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1952-11-24 第15回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月二十四日(月曜日)     午前十一時二十分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 小畑虎之助君    理事 石川金次郎君 理事 猪俣 浩三君       相川 勝六君    熊谷 憲一君       小林かなえ君    花村 四郎君       福井 盛太君    古島 義英君       松永  東君    大川 光三君       清瀬 一郎君    後藤 義隆君       長井  源君    木下  郁君       田万 廣文君    多賀谷真稔君       古屋 貞雄君    木下 重範君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法務政務次官  押谷 富三君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         検 事 総 長 佐藤 藤佐君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月二十四日  委員風見章君辞任につき、その補欠として木下  重範君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二十二日  石川町に簡易裁判所設置請願白井正明君紹  介)(第二九号)  久万の台附近少年院設置反対請願關谷勝  利君紹介)(第一一八号) の審査を本委員会に付託された。 同月十九日  住民登録費増額に関する陳情書  (第二〇五号)  戦犯者釈放に関する陳情書  (第二〇七号)  同(第二  〇八号)  同外一件(第二〇  九号)  同  (第二一〇号)  同外四件  (第二一一号)  同  (第二一二号) 同月二十一日  戦犯者釈放に関する陳情書外一件  (第三〇八号)  同(第三  〇九号)  同(第三一〇号)  同(第二二一号)  同外四件  (第二二二号)  戦犯者の助命、減刑釈放に関する陳情書外十  一件  (第三一三号)  同  (第二二四号)  戦犯者釈放家族救済陳情書  (第三一五  号)  戦犯者減刑釈放並びに抑留同胞引揚促進に  関する陳情書  (第三一六号)  死刑撤廃に関する陳情書  (第三一七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国連軍裁判管轄権に関する件     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  国連軍裁判管轄権に関する件について調査を進めます。去る二十二日緊急逮捕された英濠兵自動車強盗容疑事件について、各関係当局より実情を聴取分ることにいたします。  この際お諮りいたします。本件について実情を聴取するため、警視総監田中榮一君を参考人に決定することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  3. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。それでは田中参考人より実情を聴取することにいたします。田中参考人
  4. 田中榮一

