運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-03-13 第15回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十三日(金曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 熊谷 憲一君 理事 富田 健治君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 井手 以誠君    理事 大矢 省三君       大西 禎夫君    岡田 忠彦君       森 幸太郎君    山下 春江君       粟山  博君    武藤運十郎君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官 菅野 義丸君         参  事  官         (法制局第一部         長)      高辻 正己君         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         行政管理政務次         官       中川 幸平君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁保安局長 山田  誠君         保安庁人事局長 加藤 陽三君         保安庁経理局長 窪谷 直光君         保安庁装備局長 中村  卓君         外務政務次官  中村 幸八君  委員外出席者         保安庁長官官房         総務課長    山上 信重君         保安庁長官官房         法規課長    麻生  茂君         専  門  員 亀掛川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 三月十日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員富田健治君及び勝間田清一辞任につき、  その補欠として大橋武夫君及び井手以誠君が議  長の指名委員に選任された。 同月十二日  委員大橋武夫君及び山下春江辞任につき、そ  の補欠として富田健治君及び三浦一雄君が議長  の指名委員に選任された。 同月十三日  委員三浦一雄辞任につき、その補欠として山  下春江君が議長指名委員に選任された。 同日  富田健治君及び井手以誠君理事補欠当選し  た。     ――――――――――――― 三月九日  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一六二号)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一六四号) 同月十日  元南西諸島官公署職員身分恩給等特別措  置に関する法律案内閣提出第一六七号) 同日  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (岡田五郎紹介)(第三八一一号)  同(佐々木更三君紹介)(第三八一二号)  同(岡田五郎紹介)(第三八八六号)  同(倉石忠雄紹介)(第三八八七号)  同外一件(勝俣稔紹介)(第三八八八号)  同(中澤茂一紹介)(第三八八九号)  軍人恩給復活に関する請願櫻内義雄紹介)  (第三八十三号)  同(楠山義太郎紹介)(第三八一四号)  同外三件(石坂繁紹介)(第三八一五号)  同(千葉三郎紹介)(第三八一六号)  同(大石ヨシエ紹介)(第三八一七号)  同(大村清一紹介)(第三八一八号)  同(大石ヨシエ紹介)(第三八四五号)  同(小澤佐重喜君外七名紹介)(第三八八三  号)  同(濱地文平紹介)(第三八八四号)  同外一件(宇田耕一紹介)(第三八八五号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  旧軍人関係恩給復活に関する陳情書  (第一九〇二号)  旧軍人恩給復活に関する陳情書  (第一  九〇三号)  遺族扶助料に関する陳情書  (第一九〇四号)  文官恩給増額に関する陳情書  (第一九〇五号)  同  (第一九〇六号)  同  (第一九〇七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  五五号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一六二号)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一六四号)  元南西諸島官公署職員身分恩給等特別措  置に関する法律案内閣提出第一六七号)     ―――――――――――――
  2. 船田中

    船田委員長 これより内閣委員会を開きます。  まずお諮りいたします。理事でありました富田健治君及び井手以誠君委員辞任せられ、再び委員に選任せられましたので両君を理事に御指名いたしたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 船田中

    船田委員長 御異議なければさように決します。     —————————————
  4. 船田中

    船田委員長 本日は外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一六二号、行政機関職員法の一部を改正する法律案内閣提出第一六四号、元南西諸島官公署職員身分恩給等特別措置に関する法律案内閣提出第一六七号及び保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出第五五号を議題といたします。  まず元南西諸島官公署職員身分恩給等特別措置に関する法律案について政府より提案理由説明を求めます。菅野内閣官房長官
  5. 菅野義丸

    菅野政府委員 ただいま議題となりました元南西諸島官公署職員身分恩給等特別措置に関する法律案につきまして、その提案理由及びその要点を説明いたします。  北緯二十九度以南南西諸島につきましては、昭和二十一年一月二十九日付総司令部覚書「若干の外かく地域政治行政日本から分離することに関する件」によりまして、同日以降わが国は、これらの地域政治上、行政上の権力を行うことを停止せられましたため、同地域にあつた官公署職員身分及びこれらの職員支給すべき恩給退職手当死亡賜金等については、その後措置することができず、今日に至つたことは御承知の通りであります。  ところで平和条約が成立し、わが国の独立を見ました現在においても、なおこれら元官公署職員身分恩給等をこのような状態に放置しておきますことは好ましくないことであるのみならず、現地該当者及びその遺族生活困窮は見るに忍びないものがありますので、すみやかにその身分を確定し、支払うべき退職手当恩給等支給して本土公務員並取扱いをいたしたいと存じ、本法律案を提出した次第であります。  次に本法律案の大要を説明申し上げます。まずいわゆる行政分離覚書の出された前日の昭和二十一年一月二十八日に南西諸島にあつた官公署職員で、引続き琉球島民政府またはその機関に勤務したもの及び未帰還職員以外は、同日をもつて退職したこととして取扱い、それらの者に対しましては、その日までの未払い俸給恩給その他の諸給与支給することとしたことであります。  次に、元南西諸島官公署職員で引続き琉球島民政府またはその機関に勤務した者については、従前の身分を保有して勤続したものとみなし恩給退職手当及び死亡賜金等本土公務員と同様に支給する取扱いといたしました。  第三に、元南西諸島官公署職員で引続き琉球島民政府職員となつた者在職のまま恩給を受け得る道を開いたことであります。  第四に、元南西諸島官公署職員琉球島民政府職員なつた後、さらに本邦官公署職員なつた場合には、引続き本邦官公署職員なつたものとみなし、また未帰還職員については本邦の未帰還官公署職員の例に準じ措置することといたしたことであります。  第五に、元沖縄県の職員について支給すべき恩給及び諸給与支給は、国庫が負担することとしたことであります。  以上が、この法律案の概略でありますが、何とぞ愼重御審議の上すみやかに可決せられるようお願いいたします。
  6. 船田中

