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1952-12-17 第15回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十七日(水曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 熊谷 憲一君 理事 富田 健治君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 大矢 省三君    理事 武藤運十郎君       大西 禎夫君    岡田 忠彦君       砂田 重政君    田中 萬逸君       森 幸太郎君    北村徳太郎君       笹森 順造君    粟山  博君       吉田 賢一君    辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君  委員外出席者         議     員 谷川  昇君         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 十二月十六日  軍人恩給復活に関する請願外二件(西村茂生君  紹介)(第一〇一八号)  同外五件(西川貞一紹介)(第一〇五一号)  同(吉武惠市君紹介)(第一〇五二号)  同外八件(久原房之助紹介)(第一〇五三  号)  老齢軍人に対する恩給復活請願田中伊三次  君紹介)(第一〇五四号)  元軍人遺族扶助料復活に関する請願田中伊  三次君紹介)(第一〇五五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  老齢軍人に対する恩給復元陳情書  (第八  〇一号)  平和憲法擁護及び再軍備反対に関する陳情書  (第  八〇二号)  行政整理反対に関する陳情書  (第八〇三号)  商船大学東京校舎返還促進に関する陳情書  (第  八〇四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  保安庁法の一部を改正する法律案栗山長次郎  君外十一名提出衆法第一五号)     ―――――――――――――
  2. 熊谷憲一

    熊谷委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため理事の私が委員長の職務を行います。  これより保安庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第二四号、保安庁法の一部を改正する法律案栗山長次郎君外十一名提出衆法第一五号を一括議題として質疑を行います。質疑通告順に行います。富田健治君。
  3. 富田健治

    富田委員 先日来の保安庁法の一部改正に関しまする議案について政府説明を承つておりますと、保安庁法において船舶安全法とか船舶職員法あるいは電波法の一部の適用除外したのは、これらの基礎になつておりまする国際條約、すなわち一九四八年の海上における人命の安全のための国際條約並びに国際電気通信條約の適用までも除外したのじやないということで、船舶安全法とは條約の要求している以外の事項についても規定をしているために、この保安庁の中の警備隊船舶並びに移動無線局のような国家機関に属し、特別任務を遂行するものにつきましては、一般法たる船舶安全法というようなものの規定をそのまま適用することは不適当と認める。そこでこれが適用除外をしたけれども、当然それがために政府責任において、これらの條約を最も忠実に履行するためには、部内規定あるいは命令を発する措置を考えておるということでありましたけれども、どういうふうな規定なりあるいは措置をお考えになつておるか。これは政府委員からでもけつこうでありますからお伺いいたしたいと思います。
  4. 上村健太郎

    上村政府委員 保安庁といたしましては、警備隊船舶につきまして船舶安全法適用されないことになつておりますけれども、目下警備隊任務船舶の堪航性航海に耐える性能でございますが、これを考慮いたしまして、その構造等について船舶造修規則とでもいうべきものを目下検討中であります。なお警備隊船舶につきましては各種の船舶ごとに船長、副長、航海長機関長通信長というような種類の船舶職員資格定員につきまして一応案を作成いたしております。なお一部を除外いたしました電波法関係につきましても、開設の許可及び検査につきましておおむね電波法に準拠いたしまして、無線通信の良好な運営を確保するのに必要な基準を定めようとしております。また警備隊船舶に乗り組んで無線通信に従事いたしまする者は、電波法無線通信資格を有する者を当てなければならないのでございますか、これらの有資格者を採用してこれに当てるようにいたしております。
  5. 富田健治

    富田委員 そういう要綱か何か、そういうものでもできておりましようかとうですか、お伺いしたいと思います。
  6. 上村健太郎

    上村政府委員 一部につきましてはまだ完全なものはできておりませんか、大体の要綱は作成いたしております。
  7. 富田健治

    富田委員 おさしつかえなければ、できておるならばひとつ配付でもしていただけぬかと思いますが、いかがですか。
  8. 上村健太郎

    上村政府委員 今取寄せましてお配りいたします。
  9. 富田健治

    富田委員 私のお尋ねすることはこれでけつこうなんですが、資料が来るまでまだ大分時間がありましようから、他を進めていただきたいと思います。
  10. 熊谷憲一

    熊谷委員長代理 ほかに御質疑ありませんでしようか。
  11. 大矢省三

    大矢委員 これは外務委員会でも相当論議されたのでありますが、この委員会では簡単に保安庁法の一部改正ということになつておりますが、この船舶貸借フリゲートですか、これに対しては外国ではこれは普通の船舶と認めておるのですか。それとも特殊な——私どもよくわからぬが、日本では軍艦でない、船舶だということに政府も言つており、またそういうとりきめか行われておるようですが、外国では一体どう見ておりますか。
  12. 上村健太郎

    上村政府委員 軍艦国際法上の定義は、軍艦たる標識旗をあげまして、正規の海軍将校が乗り込んでおり、その統制下にあるというのが軍艦でございますので、この船がアメリカにありましたときには海軍の籍に入つておりましたから、軍艦つたわけであります。ただ日本側へ借りまして、保安庁で運営いたします場合には、政府所有公船ということになりまして、軍艦にはならないと思います。従いまして国際法上では、外国から見まして日本政府所有公船であるということになつております。
  13. 大矢省三

    大矢委員 まあ軍艦でないというのですが、それはそれとして、この装備、砲があるということですが、どのくらいの砲が何門あるか。それとトン数、それから外国へこれは出ないから、日本沿岸だけだからこういう普通の船舶としての扱いは必要ないのだということを政府説明しておりまするが、この装備、それから内容、どの程度活動ができるのか。たとえば最近非常に拿捕されておりまするが、それに対して万一の場合にこの砲を使うことがあるのかどうか。そういう実際面において政府の方で、あるいは直接関係の人で、そういう場合、今申しました装備、たとえばトン数、砲の数、どのくらいの大きさかということを、もしわかつていたら……。
  14. 上村健太郎

    上村政府委員 今回借ります警備船PFと申しまするのと、それからLSSL型と二種類ありまして、PFの方の性能排水量が千四百三十トン、最大速力十八ノット、航続距離が十二ノットにいたしまして約一万マイル、装備は三インチ砲が三基、四十ミリ機銃機が一基、二十ミリ機銃機が九基、それから爆雷投射機が十基、乗組員は約百六十名でございます。     〔熊谷委員長代理退席委員長着席〕 もう一つの小さい方のLSSL型と申しますのは、排水量二百五十トン、最大速力が約十二ノット、航続距離は十ノットにいたしまして五千五百海里、装置といたしましては、四十ミリ機銃機二ないし三基、二十ミリ機銃機四基、そのほかにロケット発射機を一基持つております。乗組員は約七十名であります。  なおこの船の活動につきまして、漁船拿捕等についてはどういうようなことを行うのかというお尋ねでございますが、これは軍艦ではございませんので、国際法軍艦権限を行使するわけに参らぬのでございます。従いまして、外国の正式な軍艦国際法上の正当な権限に基きましてわが方の漁船を拿捕する、あるいは臨検するというような場合に、これに対して実力を行使することはできないわけでありまして、こういう場合にはあくまで外交交渉によるほかないと思つております。しかしながら国際公法を無視いたしまして、急迫、不正の攻撃をして来るというような場合におきましては、正当防衛あるいは緊急避難というような形で実力を行使する場合もあるかと思うのでございますが、この点につきましては、まだ船が出動いたしておりませんので、外務省当局等とも相談いたしまして、それらの場合をきめたいと思つておる次第であります。
  15. 大矢省三

