運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-13 第15回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)     午後二時十三分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 小畑虎之助君    理事 猪俣 浩三君       佐治 誠吉君    福井 盛太君       古島 義英君    松永  東君       大川 光三君    後藤 義隆君       長井  源君    木下  郁君       田万 廣文君    多賀谷真稔君       古屋 貞雄君  出席政府委員         法務政務次官  押谷 富三君         法務事務官         (入国管理局         長)      鈴木  一君  委員外出席者         外務事務官         (アジヤ局第二         課長)     廣田しげる君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月十三日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として松  山義雄君が議長の指名で委員に選任された。  同日理事高橋英吉君の補欠として松山義雄君が  理事に当選した。     ――――――――――――― 二月十日  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第四六号) 同月十二日  米内沢町に簡易裁判所設置請願松野孝一君  紹介)(第一七五八号)  美深町に簡易裁判所設置請願松浦周太郎君  紹介)(第一七五九号)  鷹巣町に簡易裁判所設置請願石田博英君紹  介)(第一七六〇号)  鷹巣町に検察庁設置請願石田博英紹介)  (第一七六一号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  戦犯者釈放に関する陳情書  (第一〇一七号)  戦犯者の助命、減刑釈放に関する陳情書  (第一〇  一八号)  戦犯者釈放家族救済陳情書  (第一〇一九号)  戦犯者釈放並びに抑留胞引揚促進に関する  陳情書(第一〇  二〇号) 同月十一日  戦犯者釈放に関する陳情書  (第一一一七号)  戦犯者減刑釈放並びに抑留胞引揚促進に  関する陳情書  (第一一一八号)  戦犯者死刑執行停止等に関する陳情書外一件  (第  一一一九号)  死刑廃止に関する陳情書  (第一一二〇号) 同月十二日  戦争受刑者減刑並びに釈放に関する陳情書  (第一二二五  号)  外国人登録事務警察に移管の陳情書  (第一二二六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員選任に関する件  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第四六号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前にお諮りをいたします。理事である高橋英吉君より理事辞任したいとの申出がありましたが、辞任を許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認め、辞任を許可するに決しました。  理事補欠選任についてお諮りをいたします。高橋英吉君の辞任により欠員になりました理事は、先例により委員長において御指名いたすごとに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認め、松山義雄君を理事に御指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 田嶋好文

    田嶋委員長 次にお諮りする事項がございます。それは今国会に上程されることにほぼ決定いたしております警察法改正でございます。従来、警察法改正については地方行政委員会がこれを担当して参つたものでございますが、今回の政府改正趣旨を見ますと、治安確保の面においてこの警察法改正せられるということになつておりまして、今回の改正は、地方行政の担当よりも、われわれが研究いたして参りました今日までの委員会調査研究の対象としての法案の取扱いというようにもなつて参ると思いますので、この取扱いについて、当法務委員会が取扱うべきであるかどうかにつきまして相当疑義が起つており、また取扱うべきものであるという要求が各方面からもあるのでございます。当委員会としてこれをどういうようにとりはかつたらいいものかと委員長は考えておりますが、この点について皆さんの御意見が承れますれば承り、この処置を本日決定いたしておきたいと思います。お諮りいたします。
  6. 古島義英

    古島委員 今回の警察法改正は一段と飛躍した改正でありまして、主として治安の問題についての改正部分が多いのであります。そこで、慣行はどうでありましても、地方行政委員会がやるということはむしろ不適当であつて法務委員会が審査するのが当然だと思いますので、どうか法務委員会の方に渡してもらいたいということを要求していただきたい。
  7. 小畑虎之助

    小畑委員 私も今の古島君の御発言と同じようなことを考えておるのであります。警察法改正を必要と考えられる主たる部分治安問題に関する能率化ということでありまして、このことは、自然この委員会が担任いたしておりまする部門に関連する事項が多かろうと思うのであります。もちろん警察というものが行政の一部であることは間違いないのでありまするけれども、私どもの考え方から言いますると、地方行政というのではなくて、むしろ法務関係する事項が主たるものであると考えるのでありまして、むしろ法務委員会にこれを付託せられることが当然であるというようにも考えるのであります。旧来の慣例が地方行政の方にまわつておるということになりますると、この際こちらの方から要求をいたしまして、ぜひ本委員会に付託せられんことを求めることにいたしたい、かように思うのであります。
  8. 木下郁

    木下(郁)委員 私も同様の結論であります。公安委員会関係するということが地方行政委員会の方に持つて行く主たる理由のようでありますが、今回の改正というのは、公安委員会の権限をどうするとか構成をどうするとかということが主たる目的ではなくて、治安をどういうふうにして確保して行くか、最近の情勢に対してどうするかということが改正最大眼目であると思います。さような意味からいいましても、法務委員会においていたすのが適当であると思いますから、どうか当委員会の方においてこれを審議するようにしてもらいたいと思つておる次第であります。
  9. 古屋貞雄

    古屋委員 私も同様の趣旨でございます。
  10. 田嶋好文

    田嶋委員長 ただいま皆さんの御発言がありましたが、みな同じ御意見のようでございまして、これが取扱い法務委員会がこれを審議すべきものであるという決議をし、衆議院議長の手元に委員長から意思表示をするようにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 田嶋好文

    田嶋委員長 なおこれには衆議院規則改正ということにまで発展しなければならぬと思うのですが、この点につきましても、取扱いについては委員長に一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田嶋好文

    田嶋委員長 ではさよう決定いたします。     ―――――――――――――
  13. 田嶋好文

    田嶋委員長 司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府より提案理由説明を聴取することにいたします。押谷政府委員。     ―――――――――――――
  14. 押谷富三

