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1953-02-12 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十二日(木曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 永井勝次郎君       有田 二郎君    大倉 三郎君       河合 良成君    小西 寅松君       首藤 新八君    辻  寛一君       中峠 國夫君    福井  勇君       福井 順一君    南  好雄君       宇田 耕一君    長谷川四郎君       山口シヅエ君    加藤 清二君       木下 重範君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         大蔵事務官         (為替局長)  東条 猛猪君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 二月十二日  委員青木孝義君辞任につき、その補欠として有  田二郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十一日  中小企業維持育成施策に関する陳情書  (第一  一七一号)  中小企業振興に関する陳情書  (第一一七二号)  電源開発資金等に関する陳情書  (第一一七三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  輸出品取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第四五号)  武器等製造法案内閣提出第三号)  化学肥料に関する件     ―――――――――――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日はまず化学肥料、特に春肥に関し、政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。小平政務次官
  3. 小平久雄

    小平政府委員 御承知ように、肥料、特に春肥の問題につきましていろいろ話題に上つておりますので、最近の情勢につきまして御報告申し上げたいと思います。  硫安生産につきましては、国内需要が約百五十万トンに上ることは御承知通りであります。これを確保いたしますとともに、輸出産業としての基礎を確立するために、増産に努めて来ました結果、本年度は約二百万トンの生産を確保し得るに至つたわけであります。これを前年度からの繰越し在庫を合せますれば、大量の輸出が可能となるに至つたのでありますが、昨年の夏ごろから硫安国際相場は急激に下落し、国際競争はきわめて困難な状態に立ち至つたのであります。ここにおきまして輸出を断念して減産をいたすということをあえてしますならば、大規模固定設備を保有する硫安工業特殊性からいたしまして、生産コストを高め、農家に対しましても廉価に肥料を供給することが不可能になるという次第であります。輸出市場を喪失して硫安工業を将来輸出産業として確立しがたいことになるのでありまして、国内におきまするいわゆる安定帯価格は、御承知通り九百円を中心といたしまして上下三十円でありまするが、これを相当下まわる不利な輸出価格にもかかわらず、昨年末輸出を強行したのであります。しかし消費者側といたしましては、右の事情を容易に了解されませんで、現在の春肥価格つり上げ策として出血輸出をしたのではないかとの非難が強いので、政府及び業界はその誤解の解消に努めますとともに、本年に入つて以後は大事をとりまして、輸出を停止して不安なからしめておるのであります。なお過去の出血輸出による損失につきましては、たな上げを行いまして、国内消費者にはその損失が転嫁されないように配慮いたしておるわけであります。また将来、硫安コスト国際競争に耐えるまで引下げることを目標に、恒久的な合理化方策考えておるのであります。  しかしながらこれらの問題の解決ためには、政府以外の各界の権威者意見をも聴取することが適当であると考えまして、あわせてまた国会の方面におかれましても、このよう要望もございましたので、昨年十二月二十六日の閣議におきまして、肥料対策委員会を設置することとし、一万田会長以下、中立委員メーカー代表委員消費者代表委員各四名、流通界代表三名を委嘱して、一月二十七日第一回の委員会を開催いたしたのであります。  第一回の委員会におきましては、本委員会の将来の運営方針につきまして協議が行われ、消費者代表委員からはその際、至急当面の春肥価格裁定をなすように希望がありましたが、メーカー代表委員その他から、本委員会はあくまで肥料問題の根本対策検討すべきであるとの意見が具申されまして、結局会長裁定によりまして、本委員会はもちろん根本策検討にあるが、それについても現状把握をまず第一にやらなければならぬであろうということになりまして、第二回の委員会メーカー側代表委員より硫安工業現状説明、特にコスト内容説明を求めることとなつたのであります。  第二回の委員会は二月四日に行われましたが、その際におきまして、藤山委員より硫安工業についての詳細な現状説明がございましたが、特にコスト内容については、別に小委員会を設けて検討することとなつたのであります。翌五日の右の小委員会において、コスト検討に入りましたが、専門的事項にわたるものが非常に多いために、さらに慎重を期するため専門家にその検討を委嘱することに申合せをいたしたのであります。  二月十日に第三回の委員会を開きまして、冒頭に川北会長代理より、小委員会での検討の結果を報告され、会長より今後の委員会審議について諮りましたところ、消費者代表委員より、当面の春肥価格についての委員会態度表明方について、重ねて要望がありました。そこで会長も、本委員会は当面の問題の解決ため設置されたるものではありませんが、客観情勢もありますので、この際政府等において、至急処置し得る対策検討いたし、それによりまして、メーカー側としてもできるだけ消費者要望に沿うよう努められたいとの発言がございました。  そこでその席上、大体の対策として一つの線が出ましたが、その線はまず第一には、国家資金による融資の利率を、造船並に年七分五厘程度引下げられないかということであります。現在は一割になつておりますが、これを七分五厘に引下げられないかという問題であります。第二には、外国炭外貨貸付制度によつて輸入をいたして、そうしてコスト引下げに資してはどうかという点であります。第三には、電力の増配によりまして操業度を向上することによつてコスト引下げてはどうか、以上の三項を至急各方面で研究の上に、来る二月十六日の第四回委員会において、さらに検討するということに相なつたわけであります。  以上が、委員会における論議中心となりました最近の状況の概要でございますが、通産省といたしましても、右委員会結論をまちまして、できるだけの努力をいたしたいと考えておる次第であります。以上御報告申し上げます。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの政務次官発言に関し、御質疑はありませんか。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 政府肥料対策委員会を設けられまして、いろいろ審議せられました努力に対しては敬意を表するのでありますが、この委員会において安定帯価格関係なく硫安春肥価格引下げるということがきめられたように伝えられておるのでありまするが、それは大体どのくらいの引下げを行うというのであるか、具体的な数字をお示し願いたい。
  6. 小平久雄

    小平政府委員 安定帯価格にかかわりなく引下げるということにきまつたわけではないのであります。ただいま申します通り消費者側委員からは、特に当面の春肥につきまして値下げをせよ——値下げをせよという意味は、安定帯価格を下引げよという意味かと存じますが、それにつきましてもただ漫然と幾ら引下げろというようなことの結論も出ませんし、今申しましたようなもろもろの施案やることによつて引下げられないか、また引下げられるとしますならば、どの程度引下げられるかということについて、専門委員にも委嘱し、また次回の委員会においてこれを検討ようというのが現在の段階であります。従いまして具体的に今幾ら下げるという段階にまでは至つておりません。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 値段の高いか安いかという事柄は、取引の段階においては、売手と買手いろいろあろうかと存じます。しかしながら生産原価がどのくらいであつて輸出国内価格とを見合つて大体どのくらいの価格が適正であるかというよう論議段階においては、正直にそれぞれのセクシヨンが数字を出して話合うところに真実究明ができて行くのであります。そういうものをしないで、水かけ論のようただ論議に日をかしておつても、問題の帰結に到達することはできぬと思うのでありますが、価格の問題に対して政府はどのよう方式によつて真実究明を明確にしようとしておるのであるか、その方法とその考え方をひとつ明確にしていただきたい。
  8. 小平久雄