  7. 石井通則

    石井政府委員 ただいまの提案理由に補足いたしまして、若干御説明申し上げます。  北緯二十九度以南南西諸島地域は元沖縄県の全部並びに鹿児島県の元大島郡を含み、平和条約第三条の規定によりアメリカ合衆国が行政、立法及び司法上の権力を行使している地域でありまして、人口は元沖縄県の地域は約七十三万、鹿児島元大島郡の地域は約二十一万、合計約九十四万であります。御承知のごとく南西諸島ことに沖縄本島戦争の惨禍がまことに甚大で、昭和二十年三月以降は官公署機能はまつた混乱状況に陥り、大部分の職員はその後は俸給支給されておりません。また昭和二十一年一月二十九日の行政分離に関する連合軍司令部覚書が発せられた後においても、官公署職員としての身分についても恩給死亡賜金退職手当等給与についても、何ら措置することができない状態のままになつておりましたが、昨年八月那覇に日本政府連絡事務所が設置せられまして以来、元官公署職員に関しまする実態の調査もいたし、またその身分並びにこれらに対する諸給与の支払いに関する措置につき検討いたしまして、今回ここに法律案の御審議をお願いすることになつたのであります。この法律案により元南西諸島官公署職員として措置することを予定いたしておりますものは、関係官庁出先機関関係職員及び元沖縄県、鹿児島元大島支庁関係職員並びに公立学校教員等でありまして、沖縄本島混乱に陥りました直前、昭和二十年二月末日における在籍人員は総計一万一千六百九十二名であつたのであります。そのうちアメリカの同地域占領後「官公署等職員米国軍士官の命令によりその職務に従事すべし」という米国軍政府布告第一号に基きまして、昭和二十一年一月二十九日いわゆる行政分離後引続き米軍管理下の諸機関すなわちこの法律案にいわゆる琉球島民政府及びその機関職員として勤続いたしました者が八千三百二十四名、未帰還者が六百六十一名、行政分離の際他の職業に転業した者等琉球島民政府職員とならなかつた者が九百九十五名、昭和二十年二月末日より行政分離の日までに死亡した者が一千七百十二名ということになつております。  次にこの法律案につきまして逐条の御説明をいたします。  第一条はこの法律目的規定したものであります。  第二条は、元南西諸島官公署職員は、この法律で別段の定めがある場合、すなわち引続き琉球島民政府職員となつた者や未帰還者等を除き、昭和二十一年一月二十八日に退職したものとする規定であります。官公署職員範囲は、国の出先機関、元沖縄県及び鹿児島県の職員並びに公立学校職員等といたし、市町村の職員等は除く予定にしております。  第三条の第一項は、改正前の恩給法第十九条に規定する公務員または公務員に準ずべき者として在職していた元南西諸島官公署職員が引続き琉球島民政府職員なつたときは、琉球島民政府職員としての在職恩給法上の公務員または公務員に準ずべき者としての在職とみなして、恩給に関する法令規定適用するという規定であります。改正前の恩給法とは昭和二十一年一月二十八日において施行されていた恩給法で、その第十九条による公務員とは、文官軍人教育職員及び警察監獄職員並びに同法第二十四条に掲げる待遇職員であり、公務員に準ずべき者とは準文官、準軍人及び準教育職員であります。この場合琉球島民政府職員としての在職につきましては諸般事情を考慮し、公務傷病、実在職年に対する加算年及び納金の規定適用しないものといたし、教育職員または警察監獄職員がこれに相当する琉球島民政府職員として勤務した場合の在職は、文官としての在職とみなすことにいたしております。第二項は、恩給基礎俸給はその者が昭和二十一年一月二十八日において受けていた俸給給与事由の発生したときにおける恩給法上の仮定俸給に切りかえた額とする規定であります。  第四条の第一項は、南西諸島官公署職員であつて国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律が施行されていたとした場合に、その法律第二条に規定する職員として在職していたことになる者が引続いて琉球島民政府職員なつたときは、その者を同法第二条に規定する職員として在職したものとみなし、国家公務員等に対する退職手当支給に関する法令規定適用されていたものとして、退職手当昭和二十一年七月一日以降の給付事由の発生した分から支給するという規定であります。退職手当法第二条の職員とは国の予算により俸給が支払われる職員で、公社、公団及び公庫の職員を含んでおります。昭和二十一年七月一日は現在のように使用者支給義務のある退職手当制度ができたときでありまして、それ以前には各省各庁が予算範囲内で支給していた恩恵的なものでありましたので、退職手当法適用があつたものとする場合も、この日からとしたものであります。昭和二十六年十二月五日に復帰した鹿児島県大島郡十島村の場合もこれと同様の取扱いをいたしております。第二項は退職手当の額の計算基礎となる俸給月額は、その者が昭和二十一年一月二十八日に受けていた俸給月額基礎とし、給与事由の発生した日における本土公務員給与水準に切りかえた額とするという規定であります。第三項は元沖縄県及び鹿児署県職員についても国家公務員に準じて退職手当支給できることにいたした規定であります。  第五条の第一項は、第三条第一項に規定する琉球島民政府職員がすでに普通恩給についての最短恩給年限に達し、恩給法上の在職年通算辞退したときには、琉球島民政府職員として在職のまま恩給を受け得る道を開いた規定であります。すなわち昭和二十一年一月二十八日においてすでに最短恩給年限に達しているときは、同日を退職とみなして恩給支給し、昭和二十一年一月二十九日以後において最短恩給年限に達したときは、最短恩給年限に達した日を退職とみなして恩給支給することができることといたしております。第二項は右の辞退をするか、あるいは辞退しないで在職年通算をするかの決定は事務処理上六箇月以内にしなければならぬこととした規定であります。第三項は第一項の辞退があつたときはそれぞれ恩給法退職とみなした日に退職手当法関係におきましても退職したものとみなして退職手当を同時に支給することとした規定であります。  第六条は死亡賜金に関する規定でありますが、第一項は官吏または待遇官吏であつた南西諸島官公署職員が引続き琉球島民政府職員なつた場合には、その在職の間引続き官吏または待遇官吏たる身分を有するものとみなして死亡賜金に関する法令適用し、その死亡の場合死亡賜金支給することとした規定であります。なお目下提案中の退職手当に関する法律の一部改正案昭和二十八年三月三十一日以後は死亡賜金制度をなくし、退職手当制度一本となることになつておりますので、その後死亡賜金支給しないことにいたしております。第二項は死亡賜金計算基礎となる俸給月額は、退職手当計算基礎となる俸給月額と同様にいたす規定であります。  第七条の第一項は元南西諸島官公署職員であつた者昭和二十一年一月二十九日以後九十日以内に琉球島民政府職員なつた場合には、恩給及び退職手当に関する法令適用上引続いて琉球島民政府職員なつたものとみなす規定であります。九十日以内というのは行政分離の日の即日から引続き琉球島民政府に勤めることは住宅その他の事情のため困難な者があつたことや同年四月二十二日に沖縄民政府の創立があつたこと等、諸般事情を考慮して九十日間の猶予を見たのであります。第二項は行政分離の日以後九十日以内に本邦官公署に勤務した者については、前項同様に引続き勤務したものとみなす規定でありまして、この場合の九十日は本土へ渡航する日時を考慮いたしたものであります。政令で定める国または地方公共団体機関職員とは恩給法または退職手当法適用のある本邦官公署職員範囲につき政令規定いたしたいと考えております。第三項は引続き琉球島民政府職員となつた者がその職を離れた日から九十日以内に本邦官公署職員なつた場合にも引続いて勤務したものとする規定であります。  第八条は未帰還者規定でありますが、第一項は未帰還職員昭和二十八年三月三十一日までに帰国したものが帰国後九十日以内に本邦官公署職員なつた場合にはその身分継続を認めることにいたした規定であります。第二項は未帰還者昭和二十八年三月三十一日までに帰国して九十日以内に琉球島民政府職員なつた場合にその身分を引続かせる規定であります。これらの規定は、いずれも昭和二十一年一月二十八日現在においては未帰還であつた者帰還の日以後引続き琉球島民政府職員本邦官公署職員なつた場合に行政分離後引続き琉球島民政府職員本邦官公署職員となつた者と同様に身分継続を認めることにいたした規定であります。第三項は外地未帰還公務員について適用されておる昭和二十一年勅令第二百八十七号と同一趣旨により帰国の日以後三十日間身分を保留させる規定であります。第四項は昭和二十八年三月三十一日までに帰国しなかつた南西諸島官公署職員のうち恩給法適用を受ける者については本邦官公署職員と同様に現在御審議中の恩給法の一部を改正する法律案附則第二十五条の規定により退職とみなされる日または死亡が判明した日まで身分継続させ、恩給法適用を受けない者についてもこれに準じて政令で定める日まで身分を続かせようとするものであります。第五項は昭和二十八年三月三十一日までに未帰還である元沖縄県の職員に対する給与については、本邦官公署職員の例に準じて俸給その他の給与支給する規定であります。  第九条に規定いたします疎開学童担当教育関係職員は、昭和二十一年一月二十八日において南西諸島官公署職員ではなかつたのでありますが、昭和十九年に沖縄県より疎開学童とともに熊本、宮崎、大分の三県に転じ、昭和二十一年一月二十九日以後南西諸島に復帰した教育関係職員についても本法律案に掲げる南西諸島官公署職員と同様の取扱いをすることにいたし、その者について必要な読みかえを行う規定であります。  第十条は南西諸島地域内の区裁判所に置かれていた執達吏が、これに相当する琉球島民政府職員なつた場合には、執達吏または執行吏恩給に関する法令適用を行う規定であります。  第十一条の前段は、南西諸島官公署職員身分に基いて生じた恩給請求権その他国または地方公共団体に対する債権は、昨年まで同地域との通信も行われず、またこの法律が施行されるときまでは職員身分も確定しておらなかつたので、時効により消滅しないようにするため、戦争により南西諸島官公署機能混乱に陥りました昭和二十年三月一日からこの法律施行前までは時効が進行しないこととする規定であります。  後段は琉球島民政府職員についての権利の消滅時効についても同様とする規定であります。  第十二条の第一項は元南西諸島官公署職員について元沖縄県が支給すべき俸給給与等で、まだ支払われていないものは沖縄県にかわり国が負担する規定であります。第二項はこの法律規定により琉球島民政府職員となつた者支給すべき退職手当及び死亡賜金原則として国庫が負担することにいたし、特例として昭和二十一年一月二十八日において鹿児島県がその給与を負担していた職員については鹿児島県が負担することといたした規定であります。  第十三条は琉球島民政府職員について恩給給与事由の生じたときは、原則として総理府恩給局長がその恩給を裁定し、国庫がその費用を負担することとし、特例として昭和二十一年一月二十八日において鹿児島県知事がその恩給を裁定し、鹿児島県が経費を負担すべきであつた南西諸島官公署職員で、琉球島民政府職員なつたものにかかる恩給は、同県知事が裁定し、同県が負担するものとした規定であります。  第十四条は本法律案実施に関し必要な手続等事項について政令で定めることにいたした規定であります。  最後にこの法律案によりまして必要となる経費でありますが、国費によつて支給いたすべき分は現在までのところ未払い給与死亡賜金退職手当、未帰還者給与等の諸給与合計しまして約一億一千万円程度になるものと推定いたしております。  また恩給関係におきましては、現在までのところ、年金恩給年金扶助料、一時恩給、一時扶助料等合計して四億八千万円程度になるものと推定いたしております。そのうち、諸給与関係につきましては、昭和二十八年度予算において、その三分の二程度の七千四百九十三万円を計上し、恩給関係においては、既得恩給の分約一億七千万円を文官等恩給の百四億の予算から支出することにいたしております。元南西諸島官公署職員のこれらの処理に関しましては、具体的調査相当日時を要すると考えられますので、おおむね二年ないし三年にわたつて処理いたしたいと考えている次第であります。  よろしく御審議をお願い申し上げます。     —————————————
  8. 船田中

