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1953-02-13 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 河野 金昇君    理事 永井勝次郎君       有田 二郎君    大倉 三郎君       河合 良成君    小西 寅松君       辻  寛一君    中峠 國夫君       福井  勇君    福井 順一君       南  好雄君    高橋 長治君       長谷川四郎君    山手 滿男君       山口シヅエ君    加藤 清二君       松原喜之次君    木下 重範君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君  委員外出席者         議     員 淺香 忠雄君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十二日  海底電力線敷設に関する請願熊谷憲一君紹  介)(第一七一五号)  糠平電源開発促進に関する請願高倉定助君紹  介)(第一八一四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  輸出品取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第四五号)  武器等製造法案内閣提出第三号)  旧香里火薬廠払下げに関する件     —————————————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまより会議を開きます。  まず昨日に引続き輸出品取締法の一部を改正する法律案を議題として審議を進めます。同案に関し質疑の通告がありますからこれを許します。木下重範君。
  3. 木下重範

    木下(重)委員 昨日、この問題につきましては政策的の面その他で有意義な質問があつたのでありますが、私はまずこの法令改正に関する政府説明につきましてお尋ねしたいと思います。法律家でありますからどうもりくつにわたるかもしれませんが、その点は御了解願います。この取締法の一部を改正する法律案で、第二条の輸出業者及び生産業者の部分の意義と申しますか、解釈と申しますか、こうしたものが削除されておりますが、これはどうしたのでありますか、もうすでに輸出業者生産業者意義については皆さんは知つているからというので削除されておるものでしようか。あるいは政府解釈にまかせるというのでしようか、それとも解釈がかわつて来るのだという趣旨でありますか。その後の条文を見ましても、生産業者並びに輸出業者という字が削除されておりますが、どういうわけでしようか、その点をお伺いしたいと思います。
  4. 小平久雄

    小平政府委員 本法制定当時におきましては、御承知のように政府貿易が行われておりましたので、輸出品政府に引渡すというような場合もございました。しかるに現在ではそういう方法もなくなりましたし、また一面から申しますと、従来ごの表示を行います責任者としては、輸出業者あるいは生産業者等だけでありましたが、その他の中間業者等につきましても、これが表示責任を今後は負わして行こうという趣旨から、今回はその第二条の中において輸出業者ということをむしろうたわぬということにいたしたのであります。
  5. 木下重範

    木下(重)委員 ただいまの御説明で多少わかりましたが、この改正案中に、生産業者及び輸出業者という字句が使われておるのでありますが、ただいま政府が言われるようなことでありますれば、どうもこうした法規については解釈上いろいろな疑義を起すおそれもありますが、そうした点を含めた疑義はつきりさせて、条文の中に成文化されたらどうかと思いますが、どうでしようか。政府所信を伺います。
  6. 松尾泰一郎

    松尾説明員 確かにお説ごもつともなのでありますが、ただいま政務次官から申しましたように、輸出品取締法でもつて、従来は輸出業者あるいは生産業者特定義務を負わしていたということで、その取締り対象になる人の定義を明確にしておきませんと、いろいろ問題が起るということで特にこまかい規定をいたしておつたわけであります。今度の場合は、要するにすべての人にこういう義務を負わせることになります関係上、法律解釈として輸出業者とかあるいは生産業者とかいうような定義を明確にうたう必要がなくなつたということなのであります。輸出検査ということになりますと、当然その貨物について検査を受けなければならない。従つてその貨物をつくる人、あるいは輸出する人、あるいはそれを中間でいろいろ処理する人がすべて取締り対象になる、こういう関係から、わざわざ人についての定義をする必要がなくなつたから削除いたした、こういうわけであります。従いまして、少し蛇足にわたりますが、輸出取引法という法律もありまして、またその改正案も近く御審議を願うことになろうかと思いますが、輸出取引法になりますと、輸出行為をする人が取締り対象になるということになりまして、輸出業者とは何ぞやというような問題が出て参りますが、これは貨物中心とした取締法になつておりますから、そういう人の面についての規定をする必要はないということであります。
  7. 木下重範

    木下(重)委員 今の説明によりますと、結局輸出を希望する行為者自身に対してこの法令適用するのであるから、別に生産者とかあるいは輸出業者ということを差別する必要はないのだというふうに承つていいのですか。
  8. 松尾泰一郎

    松尾説明員 さようでございます。
  9. 木下重範

    木下(重)委員 私はこの改正法律案をいろいろ検討させてもらつたのでありますが、法律家の私でさえも非常に解釈に苦しむ法文があるのであります。私はもちろん被登録者の厳重なる監督、公正なる取扱い、これらの点についてはごもつともなことだと思うのでありますが、従来の検査制度で特にどのような欠陥があつて、これを改正しなければならぬのかということについて、具体的な事例がありますれば、お知らせ願いたいと思います。
  10. 小平久雄

    小平政府委員 従来の制度における弊害でありますが、従来は、大体個々の会社等がやつてつた面が非常に多いわけであります。つまり一定の資格を持つた人のおる会社等がやつてつたわけであります。従いまして同種の製品等につきまして輸出をしようという場合には、その被登録者検査を受けなければならぬというような関係からいたしまして、どうしても他から依頼されたもの等につきましては、あるいは時期的に遅れるとか、あるいは故意でないにいたしましても、要するにスムーズには行かぬというような面もございます。そういうことでございますので、今回の改正によりまして、この被登録者立場をより公共的なものにして行こう、こういう考え方なのでございます。
  11. 木下重範

    木下(重)委員 今の御説明で大体わかりましたが、今度の改正法におきまするところの第三の改正であります。先般大臣から説明がありましたが、本邦にある外国公館が送付する貨物引越荷物等本法適用除外とすると説明されておりますが、この場合に、外国公館が送付する貨物は、結局全面的にこの法令適用を受けないことに定め、さらに主務大臣輸出品声価を害するおそれがないと認めた貨物本法適用外とすることを新しく設けられたいということでありますが、これは、外国公館が送付する貨物はどんなものを送つてもいいということになるのでしようか。
  12. 小平久雄

    小平政府委員 外国公館の持出します場合におきましても、それが商取引目的によつて持出すということであれば、これは輸出でありますから、もちろん検査をいたすのであります。逆に申しますならば、商取引の目標にならぬもの、公館のものとして、通常公館本来の使命のためとか、あるいは公館の用のためとか、こういうことでありまして、要するに取引目的にしないもの、こういうものは取締り検査をしない、こういう趣旨であります。
  13. 木下重範

    木下(重)委員 私もこれは取引対象物云々ということは考えておりません。もちろん公館自身がおのずがら日常必要とするものの送付を願い出る場合でありましようが、そうした場合に、品物について無制限に除外されるかどうかということについて聞いておるのです。今の御説明を聞きますと、一般社会通念において、この品物はさしつがえはあるまいと思われる、いわゆる日用品とか必需品とかいうものは検査をしない、そう承つてよろしいのですか。
  14. 小平久雄

    小平政府委員 お説の通り思つております。
  15. 木下重範

    木下(重)委員 そういたしますと、法規の上でその点を明らかにしておく必要があるのではないかと思うのですが、現在アメリカその他の諸外国では、この点についての規定はどういうふうになつておりますか、おわかりになつておれば承りたいと思います。向うでもおそらく輸出品取締法に類似するものがあると思うのですが……。
  16. 松尾泰一郎

    松尾説明員 実は外国公館が送付するもの、あるいは外国公館が持込むものの取扱いにつきましては、国際慣例といたしまして、輸出入の、たとえば為替管理とか、あるいはいろいろの貿易統制とか、あるいはこういう取締り検査対象にしないというのが従来の大体の慣例になつておりまして、この法律はただ品質検査だけの法律でございます。その点実は貿易及び為替管理法におきましてもこれと類似した規定がございまして、大体外国公館が送つて来るもの、あるいはこつちから送るものにつきまして、取締り対象にしておらぬのが国際慣例でございます。現在日本にあります為替管理なり貿易統制法規におきましてもへ大体それに準じでやつているわけでございまして、この品質検査目的とする取締法におきまして、実はこういう除外例がなかつたことが少しおかしいのじやないかとわれわれも考えているわけで、どつちかと申しますと、この際ほかの法令に歩調を合せたという意味なんでございます。もし外国公館が送付するものについて特に取締り対象ありとするならば、この品質検査目的とする取締法でなくて、あるいは輸出統制であるとか何とかの面からする、いわゆる為替管理を主体とした貿易統制法規の中に取締り対象として盛らるべきではないかという考え方もできるわけであります。これは品質検査目的とする法律でありまするので、外国公館が送付する貨物については取締り対象とする必要はなかろう、こういうことなんであります。
  17. 木下重範

    木下(重)委員 もう一つ御質問申し上げますが、外国法令等では、かような品質検査に関する法令につきまして、わが国で今定める法令と同等な法令があるのでございましようかどうか。たとえば今度日本公館が送るといつた場合、やはり同一な取扱いを受けられるような状態に現在あるのであるかどうか。どうでしまうか。
  18. 松尾泰一郎

    松尾説明員 もちろん日本海外に出ております在外公館については、大体同様の取扱いを受けております。在外公館と申しましても、外交官的待遇を受ける大公使館、領事館その他でございますが、外交官としての日本在外機関については、たとえば関税法の問題にいたしましても同様の取扱いを受けております。なおその他海外のこういう輸出に関する品質検査制度でございますが、これは現在いろいろ各国の事例も調査中でございまして、まだ全部詳細にはわかつておらぬのでありますが、おおむねアメリカあるいはヨーロツパ諸国におきましても——少しく角度は違うかと思いまするが、保健衛生等関係からいたしまして、こういう検査制度をとつているところが比較的多いのであります。しかし率直に申しまして、日本取締法目的としております検査制度の方が、海外事例に比べて展開性がないと申し上げてさしつかえなかろうかと私は思うのでありますが、それは御存じのように、日本輸出振興をする上にあたりまして、輸出品品質の占める重要性ということかち、海外よりも若干行き届いた検査制度をしきたい、こういうわけであります。
  19. 木下重範

    木下(重)委員 私が今お尋ねしたのは、結局諸外国と同等な条件において、わが国においてもそうした基準における法令を設けた方がいいのではないかと心う趣旨において申し上げたのです。今の御説明によりますと、まだ十分に検討されていない事実もあるのでありますが、これはやはりこちらの受入れ態勢ばかりでなくて、こうした問題についてはおそらく国際上同様の取扱いをしてさしつかえないものと考えておりますが、その点十分御考慮願いたい。特にこちらだけ向う便宜をはかり緩漫な処置にまかせるが、日本の場合においては不平等な処置を受けるということになることをおそれましたために、特に申し上げたのであります。その点を十分お調べ願つて御留意願いたいと考えております。  次に、その次の「輸出品声価を害するおそれがないと認められる場合において」云々という規定があります。これは先般大臣説明で大体わかりましたが、その説明書によりますと、火急の風水害による場合に、その貨物風水害の土地に送る場合を想定しておるようでありますが、その他の場合ということが書いてありますが、その他の場合というのはどういう場合を想定されておるのですか、具体的な政府の方針をひとつお聞かせ願います。
  20. 小平久雄

    小平政府委員 その他の場合でありますが、輸出品につきまして、その輸出された品物特定地域だけて使われるというような場合もございます。こういつた場合におきましては、あながち一般的な取締りはしないでもよろしかろう、従来はそうい一つた場合におきましても一々検査を受けるということになつておりましたので、それがむしろ逆に輸出を阻害するというようなケースもなきにしもあらずというので、従つて今回の改正でそういつた弊害を取除こう、こういうことであります。
  21. 木下重範

    木下(重)委員 御趣旨はわかりましたが、私は品種について特に聞いておるのです。  輸出品声価を害するおそれがないという品種はどういう品種であるのか。ここのところはあまりにも広範囲の非常に漠然とした規定ではないかと思いますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  22. 小平久雄

    小平政府委員 品種につきましては、別段どの品種の場合においてということは想定いたしておらないのであります。
  23. 木下重範

    木下(重)委員 そうしますと、結局漠然とした規定で私はうなづけないのでありますが、この点について特に考えでいただきたいと思います。先ほどの説明によると、かような規定を設けられたことを非常にこつけいに考えるのでありますが、むしろこうした場合の規定はもう少し特定されて、そうしたことの解釈はつきりできるように法文を改められたらどうかと思いますが、いかがですか。
  24. 小平久雄

    小平政府委員 やや説明が足らなかつたかと思いますが、たとえば、わが国の者が外国行つて仕事に従事しておるという場合もあります。そういういろいろの仕事をしておる場合におきましては、そこに従事しておる者だけが使うという場合でありますので——何を使うかということは、そのケースケースによつて違いましよう。先ほど申しましたが、特定の場所で使うというようなことがはつきりしておるという場合を想定してこの条文を設けたのであります。
  25. 木下重範

