにおきましてわが政府といたしましては、外国よりの侵略に対する防衛計画というものは、いまだ作成しておらぬのであります。     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  10. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 米の統制をはずすかどうかというお尋ねでございますが、米も麦と同様な条件がつくようになりましたならば、これをはずす考えでおるのであります。しかし、米は日本の食生活並びに国民経済の全般に非常な大きな影響力を持ちますので、慎重に考えておるのであります。なおまた、その間におきまして、漸次この統制方式をかえまして自由にいたすように心がけておるようなわけでございます。  また、これと関連いたしまして、肥料を野放しにしたことは、農家経済の上に非常な影響を及ぼすということでありますが、それはまったくその通りでありますので、政府におきましては、この価格安定策等について、行政的に種々骨を折つておるのであります。なおまたこれを根本的に解決するために、総理大臣主宰者といたしまして審議会を設置いたし、根本的にこれを検討いたしまして、農家経済に悪影響を及ぼさないような方途を講ずる所存でございます。(拍手)     〔国務大臣本多市郎登壇
  11. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 地方税制改正に関する御質問に対しましてお答えを申し上げます。地方税制の全般的な改正につきましては、もちろん地方制度調査会の御審議をまつて行うのでございますが、さしあたり考えております点は、所得税法基礎控除引上げ等に伴う調整の点、さらにまた、従来定額課税で課税されておつたものつきまして、今日の経済事情推移を勘案いたしまして、負担均衡化見地からこれを改正する必要がありはしいかと考えまして、ただいま検討中であります。この定額課税の問題につきましては、ただいま申し上げました通り定額課税である税が、長年にわたりまして、経済事情推移におかまいなしに、そのまますえ置きになるということになりますと、他の税との負担均衡を失することになるのであります。その他地方財政に多少の弾力を持たせる意味におきまして、ただいま申し上げました負担均衡化という見地から考慮いたしておるような次第でございます。(拍手
  12. 岩本信行

    ○副職長(岩本信行君) 三宅正一君。     〔三宅正一登壇
  13. 三宅正一

    三宅正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして吉田首相並びにその他の閣僚に対し、施政根本方針についてその所信を伺わんとするもので去ります。  独立後第二年の春を迎えたわが用は、朝鮮休戦交渉の失敗、米国における共和党政権の樹立による対ソ強硬政策の展開、ソ連圏における大規模な血の粛清等、容易ならざる国際情勢に当面いたしておるのであります。わが国の外交方針にして、一歩その道を誤まれば、悔いを千年の後に残す、真に重大な時期に際会しておると信ずるのであります。(拍手)  その意味よりいたしまして、私のまずお伺いいたしたいことは、米国新政府の対日方針政府の覚悟についてであります。アイゼンハウア一新大統領並びにダレス新国務長官の最近の演説及び選挙中の米国民に対する公約は、日本の運命とその政治路線に深刻な影響を及ぼす内容を含んでおるのでありまして、すなわち「朝鮮動乱の終結に対する何らかの新手の編出し」「アジアにおいてはアジア人の手で防衛を」「反共巻返し政策」等、一連の政策日本に何を要求し来るかは、政府においてもほぼ予測されておるところと信ずるのであります。すなわち、この際予測されるアメリカ新政府の企図に対し、政府がいかなる基本的態度で対処して行くかについて、その覚悟を国民の前に明らかにすべきであると信ずるのであります。(拍手)  第一、われわれはかりにアメリカの強要があつたとしても、日本人を朝鮮戦線に提供するがごとき事態は生ぜざるものと考えるが、いかがであるか、この際明らかにされたいのであります。(拍手)  第二に、アメリカがいかにこれを望み、かつ軍事援助や経済援助の誘惑をもつてしても、国民の望まないアメリカのための再軍備は断固としてこれを拒否する意向があるかいなかを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  第三には、我々は、台湾、フイリピン、日本を連ねる太平洋安全保障条約、またはこれにオーストラリア、ニユージーランド等の加わつた地域的安全保障条約にも参加すべきでないと信ずるものであり、かつその根本において、日本の安全とアジアの平和は、わが国と、新しい進歩的な自由アジア、すなわちインド、ビルマ、インドネシア諸国との連携を常に韓国念頭に置き、向米一辺倒、アメリカの扶養的外交を是正すべきであると信ずるのでありますが、首相の御信念を承りたいと思うのであります。(拍手)  かつて吉田首相は、アジアにおける民主主義諸国との提携が日本外交の基本方針であると言われたが、総理の言うアジアにおける民主主義諸国とは、いずれの国をさされるのか。さらに、これら民主主義諸国との間に友好提携関係を樹立するためにどれだけの努力をささげられたかを明らかにされたいのであります。  今回ラングーンにおいて開催されたアジア社会党会議は、アジア世界平和に関する決議におきまして、世界平和は三つの主要な要素、すなわち植民地主義、経済的不均衡及び勢力圏政策によつて脅威されている、植民地主義の継続は、今や国際不安定と不安定の一つの重要な源泉となつて来て世界の平和に対する不断の脅威となる憂いがある、と指摘しているのであります。植民地支配より解放され、真の独立をかちとらんとするアジア民族の闘いに熱列なる共感と協力をささげ、その生活と技術水準の引上げに努力する路線こそ、正しきアジアにおける日本外交方針でなければならないと存ずるのであります。(拍手)  わが国の安全保障の基本方針は、無防衛、無抵抗主義や、容共的平和論ではなくして、国連の集団安全保障であつて、地域的安全保障というも、日本の国連加入と、国連の世界性の強化がその前提であることは、申すまでもなと信ずるのであります。しかるに、先般の国連総会において、日本の加入はソ連の反対で拒否されたが、政府はいかにして国連加入の目的を貫徹せんとするか、この点に関し、政府は自主的にいかに努力し、またいかなる見通しをもつて対処しているかを明らかにされたいのであります。  これを要するに、激動せるアジアの一員としてこの深刻なる国際情勢に処する日本の態度は、あらゆる誘惑も強要も断固としてこれをしりぞけ、国連加入によるその集団安全保障の確保への努力を続けながら、日本人の朝鮮戦線等への提供反対、再軍備反対、平和憲法擁護、太平洋防衛同盟参加反対、この態度を堅持しつつ、国連加入によるその集団安全保障の実現されるまでの経過的なるわが国の安全保障は、日米安全保障条約並びに行政協定の不平等条項を根本的に改訂し、自主対等の立場に立つて、民主主義国家群の一員として平和憲法の許す範囲における国際協力に貢献すべきであると考えるのであります。(拍手)この根本的立場こそ、日本人が一致して守り抜くべき大方針である。日本がこの大方針を堅持して不退転の精進を続くると一き、インド、ビルマ、インドネシア等、進歩アジア諸国を初め、全アジアが初めて日本を信頼し、世界もまた日本に対する誤解を解き、究極においてアメリカもまた日本の真意を了解し、尊敬するに至ると信ずるものでありまして卑屈にして無気力な向米一辺倒政策を日掛して、自主独立日本外交を確立することこそ、今日最も大なる急務であると考えるのでありましてこの根本的立場に関し、総理大臣の明白なる所見を承りたいと存ずるのであります。(拍手)  次に、政府の財政経済政策に対して質問いたします。政府の経済財政政策を端的に表明したものは昭和二十八年度一般予算でありますが、この予算については多くの不満と疑問を有するものであります。  第一は、九千六百五億円に達する厖大なる予算において、防衛費及び平和関係費等一千六百五十億円、各省予算等千八百六十三億円など、不生産的経費が予算の大部分を占め、生産増強、食糧増産、社会保障等の経費はきわめて少額にすぎないのであります。  第二は、予算の中核である防衛費は、安全保障費を削つてわれらの主張に追随せる反面、一千億円を越える前年度の未使用分をそのままほおかむりして、本年度に繰越しているのであります。従いまして、本年度の防衛費の総額は二千四、五百億を下らず、昨年度よりも実質的にははるかに増大しておるといわなければならないのであります。(拍手)  第三に、一千億の減税をすると公約しながら、例によつて税法上の減税でごまかし、裏質的には予算の上において二百三十億の増収を見積つておるのであります。しかも、中央地方を通ずる税制の根本改革を行うといいながら、単に富裕税を廃して高額所得者に奉仕するという羊頭狗肉の措置を講じたにすぎないのであります。(拍手) 第四に、均衡財政をとると称しながら公債政策を取入れ、インフレ拍車への大きな突破口を与えておるのであります。これでは、均衡財政どころか、健全財政でもなく、一躍インフレ財政へと突入したものといわなければならないと存ずるのであります。  以上のごとく、予算を通じて見たる政府の財政経済政策は、きわめて無性格、不徹底なものでありましてこれを一言にして評するならば、ばらばら予算といわざるを得ないのであります。そこで私は政府に質問せんとするものでありますが、第一、今提出された昭和二十八年度予算を実行いたしますれば、少くとも一千五百億円くらいの政府資金の散布超過となつてインフレの促進は必至の状態であるが、政府はこれに対していかなる対策をとられんとするのでありますか。  第二は、インフレによつて国内物価の騰貴を来しまするならば、たださえ国際物価よりも高い外国貿易に対して一層わが国物価の引上げによつて貿易の不振を来し、経済の不況はさらに深刻化するものと思われるが、政府はこれに対していかなる対策を考えておられるか。