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鈴木(一)
政府委員 ただいまお尋ねがございました
朝鮮関係の
強制送還の問題でありますが、
取扱います法規は
出入国管理令でございまして、これは昨年の議会におきまして
法律の効果を与えられまして、
名前は
管理令と
なつておりますが、
法律でございます。
出入国管理令によりまして、
密入国の事案がございますれば、それを調べまして、原則として
密入国でありますればその国に帰すという建前でございますが、その
取扱います径路をずつと一
通り申し上げてみたいと思うのです。たとえば多くの例は
日本の対馬に
不法入国をいたして参ります者が非常に多いのであります。常識的に申しますと、毎日大体三十人ぐらいずつは
日本の
治安機関の手に入るわけでございます。たとえば
海上保安庁で海上においてつかまえる、あるいは陸上におきまして
警察方面でつかまえる、あるいは
入国管理局の出先の警備官自体がつかまえる場合もございます。
密入国の現行犯をつかまえました場合には、大体検察当局の手に渡りまして、司法処分を受けまして罰金あるいはその他密貿易という容疑がございますれば懲役になる場合もございます。場合によりましては起訴処分になる場合もございます。要するに司法処分を受けまして、しかるのちに
入国管理局の出先の管
理事務所の方に送られまして、たとえば対馬の
事件でございますれば、対馬にわれわれの方の出張所がございます。そこの出張所に司法処分の終
つた者を送りまして、それからわれわれの方で
行政処分といたしまして、その者を強制退去にすべきかどうかということについて取調べをいたします。元来
出入国管理令は外国人に対して
取扱いをいたします法規でございまして、司法処分とは違
つた国際慣例によ
つた外国人としての扱いをやりたいというので、大体国際慣例によ
つた構成でできておるわけでございます。以前は、
日本におきましては、主として外事
警察方面の手のみで成規の入国も、不成規の入国も取扱われたのでありますが、それではいけない。
警察国家にもどるおそれがあるのでないかということで、占領軍当時に民主的な国際
関係によ
つた機関で外国人を扱うということで、この
管理令ができたのであります。従
つてその
趣旨でわれわれの出先機関は犯罪人としてはなしに、外国人として扱う。
不法入国でございましても、これを帰すということについて、司法処分として、犯罪人としての扱いをいたさないのであります。ただ強制退去をするかどうかということを調べます際に、三段階の
手続をいたしまして調査をいたします。違反調査、すなわち
密入国であ
つたかどうかという事実の確認をいたします。それに対して「あなたは
密入国をしました。」「はいしました。」「
密入国は
日本の法を犯して来たものであるから、必ず
日本から帰らなければなりません。」「はい、帰ります。」と言えばそれで一応終りになりますが、「いや、自分は
密入国はしたけれ
ども、
日本にこういう
理由でいたいのだ、どうか帰さないでくれ。」というのでございましたらば、もう一度口頭審理をいたしまして、第二回目の審査をする。それに対してなお
異議の申立てをいたす場合は、いろいろ
日本にとどまらなければならない
理由――あるいは
密入国でない、あるいは
密入国であ
つても、先ほどお話にもありましたような、何年も
日本にいたのだというような特別の
理由がございますれば、その
理由を書きまして、
異議の申立てをいたすわけであります。これは書面審理で、本局におきまして
委員会を構成して、そこで決定をいたしまして、強制退去にするかしないかということを定めるわけでございます。そこで強制退去の命令を受けました者は、長崎県の大村の収容所に一応全部集めまして、そこから現在において毎月一回、ほとんど定期のように船を出して、それを
韓国の釜山に送りつけるのでございます。毎月二百名ないし三百名を送
つております。ただ今申しましたのは、
密入国の問題を申し上げたのでありますが、そのほかに
密入国でなしに、
日本に長く居住しておりました朝鮮の籍の人でも、たとえば外国人登録法によ
つて登録をいたさなければならない、ところが登録をしなか
つた、あるいは詐欺行為によ
つて登録証明書をと
つた、偽造したというような問題が起るわけであります。そのほかにこの
出入国管理令によりますれば、
日本で一年以上の懲役を食うような悪いことをした人は、強制退去ができるという規定に
なつております。そのほか
出入国管理令の二十四條には、強制退去をすべき事由がたくさん載
つてございます。現在はこの朝鮮の人たちには二十四條は直接は適用されていないとい
つてよろしいのでありますが、
出入国管理令のできます前に外国人登録令というのがございまして、この旧法によりまして、この
管理令のできます前に、すでに外国人登録令違反として係争中の事案の人たちは、その旧令によ
つて帰すということが行われておる。これはごく小
部分の人でございますが、問題はそこにあるのでございまして、たとえば外国人登録証明書を人の分を使
つた、あるいは登録しなか
つた、かつそれに加えまして窃盗をしたり、詐欺をしたりというようなことで、一年以上の懲役になりました者、それを旧令によりまして、外国人登録令違反として帰すことができるという規定がございます。それで帰しておるわけでございますが、その外国人登録令違反の
密入国でない方の
強制送還に値する者、これは昨年の五月十二日でございましたか、
韓国側で受取らないということが起きたのでございます。これはどういうわけかと申しますと。
ちようど日韓会談が開かれて、今や
韓国と
日本の国交ができ、あわせて
韓国人の国籍処分というようなことがきまるので、その国籍処分の問題がきまるまでは、か
つて日本に終戦前からお
つた人たちは受取らない、こういうことを一応申しておるのであります。そのために現在毎月一回帰します約二百名ないし三百名の人たちは、
密入国者ばかりでありまして、いわゆる
手続違反者は入
つておらないのであります。ところがそういう人たちは、昨年の五月十二日に受取らないということがありました。以前はどうであ
つたかと申しますと、出入国管理庁ができまして以来前後七回にわたりまして、船を出して
韓国に送
つてお
つたわけであります。そして同様な
手続違反者は、
韓国側は七回受取
つてお
つたのであります。ところが八回目に、たまたま平和條約が発効になりました後であ
つたということで、
韓国側としては
一つの手を打
つたのであろうと
思いますが、受取らないということを申して来たのであります。その結果はどうな
つたかと申しますと、われわれの方としましては、日韓会談がいつ再開されるかわからない、また話合いによりましてはそういう者も受取るということになり得ることを確信いたしておりますので、そういう人たちは
強制送還をするのであるという前提のもとに、出入国管理庁の大村にございます収容所に収容いたしておるような次第でございます。そういう人たちが相当長く収容施設におるということは、これは事実でありますが、現在ではそういう人たちが四百二、三十名になろうかと
思います。近く日韓会談も開かれますので、早晩こういう人たちも帰れることになると思
つております。
大体以上のように、
不法入国者あるいは
日本にお
つて違反や犯罪をした人たちは、それぞれやはり
管理令の適用をまちまして扱
つている次第であります。