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1953-02-16 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十六日(月曜日)     午後一時三十一分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 今澄  勇君 理事 永井勝次郎君       大倉 三郎君    河合 良成君       首藤 新八君    辻  寛一君       中峠 國夫君    福井  勇君       南  好雄君    高橋 長治君       長谷川四郎君    山口シヅエ君       田中織之進君    木下 重範君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         通商産業技官         (機械試験所         長)      佐々木栄一君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十六日  委員松原喜之次君辞任につき、その補欠として  田中織之進君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  武器等製造法案内閣提出第三一号)  輸出品取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第四五号)     —————————————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず先日に引続きまして武器等製造法案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑通告がありますから順次これを許します。福井勇君。
  3. 福井勇

    福井(勇)委員 昨年十二月二十四日、本法案を提出されて以来、引続き私一人が質問を許され、皆さんに相当御迷惑をかけておるやに存じまするので、当初相当時間をいただくというお許しを得て、引続きまだ完結しておりませんが、他の委員諸賢におかれても相当質問があるようでございまするから、私はその間にはさませていただいて、そうして私のお尋ねを完結させていただきたいと希望いたします。従つて本日は他の質疑通告者もあることでありますので、一部分関連事項質問させていただきたいと存じます。幸いきようは佐々木説明員がここにお見えになつておるのを発見いたしましたので、三時半くらいまでに私の関連事項だけを先にお尋ねしておきたいと思います。  まず兵器武器と称するものの基礎機械工作機械であることはもう喋々を要しません。従つてその基礎機械である工作機械を、今後一体日本でどういうようにするか。日本賠償機械として今までさびつかないように保存しておつたものを、ある程度利用するとか、あるいは戦時中に専用工作機械として当時の軍需省が一生懸命で試作を奨励したような形式をもつて行くか、いろいろ考え方があるのでありまするが、根本的な通産省側の態度を私はお尋ねしたいのであります。一部の論者では、日本工作機械業界を発展させるためには、外国機械輸入防止を特にしてもらわなくてはならない、そうして国内生産を飛躍せしめるために高度の補助政策をとつてつてもらいたい、こういうようなことを私たちにも言つて来ておるのでありますが、この関連事項については、若干この前に質問申し上げ、これも若干の答弁だけを得たのでありますが、通産省では一体これを根本的にどういうふうに考えておられるか。私の考えでは、大蔵省にもつと大きくぶつかつて大きな手を打つてもらいたいと思うのであります。どういう手を打つかということは、私は今ここでお尋ねしたあとに申したいと思いますが、その点を特に、日本工作機械技術に明るい佐々木説明員から率直な意見お尋ねしたいのであります。
  4. 佐々木栄一

    佐々木説明員 今の御質問にお答えいたします。通産省根本方針は、私はその衝にございませんから、いずれ次官なりあるいは局長が申し上げると思うのでありますが、私は技術者として、それから通産省技術研究を担当している人間として技術的な見解だけを申し上げたいと思つております。日本工作機械は、御承知のように外国機械に比べて確かに劣つておるわけであります。人によりますと、十五年くらい劣つておる、こういうことを言う人がありますが、日本機械工業の最大の難点が工作機械にあるということであります。これを何とかして外国並に持つて行かない限り、日本機械工業の育成というものは不可能であります。機械工業の盛んな国、たとえばドイツとかあるいはアメリカ、さらにスイス、そういうような機械工業世界一流の国は、必ず優秀な工作機械を自分の国で生産する力を持つておるわけであります。わが国も戦争中その点にかなり力を入れて、国の力で工作機械工業を育成いたしまして、ある程度の力ができたわけでありますが、終戦後すつかりがたがたになつてしまつて厖大賠償機械をかかえて、結局何らなすところなく今日に至つたわけであります。その間に非常に大きな差が出て来たわけであります。今後どうするかという行政的な問題はさしおきまして、技術的にも何とかして国の工作機械というものを上げて行かなければならないと思つております。その一環として昭和二十八年度の予算に、大蔵省の案として一億万円の工作機械助成というものが盛られておると聞いておりますが、そういうようなことをして日本工作機械をよくして行く。第1われわれが遺憾に思いますのは、工作機械使用者が、日本工作機械に対する信頼を持つていない。それも力以下に考えておる。これではいつまでたつてもだめでありまして、まずわれわれは、機械試験所といたしまして、工作機械その他のことを研究をしておるのでありますが、日本工作機械の持つておるほんとうの力を、ある程度使用者にわかつてもらわなければならぬ。劣つておることは劣つておるわけでありますが、極端にどうにもこうにもならぬというものでなくて、適当な方策をもつてすればどんどんよくなるわけであります。これは官の力だけでなく、一般使用者がそれを認識しなければならぬ。いろいろの助成策は国としておとりになると思うわけでありますが、われわれ研究者としては、まず国の工作機械の持つておる力を一般使用者にわかつてもらう、そうすれば輸入しなくてもいい機械がずいぶんあるのじやないかと思つております。こういう面から進めて行つて日本工作機械をどうしてもよくして行きたいと考えておるわけであります。
  5. 福井勇

    福井(勇)委員  佐々木説明員の御説明を聞きまして、いろいろ日ごろ苦労されておる内容が言外にあふれて、私は非常にうれしく思うのであります。しかし今後通産省機械工業を飛躍させようとするのには、今答えられた中の幾分でも本気になつてつてもらわなければどうしてもだめだということを、私は過去の経験からしみじみ思うのであります。  それでは、本日この席で答えてもらわなくてもよろしゆうございますが、通産省ガリオア資金その他で、機械関係のみならず、すべてのエンジニアが、昭和二十一年以後今日に至るまでどういうふうに海外に派遣されてどういうふうな研究をして来たかということを、一応リストをもつて説明してもらいたいと思います。なお事務関係系統の人も、こういう機械関係並びに化学工業関係関連してどういうふうに思考されたかという点を、次会あるいはその次でもよろしゆうございますから、やはりあわせてリストでここに提示してもらいたいと思います。私の目途とするところは、すでにみな承知しておりまする通り、再軍備問題ということは別としても、戦時中かの陸軍海軍臨時軍事費という中から厖大な費用をとつて、そうして陸軍陸軍海軍海軍、またそれぞれ両軍のうちでもなおたくさんセクシヨンをわけてそうして兵器武器関係はもちろん、それに関連する科学研究相当しておつた。その当時から見るというと、現在の研究状況というものは、大蔵省の現われた予算だけであつて、まことに私は寒心にたえないと思う。そこでどうしても、イギリスで言えばアームストロングでもヴイツカースでもいいし、あるいはアメリカ方面が特に関連が深いから、ゼネラル・エレクトリツクでも、ウエステイング・ハウスでもいいからそういう方面、あるいは関連がとれるならばチエコ方面でもいいし——チエコはちよつとむずかしいかもしれませんが、あるいはフランスにしても、ドイツ方面にしても、早く関連をつけて、武器生産に関する基礎的、科学的調査に本気になつてとつ着手してもらいたいと思うのであります。なおこれらの関連事項について、私は技術的のリストをつくつて質問をしたいと思いまするが、本日は委員長とも相談しまして、他の委員からも発言があるのをあまり長く阻害してはどうかと思いまして私は本日はこれだけにとどめておくことにいたします。
  6. 坪川信三

    坪川委員長 他に御質疑はありませんか。——それでは福井君。
  7. 福井勇

    福井(勇)委員 他の委員諸賢には御用意も今のところないようでございますので、お許しを得ましてもう少し関連事項質問したいと存じます。  銃砲刀剣類等所持取締令と本法案との関連はどういうふうになるか、この点をお尋ねいたします。
  8. 葦沢大義