    大矢委員 これはお聞きして初めてわかつたのですが、これだけの装備、それからいろいろな戦闘設備と申しますか装備といいますか、こういうものがあつて軍艦でないと言つておるのですが、アメリカあるいは日本はそう思つているかもしれませんけれども、他の国では完全なる軍艦だ、いわゆる戦力の一部というように見るのが当然だと思います。これはそうではないと言えば今聞くわけには参りませんが、国際法を越えて拿捕した場合に実力行使をすることがあり得る、いわゆる自衛のための戦闘があり得ると思うのです。そのためにこういう装備もあるのであります。これはやはり国内的には日本憲法戦力を持たないという九條に対しても、また国際的にも納得ができぬと思いますが、これはそうではないのだ、憲法違反しないのだ、そういう意思では毛頭ないのだ、ただ向うが国際法を犯して拿捕した場合にはあるいはそういうことがあり得るかもしれぬが、こつちから積極的に出ないのだからそうではないということを、何か簡単な言葉で納得する説明ができますか、私はどうも納得できないのであります。
  16. 上村健太郎

    上村政府委員 アメリカその他各国のいわゆるコースト・ガードと申しますか、沿岸警備に使用しております船舶につきましては、やはりこの程度装備を持つておりまして、いわゆる戦闘をする目的でない船につきましても、この程度の重装備各国ともいたしておる状況でございます。
  17. 大矢省三

    大矢委員 外務委員会での政府説明には、あくまでもこれは沿岸警備をし、普通の船舶でないのであるからして、船舶安全法適用を受ける必要がないということでしたが、委員との質疑応答の結果、国際法を尊重するという意味で、新しくこういう改正案議員提出として出されて来た。この改正案を出すに至つた経過について政府並びに提案者にお聞きしたいのですが、特に憲法上から国際條約を遵守するという建前から行きますならば、政府提案して不完全である場合には、政府みずからがこれを改正するのが当然であると私は考える。それをどうして議員提出として改正案を出したか、その経緯を伺いたい。  それから政府は必要でないと言い、議員の方では必要ありとして改正案を出しておる。政府は今なお必要がないと認めておるのか、あるいはこの改正程度は必要であると考えておるのか、その点両方にお聞きします。
  18. 岡田五郎

    岡田(五)政府委員 お答えいたします。本法案議員提出として出されました経過につきましては、昨日栗山委員から一応御説明になりましたので、私からお答え申し上げることを差控えさせていただきます。あるいはまた必要とあれば谷川さんから御説明あるかとも思います。第一の本法案提出するに至つた経過は、昨日栗山委員から申し述べ済みでございます。  次に、なお政府はこの法案提出しなくともいいと考えておるのかどうか、こういうような御質問かとも存じますのでお答えいたしますが、政府といたしましては、現在の状態におきましても決して條約違反をしておるものではない、従つてまた憲法違反をしておるものでもない。また従つて形式的に適用條文をあげないがらといつて、安全條約に除外された軍艦ともみなしていない。こういうことについての政府の意見はかわりはないのでございますが、先ほど富田委員からの御質問に対しまして、政府といたしましては政府の船、いわゆる公船に対する規則または規定を設けまして、條約の履行を形式的に実質的に整えるべく準備をしておることを申し上げたのでございます。ただ船舶貸借協定外務委員会でいろいろ御審議いただいておりました過程において、また予算委員会におきまして中曽根委員からいろいろ御質問がありました経過から見まして、法の解釈につきまして疑義が起らないように、保安庁法を一部改正をすることが完璧を期するゆえんである、かように考えまして、国会審議過程におきまして、議員立法として御提案なさいましたことにつきましては、政府といたしまして満腔賛意を表しておるような次第であります。
  19. 大矢省三

    大矢委員 今の答弁から行きますると、当然完璧を期するために、政府みずからが、この改正をなすべきではないか。もし議員提出がなかつた場合は、このままで行くというのですか。
  20. 岡田五郎

    岡田(五)政府委員 政府といたしましての解釈は、先ほど申し上げましたように、本法案改正がなくとも、條約違反でもなく、また憲法違反でもなく、またフリゲート艦——貸借協定によつて借りまする船が軍艦であるというような解釈は、とらないわけでございます。以上お答え申し上げます。
  21. 大矢省三

    大矢委員 提出議員の方に伺いますが、今お聞きの通り政府ではこういうものがなくてもいい、こう言つているのですが、なくてもいいものを、どうして議員提出として出すのですか。
  22. 岡田五郎

    岡田(五)政府委員 先ほどあるいは言葉が行き過ぎであつたかもしれませんが、一応なくとも、私が申し上げましたように、條約違反にもならない、また憲法違反にもならない、また貸借協定によりまして借りまする艦艇が軍艦にならない、こういう意味で申し上げたのでありまして、先ほど説明申し上げましたように、そういう政府解釈はとつておりまするが、現在の態勢では、いろいろと疑問が起りますので、その完璧を期する意味におきまして、議員提出としてこの法律を出していただくことには、満腔賛意を表し、歓迎をいたしております、かように申し上げた次第でございます。
  23. 大矢省三

    大矢委員 疑問があるからということならば、むしろ政府みずからが、疑問を解くために、積極的にこれを出すべきだ。私が尋ねておるところは、必要があるのかないのか、あるならば政府みずからが出せばよい、いわゆる疑問があるからというのでありますから、当然これは政府が出すべきで、それをどうして議員提出で出したかということについて、提出者に対して私はなおお聞きしたいと思います。
  24. 谷川昇

    谷川昇君 私は外務委員会委員でありますが、お答えを申し上げます。前会の当委員会におきまして、委員長より詳しくその間の消息は御説明申し上げたのでありますが、ただいま外務委員会に付議されておりまする、日米船舶貸借協定審議にあたりまして、いろいろ議論が出まして、その結果、今まで御説明のありましたような点について、いろいろ質疑がかわされたのでありますが、これは、これの取扱いについての行政措置を法的にはつきりさせておく必要がある、こういう議論になりまして、さてそれにはどうしたらいいだろうかという話になりました際に、これは政府の方から修正案提出してもらつたらいいだろう、こういう説も出たのでございます。それから委員会全会一致をもつてやろうじやないか、各派共同でこういうような改正案提案をしよう、こういう話も出たのであります。いろいろ政府の方とも交渉をいたしたのでありますが、これはまず議員提出の方で処置してもらいたい、こういう回答に接しましたので、それから各派の間に相談をいたしましたところが、自由党において提案をしてもらいたい、こういう話合いができましたので、実は自由党の者で提案をすることに相なつた次第であります。ところがいろいろ研究して見ますると、この措置は当委員会において御審議を願わなければならぬということになりまして、でき得ることなら、内閣委員並びに外務委員自由党関係者におきまして、提案をする形をとりたいということであつたのでありますが、その間なかなか時日等関係がございまして、実は両委員会自由党関係者一部分の者が名を連ねまして、提出するに至つたような次第であります。
  25. 大矢省三

    大矢委員 政府説明を今私お聞きいたしておりますと、これはあくまでも軍艦ではない、普通一般船舶であるということで、こういう法案を出したということですが、保安庁法によりますると、電波法並びに船舶安全法、これを適用除外するということが書いてある。この修正案は、その一部を適用するということに改正されているのですが、どうせ船舶であるならば、全面的にこれを適用することになぜしなかつたか。一部分だけをするということについて、何か理由があるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  26. 上村健太郎

