運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-27 第15回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

share
  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十七日(金曜日)     午後二時二十分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 松山 義雄君    理事 猪俣 浩三君       小林かなえ君    佐治 誠吉君       高橋 英吉君    福井 盛太君       松永  東君    大川 光三君       後藤 義隆君    長井  源君       井伊 誠一君    多賀谷真稔君       古屋 貞雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         国家地方警察本         部刑事部長   中川 董治君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         検     事         (大臣官房人事         課長)     宮下 明義君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 二月二十七日  委員田廣文君辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月二十六日  刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第一  二〇号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一一〇号)  (予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会要求に関する件  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第四六号)  人権擁護に関する件  戦犯服役者に関する件     —————————————
  2. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  まず第一に、戦犯服役者に関する件について調査を進めます。本件について岡崎外務大臣がお見えなつておりますので、まず外務大臣より報告を求めることにいたします。  その前にお諮りをいたしておきますが、本日は予算委員会におきまして総括質問があります。そこで大臣はその席を離れることが困難な事情にあるのでございますが、特に本委員会のために御出席を求めましたので、本日は委員長よりこれをただすこととし、他の委員質問は次の機会大臣出席を求めまして、詳しく御質疑を願うことにいたしたいと思います。  それでは岡崎外務大臣お尋ねいたします。昨二月二十六日の新聞報道によりますと、日本政府米国政府から、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の一部改正が今国会において行われ、その改正案に対しましてアメリカから平和条約第十一条の趣旨に違反しておるとの抗議を受け、その抗議に対して日本政府回答をしたと報ぜられているのでございます。新聞記事には相当詳細なことも書かれておりますが、この回答についてまず大臣から承りたいと思います。  これは対外的問題で相当影響するところも大だと思います。本委員会でも相当これに対して関心を持つておるのでございますが、速記は中止いたすことにいたします。  それから新聞社の方にお願いいたしますが、御退席は必要でないと思いますが、この内容について新聞報道をするにつきましては、御注意を願いたいと思います。よろしく御協力のほどを願います。  速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 速記を始めて。政府戦犯取扱いに対する今日までの努力は、非常に多とするものでありますが、今日いかような処置、努力を続けているか、その点を承りたいと思います。
  4. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これはいつも申しておりますように、大体巣鴨におる人に対する措置と、それから海外にいまだ抑留されておる、戦争裁判受刑者措置と二つの問題にわかれております。巣鴨におりまする受刑者に対しましては、平和条約第十一条の規定に従いまして、適格者に対しては仮釈放なり減刑なり、あるいは進んで赦免なりの措置がとられるよう努力をいたしております。たとえばただいまB、C級の人で巣鴨におります人は七百八十六名、そのうちに仮出所適格性を有する者は四百二十一名になつております。そのうちで中央更生保護審査会勧告に基き、すでに関係国申入れ済みのものは三百九十七名であります。従つて出所適格者のうちで、まだ審査中の者は二十四名でありまするが、そのうちの四名は本人から申請がないのでまだ手をつけておりません。従つて実際は二十名が審査中でありまして、三百九十七名が関係国勧告済みなつておる。これは仮出所だけでありますが、全面釈放というような問題につきましても、またA級戦争裁判受刑者につきましても、皇太子殿下立太子礼機会に、先方に申し入れたことは御承知通りでありますが、これにつきましても、関係国関係国同士でもつていろいろ協議をしておるという報告を受けております。従つてこういう問題につきましては、さらに今後も努力を続けて行く。同時に巣鴨にいる人のみならず、海外にいる人もそうでありますが、その家族で生活に困窮している人につきましては、これは法務省、厚生省と連絡いたしまして、適当な救済措置を講ずるようにいたしております。それから海外におる、これはつまりフイリピンとマヌス島にいるのでありますが、これらの人人につきましては、今までも随時機会を得ては、まず日本内地送還ということを要求して来たのは御承知通りであります。同時に、これは仮釈放というわけには行きませんが、減刑なり赦免なりの要求も続けております。これにつきましては、病気等でごく少数帰国した人はありますが、大部分はまだ現状のままでありますが、決して空気は悪くなつておりません。濠州にも大使がおり、マニラにも在外事務所長がおりまして、この方面からも連絡をいたしておりまするが、最近の空気は決して悪くないよう考えておりまして、遠からず何らかの結果を得ることを期待しております。またマニラにおりまする人たちにつきましては、当座の措置としては、家族等縁故者からの物資等の贈りものもありまして、最近では比較的食物等も改善されて来て、本人たちもかなり待遇には満足しつつあるよう報告をごく最近聞いております。マヌス島につきましても、赤十字等を通じて適当に慰問品等を送る措置を講じておりますが、要するに海外におる人につきましては、減刑とか釈放とかいうことも当然やらなければなりませんが、まずこの方で第一にやりたいと思つておりますことは、内地において服役という方面に主力を注いで努力をいたしております。
  5. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 そのマヌス島の見通しはどうでしようか。
  6. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これはいろいろ申し上げたいのでありますが、いつでしたか昨年のそう遠くないときでしたが、たしか外務委員会であつたと思いますが、見通しが非常に明るいとか、あるいは死刑囚死刑執行はもうないはずであるとかいうようなことを政府側の者が申したために、かえつてマニラ新聞反撃を受けまして、一時非常に困つたことがあります。そこで私の申し上げるのは、希望があり、見通しは比較的明るくなりつつあるという程度でお許しを願いたいのでありまして、あまり申してまた妙な反撃があると、かえつて本人たちのためにならないと考えております。
  7. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 ありがとうございました。こまかい質問は次の機会にいたします。     —————————————
  8. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 次に人権擁護に関する件のうち、京都地方検察庁における人権侵犯問題について調査を進めます。まず政府より説明を求めることにいたしますが、政府岡原刑事局長出席ようでありますから、まず岡原刑事局長から御答弁を願います。岡原さんには京都地方検察庁におきまして、衆議院議員選挙に際して、選挙違反の疑いがある被告取調べにあたつて手錠のまま検事がこれの取調べをし、しかも手錠のまま署名捺印を強要したというような事実があるようですが、これらの事実についてその真偽並びに内容を御報告願いたいと思います。
  9. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、先般当委員会で問題にされました富山事件とも関連いたしまして、当方においてさつそく京都地検の方に、その間の事情を問い合せてみました。しかるところ、これに対しまして京都地検から報告が参つておりますが、その要点は、いろいろ事情はございましようが、大体お尋ねような事実がございます。  この中野武雄関係選挙違反につきましては、相当多数の被疑者が検挙せられまして、当時京都検察庁におきましては、この中野派のみならず、菊岡派市井派嶋崎派荒牧派川崎派等各派選挙違反が相前後しまして取上げられ、同時に調べが進行していた関係上、検察官京都地検のみならず、近郊からもいろいろ応援に行つてつた模様でございます。この中野関係事件につきましては、前田検事栗坂検事佐藤検事の三検事取調べに当つたのでございます。そしてこの三検事がそれぞれ被疑者を分担いたして捜査に当つたのでございますが、当時さよう各派選挙違反がたくさん相前後して検察庁に送られて参り、ほとんど時を同じゆうして取調べが進行した関係上、京都拘置所身柄を拘禁された者につきましても、それぞれ数名あるいは十数名検察庁身柄が送られまして、同時に調べがあつたというふうな事情でありました。その間、ある場合には検事から担当の付添いの看守に対しまして、手錠を解除するように申し入れたこともありますが、看守におきまして、自分の責任上困るというふうなことを申しましたり、あるいは現在かぎを持つて来なかつたというふうなことで、やむなく手錠使用のまま取調べ行つたものもありまするし、また中には、一人の看守が一人の被疑者に当ることができなくて、結局数名を一人の看守が見張るというふうなことの関係上、おそらくきゆうくつに考えたのだと思いますけれども手錠をかけたまま検事廷に置いて行つたというふうなこともあるようでございます。検事の方におきましても、取調べ内容が非常に簡単で、すぐに済むような場合には、ちよつと手錠をかけたまま部屋に入れて、そのまま若干の時間を調べたというふうな場合もあつたようでございますが、さよう事情はいかにもあれ、私どもといたしましては、かよう選挙違反等ような、多くは身分のある人たちに対しまして、さようなと取扱いをするということについては、遺憾の意を表する次第でございます。  なお本件につきまして、法規的な根拠といたしましては、現在監獄法の第十九条第一項に規定がございまして、「在監者逃走、暴行若クハ自殺虞アルトキハ監外ニルトキハ戒具使用スルコトヲ得」と相なつております。つまり拘置所から外に出た場合においては、戒具——その一つ手錠が入るわけでありますが、戒具使用することができるという規定があるだけであります。そこでその実際の取扱いにつきましては、従来明らかな訓令といつたようなものも出されておらず、ただ取扱い通牒といたしまして、刑事被告人及び被疑者相当地位身分のある者に対しては、戒護上特に慎重な注意を払うように、戒具使用についても必要なる限度にとどめ、濫用にわたらざるよう留意しろというようなことが古い通牒として出されていますし、また検事廷における戒具につきましても、これは直接手錠の点には触れてはおりませんけれども、逃げないようによく見張れというようなことが出されているだけでございます。従いまして私どもといたしましては、さよう通牒等が古い時代に出されたのみで、最近までその点についての新しい通牒が出されなかつたということについて責任を感じまして、矯正局とも打合せをいたし、近くこの点につきましてこの趣旨が徹底するよう通牒を出すつもりでございます。
  10. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 質疑の通告がありますからこれを許します。松岡松平君。  なお松岡さんに申し上げますが、今国家地方警察刑事部長中川政府委員が来ております。
  11. 松岡(松)委員(松岡松平)