    田中参考人 ただいま御紹介にあずかりました警視総監田中榮一でございます。今回まことに遺憾なことでありまするが、首都東京都内におきまして、白晝堂々英濠軍の三人の兵士自動車強盗を行いましたことは、国際親善の上から真に遺憾にたえないのであります。すでに皆さんも御承知のように、神戸市内におきまして英連邦の水兵が強盗事件を犯しまして、その刑事裁判権が国際問題にいろいろ紛議をかもしておるそのやさきに、再びこうした事態が東京都内に発生いたしましたことは、まことに痛恨にたえない次第でございます。幸いにいたしましてその犯人は、一名は濠洲エビス・キヤンプ内のMPの手によつて逮捕せられ、他の二名は容疑者として日本警察の手によつて逮捕せられたのでありまするが、その犯行状態捜査概要につきまして一応御説明を申し上げたいと存じます。  犯行昭和二十七年十一月二十一日午後二時二十分ごろ、新宿区の明治神宮外苑陸上競技場の前の道路上でございまして、被害者は杉並区天沼一ノ百七十二、日ノ出自動車株式会社運転手合田忠一君二十三歳で、被害の金額は現金二千八百円、それから銀座から品川、五反田、六本木を経て現場に至る自動車賃、これだけが被害概要であります。  犯行概要は、同日午後一時三十分ごろ、中央区銀座西一ノ一ホテル金竜方の前から濠洲兵らしい三人の人物を乗せて外苑に到着したところ、そのうち一名に拳銃で脅迫せられ、運転台道具入れの中から現金二千八百円を強奪し逃走いたしましたが、犯人はさらに現場に通りかかつたロビンス交通会のタクシーに乗車いたしまして、銀座方面逃走を企てたのであります。  それから第二の自動車の乗り逃げの状況を申し上げますと、運転手ロゼンス交通株式会社常深幸三君二十三歳でありまして、これは別に金は強奪されないのでありますが、自動車料金六百八十円は支払いを受けないのであります。ただ犯人逃走の目的をもつて自動車に乗りました関係上、乗車するやただちに日本語で「銀座」と言いまして、大型の拳銃を持つて左の脇腹のところに突きつけられまして、「急げ急げ」と言われました。それでその運転手は非常に恐怖を感じまして、フルスピードで道路を走りまして、そうして港区南佐久間町ニノ四イースタンモーター株式会社の前あたりでその自動車を乗り捨てまして逃走を企てたのであります。そこで常深運転手は、ただちに付近通行人の応援を得ましてこれを追つけたのであります。ところがあるところに参りまして拳銃を擬しまして通行人を脅迫しまして、やがてその拳銃を遺棄してさらに逃走を企てたのであります。  かような事実が発生いたしましたので、この通報本庁といたしましては、午後二時三十三分ごろ港区南佐久間イースタンモーター株式会社の社員の川島三義君から一一〇番の電話で、ただいま自動車強盗があつた旨の急報を受けたのであります。そこで愛宕署員はただちに現場へはせ参じましてその付近一帯を捜索いたしました。本庁としましては午後二時四十五分ただちに全管内指令通信をもつて濠州兵らしき三人の兵隊自動車強盗犯行して逃走した旨を通報いたしまして、その手配をいたしたのであります。さらに引続きまして午後三時二十三分指令第二号をもちまして、被害者である常深運転手陳述をまちまして、犯人の三人の人相並びに服装特徴等をとりまして、これをただちに全管内に流したわけであります。それから午後四時四十六分四谷署から緊急警戒をしいている旨の連絡がありました。そのほか全管内としましてはただちに緊急警戒をいたしまして、要所々々にあるいは自動車検索を行うとか、あるいは職務一般のそうした疑わしい者に対して追尾するとか、いろいろな法をもつて警戒をして参つたのであります。さらに午後十一時十分、刑事部長名をもちまして、特に自動車と宿屋について徹底的な検索と申しますか、臨検を行いまして、もし容疑者とおぼしき者が宿泊しておつたならば、ただちに逮捕するよう手配をいたしたのであります。  さらに事の重大性にかんがみまして、零時四十三分、異例な措置といたしまして、警視総監名をもちまして、特に旅館、それから売春婦等の常に宿泊するよう安宿その他必要と認めらるべき場所について緊急に取調べ、あるいは臨検を行うよう、徹底的な捜査をいたすように命令をいたしたのであります。  大体犯罪概要並びに本庁といたしましてとりました措置概要につきましては以上のよう状況でございますが、犯行を犯した二十一日の午後三時過ぎでありましたか、脱走兵らしい者が一名、銀座のニユー・トーキヨーにおきまして、濠州人のMPによつて逮捕せられた旨の通報があつたのであります。われわれの方の捜査方針といたしましても、捜査上の一つの勘で、大体濠州兵脱走兵がやつたのではないかというようなことを予感いたしまして、ただちにエビス・キヤンプの方にも連絡をとりまして、脱走兵状況につきましていろいろ承つたのであります。ところが大体今回逮捕になつてつたような者も脱走兵としておるということもほぼ承つたのであります。それから二十二日の午前三時ごろこの緊急手配によりまして、各署から濠州兵らしい者が現在管内安宿売春婦とともにとまつておるという情報を受取りまして、その都度宿泊せる旅館等につきまして、一々厳重に調査をいたしたのでありまするが、大体において、いずれも該当容疑者ではないことが判明いたしたのであります。ことに代々木警察署から報告を受けました濠州兵らしい者が二人とまつておる、どうもその特徴が非常に似ておる。一人はあばた顔である。一人は歯が抜けておる。そしてあばた顔の男は非常に背が高い。一人の男は歯が抜けておつて少し額のところにきずがあつて、血が流れておるというようなところまでわかつておりますので、どうもそれに似た者が宿泊しておるということで、これはまさに容疑者に違いなかろうと、非常に張り込んで警察官と参つて取調べをいたしたのでありますが、当つてみましたところ全然それではなくて、まつたく人違いであつたのであります。それから二十二日の午前十一時ごろ、神楽坂警察署から、実は今管内白鳥巡査派出所に、国際交通株式会社自動車運転手である三橋正四君から、どうもそれこ該当した濠洲兵らしい者を自分が乗せて、新宿歌舞伎町喜鶴ホテルにきのう連れて行つたが、どうもそれではないかと思う、自分は今朝新聞を見て、そういう事実を知つて、あるいに自分の乗せた兵隊さんがそれではないかと思うが、御参考までにお知らせするという届出があつた。その届出で、ただちに神坂警察署から、こういう届出があつから参考に知らせる、ただちに本部員並びに被害者を遮れて現場に行きたいからというので、本部神楽坂警察署と協議の上で、第一の被害者でありまする合田運転手を伴いまして、ただちに新宿歌舞伎町喜鶴ホテルに急行いたしたのであります。そして、そのとまつておる濠州兵らしい二人に面通をいたしましたところが、合田運転手がこの二人に間違いないということを即座に断言いたしたのであります。そこで二人を任意同行の形式で四谷警察署同行を求めたのであります。それで任意同行を求めましていろいろ様子を見ましたところが、非常にぶるぶるふるえておりまして、様子ただごとでない。もし白であつたならば何もこんなにふるえる必要はないのでありますが、非常に挙動がおどおどして身ぶるいしておる。合田運転手面通しでこの者に間違いありませんというその言葉と、本人らのさよう挙動からいたしまして、大体においてこの二人に間違いなかろう、かような点から緊急逮捕をいたして、ただちに右両名の取調べに当つたのであります。  なお国連軍将兵等犯罪につきましては、法務府からの通達の筋もございます。すなわち日本側において国連軍将兵身柄を拘束したときは、すみやかに当該国連軍将兵の所属する軍の当局にその旨連絡して、なるべく円満な了解を得るよう努力するごとという通達の筋もございますので、ただちに責任者エビス・キヤンプに派遣いたしまして、ただいま日本警察側によつて自動車強盗を働いた貴部隊の兵十三名を緊急逮捕いたしたからその旨連絡するということを正式に連絡いたしたのであります。その際英当局側からも、その事実はよく了承しておる。いま一名共犯者らしい者がある。それに対して当キヤンプにおいても一名逮捕しておる。大体において自動車強盗の事実を本人は認めておるからして、その旨参考にお知らせするという好意的な報告を受けております。私は今回のこの自動車強盗がたまたま国連軍兵士によつて行われたことは、いろいろの点につきまして今後の捜査上にも非常に支障を来すので、いろいろその点を心配したのでありますが、今までの英濠軍捜査に対する態度はきわめて協力的でありまして、この点は、いろいろこまかい点につきましては向うも立場がありますので、いろいろ要求することは要求いたしますが、総じてこの犯罪者を必ず検挙する、事実をはつきりする、隠し立てはしないという点については、きはめてフランクリーに、またフレンドリーに当方協力をしていただいておりますことは、われわれとしてまことに好感が持てるのでりまして、今後こうした事件が絶対に起らぬことをわれわれは念願いたしておるのでありますが、将来こうした問題がかりに不幸にして起つた場合につきましても、われわれとしましては国連軍捜査に信頼を持つてさしつかえなかろうと考えております。  それからただいままでに判明しました事実について申し上げますると、当方喜鶴ホテルにおきまして逮捕いたしました者は、一名は濠州兵パットン一等兵、それから一名は英連邦軍ヘツプレス一等兵であります。これらの捜査のこまかい点でございますが、この点はまだ捜査過程にございますので、皆さんもこの点はよく御了解いただけるものと考えておりますが、詳しい点につきましては今後いろいろ外交折衝の問題も将来起るのでありましようし、また公判等におきますいろいろな論議もかわされるでありましようし、また今後検察庁側におきましてもなおかつ詳細に取調べを重ねることであろうと考えますので、私から具体的なことにつきましてここで申し上げることは、いたしたいのでありますが、さよう状況でありますので、ひとつ御了承を願いまして、さしつかえない程度において一応お話申し上げて、御了解を得たいと思います。  このヘツプレス一等兵日本警察当局並びに日本社会に対して、自分がこうしたことを犯したことに対してはまことに申訳ない、ここにつつしんで謝罪をするというステートメンテを書いて、それに署名をしております。だがその犯行の具体的な内容については依然として黙秘をいたしております。これは自分英軍警察当局が調べたならば、一応陳述はするけれども、目下のところは陳述したくないということであります。従つてこの日本警察当局並びに日本社会に対してこういうことを犯したことはまことに申訳ないということをおわびをしておるということは、大体犯罪内容を認めておるというふうに考えてまずさしつかえないのではないかというふうに、これは捜査当局の考え方でありますが、さように考えております。  それから濠洲兵であるパツトン一等兵の方は、大体この犯罪概要を自供いたしております。非常に詳細具体的に自供いたしております。これも、まことに悪いことをして済まなかつたということを述べております。  それからなお本日午前十時二十分に警察当局としては一応二名の取調べを完了いたしまして、その他被害者並び目撃者その他参考人陳述書も添付いたしまして、事件一切を東京地方検察庁の方へ送致を完了いたしました。一応事件としましては第一線である警視庁の手を離れて、検察庁の方へ移つたわけであります。  それからなお三人で犯行いたしたのであります。実はあとの一名も日本警察でぜひ逮捕したかつたのでありますが、一名は濠洲軍MP側において逮捕せられたのであります。この者は多分シンクレアであると考えております。これはパツトン一等兵陳述からいたしましても、あとの一名がシンクレアであるということがわかるのであります。なお濠洲軍当局におかれましても、一名の脱走兵自動車拳銃強盗を犯したということを参考に実にフランタリーにこちらに通報していただいておりまする関係上、このシンクレアがやつていることには間違いなかろうと思います。  それからなお正式にはシンクレアであるということを私どもには通告しておりませんが、シンクレアであるという事実は、この共同正犯の一人である者が陳述していることと、昨日の午後二時に濠洲軍の恵比寿のキヤンプ司令官から、一名わが方で逮捕している容疑者があるが、その容疑者自動車拳銃強盗を犯したかどうか、被害者並び目撃者参考人面通しを許すから、ぜひ来てもらいたいという正式通報がございましたので、日本側から関係捜査官とそれから第一の自動車運転手合田運転手と第二の自動車運転手常深運転手、それから二十日の晩にこの二人が銀座一丁目金龍ホテルというホテルに宿泊しておりますが、その金龍ホテルレストラン部の主任の柴田君とルームボーイ、これは通訳も兼ねておるそうですが、ルームボーイ山本君、それから最後の現場において拳銃を遺棄した当時の目撃者の平野君の五人を帯同いたしまして、午後二時に恵比壽エビス・キヤンプ参つたのであります。その面通し方法としましては、キヤンプ内の修理工場内の六十坪ぐらいのガレージに、同じ服装をした濠洲兵十三名を一列に並べまして、まず一人ずつ面通しをして行きまして、もし該当者があつたならばその肩をたたくというのが合図であります。そして一人が済みますと向うに連れ去つて、その十三名の列を全部かえてしまつて、次にまた面通しをする。それが済むとまたそれを離して、列を組み直して面通しをするというよう方法でやつた結果、合田山本柴田の三者が的確にシンクレアの肩をたたいたそうでありまして、あとの二人はあまり確かでなかつたようであります。五人のうち三人までが的確に、見た瞬間に肩をたたいているのでありますから、これはもう間違いなくシンクレアであるということは一応これをもつて推定できるのであります。  なお犯罪の動機でありますが、パツトンはじようだんで拳銃を擬したと言つておりますけれども、それでは金を奪つたのもじようだんかと聞いてみると、これは沈黙しているわけであります。酒を飲んでおつたとか言つているようでありますが、意識が不明なほど酒は飲んでおりません。自動車逃走するような企てまでいたしておりますから、意識はしごく明瞭でありまして、全然酔つたといううちには入らぬのであります。  二人の身柄取扱い方でございますが、警視庁といたしましては一般自動車強盗事件として取扱つておりまして、これを特別な事件として取扱つておりません。留置場本庁に連れて来ずに、一応現在としましては四谷警察署留置場に留置いたしております。ただ将来いろいろ国際問題の発生した場合におきまして、待遇等についてまたいろいろ問題が起ると申訳ございませんので、二人の取扱いにつきましては、やはり国柄が違い、寝具食事その他日本人とは大分違いますので、向う生活風習を十分に尊重いたしまして、食事寝具その他の取扱いについては日本人違つた取扱いをやつておりまして、この取扱いについては右二人の被疑者も十分満足してくれております。また濠洲人将校の方も、二人の取扱いについて非常に心配して参りましたが、この点については絶対に心配せぬでよろしい、取扱いは十分に考えているということで、安心して帰られました。現在取扱いについてはさように慎重な方法でやつているわけであります。  なおこうした事件が発生いたしましたので、私どもとしましても今後またこうした事件が発生いたしましたならば非常に困ると存じまして、今後も治安保持の上からこういつたことが再び起らぬように特に注意をいたしたいと思つている次第であります。
  5. 田嶋好文