    船田委員長 次に外務省設置法の一部を改正する法律案について政府より提案理由説明を求めます。次官中村幸八君。
  9. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 外務省設置法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容を御説明いたします。  移民問題に関する行政事務は、外務省所管事項として外務省設置法に明記しているところでありますが、移民は漸次増加の傾向にあります。すなわち移民問題は、今次大戦の勃発とともに中断されましたが、戦後昭和二十二年に至り、アルゼンチンの在留邦人による近親者呼寄せが許可されたほか、引続いてブラジルの呼寄せ移民がきわめて限られた範囲で許可されました。  しかるに、平和条約発効後の昭和二十七年八月に、ブラジル移植民審議会はさきに許可した上塚司計画アマゾン移民五千家族を確認したほか、松原安太郎計画中部ブラジル移民四千家族を許可し、昭和二十八年度はそのうちアマゾン三百七十家族中部ブラジル二百家族の入国を許可しました。さらにパラグアイは百二十家族を許可したので、昭和二十八年度の計画移民合計六百九十家族を送出する予定なつ参ております。  従つて昭和二十八年度は、計画移民六百九十家族三千四百五十人を予定するほか、呼寄せ移民も年間二千人を送出する見込みであり、さらに昭和二十九年度以降は、アマゾン及び中部ブラジル移民が累増する計画なつており、近い将来の移民送出は確実かつ大幅に増大するものと思われます。  しかるに、現在のところ、移民保護助成事務は、欧米局第二課の移民班処理しており、戦前の外務省及び拓務省関係行政組織に比較するときわめて貧弱かつ不統一であり、今後増加すべき移民事務を能率的に処理するためには不十分な状態にあります。  右の事情に照しまして、昭和二十八年度から開始される移民送出の見通しとにらみ合せて、移民業務を円滑かつ一元的に遂行するため、外務省海外移住局を設置することといたしました。  海外移住局組織は、最も簡素なものとし、このため、特に人員増加を行わず、外務省内における所管事務の移管と統一化とによりまして所期の目的を達成いたす次第であります。  右の方針によりまして、海外移住局を設置いたしますため、外務省設置法の一部を改正する必要が生じたわけでありますが、本改正法案におきましては、外務省内部局として海外移住局を新設追加いたし、これに伴いまして、現行設置法の第五条中「六局」を「七局」に改め第九条第四号に定められている欧米局所管事務の一つである海外渡航移住及び旅券関係事務を削り、第十四条として海外移住局所管事務を新たに定め、同局において、海外渡航及び移住に関する事務並びに旅券の発給及び査証に関する事務統一的につかさどらせる次第であります。  右の改正に伴いまして現行設置法の目次以下章条名について、従来未整理のものをも含みまして、所要の改正を加えるわけであります。以上が、外務省設置法の一部を改正する法律案提案する理由及びその内容の説明であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あらんことをお願いします。     —————————————
  10. 船田中

    船田委員長 次に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について政府より提案理由説明を求めます。行政管理政務次官中川幸平君。
  11. 中川幸平

    ○中川政府委員 ただいま議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  今回提案いたしました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案は、行政の簡素化、経費節約の方針にのつとり、昭和二十八年度の事業計画に即応して、必要最少限度の増員を認めると同時に各行政機関事務事業の是正、縮小及び事務の合理化、能率化等による欠員の整理等に伴う定員の縮減を行い、もつて行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものでありまして、その内容は大要次の通りであります。  第一に、総定員におきましては、六十八万九千五十四人が六十五万三千二百八十三人となり、差引三万五千七百七十一人の減員となつております。これを省別に見ますと、総理府、大蔵、厚生、農林、通商産業、建設の各省におきまして計四万二千六百九十六人を縮小する一方、法務、外務、文部、運輸、郵政、労働の各省におきまして、計六千九百二十五人を増加することになつております。減員のおもなものといたしましては、警察制度の改革による四万一千六十五人、アルコール専売事業の縮小による二百七十六人、水産業基礎調査制度の廃止による百十八人等があり、増員のおもなものといたしましては、郵政省の現存賃金要員の定員化によるもの四千七百八十五人、旧軍人等の恩給復活によるもの五百九十人、国立学校の学年進行及び学部増設等によるもの六百八十二人、入国管理事務増加によるもの五百二十七人等があります。  第二に、警察並びに教育制度の改革によつて国家公務員となる都道府県警察職員及び義務教育学校職員につきましては、いずれも国の行政機関に置かれる職員ではなく、またその定員につきましても、それぞれ警察法及び義務教育学校職員法に基く法令で定められることになつているのでありますが、これらの職員国家公務員でありますので、その定員につきまして附則に注意的な規定を挿入いたしたのであります。  第三に、大蔵省、水産庁、通商産業省におきまして事務の縮小に相当の日時を要するものにつきましては、それぞれの事情を考慮の上、新定員を越える員数の職員の定員を一定期日を限り、経過的に新定員に附加して認めることといたしました。  第四に、警察法の改正法律が施行される日の前日までの間は、現在の国家地方警察が存続いたしますので、附則でこれに必要な経過措置規定いたし、また、海上公安局法施行の日の前日までの間は、海上保安庁が運輸省の外局として存続いたしますので同様の経過措置規定いたしたのであります。  なお、定員縮小に対しましては、原則として四ヶ月間の猶予期間を設け、新定員を越える員数の職員を定員の外に置くことができることとし、実人員の整理を円滑に実施するための措置をとることといたしております。  以上が本改正法案の主要な内容でありますが、これらはいずれも将来の事業計画の実行を確保するとともに、行政機関の規模の適正を期するため必要な措置であります。  何とぞ愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  12. 船田中

    船田委員長 以上提案理由説明を聴取いたしました。  三法案の質疑は次の機会に譲りたいと存じます。
  13. 井手以誠

    井手委員 ちよつと議事進行について。ただいま提案理由説明がありました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案につきましては、御説明によりますると、警察制度の改革の関係が一番重要なように承つたのであります。従つてこれを審議するには、地方行政委員会審議中の警察法案、これについて地方行政委員会と連合審査をお願いしたいと考えておるのであります。これについて、地方行政委員会審議の適当な時期に、連合審査をいたされまするようにお願いする次第でございます。
  14. 船田中

    船田委員長 ただいまの井手以誠君からの御発言につきましは、理事会によく相談いたしまして、善処いたしたいと存じます。     —————————————
  15. 船田中

    船田委員長 次に保安庁法の一部を改正する法律案議題といたし、先会に引続き質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。井手以誠君
  16. 井手以誠

    井手委員 本日は保安庁法の一部を改正する法律案につきまして、長官に自衛力を中心といたしましてお尋ねいたしたいと考えております。なるべく審議促進に協力する意味におきまして、簡明にお尋ねいたしたいと思いますので、長官におかれても明確に、簡明にお答えいただきますよう、まずもつてお願いいたす次第でございます。長官にお尋ねする前に、まず法制局にお尋ねしたいと思いますが、お見えになつておりますか。
  17. 船田中

    船田委員長 法制局政府委員は、間もなく見えるはずであります。
  18. 井手以誠

    井手委員 それでは長官にお尋ねしたいと思います。自衛力の定義のことでございますが、先般の委員会におきまして、長官は保安隊そのものが自衛力ではない。港湾や生産関係や道路、そういつたものを総合したものが自衛力だ、こういうふうなお答えがあつたのであります。この再軍備問題につきまして、政府は再軍備はしない、自衛力を漸増して行くんだということを繰返し繰返し御発表になつおるのでございます。私どももまた国民も、あの保安隊が自衛力だというふうに感じておるのでありますが、この辺のはつきりした解釈を承つておきたいと思うのであります。長官はさきに法務大臣当時は、原子爆弾を持たないものは戦力でないというふうな御答弁をなさつてつたのでありますが、今日では自衛力問題に関しての責任者でもございまするので、自衛力というものについての、はつきりした定義をまずお示しいただきたいと存ずる次第でございます。
  19. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのお尋ねに対してお答えいたします。自衛力とは国の外からたると内からたるとを問わず、国の安全、平和を撹乱するというような行為を防遏するに役立つところの総合した力であります。かように解釈いたしますると、いわゆる自衛力はきわめて広範囲であります。物心両方面においてこれを解釈すべきものと考えるのであります。
  20. 井手以誠