    松岡(松)委員 岡原さんにお尋ねいたします。今の京都検察庁人権蹂躙の件でありますが、手錠を用いたことをわれわれは人権蹂躙だと言うのではないのであります。手錠をはめたまま取調べをし、手錠をはめたまま調書拇印を押さしめるということは通常やらないことである。通常やらないことであるのみならず、こういうやり方は各国とも拷問の一種とみなしているのは法学者の通説であります。こういう事件は久しく戦前から絶えておつたのにかかわらず、最近こういう事例がぼつぼつ出て来た。これは要するに権限の濫用であり、被告人に対する拷問であります。岡原さんから前会にも富山の際に御説明がありましたが、戒具を用いることは適当であります。また用いなければならぬと思うのであります。しかしながらかかる選挙違反よう事案において、これを警察または刑務所から調べ官のところへ同行する場合に、はたして手錠の必要があるだろうか。長く土地に居住し、あるいはその地域において相当の社会的な地位と名誉を持つている人が多いのでありまして、しかも同行中はまだしものこと、手錠をはめて取調べるということが個人の自由をはばむことは明らかであります。そこで問題にしております代議士中野武雄氏に対する取調べにおいて、今ここに名前の知れている者を申し上げます。中野武雄、それから谷次武夫高山信夫麻田勇平山本長太郎神田勇南健三斎藤源太荒木辰三田尻完一郎村田琢三、西村保鈴木和一郎林恵一郎永田清三郎鷹野卯一郎富岡仙太郎金谷常太郎八木隆一外約千客、この取調べにあたりまして、前田検事佐藤検事栗坂検事は、おのおのこれらの人人に対して手錠をはめたまま取調べを行い、なお拇印捺印の際にも手錠をはずしておらないのが多いのであります。中野武雄氏の場合においては、指印を押す際にようやく手錠をはずしたそうであります。いやしくも国会議員として長くその地位にあり、しかも当選したこの国会議員取調べにあたりまして手錠をはめて取調べるということは常識外の沙汰であります。このために体躯堂々たる中野氏といえども検事から非常な圧迫を受け、苦痛を感じたと言つておるのであります。いわんやその余の列挙いたしました十数氏においては、手錠をはめながら取調べを受け、しかも長時間にわたつてその取調べを続行され、拇印捺印の際においてなおかつ手錠をはずされなかつたということは、まさしくこれを拷問と言わずして何と言うか。これほどひどい拷問は私は近来にないと思う。今までのお話を承つておりますと、この事実、この警察官に対する取調べは十分行われておらぬと思います。ただ戒具を用いた用いなかつたという点を、私どもは問題にしておるのではありませてん。取調べ方法を言つておるのであります。つまり検察官が、取調べについてさような、人の自由を拘束し、身体の自由を失はしめて取調べ調書というものの信憑力をお伺いしたいのであります。かよう拷問によつてでき上つた調書を、法務当局におかれましては信憑力ありとお考えなつておりますか、これを信憑力なきものとしてお考えなつておりますか、この点についてもお伺いいたしたい。
  12. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 調書信憑力を失わしめる程度のいわゆる拷問脅迫等の事実の有無につきましては、それぞれ事件裁判所にかかりまして、裁判所においてそれらの事実についての具体的な判断をする際になすべきことではございますが、ただいまお話ような、少くともさような問題を引起すような状態のもとにおいて取調べが行われたという点につきましては、深く遺憾の意を表する次第でございます。
  13. 松岡(松)委員(松岡松平)

