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1953-02-19 第15回国会 衆議院 文部委員会 第10号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十八年二月十九日(木曜日) 午前十一時三十七分
開議
出席委員
委員長
伊藤
郷一
君
理事
坂田
道太
君
理事
竹尾 弌君
理事
田中
久雄
君
理事
松本 七郎君
理事
坂本
泰良
君 北
れい吉
君 東郷 實君 永田 亮一君 長野
長廣
君 水谷 昇君
井出一太郎
君
菊地養
之輔君
辻原
弘市君
山崎
始男
君
委員外
の
出席者
総理府事務官
(
南方連絡事務
局長
)
石井
通則
君
文部事務官
(
大臣官房総務
課長
) 福田 繁君
文部事務官
(
初等中等教育
局地方課長
) 北岡 健二君 参 考 人 (
沖繩教職員会
会長
)
屋良
朝苗君 参 考 人 (
沖繩教職員会
教育研究部長
)
喜屋武真栄
君 専 門 員
石井
勗君 専 門 員
横田重左衞門
君
—————————————
二月十八日
委員辻原弘
市君
辞任
につき、その
補欠
として田 中
稔男
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月十九日
委員田中稔男
君
辞任
につき、その
補欠
として辻
原弘
市君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
同月十八日
教育委員会法
及び
教育公務員特例法
の一部を改 正する
法律案
(
田中久雄
君外二百二名
提出
、衆 法第三七号) 同月十二日
青年学級振興
に関する
請願外
五件(
山崎猛
君紹 介)(第一七〇七号)同外三件(
丹羽喬四郎
君
紹介
)(第一七六九号)
学校給食法制定等
の
請願外
九件(
星島二郎
君紹 介)(第一七〇八号)同(
犬養健
君
紹介
)(第 一七〇九号) 同(
江崎真澄
君
紹介
)(第一七七二号)
教育委員会法
の一部改正に関する
請願
(
羽田武
嗣郎君
紹介
)(第一七七〇号) 盲、
ろう児就学奨励法制定
に関する
請願
(河野 密君
紹介
)(第一七七一号)
教職員給与
の
市町村移譲反対
に関する
請願
(川
野芳滿
君
紹介
)(第一七七三号)
市町村教育委員会設置費全額国庫負担
に関する
請願
(
川野芳滿
君
紹介
)(第一七七四号)
高等学校定時制教育振興法制定
に関する
請願
(
三木武夫
君
紹介
)(第一七七五号)
公立義務教育
諸
学校教職員
の定員並びに
給与
の
負担
に関する
請願
(阿部千一君
紹介
)(第一七 七六号)
公立学校緊急施設費等
に関する
国庫負担制度
の
立法化
に関する
請願
(
川野芳滿
君
紹介
)(第一 七七七号) 同月十六日
学校建築等
の
建設用地買収費国庫補助等
に関す る
請願
(
赤路友藏
君外九名
紹介
)(第一九一九 号)
教職員給与準則制定
に関する
請願
(
八木一男
君
紹介
)(第一九二〇号)同(
辻原弘
市君
紹介
) (第一九二一号)
学校給食法制定等
の
請願外
一件(
和田博雄
君紹 介)(第一九二二号) の審査を本
委員会
に付託された。 同月十二日
義務教育費全額国庫負担等
に関する
陳情書
(第 一二三三号)
義務教育費国庫負担
に関する
陳情書
(第一二三 四号)
義務教育予算増加
に関する
陳情書
(第一二三五 号) 六・三
制教育施設
の
整備
に関する
陳情書
(第一 二三六号)
公立学校施設災害復旧事業費国庫負担制度
の立
法化
に関する
陳情書
(第一二三七号)
青年学級振興
に関する
陳情書
(第一二三八号)
勤労青少年教育
の
振興
に関する
陳情書
(第一二 三九号) 同月十七日
義務教育費全額国庫負担制度
に関する
陳情書外
一件(第一三三六号) 名古屋工業
大学
に
生産工学科
並びに
繊維工業研
究所設置
の
請願
(
福井勇
君
紹介
)(第一九二三 号)
学校校舎改築費国庫補助等
に関する
請願外
二件 (
只野直三郎
君
紹介
)(第一九二四号)
産業教育振興法
による
中学校
への
国庫補助増額
の
請願
(
山口丈太郎
君
紹介
)(第一九二五号)
産業教育振興
に関する
請願
(
只野直三郎
君紹 介)(第一九二六号)
教育委員会設置費全額国庫負担
に関する
請願外
三件(
只野直三郎
君
紹介
)(第一九二七号) 同月十八日
産業教育振興
に関する
請願
(
江崎真澄
君
紹介
) (第二一六八号)
定時制高等学校校舎建築費国庫補助等
に関する
請願
(
山中日露史
君
紹介
)(第二一六九号)
学校給食法制定等
の
請願外
三件(
近藤鶴代
君紹 介)(第二一七〇号) 同(
内田信也
君
紹介
)(第二一七一号) 同(
木暮武太夫
君
紹介
)(第二一七二号)
紀元節復活
に関する
請願
(
大倉三郎
君
紹介
)( 第二一七三号)
らい療養所内
に
高等学校設置
に関する
請願
(永
田良吉
君
紹介
)(第二一七四号) 旧
海軍工廠工員養成所卒業生
の
文部省資格認定
に関する
請願
(
前田榮
之助君
紹介
)(第二一七 五号)
老朽校舎
の
改築費
に関する
請願
(
大石ヨシエ
君
紹介
)(第二一七六号)
義務教育
の
整備
に関する
陳情書
(第一三三七号 )
義務教育施設
の
整備復旧促進
に関する
陳情書
( 第一三三八号) 六・三
制一般校舎整備費補助等
に関する
陳情書
(第一三三九号)
学校給食
に関する
陳情書
(第一三四〇号) 同(第一三四一号)
青少年問題対策
に関する
陳情書
(第一三四二号 )
産業教育振興法
に基く
国庫補助
の
増額
に関する
陳情書
(第一三四三号) 盲、
ろう児就学奨励法制定
に関する
陳情書
(第 一三四四号)
紀元節復活
に関する
陳情書
(第一三四五号) 同(第一三四六号) を本
委員会
に送付された。
—————————————
本日
会議
に付した事件
教育委員会法
及び
教育公務員特例法
の一部を改 正する
法律案
(
田中久雄
君外二百二名
提出
、衆 法第三七号)
文部行政
に関する件
参考人
より
意見聴取
の件
—————————————
伊藤郷一
1
○
伊藤委員長
これより
会議
を開きます。
文部行政