    葦沢政府委員 銃砲刀剣類等所持取締令の方は、所持につきましてのみの規定をいたしておるわけでありましてこれらの生産については何らの規定を設けていないのでありますが、本法はこういう武器関係生産につきましての規定をいたしておるのでありまして、所持につきましては所持取締令にゆだねておるわけであります。従いまして、目的といたしますところが、生産所持とおのおのわかれて規定が行われているということになる次第でございます。
  9. 福井勇

    福井(勇)委員 それでは日本刀武器ではないのかどうか。日本刀製造に関する法律上の取扱いは今後どうなるか、この点の御説明を願いたい。
  10. 葦沢大義

    葦沢政府委員 日本刀は、従来のポツ勅命令におきましては、これもやはり武器という従来の範疇に入れまして禁止をし、またはこれを許可制度にしておつたのでありまするが、本法武器製造法におきましては、刀剣武器範疇から除きまして、むしろこれはもつぱら所持取締令範囲内にとどめて行こうという考え方をしている次第であります。
  11. 福井勇

    福井(勇)委員 本法案の中の猟銃等の中に射的銃が含まれていないが、射的銃製造及び所持に関する法律上の取扱いはこれとどういうふうに分類しておるか。
  12. 葦沢大義

    葦沢政府委員 射的銃につきましては、公共の安全というような目的の見地からいいましても、これはらち外になりますので本法適用範囲外にいたしておるわけでございまして、従いまして所持取締令において取締られるということになるわけでございます。
  13. 福井勇

    福井(勇)委員 旧兵器航空機等生産制限に関する件は、救命索発射銃及び捕鯨用標識銃についても製造販売事業許可制をしいておつたものでありますが、本法案がこれらを猟銃等から除外しているのは一体どういう理由であるか。
  14. 葦沢大義

    葦沢政府委員 ただいま御指摘のような産業用のものは、本来殺傷の用に供するというようなものではございませんので、従つてその威力が弱いばかりでなく、また需要の量や範囲相当限られておりまするので、本法目的といたしておりまする公共の安全を確保いたす意味におきましては、所持取締令による規制をもつて十分と考えられますので、本法案規制対象として、事業許可制をしく必要は認められないという考え方をとつておるわけでございます。
  15. 福井勇

    福井(勇)委員 次に本法案と旧兵器航空機等生産制限に関する件との関係はどうなつておるか。
  16. 小平久雄

    小平政府委員 旧兵器航空機等生産制限に関する件は、御承知のようにポツ勅でありましたが、昨年の十月二十四日であつたと思いますが、それをもつて有効期限が切れました。従いまして、それにかわる何らかの法規制が必要でありましたので、当局におきましては、その準備を急いでおつたのでありまするが、またまた国会の解散等もありまして、その後無法律と申しますか、旧兵器航空機等生産制限に関する件にかわる法律が、今日までできないままにおつたという状況でございます。
  17. 福井勇

    福井(勇)委員 これは秘密に属する問題かもしれませんが、現在武器兵器生産能力はどのくらいあるかということ、及び武器生産見通しというような問題——秘密会を欲せられるなら、秘密会のときにやつてもらつてもよろしゆうございますが、傍聴者のある所でもさしつかえない程度においてお答え願いたい。現在の武器生産能力はどの程度日本にあるか。またさしつかえなければ現在の見通しはどうか。若干この前と重複する点がありますが、重複した点は省略してもらいまして……。
  18. 葦沢大義

    葦沢政府委員 武器生産能力についてのお尋ねでございますが、現在武器といたしまして生産をする可能性のあるものは——これはもちろん経済現象でありまして、発注がございませんとできないのでありますが、先般御説明を申し上げましたように、これらの武器の中で銃砲弾につきましての発注は、現在までのところ約二千万ドルございます。これは駐留軍からの発注でありますが、この二千万ドルの発注について生産をいたしたような状況でございます。ただこれらのものをさらに今後どの程度つくれるかという問題は、今後の発注状況がどうなるかという見通し関連をいたして参るわけであります。と申しますのは、これらのものを生産いたしますには専用機械を必要とするのであります。従来こういう専用機械相当保持をしておつたのでありますが、御承知のように敗戦によつてこれらの機械は全部破壊をせられております。今後こういう機械をどの程度備えることができるかということにかかつて来るわけでありまして、相当設備資金を要すると思います。従いまして相当設備資金を投入します見通しは、発注がどの程度あるかということにかかつて来るのでありまして、今後の見通しは非常にむずかしいのではありますが、現在われわれの考えるところ、あるいは駐留軍等の話の上から、一応さらに五千万ドル程度のものは発注があるだろうという考え方をいたしておりますが、もちろんアメリカ会計年度によります七月以降の事態については、具体的にどうなるかということは予測をにわかにしがたい状況ではありますが、一応の近い見込みとしては、そういつた考えをもちまして、それに要する所要資金所要設備というものにつきましては、政府といたしましても金融その他の援助を場合によつてはいたして行こう、こういう考え方をいたしている次第であります。
  19. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 ちよつとおかしい話合いになつて来たように感じますが、そうすると、今までもうすでに製造している面もあるのですが、その面はどの法律によつて生産をさせられるということになりましようか。今つくつているものはどういうことから許可になつているのですか。
  20. 小平久雄

    小平政府委員 先ほども申し上げましたが、昨年の十月二十四日までポツ勅が有効でありまして、従いまして現在生産をいたしておりますのは、大部分がそのポツ勅によつて許可されたものであります。このポツ勅が失効いたしました後におきましては、その面に関しては無法律状態になつておりますので、これは政府の行政的な指導によつてつておるわけであります。
  21. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そうなつて来ると、これと関連して来るのですけれども、銃砲刀剣類等所持取締令に今までやつてつたことが抵触することになつて来るんだが、それにたとえば今度は火薬を使うんだということになると、火薬の方ともおのずから抵触して来ることになるのだけれども、これらはどういう解釈に立つておやりになつておるのでありますか。
  22. 葦沢大義

    葦沢政府委員 現在は、ただいま政務次官からも御説明のありましたように、法律が何らない状態でありますので、所持のみについての規定になりますが、この点につきましては、取締令を担当いたしております国警と密接な連絡をいたしまして、弊害のないように行政措置をいたしておる次第であります。
  23. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そこが非常におもしろいので、これで行くと何も持つことができないものが、生産されて陳列されてある、工場にあるということになると、すでにこれに抵触しているわけです。ですから今までは無法律であつたということであつたけれども、無法律ではないので、法律所持してはならないということになれば、生産することも、生産したものを陳列することも、工場に置くことも第一できないことになるんだが、そういう点について非常に疑問が出て来るわけです。これは別に追究するという意味ではないけれども、そういう面が今日までずつと続いていたわけです。そこで今度火薬の問題になつてみますと、たとえばその所持法がそれでいいということになつて来ると、今度は火薬類取締法になつて来るが、火薬類取締りの方は別に各工場はこれを受けなければなりませんか。
  24. 葦沢大義

    葦沢政府委員 火薬につきましては、本法と別個に火薬類取締法によつて適用を受けるわけでする
  25. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そうすると結局その指定された工場は、取締法によつてすべて取締りを受けなければならぬ、こういうことになるわけですね。
  26. 葦沢大義