    井手委員 物心両面にわたつた広汎なものが自衛力だということでありますが、少くとも自衛力を担当される、保安隊の責任者である長官は、国内治安を確保する上において、保安隊はどのくらい、あるいは港湾設備はどのくらい、生産はどのくらいだというはつきりしたお考えがなくては、責任は全うされないと思うのであります。具体的に申しますと、どうなれば自衛力といわれるものであるか。ただ物心両面の総合力だとおつしやつても、自衛力という考えには私どもはどうも受取りかねるのであります。そこは非常に重要な問題でありますので、はつきりと具体的にお示し願いたいと思います。
  21. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより保安隊も自衛力の一部をなすものであります。しかし保安隊ばかりが自衛力を構成するものではない、いわゆる国家の経済力、平たく申せば工業力その他精神力、運輸力すべて包含されたものと私は解釈すべきものだと思います。しからばそ、の自衛力をいかなる限度に定むべきかということにつきましては、これはその時と場合によつて変化があるのでありまして、あらかじめこの線までは自衛力として持つて行くというようなことは、私は言えないであろうと考えておる次第であります。
  22. 井手以誠

    井手委員 保安隊は自衛力の一部だとおつしやいましたが、保安隊は金額の点におきましても、またその実力、効果という点から申しましても、自衛力の中心をなすものではないかと考えるのでありますので、まず自衛力における保安隊の評価をどの程度、その大部分であるかあるいはごく一部であるか、私は大部分だと考えるのでありますが、その点のお考えを承りたい。  次に、自衛力はそのときくによつて違うのだということでございます。国務大臣としては当然のお言葉であろうと思いますし、よく言われておる言葉でありますが、私は現在の客観情勢、日本の地理的立場におきまして、一応自衛し得る力というものは、その人員において、また防衛生産の力におきまして、どのくらいの金があり、どのくらいの装備、設備ができたならば自衛力といわれるか。これは当然政府としてはお考えをお持ちにならねばならないお立場だと考えるのでありますから、この点承りたいのであります。
  23. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより保安隊は、自衛力の中心と申せば語弊がありますが、相当強度な役割をなすものと私は考えております。しこうしてこの保安隊をいかなる限度においてこれを持つべきかということについては、われわれは二十八年度予算において盛りましたような限度が、まずさしあたり保安隊の力として、政府は当然持たなければならぬと考えておるのであります。しかしながら国内情勢、国際情勢の変化に伴いまして、あるいはこれ以上になることもあるだろうし、あるいはまたこれが縮減されることもあるだろうと、こう考える次第であります。さしあたりといたしましては、二十八年度予算に盛りましたような程度でもつて日本の治安を維持して行くのに相当かと、こう考えておる次第であります。
  24. 井手以誠

    井手委員 それでは現在の客観情勢では、現在の保安隊はもちろん、ほかの施設、防衛生産力等もありましようけれども、その相当な部分をなす保安隊は、現在でよろしいというお考えであるか、念のためにお伺いをいたします。
  25. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 客観情勢の許す範囲において、さしあたりただいまのところでは、二十八年度予算で盛つた政策をもつてわれわれは妥当なり、こう考えておるのであります。
  26. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、自衛力の相当な部分を占めておりまする保安隊が現在のところ大体これでよろしいということでありますると、現在の自衛力はこれでよろしいということになるのでありますか。
  27. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊に関する限りにおいては、まずさしあたりはこの程度でよかろうかと考えております。
  28. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、将来のことは何人にも予測できないことでございますし、また先般次長か官房長か、今後保安隊は増員しないということをおつしやつたのでありますが現在の情勢が続く限り、保安隊は増員しないというふうに了解してよろしゆうございますか。
  29. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 特に情勢の変化のない限りは、われわれはただいまの保安隊の隊員十一万をもつてさしあたりさしつかえない、こう考えておる次第であります。
  30. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、ただいままでの質疑で、保安隊が自衛力の相当の部分を占めておるということがはつきりわかつたのでありますし、同時にこれを現在のところ増員する、増強するという計画はないということがわかつたのであります。そこで安全保障条約にいう自衛力の漸増計画と保安隊、警備隊の関係でございますが、この保安隊を中心とする自衛力が漸増して行けば、アメリカの駐留軍は逐次撤退して行くということに解釈しておるのであります。日本の自衛力漸増を期待するという前書がありますので、そういうふうに解釈いたしておるのでございますが、そうしますと、こちらに漸増計画がなければ、向うは引続き駐留するというふうに考えられるのでございます。安全保障条約にいうこの駐留軍と日本の自衛力の関係を明確に承つておきたいと存じます。
  31. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとよりアメリカの駐留軍においてはいろいろ考えがありましよう。しかし現段階においては、アメリカの駐留軍は日米安全保障条約において、直接侵略に対する手当として防衛の任に当つておるのであります。保安隊は国内治安の任に当つておるのであります。われわれといたしましては、日本の国をみずからの手によつて守らなくちやならぬということは終始考えておるのであります。しかし現在の国力その他の点から見ましてこれは早急にさような点まで参つていないのであります。遺憾ながら外敵の直接侵略に対しては駐留軍の力にまつておるのであります。現在においては、私はアメリカの駐留軍によつて外敵侵略に備えてもらうよりほかにいたし方がない、こう考えております。ただ日本の力は今後相当発展いたしまして、アメリカの駐留軍はしりぞいても、みずからの手によつてみずから守るだけの態勢をすみやかに整えて行きたい、こう考えておる次第であります。
  32. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、安全保障条約にいわれている自衛力の漸増、このことについては、漸増計画というのを政府は令お持ちになつておるか。先刻の御答弁によりますと、保安隊を中心とする自衛力の、保安隊の方の増強計画は今のところないというお話でございますが、安全保障条約にいう自衛力の漸増計画はないのでございますか。また別にお考えになつておるのでございますか、お尋ねいたします。
  33. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さしあたりのところは二十八年度予算に盛られた程度において、漸増といえば漸増でありましよう、そういうものによつてまかないたいと考えておるのであります。
  34. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、政府が約束いたしました安全保障条約の自衛力漸増計画というものは、政府は現在お持ちになつておらないのか。今までの御答弁によると、お持ちにならないようでありますが、ほんとうにお持ちになつておらないのか、お尋ねいたします。
  35. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申し上げた通り二十八年度に盛られた程度において、われわれはこの保安隊の整備充実をはかりたい、こう考えております。これがいわゆる自衛力の漸増といえば漸増でありましよう。
  36. 井手以誠

    井手委員 ただいまちよつと妙なことを聞きました。保安隊の整備充実ということを言われましたが、保安隊はもう増員しない、装備もこの程度でよろしいとおうしやつたのでありますが、ただいまはこれを整備充実とおつしやつた。どちらが正しいのでございますか、お尋ねいたします。
  37. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 二十八年度予算に盛られた程度において整備充実をはかつて行きたい、こう考えております。
  38. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、政府が約束いたしました安全保障条約による自衛力お漸増計画、このことにつきまして、政府はアメリカに対してその条約を締結しながら漸増計画は持たないということになれば、どういう結果になるか。アメリカとの友好関係、いわゆる約束の手前、持たないというわけには行かぬだろうと思うのでありますが、その辺の政府のお考えを承つておきたい。
  39. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 安保条約において認められた限度において、われわれは自衛力を強化して行こう、いわゆる二十八年度予算に盛られたことが、つまり一種の自衛力の強化であると私は考えております。しこうして自衛力の漸増をアメリカは期待するというのでありまして、日本に義務づけたわけではありません。日本の国情の許す限りにおいて、われわれはみずからの判断によつて自衛力を強化して行けばいい、こう考えております。
  40. 井手以誠

