○廣川国務大臣
農業災害補償法の一部を改正する
法律案につきましてその提案理由を御説明いたします。
農業災害補償制度につきましては、昨年第十三国会において成立した
農業災害補償法一部改正法、
農業災害補償法臨時特例法及び農業共済基金法によりまして、制度の改善がなされたのでありますが、本制度
実施五年の経験に徹しまして、さらに
農家負担の軽減、蚕繭共済制度の改善、共済
団体の性格に即した監督の適正化等必要な改善を行い、制度の円滑な運営を期するため、この
法律案を提案する次第であります。
以下この
法律案の主要
内容について御説明いたします。
第一は、共済掛金の
農家負担の軽減及び災害の危険度に応じた共済金額の個別化であります。農作物共済の共済掛金の負担につきましては、従来通常共済掛金標準率が全国を通じて
最低となる県の通常共済掛金標準率部分を全国共通に全額
農家負担としておりましたが、全般的に
農家負担を軽減するために、通常共済掛金標準率のうち安全割増率を差引いた率のうち、全国を通じて
最低のものの三分の一の部分を全国を通じて新たに国庫負担とすることといたしました。なお、その結果従来の方法によりますと、被害の
程度の低い地域の国庫負担割合が相対的に少か
つたのでありますが、これらの地域についても国庫負担の割合の合理化が期せられることになりました。また蚕繭共済の共済掛金の負担につきましては、国庫と
農家との負担を合理的にするために、農作物共済の負担方法の改善と併行してこれと同様の負担方法とすることといたしました。さらに共済金額の個別化につきましては、被害の危険階級ごとにある
程度の幅を設けて、その
範囲内で共済金額を選び得ることとすることができますように改正をいたしました。
第二は、蚕繭共済制度の改善であります。蚕繭共済におきましては、現行法によりますと、共済事故による減収が組合員の平年収繭量の四割以上の場合に共済金を支払うこととしておるのでありますが、
農業災害補償法の
目的を十分に達成するために三割ないし四割の減収の場合にも共済金を支払うことといたしました。また蚕繭共済は、現行法では、全蚕期を通じた保険の建前とな
つております
関係上、共済掛金率は、春蚕繭も夏秋蚕繭も同率で、このため春蚕繭については掛金が割高、夏秋蚕繭については割安という不合理があり、また最終蚕期の収繭が完了いたしませんと再保険金の額が決定しないため、共済金の支払いが遅れるという支障がありましたので、これを蚕期別保険の建前に改め、春蚕繭と夏秋蚕繭の被害の実態に応じて掛金率を個別化いたしますとともに、再保険金の額を蚕期別に決定することにより共済金の支払いの円滑をはかることといたしました。なお、これらは従来から
検討を進めて参
つた問題でありますが、蚕繭共済の料率改訂期とな
つております本年からこれを
実施することといたしたのであります。
第三に、共済
団体の運営につきまして、農業災害補償制度の一環としての特殊な性格にかんがみまして、公益的見地からの適正な監督を行い得ることとし、また役員の責任を明確ならしめることといたしました。
以上がこの
法律案の大要でございまして、慎重御審議の上、可決あらんことをお願いする次第であります。
次に
農業災害補償法に基く
家畜共済の
臨時特例に関する
法律案につきまして、その提案の理由を御説明いたします。
農業災害補償法におきましては、
家畜共済は、死亡廃用共済、疾病傷害共済及び生産共済の三つにわかれておりまして、疾病傷害共済に加入いたしますには、死亡廃用共済に加入していなければなりませんが、死亡廃用共済に加入いたしますには、必ずしも疾病傷害共済に加入することを必要としない建前にな
つております。しかしながら、第一には畜産振興上、疾病傷害共済の普及徹底とこれによりまする家畜診療の普遍化が必要であるという点から見ましても、また第二は、疾病傷害の事故についての診療が行き渡るに
従つて、死亡廃用の事故が低下し、
従つて共済掛金率が低下するという有機的な関連性から、全般的に
農家の
家畜共済による負担を軽減するという点から見ましても、この二つの共済を一元化いたしますことが、
家畜共済事業の充実、農業災害補償制度の
目的達成をはかります上において必要ではないかと
考えるわけであります。この
法律案は、この点にかんがみまして、農業共済組合の中から、一部の農業共済組合につきその同意を得て、死亡廃用共済と疾病傷害共済とをあわせた死廃病傷共済を一定期間試験的に
実施させ、その
実施成績によりまして、将来の
家畜共済制度の改善に資することを
目的としております。すなわち、この実験によりまして、一元化された場合の共済掛金率、共済の
内容の各般にわた
つて基礎資料を得ると同時に、家畜の共済制度の運営上の諸問題についても
検討を加えて参りたいと
考えておるのであります。
以下試験的に
実施しようとする死廃病傷共済の
内容について御説明いたしますと、第一に共済掛金でございますが、共済掛金率は、実験段階でありますので、一応従来の死亡廃用共済の掛金率に疾病傷害共済の掛金率によりまして機械的に算定せざるを得ないのでありますが、一元化いたしますときには、危険率が低下することが予想されますので、収支のバランスの面から見ますと、若干の余剰が出ると
考えられます。そこで再保険特別会計に生じるであろうこの余剰分を見合いとし、実験を奨励するという意味を含めまして、共済掛金の一部の割りもどしという形での補助金を交付することといたしました。第二に、支払共済金でございますが、疾病または傷害の事故により、組合員に支払う共済金は、従来共済
目的の種類ごとに一年間の支払い限度を設けて、濫診監療を防止することとしておりましたが、早期診療により死亡廃用事故の低減をはかるという
趣旨を貫徹いたしますために、本法案によります共済については、この意味の限度は、これを撤廃することといたしております。
以上が、この
法律案の
目的及び
内容の概要でございます。慎重御審議の上可決あらんことをお願いする次第であります。