    葦沢政府委員 火薬の点につきましては、現在も火薬類取締法によつて一応受けておりますし、また本法が施行になりましても、火薬類取締法適用につきましては、従来通りかわらないわけです。
  27. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 もうすでにそういうふうになつて武器製造を無法律のまま行つているのだから、ざつくばらんに早く話をきめて、一日も早くこれを成立させたい、そう行つたらどうですか。時間をとつて新しく審議する価値もないと思います。
  28. 小平久雄

    小平政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、実は本法はもうポツ勅が失効する以前に提案を申し上げ、御可決を願いたかつたのでございますが、解散等の事情のために遅れていまして、この点は御指摘のように非常に遺憾な状態にあるわけであります。従いまして当局といたしましても、一日も早く成立することを希望いたしておるわけであります。
  29. 福井勇

    福井(勇)委員 本法案に最も私たちが関心を持つておるものは、武器製造について今後業者たちがどのくらいの資金を必要とするかということが経済界に及ぼす影響も大きいので、尋ねたいと思つてつたのでありますが、現在の発注状況に応じての設備を整備するのにどの程度資金がいるか、こういうことであります。
  30. 小平久雄

    小平政府委員 今後の資金需要というものは、結局先ほど局長からお答え申しました通り、今後の発注いかん、しかも現在のところにおきましてはほとんど駐留軍発注にかかつておるわけでありますので、なかなか確たる見通しも困難でありますが、大体におきまして十億以内程度ではなかろうかというふうに、一応の目安と申しますか、想像をいたしておるようなわけであります。
  31. 福井勇

    福井(勇)委員 この点は私はどうも零が二つくらい違うのではないかと予想しております。従つてこれは研究事項として要望しておくことにいたします。  次に、約十日くらい前に、どの委員会つたか忘れましたが、日本武器関連しておりますので、私はこの席をかりて質問をいたしますが、木村国務大臣は、練習機くらいは日本でつくろうと思うというような意味発言をしております。練習機くらいというのは一体どういうものであるかというと、このごろだつた練習機と申しましても、ジエツト機もあるしあるいはプロペラ・エンジンもありますし、いろいろありますが、そうかといつていまさら五十年前の練習機のモーリス、フアルマン式のような、いわゆる昔赤とんぼと言つたようなものを練習機として使うわけにも行きますまい。それで、この製造日本でしたらいいというように言つておりますが、それでは練習機をつくるということについて、技術的に設備的にこれができるかどうか。佐々木説明員は何と解釈されておりますか。
  32. 佐々木栄一

    佐々木説明員 私は航空専門家でありませんから、はつきりしたことはわからないのでありますが、いろいろ航空関係の人の会合なんかの話を聞いておりますと、日本ジエツト・エンジンは現在それだけの研究もしておりませんし、力もないことははつきりしております。ただフランスがやつたように——フランスはたしか英国のロールス・ロイスのライセンスを買つてつたのであります。製作権買つて、そして向うの技術指導を受ければ、練習機でもある程度ジエツト練習機くらいはつくれるかもしれないのでありますが、全然独力ではとてもジエツト練習機は当分の間つくれないだろうと思つております。しかし私はその方の専門家でないから、あるいはもつと専門家意見は違つて来るかもしれない。さよう御承知願います。
  33. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そうすると、ただいま福井さんの言つた資本の方にも関連して来るのだけれども、第五条第一項第三号の「その許可をすることによつて当該武器製造能力が著しく過大にならないこと。」という、この解釈をひとつ説明願いたい。
  34. 小平久雄

    小平政府委員 お尋ねの点につきましては、大体二つの面から考えられるのではないかと思います。武器製造事業全体として、日本産業構造上あまり大きくならないようにという面と、それからそれぞれの製造部門のうちにおきましてあまり過大にならないようにという、こういつた二つの面から考えて行かなければならぬと思つております。ただ具体的にそれがしからばどの程度かということは、これは日本産業全体の推移とにらみ合せ、また先ほど申しましたが、駐留軍発注状況等ともにらみ合さなければなりませんので、具体的に幾ばくということを申し上げることは困難かと存じます。
  35. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 大体武器製造国内の自衛という面にのみとらわれておらないので、受注という面が大きく取上げられて論議されて来ております。従つて生産能率という点になつて、要するにコストという問題になつて行く場合に、はたしてここに第三号にあるがごとき考え方をもつて受注という面、要は極東全般に向つて日本兵器廠となろうという考え方があるかないかは別問題としてかくのごとき考えでやつたのでは、今でさえコスト云々が高く唱えられておる。前回の委員会において、通商という面についてかなり大きく取上げられて来ておる。肥料なんかにおいてもしかりだと思う。国内に百五十万トンあればたくさんだというのに、どうしても二百万トンつくる、二百五十万トンつくるということは、結論としてコストを引下げるために、国内の需給のためにも一段と安値をもつて販売しなければならぬというのが目的である。しかるにこの法律を見ると、それとまつたく逆行しておるように考え合される。これに対して政府みずからが、なるべくコストを高くするという考えはないだろうと思うが、何か一面おびえておる面があるのではなかろうかというような疑問を持つのですが、もつとはつきりした御答弁をひとつ願いたい。
  36. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘のように、今回御審議願つております法案におきましては、政府としましては積極的に武器生産を奨励もしくは助成いたして行こうという考えには立つておらないのであります。この第一条の目的にもうたつてある通りでありまして、現実に即しましてやつて参りたい。特に御承知のようにただいまもお話がありましたが、いわゆる出血受注というようなことも話題に上つております。こういうことが続きますならば、むしろ共倒れというような事態すら想像されますので、その間に、そのときどきに応じました適正なる規模の武器製造事業というものを確立して参りたい、そういつた考えでおるわけであります。
  37. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 河合先生も来ておるので、はたしてこれが御納得が行くか行かないかは、政府与党河合先生だからよくおわかりと思いますが、しかしこれだけの法律をつくつて製造するのだという、はつきりした政府の意思も現われ、国の方針が決定され、産業構造の一角としてはつきりと現われている以上、何ゆえに政府はこのようなものをあえてごまかし的に出さなければならないのかといえば、次官答弁によると、限度というものははつきり置いてないのだという。限度が置いてないで、大きくなることは過大にならないようにやるのだというと、その限度の尺度がなくて、あまり漠然とし過ぎてはいないか。もつと責任ある法案をつくらなければならないのではないかというように私は言いたくなるのです。ですから、いずれにしても、一つのこういう法律をつくる上において、将来を考えるときに必要であるかないか——そのとき必要でなくなつたならばこれを是正すればいいのだというお考えもあるかもしれないけれども、やるならもつと本腰を入れてやり、産業構造の一角を必ずこれでもつて行くのだという自信のある法案でなければならないという考え方を持ちますが、次官が対外的にも国内的にもなるべくうまくのがれて行こうというのには、こんな程度でいいのかもしれないが、われわれはそれでは納得ができません。あとは福井さんの方から……。
  38. 福井勇