    井手委員 長官は、先刻も申しますように、原子爆弾を持たねば戦力でないというふうなことをおつしやつておりましたが、私は軍隊と自衛力の関係をもう少し聞いておきたいと思います。原子爆弾を持たねば軍隊ではない、あるいは戦力ではない、そうしますると、軍隊を百万持つても、二百万持つても原子爆弾を持たなければ、軍隊と言わないのであるか、いわゆる軍隊と自衛力との差はどういう点できめるものであるか、人員、装備によつてきまるものであるか、その辺を承りたいのでございます。
  41. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今井手君は、私が原子爆弾を持たなければ軍隊じやないということを言つたように仰せになりましたが、これははなはだ誤解であります。私はしばしば申し上げておる通り、現在原子爆弾なり、ジエツト機なりを持つておる国が相当あるじやないか、これらの国の軍備に比較すると日本の保安隊たるものは、これは比較にならぬような微弱なものであつて、決してこれは軍隊というべきものではない、こう私は終始言つておるのであります。この点を誤解のないように申し上げておきます。それで元来軍隊とは外敵を防禦しまたは外敵と戦う目的をもつて編成された陸海空軍その他の戦力であります。つまりこの陸海空軍その他の戦力というのは、常に私が申し上げておるように、近代戦争を遂行し得るに足るべき装備、編成を持つた一つの軍力であります。ここに私は重点を置いております。日本の保安隊は、申すまでもなく保安庁法第四条によりまして、わが国の平和と治安を維持し、人命、財産を擁護するために、特に必要なる場合に行動する一つの部隊であります。外敵の侵入に対して戦う、あるいは進んで他の国といくさをするというような目的を持つてつくられたものではないということが第一点。次にこの内容を見ますと、近代戦争を遂行し得るような能力をいささかも持つていない。いわゆる形式的にも内容的にも、これはとうてい軍隊というほどのものではない、こう私は説明しておるのであります。今申し上げまする通り、軍隊とは、憲法第九条第二項において規定されておりまするいわゆる戦力に相当するものであります。この点においてはつきり区別されるべきものと私は考えております。
  42. 井手以誠

    井手委員 その辺は非常に重要な、微妙なところだと思うのであります。近代戦をなし得るものが軍隊だというふうなお答えのようでございまするが、旧日本陸軍の装備との比較、機械力におきまする比較、あるいは弱小国におきまする軍隊と言われているものとの比較、それを考えますると、その辺をはつきりしておかなくてはぐあいが悪いように思うのであります。地下たびをはいて盛んに訓練しておるような外国の軍隊も、記事も見受けるし写真も見受けるのであります。長官人員、装備においてどの辺まで行けば軍隊とお考えになるのであるか、その辺をお尋ねしておきたいと思います。
  43. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは時と場所によつて異なりまするので、どこまで行けばいわゆる戦力であるかどうかということは、具体的には私は申し上げかねるのであります。これはいわある社会通念によつてきめらるべきものと考えております。
  44. 井手以誠

    井手委員 社会通念とおつしやいましたが、それでは政府は軍隊ではないといつておるのですけれども、政府以外の国民は、あるいは外国の者は、日本の保安隊を軍隊と申しておりますが、これはやはり社会通念として、軍隊として受取つているのでありますか、その点をお尋ねしておきます。
  45. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは申すまでもなく国会において御審議を願つておるのであります。保安隊は軍隊として認められておるわけでありません。今申し上げまする通り、この目的の点から見て、こうも外敵と、戦うということをもつて設置されたものではない。この点からも申し上げることもできるし、また内容においても、これは十分お調べ願えればおわかりになることと思いまするが、外国と戦うような実力を持つておるものではないということはきわめて明白でございます。
  46. 井手以誠

    井手委員 くどいようですけれども、もう一回はつきり承つておきたいことは、昭和二十八年度の予算予定されておりまする装備の充実で、現在の客観情勢における自衛力はこれでよろしいというお言葉であります。そういたしますと、自衛力の漸増計画政府はお持ちになつておるのかおらないのか、その点を簡単にもう一回お尋ねいたします。
  47. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現在のところは、二十八年度予算以外には持つておりません。
  48. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、憲法が改正になれば名前がかわる、こういうようなことは全然ないのでございますか。憲法の関係で名前がかわつておるというふうにも考えられるのでございますが、その点お尋ねしたい。  もう一つは保安隊が使つておりまする特車であります。アメリカではこれを戦車と言い、また日本も同じものを前は戦車と申しておりました。それを保安隊ではわざわざ特車と名前をかえてある。一般にはみな戦車と申しております。どういうわけで名前をかえられたのかあわせてお尋ねしておきたい。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 第一の点でありまするが、かりに憲法が改正になりましても、ただちに保安隊が軍隊となるべきものじやないと確信して疑いません。また憲法改正をなされまして、国家が戦力を持つことができるようになりましても、それはそのときの判断によつて、はたして戦力を持つことが至当であるかどうかということについては、国会において十分に御審議のあろうことかと私は考えております。保安隊がただちに軍隊となるべきものではない、私はそう思つております。戦車が特車と名をかえたがどうかということでありまするが、われわれといたしましては、ものものしく戦車というよりも特車と名をかえる方が、かえつて一般の隊員にも、国民にも親しみがある言葉であろう、こう考えておる次第であります。
  50. 井手以誠

    井手委員 親しみがあるから特車と言つた。長い間言い古されたが特車と言つた方がいい、こういうことになるけれども、実際はやはり戦車であることには間違いないのでございますか。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今借りておりますのは、アメリカの使つてつた旧型の、いわゆるアメリカの戦車になることは間違いありません。特車とかえたことについての批判は別といたしまして、アメリカで使つてつた古い戦車であるということには間違いありません。
  52. 井手以誠

    井手委員 そこで話を少しほかの問題に移したいと思いますが、先日の委員会におきまして木村保安庁長官は、アメリカから借り受けておる武器弾薬は、あれは無償だから会計法第二十九条にいう契約はしなくてもよろしい、こういう御答弁があつたのであります。しかし私どもはいやしくも各省各庁が、物を貸借する場合、ただであつても借り受けて使用する場合には、当然二十九条の規定によつて契約しなければならぬ。契約ということは必ずしも文書を要するものではなくして、損耗した場合のことや、返還の時期とか、そういう話のとりきめは当然なくてはならぬ。それがいわゆる契約だと思うのであります。ただであるから契約はいらないということは、これは役所の立場上重要な根本的な問題だろうと私は考えるのであります。そこで私は、政府の最高解釈といたしまして長官の言葉を信用せぬわけではございませんけれども。この点は将来いろいろな場合に関係がある。かつてに役所が買うということもできるし、綱紀紊乱のもとにもなるかと思うのでありまして、この際お聞きしたいのは、法制局の御見解なのでありまする保安庁の立場がどうというふうな、あたたかい思いやりは別にいたしまして、この二十九条にいう貸借、この関係についての政府の最高の解釈をこの際明確にしていただきたいと考える次第であります。
  53. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまお話がございました中に、木村長官が前におつしやつたことを御引用してのお話でございますが、私はそれは存じませんけれども、もとより内閣の法制局でありますので、今までの事態について、これを違法と考えておるわけでないことは明らかでございます。そこでただいまのお尋ねでございますが、結局現在保安庁の保安隊等におきまして武器を持つておる。その武器の現実に使用しておる関係が、はたしていかなる根拠に基くものであろうかということにほかならないと思うのでございますが、この点につきましては、これも保安庁からあるいは御説明があつたかと思いますが、保安庁の出先のキヤンプが向う側のキヤンプから、一定の武器の使用について事実上これを容認されているという状態であるというふうにお話があつたかと思いますが、それはそれに間違いないと思います。但しこの事実上の使用関係許されているといいますか、認められているといいますか、その事実上の使用関係があることについて、双方の意思に反しておらない、つまり双方の意思に合致しておる。そういうことをとらえて申しますれば、ここには一種の合意がある。これを契約と申しますならば、そこには契約があるということが言えると思います。しかしながら、いずれにしてもただいまの使用関係が普通にやります契約条項に基いて、債権債務の内容がきわめて歴然としているということでは——これはおそらく普通の場合と違うことも明らかでございましようから、それであればこそ、現在保安庁におかれましては、向うとの契約、文書による契約の締結について御尽力中のことであろうと考えております。
  54. 井手以誠

    井手委員 あとの方が少しぼうつとしたように考えますので、重ねてお尋ねいたしますが、二十九条にいういわゆる貸借の関係、お言葉によります。によりますと、合意によつて何らかのとりきめは必要だというふうなお話でございましたが、それでは重ねてお尋ねします。無償であろうと何であろうと、文書の必要はないけれども、とりきめの必要は当然ある、かように政府はお考えになつておりますか。簡単でよろしゆうございますからはつきりお願いいたします。
  55. 高辻正己

    ○高辻政府委員 それは通常の場合、とりきめなしにそういう使用関係を設定することが不可能でありますために、そういうことを今念頭におきまして申し上げれば、契約がないと使用関係ができ上らないということになろうと思います。しかしながら、契約なしに使用関係が設定されることがもしありといたしますならば、はつきりそういう使用関係について双方文句を言うことがないといたしますならば、それはそれなりに一つの使用関係ができるということも、これまた当然なことであろうと思います。
  56. 井手以誠

