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1952-11-29 第15回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月二十九日(土曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 富田 健治君 理事 大矢 省三君    理事 武藤運十郎君       岡田 忠彦君    砂田 重政君       橋本 龍伍君    平塚常次郎君       粟山  博君    吉田 賢一君       原   彪君    和田 博雄君       辻  政信君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         宮内庁次長   宇佐美 毅君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 十一月二十七日  委員片山哲君辞任につき、その補欠として西尾  末廣君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二十八日  軍人恩給復活に関する請願重光葵紹介)(  第一五四号)  同外一件(小山長規紹介)(第一五五号)  同(田原春次紹介)(第一五六号)  同(小松幹紹介)(第一八〇号)  同(廣瀬正雄紹介)(第一九〇号)  同(村上勇紹介)(第一九一号)  同外一件(西村英一紹介)(第二二四号)  同(廣瀬正雄紹介)(第二二五号)  同(寺島隆太郎紹介)(第二四二号)  同(臼井莊一君紹介)(第二四三号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十七日  自治功労者に対する栄典制度立法措置に関す  る陳情書(第四〇  一号)  伊良湖岬試砲場設置反対に関する陳情書  (第四〇二号)  恩給法改正実施の促進に関する陳情書  (第四〇三号)  元軍人恩給復活に関する陳情書  (第  四〇四号)  軍人恩給復活審議に関する陳情書  (第四〇五号)  を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国憲法第八条の規定による議決案内閣提  出、議決第二号)  恩給に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 船田中

    船田委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日は公報をもつてお知らせいたしておきましたことく「日本国憲法第八条の規定による議決案内閣提出議決第二号につきまして、質疑を行い、続いて恩給につきまして調査を行いたいと存じます。  まず日本国憲法第八条の規定による議決案につきまして、質疑を行います。質疑通告順によることといたします。富田健治君。
  3. 富田健治

    富田委員 本員の手元に、議題になつております翁島高松宮様の御別邸用地に関しまして、請願書が出ておりますが、それにつきまして、政府委員にお尋ねいたしたいと思うのであります。それは、議題になつております翁島村所在高松宮別邸用地のうち、宅地建物等については異存はないけれども、それに付属しております山林原野につきまして、この御別邸ができました当時、これらの山林原野を買い上げられました元の地主におきまして、今回御下賜になる以上は、これらの付属山林原野を元の地主にお下げもどしを願いたいという請願なのであります。これは大分以前から問題があつたようでありまして、たびたびそういう陳情も各方面にいたしておつたようなことが、この請願書の中にもうたわれておりますが、これにつきまして、どういう経緯になつておりますか、政府委員から御説明を願いたい、かように思うのであります。
  4. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 このたび御下賜になります翁島村、月形村、福良村の三地域は、沿革的に申し上げますと、明治四十年の十二月に有栖川宮殿下が、当時総面積二百六十三町歩余り民有地を買い上げられまして、翌四十一年八月に四百四十五坪の洋式の御別邸付属家屋を新築され、事務所を置きまして、管理されたのでございますが、大正二年に、これを高松宮殿下に贈進されることに決定いたしまして、当分の間当時の帝室林野局が管理することとなつたのでございます。その後大正十年には、二百十四坪の和式の新邸、同付属家屋を新築されたのでございます。高松宮殿下が成年に達せられました大正十四年の一月に御用地を整理されまして、そのうち百九十八町歩余り福島県に賜与された後、高松宮家で管理されるようになつた次第でございます。なおこの間国有地約一町歩を購入され、また民有地町歩の献納がございました。終戦昭和二十二年以後におきましては、自作農創設特別措置法実施に伴いまして、宅地百四十五坪並びに田畑の全部、及び山林の一部約十町歩を譲渡されたのでございます。また二十四年には洋館の付属家屋の一部六十八坪を焼失し、長屋の三十八坪を新築いたしまして、現在は宅地三百坪余及び山林原野等約九十町歩、並びに家屋約六百三十坪となつておるのでございまして、今回この全部を福島県に賜与されることになつておるのでございます。  ただいま御質問になりました点につきましては、大正十四年一月に御用地を整理されまして、百九十八町歩余り福島県に賜与せられましたときに、その整理の方針といたしまして、翁島別邸を中心として必要な土地のみを存置する、なおその際使用収益権地上権、まぐさ買取権等、いわゆる特殊条件、不用地はその権利をすべて放棄する、これに対しましては一定の手当をせられたのでございます。それから不用土地は全部福島県に下賜せられまして、旧所有者に下げもどすかどうかは、全部福島県の裁量にまかすという方針のもとに整理せられたのでございまして、現在の山林原野につきましては、そういつた条件はその当時から排除されておりますように、調べがなつておるのでございます。また当初買収いたしました当時におきましても、不用土地について元所有者に返すということにつきましては、何ら帳簿上も覚書等も、役所といたしましては、宮家といたしまして残つておりませんのでございます。今回いろいろ希望は、宮家には数次にわたつて請願陳情がございましたけれども、宮家といたしましては、これは一切福島県に下賜するという方針を立てられた次第でございまして、もともと裏難有財産でございまして、その措置につきましては、役所といたしましてどうこう申し上げる筋合いはないようにも考えております。そういつた条件につきましても、何らよるべきものがございませんことを、ここで申し上げておきたいと存じます。
  5. 富田健治

    富田委員 ただいまの次長の御説明で大体了承いたしたのでありますが、ただこの請願書によりますと、相当多数の人が、ことに今御説明もありました通り高松宮様に対しまして五たびにわたつて陳情、お願いをいたしておるというようなふうに出ております。これはおそらく事実であろうと思うのでありますが、ただいま御説明によりまして大体了承されるのでございますし、また宮内庁におかれましてもいろいろ手落ちなく御措置になつており、御研究なつた結果の処置だと思うのでありますが、今日のような時世でもございまるすし、またこういう多数の人が相当強い要望を持つておるということに対しましては、ただりくつだけでもいけない点があるのじやないか、十分私は納得を得て、結論は今のようなことでけつこうかと思うのでありますが、その結論に達しまする上において、これらの元地主に十分納得してもらうような方法をひとつおとり願いたい。これは質疑範囲を脱しまするが、強い希望として申し述べまして、私の質問は終りたいと思います。
  6. 船田中