    押谷政府委員 ただいま上程に相なりました司法試験法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  本案は大別して二つの事項をその内容といたしておるのでありまして、その第一は司法試験第二次試験科目調整、第二は受験手数料の増額であります。  まず第一の点から御説明いたします。御承知のように昭和二十四年五月第五回国会において旧高等試験令にかえて司法試験法が制定施行されまして以来、逐年受験者の増加を見、昭和二十七年度第二次試験においては、約五千五百人が受験し、本年度においては受験者数七千人に達するものと推定せられる状況と相なつているのでありまして、かように多数の法律学徒がこの試験を目標に研鑽に努めてむりますことは、国家のため喜びにたえないところであります。しかしながら、これら受験者のうち第二次試験選択科目として商法を選択する者は、その半数にも満たない有様でありまして、司法試験に合格して司法修習生を経て裁判官検察官弁護士となつた場合に、刑法民法訴訟法とともにその必要性を認められる商法の学識において著しく欠ける者が多く、過去四年間の実績を検討した結果第二次試験試験科目調整をはかるため第六條第一項及び第二項を改正して従来の必須科目に現在選択科目とされておりまする商法を加えることといたしたのであります。従いまして試験科目の数は現行通り科目でありますが、そのうち六科目必須科目となり、一科目選択科目ということになりますので、受験者にとりまして若干の負担が加重せられることになりますが、裁判官検察官弁護士取扱い事件のうち商事関係事件の占める割合等を考えますと、この措置は必要やむを得ないものがあると考えるのであります。  また第六條第一項及び第二項の改正に関連いたしまして、附則第四項を改正しで、高等試験行政試験に合格している者に対しても、試験科目を整理し、憲法、刑法並びに民法及び商法のうち受験者のあらかじめ選択する一科目民事訴訟法及び刑事訴訟法のうち受験者のあらかじめ選択する一科目合計科目を受験せしめることといたしました。  なお、この試験科目改正本年度施行試験から実施いたしますことは、受験者準備期間を与えないこととなりますので、本案附則におきまして本年度従前どおり科目試験を行うことといたしております。  次に第二の点でありますが、司法試験受験手料料は、現在第一次試験が二百円、第二次試験が五百円となつております。昭和二十四年司法試験法制定当時の物価事情と今日のそれとを比較いたしますと、各位御承知通り物価は著しく上昇いたしておりまして、各種国家試験たとえば公認会計士試験弁理士試験税理士試験医師国家試験及び薬剤師国家試験等においても、物価事情に対応して受験手数料を五百円乃至千円といたしておりますので、第十一條第一項を改正して、第一次試験を五百円に、第二次試験を千円に改めることといたしました。しかしながら本年度施行の第一次試験につきましては、すでに試験公告もいたしております関係上、従前通り受験手数料とし、改訂額本年度施行の第二次試験から適用することにいたしております。  なお、第十三條第二項中「弁護士会」を「日本弁護士連合会」に改めておりますが、これは司法試験法が制定せられました後に弁護士法改正せられましたので、両法の関係を整理いたしたものであります。  以上大略でありますが、提案理由の御説明を終ります。何とぞ慎重御審議をお願いいたします。
  15. 田嶋好文

    田嶋委員長 これにて提案理由説明は終りました。なお本案に対する質疑は、これを後日に譲ることといたしますから、さよう御了承願いたいと思います。     ―――――――――――――
  16. 田嶋好文

    田嶋委員長 韓国官憲による日本漁民射殺事件について、関係当局より説明を聴取することにいたします。  まず海上保安庁警備救難部長松野説明員より説明を求めることといたします。松野説明員には、こういうことをお伺いしたいと思います。本日の新聞によりますと、日本漁民韓国側監視船によつて拿捕され、その後拿捕まれた船に乗つておりました日本漁民韓国人の手によつて射殺されているという報道があるのでございますが、海上保安庁として、これらの点についでお取調べになりましたその案情を御報告願いたいと思います。松野説明員
  17. 松野清秀

    松野説明員 新聞に報道されております問題の第一及び第二大邦丸、この二隻が去る四日の朝でございますが、これが済州島の西方約十海里ばかりのところと思われる場所で韓国船拿捕されたという報告は、海上保安庁としてはすでに入手しておつた次第でありますが、昨十二日に門司の第七管区海上保安本部からの電話連絡によりますと、一昨十一日の晩佐世保海上保安部長が同地の海軍当局に呼ばれまして、米海軍からいろいろ言われた点について、基地管区本部長からの電話連絡によりますと、米海軍の幹部から第一、第二大邦丸事件の際に乗組員の一人が死んでおる、非常に遺憾な次第であるが日本漁船に対して十分注意を喚起するように、こういうことであつたという電話連絡がございましたので、海上保安庁といたしましては当時米海軍当局から言われましたことの内容の詳細について、電報で至急本庁報告するようにということを指示いたしますると同時に、それでは日本漁船に対してどういうことを米海軍当局が具体的に要求されるのか、こういう点について外務省を通じまして米国側の御意向をただす必要もありまするし、また実際に乗組員が死んでおるといたしますれば、いつどこでどうして死んだのか、そういう点につきましても調査する必要があると考えまして、これらの点について外務省で適当な措置をとつていただきたいということを昨日外務省へ御連絡申し上げた次第であります。なお一昨日佐世保海上保安部長米海軍当局と会談したときの内容の詳細につきましては、実はまだ報告が参つておりませんので、はたして新聞紙上に報道されておるような内容のことを申されたかどうか、そういう点につきましては、海上保安庁本庁といたしましては、まだはつきり何とも申し上げかねる現状でございます。  今委員長からお話のように、何か海上保安庁で取調べたかということでございますが、これはなお拿捕されたままでございまして、乗組員が帰つておるわけではないのであります。海上保安庁自体が直接当時の実情を調査するというような段階にはまだなつていないわけであります。大体以上のような次第でございます。
  18. 田嶋好文

    田嶋委員長 いつアメリカから現地海上保安庁の方に話があつたのですか。
  19. 松野清秀

    松野説明員 それは一昨十一日の晩でございます。
  20. 田嶋好文

    田嶋委員長 ただ話があつたという報告だけですか。
  21. 松野清秀

    松野説明員 日本漁船に対して十分注意せよとか、あるいは警告せよというようなことを言われておりますので、現地としてはとりあえず一応報告したわけでございます。ですが、その当時の内容についてはただいま申し上げましたように詳細を電報報告するように指示してございますから、いずれ報告が参ると存じております。
  22. 田嶋好文