    田嶋委員長 これにて田中参考人説明は終りました。  発言の通告がありますから、順次これを許します。  発言者にお願いをしておきます。後刻岡崎外務大臣犬養法務大臣の御出席があることになつておりますが、御存じのように本日は一時から本会議がございます。そこで委員会もそれまでに切り上げなければならぬと思つておりますので、田中参考人に対する御質疑はなるたけ簡易にお願いしたいと思います。なお田中参考人におかれましても、重複を避けて簡易なる御答弁を願いたいと思います。松岡松平
  6. 松岡松平

    松岡(松)委員 田中さんにお尋ねいたします。先ほどのお話で、向う側に抑留されている一名は脱走兵らしいという話がありましたが、当方側に抑留されているパットン一等兵、へツプレス一等兵というのは脱走兵なのか、あるいは脱走兵でないのか、この点がちよつとわからなかつたのです。  さらに向う側に抑留されているシンクレヤの引渡しを要求されたかどうか、さらに引続いて取調べをなさる意思があるのかどうか。また英濠軍の方で取調べを認めるのかどうかということ。  それからパツトン一等兵日本側に対してステートメントを出して陳謝の意を表しているが、一方において日本側裁判を受けたくない、逆に言うと向う側裁判ならば犯罪内容をつまびらかにしたいということをはつきり言つているのかどうか。  それからあなたはヘツプレスが言つているとおつしやつたが、パツトンはどう言つているか。  またお聞きすると、犯罪捜査の上で非常に民衆協力しているということですが、一般国内犯罪の場合に比して、民衆か非常に協力的であるという感じをお受けになりましたか。  これらについての田中さんの御意見を伺いたい。
  7. 田中榮一

