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田子国務大臣 ただいまの御
質問の第一点は、
大臣の更迭によ
つて農政に関する政策が変化するのかどうかという
お話でありました。私は政党政派とい
つては失礼かもしれませんが、自由党の代議士である、従
つて自由党には自由党の長年研究しておる農村政策があるわけであります。従
つて大臣がかわりましてもその政党が国民に公約しましたものを実行するのでありますから、政策に変化なし、こうごらんにな
つて間違いがないのであります。
それから、私は、就任早々であるから何も
考えておらないかもしらぬが、何か
考えがあるならば言えという
お話であります。御
承知のようにわが日本の
行政及び政治施策というものはきわめて零細なものになりました。われわれ過去三十有余年あるいは官界、政界におきまして、農村問題も農業問題も、洋の内外を問わずいささか研究をしておるのであります。ただ日本は土地が狭くてやせておる、しかも定期的に台風がや
つて来る。農業労働者が働くということにおいては、これはデンマークやスイスなどのようじやない、実に涙の出るほど働かれます。朝に星をいただき、夕には月を踏むというようなことは決して形容詞ではありません。実に涙ぐましいほど働かれております。しかしながら自然条件は必ずしもデンマークやスイスのようなものではありません。台風が来襲しますれば、先祖伝来持
つておつた田も、一朝にして砂地に化するということであります。また林政を見てみますと、林業の方では営利主義の伐木が盛んであ
つて、山が荒れる。その方面ではお金はもうかるでしようけれ
ども、同時に農村地帯に流れて来る草とか木の葉とかいうものもだんだん少くなり、堆肥というようなものもだんだん少くな
つて農業がすたれて行く。これは日本という林産国であり、農業国であるところは実に困難なる事情に遭遇しておるのです。また最近デンマーク式の酪農を入れますけれ
ども、これは牛そのものだけでは必ずしも家庭を持
つて行くことはできません。どうしてもミルクをバターにするとか、チーズにするとかいうことをや
つて行かなければなりませんから、なかなか資本もかかる。要するにこの小さな日本の農業というものは非常な悪条件にあるということが私として長年頭にあるのであります。そうして恵まれざるものは農村であるということも申し上げていいのであります。従
つて農業労働は非常に難儀するけれ
ども、
農業経営という農業の企画者としての農民は、世界でも私は水準が低いと思うのです。これは税の
関係もございます。文化の至らざる点もございます。また長年の政府の
指導にも必ずしも欠陥がないとはいえません。しかし今これを一々論じましても、御
承知のように
昭和二十八年度
予算がすでに衆議院を通過しまして、今や参議院で
審議中であります。補正
予算というものの想像もつきません。しかして政府のやります
行政措置というものがほとんど立法化されておりまして、私も役人を相当長い間やりましたが、昔は
予算の執行とか
事業の計画とかいうものは
大臣限りでどんどんやれたものでございます。今日はただいま問題にな
つております農業
災害、
共済、これだけの法令も、すべて
大臣の働きというようなことは
法律で縛られるので、
大臣としてやることは、
予算を効率的に使う、
法律を生かして運用するということ、これ以外には今何を
考えるかとおつしや
つても、みなあなた方が今まで御相談にな
つておやりに
なつたことを遵奉して、その線に沿
つてなるべく能率的に、なるべく効率的に、
法律を運用するという以外には、二十八年度においてはむずかしいと私は思うのであります。しかしながら
予算にもよらず、
法律にもよらず、何か
大臣が
考えてやれとおつしやるならば、就任早々でありますけれ
ども、議会もいずれ済むでありましよう。二十八年度においては必ず皆様の御鞭撻によ
つてやりたい。この前も申し上げましたが、議会の活動の中心は
委員会が最も中軸であります。
委員会には多年農業政策その他のことを御研究の方がそろ
つておられるのでありますから、各党各派を通じまして、超党派的に——私は自由党でありますから自由党の農業政策を実行して行かなければならぬ立場でありますが、なお皆さんの御
指導、御鞭撻によ
つてできるだけ国民の
要望に沿う、そうして農民その人の幸福をはかり、また農村を振興させることに努力をしたいというようなことを
考えるのであります。今後十分な御協力を得て、時代の要求に処して行きたい、こういうような
考えを持
つております。