に関する件を議題といたします。本件に関連して
参考
に資するため、
沖繩諸島
における文教についてその
事情
を聴取したいと存じます。 まず
参考人
の
指名
を行います。
沖繩教職員会長屋良朝苗
君、及び
教育研究部長喜屋武真栄
君の両君を
参考人
に
指名
いたします。 この際お断りいたしておきますが、
文部行政
について
沖繩事情
を
参考
にするため御
出席
を
願つたの
であります。
屋良朝苗
君。
屋良朝苗
2
○
屋良参考人
ただいま御
紹介
いただきました私
沖繩教職員会
を代表して参
つて
おりますところの
屋良朝苗
であります。 本
日本委員会
におきまして日ごろ私
ども
が悩んでおりますところの深刻な問題について訴えを申し上げ、お願いをする
機会
を与えてくださいましたことは、
終戦
以来
祖国
と切り離された
悲境
にある私
ども
にとりましては格別な感激であり、光栄でありまして、ここに
深甚
の謝意を表する次第であります。この
機会
を与えてくださいましたことは、皆々様が
沖繩
のことにつきまして非常に御関心を
払つて
お
つて
くださるということの現われでありまして、私は
沖繩全住民
を代表いたしまして、その御厚意に
深甚
の感謝の意を表する次第でございます。 さて悪夢のような十数年の歳月は、御
同様有史
以来の
いばら
の道でありましたが、今や
祖国
は晴れて主権を回復し、
独立
第二年を迎え、いよいよ
国運発展
の
基礎
を固められつつありますことはまことに喜びにたえず、衷心から祝意を表するものであります。 しかしながら
翻つて沖縄
の
現状
を顧みますと、今次太平洋
戦争
におきまして、
物心両面とも
に灰燼的な打撃を受け、さらに戦後長い期間完全なる
占領行政
の
特殊事情
のもとに置かれて参
つたの
であります。いままた変転きわまりない
国際情勢
の俎上に載せられて、将来についても確たる見通しも立たない苦境に立
つて
懊悩している次第であります。この
複雑混迷
のさ中にあるだけに、真に
再建
の
基礎
をつちかう
教育
の持つ意義は、実に重かつ大なるものがあると確信いたすものであります。
沖繩
の
教育者
またこのことを確認いたしまして、あらゆる
困苦欠乏
に耐えながら
教育
を守
つて
行くために
いばら
の道を闘いつつありますが、
教育
を阻むあらゆる苛酷なる
条件
にさいなまれまして、
内容的効果
をあげ得ないでまことに苦慮しているのであります。たといいかなる
環境
の中にあ
つて
も、
教育
の対象である
青少年
は絶えず
成長
を続けて行くものであります。そしてその
成長
を助ける
教育
はいわゆる百年の大計のもとに行われる
永遠
のものでなければなりません。
従つて教育
こそは、
永遠
の
基礎
の上に本来の姿において打ち立てられなければならないと思うのであります。しかるに
沖繩
の置かれている
国際的地位
はまつたくこの
基本的条件
を不可能にしているのであります。すなわち
沖繩
の現在の
立場
はまつたく畸形的不明瞭な仮の姿でしかないと思うのであります。そのような
基礎
の上に
真実永遠
の
教育
の
建設
は遺憾ながら不可能であります。
沖縄
の帰属の問題については
国連憲章
や
平和条約締結
の
根本精神
たる
人道主義的立場
からしても、また
民族
的
文化
的歴史的な関係からしても、さらに
沖繩県民
の心情からしても、
祖国日本
に復帰すべきことはきわめて当然であ
つて
、本質的には何らこれを阻む理由はないと信ずるものであります。われわれはこの確固たる大前提に立
つて
若い世代の
教育
を進めて行きたいのであります。すなわち形式的にもまた実質的にも
真実
の
日本人
として
祖国
の
児童生徒
と同一の
基礎
や
立場
に立
つて
教育
を施して行きたいのであります。しかるに冷厳なる現
情勢
はこの押えがたい欲求を完全に阻んでいるのであります。われわれは何とかしてあ
障害
を排除して、畸形的な架空的な逆境から脱却して、
永遠
に向
つて
伸び行く
子供たち
を一日も早く本然の姿において育て、素直な
成長
に空白を残さないように熱願しているものであります。それこそは一日も早く
沖繩
が元の
沖繩県
として
祖国
に復帰することによ
つて
のみかなえられることであります。 およそ個人にいたしましても、
戸籍
のない
子供
は肩身の狭い
浮浪児
であると存ずるのであります。そのような
境遇
の子がはたして素直順調に成育して参りましようか。同機に
社会
にしても現実的に
国籍
があいまいにな
つて
いる
社会
は国際浮浪的な
存在
であり、そのみじめなる
境遇
においてどうして
社会
も人も本来の
成長発展
をとげることができましようか。このようなぬえ
的立場
に起因して、われわれ
籔育上勢
の
障害
を身をも
つて
体験しつつあるのであります。たとえば今
沖縄
の
子供たち
が使用している
日本地図
から
沖繩
の
地図
は消えております。また
戦争
は終結したにかかわらず、国旗さえ自由に立て得ないのであります。その上に
祖国
の
子供たち
と
共通
の
国民行事
さえ持ち得ず、さらに何ら
国家的恩恵
にあずかり得ないのであります。かかる
境遇
にある
子供たち
がどうして
真実
の
日本人
として素直に
成長
して行くことができましようか。
皆様
か
つて
この島は、かの
アメリカ
の
国運
を賭しての大攻勢から、血をも
つて
祖国
を守
つて
来たわが将兵十万余、無事の
住民
十六万の骨を埋めたゆかりの地であります。それなるがゆえにこの島が犠牲と
なつ
た
巨万同胞
の血のあがないのかいもなく、いつまでも
祖国
より分離されておりましては、地下の
戦没者
の霊も無念の血の叫びを続けていることでありましよう。また時勢の流れには当時としては抗するすべもなく、かの悲惨なる
戦争
に参加して、いたいたしくも
祖国
に殉じた
青少年男女学徒等
の最期をわれわれは絶対に忘れることはできません。彼らは愛する
祖国
を守るためにこそ、
純情
一遂に最後まで
祖国
の勝利を信じつつ、あたら花のつぼみのようなうら若い身を、かの映画「ひめゆりの塔」で見られますように
祖国
に捧げたのでありました。われわれはいかなる
障害
を乗り越えても彼女らの
純情
を生かしてやりたいのであります。このことはわれわれ
沖繩教育者
の至上崇高なる課題であります。すなわちわれわれは彼らが文字通り身を持