    田嶋委員長 御質問がありますれば。……
  23. 松岡松平

    松岡(松)委員 松野説明員にお伺いしたいのですが、この機会に、今の問題はあなたはこれ以上の御説明はできないようでありますが、今までにあなたの方の関係において入手せられた事柄について、かような類似の事件は一体どのくらいあつたか、その点についてお伺いしたいと思います。
  24. 松野清秀

    松野説明員 古くからの記録は今ちよつと記憶にありませんが、今年に入つてからの韓国関係拿捕事件は、今申し上げました二はいのほかに、二月五日にもう一ぱい――これは巨文島の近くだつた思いますが、一ぱい拿捕されております。しかし乗組員が死んでおるというような事実はございません。
  25. 松岡松平

    松岡(松)委員 今の巨文島のところで拿捕せられた船はその後どうなりましたか。その名前乗組員の数、そういう点についてひとつ。……
  26. 松野清秀

    松野説明員 巨文島の付近で拿捕されましたのは、第一大平丸でございます。乗組員数はつきりいたしませんが、多分十名か十一名だつた記憶しております。この船が今どこにあるかにつきましても、海上保安庁では現在わかつておりません。こういう点につきましては、やはり外務省へすみやかに御報告するようにいたしております。事後の措置につきましては、外務省の方で御尽力願うことにしております。
  27. 松岡松平

    松岡(松)委員 外務省の方で御尽力願うことにしていると、こう言つておられますが、外務省の方では折衝せられたのでありますか。その後の経過はおわかりになりませんか。
  28. 松野清秀

    松野説明員 その後の経過はつきりいたしておりませんが、ただいま外務省へと申しましたが、なお海上保安庁としましては、こういうような事件につきましては、極東海軍にも報告いたしまして、できるだけ船、乗組員などが早く帰されるように援助をお願したいということをいつもやつておる実情であります。
  29. 松岡松平

    松岡(松)委員 それではお伺いしたいのですが、拿捕された当時の乗組員はまだ帰つておらぬですか。
  30. 松野清秀

    松野説明員 この今申し上げた三隻については、まだ帰つていないと記憶しております。
  31. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつともう一度聞きますが、漁船保護というのは、今日本ではどういうような方法でだれが当つているのでございますか。アメリカ海軍に頼つているのですか、ちよつとそこを説明してください。
  32. 松野清秀

    松野説明員 日本漁船ソ連関係韓国関係中共関係拿捕される事件は、これはすでに講和発効前ずいぶん前からのことでありますが、この保護につきましては占領下当時におきましては、日本側としては水産庁監視船が出ておりまして、海上保安庁巡視船占領下におきましては、御承知通り当時は基地を中心として百マイルというような制限がございました関係もありまして、実際にはこれらの日本漁船拿捕から保護するというような任務には当つていなかつたわけでございますが、講和発効後におきまして五月二十三日だつた思いますが、閣議決定によりまして、海上保安庁巡視船水産庁監視船と協力して、これらの日本漁船保護に当るということになりまして、爾来海上保安庁巡視船北方水域に常時二隻、韓国水域には常時一隻、中共方面水域には常時二隻、計五隻が常時前線にいて行動している実情でございます。それ以上もつと出してほしいというような要望もございましたが、海上保安庁の現在の勢力がまだ非常に劣勢でありまして、それ以上出すことは沿岸における警備救難業務に非常にさしつかえが生ずる点から、現在は今申し上げた五隻が出ておる実情でございます。韓国水域におきましては、主として海上保安庁巡視船は現在は東海津から済州島の東方水域にかけて行動しておりまして、その他の水域へは現在は水産庁監視船が当つているというような状況であります。
  33. 田嶋好文

    田嶋委員長 もう一つお伺いいたしますが、この新聞によりますと、どうも不法拿捕というようなにおいがするのですが、公海において漁撈している日本漁船韓国あたり官憲不法拿捕するというような状況を目撃した保安庁の監視船は、どういうような対策を講じてこの不法拿捕を防ぐのですか。
  34. 松野清秀

    松野説明員 現在海上保安庁巡視船漁船保護に出ておりましてどういうことをやつておるかと申しますと、まず日本漁船出漁状況を把握する、もう一つ相手国の艦船の動静も極力把握するようにいたしまして、もし日本漁船拿捕される危険があるというような状況を認めた場合は、できるだけすみやかに漁船に退避するように勧告するとか、あるいは不幸にして近づいて来て漁船が追跡されるというような場合には、できるだけ日本漁船が待避しやすいようにこちらが援助してやる、あるいは拿捕されるときの状況を写真撮影して後日の資料にするというような程度のことでありまして、不法な行為ではありましてもこれに実力をもつて当るとかいうようなことまではしない。現をむろん武装もしておりませんし、またそういうことになりますれば非常な国際的な紛争を起すおそれがあるというようなことで、現在では先ほど申し上げましたような程度措置よりとつていないというのが実情でございます。
  35. 田嶋好文

    田嶋委員長 新聞によりますと向うは発砲して来るというようなことを書いてあるのですが、結局発砲して来たような場合にはしかたがないから拿捕さすというような手段しかないわけですか。
  36. 松野清秀

    松野説明員 現状では遺憾ながら今委員長がおつしやるような結果になると思います。
  37. 田嶋好文

    田嶋委員長 将来はどういうふうに防ぐか、何かお考えでもありますか。
  38. 松野清秀

    松野説明員 その点につきましてはまだはつきりした方針はきまつておりません。当然考究しなければならない問題とは考えます。
  39. 松岡松平

    松岡(松)委員 これは韓国側拿捕でありますが、中共ソ連水域において拿捕されたものはありませんか。
  40. 松野清秀

    松野説明員 本日は古い資料を持つてつておりませんので、はなはだ恐縮でございますが、今年に入りましてからの記録は持つておりますので御説明申し上げたいと思います。今年に入りましてからソ連関係はございません。中共関係と思われるものが五隻、国府関係と思われるものが一隻ございます。
  41. 松岡松平