    上村政府委員 この條約に規定してありますことは、各国政府は、それぞれ各国政府措置といたしまして、自国の船舶にこの條約を遵守する措置を講ずるという義務々課しておるわけでございまして、船舶安全法はこの條約の要求しております以外の事項をも規定しておりますので、警備隊船舶のように、特別の公共の任務を有する国家所属船につきましては、一般法であります船舶安全法を、そのまま適用するということは、必ずしも適当でないと認めまして、その適用を排除いたしておつたわけでございます。しかしながら、條約の要求しますところにつきましては、政府側責任におきまして、直接その船舶について條約の規定を履行いたしますための、部内規定及び命令を発する措置をとりつつあつたわけでございます。この條約に規定しております事項のうち、この條約は大体国際航海に従事する船舶についてのみ適用するということになつておりまして、ただその附則のうちの第五章に、航海の安全に関する規定がございますが、これのみは国際航海に従事するもののみではなく、全部の船舶適用があるわけでございます。しかしながら、この第五章の規定を検討いたしてみますると、大体は危険の通報、あるいは気象の業務、あるいは遭難に関する規定その他でございまして、これはこの警備隊船舶にも適用があるわけでございます。従いまして、警備隊船舶につきましては、この第五章についてのみの規則を制定いたすということに、いたしておるわけであります。ことにこの第五章の規定は、航海の安全を保持するための規定でございまして、警備隊本来の任務としておるところであります、しかしながら、この條約にはその他の規定もたくさんございまして、これを受けて船舶安全法ができておるわけでございます。従いまして、保安庁の船に適用すべき部分と、適用すべきでない、また適用を適当としない部分がまざつておるわけでございます。従いまして、この第五章につきましては、保安庁独自の立場からでも適用しなくてはならぬ。また当然遵守すべきものであると思うのでございます。また船舶職員法除外いたしましたのは、これは警備隊任務特殊性に基きまして、乗組員資格だとか、定員を定めるにつきまして、特別の定めをする必要があつたからでございます。船舶職員につきましては、條約はございますが、この條約は政府所有の船には適用がございませんので、船舶職員法につきましては、條約の関係は起つて参らないのでございます。なお電波法につきましては、保安庁法は全面的に適用を排除しているのではございませんで、電波法のうちの無線局の免許、検査無線従事者に関する規定だけを、排除して、適用しないということにいたしておつたのでございます。この電波法も、船舶安全法と同様に、條約の要求しております以上のことを詳細に規定しておりまして、これを全面的に適用いたしますことは、保安庁の船といたしましては、適当でないと認められるものが、大部分でございます。しかしながら、この電波法除外いたしましたものにつきましても、條約の規則自体は当然遵守しなくちやならぬし、またそれを守るような規則もつくらなければならぬ、こういうふうに考えております。以上のような理由で、従来は適用除外なつておつたのでございますけれども、條約を守らないという意味ではございませんで、條約を守るについては、必要な手続をとりつつあるわけでございます。ただ法律関係を明確にいたしますために、今回の改正法のような修正をしていただきますれば、先ほど政務次官から申し上げました通り、一層この條約と国内法との関係、及び国内法保安庁法との関係が、はつきりして来ると思うのでございます。
  27. 大矢省三

    大矢委員 それではこういうふうに理解していいですか。第八十七條の一部の改正が今度の法案に出ているのですが、船舶安全法なるものの全般は国際法相当隔たりがある、そのうちの人命安全に関係のもののみをここに入れた。これを全部適用することは適当でない、そういう意味におきまして、国際法を尊重する意味で、こういうふうに一部だけにしたのだ、こういうふうに解釈していいでしようか。但し、船舶職員法だけは別で、電波法並びに船舶安全法の一部は、国際法規定に基いたもののみを改正するんだ、こういうふうに解釈していいでしようか。
  28. 林修三

    林政府委員 この点法制局の方からお答えいたします。これを御提案になりました趣旨をそんたくいたしますと、今度の保安庁法改正では、船舶安全法の二十七條と二十八條一部分でございますが、適用されることになつております。この二十七條でございますが、これは海上衝突予防法規定、でございまして、海上衝突予防法につきましては、これは説明するとなかなか長くなるのでございますが、二十七條船舶衝突予防に関して必要な事項はすべて政令をもつて定めるという規定なつております。これはただいま海上衝突予防法という法律がございまして、これが働いておるわけであります。これは船舶法の付則をごらんになりますとわかりますが、海上衝突予防法船舶安全法に基きました政令ができますまで、効力を持つておるわけでありまして、現在におきましては、海上衝突予防法がございまして、海上衝突予防法保安庁警備隊の船にも当然適用があるわけであります。ただ、どうしてこういう規定をいたしたかという問題がございますが、これはただいま海上人命安全條約の規則に、船舶衝突予防の新しい規則ができる可能性があるわけであります。そういうことを考えて、こういう規定船舶安全法に入つておると思います。おそらくこれは條約と申しますか、国際的な、船期衝突予防に関する新しい約束ができますれば、こういう政令できめるよりは、法律できめる方が適当であろうとこれは運輸省当局も考えておられるよりでありまして、おそらくこれは新しい海上衝突予防法が今後できることになると思います。従いまして、この二十七條はあるいは適用をしても、適用しなくても、警備隊船舶については、実際の意味はほとんどないのでありますが、法規の体裁から申しますと、船舶衝突予防のことも、保安庁の船に適用があるということをはつきりした方がいいと存じて、この二十七條が入つておることと存じます。  それから二十八條の方でございますが、二十八條では「危険及気象通報其ノ他船舶航行上ノ危険防止ニ関シ必要ナル事項」これがいわゆる国際人命安全條約の第五章の航海の安全に関する規定を具体化いたしました規定でございます。これはただいまのところは、全部運輸省令をもつて規定されております。これは大体條約と同様あるいは條約より少し詳しい規定運輸省令できまつております。これにつきましては、従来の保安庁法におきましては、この條約で、航海の安全に関する規定は、軍艦以外のすべての船舶適用することになつておりますので、たとい船舶安全法のこの二十七條適用を排除いたしましても、警備隊の船も当然條約の規定の直接拘束を受けるわけでありまして、その條約の直接拘束のもとに、この航海安全に関する規定を自分できめればよかつたわけでございますが、今回の外務委員会等におきます御審議経過で、なるべくさしつかえない範囲においては、船舶安全法もできる範囲においては適用した方がいいのじやないか、こういうふうな御意向で、二十八條も内容は同じことでございますが、適用になるようになさつたのではないか、かように考えております。
  29. 大矢省三

    大矢委員 そこで二十八條の「危険及気象通報其ノ他」ということを入れるということですが、これを適用するということに改正すれば、これは一般の船舶として、運輸省の監督官が、一年に一回ずつ検査することになつておるのですが、それはできるのですか、できないのですか。
  30. 林修三

    林政府委員 この二十八條は純然たる、ただいま申しました国際人命安全條約の、いわゆる航海安全に関する規定の委任規定でございまして、船舶の安全法の本体の規定では、ございません。これはいわば国際人命安全條約の本体の規定であります。船舶の構造でありますとか、そういうことに関します規定を設けたものではございませんで、国際人命安全條約の第五章の航海の安全、先ほどお話いたしました危険通報とか、あるいは気象業務の通報とか、そういうことに関します規定でございます。検査云々の規定ではございませんで、條約上各船舶がみずから守るべき規則を、運輸省令ではつきりしておる点の根拠規定でございます。またこれは、ごらんになるとわかりますように、二十八條には「必要ナル事項命令ヲ以テ之ヲ定ム」と書いてございまして、これは法律の体裁から申せば、保安庁船舶については、総理府令をもつて規定することもできるわけでございまして、必ずしもこれは運輸省令のみを適用するという趣旨ではなく、法律上はどちらでもできるわけでございます。
  31. 大矢省三