    松岡(松)委員 それでは前田佐藤栗坂に対して、法務当局としてこの事実をどういう方法によつて調べになりますか、これをお伺いしたい。
  14. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 ただいまの問題を調べるといたしますと、結局行政監督権発動の問題というふうに理解するのでございますが、この点につきましては、いずれどういうことになりますか、おそらく大阪の高等検察庁を通じて調査をすることになるのじやないかと思いますが、この点はまだ十分打合せはいたしておりません。
  15. 松岡(松)委員(松岡松平)

    松岡(松)委員 その取調べに対する対策並びに結果につき、最も近い機会に当委員会報告していただきたいと思うのであります。  次いで、国警刑事部長がお見えなつておりますので、お尋ね申し上げたいのですが、京都府の船井郡園部町におきまして、その警察が、中野後援会のメンバー約九名を、逮捕状なくして一齊検挙ような形でジープに乗せて警察に取運んでお調べになり、約数日間拘禁してこれをつつぱなしておるのであります。逮捕状なくして、しかも任意出頭にしては少し異例な方法であるのみならず、一齊に九名も連れて行かれておる、この事実はどうか。  それからさらに、これと関連いたしまして、南桑田郡の亀岡警察でも、約七名ほどの者を同種名目をもつて約一週間ほど拘禁しておられる。この手続は、逮捕状があつたかなかつたか不明でありまするが、内容はみな中野後援会に関する抽象漠たるもので、具体的犯罪事実をあげ得ない事項について取調べておる。いわゆる逮捕状濫発、つまり拘束の濫用であります。言いかえて申しますと、前に申し上げた方は、逮捕状なくして拘禁してお取調べなつたこと。第二点は、逮捕状はあつたらしいのですが、内容抽象漠たる一つ嫌疑、ただ抽象的なる嫌疑に基いてこれらの人々を拘禁しておられる。この事実についてお尋ね申し上げます。
  16. 中川政府委員(中川董治)

    中川政府委員 第一点で、逮捕状なくして拘禁したという事実を御指摘になつたのですが、ただいままで私たち連絡を受けて承知している事実においては、そういう事実は承知しておりません。ただいまお聞きいたしましたので、至急当該京都府につきましてよく調べてみたいと思います。調べた結果御報告申し上げたいと思います。  第二点の、逮捕状濫発の問題でありますが、これは私どもが非常に苦慮しておる問題でありまして、真実発見努力するという、努力ということは非常にいいことなんですが、真実発見方法といたしましては、なるべく強制力を用いない方法真実発見に努めて参りたい。証拠隠滅とか被疑者の逃亡のおそれがある場合におきまして逮捕状を請求するのでありますが、そのときにおきましても、慎重に、それを逮捕するにあらずんば真実発見が困難であるという見通しがついたものについてやつて参る、こういうふうに各方面連絡しておるのであります。ただいまお示しになりました該当事案につきましても、至急調べて参りたいと思つております。
  17. 松岡(松)委員(松岡松平)

    松岡(松)委員 これにあわせて国警に私の意見を申し上げておきたいのですが、前回にもこの種の問題をここでお尋ねいたし、かつ意見も述べておきましたが、今回の事件についても私がここでお尋ね意見を述べるゆえんのものは、実際全国に非常に人権蹂躙の事実が多いのです。そうしてその苦情が山のごとく持ち込まれておりますが、これだけの多くの人権蹂躙の事実があるにかかわらず、その人権蹂躙を犯した者に対する国警側上部から下部に対する監督としての調査が厳重に行われてないということを私は特に指摘したいのです。前に富山県の問題も指摘いたしましたが、監督権発動というものは不十分であります。国民選挙違反を犯した者が処罰されることについては決して苦情を持つておりません。すなわち、これは厳重になすべしということが国民の輿論になつております。しかしながら、その処罰人権蹂躙の問題とは別であります。処罰は厳にすべきでありますが、人権は擁護していただかなければならぬのであります。人権蹂躙という事実は、山のごとくあるのですから、国警当局におかれては、この際、少くとも国民が納得する程度において抜本的に問題をほじつていただいて、みずから積極的に処罰をするなり、戒告を与えるなり、ひとつ適切なる対策をとつていただきたいと私は思うのです。それがなされませんと、結局国民警察との間は依然として扞格ができておりまして融和が保てないのであります。こういう事案で、特に私がこの問題を提起して強く主張するゆえんのものは、結局警察国民というものは融和一体すべきものでありまして、決して水と油の関係じやないからであります。でありまするから、こういう問題が出たたびに、やはり当局におかれては上部監督権を十分に発動せられて、手数などをいとわないで、事態をよくお調べになりまして、真に人権を侵した事実があるならば厳に処罰をして、正しいものは正しい、不正なものは不正として国民の前に明らかにしていただくことを切に希望する次第であります。
  18. 中川政府委員(中川董治)