    松岡(松)委員 それは船名とか乗組員の数、地点なんかおわかりですか。
  42. 松野清秀

    松野説明員 中共関係では、一月二十一日に第十三喜久丸、第十五喜久丸、それから一月二十二日に第一大衆丸及び第二大衆丸、二月六日に第十七雲仙丸の五隻であります。地点につきましては、第十三喜久丸、第十五喜久丸農林漁区三百二区、第一大衆丸、第二大衆丸農林漁区の百二十八区、第十七雲仙丸農林漁区の百四十でございます。それから国府関係と思われるものが一月二十四日に第二アヅマ丸、これの地点はこの表でははつきりいたしません。乗組員につきましては、ただいまはつきりした記憶はございませんが、大体これらの船は一隻当り乗組員は十名から十一、二名程度のものであります。
  43. 松岡松平

    松岡(松)委員 ただいまの農林漁区はいずれも公海ですね。
  44. 松野清秀

    松野説明員 そうです。
  45. 佐治誠吉

    佐治委員 今までの拿捕事件でこちらの監視船その他が確認をしたというのはないのですか。
  46. 松野清秀

    松野説明員 この中にはありません。
  47. 田嶋好文

    田嶋委員長 この問題については別にございませんか。――では松岡松平
  48. 松岡松平

    松岡(松)委員 この問題じやないのですけれども、最近韓国人に対する強制送還関係いたしまして、その送還手続の過程並びに送還すべき人間の調査等につき、あるいはそれらのものの財産措置、そういう問題についてかなり国民一般は了解していない点がたくさんあります。また数字のはつきりしないものがあるので、この点についての政府当局の御説明を徴したいと思うのです。  その点は、最近の一つ事例を申しますと、たとえば日本の内地に永住しておりまして、中学を出て、あるいは高等学校に在学中に母親が終戦後帰るにあたつて、これを送つて行つて、帰つて来るときには不法入国だという取扱いを受けて、非常に断腸の思いをして帰つておる。それに対して救済の手を差延べたが、すでに時おそくして、非常な思いを残して向う帰つた者事例もつかんでおるのであります。こういう例がたくさんあると思うのであります。また一方に、日本社会に居住しておりながら、永続しておるという事実はありますが、日本法律にも従わず、日本社会ともなじまない。日本の道義も承認しない。そうして日本社会に害悪を与えるような者に対する送還手続というものは、遅々として進んでおらないような状況を私どもは幾多の事例で見るのですが、一体どういう趣旨でこれをやつておるのか、詳しく御説明願いたいのであります。  いま一言、理由を申し上げますると、私ども日本社会に長く居住して、日本社会に貢献して来た者の子孫であり、また貢献して来た者を何も事を好んで韓国に帰す必要はない。しかしながらたとえ日本社会に永住しても、日本社会に貢献せず、日本社会の発展を阻害し、日本社会治安を害するような者は、当然送還すべきものであると考える。しかるにこれらに対する実際の送還取扱いはどのように行われておるのか。詳しく御説明願いたいと思うのであります。
  49. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまお尋ねがございました朝鮮関係強制送還の問題でありますが、取扱います法規は出入国管理令でございまして、これは昨年の議会におきまして法律の効果を与えられまして、名前管理令なつておりますが、法律でございます。出入国管理令によりまして、密入国の事案がございますれば、それを調べまして、原則として密入国でありますればその国に帰すという建前でございますが、その取扱います径路をずつと一通り申し上げてみたいと思うのです。たとえば多くの例は日本の対馬に不法入国をいたして参ります者が非常に多いのであります。常識的に申しますと、毎日大体三十人ぐらいずつは日本治安機関の手に入るわけでございます。たとえば海上保安庁で海上においてつかまえる、あるいは陸上におきまして警察方面でつかまえる、あるいは入国管理局の出先の警備官自体がつかまえる場合もございます。密入国の現行犯をつかまえました場合には、大体検察当局の手に渡りまして、司法処分を受けまして罰金あるいはその他密貿易という容疑がございますれば懲役になる場合もございます。場合によりましては起訴処分になる場合もございます。要するに司法処分を受けまして、しかるのちに入国管理局の出先の管理事務所の方に送られまして、たとえば対馬の事件でございますれば、対馬にわれわれの方の出張所がございます。そこの出張所に司法処分の終つた者を送りまして、それからわれわれの方で行政処分といたしまして、その者を強制退去にすべきかどうかということについて取調べをいたします。元来出入国管理令は外国人に対して取扱いをいたします法規でございまして、司法処分とは違つた国際慣例によつた外国人としての扱いをやりたいというので、大体国際慣例によつた構成でできておるわけでございます。以前は、日本におきましては、主として外事警察方面の手のみで成規の入国も、不成規の入国も取扱われたのでありますが、それではいけない。警察国家にもどるおそれがあるのでないかということで、占領軍当時に民主的な国際関係によつた機関で外国人を扱うということで、この管理令ができたのであります。従つてその趣旨でわれわれの出先機関は犯罪人としてはなしに、外国人として扱う。不法入国でございましても、これを帰すということについて、司法処分として、犯罪人としての扱いをいたさないのであります。ただ強制退去をするかどうかということを調べます際に、三段階の手続をいたしまして調査をいたします。違反調査、すなわち密入国であつたかどうかという事実の確認をいたします。それに対して「あなたは密入国をしました。」「はいしました。」「密入国日本の法を犯して来たものであるから、必ず日本から帰らなければなりません。」「はい、帰ります。」と言えばそれで一応終りになりますが、「いや、自分は密入国はしたけれども日本にこういう理由でいたいのだ、どうか帰さないでくれ。」というのでございましたらば、もう一度口頭審理をいたしまして、第二回目の審査をする。それに対してなお異議の申立てをいたす場合は、いろいろ日本にとどまらなければならない理由――あるいは密入国でない、あるいは密入国であつても、先ほどお話にもありましたような、何年も日本にいたのだというような特別の理由がございますれば、その理由を書きまして、異議の申立てをいたすわけであります。これは書面審理で、本局におきまして委員会を構成して、そこで決定をいたしまして、強制退去にするかしないかということを定めるわけでございます。そこで強制退去の命令を受けました者は、長崎県の大村の収容所に一応全部集めまして、そこから現在において毎月一回、ほとんど定期のように船を出して、それを韓国の釜山に送りつけるのでございます。毎月二百名ないし三百名を送つております。ただ今申しましたのは、密入国の問題を申し上げたのでありますが、そのほかに密入国でなしに、日本に長く居住しておりました朝鮮の籍の人でも、たとえば外国人登録法によつて登録をいたさなければならない、ところが登録をしなかつた、あるいは詐欺行為によつて登録証明書をとつた、偽造したというような問題が起るわけであります。そのほかにこの出入国管理令によりますれば、日本で一年以上の懲役を食うような悪いことをした人は、強制退去ができるという規定になつております。そのほか出入国管理令の二十四條には、強制退去をすべき事由がたくさん載つてございます。現在はこの朝鮮の人たちには二十四條は直接は適用されていないといつてよろしいのでありますが、出入国管理令のできます前に外国人登録令というのがございまして、この旧法によりまして、この管理令のできます前に、すでに外国人登録令違反として係争中の事案の人たちは、その旧令によつて帰すということが行われておる。これはごく小部分の人でございますが、問題はそこにあるのでございまして、たとえば外国人登録証明書を人の分を使つた、あるいは登録しなかつた、かつそれに加えまして窃盗をしたり、詐欺をしたりというようなことで、一年以上の懲役になりました者、それを旧令によりまして、外国人登録令違反として帰すことができるという規定がございます。それで帰しておるわけでございますが、その外国人登録令違反の密入国でない方の強制送還に値する者、これは昨年の五月十二日でございましたか、韓国側で受取らないということが起きたのでございます。これはどういうわけかと申しますと。ちようど日韓会談が開かれて、今や韓国日本の国交ができ、あわせて韓国人の国籍処分というようなことがきまるので、その国籍処分の問題がきまるまでは、かつて日本に終戦前からおつた人たちは受取らない、こういうことを一応申しておるのであります。そのために現在毎月一回帰します約二百名ないし三百名の人たちは、密入国者ばかりでありまして、いわゆる手続違反者は入つておらないのであります。ところがそういう人たちは、昨年の五月十二日に受取らないということがありました。以前はどうであつたかと申しますと、出入国管理庁ができまして以来前後七回にわたりまして、船を出して韓国に送つてつたわけであります。そして同様な手続違反者は、韓国側は七回受取つてつたのであります。ところが八回目に、たまたま平和條約が発効になりました後であつたということで、韓国側としては一つの手を打つたのであろうと思いますが、受取らないということを申して来たのであります。その結果はどうなつたかと申しますと、われわれの方としましては、日韓会談がいつ再開されるかわからない、また話合いによりましてはそういう者も受取るということになり得ることを確信いたしておりますので、そういう人たちは強制送還をするのであるという前提のもとに、出入国管理庁の大村にございます収容所に収容いたしておるような次第でございます。そういう人たちが相当長く収容施設におるということは、これは事実でありますが、現在ではそういう人たちが四百二、三十名になろうかと思います。近く日韓会談も開かれますので、早晩こういう人たちも帰れることになると思つております。  大体以上のように、不法入国者あるいは日本におつて違反や犯罪をした人たちは、それぞれやはり管理令の適用をまちまして扱つている次第であります。
  50. 松岡松平