つて
守
つて
来た
祖国
を失わしたくはないのであります。国政に参与せられる
皆様
、どうぞこの島に眠る
戦没者
の魂の声を聞きと
つて
いただきたい。また
条件
はどうであろうと、いやしくも
祖国
を有し、それと一連の
共通
の
文化
と歴史を持ち、
日本人
としての
民族的矜持
を有する
沖縄
の
住民
が、どうしていつまでも異
民族
の
統治下
に満足しておられましようか。どうぞ
沖繩
の
住民
の
立場
にな
つて
考えていただきたいと思うのであります。
戦争
以来今日まで
沖繩
の
同胞
が背負
つて
来た十字架はあまりにも苛酷であつたと思うのであります。天道正に非なりと申したいのであります。しかしこの
混迷
のさ中に立
つて
おりましても、われわれは常に
祖国
の
独立
を祝福しつつ、また
祖国復帰
の悲願を堅持しつつ、
郷土再建
に
努力
を続け、米国もまた
援助
は続けてはいますが、
戦災
があまりにも甚大であつたため、
復興
は遅々たるもので、
祖国
の
復興
の目ざましさに比すべくもありません。
終戦
八年間におよそ
主要耕地
の三〇%は単
用地
となり、
残り
七〇%も十分耕作されず、
生産
はきわめて不振で、
戦前主要農産物
であつた黒糖の、ごときいまだ二〇%しか
復興
していないのであります。輸出・
産業
の
復興
も三〇%以下、
住宅
の
復興
二〇%以下、
教職員
の待遇は
戦前
の五七%以下、
校舎
の
復興
は
生徒
一人
当り
〇・五坪位を
目標
にしても四〇%以下で、
復興
の前途は実に遼遠であります。 なかんずく、
教育復興
の
程度
に至りましてはさんたんたる
実情
と申すほかはありません。たとえば
教職員
の
資質
について見れば、
戦争
のため当時の
教員数
の二五彩に及ぶ中堅有能な教師と
師範学校
の
男女生徒
四百名を失い、すでに戦後
教育
の
人的要素
に補いがたいギヤツプを生じ、また生き残
つて教壇
にもど
つた教員
も極度の
生活
の
困窮
から他の
社会
に転じ、
終戦
以来今日までのその数二千二百名を算し、これは現在
教員数
の五八%に及んでいるのでございます。
教職員
の
勤務年数
も
戦前
の十八年に対し戦後は八年に短縮しており、
終戦
後初めての
教壇経験者
、すなわち数年以下の
勤務者
が五五%を占めているのであります。
教員組織
も従来の
師範学校卒業者
が小学校で三〇考、
中学校
で四八%で、いかに
資質
が低下し、かつ
教育界
が不安動揺しているかがうかがえるのであります。 この
教員
の不足と
資質
の低下を補うにも、戦後
師範学校
は跡絶え、
教員養成機関
は完備せず、いずれも
弥縫的暫定措置
によりまして、その補給を糊塗している
現状
であります。図書館その他
設備
の
不備
と
指導者
の
欠乏
、
本土
との
内面的つながり
の欠如などで、
教員研修
の
機会
も乏しく、さらに
教員
の
生活
がきわめて
不安貧困
のため、いよいよ
資質
の
向上
の
障害
とな
つて
いるのでございます。すなわち
教員
の
給与
べースは現在
沖縄
で使用している
B円
の三千六百円、
日本円
に換算すると一万八百円で、そのほかは
家族手当
もなければ
勤務地手当
もなく、一文の賞与もありません。
消費物資
はほとんど
本土
より輸入されますが、
物価
は平均して
本土
の一・五倍くらいで、その
物価換算率
からすると、
B円
の三千六百円は
日本円
の七千二百円の価値しかなく、
沖繩教職員
は
本土
で
生活
するとして
日本円
の七千二百円ベースに該当する悲惨な
給与
であります。これは食
生活
の最低を保障できない
程度
であ
つて
、一方
戦争
のために、ほとんどの者は一切の
住宅
、衣類、調度を失
つて
いますので、そこから来る
生活費
の加算を考えると、その
困窮
は言語に絶するものであります。それに
恩給法
、
共済会法等
の
社会保障
の
制度
がないので、
教育者
の
生活
は極度に不安に満たされ、暗澹たるものがあるのであります。 次に、
校舎
の問題でありますが、今
沖縄
の
住民
が何よりも優先的にその
復興
を望んでおり、そしてそのために非常に苦しんでいるのは、実に
学校校舎
の
復興
であります。
戦争
のために
校舎
は百パーセント破壊し、
終戦
以来
露天
や
天幕教室
、トタンぶき、かやぶき
校舎
と変遷、難渋しつつ
教育
を続け、一方
アメリカ
の
ガリオア援助
によ
つて暴風
に耐える
普通校舎
も建ちつつはありますが、被害が甚大なため、その
建設
また遅々として進まず、
終戦
八年の今日いまだ
生徒
一人
当り
〇・五坪を
目標
にしても、その四〇%に達せず、
残り
六〇%の
学級
の子らは、多くは
板壁
もなく、
窓ガラス
も床板もないかやぶきの
土間教室
で風雨の支配に苦しみつつ学業を続けている気の毒な状態であります。ことに毎年二、三、回襲来する台風は、この粗末な
校舎
を倒壊し、これが
建直し
には父兄も奔命に疲れ、
児童
またそれを建て直すまでは、
露天
で授業をするか、休業する以外処置ないのであります。今すべての
学級
に
永久校舎
の一
教室
を与えるとして、
日本円
三十億を要し、
沖繩
の
現状
からして、いかに
希望
的に観測しても、実に十年以上を要すると当局は見積
つて
います。
沖繩
が現在のまま放置されていたら、この問題の
解決
はまつたく不可能であり、
従つて沖繩
の
教育復興
もまた絶望せざるを得ないのであります。
校舎
と同じく、
設備
ももちろん
貧弱不備
で、その
程度
は
祖国
の
皆様
にはとうてい御想像も及ばないと思うのであります。戦後の
復興
いまだしとはいえ、
新生祖国
の
児童
らが恵まれた
条件
のもとに嬉々として幸福に
教育
を受けつつあるに引きかえ、この
校舎
にこの
設備
及び砂漠のような荒漠たる悪
環境下
実に恵まれない
条件
のもとに不自由な
教育
を受けつ、ある
沖縄
の子ら、いかに
戦争
のためとはいえ、あまりにもその
影響
が苛酷なほど片寄りすぎていることを残念至極に思うのであります。どうぞ
皆様
の
お力
によ
つて
この
戦災校舎
を
復興
し、少しでも
沖繩
の不遇な
児童
らに明るい
希望
を与えてくださるよう、私は懇請申し上げる次第であります。 また
教育環境
についても、何しろ畸型的な