われわれは、貿易不振打開のために、アジア経済会議を提唱し、アジア清算協定の締結を提唱しているが、これに対する政府の所見をお尋ねしたいのであります。  第三に、不生産的な経費を極力節減する意味において、防衛予算を大幅に削減しなければならぬと信ずるものでありますが、政府は、前年度における防衛費の未使用分はこれを剰余金として一般財源に充当する考えはありませんか。なお、この場合特に質問しておきたいことは、政府は安全保障費の一部をさいて弾丸道路を建設するとのことでありますが、その真偽いかん。もし政府が安全保障費をもつて弾丸遺跡を建設するがごときことありとするならば、それは予算の流用であつて、明らかに財政法違反であり、従つて憲法違反であると思うが、明確なる答弁を承りたいと思うのであります。(拍手)  第四、政府は財政投資特別会計を設けて、財政投資を積極化せんとするもののごとくであるが、そこに何らの計画性を見出し得ないのを遺憾に存ずるのであります。従つて、三千五十五億円に及ぶところの財政投資はまつたくばらばら投資であつて、経済不況の打開、生産増強の達成等に役立たざるのみか、インフレ拍車の要因にすらなつていると信ずるのであります。政府は、これによつて生産増強、経済不況の打開をなし得ると考えているか、もう一ぺん承りたいのであります。  第五に、なおこの際政府のはつきりした答弁を承りたいことは、外資導入の問題であります。政府は、過ぐる第十三国会において、総理大臣初め得々として外資導入を宣伝せられたのであるが、その後外資導入はどうなつておるのであるか承りたいのである。(拍手)先般、国際開発銀行副総裁のガーナー氏が来朝し、わが党の代表者もこれと会見したのであるが、日本の開発は日本の自力でなすべきであつて、海外の援助を当てにすべきでないと彼は言い、しかして日本の不足しておるのは円であつてドルではないと喝破しておるのであります。これに対して政府はいかに考えるか。外資導入のから宣伝をして国民を惑わした政府責任いかん。特に吉田総理大臣の答弁を求めたいと存ずるのであります。(拍手)  要するに、吉田内閣の財政経済政策は、昭和二十八年度予算によつていよいよ混迷し、公債政策を併用することによつてますます邪道に入らんとしておるのである。しかも、諸般の情勢よりして政府はその否定にもかかわらず、今後補正予算の提出を余儀なくされるであろうことは、松村君御指摘の通りであります。かくて国家予算は一兆億の大台を飛び越えることになり、心理的にもインフレ必至と思われるのであるが、政府はこの点いかなる見通しを持つているかを、もう一ぺん念を押しておきたいと存ずるのであります。(拍手)  次に、農村問題についてお尋ねいたします。わが国の経済自立のために食糧増産の重要なことは、あらためて申し上げるまでもありません。政府もこの点に留意してさきに食糧増産五箇年計画を発表したものと思われるが、二十八年度予算編成にあたつて財政的な裏づけを失い、早くも日の目を見ずして土崩瓦解したことは、まことに遺憾千万といわなければなりません。(拍手)このように政府食糧増産計画がまつたくの机上プランに終つた最大の理由は何であるか。それは、二百四十名の多数を擁する自由党並びに党を代表する政府閣僚が、総合的なる経綸を欠き、予算獲得以外に何ものもない事務官僚にこれをまかせた当然の結果であると信ずるのであります。(拍手)  政府食糧増産計画には多くの欠陥があるのでありますが、その第一は、政府が、一方において再軍備等の不生産的費目に厖大なる財政支出を用意しながら、食糧増産のための財源捻出には当初から何ら真剣な考慮を払わなかつたことであります。ただ政府が期待する増産量から逆算して所要経費を打出し、あたかも簡単に実現できるがごとき幻想を国民に与えたものであつて、ことにまじめに食糧増産に挺身せんとする農民をたぶらかした罪は実に重きものありといわざるを得ないのであります。(拍手)  第二に、食糧増産施策の中心を——土地改良、開墾等の耕地の基本的条件の改善に重点を置いたことは当然であります。問題は、漫然たる補助金政策を続けることによつて、その効率化について何らのくふうを加えることなく、これまで通り官吏とボスと土建業者の食いものとなる現状をそのまま放置しておるところにありと存ずるのであります。(拍手)  第三は、食糧増産の要諦が、土地改良とともに有畜農業の徹底にあるにもかかわらず、畜産増殖計画なるものが別個に計画せられ、食糧増産計画と畜産増殖計画なるものが、ただ、のりとはさみでつなぎ合されただけでありまして、しかも畜産増殖計画そのものも、家畜の増殖や流通機構対策、さらに最も重要なる飼料対策が十分に樹立されていないところに大きな欠陥があるのであります。(拍手)われらは、この際政府の猛省を促し、特に国費濫費のうわさある非効率的な補助金政策のかわりに、全額国費をもつてする大規模なる国土総合開発の一環として、土地改良、開墾を実施し、さらに有畜農業の急速なる普及のための総合的な推進政策を実施することが必要であつてこれに要する経費は、防衛費を中心とする不生産的財政支出を大幅に削減することによつて捻出すべきものと考えるか、政府はこれに対してこれを実行する勇気ありやいなやを伺いたいと存ずるのであります。(拍手)  次に、政府及び自由党の農業政策の最大の誤謬は、独占資本並びに商業資本の力に動かされて、農村を再び資本の支配下に追いやりつつある事実ですります。これがためシェーレの拡大を来し、今や、一部特殊農産物を除いては、いずれも農業恐慌的状態に置かれておるのであります。政府は、かくして農産物価の安定に乗り出さざるを得なくなつたのでありますがすでに行われておる澱粉、菜種、てん菜糖の買上げに見られるように、政府農家を助けると称して、実は中間業者を救済しておるのである。すなわち、農産脇価安定の名のもとに、農家のつくるいもを買わずに澱粉を貰い、てん菜を貰わずにてん菜糖を買い上げるという方法をもつて、第一次生産者たる農民は何ほどの恩恵も与えないような買い上げ制度を実施して第二次製品をつくるような加工業者その他をもうけさせておるところに、私は非常な危険があると存ずるのであります。(拍手)もし、かくのごとき第二次製品や加工品について買い上げる方策をとるならば、何ゆえに農民の売る原料農産物に対し、バツク・ペイその他これを補償する措置を講じないのであるか。政府の、かかる欺瞞的農産物価安定政策に関し、農家の利益を最終的に保証する自体的措置を講ぜられるやいなやをお伺いいたしたいのであります。  さらに、最近農家にとつて最大の関心事となつ肥料問題についてお伺いいたしたいのであります。米については、内地の農民からは生産費を償わない安い価格で強制的に買い上げ、外国からは品質の悪い米を高く買つて全国農民の憤癒の的となつている折から、肥料については、内地の農民には硫安を一俵九百円以上の高い価格で売りつけ、外国に対してはそれより二、三百円も安い価格で投売りすることを認めている。これまつたく独占資本擁護、勤労農民圧迫の自由党の本質をむき出しにしたものといわなければなりません。(拍手農民に対しては、食糧生産国家的重要性を強調し、低米価供出を要求しながら、一方においてこの食糧生産にとり不可欠の肥料については、これを独占資本の利潤追求にまかせているということは、何たる矛盾であり、不合理でありましようか。肥料資本家は、多年政策の恩恵と、農民の無抵抗状態につけ込み、無謀なる設備の拡張と生産の競争を行つたあげく、一たび過剰生産の状態となるや、国外にこれを投売りして、国内価格のつり上げをはかるに至つては、まつたくさたの限りといわなければならないのであります。(拍手)その間、肥料資本は、生産の合理化に関し何ら真剣な努力を払つているとは思われません。従つて、国際価格に比して生産費は著しく上り、外国市場において太刀打ちできないようになつ責任は、政府と業者が負うべきものであつて、まじめなる農民にこれを転嫁するとは、一体何たる非農民的態度であるかといわなければならないのであります。(拍手) 過般、東京において肥料問題農民大会が開かれ、むしろ旗を交えた示威運動が行われ、首相官邸を多数の代表が取巻くという、いまだかつてない事態を生じたのであるが、それほど全国農山村における農民のこの問題に対する批判と反感は深刻なものがあるのであります。よつて政府は、かかる肥料資本の横暴を押えるために、肥料国家管理を行うか、少くともその前提と旧して流通面の国家管理を実施する意思はないか。また具体的に国内硫安を国際価格近くに引下げる何らかの処置を考慮しておるかどうか。春肥期を控え、全国農民の最も注視しているところのこの問題に対し、具体的なる政府の所見を農林大臣並びに通産大臣に承りたいと存ずるのであります。(拍手) さらに、首相は昨日の施政方針演説において占領政策行き過ぎを是正すると称して、教員の国家公務員化、警察制度の改正、重要産業労働者のスト禁止等の反動的立法を意図していることを表明されましたが、これらはいずれも逆コースのはなはだしきものであつて、それによつて日本民主化の根底はまつたく破壊されるに至るであろうことをおそれるものであります。(拍手)われわれは、占領政策の上にも幾多の誤謬と欠陥があつたことは否定いたしませんが、その基本精神が日本の民主化の推進にあつたという事実は、率直に認めねばならないと存ずるのであります。しからば、わが国民主化政策として具体化されたものは何であつたかと申しますれば、一つは労働組合による労働権の確立であり、一つは農地改革による農村の民主化であり、さらに財閥の解体であり、警察の民主化であり、画一教育の打破であつたのであります。しかるに、今回政府が行わんとする諸施策は、いずれも、かかる民主化政策根本に触れるものであります。まず、政府が重要産業労働者に対してスト権を剥奪せんとしていることは、憲法において許されたる基本権に対する重大なる侵害であり、日本の労働組合運動を骨抜きにせんとするものであつて、われらの断じて承服しあたわざるところでありますが、政府はこの際、この問題に関し、見解を明確に披瀝されんことを望む次第なのであります。(拍手)  さらに、農村においては、農地改革は事実上停止せられ、農業団体再編成を名として官僚農村支配は復活せられんとしており、また独占禁止法、事業者団体法その他の法律の改廃によつて財閥の復活はすでに既定の事実と化しているのであります。