    小平政府委員 御説の通り価格を決定いたしますのに、正確な原価計算等を参考といたしますことが望ましいことは申すまでもないわけであります。そこでただいま御報告申し上げました通り肥料に対する委員会におきましても、メーカー側委員から、コストについての資料が提出されました。これは硫安工業全般としての、いわば総合的な原価計算ようであります。従いましてこれを中心にして論議が行われたようでありまするが、一般的に論議をいたしておりましても、なかなか論議が尽きない。特に専門的な知識を要する面が非常に多いので、そこで小委員会としましても、それらの事項につきまして専門的な知識を有する方——多分三人であつたと思いますが、それらの方に委嘱をいたしまして、さらに専門的に検討をしてもらおう、その上でこの原価計算を基としてどのくらいが適当であるか、引下げられるものならば具体的にどの程度ができるとか、そういう点を結論を出そうというので今やつておるのでありまして当局におきましても、そういう方向に行くことはもちろん正しいことだと考えておりますし、もちろんその他需給等関係におきましても価格は変更いたしましようが、根本的にはコストがどうなるかということについて、せつかくこの委員会において正しい結論が出ることを期待いたしておるわけであります。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 今日全国農民が知りたいと願つておることは、もちろん価格引下げられることもその中の一つでありましよう。しかしそれよりも一体現在の安定帯価格というものが、いろいろな肥料産業の上における矛盾のしわ寄せが農民に全部かけられているのではないか、あるいは出血輸出による不当な競争農民の頭に転嫁されているのではないか、こういう事柄に対する真実究明がなされて、そしてこれが適正な価格であるということであるならば、かりに引下らなくてもこれで納得できる、こういう状況にあると考える。従つてこういう消費者であり、犠牲になつておるこれらの農民の方にこたえるためには、政府もつと真剣になつてこれらの問題の究明に当らなければならぬと考えるのであります。そこでわれわれは出血輸出によつてメーカー相当損をして犠牲になつておる、こういうふうに端的に考えていたのでありますが、権威ある筋のいろいろな意見労働組合あたりのいろいろな調査の資料に基いて調べてみますと、損をしておるどころじやない、もうかつておる工場もあるのだ、電解法ガス法、あるいは規模の大小、施設の新旧という諸条件によつてコストは違つて来るでありましようが、とにかく大きな電解会社あるいは大規模工場においては相当もうかつておる、こういう数字が出ております。たとえば昭和電工におけるところの昭和二十七年上期の生産計画によりますと、十一万トン生産で、国内価格を一俵八百八十五円、輸出価格を七百十円と見て約一億四千万円の利益というものを見込んでおるのであります。こういうようなこの計画が正しいものであるとしてこの基準によつて現在の内外の市況というものと照し合せますと、損しておるのでなくてもうかつておるという結論が出るのでありますが、これに対して政府はどういうふうに考えておられるか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  10. 小平久雄

    小平政府委員 御説のよう硫安メーカーといたしましても、いろいろの規模でやつておりまするし、またその立地条件製造方法等においても区々でありますので、必ずしも全工場が同じコストでできておるというわけではもちろんないのであります。従いまして出血輸出と申しましても、その犠牲というものは、工場により、会社により違うということは容易に想像ができるのであります。そこで先ほど来申します通り、今後の肥料対策、内需に関しましても、あるいは輸出をいたしますにつきましても、根本的に肥料工業というものをどう育成して行くかということにつきまして専門的に検討いたしてもらつておるのでありまして、ただ当面の問題としては、春肥価格をどうするかということを検討いたしてもらつておるのであります。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 私の質問に対して先ほど昭和二十七年上期の昭和電工における生産計画会社収支計画というものに対する答弁がなされていませんが、これに対しては関係局長からひとつ専門的に伺いたいと思うのであります。もう一つは、昭和電工の今年度におけるインド向け輸出、FOB四十六ドル、これは相当大きな出血と予想されるわけでありますが、これにいたしましても、これは砂糖とのバーターである。砂糖を入れることによつて砂糖からの収益というものは、計算によりますと、硫安一俵当り大体百二十二円の利益が見込まれる。こういたしますと、一俵六百十五円でかりに輸出いたしましても、これのバーターによる砂糖輸入によつて硫安一俵当り百二十二円といたしますと、七百三十七円で輸出した、こういうよう計算になるわけであつて、この点から見ましても、出血輸出というよう事柄は世間に吹聴されているよう実態ではないというふうにわれわれ観察されるのでありますが、この二つの点について、あとの場合は政務次官から、前の場合は局長から御答弁を願いたいと思います。
  12. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。個々会社採算状況につきましては、現在価格統制をいたしておりません関係から、通産省といたしまして公権的に調査した資料はございません。もちろん個々企業形態等からいたしまして、それぞれ各社によりまして採算価格は異なると思います。今昭和電工お話も、ございましたが、昭和電工出血輸出という問題に関しましても、この出血のしりは結局今後の決済に現われると存ぜられますが、硫安メーカー各社の配当の経緯を見ましても、昨年の十二月は各社それぞれ五分程度低下いたしておるよう状況でございます。  なお、バーターによる利益の問題でございまするが、通産省としましても輸出価格適正化という見地からいたしまして、できるだけ有利な輸出条件をとらしむるよう努力いたしまして、ただいま御質問にもございましたような、キユーバ糖輸入ということと関連いたしまして硫安輸出をやらしむるよう努力しておることは御指摘通りでございます。ただ最近におきますキユーバ糖とのバーターによる硫安輸出という問題が、現実には砂糖の値下りというよう状況もございまして、最初に期待いたしましたよう硫安輸出による利益は今日では非常に低下いたしておるというよう状況でございます。  なおこういつた硫安採算コストという問題につきましては、政務次官からも御答弁ございましたように、肥料対策委員会におきまして専門的な方々に、硫安メーカーから提出いたしました資料について慎重に検討をやつていただいている最中でありまして、私はこういつた第三者的な専門家の御意見を徴することが本問題の解決に資するものだと考えておる一人でございます。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 政府答弁を聞いても、審議会のいろいろな審議の過程を聞きましても、真実究明するというような科学的な作業が少しも進んでいない。一つ会社経理内容生産コストというような、中心となるべき問題にはヴエールをかぶせて、鉄のカーテンとして、その外側において合理化だ、振興だとあぶみたいにやつておる。こういう状況ではほんとうの意味肥料振興ということには断じてならぬと私は考えます。全国農民がこんなに騒いでおり、国内重要産業として国民がこんなに真剣になつているときでも、それらの問題が少しも明白にされないままに、その第二義的な問題を論議するというようなばかげたことをわれわれがしなければならないことを情なく思つておるのであります。  それはそれといたしまして、今後の肥料産業に対して政府はどういう考えを持つて臨もうとしているかということについて、一、二お尋ねをいたしたいのでありますが、硫安生産を現在約二百万トンと押えて国内需要を大体百五十万トンと押えておる。政府国内需要百五十万トンを一つの固定した条件よう考えておるが、これは誤りではないか。値段さえ安かつたならば二百万トンにも二百五十万トンにもなる。もつコスト引下げ国内需要を拡大して、そして輸入食糧に対する補給金国民負担との差引において食糧自給をやつて行く基礎にしなければならないとわれわれは考えておりますが、この点についてどう考えるか。何としても総生産量の大部分が国内消費でありますから、この肥料産業はやはり対内的には農業生産の一環としての性格を持たすべきではないか、また輸出の面におきましてはアジアから東南アにかけての一大農業地帯に対する重要な輸出産業という性格を持たせて行かなければならないのではないか。この二つ政策を調整して、内部において合理化をはかり、多量生産によつて生産コスト引下げ、対外的には国際競争に立ち向う力とし、国内的には食糧増産べの基盤を拡大して行く、こういう基本的な方向を持つて進まなければならないではないかと考えるのでありますが、この点に対して政府はどういうふうに考えておられるか。
  14. 小平久雄