    松岡(松)委員 先ほど私が例をあげましたのは、この間まで大村収容所におり、あるいはまだおるかもしりませんが、金梅節という渋谷高等学校の三年生であります。その兄の工業大学にいるのが泣いて私のところに来ましたので、私は法務大臣にもお願して、紹介をもらつてつたのですが、それはすでに韓国側と折衝済みで帰すわけには行かない、こういう回答に接しているわけです。今の御説明によりますと、それらも当然助かるべきもののようにも思うのです。つまり日本で生れて、日本の小学校を出、高等学校におつた。それをたまたま母親と一緒に送つた。来るときはそれは密入国なつているわけですが、その事情を述べて異議申立てをしたかどうか、この点は私はつまびらかではありませんが、大村におるということで兄が訴えて参りましたので、その兄を同道して実はお願いに行つたのであります。ところが大臣の紹介をもらつてつたときには、すでに韓国側の同意を得たから帰すわけに行かないと言われる。これでは私は今の御説明趣旨が合わないようにも思われるのです。実際兄の書いた手紙もありますが、実に切々たるものであります。日本を慕うことおそらくわれわれよりもまさつても劣るものではない、私はそういう感じを持つております。その手紙を大臣にもお見せしたのでありますが、その弟がひたすら求学の志を持つて日本にとどまろうと思つているものを、どうして韓国側の同意を得たからといつて、それをとどめることができなかつたかということを、私ははなはだ遺憾に思つております。こういうことは今後日韓の友好の上に大きなくさびとなり、かつまたアジア全民族に対するわれわれ日本民族としての交わりの上にも、私は大きな基礎をなすものであると思います。やはりお互いの融和というものは愛情でありますが、そういうものは全然踏みにじられておる。今の御説明を聞くと、そうでもなさそうである。ところがきようの新聞で見ると、それよりももつと事情の違つた日本に学校へ入るために入国して来た者も助かつておる。これはまことに片手落ちではないか。あまりにも審査取扱いの現実は形式的に行われておつて実情をよく調べておられないのじやないか、こういう疑いを私は持つのであります。その点はいかがでありますか。
  51. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 お尋ねの具体的の件につきましては、私は今思い出せないのでありまして、帰りまして調べたいと思いますが、私のところに毎日のよう朝鮮の人たち、あるいは朝鮮の人たちから依頼を受けました方々が見えまして、具体的の事情をよくお話をいただいておりまして、皆さん方がどんなにつらい目を見ておられるか、まことに今お話のありましたような切々たる感じに打たれるのでございます。具体的の問題につきまして、一々聞いてみますと、ほんとうにごもつともであり、何とかして救つてやりたいというふうに考えまして、いろいろ法の運用というようなことを考えておりますが、大局的に申しますると、終戦後に日本から朝鮮に引揚げました者は、約百七十万おるのでございます。この百七十万の人は、かつて日本に十年も二十年も、長きは三十年以上もおつたという人たち、要するに、日本に根をはやしていた人たちが百七十万、終戦後朝鮮に帰つたのであります。その帰るときは一体どうであつたか。韓国が独立するのだ、日本は今まで朝鮮をいじめておつたのだというので、勇躍して帰つた人たちなのであります。帰りましたところが、必ずしも新しい独立の夢が実現できなかつた。朝鮮動乱になりまして、悲惨な生活状態に置かれ、かつて生活した日本が恋しくなつたというので、再び日本に来られる。そのときに正式にパスポートをとられまして、堂々と入つて来られる道があいておるにかかわらず、密航して来なければならない。これはいろいろな事情がありまして、まことにお気の毒な面もあるのでありますが、こういうのが大体の原則でございまして、一々のケースではまことに気の毒であり、これを送り返せば、命を断つようなものであるということになるのでありますが、日本といたしまして、日本にかつて定住しておつた人をいざ救うということになりますと、この百七十万を全部日本がおいでなさい、引受けるという覚悟ができない限りは、なかなか踏み切れないのでございます。そこでわれわれの方の現実の扱いといたしましては、とにかく表門があいておる、独立した以上は表門からパスポートをとつてつて来ていただきたい、密航して入つて来る人は、絶対返しますということを申しておるのであります。しかしお話のように、やむにやまれず日本のためにかつて貢献した人、あるいはいわゆる政治亡命者あるいはかつて朝鮮においてロシヤ側が入つて来たときに、命をもつて日本人を守つてくれたというような、特別に日本のために働いてくれた人、日本側としてぜひ助けなければならないという人は、たとえ密航して、いわゆる法を犯して日本に来た場合といえども、何とかしなければいけないということで、そういう人たちは特別に大臣の特別許可というところで在留を認めるということをやつております。ただいまの学生のお話は、あるいは具体的の問題としましてはまことにお気の毒な問題であつた思いますが、われわれの方で審査をいたします際に、朝鮮にいつ帰つたか、そこが問題なのでありまして、引揚げで帰つたのか、あるいは終戦前に、戦争中疎開して帰つたのか、これが大きな違いなのであります。一応日本を見限つてつたのか、まだ日本であるうちに向うに、たまたま墓参りに行くといつて、それつきり帰れなくなつたというようなことであるのか、その具体的の例を当つてみませんとわかりませんが、なかなか簡単には申せないものがございます。われわれの方ではこの点日韓の将来の問題をも考えまして、十分慎重な審議をいたしまして、委員会できめているわけでございまして、決して軽軽に形式的にやつているわけではないのであります。
  52. 松岡松平