    井手委員 もう一点お尋ねいたしますが、そうすると無償であつてもそういうことに解釈してよろしゆうごいますか。
  57. 高辻正己

    ○高辻政府委員 それは無償であつても別にかわりはないと思います。
  58. 井手以誠

    井手委員 よくわかりました。そこで長官にお尋ねいたしますが、長官は学者でありますし、経験者でありますので、申し上げるのもどうかと思いますが、ただいま政府の最高の解釈によりますと、アメリカの武器の借入れについて、会計法上の契約がいる、無償であつても契約がいる、文書はなくても契約がいるということがはつきりしたのであります。先日は必要ないとおつしやいましたが、長官はその点でどうお考えであるか。おれの方はおれの方でさせたとは、おそらくおつしやらぬでありましようが、内閣の見解がはつきりした以上、長官の御所信をお願いします。
  59. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 必ず契約書をつくらなければならないというように高辻政府委員は言つたわけでないのでありまして、そういう事実上のことが、双方の合意によつて成り立てばそれでいいんだ、こういうように私は今聞いておるのであります。
  60. 井手以誠

    井手委員 それでは長官は無償だから必要ないというこの前の答弁はお取消しになるお考えがありますか。その点は違つているようでありますが、どうでありますか。
  61. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 無償だからと言つたのではありません。会計法上違反じやないかと言われたから、これは無償の契約であるし、国会の承認を経ることを要せないからと私は申し上げたのであります。
  62. 井手以誠

    井手委員 それではいわゆる向うとの話合いが、文書はなくてもどういう話合いが得られたか、いわゆる合意がなつたか、その内容を私は承知いたしたいのであります。たとえばいつまでこれを貸す、必要な場合には引揚げる、そういつた時期的な関係、それから維持修繕の関係、あるいはまただれとだれとがそういう話合いをとりきめたのか、そういつた具体的な点をはつきり承りたいのであります。
  63. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは今高辻政府委員から申し上げましたように、日本の各部隊の部隊長が、そこに駐屯しておりましたアメリカのいわゆる顧問団の将校——これはアメリカの武器を保管しておるのでありますが、その将校から特別に話合いの上で、各部隊ごとに事実上の使用をさせてもらつているという関係であります。しこうしてその貸借、事実上の使用についての期限というものは、何の定めもございません。ただここで私は特に申し上げたいのは、かようなことでは将来いろいろな不便を生ずるかと思いますので、私は早急に駐留軍の中央関係者と私の手によつて、しつかりした文書のとりきめで、これを明らかにしたいというので、今せつかく交渉中であります。
  64. 井手以誠

    井手委員 それでは保安庁として、まとめて話をなされているのではなくして、現地部隊において自由に話合いが成立したというような御答弁のようでありますが、その通りでございますか。さらにもう一つ、いわゆる戦車が破壊したような場合にはどうするか、維持費、修繕費のとりきめはどうなつておりますか。その点をお尋ねしたいと思います。返還のときのことは何も話がないというお話でございますので、その点は触れませんけれども、維持費、修繕費について契約ができておりますか、お願いを申し上げたいと思います。
  65. 上村健太郎

    ○上村政府委員 今、事実上使用さしております武器につきましては、各部隊ごとにおります米軍の将校が保管しておりますのを使わしてもらつておるというだけにすぎないのであります。それから維持、修繕につきましては、たとえて申しますと、自動車あるいは特車の例をあげますると、破損いたしました場合には、先方が部品を持つて参りまして、保安隊員の手で修理をする。あるいは非常に大きな修理を要するものでありますれば、米軍の補給廠へ持つて参りまして、修理をしてくれるということになつております。
  66. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、修繕はアメリカの方でやる、この修繕に関しましては、絶対に日本の保安隊の費用は出しておらないのでありまするか。いろいろ世間で言われおりますし、保安隊の工場でも修繕するというようなお話も今ありましたが、少しはつきりいたしませんので、予算は全然使つていないならいない、幾らか使つておるなら使つておると、その点を伺いたい。
  67. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在保安隊が修繕を引受けておることはないのでございます。ただ先ほど申し上げました通り、部品などをもらいまして、保安隊の隊員の手によりまして修理を行つていることはございまするが、こちらの費用負担において修理するようにはなつておらないのでございます。
  68. 井手以誠

    井手委員 もう一つ、維持費と申しますか、これ使ういろいろな燃料費とか、その他の問題についてお尋ねをいたします。
  69. 上村健太郎

    ○上村政府委員 たとえば自動車の燃料でございますとか、そういうものにつきましては、予算を計上いたしておりまして、当方で負担をしておる次第でございます。
  70. 武藤運十郎

    ○武藤委員 関連して、木村長官に伺いたいのでありますが、まことに恐縮ですけれども、自衛力ということについてもう一ぺんひとつお答えを願いたい。
  71. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。自衛力とは、国の外からたると内からたるとを問わず、国の安全並びに治安を撹乱する行為に対して、これを防遏するに役立つ総合された一つの国力である、こう考えております。
  72. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで、先ほど保安隊、警備隊は自衛力の重要な部分、相当な部分になるというように伺つたのでありますが、そうしますと、自衛力というのは、内からたると外からたるとということで、その内はいいのですが、外からということになると、これに対応する力になるわけですね。そうしますと、保安隊、警備隊は国内治安だけに使うのであつて、外部からの侵略には使わないのだということと矛盾をしはしないのですか。
  73. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 決して矛盾はいたしません。これは自衛力の定義であります。
  74. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうすると、日本の保安隊、警備隊は、自衛力ではないということになりますか。
  75. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより自衛力であります。いわゆる内において日本の治安を確保するための一つの力でありますから、自衛力であります。
  76. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほど伺つた定義と少し矛盾をするように考えられますけれども、いかがでしようか。
  77. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は決して矛盾せぬと考えております。
  78. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは国外には使わないことになるのではありませんか。
  79. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊は、今申し上げまする通り、国内の平和と秩序を維持するために設定されたものであります。しかしながら、これも自衛力の一部たることはもとより当然のことであります。
  80. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はどうもいささか矛盾をするように考えられますけれども、長官がそういうふうに言い張られるのではしかたがありませんから、打切りましよう。これ以上議論をしてもしかたがない。
  81. 井手以誠

    井手委員 ただいま関連質問がありましたので、途中で打切られましたが、引続き長官その他にお尋ねいたしたいと思います。  借入れ武器をいつまでも借りているのは、日本の体面上ぐあいが悪いと思うのです。それを何箇年くらいで国内で調達するというお考えがあるならば、また御計画があるならば、この際お示しを願いたいと考えます。
  82. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいままだその目算が立つておりません。遺憾ながらこれは当分の間借りるよりいたし方ないと考えております。
  83. 井手以誠

    井手委員 昨晩の新聞によりますと、長官も御一緒だつたかもしれませんが、あなたの方の第一幕僚長は、北海道の保安隊を視察の際の談話として新聞に発表されております中に、この春過ぎには、現在の二万五千名を三万名に増員するのだということをはつきり示されておるようであります。これは新たに増員されるのであるか、あるいはこちらの方のどこかの部隊を移駐させるのでありますか、お伺いいたしたいと思います。
  84. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 新たに増員するわけではありません。これは本土から移駐するよりほかいたし方ないと考えております。
  85. 井手以誠

    井手委員 訓練について承りたいと思いますが、これについては専門家の辻委員がいろいろと御質問になりましたので、重複を避けたいと考えております。  長官は、よく内乱騒擾事件に関連して、スペインの動乱の例を引かれるのでありますが、スペインの地理的立場と日本とは大分違うと私は考えるのであります。日本は島国でありまして、スペインのようなピレネー山脈のある陸続きとは大分違うようです。保安隊では対戦車訓練が盛んに行われておるようでありますが、国内の騒擾事件あるいは内乱に、どこから戦車が出て来るのか、天から降るのか、地からわくのか、これは当然想定があることと思いますが、どういうわけでそういう訓練をなさつておられるのか。必要でないものをたくさんの人を使い金をかけてする必要は私はもちろんないと思います。当然そこには戦車が出て来る確固たる予想があるものと私は信じております。そこでその想定をひとつ承りたいと思います。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今ただちにどこから戦車を持つて来るかというようなことは考えておりませんが、われわれ治安の任に当ります者といたしましては、ふだんから最善の準備をすることが必要であろうと考えております。これは場合によつては、海を隔てて海上から輸送されることがないとも限りません。従いましてわれわれは最悪の場合を常に頭に入れてやつておかないと、いざという場合にはほぞをかむというようなことになりはしないかと考えておるのであります。戦車々々ということをひどく強調されますが、日本において保安隊が持つております戦車はさほど有能なものではないのでありまして、遺憾ながらかようなものをもつていたしましても、われわれはふだんからこれを準備する必要はあると考えておる次第であります。
  87. 井手以誠