    田中参考人 脱走兵であるかどうかということは、実は最初私どもにはわからなかつたのであります。ただその犯行状態からいたしまして、多分これは脱走兵の所為であろうということを捜査当局としてはまず予感いたしたのであります。脱走兵取扱いにつきましては、従来ときに脱走兵これこれの者がおるからこの情報について提供してもらいたいということを依頼される場合があるのであります。その場合にその脱走兵らしい者がおつたならば、ただちにその所在を突きとめまして国連軍警察当局通報しておるのであります。またしもそれを追いかけて逮捕してほしいというような特別な依頼があつたときには逮捕いたすのでありますが、普通逮捕してくれとは言わずに、その所在に関する情報を提供してくれということを言つて来ますので、その場合にわれわれとしてはできるだけの協力をいたしておるのであります。ところが従来英濠軍脱走兵につきましては、他は存じませんが、警視庁管内においては脱走兵通報は今まで受けておりません。従つてわれわれの方としましては脱走兵であるかどうかということは存じません。また脱走兵であるということも正式に英濠軍当局からは通報を受けておりません。ただ関係将校がこれは脱走兵だということを言つておるだけでありまして、われわれとしましてはこれ脱走兵であるかどうかということは了承してお  りません。それから引渡しを要求したかどうかということでありますが、一応われわれといたしましては、この二人が完全に犯行を自供しまして、そしてもう一人の者が共同正犯であるということが確実にわかつたときに引渡しを要求いたしたいと考えております。ただ現在の過程におきましては、警察側といたしましては四十八時間の持時間内にこれを処理して検事局に送致いたすのでありますけれども、もう捜査過程は先ほど説明申し上げましたように大体完了いたしましたので、今引渡しを要求するかどうかということは今後十分検察当局とも協議しました上で、引渡しの必要があるならばこれは捜査当局から英軍当局に申し入れるのではなくして、やはり筋道を通しまして外務省から正式に、国と国との間の交渉で引渡しを要求するのが当然であると考えておりますので、もしさような場合におきましては、さような正式な手続をもつて要求してみたいと考えております。  それから日本側裁判を受けたくない、国連側裁判を受ければいい、こういうことのお話でありますが、これは正式にそういう話を容疑者から聞いたのではなくして、容疑者としましては、ことにヘツプレスという一等兵は、当初英国大使館弁務官が来たならば立ち会わしてもらいたい、そうしたならば自分陳述するからということを申し出たのでありますが、英国弁務官を立ち会わせる必要はありませんので、私どもは拒否いたしました。やがてまた、向う英軍調査官が調べるならば自分は逐一自供してよろしい、こんなことを言つていたのであります。しかしもし持時間内に自供しないならば、第三者の目撃談あるいは証拠物件その他の傍証を固めて、これが犯行を犯したものであるという捜査官の認定によつて事件を処理してもさしつかえないのであります。これは裁判を受ける、受けないは別問題といたしまして、さよう方法事件を送致いたしてしまつたわけであります。  それから今回の事件について民衆協力が特に著しかつたかどうかという話でありますが、これは今回の事件についてのみ非常に協力してくれたのではなくして、従来いろいろ新聞紙等によりまして報道機関も非常に協力してくれまして、犯人の人相とか風体とか、そうしたものを逐一詳細に報道していただいておりますので、そうしたことを十分一般民衆の方々も読みまして、これではないかというのでいろいろ参考に、聞き込みあるいは事実を持ち寄つていただいております。特に今回非常に多かつたというわけではありませんが、かつて本年の三月ごろでしたか、千住の富士銀行に外人のギヤング事件が起つた。このときも相当協力していただいております。そのほか特に著しい日本人の手による普通の刑事事件につきましても、第三者の目撃談なりその他いろいろな聞き込みなり、いろいろな報告をしていただいておりまして、これらが私ども捜査の大きな力になつていることは、まつたく感謝いたしております。
  8. 松岡松平

    松岡(松)委員 今の脱走兵のあつた場合、向う一般的には通知して来ないのですか。
  9. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの御質問は、特に脱走兵で何か非常に重大なる犯罪を犯してそれが脱走したというようなときには、国連軍警察当局におきましてもさような必要から、これこれしかじかの者が脱走したから至急に情報を提供してくれということはあつたようでありますが、特に脱走兵があつたから、ただちに階級、氏名まで日本警察通報はいたしておりません。
  10. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると脱走兵というのは、もちろん必ず犯罪を犯すとは限りませんが、犯罪を犯す確率が非常に多いわけでありますね。そういう場合に相手軍隊から、日本の治安を守るために通知してもらわないとお困りになりませんか。
  11. 田中榮一

    田中参考人 この点につきましては時折軍の憲兵当局とも連絡をとりまして、憲兵当局からも特に脱走兵等について情報提供の特別な依頼もあるのでありますが、現在私どもとしましては、この脱走兵というのは要するに国連軍の軍規違反者であります。従つて日本警察がこれを逮捕するとかしないとかいうことは、軍規違反者でありますから警察としてこれにタツチはいたしておりません。ただ今お話よう脱走兵はややもすれば犯罪を犯しやすいのでありまして、この点につきましては憲兵当局にも、脱走兵はなるべく日本警察の方にも連絡をとつて、こうした者が一名も国内にいないようにぜひお願いしたいということは、かねがね連絡会議等におきましても申し入れておる次第であります。
  12. 田嶋好文

    田嶋委員長 大川光三君。
  13. 大川光三

    ○大川委員 いわゆる英濠兵強盗事件というものは、結局被疑事実は三つになるのでしようか。言いかえますと、第一の日ノ出自動車運転手合田に対する現金強奪、乗車賃の強奪、第二のロビンス交通の常深運転手に対する乗車賃の強奪、第三に通行人を脅迫したという事件は、一つですかあるいは三つですか。
  14. 田中榮一

    田中参考人 今捜査当局として考えておりまするのは、大体合田運転手をピストルをもつて脅迫しまして二千八百円の現金を強奪したという点と、それから銀座から方々乗りまわして外苑まで来た自動車賃の乗り逃げをいたしております。この二つであります。それから常深運転手の方は拳銃で脅迫しまして、そうして港区芝まで来まして脅迫して自動車賃を払わぬ。これは金を強奪したものではありません。自動車賃を乗逃げしてしまつた。この二件であります。第三の通行人を脅迫したということにつきましては、まだ十分事実が判明いたしておりませんので、やはり捜査当局としては、はつきりした事実のみを取上げてこれを地検と協議したい、かように考えております。
  15. 大川光三

    ○大川委員 そうしますと、第一事実の合田運転手のときには拳銃を使用いたしたというふうに承りましたが、もう少し詳しく申しますと、どういう手段、方法で金を強奪したかということです。
  16. 田中榮一

    田中参考人 先ほどちよつと申し上げたと思いまするが、三人で乗り込みまして、そのうちの一名は、多分シンクレア一等兵じやないかと思いますが、現在その拳銃シンクレア一等兵の物らしいのであります。そのうち一名が、拳銃本人をうしろから脅迫しまして、そうして他の者が、運転台道具入れの箱がございます、その中からいきなりわしづかみに、ありました二千八百円の現金を強奪しまして、その自動車をおりたということであります。それからいま一人の常深運転手の脅迫の仕方は、停車せしめて、ただちにどかどかと三人が乗り込みまして、日本語で銀座々々と呼びまして、常深運転手の席の向つて左側にいた男が、体を運転台の方に乗り出した、左手に大型のピストルを持つて、私の左のわき腹のところに突きつけて、ハバ・ゴー・ヘヤと言つたので、私はびつくりして自動車をつつ走つた、こう言つておるのでありますが、大体一人が拳銃を突きつけて、早く行け早く行け、こう言つて脅迫したのではないかと思います。
  17. 大川光三

