○遠藤説明員 私国鉄の貨物課長であります。貨物等級とは何のためにつくるかというようなことをごく簡単に申し上げたいと思います。鉄道の貨物運賃は国民経済上重要な地位を占めるものでありますので、他の運輸機関の運賃と異なりまして、公共的な見地に立ちましての運賃
制度を採用しなければならないというふうに
考えられます。そういう場合に具体的に言えばそれではどういう
制度をとつたらいいかということを
考えますと、まず第一に統一賃率
制度と申しまして、運送原価は地勢によりまして、また運輸量の
繁閑によりまして非常に違うのでありますが、そういう地理的
条件の差異にかかわらず、線区によ
つて統一的な賃率
制度を採用しようということでございます。そういたしませんと、非常に原価の高くかかりますところの支線地帯におきましては、経済の発達が困難であるということになります。第二には達距離逓減
制度でございますが、貨物運送は物の移動を容易にしようというところに使命がありますので、遠距離の方を割安にいたしまして、遠距離の取引を行いやすいようにしようということでございます。その次に、第三といたしまして、運賃に負担力主義を加味するということでありまして、これが貨物等級とな
つて現われるものでこぎいます。旅客につきましては一等、二等、三等とございますが、こういう等級は貨物にはございま叶んので、貨物の等級と言いますと、その
利用する商品の負担力によ
つて運賃の
差別をつけるのでございます。こういたしますと、運賃負担力の小さい貨物も遠くまで運送ができるようになります。またこうしなければ負担力の小さい貨物が流通を妨げられまして、国民経済の円満な発達を阻害する結果になる。それでありますので、国有鉄道のような公共性の強い運輸
事業におきましては、等級
制度を設けまして運賃負担力を運賃に加味して行こうということでありますから、貨物等級というものが昔から実施をされておるのでございます。それで現在の貨物等級は、
昭和五年に大体制定されたものが骨子にな
つて、引続きまして
昭和十五年あるいは戦争中、その後小部分の改正を加えまして現在に至
つておるのでありますが、現行の貨物等敬が時勢に合わない、
利用されます側から見ましても現在の事情に合わない、また国有鉄道といたしましても、現在の貨物等はいろいろな点から時勢に合わない点を
認めておりましたので、いろいろ御
要望もこれあり、一昨年以来等級の改正を
考えてはおつたのでありますが、物価が安定しない時期におきましては、等級は永久的な
制度でありますので、簡単に改正することができないというわけで、この春に至りまして、ようやく等級を全面的に改正することを決定いたし、国有鉄道総裁の諮問機関として、各界の代表の方々からなります貨物等級
審議会を設置いたしまして、どういうふうな
制度が公正妥当であるかということで、公正妥当な貨物等級表をつくるための根本的改正に着手いたしたのであります。
そして貨物等級
審議会にまず貨物等・級の調整基準をどういうふうに定めたらいいかという諮問を総裁から
提出されまして、それに対しまして等級
審議会から答申があつたのでありますが、その答申の、ごく要点を申し上げますれば、まず第一に、貨物等級は運賃の負担力を要素として
考えるべきである、そして運賃の負担力は何によ
つて客観的に測定し得るかと言いますと、貨物の価格によることが妥当であるということに
なつたのであります。
等級決定の第二の要素といたしましては運送原価の問題でございます。運送原価の点につきましては、この答申におきましては、普通ワムとかトムとかいう貨車を使
つて運送いたします場合には線区的にはもちろん違いますが、品物別の原価というものはほとんど異るところがないのでございますので、等級査定の場合に原価を考慮するのは、
通常の経費以外に特別の経費を要する場合に限り考慮すれば十分である、こういうふうに書かれておるのであります。
三番目に公共性に基く調整
措置であります。運賃負担力と運送原価によりまして査定されました等級が、結果から見まして査定されました表が一応でき上りますと、それに
一般社会生活上日常不可欠の消費物資は、その負担力なり原価なりにかかわらず、安い運賃を適用することが妥当であるという意味で、そういうような日常不可欠の消費物資については、公共性に基き調整の
措置をしたらどうか。
それから
最後に、そうやりましてでき上りました等級表が現在の等級表と著しく違いまして、ある産業に対しまして非常に大きな打撃を与えるとい、りような場合には別にまた公共性に基いて調整を行つたらいいではないか、こういうような答申をいただいたのであります。それによりまして、その他御説明申し上げればこまかいいろいろなことがございまするが、一応そういうような
考え方で
仕事を進めたのであります。そういたしまして、まず第一
段階といたしましては、価格によりますところの品物の格付をいたすわけでありますが、その価格を発地における荷づくり込み実重量当りの貨物乗り価格を基準としたのでありますが、この価格につきましては、国鉄はもちろん現地の
職員を動員いたしまして
調査をいたしましたが、
関係各省その他業界ともできるだけ打合せをいたしまして、まずく間違いのない価格というものを査定いたしまして、それによつたのであります。その価格によりまして等級を十二級に分類をいたしたのであります。それは多分お手元に行