    木下(重)委員 そうでありましたならば、そうしたことを明らかにされたらどうかと思います。大体この法令を見ますと、詳細に輸出品検査その他についての規定が設けられております。本来法規自体によつて十分に規制されているという状態にある場合には、やはり法規の根本を明らかにしておかなければ将来困るのではないかと思います。たとえば今申されましたように、特定地域である仕事に従事しておる者に送る品物だ。だからこの品物は今からはつきりいたさないのだということで送られる場合、やはりこの取締り対象として、品物品種によつては許されないものじやないかと思いますが、そうした特定地域への品物ということが予想されておる場合には、将来疑義を招かないように、明らかな規定を設けられたら妥当ではないかと思いますが、いかがですか、御所信を承りたいと存じます。
  26. 小平久雄

    小平政府委員 お話の点一応ごもつともでありますが、ただ本号の最初に書いてございます通り、「当該貨物輸出輸出品声価を害するおそれがない」こういつた場合が将来にわたつてどういう際に起るか、またどういう品物がその際に出て行くかということはあらかじめ予想がつきかねますので、そういう場合におきましては、主務大臣の許可によつて輸出を認めて行こう、そういうことなのであります。要するに将来のことなのでありまして、どういう品物がどういう場合に出て行くかということが想像がつきませんので、こういつた一般的な規定をいたしたわけであります。
  27. 木下重範

    木下(重)委員 今の御趣旨によりますと、結局今では将来の予想がつかないから、一応こういうことにしたのだ、将来各種の問題が起つて来ましようが、そういう場合には悪ければいさぎよく直すだけの御意思がありますか。そうしたことの弊害を考えられて、その点について将来いさぎよく法令改正をするという御意図があつて、一応こういうふうにきめてみようというのならばわかりますが、そうでないと、この法文はとかく大臣にあまりに強い権限を付与して、そうして具体的な問題にぶつかつた場合に疑義を生じ、摩擦を起すのではないかというおそれがありますために申し上げておるのであります。その点に一ついてお答えを願いたいと思います。
  28. 小平久雄

    小平政府委員 本法を実施いたした結果、いろいろなケースが出て参ると思いますが、そのうちで通常的なケースになるような場合におきましては、お説の通りそれをあらかじめ法によつて明確に規定するということも一向さしつかえないと思います。
  29. 木下重範

    木下(重)委員 これは全般的に申せることでありますが、特に七条の規定が広汎に改正されておりますが、法律家でもこの条文についていろいろ解釈、判断をいたしますと、非常に錯綜してわかりにくいのであります。少しこの条文を整理されて簡素化されてはどうかという見解をわれわれはは持つておりますが、いかがでありましようか。どうもこれを見ますと、解釈に苦しむ点があり、法文化される際にあとでいろいろ疑義があり、解釈上問題を起すようなことはおもしろくないと思いますが、いかがでしようか。
  30. 松尾泰一郎

    松尾説明員 確かに御指摘のように、第七条第一項、第二項は実は少し長たらしいような、わかりにくい書き方になつております。正直なところ私個人もそういう感じを持ちまして、何かもつと簡単な書き方ができぬものかということでいろいろ研究したのでありますが、法制局でその筋の専門家といろいろ字句をひねつてみますと、結局この方が一番わかりよくて正確だということで、こういうことになりました。確かにすらつと読んだ場合に、少しわかりにくい点があるのでありますが、いろいろ逆の場合を考えてみますと、この方が一番はつきりしておるという専門家の結論で実はこういうことになつております。
  31. 木下重範

    木下(重)委員 そうすると、これで十分にわかるであろうことを考えて法文化されたということでありますが、これをもう少し整理するというお考えはないわけですね。もう一ぺん再検討してみられる余地はないでしようか。われわれも及ばずながら専門家ですから、一応やつてみたいと思いますが、どうでしようか。
  32. 松尾泰一郎

    松尾説明員 もちろん適当な書き方がございますれば、この通りでなければならぬということはないと思いますが、実は今御指摘のような御趣旨をもちまして、われわれ課長、事務官、それから法制局関係者ともいろいろ書き方を一案、二案とやつてみたのでありますが、こういうことにおちついたのであります。これよりももつと簡単にしてよくわかる表現がございますれば、別段これに固執するわけではございません。
  33. 坪川信三

  34. 山手滿男

    山手委員 私はちよつと中座をしますので、簡単に貿易のことを二、三お尋ねしておきたいと思うのであります。輸出品取締法改正案が提出されましたのも、すべて現下の事情からいたしまして、貿易振興ということに力を注ぐという御意図一つの現われであろうと思うのであります。今も話が出ましたように、いろいろな施策が具体化されて行く状態を見ておりますと、私どもは努力をしておられることに了承を与えるに必ずしもやぶさかでないのでありますが、実際にはどこまで実効のある手が打たれておるかということについて疑問を持つものであります。  私がここでまず第一にお尋ねをしたいと思うのは、貿易振興という問題を、現在どういうふうに積極的にお取上げになつておられるか。私は大臣に聞きたいと思つてつたのでありますが、たとえて言えば、本年度通産省予算を見ましても、総額で五十八億、しかも一万四千人の人がかかつて通産行政をおやりになつておりまするが、貿易振興に関する経費はわずか一億五千万円しか計上をされておらない。そのほかいろいろな問題を一つ一つ検討をしてみましても、いかにも取締り強化というようなことが、貿易振興に大きな寄与をするものであるかのごとき傾向を見のがすわけには行かないのでありますが、現在どういう手を通産省は打つておられるか。全般的な立場でよろしゆうございますから、まず次官にお伺いをいたしたいと思います。
  35. 小平久雄

    小平政府委員 貿易振興に関しまする二十八年度予算はきわめて少ないというお話でございますが、この点は実は私もまつたく同感でありまして、予算編成の途上におきましても、われわれといたしましては、特に鉄鋼補給金等につきましても、これが予算計上を提案いたしたのでありましたが、遺憾ながらこれは認められなかつたわけであります。御承知のように貿易振興ということは、政府としましてもずいぶん力を入れてやつておるわけであります。さしあたつての方策といたしましては、全般的なことにつきましては、山手委員がもうお詳しく御存じ通りであります。ただ何と申しましても、わが国物価というものは国際物価に比べて高い。これを何とかして安くする方途として、いわゆる合理化等にどうしても根本的に努めて行くべきでありますが、時期的にそれが間に合わないという場合には、補給金というような何らかの形における制度が認められれば一番よろしゆうございますが、これは貿易だけと考えればそれまでであります。しかしまたその他のケースも当然相関連して考えられなければならぬ。要するに補給金制度全般というものが、はたして通商ないしは産業政策として適当かどうかということも考えなければなりません。ただ現政府といたしましては、その際補給金制度というものはとつて行かないという建前になつております関係上、この輸出振興関係補給金も取上げられなかつた、こういうような事情なのでございます。ただ予算案で御承知つておると思いますが、大体ニユーヨークと予定しておりますが、本年度からそこに貿易あつせん所をつくるとか、あるいは南米、東南アジア等に対しまして、重機械技術相談室を設けまして、特にプラント輸出中心とする貿易振興をはかりたいということで、若干ではありますが、新しい項目が認められまして、ただいま御審議を願つておるわけであります。その他貿易振興につきましての一般的な施策につきましては、かねて大臣からも御説明申し上げました通り、あるいは経済外交を推進するとか、あるいは海外市場の開拓、それによる国際経済への協力、こういつた面を推進して行くとか、あるいは貿易商社強化をはかつて行くとか、そのほか金融上あるいは為替関係等につきましても、できるだけ行政的に便宜をはかり、また業界がそれによつて利益を受け得るように、あらゆる施策を進めて行こう。先般為替買売手数料等につきまして引下げをやりましたのも、その一つの現われと御了承を願いたいのであります。
  36. 山手滿男

    山手委員 今次官からお答えを願いましたが、予算のことについてみましても、いつも大臣は、今御説明ありましたような重機械技術相談室設置をするについての補助金を三千万円出すことを、鬼の首でもとつたように話されるのを私は聞いておるのでありますが、このコンサルテーシヨンの問題でも、初めは一億数千万円のものを要求して、最低全世界に七箇所は出したいという業界の希望であつたものが、わずかに三千万円に削減をされておる。これは私はその当時いろいろお話を聞いておりましたが、七箇所でも一億三、四千万円ではとうてい十分な目的を達することはできないから、もう二億円くらいは十分な予算をもらいたいというふうな意向すら業界にはあつたと私は思う。それが増額どころかわずか三千万円程度に削減をされておる実情であつては、何もこういうことを宣伝するほど大きな手を打たれたということにはなるまいと私は思つております。  それから今のニユーヨークの貿易あつせん所の問題でありまするが、従来からのいろいろな経緯を見ておりましても、このニユーヨークのあつせん所というものの効果それ自体は、この程度のことではどれだけのことができるであろうかということを私は非常に疑問に思うのであります。そういうことについてどういうお考えであるか。あるいはまた三の東南アジア技術協力の団体に補助をするというふうなことで五百万円計上されておるが、これはどういうことか。あるいは先般来自由党の方では、当委員会の小金委員を特使として派遣をするというふうな企図を持つておられるようでありますが、この五百万円がそういう方面に充当をされる面もあるのかどうか。もう少しこの予算案——先般官房長から伺つたのでありますが、貿易振興とからんでひとつ具体的、詳細に御説明をこの際お願いしたいと思います。
  37. 小平久雄

    小平政府委員 山手委員の御説まことにごもつともでありまして、われわれ通産省側といたしましては、貿易振興のための予算全部につきまして、ただいままたお話の出ました重機械相談室、あるいは貿易あつせん所等につきましてももつと予算をほしかつたのであります。しかしながらまた一面から見ますると、たとえば重機械相談室の場合におきましては、当初は一挙に七箇所くらいは設置いたしたい、こういう希望であつたのでありますが、一度に七箇所からのものを開きましても、これの実際の運営等がはたして円滑に参るかどうか。まず本年は手始めとして三箇所くらい、大体ただいまのところインド、パキスタン、ブラジル、この三国に設けたい、かように考えておりますので、この実績等を見まして逐次ふやして参りたい、こういう希望なのであります。また貿易あつせん所につきましても、当初はサンフランシスコ及びニユーヨーク、この二箇所くらいはぜひともほしい、こういう考えでおつたのでありますが、これも大体同様の理由によりまして、逐次拡充また増設をいたして参る、こういうことに相なつたわけであります。さらにまた技術交流の関係でありますが、これにつきましてもわずかな予算でありまして、なかなか所期の目的を、しかも早急に発揮するということはいかがかと存じます。しかしながらこういつた道をひとつ開きまして、外国から参りましてわが国の技術等を習得いたしたいという者を多少なりとも受入れをいたしまして、逐次これらに対しまして、わが国の技術というものを理解し、習得してもらつて行くという道が開けることは、相当貿易振興に寄与し得るものだと期待いたしておるのであります。もちろんこれだけで足りるとわれわれは考えておるわけではございません。  以上申しました通り、二十八年度は、それに伺いましてようやく手をつけ得た程度のものとわれわれも考えておるのであります。
  38. 山手滿男

    山手委員 貿易業界としては今年は非常に重大な山になる年であろうと思うのでありますが、世界各国とも非常な貿易合戦をやつておりまして、来年は、あるいは再来年はというようなことでは相当手遅れになるおそれもある。やるならこのプラント輸出の問題のごときはそう毎年々々やる必要はないのですから、思い切つてこういう手を打たれることが好ましかつた、こういうふうに私は考えておるのでありますが、何せ一億五千万円という予算では何も話にならないので、その点あまり御自慢の種にされない方が私はよろしかろうと思つております。  それでこれは貿易振興予算の問題でありますが、貿易振興にからんでドイツとかフランスあるいはベルギー、そういう方面でやつておりまするところの税法上の措置というようなものが非常に合理化、コストの切下げ等にからんで重要な問題になつておるし、通産省の方からは企業局から直接その問題について研究に小室次長が派遣されたように私ども承つているのであります。非常に急ぐ問題でありますが、この税法上の措置を現在おとりになつているか。これは二十八年度の歳入の見積りとの関係もありまするし、私はここで通商局の次長もおいででございますから具体的にひとつ説明を願いたいと思います。
  39. 小平久雄

    小平政府委員 特に輸出振興の面からの税制改革の問題でありますが、通産省といたしましてはキヤンセルの準備積立金、あるいは海外支店設置のための準備積立金、あるいはさらに広い意味での輸出振興のための積立金、こういつたものにつきまして、これを課税外に置くという方針のもとにただいま大蔵省の方と折衝中なのであります。
  40. 山手滿男

