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中村(辰)
政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。
御質問の根本の方針につきましては、通産省としても化学肥料工業を
輸出工業として、特に経済的に緊密でございます東南亜市場を、
日本の
輸出市場として今日以後確保して参りたいと考えておるのでございます。この点につきましては、
井上委員の御趣旨に沿いたいと考えております。
御質問の中にございました
数字の問題について申し上げたいと思います。最初に硫安の生産状況を申し上げます。本年の十二月までの実績は八十二万七千トンでございます。一月以降の、いわゆる本肥料年度の七月末までの計画をそのまま実現するものと考えまして、百十三万四千トンの生産見込みを立てております。従いまして、本肥料年度の生産は百九十六万一千トンに相なる見込みでございます。一月の生産実績は、ただいま申し上げました
数字の中では十四万一千トンの計画を持
つておりますが、最終的の確実な
数字は多少異なるかもしれませんが、一万トン増産いたしております。一月は十四万一千トンが十五万一千トンに相なると思います。従いまして、最終の合計実績に対する見込みは、百九十七万一千トン程度に相なると考えます。
次に、硫安の電解法とガス法との操業度と申しますか、われわれ稼働率と申しておりまするが、電解法が六〇・四%、ガス法が八三・六%という操業度でございます。これが年間を通じての生産計画上におきます割合でございます。従いまして、今後におきます生産の振合いもこの原則に従
つてや
つて行きたいと思います。なお
数字の点につきましての御答弁はその程度にいたしまして、先ほど最初に
井上委員の御質問の基本の問題につきまして、通産省の基本的な考えを申し上げたいと思います。硫安工業は、今日二百万トン前後の生産を維持する段階にな
つておりますが、通産省といたしましては、化学工業は国内資源にほとんど全部を依存しておる産業でございますので、政策上これが所要とする電力その他資源の面について、全力を上げて今日の操業度に到達いたしたのでありますが、今後におきます国際競争からいたしまして、特に西欧のドイツあるいまこれの周」辺にこざします化学工業国の東南亜への進出に対しまして、適当な
措置をと
つて参るというのが主眼でございます。これを
数字的に、やや概略的に基本の流れを申し上げますと、欧州硫安のFOB
価格は大体四十五ドル見当とにらんでおります。欧州から東南亜への船運賃は大体ハドルから十ドルの辺でございます。この船運賃の低下の傾向はすでに昨年末終りまして、やや上昇の傾向かと思いまするが、安全弁をとりまして、当時の船運賃の最悪のときの
数字を申し上げます。欧州硫安の東南亜に対します
価格は、FOB四十五ドルに対して船運賃がハドルないし十ドルでありますので、CIF五十三ドルないし五十五ドルと想定いたします。わが国の硫安の現状でございまするが、わが国から東南亜への船運賃は、これは遠い所と近い所とございますが、大体三ドルから五ドル、わが国硫安の東南アジアヘのCIFは大体六十八ドル見当くらいににらんで考えておるのでありますが、最近の海外からの引合いを見ますと、大体六十三ドルから六十五ドルの線に来ております。それ以上のものもございますが、大体その見当を確実とにらんで申し上げたのでございます。この状況から判断いたしまして、この両者の東南亜市場、たとえばインド市場、あるいはパキスタン市場、これは西から来るも
日本から参りますも、大体運賃が似通
つたところになる地域でございますので、どちらかと申せば、競争が一番激甚だと考えられるのでございます。しかしこれに反しまして、韓国、台湾、フイリピン、こういうところは運賃の
関係からいたしますと、
日本側が有利でございます。そういう観点からいたしまして、両者のCIFにおきます
価格上の差を十三ドルないし十五ドル見当、こうにらんでみればよいのじやないか。この地域的な差異を考え、同時に先ほど申しました運賃のハドルないし十ドルは、どちらかと申せば、普通の運賃から見れば半額程度低いといわれておるのでございまして、そういう情勢から考えますと、硫安工業のコスト引下げの具体的な目標を大体十ドル程度に置きますれば、東南亜に対する硫安の市場確保ができるのじやなかろうかと思うのであります。
この目標をいかにして実現するかということになりまするが、もちろん化学肥料工業だけの合理化というような見地では、この目標を果し切れませんので、硫安工業の基礎的な資源でございます石炭あるいは電力につきましての合理化、あるいは開発、増強に努力をいたさねばならぬかと思うのであります。通産省のわれわれの
考え方からいたしますると、電源開発に伴います電解法の操業度を——先ほど申しましたように、今日の電解法は六〇%でございますので、これをさらに引上げることによりまして、数ドルの引下げをいたす。わが国の硫安の主要の地位を占めますコークス法につきましては、石炭工業の合理化というようなことを考えねばならぬのでございまして、この問題につきましては、通産省として石炭開発、特に縦坑開発計画を取上げて、大幅のコスト引下げの
対策といたしておるのであります。この
対策の結果これまた数ドル下げられる。同情に化学肥料工業
自体の合理化もいたさねばならぬのでございまして、コークス法において割高といわれております石炭の、特に粉炭の完全ガス化というような——最近外国におきまして最も進んだ発明に属しまして、コツパース法と申しまして、西ドイツではすでに実施いたしておるものでございますが、わが国の石炭、特に下級炭を利用しております肥料工場に技術の導入をいたしたいと考えるのでございます。もちろんこうい
つた大きな技術合理化のほかにいろいろの合羅もございますが、これによりまして数ドル、それから硫安工業の総合的な経営化、たとえば有機合成化学工業を併行して行うというような、そうい
つたいろいろの問題もございますが、これらの問題においてもなお合理化の余地がある。これらのことを目標として考えますると、先ほど申しました東南亜市場におきます十ドル程度の
価格上の差異というものは、これを補
つてなお余りある状況になると考えるのであります。これはもとより長い目で見ました硫安工業の長期合理化計画でございまして、現在の
輸出の状況に対応して、できるだけ即効的な
対策ということですでに考え、実施に移しておるものも二、三あるのでございます。これを補足的に
説明さしていただきたいと思います。
一つには、本年の一月優先外貨の制度を適用いたしまして、
輸出上の不利をカバーするように努めております。優先外貨の制度はドル地域に対します
関係で認められたものでありますが、最高一五%のフリー・ダラーを認めております。硫安工業につきましてもこの一五%を適用して、
輸出上の有利性を確保するよう努力いたしておるのでございます。なおバーターの
方法によりまして、できるだけ
輸出に有利になるような
措置も考えております。最近問題にな
つておりますカリ肥料
対策の一環として、金利の引下げということを考えておりますが、この金利の引下げはもちろん早急の
対策でありますと同時に、長い目で見ました肥料工業の基本的な合理化政策の一環でもございます。なお安い外国炭の
輸入ということにつきましても、外貨の割当等において善処するよう努力いたしております。大体以上であります。