また、警察の中央集権化や、結審局設置以後における思想警察化、情報局設置による官僚的思想統制の台頭など、警察国家の再現を見ようとしており、さらに最後の布石として、ただいま総理大臣は否定いたしましたが、憲法改正の具体的準備が着々進められつつあるのであります。これらの諸点について、農林、通産、法務、官房長官等より明確なる所見を承るとともに、再び総理大臣より憲法改正を行う意思ありやいなやについて所見を伺いたいと考えるのであります。  なお、あわせてここにお尋ねいたしたいのは、最近の義務教育費国庫負担の問題であります。昨年実施された市町村教育委員会の設置については、利害得失をさらに慎重に研究するため、一年間これを延期し、審議会を設置する法案を政府みずから提出しながら、教員組合の組織を弱体化するためこれを握りつぶし、市町村に過重の負担と無用の事務とを押しつけたのが、この間の選挙のときにおける市町村教育委員会の設置であります。さらに第十三国会において義務教育費半額国庫負担法を成立せしめ、本年四月一日より実施することになつているのであるが、小中学校教員を国家公務員とすることによつてその政治活動の自由を奪うために、十分な研究もせず、地方制度審議会にはあとから形式的に諮問するという不誠意なるやり方でもつてこれを強行し、府県自治体を混乱させるがごとき暴挙に出でんとしておるのであります。このように、党利党略のために国会の権威も法律の尊厳もこれを無視し、朝令暮改を事とするがごときは、決して信を天下につなぐゆえんではないのであります。(拍手)これに対し、岡野文部大臣並びに本多国務大臣の明快にして首尾一貫せる答弁を煩わしたいのであります。(拍手)  最後に、私は今日の政局の混迷に対する吉田総理責任を糾明せんとするものであります。さきに、自由党は、党内不統一の矛盾を暴露して醜怪なる党内派閥を争いのために、選挙後数十日にわたつて総理大臣指名の特別国会を召集するあたわざる醜態を暴露いたしたのでありますが、ようやく組閣に成功とて旬日を出ずして、党内不一致のため池田通産大臣不信任案を通過せしめ、絶対多数党が少数党に敗れるという、議会史上未だかつて例のなかつた醜態を現出したのであります。さらに、補正予算に対する野党の共同修正案に狼狽し、石橋、河野両君の除名を取消す等、民同派と妥協し、わずかに政局の危機を切り抜けるという状態であつたのでありますが、さらに今回国会再開を前にいたしまして、党内はかなえのわくがごとき混乱を暴露したのであります。これはもとより政局に一大不安を与えるのみならず、議会政治不信の輩を高め、遂には左右の全体主義のために道を開くことなきを保障し得ないのであります。しかも、かくのごとき政局混迷の原因はまつた自由党の党内混乱にあり、その責任の全部が総裁たる吉田首相の統率無能力にあるにもかかわらず、(拍手)みずからその責任を感ずることなく、かえつて解散をもつて政界を恫喝するに至つては、その無反省かつ民主主義の何ものかをわきまえざる態度こそ、まつたく驚かざるを得ないのであります。(拍手解散すべき必要ありとすれば、それは与党の責任を忘れて党内抗争に狂奔する自由党それ自体であり、断じて国会解散ではありません。  憲法第七条に規定する、国民のために天皇に助言する解散行為は、党内統率に失敗した総裁が、責任国民に転嫁するために行わるべき性質のものでは断じてありません。(拍手)さきに吉田首相の行つた抜打ち解散は、かえつて自由党内紛を拡大再生産するに至つたのでありますが、(拍手)しかも、その選挙よりわずかに三箇月にしてまたも無謀なる解散を行うかのごとき態度をほのめかすことは、天下の指弾を買うのみならず、必ず自由党自体の分裂となつてはね返ることは自明の理であります。政局の混迷が党内不一致から来ているこの際、吉田総理は権力におぼれて解散権濫用の誤りを犯すべきではなく、今後もかかる事態に陥つた場合には、当然総辞職して罪を天下に謝すべきであると思うが、首相の所見はいかがでありますか。(拍手) 以上、吉田内閣の相次ぐ失政により、今やわが国の上下に欺瞞する綱紀の紊乱と道義の頽廃とはまことに驚くべきものがあるのであります。まず、過般の選挙は、公明選挙のスローガンの名のもとに行われたにかかわらず、空前の買収その他の腐敗行為によつて汚濁せられたのでありますが、総理大臣を指名するために召集せられた本特別国会が、さらに九十九日の大幅延長を決議し、三月三十一日まで延長されるに至つたのは、公明選挙を汚濁した選挙違反関係者の検挙を免れしめる不純な動機から出ていることは明らかであります。(拍手)野党の反対にもかかわらず、総裁として与党多数の強引な態度を押え得なかつたのは遺憾千万であります。(拍手)また、岡崎外務大臣等を初め、選挙運動に関連して選挙資金を取扱つた責任者がその後も逃亡をし続け、権力者は網の目をのがれて、市井の大衆のみ捕えられるというがごとき現状は、司法の独立と権威のためにも考慮を加える必要があると存ずるのであります。(拍手、発言する者多し)選挙違反の検挙の進行状態に関し、犬養法務総裁より私はその御報告を承りたいと存ずるのであります。(拍手)  なお、吉田内閣のもとにおいて、あらゆる問題が利権の対象とされつつあることは否定すべからざるところであつて、只見川問題といい、四日市燃料廠問題といい、炭鉱住宅問題といい、一として、利権と汚職に関し、うわさの種ならぬはないのであります。(拍手)かくのごとくにして、官吏の汚職事件はその跡を断たず、民間会社にあつては、いわゆる社用族の跋扈となり、大衆はパチンコ、競輪等の射倖行為に走り、(笑声)外国軍隊に対する売春行為は目に余るものがあるのであります。かくして、日本は、講和独立後においていよいよ亡国的徴候を露骨にしているのでありますが、その責任はあげて吉田内閣にあり、さらにさかのぼれば、占領治下につちかわれた対外追随と独韓政治とを特徴とするその基本的性格にあることを思うとき、私は国家国民のためにすみやかに吉田内閣の退陣を要求せざるを得ないのであります。(拍手)首相は、この際、ここに深く思いをいたし、政局の一新と国家の将来のため、その進退に関し何らか期するところありやいなやを伺つて、私の質問を終るものであります。     〔国務大臣吉田茂登壇
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 三宅君にお答えをいたします。  まず初めにお答えをいたしますが、朝鮮戦線に兵隊を送ることはないか、再軍備を強要せられることはないか。今日まで、政府としては、かくのごとき問題の交渉を受けたことはございません。いわんや圧迫を受けたこともないのであります。朝鮮戦線に兵隊を送るようなことについては、国民が決して了承いたしておりませんから、政府もこれに賛成することはございません。  再軍備の問題は憲法改正しなければできないのであつて憲法改正はいたさないということを申しておるのでありますから、従つて再軍備はいたしません。  太平洋同盟条約に参加するかというのでありまするが、いかなるものが太平洋同盟なるものの内容であるか、政府はまだ交渉を受けておらず、その内容については何ら承知することができませんから、その条約の内容を承知した上でもつて吟味いたします。いずれにしても、日本独立いたしたのでありますから、雇用的関係もしくはアメリカの植民地的関係に立つことは断じていたさないつもりでございます。  また、私が民主的国家と善隣関係に入るということを申した趣意は結局共産主義ならざる国家と善良なる関係に入りたいという希望を申し述べたのであります。政府としては、この善隣外交をなすために、あらゆる努力をいたしております。また、そのために隣国の復興について十分な協力をいたしたいと考えて、その向き向きに交渉をいたしております。多少遅れるかもしれませんが、その目的は達し得るものと私は確信いたします。  国連加入等の問題については、昨日外務大臣からお答えをいたしましたから、私はここに申し述べないのであります。  安全保障条約及び行政協定が植民地的と言われ、不満を持つてお話でありますが、改正いたすべきものは改正いたします。今年の四月に至つてその交渉の時期が再び参りますから、政府として不都合と考えるものは、その場合に改正いたします。  政局不安の責任は私にありということでございますが、政局不安の責任は、私もその一人であるかもしれませんが、各野党諸君もこの責任をわかたさるを得ないはずのものであります。(拍子)私は決して解散をほのめかしたことはございません。ほのめかすとか、あるいはまた、これをもつておどかすというがごときことは、解散を恐れる諸君の心理から出る夢想であろうと考えます。(拍手綱紀問題については、先ほども私はこの議場において申し述べましたが、峡府としては綱紀粛正には全力を尽しておるのであります。また、綱紀を乱したり、綱紀問題に関係するような事実が生じました場合、もしくは明瞭になつた場合には、政府は法に従つて厳罰をもつて処置いたしております。その他の問題については主管大臣かりお答えいたします。     〔国務大臣向井忠晴登壇