    井手委員 海上から戦車が来る場合も云々ということでありますが、そうなると、それは直接の侵略じやないかと思う。海から堂々と戦車が来る、これはどういう場合に来るかよくわかりませんけれども、海から戦車がどんどん来るという場合には、それは私は直接侵略の場合だと思います。私は間接侵略の場合を聞いております。長官もまた間接侵略のお答えをしている。いろいろな場合を予想するとおつしやいますけれども、とても予想されぬことを予想するというのはおかしいのであります。戦車が現実に来るというような場合でなくてはやはり訓練はなさらぬだろうと思う。どうしても割切れないことでありますので、どういうわけで戦車、対戦車砲を訓練するのか、その点をひとつお答え願いたい。また使つておる戦車は非常に微弱なものだとおつしやいますが、戦車ができた時分から考えますれば、相当私は性能は優秀になつていると考えます。日本に二十トンの戦車が百九十台もあるということを聞いておりますが、そういうことを考えますと、戦車、対戦車訓練をなさるというのがどうも私はふに落ちないのであります。これをひとつはつきりお示しを願いたい。
  88. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今井手さんは直接侵略のことをおつしやいましたが、私は直接侵略のことを頭に入れていないのでありまするが、これは御承知の通り大きな密輸入ということが終始考えられるのであります。これは現に他国にも例のあることであります。われわれこの九千マイルになんなんとする大海岸線を持つておりまする国柄といたしまして、しかも海岸警備はきわめてまだ微弱であります。どこからどういうものをひそかに持つて来ないとも限りません。そういうことを考慮いたしますれば、われわれといたしましてもこれに対処するだけの準備を持つていなければならぬと思つております。
  89. 井手以誠

    井手委員 密輸とおつしやいましたが、それはどうも割切れない話であります。しかしここでは密輸の点はこれ以上は申し上げません。  そこで長官は閣議においても、実際軍隊である、戦車であるものを、保安隊である、特車であるということは、保安隊の志気高揚上これは困る、はつきり男らしく軍隊であると言つてはどうかと何回かおつしやつたことが出て、吉田さんにおしかりを受けたかどうか知りませんが、口どめされておるようでございます。われわれは長官を非常に信用しておりますが、はつきり男らしく、いや軍隊でございますと、こうおつしやつた方が私はいいと思う。それが保安隊の志気を高揚する長官としての任務であろうと考える。ここではいいですから、ほかではひとつ遠慮なくおつしやつていただきたい。
  90. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私の信念においては、少しもかわりないので、閣議でさようなことを言つたということを世間に流布されておりますが、さような事実のないことを私はここで申し上げておきます。しかして保安隊は申すまでもなくこの設置目的の点から、また内容の点から申しましても、私は決して軍隊じやないと考えております。今、井手さんは、これは軍隊であると言う方が隊員の志気を高揚する点においてもいいんじやないか、まことに御親切なお言葉でありまするが、私は保安隊としてりつぱに保安隊員の志気は高揚され得る確信を持つておりますから、どうぞ御安心ください。
  91. 井手以誠

    井手委員 私まだいろいろとお尋ねしたい点もございますが、長官も非常に御苦労かと思いますので、深追いはいたしません。ただ一般には軍隊だということがはつきりしておることを申し上げておく次第でございます。  そこで安全保障条約に言う自衛力漸増計画もない、まあ、あの条約の精神に反しても、現在のところ漸増計画を持たないという男らしいところを承りました。また保安隊の増員計画は、現在の客観情勢では今のところないということをはつきり私は承つたのであります。私はそういうことに、保安庁にかわつて世間に宣伝する場合もあるかと思うのであります。どうぞその点はお間違いのないように、今日の言明を実行していただくことを特にお願い申し上げる次第であります。  そこで最後に一点お尋ねいたしますが、私、先日フリゲート艦に乗せてもらいましていろいろな訓練を見せてもらつたのでありますが、ありがたくお礼を申し上げます。その場合にフリゲート艦は、私が申し上げるまでもなく、これは船団護送が使命になつているように私は感じたのであります。従つて対空、対潜の訓練が行われておる。そうしますと、海におきまする自衛力というものは、やはり潜水艦攻撃とか飛行機攻撃というものがいわゆる自衛力であるか、その点をひとつ、私はあまりもうほかに聞きませんから、いわゆる領海の関係、公海の関係、それと自衛力の関係、潜水艦攻撃の関係、そういう点を少しはつきり聞いておきたい。
  92. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ちよつと井手さんの前言について、申し上げておきますが、安全保障条約なり平和条約なりにわれわれはごうも反しておるものでないということを申し上げておきます。この条約において自衛力の漸増を期待するということでありますが、先ほど申し上げました通り、どこまでも自衛力を漸増しなければならぬというふうな義務づけは受けておりません。従いまして日本の国情に照し合せて、日本政府がその上自衛力を漸増する必要ありとすれば、みずからの意思によつてこれを漸増するのであります。決してアメリカの要請によつてこれを漸増するとかしないとかという問題でないということをはつきり申し上げます。しこうして現在の程度においては、二十八年度予算に盛られました程度においてわれわれは一応まかない得る、こういう考えを持つておる次第でございます。  それからフリゲート艦においても、いわゆる対空火器とか爆雷装置はもとより持つております。それを借りたのであります。そうして、これは貸借協定を見ましても、原状のままで返すということになつております。これは日本で取払いすることはできない、そのまま設置しておきます。従いまして、ただ操作のことについては一応の教授を受けるにいたしましても、これを使用するというようなことはただいま毛頭考えておりません。繰返して申します。これは原状のまま返さなくちやならないので、これを取りはずさずにそのまま置いておるわけであります。
  93. 大矢省三

    ○大矢委員 私はごく簡単に二、三お尋ねを申します。前の委員会またきようの委員会で、武器は全部借物である、しかもその管理は駐留軍によつてこれがなされておる、しかもその修理は、大きなものは向うでやるということでありますが、この保安隊はもちろんのこと、海上警備隊におきましてもフリゲート艦その他はアメリカから借りている、こういつた保安隊あるいは海上警備隊を合せて十三万に余る人たちが、一切借りておる。借りたものは返さなければならぬ、いつ取上げられるかわからない、こういう情勢のもとにほんとうの魂の入つた、いわゆる自衛権の効果というものがあるかどうか、これはもちろん時が解決すると思いますが、いろいろ計画もあるようであります。すべてがこういうふうに借りているということになりますと、ちようど傭兵です。これは完全な独立したいわゆる自衛権を行使するところの——私どもはこれは軍隊と見ますが、保安隊でもよろしい、その保安隊という名実ともに魂の入つた、隊員みずからがほんとうにわれわれによつて守るんだという感じがどうしても起きないと思う。これはやはり借りるなら借りるで相当の契約をし、自分らのものとして使うような気持を隊員に起さすことが必要である。特にいわゆるフリゲート艦を借りまして、そのために約二千七百人からの警備官を増員することになつておる。あのフリゲート艦というのは最高十八ノットですか、十六ノットぐらいしか出ないとなると、結局商船より低いということになる。ことに警備隊である限り単なる沿岸だけではなしに、日本の国土である国境まで出て行つて警戒することは当然でありますが、そういう場合にしばしば問題になるところは、国境を越えた越えぬということで必ず国際問題が起きている。現に李承晩ラインを侵したとか侵さぬとかいつて日本の漁船が拿捕されるだけではなしに、すでに銃殺されている。けさの新聞によりますと東ドイツに入つたとか入らぬとかいつてイギリスの飛行機が撃墜され、過去欧州においてもしばしばそういうことがありますが、もし国境を越えたという口実をつけて、向うから攻撃を受けたときに逃げて帰るのか、あるいは自衛権を発動してこれに対して発砲をすれば、必ずそこで国際紛議の原因となりますし、結局そういう非常に性能の低いものを持つてつて国際紛議を起すところの原因をつくるんじやないか、特に自衛権のいわゆる外敵の仮装国としてどこを見るかといえばソビエトでしよう。そのソビエトにアメリカが貸しおつたあのぼろぼろのブリキで張つたようなフリゲート艦をそのまま日本へ借りて来たつて、おれのところで使い古した、アメリカでもいらぬ三十年もたつたものでは、かえつて日本は——悪い言葉で言うとみくびられて、侵される危険がさらにふえて来るんじやないか、こういうことを考えますので、一体ほんとうに先ほど言われた密貿易を監視する程度ならば、いわゆる日本の海上警察で沿岸を厳重に守つた方がまだましだ。あるいはまた今度のフリゲート艦その他においても、あんな速力のおそい、小さな、しかもあれには高射砲がすわつておりますが、ずつと上の方を飛行機が通つたらあんなものは届くものではない。これは専門家が見たらわかる。われわれしろうとだつてわかる。そういうものを借りて人間だけやたらにふやしても、いざというときになつたら私はほかに何も手がないような気がしてならない。その点ははたしてこの船で国境を警備できるだけの考えがあるのか。あるいはまたそれによつてかえつて諸外国との間に国境を中心にして紛争が起きて——これは仮定、想像ではない、現に越えたとか越えぬとかいつて実際に起つておることです。そういうことでかえつてこれが日本の治安の上に、あるいは外国から一つの因縁をつけられる原因になりはしないかということを非常に心配しておるのですが、その点に対する政府の考え方、あるいはまたそこまで出て行くのだ、あるいはそうではない、最も陸に近いところを守るだけだ、こう言われればそれでもけつこうですから、簡単にその点についてお答え願いたい。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まことに適切な御質問であります。申し上げるまでもなく、このフリゲート艦は性能のいいものではありません。一日も早く性能のいい船をつくりたいと考えておりますが、二十八年度予算において、わずかでありますがこれを建造する要求をしておるのは、その一つの現われであります。しかしながらここでよくお考えを願いたいのは、船をつくつたからといつて、ただちにこれを動かせるものではありません。どうしても船を動かすについてはそれを動かすだけの準備が必要であります。ことに乗組員の訓練というものはそうやすやすと行くものではありません。船を動かすについての訓練は相当時日を要するのであります。従いましてこのフリゲート艦においてしつかり海員を養成する必要があるのであります。この点を御了解願いたいのであります。しかしてこのフリゲート艦といえども、これはいろいろの役に立つものと私は考えております。海上保安庁の警備で十分ではないかというお説でありますが、これはまつたくさようなことではございません。海上保安庁の警備船はきわめて微微たるものでありまして、どうしてもわれわれ保安庁といたしましては、警備隊によつてそのうしろだてとならなければならないと考えております。先ほど申し上げましたように、九千マイルにわたる長い海岸線を警備するについては相当の船を要するのであります。この意味からあまり大した船でありませんが、借り受けることは日本にどれだけプラスになるかと考えておる次第であります。  国境紛争のことにつきましては、われわれはそういうような紛争の起らないように十分の注意をして行きたいと考えております。
  95. 大矢省三