    中川政府委員 警察国民とのあり方についての御高説まことにごもつともでありまして、私どももさよう考えていろいろと研究いたして参りたいと思います。いろいろな人権蹂躙の容疑の点につきましては、十分調査いたしまして、人権蹂躙の事実がございました場合におきましては、懲罰に付するなり戒告を与えるなり、厳重に考えたいと思います。
  19. 高橋(英)委員(高橋英吉)

    高橋(英)委員 法務省当局お尋ねいたしておきたい。ただいま松岡委員から質問されました京都地方検察庁における人権蹂躙の問題ですが、いずれ詳細に的確に質問をし論議をしたいと思うのですが、とりあえず三点ほど質問をし、その質問に対する的確なる御答弁がただいまできなければ、慎重に調査をして御善処を願いたいと思うのであります。  第一に、手錠をはめて尋問をし、署名捺印せしめたというような事実、こういう事実を当局知つてつたかどうか。それから京都地方検察庁の方においては、中野君の選挙違反ばかりではなくて、選挙違反全体に対してこういうふうな取調べ方法がとられたのであるかどうか。また、ひとり選挙違反ばかりではなくして、すべての犯罪に対してこういう方法がとられているのかどうか、この点が第二。それから第三には、全国的にこういうことが今日行われているのかどうか。全国的に行われていないとするならば、なぜ京都だけで特にそういうことが行われたか。こういう点について御答弁願いたいと思う。
  20. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 第一点と第二点については、実はただいまちよつと資料がございませんので、十分調べた上で御返事をいたしたいと存じます。  第三点の、かよう手錠をはめたままで調べる例は全国的に見たらどうかという点につきましては、私の知つている限りでは、むしろ手錠をはめて調べるのは少いのじやないか、かよう考えております。ただこれは、統計的に見て何パーセントがどうという問題ではございませんで、今までの私どもの経験からいたしまして、多くは、選挙違反等については手錠等ははずして調べるのが原則である、かよう取扱いなつている模様でございます。
  21. 高橋(英)委員(高橋英吉)

    高橋(英)委員 第一点と第二点はお調べの上答弁していただくことになつておりますが、第三点についても、これは範囲も非常に広汎でありまするから、御調査相当の日数や手数がかかると思うのですが、こういうことは全国的に行われているのかどうか。行われているとすれば、単なる強力犯とか凶悪犯のみに対して行われているのかどうか。今の選挙違反などに対しても行われているのかどうか。ひとつこういうこともできるだけ御調査願いたいと思います。
  22. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 了承いたしました。
  23. 古屋委員(古屋貞雄)

    古屋委員 二点だけ御質問申し上げたいのですが、ただいま法務当局がお認めになつたところの、検事被疑者をお調べになるときに手錠をはめてお調べになり、しかも署名させたという事実は違法行為であるかどうかということについて、法務当局の見解をひとつ御明答願いたいと思います。
  24. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 これは先ほど申し上げました通り、適法、違法の問題でございませんで、妥当、不妥当という問題と私どもは解釈しております。
  25. 古屋委員(古屋貞雄)

    古屋委員 それからもう一つは、ただいま松岡さんからも御質問があつたのですが、私ども実際に弁護人として今日までやつて参りましたが、選挙違反には手錠をはめたまま取調べをするという場合がほとんどです。京都だけではございません。ほかの検察庁でもやつておるのでありますが、さような事実を法務当局承知しておるかどうか。
  26. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 先ほどお答えいたしました通り、私どもとしてはむしろ逆に、選挙違反等については、手錠などはかけずに取調べるのが原則だ、かよう承知しております。
  27. 古屋委員(古屋貞雄)

    古屋委員 さような事実がありますので、私弁護人として実際やつておりますからお尋ねしておるのですが、さような事実は法務省は初めてお聞きになつておるのか。さようなことが行われておるということを御推測ができるかどうか、その点を承つておきたい。
  28. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 これは先ほども申しました通り、法規的な根拠が明らかでございませんし、通牒その他で運用の余地があるようにできておりますので、さような場合ももちろん、あるいはあろうかということは推測いたしております。
  29. 古屋委員(古屋貞雄)