  15. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) お尋ねの不正産的経費ということは、防衛関係の経費をさすものと考えるのでありますか、(「その通り」)二十八年度の防衛支出金及び保安庁経費の合計は一千四百五十億円でございまして、前年度のこり極の経費一千八百億円に比しまして二百五十億円の減少となつております。二十八年度予算は、全般的に見て雄点を経済力の充実と民生の安定に置いたものでありまして、いわゆる不生産的経費については極力これが抑制に努めております次第でございます。  次に、公債政策インフレ財政に転換していると言われるのでありますか、今回は金融情勢を見ながら市中消化可能な範囲内で公債を発行することしています。すなわち、その面からはインフレの懸念はまつたくございませんで、物価騰貴や貿易不振の原因とはるようなことはございません。安全保障諸費は、経費の性質上支払は遅れてはおりますが、安全保障条約に基く米軍の駐留地を大都市中心部からその周辺地に転換せしめるという方針に基いて、日米両政府間で慎重審議の結果、逐次まとまりつつある移転計画を実施する場合、わが方の負担大体予定した鶴度の金額が必要な見通しでございます。目下のところ、不用額が出る見込みにはなつておりません。現在の未使用額を剰余金として一般財源に充当する考えはございません。  なお、いわゆる弾丸道路建設に安全保障費を、使用するということは考えておりませんが、現在座間及び御殿場にある駐留軍施設を連絡するために、東京・座間・御殿場間の道路の改修、鋪装工事の計画を調査中であることが、これがただちに弾丸道路の実施であるごとくに誤り伝えられておるものと存じます。  二十八年度の産業に対する財政投資の重点の第一は、電源開発及び外航船舶の建造であります。重点の第二は、農林漁業及び中小企業の振興にあります。この投融資総額は千二百三十億円であり、来年度の財政投融資計画は、基幹産業及び中小企業等に最も重点を置いて、計画的に生産増強、経済の発展の実を上げんとするものであります。民間外資の導入につきましては、政府は、昭和二十五年外資に関する法律制定以来その促進をはかつたのであつて、今日まで、民間外資の導入は、技術援助、株式、受益証券の取得、借入金等について相当の額に達しております。さらに、わが国としては、今後国際復興開発銀行及び米国輸出入銀行からの外資の導入についても、これが促進に努めて上り、この方面からの外資導入を期待しております。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  16. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 三宅君から、政府食糧増産計画が財政的の理由で壊滅に瀕しているのじやないかというお話でありますが、決して壊滅いたしておりません。土地改良等に要する費用は、これは国家の財政上とにらみ合わせて、われわれが最初考えた額よりも少くなつておることは事実であります。しかし、食糧増産計画は、土地改良のみならず、これに付随いたしまして、耕種の改善、あるいはまた農薬等を、適宜に使いまして、そして食糧の増産は十分いたす覚悟を持つておるのであります。また食糧自給促進は今までやつておりましたが、食糧自給促進法を提案する準備を進めておりまして、今議会には提出する予定でございます。しかもまた、この中には、あなたのおつしやるように大きなものは、これを国で施行するのは当然であります。しかし、あなたの考えのように地方が補助でやる事業に対しては廃したらどうかということにつきましては、やはり地方の土地改良に対する意欲を増進せしめるために、これを存続する必要があると考えるのであります。但し、この監督その他につきましては、あなたの御指摘の通り、十分これは改善しなければならぬと考えるのであります。  なおまた、有畜農その他についてのお考えでございましたが、私の食糧増産の計画は、この有畜農のみならず、あるいはまた林産物、あるいはまた海産物等まで考えておるのであります。単に有畜農のみではないのであります。  なお、自由党が、農村政策に対しましては、都市資本の支配をさせるように今やつておるのではないかというお話でございますが、決して私たちはさような考えを持つていないのであります。  今私たちのやつておりまする澱粉の買上げなり、あるいはビート糖の買上げなりを御指摘のようでございますが、この農村生産物の価格の安定は、われわれの年来の希望でございます。そこで、今国会におきましては、この案を整理して提出いたし、農村経済を真に安定せしめるように努力する所存でございます。  また、肥料の問題につきましては、社会党の諸君のおすきな国家管理につきましては、われわれはまだ考えは持つておりませんが、しかし、先ほども松村氏に対してもお答え申し上げた通り、この肥料の問題は根本的に検討を加えなければなりませんので、総理大臣を主宰とする委員会において、目下これを慎重審議中でありまするので、案を得まして、これに対してわれわれは案を見ましてから慎重にやりたいと思うのであります。なおまた、この肥料価格につきましては、先ほども申し上げました通り価格の安定帯をつくり、そして農村の犠牲において輸出をされないように、十分われわれのできるだけのことをいたしたいと思つておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  17. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  化学肥料、特に硫安につきましては、昨年夏以来滞貨が累積し、これを放置いたしますと、生産制限等を引起して、ひいて生産の減少を来し、価格の騰貴を来すことにも相なりますので、やむを得ず、昨年末、滞貨分の輸出を強行いたしたのでありまするが、この分に関する損失は、これはたな上げを行うことにより、将来消費者にその負担が転嫁されないように措置するつもりであります。当省といたしましては、将来硫安コストを国際競争にたえ得る線まで引下げることを目標といたしまして、拡大した生産規模における需給の均衡をはかり、恒久的な合理化方策を推進いたしますとともに、コスト高の大きな原因である高炭価の引下げ方策につき鋭意努力中であります。なお、化学肥料に関しまする基本的事項を審議し、公正適切な方策を確立するために、すでに経済審議庁に肥料対策委員会を設け、審議を開始しておりますので、政府としては、その結論に応じまして適当な処置をいたしたいと考えており、ただいまのところ、政府は国営ないし国家管理の意思を持つておりません。(拍手)     〔国務大臣犬養健君登壇
  18. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えいたします。  警察組織を改正して、地方行政が反動化しちやいかぬ、また逆コースをたどつてもいかぬ、警察国家をつくるというようなことになつては非常な不幸だ、こういうお話でございます。その点においては、まつたく同一の意見を持つております。私は、つたない者でございますが、警察組織改正に際しまして一瞬苦心をいたしておりますのは、いわゆる警察国家にならないという点を一番苦心しているのでございます。国の内外の不安状態に対して、今の警察組織で、はたして国民が安心しているかどうかという問題について再検討すべきときが来たという意味で警察法の改正をやつておるのでございますが、そうなりますと、まず警察の能率化ということをはかるのでございますが、能率化ということだけに頭を熱中させますと、力の過度の集中ということがあり得ますので、この点をどうやつてチェツクするか、これをただいま企画中でございます。いずれ御審議を願いたいと思います。また、警察官がみずからの与えられた力に対して謙虚な気持になつてみずから甘んじて別の法の抑制を受けるということも必要であると思いまして、この点も企画中でございます。  次に選挙違反のことでございますが、大物だけをのがしているということはございません。いずれこれは事実が三宅さんに対して証明いたすと存じます。岡崎大臣の選挙違反でございますが、ここに御本人がおいでになるのでございますが、ただいまの経過では起訴に至らないのであります。ただ出納責任者の金子何とかいう人が……。     〔「なぜつかまえないのか」と呼び、その他発言する者多し〕
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  20. 犬養健

    国務大臣(犬養健君)(続) まだ逃走しておりまして国警は鋭意これを捜査しております。出納責任者が出て来て取調べを受けるまでは不起訴処分にいたしません。従つて、現在は起訴留保にいたしてある次第であります。御了承願います。(拍手)     〔国務大臣本多市郎登壇
  21. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 義務教育費全額国庫負担法の確立の必要につきましては所管大臣から御答弁があることと存じますが、これが地方財政行政にどう影響するかという点について御答弁を申し上げてみたいと存じます。平衡交付金から義務教育費全額国庫負担の金額を分離いたしますにつきましては、今日基準財政需要額に基きまして分離いたしておりますので、この面からの地方財政に対する圧迫はないまのと考えております。さらに、市町村の行政の総合的運営についていかに影響するかということにつきまして研究を進めたのでございますが、この点につきましては、文部大臣から任免権の委任を受けた市町村教育委員会が市町村長と協議してこの任免権の執行に当るということになつておりますので、この面においての地方行政を害する影響はないものと考えております。  その他につきましては文部大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪君登壇
  22. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。義務教育は、御承知の通りに国の責任でございます。そこで、私どもは、この一番大事な義務教育をやつてくだすつているところの教員の待遇、すなわち身分の安定ということが一番心配なのであります。今回計画いたしましたのは、地方の山間僻地におる教員に対しましても、国立学校の教員と同待遇をして、安心して義務教育に従事していただきたい、こう考えてやつたのでございます。御承知の通りに、今国家のために一審崇高なるところの聖職を担任しておるのは小学校、中学校の教員でございます。その教員が、地方財政による幸、不幸によつて、あるいは昇給がストツプするとか、十分なる待遇が得られぬということは、私は日本の義務教育上実に慨嘆にたえないということを考えております。半額国庫負担というものができましたゆえんは、平衡交付金ではどうてもそういうような貧弱市町村——貧弱とまでは行きませんが、府県におきましては十分なる給与ができないから、ひもつきの給与にしてくれ、こういうことが原因であつたのであります。そこで、国会において、昨年これを半額国庫負担とすることになつたのであります。そこで、私といたしましては、半額ではなかなか十分でないということは、昨年の春、私が自治庁の長官であつたときに言明して、全額を希望する、全額ならすぐ賛成してもよろしいということをはつきり申し上げておつたのであります。そこで、この新内閣におきまして、私が文部大臣になりました以上は、信念といたしまして、山間僻地の教員にも十分なる待遇ができるように全額を負担するということがいいと考えて、あえてこれを実行することになつたのであります。(拍手)そこで私はただ単に教員の身分を安定するばかりでなしに、今後義務教育は国家責任である、同時に、憲法第二十六条に、義務教育は無償とするという法文がありますので、今まで考えられておりましたところの、月謝だけを負けて、そして無償とするとい意義には賛成いたしませんで、もつとたくさんの義務教育費財政の許す範囲内において、できるだけ義務教育に十分なる力を国家が注ぎたい、こう考えておる次第であります。御答弁いたします。(拍手