  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私も簡単に一点だけ御質問申し上げてみたいと思います。それは福島県がこの物件の御下賜を受けました上、どういうふうに使用する計画を持つているのであるか、いずれ何かと書類も提出されておることと思いますので、これをひとつこの際明らかにいたしまして、御下賜議決されることになりましても、その趣旨を逸脱しないように厳重に明らかにしておきたいと思いますので、その辺おわかりの範囲を御説明願いたいと思います。
  8. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 今回御下賜になります趣旨につきましては、その理由書にもございます通りに、福島県におきまして観光及び厚生施設用に供するという趣旨でございます。さしあたりわれわれ伺つておるところによりますと、家屋を修理いたしまして、観光練成等のための設備とし、あるいは迎賓館として全体の運営に当るようでございまして、この運営につきましては、一つの法人の協会をつくつて運営させる計画のように聞いておるのでございます。結論といたしまして観光厚生の用に供するという意味におきまして、下賜されるということになつておる次第であります。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 格別具体的な計画はまだ示されておらないのですか。
  10. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいま申し上げました程度でありまして、具体的な点につきましては、私ども耳にいたしておりません。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なおさき富田さんの御質問に関連しますが、今の福島県の受入れのいろいろな計画と、それから山林等の今後の処分等がもしありますれば、その辺はどうなるのですか。
  12. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 宮家におきまして下賜される趣旨は、ただいま申し上げました通りでございますので、県といたしましても、その趣旨従つてつていただくのが当然ではないかと考えております。ただその趣旨を損せざる範囲において福島県におかれて適当な措置をされることは、これは宮様にお伺いしたわけではございませんが、普通の場合あり得ることだと考えておるわけでございます。なお将来それ以外に措置されるときには、やはり宮家に一応お話をいただくのが普通やつていただきたいことではないかと考えております。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の山林が旧地主に返りますときは、いずれ有償になると思いますが、そういつたときにはその代価等につきましても、それぞれ御下賜の趣意に反しないように賜与せられるべきものとも思いますが、その辺までは考え及んでおられぬでしようか。
  14. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいまのところは、ここにございます通り福島県に対して御下賜になりますので、その先の将来の措置につきまして、どういうことになるという予定のもとにはただいま検討いたしておりません。
  15. 船田中

  16. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私はただいま議題になつております翁島の御別荘を賜与されるということについては何の異議もないわけでありまして、これはけつこうなことだと考えております。この機会にこれに関連をいたしまして、憲法第八条の規定及びこれに関連する皇室経済法第二条、第四条の問題について、宮内庁意見をちよつと伺つておきたいのであります。実は昨年貞明皇后がなくなられまして、御遺産の中から、従来非常に御関心のありました救癩事業のために充てられた資金がございまして、天皇陛下その他御相続なさるべき直宮様方が、貞明皇后救癩資金としてわざわざ銘うつて貯金されておつたようなものは、当然自分は受取らないといつて政府に渡して、救癩資金に充ててもらいたいというお話がありました。ところがやはりこの規定がありまするために、限度を越えました金額については、次の国会を待つて議決を経なければできないというような状態でありまして、これはどうも必ずしもそのせつかくの御趣旨に沿うようなことでないのじやないかという感じがいたしたのであります。もちろんこの憲法第八条の規定は、新憲法趣旨として、皇室が不当に国民に対して財産を賜与して影響力を持つというようなことを防ぐ趣旨があるのだと思うのであります。そういう趣旨から考えまするならば、おのずからやはり金額限度等につきましても、かほどに小さな限度を設けて置かないでも、もう少し包括的に国会が承認する限度を広げておいた方がいいのじやないかということが一般的に考えられるのであります。なおまた単に金額限度で縛るというだけでなしに、たとえば賜与の性質、たとえて申しまするならば、遺産として残されたものを、遺産の相続をする権利を持つておられる皇族が、御遺産はちようだいしないでいいからこれを出すというような場合には、多少定められた金額限度より大きくしても、これはかまわぬといつたような、財産性質による包括承認といつたようなことも私は考えていいのじやないかということを当時感じたのであります。通貨糟がだんだん下つて、物の値段が上つて参るといつたような、金の値打の変動等の関係もありまするし、なおまた、およそこういうふうな賜与というものは、どうせたとえば貞明皇后の御遺産のように何かの機縁で事が起る、そうしてそれはやはりその場でやらないと気分的にもぴんと来ない。つまり貞明皇后様がなくなられたらすぐ、たとえば俗に一般の民間の風習からいえば、三七日とか四十九日とかあるいは五十日祭とか百日祭というのが必ずあるわけであります。次の国会が開かれ、半年、一年たたなければ実現できぬといつたようなことは、賜与の趣旨からいつても沿わぬ場合等もあり得ることであります。私は昨年以来皇室経済法規定にありますところの金額限度をもう少し広げたらどうか、あるいは金額でなくて、さきに申し上げましたように、たとえば遺産の場合はいいとかなんとかいうような、財産性質によつても考えていいじやないかというふうな感じを持つてつたのであります。これは将来考えてもいいことじやないかと思うのでありますてが、本件の出ましたついでにこういう点に関する宮内庁の考え方を伺つておきたいと思います。
  17. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいま御質問になりました点は、お述べの通りに、憲法第八条に皇室財産を賜与しあるいは譲り受けるときには国会議決に基かなければならないという規定に基いておるのでございまして、それを皇室経済法で一々国会議決を経るという煩を避けるために、一定限度まではよろしいということを定めておるのでございます。これは現在では天皇及び内廷にある皇族、いわゆる天皇、皇后両陛下と皇太子殿下義宮様、清宮様で年額三百七十万円までは賜与してよろしい、それから受ける方は百二十万円、その他の皇族様はお一方受ける方もお出しになる方も十五万円という制限がございます。この現在の制限につきましては、今日率直に申し上げましてきゆうくつな点がございます。ことに外国皇室との御交際の場合等において、相当いろいろな面から苦しい点もあるのでございます。問題はこれをどの程度がよろしいかということにあろうかと思うのでございますが、むやみに大きくいたしますと、憲法趣旨を没却いたしますし、また一面ただいまの内廷の経費は法律によりまして年三千万円ときまつておりまして、その他には特別の財産をお持ちにならない建前になつております。そういう金額の中における財産の授受の問題でございますので、わくだけを多くいただいてもむずかしい問題が起つて参るわけであります。現状におきましては多少きゆうくつな点も一、二経験をいたしたのでございますが、これはどの程度にいたしたらよいかということにつきましては、目下のところ結論を持つておりませんけれども、お尋ねの点につきましては御同感申し上げる点も多いので、当局におきましても将来検討をいたして参りたい、かように考える次第であります。
  18. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 大体同じように考えておられるようでありまして、けつこうであります。  御研究をお願いすることを申し上げておいて、ついでに申し上げておきたいのでありますが、私は先ほど申し上げましたように、憲法第八条の規定と  いうものは、新憲法のもとにおいて、皇室財産を使つて不当な政治的影響力を持たさぬためにという趣旨でできたものであると思うのであります。従つて包括承認国会が与えるにつきましても、またこの包括承認を与えた限度外のものをこうして一々議案として審査をいたします場合におきましても、やはり本旨からいいますれば、これが要するに不当なる政治的影響力国民に与えるような目的で出され、またそういう可能性があるかということさえ見て、それに触れないものであるならば、国会は黙つて承認をすべきものでありまして、くださるならこういう形でやつてもらいたいというようなところまで国会が入つて賛成とか不賛成とかいうことを申しますことは、むしろ自分財産を本来ならば自由に処分できるという憲法上の権利を不当に干渉するものとすら考えるのであります。従つて今日ではそういう事例が非常に少くなりましたけれども、従来共産党の諸君などが、わずかなものでも出るたびに必ず反対をするといつたようなときに、やはり非常にこの趣旨を逸脱したような感じがいたしました。私は憲法第八条の本旨に反しない範囲内におきましては、どうかやはり金額限度なり、それから賜与の性質財産性質といつたようなものについて、十分御研究をいただきまして、先ほど私が例をあげましたように、なくなられたときの気持をその場で表わしたいという場合とか、あるいはまた今御説明の中にもあつたような外国皇室との御交際とか、何かの機縁にこれだけ出したいといつたようなのがやはりすぐには出せない。そういうふうな欠陥のないように、なるべく早い機会に御研究をお願いしたいと思います。
  19. 船田中