    福井(勇)委員 武器製造関連事項なので、私は航空機の製造に言及しておるのでありますが、日本機械試験所長である佐々木説明員航空発動機の専門家でないと逃げられたら、これはたいへんなことでありまして、戦時中、航空発動機の第一人者として専用工作機械をつくられた佐々木説明員のもう少しつつ込んだ見解を私は聞きたいのであります。それはしろうとは、とにかく練習機くらいはつくりたいといわれますが、今の航空機で、練習機なら千分の三ミリの誤差があつてもよい、戦闘機のF八六であれば千分の一ミリは許容されるというような状況ではないのであります。そういうような場合に、えてして事務屋の大臣たち練習機ならすぐあしたでもできるだろう、こう思つて責任ある大事な国会の委員会答弁しているのでありますが、今の私たち考えでは、ジエツトであろうとあるいはムスタングの戦闘機であろうと、私たちはその製造技術においては千分の一ミリを争う点においては少しもかわりないと思うし、特に電波兵器などが付属する現在になりましては、練習機をつくるのは簡単にできるというような考えを払拭してもらわなければならぬ。従つて今つくろうとするのには、どういうような用意をして行つたらいいかというようなことを、ひとつ佐々木説明員から丁寧に説明していただきたい、これは別に政府方針と違つても、技術的の見解の表明だから、決して遠慮せずにやつてもらわぬと、本委員会の権威にかかわると思います。
  39. 佐々木栄一

    佐々木説明員 練習機をつくることはどうかということでございますが、これは三菱の計画でありますが、プロペラ・エンジンの航空機、ノース・アメリカンのT二八というもの、これは来年の三月までに百ないし二百できる。これに対して大体設備資金は四億以下でよろしい、こういうことになつておるそうであります。もちろんこれはある程度経済的な考え方を度外視したものでないかと思うのでありますが、ほんとうにやるとすれば、これに必要なる工作機械というものは、現在のものは非常に旧式でありますから、とりかえなければならぬが、ある程度のことはこれでできる、こういうふうに解釈しております。
  40. 福井勇

    福井(勇)委員 そういう程度のことでは今後の日本武器、特に航空機に対する製造などは私はできぬと思う。それでできるともし通産省思つておれば大間違いでありまして、今後は日本の軍備をするしないにかかわらず、りつぱな航空機をどんどんつくるようになれば、東南アジアでも日本航空機あるいはエンジンが出て行くということもあり得るのでありまして、またそうしなければならぬ。現在アメリカが高々度の飛行機としては、B三六まで飛躍しておりますけれども、あの通りイギリスがジエツト機をもつて飛躍したのは、イギリスがとにかくアメリカを引離した証拠だ。今日デ・ハヴイランドあたりが二十七時間で従来飛んで来たのが、今度の試験飛行ではおそらく二十二、三時間に短縮される。これらはいずれもジエツト・エンジンの飛躍的な進歩によるものでありますが、そういう商業航空機という問題は、もちろん戦争用のものと不即不離でありまして、これは歯にきぬ着せずして言えば、商業航空機によるものも戦闘機によるものも、何らかわからぬのでありまして朝鮮戦線に出ているところのミグ一〇、一五、F八六、八四、八〇、これらのものは、ほとんど最新式のものでありますけれども、私たちは終戦前三菱や中島でジエツトをすでに着手した一つの事実を知つておりますから、当時の航空発動機の専用工作機械などをよく調べて、外国のものとも比較して機械試験所の責任において、ひとつ平和の面に使う飛行機として名前をとつてもよろしい、大いに厖大予算をとつてもよろしい。イギリスで、アメリカで、フランスでエンジンを買わなければならぬというようなことをひとつ早く脱却してもらいたい、こう思うのであります。私の質問はなお残つておりますが、本日はこれぐらいで打切ります。
  41. 坪川信三

    坪川委員長 南好雄君。
  42. 南好雄

    ○南委員 私は、先ほどから長谷川君、福井君あたりが質問をしておりましたことについて、少し掘り下げてお伺いしたいと思うのであります。この武器製造事業法案関係しているかどうかは、はつきり申し上げることはできぬかもしれませんが、最近しばしば新聞に出、けさも出ておりましたが、佐世保船舶工業とかいう会社が新々特需とか新特需とかいうものについて出血受注したといつて業界で非常に問題になつているというお話を聞いている。また大分前のことでありましたが、日立航空機が、富士ではとてもやつて行けないので富士を引受けるというような新聞の報道も見たことがあるのであります。先ほど小平君からもちよつとそれに触れた御答弁もあつたように承りましたが、一体こういうような日本の工業をアメリカその他の連合国に役立たせる上において、日本工業がよつてつて立つことのできないような出血受注をしなければならぬような現実の実情があるのか。またあつた政府としてはこれを交渉によつて、そういうことのないように持つて行くような処置を今までなさつているのか、その間のことについて、これは新聞紙の報道でありまして、単なるうわさにとどまるかもしれません、また事実かもしれません、その辺のことを政府とし明確にひとつわれわれに知らしていただきたい、こう思うのであります。
  43. 小平久雄

    小平政府委員 南委員の御指摘通り、いわゆる出血受注ということがほとんど定例的に行われておるということになりますと、非常にこれは遺憾なことだと思うのであります。ただ実際問題として新聞紙上に伝えられるような出血受注がはたして行われておるのかどうかということは、それぞれの会社によりまして、あるいは事業場によりまして、なかなか明確を欠いおるのであります。しかしながらただいま申します通り、現実の問題としてそういうことがあつては困る、そういうおそれがありますならば、極力それを排除いたして行かなければならぬ、そういう考え方といたしまして、政府としましては適格のメーカーと申しますか、それぞれの発注に最も適したと思われるメーカーの推薦制というようなものを最近始めました。それらの方々につきまして入札を行う、こういつた方向にあるわけでありまして、極力この出血受注ということは排除いたして参りたい。今回これを御提案申し上げましたのも、やはりそういう点が非常に重要視されておるわけであります。
  44. 南好雄

    ○南委員 おそらくそういうお返事であろうかと存じました。武器等製造法案について、先ほど長谷川委員からも、自分が言いたいところを御質問つたように思うのでありますが、日本の今の鉄鋼価格で、最近のように労務攻勢も非常に強い際において、アメリカあたりの予定価格よりも二割も三割も下まわつた価格でもつて現実引受けられて行くというようなことは、これは結局関連産業に対するしわ寄せがありまして、日本工業にとつても好ましからぬ状態でなかろうかと思う。しかし相手方のあることであり、御承知通り、公正なる競争ということを非常にやかましく言う国柄であるのでありますが、そこは日本人の性質とアメリカと違うのであります。アメリカなどは、結局もうからなければやらぬというのが一つの国民性でありますが、日本などは、注文の方法によつては、どうも非常にけんかしやすい国民性である。それで最近——こういうことも事実であるかどうか知りませんが、準備注文というようなことで、いい物を安く納めて行くならば、将来はこの実績主義によつて行くというようなこともちらほら向うが言うというような、無理に負けさせるような注文の方法をされる従来のくせがついておつて、これに対して政府は何らあつせんもせず、また業者も先を楽しんでやつて行くということになつて参りますると、勢いのおもむくところ、いわゆる関連産業まで出血するというようなことになつて来るのであります。伺つておりますと、米国に対する協力委員会政府部内にできておるようであります。そういうところにでも取上げまして、ほんとうに日本産業が一方的でなく対等に、五十と五十の立場において、そうして先を楽しみ得るような注文を受けて行つて、しかも業者間に深刻な競争を起さぬような受注の方法が一体ないものであろうか。もしないものであるとするならば、ここでせつかく武器等製造法案を可決いたしましても、これは日本法律であつてアメリカを何ら拘束するものでないのでありまするから、先ほど長谷川委員の言われたように、また深刻な内地の注文とアメリカの注文との競合、いろいろの点で深刻な場面が出て来るということも考えられるのでありまして、今が何よりこの法案がうまく行くか行かぬかの一つのテストでなかろうかと思うのでありますが、今まで政府は業者の競争にまかせて、連合国の発注に対しては外貨獲得という見地だけで放任して来られたものか、もつとつつ込んで価格の点までも掘り下げて研究なさつていられるものか。最近新聞紙上でそういうことが非常に問題になつておりますので、ひとつどなたでもけつこうですからほんとうのことを教えていただいて、そして日本産業、ことにこういう方面が今まで非常に苦しんでおりましたその苦しみを、これが普通の状態だというて放任しておくようでは、せつかくこういう法律をつくりましても何ら工業の発達にもなりませんし、ひいては国民経済の健全な発達にもならぬ、こういうふうに考えるのであります。今までの政府の処置と将来の見通しということを、次官からでも局長からでもけつこうでありますから、もう一ぺんはつきりお伺いしたいと思います。
  45. 小平久雄