    古屋委員 法務省におきましては特に人権擁護局を設置されまして、人権擁護には特に御努力なさつておるようでございますし、しかも全国に人擁護委員会を持ちまして、基本人権の尊重がなされておるのでありますが、従来その問題によつて摘発され問題になりまする場合は、多く第一線におきまする警察官その他のこれと同類の人たちが行われておることが問題になつておりまして、いまだかつて検事に対してはさようなことはあまり問題になつておりません。私ども弁護士といたしまして実際に取扱つて参りました関係におきましては、こうした人権蹂躙の事実がしばしば検事によつて行われておる。この点につきましてただいま岡原刑事局長から、通達か何かの方法においてこれを防ぎ得る一つの手段があるとおつしやつておりましたが、今日までさような処置をなさらずにおられたその法務省の感覚——もし人権擁護をしなければならないという一つの熱意がありますならば、とうにさような処置はとるべきだつたと信ずるのでございますが、この点について、特に検察官に対する問題について、法務省におきましては人権擁護の建前からかかる事実の繰返されぬことの処置を厳重にとつていただきたい、かように要望いたします。
  30. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 御要望の筋まことにごもつともと存じます。先ほども申し上げました通り、事は監視を受けまして出て参ります被疑者が自殺、逃亡その他のおそれがある場合には、これはやむを得ず手錠使用のまま調べることもございます。またその他看守の手が不足のために、どうしても二部屋を一人で持たなければいかぬ、そうして一方の方の被疑者がどうも目つきが悪いというふうな場合には、これまた検事の命令のいかんによらず、監獄看守責任において手錠をはめたまま置いておくという場合もあるのでございますが、ただお話の点はいずれもごもつともでございますので、従来とても私どもその点については放任しておいたわけではありません。選挙会同その他の際に、御趣旨の点は十分伝えてあるわけでございますが、文書として残つておりますのを監獄看守の面から見ますと、古いのが一つ二つあるという実情だけをお話した次第でございます。御趣旨の点は十分そのようにとりはからうつもりでございます。
  31. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 そこでちよつと関連して私から聞きたい。刑事訴訟法第二百八十七条の公判廷における被告人の身体拘束の原則、これに似たようなことを局長は今お答えになつようですが、これと同じ趣旨でやれということなのですか。まずその点についての局長の考えを伺いたい。
  32. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 公判廷の調べの場合とは若干違うように実は考えておるのでございます。ただその精神はやはり移してもつて検事廷における調べに応用すべきである。さような見地から十分戒護の点については緩急よろしきを得るようにいたしたい、かような態度でございます。
  33. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 そうするともつとつつ込んで聞くと、これと同じ規定検事取調べのときに立法するというところは行き過ぎになるのではないですか。
  34. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 具体的にいろいろな場合がございまして、現在監獄法の第十九条で予想しておるような諸般の場合には、やはり手錠を用いる必要があろうかと存じますので、立法的にはかなり困難な問題になつて来るのではないかと存じます。
  35. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 だけれども今の逃走のおそれがある場合、それから暴力のおそれがある場合、もつと縮めて、立法もあえて不可能でないよう考えるのはちよつと困難ですか。
  36. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 要するに公判廷のように完全に当事者対等の場合と、ややそれに類しますけれどもまだ十分被疑者たる地位の未確定の時代との差異が若干ございますし、また実際問題として、先ほどちよつと申し上げました通り、その場その場の判断で大部分ははずした方がいいと私ども思うのでございますが、どうしてもはずしてはいかぬような場合も事実あるのでございます。さような場合に、逃走あるいは自殺というだけでいいか悪いかという問題もございますので、これは解釈通牒ぐらいでまかなうのが最も妥当ではないかと存ずるのでございます。
  37. 高橋(英)委員(高橋英吉)

    高橋(英)委員 今の岡原局長の御答弁には私ちよつと異論があるのですが、公判廷における被告身分と、起訴前の被疑者身分関係、これは逆で、かえつて寛大な取扱いを受けるものは起訴前の被疑者じやないかと思うのです。ただ、公判廷のごとく、逃走その他いろいろなことが完全になつていない関係から、公判廷のような不拘束の原則は確立されていないと思うのですけれども、そういう観点から立法などということを言われるのは当然だけれども、起訴前と起訴後のその関係において重きを置かれて今のような立法をされるのは逆じやないか、一度御研究願いたいと思うのです。これは今ちよつと気がつきましたからさように申し上げたのですが、先ほどの古屋委員の御質問に対して、手錠をはめて尋問したり署名捺印せしめるようなそういう事実があるということは、かねて推則されておつたというふうにも聞えたのですが、むろんそれはあの制限規定というものを見ますと、いつも例示的にあげて行くこともいろいろな場合において当然あり得べきことなんですが、今度のよう事案は不当であるか不当でないかというふうな問題になつて来た場合、ある程度不当であつたのではないか、妥当でなかつたのではないかという結論が出されるように思われるのです。その不当であるところの事実、すなわち妥当でないところの事実が、やはり従来も行われておつたというふうに推測されるということになるのですか。すなわち妥当ならざる手錠をはめて署名捺印をするというようなこと、そういうことが行われていたということが推測されるということになるのですか。その点もし推測されておるにかかわらず、適切な対策が講ぜられなかつたということになると、これに対してわれわれ一応批判せざるを得なくなるのですが、その点はどうですか。
  38. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 お話ような点につきましては、私どもは先ほどお答えいたしました通り、もつぱら違法、合法の問題でなくて、妥当、不妥当の問題と考えておりました。また妥当、不妥当については、各当該の場合々々によりましていろいろな判断があり得るわけでございまして、私どもといたしましては、当該の官吏は少くともその場合においては、それが妥当だという判断をしておつたに違いないと思うのでございまするけれども、これを客観的に後日冷静に判断いたしました場合には、それはまた別個の観点から不妥当という判断をなし得るわけでございます。その点につきましては、当該官吏が不妥当と知りつつやるというふうなことについては、私どもは推測はいたしておらないわけでございます。ただその判断のやり方については、今申したようにいろんな段階があり得るのでございまして、その判断の基準よろしきを得るように私ども努力して行きたい、かように存ずる次第でございます。
  39. 高橋(英)委員(高橋英吉)

    高橋(英)委員 念を押すようですが、そうすると妥当ならざることが行われておるということは、推測されておらなかつたわけですね。そういうふうな妥当ならざることが行われておるということは、知つておられなかつたということになるのですね。
  40. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 大体さようでございます。
  41. 松岡(松)委員(松岡松平)