    大矢委員 二十七條のこういうことを挿入することになりますと、一年に一回ずつ船舶関係庁から監督し、これを検査することは、普通一般船舶と同様に行うのかどうか。
  32. 林修三

    林政府委員 この二十七條は、船舶衝突予防でございますが、これは御承知のように、先ほどちよつと申し上げましたが、現在海上衝突予防法という法律がございます。この海上衝突予防法は、二十七條に基きます政令が出ますまでは効力を持つておりまして、保安庁法では別にこの海上衝突予防法適用を排除いたしておりません。従いまして、現在はもちろん海上衝突予防法保安庁船舶にも適用があるわけでございます。
  33. 大矢省三

    大矢委員 今長官がおいでになつたから、ただ一言だけお聞きしたいのですが、最初この提案をしたときに、これはいわゆる普通の船舶と違うのであるから、船舶安全法その他電波法の一部の適用をしなくてもいいのだという考えのもとに、貸借協定の締結について承認を求めるの件を提出されたと思うのです。それがその後外務委員会で問題になりまして、誤解を生ずるので、完璧を期するために、この船舶安全法の一部、すなわち言いかえれば、国際條約に基いてのものだけをここに一部改正をして、議員提出なつたわけであります。もし議員提出とならない場合に、今論議になつておつた国際法規の関係上、一部をどうしても適用しなければならぬと考えるのか。依然として、それは必要がない。しかしないよりかある方がましだということでこれを賛成されるのか。もし議員提出がなければ、政府みずからが完璧を期するために、積極的にこれを改正して出す意思があるのかどうか。これは直接長官から聞きたいと思います。
  34. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。これはわれわれの考え方では、御承知の通り條約の中の規則第五章の問題、これなんです。これがつまり適用になるわけです。あとは大体はずれておると思います。そこでこの問題の手当をどうするかとい、うことになりますが、これは一般的の船じやないのでありまして、特殊の、いわゆる警備隊で使う船であります。それは内部の訓示規定だけで行けるという考えのもとに、訓示でひとつ行こうじやないか、この手当で済むのではないかということの方針で進んで参つておつたのであります。しかしだんだん委員会で御議論もありまして、法律でやつたらいいじやないかということでありますが、それはもう法律でやれば、これより越したことはないのでありますから、われわれはあえて固執しないわけであります。法律でおやりくださるなら法律でやりましよう。固執はいたしません。こういう気持でいるわけであります。
  35. 大矢省三

    大矢委員 それでは、今なおやつてもらえばそれでいいが、やらなくても行けるというお考えですか。
  36. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。手当はそれでいいと思つております。今でも思つております。しかしすべての誤解を一掃するために、法律でおやりくださるならそれに越したことはない。あえて固執いたしません。この態度であります。
  37. 北村徳太郎

    ○北村委員 ただいまの大矢委員の御質問に関連して、ちよつと念のために承つておきたいと思います。この問題は、予算委員会においても論議されたようでありまして、私はこのことにあまり関係しておりませんから、詳細はよくわかりませんので、速記録でも読んで十分検討いたしたいと思うのでありますが、先ほど岡田政務次官の御答弁の中に、政府解釈は初めから一貫しておる。議員提出法案がなくてもよいのであるけれども、あれば一層完璧云々というような言葉があつたと思うのですが、それは政府を代表してそういう御答弁になつたことは間違いないかどうか。このことをこの場合、いろいろ問題が後に残りますから、はつきりと確かめておきたいと思いますので、もう一度このことについて御答弁を願いたいと思います。岡田政務次官が、ここではつきりおつしやつたのでありますから、もう一度岡田政務次官の御心境を十分同つておきたいと思います。
  38. 岡田五郎

    岡田(五)政府委員 先ほど申し上げましたことに間違いない。私はかように考えております。
  39. 北村徳太郎

    ○北村委員 それでは私はこれから少し調べて、後に御質問したいと思うのでありますが、私が予算委員会でわきからちよつと聞いておつたところでは、必ずしも政府解釈は初めから一貫しておらぬ。法制局長官が多少詭弁を弄せられたということが問題になつて、そのことも相当に政治的責任があるということが論議せられております。政府はあわてて議員提出の方法によつて、法的不備を何とかまとめようとされたように考えておるのでありますが、今のお話とその点が食い違つておりますから、私は用意がありませんが、これは非常に重大な問題でありますから、十分準備をもつて、重ねて御質問いたしたい。きようはこの程度にして、あとのことは留保しておきます。
  40. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちよつと議事進行についてお尋ねしたいのですが、北村委員もなお御調査になつ質問したいという御意向ですが、きようは質向を終つてしまうのですか。さらに質問を続行ずることになるのですか。その都合で私は質問の内容、範囲等について再考してみたいと思うのですが、どういうことになるのですか。
  41. 船田中