基盤
に立つ
社会
なるがゆえに、世相きわめて不健全であり、その所産として
青少年悪質犯罪
、
婦人犯罪
は加速度的に
増加
の一途をたどり、その恐るべき
影響
から
子供
らをいかに守
つて
行くかは
教育者
の苦悩の種であります。 かく
物心両面
あらゆる不利な
条件
の中で行われる
教育ゆえ
に、
教育者
の血のにじむような
努力
にもかかわらず、
本土
との
教育
のずれはおおうべくもなく、
教育者
はその責任に懊悩いたしている次第であります。悲惨なる
戦争
、悲惨なる敗戦の結果、今や太平洋の孤児として
里子的存在
に立つに
至つた沖繩
の
住民
は、
物心両面
かく
有史
以来の
いばら
の道を闘いつつあるのでありますが、対決する諸問題は、
現地
だけで
解決
できるものではありません。しかるにその
根本的解決
なくしては、
沖縄
は絶対に救われないのであります。その
根本的解決
こそ実に
沖縄
の
祖国
への復帰あるのみです。なかんずく真に
日本人
として
基盤
をつちかい得る
教育
のごとき一日も早く
祖国
に直結してくださることであります。
皆様
どうぞ今
沖縄
の悩みつつある諸問題を
皆様
の
お力
により
解決
していただき、
悲境
にある
住民
に明るい
希望
を与えてくださるよう衷情を披瀝して、重ねてお願い申し上げる次第であります。 これを要するに、 一、
沖繩
の
完全祖国復帰
を実現するため、万全の
措置
を講じていただきたい。 二、
祖国復帰
の前提として、一日も早く
沖繩
の
教育
を完全に
祖国
の
行政
に直結せしめるため、万般の
措置
を講じていただきたい。 三、
沖繩
の
戦災校舎
の
復興
を
援助
せられる
措置
を講じていただきたい。 以上簡単でございましたが、
沖繩
の
教育
の
状況
の一端を披瀝申し上げます。 なお
沖繩
の
教育等
は、やはり
本土
の
教育
に準じまして、六・三・三・四
制度
でございます。
教科内容
も、教科書もまつたく
本土
と軌を一にしておるのでございます。
伊藤郷一
3
○
伊藤委員長
次は、最近
沖繩
へ行
つて
帰
つて
参られました
南方連絡事務局長
の
石井通則
君から
お話
を承りたいと思います。
石井通則
君。
石井通則
4
○
石井説明員
私
南方連絡事務局長
の
石井
でございます。 私の局におきましては、
南方地域
との
文化
に関しましては、
文化
の交流に関する
事務
の推進、調整、あつせんというようなことをや
つて
おります。
教育行政
の直接の仕事は
文部省
が担当されますが、
文部省
に対しまして、
現地
の
要望
を聞き、
現地
に即した何らかの
措置
が
日本政府
において講ぜられないかというようなことを
要望
いたしまして必要な
措置
を
文部省
にや
つて
いただくということにな
つて
おります。私
ども
の局に付属いたしまして、
那覇
に
南方連絡事務所
というものを設けております。また
奄美大島
の名瀬にその出張所を設けております。この
那覇南方連絡事務所
は、
文部行政
に関しては直接には
文部大臣
の指揮、監督を受けるということにな
つて
おります。ただ
文部大臣
が指揮監督する場合におきまして、
総理大臣
に協議をして行う、こういう
立場
にな
つて
おります。私
ども
は
現地
の
実情
をいろいろ調査し、ま
現地
の
要望
を聞きまして、
日本政府
といたしましてどういうことが実施できるかということを絶えず検討いたしまして、必要な
措置
を
文部省
に依頼しているような
事情
でございます。 私昨年
現地
を調査いたしたのでございまするが、その
状況
は大体今
屋良沖繩教職員会長
が話された通りでございますので、特に私から
つけ加
えて申し上げることはございませんが、特に今
お話
の中にありましたことで、二、三
つけ加
うべき点を申し上げたいと思います。
南西諸島
は、御承知のように、
条約
第三条によ
つてアメリカ
の
行政
のもとにありますが、これは決してこの
領土権
を失つたものでないのでありまして、
日本
の
領土権
が残存している、いつか
日本
の
領土
に完全に復帰するということが予定されているということ、それから
南西諸島
の
住民
は
日本
の
国籍
をはつきり持
つて
いるということでございます。この点につきましてはいろいろ各方面にまだ認識が足らぬ点があるようでございますが、
アメリカ側
におきましても、
日本政府
が、
南西諸島
の
住民
は
日本
の
国籍
を持
つて
いる
日本民族
であるということを、議会その他において答弁することを了承いたしておるのであります。ただ
戸籍
に関しましては、現在
戦争
直後の
ニミツツ布告
というものがありまして、その
ニミツツ布告
によりまして、その当時実施されておりました
日本
の
法令自体
がそのまま適用される。もちろん軍事的必要によりまして
修正
は行われまするけれ
ども
、その
修正
をしない限り、その当時の
法令
が実施されておるということでありまして、従いまして
現地
におきましては、原則として
日本
の旧民法、旧
戸籍法
が実施されておるのであります。ただ
戦災
によりまして、
戸籍台帳
をなくしました
沖繩本島
におきましては、
臨時戸籍事務
が取扱われまして、非常に簡単な
住民登録
みたいな
戸籍
が実施されております。私
ども
は
日本
の
領土
であり、
日本
の
国籍
を持
つて
おるという建前のもとに、できるだけ
日本
の
行政
の中で可能な部分は、
南西諸島
に及ぼせるようにというような気持で実施いたしておるのであります。
教育面
に関しましては、先ほど
屋良会長
から話がありましたように、
校舎
の
復旧
に関しまして、できるだけこれに対して
本土側
の
援助
をしなければならぬということを考えております。ただしかしながら現在のところにおきましては、
日本政府
の
予算
をも
つて
補助
を行うということにつきましては、
現地
が
反対
の意向を示しておりますので、別途の方法を講じて行かなければならぬと考えておるのであります。 それから
南西諸島
の
教員
の質の
向上
なりあるいは
学生生徒
の
日本
における
上級学校
の
進学等
につきましても、いろいろ
政府
としてできる限りのことを考えておるのでありますが、さしあたり、昨年の四月から
南西諸島
の
教員