    松岡(松)委員 あなたの方の管理関係で、予算はどのくらいになつておりますか。その予算はおもにどういう方面に使われておりますか。この点御説明願いたいのであります。
  53. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 入国管理局の二十八年度要求いたしております予算は、約六億でございます。その中の二億程度は大村収容所における維持管理あるいは船で朝鮮へ送り返すというような費用になつております。あと北海道の札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、神戸、高松、松江、下関、福岡、大村、鹿児島等の十二箇所に管理事務所がございまして、全国を管轄いたしておりまして、密入国、それから横浜、羽田その他正規の海港から外国船で入つて参ります人たち、あるいは出て行く人たちを監視をいたし、あわせまして全国に約六十三万の外国人がいるわけでございますが、この全国六十三万の外国人の中で五十七万は朝鮮の人たちでありますが、日本に居住いたしております外国人に対して、ちようど日本では戸籍あるいは寄留というものに当るものでありますが、外国人登録をいたさして、所在を明らかにいたしております。そういう仕事をいたしておりますが、そのために約一億以上のお金を使つております。
  54. 田嶋好文

    田嶋委員長 外務省のアジア局第二課長廣田説明員がただいま出席されましたので、廣田説明員に日本漁夫射殺事件に関する外務省としての今までの取扱いについて説明を求めることにいたします。  本日の新聞によりますと、韓国官憲のために、拿捕された漁船に乗つてつた日本の漁夫が射殺されたということが報道されております。新聞の記事によると、外務省が何らかの処置をとつたというような報道がありますが、この点について今日まで外務省がとり得た処置並びに今後これに対していかような処置をとるべく、外務省は今日対策を練つているか、それを事務当局として説明願える範囲で詳しく御説明願いたいと思います。
  55. 廣田しげる