    ○船田委員長 お答えいたします。先ほど理事の諸君のお話合いで、質問を続行したいという御希望が強いようでありますから、委員長としては、そういうとりはからいをいたしたい。なるべく本改正案は早くあげたいと思つておりますのでどうぞその点を……。
  42. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 さようでございますか。それでは私自身も、少し法律上の観点から用意したいものがありますので、きようの質問は留保させていただきたいと思います。——質問者もないようでありますから、せつかく長官が見えておりますししますので、私二、三尋ねさせていただきます。  私自身も実は外務委員会あるいは予算委員会等に関係しておりませんが、各委員会においていろいろ論議された状況から、この立法措置に進んで来たように伺つておりますが、その過去の経緯に詳しくありませんので、あるいはすでに論議がつきた問題かもわかりませんが、根本のことにつきまして、一、二伺いたいと思います。  この法律適用する対象に予定されておる船が、いわゆる軍艦であるのか、軍艦にあらざる船舶であるのかということが、かなり問題になつていたようでありますが、もしこれが船舶であるということになると、それは軍艦にあらざる船舶であるというような前提にならなければ、この立法措置意味をなさぬということになると思うのでありますが、この委員会におきましても、一応何を軍艦といい、何を軍艦にあらざる船舶といい、またいわゆる船舶というのは、軍艦も含むものであるかどうか。こういう点をひとつはつきり長官においてしていただきたいのであります。と言いますのは、たとえばこの一九四八年の海上における人命の安全のための国際條約の付属書類の第二の、海上衝突予防規則にも、「船舶という語は水上に浮んでいる水上飛行機以外のもので海上の運送方法として用いられ又は用いることのできる各種の船舶をも包含する」とあつて、定義ははつきりしませんけれども、どうも船舶というものの範囲が非常に広いようにも思いますので、船舶の定義、軍艦との区別、広く船舶とは軍艦も包含すべきものなりやいなや。こういうことにつきまして、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  43. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知の通り軍艦というのは、いわゆる戦争を目的とする大きな線が一つ出ておるのであります。しこうしてその点から発足いたしまして、国際法上不可侵権並びに一種の主権が認められております。形式的に申しますと、これに乗り組む船員はことごとく軍人であります。しこうして軍艦旗を掲げておるのであります。この目的と形式的の二つの点から、普通の船舶とは全然その趣を異にしておると考えております。しこうして本件において問題になつておりますいわゆるフリーゲート、これはどうだ、これが御質問の御趣旨であろう、こう私は考えております。もとよりフリゲート艦はアメリカにおいて一時哨戒艇として使つておつたことは事実であります。またLSSLは上陸支援艇として使つて、戦時的にこれを使用しておつたということは申すまでもありません。しかし日本においてこれを借り受ける目的は、これを何に使うのかということになりますと、全然これは戦争目的じやない。性格が一変しておるのであります。すなわち海岸の警備と人命の救助、これを目的として使うということになつております。この前も法制局長官がうまい例を引いております。いわゆる軍用犬であつたものをわれわれのうちで飼うと軍用犬でなくなる。軍馬を払い下げて百姓が使えば駄馬になる。この船は先ほど申しました通りアメリカにおいて使つておつたものでありますが、日本に来ては全然その性格は違つておるのであります。しかもこの船は今より十年前につくられたものでありまして、きわめて古い船であります。いくさの役には立たぬと考えております。乗組員も百六十名、基準排水量は千四百五十トン、普通海岸警備については、私としてはこんなものは借りたくありません。日本でこれに適切な船を早くつくりたいのです。しかしやむを得ずこれを借りなければならぬ立場に置かれておるのであります。と申しますのは、日本の財政です。普通一般の適切な警備船をつくりますのには、相当な金がかかります。これを六十八隻もつくりますと、おそらく四、五百億円の金になるだろうと考えておるのであります。このような金を今出しようがありません。幸いにアメリカが好意的にこれを無償で貸してやろうというのでありまするから、われわれはこれを使用いたしたい、こう考えておる次第であります。
  44. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 長官のお言葉では、いわゆる普通船舶というのは、これはこの法律適用を受ける船舶と思いますが、船舶というのは、そうすると軍艦を包含しないのですか。あるいは少し言い方がどうかと思いまするが、軍艦を包含することもあるのでしようか。いかがでございますか。
  45. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 広い船舶という概念から申しますと、軍艦も入るのではなかろうかと考えております。いわゆるアメリカでヴエツセルという言葉を使つておりますが、このヴエツセルという言葉、いわゆるわれわれの普通いいます軍艦も入つているのではないかと解釈しております。しかし普通の狭義の定義からいいますと、軍艦船舶に入つていない、こうも言える。いわゆる條約での使い方を見ますると、軍艦船舶とは違つておるように思われまするが、この点は法律的にどう違つておるかということになりますと、残念ながら私はそこまで研究しておりません。しかし普通の概念では、船舶とは大きな概念である。そこに軍艦も含まれるのであるが、しかし條約とかその他の法律的な用語では、軍艦船舶とはおのずからそこに限界がある、私はそう考えております。
  46. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ここにこの法律規定しておりまする船舶とは、広い意味軍艦を包含するのではあらずして、さきに御説明なつておりましたように、軍艦を除いた意味船舶、こういうふうに解すべきなのでしようか。
  47. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほど来保安庁長官からお答え申し上げましたように、警備隊において軍艦を使うということは、全然考えておりませんから、国内法関係において、保安庁法の中に今一部改正案として出ております。船舶というものは、そういうものは含まないというふうにお考え願つてよろしいと思います。
  48. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 やはり長官でないといけないと思いますが、そうすると軍艦にあらざる船舶、また軍艦を包含する概念としての船舶もあり得る。そこで狭い意味軍艦船舶を区別するのは、主として形の上の、国旗とかあるいは何か兵器だとかいうこともあつたようですが、主としてその使用者の用途によつて決定するのですか。言いかえると、日本政府の用途によつて、用いる目的によつてきめる、こういうことになるのでしようか。そういうふうに理解していいのでしようか。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はさように考えております。そこで今法制局長官も申し上げましたように、この船舶安全法に、いわゆる船舶軍艦は包含していない。これなんです。そこで船舶軍艦との差いかんということになりますと、先ほど来申しましたように、軍艦は一国において戦争目的のために軍人を乗り組ませて、そうしてある用途に使うということが、これがおもなる目的になるものと考えております。
  50. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この問題はやはり今後いろいろと起つて来る事実にも関連しまするので、相当明確にしておいていただく必要があると思うのですが、たとえば戦時中そこらの商船を徴用いたしまして、国旗を掲げず、ただ大砲を積み込んで、どんどんと戦争に従事させたような事実もありました。きのうまでは運送船であつて、きようは海軍所属の軍艦に化けている。こういうこともあるので、本法案船舶軍艦との区別というのは、やはり主として使う目的、用途それによつて区別する、こういうふうに長官はお答えになつたと解していいのでありますか。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はさように考えております。そこで今御質問の普通の船が戦時中軍艦に化けたじやないかということでありますが、化けることはあります。というのは、国家目的が戦争に使うんだということが一つ、そうしてそれに乗り績ませる人員が軍人である、それが軍艦旗を掲げる、従つてそれに基いて国際法上ある種の権利を取得するということであります。ここにおいて普通の船舶とおのずから差異が生じて来る、こう考えております。
  52. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、その論法を広げて行きますと、逆にまた軍艦を船に化かして、ある目的のために使つて行く、こういうこともあり得るんですね。何となれば日本の国の用途、目的によつて軍艦ともなり、軍艦にあら、ざる船ともなる、そういうこともあり得ると解していいのですか。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより当然であります。その昔軍艦でありましても、これはもう戦争には使わないという一つの目的がはずれておる、それと乗組員軍人ではありません。軍艦的の、いわゆる今申しまする権利がすでにそこから出て来ないことになります。昔軍艦であつたものが今は普通の船舶として使われておる実例もあるのであります。
  54. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますとこの法律の趣旨の船舶とは、実質は軍艦の大部分の要素を持つたもの、国旗とかあるいは戦争目的物とかあるいは軍人とか、そういつたものを載せておらぬだけで、それを載せたりおろしたりするのは一日にできることです。しかも大部分軍艦たるべき要素を持つておるという、そういうものでも目的が戦争等に使わないのだから船舶として扱つて行く場合もある、事実こういうふうにこの法律適用されて行くこともある、こういう場合も論理したやすく想像されるのですが、そういうふうに考えてもいいわけですか。