    松岡(松)委員 これに関連して。ちよつと先ほど言い漏らしましたが、手錠のほかに深夜にわたる取調べをやつております。手錠に加うるに深夜にわたる長時間の、身体の疲労を来す、心身ともに疲れ果てるような状態に至るまでの取調べをしておる。この事実を附加してお取調べを願いたい。  それからこの機会ちよつと岡原さんに参考にお尋ねしたいのですが、一体検察庁取調べについて、夜はどういうふうに内部的にできておるのですか。私らも経験があるのですが、あの検事廷というのは非常に疲れるのです。こんな上等の腰かけじやないのです。もつとひどい腰かけに朝の九時ごろからかけさせられて夜の十一時ごろまでいると、それは実に骨のしわむ思いをさせられる。そうしてとろとろと眠つておるところに検事が一眠りして現われて、さあどうだということでやる。寝ぼけまなこで取調べられて、何を問われて、何を答えているかわからぬうちに調書をつくられてしまう。これは重大な問題であります。催眠術にかかる危険性が非常にある。そうするとおかしなもので、検事廷におるときには、早く拘禁されておるところに帰りたくなるのですね。何と言いますか、住居によつておりますからね。からだが疲れて来る。その機を逸せず追い込みをかけて来る。検事の追い込みというものはまたすばらしいものだ。そこで一体夜間取調べについて、何か準則でも設けておられるかどうか。また設けておられなかつたら、今後少くとも午後八時ぐらいで打切るべきもので、労働基準法の概念から言つたら、これはもつと早く切上げなければ検事も困るし、被告人も困る。被告人もあれは労働ですよ、闘つておるのですから……。これについてひとつ準則をきめる御意思がありますか、それとも立法なさる御意思がありますかお伺いしたい。
  42. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 お尋ねのごとき深夜にわたつて取調べをやるということは、妥当ならざることお話通りでございます。今お話がございましたから私どもの昔話を思い出しますが、昭和十年前後には、お話ようなことがたびたびございました。夜の十一時近くになつて、お互いに眠い目をこすりながら、もらつたろう、いやもらつたことはございませんと繰返したこともあつたやに聞いたのでありますが、現在のところ、私どもような深夜にわたる取調べということにつきましては、深く各庁に対しまして戒めをするよう趣旨のことを申してございます。ことに選挙会同のあるたびごとに、あるいはブロツク会議その他が開かれますたびごとに、さよう取調べが、ともすれば三百十九条による強制拷問等の自白の証拠力にまで影響するようなことにもなる次第でもあり、十分戒心するようにということは申しておるのでございます。ただこれを午後の八時がいいとか、九時がいいとかいうことになりますと、なかなか実際の調べの段階におきまして、もう一息でちようど全部の調べが済むというときに、ちようど時間が来たから三分前にやめるというわけには行きません。私どもといたしましては、検事も疲れるし——今被疑者の方が疲れるとおつしやいましたが、むしろ検事の方も一人で数名の者をたいてい担当いたしておりますので、検事の方も疲れますからさよう調べはお互いにせぬようにということを申してあるのであります。ただ立法的にこれを解決することは困難だと思いますので、これまた運用の実際におまかせ願いまして、私どもお互いに十分戒め合つて行きたいと存ずる次第であります。
  43. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 岡原刑事局長ちよつとお尋ねいたします。先ほどの御説明の中で看守責任手錠をはめたまま取調べに当る場合、その理由としては手不足のために三人、四人の被疑者を一人の看守が持たなければならないから、それで看守責任上どうしても手錠をはめるというような御説明を承つたのであります。一体拘置所の定員数を超過して被疑者あるいは被告人を収容するということ自身は、これは私は違法行為だと思うのでありますが、その点に関するお考えを伺います。
  44. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 大体におきまして、かよう被疑者検事廷等に同行する場合には、一人が一人を受持つのが原則でございます。またそうあつてしかるべきものだと存じます。ただ本件の場合のごとく多数の選挙違反で一時にどつと拘置所等に収容されました場合には、拘置所の定員をそのときだけ臨時に増加するということは、全体の刑務行政上なかなか困難なことでございます。従いましてたとえば検事廷できようは十五人調べたいという場合に、三部交代の看守の十五人の要員が普通の勤務以外にすぐ出るかといいますと、これはなかなか簡単には出ないのでございます。そこでいろいろかり集めまして連れて参るわけでありますが、その十五人のうちたとえば十人が、一度に検事廷に入るというような場合にいろいろな支障が出て来るのでございます。これはなるべくさようなことのないように刑務当局も気を配つておるようでございますが、実際問題として、いろいろ今回のような不都合を生ずるようなことになつて参るのでございます。この点は今後十分、看守の配置その他の点について考慮すべき問題だと存ずるのであります。
  45. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 前回の当委員会で押谷政務次官の説明を伺いましたが、現に東京の拘置所では収容人員を三割以上上まわつておる、また大都市の拘置所はいずれも東京拘置所以上に定員数を超過した収容をいたしておるということをはつきり説明されておるのであります。ただいまの京都の場合に、選挙違反で一時的に被疑者がふえるということは私も承知いたしますが、常時三割以上の超過収容をいたしておる。反対に職員数がどちらかといえば定員数よりも欠けている。こういうことに対して当局はどういう対策を今日まで講じておられるか。
  46. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 東京、大阪、名古屋、広島といつたような割合に大きな拘置所等におきましては、収容定員数がふだんの定員よりふえました場合には、若干ずつその看守の定員も増しておりまして、何とかやりくりがつくことになるわけでございます。ことにその拘置所から出廷等をする人員は、大体の見通しをつけて余裕といいますか、計画の中に入れてございますので、たとえば十五人の出廷の予定が三十人になりましてもすぐには困らぬといつたような用意ができておるわけでございます。もつともメーデー公判のごとく一人の被告人を連れて来るのに二人も三人もかかるといつた場合には、これは別でございますが、しかしその他の一般の場合におきましては、若干の出廷人員の予定がふえましても、それに対応し得るだけの人員は、全体としてのやりくりがつくわけであります。ところがそれが非常に小さい拘置所の場合、あるいは拘置支所等におきましては、これは極端に困る場合が生ずるのでございまして、臨時にその本所等から応援に行くという形をもちろんとつておりますけれども、なおかつまかなえない場合が出て参るのでありまして、これは被疑者の勾留数によつてすぐに看守の配置がえができないという事情によつて、御了承願いたいと存ずるのでございます。
  47. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 来年度行政整理の結果、大体拘置所関係の職員が百八十人減じられるということを伺つたのでありますが、今日の状態でさえ手不足のために手錠をはめたまま被疑者調べるという一つ人権蹂躙が行われる。拘置所の職員を増加して、いわゆる定員数を守つて、なるべく人権蹂躙は避けなければならぬ、こういう趨勢にあるにもかかわらず、職員が来年度は減らされる、職員が減らされてなおかつ今後こういう人権蹂躙になるような手不足は起らぬのだ、減らしても人権蹂躙にはならぬということについての確たる方針があるのでございましようか。
  48. 岡原政府委員(岡原昌男)