    ○廣田説明員 今委員長から御指摘になりました新聞報道がけさほどございましたので、私けさアメリカ大使館の方に行きまして、これの真偽を確かめましたところ、氏名等まだ大使館側にもつまびらかな情報が入つておりませんが、大使館の得た情報によりましても、日本人の漁夫が一名射殺されたという情報が入つているそうでございます。なお詳細調査方大使館の方に依頼しておきました。但しこの新聞にございます、漁船員の収容所内で射殺されたのではなくて、拿捕の際に、あやまつてか何か知りませんが、射殺されたように大使館には来ておりました。  そこで事件の起りましたのは二月四日の八時六分。大邦漁業株式会社に属します第一大邦丸拿捕されたのでございますが、第二大邦丸からの拿捕されますときの電報に、これは八時六分に出ております電報でございますが、「一、白浜沖にて朝鮮手繰りに横づけされた、船は五十トンくらいの木船、拳銃五発受けたが被害なし」となつております。それから少したちまして第二電が入りました。これはおそらく根拠地から打つた電報だと思いますが、「今曳航されている、自動小銃で撃たれる、被害なし」となつております。第二大邦丸の方から拿捕されましたときにこういう電報が入つておりますので、拿捕される際にもしそういう事件が起つたとすれば、第二大邦丸の方ではなくて、第一大邦丸の方であろうと思います。と申しますのは、第一大邦丸の方も無電は持つておりますけれども拿捕当時の第一大邦丸は何ら発電しておりません。従つてどういう事件がそこで起きましたか、今のところ詳細になつておりません。いずれにいたしましても、アメリカ側の方には事情調査方を依頼して、向うで引受けてくれております。  なお韓国側に対してでございますが、御承知通り韓国側はいわゆる李承晩ラインというものを引きまして、その中に入つて来る日本漁船拿捕するという不法行為をあえてしているわけでございますが、これに対しましては外務省からその都度抗議をしております。本件につきましても、この二隻の漁船拿捕について抗議しますと同時に、情報によればそういう射殺事件が起きたようだが、本件は人命に関することだし、政府としても重大関心を持つているので、厳重に調べて回答してくれ、そして損害賠償その他の点を留保しておく、こういう趣旨の抗議文を起案して、韓国代表部を通じまして韓国政府の方にもうすでに発送するばかりになつてございますが、そういう措置をとろうとしております。
  56. 田嶋好文

    田嶋委員長 あなたは事務当局でおわかりにならないでしようが、今御説明のような不法逮捕に対して、外務省としては実力をもつて対抗するというような処置をとる考えか、これは今のところどういうお見通しですか。
  57. 廣田しげる

    ○廣田説明員 今実力をもつてという委員長の御質問でございますが、こういう不法行為がございました場合に、被害船が実力をもつてやるということは、これは向う不法行為でございますので、あるいはこちらの不法行為というものは不法性が阻却されるのじやないかと思います。実際問題といたしまして、向う側は拳銃その他を持つておりますし、こちらは全然武装されてない漁船でございますので、実力をもつて対抗するということはむずかしいのじやないかと考えております。
  58. 田嶋好文

    田嶋委員長 私の聞いておるのはそういう意味でなしに、日本としては、こういうことが繰返されるとすればもちろんほつておけないわけです。今松野説明員にも聞いたのですが、実際手放しだ。向うは実力をもつて来るが、日本は今のところ実力をもつてやることができない。先般ソビエト機の不法侵入に対してああした強硬な声明を出した日本政府の実例がある。まして李ラインは不法だと日本人は考えておるし、また当局もこれに対して意思表示しておる。拿捕自体も不法だということがわかつておるとすれば、緊急避難というか、正当防衛というか、こうした処置は当然考えて行かなければならぬ問題だと思うのですが、こういう考え方を持つておるかどうかということだつたのです。
  59. 廣田しげる

    ○廣田説明員 前の御質問を誤解して恐縮でございました。ただいまの点でございますが、上層部がどういうふうに考えておるか私にはわかりませんが、私一個の意見を述べさしていただきますれば、こういう不法行為を抑圧する場合につきましては、現在武力のない日本としては実力を持つてそこで撃ち合いを始めるということはできないと思いますけれども、何らかこういう点を思い返させる意味の報復手段というか、そういうものは十分とり得るものだし、そういう点は考える必要もあるかと思います。ただただいま日韓の問題につきまして、先般李大統領も日本に来て吉田総理、岡崎外務大臣ともいろいろ話されたようで、現在のところ両国間の空気がやや好転しておる。これによりまして去年中絶されました日韓会談も再び開いて、そうして両国間の懸案を大乗的、大局的見地から互譲の精神をもつて解決する、こういう空気になつておりますので、拿捕事件というのは非常に不法だと思うのでございますけれども、こういうものを実力によらずに、何らかの話合いで円満裡に解決いたしたい、こういうふうに希望いたしております。
  60. 田嶋好文

    田嶋委員長 もう一つお伺いしておきます。今度の処置は損害賠償等を留保してあるということですから、非常にいい抗議だと思いますけれども、今まで不法拿捕と思われる事件は、他にもあると思うのですが、これに対して厳重な抗議を発した先例がありますか。
  61. 廣田しげる

    ○廣田説明員 乗組員が射殺されたというケースはこれが初めてでございますが、今まで日本漁船拿捕されたケースが間々起きておりますから、その都度抗議しますと同時に、その返還――乗組員とともに返すこと、それからそれによつて受けた損害を請求する権利を全部留保してございます。
  62. 松岡松平

    松岡(松)委員 韓国との関係において、そういうケースはどのくらいあつたのですか。
  63. 廣田しげる

    ○廣田説明員 今手元に発料を持つて参りませんでしたけれども、これはいわゆるマツカーサーラインのありました当時から起つております問題で、それから数えますと相当の数になります。  また去年の四月二十八日、いわゆる平和條約が発効した後におきましても、これは私の記憶でございますが、二十件くらいには上ろうと思つております。なお詳細に資料ができておりますが、私きよう持つて参りませんでした。
  64. 田嶋好文

    田嶋委員長 それでは、外務省からの資料を後ほど提供されるように願います。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いろいろの問題が韓国日本との間に起るようでありますが、われわれが今後どういう対策をとるべきかの根本といたしまして、韓国日本との法的関係及び現在における韓国アメリカとの法的関係と申しますか、この関係を御説明していただきたいと思います。われわれが、韓国人あるいは韓国政府不法行為に対して抗議を申し込む根底は、いかなる法的関係に基いて抗議を申し込むのであるかというような、根本についての御説明をいだたきたいと思うのであります。なお、韓国日本との交渉が今どの程度進行しておるのであるか。しかもそれは近い将来において妥結を見る見込みであるかどうかというような見通しについても、御説明をいただきたいと思うのであります。
  66. 廣田しげる