  55. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは御承知の通り廃艦というのであります。私の知つておる実例でこういうことがあります。私が乗つた船で、昔大阪商船で台南丸という船があつた。台湾航路に使つておつた船です。これは私が大連に行つた船であります。これはまるきり商船に使つておつたのです。これがあにはからんやグラスゴーでつくられたりつぱなイギリスの小巡洋艦で、三千五百トンでありましたが、こういう実例があります。また、日本でも瀬戸内海の航路にかつて使つて、これも私は乗つたことがありますが、八重山という船があつた、これは昔敷設艦だつたというのです。それが商船として使われておるという実例もあります。軍艦がいわゆる廃艦になつて一般の船舶となることはあるのでありまして、また逆に普通の船舶が戦時中に戦争目的のために軍艦に化けることもこれはあると思います。
  56. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 このさつきの人命安全に関する国際條約等の適用にも関連いたしまして、船舶として條約の適用の対象にすべきや、あるいは軍艦としてその対象から除外すべきやというようなことは、その国の、言いかえますと本件の場合日本の国が自分の用途が戦争目的でないからというのできめるべきではなくて、これは国際的に各国のそれぞれの見るところによつてきめられるということが、條約の今後の運用の上においても当然であろうと考えるのでございます。今の長官のお説に従いますと、実質は軍艦の大部分の要素を備えた形のものを、しからざる目的のためと称して多数に用意しておるということが各国に行われるということになりましたら、それは條約の円滑な適用も相互にできない結果に陥りますので、そういつた目的を隠蔽したような事態になることを避ける点から考えてみましても、やはり各国の国際的な考え方によつてきめるべき筋合いのものじやないでしようか、いかがでございましようか。
  57. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 各国でもおそらく私の今の軍艦の定義は同じであろうと思います。どこの国でも軍事的目的に使うものを軍艦と申します。それと同時にその国の軍人が乗る、その国の軍艦旗を掲げる、そうして一種の治外法権的な、不可侵権を持つということは各国同様であります。お前の船は軍艦軍艦だといつて互いにこれを区別するわけじやないのでありまして、各国の意思によつて軍艦とすべきかどうかということできまつて行くのである、こう考えております。
  58. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 長官も法律専門家で長らく練達の士でありますが、ただいまのお立場上お苦しいことはよく了承しておりますが、載せておるもの、たとえば兵器を横に置きあるいは軍人を下船させ、そしてそれを載せればすぐ軍艦になるような形のものを別の目的に使用しておるということは、それは実質的には憲法違反になるおそれがあるので、そういうふうに論理のつじつまを合せて行く必要があるとこういうところが本音じやないでしようか、これは私はあなたの立場を善意に了解いたします。しかし同時に国会において今法律をつくらんとするので、その辺について何か政治的ないろいろな必要、事情もあろうかと思いますけれども、相当はつきりしておく必要があろうと思いますので、長官のその辺についてほんとうにお考えになつておるところをひとつ述べておいていただけばたいへんいいと思うのですが……。
  59. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まことに御同情あるお言葉で恐縮しごくです。しかし私は信念としてこれは軍艦にあらず、これははつきり申し上げたい。もとよりさきに申し上げました通り、私はこんな船を借りたくありません。ほんとうに心外です。日本の海岸を警備するためにはこれに適切なる船をつくつたらよいのです。先刻申し上げました通り、つくりたいがやむを得ません。やむを得ませんから、この船を幸い貸してやろうというので借りたのであります。これは沿岸警備あるいは密輸入船の取締りあるいは海難救助ということについては相当の働きを持つものと私は考えております。これを今の近代戦に使う軍艦なりとは私はとうてい考えておりません。しかもこの装備からいい、あるいは能力からいいまして、これは大したものではありません。この点からいいましてもせいぜい日本沿岸の警備には使える。御承知の通り日本の海岸線は八千海里からあるのであります、九千海里という人もあります。私は八千海里と記憶しております。この長い海岸を警備するということは相当の船を要するのであります。御承知の通り戦前、戦時中艦艇が二百四十隻でもつてこれを守る——守ると言つては語弊がありますが、警備に配置しておつた。今はそんなことは考えずにおきましても、漁船の方も御承知の通りなかなか問題があり、密輸入船の問題も起つております。これらの点を考慮いたしますと、もう早急にこの海岸の警備に力を注がなければならぬとわれわれは考えております。その間に処しまして、幸いこのボロ船——私はあえてボロ船と言つておきます。これをアメリカから貸してやる——いい船を貸すようなことはなかろうと私は思いますが、これを貸してやろうというのでありますから、これをわれわれは借りて、早急に漁船の保護もしてやりたい、こう考えておるのであります。
  60. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私どもが国の前途のために憂慮をいたしておりまするのは、憲法改正がなく、また国民の輿論も十分にしんしやくしないで、無制限に、陸上、海上におきまして、あくる日転ずればすぐ戦争に用いられるといつたようなものがだんだんと拡充されて行つて、海では、軍艦にあらず船である、あるいは陸におきましては軍備にあらずして警備をやるというような名のもとに、だんだんと充実し、広げられ、際限なく拡大されて行くということになりますると——それは目的さえかえればどうとでも使えるのですから、そういう状態にだんだん進んで行くということが可能な道をきよう開いて行く危険があるのではないか、こういうことをおそれるのであります。まさか侵略を目的としてということは、それはないことは確信いたしますが、それにいたしましても、そういうふうに海に陸に無制限に拡充されて行く結果をおそれるのでありますから、その辺につきまして、相当確信を持つてこれらのことをなさるべきことが——特に船舶の定義、軍艦との区別、これの適用について将来起つて来るべきあらゆる事態、事件等々について相当広い視野から検討し尽して出発することが、私はこういう問題を扱うべき当初の立法措置として一番重要な点だろうと思いますので、そういうふうに陸に海に、今申しましたようなことがあり得る、その糸口をつくる危険があつてはどうかと思いまするので、重ねてお尋ねするのですが、長官の所信を伺いたいと思います。
  61. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御質問の要旨は、要するに知らぬ間に軍備がだんだん拡充されるおそれがあるのではないかというように拝承するのであります。それは私ははつきりお答えします。断じてしからず。と申しまするのは一例をもつて申しましよう。ここにアメリカから大きなエセツクス号の航空母艦を日本に持つて来ると仮定いたしましよう。これを動かすのにどれだけの乗組員がいるかです。船はひとりで動きません。動かすにはこれを動かすだけのりつぱな軍人がいります。一つの船に三千名から乗り組んでおります。船だけもらつたところで、これを動かす人間がいなければ何もなりません。この船の乗組員をいかにして養成するかということが先決問題であります。そこでただいまの保安隊の問題でありまするが、隊員は十一万と限定されておるのです。これは国会の議決がなければ増員することはできません。われわれがかつてにやろうといつたつて断じてできないのであります。この点は、このボロ船を借りるのでもやはり国会の御審議を経るわけであります。それらの点から、われわれはやろうとしてもそんなことをやれる道理がありません。これをふやすかどうかということは、これは国民の総意によつ、ておきめになるものであろう、こう考えております。やみでやるということは断じてすべきものでもなし、またでき得るものでもないということを確信しておる次第でございます。
  62. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 しからばかりに陸におきましても、優秀な飛行機等が、長官の御説のごとく、財政においてあるいは人員において、現実の問題としては不可能であろうという御説ごもつともであります。ごもつともでありますが、しかしそれにもかかわらず、法律の建前といたしましては、船舶軍艦との区別も、使用目的によつて非常に微妙なところまであいまいな線ができて来るようなことくに、陸上におきましてもやはり近代の優秀な兵器がたくさん準備されるというようなことになつた場合に、これは目的が違うのだから、いわゆる戦争のための軍備にあらずというふうにも解されて、そこに法律にも混淆した紛争点ができ、また実際政治の運営におきましても未解決のままいつまでもこういう一つの争いが繰返されることが残されて行くんじやないかと考えるのであります。陸上のことはきようは多くお尋ねするのもいかがかと思うのでございますけれども、移して陸に持つて行つたら同じようになつて来るのじやないかと思いますので、要するに目的が戦争のためでなかつたら、それは警察用だ、目的が沿岸の警備用だから従つて軍艦ではない、こういうふうに万事目的から規定して来るということの危険を私は感じ、またその危険を内包して問題が提示されておるのではないだろうか、こう思うのですが、どんなものでしようか。
  63. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私の申し上げたのは、目的と内容と二つであります。今も参議院の予算委員会でその問題について私は答弁して来たのです。いわゆる目的と内容と両々相まちまして初めてそこに一つの戦力という問題がはつきり浮び上つて来るのであります。今の保安隊は申すまでもなく保安庁法第四條によつて、わが国の平和と秩序を維持し、人命、財産を保護するため特別の必要ある場合に行動する部隊とここにはつきり、内地の治安確保の目的のために設置されるものであるということを目標の一つに掲げております。内容の点から申しましても、これは一にその目的を達成する範囲内に限定されておるのでありまして、いわゆる戦争をし得るような総合的力を持つていない。この点から申しましても、そこに御心配はないということを申し上げます。
  64. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちよつと転じまして、普通の船舶でなくして軍艦であれば、申すまでもなく航海安全法なんかの適用はないわけでありますか、これは政府委員の方にお尋ねしたいと思います。
  65. 上村健太郎