    山手委員 西ドイツの輸出振興対策としての税法措置を見ますると、完成品のメーカ1に対しましては、輸出金額の三%ないし一%を法人税あるいは所得税そのほかの面でこれは差引いて減免をするというふうな具体的な措置をとつたりなどしておりまして、今日ドイツが全世界に非常な勢いで物を出している実情と考え合せて、こうした具体的な措置というものはわが国としてもどうして、もやらなければいかぬ問題でないかと私は思うのであります。今二十八年度予算審議が進行中であります。通産省が今日確信を持つて輸出振興のために輸出品については、輸出する商社に対してはこれとこれだけの税法上の優遇をするのだというはつきりした見通しを、少くとももう今月一ぱいくらいにはここで御答弁できるところまでこぎ着けておいでにならないと私はいけないと思う。その点についてどういう手をお打ちになつているか御説明を伺いたい。
  41. 小平久雄

    小平政府委員 お話のような積極的な施策に向いまして通産省といたしましては及ばずながら努力しているわけでありますが、先ほど申した輸出契約の取消しの準備金制度、あるいは海外支店設置費の特別償却制度、こういつたものにつきましてはすでに大蔵省も了解をいたしておりますので、これは二十八年度からは実施になる予定であります。  最後に先ほど申しました貿易振興のための積立金につきましては、たとえば生産者の側においては輸出額の三%を積み立てるとか、あるいは輸出業者の場合は一%積立てを認める、これを損金として課税外に置く、こういつたことにつきましては、ただいま大蔵省と折衝を重ねておるところなのであります。
  42. 山手滿男

    山手委員 私は予算委員会審議を見ておりましても、いつの場合でも支出ばかりが議論の対象になつて、実際には徴収の面がほとんど議論の対象になつておらない。ここに今日国家の予算審議する国会の盲点があるような気が私はします。ことに現実の問題としては石炭でも鉄鋼でも何でも同じでありまするが、コストの引下げというようなことはこの委員会でるる議論をされておりますが、これは税の問題を抜きにして考えることはできない、商社の育成をたびたび大臣はおつしやいますが、商社の育成につきましても、この税の問題を抜きにして私は育成できないと思つておるのであります。どうも今の御答弁ではどこまで大蔵省とお話をしておられるか危かしいように思いますが、ひとつ馬力をかけていただきたいと思います。  それから輸出振興の問題でございます。たびたび問題になるガツトの加入の問題でありますが、例のジユネーヴの事務局のホワイト氏が語つたと称せられる記事が日本の新聞にも伝えられております。これは非常に重要なものだと思つて、私はここに切り抜きを持つて来たのでありますが、その中でこういうことを言つておる。日本の加入については、日本の戦前の通商方法の復活を恐れる一部諸国から反対が出ておる。公正な日本通商方法の復活が一つ国際会議で取上げられ、議論されるためには、日本をまずガツトに加入させる方が賢明な方策だろう。ここまではよろしい。ところが日本にとつてガツト加入は政治的にも心理的にも大きな影響があると思われるけれども、この加入を認めない場合には、各国はそれぞれかつてに個別的な通商とりきめを日本に強制をして、各国の世界市場における競争よりもはるかに大きな害を国際貿易にもたらす結果ができつつあるというふうなことを言うておるのです。私は現在日本政府が、各個別々に通商協定、通商条約を締結したりすることをさしておるのじやないかと思いますが、ガツト加入の問題が非常に重要であればあるだけに、私はガツトの事務局長の言というものは、真相はわからないのでありますが、非常に理由のあるところではないかと思います。この点についてひとつ御見解を述べていただきたいと思います。
  43. 松尾泰一郎

    松尾説明員 御存じのように、二月の初めからジユネーヴにおきまして中間委員会というのが開催されております。日本側から代表が参りまして、各国との間にいろいろ交渉中なのであります。今読み上げられました記事を私は新聞で見ましたが、新聞で見た程度でございまして、ほんとうのことはわからぬのでありますが、そういう空気もあるように聞いております。しかし日本が加入することについて反対であるということよりも、日本が加入した場合にいろいろの、かつて日本の行為にかんがみて、日本が加入した場合に起るであろう事態についての論議もあるように聞いております。目下盛んにいろいろ交渉中に属しておりますので、こういう議論がある、こういう議論があるという紹介をちよつとしかねるのでありますが、私は大体うまく行くんではないかというふうに確信をしておるわけであります。
  44. 山手滿男

    山手委員 私は必ずしも楽観できないように思つております。今ジユネーヴでやつているのですが、日本から行つている人は外務省の事務官的な人が代表で行つておるように思うのでありますが、もう少し高いところで政治的な折衝を進めて行かなければ、この問題はおそらく楽観するにはほど遠い結論になつて来るように思うのです。ここでちよつとお尋ねしたいのですが、ガツトの加入を推進しておられる代表はだれか、通産省はどこまでガツトの加入について相談を受け、あるいは自分自身で推進をしておられるか、御答弁をお願いいたします。
  45. 松尾泰一郎

    松尾説明員 現地におきましては、ジユネーヴ駐在の日本の萩原公使が首席代表になられまして、それに各省から課長級、事務官級がお手伝いに行つておる、こういうわけであります。日本から参りました者は課長級、事務官級でございますが、萩原公使は御存じのように日本の外務省でもフランス語が一番上手だと言われている外交官でありまして、非常に努力をなしておるわけであります。交渉の模様につきましては、通産省に対しては、毎日のようにいろいろな電報が入つおります。それにつきましてはその都度外務省に担当官がみな寄りまして、いろいろ対策を練り、また訓令も出すというふうに、ほとんど毎日のごとく相談をし合つて措置をしておるわけであります。
  46. 山手滿男

    山手委員 萩原さんが非常にフランス語の堪能な人であることは私もよく知つておりますが、あの人は多分フランスとかけ持ちだと思つております。先般も大臣が言つておりましたように、ジユネーヴに非常に重要なこういう問題が起きておるのでありますが、内地からもう少し高い政治的な感覚をもつて交渉をする人が派遣されて、もう少し強力な手を打たれる必要はないか。私はどうしても今度の会議ではガツトの加入を実現させなければ、日本のために非常な損失になるように思いますので、背水の陣をしいていただきたいと思つております。どうも最近通産省貿易行政といいますか、外務省的な言葉でいえば経済外交というものが非常に弱いと思う。経済外交の実体はどうだというような議論が出ますが、もう少し積極的な手をお打ちになる必要がある。具体的にはいろいろお考えもありましようが、そういう必要があるのではないかと思います。  もう一つ今日ぜひ承つておきたいと思いますことは、アメリカとの通商航海条約の締結とからんでおると思うのでありますが、先般行政協定による日米合同委員会で、アメリカの商社、ことに土建会社なんかの大量の進出を認めるような措置がとられたと聞いております。電源開発なんかに外資の導入を実現することはほとんどむずかしいというふうに言われておる。少くとも政治的にはむずかしいと言われておるのでありますが、本会議の議場では外資は必ず入つて来ますという御答弁があつた。その実体は何であるか、大臣にたびたび聞いてみようと思つてまだ聞いておりませんが、聞くところによると、天龍発電所、佐久間の発電所についても一昨々日あたり入札をされて、モリソンとかいう外国の土建会社に請負をさせるというようなことで手が打たれたというふうなことを聞いております。こういうものを外資の導入とお考えになつておるのかどうか、これは日米通商航海条約の締結とからんでも問題が起きて来ると思いますので、御説明を願います。
  47. 小平久雄

    小平政府委員 行政協定の関係からしまして、外国の土建業者を認めるようになつた、こういう点につきましては、御承知通り、この外国の土建業者を特掲会社として認めたということは、軍の工事に限つてでありまして、一般の工事に関して、これを認めるというわけではないのであります。その他具体的なことにつきましては、他の政府委員よりお答えいたさせます。
  48. 山手滿男

    山手委員 佐久間の方はいかがですか。
  49. 小平久雄

    小平政府委員 佐久間の関係につきましては、ただいまのところ、よく存じませんし、関係の者も来ておりませんから、取調べた上でお答えいたします。
  50. 山手滿男

    山手委員 それではこれで私の質問は打切ります。
  51. 坪川信三

    坪川委員長 加藤清二君。
  52. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は貿易の問題について、実は根本的にお尋ねしたい点がたくさんございまするが、きようは時間の関係上、ただ部分的な問題について二点だけお尋ねしたいと思います。その第一点は、きのう先輩宇田委員からお尋ねになりました点に関連がありまするが、実は中共貿易という問題は、これは国民の声であり、業者の切なる願いであると存じております。従いましてこの問題は、社会党がどう言うとか、あるいは自由党がどう言うとかいう問題ではなくて、超党派的に考えなければならない問題である、こう思つております。幸い通産大臣のこの間の演説によりますというと、東南アジア及び中共の貿易については、極力努力を惜しまないという意味の演説が行われまして、たいへんうれしい限りであると存じております。にもかかわりませず、先般結ばれました北京貿易協定の成立に伴いまして、わが国の商社のうちで、やれうれしやというわけで、その準備を進め、船積みの用意までなされていたにもかかわりませず、いよいよ船出の折になりましてから、通産省の方からそれに対する保証金は、他の国と事かわつて一〇%を要するのだ、こういうことに相なつた。そこでこれが資金の余裕のある時代ならばともかく、今日資材を集める資金においてもなお困つておる。ことに中共向けの輸出に対しては、きのうの話にも出ておりましたが、日銀、市中銀行といえども、これに対する融資はあまり快く思つていない、その矢先に持つて来て、政府の方が一〇%の保証金を要求された。そこでこの問題が一頓挫を来しているという事実がございますが、この一〇%を要するという理由がどこにあるのかということをまずお尋ねしたいのであります。そこで、この理由のいかんによりましては、中共貿易のテスト・ケースとして行われようとしていたものに一頓挫を来すのみならず、今後の中共貿易に対して、業者はもちろんのことこれに携わる連中、金融機関を初め、メーカーを初め、こういう者どもに対する将来の希望、あるいは気持というものに対して大きな影響を及ぼし、ひいては中共貿易を阻害することになり、通産大臣意図とは反する結果が招来されるのではないかと心配されるわけでございます。そこでこの点についてどういう理由であつたかという点と、将来いかなる態度に出られようとしているかという点を、詳細に、直接に業者にもわかるように親切に御説明が願いたいと存じます。
  53. 松尾泰一郎

    松尾説明員 今お尋ねの一〇%の輸入保証金の問題について、ちよつと簡単に、そういたしました理由を申し上げます。実はこの中共貿易につきましては、従来輸入先行方式ということに決済方式をきめておつたわけであります。それで動いておつたのでありますが、なかなか輸入先行では実際問題としてむずかしいということになりましたので、輸出先行を認めようということで、われわれも及ばずながら中共貿易は非常に困難でありますけれども、できるものならできた方がいいということで、いろいろ決済面のことで研究いたしました結果、輸出先行方式をとろう、こういう決心をしたわけなのでありますが、その場合に従来の経験では輸出先行方式でやりますと、ものを輸出しつぱなしになつて輸入が伴わぬという場合がいろいろあつたわけであります。そこで輸出先行は認めるが、必ずその見返りになるものを輸入してもらいたいということで、その輸入担保金として一〇%の保証金、これも現金でなく保証状で一〇%を積むような組織にしようということでございまして、先般来いろいろ問題になつておりました。商社もわれわれのそういう計画は十分知つておられたはずでありまして、貨物を港へ出したとたんに一〇%というようなことになりませんで、従来は輸入先行であつた、それをそれじやいけないから輸出先行方式でひとつ考えよう、そのかわりにこれは輸入を確実にやつてもらうためには、どうしても担保金という制度でやりますぞということでやつたわけでありまして、全然知らぬうちにそういうことを発表し、荷物が港に着いて驚かした、そうして頓挫さしたということではごうもありません。これはもしそういうことを加藤先生のところに言つてつた人があれば、私が直接話してもいいのでありまして、先般いろいろ取引上の、LCの開設等で銀行とトラブルのあつた方々にも意見を聞きながら、実は立案をしたのであります。そういうことでありまして、決済方式を変更したがために、一応テスト・ケースとして一〇%ということにいたしたのでありますが、これは、今後うまく行くということでありますれば、一〇%に限定するわけではありません。もつと引下げて行つてもいいんじやないかというふうに考えております。
  54. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうなりますというと、輸入先行であつたのが、それが行われないようになつた。ほかの国の貿易とは違つて、中共に対してはある程度の危険性が予想される。従つて一〇%をかけた。こういうことでございましようか。
  55. 松尾泰一郎

    松尾説明員 輸入先行から輸出先行に切りかえましたために、輸出のしつ放しになつてしまつては困る。輸入を確保させるために、輸入の保証金制度として一〇%というものを設けたというわけであります。
  56. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、将来これがバーター制が確実に実現されるという見通しがついた場合においては、他の国と同じように一%程度で輸出貿易を許されるという見通しを持つていらつしやるのでございますか。それについてはいかがでございますか。
  57. 松尾泰一郎