    小平政府委員 従来のことにつきましては先ほど大体申し上げた通りでありますが、なお詳しいことにつきましては局長からも御答弁させたいと思います。ただいまお話のようなことは、当局としましても非常に心配いたしておる点でありまして、これらを何とかして排除いたして参りたい、こういう気持からして、今回御提案申し上げましたこの法律案におきましても、第十五条には契約の届出制というような制度を設けまして、それが不適当な場合には政府から戒告もできるといつた道をここに法的に開こう。これもやはりただいま御心配の点を排除いたして行く一つの根拠をここにつくつておく、こういう趣旨でやつておるわけであります。もし本法が御承認をいただけましたならば、この十五条の運用等によりまして、従来の弊害が相当除けるのではないかというふうに期待をいたしておるわけであります。
  46. 葦沢大義

    葦沢政府委員 南さんの御指摘になりました点につきましては、政務次官から御答弁がありました通りでありますが、なお従来の状況について若干申し上げます。なぜいわゆる出血受注が行われるかということでございますが、駐留軍側の契約担当者がいたずらに価格の低減をはかつて強要して来るという点にもあると私は思います。またこれに応じまして、当該発注品につきましては一応出血的な値段ではありますが、それのみを製造しておらないで、ほかのものを生産しておりますものにつきましては、その方の利益をさいても一応この注文をとつておくならば将来さらに受注の機会もあり、有益だろうというような、当方側における業界の事情等によつて、やはり相互にからみ合いまして出血的な傾向になつてつたのじやないかと思いますが、南さんの御指摘のように、当方の業界にとつても非常に重要なことであるとともに、また駐留軍側におきましても、いたずらに安いものをとることは結局品質の悪いものを受取らざるを得ないというような状況にも相なりますので、駐留軍側の中におきましても、相当議論のあるところだと私は聞いております。と申しますのは、やはり値段は適正な値段でとることが、結局良質のものを納期を厳重に守つてもらつて安定して調達できることだ。むしろいたずらに売りたたくのみが、駐留軍側としても目的とするところではないというような意向を持つておる方も相当あるようであります。従いましてこういつたような動きから、今後こういう法案の成立と相まちまして、そこにおのずから一定した点が出て参り、皆さんの御指摘になりましたような憂慮というものは、私どもは解決の方向に向くのじやないかというような考え方をいたしておるわけであります。
  47. 南好雄

    ○南委員 大体政府もそういう点に気がついて今後そういうことをなくするためにこういう法律もつくつて行くのだ、またこういう法律の運用によつて日本の工業の基盤を大きく障害しないのだということでありますならば、しいて深くは掘り下げて御質問申し上げませんけれども、私はまだやり方があると思う。なぜかと申しますと、初め向うが出て来て、日本の業界の事情をよく知らなんだときには、通商産業省でない、当時の商工省に特別の部をこしらえて、そうしてその部のあつせんによつてけつこう業者も助かつて、しかもある程度納期も遅れずに、済んでおつた事実があるのであります。だんだん日本の事情に明るくなつて来て、とは申しますものの、われわれが知つているように向うの人が知ることはなかなか困難であります。また向うの制度が点とり主義なものでありますから、ややもするとイージイ・ゴーイングな方法で、公正妥当に名をかりて業者を功みに競争さして行くということにもなりがちでありまして、これは政府部内にあります対米協力委員会ですか、そういうものに持ち出して——今の日本の鉄鋼価格や労働賃金から考えますと、そんなにやたらに安いものはできるわけはないのでありまして、どこかしわを寄せられて人知れず泣いている者があるのでありますから、そういうことのないように、アメリカを納得させ、あなた方が、やはり上手に按配して、各社の能力に応じてあつせんするということも、政府の一つの対米協力だと私は思う。できることならば、今後ああいうことがしばしば大きく新聞のトツプに載らぬように、もう少し業者も助かるようなあつせんの方法を講じていただかなければ、せつかくこんな法律をつくつていただいても、今度は内需と外需で妙なことになつて来るということになりますので、この法案の審議につきましても、そういう点をよく御留意の上に、万全の措置を講ぜられんことを特に希望して、私の質問を終る次第であります。     —————————————
  48. 坪川信三