    小平政府委員 肥料工業特に硫安工業につきましてただいま永井委員からお話がございましたが、これに対する基本的な考え方はわれわれも永井委員の御説とまつたく同じであります。ただ現実の問題として国内での消費関係、それから輸出との関係、それに伴う価格関係等がややもすると必ずしも同一歩調で進むわけには参りません。ときには利害が相反するという事態も起きる場合があるわけであります。そこでこれをどう調節するかというので、特に専門家等に委嘱して今検討してもらつておるわけでありまして国内消費を廉価で満たしながら、なおかつ輸出産業として育てて行く、特に東南アジア方面等はわが国の肥料工業一大市場として将来とも確保して行くという根本的な方針におきましては、まつたく永井委員と同意見であります。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 肥料産業合理化におけるバーターはいろいろあるわけでありまして、ガス法電解法に切りかえて行くとか、炭価を切下げるとか、あるいは粉炭のガス化の近代的な技術を取入れるとか、あるいは化学産業における総合的な合理化をはかつて行くとか、また資金の面というようにいろいろあるわけであります。これらの問題を推進するのには肥料産業自体の力だけでは促進はできないと考えます。やはり国の重要産業として大きく国が取上げて、合理的にこれを助成して行くという方向をとらなければならぬではないかと考えるのですが、その場合その助成ということは、先ほどお話した通りに、肥料会社経理内容を発表しない、生産コストを発表しない、そしてこれだけ赤字があるからこれだけ助けてくれというのに、政府はそうかということで助成して行くのか、それとももつと根本的な立場で政府みずからの責任においてこの問題を処理して行くのか、それらの点について伺いたい。
  16. 小平久雄

    小平政府委員 肥料工業に対しまして政府ができるだけの助成をして行くという考えはもとより持つております。しかしながらただいまお話の中にありましたように、個々会社につきましてどれだけの赤字が出たからこれを補給してやる、そういう直接的な補助金政策と申しますか、補給金制度と申しますか、そういうものを今ただちにとろうとは考えておりません。当局としましては現在でき得る限りの行政的な措置等によりまして、肥料工業を援助して参りたい。それがためには先ほどお話に出ましたが、たとえば資金の点であるとか、特にその金利の問題であるとか、あるいは原料炭の問題であるとか、あるいは電力の割当てを多くしてやるとか、こういつた点につきまして行政的にできるだけの援助をいたして参りたい。ただいまのところさよう考えております。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 そこで私は最後にお尋ねいたしたいのでありますが、私が先ほどこれらの産業に対して助成しなければならぬと言うのは、この助成肥料産業における資本独占を強化したり、あるいは資本利潤の安定を強化してやる、こういうよう意味助成ではなくして、先ほど来申し上げましたように、産業合理化ができて、そうして多量生産されて、そこからコストが下つて、対外的に競争力を強めて行く。国内的に国内需要を多量に刺激して行く。こういうようなことによつて、そこに助成したものが国民大衆の生活の中に溶けてそうしてそれが国民大衆の享受できるような、そういう形における助成というものを考えて行かなければならぬ。さよう考えて参りますとどうしても自由党考えておる自由放任自由主義経済というような、そういう一つのわく内では問題の解決は不可能ではないか。しかも今日いろいろ不安定な条件にあるのは肥料産業ばかりではありません。昨日は自転車の問題も出ましていろいろ申し上げたのですが、自転車業界においても一つ計画的な生産というものが期待されておる。鉄鋼も不安定である。石炭も不安定である。あらゆる産業が不安定になつて来ておるということは、吉田自由党内閣経済政策の破綻の一つの現われではないか。この破綻した経済政策経済実態に対して、政府は独禁法をゆるめたり、あるいは集中排除法を緩和したり、あるいは助成の形で持つて行つたり、そういうよう施策によつて、この危機を突破しようという考え方はとんでもない見当違いをしておるのではないか。私はかよう考えるのでありまして、そういう方向によつてはこれらの問題の解決にはならぬ。もつ産業民主化方向に、社会化方向に持つて行つて、そうして計画経済の上に重要基礎産業の柱を立てて行くのでなければ、こういう問題の解決にはならぬのではないかと考えるのでありますが、政務次官はひとつ将来大臣になつたつもりで、商工行政における一つの見解を明確に示していただきたいと存じます。自由主義経済でこういつた段階に対処して行くことによつて、これを切り抜ける自信を持つていられるのであるか。これをひとつ承つておきたいと思います。
  18. 小平久雄

    小平政府委員 ただいまの御質問ひとり肥料工業ばかりでなく、全産業と申しますか、経済に対する考え方と思いますが、先ほど永井委員も御指摘のごとく、当面話題になつております肥料工業につきましても大いに合理化をしなければならぬ。しかしてコストの切下げをしなければならぬ。こういうことが中心目標になつているわけでありますが、これがためにはわれわれの考えといたしましては、いわゆる国営方式等に持つて行く、あるいはこれを産業社会化と申しますか、そういつた方向に持つて行くよりも、個個の企業につきまして十分企業の能力の発揮をしてもらい、能率を上げてもらいそのことによつておのずから合理化も推進してもらう、こういう行き方の方がよりコストの低下という点に効果があることをわれわれは期待いたし、またさように信じてただいまの政策を各般から押し進めておるわけであります。
  19. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 先ほどお話に、本年度の肥料増産という面がありますので、まことにけつこうなことだと思うのであります。そういたしますと、国内の需給のバランスからいつて、本年も当然肥料が余つて来るという勘定になつて来る。そうすると昨年と同じような過程によつて、すなわち出血輸出政府もさせなければならぬというようなことになりはしないか。そういうことになりますと昨年の事情等はよくわれわれにはわかるのですけれども、一般地方に出てみますと、農民に高く売つて、その余剰金を転嫁して出血に埋めて行くのだというよう考え方を持つておられる。またいろいろ政党等の演説会においてもそういうことが説かれておる。そうなると本年の需給バランスからいつて、余剰したものは結論として出血しなければならぬということになつて行くのではないかと思うのですが、それに対する対策等はどのようにお考えになつておりますか。
  20. 小平久雄