    岡原政府委員 その点になります  と、私実は主管の局長ではございませんので、詳細のことはお答えいたしかねるのでございまするが、ただ刑務所あるいは拘置所を通じて看守の定員というものは、昭和二十五年を境といたしまして、若干収容定員が減ずることによりまして、もとのようなきゆうくつさがなくなつたわけであります。そこで二十八年度におきまして収容人員が一体どれくらいになるだろうかということにつきまして、大蔵当局と予算折衝の際にいろいろ交渉いたしたのでございますが、この点の見通しについては、本年度よりも若干減るであろうというふうなことにほぼ一致したわけでございます。そこでこの拘置所、刑務所を通じての収容人員が減るということに伴う若干の減員は、これにかえて少年院等における収容人員がふえるということとにらみ合せまして、配置転換を行つた次第でございます。現在百数十名の予算の定員減によりまして、本件のごとき末端における拘束上の不都合を来すのではないかというお言葉、たいへんありがたく存ずるのでございまして、その点につきましては私ども極力さようなことのないよう努力いたしたいのでございます。予算全般の面から私どもはやむを得ないものとして、大蔵省のその減員の査定に服したわけでございますが、なお二十八年度の予算の執行等とにらみ合せまして、不都合等がさらに続くような場合におきましては、十分善処したいと思つておる次第でございます。
  49. 高橋(英)委員(高橋英吉)

    高橋(英)委員 ちよつと誤解を避けるために一言したいのですが、今お話を聞いておると、京都事件があたかも何か手不足のために——ただいまのは仮定のものだろうと思うのですけれども、それがために、ああいうふうなことが起つたというようなつておりますが、決してわれわれの調べたところではそうではありません。京都中野君の関係においては、これは一種の拷問的な形においてああいう事実が起つたのではないかと思われるような節があるのですから、従つて問題にしておるわけなのです。その点誤解のないようにひとつ慎重御調査願いたいと思います。     —————————————
  50. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 それでは次にお諮りをいたします。昨二十六日警察法案が地方行政委員会に付託になりました。同案につきましては本委員会といたしましてもその重要性にかんがみまして、地方行政委員会に対し連合審査会開会の申入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 御異議なしと認めます。よつてその旨地方行政委員会に申し入れることにいたします。なお連合審査会開会の日時に関しましては、地方行政委員長と協議の上決定いたしたいと存じますから、御了承を願います。     —————————————
  52. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑に入ります。大川君。
  53. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 司法試験法の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。改正法律案では、第一次試験の受験手数料を二百円から五百円に値上げをし、第二次試験の受験手数料を五百円から千円に値上げせんといたしておる。値上げ率から申せば、前者は二倍半の値上げであり、後者は二倍の値上げであります。値上げの理由といたしましては、最近における物価事情を考慮してであるといわれるのでございますが、本来国民は学問の自由を憲法で保障されておる。特に将来裁判官、検察官または弁護士となつて国家に貢献せんと志しておる者に対しましては、その知識、能力を判定するために手数料を徴収すること自体がもともと好ましくないと存ずるのであります。しかもこの手数料を今回は一躍二倍ないし二倍半に値上げしなければならないその物価事情とは、一体どういうことを意味するものであるか、試験施行に要する諸費用と手数料収入との関係はどうなるのか、数字をあげて具体的に御説明を伺いたいのであります。
  54. 宮下説明員(宮下明義)

    ○宮下説明員 お答え申し上げます。御承知よう司法試験法が成立いたしましたのが、昭和二十四年でございまして、その当時の物価事情がもちろん考慮されたわけでございますが、物価事情だけでございませんで、その当時ございましたその他の国家試験の受験手数料等とにらみ合せまして、この手数料の金額がきめられたものと考えておるのであります。ところが昭和二十七年になりますと、資料として差上げました表の中にもございますように、同じく国家試験でございまする公認会計士試験の第一次試験が五百円、第二次、第三次試験が千円、その他弁理士試験、税理士試験、医師の国家試験、歯科医師の国家試験等もおおむね五百円から千円程度の受験手数料となつておるのであります。なお資料の中にも差上げてございましたように、各大学の現在の入学試験手数料も、高いのは二千円から二千五百円程度の受験料をとつておる実情でございます。司法試験はただいま例に引きましたその他の国家試験に比べまして、筆記試験におきましては一週間続けて試験をいたしまして、口述試験は約十日間綿密な口述試験をいたすのでございますが、しかもその試験委員は各大学の法律学者及び老練な実務家を多数委嘱しましてこの試験を実施いたします関係上、かなりの予算がかかるのであります。私どもこの司法試験を管理いたしております者といたしましては、年々大蔵省に対しまして、適当な答案審査謝金を各試験委員に出せないのが非常に心苦しく感ぜられますので、受験の答案審査謝金を相当の額各先生方に差上げられるように交渉いたすわけでございますが、いろいろ財源の関係もございまして、なかなか大蔵省が予算的に認めてくれないのであります。それで一面この試験の国家の財源もある程度ふやしまして、適当な謝金を出せますように、その他現在は全国五箇所で試験を実施しておるのでございまして、その試験を管理いたしますために係員等が各地に出張していろいろな手続をいたすわけでございますが、それらの旅費あるいは答案の印刷、紙代等いろいろな点を考慮いたしまして、現在の一次試験二百円を五百円、二次試験五百円を千円程度の値上げでございますならば、妥当な額であろうという判断からこの改正案の御審議をお願いいたしたわけでございます。昨年度の予算を申し上げますと、昭和二十七年度のこの司法試験だけの予算が五百四十一万六千円、二十八年度の予算が六百七十三万五千円でございます。この中には司法試験管理委員会及びその庶務をいたしております人件費等は全然入つておりません。この司法試験管理委員会は定員を持たない行政委員会でございまして、法務省の人事課が庶務を取扱つております関係上、人件費は全然見ませんで、ただいま申し上げましたような謝金あるいは旅費その他の庁費等でこれだけの予算がかかつておるわけでございます。
  55. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 もう少し数字的に伺いますが、たとえば昭和二十七年度においては五百四十一万円費用がかかつておる、そういたしますと、かりに第二次試験を例にとりますと、今度五百円を千円にする、そうして七千人に近い受験者があるとすれば、ほとんど受験手数料でこの試験が施行されるという結果になるのでしようか、あるいは年々赤字が出て国家はそれに対して多少の赤字は見越してこの手数料を勘案されておるかどうか伺いたい。
  56. 宮下説明員(宮下明義)