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 和田博雄君。     〔「官房長官の答弁を求める」と呼び、その他発言する者、離席する者あり〕
  24. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 和田君に発言を許しましたが、三宅君から再質問があるそうでありますから、しばらくお待ちを願います。三宅正一君。     〔三宅正一登壇
  25. 三宅正一

    三宅正一君 私は、あれだけ大きな声で名前をさして質問いたしましたのに、官房長官は、何を聞いたかわからないからというお話でありますので、再質問をいたします。  政府占領行政行き過ぎに関する是正として考えておる諸方策が、民主主義の根幹に触れた逆コースであるという一つの例といたしまして、官僚的な言論統制を意図した情報局の設置も、警察法の改正、その他義務教育費全額国庫負担等と同じように、意図は、いわゆる国家公務員にすることによつて教員の政治行動の自由を剥奪したり、あるいは思想警察的な言論統制的な逆コースの一つの体系ではないかという意味において官房長官の所見を伺つたのでありまして、その点について官房長官より詳しく御答弁を願いたいのである。  しこうして岡野文部大臣及び本多国務大臣の答弁につきましても、私の質問と大きく食い違つておりますが、この点については、予算委員会等において他の同僚から再質問をしていただくことにいたします。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  26. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。政府において言論統制の意思があるのではないかという御質問のようでありますが政府におきましては、言論統制の意思は毛頭ございません。私は、今日新聞紙法すらない状態におきまして言論統制はできないと思います。それすらできるとお思いになるのは、私はむしろ今の新聞雑誌等の編集首脳者に対して軽視されるのではないかとすら考えております。
  27. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 和田博雄君。     〔和田博雄君登壇
  28. 和田博雄

    ○和田博雄君 私は、昨日本議場において行われました総理大臣施政方針演説並びに関係各大臣の外交、財政、経済に関するそれぞれの演説に対しまして日本社会党を代表いたしまして、若干の質問を試みたいと思うのでございます。     〔副議長退席、議長着席〕  今日の国際情勢を動かす一番大きな要因の一つは、アメリカの世界政策と、これに対します共産圏及び非共産圏の国々の反応であることは、言うまでもないことでございます。それゆえにこそ、新たに成立しました共和党政権が、その内外の政治の基本方針をいかに具体化し、いかに政策化して行くかは、世界各国の注視の的であると私は考えるものでございます。(拍手)もちろん、アイゼンハウアーも、新国務長官に就任しましたダレスも、外交方針の基本線が政権の交代によつてかわるものではないということは今までもしばしば確言いたしております。しかしながら、その遂行の具体的過程において、重点の置き方が、おのずから民主党の政権とアイゼンハウアーの共和党の政権との間に、共和党の伝統から考えまして、そこに多少の差があることは考え得るところでございます。たとえば、トルーマン政権のソ連に対してとつて来た封じ込め政策を巻き返し政策に切りかえるがごときは、その重要なるものの一つであろうと思います。(拍手)  しかして、今共和党政権が直面しておりまする世界的な事実は、ヨーロツパにおける彼らの封じ込め政策の失敗であり、第三次世界大戦の危機が一応遠のくかに見えるとともに露呈して参りました西方陣営内における矛盾の相剋、ザール問題を契機とした独仏関係の悪化を中心とした、アメリカが昨年行つて来たヨーロツパ防衛共同体の樹立の危機であり、植民地における民族運動のほうはいたる勃興であり、再軍備反対の傾向の増加でございます。アメリカが年間四百八十億ドルの国防予算をもつてしてさえなお維持することのできなかつた世界経済の行き詰まりであり、あるいは共和党のアジア第一政策、援助費打切りに対する西欧側の一方的な不安であり、ことにアジアにおいては、日本をその中心として、押し返し政策の具体化に対して国民の抱いている大いなる不安であります。  かかる世界情勢、アジア情勢のもとにあるだけに、ダレス国務長官が、去る二十七日、アメリカ本国において、ラジオやテレビを通じて初めて行つた外交演説はきわめて重要でありまして、軽々にこれを看過することのできないもののあることを、私は感ずるのでございます。(拍手)はたせるかな、二十八日発のAFPの報道によればアメリカの消息筋では、この演説について、これは新政府が朝鮮、インドシナ戦争の終結を目ざす幾つかの軍事計画を暗示したものであると考え、その内容を次の五点として推測いたし、行動いたしております。一、より多くの韓国軍及びヴェトナム軍師団を装備する、二、より多くの国府軍師団を装備する、三、台湾の中立化措置を解除し、国府軍が中国本土を攻撃できるようにする、四、北鮮に対する空中攻撃を強化し、事態によつては満州にも行動する、空海軍により中国沿岸に効果的な封鎖を実施する、五、今春朝鮮の共産軍陣地後方に大規模上陸作戦を行い、現戦線よりも保持しやすい北緯四十度線沿いのマツカーサー・ラインに戦線をしく、というのであります。  これらの項目は、いずれも昨年の暮れにおいて、アイゼンハウアー大統領と会見したマツカーサー元帥の進言内容として巷間に伝えられているものと、多少は異なつておりますが、その志向するところの方向においてはまつたく同一なるものでございます。そして、これらの項目は、かつて朝鮮事変が第三次世界大戦への発展の契機となるものとしてイギリスの猛烈なる反対にあい、遂にマ元帥罷免の原因となつた事項を含んでいることは、私たちの容易に気づくところでございます。あるいは、これらの事柄は単なる情報にすぎないかもしれません。しかしながら、ダレスの演説から、彼の志向する方向が何であるかは、私たちには容易にくみとれるように考えられるのでございます。すなわち、それはソ連侵略脅威を事新しく強調することによつて日本の再軍備を促進することであり、アジアにおける反共同盟へのより一層の接近をはからんとする者と考えられるのであります。このダレスの志向するところ裏書きするがごとくすることがあわただしくとくに、年初以来、一連の要人があわただしくわが国に去来しております。李承晩大統領の訪日、同氏と国府駐日大使との懇談、葉外交部長の来日、芳沢国府駐在日本大使の帰国等々、一連の現象でございます。  かつて、F・D・ルーズヴエルトは、世界的な恐慌を克服するために初めてホワイトハウスのあるじとなつたとき、われわれが恐れなければならないないものは、ただ一つ、それは恐怖そのものであるということを言いました。ダレスは、人を恐怖に陥れることを、その常套手段としておるようでございます。真空理論をかつて持ち出して巧みに日本人の心理の盲点をついて日本に安全保障条約を占領下において締結させ、今また事新らしく侵略の危険を叫んで、再軍備の促進と太平洋反共同盟べの道を暗示せんとしておるのであります。私は、吉田総理のごとく、かかる状況を見まして、ダレスが国務長官に就任することによつてアメリカと日本との関係の将来に新しい希望を感ずるよりは、むしろヨーロツパにおけるところの防衛態勢が困難になればなるだけ、アジアにおける巻き返し政策が具体化されて日本に対するアメリカの要求は熾烈をきわめて来ることを恐れるものの一人でございます。(拍手)  そこで、私が吉田総理にお尋ねしたいのは、アメリカ共和党の外交方針である、ソ連に対する巻き返し政策内容が、以上のごときものとして推測されるとき、ソ連のインド案拒否によつて長期化を予測されるところの朝鮮事変は、その解決を一体促進されると考えられるのか、あるいはこれをますます長期化して行く方向に持つて行くものと考えるのか、朝鮮事変に対するところの見通しを、私はまず第一にお聞きしたいのであります。(拍手アジアにおける平和、日本における平和は、朝鮮において戦乱が続けられている限り、これわれわれとしては期待すことができないのであります。吉田総理は、この点に関し、今まで何ら明快なるところの見通しを、この議場において国民に発表したことはないのであります。  第二に、極東政策の具体化によつて当然予測される、以上述べた日本の再軍備や太平洋同盟に対するアメリカの働きかけに対して、吉田総理はどういう態度をもつて臨む方針であるか。この点は同僚の三宅君が聞きましたが、私も再びこれを繰返して、総理の明快な答弁を求めるものでございます。  質問の第二は、経済政策に関するものでございます。政府は、現在における日本経済の状態を朝鮮ブームの中だるみによる調整過程であると、池田君以来規定し続けて参つたのであります。しかしながら、事態はもつと深刻であり日本の不況は世界の不況につながるものであり、恐慌の戸口にあるといわねばならないのであります。