    坪川委員長 次に輸出品取締法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑通告がありますから、順次これを許します。山口シヅエ君。
  49. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 大臣はまことにお忙がしい時間を恐縮に存じますが、私の質問、と申しますよりも、むしろ御要請申し上げます点が多いことと存じますが、この私の要望に対しまして、ぜひとも大臣の御所見をお伺い申し上げたいと存じます。  質問の点は四点でございます。第一点は、輸出品取締法を改正する法律案に関する質問でございますが、あとの三点は貿易に関する質問になるのでございます。たいへんお忙がしいお時間とお伺いいたしますので、このお伺い申し上げますことに対して簡単に御答弁いただければ、具体的な点は後日ぜひとももう一度お時間をいただきましてお答えを願いたいと存じます。  それではまず輸出品取締法を改正する法律案に関する質問を申し上げます。本法案は爾来再度の改正を見ましたが、さらにわが国の貿易情勢に合致いたしますように改正がなされたと推測するものでございます。その原因は、一つ一つ申し上げますと多岐にわたることでございますが、結論といたしましては、現在の粗悪品の輸出を防止し、日本品の海外における声価を高め、もつて海外貿易を増強するために、その対策の一つとして今回の改正案を見たものと考えるのでございます。従いましてこれが改正の必要を認めるものでございますが、この機会に輸出品の検査に先だちまして、輸出品に対する指導が最も重要なことであると私は考えるのでございます。最近の輸出品の生産内容を見ますと、中小企業者の手によつてつくられるものが非常に多いのでございます。しかるに御承知のように中小企業者の事業内容はきわめて貧弱でございます。しかも技術設備、金融等の面からも不利な立場にありながら、生産に貢献し、あるいは大企業の下請としてすばらしい成果を上げているというような現状でございます。このような実情にもかかわらず、これを軽視するがごとき態度は実に遺憾のきわみとするところでございます。これは輸入に始まつたわが国の産業政策が、過去七、八十年間欧米の模倣政策に汲々たるもので、従来の政策は文字通り近代工業の育成のみに全力を注ぎ、こういう中小企業の育成に対しましてはきわめて冷淡にかつ圧迫すらも加えて、その正常な発達を妨げて来たように考えられるのでございますが、今日におきましては、基礎産業を除いた他のあらゆる企業体が中小企業を無視しては独立した存在が危ぶまれるような結果になると私は考えるのでございます。元来、日本のごとく領土の狭くてまた物的資源の貧弱な国におきまして、大企業偏重主義の形態は国情に沿わざるもはなはだしい政策でございまして、その根幹を中小企業の上に置きまして、人的資源の活用により初めて正常な発達が期し得られるのであると私は考えます。従つて日本経済の発展と貿易伸張の点から、この中小企業に対しまして国家の指導機関による技術指導設備の向上並びに資金の援助等の措置をとることが中小企業の育成に努める意味で、急務であると私は考えるのでございます。これによりまして貿易振興もはかられるのではないかという私は考えを持つておるのでございます。政府はこの点につきましていかなる態度をお持ちでございましようか、大臣にお伺いいたしたいと存じます。
  50. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 山口さんの仰せの点はまことにごもつともでございまして、政府といたしましては、形に現れたものといたしましては、御承知のごとくに中小企業協同組合にわずかながら共同施設の補助をいたすとか、あるいは企業の診断をいたし、その診断に基いて指導をいたしまするとか、あるいは今度お出しいたしました中小企業金融公庫によりまして、長期の設備資金も御供給申し上げるとか、そういつたようなことによつて機械設備の近代化をはかつていただく、こういうようなことをやつておりまするが、いずれにいたしましても決して十分とは申されません。けれどもこういつた事柄は今後とももう少しこれを積極的に進めて、仰せになりましたような中小企業の日本経済界に占める地位にかんがみまして、これを十分に育成強化して参りたいと考え、特に貿易面におきましては、なかんずく関西方面におきましては一層その重要度が加わつておる現状等にかんがみまして、こういつたことに政府もあらゆる施策を進めて参りたいと考えております。
  51. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 ただいまの御答弁を了といたします。  次に貿易のことにつきまして三点お伺いいたしたいと存じます。最初に通商航海条約につきましてお伺いを申し上げたいと思います。わが国は平和条約によりまして、政治的には多くの国々と国交を再開いたしておりますが、経済的にはまだほんとうに友好関係を回復しておりません。入国、滞在、事業活動の範囲、投資活動、為替管理、関税、輸入制限及び海運等の対外通商の基礎となるべき事項のとりきめに関する通商航海条約につきましては、今日までいまだに一国とも締結せられていないのでございます。まあ二重課税を避けるための関税協定もいまだに完結されていないのでございます。この結果競争国に比較しまして、わが国の輸出入が非常に不利な条件をしのばなければならないはめに陥つていることは、日本貿易の振興上最大の損害であると私は考えるものでございます。これに関しまして大臣のお考えをお伺いしたいと存じます。
  52. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 山口さんの仰せのごとくに、現状その点がまことに遺憾でございまするところから、政府の輸出貿易に関する最初の対策といたしまして、いわゆる経済外交の強化ということをあげ、まず最初に日米通商航海条約の締結の促進をはかつてつているのでありますが、これももうほとんど妥結のところへ近づいておりますけれども、たとえば外資導入等により、古くから入つている、そして日本で利益を上げているその金の処理方等についての問題がまだ一、二点残つておりまして、これも近く妥結することと思いますが、これができますると、遠からずほかもこれがモデル・ケースとなつて各国との通商航海条約も締結されることと確信いたしております。その他の国々とも内交渉はもう進められつつあるのであります。日英支払協定は昨年暮れに一箇年延期いたしてございますが、この春以来約十日間以上にわたりまして交渉を進めておりまして、目下ある程度改善方に進みつつあります。  それから一番大きい問題、今山口さんの仰せられた関税関係のいわゆるガツトヘの加入の問題であります。これも個々の国々とはそれぞれ話がついている分があるのでありますが、全体の分としてはまだ話合いがついておりません。そこでおそらく正式加入はこの夏あるいは九月ごろにでもなるのじやないかというような見通し等もありますので、これも何とか一般の加入が遅れれば、個々の国々とでも早く話をつけたいものだと思つて、外務省の方へそれぞれ頼んでいるような次第であります。輸入制限の緩和方につきましては、スターリング地域については特にこの点を話合つているのでありますが、まあこれもオープン・アカウント地域のうちどちらでもというような分について、たとえば向うではスターリングで支払うことを要求したようなものもあり、日本ではドルの支払いを要求したようなものもありまして目下交渉中でありますが、これもまあ相互に歩み寄つて、ある程度話がつくのではないかと思われます。独立後かれこれ八箇月にもなるのですから、もう経済外交というものが相当実を結んでいい時期になつてつているのではないかと思われまして、せつかく外務当局に配慮方をお願いいたしている次第でございます。
  53. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 よくわかりました。ありがとうございました。  次に通商協定締結の問題について少々お伺いいたしたいと存じます。最近二、三の国と通商協定の締結が具体化したようでございますが、さらに改正の時期に達している国や、新協定を必要とする国は相当に残つているようでございます。これらの国々とすみやかに通商協定を更新または締結し、各国がとりつつある貿易制限や為替管理を極力緩和せしめて、相互に貿易量の拡大をはかることが現下貿易振興の要諦であることは言をまたないところでございます。かかる立場から通商協定のすみやかなる完備を希望いたしますとともに、今日までに締結いたしました協定は、協定後不利不便な新事実を発見して、狼狽しがちなことが間々あつたのでございます。かかる現在の弊風を払拭することに対しまして、努力していただきたいと考えているものでございますが、このために協定前において十分基礎調査をすることが何より肝要でございます。特に申し上げたいことは、今後有望である相手国として、西欧諸国とのせり合いが問題となり得ると思うのであります。インドネシア、ブラジル、アルゼンチン等の諸国に重点を置かれますと同時に、戦前日本商品の相当大きな市場でございましたところのトルコ、シリア、レバノン、イラン、イラク等の中近東諸国の重要性を十分認識し、市場の開拓のためにも積極的な助成案をお伺いいたしたいと思います。
  54. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今御指摘の国々はいずれも大切な国々でありまして、今後怠らずやるつもりでございますが、ちよつと国の数だけを御参考に申し上げてみたいと思いますが、今オープン・アカウント方式でドル建の支払い協定に含まれる国が、現在まとまつている部分を申し上げますと、十三ございます。それから米ドル、現金による支払い方式をとつている国が五つございます。それからポンド、スターリング現金決済の方式をとつているものが三つございます。このうち貿易協定を有するものが三つございます。合計二十ございます。それから現状で見まして現行協定の改訂交渉が進められているもの、また近く進める必要のあるもの、こういうものが、今ちよつとお話の出ましたアルゼンチンとかスエーデンとかお隣りの台湾なども入れまして、パキスタン、ウルグアイ、エジプト、ビルマ、オランダ、有効期限の延長を必要とするものがフイリピン、こんなようなぐあいになり、さらに最近協定を締結したもので申しますと、イタリア、フインランド、なお西ドイツとの貿易計画についても昨年十二月有効期限を延長するという措置をとつてございます。それが現在の実情でございます。
  55. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 ちよつと一点質問漏れいたしましたことがございますが、ただいま申し上げました中近東諸国の輸出市場としての重要性と同時に、これら諸国に対する資源開発の問題も大きな問題ではないかと存じますが、これに対しまして大臣の御所見をお伺い申し上げたいのでございます。
  56. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 仰せのごとく中近東地方の資源開発も重要な問題と存じておりますが、ただいまのところはいろいろな関係もありましてむしろいわゆる東南アジア地方にドル地域から求めておつた物資、なかんずく鉄鉱石その他の原材料をあの辺に求めようということに一応転換いたしまして、まあ鉄鉱石ならフイリピンとかマレーあるいはゴアといつたような方面に今やつております次第で、現に相当今日では入荷しつつある現状でございます。
  57. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 次に中共貿易についてちよつとお伺いいたしたいと存じます。最近中共に対する輸出が大幅に制限解除されておりますが、その効果はわが国中小企業に活を入れるものと期待されるものでございます。しかし中共貿易に対しましては、決済方式上の難点や、国民政府の中立放棄によりまして船舶運航に関しまして、今日においては特にまた安全保障の欠如並びに国民政府への顧慮、これらのために引合いがあつても実際上契約成立が困難となるおそれはないものであるか。この点はもちろん政治体制のまつたく異なる相手国との通商でありますから、あらゆる点で慎重を期すべきだろうとは存じますが、この慎重さが行き過ぎて、成立皆無の状態となる可能性が十分あるとも私は考えるのでございます。これはまことに遺憾なことと思われますので、中共貿易に対する政府の基本方針を明確にお示しを願いたいと存じます。特に決済の方法をひとつ大臣より御答弁願いたいと存じます。
  58. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 中共貿易は、何と申しましても日本が国際連合に加盟しております関係上、国連協定の一線に沿つてつて行くということが一番大きい支配的な線で、ございまして、従つて日本が過去において中共に大きな輸出をし、また中共からいろいろ大きな輸入をしておつたという歴史的な事実があり、また隣国の関係もあつて、向うも日本からのいろいろな物資を必要とし、またこちらもいろいろな物資を必要とするにかかわらず、戦略的な物資その他のものは送り得ないことは申すまでもございません。そのほかに船舶その他が向うと自由に交通等ができないような関係もございまするし、また旅行免状等でも自由に行かぬような立場もございますし、なかんずく今仰せになりましたような決済の方法が——向うがドルを持つておるわけでもなく、ポンドを持つておるわけでもございませんので、自然物々の決済になるわけであります。最近では一部香港でもつて決済をされておるというような実情等がありまして、昨年十二月以来はやや以前に比べると、——これは自主的にも考えたわけでありますが、輸出品目の数がふえたという事実もありまして、多少以前に比べれば活発にはなつて来たのでありまするが、それにしても、最近台湾の中立がどうこうということが問題になりまして、ただいままでのところはこの影響は多く現われておらないようですが、どういうふうにこの影響が現われますか、予断を許さない実情でございます。それで決済の方法についても、十分安心の行く決済方法がとられず、かたがた現在の段階では、もう少し国際関係に変化が来ませんと、中共貿易に大きい期待をつなぐことはどうか、こういうふうにも私ども実は見ておるわけであります。但し、日本といたしましては、平和物資で日本が、ごく入り用なもの、よく言われます開灣島の鉄鉱石、あるいは開灣炭が来ますれば、日本の鉄鋼業においては、安い鉄鋼ができることになりますので、これは衷心から希望しておるのでございますが、そこの段階まではもう少しかかるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  59. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 これで私の質問を終了いたします。
  60. 坪川信三