    小平政府委員 通産省といたしましても、ただいま長谷川委員から申されましたような誤解と申しますか、考え方に対しまして、何とかその実相を了としてもらいたいということに努めておるわけであります。さらに来年度の肥料につきましても同様の事態が起るのではないかという御心配でありますが、御承知ように昨年来、いわゆる出血輸出をしなければならなかつたという理由の一つの大きな理由といたしましては、船賃が非常に安くなつた、そのために西欧物等が近く東南アジアまで進出をいたして参つた、こういう事態があつたのでありますが、船賃は最近におきましては当時に比べますと大分上つてつておりますし、また一面におきましては先ほど来申しておりますように、何とかして国内生産コストを下げようという努力をあらゆる面からいたしております。来年度の肥料輸出ということにつきましても、はたしてどの程度出血になるものか、あるいは出血がなくて輸出の可能な事態が起るかどうかという面につきましては、まだ現在のところはつきりした見通しもございません。     〔委員長退席、小金委員長代理着席〕 いずれにいたしましてもそれらの問題を含めまして、わが国の肥料工業を将来どういう線で育成して参ることが根本的によろしいかという、その根本的なる対策を本委員会を設けましていろいろ専門的に、またあらゆる立場から研究をいたしてもらつておるわけであります。
  21. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 局長にお尋ねいたします。結論として価格の問題なんですが、この価格が今の安定帯価格というようなものから引下げられるということは、当然幾分か増産の傾向にある以上は引下げられて行くだろうと思うのだけれども、それらに対して出血輸出をする場合と、国内一般の需給に対しても価格の安定したものがとられるか。要するに輸出も内地需要も同じ価格のものでやれるようになり得るものかどうか、あなたの見通しはいかがでしようか。
  22. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 輸出価格国内価格とを大体同一水準に持つて行くという基本の考え方からいたしますると、通産省が、いわゆる化学肥料工業合理化というものを非常な各般の努力を集中して、たとえば電源開発によります電解法操業度を上昇せしむる、あるいは石炭価格の合理的な引下げ、たとえば開発五箇年計画の推進というような基本の線、さらには応急的にも効果を現わしますが、同時に恒久策でもございます金利の引下げ、さらには肥料工業自体の中にございます、特に割高と考えられております粗悪炭をもとにいたします石炭関係コスト引下げために、最近のきわめて進歩的な技術でございます粉炭ガス化方式というようなものを採用いたすことによりまして、現在西独あるいはその他の日本に対しまして比較的コストの上において有利でございます国の化学肥料工業と同一水準に近づけるということは相当可能でございます。同時に日本の化学肥料工業輸出いたしまする市場は、東南アの地域でございまして、東南アの地域が今日の段階で海外から輸入を必要としておる量は、エカフエの調査等をもとにして考えますと、百七十万トン程度に上るのでございます。日本の化学肥料工業が今日考えております硫安について二百万トンの生産ベースというのもを維持した場合に、国内の百五十万トンを充足して輸出し得るものは五、六十万トンという結論に相なりますが、この程度輸出数量は、韓国、台湾、フイリピン、特に運賃の関係から見まして、日本が有利である地域に集中せざるを得ないような数量に相なるのでございます。もとより東南アに対します輸出市場の確保ということからいたしますると、さらにインド、パキスタン、こういう方面に対しても、進出する必要もございまするし、ある程度輸出市場としてこれを今日より培養する必要がありまするので、輸出総数量の一部を割愛して、これらの地方に輸出するということが一つの行き方と思うのでございます。国内需要百五十万トンの問題に相なりますが、国内化学肥料需要関係におきます基本方針といたしましては、硫酸を用いざる肥料——窒素肥料でございますが、硫酸を用いざる肥料工業培養という見地からいたしまして推進いたす農林省側の基本方針もあわせ考えてみますると、私はこの百五十万トンの国内需要を確保するという線を、もちろん価格その他においても多少の移動はあろうかと思いまするが、硫安工業として、この百五十万トンの国内需要を満たす、同時にそれ以上の生産を増強する、たとえば国内需要のみに限定いたして、輸出をいたさないということで考えますると、かりに二百万トンの生産ベースの際に、これを百五十万トンに圧縮する。これをコストの上に考えますると、おおむね一割強の価格上昇を来すのであります。こういう意味合いにおきまして、海外の需要状況国内状況、そういうことから判断いたしまして、硫安工業生産規模並びにこれがコスト引下げの諸方策を並行して推進いたす限りにおきましては、硫安工業輸出産業としての向上という立場からいたしましても実現可能と確信いたしております。     —————————————
  23. 小金義照

    ○小金委員長代理 次は輸出品取締法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。宇田耕一君。
  24. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 過日大臣に質問をいたしましたけれども、通産大臣だけの答弁ができかねるという問題がございましたので、今日は外務省及び大蔵省の局長に、先日の質問に対する御見解をあわせて聞かせていただきたいと思います。     〔小金委員長代理退席、委員長着席〕  まず第一番に、台湾の中立解除によりまして、海運ないし輸送等、貿易上非常に大きな隘路が一つできたように思います。それに対して通産大臣は、外務省の見解は自分ではよくわからぬから、こう言うておられます。外務省のこれに対する考え方局長から聞かしていただきたい。
  25. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 台湾の海峡中立解除が、どういうふうな影響があるであろうか、ことに海運が困りはしないか、そういう影響がどうであろうかというお尋ねだと了解いたしますが、ただいまのところは、アイゼンハウアー大統領の、御承知ような宣言がございましたけれども、何も実際上には現われておりません。また将来これがどの程度に、どういうふうにして行われるかということも、ただいまのところ予想もつきません。従いまして海上封鎖というものが起りました場合に、どういう影響があるかということは、いかなる程度のものが行われるか、ただいまのところではアメリカの方の海上の力によつて封鎖を行うというふうなことはしないということを言明しております。そういたしますと、どこまで実効のあるような封鎖が行われ得るかということは、非常な疑問だと思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、もしそういうものが行われましたならば、それが海運の方に響いて来ることは当然認めなければならないところだろうと思うのであります。その範囲とか効果というものは、いかなる程度の封鎖が行われるかということによつてそれぞれ異なつて来ると思うのであります。
  26. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 中国に対する貿易関係で、特に非戦略物資の輸出につきまして、昨年来通産省と各省との連絡の結果、許可された商社が数社あるように聞いております。通産省の最近の省内の事務の取扱い方は、輸出関係では非常に活発迅速であつて業界からはそれに対しては感謝をされているように聞いております。ところが最近中共に対する決済の問題で、特に輸出関係の業者から、政府あるいは金融業界に非常にはつきりしない空気があるから、その点についてもう少し政府の見解を確かめていただきたいという希望が多いように見受けられます。それで中共貿易について、戦略物資は別といたしまして、非戦略物資に関するところの、少くとも輸出政策について、外務省はどういう考えでおるのでしようか、それを聞かしていただきたいと思います。
  27. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 中共の方にドルがございまして、それをこつちに払うということでございますれば、私どもの方といたしましては、一向異論のあろうはずがないのでございます。それからポンドでも受取るということを言つております。ただ中共の方にそれだけの外貨がない、ドルあるいはポンドがないということになりますと、勢いバーター方式によらざるを得ない。それでもしバーター方式でできるならば、それにもまた一向異存がございません。こういう態度でおります。
  28. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 そういたしますと、一度通産省の責任において許可をした品目については、その他の各省はもちろん許可する前にあらかじめ各省間で連絡協議をしたと認めていいものでしようか。その点について通産省の御意見を伺いたいと思います。
  29. 牛場信彦

    牛場政府委員 バーターになりますと、標準外決済ということになりますので、これは事前に大蔵省と打合せて、大蔵省の同意を得て許可しております。外務省とは特に一々の取引について協議しなければならないということになつてはおりませんが、少し量の大きなものにつきましては、いろいろ政治的な問題もございますので相談はいたしております。
  30. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 具体的に申しますると、民間の業者は、通産省に許可をもらつたものについてLCの問題その他決済の問題について銀行へ交渉に参るそうでありますが、銀行に参りますと、事務当局はほとんど全部が異議なく賛成でありますけれども、最高幹部の役員会議に行くと、理事は申せないという建前で、結局その許可された品目の輸出に対する決済が不可能に陥ることが多いと言われております。そのよつて来るところは、外務省がそういう空気を反映せしむるのか、あるいは大蔵省の当局がそういう空気を反映せしむるのか、どつちだろうかというのが大体一般の民間の空気であります。われわれはどうも奇怪千万だと思いますけれども、それについて、外務省としては一体そういうふうに業界に何らかの関係をすることがあるのでしようか。そういうことのあるなしをこの際聞かしていただきたいと思います。
  31. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私といたしまして、そういうことがあり得るはずはないと思います。
  32. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 私もただいまの御答弁通りであろうと思いますが、そういう点について、政府のサービスが誤解をされないように、こういう機会に明確に宣明して行くべきだと思います。ただいまの外務省の局長の御意見は外務省の御意見として、大蔵省としてはどういうふうに考えておられるか、大蔵省の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  33. 東条猛猪