    ○大川委員 そうすると犯行に使用した拳銃は一ちようですか。
  18. 田中榮一

    田中参考人 喜鶴ホテルで、バツトン、ヘツプレスの二人の兵隊逮捕いたしましたときに、それぞれ拳銃を持つておるのではないかというので、ただちにポケツトへ手を入れまして、全部身体検査をいたしましたところが、全然拳銃は二人とも持つておりません。それから宿も捜査しましたが、拳銃を隠匿しておりません。従つてこの二人は拳銃を持つておりません。結局拳銃は、遺棄してあつたのを今警察が一ちよう手に入れておりまするが、その拳銃一ちようだけのようであります。
  19. 大川光三

    ○大川委員 それからもう一つ、聞き漏らしたかもしれませんが、結局犯人逮捕の時刻はいつの何時ごろになるのでありますか。これがやがて四十八町時間の起算点になると思いますので、犯人逮捕の時刻を……。
  20. 田中榮一

    田中参考人 犯人逮捕は、二十二日の午後十二時十五分に逮捕いたしたことになつております。
  21. 田嶋好文

    田嶋委員長 田万廣文君。
  22. 田万廣文

    ○田万委員 先ほど松岡さんからの御質問に対して、シンクレアという濠州兵引渡しの請求については、共同正犯であるということが確認された場合に、これを請求するというような御答弁がございましたが、間違いございませんな。
  23. 田中榮一

    田中参考人 日本側取調べによりまして、三人が共同正犯犯罪を犯したという事実が確認されました場合、当然引渡し要求の事由があると考えております。
  24. 田万廣文

    ○田万委員 共同正犯であるということの確認は、私ども考える場合において、今のシンクレアというのが相手側の方に行つておりますから、それをこちらへ引渡してもらつて日本側において調べることによつて、確認されるものと思うのです。ぜひとも引渡しということが先決問題でなければならない。それを確認されたと言うのであるが、どういう段階に来た時分に確認されたということになるのでありますか。あるいはパツトンという濠州兵が自供をしているその自供によつて関係を確認なさるのですか。
  25. 田中榮一

    田中参考人 私の方では確認はいたしております。その確認の心証といたしましてはいろいろあるのです。その一つは、銀座一丁目の金龍ホテルから三人が合田運転手自動車に乗り込みました際に、これは二十一日の午前中のことですが、先ほど申し上げました柴田というレストラン部の主任と、ルームボーイをしておりました山本というボーイさん、それからもう一人のボーイさんが合田運転手を呼びとめまして、その三人を乗つけてやつたわけです。ですから三人が一つの組になつていることはわかつております。それから今度合田運転手が三人をうしろに乗つけて、これが三人の顔を面通して確認いたしております。これでも三人一組であるということがわかるわけです。それから第二の常深運転手がやはり三人を確認いたしております。これによつて三人が一組であるということが一応わかるわけです。それから第二の事実としましては、昨日の午前十時五人の者が行きまして、午後三時にエビス・キヤンプ内のガレージで十三人の兵隊面通しました際に、その三人までがこれだといつて肩をたたいたのです。それがシンクレア一等兵であります。右の事実によつて、三人が一組で共同正犯であるということは確認されるわけです。
  26. 田万廣文

    ○田万委員 それほどはつきりと確認される要件がそろつているのであるからして、なぜ引渡しの請求を厳重になさらないかということを私たち言いたいのです。それに対する御答弁を聞きたい。外務省関係だけに今後一切まかしておくわけですか。
  27. 田中榮一

    田中参考人 この点につきましては、私の方から、引渡しの必要がある旨を述べまして、事件向うへ送つたのであります。なお法務省の方にも、ぜひこれを引渡してもらいたいということを申し入ております。直接英軍当局には私の方は申し入れる権限はないのですから、やはり犯人引渡しは外交上の手段によつてやるのが至当でありますから、私の方からも引渡しの必要があるということを法務省の方へ申入れしてございます。
  28. 田万廣文

    ○田万委員 その申入れはいつなさつたのですか。
  29. 田中榮一

    田中参考人 これは検事正の方にも私の方から申入れをしてございます。検事正の方からも多分最高検の方にその旨申入れがしてあると思います。
  30. 田嶋好文

    田嶋委員長 それについて今日ただいま身柄はどうなつておるか。
  31. 田中榮一

    田中参考人 シンクレア身柄は現在濠洲軍の方で抑留いたしております。それからあとの二名の身柄はなお日本警察署の留置場の中に抑留いたしております。
  32. 田万廣文

    ○田万委員 この申入れに対する回答の内容はどういうふうになつておりますか。回答はありましたか。
  33. 田中榮一

    田中参考人 まだ捜査当局としては回答の内容は承つておりません。
  34. 田万廣文

    ○田万委員 そういう問題は今日刑事裁判権が非常に国民的な関心の的になつておる際に、すみやかに公表すべきものはせなければいかぬ。回答のあつた場合には、その回答を周知せしめる。それがいわゆる国際関係の円満な解決になると思うのでありまして、いたずらに事を遷延しておるような感じを国民に抱かしむるような結果になつておると思う。それでもう一つお尋ねしたいのは、連合国に対してやはり引渡しの申入れというか、申入みというか、その形式でやつておりますか。
  35. 田中榮一

    田中参考人 国連軍、すなわち濠州軍当局に対しましては、私の方からは捜査当局第一線でありますので、これは引渡しの要求をいたしておりません。
  36. 田万廣文

    ○田万委員 なぜ申込みをなさらないのですか、何か根拠があるのですか。
  37. 田中榮一

    田中参考人 身柄引渡しの要求等については、やはり国際間の問題でありますので、捜査当局から要求するよりも、むしろ外交上の手段によつて要求すべきが至当かと考えまして、捜査当局から直接要求はいたしておりません。
  38. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合田万君にお諮りいたしますが、ただいま政府より岡原政府委員、佐藤検事総長がお見えになりましたので、一応佐藤検事総長より検察当局のこの事件に対する方針を承ることにいたしたいと思います。―ただいま佐藤検事総長より検察当局のこの事件に対する考えを聞くことにいたしましたが、ただいま犬養法務大臣出席されましたので、大臣より先に承り、続いて佐藤検事総長より承るように変更いたしたいと思います。その前に警視総監田中榮一君よりただいままでに説明した部分以外で重要事項があるからとの発言を求められておりますので、これを許します。田中警視総監
  39. 田中榮一