(拍手)昨日、小笠原長官は、事実の前にはいかんともすることができず、国内情勢の分析において、日本における産業活動の一般が停滞状態にあることを率直に認めざるを得なかつたのであります。(拍手)  第三次世界大戦の遠のくことによつて、各国間の利害の調整の重要さがますますましてきた来ることは、各国が経済の拡大と自国の生活水準の低下を防ぐ意味からいいましても、貿易面における資本主義国間の競争のますます激甚になることの必然を物語つていると思います。去年の十一月の末より十二月の十一日にかけてロンドンにおいて開かれましたイギリス連邦首相経済会議は、一九三二年に開かれましたオタワ会議以来最も重要な経済会議といたしまして、世界の注目を浴びたものでございます。会議内容は、ドル不足の問題、ポンドの免換制実現の問題、開発計画などが討議されたのでございますが、何ら具体的な結論には到達せず、共同のコミユニケを発表するに終つております。しかしながら、私は、一九三二年のオタワ会議の場合と異なり、ここに一つの大きな世界の経済の動向を発見するのであります。  イギリスが再びブロツク経済の方向に歩まんとする点に関しましては、集まりました連邦各国はこれに同意をいたしておりません。そうしてむしろ参加国の意見は、貿易の拡大をこいはかることについて意見の一致を見ておるのであります。このことは、私はきわめて重要なことだと考えるのであります。もちろん、かかる結論が出ましたのは、第一次世界大戦のあとにおける英連邦各国の地位と利害と、第二次世界大戦のあとにおけるそれとの間に大いなる差のあることはもちろんでありまするが、ブロツク経済に立てこもつて行くことはそれぞれの市場をますます狭くすることであり、やがては第三次世界大戦の勃発への道を歩むものにほかならないという第二次世界大戦のとうとい経験から、各国がこのことを学んだのだと私は思うのでございます。しかしながら、私は、約一箇月余の準備を整えて経済会議を開き、何とかして自国の貿易の進展をはかり、国の再建をはかつて行こうとするイギリス保守党のこの熱意に対しては尊敬の念を禁じ得ないのであります。  ところが、ひるがえつて日本吉田内閣を見てみまするときに、貿易の問題について経済発展の問題について、その無能ぶりはまことに驚くべきものがあるのであります。西欧諸国におきまする貿易問題は、いろいろの観点からこれを観察することができるのでありまするが、結局アメリカのどうしても同意することのできない策であり、アメリカの援助がもしもないならば、これは東欧との間における貿易を開いて行くことが残された唯一の道であるということにかわりはないのであります。  昨日の演説において小笠原長官は、国際経済情勢の分析をするにあたりまして、イギリス連邦首相経済会議に触れますると同時に、中国の貿易にも触れておられるのであります。そして特需やその他特別の収入を期待し得る間に、長期的な観点から、国際的な視野に立つて、諸般の施策を総合的、重点電点的に実施し、日本経済の自立を達成したいと述べて、この構想のもとにおける重要施策の第一に貿易の振興をあげ、経済外交以下数箇項目を羅列いたしておるのであります。しかしながら、これらの方策は、いずれも個別のものではなくて、深い関連を持つものであり、その背後に総合的な計画を持つのでなければ、昨日の小笠原長官の演説そのものが私に与えました印象と同じように、単なる希望的な願望であり、一片の作文であり、問題の提起にすぎないのであります。(拍手)  こまかいことは、私は委員会に譲りますが、小笠原長官に聞きたいことは、昨日るる述べられた諸政策基礎になる総合的な経済計画を、はたしてお持ちになつておるのであるかどうか。日本の経済において、今まで自由党のとつて来た経済政策が、まつたくでたらめであり、自由放任であることに対する反発と嫌悪とは、今や日本の財界や産業界においてすらこれが瀰漫しておるのであつて、最も長期計画を必要とし、最も合理化を必要とする産業界自体が、すでに日本の経済の売居のための長期の総合計画を求めておる事実にかんがみるときに、昨日小笠原長官がるる述べられた多数の項目を、ほんとうにこれを実行に移し、効果をあげるためには、政府責任をもつて総合的な経済計画を立てるべきでおり、また当然持つておるべきだと思のでありますが、あれば、これを示していただきたいと思うのであります。  そして、第二点は、昨日の項目を聞いておりますときに、この羅列された項目の実施は、もはやすでに自由党政策のもとでは実行されないものを多分に含んでおるのでございまして(拍手肥料その他の国営のみならず、あるいは炭鉱、鉄鋼等における重要産業の国家的な管理等の機構を伴わなければ効果をあげ得ないように思うものが多々あるのでありますが、政府は、はたしてこれらのことを実行する意思があるのかどうかをもお聞きしたいのであります。(拍手)  第三には、イギリスの連邦首相経済会議の結果が、日本に対していかなる影響があると政府考えておるか、この点も、ついでに聞いておきたいと思うのであります。  次に私の聞きたいことは、これらの経済貿易政策を実行して行く上の前提条件として、政府は経済外交を盛んにすることを申しておるのでございます、しかしながら、経済外交は、その前提としては、その国がいかなる外交方針をとるかに依存することがきわめて大きいのでございます。(拍手)相互の信頼がなくして、どうして経済外交が成功するでございましようか。自由党のとつておる外交方針は、アメリカ一辺倒の外交方針であり、決して平和を希求し、戦争を避けんとするところの中立外交ではないのであります。(拍手)そして、日本において特に関係があり、また政府の最も力点を置いておると見られるところの東南アジア諸国は、いずれも中立政策をその外交方針の基本といたしておるのであります。(拍手)それゆえにこそ、今まで自由党内閣のもとにおいて、緒方官房長官その他経済使節がアジア諸国に多数行かれましたが、何ら業績についてはわれわれは聞くところがないのであります。(拍手)経済外交を推進せんとするために、政府はこういう点をいかして調整して行ごうと考えられておるのか。また、二十八年度の予算を見まするときに、これだけ政府が重点を置いておるところの経済外交に関しては、予算的な裏づけがほとんどないのであります。(拍手予算的な裏づけなくして経済外交をいかなる方法によつて、——単なる外国の好意にだけ甘えて行こうとするのでございましようか。この点について、私は政府の所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)  第三は、占領政策行き過ぎについてでございます。昨日、吉田総理は、その施政方針演説におきまして占領中の施策の行き過ぎを是正するのは国の自主性のために当然なことであるということを言いまして、警察法の改正や公共的な性質を有するところの重要産業の争議に対する制約を加えることを内容とした法案の今期国会提案を述べております。独禁法の改正もまた伝えられるところでございます。諸君も御承知のように、日本占領政策は、その前半と後半とにおいては大きな変化を来しております、日本が再び軍国主義化することの根を絶つて封建的な基礎を破壊し、日本を、民主化することの政策に重点を置いた前半と、世界情勢の大きな変化、ことにソ連、アメリカとの関係の変化によつて、アメリカの世界政策の一環として、アメリカ自身が反動化するとともに、日本の民主化はいつしか等閑に付せられて再び逆コースヘの道を歩み始めた後半期とでございます。(拍手)われわれの民主主義が与えられたものであつたにしても、私たち国民は、このために高価な代価を払つております。民主主義は、今後みずからのものとして完成して行かなければならないことは、諸君も同感だと思うのでございます。経済民主化の支柱の大きな一つは組合運動の自由であり、一つは、日本を再び財閥や少数の独占資本家の支配の下に置かないために、あるいは一般の消費者の利益を独占の侵害から守るために、独占を排除することであります。私は、公正なる自由競争を本来その経済政策根本理念としておるはずの自由党が、その立場からして、今度提案されんとしておるような占領政策行き過ぎの是正をやることは、まつたく自己矛盾ではないかと考えるのでございます。(拍手)独占資本が、たとえば現下の肥料問題において見まするごとく、きわめて不合理な方法でタンピングをやり、内地の農民を搾取しているときに、このことには目をおおつて、もつと農民をしぼりとりやすいものにしようと願うとでもいうのでございましようか。去年の冬行われました炭労争議の場合において見ましたごとく、高率の配当を続けながら、みずからは団体交渉はこれを拒み続けてようやく開かれた交渉においてさえ、前国会において勝間田君が指摘したごとく、賃金の四形の切下げ案を固執している炭鉱独占資本家の態度こそが、むしろ是正さるべきものではないでしようか。(拍手)  安全保障条約や行政協定の締結以来、平時経済の日本の中に、準戦時的な要素が、防衛関係予算を中軸として介入して参つております。日本経済の一部は、すでに特権的なアメリカの基地経済の占むるところとなつておるのでございます。防衛生産における出血受注や、管理工場における労働者に対する強大な管理権の示すがごとく、戦時的な経済は労働者の自由を最も忌むものでございます。事実上の軍備態勢が進行して行くにつれまして、労働運動に対する制約を、あるいは公共の利益の名のもとに、あるいは占領政策の是正の名のもとに、そしてそのための中央集権化の機構をつくらんとして行こうとするのが、今度の政府のとらんとしておるところの政策の真髄でございます。(拍手義務教育費全額国庫負担の問題もまたこの政策の一環であると私どもは信ずるのであります。 政府が民生の安定、治安の確保を真剣に考えているならば、政府は、労働階級の生活の安定と労働意欲の増進のために、利潤にこそ制約を加え、他面においては最低賃金法を制定して、所得の分配の公正を期することこそが、真に私は民生安定、生活安定の方法ではないかと考えるのであります。(拍手)労働大臣は、最低賃金法を制定する意思があるかどうか。また、伝えられるところの労働法の改正の具体的な内容をお示し願いたいと思うのであります。  次に財政金融政策について、主として向井大蔵大臣に質問いたしたいと存じます。  