    ○東条政府委員 お答えを申し上げます。先ほど牛場通商局長からお答えを申し上げました通り、大蔵省といたしましては、たとえば外貨予算のわくの内外の問題、あるいは決済の方法につきまして、標準外決済をする場合におきましては、あらかじめ通産省と協議をいたしまして、相談の上その可否を決定いたしております。外貨予算の会議で申し上げますと、毎週必ず一回開いております。標準外決済の問題でございますれば、もちろんその都度々々相談をいたしまして、遅滞なく処理をいたしておるのでありますが、外務省あるいは通産省で、品目その他の関係におきまして、輸出貿易の対象品目として適当であるという判断をせられ、また先ほど黄田局長からも御答弁があつたのでありますが、決済の方法等につきましても、この取引は大丈夫であるという見きわめがつきました場合におきましては、政府全体といたしまして、便宜通産大臣の名前において許可が下りるわけでありますけれども、そういう許可があつた場合におきまして、大蔵省がその許可のあつた取引に対しまして、消極的な態度を示すということは毛頭ない次第でございます。
  34. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 十二月末以来許可になつた商社に対して市中銀行がLCについて大体バツク・ツウ・バツク、TTクローズするという話を聞いておつたのですが、それについての引受けを拒絶するという、ほとんど全部がそういう空気で推移して来ているように思われますが、それについて大蔵省としてはどういう見解を持つておられますか。
  35. 東条猛猪

    ○東条政府委員 私も実は国会外の方から、通産省で許可のありました具体的な商談につきまして、ある銀行でLCの発行につきまして応じてくれないという場合があるが、具体的な事情はどうなつておるか、大蔵省でわかれば聞かしてくれないか、こういう話がございまして、調べたことがございます。あまり話が具体的になりますと、商社の信用問題その他に関しますので、抽象的な話でお許しをいただきたいのでありますが、その場合におきましては、何も中共との取引であるから特にかれこれという意味ではございませんで、そのときの取引の対象になりました金額と、その商社の信用状態、それからその銀行とその商社との従来の取引関係からいたしまして、そういう純然たるビジネスの立場から、あの話はちよつと金額が大き過ぎて検討しているのだ、もう少し金額を砕きまして小さな金額になるとか、あるいは従来とも非常に取引関係の深い相手方で、その商社の信用状態について銀行として十分の自信があるのならば、話に応じたであろうけれども、そういう純然たる銀行のビジネスの問題として、あの話は実は今検討しているのだという話を、私自分でその銀行の責任者と事情等を調べた結果、事情が判明いたしましたので、そのことをその通り当時私がお尋ねを受けました方に申し伝えた事実がございます。宇田委員の御指摘になつております場合がどういう場合か私は存じませんが、私がたまたま調べました一、二の事例は、今申し上げましたように、ほんとうの銀行対貿易商社の信用問題から出たことでありまして、それ以上私としては思い当る節がないのでございます。
  36. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 ただいまの御答弁で大体輪郭はわかつて参りましたが、貿易商社の一々の名前はここに申すのを省略いたしますけれども、大体日本銀行と市中銀行との間でいつも話合いをいたしますときに、純然たる経済的な問題としてこれを処理するというよりも、むしろアメリカに気がねをする、アメリカの中共に対するところの封鎖政策の忌避に触れるということによつて、自分の営業の根本に非常な悪影響が来るのではなかろうという杞憂によつてわれわれの金融決済をうまく運ぶということをする、少くとも金融決済を扱おうとする当事者たる銀行になるのを好まない。そういう空気があるのだ、しかも日銀の底意にもそれがあるのだ、そういうことをほとんど一般で申しております。その点については為替局長どういうお考えでありますか。
  37. 東条猛猪

    ○東条政府委員 私といたしましては、日本銀行その他にそういう考え方があるということは承知いたしておりません。(「ごまかされるな」と呼ぶ者あり)
  38. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 それでは今の決済問題につきまして私がこの際希望いたしますことは、少くとも今貿易の、輸出に関する限りは、輸出業者というものが、特に関西を中心として四苦八苦で、何らかの打開策を講じたいというので大わらわになつておるのであります。それについて通産省は最近非常にサービスがよくなつたというのが一般の輿論であります。大臣がかわつてからというものは特によくなつたということも聞いております。(笑声)ところが、それに対してどうも大蔵省は非常に官僚的であつて、さつぱりかゆいところに手の届くようなことをしないというのです。その点については一々東京に来て陳情するのはたいへんだが、市中銀行の腹のきめ方をもつとしつかりするように、大蔵省の方で推進してもらいたい、こういうのが輿論であります。役所は何といつて国民に対するサービス省でありますから、大蔵省も国民に対するサービスの仕方をもつとスピーデイに、親切にしてもらいたいということでありますので、その点については十分のひとつ具体的な処置を講じて業者にそれがよくわかるように、とにかく大衆は何でもかでも悪く悪く解釈して行つて、何でもこいつはアメリカに対するところの彼らのサービスの、われわれが犠牲になつておるというのが結論にならないように、大蔵省に、外交金融政策については、特に御考慮をお願いいたしたい。ここに通産省の今度新しく提案される議案の中の一つに、輸出信用保険法の一部改正があつて、やがて出るだろうと思いますが、この中で輸出手形、信用状のない代金決済法によるところの輸出取引を促進する必要があるというような法案が出ておるが、特に中南米地域と断つておる。中共地区等に対しては、この制度を活用することが最も私は大事じやないかと思う。これはおそらく通産省と大蔵省の協議の上でできた案の一部だと思いますが、これは提案されたときにあらためて研究したいと思いまするが、こういうふうな考え方を大蔵省も通産省も、今の中共のようなところの貿易に適用すべきであろうと思いますが、両省の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  39. 牛場信彦

    牛場政府委員 手形買取り保険の適用地域につきましては制限しないつもりでおります。ただ実際問題としまして中共向けにそういうよう輸出取引ができますときに、はたしてそれに対して金融その他が円滑に行われるかどうかという点は私ども何とも申し上げられないと思います。
  40. 東条猛猪

    ○東条政府委員 先ほど大蔵省は輸出振興について熱意が足りない、サービスが足りないという御注意でございました。今後十分心がけるつもりであります。向井大蔵大臣も財政演説で申されましたように、政府全体としての現在の方針輸出振興でありますから、政府の一部であります大蔵省ももちろん輸出振興ためにあらゆる努力をしなければならぬということはお示しの通りでりまして、もしわれわれのいろいろの行政のやり方に御意に沿わない点がございますならば、遠慮なしに御注意いただきまして、今後とも十分に注意して参りたいと思います。  輸出信用保険の具体的な適用の問題につきましては、今後の御審議の経過等をよく考えまして、通産省とも相談をいたしまして、御趣旨に沿いたいと思います。
  41. 有田二郎

    ○有田(二)委員 関連して。東条為替局長にお願いしたいのですが、お話を承つておると、非常にうまく行くようお話ですけれども、東条さんは大体おとなしいのです。実際各銀行、金融関係、あるいは大蔵省の銀行局方面の十分御検討を願つて、おざなりの話でなく、やはりこういつた貿易については、通産委員会の各位が、また国民全体が熱望しておる。特に私は大阪の選出議員であつて、大阪の商人も中共貿易に対しては非常な熱意を持つておる。そういうわけで、この問題についてはいろいろ複雑な問題がありますけれども、事貿易の点については、占領下ではないのですから、独立国家になつたということをよくお考えになつて、ひとつ積極的におやり願いたい。もしやらなければ、大蔵省の連中、あるいは日本銀行の総裁その他全部ここへひつぱり出して一々当つてみたい。そうしてわれわれの意思を代表して東条さんがしつかりこの問題の解決に御努力願い、また政務次官がこの点ひとつ敢然としてやつていただきたい。
  42. 小平久雄

    小平政府委員 有田委員の御意見まことにごもつともであります。特に通産省としましては、輸出振興については当面の責任者でありますから、大蔵省の方ともよく連絡をとりまして、御趣旨に沿うように最大の努力をいたしたいと思つております。
  43. 東条猛猪