    ○廣田説明員 御質問の第一点の日韓の法的関係の問題でありますが、これは桑港條約第二條によりまして――私はその文句を今空で覚えておりませんけれども日本は朝鮮の独立を認め云云という言葉がございます。それで、かつ桑港條約が去年の四月二十八日に効力を発生いたしましたので、日本としては韓国の独立を認めたことになります。但し、日韓間にはまだ外交関係というものが設立されておりませんので、まだ正式の国交は開けてない段階であると考えております。  それから韓国アメリカとの法的関係でございますが、これも私今年月日を記憶しておりませんが、たしか第五回の国連総会だつた思います。韓国の、今ちようど大韓民国の占めておる部分に対してコントロールを持つておる政府として、かつ朝鮮人民の大部分の支持を受けておる政府として、大韓民国政府を認める、これが朝鮮における唯一の合法政府であるということが、国連総会で決議されました。これに基きまして、これも日にちは忘れましたが、アメリカは大韓民国政府を認めたわけでございまして、アメリカ韓国との間には現に大使を交換されまして、いわゆる外交関係が開かれておる、こういう状況でございます。  最後に、日韓会談の交渉段階及び見通しについてでございますが、先ほども申し上げました通り、今年の正月に李承晩大統領が日本へ参りまして、総理、外務大臣とこの問題についてもいろいろ話されたように聞いておりますが、お互いに友好的に、去年中絶された会談を再開してやろうというので話合いがあつたように承知しておりますので、現在双方ともにその再開について準備中でございまして、近い将来に再開されるのではないかと思つております。その見通しでございますが、そういうような空気のもとに、しかも外務大臣が新しい角度からやる、あるいは互譲の精神でやるということを申されておりますし、こういう精神のもとに今回は円満に妥結されるということを希望しておる次第でございます。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そのときの日本の認めた韓国というのは、あとでアメリカとの関係で御説明になりました国連の認めた韓国の意味でございましようか。たとえば南鮮と北鮮がある場合に、北鮮の政府に対してはどういうことになつておるのか。日本政府の認めた韓国というのはどの範囲の韓国でありますか。
  68. 廣田しげる

    ○廣田説明員 桑港條約の第二條には朝鮮という言葉を使つておりますので、これは地域的にはいわゆる朝鮮半島――昔からいわれている朝鮮を指したものだと思います。それから、今度会談をやるにつきまして、日本が相手にする大韓民国というのは、現在のところ、大体朝鮮の南半分にコントロールを持つている大韓民国政府のことを指すのであります。     ―――――――――――――
  69. 田嶋好文

    田嶋委員長 接収不動産賃借権に関する件について協議をいたします。  この際、本件につきましてただいままで研究準備をいたして参りました村専門員から説明を聴取いたしたいと思います。村専門員。
  70. 村教三

    ○村専門員 命によりまして、接収不動産の賃借権に関する事項について御報告申し上げます。  顧みますと、終戦直後わが国に占領軍の進駐を見るや、占領軍はただちに不動産の接収を開始したのであります。その状況を見ますと、接収を要求された人々は、進駐軍が何をするかもしれぬという不安の念にかられ、不動産に関する権利の確保というとまもなく、涙をのんで多年住んだ地域の土地または建物を去つて、他の地域に仮の住所や営業を求めた次第であります。この不安の気持と打撃とは、接収不動産をめぐつて所有者も賃借人もまつたく動揺いたしました。爾来約六年間、占領中はいつの日にか元の場所に帰れるように待ちに待つていた次第であります。昨年四月二十八日わが国の独立後は、不動産の接収はぼつぼつ解除されることになり所有者も賃借人も喜んだ次第でありまするが、この際問題となつたことは、接収不動産を所有者と賃借人のいずれに返還するかということでありました。というのは、接収期間中多くの不動産は原形をとどめず、原状回復の形で返還されないので、政府はこれを権利者の確認される所有者に返還いたしましたが、近年はまた賃借人にも接収解除を通知するようにいたしております。ともかくも所有者だけに接収不動産を返還するということは賃借人の耐え忍ぶところでなく、自分たちも元の不動産に帰りたいとて、ここに所有者と賃借人との間に紛議を生じたのは当然でございます。もつとも都心にあるビルデイング等におきましては比較的に協議ととのい、紛議は少いようでありますが、密集地域におきましては中産階級の住宅、営業所のあつたところで強制疎開と接収とが二重に重なつているところでは、協議は容易にまとまらないようであります。ごこにおいて接収不動産に関する戦争犠牲は、これを所有者と賃借人双方にて負うべきものとし、相互の調整をはかるため、これを立法によつて解決することが早期解決のため必要と認められるに至つたのでございます。お手元にお渡ししてあり、また前にもお渡ししたことがある案は、そういう趣旨のもとに構想されたものでございます。  最後にこの立法化の経過について一言申し上げます。この種の法案の必要は、接収解除と同時にすでに昨年の春特別調達庁においてこの必要を認め、「連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案」と題する法案を提案したのでございますが、政府案として成立するに至らず、法務府民事局におきましても、これに対し全面的な賛成をされなかつたのであります。次官会議におきましても議題とはなりましたけれども、結論は得なかつたと聞いております。衆議院の法務委員会におきましては、専門員室におきましてこの請願、陳情を受けるや、委員会の意向によりまして昨年七月一応の処理要綱をくふうし、政府の総合的見地から立案方をお勧めしたのでありますが、政府の法制局におきましていまだ成案を得ないうちに、衆議院は解散となつた次第でございます。何とぞ小委員会を設けまして條文起草に進むことができるように、おとりはからいをお願いをする次第であります。
  71. 田嶋好文

    田嶋委員長 この際お諮りをいたします。すなわち本件について調査を進めるため、接収不動産の権利調整に関する小委員会を設置したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次に、小委員の選任についてお諮りいたします。小委員はその数を九名とし、先例に従いまして委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認め、委員長において指名いたします。    佐治 誠吉君  福井 盛太君    松岡 松平君  松山 義雄君    大川 光三君  小畑虎之助君    田万 廣文君  古屋 貞雄君それに私を加えて以上九名を指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。     午後三時五十五分散会