    松尾説明員 具体的に何パーセントに引下げた方がいいかということは、私も検討をいたさないとちよつと申しかねまするが、ともかく引下げるようにいたしたいというふうに考えております。
  58. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 先ほども申し上げましたように、日本の産業界が不振であるという原因の一つは、戦前と比較して、何としても東南アジア及び中共の貿易が、戦前のように開拓されていないということで、これはだれしも認められることだろうと思います。従いまして、御困難でございましようけれども、私がここに政府の当局者に要望したい点は、輸出される場合の決済の点におきましても、あるいはこれが融資の場合におきましても、あるいは見本市その他、他の諸外国において行われておりますと同様な措置を、実質の上において中共にもとられまして、ぜひ日本製品の一番いい市場であると考えられる東南アジア及び中共貿易振興策を、具体的におとりになりまするよう御努力あらんことをお願いいたしまして、この点は終ります。  次に、輸出商社と国内におけるバイヤーとの競争について、一点だけお伺いしたいと存じます。御承知通り占領中はOSSあるいはSPSというような特権階級がありまして、外国のバイヤーのみに優先的な貿易上の権利があつたのでございまするが、独立と同時にこれが廃止されまして、特に毛織物の輸出輸入につきましては、政府当局の時宜を得た方策によつて、非常に毛織物の輸出振興がはかられ、輸入毛織物についても、商社のみならず、国民も恩恵を受けたことをたいへん喜んでいるわけでありまするが、聞くところによりますると、この恩恵といいまするか、平等な扱いといいまするか、これがバイヤーの過去の利益と同じような利益が得られない、つまり今日で言えば、過去の利益が侵害されるという意味において、そのバイヤーが自国の政府請願陳情をいたしまして、日本政府に向つて、今日行われているその制度は、将来は日本商品をダンピングするおそれなしとしない、従つてガツト加入の問題についても、これは大いに考慮を要する問題であるとして、せつかく日本輸出、輸入の商社に与えられましたこの利益が、剥奪されるやに漏れ聞くわけでございますが、この点について真相はいかようになつておるのか、ないしは将来この問題について、日本政府としてはどのような態度に出でられようとするのか、承りたいのでございます。  特に私は申し添えたいのは、独立と同時に与えられました日本政府の善処方によりまして、戦前輸入原毛の三〇%までを輸出しておりましたものが、終戦と同時にどんと下つた。しかしそれが努力に努力を重ねた結果、一五%までこぎ着けまして、今年の一——三においては、去年の月十万ドルを上まわつて百万ドル以上の契約が結ばれておる。それから四——六・におきましては、二百万ドル以上の契約が結ばれようとしておる。これは一にかかつて輸入毛製品の利潤を——出血輸出までして、その出血を、輸入の利益によつてカバーしようとする輸出商社の犠牲的精神によつて輸出が伸張して来た。こういう結果でございまして、肥料の出血輸出等と比較秤量してみました場合に、これこそは将来の輸出振興にとつてはぜひ必要な施策であると考えておるのでございます。この点につきまして、政府の今日及び将来に対する御見解を承りたいと存じます。
  59. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいま御指摘のありましたような抗議が、イギリスの方から昨年の暮に参つております。アメリカの方からも、これは口頭でございますが、あれはなるべくやめてほしいという申出はございます。その一番根拠としておりますのは、今御指摘になりましたように、要するにこれは結局ダンピングになるのであつて、不公正な取引方法になるのだという点でありまして、現在日本はガツトに加入を申請しておりますので、そういう非難の起るようなことは、なるべく避けて行かなければならない立場にあることは、これは御了承願えると思うのでございます。ただこのやり方は、これは現在の西欧の国などのやつておりますことから見まして、特にはなはだしいという、いわゆる不公正というような部類に入るものとは私ども考えておりません。ただ考えなければなりませんことは、現在まで日本は国内における羊毛製品の値段が非常に高いということ、これはもう御承知通り、原料はイギリスも日本も同じく濠州から同じ値段で買つておりながら、製品になりますと、日本の方が倍以上に高くなつておるというところに、非常に問題があるわけでありまして、これはもつぱら企業の合理化その他業者の努力によりまして、この値段を下げることをしなければ、結局において正しい輸出振興は望めないというふうに考えます。しかしながらこれも一朝一夕にはできないことでありますから、そういうような時代が来るまでの間、やはりリンク・システムなどを活用いたしまして、輸出の促進に努めて行きたい。しかしそれと同時に、業界にも大いに努力をしていただいて、値段を下げるようにお願いいたしたいというふうに考えております。
  60. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいま加藤君からの中共貿易の質問に対する政府の答弁によりますと、非常に消極的である。なるべく表面上は中共との貿易を認めながら、実質的にはこれにブレーキをかけるようなことをやつておる。これは非常に重大な問題であると考えるのであります。何と申しましても日本の自主独立を完成する基盤となるのは経済的な自立であります。しかも今アジアから東南アジアに向つて、世界の各国は嵐のような勢いで、市場獲得のために努力をしておる。明治維新の前には陸地の争奪戦で、鎖国の夢をむさぼつていて、さあ国際社会に入つてつたというときには、もう日本には新たに得るところの陸地がなくなつてつた。今日はどうかというと、市場の狭くなつたこの世界の情勢の中で、アジアと東南アジアに対するところのアメリカその他西欧各国が非常な勢いで市場獲得に努力しておる。このときに日本はどうかというと、ココムであるとか、何とかというような、経済的な条件でないほかの条件に縛られて、少しもそちらの方に積極的な進出をしようとしない。またあるいは今言つたような国際的な政治的、経済的、いろいろな諸条件においてブレーキをかけて、正常な経済の発展を阻害するようないろいろなことをやつておる。あるいは海外市場を獲得するためのいろいろな施策というものはすずめの涙ほどの形式的なことで、実際の効果の上らないような施設しか持つていない。経済的ないろいろな状況を調査するためのいろいろな機関も持つていない状況で、まつたく盲である。こういうような状況の中で日本が、このように押しかけている各国の市場獲得の闘いの中に、正常に日本の力を伸ばして行く目途というものをどういうところに持つているか、これは重大な問題でありますから大臣にでも聞かなければわからぬでありましようが、少くも政府を代表してここに来ておられるのでありますから、この点をひとつ基本的にどんな態度で、どういうふうに、たとえばほかの方には一%より保証金をとらないのを一〇%保証金をとつても正常に中共貿易では発展ができるのだというような、そういう根拠があるならはつきりと示していただきたい。
  61. 小平久雄

    小平政府委員 中共貿易についてのだんだんの御意見でありますが、御承知のように中共貿易につきましては、私どもとしましては、独立後というものは逐次輸出許可品目等も追加をいたして参りまして、またさらに先ほども御説明申し上げました通り、従来は輸入先行方式でありましたものを、輸出先行方式も認める、こういつたぐあいでありまして、できるだけ民間の声にもこたえ、またわが国の経済全体から考えましても対中共輸出というものを重要視いたしまして、逐次その実現に向いまして努力をいたしておりますことは永井委員もお認めくださると思うのであります。ただいかんせん根本的な態度としましては、現下の状況からいたしますならば、再度大臣からも申し上げております通り、やはり国連協力というその線に沿いまして、どこまでもやらなければならない、こういう立場がございますので、他の国々に対しまする同様のところまではなかなか実際問題として行きかねておるのが現状なのであります。しかしながら輸出を認めております品目につきましては、決して他国とこれを差別待遇をいたして行こうというような考えは毛頭ないのでありまして、ただ輸出先行方式に切りかえたというような点から考えまして、特にバーター方式でやつておるという点から申しまして、保証金もまず手初めとして一〇%をやる。これも今後の状況を見まして、できるだけまた早い機会に逐次引下げて行きたいということは再三申し上げておる通りなんであります。
  62. 有田二郎

    ○有田(二)委員 今政務次官からお話がありましたが、許された商品はもつと積極的にやつてもらいたい。それともう一つは、由来通産省は腰抜けが多い。通産省の役人は大蔵省にやり込められたり外務省に押えられたり、腰抜けが非常に多いことを私は長い間痛感しておる。一例をあげますと、輸出銀行法というものが今から三年ほど前に出て来た。そのときは私大蔵委員をしておつたが、通産省から連絡があつて貿易のためには不利である、何とか御協力願いたいという話が、当時の石井経理部長からあつて、私もその勉強をした。ところが当時の池田大蔵大臣——その点、大蔵官僚は非常にずるい、あした一日という日に法案を国会に提出して、どうしてもこれを通してくれ、審議の余地を国会に与えないで輸出銀行法を出して来て、結局それを通してしまつた。その後通産省から何らの連絡がない。法律は通つても、一部改正法案でまた出して、貿易に必要な措置はすべてとらなければならぬはずだ。通産省の腰抜けと通産省に計画性のない点がはつきりした。その点は大蔵省の役人の方がずつと賢くてずつと粘り強くて、頭も通産省より少しいいように私は思う。私はかりに一例として輸出銀行法の問題を申し上げておる。現実に私は通産省から交渉を受けた。こういう点はこういうふうに、ひとつ有田さん、がんばつてくれ。私は大蔵委員でありましたが、通産省にいた関係上、ごもつともだ。また輸出をするためにはかくあらねばならぬと思つて、私は委員会でがんばろうと思つてつた。ところが法案がもう一日も余裕がない。そこで池田に、絶対にこの法案を通すことならぬといつてつて来た。そうすると自由党の幹事長、政調会長が頼みに来たが、断固と、聞かなかつた。しかしこれは法案が通つてから必ず有田さんのおつしやる通り修正いたしますから、何とかこの銀行をつくらなければならぬからということで、法案を通すことにしたのでありますが、その後において、通つてしまつてから、これを修正しよう、輸出にはかくすることが便宜である、貿易業者もそのために助かるし、またメーカーもそれによつてよくなるという方向の研究と努力が足りない。私はこれを非常に痛感しておりますが、特に私は政務次官より、松尾君に聞きたい、これらの大蔵省の問題にしてもその他いろいろな問題にしても、通産省としてはいろいろ不満があるはずであります。不満があるのをそのまま泣き寝入りするというようないくじのないことでは、これからの日本の商工業というものは発展しない、こう考えるんだが、松尾君の所見を承りたい。
  63. 松尾泰一郎

    松尾説明員 ただいま非常に心強い御激励をいただきましてありがとうございます。今お尋ねの輸出銀行法の関係は、大体われわれの方の希望も通りまして、近く国会に出るだろうと思いますので、ひと一つその節は何とか御協力を願いたいと思います。何分われわれ非常に力弱いものでございますから、今後とも御鞭撻を願いたいと思います。
  64. 有田二郎

    ○有田(二)委員 力の弱いことはよく認める。われわれが力を持つおるるわけですが、われわれは悲しいかな実際の事務的なことに明らかでないので、どうかひとつ大いに勉強してわれわれのところへ出していただいて、そういつた貿易の障害になる法律の一部改正法案をあるいは議員提出なり、あるいは政府提出法案として出されんことを私は希望するわけであります。  政務次官にひとつお願いいたしたいのは、最近の人事の問題でありますが、今度永山官房長がドル問題で東京の通産局長に左遷された、こういう情報が出ておるのでありますが、これらについての御所見を承りたい。
  65. 小平久雄

    小平政府委員 永山君の東京通産局長への転任につきましては、われわれとしましては何かの問題のためにというようなことは全然承知をいたしておりません。
  66. 有田二郎

    ○有田(二)委員 その御答弁を一応私は了承します。しかし人事のあり方として、ついこの間東京通産局長を桐山君が拝命して、旬日を出でずして大阪の通産局長に転出するというようなことは私は納得できぬと思う。ここにはそういう疑いのかけられる根拠が見受けられるように思うのです。そういう疑いのかけられるような人事をどうしておやりになつたか、はたしてこの人事が妥当であるかどうか、そういうことがかりに妥当でないとするならば、そういうところから永山君があらぬぬれぎぬを着せられるような結果になるのであります。この人事のあり方についても私は遺憾だと思いますが、政務次官の御所見を承りたい。
  67. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘のように、前東京通産局長が就任間もなく大阪の方に転任になつた、それをしてまでも永山君が東京の通産局長に出た、こういうことにつきましては常識的に考えましていかにも無理があると申しますか、常識的にはちよつとおかしいじやないかという有田さんのお話は私もごもつともだと思うのであります。ただ永山君も今度通産局長になつてもらつたということにつきましては、これは大臣がその責任において行われたことでありまして、先ほど申しました通り、その間世上うわさのごときことは万々ないものと私どもは考えておるのであります。
  68. 有田二郎

    ○有田(二)委員 永山君をそういう事情大臣責任で転勤なされるのならば、なぜ大阪の通産局長にしないのか。中島君が栄転したあとの大阪へ行くのが妥当であるのに、この間辞令をもらつたばかりの桐山君のあとへ行くというのは妥当でないじやないか。永山君がおれは大阪はいやだ、東京がよいというのならば、人事を私するものでけしからぬ。由来通産省の人事というものは、私も通産省に相当いたが、どうもはつきりしない。もつと筋を通した人事をやるべきだ。こういう人事をやつたところの通産大臣を呼んでつるし上げたいと思うのだが、まずその点について政務次官の御所見を承りたい。
  69. 小平久雄