    船田委員長 他に御質問はございませんか。――他に御質疑がなければ、本件についての討論採決次会に譲りたいと存じます。     ―――――――――――――
  20. 船田中

    船田委員長 次に恩給に関し調査を行います。  まず軍人恩給に関し、恩給法特例審議会建議及び給与ベース参アップについて説明をお願いいたしたいと存じます。なお特に昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律とも関連いたしまするので、それらのことにつきましてあわせて説明をお願いいたしたいと思います。三橋恩給局長
  21. 三橋則雄

    ○三橋(則)政府委員 まず最初に昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律に関しまして御説明いたしまして、それから旧軍人軍属及びその遺族等恩給に関しまする先般恩給法特例審議会における建議につきまして御説明を申し上げたいと思います。  昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律には、この法律を実施いたしまして給しまする恩給につきましては、政令で定める月分からの恩給について、いわゆる不均衡是正をするように規定されておりまして、おそくとも昭和二十八年の一月分の恩給からいわゆる不均衡是正をするようになつておるのでございます。ところで政府におきましてはいろいろと検討を加えました結果、ただいまのところといたしましては、昭和二十八年一月分からの恩給につきまして、この法律に定められておりまする通り均衡是正に関する措置をするように考えておるのでございまするが、昭和二十七年度中の恩給につきましては、実施することは今のところは考えておらないのでございます。  それから旧軍人軍属及びその遺族等に関する件につきまして御説明申し上げます。恩給法特例審議会が去る六月に設置されましてから恩給法特例審議会はほとんど毎週あるいは小委員会をあるいは総会を開きまして、旧軍人軍属及びその遺族等恩給に関しまする重要事項について審議を重ねて来たのであります。その結果去る二十二日に政府に対しまする建議案を決定いたしまして、建議いたしたのでございます。その内容はすでにお手元に配付してあります通りでございます。恩給法特例審議会におきましては、まず審議会の劈頭におきまして、旧軍人軍属及びその遺族方々恩給を給すべきかどうかにつきまして論議されたのでございます。その結果、巷間いろいろの議論はあるのではございまするけれども、結局恩給を給すべきものであるという結論に到達いたしたのでございます。その結論に到達いたしたにつきましては、大まかに申し上げますると、この建議に書いてある通りでございまして、この建議をお読みいただけば大体御了解できることで、私が御説明申し上げることはなかろうかと思います。  それならば恩給を給するといたしまして、給せられる恩給内容は一体どういうような内容であるべきか、こういうことがその次にいろいろと論議されたのでございます。ところで恩給内容いかんは御承知の通り国家経済力に非常に影響するものでございますからして、国家経済力を無視して恩給内容をきめることのできないことは当然なことでございまするし、また恩給制度というものは一つ国家制度でありまする以上は、国民の感情の動向なり、あるいはまた国家のいろいろの制度のことも考察いたしましてきめて行かなければならないことも私が申し上げるまでもないことと思うのでございます。そこでそういうような点をいろいろと考えられました結果、結局軍人に給せらるべき恩給内容というものは、軍人恩給の廃せられました際に軍人に給せられておつたごとき内容恩給に相当の改変を加えらるべきものでなくてはならない、こういうようなことに一応審議会委員方々意見が一致したのでございます。それならばその次の段階といたしましてはどういうふうにその内容に改変を加えて行くかということが問題に相なつたのでございまするが、それにつきましては、結局要するに遺族方々あるいは傷病軍人あるいは老齢軍人という方々に重きを置いて、そうして構想を練つて行くべきではないかということと、もうひとつは恩給を給しまする上におきましては、何と申しましても人事に関する諸般の記録というものがはつきりとしているということが必要なのであります。そこで終戦の前後におきましては、今日から考えてみますると行き過ぎであつたことも少くないのでございまして、あるいは今から考えてみますると、あんなことはしなくてもよかつたと思われるようなことも決して少くないのでございます。そう考えて参りますと陸海軍の人事に関する記録も、恩給が完全に運営されるという前提のもとにきちつと整備せられておるかと申しますと、これについては、必ずしもしつかりと言い得ざる実情であります。その実情というものを考えまして、それに即応するような制度を立てるということも考えられなければならないということが論議され、また決定されたところでございます。そういうような、大まかに申し上げますると根本的な考えに基きましてこの建議案左記書きの中にありまするような要綱が決定された次第でございます。それならば左記書きにおける要綱はどういうふうになつているかということにつきまして御説明申し上げます。これはもう読んでいただけば大体わかるようなことでございますので、大まかにまた二、三のことにつきまして申し上げますると、まず第一の点は非常に論議されたことでございますが、在職年に関する恩給につきましての問題でございます。在職年に関する恩給といいますと、これは一定期間在職しました者につきまし七は従来から恩給が給せられることになつておりました。その恩給は年金として給せられる場合と一時金として給せられる場合とがあつたのでございます。その恩給を給せられる場合におきまして、在職年は従来から実際の在職年で計算されるばかりでなくして、いわゆる在職年に対する加算年を加えて計算されておつたのでありますが、加算年ということは周知のことと思いますが、御説明申し上げますと、恩給法上の用語でありまして、実際に在職した年数でなくして想像上の在職年数でありまして、実際上において十年しか在職しなかつたにもかかわらず三年の割増しをつけて四年在職しておつた取扱いをいたします場合におきまして、その三年を加算年と申しておるのでございます。審議会におきましてはこの国家現状ということを考えてみますと、加算年を加えまして恩給陸海軍軍人に従来通り給するというようなことをいたしますれば、とうてい国家の財政を維持することはできないという結論になつたのでございます。加算年を加えまして恩給を給するといたします場合におきましては、現在の公務員のもらつておる支給水準によつて恩給給付をいたしますならば、おそらく千数百億円の金が毎年いるのではないか、こういうように私は想像いたすのであります。そこで審議会といたしましては、軍人在職年によつて給しまする恩給につきましては、実際に在職した年数によつて恩給を給する、こういうふうな方針がとられたのでございます。しかしながらその間におきまして一つのやむを得ない措置を講じたのでございます。