○辻原
委員 これはそれぞれその個人個人の
立場において、私の個人的見解であるということを述べるならば、それはいとやすいことである。そうではない。少くとも現在の
憲法を守
つて行く
立場にある
政府として、その
憲法の
精神なり
法律の
精神に照して、ここがいけない、ここがその立法をした経緯から非常に好ましくないんだというように
考えられて指摘せられるのであれば、私はまことにごもつともである、かように申し上げたいのでありますが、単に個人的、常識的に好ましくないんだということでは、かかる重要な問題についての、しかも具体的にそれをさらに大きく制限をして行こうとする
理由としては、いささか根拠が薄弱であるし、またそういう前提で物事を経えられる場合においては、ただいまはいいかもしれませんが、将来にわた
つてやはり重要な問題に発展するおそれがある。事実そういうふうにお互いお互いが、単に常識的に
考えて好ましくないからこれは何とかするんだというふうに
考えられるのでは、一貫した
憲法なり
法律の
建前から見て、それが逐次
一つくずされて行く、そういう契機をつく
つて行くんじやないか、かように思いますので、その点については、文部省におかれても、常識的ではなくして、事実基本法のこの条章に照してどういうふうな具体的活動が好ましくないか、ひとつ資料を
提出してもらいたい。
さらに私が申し上げたいのは、先ほど
松本委員も述べられましたし、また昨日
井出委員も述べられましたが、多数の集団生活の中においては、ただいま
大臣が申されましたように、私はこう
考えるという
考え方が、それぞれ多岐にわた
つてあると思います。
従つて少くともこうした基本的人権に関する問題については、まずそれを守
つて行くということの努力、それを守らんがために、あるいは
行き過ぎる場合もあり得る。そうしたことについては、ただちにその
根本的な問題を根こそぎ奪
つてしまうというようなことではなくしていわゆる角をためて牛を殺すという、そういう愚にならないように、世論の批判なり、あるいはお互い内部のいろいろな自己批判なりにおいてこういうことが是正されて行くということがほんとうの民主主義を育てるゆえんであるわけです。しかし
大臣がきのうの
井出委員の御
質問についても、もはや日教組の幹部に
はつける薬はないのだ、そういうことは非常に困難だ、だからやらざるを得ないのだというふうな結論を導かれていると思うのでありますが、私は少くとも文教の府にある
大臣のお言葉としては、まことにこれは残念だと思う。まず
大臣のただいまのお
考えの基底としては、かりにそういうことがあろうといたしましても、民主主義を育てて行く、基本的人権を守
つて行くための教育を進めて行くのであるから、それらについてはなお一段の努力をはらうような、そういう
一つの深い
憲法の
精神に立脚して、これらの問題を
考えて行きたい、こうおつしやられるのが当然ではないか、かように私は思うのでありますが、事実はそうではないという
大臣のお
考えなら、また話は一転いたしまするが、この文部広報を見てみましても、どこにもそういうふうな高度な
考え方が出ておらない。先ほ
ども申しましたように、
身分という項目において「好ましくない政治活動」、十五万枚を出して、これを宣伝しようとする。政治活動を云々するならば、少くとも
法律に抵触しない政治活動をや
つておる者に対して、それを好ましくないという断定の仕方を、現在の
法律のわくを守
つて行政を運用している文部当局がやるとするならば、これは文部省の違法な、不当な政治活動であると私は
考える。個人の政治活動すら云々されなければいかぬということになるならば、
法律のわくの中において、その
行政管理を行わなければならぬ行
政府が、そのわくを逸脱して、わくに何ら規定していない行動について、これは好ましくない、こうあらねばならぬのだというようなことを宣伝し、そのことを大衆に与えて行こうとするようなことは許されてよいものか。
法律に何ら規定していないけれ
ども、われわれはそう
考える、私たちはそう
考えるのだから、こういうことはいけない、ああいうことはしてはならないのだというふうなことを、かりに国民に対してやられるとするならば、それは
行政機構というものを持
つておるし、多数の優秀な人的配置を持
つておる国の
行政機関は、どんなことでもやれます。はたしてこういう広報において、一方的に断定をして宣伝これ努めているというような行き方については、一考を要するばかりでなしに、今後かかることをやられるとするならば、単に文部省のみならず、農林省は農林省において、国が
法律はきめたけれ
ども、農林省は本来これに対しては反対だ。だからその反対の
事柄を農民諸君に流して、その農民の輿論を高めて行くというようなことも可能でありましよう。どうですか
大臣、こういう点について特に部数を増され、断定した書き方でも
つて宣伝されるということは、これは行
政府のあり方として妥当であるか、私はこの点を伺います。