    小平政府委員 筋の通つた人事をやれということでありまして、まことにごもつともであります。ただ私どもが承知いたしておりますところでは、桐山君が従来の経歴からいたしまして特に通商関係等には明るい。これは私事で申し上げることが適当であるかどうかわかりませんが、御出身もあちらの方であられる。そういうことでありまして、特に役所の立場からいたしますならば、大阪の通産局が貿易関係等において特に重要である、そういう点から桐山君がより適任であろう、こういうことで筋を通したものとわれわれは考えております。
  70. 有田二郎

    ○有田(二)委員 苦しい御答弁だが、それで了承しましよう。通産官僚の腰が弱かつたりする原因は、人事が明朗でないからです。それで通産省の官吏がくさる。ですから明朗な人事をやつてほしい。白洲氏が飛び出して来て通産省の人事をかきまわすようなやり方をするから通産官僚が明朗でない。その点をよく考えていただきたい。  最後にもう一つお願いしたいのは、特に貿易にも関係しておるが、通産省の役人が業者にごちそうになる。私は通産省におつたからよく知つておるのだが、ときどき見かける顔ぶれが温泉に行つたり、あつちこつち行つておる。こういうことはよくない。局長会議で爾今業者にごちそうになるときには十分注意するようにやつてもらいたい。今までの長年の統制経済下の慣例から、業者の方々がいろいろやられる。農林省の方もやられるが、きようは通産関係だから、特に通産省にお願いする。どうかひとつ綱紀粛正を取入れていただいて、局長会議でも一定の方針をとつていただいて、業者にそうごちそうにならないように希望をいたしたい、この点政務次官の御所見を承りたい。
  71. 小平久雄

    小平政府委員 有田委員の御注意まことにありがたい次第でありまして、もう有田委員が元政務次官として御承知通り通産省仕事は直接業者の利害に関することがきわめて多い。こういう関係からいたしまして、通産省の職員といたしましては今御注意のようなことがないように、むしろ他省以上に注意をして行く必要があることを万々認めているわけであります。現大臣も就任以来この点には非常に意を用いられまして、あやまちのないように再三注意を大臣からもいたしているような次第でありますので、現在はただいまお話のような御心配はまずくないものとわれわれは承知をいたしております。
  72. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 ちよつと一言だけ聞いてみたいが、先ほど次官の答弁の中に、貿易について国連云々という言葉があつた。国連云々ということになつて行くと、たとえばどうして日本貿易はヨーロツパ並に行われないのか、どうして日本輸出品がヨーロツパ並に行われないのか、どうして日本だけがこれだけの制限を受けなければならないのか、こういう点を明らかにしてもらわなければならない。ひとつ御答弁を願います。
  73. 小平久雄

    小平政府委員 対中共貿易関係了承するのでありますが、先ほども申し上げましたが、わが国の対中共輸出許可品目も占領治下から漸次拡大をいたしておるのでありまして、もちろんわれわれとしてもヨーロツパ並のところまで持つて行きたい、かような方向に向つて鋭意努力をいたしておるわけであります。
  74. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 どこの国の制限を日本は受けなければならないのか、それを明らかにしてもらいたい。
  75. 小平久雄

    小平政府委員 どの国から制限を受けておるというものではございません。先ほど申しましたが、朝鮮におけるあの事態からいたしまして、わが国としましては、あくまでも国連に自発的に協力をいたして行く、こういう見地からやつておるわけであります。
  76. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 とんでもないお話です。日本の国民が食えなくなつて首をつるような日本の現在の貿易状態をあなたはどうお考えになつておるのか。ジリ貧ですよ。貿易振興なんかどこにある。とんでもないお話です。八千数百万の国民が首つつりをするような今日、自発的にそんなことをやられたのではどうするのですか。そうではなしに、たとえば香港なら香港へ出すにしても、ドイツもイタリアも英国もあれほどどんどん出しおるのに、どうして日本の品目だけは制限をされておるのか、どこの国が日本を制肘するのか、この点をひとつ専門の次長から聞かしてもらいたい。
  77. 松尾泰一郎

    松尾説明員 中共に対しまして、戦略物資と一応認定したものにつきましては、香港で処理されるとか、あるいは香港から中共以外の地域に出るというものはあまりないわけでありまして、やはり中共に対しての一定の品目の禁輸ということにつきましては、香港を通して向うに流れるようにしないということは、道義的にも適当ではないかという判断で、いろいろ禁輸の制度をやつておるわけでありまして、要は中共に対しまする物資統制の内容いかんに関するわけであります。その品目につきましては、先ほど政務次官から御説明ありましたように、戦略物資の性格を検討しまして、漸次その品目を拡大しつつある、こういうことであります。占領下におきましてはなお非常に広汎なものであつたのでありますが、それを急激に緩和するというよりも、漸次研究の上、自信のあるものからはずそうということで、漸次はずして行く、こういうことであります。
  78. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 実に妙なことを承るのですが、たとえばドイツとかイタリアとか英国から入つて来るものは、同じものであつても戦略物資でない。日本から入つて来るものだけは戦略物資だ、こういう仮定の上に立つ、そういうことがあり得るだろうか。戦略物資というのは、世界を通じて地球の上にあるものは全部、戦略物資と認めるものは戦略物資でなければならぬ。繊維製品は繊維製品でなければならぬ。しかるに日本から出て行くもののみに限つて戦略物資と仮定する、こういうことが現実にあるということは、現実にあなたも御承知なんだ。知つているあなたが、それをもう少しはつきりと聞かせなければならぬと思う。知つているのだから、よその国、ドイツ、イタリアと違つて日本は実に残念だというお気持はあなたもあると思う。それをどうして打開しなければならないか、どうして力強い政治力を持つて行かなければならないか、こういうことなんです。それをだれが、日本品物だけを戦略物資と喝破するのだろうか、どこの国なんだろうか、こういう意味なんです。日本アメリカのごきげんを伺わなければそれはどうしてもできないのだというのでは、われわれはこれからアメリカと交渉しなければならぬ。それをはつきりしてもらいたい。そうむずかしい言葉でなく、はつきりひとつお答え願いたい。
  79. 松尾泰一郎

    松尾説明員 中共向けの禁輸につきましては、各国によつて程度の差があるわけであります。日本だけが非常にきついやり方をしているということはごうもないわけでありまして、アメリカ、カナダは全面禁輸をいたしております。それからイギリスも彼独得の禁輸をいたしております。フランスもしかり。こういうことでありまして、これはざつくばらんに申し上げれば、今度の朝鮮戦争というものに対する各国の考え方の差があつて、若干そのやり方が違つておるかと思うのでありますが、従つて日本もその間におきまして、最も程度の低い水準で行くか、あるいはたとえばイギリスとか、そこらの中間並で行くべきか、あるいはアメリカ、カナダのような全面禁輸で行くべきかというのは、おのおのその国の国情にもより、また地理的な環境からいつて判断をして行くべきものではないかと思つております。従つて今御指摘のように、日本だけがむちやくちやに強いことをやつているというのは、これは私は当らぬのではないかと思います。日本日本独自の考え方で、どの程度は戦略的であるとか——総力戦の時代ですから、考えようによれば全部戦略物資といえるだろうと思います。従つてその協力の気持、あるいは日本立場という点から、われわれは漸次及ばずながらその方向に努力しておりますが、根本的にはもちろん政治的高察ありまして、われわれとしてはお答えする資格もございませんが、われわれ事務当局としてはそういうふうに考えておるわけであります。
  80. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 総力戦という点からいえば全部そうだ、ごもつともなことでありまして、御説明を承るまでもないことなんですが、しかしよその国より劣つているということは争えない事実なんです。何人も否定することはできないと思います。現に政府与党の中からも、ただいまお聞きのような不満のお言葉さえも出ている。こういうことは、口に日本貿易振興を唱えても、それに対する政治力が薄いんだ。これは事務関係のあなた方の責任と私は言うわけではない。次官にしても、大臣にしても、これらを打開する道をもつと講じなければならぬ。もつと産業人を折衝に当てで行くようにしなければならぬ。そういうところに欠陥が生じている。よその国より政治力が劣つているということは、まつたく何人だつて否定することはできないと私は思う。そういう点についていま一段の努力をして、ヨーロツパ並くらいに日本輸出をさして行きたいというのが、私たちにかけられた使命でなければならない。そうやつて行きたいのだということなんです。今後、将来にかけてもあることだし、今こそ一番大事なときなんだ。努めてそういう方向に全力を傾注して打開策を講じてもらいたいということをお願いをして、私は質問を打切ります。
  81. 坪川信三

    坪川委員長 加藤委員は関連ですか。——次の議題の審議関係もありますので、簡潔に願います。
  82. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは委員長の仰せに従いまして、実はたくさんの質問がありますが、それは次の機会に譲りまして、さきの牛場局長さんのお答えに対して一点だけ御要望をお願いして、きようは終りたいと思います。  先ほど国内の輸出商社とバイヤーとの競争が行われる、それがひいてはガツト加入の支障にまでも及ぶのではないかと懸念される原因が、外国、つまりイギリスの毛織物が日本の毛織物より安いところに基因するのだ。従つて日本の毛織物を安くするよう努力する。こう局長さんはおつしやつておるわけであります。この点は私も同感でございます。先ほど有田さんもあのようにおつしやつたのでありますが、私は大蔵省の役人と比べてみれば通産省の役人さんの方がはるかに優秀な人がそろつていらつしやる。だから優秀な人がそろつていらつしやるところで安くするような政策を強力にやつてもらいたい。実はなぜ高いかという点でございますが、すでに御存じであろうと存じますけれども、これは工場において搾取をしておるわけではありません。賃金が高いわけではございません。一体どこにこれは基因するかといえば、終戦直後材料がなかつた。織物は、綿でいえば、アメリカから十年もストツクされておつた原綿を高く買わされた。毛でいえば濠州からこれまたイギリスの売残りを高く買わされておつた。それがだんだんしわ寄せになつて、あくる年、そのあくる年になつてそれが生じて来て製品に現われて来ておる。これはだれでも知つておるわけである。決して日本は技術が低下したわけではない。ただ技術面でいえば、十年も放つておかれて、鉄砲のたまをつくり出させた。そのおかげで仕上げ加工の点だけやや劣る点が現われて来た。古い機械で織らなければならないから、そういう問題が出て来たのであつて、これはその後この点を担当されておる方々の努力によつては必ずや追いつける問題である。このように考えておるわけであります。この点については実は慎重審議をしたいと存じておりますが、この点について要望だけを申し上げまするならば、企業の合理化ということも必要でございますけれども、こういう材料の面、加工の面、輸出の面、決済の面というような総合的な問題がうまくあんばいされて初めてよい品物ができるようになるのではないかと考えておりますので、その頭のよいところで——何も大蔵省より悪いというわけではないのでありますから、大いに努力していただきたい。このように要望いたしまして私の質問を終ります。
  83. 永井勝次郎

    ○永井委員 議事進行について……。実は緊急質問の形で発言を申入れて発言をしたいと思つていたのですが、これからの議事でぜひきよう中に発言をし、答弁を得ておきたい事項がありますから、それをひとつ委員長含んでおきまして、議事の進行に努めていただきたい。
  84. 坪川信三

    坪川委員長 承知しました。         —————
  85. 坪川信三

    坪川委員長 次に武器等製造法案を議題として審議を進めます。同案に対し質疑の通告がありますから、これを許します。福井勇君
  86. 福井勇

    福井(勇)委員 本案を去る第十五国会の十二月二十三日に提案されて以来、その第一陣に若干の質問を試み、以後種々の支障から今日まで延びておりましたが、本日武器等製造法案について引続き担当者として質問したいと存じまするが、その前に武器に若干関連がありまする問題として、本法案に先だつて一点だけ質問をしたいと存じます。それはことしの一月の中旬に委員長の了解を得まして、私と永井代議士、加藤代議士、長谷川代議士四人をもちまして、枚方、香里の火薬廠の再開についてのいろいろ問題がありましたために、現地の視察をいたしました。そのときに加藤、長谷川両代議士は突発用件のために欠席され、私が団長といたしまして、永井代議士とともに現地を視察して参りました。その後すでに約一箇月を経過しておりますが、新聞紙上でもこれらの取扱いについていろいろ報道され、あるいはまた現地の方面においては、いろいろの形で陳情が国会に出されております。私たちはこの問題については、今出張委員の報告書を作成中でありまするが、特に新聞紙上でほとんど一日おきくらいに旧火薬廠問題という題目のもとに報道されておりまするから、特に通産省においては、関連大蔵省とともにこの問題を取扱つてもらいたい。現段階において政務次官はこの問題をどういうふうに処理されておりますか、この点を武器等製造法案の前にちよつと言及していただきたいと思います。
  87. 小平久雄