    田中参考人 ただいま身柄引渡しのことにつきまして、いろいろ御質問がございまして、お答えした中で一つ落したことがございますので、私から補足いたしておきます。一昨日の午前中に四谷の末次警察署長がエビス・キヤンプに参りまして、これは捜査当局でありますので、正式の引渡し要求ではございませんが、非公式にぜひ君の方で逮捕した一人の兵隊をわが方で取調べをさせてほしいということを要求いたしたのであります。ところが英濠軍当局とせられましては、それならばこのキヤンプ内に警察官が来て取調べをしたらどうかという回答があつたそうであります。われわれの方としては英キヤンプ内に行つて取調べをする必要はない。当然こちらへ来て取調べをすべきだという考えから、一応それで終つたわけです。そうして捜査当風がこれ以上やつてもむだであるという考えから、むしろ今度は正式の手続によつて引渡しを要求した方がいい、こういう考えで私たちとしてはこれ以上引渡し要求をしないわけであります。御了承を願います。
  40. 田嶋好文

    田嶋委員長 犬養法務大臣には、ただいま警視総監から捜査並びに今日までの警視庁取扱いにつきましての報告を聴取いたしましたので、それ以外の点で法務省として今日まで対処いたして参りました経過並びに法務省としてのこの事件に対する考え方を承りたいと思います。犬養法務大臣
  41. 犬養健

    犬養国務大臣 先刻警視総監から事件の概略について御説明を申し上げたと存じますが、去る二十一日の午後、イギリス兵及び濠洲兵の三名の者が強盗を働きました。一名相手国側によつて逮捕せられました。二名はこちら側において逮捕せられたことは御承知の通りでございます。わが方におきましては、この犯罪は軍人の公務以外の時間に相手国の軍事施設の外において行われたのでございますから、当然わが方に裁判権ありとの解釈のもとにその態度で取調べを行わせている次第でございます。従つて中途におきまして犯人身柄引渡してくれ、こういう交渉がありましたが、これに対してはそういうわけには参らぬということで、こちら側で調べている次第でございます。われわれの根本態度はそういう態度で引続き今後とも参りたいと思つておりますが、これについて何か御質問がございますれば、あとう限り率直に御答弁をいたしたいと思います。
  42. 田嶋好文

    田嶋委員長 次は佐藤検事総長より承ることにいたします。佐藤検事総長に対しましては、同様に警視総監説明以外の点で今日まで検察当局取扱つて参りましたこの事件に対する方針、覚悟を承りたいと思います。
  43. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 議題になつております件は十一月二十一日の晝中に行われたのでありまして、その後警視庁においてイギリス兵及び濠洲兵の二人の犯人取調べたのであります。本日午前十時二十分と記憶しておりますが、十時二十分に警視庁からこの二人の犯人身柄東京地方検察庁の方に送つて参りましたので、即刻検察庁におきましては三名の係検事を選任いたしまして、取調べを急いでおるのであります。この取調べの模様は、まだ送検を受けたばかりでありますから、今後の取調べの進行のぐあいの見通しはつかないのでありますが、これまで警視庁で調べられた報告によりますと、犯人がすなおに取調べに応じておるとも見えないのでありまして、そのうちの一人は思うよう取調べに応じたというなことも聞いておりますので、今後検察庁取調べに対して犯人がどういう態度に出まするか、そのぐあいによつて取調べが早く進行するか、あるいは相当手間どるかという問題になるだろうと思うのであります。他面濠州及びイギリスの大使館の方からは、外務省を通じて法務当局の方に身柄引渡し請求があるようでありまするが、検察当局といたしましては、一応の取調べが済まなければ身柄引渡しの要求に応ずるわけにも行きませんので、今のところいつ引渡すかというような見通しもつかない状態でおります。しかしながら一応の取調べが終えて、今後必要な場合にはいつでも身柄を出頭せしめるというような保障が得られまするならば、なるべく向うの希望にも沿うて引渡しの要求に応じたいつもりでおります。
  44. 田嶋好文

    田嶋委員長 外務大臣の出席がまだないようでございますから、犬養法務大臣、佐藤検事総長に対する質問を順次許すことといたします、猪俣浩三君。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今法務大臣からわが国に裁判権あり、取調べ捜査の権利ありとして、引渡し要求には応じないで調べておるというお答えがあつたのでありますが、本日の新聞を見ますと、何か外務省筋でありますか、条件をつけて身柄を相手国方に引渡すような新聞記事が見えるのでありますが、さような外務省の動きがありやいなや、あるいはさようなことについて法務省は何らかの連絡があつたのであるか、ないのであるか、それを第一に承りたいと思います。
  46. 犬養健

    犬養国務大臣 外務当局におきましては、御承知の吉田書簡の線に沿いまして、将来こちらで取調べの必要があるときにはいつでも渡すというような問題が吉田書簡にも書いてありますし、第二清原通達にも書いてありますので、その線に沿つて何らかの外交交渉をしておられるものと察知いたします。しかしこの条件はまだ両方の話合いできまつておりません。従つて端的に申し上げますならば、外交の折衝中でございます。当方といたしましては、その外交折衝の結果を見まして身柄を引渡すか、引渡さないかをこれから定めよう、こういう考えでおるのでございます。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、ただいまのところでは具体的な身柄引渡しの問題がきまつたわけではない―新聞論調を見ますと本日引渡すことになつたような論調がありますが、これは早過ぎたので、実際はさようなことになつておらぬ、こう承つてよろしいのですか。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 さようでございます。これは新聞の人たちの見通しを書いておられるのであります。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで、将来あるいはさような相手国から身柄引渡しの交渉があるやもわかりませんので法務省の態度をお聞きいたしておるのでありますが、これは先般の法務委員会におきましても問題になりました。で、私どもは、どうも吉田・マーフイー書簡と第二清原通達との間には何か矛盾があるということを申したのでありますが、法務省においてはさようなことがないという御答弁でありました。そこで昭和二十七年六月二十三日付の刑政長官の通達を見ますると、殺人、放火、傷害致死、強盗または強姦の罪に当る事件日本側において身柄を確保する、また身柄日本側逮捕する以前に国連軍逮捕された場合にはこれに対して引渡しを要求する、かようなきつい通牒になつておると思うのであります。これが吉田書簡と何らの矛盾がないのだということになるならば、これは日本国の態度でなければならぬと考えるのであります。そこでこの趣旨からすれば、事案は、今警視総監からお聞きいたしますとピストルをもつて強盗事件、さればまさにこれは日本国が身柄逮捕して、これを審判することにならなければならぬと思うのであります。これにつきまして外務省で身柄を引渡すとかどうとか、あるいはまた法務省で身柄についてはまたあとで考えるとかどうとかいうようなことは、私はこの通達からは出て来ないと考えるのでありますが、それはいかようなものでございますか。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 お手元に第二清原通達は差上げたと思うのでありますが、猪俣さんの言われますように殺人、放火、傷害致死、強盗または強姦の罪に当る事件は(二)ということになりますが、その次の三に、「(二)に該当する事件であつて日本側において身柄を拘束する実質的な必要がないと認められるものについては、できる限り逮捕後四十八時間内に当該国連軍係官の「日本側捜査及び公判等のため必要があるときは、身柄を出頭せしめる。」旨の確約を条件として身柄国連軍側に引渡すこと。」この線に沿つて今やつているのでありますが、その条件なるものが外務省のなされております外交交渉においてどうなるかということを、私どもは待機して待つている次第であります。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお重ねてお尋ねいたしますが、そうすると外務省で法務省の意見を聞かずにさような条件をきめて引渡すというようなことをやり得る権限が外務省はあるのであるか、ないのであるか。かような権限がありとして、外務省がかつてにそういうことをするような傾向があるかないか。それに対して法務省は外務省とどういうふうな連絡をするのであるか、それをお聞かせ願いたい。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 外務省において法務省の意見を聞かずに、何らかの措置をとることはないと信じております。また現に密に連絡しておる次第であります。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今法務大臣がお読みになつた清原通達の三項、これは文意から見るならば、すべて日本政府が自主的に考えて必要だとした場合のように書いておると思います。外国からいろいろ注文をつけられてやる場合ではなくて、わが国の自主的な判断において身柄を彼らに引渡してもよろしいという場合に条件をつけて引渡す、こういう趣旨に考えられるが、その通りでありますか。法務省のお考えもやはりその線で今後お進めになるつもりであるかどうか承りたい。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 今のお話の通りであります。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおただいまの通達を見ますと、強盗事件なんかはもし身柄国連軍側が逮捕した場合においても、こちら側からその引渡しを要求することが書いてありますが、法務省はこの引渡し要求をなされたか。あるいは事実が明らかになつた際に、共犯関係ありとするならば、引渡しを要求する御意思でありますか、その点をお聞かせ願いたい。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 すでに外務省を通じて、身柄引渡しを要求しております。
  57. 田嶋好文