    ○宮下説明員 二十八年度の六百七十三万五千円という予算額は、第二次試験の受験者を五千五百という数で組んでございます。私どもは提案理由の御説明で申し上げましたように、本年度の第二次試験の受験者を七千人と予想しておるのでございまして、予算折衝にあたりましても大蔵省にその数で予算を要求いたしたわけでございますが、大蔵省の方は、もし七千人になつたならばあるいは他の費目からの移、流用等で補正をして行くことはある程度了承しておると思いますが、一応五千五百人で予算が組んでございます。そういたしますと、この受験手数料だけで十分にはまかなえませんで、国家がある程度を補充いたしましてこの試験を実施することになるわけでございます。
  57. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 次に第一次試験の受験手数料を二倍半として、そうして第二次試験の受験手数料を二倍にとどめておる。その値上率において差異を設けたのはどういうわけであるかを伺いたい。申すまでもなく第一次試験を免除され、ただちに第二次試験を受け得る者は、概して経済的に余裕のある家庭に育ち、順調に正規の学校を卒業したいわゆる遊学の子弟が多いのであります。これと反対に、第一次試験の関門を突破しなければならない受験者は、おおむね家貧しくして正規の学校にも行くことができない、あるいは銀行、会社、官庁に奉職しながら夜学に通うとかあるいは苦学力行、逆境の中にあつてなおかつ向学の念に燃えておるところのいわゆる前途有為の青少年が多いのでありまして、これらの受験者に対しては国家はよろしく受験手数料を免除しても可なりと存ぜられるにもかかわらず、一躍二倍半に受験手数料を値上げするというようなことは、言葉は当らないかもしれませんが、一種の苛斂誅求のはなはだしいものだと断ぜざるを得ないのであります。われわれおとなの世界から申しますならば、二百円の受験料が五百円に値上げされたとて、さまで痛痒は感じないのでありますけれども、逆境にあるはたち前後の受験者にとつては過大の負担となると考えるのでございまして、この点あえて当局の御考慮を煩わしますとともに、一方は二倍、一方は二倍半に値上げする。逆境にある者に対して二倍半の値上げをする理由を伺いたいのであります。
  58. 宮下説明員(宮下明義)

    ○宮下説明員 御意見まことにごもつともでございまして、私ども司法試験の管理をいたしております者といたしまして、多分に同感申し上げる点があるわけであります。この司法試験の直接の管理をいたしております者から申し上げますと、非常に手前みそになるわけではございますが、他の国家試験と比べまして、厳格なしかも非常に手数のかかつた試験をやつておるのであります。第一次試験にいたしましても、新制大学教養学部卒業程度の学力を判定するわけでございますが、その試験の科目は一般教養として、自然科学、文化科学系統、すべてのものに通じまして、非常にむずかしい問題を出しております。なおそれに加えて語学の試験をいたしておるわけでございます。現在各委員にお願いいたしまして問題を作成中でございますが、非常に手数のかかつためんどうな問題で、第二次試験よりもむしろ印刷費、紙代等に多分に金がかかるのであります。第二次試験の方は御承知ように非常に古い問題の提出方法の形をそのままとつておりまして、昔通り広い講堂に試験問題を大きな巻紙に墨で書きまして、試験当日にただそれを掲げまして、それを受験生に見させて答案を書かせる方法をとつておりますが、第一次試験の方はたくさんの問題を何枚もの用紙に印刷をいたしまして、非常に手数をかけておりますので、むしろ予算的には一次試験の方が金がかかるのであります。それでその点を考えまして、御説のように、第一次試験を受けます者は第二次試験をただちに受ける者よりも経済的に恵まれない人が多いだろうとは思いますが、とにかく受験料が半額でございますので、二次試験の半額五百円ということでお願いしたいと考えたわけであります。
  59. 大川委員(大川光三)

    ○大川委員 そろばんの上のことはそれでよくわかるのでありますが、私の特に当局に御考慮を煩わしたいという点は、かかる逆境にある青少年の受験料をことさらに二倍半値上げするということは、ただそろばんの上でなく、あるいは営利会社でない国家といたしましても、いま少し親心をもつてこういう受験手数料については考慮をしていただかなければならぬという考え方でありますので、特にこの点御了承いただきまして御考慮をいただきたいと私は希望を申し上げておきます。
  60. 宮下説明員(宮下明義)

    ○宮下説明員 御意見の点を私どもも十分に考えておりまして、この第一次試験の受験地を従来札幌、仙台、東京、京都、福岡の各地で実施しておつたのでありますが、本年度はこれになお一箇所加えまして、名古屋を加えて各地で試験をいたしまして、こういう人たちが職場に勤めながらあまり旅費をかけないでこの試験が受けられるようにいろいろな配慮を加えておりますので、御了承願いたいと思います。
  61. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  62. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 速記をとつてください。  他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれをもつて終局いたしました。  お諮りいたします。本案はこれを討論に付すべきものでございますが、討論はこれを省略し、ただちに採決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 御異議なしと認めます。本案に対する討論はこれを省略し、ただちに採決を行います。司法試験法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  64. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 起立多数。よつて本案は議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。速記をやめて。     〔速記中止
  66. 田嶋委員長(田嶋好文)

    田嶋委員長 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。     午後四時十一分散会      ————◇—————