    小平政府委員 火薬廠を含みました旧軍工廠の処分というか、利用の仕方につきましていろいろ問題となつておりまして、委員の各位にも種々御心配をいただいておるわけでありますが、本問題につきましては、大分時日も経過をいたしておりまするし、通産当局といたしましても、なるべく早目に解決をいたしたいと考えておりますが、これをいかなる形式において利用いたして行くかという問題は、今後のわが国の経済のあり方からいたしましても、相当大きな問題でありますので、いろいろ案は出おりますが、この点はどういう案があるかということは新聞紙上その他でとくと御承知と思いますから、一々申し上げませんが、それらの案の長所、短所、利害関係につきましては、目下慎重に検討をいたしておるのであります。ただいまお話もありました通り、このことはひとり通産省の問題ばかりではございませんで、関係の各省とも十分協議をいたさなければ結論を出しがたい問題でございますので、その辺のところも十分慎重を期して、ただいま検討を続けておる際でございます。
  88. 福井勇

    福井(勇)委員 政務次官お話で大体了解はできまするが、この問題については地元の淺香代議士ほか多数の衆議院、参議院の方々からも直接その実情についていろいろ御依頼もありますし、新聞紙上には一日おきくらいにこの問題が取上げられて報道されておりまするので、本日は通産省の役人たちだけが来ておられますが、こういうことは新聞紙上に軽々に出されないように願いたい。旧工廠のあつたところの人たちは、その新聞の活字によつてきようは心配し、あしたは安心するというように非常に騒いでおります。かつて私も、私の郷里の伊良湖崎に実弾射撃場再開という説が飛びました際の苦い経験を持つておりますが、どうかこの問題は慎重に扱つていただき、新聞に発表してはいけないというわけではありませんが、事務官の方々にも新聞等に発表される際には責任のある立場において発表されたいということを希望しておきます。  次に、本論の武器等製造法案の問題について質問いたします。これは過ぐる十二月の二十二日に最初に長谷川委員と私とが質問をして、今日まで継続審議になつておるのであります。その際私は武器等製造法案を提出した理由並びに武器製造に対する助成措置がどういうふうにされておるか、この二つの問題について質問をいたしまして了解をいたしましたので、本日長時間をこれに費すことはどうかと思いまするが、なお相当たくさんの問題がありますので二、三の質問をいたしたいと思います。  まず第一に現在武器の輸出についての引合いが外国からあるかどうか、この点について責任のある御答弁を願いたい。
  89. 葦沢大義

    葦沢政府委員 現在武器の海外からの引合いにつきしては、いろいろそれらしい話はありますが、現実の問題といたしましての具体的な引合いはまだ一ぺんもございません。
  90. 福井勇

    福井(勇)委員 武器の製造については、昨年の四月、すなわち講和条約発効以来、日本においても認められ、許されておるわけでありますが、日本において現在どういうふうな生産状況にあるか、この点を説明願いたい。
  91. 葦沢大義

    葦沢政府委員 武器製造の現況でございますが、御承知のように、武器は現在のところ駐留軍の発注にかかわりますものの製造が主体でございまして、その他のものにつきましては、まだ製造の段階に至つておりません。ただいままでのところ約二千万ドルの発注がございまして、砲弾及び手榴弾が大体その大部分でありまして、迫撃砲、小銃器等につきまして若干ございましたが、その程度の状況になつております。
  92. 福井勇

    福井(勇)委員 最近武器の製造業者の実際に行われておる入札価格というものは、世間で出血価格というような文字さえ使われており、業者が悲鳴をあげておる。こういう安値入札が続くということは、われわれ日本の機械工業者にとつて非常な迷惑であります。これらの安値入札に対する対策が立てられておるかどうか。これらの対策は緊急に立てられなければならない。世間では放任されておるのじやないかという疑いの声すら起つておる。これらの問題についての対策はどうであるか。
  93. 小平久雄

    小平政府委員 いわゆる出血受注の問題でありますが、当局の見るところからいたしますならば、世上言われるほどに出血にはなつておらぬのじやないかという見方も一応成り立つのであります。しかしながら、その実際がどうかということは、個々の会社、事業場によりましても、これは事情が違いましようし、なかなか正確には把握し得ないのであります。しかしながら、今回御提案を申し上げておりまするこの法案におきましても、そういつたような、いわゆる出血受注というようなことがなるべくなくて済むように、生産分野を確定をいたしまして、取引等につきましても届出制にさせる、それが不適当な場合には戒告もできる、こういつた方向をねらいまして御提案申し上げておるような次第なのでありまして、このような方途を講ずることによりまして、いわゆる出血受注というものがなくて済むように万全の策を講じて行きたい、かように考えておるわけであります。
  94. 福井勇

    福井(勇)委員 通産省が現段階までに打つた手というものは、私は必ずしも満点ではないと思つております。そこで現在いわゆる特需と称しておりまするこの武器製造について、駐留軍の発注に対して、本日の毎日新聞などに、兵器生産協力会が意見を出して、業者が直接入札に血眼の態度で走りまわつておるというようなことをいろいろ心配しまして、これが続くということは日本の経済界が混乱をなお続けるだけでありますから、日本政府の自主性に基いて日本政府が一括受注して、通産省がこれを担当して、民間に何らかの方法で発注するという考え方はしておらぬかどうか、この点について御答弁願います。
  95. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま御指摘のように、駐留軍から日本政府が受注をいたしまして業者に発注する、いわゆる間接発注と申しますか受注と申しますか、そういつた方法をただちにとろうということは今のところ考えておりません。通産省といたしましては、さしあたつてはこの適格者を推薦いたしまして、それらによつてなるべく無用な競争を排除して、適正な値段で受注ができるようにやつて参りたいと考えておるのであります。なお生産分野の確定等につきましても、先ほど申し上げた通りであります。ただ、ただいまの福井委員の御意見も、これは大いに考慮すべき点と考えますので、将来研究いたしたいと考えます。
  96. 福井勇

    福井(勇)委員 現在日本の機械工業界のほんとうの悲鳴というのは、一にこの出血受注にかかつております。通常でありますならば、繊維工業が輸出の大部分を占めて、そうして日本の経済界を一応潤しておるという過去数年間の実情を見まして、繊維経済界がごらんの通り非常に悪く、機械工業がまた出血だというようなことになりますと、もうどうにもこうにも日本の経済界は混乱に陥らざるを得ない状態になると思いますので、武器等製造法案を出されたことは非常によいと思いますが、この安値入札などについて、日本政府において米国政府に直接何らかの手を打つてもらえないか。特に考えるのは、アメリカの今の意向とすれば、日本に対して再軍備の慫慂をするかもしれぬというにおいがありますが、再軍備論をどうのこうのということは一応たな上げしておいて、アメリカ側が日本の業者に対してほんとうに発注するというときには、日本政府と相当連絡をとつて、好意ある発注をしてもらうように、政府からワシントンへ直接行つて、そうして具体的な話合いを進めにやならぬ。出先の大使館あるいは従来の在外事務所は国内の状況をよく知らない。知らないと言つては語弊があるが、実際国内の機械業者の実情を把握しておらない。今日本において実際を把握しておる業者でもよろしい、また通産省の直接の担当官でもよろしい、あるいは政務次官でもたれでもよろしい、こういう人たちがアメリカへ直接行つて、かくかくの事情だということを、わかつているであろうけれども知らせるために足を運ぶということは、これは世上行われている一つの作戦でもありますので、向うへひとつ派遣して実情をよく説明することを、日本の機械工業のためにも、経済再建の重大な役割をするという立場においても考慮を願いたい。  またついでに尋ねますが、それには生産分野を確定することがぜひとも必要だと思う。現在の日本の機械工業者は戦争前に部品の受注を多くしておつて、その当時の旋盤があるから、今日においても、あるいは今後においても、これらの設備機械でもつて受注ができるものと思つておる。全部がそうではないであろうけれども、そういう考えを持つておる人も若干ある。ところが、すでに十数年の鎖国状態の結果新しい兵器、武器をつくる際に、今までの既存工作機械ではだめなことはもうはつきりしておるのであります。世界の進み方がもう急速にかわつて来ておる、そこでさしあたつては生産分野を確定するということが必要と思うが、政府はこの点をどう考えるか。指定制度というものはよいとは思うが、いかなる条件のもとに指定するか、私は四つばかりその案を持つてはおりまするが、いろいろ通産省の意見も一ぺん聞いてみたい。それらの中には技術的な問題も最も私は重大なものと考えますので、これらの問題についていかように考えておるか、これを尋ねます。
  97. 小平久雄

    小平政府委員 御質問のうち前段の受注制度につきまして、米国政府と直接話し合え、こういう御意見でありますが、本日は大臣も見えておりませんから、大臣にもよく意のあるところをお伝えいたしまして、善処いたしたいと考えます。  なお後段の指定制度というお話でございますが、今回のこの法案におきましては、一定の基準にかなうもの、こういうものにつきまして、選択の上許可をして行こう、こういうことでありますので、特にどれこれを指定する、こういう一方的な関係にはならないものと考えております。
  98. 福井勇

    福井(勇)委員 次に銃弾、砲弾の爆発物の製造業者には、従来の火薬取締法適用を受けることになるので、さらにこの兵器、武器製造法案によつて二重の覊束を加える必要はないであろう、この点についての説明が願いたい。
  99. 葦沢大義

    葦沢政府委員 火薬類取締法との関連におきましては、そこをダブらないように排除をいたしております。もとより火薬類取締法関係は災害の防止を目的といたしております。この法案においては、事業の調整と、公共の安全を目的といたしておりまして、公共の安全と災害の防止の点において若干のニユアンスはありますが、その面のダブリについては、行政上二重にならない取扱いをいたすようにいたしておる次第であります。
  100. 福井勇

    福井(勇)委員 そのダブらない点がはつきりすればそれで了解いたします。  次に武器生産の今後の見通しはどうであるか。これは非常に大きな問題でありまするから、一口には答えられないかもしれません。というのは再軍備問題を旗じるしに打出していないという現段階において政府委員にここで説明を要求するのはどうかと思いますが、さしつかえない程度でこの見通しをひとつここで発表していただきたい。
  101. 小平久雄

    小平政府委員 福井委員も御承知通り、現在製造いたしております武器はほとんど駐留軍の発注にかかつておるわけでございます。従いまして、その発注額が幾らになるかということは結局はアメリカ予算関係でどうなるかというところまで参りますので、なかなか明確な予想はつきかねるのであります。ただ現在通産省におきまして察知し得る限りにおきましては、現アメリカの会計年度内におきまして、大体総額五千万ドル程度ではないかと一応の目安を持つておるだけであります。
  102. 福井勇

    福井(勇)委員 その問題については、ヨーロツパの西欧再軍備について、ほとんど昭和二十年以後の状態を見ると、アメリカが費す年々の費用は六十億ドルないし八十億ドルに及んでおります。もちろん年々の数字はありますが、大体そういう数字になつております。そこで私くれぐれも申しますが、再軍備是か非かというような問題はたな上げとしておいて、これらの受注の見通しがはつきりつけられるように、先ほど申したように、やはりアメリカの方へ使節を派遣するなりあるいは何らかの有効適切なる方途をもつて日本の駐留軍のみならず、東南アジア方面においても、あるいは朝鮮においても消費する大部分のものを、素材を入れて、日本において製造するというふうに積極的に声を呼びかけてもらいたい、これが私たちの考えであります。  次にこの武器製造法は必要最小限に押えようとしておるようでありまするが、その限度を具体的に示してもらいたい。
  103. 小平久雄

    小平政府委員 武器製造事業を必要最小限度に押えようとしているのじやないかという御質問でありますが、申すまでもなくこの武器生産というものが、一般の生産財の生産ということとは本来その性質を異にいたしておりまするし、また先ほども申しました通り、ただいまの武器生産というものは、いわゆる特需という関係にもなつておりますので、これがあまり厖大になるということは、受注そのものの将来がはつきりしない以上、武器生産事業そのものにとつてもどうか。つまり国民経済全体、産業構造全体から考えましても、またその武器製造事業自体から考えましても、ただちに大きなものになることはどうかというような見地からやつておるのでおりまして、その具体的なる最小限というものは、一にかかつて状況のいかんによるわけでありまして、具体的にこれをどの程度の能力ということは、なかなか実際問題として申し上げかねるのであります。
  104. 福井勇

    福井(勇)委員 現段階において、まあ説明しかねるとおつしやるならいたし方ありませんが、これは機械工業として相当重大な問題でありまするから、現在の通産省の機構をもつて、これを遺憾なからしめる見通しをつけ、その処置をとるということは非常にむずかしい。だからこれは、有田君が申しましたような、貧弱だからということは決して私は申しませんが、有力なるメンバーをどしどしこの方面に増してそうしてあらゆる知能をしぼつて、この日本の機械工業といわず、各種工業の基礎となるべき機械工業の再建のためにも、十分なスタツフを今後整えるようにしていただきたい。大蔵省の方が言うことを聞かなければ、言うことを聞くように、従来機械技術というような面については、大蔵省の役人どもはさつぱりわからぬ。それでいいと思つているような気配もありますので、今後はもう徹底的にこの蒙を開くように、私たちも努めますから、通産省の方においてもその心持でやつていただきたい。  次に航空機の製造事業は届出制になつておるが、航空機に対する対策が異なつておるのは、これはどうした理由であるか、この説明を願いたい。
  105. 小平久雄