それは昭和二十一年の二月一日に軍人恩給が廃止せられました際にすでに恩給権を取得しておつて恩給をもらつてつた人があるのでございます。そういう人たちは恩給をもらい、すでに恩給生活に入つてつた人たちでありますが、そういうような人は、加算年を実在職年に加えまして、そうして恩給権を認められておつた人でございます。そういう人につきましてはこの恩給そのものは給するという措置をとつたのでございます。しかしながら恩給金額につきましては、実際の在職年で計算して恩給を給することといたしまして、そうして恩給を受けるに、年金を受けるに必要なるところの在職年のない方につきましては、その不足の年数だけ恩給金額を減額するという措置をとつたのであります。もう少しわかりやすく申し上げますると、実在職年がわずか四年で、十二年在職しておつたものとしての恩給を給されておつた人があつたと仮定いたします。その人は実際十二年いなければ恩給はもらえないはずなのでございますが、加算年がありまして、加算年が八年加えられて恩給をもらつてつたのでございます。そういうような場合におきましては従来通り普通恩給は給する、しかしながらその八年の加算年の分につきましては、若干減額した金額恩給を給する、こういうような措置をとることにいたしたのが在職年による恩給についての措置一つの特色でございます。  その次は、この在職年を計算いたしまする場合におきましては、軍人在職年だけではなくて、あるいは警察官の在職年あるいは文官の在職年につきまして、各種公務員相互間の在職年は通算をいたしまして在職年を計算するというのが軍人恩給廃止の際の取扱いであつたのでございます。この在職年通算の取扱いは、恩給制度ができましてから一貫してそういうような方針がとられておつたかと申しますると、そうではないのでございまして、恩給制度のできました当初におきましてはそういうような方法はとられていなかつたのでございます。昭和になりましてからも各種公務員の在職は必ずしも通算はされなかつたのでございます。むしろ通算されない建前のとられておつた時代もあるのでございます。それは一に、通算を相互にするということになりますれば、結局恩給金額も非常にかさんで来るわけなのであります。それで国家の財政力というようなことをいろいろ勘案れました結果とられておつた措置ではないかと思います。もちろん、りくつとして申し上げますならば、各種公務員相互間の在職年は通算するのが私は当然だと思いますけれども、しかしながら国家の財政その他の現状ということを考えてみまするならば、そのときどきによつてある程度のやむを得ない措置も考えなければならないというようなことも一応の議論じやないかと思います。かつてはそういうような見地に立つて通算しない措置がとられたことではないかと思うのでございます。  それで今度の問題におきましては、軍人在職年とほかの公務員の在職年の通算をどうするかということがいろいろ問題になつたわけでございまするが、軍人恩給の廃止の際にすでに恩給をもらつてつた人につきましては、従来通りにその通算は認める、こういう方針をとつております。ただ軍人恩給廃止以後の人たち、すなわち軍人恩給を廃止するときにおいては、恩給を受ける資格はあつたけれども、まだ恩給権そのものは取得していなかつたというような人々につきましては、これは別な取扱いをいたしたのであります。それはさきに前段におきまして方針のときに申し上げましたごとくに、軍人軍属に関しまするところの履歴、これらは、今日におきましては必ずしも整備されていないのが実情でございます。従いまして、そういうような事情も勘案いたしまして、しかも公平なる支給のでき得るという見通しの大体つくところ、しかしてまたあとで申し上げまするが、一時恩給とのにらみ合せも考えまして、大体軍人在職年を七年に限りまして、最後の退職に引続き七年以上存職する場合に限つて、その在職を一般公務員の在職に通算する取扱いをしよう、こういうふうにいたしておるところがこの在職年による恩給支給におきまする取扱いの大きな一つの特色でございます。  それからその次には、いわゆる恩給受給年齢のまだ若い人でございます。そういう人に対しまする恩給の支給をどうするかという問題でございますが、そういう人たちに対しましては、いわゆる俗に言われる若年停止、若い者に対する恩給の停止という措置をとりまして、そうしてこの要綱にも書いておりまするが、年齢が四十五歳未満の人に対しましては全額支給をとめる、四十五歳から五十歳未満の人に対しましては半額支給をし、五十歳以上五十五歳未満の者に対しましては十分の三の額を停止する、但し分務傷病者にづきましては例外的な措置を講ずる、そうして従来通り停止の措置をしないで恩給を給する、こういうふうにいたしたのでございます。現在の文官につきましてはただ今の年齢よりも五歳若くして恩給が給せられることになつておるのでございますから、今の文官に関する恩給制度とにらみ合せて考えますると、この措置は年齢が五歳引上げられたことに相なるのでございます。  次に、恩給外に相当の所得のある者に対する恩給の停止の問題でございまするが、この措置につきましては一般文官と同様な措置をとる、こういうようなことにこの要綱はなつておるのでございます。  その次に傷病者に給せられるところの恩給について申し上げますると、傷病者に対して給せられる恩給につきましては、大まかにわけると年金と一時金とございます。従来も年金と一時金とあつたのでございます。しかして年金を受ける傷病者の中にはまた二通りつたのでございます。これも少し大まかな表現でございまするけれども、いわゆる不具廃疾者として受ける年金受給者と、機能障害者として受ける年金受給者との二つにわかれておつたのであります。不具廃疾者に給せられるところの恩給につきましては、増加恩給と普通恩給が従来給せられておつたのでございますが、今度も従来通り併給して給せられる。ただその中で最も程度の低いもの、たとえば片方の手の親指をなくしたという程度の不具廃疾者に対しましては年金をやめて一時金にするという措置が今度はとられましたが、そのほかは大体従来のような建前で行こう、こういうようなふうになつておるのでございます。それから機能障害者に給せられておりましたところの年金につきましては、これは全部一時金に切りかえる、こういうような措置を講ずることにされたのでございます。それから、従来傷病者に一時金の給せられておりましたのは、下士官、兵以下のごく軽微な傷病で兵役を免ぜられた者に対して給せられておつたのでございますが、こういうような傷病賜金を給せられておつた程度の下士官、兵の傷病者に対しましては、ごく軽いものを除きまして従来通り傷病賜金を給することに相なつたのでございます。それからもう一つ、この傷病者に給せられる恩給について申し上げておきますることは、この傷病者に給せられる恩給は、戦争によつてけがをした場合と、戦争以外の一般の通常の公務によつてけがをした場合によつて金額が違つてつたのでございますが、その差別を全然撤廃いたしてしまつたことでございます。  それから金額の定め方でございますが、金額の定め方につきましては、軍人恩給が廃止せられました当時において定められておつたごどき定め方を大体において踏襲いたして参りましたが、しかし金額そのもののきめ方におきましては重症者と軽症者の間におきましては、重症者の方に重きを置いた金額の定め方がされております。