昭和二十八年度予算の特色の一つは、吉田内閣が従来とつて来ました金融と財政との両断的な分離、これをきつぱりとわけ、財政は財政、金融は金融としてやつてつた方針を一擲して、むしろ金融と財政とを通じて弾力性ある施策の運用をはかるべきだといたしまして財政金融の調整的の立場をとつて、いわゆるドツジラインを放棄した点にあると思うのであります。それゆえに、二十八年度予算の運営の成否いかんも、この点にかかるところが多いのでございます。そうして、この点に関する政府の施策を見ますときに、民間の金融機関については、貯蓄増強であるとか、公社債の消化、日銀依存の脱却、あるいは資金融通の重点的な配分等、民間に要請するところは、すべて民間の自主性を認めて、これを要求しておるのであります。しかしながら、現在における金融資本の支配の機構の中において何らの権力もない政府が、この自主的な手段にのみ訴えて、はたして財政と金融の調整を完全に達成することができると思つておられるのでありましようか。(拍手)私は、この調整が成功しない場合には、本年度予算の中に含まれた多くのインフレ要因が現実に活動し、中小企業や農民や勤労階級がインフレのために塗炭の苦しみを受け、インフレによる収奪の結果が目に見えるようでございます。私はこの金融と財政との調整については、政府がもしも国家的の規制を考えておるならば、その内容を示していただきたいのでふります。経済分析においてとつておるその態度、それから来るところの政策を論理的に批判しますならば、実際この予算インフレにならず、かつまた政策の実現を期するためにも、私はもはや自由党の限界を越えた手段を用いるのでなければその実現を期することができないと思うのでございます。(拍手)  第二は、もうすでに前の質問者が聞きましたので、簡単に触れておきます。それはこの予算の性格が依然として軍事予算であり、インフレ的の要因を多数含む予算であるがゆえに、経済の施策の点について、常に出たとこ勝負をやつておるところの自由党のもとにおいては、インフレの危険が非常に多いという点でございます。この点につきましては再び質問を繰返すことをやめまして、私は先に進んで行きたいと思うのであります。  最後に、私は岡崎外相に対してお尋ねをしたいのであります。昨日の外交方針演説におきまして、岡崎外相は、特に中立の問題に触れまして、中立論なるものは抽象的議論としては成立するのであるが、現実の事態においては、たといこちらが中立を唱えても、相手方はこれを認めないということになるのであるからこのような切実事実に直面することをせずに、あいまいな中立論を唱えても、それは自己欺瞞をするにすぎず、問題の解決とはらない、もしそれ国を共産主義の侵略に売り渡さんとして中立を唱え、防備の不必要を説くがごときはもとより論外であると断じて、さらに国際間における今日の争点は、共産陣営の侵略に対して自由国家群が集団的自衛をなさんとすることに発しているもので上つて、その規模は世界全体に及び、争いの中心は世界観の相違に根ざしてもる、そうして正義がいずれにあるかは明白であるのだから、この際わが国が自由と正義にくみしてこれに一臂の力を添えなければ、民主主義国家の結束は乱れ、世界平和の維持も困難にたる、その結果、さらに災いは日本の用全体に及んで来る、従つていたずらに中立を唱えて現実を逃避し、尽すべき義務を免れんとするがごときは卑怯であるばかりでなく、遂に平和国家を維持せんとする精神的支柱をも失つて国民をしてその行くところに迷しめる結果ともなる、よろしくわれわれは堂々立つて自由国家と提携し、その一員として世界平和の維持に尽すべきだと、この追随外交のマラソン選手は大みえを切つておるのであります。  私が長々と岡崎外相の言葉を繰返しましたのは、問題をただ明確にしたいからでございます。昨日、私はこの議場において岡崎君の演説を聞きながら、一人思い浮べておつたのは、日独防共協定が締結される前夜における日本の情勢であり、ヒトラリズムに追随これ努めておつた外務官僚の姿であります。リツペントロツフはより強力なダレスに今や変形し、大島公使はより変質的な岡崎外相にかわつただけであります。(拍手)事実に目をおおつて現実を逃避しておるのは、自主中立政策外交の基本方針としている、岡崎君のいわゆる中立論者ではなくてかえつて新しい神話をつくることの好きな、アメリカ一辺倒の岡崎外相なのであります。(拍手)  わが党は、立党以来、自主中立政策外交の基本方針といたしております。岡崎君は、なかなか巧妙な言葉を使つておるのでございまして、あいまいな中立論という言葉を使い、具体的な中立とい言葉をわざわざ避けておるのであります。そうして、中立論は抽象的な理論としては成り立つが、現実には成立しないし、これは自己欺瞞であり、問題の解決とはならないと言つております。しかし、諸君、理論というものは、本来、性質上抽象的なものであります。これは、近代科学の洗礼を受けた者ならば、だれでも承知しておるABCであります。(拍手)中立理論がそのまま現実において存立しないことはその通りでありますが、しかし、中立理論は現実になくても、中立政策は厳として存在しておるのであります。(拍手)第三次世界大戦を阻止しようとする強い意思や、再軍備政策に対する反対、国民生活水準の低下に対する抗議、国家の軍事的、政治的、経済的な従属に対する強烈なる抗議の現われとして、中立政策をその外交方針の基本としている国の現に存在することを、たとえばスエーデンやインドやフィンランドやビルマやの国々が、中立政策をとつている国として現実に存在していることを、岡崎外相は認めないのでありますか。(拍手)その中立政策をとり、中立の道を選ぶことこそが、現実の険しい世界情勢の中で決して現実を逃避することではなくして、われわれの平和に対する義務を尽す道であることは、単にわが社会党がこれを確信しておるだけでなしに、ラングーンに集まつた世界の社会党の大半、勤労大衆を代表するところの社会党の大半の一致しておるところでございます。(拍手)  平和国家を維持しようとする精神的な支柱を失つておればこそ、近代の進歩した兵器のもとにおいては役にも立たぬ竹やり的な軍備という物的な支柱を求めて困難な外交は一切これを避けて、安易なアメリカ一辺倒の追随外交を事として、尽すべき義務を尽していないのは、日本の国をこのような状態に1経済的にも政治的にも、かかる従属的な状態に陥れた岡崎外相その人ではないでしようか。(拍手)中立論者ではなくて時の政権を担当しておる吉田内閣そのものであると私は思うのであります。中立の可能、不可能論をまず掲げて二つに割切つてしまい、米ソ戦争を不可避なものに近い蓋然としてこれを前提にして、これを避けるために再軍備をしなければならないという矛盾の論理を用いることは、世界における中立反対者に共通した特徴であります。岡崎君の論理もまたこれと同様なのであります。しかし、一国の外務大臣外交方針演説でありますだけに、われわれは昨日本議場において述べられた岡崎君の意見を軽々に黙殺することはできないのであります。外務大臣の言う、堂々立つて自由国家と提携し、世界平和の維持に尽すべき、その具体的な方法は一体何でありますか。唐突として中立論を出した真意は、今や日程に上らんとしているところの日本と韓国と台湾との反共同盟に対する外相のアドバルーンなのでしようか。それとも、総理を初め関係各大臣の演説に一貫して流れているところの反動的な底流の単なる現われなのであるか。私は、この四つの演説を聞いて、日本がまことに、ことに日本の勤労階級がきわめて重大な事態に直面していることを感ずるも亀あります。  以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 和田君にお答えをいたします。  私への質問は、朝鮮事変の見通しはどうかということでありますが、朝鮮事変については、それはアメリカの最近の輿論はもちろんでありますが、近来の米国国民の要望は、なるべく早く朝鮮事変を片づけてもらいたいという最も切なる、最も熱心なる要望が、各方面から、大統領に対して、あるいは新内閣に対して提出せられておることは、御承知の通りであります。また、現地における、朝鮮における国連の行動、あるいは米国の各方面の政治家あるいは軍人のその動きを考えてみましても、いかにこの朝鮮事変が米国にいて真剣に考えられておるか、その結末を急いでおるかということはよくかります。しかしながら、私といたして、この米国新内閣の対朝鮮政策もしくはダレス氏あるいはその他の演説内容について批評いたすことは差控えますが、これを要するに、演説内容を見ましても、また、していることを見ましても、この朝鮮事変をこのままうつちやつておけないという事態にあることは明瞭であります。ゆえに、米国政府としてあるいはまた国連軍としても、極力朝鮮事変に対してその終結を持ち来すことに努力することは、これは、予想はもちろんのことでありますが、容易に看取せられるところであります。しからば、そのために、日本にある圧迫あるいは要求をせらるるか、これは私は信じないところであります。日本に対して再軍備を迫るとか、派兵を求めるとかいうような要求は、これはいたさないことは明瞭であります。これ以上私が朝鮮事件についてかれこれ申すことは差控えたいと思います。また、占領政策の是正について、反動政策の現われになるというお話でありますが、これは今後政府が提案いたします各種の法案について御検討の上、さらに御説を承りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  30. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申し上げます。  最近の世界貿易は、お話通り、各国の国際収支改善への努力がはげしい輸出競争となつて現われておるのであます。その傾向は、アメリカの政策が援助より貿易という方向に向うにつれ、ますます激化するものと考えます。