    小平政府委員 この点につきましても、福井委員が一番よく御承知通り、航空機事業は、同じ機械工業のうちにおきましても最も総合的な、また高度の技術を要する工業でございますし、また需要の面から考えましても、ただいま少くとも国内の需要もそう急にこれが増大をいたすということはちよつと想像がいたしかねます。また外国からの受注に至りましては、技術の遅れている点等から申しまして、ただいまの段階におきましては、そう多くを期待いたすことはできかねると思います。そういう事情からいたしまして、これをあえて許可制度等にいたさないでもそう事業の濫立ということはないであろう、こういう見通しのもとにこの方は届出制にいたしたのであります。一方武器につきましては、御承知通り駐留軍からの発注をめぐりまして、相当事業が濫立の傾向にあるのではないか、少くともそういう気配にあるということが見受けられまして、そのために、また先ほど来お話の出ました出血受注等の問題も起きておる際でありますので、これを許可制にいたしまして、規制をいたして行こう、もちろん一面におきましては、武器の持つその本来の性格からいたしまして、公共の安全という面からいたしましても、これをどうしても規制いたす必要がございますので、武器に関しましては、これを許可制ということにいたしたのであります。
  106. 福井勇

    福井(勇)委員 武器等製造法案については、一番初めに了解を受けておきましたように、相当重大な問題でありまするから、なお時間が相当かかる状態にございます。従つて本日は私の分をあまりやりますと、ほかにインターフエアをしてもいけませんし、なお陳情もあるやに聞いておりますので、なお続けるという点を委員長の御了解を得ておきまして、一点だけ最後にお尋ねしておきます。  昨日の大蔵通産両委員会において、通産大臣は、日本の工業については、重化学工業、ヘヴイー・アプライド・ケミストリーとでもいいますか、ケミストリーの方に重点を置くべきだというふうにとれる答弁をしておるようであります。これは官報あるいは速記録を調べたものではなくて、新聞の記事しか私は今持合せがありませんが、その重化学工業、ヘヴイー・インダストリーのうちでもアプライド・ケミストリーの方を最も重要視しなければならぬというふうにするのは私は間違いだと思う。重要視するのはよろしい、しかしあらゆる武器生産などについての基礎工業であるメーカーの方面を重視しなくては——ケミストリーの方の基礎機械はやはりマシンであります。そういう点からいつて、両々相まつて重要視してもらわなければならぬというふうに、私は技術的な立場において強く考えますので、本日大臣はおられませんが、この点をお伝えおきを願いたい。  なお引続きこの次の委員会において、他の委員諸賢とも相談の上質問を継続させていただきたいと思います。
  107. 坪川信三

    坪川委員長 この際、先ほど永井委員よりお申込がありました件について同君の発言を許します。永井君。
  108. 永井勝次郎

    ○永井委員 本員は前回小笠原大臣に対しまして、先ほど福井委員からお話のありました通り、休会中大阪府の旧香里火薬工廠の敷地利用に対する適否の問題について調査をして参りまして、そのことを前回の委員会におきまして大臣お話をし、これに対する調査をわれわれいたしましたものの、あそこの場所は火薬製造として利用するのには適地ではないという結論に達している、これに対する取扱いはどういうふうになされるお考えであるかということをお尋ねしたいのでありますが、この問題については、火薬は差迫つて急を要するというような問題ではないから、慎重に審議をする、こういうような大臣の答弁があつたのであります。ところが、最近の新聞で見ますると、問題の解決が非常に差迫つている。昨今の新聞によりますと、来週中にはこの問題の結論を決定するというような話でありますが、この運びは新聞の報道通り間違いがないかどうか。来週中にも決定をせられるというような運びであるかどうか、この点を伺います。
  109. 小平久雄

    小平政府委員 旧軍工廠の払下げの問題につきましては、先ほどもお話を申し上げたのでありますが、問題が相当重要でありますので、あらゆる角度から慎重に検討いたしているのであります。ただいまお尋ねの来週中にも決定するのかということでありまするが、私の承知いたしておりまするところでは、来週中に決定するというわけではございませんで、大体来週あたりから関係各省の責任者の間におきまして協議をいたして行こう、こういう段階であります。
  110. 永井勝次郎

    ○永井委員 新聞の報道されるところによりますと、これを国有民営にするか、あるいは民有民営にするか、あるいは共同で経営されるか、こういうような経営の方式やその運営の面についてはいろいろな条件が検討されているというその条件が書かれておりますけれども、これらの運営の前提条件となるこの敷地が、はたして適当であるかどうかということについての検討が少しもなされていないように考えているのでありますが、この点についてはどういうふうなお考えであるか、承りたい。
  111. 小平久雄

    小平政府委員 新聞紙上にはもつぱら経営形態をどうするかというような面が多く出ているようであります。しかしながら当局といたしましては、あらゆる条件について検討を加えているのでありまして、先ほどお話が出ました香里等の場合におきましても、当局においても十分研究を進めているわけであります。以前工廠が軍工廠として活動をいたしました当時と現在とにおきましては、工廠自体も、あるいは爆撃を受けたものであるとか、あるいは他に転用されているものであるとか、その他相当変形いたしているものもありましようし、また付近の環境にいたしましても、当時とは非常に異なつているものもございましようし、そういつた面につきましても十分研究を重ねております。
  112. 永井勝次郎

    ○永井委員 遊休となつている敷地及び施設の活用ということに重点が置かれて、それの前提条件になります適否の条件というものが埋没しているんではないかという疑いが十分持たれるわけでありますが、この決定にあたりまして、政府は、現在のその敷地のいろいろな諸条件、適当か適当でないかという条件と、今後これを活用して行こうという条件と、どのような割合において考えておられるのか。
  113. 小平久雄

    小平政府委員 お尋ねの点はどのような割合にということでありますが、それは数学的にどちらを何割の比重で考慮するというようなわけには参らぬと思います。それらの点を総合的に研究いたして判断をいたす考えでおります。
  114. 永井勝次郎

    ○永井委員 旧軍工廠としてこれらの敷地が利用された環境と、終戦後における七、八年の時間的な経過と、その後における変革された社会情勢というような、そういういろいろな条件というものは、非常な違いができて来ておると思うのであります。以前の適地は今日必ずしも適地ではない。こういうような変革が十分に取入れられて考えられなければならぬと思うのであります。この敷地の適否の決定にあたりまして、たとえば地勢的条件は少しもかわらない、しかしながらこの地勢の上の環境、社会情勢、社会的な諸条件、こういうものが非常にかわつておる場合に、この元の敷地を回復することによつて、その社会環境なり社会情勢なりに重大な影響があると考えられる場合には、これをとりやめなければならないと考えるのであります。この点について地勢的な条件と社会的な条件とのウエートを、政府は何割というような数字的な根拠ではなしに、どのような心構え、どのような基準に立つてこれの価値判断をされるのであるか、これを承りたい。
  115. 小平久雄

    小平政府委員 先ほども申しました通り、ただいま御指摘のような条件につきましては、総合的にこれを判断をいたしまして、決定をして参りたいと考えております。
  116. 永井勝次郎

    ○永井委員 香里の場合、地元に非常な反対の動きがあるということを承知しておられるかどうか。それから枚方、寝屋川両市においては、市会が満場一致をもつてこれらの反対の決議をしておる。正式な決議をもつて市のそれぞれの意思が当局に伝達されておる、こう考えておりますが、これの取扱いについては、どのような信憑性をもつてこれを考慮のうちに入れられておるのであるか、これを承りたい。
  117. 小平久雄

    小平政府委員 ただいまおあげになりました実例につきましては、私どもも直接陳情も承つておりまするし、事情もよく承知をいたしております。従いまして、そういう点もよく慎重に考慮の上で事を運びたいと考えております。
  118. 永井勝次郎

    ○永井委員 戦前のいろいろな産業構造なり社会諸条件というものと、戦後における産業構造と社会的諸条件というものは、先ほど申しました通り非常な変革をしておる。その場合単に旧軍工廠がここにあつたんだからというような固定した条件でものを考えないで、新たなる社会情勢と産業構造への一つの展望の上に立つて、この場所、あの場所というようなものを広い範囲において選定して、新しい産業構造への合理的な立地諸条件を整備する、そういう考えの上に立つて問題を発展させて考えて行くというお考えがないかどうか。
  119. 小平久雄

    小平政府委員 御意見はまことにごもつともと存じますから、十分尊重して参りたいと考えております。
  120. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、現在の香里火薬工廠の場合、確かに地勢的条件は、山があり、川があり、起伏しておる条件というものはそのままであります。しかしながらこの周囲の住宅というものは終戦当時から比べますと、約八倍に近い戸数がこの近辺に増加しております。火薬工廠の立地条件としては不適当であります。それから元使用いたしました地下設備、これは爆破されております。地上建物は腐朽して使用にたえません。丈夫な建物は小学校とか公共的な官庁とかそのようなものに転用されておる、そうして残つておるものは民間製粉工場として利用されておる、こういうようなことで現地の条件が新しく出発するのと何らかわらないというような状況になつております。その近くに祝園というところがあつて、これは現在米軍の火薬貯蔵地帯になつておるようであり、引込線もついており、関連産業との連絡その他においても立地条件は香里に比べて何ら劣るところはない、こういうような状況になつておりますが、これらをかれこれ比較いたしまして、香里に火薬工廠を開設いたしました場合における、あの地帯に与えるところの非常な不安、非常な影響を十分考えましたならば、少くもその地域社会に対する生活安定が政治の目的であり、不安を与えないことが政治の要諦であるという考え方に立つてものを処置いたしますならば、常識があれば、香里を火薬工廠の適地であるとして再開するというような結論は出て来ないのではないか、私はかように考えるのでありますが、香里、祝園、こういう二つの適地を比較検討せられ、香里再開の場合におけるその地域社会に与える大きな不安と影響を十分にお考えになつておられるのであるか、この影響をどの程度に認識されておるのであるか、これをひとつお伺いしたい。
  121. 小平久雄

    小平政府委員 先ほど来申します通り、これはひとり香里の関係と申さず、旧軍工廠の全体につきまして、あらゆる条件を慎重に検討の上で決定をいたしたいと考えておるわけであります。
  122. 永井勝次郎

    ○永井委員 ことに香里の場合は、明治四十二年に第一回の爆発をやり、昭和十四年に第二回の爆発をやつて、これらの殉職者が百三十余名、負傷者を加えますと数千人、全焼したものが二百六十何戸、半焼が九百何戸、全壊が一二十何戸、半壊が一千何百というような重大な影響を与えておる。これらの記憶のある人及びその当時の話を聞いておる人々にとりましては、ここに火薬工廠が開設されることによる生活不安、生命危険が重大であることは、私は当然のことであると思うのであります。これらの点に対しまして、政府がもしあたたかい愛のある政治を行うというならば、少くも両市の市会における反対の決議、現地における婦人、子供老人等を加えました切実な反対の要求、こういうものはすなおに受入れて、そうして一日も早くこれらの地域社会におけるところの不安を安定させるということが、政治の要諦ではないかと考えるのであります。この意味において政務次官は、現地に起つておるこれらの不安のうず巻き、それを今再開させるかどうかということによつて、現地に与えるところのいろいろな影響というものを即刻解決することが、政治の道であるとお考えになつておられるかどうか、これをひとつ伺いたい。
  123. 小平久雄

    小平政府委員 だんだんのお話でありますが、先ほど来繰返して申しております通りであります。いやしくも生命に対する不安を与えるというようなことは、万々排除すべきものでありまして、そういつた点は十分慎重に検討いたして参る考えであります。
  124. 永井勝次郎