それから階級といいますか、兵と下士官と将官との間における差によるところの金額につきましては、従来よりもうんと幅を狭めております。  それからその次に扶助料の問題でございます。扶助料につきましては、たとえば私たちが退職いたしまして、そうして恩給を給せられる、そして私がなくなりました場合に遺族に給せられる扶助料と、それから軍人が戦死いたしました場合その遺族に給せられる扶助料、また私が公務のために倒れまして、そして私の遺族に給せられる扶助料とにわけられるわけでございますが、その公務のために死んだ場合に給せられる扶助・料を、私たちは公務扶助料と申しております。それから普通恩給を給せられておつて、私が平病で死んだ場合に私の遺族に給せられる扶助料を、普通扶助料と申しております。こういうように扶助料は公務扶助料と普通扶助料とにわけられるわけであります。  普通扶助料につきましては、一般の文官と同じように、それからまた従来の軍人軍属に給せられておりました恩給と同じように取扱われるもので、特にかわつた処置はされておらないわけであります。違つたことは、普通恩給につきまして、すなわち退職による恩給につきまして、一番劈頭に申し上げましたような措置がされまする結果、扶助料につきましてもそれに伴つて必然的にかわつて来るだけでありまして、特別なかわり方というものはございません。  この公務扶助料、すなわち大まかに申し上げますると軍人の戦死者遺族に給せられる扶助料につきましては、どういうような点がこの要綱の骨子になつておるかと申しますと、まず戦死によつてなくなつた場合と、戦死以外の公務によつてなくなつた場合とによつて遺族に給せられるところの扶助料は差があつたのでございまするが、その差別が全然撤廃されてしまつております。それが第一。それから第二は、扶助料の金額を定めるにつきましては、従来の恩給法で定められておりますごとくまた現在の恩給法で定められておりまするがごとくに、普通扶助料を基礎といたしまして、その金額を定めることになつておるのでございますが、その金額を定めるにつきましては、絶対的な金額につきましては、退職当時の俸給の多い者ほど多くなるようにはなつておりまするけれども、相対的には、退職当時の俸給の低い者ほど――軍人について言いますならば、階級の低い者ほど扶助料の金額が割高になるようにくふうを凝らして、定められております。  それからその次に、一時恩給の問題でございます。一時恩給と申しますのは、在職年限が普通恩給を給せられる年限に満たないで退職いたしました場合に給せられるところの恩給でございます。これは現在の恩給法におきましては、在職三年以上でなければ給されないのでございます。それから軍人恩給が廃せられました際におきましては、下士官以上の軍人に限りまして、在職三年以上の者に給せられておつた――もちろん普通恩給在職年限未満の在職者に限りますか――給せられておつたのでありまして、一般の兵には給せられていなかつたのでございます。この措置要綱におきましては、一般の下士官以上の軍人のみならず、兵隊にも給するようなことになつております。そうして従来からの取扱いでは、追放解除者の場合におきましても、一時恩給につきましては退職時の俸給そのものを土台として恩給金額が計算されることに相なつてつたのでございますが、この要綱によりましては、今の公務員の恩給支給水準並にベース・アップしたものの一時恩給を給するように相なつておるのでございます。この措置をいたしましたにつきまして、どういうふうにしてこの措置がとられたかと申しますと、劈頭に申しましたように、従来は加算ということがあつたのでございますが、加算を全然やめてしまつた関係も考慮いたしまして、加算をやめたことによつて恩給を受けられなかつた者に対する措置ということも相当考えて、こういうような措置を講ぜられたのでございます。  次に軍属の問題でございますが、軍属及びその遺族に給せられる恩給につきましては、軍属及びその遺族が一般文官と同様に従来取扱われて恩給が給せられておつたということにかんがみまして、軍属及びその遺族に対して給する恩給につきましては、一般の公務員及びその遺族に給せられる恩給に準じた取扱いをするということにされたのでございます。  それから直接に軍人軍属恩給に関するこの審議会審議事項ではありませんけれども、関連事項といたしまして定められたことが二つございます。その一つは、戦傷病者戦没者遺族等援護法による援護に対する措置のことでございまして、いわゆる援護法によりましては、恩給法の対象となる者と、そうでない者とひつくるめて援護されておるのでございます。それを今度恩給法の対象になる者は恩給法措置をすることになりますると、恩給法の対象になつていない人はどうするかという問題が起るわけであります。そういうような人たちに対しましては、荘の旧軍人軍属恩給に関しまして、審議会におきまして、今申し上げたようないろいろの処置をしますことを考慮に入れまして、それぞれの法域において適当に処置されるべきものであるということを審議会でもつて決定いたしております。  その次に戦犯者の恩給の問題でございます。戦犯者の恩給につきましては、どういうような取扱いに今なつておるかと申しますと、この恩給法の特例、これはポツダム政令でございますが、この恩給法の特例の第八条によりまして、連合国最高司令官によりまして抑留逮捕せられた者に対しましては、恩給が給せられないことに相なつており、それが今日に至つておるのでございます。こういう方々に対しまして恩給を給するか給しないかにつきましては、審議会におきましても非常に慎重にいろいろの角度から論議され房でございまするが、結局この問題につきましては、適当なる時期において一般軍人軍属及びその他の一般公務員とこれらの者の遺族の例に準じまして、政府において諸般の事情を考慮して適当に処置をすべきものである、こういうふうにきめられたのでございます。  それからこういうような措置をいたします場合におきまして、大体どれくらいの金額、人員になるかということにつきまして申し上げますと、軍人恩給が廃止せられました際に、恩給を給せられておつた人々の人員並びに金額につきましては、恩給局におきましてその書類を保管いたしておりますので、大体正確なるところの数字を申し上げられるのでございますが、軍人恩給が廃止せられました昭和二十一年の二月一日に、恩給を受ける資格があるがまだ恩給を受けておらなかつた、こういうような人々の数につきましては、恩給局では全然わからないのでございます。そういうような人々の数は、結局両復員局の調査にまたなければならないのでございます。ところで、先ほどもちよつと申し上げましたごとくに、そういうような人々の人事に関する記録というものは必ずしも整然と整理ができていないのが現状でありまするために、従つてこの人員の推測を下すということもなかなかむずかしいのでございます。私は従来国会におきまして、両復員局の報告によりまして、その報告を土台とし、それからまた恩給局におきまして軍人恩給の廃止当時給しておりましたところの恩給受給者の数を調べまして、そして大体恩給受給者の数はこれくらい、金額はこれくらいということを申し上げておつたのでございます。