昨年の英連邦首相会議についてお話がございましたが、これは英連邦経済の改善を目標として行われたものとは思われまするが、あの後発表されたコミユニケを除いては、その内容は明らかではございませんので、コミユニケによつて判断をいたしますると、拡大貿易によるスターリング貨の交換制回復ないし多角決済制度拡充のため連邦諸国が最善の努力をすることを申し合せ、英連邦のインフレーシヨンの抑制及びドル収支の均衡のための経済計画の実施、世界貿易発展のための制限排除の国際協定提案等が申し合されておりまして、会議前に予想されたところに比べますると、むしろ貿易量の拡大へ向う明るい結論を出しておるのではないかとも考えられるのであります。もとより、この結果がただちに英連邦の輸入制限の緩和、あるいはボンドの自由交換制の回復をもたらすものとは考えられません。一面、東南アジア中南米等の市場における輸出競争はますますはげしくなることも予想されますので、わが国としても、輸出振興のためにあらゆる手段によつて努力いたしますとともに、日英貿易協定の締結その他貿易の障害除去について通商外交を促進いたしたいと存じます。なお、これはほんの一部でありまするが、来年度におきましては、市場開拓のために貿易あつせん所、プラント輸出振興のため等の相談室等を海外諸都市に施設するための予算を計上いたしてございます。  さらに、昨日申し上げました貿易量の拡大に必要な諸政策は、その目的を達成するために張力に推進して参りたい所存でございます。貿易量の拡大には、輸出商品、ことに重化学工業製品のコストの引下げ、品質の改善等が必要の条件でありまするので、産業の近代化、合理化をはかるはもとより、電力、石炭、鉄鋼等、原料価格の引下げ等によりまして、一日も早く基幹産業のコストの引下げをはかりたいと思い、これにつきましても所要の財政投融資が予定されておるのであります。私も、基幹産業については、将来国民経済上の要請から、多少の統制的措置を講ずるようなことが起ることなしとは考えませんけれども、これをお話のように国家管理の方式によること等については、ただいまのところ何ら考えておりません。また、貿易の長期計画を示せというお話でございましたが、今日の国際情勢におきまして、長期の貿易計画を樹立することは、率直に申し上げまして容易ではございませんが、政府といたしましては、昭和三十二年度において鉱工業生産の増加、電力、石炭、鉄鋼等の合理化を達成することにより、正常貿易への増大を見てほぼ三十二年には正常貿易だけで国際収支の均衡を得るという見通しを立てて、これに最善の努力をいたしておる次第であります。     〔国務大臣戸塚九一郎君登壇
  31. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。  最低賃金法制定の件でありますが、御承知のように、目下労使、公益三者の代表によつて構成されておりまする中央賃金審議会審議を煩わしておるのであります。同審議会も、回を重ねること二十回に及び、熱心に審議をいたされております。政府といたしましては、この審議会の答申をまつて、十分検討の上、善処いたしたいと考えております。  次に争議権の件についてお答え申し上げますが、政府といたしましては、昨冬の電産、炭労の両ストが国民経済及び国民生活に与えた、きわめて大きな損害と脅威とに考えまして、公共の福祉を擁護するために必要な最小限の措置を講ぜんとするものでありまして、決してわが国の民主化を阻害するようなものとは考えておらないのであります。なお具体的の内容につきましては目下検討中でございます。     〔国務大臣向井忠晴登壇
  32. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 昨日の財政演説において申し述べましたが、国際経済の情勢等から見てわが国経済の運営にあたつては、あくまでも堅実な経済施策の基調を保持して経済の基礎を樹立して行くことが必要であると考えます。これがために、現行為替レートを堅持し、国内物価国際物価に適応せしめ、全体として健全財政及び通貨安定の基調を維持して参りたいと存じます。財政、金融を通じて、施策の時宜に応じた弾力ある運営をはかることといたしておるのであります。来年度予算においては、ある程度蓄積資金の活用をはかるとともに、市中旧化の可能な限度において公債を発行し、民間資金の吸収、活用に意を用い、金融面の施策として、一層資金の吸収と二、の効率的運用に留意することが必要であります。今日、金融はある程度その弾力性を回復して来ておりまして、この基礎の上に立つて資本蓄積方策の強化、また日本銀行を通ずる信用政策の弾力的運営等により総合的な資金の調整に努力して行きますので、インフレの懸念はございません。資金の国家的規制を加える方策のようなことは必要はないと存じております。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  33. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ただいまの御質問は、中立という点についてと考えますが、その際、スエーデン、フィンランド、インド、ビルマ等の例をあげまして、ああいう国は現に中立をいたしておるじやないかというお話でありました。そこで、少し説明をいたしたいと考えるのでありますが、おつしやる通り、スエーデン等は中立政策をとつております。ことに例をスエーデンにとりますれば、第二次世界大戦を通じ、またその後におきましても、強く中立政策をとつております。しかし、当時の事情をよく見ますると、スエーデンは財政の許す限り強力なる軍備をいたしまして、もし中立を侵すものがあれば、国をあげてこれを撃退するという、強い意思と力を持つてつたのじあります。(拍手)現に記録によりますれば、ドイツはその当時八方に軍を出しておりましたために、スエーデンに向ける軍隊ではスエーデン側の軍備に対抗できぬとして、スエーデンを侵す考えをやめたと記してあります。(拍手)  そこで、この中立を守るだけの強い軍備のある中立論であれば話はまた別であります。(拍手)しかしながら、日本でただいま行われておりますのは、軍備のない中立論であります。そこで、和田君がもしこの点を論及されるならば、一体軍備を持つて中立をやるのか、軍備なしに中立論を唱えるのか、ことに日本のようなこの両陣営の尖端にある国で、手ぶらで中立論を唱えて、これが守り得るとお考えになるかどうか、この点が問題であります。(拍手)私は、さような意味で、昨日の演説中にも、あいまいなる中立論を唱えてもだめだ、こう申したのであります。(拍手)     〔和田博雄君登壇
  34. 和田博雄

    ○和田博雄君 再質問をいたしたいと思います。  あいまいなる中立論という内容が、武器を持つて、軍備をしての中立論であるかどうかということを岡崎君は言われたのであります。そして、中立政策を現にとつておる国としてはスエーデンを認めたのであります。事実、スエーデンは中立政策をとつておるのですから、いかに事実を隠蔽しようとしておる岡崎君でも認めざるを得ない第二次世界大戦のときにとつたスエーデンの中立政策は、もちろん今の世界情勢とは異なつております。しかしながら、スエーデンが中立政策をとつて来たのには、何も軍備だけをたよりとしてとつておるのでも何でもないのであります。百三十五年の間、国民の教育、外交官の訓練、国民の精神の高揚、すべてこれらの事柄を教育を中心にしてやつて来て、平和を維持するために、戦争を避けるために、みずからも侵略せず、みずからも侵略されない中立政策というものをとつて来ておるのであります。(拍手)  私たちは、今憲法において軍備を持つことを放棄しておるのであります。それは諸君も同じように認めた憲法であります。軍備を持たずに中立政策をとることは可能であるか不可能であるかという議論から、すぐに軍備の必要性を説くことの誤りであることを、だから私は指摘したのであります。中立をとろうとするならば、外交方針において、軍備がなくても中立をとり得るところの状態というものがあるのであります。それならば、私は逆に岡崎君に質問したいのであります。岡崎君は、軍備を持てば中立がとれると言うが、今諸君の主張しておるところの軍備は、一体軍備に値する軍備であると諸君は考えるか。今の軍備では中立が保てない。私は、今の軍備を持つても持たなくても、中立論をやる場合においては同じであると思うのであります。(拍手)その点を無視して今の軍備で中立が保てるという実証をはつきりとやつてもらいたい。再軍備論者は、その点には何も触れずにおいて、そうして再軍備がなければ中立がとれないという大きな論理の飛躍をやり、また現実にそれを主張するのであります。私たちは、そういうことをやる前に、軍備を持たずに中立を維持できるような外交をやつてもらいたい。(拍子)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  35. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の申し上げることは、先ほどの点とどうもかわることはないように思います。中立を守る方針政策はありましても、現実にこの八千五百万の国民の運命を託されて、中立を唱えながら、いざというときにそれが守れなければ何にもならないのであります。われわれは、どう考えましても、これは和田君とは意見が相違いたすでありましようけれども、私の考えでは、中立というものは口先だけでは守れないと、かたく信じております。
  36. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) お諮りいたします。内閣から、土地調整委員会委員に青沼亜喜三君及び佐野憲次君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて同意するに決しました
  38. 久野忠治

    ○久野忠治君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明後二月二日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  39. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 久野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会