を選抜いたしまして、
研究教員
として
日本
に引受けて、約六箇月の
教育
を
文部省
でや
つて
いただきまして、交替々々に返しております。これは
昭和
二十八年度も継続いたしたいと考えております。 また
学生
の
進学
に関しましては、従来
アメリカ側
の
資金
によりまして、
琉球政府
におきまして選抜した者を
日本
の
大学
に引受けて
教育
いたしておるのでありますが、これは現在約三百三十名くらいの
南西諸島
の
学生生徒
が、いわゆる
琉球政府
の
契約学生
として当地に
参つて教育
を受けておるのであります。しかしながら、だんだん
アメリカ側
の
援助資金
も減少いたして参りまして、今後その継続が困難であるというような
状況
に立ち至
つて
おりますので、二十八年度からは
文部省
の
予算
で約五十名を向うから選抜して、
日本
の
本土
の
大学
に
進学
させるような予定で進行いたしております。そのほか、あるいは青年団関係、体育団体の関係その他あらゆる民間の
教育
文化
の諸団体に関しましては、できる限り
本土
と
南西諸島
との緊密なる連繋を保持して、
本土
における各種の行事に
南西諸島
の方々が参加できるような方法を講じつつあるような
状況
でございます。 なお御質問がございますれば、いろいろ御答弁申し上げますが、簡単でございますが、一応
現状
を御
参考
のために御説明申し上げた次第でございます。
北昤吉
5
○北
委員
ただいまの御説明のうちで、
日本政府
の
予算
で
援助
することは
現地
が承諾しないというのは、
アメリカ
軍の話ですか。
現地
というのは
住民
の意味ですか。
石井通則
6
○
石井説明員
アメリカ
の民
政府
でございます。
屋良朝苗
7
○
屋良参考人
先ほどの御質問でございますけれ
ども
、私たちが
教職員
といたしまして、
校舎
の
復興
を
文部省
に
請願
いたしたことがございます。これは一昨年でありますが、当地軍
政府
にもお願いしたことがございますが、そのときにはガリオア
資金
で建ててやるからそれには及ばぬという御返事でありました。しかし最近フオスター大佐という責任の方が
校舎
建築について
日本
の
援助
、これは
政府
でありますか、民間でありますかははつきりしませんが、
日本
の
援助
に対してはさしつかえはないとうことをお答えに
なつ
たということが新聞に報ぜられて、私たちがごこに来てから送られて参
つて
おります。
松本七郎
8
○松本(七)
委員
南方連絡事務
局の方に少し伺
つて
おきたいと思います。先ほど
現地
の
要望
を
事務
局の方から
文部省
に伝えて善処方を依頼したということですが、どういう具体的なものを
要望
され、
文部省
としてどの
程度
それを善処しておるか、そういう点と、それから今の問題ですが、
日本政府
が
予算
措置
を講ずることが禁ぜられておるので、その他の方法で何らか考慮されるというような
お話
ですが、どういう方法があるのか、現にと
つて
おられるのか、その二つをお伺いいたします。
石井通則
9
○
石井説明員
現地
の
要望
に関しまして、いろいろ
文部省
に御依頼しおりますことは、たくさんございますが、まず先ほど申しました
日本政府
で
補助
金を出すということを、従来
アメリカ
の民
政府
が
反対
しておつたというのは、いわゆる向うの
政府
に
補助
金を出すということでございまして、向うから来る
学生
につきまして
日本政府
がこれを受入れて、ここでその
生活費
あるいは学資を支給するということ、こういうことについては
反対
はございません。これは従来は
アメリカ
の
資金
で実施しておりましたのを、向うの方の経費が非常にきゆうくつにな
つて
出せないということになりましたので、今度
文部省
の
予算
に計上して
南西諸島
の
学生
をこちらで
教育
してもらう、これが一つの事項でございます。 それから
南西諸島
におきましては、
日本
の教科書を使
つて
おりますが、この教科書は従来なかなか必要な部数が入らなかつたり、あるいはまた時期的に入らなかつたり、あるいはまた余分に入りまして、それを返還できないというようないろいろな問題がありましてこの点につきましては、いろいろ
文部省
にお願いいたしまして、教科書が順調に必要な部数がおおむね満足する
状況
に送られるようにな
つて
来つつあります。ただ若干為替関係で問題がございますが、この点も逐次
解決
してもらいたいと考えております。なおまた従来教科書の運賃が相当高か
つたの
でございますが、
文部省
のお骨折りによりまして、教科書の運賃も安くな
つて
おります。それからまた
現地
におきまして、いろいろの
教育
上の資料、あるいは
教育
関係の
会議
に参加を
南西諸島
が非常に
要望
いたしておりますので、この点は
文部省
にお願いいたしまして、
南西諸島
で
要望
されております各種の刊行物はお送りするようにいたしております。それから各種の行事もできるだけ
文部省
から通知していただくようにいたしております。それから
校舎
の
復旧
の経費に関しまして先ほど
屋良会長
から、
南西諸島
で了承するというようなニユースがあるという
お話
でございますが、この点われわれまだ調査しなければわかりませんが、これは現在のところ
日本政府
の
予算
で
琉球政府
に
補助
をやり、その
校舎
復旧
の経費に充てるということが困難な模様でございますので、できるだけ
文部省
とも協議いたしまして
現地
の
要望
に沿
つて
何らか民間の浄財を集められるということについてわれわれも協力して行きたい、こういうように考えております。大体そういうことにな
つて
おります。
水谷昇
10
○水谷(昇)
委員
私は一昨年二月に
政府
を代表して
沖繩
に行つたことがあるのでありますが、そのときに
屋良朝苗
君はどういう職にあ
つたの
ですか、一応
参考
に伺いたい。
屋良朝苗
11
○
屋良参考人
当時は文教部長としてあつちの文教
行政
に携
つて
おりました。
水谷昇
12
○水谷(昇)
委員
その当時文教部長をしていた
屋良
氏等の御案内によりまして、私は
沖繩
島全島ほとんど飛び歩きまして、小学校や
中学校
あるいは各種の団体等に顔を出して、いろいろの陳情なり意見なりを聞き、また視察をしたのでありますが、ただいま
屋良
氏から、いろいろ御報告に