もちろんこの数につきましては将来なおいろいろ検討を加えまして、若干の異同があるということを申し上げておつたのでございますが、今回審議会が開かれます前後から両復員局におきましていろいろと調査をしていただいた結果によりますと、かなりその人員というものは少くなつて来ております。それでありますので、私がここで申し上げまする数字につきましては、あるいは従来の私が申し上げました数字を御承知の方は、非常にいぶかしくお考えになるかと思いますが、そういうような事情でありますから、御承知を願いたいと思います。どれくらいの数に今のところなつておるかと申しますると、この要綱の通り措置いたしますると、普通恩給の受給者は、十九万五千人前後に相なるのでございます。もちろんこれは若年停止を行われました結果でございまして、若年停止を行わないで、四十五才未満の人に対しましても普通恩給を給する、こういう措置をとりますと、その人員は相当ふえて参りまして、五十七万二千人という数になる見込みでございます。それから増加恩給の、すなわち先ほど申し上げました不具廃疾者の方々に給するところの恩給でございますが、これは大体ことしの三月ぐらいの統計によりますと、四万三千ぐらいでございまするが、将来におきまする増加ということも見込みまして四万五千ぐらいに推定いたしております。それから戦死者――大まかに申し上げますると戦死者、その他の公務でなくなつた人の遺族に給せられるところの公務扶助料の受給者の数が百四十三万三千、それから普通の平病でなくなつた人々の遺族に給せられる普通扶助料が十六万一千、こういうことに大体なるのでございます。その金額はそれならどれくらいの金額になるかと申しますると、若年停止をいたしまして、総金額といたしましては六百五十一億七千三百万円ぐらいになる予定でございます。この人員につきましては、先ほどからたびたび申し上げまするような、人事に関する記録が十分整備されていない関係もございまするので、その調査はなかなか困難でありました関係上、確率の点につきましては相当の幅がある、こういうふうにお考え置きを願いたいと思うのでございまして、あるいはこれよりも若干上まわる金額があるかもしれない、まあ八〇%、九〇%前後の確率ではないか、こういうようにも思われる節があるのでございまして、これについては恩給局でなおいろいろと研究をしておるところでございます。一応御参考までにそれだけのことを申し上げておきます。  人員並びに総金額においてはそういうふうになるのでございますが、それならばどうしてその金額がそうなるかといいますと、要綱付表によつて人員に応じ計算しますと、その結果の集計は、大体そのようなことになる見込みでございます。  今申し上げましたのは年金でございますが、一時金たる恩給について申し上げますると、一時金たる恩給は、傷病者に給せられるものとしまして傷病賜金というものがございます。傷病賜金を受ける人員は私のところで年々裁定をいたしておりまする実績に徴しまして、これは年々少くなつて来ることでございますが、一年間三千人ほどを考えなければいけないのではないか、あるいはこの数は多いかとも思いますが、大体三千人と考えています。それから先ほど申し上げたような一時恩給を支給する場合におきまして、その該当人員はどれくらいになるか、こういうことが問題になると思いますが、その該当人員は大体陸海軍の報告によりますと、十七万八千人ぐらい、こういうことになつております。合せまして一時金たる恩給を受ける人の推定人員は十八万一千人、その金額は大体どれくらいになるかと申しますと、推定でございますが、百十七億五千六百万円くらいになる予定であります。以上のことは今度の措置をした場合のことでございますが、その措置をしなかつた場合においては大体どれくらいになるかということが問題になるところでありますが、措置をしなかつた場合におきましては、陸、海軍の報告その他によつて推定いたしますと、普通恩給の受給者は百六十五万四千人。こういう数を大体推定いたしております。先ほど申し上げましたところの十九万五千人は、こんどの建議措置をいたしました場合の数でありますが、この措置をしないと、普通恩給を受ける者の数は百六十五万四千人くらいの数になるのではないかという想像でございます。それから増加恩給を受ける者は、今度の措置では四万五千人に減つておりますが措置をしない場合は大体六万四千人くらいあるのではないかという想像でございます。それから傷病年金、これは先ほど申し上げました機能傷害の程度の傷病者に給せられるものでありますが、これは全部一時金に切りかえられてしまいました。そしてかつて一時金をもらつていた人々に対しては給しないような措置が講ぜられたのでありますが、それをそのまま従来通り年金をやるということになりますと、その該当者は大体七万四千人くらいあるのではないかというふうに推定いたしております。それから公務扶助料受給者の問題でありますが、戦死者の遺族そのほかの公務死亡者の遺族は百四十三万三千三百人でありまして、措置をしたときも、しないときも、これはかわりません。それから普通扶助料につきましては、措置をしないときは人員がふえて参りまして、三十五万五千人くらいになる見込みでございまして、総人員としては三百五十七万九千人、すなわち約三百六十万人くらいの該当者があると思われます。すなわち建議の要綱により措置しますと、人員は百八十万人くらいになるのでございますが、この措置をしないで、昔のままで恩給を給しますと、三百六十万人をくだらない人員になるのではないかというように考えております。今度は金額の点でございますが、金額は結局今の文官と同じような恩給支給水準によつて給するということを考えなければいかないのではないかという観点に立ちまして、一応計算いたしました場合におきましては、一千四百億前後の金にどうしてもならざるを得ないというふうに想像いたしたわけであります。こまごましたことにつきましては、また御質問に応じてお答えすることにいたしまして、一応たいへん大まかではありましたけれども、これで御説明を終ります。
  22. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ちよつと恩給局長希望だけ言つておきたいと思うのですが、問題はものの考え方が非常に大事な問題だと思うのであります。それでおそらくこの審議会におきましても、たえば階級区分をこのままにするか、あるいはもう少しならしたらどうかといつたような問題であるとか、あるいは戦地加算の廃止の問題であるとか、あるいはまたこれを従来の恩給権がほんとうに存続しているので、その権利があるのだから、それに基いた改正案として出しておるのだといつたような、いろいろな物の考え方があると思うのです。従いまして、できるならば、この審議会における審議の過程において、だれがどういう発言をしたかということは、これは御迷惑かもわかりませんから、名前は書かなくていいが、およそどういう意見が出て、それをどうまとめて、どういう趣旨でこれが出たかという議事録の抜萃のようなものを出していただければ非常に参考になると思うのですが、その用意があるかないか、できればそれをやつてもらいたいということを希望として申し上げておきます。
  23. 三橋則雄