    上村政府委員 軍艦でありますれば、條約に明文がございまして、除外してございます。
  66. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は一応これで終ります。
  67. 大矢省三

    大矢委員 先ほど長官が、ああいうボロ船は借りたくないのだ、日本沿岸を警備するにはもつと性能のいいりつぱなものがほしいのだが、金がないから、こういうお話であります。もし日本のためにもまたアメリカのためにも必要だと考えて、もつといい性能のものを無償で貸してやろうというなら、これを借りるのか、また積極的にそういう無償で借りるのは一挙両得ですから借りたいのだ、すなわち借りる意思があるのかどうかということですが、それをひとつお伺いしておきます。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 沿岸警備にまつたく適切ないい船であれば、これは貸していただきたいと思います。
  69. 大矢省三

    大矢委員 これは外国のことですが、外国がどう思つているかわかりませんが、日本の国際信用の上に大きな影響がありますから聞いておきたい。日本ではああいう古くさいものだし、しかも砲がすわつていても、役に立たないのだ、しかも目的自体が戦争目的、戦闘目的でないのだから軍艦にあらず、あくまでも船舶だ、こう言つておるが、よそもそう思つているのかどうか、逆にあの程度のものを朝鮮あるいは北鮮、韓国がどんどんアメリカから借り、あるいはその他の国から借りた場合には、あれは船舶だ、戦う意思がないと向うで声明すれば、あれは軍艦でないといつて、国民がはたして信用するかどうか。そして今長官が言つておることを世界各国へ説いてまわるわけでも何でもありませんから、やはり外国で古くさいけれども戦闘用に使つておつたのは事実です。しかも砲がすわつていることは事実です。その戦艦にひとしいものを、日本では目的が違うから船舶だ、船舶だと言つているが、近くは朝鮮あるいは中共が、あれは結局アメリカがつくつた軍艦ではないか、日本軍艦を持たない持たないと言つても、非常に古くさいものであるけれども、金がないからいたし方ないので、持つていることは事実じやないか、こういうことを宣伝した場合に、国際上向うは、それは違う、日本の言うことがあたりまえで、軍艦でないということを信用するかどうか。私はおそらく韓国にしても、北鮮にしても、中共にしても、台湾にしても、やはり軍艦の一部だと思つていると思う。しかしそういうことはかつてだと言われるが、私はおそらくそういうことを感じると思うが、そういう場合の国際信用といいますか、国際的にどういう影響があるかということを考えられたことがあるかどうか。そんなことはない。あれは船舶だ、こう言つて押し切れるかどうか。その点は向うがどう思おうがかつてだ、われわれはそれは仮定の問題で想像つかぬと言われればしようがありませんけれども、私はやはり日本で問題になつているように、必ず外国でも問題になると思う。そういう場合に、日本の世界に表明した非武装国家としての平和憲法に反していないかどうか。私は国際信義の上から非常に悪影響があるのではないかと思う。こういう点はどういうふうに考えておられるか、その点心配いらぬと考えていられるかどうか。私はこれは非常に重大なことだと思うのです。
  70. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り軍艦には軍艦旗というものを掲げます。はつきり国際上規定されております。その軍艦旗をつけておりますものを、国際法軍艦として取扱う。今申しますように、そういう軍艦旗を掲げて、その軍艦なることを表明した以上は、これは国際法上不可侵権も認められ、一種の主権をそこに認められるのでありまして、今の日本のフリゲード艦は、軍艦としてアメリカで使つておつても、日本軍艦旗を掲げないのでありますから、軍艦としての取扱いは国際法上受けません。従つて朝鮮であろうが、中共であろうが、これを普通船舶として彼らは国際法上取扱えばいいと思う。この点ではつきり区別されると思います。
  71. 大矢省三

    大矢委員 それはこういうことに解してよろしいですか。今度の貸借の主たるフリゲートは、軍艦旗を持つていないから軍艦とは断じて各国は見ない、そういう心配は御無用だ、日本はただ軍艦旗がないからということで軍艦でない、軍艦であると決して外国では考えていない、こういうことに考えてよいですか。
  72. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 考える、考えぬより軍艦旗を掲げることによつて国際法上の取扱いを別に受けるのです。軍艦としては一種の国際法上の取扱いを受ける権力を持つております。商船とは全然その趣を異にしておりますから、これは御心配はないと思つております。
  73. 武藤運十郎

    ○武藤委員 吉田君の先ほどの質問に関連しまして、私もちよつと一点伺いたいのですけれども、先ほど木村長官の話を伺つておりますと、沿岸警備だけであるし、戦争目的がない、艦隊でもないし、軍隊でもない、軍艦でもないというお説もあるようでありまするが、こういう場合はどうなんでしよう。かりに外国軍艦日本に侵略して来た、日本に近づいて来た、そういう場合には、今度借りたフリゲート艦というやつは、密漁船とか密輸入船だけを取締るのであるから、ただ黙つて見ておるのでしようか、何かこれに反撃を加えるということになるのでしようか、承りたいと思います。
  74. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 密輸入船その他日本法律違反するような行為のあるものに対しては、日本でそれ相応の処置をとれるものと考えております。
  75. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そのことを伺つておるのではないのであつて、外国軍艦日本に侵略をして来た場合に、今の問題のフリゲート艦はただ見ているのかどうかということです。
  76. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 外国船といえども日本法律を無視して不当に日本に侵略して来た場合には、御承知の通りわれわれも個人として正当防衛権を持つております。国家としても正当防衛権は持つおります。われわれはそのときによつて処置を考えればよいと思います。
  77. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうではないのであつて、外国船ではなくして、外国軍艦や軍隊が積極的に、意識的に侵略をして来たというような場合には一つの軍事行動が行われる。ただの密輸入や何かではない、戦闘行為としてやつて来た場合に、これに対して国家の意思で正当防衛として反撃を加えて行くというような場合には、このフリゲート艦が全面的に出動して反撃を加えることになるのですか。
  78. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより外国の不当侵略に対しては、私は木村個人でも戦います。いわんや日本の警察あるいは保安隊といえども、そのときの情勢いかんによつて反撃を加えることは当然であろうと思います。
  79. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は保安隊や木村個人を言つているのではないのであつて、今問題になつているフリゲート艦か、フリゲート船か知りませんが、これが反撃に出るかどうか、また持つている武器がどういう武器があるのか知りませんが、あるだけの武器は、たとえば大砲があれば大砲を使つて反撃をするかどうかということです。
  80. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 そのときの情勢判断によつて、侵略行為に対して防衛的処置を講ずるものとわれわれは考えております。
  81. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もつと具体的に、外国軍艦が数隻または十数隻やつて来まして、侵略のために日本に上陸しようとしたような場合には、どういうふうに処置をとるでしようか、そのときの情勢と言いましても、そういう場合にはどうします。
  82. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとよりそのときには正当防衛権を発揮するでありましよう。しかし私はそういう仮定論については今あまり深く申し上げたくはありません。
  83. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういうことになりますと、日本憲法に戦争を放棄しているのですから、積極的に宣戦を布告するというようなことはないでしようけれども、事実上はそこに戦争というものが起ると思うのです。これはりつぱな戦争だと言い得ると思うのですが、そうなるとフリゲート艦というものがなければ、反撃に出ることもない、従つて戦争にはならない、しかしこういうものがあると結局事実上戦争ということになるのではないかということを伺いたい。
  84. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それでは外国の侵略はそのまま見過してよいという御議論になるのでございましようか。われわれは外国からの侵略に対して、ただ手をあげてどうぞお入りくださいということになのるでしようか。
  85. 武藤運十郎