  61. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 輸出品取締法の一部を改正する法律案につきましてお尋ねいたしたいのでございます。輸出品に対するクレームの半分が、品質不良に関するということでございますが、現行法におきまして、主務大臣が品目を指定し、そのおのおのについて等級、最低基準、または包装条件を告示しているのでございますが、この最低基準または包装条件が、海外の批判を受けねばならないほど劣悪であるがためにクレームを生じたとかいうことであるが、その実情についてお伺いいたとたいと思ます。
  62. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 御存じのように、現在かなりの商品につきましては、検査をする品目がありますが、検査をやらぬ品目もかなりございます。それから検査をやる品目といたしましても、御存じの第三条の品目といいまして等級だけをきめる品目、それから第四条で最低基準をきめまするが、その最低基準の検査を自治的にやるものと、それからミシン等のごとく、やや一定の検査機関でやるのとわかれております。そういう現状でございますが、昨年一月から十二月までの取引のクレームの件数のうち、これを原因別に見てみますと、役所の方で確認いたしましたクレームは、合計九百八十二件あるわけであります。そのうちいわゆる品質不良に基くものが大部分でありまして、四百八十九件の多きに達しております。そのほか今言われました包装の不完全によるものが五十一件、これによつて見ましても、クレームの原因のうち、品質の不良によるものが過半を占めておるということが言えるかと思います。
  63. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 そういたしますと、一応規格検査等の不十分ということもあるわけでありますが、しからば主務大臣が登録したもの、あるいは政府機関におきまして検査されたもので、クレームが生じた例がございますか、お伺いしたい。
  64. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 政府機関なり、第四条の最低品目中、いわゆる登録機関で検査いたしましたものにつきましては、今のところクレームはないようでございます。ただアメリカの食品検査によりまして、何といいますか、特殊の検査というか、それの衛生上の検査に合格しなかつたものが食品関係において若干あるようでございます。大体ないと思います。
  65. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 今回の取締法の改正で最も重要な点は、現行法におきましては、最低基準を定める品目を指定するには、いろいろ保健、衛生、安全、純度、あるいは機能のみの観点からこれを行つてつたのでありますが、この指定の条件を品質という包括的な観念に改めて、すべて品質の面だけで輸出の最低線を引くということになつております。この最低線の基準は非常にむずかしく、また最も重要な点であろうと存じます。それにつきましては、輸出標準の決定の方法、あるいは二、三のベーシスをいただいておりますので、大体了承することができるのでございますが、この基準のきめ方につきましては、最も輸出に適した方法によりまして、あまりに酷であつてはまた輸出ができないという関係もあると存じますので、十分万全の策を講じていただきたい。しかしこれによりまして、いたずらに検査の方法が煩瑣になり、またいろいろの手数のためにそれらの業者が営業の面に非常な手数がかかつて、かえつてそれらの面から輸出を阻害するというようなことがありはしないか、この点について御見解を伺いたいと思います。
  66. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 確かにごもつともでございますが、基準のきめ方につきましては、すでに資料によりまして御連絡申し上げておりますように、業界の意見を十分に取入れまして、齟齬なきを期しておるわけであります。またその検査をやります結果といたしまして、若干の不便が起るということにつきましては、これもまあ程度の問題でありましてできるだけ検査機関におきまして運用を円滑にいたしまして、出張検査をいたすなりその他の方法によりまして、いわゆるびしびしした検査にならぬように努めるべきでありますが、検査の建前といたしまして、全体の利益のために、また品質をよくいたしますために、若干不良品をつくり輸出せんとする人にとつて不便が起ることも、ある程度はやむを得なかろうかと思いますが、御趣旨の点は十分配慮して運営をいたすことに相なつておりますので、御了承願います。
  67. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 次に仕向地別に異なる最低標準または包装条件を定めることができるというように改正されるようでありますが、この改正せねばならぬ必要な品目、また仕向地別の輸出の実情に対しまして御説明願いたい。
  68. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ただいまのところは、カナダ向けのみかんを一応予定いたしておるのであります。この第四条におきまして一応一般的な最低標準を設けて、それから特定の地域に向けましては、若干高い標準をきめるというふうな立て方になつております。これも高い標準をきめておいて、場合によつて低い標準をきめるというふうな行き方も考えられるのでありますが、一般的な標準をきめておいて、特に特定の地域に対して高い標準をきめるということの方が、対外的にも、あるいは事務の進め方からいつても、非常に便利であるし、また都合がいいということで、こういうようなことになつております。事例といたしましては、今カナダ向けのみかんを予定いたしております。
  69. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 そういうふうな場合におきまして、中継貿易等によりまして転送せられる場合には、効果が現われぬというようなことがありますが、そういうような場合につきましては、どういうようなぐあいに考えられておりますか、転送するものはございませんか。
  70. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 積み出すときに、どこかの港を中継して行くということで、そのことがはつきりいたしておる場合は、もちろんその仕向地別の基準に従わなければいかぬわけでありますが、あるいは香港なら香港がデステイネーシヨンだということで参りまして、それからたとえばカナダにまわるというふうな場合になりますと、一旦積み出されたものはいたしかたないような関係がありまして、その辺ちよつと不都合が起るかもわかりませんが、今の法律の上では、これはやむを得ないのじやないかと思います。
  71. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 適用除外といたしまして、主務大臣が許可いたします貨物、たとえば風水害等に遭遇した場合の難民救済の用途に充てられる貨物、それ以外に、その他輸出品の声価を害するおそれがないと認める場合には、これは適用除外となつておりますが、そういうふうな場合は、どういうようなものを御想定になつておりますか。
  72. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 この法律目的が、要するに輸出品の品質を確保し、その声価を維持するということでありますので、場合によりまして、たとえば外国のある不慮の災害に対して救恤品を送るというような場合、あるいは出かせぎ人が参つておりまして、それに所要の物資を送つてやるというような場合、その他特定の地域にその場合だけ送りまして、一般の輸出品の声価を害する心配がない、こういうふうな場合を一応予定いたしておるのでありますが、これが運用につきましては、非常に慎重を期さなければいかぬわけでありまして、あまり例外許可といいますか、特別許可がルーズに過ぎるということになりますと、本法制定の目的にも反することでありますので、その辺の運用は十分注意して参ることになつておりますので、今申しますように、特定地域に一部出すことと、その品質なりその声価をやかましく言う必要のない場合に運用するという一つの特例の場合を規定しておるというわけであります。
  73. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 大体今からそれを想定していただく品目というのはないわけですね。
  74. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 品目別にはそういう予定はないわけであります。その特別のケースケースで行こうということでございます。
  75. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 通産省の検査官の御報告によりますと、民間機関の登録制度は、元来登録機関の第三者的な性格を有すべきものであるにかかわらず、現実にはほとんど一般的の会社を登録しておる。また政府機関によるところの臨検の検査の結果も良好でないということでございますが、輸出品の生産者あるいは加工業者または輸出業者それ自体を登録するということは間違つておるのであります。また一面には、政府機関の民間検査機関に対する指導というものも私はよろしきを得ていない証拠であると思うのでありますが、今後はこの民間機関に対しまして、政府はどういうような指導方針をもつて臨まれるか承りたいと思います。
  76. 小平久雄