    ○東条政府委員 有田先生の御注意まことにごもつともでありまして、十分注意いたします。
  44. 有田二郎

    ○有田(二)委員 実は日本銀行はローマ法王庁ということをいわれております。なぜかというと、今まで大蔵省が日本銀行をよう押えなかつた。従つてこれがローマ法王的な存在になつてしまつた。特に貿易関係についてはその感を深くするのであります。今度は本委員会へ日本銀行と大蔵省と両方ひつぱり出して、日本銀行の方針も聞き、そうして日本銀行がこれに協力するように、委員長にこの点を要求いたしまして、私の質問を終ります。
  45. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 ただいまの有田委員発言は非常に大事なことと思われますから、私からも重ねてお願いいたします。  もう一つ、ただいま中国との貿易のことでわれわれが理解しておるのは、大体バーター貿易であります。そのバーター貿易についての金融決済の手段方法ですから、そういたしますと、そこに輸出信用保険法の一部改正の場合よりも、もつと簡単な方法が幾らでも立つのでしようから、その点については通産省でなお御研究を願いたいと思います。  もう一つ輸入の保証金の問題ですけれども、輸入保証金については、ほかの国に対しては大体一%程度のものでやつておるのに、中国との場合においては一〇%ぐらいの輸入保証金を要求するということを聞いておりますが、それに対して通産省の御意見を承りたいと思います。
  46. 牛場信彦

    牛場政府委員 輸入保証金は、最近輸入促進の必要を認めておりますスターリング地域でありますとか、あるいはオープン・アカウントのうちの二、三の国につきましては、御承知通り非常に低いことにいたしておりますが、たとえば国内需要が非常に多い割に外貨のわくが少くて、人が殺到するおそれがあるというような——バナナの輸入が一番ひどい例でございますが、そういう場合にはやはり今一割程度のものを積立てさしております。それで中共とのバーター取引につきまして、さしあたり一割ということで今やつております。これが輸入保証金の性質で、もちろん輸入保証金ではあるのでありますが、取引全体の安全度ということを考え、少し高くしておいた方が、申請者も十分に手を尽した上で初めて申請をするということになると思いまして、そういう措置をとつておるのでありますが、これは今後だんだんケースがふえて参りまして、取引の安全も大体大丈夫だというような見通しがついて参りましたら、引下げることを考慮してもさしつかえないと思つております。
  47. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 保証金を一割もとるということになると、貿易業者としてはとても実行は不可能であると思います。われわれが貿易をやつてみましても、一割の輸入保証金を積まなければならぬというようなことでは、おそらくそんなところと取引をするよりは、ほかの国へ行つた方がましだというので、手控えることになると思います。最近の金融の非常に逼迫した現状から見て、そういうことは事実上輸入貿易を不可能に陥れるような制度じやないかと思います。輸出を何とか軌道に乗せるためには、まず輸入の促進をはかりたいというのは小笠原通産大臣が就任の冒頭に本委員会で声明されたことだと思うが、それに対して局長が全然逆な方向にその手段をとられるということは、私は理解できないのです。ほかの政策に関しては、われわれ民間の業界意見は全部すなおに入れておられるのですが、輸入保証金に関する限りは、非常にアブノーマルな、今までの考えと違う政策をとつておられる。そういうところは、言葉をかえて言うと、何か中共貿易に関する限りは輸入も好意を持たぬのだぞというふうで、通産省は許可はしてみたけれども、実際は腹の底ではしゆうとの嫁いびりで、輸入の保証金を高く積むことによつて、貿易が事実上不可能に陥るよう対策をとつている、あの局長は案外意地が悪いぞ、こういう率直な話が出ております。従つて、われわれは貿易が円滑に行きさえすればいいのですから、私はそういう誤解のないように、明快な処置をとつていただきたいと思うのです。それについてなお申し上げたい具体的なこともありますけれども、ここで一々申し上げることは差控えます。そういうことが輿論であります。通産省のやられた政策について、年末来大部分の業者は喝采をしておりますが、輸入保証金に関する限りは意外の感に打たれております。商品の内容が輸入に値しない、これは保証金を上げてでも押えなくちやならないという、輸入関税を引上げると同じよう意味の保証金政策ならわかりますが、わが国に輸入すべきであると思われる商品を許可した場合に、それに対する保証は、政府の責任において一%以下、むしろなしにしたつていいのじやないかというよう現状ではないかと思われます。それについて国民に対し、私はこう考えますということをもう一ぺんこの席上で局長に言明していただきたい。
  48. 牛場信彦

    牛場政府委員 中共とのバーターの決済方法は、字田さんも御承知通り初めは輸入先行しか認めておりませんでした。輸入先行と申しますと、必ず向うのものが先にこつちへ来まして、その品質その他間違いないということを見きわめた上でこちらの輸出が出るわけであります。従つて安全性が非常に高かつたわけでありますが、このたびは先方の態度、それから国民の皆様の御希望がございまして、輸出先行の方を認めて行くということにいたしたわけであります。その点におきましても非常に緩和いたしたわけでありますが、そういたしますと、今度は取引の安全性の方で、輸出はしてしまつて、まあ金はとるわけでありますけれども、そのかわりに輸入品が向うの港を出ますれば、こちらは金を払わなければならない。そしてただいまのところ交通も不便でありまして、検査その他すべて向うでやつたものをこちらで一応そのまま受取らなければならないというようなことになつております。従いましてそこにどうしても相当なリスクがあると見ざるを得ないのでありまして、これは先ほど私が申しました通り、こういう新しい方法を始める際でありますから、最初は慎重にいたしておりまして、その後中共からの輸入品について、そういうようないろいろの問題がないという状況がはつきりして参りますれば、これはなるべく早い機会に引下げて行きたいと考えておる次第であります。  なお輸入の品物につきまして、たとえば大豆かすのオフアーがございまして、これに対して国内にいろいろ反対もありましたが、大いに奮闘いたしまして少しは入れるようにいたしておる次第であります。なかなか一足飛びに行かない点は私どもまことに遺憾に存じますが、これはひとつだんだん軌道に乗せて行きたいと思つておりますので、御了承をお願いします。
  49. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 局長の誠意のある御答弁をいただきましてけつこうと思いますが、通産省のやつておる行政が、そういう保証金のようなところで事実上輸入をチエツクするのではないかという疑問が少くとも持たれることのないように、しかも業者が、通産省にひねられたらたまらぬから何にも言わないけれども、何とか国会で質問してくださいと私どものところに言つて来るような、そんな役所にならないようにしてください。  それから先ほど有田委員からも質問がありましたように、私は金融決済についての日銀の方針等は十分に伺わなければならないと思います。次官もここにおられますから、お打合せの上でそういうふうな機会をつくつていただきたいと思います。  それから共産圏国に対するところの貿易決済につきましては、ヨーロツパ、特に西ドイツとかあるいはフランス、スエーデン、デンマーク等は非常に活発な処置をとつております。ああいう点につきましては、大蔵省でも十分御研究しているであろうと思います。特に東条氏はそういう方面のエキスパートだと思いますから、西ヨーロツパ諸国が、自由国家群との貿易に行き詰まつてしまつて、共産圏国に隘路を求めて輸出を盛んにし、そうして何らかの国内産業の打開策を講じようとしております。それに対しては何といつても金融政策は非常に重要な面がありますから、ヨーロツパにおける共産圏国に対する貿易の決済手段についての一番円滑な方法等を御研究願つて、何らかの機会に当委員会にその結果を発表していただくか、また現在研究した結果がありますれば、次の機会に当委員会に発表願いたいと思います。必ずしも大蔵省でなくてもよろしゆうございます。外務省の経済局長からでもよろしゆうございます。そういう点も通産省中心になつてあつせんをしていただきたいと思いますが、その点について何かお考えがありましたら、外務省の経済局長あるいは東条局長よりこの際意見を聞かしていただきたいと思います。
  50. 東条猛猪