    田嶋委員長 先ほどお諮りいたしましたように、岡崎外務大臣がお見えになりましたので、これより岡崎外務大臣発言を求めることといたします。岡崎外務大臣には、ただいままで警視総監犬養法務大臣、佐藤検事総長が、今回起りました濠洲兵並びに英国兵の強盗事件に対する経過を述べられましたが、この経過以外の点につきまして、この事件に対する今日までの経過並びに外務省としてのこの事件に対する方針、大臣としてのお覚悟をここで承りたいと思います。岡崎国務大臣。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国連軍との協定がまだ妥結に至つていないこの際でありまして、こういう問題が起ることはわれわれとしてもはなはだ困つたものだと考えております。もつとも先方もすでにこの事件に対しては遺憾の意を表しておりまして、損害等の問題についてもできるだけの手を打つと申しております。これにつきましては一昨日先方からは、新聞報道によればこれこれの者が日本の官憲に逮捕されておる。これはすでに国連軍側で留置している者であつて、それが脱走したのであるから、引渡してもらいたいということを要求して参りました。これにつきましては法務省と連絡をいたしまして、警察側法務省側の意向、検察当局の意向等を勘案いたしまして、ただいま先方と話合いを続けておるのであります。なおこういう問題がしばしば起ることは、取扱いの基準がきまらないためにかえつて混乱を生ずる。われわれとしてはこういう事件を起さないように、先方も特に注意し、司令官等が十分なる計戒を与えるべきは当然と考えており、その点は従前から先方に要求しておるわけでありますが、こういう点から見ましても、人間のことでありますから何らかの事件が起ることも絶無とは言えますまいが、先方の十分なる自重を望み、同時に国連軍との協定を早く妥結に至るようにいたしたいと考えておりまして、折から一昨日の午後には、土曜日でありましが、関係国の大使を私のところに呼びまして、国連軍との協定の話合いをさらに続けておつたのでありますが、たまたまその最中にこういうことがありまして、なおさら協定を早くつくり上げて基準をはつきりする必要があると考えるのでありまして、話合いはただいまのところ非常に友好的には進んでおりますが、双方の意見はまだまだ一致していないような次第であります。
  59. 田嶋好文

    田嶋委員長 なおこの際岡崎国務大臣に対しまして、先般行われました国連軍との協定の刑事裁判権に関する第二回円卓会議の結果をあわせて当委員会に御報告を願いたいと思います。岡崎国務大臣。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この前の段階におきましては、当時あまり長くこういう問題を国民が知らないよう状況でもどうかと考えまして、その経過を発表いしたのでありますが、一昨日土曜日の会談におきましては、さらにこの問題についていろいろ意見を交換しました。大体におきましてこの前先方の陳述は、われわれの方から出しまし意見に対しての反論といいますか、意見に対する先方の意向をずつと述べまして、それを念のため覚書の形にして残して行つたものであります。従いましてわれわれの方は、これに対しましてさらに日本側の考え方を一々詳細に述べまして、先方の反省を促したのであります。その日本側の考え方と申しますのは、すでに何回か申しておるようなことで、大体繰返してのことにすぎないのでありますが、たとえば先方は北大西洋条約が効力を発生するまでの暫定的の協定だからアメリカ側と同じような待遇を与えてもいいじやないか、こういう意見でありましたが、われわれの方は暫定的すぐに直るということがわかつておるならば、ことさらにまた直すという予想のもとに協定をつくるよりは直るときの状況を見て、こつちの方は直さなくてもいいような協定にするのが一番簡単ではないかという意見を述べておきました。またこれは国際慣行としてどこの国でもやつておることだ、こういう説明でありましたので、われわれの方は、むしろこれは国際慣行から離れておるものじやないだろうか、一九四二年にイギリス政府がアメリカ政府との間に裁判権についての約束をいたしたときも、イギリス側の書簡の中には、これは向うの言葉で言いますと、コンシタラブル・デバーチユアー、普通のやり方から見ると非常に違つたやり方である、しかしこの際だから裁判権は承諾する、こういうふうに書いてある。むしろこれは普通のやり方とは非常に違つたものじやないか、従つてこういう一九四二年というような戦争のまつさい中のときならともかく、こういう普通の事態にあつたならばやはり普通のやり方でよいのじやないかというような意見を述べましたところ、これに対しては、いやそれは一九四二年である、というのは今から十年前のことであるが、その後いろいろの国といろいろの協定ができたが、裁判管轄権についてはみなイギリスと同じよう取扱いをされておる、たとえば一九四八年の―ちよつと間違つたかもしれませんが、アメリカとベルギーとの協定、一九五一年のアメリカとデンマークとの協定、一九五二年つまり本年のアメリカと西ドイツとの協定等は、みなそういうふうになつておる、従つて新しい慣行が今各地で行われておるのだ、またカナダの軍隊もフランス、ベルギーその他にもいるけれども、やはり同様の裁判管轄権を軍側に委譲することになつておるというような話でありました。そこでわれわれの方は、その点は実は前から調査して知りたいと思つてつたところであるけれども、的確な資料がなくてわからなかつたのであるが、そういう資料があるならば出してもらいたいという要求をいたしましたところ、これは了解事項であるものもあり、協定になつておるものもあると思うが、至急資料を調べてこちらに提出しよう、こういうような話でもありました。そういうようなことでいろいろ日本側の主張を述べたのでありますが、前回は先方の主張を述べわれわれの方で了承しなかつたが、今回はわれわれの方の主張を詳しく述べたのでありますが、これまた先方の了承を得るには至らなかつたのであります。しかしながら先ほど申した通りに、非常に友好的に話合いは進めておるのでありまして、さらに今後もこういう会談を続けるつもりでおりますし、その間におきましても、いわゆるテクニカル・コミテイーといいますか、専門委員の方の外交も続けて、今までまだ結論に到達していないとこるはできるだけ再び専門委員の間で話合いを進めてみようということになつて、一昨日はわかれたような次第でおります。
  61. 田嶋好文