    ○永井委員 時間が経過していますし、なお現地の松原委員も、これらの問題について質疑があるようでありますから、私は最後に一つだけ述べまして終りたいと存じます。少くも政治の要諦は、大きな国の政治におきましても、一人のこじきの生命、こじきの生活の安定をはかるという、行き届いた政治の心構えというものが、民主政治のほんとうのあり方だと思う。一人のこじきの生活にもあたたかい愛の手を延べて行くというような、そういう心の持ち方でなければならない。いわんや、この香里工廠再開によつて、何十万という人の生命が脅かされ、その周辺の影響を考えますならば、何百万という人であろうと思う。そういう人たちの生活に不安を与える。そうして婦人、子供を初め、住民の人たちが、仕事に手がつかないで、何回となく東京に、あのような陳情運動にやつて来ておる。あの真剣な一つの動きから見ましても、われわれが立場をかえて、あそこに住居を持つておる一員であると考えましたならば、われわれの不安というものが非常なものであるということは、十分におわかりであろうと思う。問題は一会社の利益のためにこの敷地を利用するということに重点を置くのか、こういう人たちの生活の不安を一日も早く取除いてやるというところに政治の重点を置いているのか、ここを決定するかどうかということにある。言葉ではどのようなことを言われましても、問題は一営利会社の利益のためにこの敷地が再開されるか、地域社会の人々の生活を安定させることに政治の重点を置いてものを決定するか。これが香里工廠が適地であるか適地でないかということを決定する一つのわかれ道であると私は考えます。この意味において、私は現地を見まして——われわれが参りましたときには、あの地域の子供たちが全部、火薬反対という旗を振り、あるいは婦人の人々が全部道路に出てきて、われわれがかりに総理大臣になつて郷里に錦を飾るとしても、このような歓迎は受けないであろうというほどの真剣なものでありました。これはだれかが運動して利益的にやつたものではなくて、自分たちの生命の危険から、自然発生的にああいうような動きになつて来たものであろうとわれわれは受けとつて、住民の人たちの不安をみずからの不安のように感じて、ここに帰つて来たわけでありますが、一営利会社の利益のためにこれを決定するか、住民の生活安定のためにやるかという、その結論をわれわれは静かに見守ることにいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  125. 松原喜之次

    ○松原委員 関連して……。
  126. 坪川信三

    坪川委員長 関連ですか。大体尽きていると思いますから簡潔に願います。
  127. 松原喜之次

    ○松原委員 承知いたしました。小平次官がこの問題を慎重に考慮する。総合的に、合理的に考えるとおつしやつた、その言葉に対しては、私は敬意を表し、かつ信頼をしたいと思うものであります。しかし私が私の身をもつて通産省の首脳部諸君に会うた感じから申しますと、何が何でもこれを再開にひつばつて行きたいというような気持が、相当強くあるのではないかと疑わせる証拠がある。一例をあげますれば、大阪府の商工部長あるいは副知事というふうな人が、枚方市と寝屋川市の当局者を府庁に招致して、そうしてできるだけ地元の反対を緩和するように努力しろ。しかもその口実たるや、もしこの日セル——はつきり申しますが、日セルのごとき比較的危険度の少い会社が経営する方がより安全であつて、もしそれをしも拒絶するならば、この次には国有国営になつて、もつと手ひどい、危険な工場になるから、今において早く反対の空気を緩和した方が、住民のために得であろうというようなことを、はつきりと申し、あるいは枚方の市会議員に向つて、利をもつていざない、あるいはこれらの口実をもつて、欺瞞的な勧誘をいたしまして、そうしているいろいろと好ましからざる運動が行われておりまするが、この震源地がどうやら東京にあるような気がしてならないというのが、地元の一般の空気であります。先ほど永井君からお話がありましたように、昭和二十年に七百戸くらいであつたあの近辺の住宅地が、すでに五千七百にふえておる。その人口は二方四千にふえておるのであります。こういう市街地、現に敷地から二、三百メートル離れた所までたくさんの住宅が迫つて来ておるのであります。こういう住宅地域にきわめて近接した土地に、こういう火薬関係の工場があるなどということは、常識上考え及ばざるところであります。しかるにもかかわらず、通産省の専門の人たちは、その現地へ行つて、そうして旧工廠の中だけを見て、もちろんそこには新しい家も建つておりません、住宅も建つておりません、ただ学校があつたり、あるいは旧工廠の建物を転用しておる工場があるだけでありまするが、その以外は全部元のままの草ぼうぼうたる、いわば山の中のような感じがいたす所であります。そこだけを見て、現に小笠原通産大臣はおととい、あそこは君、山奥じやないかと言うておられますが、通産省のそれらのことを管掌しておる人たちは、これを山の奥なりと、次官なりあるいは大臣なりに報告しておるらしいと思われるふしがここにもあるのでありまするが、しかし事実は二、三百メートル離れた所に、すでに住宅地が迫つておるという状況であります。その一歩外へ出ましたら、環境がまつたくかわつておる。二万数千の人口をそばに抱えておるような所に、火薬の充填工場が置かれていいものであるかどうかということは、まことに明らかな問題であるにもかかわらず、しかもその中だけの地形を見て、そうして適地であるというような報告が現に通産省になされておると私は思う。かつそれが大阪府へ相当好ましからざる影響を与えた事態も、今から一箇月ほど前まであつたという事実、これらのことは、私どもがこの問題に関係して痛切に感じたところでありまするが、小平次官は一体通産省のこれらに対する報告を耳にしておられるであろうが、私の申したような報告があなたの耳に入つておるのではありますまいか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  128. 小平久雄

    小平政府委員 通産省の方針につきましては、先ほど来重ね重ね申し上げている通りであります。いやしくも個人ないしは一営利会社の利益のために、国民の多数にその生命財産の不安を与えるというようなことは、これはどなたがその衝に当りましてもおやりにならないことであるということはもうあらためて申し上げるまでもないところと存じます。またただいま松原委員から大阪府の当局者がいろいろ申されたとか、あるいはその根源が通産省方面にと申しますか、東京方面にあるらしいというようなお話でありましたが、事大阪府に関することはわれわれ存じませんが、いやしくも通産省に関する限り、いろいろな好ましからざる手段によつて無理に再開をいたそうといつたような動きは絶対ないはずであります。また現地の模様につきましても、われわれも報告を聞いておりますが、決して構内だけのことに関心を持てばよろしいのではないのでありまして、先ほど来これも申しましたが、もちろんこの近接地の状況等につきましても、十分これは慎重に考慮せなければならぬことはこれまたあらためて申し上げるまでもないところと承知をいたしております。
  129. 松原喜之次

    ○松原委員 小平次官の御答弁によつて、私はまことにありがたいと信頼をいたすのでありますが、なお一点申し添えておきたいことは、香里の地点は大阪と京都の間の唯一の住宅地域でございまして、この香里工廠の跡といえども、もし一たび開放せられたならば、少くとも最低三百円から五百円、あるいは千円以上の地価が出て参るような土地であります。こういう地価をもつていたしましても、いかに火薬の装填工場などに不通当であるかということは経済的にまことに雄弁に物語つておる証拠であると私は思つております。しかるに私は同じ木津線で宇治の火薬廠及びこり枚方の小松製作所等とともに一連の生産系列として香里と同じような、あるいはそれ以上に運輸上あるいは連絡上便利であるところの土地が木津の沿線にあることを発見いたしておるのであります。先ほどちよつと永井委員が触れましたが、しかし単に旧祝園の二百万坪のみならず、その附近には相当広い丘陵地帯がございまして、そしてもしかりに香里のあの土地を住宅地にするために先に払い下げられて、その金をもつてかりにその数倍の土地をもつと危険の少い人跡まれなるところに持つて行かれるにいたしましても、その金でもつてはるかに広い面積を、しかもその十分の一かあるいは二十分の一の金をもつて買い得るような適地がその沿線にあるのであります。われわれはそういうふうな条件を見て、わざわざこういう住宅地に危険な工場を持つて来られるというようなことは、まことに理解しがたいというふうな結論に達しておるのであります。そこで同じような立地条件の、かももつと適地がたくさんあるが、それらの点について御調査になつたかどうか、また将来そういう点についてもう一度出発し直して調査し、そうして住民の安心を得られるような処置をとられる御意思があるかどうか、この点についてお伺いいたしたいのであります。
  130. 小平久雄

    小平政府委員 松原委員も御承知のように、ただいま問題になつておりますのは、旧軍工廠につきまして、これをどう活用して行つたならばよろしいかということが問題なのでありまして、その中のどれかが利用できないから、それにかわる新しいところを物色して、そこに持つて行こうといつたようなところまでは実は問題になつておらないのであります。従いまして現在の香里にかわる適地があるという話でありまするが、またその適地について調べたかという御質問でありますが、私の承知している限りにおきましては、そういつた代替地と申しますか、そういつたところの調査ということはいたしておらないのではないかと了承いたしております。
  131. 松原喜之次

    ○松原委員 新しいところを研究したことがないというお話でありますが、もしこの火薬製造のために新しい設備が必要である、他の火薬製造所だけでは不足であるというような際には、必ずやその新しい施設を物色せられなければならないと思います。しかもその前提として旧工廠が全部再開されて、しかる後不足しているかどうかを考えるよりも、むしろその中で香里はまず不適地であるというふうな考えから新しい設備を物色するという必要が起つて来る方が、私としてはまことに望ましいと思つております。そこで次官としてはまずそういうふうな前提のもとに、新しい、たとえば祝園のごとき土地をひとつ研究してみる、将来必要の場合に備えて研究してみるというふうな心構えがあるかどうかということを承りたいのであります。
  132. 小平久雄

    小平政府委員 先ほども申しましたが、通産省としてただいま本問題を取扱つておるというのは、申すまでもなくこれが国有財産であり、しかも大部分が遊休になつておる。こういうところからこれを通産行政の点からどう活用すべきかという点で取上げておるのでありまして、ましてやただいまこれをいわゆる国有国営で続けて行こうというような結論も今出ておるわけでもございません。従いまして、新たなる土地を物色して、それが従来の工廠にかわるものでありましても、あるいは将来必要だという見地からいたしましても、別段国がみずからこういつた火薬廠なり、その他の製造所なりを経営いたして行こうという立場にはただいまのところございませんから、従いまして国がそういつた土地について今進んで物色をいたすというような段階にはただいまのところないわけであります。あるいは個々の企業におきまして、そういうことを考えるかもしれませんが、少くとも国の立場からいたしますならば、そういう必要に迫られておらないわけであります。
  133. 坪川信三

    坪川委員長 この際お諮りいたしますが、淺香議員より委員外発言の要求がありますが、これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 坪川信三

    坪川委員長 淺香君。
  135. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 ごの問題で非常に時間をとりまして、特に委員長から約一分間という時間の制限を受けまして質問をお許し願つたのでありますが、先ほどから福井委員、永井委員、松原委員からそれぞれお話があり、また政務次官からいろいろ御答弁になりまして、その中で寝屋川市会並びに枚方市会が一致して反対の決議をやつておる。またしばしば地元の婦人の人たちが上京して参りまして、先般もたしかこの委員会でありましたか、委員の皆さん方の深い御理解を得ましてこの面前に立ちまして、その婦人の方々から切なるところの叫びと申しましようか、それに近い陳情がありましたが、子供をはらんだ婦人までが血を吐くような思いで陳情をしておられましたこの状態なり、その雰囲気は当局においてもよく御承知のはずであると思うのであります。それにつきましては政務次官もよく前後の事情了承して、また通産省としては、こういつた地元のこれだけの反対もあり、住民の生命に不安を来すようなことはあくまで避けて行きたいという方針をお述べになりまして、私ども地元を代表しております議員にとりましても、非常に喜びの気持であります。特にこの問題は先ほどから各委員のそれぞれの質疑応答の形によつて現われましたように、過去において二回の大爆発をなした、そして四里四方が被害を受けましたがために、身をもつてこのきつい災害を体験いたしておるわけなのであります。その点につきましてはよくおわかりのことと思うのでありますが、先ほど松原委員でありましたかのお話の点、通産省の方から大阪府の方に、この問題を民間会社に指定するという条件において固めよということを申しましたことは事実でありまして、それがために大阪府の商工部長におきましては、枚方市の市長を呼び、あるいは議長を呼んで、この問題を固めよと言うた事実があつたのであります。それを私ども聞きまして、けしからぬ、大体通産省の方から大阪府に向つて固めよというような指示を与えることは不審だというので、地元へもどりまして、知事なりあるいは副知事なり部長なりに会いましてその真偽を確かめましたところ、確かに通産省の方から固めようという話があつたので、両市の市長なり議長なりを呼んで話をした。そういうことは越権ざたであるというので、私どもが詰問をいたしました結果、その翌日商工部長は、きようまではそういう考えであつたが、今後はこの問題に対しては大阪府の商工部長は首にかけても反対するというような新聞発表をいたしたような事柄もあつたのであります。そこで特に御理解をいただきたいことは、通産省としてはそういつたことはおそらくないであろうと政務次官も否定的なお話でありますけれども、事実はそういうことがあつたのであります。ですから永井委員お話のように、一会社の利益をはかるためにやるのだ、また住民のこの不安というものをどれだけ反映して、どれだけ真剣に考えているかというような御質問に対して、うがつた気持でただいま私たち聞いておりました。くどいことは申しませんが、政務次官から住民の生命の不安はあくまで避ける方針であるという、非常に誠意のある御答弁を聞きまして、満足しておる一人であります。この問題に関しましては、もう御返事はいただかなくてもけつこうでありますので、どうか十分慎重にお考えをいただきますよう御善処方をお願いいたしまして、委員外の発言を深く感謝いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  136. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、次会は十六日午後一時より開会いたします。本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十五分散会