なつ
た通りであります。私の行つたときには、
校舎
のごときは
終戦
後三〇%ぐらいに
復興
をしてお
つたの
でありますが、一昨年の二月から今日までまる二箇年た
つて
おりますが、このまる二箇年たつた間に約一〇%しか
復興
ができていない、こういう
実情
であるようでありますが、私が
沖縄
へ行きました最も重要な職責は、あそこに琉球
大学
というのができてこれは
アメリカ
政府
がつく
つて
献納をした、その開校式に
出席
したのでありますが、その当時琉球に
大学
というものはなかつた。ところが首里の荒廃した
戦災
のあとにそういう
大学
をつく
つて
くれるという
アメリカ
の好意に対しては非常に感激したものでありますが、その後だんだん考えてみると、
アメリカ
政府
というものは
教育
に対してはわれわれ
日本人
と大分趣を異にして、
教育
は地方に委譲をするというようなかつこうからか、あまり
政府
がめんどうを見ない。これは
設備
の点においてもまた
教職員
の待遇の点においても同様の感じを持
つて
おるのであります。
従つて沖繩
、琉球全体の
教職員
、
教育
関係者はこの
アメリカ
の
教育
に対する態度については好感を持
つて
いないということが事実である。そこにこういう陳情の起る原因があると私は考える。私の行つた当時は、
沖繩
住民
のすべての意向は
日本
に復帰したいということである。そのうちでも特に
教育
についてはぜひ
日本
と同様にや
つて
もらいたい。そこでいろいろの陳情を私は承りまして、当時のヴイトラー副長官にも面会をしているく私の視察した点から
教育
に対する意見を率直に申し述べたのでありますが、当時のヴイトラー副長官は原則としては全部賛成をしてくれた。ただちにこれを実現することは困難であるが、徐々に御意思に沿いたいということであつた。それがだんだんに実現せられまして、先ほど御報告の中にありましたいわゆる
研究教員
の派遣ということも実現した。それから自費留
学生
を許可をして来た。それから
文部省
の費用で留
学生
に
援助
をするということも二十八年度から実現をすることに
なつ
た。その他教科書を送ることだとか、いろいろの印刷物を送るようなこと、これらは当時の御
要望
がだんだんに実現したものでありますが、今日は御承知の通りに
日本
が
独立
をいたしましたので、この際
屋良
君からるる陳情せられましたようなことは事実でありますから、
沖繩
を視察してかの地の
実情
をよく聞いて参りました私からも
委員
の各位に特にその
事情
を肯定していただきまして、皆さんに特に今後の善処方を御依頼をする次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
松本七郎
13
○松本(七)
委員
これは結局はその根本を
解決
するために
沖繩
の
領土
の完全な復帰ということ、できなければ
教育行政
だけでも
日本
にというようなことをやらなければならぬ。これは国会としても今後大いに大きく取上ぐべき問題であろうと思うのですが、それについて一つお伺いしておきたいのは、
沖繩
にいる
アメリカ
の
現地
軍がおそらくあらゆる
実情
、ことに
教育
の
実情
等を
アメリカ
本国にいろいろ報告をしているだろうと思う。しかしそれがどのような報告がなされておるかということ、それにはいい面ばかりが報告されるということはありがちなのですが、
南方連絡事務
局としては、
日本政府
を通じてそういう
実情
を
アメリカ
本国に知らせるような
努力
もされておるのかどうか、この点を伺
つて
おきたい。
石井通則
14
○
石井説明員
南方連絡事務
局といたしましては、
現地
のいかなる報告が
アメリカ
本国になされておるかは全然把握が不可能でございましてわかりませんが、私
ども
現地
の問題に関しまして、特に外交の問題になりますと、外務省の所管でございますので、
教育行政
その他あらゆる
現地
の
実情
を外務省に報告し、外務省が
アメリカ
の大使館あるいは本国
政府
と折衝する場合のいい
参考
資料になるように
努力
いたしております。なおまた外務省が折衝される場合につきまして、
南方連絡事務
局といたしまして
現地
で把握した結果から生れました意見は絶えず外務省に申し出ております。私
ども
から直接
アメリカ側
に報告することは、全然や
つて
おりません。
北昤吉
15
○北
委員
石井
局長
さんにお尋ねしますが、数日前の英字新聞に報告が出ておりましたが、
沖繩
から
アメリカ
へ行
つて
おる使節団が
アメリカ
の有力者、ことにタフトに会
つて
沖繩
の
事情
を陳情したところが、タフト上院議員は非常に同情を持
つて
、主権の回復に努めるという明言をしておる。私は
現地
と
日本
当局との交渉だけでは、小さい問題は片づくかもしれぬけれ
ども
、大きな問題は
アメリカ
の上院議員あたりのところへどしどし
沖縄
から有力者を派遣いたしまして、そして
アメリカ
本国
政府
を動かすというのが一番近い道だと思う。ことに御承知のごとく、
沖繩
と小笠原島を
アメリカ
が占領したのはヤルタ秘密協定によつたもので、十八年十一月のカイロ宣言では、御承知のごとく
日本
処分法を蒋介石とチヤーチルとルーズヴエルトが研究して発表したのであるが、それには、
戦争
によ
つて
拡大した
領土
、及び貧欲によ
つて
強奪した
領土
――おそらくは満州国のことでしよう、これを返せというだけであ
つて
、
日本
固有の
領土
をとるということは、カイロ宣言にはなか
つたの
です。御承知のごとくヤルタ
会議
は二十年の二月、秘密協定が行われて千島、樺太をロシアに渡し、
アメリカ
はおそらくは
沖縄
や小笠原をとるという協定だ
つたの
でしよう。ところが
アメリカ
が秘密協定を破棄するという線に進めば、ロシアに樺太と千島の問題を
解決
させると同時に、自分らも当然
沖繩
と小笠原島を放棄しなければならぬはずです。タフトはヤルタ協定排撃の急先鋒でありまして、タフトはその
立場
からおそらく主権を回復することに好意を持
つて
明言されたと思う。新聞には
沖縄
の代表者の二人の名前が出ておりました。私今記憶しておりませんが、そういう
事情
が伝わ
つて
おりますか。
石井通則
16
○
石井説明員
その事実は私
ども