    ○東条政府委員 ただいまの共産圏との決済方法についての問題でありますが、私は今御指摘ようなヨーロツパ各国と共産圏との間の決済取引に関しまする資料を手元に準備しておりません。ただ一番初めに外務省の経済局長からもお答え申し上げましたように、もとよりドルけつこう、ポンドけつこう。ポンドと申しましても、現実のキヤツシユが入らなくてもバツク・ツー・バツクの帳簿振替でもけつこう、あるいはバーター取引でもけつこう。実は先ほどいろいろの御注意があるのでありますが、政府としましても輸出振興が一番重要だということでありますので、健全な決済方法でありますれば取入れて行こうという努力は十分いたしております。今もあらゆる健全な決済方法は講じておるつもりでありますが、御注意でもございますので、なおわれわれといたしましては、各国の先例その他取扱いにつきましては、関係各省ともよく連絡をいたしまして検討は続けて参りたいと考えております。
  51. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 それでは私の質問はこれで終ることにいたしますが、特に日銀を初め市中銀行に対して大蔵省よりそういう事務の促進についての御協議を要望いたしまして私の質問を終ることにいたします。
  52. 木下重範

    ○木下(重)委員 私は質疑の通告をいたしておつたのでありますが、今理事の方から話がありまして、時間の関係で次の機会に延ばしてくれないかということでありますので、この次の適当な機会にやらせていただきたいと思います。
  53. 坪川信三

    坪川委員長 そうお願いいたします。     —————————————
  54. 坪川信三

    坪川委員長 次に武器等製造法案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますから順次これを許します。小金義照君。
  55. 小金義照

    ○小金委員 武器等製造法案につきましては、昨年ですかすでに説明を求めて、同僚の福井委員からいろいろな問題について質問が始められました。私はここで、この武器等製造法案に関連して重要な問題を二つほどお尋ねいたしておきたいと思います。われわれは第十三国会において航空機製造法を審議いたして、これを成立せしめております。航空機は必ずしも武器そのものではない。けれども軍隊を持つたり、また軍艦あるいはまた戦争をする覚悟を持つておる国にとりましては、航空機というものは兵器のうちの一番根幹をなすものの一つであると思つております。今提案になつておりまするこの法案は直接に武器等製造という銘を打つておるのであります。そうして第二条かに、「この法律において「武器」とは、左に掲げる物をいう。ということで、はつきり表向き武器という字を出しております。この武器あるいは兵器といわれるものは、各国の工業生産の中で一番先端を行く精鋭をきわめたもの、すなわち精度の最も高い工業が武器の生産工業だ、こう申してさしつかえないと思います。そうすると一国の工業力ないしは工業力の精度といいますか、その高さを決するものが、私は兵器の生産ないしは機構だろう、こういうふうに一応考えます。たしか昭和二十年の十月十日のポツダム宣言の共同省令か何かで、兵器、航空機等の生産制限に関する件というようなものがあつてもうすでにこれは昨年失効してしまつておる。野放図の状態では置けないから、この法律案を出す、こう私は一応了解いたします。しかしてこの法案は、国民経済の健全なる運行に寄与するとともに、公共の安全を確保することを目的とするという二つの大きな目的を持つております。これはこの法案の性格を示しておるものと思いますが、ここで武器という文字を表向き法律の名前にし、その内容を定めております点について、私は大きな問題点として二つ伺いたい。その一つは、憲法第九条の規定に抵触しはしないかということと、もう一つは、こういう法案を出しまして公然と審議し、これを国法として定める際に、戦争を放棄した日本がこういう法律を持つということについて、これが世界の各国にどういう影響を及ぼすか、日本の国交上あるいは貿易上あるいはまた将来のいろいろな国家間の関係を結び、また国家間の関係をつけて行く上において、支障になりはしないか、この二つの問題であります。憲法第九条に関連いたしまして、私は政府を代表して法制局長官からお答えをはつきりとお聞きいたしたいのであります。憲法第九条第一項で、日本は要するに戦争をしない、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こう書いてありまして、第二項に「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」こう書いてありますが、陸海空軍は日本は持つていませんが、その他の戦力になりはせんかという問題がここに起つて来るのであります。戦力というのは、国際間の近代戦争を遂行するのに必要なあるいはまた役に立つ程度の装備、編成、これをさすものであつて単なる武器そのものは、戦力の内容の一つにはなるかもしれませんが、戦力そのものではない。従つて武器そのものの製造を認めることは、憲法の戦力保持の禁止に関する規定に抵触するものではない、こういう解釈を私どもは一応立てておるのでありますが、これらについて明確なる政府の所信をお答え願いたいのであります。
  56. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 適切なる御質問をいただいたわけであります。ただいま御指摘になりました憲法第九条の戦力という字句でございますが、小金さんのおつしやる通り考えておるわけでございます。その点を、さらに重複いたすかもしれませんけれども、政府としての考えを申し述べておきたいと存じます。一部の学説と申しますか、学者の間に潜在戦力という言葉をよく使つておられる。そうしてその潜在戦力というものの中には、今お話にも出ました航空機、これは民間用のものさえも入つておる、あるいは波止場のごときものも入つておる、飛行場も入るというような非常に広いものをもつて潜在戦力といわれる。それがここにいう戦力に該当するから、そういうものは持てないのだという説をとられる方が、現在はよほど減つたと思いますが、あります。そういう点から、武器などの製造についても、いろいろな疑念があり得ると私は考えます。しかしながら第一潜在戦力という言葉はどこに出ておるか、これにはどこにも出ておりません。英語の方にウオー・ポテンシヤルという言葉がありますから、それにひつかけて因縁をつけておられるかとも思いますが、少くとも憲法には戦力と書いてある。これはあくまでもわれわれが常識的に日本語として理解し得る戦力というものを考えなければならないと思うわけであります。これを拡張して参りますならば、われわれは昔は人的資源といわれておつたわけであります。八千万同胞がここにおるということも潜在戦力になつていけないということにも、極端に言えばなる。そういう非常識な考え方はできないと私は思つております。文字から申しましても、陸海空軍その他の戦力とあります。これがかりに大砲、軍艦その他の戦力とありますならば、あるいは大砲、軍艦に匹敵すべきような戦力構成要素といわれるものを持つことはいけないという考え方もありましようが、憲法には大砲、軍艦その他の戦力とは書いてないのであります。陸海空軍その他の戦力、陸海空軍というのは装備編成された組織体をいつて、それを例示にあげておるのでございますから、その他の戦力ということも今お言葉にありましたように、装備編成を持つ組織体というふうに考えるのが当然の解釈であろうと存じます。従いまして個々の武器というようなものは、今お言葉にありました通り、戦力の構成要素になるかもしれませんが、これをもつてただちに戦力と申すことはできないわけなんで、従つて武器の製造を認めるということは、決して憲法九条の問題にはならないというふうに考えておるわけであります。
  57. 小金義照

    ○小金委員 それでは政府全体としてそういう思想のもとに本法案の提案がなつたものと心得てよろしゆうございますか。
  58. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その通りでございます。
  59. 小金義照