    田嶋委員長 質疑の通告がありますからこれを許します。松岡松平君。
  62. 松岡松平

    松岡(松)委員 岡崎外務大臣にちよつとお尋ねいたします。今おつしやつた新しい国際慣行ということですが、西ドイツ、カナダにおいて行われておるのはいずれも西ドイツ並びにカナダのそれぞれの国の事情によつて外国の軍隊が駐在しておる。今のような場合とはおよそ事態が違うのじやないか。この点について外務大臣はどうお考えになつておりますか。私ども考えますと、西ドイツにおけるそういう協定なりあるいは申合せがかりにあつても、それは西ドイツの場合における国防上の必要において軍隊が駐在し、カナダの場合においてもそういう事情で駐在するのではないか。今のように朝鮮動乱のために日本の領土を使用するというようなこととはおよそ事情が違うのじやないか、この点についてお答えを願いたいと思います。  さらに犯人引渡しの問題でありますが、先ほど大臣から先方が実害について賠償云々というような穏やかな意思を述べておられるというお話がございましたが、わが国にとりましてこの問題は実害の自動車賃や、得られなかつは金をもらつたくらいで済む問題ではございません。ことに強盗事件というものは、しかく示談で話のつくような問題ではない、まことに重大な犯罪でありまして、いかに賠償されましても、これは簡単に引渡せることではありません。外国人がわが国内において強盗を働き、これが実害を賠償すれば外交上の折衝によつて事なきを得るということでありますと、わが国民が国内において犯罪を犯せば少くとも三年なり五年の懲役、はなはだしきに至つては七年くらいの懲役に処せられるのであります。こういう事態を国民が知つて何と了解いたしますか。外務大臣におかれましては、今後の外交上の折衝においてよろしくこの点を徹底していただきたいと思うのであります。強盗事件というものはなかなかそう簡単な問題ではありません。道路において小便したり、頭をなぐつた程度の微罪ではございません。暴行にはいろいろ程度がございまして、微罪もありますし、あるいは重い罪もございましようが、強盗になれば重罪であります。かかる重罪犯人を新聞で伝えられるように外交上の折衝によつてもし渡されるようなことがあれば事重大でありまして、これは私どもの杞憂に終ればけつこうであります。大臣におかれましてはこの強盗事件が持つ社会的な意義、国民が受ける感情上の問題をよく御勘考になつて、よろしく引渡しを拒否していただきたいと思います。  先ほど検事総長からもお話がありましたが、引渡しということと、裁判上の身柄釈放という問題について考えが違うと思うのです。私はこの際一括して申上げますが、身柄引渡しということは外交上の問題であります。しかし国内手続上におきましては、一旦起訴されたら被疑者釈放するということは引渡しではない。これは保釈の手続によつて身柄釈放する以外にはなかろうと私は思います。でありまするから検事総長がお答えになりました引渡しということは、検事総長の立場におきましては保釈手続や何かのことをお考えになつているのか、それとも外交上の引渡しをお考えになつているのか、もしこれをうやむやのうちに引渡しされては、一旦起訴になりまして公判にかかるべき事件を簡単に身柄を引渡されることにもなる。われわれ日本の国民が起訴されれば保釈の手続によらなければ出られない。しかし外国人の場合においては外交上の折衝によつて身柄を簡単に引渡すことができることになると問題は非常に大きいと思います。この点について外務大臣のあとで、検事総長あわせて法務大臣からもお答え願いたいと思います。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず第一の御質問でありますが、お説の通り各地、各国おのおの事情が異なるわけであります。その問題についてまだ的確な資料が入つておりませんから、私もはつきり申し得ないのでありますが、先方の説明は必ずしも一国と一国との間の協定ではない。たとえば北大西洋条約に基く協定あるいは欧洲防衛軍に基く協定、こういうような問題によつて自分の方で欲しない場合も外国軍隊が来ることがある。また自分の方で欲しない場合でも外国に軍隊を出さなければならない場合もある。そういう場合のとりきめであるという説明であります。  なお第二の御質問につきましては、ただいま法務大臣その他検事総長とよく連絡をいたしまして、納得の行くよう措置でなければ講じられないわけであります。ただ今までおつしやつた中で、ちよつと説明を加えますれば、国内におる在留外国人については、これは日本人と同様の取扱いであるので、問題はないのです。ただ軍隊に関する問題である。その軍隊は、いろいろ御意見はありましようが、日本の将来にも非常に重要なる関連を有すべき朝鮮における国連軍の行動に従事しておる軍隊である。こういう点で一般の外国在留民とはいささか趣を異にしておる点があると私は考えておる。
  64. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 先ほど私から、強盗犯人身柄引渡しの問題につきまして、一定の条件が整えば身柄を引渡すことも考えておるということを申し上げたのでありますが、この身柄引渡しという言葉を使いましたのは、このたび外務省を通じて、オーストラリア並びにイギリスの大使館の方から身柄引渡しの要求を受けておりまするし、なお、先般来当委員会においても問題になつておりまする清原刑政長官の依命通牒並びに吉田首相のマーフイー米国大使あての書簡にも、身柄引渡しという言葉を使つておりますので、そのまま身柄引渡しという言葉を用いたのでありまして、身柄引渡しはどこまでも外交折衝にゆだぬべきものと私は思つておるのであります。しかしながら検察当局が現に調べているその身柄釈放する、あるいは引渡すという問題は、どこまでも国内の刑事訴訟法にのつとつてやらなければならぬというふうに考えております。
  65. 田嶋好文

    田嶋委員長 本日の質疑はこれで打切り、なお質疑につきましては、この質疑を続行することにいたしたいと思います。次会の期日は追つて公報をもつてお知らせすることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三分散会