    ○武藤委員 ここで私が伺うのは外国の侵略がよいとか悪いとか言うのではありません。侵略がよくないことは、もう木村長官の方が私よりよく知つておられると思う。いいとか悪いとかをいうのではなくて、事実問題として、外国軍艦が侵略をして来たというような場合に、戦争になりはしないか、実際上戦争というものになりはしないか、このフリゲートがなければ戦争は始まりませんが、海戦は始まりませんが、あるために、実際海戦というものが行われることになりはしないか。反撃を加えるという長官のお話でありますと、当然そういうことになるのではないかということを承りたい。同時にそれはそのときから木村長官の先ほど来言つておられる戦争目的というものを持つことになるのではないか、その瞬間から、今はないとしましても、外国の侵略があり、それに対して反撃を加える戦闘行為が行われる、武器を使う、乗組員戦闘行為に参加をするということになりますと、少くともその瞬間からは戦争目的を持つことになつて、それはいわゆる戦争になり、憲法の軍備を廃し戦争を放棄したという條項と抵融するような行為が行われることになるのではないかということについて長官に伺いたい。いいとか悪いとかを聞いておるのではない。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。フリゲート艦あるなしにかかわりません。そうすると、フリゲートがなくて、外国の軍隊が不法に侵入して来て、その場合に日本の警察隊なり何なりが出動した場合に、これもあなたのおつしやるように戦闘行為ならば、初めから持つておることは不当だということにはならないと思う。これはフリゲート艦あるなしにかかわりません。そういう場合には、日本の国民は全部こぞつて私は起つべきものであろうと確信して疑いません。
  87. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はそういうふうな日本国民の信念や何かを聞いておるのではない。そういう場合に戦争になつて、いわゆる憲法の條項に違反する結果になりはしないか、軍備ということになり、あるいは戦争ということになるのではないかということについての木村長官の解釈を伺つておる。
  88. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はならぬと確信しております。初めからいくさをする目的をもつてつくられたものではないのであります。断じて軍備には私はならないと考えております。
  89. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう少し伺いたいのだけれども、初めのことは私はもう了承しておるのです。今は木村長官の言われた通り、かりに戦争目的がないということにしましても、その侵略に対抗する組織的な力になると思う。数十隻のフリゲート艦が一斉に出動するということになると、これはただ単なる個人が正当防衛するということでなくて、一つの、軍艦としての組織的な行動になりはしないか、そういう場合には、りつぱに海戦——そう大きなものではないでしようけれども、りつぱに小規模の海戦が行われることになると思う。そのときには、その瞬間から戦争目的を持つたことになりはしないか、こういうことを伺つて、憲法との関係を聞いておるわけであります。
  90. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 そのときには一種の正当防衛行為でありますから、戦争目的を初めから持つていなければ私はいいと考えております。そうしなければ、これは外国から不当に優人をして来て、日本の警察が立つたときに、そのときからすでにもう軍隊にかわつておるのではないかというような議論も出るのであります。われわれは、それじや日本国民全部が軍隊になつてしまう。さようなものではないと私は考えております。
  91. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういうふうな、私は広い範囲についての自然発生的なものを伺うのではない。今から数十隻の軍艦——廃艦になつたということでありましても、とにかく軍艦としての実質を備えておる。それが数十隻、組織的な訓練を受け、そして組織的な規模で日本沿岸に浮かんでおる。それが外国軍艦の侵略に対して戦いをするということと、国内に入つて来られた外国人に対して、外国の軍隊に対して国民が立ち上つて反対をするということとは違うと思うのです。そういう例でなくて、この場合についての、木村長官の、先ほど来の戦争目的がなければという前提に立つとしても、その瞬間からいわゆる組織的な戦争目的というものが入るのではないかということを聞いておる。もう一度承りたい。
  92. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 決して私は入らぬと思います。いかなる小船といえども、そういうような場合においては、私は立ち上るだろうと考えております。
  93. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それではもう一つ別のことでありますが、日本が国連に協力するということがあるのでありますけれども、この船で外国の、国連軍の軍隊あるいは兵器あるいは弾薬というようなものを運搬をするというようなことはないのでしようか。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 断じてありません。
  95. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちよつとさつきからの問答によりましてもう一点伺つておきたい点があります。だんだんと長官の解釈なり、お説なり、あるいは情勢の御判断なりを聞いておりますと、仮定ではなくてあるいは必要からそういう事態も起ると思いますが、将来日本がさらに優秀な船、あるいはそれは軍艦の古手であつたかもわかりませんが、軍艦らしい船をさらにたくさんに借り入れるような事態が生じ、あるいは実情において類似の装備がだんだんとできて、これは財政とにらみ合せなければ実現しないと思いますけれども、しかし国際間の諸般の事情からそういうふうな事態が進展して行くことも一応推測し得られるのですが、そういつた場合に、目的なりあるいは形体なり、そういつたものが軍艦である、ない軍備である、ないというようなことにいろいろと考慮しながら心配して、また法律をつくつたり、議論したりしなくてはなるまいと思いますが、私は百尺竿頭一歩を進めまして、それならいつそ侵略戦争をする意思もない以上は、憲法第九條を改正するということにおいて、受ける戦争なら立ち上るというようなことであれば、そこまで腹をきめるということがあなたのお考えならば、政治家として根本の信念として持つべき一つのねらい点ではないかと思うのですが、それは私は内閣の首班でない木村長官にお伺いすることはいかがかと思いますけれども、国務大臣として、また行政の長として重大な立場に立つておられるので、むしろそういつたところに、目的は正しいのだからということである以上は、やはりここまで道を開きなさつてはどうかと思うのだが、但しそのことのいい、悪いは別問題として、あなたのお考え、あなたの見なさる情勢の判断あるいは実情、将来の推移発展というようなことから結論しますと、むしろそういうふうにお考えになるのが、事の順序でないだろうか、筋が通るのではないだろうかというふうに思われるのですが、どうでございます。そういう点について根本の信念を承りたいと思います。
  96. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 政村においてしばしば声明いたしました通り、ただいまは再軍備の時期ではないし、従つて憲法改正はいたさないのである、こう言つておるのであります。私個人の意見はこの際は差控えたいと考えております。
  97. 砂田重政

    ○砂田委員 議事進行について。この問題についてだんだん長く応答が行われておりますが、私どもは根本をもつとお伺いしたい。それはすなわち日本の治安の状態がこういうものを借りて来なければならぬような急迫しておる状態にあるかないかということが根本だと思うのでありますが、その点については秘密会でも開いてもらつて、長官からもつと詳しく私どもは伺いたいと思います。ただここでかんかんと議論をしておるような事態でないのじやないかということを深く感ずるのでありますが、それらの点については、もう一ぺんお開きを願つて、長官も御出席を願つて詳細伺いたいと思うのでありますが、もうすでに十二時半になつておりますから、本日はこの程度にして、午後お開きになるか、日をかえておやりになるか、徹底したそういう詳細の事情を承りたい、かように考えておるのであります。
  98. 船田中

    ○船田委員長 ただいま砂田君の御提案もございますので、本日はこの程度といたしまして、次会は明十八日午前十時理事会、十時半委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散分