も承知いたしております。それは当地におりまする元首里市長の仲吉良光さんという方がタフト上院議員に詳細な
陳情書
を出されまして、それに対する回答でございまして、よく承知いたしております。
坂本泰良
17
○坂本
委員
二、三点お聞きしますが、お答えは簡単でよろしゆうございます。 第一は、
教育行政
について
沖繩
島民は
独立
してや
つて
おられるかどうか、
アメリカ
軍から相当干渉があるかどうかということです。 第二は、
教職員
の養成はどういうふうにな
つて
おるか。先ほどある一部の者が研究生として
本土
に来られるということは聞いたのですが、それは一部分ですか。その
教員
の養成の問題。 第三に、高等学校の卒業者などの就職の関係はどうなのか。 もう一つ、これは根本の問題ですが、
教育
経費の問題は
沖繩
政府
が
負担
しているのか、あるいはPTAなりで
負担
しているのか。先ほど
日本
の国内からの
補助
を拒絶しておるということがあ
つたの
ですが、
沖繩
島内においてはどういう操作で経費の分担その他をや
つて
おられるか。この四つの点をお伺いいたします。
屋良朝苗
18
○
屋良参考人
教育行政
に対して干渉しておるかという御質問でございますけれ
ども
、
行政
機構をつくりますための、たとえば
教育
法規の制定などには相当干渉がございます。従
つて
向うの
現状
といたしましては、たとえば
教育
委員会
の市町村までの設置は非常に困難である、あるいは
教育
税というものの徴収も困難であるというふうに、非常にみんなが迷
つて
おりましたけれ
ども
、これも軍令によ
つて
制定されております。こういうふうに
教育行政
機構を打立てることにつきましては相当の干渉もございます。ただ
教員
の任免とかいつたようなものにつきましては、その法規の範囲内においては自由にできるような次第でございます。 次に
教員
養成の御質問でございましたけれ
ども
、先ほど説明を申し上げました通り、
戦争
のために
師範学校
があと絶えております。その後は文教学校と称して一年間暫定
措置
で
教員
を養成して出すという機関が
昭和
二十四年まで続いて参りました。
昭和
二十五年に琉球
大学
というものが建ちまして、そのときに文教学校というのはなくなりまして、そこに
教員
訓練所というのが五箇所設定されました。それは指導は小学校の先生方がやられるというような仕組みのもので、これも半商年間、高等学校卒業者やあるいは一、二年間
教育
経験のあります者を訓練いたしまして、成績のいい者に免状を与える、こういつたような趣旨でありました。そこでこういつた暫定
措置
では、どうしても
教員
の
資質
を高めることはできないと思いまして、われわれは
文部省
に学芸
大学
の設置を強力に陳情いたしました。しかしそれは実現しませんで、琉球
大学
に師範科というものが去年の四月から設置された。しかしそれは八十名しか採用いたしません。
戦前
沖繩県
だけで毎年送り出す卒業生が二百五十名、それから
奄美大島
が九十人くらいあつたそうでありますから、南方諸島全部では三百四十名くらいの
教員
を送り出さなければいけなかつたはずであります。しかるに琉球
大学
が養成するといたしましても、八十名を毎年出したのでは焼石に水といつたような感じがする次第であります。 それから高等学校の卒業生の就職問題に関する御質問でありますが、これは非常に困
つて
おります。しかし今いろいろの軍作業といつたような労務があつたりしまして、そういつた
事務
面に行くとか、あるいは英語訓練所というのがあ
つて
、これは主として英語の話方でありますが、そこで半箇年訓練するとか、そういつたところに行つたりいたしまして、卒業いたしますと通訳であるとかいうふうにして、軍労務に就職するようにしておりますけれ
ども
、しかしながらいずれにいたしましても高等学校の卒業生は就職難でございます。それで高等学校の卒業生は、たいがいは
祖国
本土
に対する留学を非常に重いたしまして、
本土
へ
本土
へというところの
希望
は、
アメリカ
に留学するよりもはるかに強い念願なのであります。 それから
教育
の経費についてでありますが、大体は
教育
経費は
住民
の
負担
によ
つて
まかな
つて
おります。たとえば去年
政府
の
予算
が十四億ありましたうち、一般
行政
費に対する
補助
が
アメリカ
から三億五千万円ございました。これは
B円
でございますが、その三億五千万円の
補助
のうち、
校舎
建築に大体八千万円ぐらいは
援助
される予定でありました。なおそのほか、
教員
訓練所あたりの人件費が若干三億五千万円から出ることにな
つて
おりましてあとは
住民
負担
の
行政
費によ
つて
まかな
つて
おります。なおそれでは足りないので、PTAが大体二割から二割五分にも相当する
教育
費の
負担
をしております。それから市町村も、やはり二割から二割五分ぐらいの
負担
はしておると思
つて
おります。以上であります。
伊藤郷一
19
○
伊藤委員長
それでは
委員長
からお諮りいたしますが、本日は気の毒な占領下の
教育行政
のもとにある
沖繩
の
事情
を聴取することで
委員会
を開いたのでございますが、昨日夜野党の方から、三派提案で地方
教育
委員
法の改正案が出たことを承りました。そしてこれを本日説明だけさせるという
お話
でございますが、私もきよう初めて公報で見ましたので、昨日は
沖繩
の
事情
を聞くということだけを了承して、――そういう
要望
もございましたし、帰つたわけであります。そこで意見が対立しておりますので、しばらく休憩いたしまして、ただちにここで
理事
会を開きたいと思います。
松本七郎
20
○松本(七)
委員
その問題は後ほど協議するとしても、この
沖繩
の問題のけじめをつけて――せつかく
参考人
も来ておられるのだから、ちやんとあいさつしてけじめをつけてからにしていただきたい。
坂本泰良
21
○坂本
委員
文教
行政
について
沖縄
の問題だけという
委員長
の発言があ
つたの
ですが、われわれ
理事
にも何ら諮られていない。われわれはきようは文教
行政
についての
委員会
だと、かように承知しております。従
つて
われわれとしましては、文教
行政
についてきようは質疑をしたいと思
つて
や
つて
来たわけであります。もし
沖繩
の問題なら
沖繩
の問題だけをやりたいというならば、やはりわれわれ野党側に喜かるべく相談がなければならぬ。文教