    ○大矢委員 十分注意をすると言われますが、これは万里の長城のようにはつきり壁があるわけでもない。国境を越えたとか越えぬとかいつていくら注意をしておつても、これは問題の種になると私は思いますが、それは十分注意をするということでありますから起きないことを希望します。  さらに今度の人員増加の約四百七十七名というものは、いわゆる警備官にあらざる職員である、この職員の中には、保安大学に相当人がいると思いますが、この保安大学にアメリカの将校の教官と申しますか、そういう人を直接雇い入れる意思があるのか、またその計画があるのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  96. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安大学にアメリカからの職員は一人も入れません。またそういう計画もありません。
  97. 大矢省三

    ○大矢委員 それからこれだけの武器を持つておるのでありますから当然弾薬といいますか、あるいはまたそれぞれこれをちやんと常時製造または保管しなければなりませんが、そういう火薬その他砲弾の製造計画、また当然平素備えつける必要があるのでありますが、それに対する計画があるのかどうか、その点をお伺いします。
  98. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安庁といたしまして、みずからの手で火薬の製造、弾薬の製造ということは、少しも考えておりません。民間においてただいま火薬工廠の運用についていろいろ話があるようでありますが、保安庁としては考えておりません。
  99. 大矢省三

    ○大矢委員 それでは民間の方で、もしこしらえなかつたならば、保安庁としては、これだけの武器を持ちながら、からだまといいますか、何も持たないということでありますか。それは製造するのは民間かもしれない、しかしこれこれのものが必要だから、これを民間にさすとか何とか計画がありそうに思います。ないならばアメリカから借りて来るのか、あるいはアメリカからどれほど借りたものを保管しているか、もしさしつかえなければその数字等をお知らせ願いたいと思います。
  100. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま保安庁で使用しておる武器に対する弾薬は、全部アメリカから補給を受けておるのであります。その数量は、アメリカとの関係におきまして遺憾ながら申し上げることができません。御了承願いたいと思います。
  101. 船田中

    船田委員長 辻政信君。
  102. 辻政信

    ○辻(政)委員 この前田浦の警備隊を見学に参りましたところが、あそこの吉田総監の話によると、艦船の増加に伴つて、二千七百三十三人の増員では、はなはだ不十分であるというお話があつたのでありますが、長官はこれでいいとお考えでありますか、もつとふやす必要はないか。
  103. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ふやす必要は、現地としては持つておるでありましよう。しかしただいまのところでは、まあこのくらいでがまんをするということになつてこの法案を提出したのであります。
  104. 辻政信

    ○辻(政)委員 北海道に御旅行中に新聞記者に対する談話が発表されておりますが、あれによると、長官は、自分の在職中には保安隊を増員しないということをお述べになつておりますが、間違いございませんか。
  105. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 あれは新聞の間違いであります。私の在任中ということは申したことはありません。ただいまの情勢においては十一万でやつて行く、こう言つたのであります。
  106. 辻政信

    ○辻(政)委員 先ほどの井手委員の質問に対して、自衛力漸増計画はないという御答弁でありましたが、私はこれははなはだ心外である。野党にあげ足をとられぬための発言ならば了としますけれども、いやしくも食糧増産五箇年計画を国家がやつておるのに、この国家の平和と秩序を維持すべき治安関係の首脳部が、先を見越した永年計画をお持ちにならないならば、私は怠慢であると思う。ここで発表できないとおつしやるなら追究しませんけれども、本気であるならばたいへんなことと思いますが、この点についての御信念を承りたい。
  107. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は、二十八年度の予算において、ただいまの段階における漸増計画を盛り上げたい、こう申しておるのでありまして、長期の漸増計画につきましては、私はただいまのところは何とも申し上げることはできません。
  108. 井手以誠

    井手委員 関連して。長官は、先刻計画はないとおつしやいましたが、ただいまの何とも申し上げられませんというのとは少し違うのですが……。
  109. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それは、何とも申し上げられないというのは、私は持つていないということであります。
  110. 辻政信

    ○辻(政)委員 小さい問題になりますから官房長にお伺いいたしますが、本年度の保安庁の予算の項目の中で、保安庁の官房が本年度要求されておる予定人員が二百九十人、昨年は二百六十人です。そうして要求額が大体一億円くらいふえておる。これは「保安庁法に定める長官々房及び各局の所掌事務処理するため必要な人件費及び事務費である。」となつております。予定人員を三十人ふやし、経費において一億円ふやされておる理由はどうか。
  111. 山田誠

    ○山田政府委員 官房各局で増加しておりますのは、主として庁舎の管理要員がふえております。経費といたしましては、その人件費、事務費等のほかに若干の資料の収集の費用を計上いたしました。それが約二千九百万円程度増加いたしました。
  112. 辻政信

    ○辻(政)委員 次のページの項目の方の、9庁費が本年度は二十二億円になつております。昨年度は約十四億、七億六千四百万程度増加です。全般に行政事務とか庁費を節約しようというときに、保安隊の庁費が一年に七億六千万円近くふえるというその内容について詳細に承りたい。
  113. 窪谷直光

    窪谷政府委員 庁費が増加いたしました主たる原因は、保安隊におきまして炊事その他に石炭をたいておりますが、その石炭の単価が前年度予算に計上いたしましたものではまかないがつかないということによるものであります。
  114. 辻政信

    ○辻(政)委員 次の機会に数字をもつてお示し願います。  次は、先ほどの官房の一億増加の点で、資料調査費が二千九百万円で、調査委託費として一千万円計上され、また14のところで技術調査研究委託費として五千万円計上されておりますが、この内容についても、どういう使途か、今御説明できたら承ります。
  115. 窪谷直光

    窪谷政府委員 先ほどちよつと御説明が不十分でございましたが、官房各局と、それからそのほかに附属機関がございまして、技術研究所と保安研修所がございますが、調査の委託費は、技術研究所系統のいろいろな技術の向上のためにやります研究の委託費であります。
  116. 辻政信

    ○辻(政)委員 これで終りますが、この次の機会に庁費七億円の増加の詳細な趣旨を承りたい。
  117. 船田中

    船田委員長 本日はこれまでといたしまして、次会は明土曜日午前十時より開会いたし、保安庁法の一部を改正する法律案についての質疑を続行し、なお討論採決を行いたいと思いますから、どうぞよろしくお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十八分散会