    ○三橋(則)政府委員 今そういうような議事録の抜萃をお配りするような用意はいたしておりません。実は審議会が、先ほども申し上げましたように、毎週ほとんど総会と小委員会と一回必ず開くというような状態でございましたし、またそのほかに非公式の会合が毎週開かれるというようなことでございまして、平均いたしますと、毎週一回以上会合を開いておつたような事情でございまして、事務にも非常に追われておつたような実情でありました。従いまして、速記録の整備というようなことも十分できておらないのでございます。そういうようなことでございまして、今橋本委員の仰せられますように、実はそういうものを整備いたしまして、そしてお手元に差上げ得ればいいのでありますが、まだ整備いたしておりませんので、整備して差上げることもちよつとできないのじやないかと思います。ただ今のお話のようなことはたいへん重要なことだと思います。従いまして、私はいろいろな考え方、それからまたいろいろの意見というようなことにつきましては、その都度その都度御質問に応じまして、私がまとめ得るだけのことはまとめまして整理してお答えいたしますことで御了承願えれば非常に仕合せだと思うのでありますが、今急に全部整備してしまうということは、すぐに引受けて間に合えばよいのでありますが、できないように思いますので、その都度くお答えすることで御容赦願えれば非常に仕合せだと思います。決して今の御意見を無にするのではありません。御趣旨のあるところはよくわかりましたから、御趣旨に沿うようにできるだけ努力するつもりでございます。
  24. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいま恩給局長からの御答弁がありましたが、その都度その都度でかんべんしてくれということについては私は了承いたしません。その点が非常に大事でありまして、私が扱いました過程におきましても、たとえば階級区分の問題でありますとか、他の戦争犠牲者との衡平問題でありますとか、あるいはまた文官恩給との比較の問題でありますとか、あるいはまた将来必ずや出て参ります保安隊その他の軍事行動に類似したような危険の場合の将来に対する恩給権との関係といつたような問題は、この問題をやるたびに必ずあいうえおのあの字から始まつていつでも同じような議論がむし返されるといつたような状態であります。この委員会がここまで熱心に毎週審議をされたというのも、おそらくそれだけむずかしい問題であり、常にそれだけの考慮の幅を持ちながら行かないと間違いが起るという問題だつたからであると思うのであります。おそらく主要なる論議の要点はわかるはずでございますし、詳しいものをちようだいしようというわけでは決してありません。ただいまも答申案が出ただけでありまして、この答申案をこなして、政府法律案をお出しになるまでには相当の時日がおかかりのはずなんで、われわれの審議もその法案が出てから始まるわけでありますから、それまでの間に重要なる論点に関する議論としてはどういう見方があつたか、それでこの答申案自身はどういう見方でまとめたか、ないしこの答申案と政府側の持ち出す法律案が趣旨が違うのなら、政府側はこの答申案はどういう理由で採択しなかつたかといつたような審議に関する簡単なメモをぜひちようだいいたしたい。それは恩給局長がその都度その都度御答弁されて、ここであなたはこう言われましたけれども、こういう考え方でありますというようなことを言われるよりも審議の促進に必ず役立つに違いないのであります。従いまして、私はただいまのようなお話でなしに、審議の重要な材料として、法案が出るまでにおまとめを願うように強く要望いたします。
  25. 三橋則雄