行政
というので
委員会
が開かれるとすれば、われわれ言としてもそれ鋳する準備もして参
つて
おるわけであります。そういう点については、やはり議事の運用について今後しかるべく合理的にや
つて
いただきたい。
伊藤郷一
22
○
伊藤委員長
承知いたしました。
辻原弘市
23
○
辻原
委員
ただいま坂本
委員
の
お話
がありましたように、すでに各
委員
に通知されておることでありますし、
予算
上相当の問題も考えられますので、この点はただいま
政府
委員
の方の
出席
もありますから、ただいま
委員長
が諮られておりますように、一応休憩をして、後ほど相談をして、本日
出席
を求めておいてなお
委員会
は継続してそれを午後行う、かようにおとりはからいを願いたいと思います。
伊藤郷一
24
○
伊藤委員長
沖繩
の
参考人
の方々にはたいへん御苦労でございました。われわれ
委員会
も
沖縄
の
教育
振興
のために善処したいと思いますが、いかがでございましようか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
伊藤郷一
25
○
伊藤委員長
それではしばらく休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ――――◇――――― 午後二時四十一分
開議
伊藤郷一
26
○
伊藤委員長
休憩前に引続いて、
会議
を開きます。 休憩中
理事
会を開きましたので、その決定事項をお伝えいたします。
教育委員会法
等改正案について、本日野党三派から提案の説明だけを聴取することにいたします。但し
条件
といたしましては、きよう説明を聞くからとい
つて
、引続きこの法案ばかり先議するということではなくて、やがて提案される
政府
の
義務教育
関係の法案も、次会には説明を聴取いたしまして、大体並行審議するということに決めた次第でございます。御了承願います。 議事日程を追加し、
教育委員会法
及び
教育公務員特例法
の一部を改正する
法律案
を議題とすることに御異議はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
伊藤郷一
27
○
伊藤委員長
御異議なしと認めます。本案は昨日付託されたものであります。これより
提出
者の提案理由の説明を聴取いたします。
田中
委員
。
田中久雄
28
○
田中
(久)
委員
教育委員会法
及び
教育公務員特例法
の一部を改正する
法律案
を
提出
いたしましたについて、提案の理由を簡単に御説明いたします。 昨年の十一月一日に設置せられました地方
教育
委員会
は、その実施後の状態を見ておりますと、各方面にわた
つて
きわめて不合理な面がたくさん現われて参
つて
おることは、すでに一般の認めて、おるところであります。これをこのままにいたしておきますことは、国費をいたずらに濫費する以外の何ものでもない。しごうして町村の自治を破壊するという危機を招いておる
現状
でございます。ここにおいて私
ども
は、
教育委員会法
によりますと、四月一日から選任の
教育
長を各市町村の
教育
委員会
に置くというような、重大な段階を見るにあたりまして、それ以前に適当な改正を加えまして、この地方自治の混乱と国費の濫費を防ぐために、すみやかに本案を通過せしめたい、かような意味から、改進党、
社会
党両派、共同の上に立
つて
、この案を
提出
した次第であります。 案の最も重点といたしましたところは、
教育委員会法
の地方
教育
委員会
に与えておられます権限、及び設置その他の面についてでありますが、
教育委員会法
では、いかなる小さい村にも
教育
委員会
をつくらなければならぬということが根本にな
つて
おります。その市町村の意思のいかんにかかわらずこれを強制しておる。しこうしてこれに要する経費は約六十億といわれておりますが、本年度
予算
に盛られておりますものは二十五億であ
つて
、この面から見ましても、これはきわめて不徹底なものである。こういうことを考え、また地方の
実情
を組み入れまして、地方自治体において
教育
委員会
の設置を必要としないと考えた場合には、設置しなくてもいいという条例を、市町村議会において三分の二の議決によ
つて
つくることができる。あるいは条例の中に、去年公選せられた任期の者があり、二年の者もありますから、いつからこれを実施すると
つけ加
えておけば、公選せられた者をただちにやめさすという非難を避けることができるのであります。こういうふうに設置、不設置を原則といたしております。 これに伴
つて
、従来市町村の
教育
委員会
に与えられておりました権限の一部を、当然都道府県の
教育
委員会
べ持
つて
来るという面が現われて参ります。それは
教科内容
の取扱い、教科用図書の採択、校長、
教員
等の研修、保健計画の企画と実施、ユネスコの活動についての
事務
、こういうものが市町村
委員会
から当然府県の
委員会
の
事務
に属することになるのであります。また市町村におきまして、
委員会
の廃止せられたところ、つまり設置しないところと、設置するところと起
つて
参るのでありますが、この場合において、市町村の
教育
委員会
、または市町村
教育
委員会
が廃止せられておるものにつきましては、
教員
の任免その他の人事権については、これは一応その市町村の意見を徴するというような面も取入れておるのであります。
委員会
のあるところは
委員会
の意見を聞くという、軽い意味の関連を持たせておるのであります。市町村立の高等学校、幼稚園、及び各種学校の人事権は、これは設置者であるところの市町村長、または残存する市町村の
教育
委員会
にあるものとする、かような改正を加えておるのであります。 詳細にわたりましては、すでに法案がお手元へ届いておることでありますので、引続きいろいろ御譲を願うことと存じますが、提案者といたしましては、きわめて
実情
に即して、全国的に非常な苦悩とな
つて
おりまする現行
教育委員会法
の真の改正を企図してお、るのでありまして、党派を超越して慎重御審議の上、どうぞすみやかに通過せしめられんことを特にお願いをいたす次第であります。(拍手)
伊藤郷一
29
○
伊藤委員長
本日はこれにて散会し、次会は公報をも
つて
お知らせいたします。 午後二時四十八分散会