    ○小金委員 この問題については今はからずも法制局長官からウオー・ポテンシヤルという言葉が出ましたが、潜在戦力とかあるいはまたその他の戦力ということは非常に広義に解釈いたしますと、普通の食糧の増産までそうなるので、私どもたまたま政府がそういう十分せんさくした立場からこの法案を用意されたことを了といたしまして、憲法に関連いたしましては私はこの程度にいたします。  それから岡崎外務大臣が見えましたので、ちよつとお尋ねいたしますが、こういう表向きから堂々と武器等製造法というようなものを出して、日本が戦争を放棄した。陸海軍、空軍等も持たない。そうすると、これはもつぱら輸出するためにつくるのかもしれない。輸出するということは、日本では経済的な問題でありますが、買う国においてはこれを直接戦力として使うので、そういうような立場から、また国内需要も——もちろん保安隊とかなんとかがありますので、一部は使用するでしよう。そういうことで日本が盛んに武器あるいは兵器等をつくつて輸出するんだというようなことで、国際間に何がしかの反響を与えやしないか、この点についての見解を伺つてみたい。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれの方から別にこの問題について直接世界のおもなる国々の意見を聞いたというようなことはありませんから、的確ではないかもれませんけれども、われわれの知る範囲では、日本が自由主義国家の間に立つて、この結束を増し、協力を強めるということについては、日本に軍隊がないという関係上、その他の面でこういう方面に力を尽す。その一つは、やはり日本のすぐれたる工場と労働力を動員しての武器等の製造にあるというふうに一般に考えられておるようであつて、アメリカはもちろんでありますが、東亜においてもある国々からは日本にむしろ早く供給を仰ぎたいというつもりで待つておる国もあるようであります。また過去の例を見まし、ても、チエコスロヴアキアのような、ほとんど軍隊のようなものを持つておらなかつた国が、スコダの工場等で大いに武器を売り出しておつても、別に過去においても問題がなかつた。もちろん自由主義国家群に反対する方の共産陣営側からは、何か非難のような声が出るかもしれませんけれども、少くとも世界の大勢を制している多数の国国からは、そういうふうな反対の意見はないものと今のところは信じております。
  61. 小金義照

    ○小金委員 日本は独立国であると同時に、国際連合側に入つていることは、私も一応納得するのであります。そうすれば、今外務大臣が言われたような見通しがあるならば、一応この法律を審議し、また制定したからといつて、特に民主国家群の中において不安を与え、恐怖心を起させるようなことはないと一応われわれは想像してよろしゆうございましようか。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りだと考えます。
  63. 小金義照

    ○小金委員 それではこの二つの問題は非常に大きいのでありますが、要約したところは今私がお尋ねをし、また簡潔に御答弁を願つたところに帰着すると思つておりますから、これはこの程度にいたしておきます。  次に第三番目に通産大臣にお尋ねをいたすのでありますが、これは憲法にも抵触するものでもないという政府答弁であります。また日本が入つているところの民主国家群の中においても、恐怖心を起さしたり、また特別の問題を起させるような見通しは今のところない。むしろ日本の国際連合への協力はこういう方面でやつてもらいたいんだというような空気さえあるということでありますから、それを了といたしますと、第三条にこの武器等の製造に許可がいる。これを何ゆえに許可するように持つて行つたか。第一条の本法の目的に、国民経済の健全なる運行と、それからもう一つは公共の安全を保持するという目的があるので、この二つために許可制度にしたのか、あるいはまたもつとつつ込んだ経済的な立場から、すなわちあるいはもうかる見込みとか、あるいはまたいろいろな思惑でどんどんこういうような使いようによつてはきわめて物騒な品物をつくる工場を建てたり、あるいはこれに資金を投ずるようなことを考慮に入れて、許可主義にしたのか、この第三条についての御見解を一応述べていただくと同時に、抱負があればお述べを願いたいと思います。
  64. 小平久雄

    小平政府委員 御質問の点につきましては、ただいまお話のありました通り、本法制定の目的である国民経済の健全な運行に寄与する、それと同時に武器の本来持つております性質から見まして、公共の安全を確保する、こういう見地からいたしまして、第三条の規定をいたしたわけであります。御承知ように近時武器の製造等につきまして見様によりましてはずいぶん実際の需要以上の製造事業の濫立というような傾向すらありますので、このよう情勢でそのまま参るということは、国民経済全体の構造の点から考えましても、あまり好ましくない、こういう面も考慮いたしまして、第三条の規定をいたしたわけであります。
  65. 小金義照

    ○小金委員 大体御趣旨はわかりましたが、日本は戦後非常に貧乏いたしておりまして、経済的にも蓄積がない、こういう際にこの法律ができましてこの法律によりますと、大体一定の条件を備えたものは許可をしなければならないというふうに、第五条なんか読みますととれるのですが、いたずらにたくさんの業者とか工場が、一時に武器の輸出ができるからというので、殺到すると、とんでもないことになると同時に、また特別の既存の業者を厚く保護するだけに流れても、とんでもないことになる。この間の許可をなし、また許可の基準というようなものが設けられておりますが、運用については私は非常にむずかしい問題が起つて来ると思う。どこまでも日本の製造工業の維持、育成といいますか、それから技術の向上——これは兵器、武器が一番的確に出て来るので、やくざな役に立たない兵器、武器というものが一ぱい出ると、落第するのでありますから、どうしてもこういう工業を経営して行くためには、極端に精度をたつとび、また技術の向上をはかつて行かなければならぬと思います。  そこで私はこの法律を運用される通産当局に重ねてお尋ねいたしたいのは、いたずらにたくさんの者に許可をしてしまうというようなことにならないように、どういう御用意があるか、その点を伺いたいと思います。
  66. 小平久雄

    小平政府委員 小金委員の御心配の点は、まことに、ごもつともだと思います。そこで先ほども申しましたが、この武器製造の事業が、あまり濫立にならないようにという点から考えまして、一定の基準を具備したものにこれを許可して行く、第五条の規定と相なつておるわけでありますが、このことによりまして、なるべく武器製造を、それぞれの製造品目等に従いまして、いわゆる整理という言葉は合わないかもしれませんが、それぞれの生産分野というものをだんだん確定いたして参る。そうして要するに要求に合致するような、高度のものができるように、許可されたものにつきましては、できるだけの援助もいたして参りたい、かよう考えておるわけであります。
  67. 小金義照

    ○小金委員 大体のお心づもりといいますか、あるいはまた通産省のこの法律の運用に対する心構えは伺いましたが、先ほども申しましたように、非常に精度の高いものを要求するのが武器の特徴であります。許可主義等によりまして、許可をされてしまつた場合に、いつも新しく発明をしたとか、特許を持つて来たとかいうので、許可を新たに加えろということが必ず起る。そういうようなことがありますので、むしろ許可をされた者に対しては、すなわち製造業者となつたものについては厳重なる監督を加えると同時に、常に工業技術の向上をはからせなければならない。それらについて保護といつては語弊があります。助成といつても言葉が適当でありませんが、技術をどんどん進めて行くというようなことについて何か並行して考えられておりますか、それをちよつと伺いたい。
  68. 葦沢大義

    葦沢政府委員 兵器の精度向上につきましてその重要性、必要性のことは御指摘通りでありますが、武器の製造につきまして、特に政府として積極的に助成の具体方策というものをただいままだ持つておりません。しかしながらこの法案を施行して行くにつきまして御指摘の点が重要でありますので、考慮しなければならぬのでありますが、技術の向上につきましては、やはり設備がその中心になつて参る、いかに技術をみがこうと思いましても、設備が整つて参りませんと、成果がはつきり上らぬと思いますので、設備の向上というものを通しまして、武器精度の向上というものをはかろうという考え方をいたしております。場合によりましては、開銀資金の投入というような点によりまして、こういつた方向を固めて行きたいというふうに考えておる次第であります。
  69. 小金義照

    ○小金委員 いろいろもう少し大きな問題についてお尋ねしたいことがありますが、大体きようは一応憲法上の問題と、国際上の問題と、それから武器等製造業を許可事業として、その許可事業となつたものをどういうふうにして発達せしめるかという三つのテーマについて私の質問の一端を終りました、私は本日はこの程度にいたしておきます。ありがとうございました。
  70. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、次会は明日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十六分散会