    ○三橋(則)政府委員 今のお話は、法案が出るまでに大体議議されたことについてのおもなる点でも簡単に知らしてもらいたいということでありますが、法案が出るまでということでありますと、相当な時日もあることでありますし、御参考になるようなことは極力整備いたしまして、御希望に沿うようにいたします。
  26. 砂田重政

    ○砂田委員 ちよつと簡単なことで――私はまだよく拝見しておらぬのですが、御説明なつた中に戦犯者の恩給のところで、適当の時期においてという言葉がありますが、これはどういう意味なんですか。先刻の御説明でも適当な時期と言われたのですが、戦犯者の大半の軍人は終身刑になつておる人が多い。その人々に対して適当な時期というのは――これは日付を見ますと、十一月ということになつておりますから、講和条約発効後ですし、この裁判は日本の国内の刑事裁判とは違うことは御了承の上でこの条項ができておるのだと思うのですが、この適当の時期という意味がちよつとわからぬのです。これを御説明願いたいと存じます。
  27. 三橋則雄

    ○三橋(則)政府委員 戦犯者の恩給に関して考えます場合におきましては、連合国総司令官によつて有罪の刑に処せられまして、そしてまだ拘禁をされておる人もあるわけでございます。それからまた有罪の刑に処せられたが、すでに拘禁を解かれてしまつておる人もあるわけでございます。それからまた有罪の刑に処せられまして刑死になつた方もありますし、また刑死でなくて獄死された方もあるわけでございます。そういうような方々につきまして、たとい恩給を給するにいたしましても、一律に同時に給するようにするか、あるいはまた拘禁を解かれた人から先に給するようにするか、あるいはまたこういうような問題を考えます場合におきましては、御承知の通りソ連にはまだ相当多数の方が未復員軍人たる身分におきまして自由を拘束されて帰れないでおられるわけでございます。いわゆる戦犯という処置を受けないのでございますけれども、抑留されている方が相当たくさんソ連にはおられるということを考えますと、この問題を考える場合においては、そういうような人々をひつくるめました広い視野に立つて考えなければならない問題ではないかということが、かなり強くいろいろな点から論議されたのでございます。そこでそういうような点を考えますと、この審議会の短期間の審議におきまして、いわゆる戦犯者に対して恩給を給するようにすべしというようなことはなかなか決しかねるような事情であつたのでございます。そこでこの点につきましては、適当な時期に、あるいは今申し上げますように順次恩給を給するようにするか、あるいは一時に恩給を給するようにするか、あるいはまたソ連に抑留されている方方は別として、切り離して恩給を給するようにするか、あるいはそういう方と一連の考え方をもつて恩給を給するようにするかということは、政府においてとくと考えてもらうようにした方がいいのではないかという議論が相当強く出て来たのでございます。そしてその結果としまして、このようになつたわけであります。ざつくばらんに申し上げますと以上のようなわけであります。
  28. 砂田重政

    ○砂田委員 そうすると、要するにひまがなかつたので、この点に対しては適当に政府で考えてくれという意味なんですか。その意味に承つてよろしゆうございますか。
  29. 三橋則雄

    ○三橋(則)政府委員 大体そういうふうにお考えくださつてけつこうだと思います。
  30. 船田中

    船田委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後零時十五分散会