    小平政府委員 従来の検査機関につきましては、御指摘のようにあまり好ましからざる点も、ございましたので、今回御提案申し上げております第七条におきまして、被登録者の基準を定めておりますが、その人員であるとか、あるいは検査設備であるとかを参考にいたしますのはもちろんのこと、一面におきましてはあまり被登録者が多くなり過ぎて、いわゆる濫立するというようなことも防止をいたしましてむしろ公共的な存在として、当局においてもその監督も厳重にいたして参りたい、こういう趣旨であります。
  77. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 そういたしますと、今回の改正によりまして、登録申請者の認可に対しましては、輸出品の生産業者あるいは加工業者あるいは輸出業者自体に対しましては、従前通りの認可をやはりせられるつもりでございますか。
  78. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘の点は登録をしないつもりでおります。
  79. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 また主務大臣の定めます機械器具その他の設備程度をいかにして決定されるか。さらにお尋ねいたしたいことは、主務大臣が定めた条件に適合する知識経験を有する者の認定につきましては、試験制度等を採用せられて定められるのでございまするか、その知識経験者というものの認定に対する基準はどういうことによつて定められるかということをお尋ねいたしたい。なおまたその経験者の数を限定するということでございますが、その数の限定はどういう基準によつてなされるか。それらの諸点についてお伺いいたしたいと思います。
  80. 小平久雄

    小平政府委員 御質問の第一点の必要な検査器具等でございますが、これにつきましては、御承知のように大体の各輸出品目によりまして、機械類ならばこういつた検査器具とか、あるいは繊維品の場合にはどういう検査器具、こういうようなものが大体きまつていると申すと語弊があるかもしれませんが、大体わかりますので、そういう点で決定して参りたいと思います。それから被登録者の経験、知識、能力でありますが、これにつきましては当局としましても行く行くは国家試験のようなものをやりたい、こういう考えもあるのでありますが、さしあたりにおきましては従来のその人の学識なり経験なり等をしんしやくして決定をいたしたい、かように考えております。それからその数の点でございますが、数につきましてはそれぞれの品目の輸出の量等をしんしやくいたしまして、また輸出品の生産地等の関係も考慮いたしまして、要は検査のために輸出に対して多少なりとも時期的その他に支障が起きないというようなことを配慮いたしまして、数の決定をいたしたい、かように考えております。
  81. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 次にお尋ねいたしたいのは、この法律施行の際に、現に改正前の規定によりまして登録を受けた者は、その登録を受けた日から二年間は改正後の規定によつて登録を受けたものとみなすということになつておるのでありますが、現在におきましてもすでに過剰登録に陥つているところのきらいがあります上に、さらに新たに登録認可をするということになりますならば、なおさらそれらの機関が過剰登録を累増して行くばかりでなく、現に登録せられている機関には、すでに御指摘申したような欠陥が多数あることを認めておきながら、これを二年間も存置するということは、改正の趣旨に反すると思うのでありますが、これの存置期間を短縮せられる御意思がございませんか、お伺いいたしたいと思います。
  82. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘のように附則の第二号によりまして、本法施行の際に改正前の法規によつて登録を受けた者はさらに、その登録を受けた日から二年間は有効である、こういうことになつておりますが、施行の日から二年間ではなくして、登録の日から二年間は改正後の同法の規定による登録を受けたものとみなす、こういうことになつておりますので、実情から申しますと、現在登録を受けております者の大部分の者が本年の十月ごろで二年に達するわけであります。そこで相殺におきまして、新しい法の趣旨にのつとつて登録をやりかえて参ろう、こういう点でありますので、御懸念のように新法によつてさらに登録をするために従来に比して非常に数が多くなるというようなことは万ないものと考えておるわけであります。
  83. 高木吉之助

    ○高木(吉)委員 輸出の振興は輸出品の品質の向上にあることは申すまでもないのでございます。その品質の向上を基礎といたすためには、適切な輸出検査を行うことが必要であります。それにはどうあつても検査員の素質ということが一番重大な問題であろうと存じますが、今後はこの検査員の養成に対して政府はどのようなお考えを持つておられるか。また今回の取締法の改正によりまして、それらの検査員を増員せられるお考えでございますか。もしも増員せられるといたしましたならば、それらの予算的措置についてはどうなつておるか、これらの諸点につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。
  84. 小平久雄

    小平政府委員 検査員の資質の向上の必要なことはまことに御指摘通りだと思います。しかしながらこの検査員のうち国の機関に従事しておる者につきましては、ただいま予算的にこれをさらに拡充いたそうという段には立ち至つておりませんが、御指摘の点は今後十分配慮してやつて参りたいと思つております。さらにまた民間の検査員につきましては、先ほど申しましたが、将来はこれの資格試験等を行うということも研究してみたらどうかという考えは持つておりますが、さしあたつての問題といたしましては、政府機関等による指導等にまつて十分この検査員の素質を向上いたして参りたい、かように考えておるわけであります。
  85. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、次会は明後日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十七分散会