つておるかと思いまするが、一級から十二級までであります。十二級はただの品物から二百円まで、十一級は二百一円から四百円まで、こういうように下の方は倍に飛んでおります。途中から二倍半飛び、三倍飛び、三倍半飛び、四倍飛びというふうにな
つておりますが、そういう価格の刻みをつくりまして、大体各商品の価格をこれに当てはめて一応等級を査定いたしたのであります。
それから運送百原価の方は、特別に運送価格をよけい必要とするものについてのみ考慮するということでございますので、特殊貨車といたしましては冷蔵車活魚車について割増しを行うことにいたしたのであります。これは一割
程度というふうに
考えております。それからその他運送原価に
関係がある危険品であるとか、または運輸上特別の
措置であるとか、そういうふうな特別の手配を要する物につきましては、物によりましては、等級査定の上にそれを表わす、それは運賃の割増しによ
つて行うということで妥当な結果を得るようにしたのであります。それからなお運送原価の点につきまして、列車指定の問題が従来から生鮮
食糧品
関係にあるのでございますが、これにつきましては、現在三割増しの運賃をいただいておりますのを二割増しに引下げましてその負担の緩和をはかるというふうに
考えておるのであります。
それから公共性に基く調整
措置といたしまして
一般社会生活日常不可欠の消費物資の
範囲を最小
範囲に縮小して
考えまして、米、麦、小麦粉、生野菜、みそ、しようゆ、大衆魚、薪炭等といたしました。
次にこういうふうにしまして一応の等級は査定されますが、従来の等級の中に貨物が貨車に標記トン数一ぱいまで積めない場合の
措置でありますが、これをわれわれは減トンと称しておりますが、これを等級の中に織り込んでおつたのであります。これは今回の等級からはずしましてトン数によ
つて引く、たとえば、ある貨物は六級であ
つて、従来減トンの
関係で七級にな
つておつた。それを今度は等級はそのままにして、そうしてトン数を一トンなりニトンなり計算トン数を引くということにいたしたのであります。これもある一定の基準をつくりまして、各物資公平に査定いたしたのであります。
こういうようにいたしまして、等級は一応でき上
つておるのでありますが、先ほど申し上げましたように、従前の等級と位置が著上しくかわりまして、そのために何割も非常に大きな値上りをするような結果にな
つてしまうことは、運賃が各産業の一つの基盤とな
つておる
関係がございますので、非常に急激な変動は避けなければならぬということで、いろいろと
関係各省あるいは業界の御意見も聞きまして、
最後にいろいろと調整
措置をはか
つておるのでございますが、まだ一部打合せの完了しないものもございますが、大部分につきましては、
事務的な手続を完了したようなかつこうにな
つております。
そこで先ほど
ちよつと言い漏らしましたが、下級といいますか、品物としてはあまり下級でありませんが、従来政策的に非常に安い運賃を適用されておりました物で、今回相当値上り率の多くなる貨物が結果として現われておるのであります。これは一体どういうことが原因かと申しますと、国有鉄道が公共企業体となりました
関係上、公共性はもちろん尊重するわけでございます。また公共性を尊重するがゆえに等級
制度を今後もつく
つて行くのでありますが、企業的見地も同時にあわせ
考えなければならないということでございまして、今度の運賃の最高限、最低限の
関係は、そういう企業的見地も加味いたしまして、率をつく
つてみたのでございます。等級
審議会の答申には、運賃の最高限は他の運輸機関との均衡を考慮して
考えろ、それから最低限につきましては、少くとも直接的な経費をカバーし得る
程度に
考えろ、こういう答申にな
つておるのであります。現在や
つておりますところの等級表は、賃率指数は最高が二五〇でございまして、最低は減トン
制度を含めまして五三にな
つております。等級そのものとしては六八にな
つておるのであります。お米であるとか、そういう最低の必需物資が六八という運賃指数を適用されております。それが今回は最低も最高も中ほどに縮めて参つたのであります。それは等級
審議会の答申に書いてありますように、他の運輸機関の均衡ということを
考えますと、二五〇という運賃の指数は、大体一〇〇を鉄道の平均原価とお
考えにな
つてできたのだと思います。一〇〇が普通の貨物を送る場合に要するところの平均の原価でございますが、平均原価の二倍半の運賃をいただくという貨物は、自動車等の発達によりまして、
制度としてはありますけれ
ども、実際はそういう貨物は鉄道に参
つておらないのでありまして、ほとんどが自動車の方に行
つております。一級品
といつておりますが、この一級品は、品目は数十品目ございますが、最近の
調査では五日間に全国でわずか一車しか動いておりません。普通の場合はこれはほとんど自動車で行くということになると思います。そんな
関係で、今回はその二五〇を二〇〇にというように、一〇〇に近寄せたのでございます。それから従来の等級の最低が六八でございますが、直接費をまかなうという観点に立ちますと、われわれ七五ということを
考えたのであります。